説明

光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物

【課題】光ファイバ被覆材としての機能に優れ、特に硬くて外傷を受けにくく、かつ隣接被覆層との剥離性に優れた光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A1)、(A2)、(B)、(C)及び(D):
(A1)ビスフェノール構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、
(A2)脂肪族ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、
(B)ビスフェノール構造及びエチレン性不飽和基を有する化合物、
(C)成分(A1)、(A2)及び(B)以外のエチレン性不飽和基を有する化合物、
(D)数平均分子量1500以上のポリオール化合物
を含有する光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ素線の表面に塗布後硬化して使用する光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの製造においては、ガラスファイバを熱溶融紡糸し、保護補強を目的として樹脂被覆が施されている。この過程を線引きと称し、樹脂被覆としては、光ファイバの表面にまず柔軟な第一次の被覆層を設け、その外側に剛性の高い第二次の被覆層を設けた構造が知られている。また、これらの樹脂被覆を施された光ファイバ素線を実用に供するため平面上に複数並べて結束材料で固めテープ状被覆層を設けた構造が知られている。この第一次の被覆層を形成するための樹脂組成物をソフト材、第二次の被覆層を形成するための樹脂組成物をハード材、テープ状の被覆層を形成するための樹脂組成物をテープ材と称している。
【0003】
光ファイバ素線の外径は通常250μm程度であるが、手作業による作業性を改善する目的で、この外周をさらに別の樹脂層で被覆して外径を500〜900μm程度に増大させることが行われている。このような樹脂被覆層を通常アップジャケット層という。アップジャケット層自体は光学的特性を要するものではないため、特に透明性は必要とされず、着色を付して目視による識別性を付与することもある。アップジャケット層は、光ファイバ素線の結線作業等を行う場合に、容易に、かつ、下層にある一次被覆層や二次被覆層を破損させずに剥離できることが重要な特性である。
【0004】
このようなアップジャケット層を含めた光ファイバ用被覆材として用いられる硬化性樹脂には、塗布性に優れ高速で線引き可能なこと;十分な強度、柔軟性を有すること;耐熱性に優れること;耐候性に優れること;酸、アルカリなどに対する耐性に優れること;耐油性に優れていること;吸水、吸湿性が低いこと;耐候性に優れていること;水素ガス発生量が少ないこと;液状で保存安定性が良好なことなどの特性が要求されている。
【0005】
しかし、従来のアップジャケット用材料では、アップジャケット層がその上層であるケーブル層や下層である一次被覆層や二次被覆層と強固に接着しているため、テープ層を剥離して光ファイバ素線を露出させる際にアップジャケット層が破損したり、光ファイバ素線からアップジャケット層を剥離させる際に一次被覆層や二次被覆層を破損させることが多かった。このため、光ファイバの接続作業の作業性が低下しているという問題があった。
【0006】
かかる剥離性を改善したアップジャケット用液状硬化性樹脂組成物としては、3種類のポリシロキサン化合物を配合した組成物(特許文献1)、及び樹脂材料中に有機または無機材料からなる粒子を配合した組成物(特許文献2、3)が報告されている。
しかしながら、上記組成物により形成されたアップジャケット層の剥離性は十分とはいえなかった。あるいは、アップジャケット層の上層であって、熱可塑性樹脂が多用されるケーブル層の被覆工程において80〜120℃程度に加熱されることが多いため、その熱履歴によりアップジャケット層の剥離性が低下する等の問題があった。
【0007】
さらに、光ファイバ素線の最外層、すなわち、アップジャケット層やオーバーコート層は、外気に晒されることがあり、その場合に、風雨や、昆虫、鳥等により、外傷を受けやすいという問題がある。このため、これらの層は、硬度が高く、外傷を受けにくいことも望まれている。
【特許文献1】特開平10−287717号公報
【特許文献2】特開平9−324136号公報
【特許文献3】特開2000−273127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、光ファイバ被覆材としての機能に優れ、特に硬くて外傷を受けにくく、かつ隣接被覆層との剥離性に優れた光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者らは、ウレタン(メタ)アクリレートを含有する液状硬化性樹脂組成物に種々の成分を配合して、その硬化物の光ファイバ被覆層としての強度や機能、剥離性について検討してきたところ、ビスフェノール構造を有するウレタン(メタ)アクリレートと、ビスフェノール構造及びエチレン性不飽和基を有する化合物、エチレン性不飽和基を有する化合物、特定のポリオール化合物を組み合わせて用いることにより、上記目的が達成できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、次の成分(A1)、(A2)、(B)、(C)及び(D):
(A1)ビスフェノール構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、
(A2)脂肪族ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、
(B)ビスフェノール構造及びエチレン性不飽和基を有する化合物、
(C)成分(A1)、(A2)及び(B)以外のエチレン性不飽和基を有する化合物、
(D)数平均分子量1500以上のポリオール化合物
を含有する光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、当該光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる光ファイバ素線の最外被覆層を提供する。
