説明

光ラジカル反応性塗料組成物及び塗装木質基材

【課題】 耐クラック性能と硬度を両立させた塗装木質基材を得ることのできる反応性ホットメルト塗料組成物、該塗料組成物を用いた塗装木質基材、及び、その製造方法を提供する
【解決手段】 ビスフェノールA骨格を有する数平均分子量300〜2500のエポキシアクリレートオリゴマー成分(A)と、水添ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネート、3官能型ポリプロピレングリコール、及び、水酸基含有(メタ)アクリレートを必須成分として反応させてなる数平均分子量800〜3000のウレタンアクリレートオリゴマー(B)、及び、光ラジカル重合開始剤を含有し、かつ反応性希釈剤を実質的に含有しないことを特徴とする光ラジカル反応性塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質基材に適用可能な光ラジカル反応性塗料組成物及び該塗料組成物を単板厚0.03mm〜2.0mmの合板木質基材に塗装した塗装木質基材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から紙、プラスチック、ガラス、金属、木材、セラミック等の基材の表面には高硬度、耐汚染性等の様々な機能や意匠性を付加し、表面を保護するためにコーティングが行われている。近年、環境問題への対応から、活性エネルギー線硬化型の塗料の需要が拡大している。そうした中で、建材の分野でも、活性エネルギー線硬化型塗料、特に紫外線硬化型塗料の硬化塗膜を有する、天井材、壁材、床材等の各種用途に用いる塗装建材が求められている。近年ではホットカーペットや床暖房設備が発達し、フローリングのような床材が幅広い温度差にさらされる機会が増えている。
【0003】
合板や無垢の木質基材は激しい温度差にさらされると、膨張、収縮が起こるため、塗膜がそれに耐え切れずにクラック(ひび割れ)を生じてしまうことがある。又、木質基材そのものにクラックを生ずる場合もある。また、特に複数の木材を接着剤で組み合わせ強度を上げ、表面に意匠性を有する単板を接着した合板は特に熱による収縮に弱く、その耐久性を上げる工夫が行われている。
【0004】
それを防ぐ方法として、第一には表面単板直下に強化紙やHDF層を組み込むなどして合板基材そのものの膨張、収縮を防ぐことが提案されているが高コストとなっている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
一方、紫外線硬化型塗料を厚く塗り、耐クラック性能を向上することが試みられているが、一般的なフローリングに要求される硬度と両立させるのが困難である。
【0006】
第二に、塗料面から、木質基材の膨張、収縮を防ぐ、乃至は、膨張、収縮に耐えるだけの柔軟性を持たすべく、紫外線硬化型塗料に柔軟な樹脂成分を含有させることで塗膜を強化することが考慮されているものの、現段階では、紫外線硬化型塗料のみで、木材の膨張、収縮を完全に防ぐことは極めて困難である(例えば、特許文献3参照)。オリゴマー成分を含有する塗料を、現行の設備で塗工する際に適正な塗装粘度にするためには、低分子の活性エネルギー線重合性の希釈モノマー、有機溶剤等で希釈する必要があるが、希釈モノマーで希釈すると塗膜物性が十分な強度を示さず、溶剤での希釈はシックハウス症候群をなどの観点から実質的に採用できない。
【0007】
現在は、耐クラック性能を持たせ、且つ、硬度を出すために、木質基材の強化をした上で、柔軟性の高い塗膜をできるだけ厚く塗装し、その上にさらに高硬度の塗料を厚塗りしているのが現状である。しかしながら、その性能は、未だ需要者の求めるレベルに達しておらず高硬度塗膜の厚塗りはコストがかかるばかりである。
【0008】
建材塗装剤業界では、温度変化に弱い木材に高温の塗料を塗るという発想が余り無かったこと、現行のライン塗装では、塗料の加温、油性であれ、水性であれ、乾燥は基本的にすべてボイラー由来の蒸気から熱源を得る方法が採用されていた事情から、一般に、50℃以下での塗工が一般的に行われている。そのため、ホットメルト方式の採用にはヒーターなどの設備投資が必要になること、又更に、高粘度の塗料を製造すること自体が困難であった。
【0009】
近年、耐クラック性を改良させる目的で(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を共存させた樹脂組成物を高温で塗装させることが提案されたが、性能が発現するためにイソシアネート基が湿気硬化する時間が必要であり、現在日本国内で行われているライン塗装には適合しない面もある。
【0010】
【特許文献1】特開平11−222995号公報
【特許文献2】特開2000−240265号公報
