説明

光モジュール、電子機器

【課題】 戻り光によるノイズを低減することが可能な光モジュールを提供すること。
【解決手段】 光伝送媒体(3)の一端側が取り付けられ、当該光伝送媒体を介して光通信を行う光モジュールであって、光信号を送信又は受信する光素子(13)と、前記光素子と前記光伝送媒体の間に介在して相互の光軸を結合させる光学ブロック(12)と、を含み、前記光学ブロックは、前記光伝送媒体の光軸に対して傾けて配置される傾斜面(19)を有し、当該傾斜面と前記光伝送媒体との間に隙間を生じる状態で配置され、前記光素子は、前記光伝送媒体から入射して当該傾斜面で屈折した前記光信号を受信し、又は、送信した前記光信号が前記で屈折した後に前記光伝送媒体へ入射するように配置される、光モジュールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いた情報通信等に用いられる光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004−246279号公報(特許文献1)には、光伝送媒体の一端から出射される光信号、又は光素子から出射される光信号の進路を略90度変更させて光学的な結合を図る構造を採用した光モジュールが開示されている。
【0003】
上述したような従来の光モジュールでは、光信号の光路中に、異なる媒質(例えば、プラスチックと空気)が接する界面が存在する場合が多い。このような場合に、異なる2つの媒質の界面に対して光信号が垂直又はそれに近い角度で入射すると、光信号の一部が反射されて戻り光となる。この戻り光がVCSEL等の発光素子の共振器部に入射すると、発光素子の動作が不安定になって出射パワーの変動が生じ、ノイズを発生させてしまうことになる。また、戻り光が光伝送媒体に一端に入射すると、戻り光はこの光伝送媒体の他端まで伝達されて当該他端側の発光素子に入射し、上記と同様の不都合が生じることになる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−246279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、戻り光によるノイズを低減することが可能な光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の本発明は、光伝送媒体の一端側が取り付けられ、当該光伝送媒体を介して光通信を行う光モジュールであって、光信号を送信又は受信する光素子と、上記光素子と上記光伝送媒体の間に介在して相互の光軸を結合させる光学ブロックと、を含んで構成される。そして、上記光学ブロックは、上記光伝送媒体の光軸に対して傾けて配置される傾斜面を有し、当該傾斜面と上記光伝送媒体との間に隙間を生じる状態で配置され、上記光素子は、上記光伝送媒体から入射して当該傾斜面で屈折した上記光信号を受信し、又は、送信した上記光信号が上記で屈折した後に上記光伝送媒体へ入射するように配置される。
【0007】
かかる構成によれば、光信号の主光線に対して直交しない状態にした傾斜面を通して光伝送媒体と光素子との相互間の光結合がなされるので、傾斜面にて戻り光(反射波成分)が発生した場合にもその戻り光は光信号の主光線方向とは異なる方向に進行する。したがって、光素子あるいは光伝送媒体へ戻り光が入射することを回避し、戻り光によるノイズを低減することが可能となる。
【0008】
好ましくは、上記光伝送媒体から出射する上記光信号を略平行光に変換し、又は上記傾斜面から出射する上記光信号を上記光伝送媒体の一端に集光する第1のレンズと、上記光素子から放出される上記光信号を略平行光に変換し、又は上記光素子へ向かって入射する上記光信号を上記光素子の所定位置に集光する第2のレンズと、を更に備える。
【0009】
これにより、略平行光にした状態の光信号を傾斜面に入射させることができる。したがって、傾斜面からの戻り光もそのほとんどの成分が一定方向へ進行することとなり、傾斜面の傾き角度の設計が容易となる。
【0010】
好ましくは、上記光素子は、その光軸が上記光伝送媒体の光軸と略直交する状態にして上記光学ブロックの下側に配置され、上記光学ブロックは、上記光伝送媒体から入射して上記傾斜面で屈折した上記光信号の進路を上記光素子へ向けて変更し、又は上記光素子から送信される上記光信号を上記傾斜面へ向けて反射する反射面を更に備える。
【0011】