さらに、本発明は、当該光ファイバ素線の最外被覆層を有する光ファイバを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液状硬化性樹脂組成物により得られる被覆は、ヤング率が非常に高く、破断伸びが小さいため、外傷を受けにくく、しかも隣接被覆層との剥離性が良好である。光ファイバ素線の最外層、すなわちアップジャケット層、オーバーコート層の被覆用に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の(A1)成分であるウレタン(メタ)アクリレートは、ビスフェノール構造を有するものである。例えば、ビスフェノール構造を有するポリオールと、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させることにより製造される。すなわち、ジイソシアネートのイソシアネート基を、ポリオールの水酸基および水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基と、それぞれ反応させることにより製造される。
【0013】
この反応としては、例えばポリオール、ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを一括に仕込んで反応させる方法;ポリオールおよびジイソシアネートを反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法;ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオールを反応させる方法;ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオールを反応させ、最後にまた水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法等が挙げられる。
【0014】
ビスフェノール構造を有するポリオールとしては、例えばビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ポリオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオール、水添ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ポリオール等が挙げられる。これらのうち、ビスフェノールA構造を有するものが好ましく、特に、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオールが好ましい。これらのポリオールは、例えばユニオールDA400、DA700、DA1000、DB400(以上、日本油脂製)等の市販品として入手することもできる。
【0015】
ジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサ
ンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(または2,6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。特に、2,4−トリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等が好ましい。
【0016】
これらのジイソシアネートは、単独あるいは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンポリオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンポリオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、下記式(1)または(2)
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、nは1〜15の数を示す)
で表される(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物を使用することもできる。これら水酸基含有(メタ)アクリレートのうち、特に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0020】
これらの、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、単独であるいは二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
ポリオール、ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートの使用割合は、ポリオールに含まれる水酸基1当量に対してジイソシアネートに含まれるイソシアネート基が1.1〜3当量、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基が0.2〜1.5当量となるようにするのが好ましい。
【0022】
これらの化合物の反応においては、例えばナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のウレタン化触媒を、反応物の総量100質量部に対して0.01〜1質量部用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常10〜90℃、特に30〜80℃で行うのが好ましい。
【0023】
水酸基含有(メタ)アクリレートの一部をイソシアネート基に付加しうる官能基を持った化合物で置き換えて用いることもできる。例えば、γ−メルカプトトリメトキシシラン、γ−アミノトリメトキシシランなどを挙げることができる。これらの化合物を使用することにより、ガラス等の基材への密着性を高めることができる。
【0024】
(A1)成分のビスフェノール構造を有するウレタン(メタ)アクリレートは、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全組成中に5〜40質量%、さらに10〜30質量%、特に15〜20質量%配合されるのが、硬化物のヤング率や破断強度、破断伸び等の力学特性の上で好ましい。
【0025】