【特許文献3】特開2000−007753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、このような従来技術の抱える課題を解決するものであり、耐クラック性能と硬度を両立させた塗装木質基材を得るための光ラジカル反応性塗料及び該塗料組成物を用いた塗装木質基材、特に木製床材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討の結果、紫外線硬化型塗料のホットメルト方式での塗装を採用することにより、希釈モノマーの添加を低減しても適正粘度で、オリゴマー自身の性能を活かして直接塗装することが可能であることを見出した。また、比較的安価に入手でき、塗装適性上及び塗膜硬度上有利なビスフェノールA骨格を有するエポキシアクリレート成分と、強靱な皮膜を形成し耐クラック性に優れる特定のウレタンアクリレート成分を配合することにより、割れない程度の柔軟性と床材に求められる硬度を持った塗膜が低コストで実現できることを見出し本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明は第一に、ビスフェノールA骨格を有する数平均分子量300〜2500のエポキシアクリレートオリゴマー成分(A)と、水添ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネート、3官能型ポリプロピレングリコール、及び、水酸基含有(メタ)アクリレートを必須成分として反応させてなる数平均分子量800〜3000のウレタンアクリレートオリゴマー(B)、及び、光ラジカル重合開始剤を含有し、かつ反応性希釈剤を実質的に含有しないことを特徴とする光ラジカル反応性塗料組成物を提供する。
【0014】
本発明は第二に、基材温度0〜100℃の合板または無垢の木質基材に、前記した反応性ホットメルト塗料組成物を、塗料温度50〜150℃で、粘度100〜100,000mPa・sの条件で塗布する工程と、塗布後、紫外線を照射する工程とを含む製造工程で製造される、木質基材に表面に反応性ホットメルト塗料組成物の硬化層を有することを特徴とする塗装木質基材を提供する。
【0015】
本発明は第三に、基材温度0〜100℃の合板または無垢の木質基材に、前記した反応性ホットメルト塗料組成物を、塗料温度50〜150℃、該温度での塗料粘度100〜100,000mPa・sの条件で塗布する工程と、塗布後、紫外線を照射する工程とを有することを特徴とする塗装木質基材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、耐クラック性能と硬度を両立させた、木肌感を有する塗装木質基材を得るための反応性ホットメルト塗料組成物、該塗料組成物を用いた塗装木質基材及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、光ラジカル反応性塗料組成物及び該塗料組成物を合板の木製製品に塗装した塗装木質基材の製造方法に関する。
【0018】
ホットメルト方式を採用することにより、適正な塗装温度での塗工が可能となり、塗料の転移した瞬間に流動性が消滅することなく、平滑な塗膜面が得られる。特に、本発明の紫外線硬化型である光ラジカル反応性塗料組成物の使用により、紫外線照射後に高分子化が行なわれる為、塗工時は、従来の一般の非反応性ホットメルト塗料に比較して、低温度、低粘度の塗工が可能となる。また、洗浄作業時に溶剤使用が不必要になり、塗装時のガス発生、火傷等の塗装作業性の面での安全性の向上も図れる。更に、下塗りとして使用する場合、紫外線硬化型の架橋点を有するため、中塗り又は上塗りの紫外線硬化型塗膜との密着性に優れる複合塗膜が得られる。
【0019】
以下、本発明の構成を、オリゴマー成分、光ラジカル重合開始剤を有する塗料組成物、塗工方式、紫外線照射条件について詳細に説明する。
【0020】
本発明の光ラジカル反応性塗料組成物に用いるオリゴマー成分は、ビスフェノールA骨格を有し、分子内にアクリロイル基を少なくとも一個有する分子量300〜2500のエポキシアクリレートオリゴマー成分(A)と、水添ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネート、3官能型ポリプロピレングリコール、及び、水酸基含有(メタ)アクリレートを必須成分として反応させてなる分子内にアクリロイル基を少なくとも一個有する、数平均分子量800〜3000のウレタンアクリレートオリゴマー(B)及び、光ラジカル重合開始剤を含有し、かつ反応性希釈剤を実質的に含有しないことを特徴とする光ラジカル反応性塗料組成物であり、紫外線により高分子化し得るものである。
【0021】
上記エポキシアクリレートオリゴマー(A)とは、ビスフェノールA、またはビスフェノールAの修飾体(I)/エピクロルヒドリン(II)/アクリル酸またはメタクリル酸(III)を必須の構成成分とし、公知慣用の合成法により調製したものである。それぞれの構成比は、(I):(II):(III)=1:2:2程度が好ましい。