これにより、光伝送媒体の光軸と光素子の光軸とを略直交させた配置を採用して薄型化を図った光モジュールに対して、本発明にかかる戻り光防止構造を組み込むことができる。また、傾斜面の傾き角度が比較的に小さく戻り光の反射角が小さい場合であっても、光伝送媒体の光軸と光素子の光軸とが略直交していることにより、戻り光の一部成分が光素子又は光伝送媒体へ入射することをより確実に回避できる。
【0012】
また、上記のように光学ブロックが反射面を備える場合に、上記光学ブロックの上記傾斜面は、光伝送媒体側から入射する光信号を当該光学ブロックの上側へ屈折させる方向に傾けて配置されることが好ましい。
【0013】
光学ブロックを射出成形法などによって形成する場合には、成形精度を確保するために、光学ブロックの上側(反射面が設けられる側)と光学ブロックの下側との距離、すなわち光学ブロックの厚み方向の距離がより大きく確保されることが望まれる。一方で、光モジュールの薄型化の観点からは光伝送媒体との光結合点となる位置(本発明では傾斜面を設ける位置)は、光学ブロックの下側へより近づけることが望まれる。傾斜面を上記のように配置することにより、これらの要望を両立し、成形精度を確保しながら光学ブロックの厚みを小さくすることが可能となる。
【0014】
好ましくは、上記傾斜面と上記光伝送媒体の光軸とのなす角度を15°〜30°程度とする。
【0015】
これにより、傾斜面における光の透過率特性の偏光依存性による影響を少なくすることが可能となる。
【0016】
また、上記光伝送媒体の一端がプラグに支持されている場合には、上記傾斜面は、その少なくとも一部が上記プラグの先端部と当接するように配置されることが好ましい。
【0017】
これにより、傾斜面をプラグの位置決め手段としても兼用し、構造の簡素化を図ることができる。
【0018】
第2の態様の本発明は、上述した光モジュールを備える電子機器である。ここで「電子機器」とは、電気回路等を用いて一定の機能を実現する機器一般をいい、その構成には特に限定がないが、例えば、パーソナルコンピュータ、PDA(携帯型情報端末)、電子手帳など各種機器が挙げられる。本発明にかかる光モジュールは、これらの電子機器において機器内部での情報通信や外部機器等との間における情報通信に用いることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の態様について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、一実施形態の光モジュールの概略構成を説明する図(斜視図)である。図1に示すように、本実施形態の光モジュールは、光ファイバ(光伝送媒体)3の一端部にプラグ2を設け、当該プラグ2をレセプタクル1に取り付けることによって、光ファイバ3と光素子とを光結合させて光通信を行うものである。
【0021】
図2は、図1に示す光モジュールの分解斜視図である。図3は、図1に示す光モジュールのIII−III線方向に沿った断面図である。以下、各図を参照しながら、本実施形態の光モジュールの詳細構成を説明する。
【0022】
プラグ2は、光ファイバ3の一端側においてファイバ芯を挟み込んで支持するように設けられており、凸部20と、当該凸部20の両側に配置され、位置決め用ガイドとして機能する切り欠き部21と、レンズ22を含んで構成されている。このプラグ2は、例えば、プラスチックなどの材料を用いて形成される。
【0023】
凸部20は、光ファイバ3の長手方向(図1に示すZ方向)に沿った中央付近に延在している。本実施形態のプラグ2は、この凸部20を含む肉厚な範囲内において光ファイバ3の一端を支持するように形成されている。
【0024】
切り欠き部21は、凸部20の両側にそれぞれ設けられ、プラグ2の厚さ方向(図1に示すY方向)の位置決めに用いられる。より具体的には、図2に示すように、切り欠き部21は上向きの面を有しており、当該上向き面がレセプタクル1の上側収容部材15(詳細は後述する)と当接することによって、プラグ2のY方向の位置決めがなされる。
【0025】
レンズ22は、プラグ2の先端側に設けられており、光ファイバ3から出射する光信号を略平行光に変換して傾斜面17(詳細は後述する)へ導き、又は光素子13から出射し、反射面17によって進路変更されて傾斜面17から出射する光信号を光ファイバ3の一端に集光する機能を担う。プラグ2は、このレンズ22の焦点に対応する位置に光ファイバ3の端面を突き当てる面が形成され、この突き当たり面よりも後端側にかけて複数のV溝(V溝アレイ)が形成されている。V溝に光ファイバ3を添えて接着固定することにより、光ファイバ3の端面の位置が決定される。なお、必要に応じて、ファイバカバー用のプレートで光ファイバ3を押さえつけて接着してもよい。なお、このレンズ22が本発明における「第1のレンズ」に相当する。