本発明の(A2)成分である脂肪族ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートは、ジイソシアネートのイソシアネート基を、脂肪族ポリエーテルポリオールの水酸基および水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基と、それぞれ反応させることにより製造される。
【0026】
(A2)のウレタン(メタ)アクリレートは、前記(A1)のウレタン(メタ)アクリレートの合成法において、ビスフェノールA構造を有するポリオールに代え、脂肪族ポリエーテルポリオールを用いることにより、製造することができる。
【0027】
脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールあるいは二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られる脂肪族ポリエーテルポリオールが挙げられる。上記イオン重合性環状化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、上記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルポリオールを使用することもできる。上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、例えばテトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブテン−1−オキシド、エチレンオキシドの3元重合体等を挙げることができる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状の結合をしていてもよい。
【0028】
これらの脂肪族ポリエーテルポリオールは、例えばPTMG650、PTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学製)、PPG−400、PPG1000、PPG2000、PPG3000、EXCENOL720、1020、2020(以上、旭硝子ウレタン製)、PEG1000、ユニセーフDC1100、DC1800(以上、日本油脂製)、PPTG2000、PPTG1000、PTG400、PTGL2000(以上、保土谷化学製)、Z−3001−4、Z−3001−5、PBG2000A、PBG2000B(以上、第一工業製薬製)等の市販品としても入手することができる。また、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシドとの共重合体であるジオールは、EO/BO500、EO/BO1000、EO/BO2000、EO/BO3000、EO/BO4000(以上、第一工業製薬製)などの市販品として入手できる。
【0029】
(A2)脂肪族ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートは、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全組成中に10〜50質量%、さらに20〜50質量%、特に20〜40質量%配合されるのが、硬化物のヤング率や破断強度、破断伸び等の力学特性の上で好ましい。
【0030】
本発明の液状硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の特性を損なわない範囲で、(A1)及び(A2)以外のウレタン(メタ)アクリレート(A3)を配合することができる。(A3)ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、ポリオール成分を有さず、ジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応により得られるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。(A3)成分の具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネートの両端にヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが結合したウレタン(メタ)アクリレートや2,4−トリレンジイソシアネートとヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの等モル反応物等が挙げられる。
【0031】
(A3)成分である(A1)及び(A2)以外のウレタン(メタ)アクリレートは、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全組成中に0〜20質量%、特に0〜10質量%配合されるのが好ましい。
【0032】
(B)成分は、ビスフェノール構造及びエチレン性不飽和基を有する化合物である。かかる化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加体、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体のポリオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体のポリオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、ビスフェノールA構造を有するものが好ましく、特に、エチレンオキサイドを付加させたビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0033】
(B)成分の化合物は、硬化性樹脂組成物の全組成中に5〜50質量%、さらに10〜40質量%、特に10〜35質量%含有されるのが好ましい。
【0034】
(C)成分であるエチレン性不飽和基を有する化合物としては、成分(A1)、(A2)及び(B)以外のものであり、(A3)成分を配合する場合には、成分(A1)、(A2)、(A3)及び(B)以外のものであって、重合性単官能化合物または重合性多官能化合物を用いることができる。ここで、重合性単官能化合物とは、エチレン性不飽和基を1個有する化合物であり、重合性多官能化合物とは、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物である。このような、単官能性化合物としては、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等が挙げられる。さらに、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、下記式(3)〜(6)で表される化合物を挙げることができる。