【0022】
上記ウレタンアクリレートオリゴマー(B)とは、水添ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネート、及び3官能型ポリプロピレングリコール、及び水酸基含有(メタ)アクリレートを必須の構成成分とし、公知慣用の合成法により調製したものである。
【0023】
本発明の光ラジカル反応性塗料組成物は、不揮発分中に、従来公知の活性エネルギー線重合性モノマーを任意に用いることができるが、実質的に含有しないことが好ましい。
【0024】
上記アクリレートオリゴマーは、上記エポキシアクリレートオリゴマー、及びウレタンアクリレートオリゴマーを併用するが、他に異なる構造のアクリレートオリゴマーを更に併用してもよい。
【0025】
上記エポキシアクリレートオリゴマー(A)とウレタンアクリレートオリゴマー(B)との配合比は特に限定されるものではないが、好ましくは(A):(B)が、30:70〜70:30である。
【0026】
また、塗工時の適切な粘度と、耐クラック性能、硬度を得るために、上記エポキシアクリレートオリゴマー(A)成分の平均分子量は300〜2,500程度であり、好ましくは、400〜900程度である。
【0027】
また、塗工時の適切な粘度と、耐クラック性能、硬度を得るために、上記ウレタンアクリレートオリゴマー(B)成分の平均分子量は800〜3,000程度であり、好ましくは、1,200〜2,000程度である。
【0028】
また、本発明の光ラジカル反応性塗料組成物に用いる光ラジカル重合開始剤は、紫外線照射によりラジカルを生成する化合物であり、例えば水素引き抜き型重合開始剤、光開裂型などが挙げられる。水素引き抜き型重合開始剤としては、従来公知のベンゾフェノン、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0029】
光開裂型のラジカル重合開始剤としては、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルケトン等が挙げられる。これらの水素引き抜き型、光開裂型重合開始剤のうち1種または2種以上のものを組み合わせて使用することができる。
【0030】
紫外線硬化型重合性オリゴマー成分と光重合開始剤を含有する塗料組成物中の重合開始剤の配合割合は、オリゴマー成分100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましい。
【0031】
また、これらの重合開始剤に、公知慣用の光増感剤をも併用することができる。併用する場合は、オリゴマー成分100質量部に対して1〜15質量部であることが好ましい。
【0032】
本発明の光ラジカル反応性塗料組成物には、さらに必要に応じて本発明の目的を逸脱しない範囲内で、各種の機能を付与するため着色剤、体質顔料、滑剤、可塑剤、消泡剤、酸化防止剤、カップリング剤、有機溶剤及びキレート剤などの添加剤を添加することができる。
【0033】
本発明の光ラジカル反応性塗料組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、配合すべき各成分の所定量を均一に混練しうる限り、いかなる方法を採用しても良いが、各成分が溶融し得る適度な加熱条件下で製造する必要がある。また、製造に際しての各成分の混練は無溶媒で行ってもよく、例えば芳香族炭化水素、酢酸エステル、ケトン等のような不活性溶媒中で行っても良いが、不活性溶媒中で行った場合には、混練後、減圧及び/又は加熱により不活性溶媒を除去する必要がある。具体的には、ダブルヘリカルリボン浴もしくはゲート浴、バタフライミキサー、プラネタリミキサー、三本ロール、ニーダールーダー型混練機、エクストルーダー型混練押し出し機等の一種、もしくは二種以上を用いて各成分の混練を行いうるが、各成分を混錬する装置については、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明の光ラジカル反応性塗料組成物は、塗料温度50℃に於ける粘度が10,000mPa・s以上であり、80℃に於ける粘度が100〜10,000mPa・sであることを特徴とするが、50〜150℃における粘度が100〜10000mPa・sであることが好ましい。より好ましくは、80℃における粘度が500〜5000mPa・sである。
【0035】
本発明の塗装木質基材に用いる木質基材としては、ラワン等の南洋材を貼り合わせただけの普通合板、フェノール樹脂などを含浸させた強化合板等の合板基材が用いられる。ラワンなどの硬い素材ばかりでなく、針葉樹合板等の比較的軟らかい素材であっても、本発明の光ラジカル反応性塗料組成物の硬化塗膜層を有することにより、各種床材等への使用可能性が広がる。
【0036】