【0026】
レセプタクル1は、基板10、ガイドブロック11、光学ブロック12、光素子13、回路チップ14、上側収容部材15、下側収容部材16を含んで構成されている。
【0027】
基板10は、光モジュール3の光軸と略平行な上面とこれに略平行な下面とを有し、上面にプラグ2が載置されている。基板10の上面と上側収容部材15によってプラグ2の厚さ方向(Y方向)の位置決めがなされる。また、基板10は、上面に配置されたガイドブロック11及び光学ブロック12を支持する。この基板10は、例えば、ガラスやプラスチックなどの透光性部材を用いて形成される。本実施形態では、基板10の下面に光素子13が配置され、上面側に光ファイバ3及び光学ブロック12が配置されており、基板10を介して光素子13と光ファイバ3との間における光信号の送信又は受信がなされる。
【0028】
ガイドブロック11は、基板10の一方面側に設けられ、プラグ2の側部と当接して当該プラグ2の幅方向(図1に示すX方向)、すなわちプラグ2の厚み方向及び光ファイバ3の長手方向のそれぞれと直交する方向の位置を決める機能を担う。このガイドブロック11は、基板10と熱膨張率がほぼ同等又はそれに近い材料であり、且つ基板10との接着性が良好な材料を用いることが好ましい。かかる条件は、例えば、基板10の構成材料と同材料を用いてガイドブロック11を形成することにより実現し得る。
【0029】
光学ブロック12は、透光性部材からなり、少なくとも一部(本例では傾斜面19の上側の一部)がプラグ2の先端部と当接して、光ファイバ3の光軸方向(図1に示すZ方向)におけるプラグ2の位置決めを行う。また、光学ブロック12は、光ファイバ3と光素子13との間に介在して相互の光軸を結合させる機能も有する。この光学ブロック12は、光ファイバ3の光軸に対して傾けた状態(直交、平行のいずれでもない状態)で配置される傾斜面19を有する。より詳細には、本実施形態では光ファイバ3の光軸がXZ平面と平行な状態であるので、傾斜面19は、光ファイバ3の光軸と直交する面(XY平面)とのなす角が鋭角となるように配置される。
【0030】
傾斜面19は、光学ブロック12の光ファイバ3と当接する側の所定位置に形成されている。この傾斜面19は、上記のように光ファイバ3の光軸に対して傾けた状態、換言すれば光ファイバ3の光軸を斜めに横切る状態で配置される。
【0031】
このような傾斜面19を設けることにより、光ファイバ3から出射した光信号が傾斜面19に入射した際に当該光信号の一部成分が反射することによって生じる戻り光が光ファイバ3へ入射することを回避できる。同様に、光素子13から送信された光信号が反射面17によって反射され、傾斜面19に入射した際に当該光信号13の一部成分が反射することによって生じる戻り光が光素子13へ入射することも回避できる。
【0032】
また、本実施形態の傾斜面19は、光ファイバ3側から入射する光信号を想定したときに、当該光信号を光学ブロック12の上側へ屈折させる方向、すなわち本例では基板10の上面から遠ざかる方向へ屈折させる方向に傾けて配置される。これにより、成形精度を確保しながら光学ブロック12の厚みを小さくすることが可能となる
【0033】
光素子13は、基板10の他方面側に配置され、当該基板10の他方面上に形成された電気配線と電気的に接続されており、当該電気配線を介して回路チップ14から与えられる駆動信号に応じて光信号を送信し、又は受信した光信号の強度に応じて電気信号を出力する。本実施形態の光素子13は、その光軸が光ファイバ3の光軸と略直交する状態にして、光学ブロック12の下面側(本例では基板10の下面側)に配置されている。なお、光素子13は基板10の上面側に配置してもよく、光学ブロック12の下面側に直接的に配置してもよい。
【0034】
ここで、光素子13の具体例は、光モジュールが情報送信側に用いられるか情報受信側に用いられるかによって異なる。光モジュールが情報送信側に用いられる場合には、光素子13としてVCSEL(面発光レーザ)などの発光素子が用いられる。また、光モジュール1が情報受信側に用いられる場合には、光素子13としてフォトダイオードなどの受光素子が用いられる。また、図3に例示するように、基板10の他方面側の電気配線は、ボールハンダ4を介して他の回路基板(マザーボード)等と電気的に接続される。すなわち本実施形態では、実装方式としてBGA(ball grid array)パッケージを採用している。なお、実装方法はこれに限定されるものではない。