【0035】
【化2】

【0036】
(式中、R2は水素原子またはメチル基を示し、R3は炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基を示し、R4は水素原子または炭素数1〜12、好ましくは1〜9のアルキル基を示し、rは0〜12、好ましくは1〜8の数を示す)
【0037】
【化3】

【0038】
(式中、R5は水素原子またはメチル基を示し、R6は炭素数2〜8、好ましくは2〜5のアルキレン基を示し、R7は水素原子またはメチル基を示し、pは好ましくは1〜4の数を示す。)
【0039】
【化4】

【0040】
(式中、R8、R9、R10およびR11は互いに独立で、HまたはCH3であり、qは1〜5の整数である)
【0041】
これら重合性単官能化合物のうち、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリルアクリレートが好ましい。
【0042】
これら重合性単官能化合物の市販品としては、IBXA(大阪有機化学工業製)、アロニックスM−111、M−113、M114、M−117、TO−1210(以上、東亞合成製)を使用することができる。
【0043】
また重合性多官能化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、1,4−ブタンポリオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンポリオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテルおよび下記式(7)
【0044】
【化5】

【0045】
(ここで、R12およびR13は互いに独立に水素原子またはメチル基でありそしてnは1〜100の数である)
で表わされる化合物等が挙げられる。
【0046】
これら重合性多官能化合物のうち、上記式(7)で表わされる化合物例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イアオシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく、中でも、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0047】
これら重合性多官能化合物の市販品として、例えば、ユピマーUV、SA1002(以上、三菱化学製)、アロニックスM−215、M−315、M−325(以上、東亞合成製)を使用することができる。また、アローニックスTO−1210(東亞合成製)を使用することができる。
【0048】
これらの(C)エチレン性不飽和基を有する化合物は、硬化性樹脂組成物の全組成中に5〜50質量%、さらに10〜40質量%、特に15〜40質量%含有されるのが好ましい。
【0049】
本発明で用いる(D)成分は、分子量1500以上のポリオール化合物である。当該(D)成分を添加することにより、本発明の樹脂組成物を用いて形成された光ファイバ素線の最外層の隣接する層からの剥離性をさらに向上させることができる。(D)成分の分子量が1500未満では、インキ層への移行の問題から耐久性のうえで問題があり好ましくない。より好ましいポリオール化合物の分子量は1500〜10000であり、さらに好ましくは2000〜8000である。
【0050】
(D)成分のポリオール化合物としては、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよびその他のポリオールが挙げられる。これらのポリオールの各構造単位の重合様式には特に制限されずランダム重合、ブロック重合、グラフト重合のいずれであってもよい。
【0051】
これらのうち、ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールあるいは二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られる脂肪族ポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記イオン重合性環状化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、上記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルポリオールを使用することもできる。上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、例えばテトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブテン−1−オキシド、エチレンオキシドの3元重合体等を挙げることができる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状の結合をしていてもよい。
【0052】
これらの脂肪族ポリエーテルポリオールは、例えばPTMG2000(三菱化学製)、PPG2000、PPG3000、EXCENOL2020(以上、旭硝子ウレタン製)、DC1800(日本油脂製)、PPTG2000、PTGL2000(以上、保土谷化学製)、PBG2000A、PBG2000B(以上、第一工業製薬製)等の市販品としても入手することができる。
【0053】
さらに、ポリエーテルポリオールとしては、例えばビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ポリオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオール、水添ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ナフトハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、アントラハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、1,4−シクロヘキサンポリオールおよびそのアルキレンオキサイド付加ポリオール、トリシクロデカンポリオール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンポリオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール等の環式ポリエーテルポリオールが挙げられる。その他、環式ポリエーテルポリオールとしては、キレンオキシド付加ポリオール、ビスフェノールFのアルキレノキシド付加ポリオール、1,4−シクロヘキサンポリオールのアルキレノキシド付加ポリオールなどが挙げられる。これらのポリオールは、直鎖状の分子であってもよいし、分岐構造を有していてもよい。また、これらの併用であってもよい。
【0054】
これらのポリオールのうち、特に例えばメチル基、エチル基に代表されるアルキル基等の分岐構造を有し、その分岐による各分岐鎖の末端に水酸基を有し、ポリオールの分子量を該分岐鎖末端の水酸基の数で割った値が500〜2000であるポリオール(以下、「分岐構造を有するポリオール」ともいう。)を含有することが好ましい。
【0055】
分岐構造を有するポリオールの具体例としては、グリセリン、あるいはソルビトール等にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種類を開環重合したポリオールが好ましく、特に、ポリプロピレングリコールや、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシドとの共重合体が好ましい。
【0056】
ポリオールの分子量を該分岐鎖末端の水酸基の数で割った値は、好ましくは500〜2000であり、さらに好ましくは1000〜1500である。またポリオール自体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で求めたポリスチレン換算分子量として、1500〜12000、さらに2000〜10000、特に2500〜8000が好ましい。
【0057】
また分岐構造を有するポリオールは、一分子中に分岐による分岐鎖末端水酸基を3〜6個有するものが好ましい。
【0058】
ポリオールの市販品としては、PPG2000、PPG3000、EXCENOL2020(以上、旭硝子ウレタン製);ブテン−1−オキシドとエチレンオキシドとの共重合体であるジオールは、EO/BO2000、EO/BO3000、EO/BO4000(以上、第一工業製薬製)などの市販品として入手できる。
また、分岐構造を有するポリオールの市販品としては、例えば、第一工業製薬製、旭硝子ウレタン製、三洋化成工業製の「サニックスGP−3000」、「サニックスGP−3700M」、「サニックスGP−4000」、「サニックスGEP−2800」、「ニューポールTL4500N」等が挙げられる。
【0059】
(D)成分の配合量は、最外層の剥離性および強度や耐候性の点から、樹脂組成物の全組成中に1〜30質量%、さらに5〜25質量%、特に5〜20質量%であるのが好ましい。
【0060】
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、さらに、(E)成分として平均分子量1,500〜35,000のシリコーン化合物を含有することができる。当該(E)成分は、本発明の樹脂組成物を用いて形成された光ファイバ素線の最外層の隣接する層からの剥離性向上効果を得るうえで重要である。(E)成分の平均分子量が1,500未満では、十分な剥離性向上効果が得られず、平均分子量が35,000を超えると剥離性向上効果が不十分となる。より好ましい平均分子量は1,500〜20,000であり、さらに1,500〜20,000が好ましく、特に3,000〜15,000が好ましい。
また、(E)成分は、エチレン性不飽和基等の重合性基を有しないことが好ましい。(E)成分がエチレン性不飽和基等の重合性基を有しないことにより、熱履歴を与えても良好な剥離性を維持することができる。
【0061】
当該シリコーン化合物としては、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、ウレタンアクリレート変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、エポキシポリエーテル変性シリコーン、アルキルアラルキルポリエーテル変性シリコーン等が挙げられ、これらのうちポリエーテル変性シリコーンが特に好ましい。ポリエーテル変性シリコーンとしては、少なくとも1個のケイ素原子に基R14−(R15O)s−R16−(ここで、R14は水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示し、R15は炭素数2〜4のアルキレン基を示し(R15は2種以上のアルキレン基が混在していてもよい)、R16は炭素数2〜12のアルキレン基を示し、sは1〜20の数を示す)が結合しているポリジメチルシロキサン化合物が好ましい。このうちR15としては、エチレン基、プロピレン基が好ましく、特にエチレン基が好ましい。当該シリコーン化合物の市販品のうち、エチレン性不飽和基等の重合性基を有しないものとしては、例えばSH28PA;ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、東レダウコーニング社、ペインタッド19、54;ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、東レダウコーニング社、FM0411;サイラプレーン、チッソ、SF8428;ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(側鎖OH含有)、東レダウコーニング社、BYK UV3510(ビックケミー・ジャパン社製、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体)、DC57(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体)等を挙げることができる。また、エチレン性不飽和基を有する当該シリコーン化合物の市販品としては、例えば、Tego Rad 2300、2200N、テゴ・ケミー社等を挙げることができる。