【0035】
回路チップ14は、基板10の他方面側に配置され、当該基板10の他方面上に形成された電気配線と電気的に接続されている。光素子13が発光素子である場合には、回路チップ14として、光素子13に対する駆動信号の供給を行うドライバを含むものが用いられる。また、光素子13が受光素子である場合には、回路チップ14として、光素子13からの出力信号の増幅等を行うレシーバアンプを含むものが用いられる。
【0036】
上側収容部材15は、下側収容部材16とともにレセプタクル1の各要素を収容するものであり、プラグ2の凸部20を露出させる開口を有している。この上側収容部材15が下側収容部材16に固定された際に、開口の縁部及びその近傍がプラグ2の切り欠き部21と当接し、プラグ2の厚み方向(Y方向)の位置を決める機能が実現される。また、本実施形態の上側収容部材15は、弾性体からなる板状部材(例えば、金属板バネ等)を用いて形成されている。そして、各部材を組み立てた際に、上側収容部材15の開口の縁部及びその近傍によって切り欠き部21が覆われるように形状加工されている。このとき、上側収容部材15の有する弾性力によって、プラグ2をその厚み方向に付勢する力(押し付け力)が発生し、それによってプラグ2のY方向の位置決めがなされる。
【0037】
下側収容部材16は、上側収容部材15とともにレセプタクル1の各要素を収容するものであり、基板10の他方面を露出させる開口を有している。基板10、ガイドブロック11、光学ブロック12などからなるコアモジュールはこの下側収容部材16に埋め込まれ、接着材又は半田等を用いて接合される。通常は、上記コアモジュールを下側収容部材16に取り付けた段階のものをマザーボード等へ実装した後に、プラグ2をガイドブロック11、光学ブロック12の各ガイド面の内側に挿入し、その後、上側収容部材15をかぶせる、という順序で組み立てがなされる。
【0038】
反射面17は、傾斜面19から光学ブロック12を介して光素子13へ至るべき光路を基板10側へ折り曲げる機能を担う。光ファイバ3の一端から入射し、傾斜面19によって屈折して光学ブロック12内を進行した光信号は、その光路が反射面17によって変更され、基板10を通過して光素子13へ導かれる。また、光素子13から出射する光信号は、基板10及び光学ブロック12を通過し、反射面17によって光路が変更されて傾斜面19に導かれる。本実施形態では図3に示すように、反射面17は、光学ブロック12の一部を切り欠いてXZ平面に対して略45度よりも幾分小さい傾きをもつ面とし、光学ブロック12と一体に形成されている。そして、光学ブロック12を透光性部材によって構成することにより、光学ブロック12内に光信号を通過させ、反射面17において反射させている。このような反射面17は、例えば、光学ブロック12を構成する材料を適宜選択し、当該光学ブロック12とその周囲の気体(空気等)との屈折率差を入射光が全反射する条件(或いはそれに近い条件)とすることによって実現される。また、このような全反射条件を満たすことが難しい場合には、光学ブロック12の外側に金属等の反射膜を設けることによって反射面17を実現してもよい。
【0039】
レンズ18は、反射面17と光素子13との間における光信号の進路上に配置されており、光素子13から放出される光信号を略平行光に変換して反射面17へ導き、又は光ファイバ3の端面から出射して反射面17により反射され、光素子13へ向かって入射する光信号を光素子13の所定位置(発光部又は受光部)に集光する。本実施形態では、このレンズ18は、光学ブロック12の一方面側に当該光学ブロック12と一体に設けられている。より具体的には、レンズ18は、光学ブロック12の所定位置に凹部を設け、当該凹部の内側に形成されている。なお、このレンズ18が本発明における「第2のレンズ」に相当する。
【0040】
図4は、反射面17及び傾斜面19の傾きを解析的に求める手法について説明するための図である。図4では、光学ブロック12の傾斜面19及び反射面17の付近が拡大して示されている。なお、説明の便宜上ハッチングは省略されている。ここで、図4に示す例では、(1)レンズ18に入射する光信号の主光線はY軸と平行であり、かつレンズ18の光軸と一致していること、(2)傾斜面19から光ファイバ3に向けて進行する光信号の主光線はZ軸と平行であり、かつ光ファイバ3の光軸及びレンズ22の光軸と一致していること、を前提条件とする。また、反射面17とXZ平面とのなす角度を反射面17の傾きθ1、傾斜面19とXY平面とのなす角度を傾斜面19の傾きθ2、とそれぞれ定義する。このとき図示のように、傾きθ2は光ファイバ3から出射される光信号の主光線と傾斜面19とのなす角度に等しくなる。また図示のように、傾きθ1は反射面17に対する光信号の主光線の入射角及び反射角に等しくなる。また、光学ブロック12の屈折率をn1、その周辺の屈折率をn2とする。本例では、光学ブロック12の周辺に存在する媒体は空気であり、屈折率n2の値は約1.0となる。