【0062】
(E)成分の配合量は、最外層層の剥離性及び強度や耐候性の点から、樹脂組成物の全組成中に0.1〜50質量%、さらに0.5〜40質量%、特に1〜20質量%であるのが好ましい。
【0063】
さらに、本発明の液状硬化性樹脂組成物は、重合開始剤(F)を含有することができる。重合開始剤としては、熱重合開始剤または光開始剤を用いることができる。
【0064】
本発明の液状硬化性樹脂組成物が熱硬化性の場合には、通常、過酸化物、アゾ化合物等の熱重合開始剤が用いられる。具体的には、例えばベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−オキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0065】
また、本発明の液状硬化性樹脂組成物が光硬化性の場合には、光重合開始剤を用い、必要に応じて、さらに光増感剤を併用するのが好ましい。ここで、光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォフフィンオキシド;IRGACURE184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61;Darocure1116、1173(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製);LucirinTPO(BASF製);ユベクリルP36(UCB製)等が挙げられる。
【0066】
また、光増感剤としては、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル;ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB製)等が挙げられる。
【0067】
本発明の液状硬化性樹脂組成物を熱および紫外線を併用して硬化させる場合には、前記熱重合開始剤と光重合開始剤を併用することもできる。重合開始剤は、全組成中に0.1〜10質量%、特に0.3〜7質量%配合するのが好ましい。
【0068】
本発明の液状硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の特性を損なわない範囲で各種添加剤、例えば、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を配合することができる。
【0069】
なお、本発明の液状硬化性樹脂組成物は、熱および/または放射線によって硬化されるが、ここで放射線とは、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等をいう。
【0070】
本発明の液状硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる被膜は、600〜1500MPaのヤング率を示すのが好ましく、さらに700〜1300MPaが好ましい。また、破断伸びは、5〜50%を示すのが好ましく、さらに15〜40%が好ましい。
また、アップジャケット層を形成するには膜厚100〜350μmに被覆するのが好ましい。さらに、光ファイバアップジャケット層の外側に接して熱可塑性樹脂からなるケーブル層を設けることもできる。
【実施例】
【0071】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。
【0072】
[製造例1:(A1)ウレタン(メタ)アクリレートの合成1]
攪拌機を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.120g、2,4−トリレンジイソシアネート354.86g、ジブチル錫ジラウレート0.240g添加した後攪拌しながら、15℃まで冷却した。ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら236.60g滴下した後、湯浴にして40℃にし1時間攪拌した。その後、液温を20℃に冷却し、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオール(日本油脂製,DA400)を407.51gを添加した。発熱を確認した後に、65℃で3時間攪拌させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。得られた(A)ウレタン(メタ)アクリレートを、UA−1とする。
得られたウレタン(メタ)アクリレートは、ビスフェノールA構造を有するジオールの両末端に、2,4−トリレンジイソシアネートを介して2−ヒドロキシエチルアクリレートが結合した構造を有している。
【0073】
[製造例2:(A2)ウレタン(メタ)アクリレートの合成1]
攪拌機を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.240g、2,4−トリレンジイソシアネート271.72g、数平均分子量が700であるポリプロピレングリコール546.07g加え、液温が15℃になるまで冷却した。ジブチル錫ジラウレート0.799g添加した後、液温が40℃以上にならないように1時間攪拌した。これらを撹拌しながら液温度が15℃以下になるまで氷冷した。その後、ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら181.17g滴下した後、さらに、1時間撹拌して反応させた。液温度70〜75℃にて3時間撹拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。得られた(A)ウレタン(メタ)アクリレートを、UA−2とする。
得られたウレタン(メタ)アクリレートは、プロピレングリコールの両末端に、2,4−トリレンジイソシアネートを介して2−ヒドロキシエチルアクリレートが結合した構造を有している。
【0074】
[製造例3:(A3)ウレタン(メタ)アクリレートの合成]
攪拌機を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.240g、2,4−トリレンジイソシアネート428.10g、ジブチル錫ジラウレート0.799gを加え、攪拌しながら、15℃まで冷却した。ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら570.86g滴下した後、湯浴40℃にし1時間攪拌した。その後、温度上昇が見られないことを確認した後、65℃で3時間攪拌させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。得られた(A)ウレタン(メタ)アクリレートを、UA−3とする。
得られたウレタン(メタ)アクリレートは、2,4−トリレンジイソシアネートの両端に2−ヒドロキシエチルアクリレートが結合した構造を有している。
【0075】
実施例1〜3、比較例1〜3
表1に示す組成の各成分を、攪拌機を備えた反応容器に仕込み、液温度を50℃に制御しながら1時間攪拌し、液状硬化性樹脂組成物を得た。
【0076】
試験例
前記実施例及び比較例で得た液状硬化性樹脂組成物を、以下のような方法で硬化させて試験片を作製し、下記の各評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0077】
1.ヤング率:
250μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これを空気下で1J/cm2のエネルギーの紫外線で照射して硬化させ、ヤング率測定用フィルムを得た。このフィルムから、延伸部が幅6mm、長さ25mmとなるよう短冊状サンプルを作成し、温度23℃、湿度50%で引っ張り試験を行った。引っ張り速度は1mm/minで2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求めた。
【0078】
2.破断強度および破断伸び:
引張試験器(島津製作所社製、AGS−50G)を用い、試験片の破断強度および破断伸びを下記測定条件にて測定した。
引張速度 :50mm/分
標線間距離(測定距離):25mm
測定温度 :23℃
相対湿度 :50%RH
【0079】
3.剥離性:
ガラスファイバに、一次被覆材(R1164;JSR製)、二次被覆材(R3180;JSR製)、インキ材(FS青インキ;ティーアンドケイ東華製)をリワインダーモデル(吉田工業製)を用いて塗布及び紫外線硬化した作製した外径250μmの光ファイバ素線に対し、表1に示した各硬化性組成物を同装置を用いてさらに塗布及び紫外線硬化してアップジャケット層を被覆し、外径500μmのアップジャケット素線を作製した。一方、水酸化マグネシウム含有難燃性ポリエチレン樹脂ペレットからホットプレスを用いて厚さ1mmの同樹脂のシートを作製した(プレス条件:プレス圧力60kgf/cm2、180℃×3分)。アップジャケット素線を難燃性ポリエチレン樹脂シート間に挟み、ホットプレスでプレス(プレス条件:プレス圧力1kgf/cm2、180℃×1分)して、擬似ケーブルを作製し、測定試料とした。
図1に示すように、上記疑似ケーブルの末端から3cmの個所をホットストリッパー(古河電気工業製)で保持し、引っ張り試験機(島津製作所製)を用いて速度50m/minで引っ張り、アップジャケット層を引き抜く際の被覆除去応力(図2に示す最大応力)を測定した。測定は、擬似ケーブルの製造直後に行った。
【0080】
【表1】

【0081】
表1において、
Irgacure184;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)。
ルシリンTPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)。
Irganox245:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)。
SH28PA:ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(東レ・ダウコーニング製)
【0082】
表1から明らかなように、本発明の樹脂組成物で形成された硬化物は、ヤング率が高く破断伸びが小さいため、外傷を受けにくく、しかも剥離性が良好である。従って、本発明の樹脂組成物は、アップジャケット層、オーバーコート層等の光ファイバ素線の最外層被覆用組成物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】引っ張り試験機の概念図を示す図である。
【図2】アップジャケット層を引き抜く際の被覆除去応力挙動概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A1)、(A2)、(B)、(C)及び(D):
(A1)ビスフェノール構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、
(A2)脂肪族ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、
(B)ビスフェノール構造及びエチレン性不飽和基を有する化合物、
(C)成分(A1)、(A2)及び(B)以外のエチレン性不飽和基を有する化合物、
(D)数平均分子量1500以上のポリオール化合物
を含有する光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
成分(A1)及び(B)が、ビスフェノールA構造を有するものである請求項1記載の光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
更に、(E)平均分子量1,500〜35,000のシリコーン化合物を含有する請求項1又は2記載の光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる光ファイバ素線の最外被覆層。
【請求項5】
請求項4記載の光ファイバ素線の最外被覆層を有する光ファイバ。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2008−249788(P2008−249788A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87633(P2007−87633)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】