【0041】
図5は、傾斜面19の傾きθ2の設定条件の好適な一例について説明するための図である。図5では、傾斜面19の傾きθ2と当該傾斜面19に入射する光の透過率との関係がグラフによって示されている。図示の例は、光学ブロック12の屈折率n1が1.53、周辺媒体(空気)の屈折率n2が1.0であるとして透過率特性を計算したものである。図中の点線は振動方向が入射面と平行な成分(p偏光)Tpの透過率特性を示し、図中の実線は振動方向が入射面と垂直な成分(s偏光)Tsの透過率特性を示している。図示のように、傾斜面19の傾きθ2をあまり大きくすると透過率特性の偏光依存性が大きくなる。すなわち、光信号の振動方向による透過率差が大きくなる。よって、屈折率n1、n2の値にもよるが、本例の条件においては傾きθ2を15°〜30°程度の間で設定することが好ましく、特に20°前後で設定するとよい。
【0042】
傾斜面19の傾きθ2が決まると、反射面17の傾きθ1は次式によって一意に求めることができる。
【数1】

ただし、反射面19において全反射の作用を用いる場合には、次式に示す全反射条件を満たす必要がある。全反射条件を満足するのが難しい場合には、反射面19の外側に金属膜等の反射膜を別途設ける必要がある。
【数2】

【0043】
図6は、他の構成例の光モジュールについて、傾斜面19の傾きを解析的に求める手法を説明するための図である。図6に示すように、傾斜面19と光素子13との間の光路中に反射面を設けないようにして光モジュールを構成してもよい。この場合には、図示のように、光ファイバ3から出射し、第1のレンズ(図示略)によって略平行光に変換された光信号は傾斜面19で屈折した後に光学ブロック12a内を通り、レンズ(第2のレンズ)18aによって集光されて光素子13に伝達される。また、光素子から放出された光信号はレンズ18aによって略平行光に変換され、光学ブロック12a内を通って傾斜面19に入射し、当該傾斜面19で屈折した後に第1のレンズによって集光され、光ファイバ3に伝達される。このとき、傾斜面19の傾きθ2は上述した通りの方法で、例えば20°程度に設定される。この傾きθ2が決まると、光学ブロック12aの屈折率n1及び周辺媒体の屈折率n2との関係により、光信号の屈折方向を示す傾きθ3は次式によって一意に求められる。
【数3】

よって、光素子13は、この傾きθ3によって示される屈折方向に光素子13の光軸を一致させるようにして配置される。
【0044】
このように本実施形態によれば、光信号の主光線に対して直交しない状態にした傾斜面を通して光伝送媒体と光素子との相互間の光結合がなされるので、傾斜面にて戻り光(反射波成分)が発生した場合にもその戻り光は光信号の主光線方向とは異なる方向に進行する。したがって、光素子あるいは光伝送媒体へ戻り光が入射することを回避し、戻り光によるノイズを低減することが可能となる。
【0045】
上述した実施形態にかかる光モジュールは、光通信装置(光トランシーバ)や光電気混載回路基板を構成などに組み込んで用いることが可能である。
【0046】
図7は、本発明にかかる光モジュールを備える電子機器の一例を示す斜視図である。図7では電子機器の一例としてパーソナルコンピュータが示されている。図7に示すノート型のパーソナルコンピュータ100は、キーボード101を有する本体部102と、表示パネル103とを備えて構成されている。本実施形態にかかる光モジュールは、図7に示すパーソナルコンピュータ100の本体部102の内部に含まれて、当該パーソナルコンピュータ100が外部装置との相互間で情報通信を行うために用いられる。また、本実施形態にかかる光モジュール等は、パーソナルコンピュータ100の本体部102の内部において、各ユニットの相互間(例えば、ディスク装置とマザーボードとの相互間)の情報通信を行うためにも用いられ得る。
【0047】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。
【0048】
例えば、上述した実施形態では、傾斜面19は基板10の第1の面と対向する向き(下向き)に傾けて形成されているが、反対に、第1の面と対向しない向き(上向き)に傾けて形成されていてもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、反射面17やレンズ18は光学ブロック12と一体に形成されていたが、これらの反射面17又はレンズ18はそれぞれ単独の構成要素として存在してもよい。同様に、レンズ22は、プラグ2と一体に形成されていなくてもよい。
【0050】
上述した実施形態では、光伝送媒体の一例として光ファイバを示しているが、これに限定する趣旨ではなく、光導波路などを光伝送媒体としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】一実施形態の光モジュールの概略構成を説明する図(斜視図)である。
【図2】図1に示す光モジュールの分解斜視図である。
【図3】図1に示す光モジュールのIII−III線方向に沿った断面図である。
【図4】反射面及び傾斜面の傾きを解析的に求める手法について説明するための図である。
【図5】傾斜面の傾きの設定条件の好適な一例について説明するための図である。
【図6】他の構成例の光モジュールについて、傾斜面の傾きを解析的に求める手法を説明するための図である。
【図7】電子機器の一例の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
1…レセプタクル、2…プラグ、3…光ファイバ、5…接着材、10…基板、11…ガイドブロック、12…光学ブロック、12a…枠体、13…光素子、15…上側収容部材、16…下側収容部材、17…反射面、18…レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送媒体の一端側が取り付けられ、当該光伝送媒体を介して光通信を行う光モジュールであって、
光信号を送信又は受信する光素子と、
前記光素子と前記光伝送媒体の間に介在して相互の光軸を結合させる光学ブロックと、
を含み、
前記光学ブロックは、前記光伝送媒体の光軸に対して傾けて配置される傾斜面を有し、当該傾斜面と前記光伝送媒体との間に隙間を生じる状態で配置され、
前記光素子は、前記光伝送媒体から入射して当該傾斜面で屈折した前記光信号を受信し、又は、送信した前記光信号が前記で屈折した後に前記光伝送媒体へ入射するように配置される、光モジュール。
【請求項2】
前記光伝送媒体から出射する前記光信号を略平行光に変換し、又は前記傾斜面から出射する前記光信号を前記光伝送媒体の端部に集光する第1のレンズと、
前記光素子から送信される前記光信号を略平行光に変換し、又は前記光素子へ入射する前記光信号を前記光素子の所定位置に集光する第2のレンズと、
を更に備える、請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記光素子は、その光軸が前記光伝送媒体の光軸と略直交する状態にして前記光学ブロックの下側に配置され、
前記光学ブロックは、前記光伝送媒体から入射して前記傾斜面で屈折した前記光信号の進路を前記光素子へ向けて変更し、又は前記光素子から送信される前記光信号を前記傾斜面へ向けて反射する反射面を更に備える、請求項1に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記傾斜面は、前記光伝送媒体側から入射する前記光信号を当該光学ブロックの上側へ屈折させる方向に傾けて配置される、請求項1乃至3のいずれかに記載の光モジュール。
【請求項5】
前記傾斜面と前記光伝送媒体の光軸とのなす角度を15°〜30°程度とする、請求項1に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記光伝送媒体はその一端がプラグに支持されており、
前記傾斜面は、その少なくとも一部が前記プラグの先端部と当接するように配置される、請求項1に記載の光モジュール。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の光モジュールを備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−227043(P2006−227043A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37207(P2005−37207)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】