本発明は、合板または無垢の木質基材に、光ラジカル反応性塗料組成物の硬化塗膜層を有する塗装木質基材に関する。本発明の塗装木質基材に於いて、光ラジカル反応性塗料組成物の硬化塗膜層は、木質基材に対する下塗り層であるが、木質基材に直接塗工するシーラー層、着色層等を介していても良い。下塗り層とは、主に基材と塗膜を密着させる目的の塗膜層であり、着色、乾燥工程の直後、あるいは直接基材に塗工する層である。着色、乾燥工程の直後は、乾燥工程により基材温度が向上していることから本発明の光ラジカル反応性塗料組成物を塗工する工程として特に好ましい。
【0037】
また、上記の下塗り層としての構成の上に中塗り層、上塗り層があることがより好ましい。光ラジカル反応性塗料組成物により得られる下塗り硬化塗膜の上に、上記の中塗り層、上塗り層を得ることにより、木質製品としてよりよい表面性と艶が得ることが容易になる。
【0038】
基材への着色は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法でかまわない。例えばスポンジリバースコーター、ナチュラルコーターのウェット・オン・ウェット方式で塗工することにより塗工される。また、着色前に事前にシーラー(捨て塗り)処理や、素地研磨処理されていてもかまわない。また着色後は着色剤に使用されている溶剤や水が十分乾燥し得るだけの乾燥工程があることが特に好ましい。また、着色に用いられる塗料としては、従来公知の油性、水性いずれのものを用いても構わないが、VOCの観点から、水性の顔料分散体を用いることが好ましい。
【0039】
下塗層の塗工工程とトップコート層の塗工工程の間には別の工程があっても構わない。例えば溝部を塗装するためにスポンジリバースコーターを用いたり、ナチュラルコーターを用いても構わない。またこれらの工程で用いられる塗料としては、従来公知のものが使用できる。
【0040】
トップコートの塗装も従来公知の方法で構わず、ナチュラルコーターや、フローコーター、スプレー等を用いることができる。これらの工程で用いられる塗料は従来公知のものを用いることができるが、VOC問題や、既存設備を利用できることから活性エネルギー線硬化型の塗料を用いることが好ましい。
【0041】
本発明の塗装木質基材の下塗り層としての塗膜厚さは、30μm〜300μm程度が好ましく、ナチュラルコーターで塗工されるトップコートは0.1μm〜20μm程度が好ましいが、本発明においては特に限定されるものではない。
【0042】
また、本発明の塗装木質基材の製造方法において、塗装時の基材温度は0〜100℃であることが好ましいが、40〜90℃であることがより好ましい。40℃以下では塗装した光ラジカル反応性塗料組成物の塗装後の表面のレベリング性が得られにくく、木質基材に90℃を超える温度がかかるとケバの発生など木質基材そのものが劣化する恐れがある。
【0043】
本発明の塗装木質基材の製造方法において、光ラジカル反応性塗料組成物の塗工方式としては、従来公知の方式が適用できるが、その中でも特に代表的なものとしては、ロールコート、グラビアコート、バーコート、フローコートなどが挙げられる。これらの塗工方法の内、ライン塗装を行う場合はナチュラルロールコーターやナチュラルリバースコーターによる塗工が好ましい。これらのコーターに利用できるロールは、ゴムロールやメタルロールなど従来公知のものが利用できるが、塗料温度を高温で保つために、温水加温設備や蒸気加温設備、又はオイル加温設備を備えたメタルロールを使用するのが特に好ましい。
【0044】
前述の塗工方式で塗工する際の塗布量は、硬化塗膜として30〜300μmが好ましく、50〜100μmがより好ましい。
【0045】
本発明の、塗装木質基材の製造方法において、照射工程に使用する活性エネルギー線とは紫外線、電子線、γ線の如き、電離性放射線や電磁波などであるが、一般の照射工程における活性エネルギー線としては紫外線が好ましい。紫外線を照射する場合、高圧水銀灯、エキシマランプ、メタルハライドランプ等を備えた公知の紫外線照射装置を使用することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって、本発明を具体的に説明する。エポキシアクリレートオリゴマー(A)及びウレタンアクリレート(B)は、公知慣用の合成法により調製した。下塗り塗料としては、表1、2に示す組成の各塗料組成物を調製した。オリゴマー成分を100℃で加熱、単官能アクリレートモノマー、光ラジカル重合開始剤を添加し、攪拌、混合することにより各塗料組成物を調製した。
【0047】
表1、2中の各成分は以下の通りである。
オリゴマーA:ビスフェノールA型エポキシアクリレート、平均分子量430。
オリゴマーB:水添ジフェニルメタンジイソシアネート及び3官能型ポリプロピレングリコール及びハイドロキシエチルアクリレートからなるウレタンアクリレート、平均分子量1800。
オリゴマーC:イソホロンジイソシアネート及び3官能型ポリプロピレングリコール及びハイドロキシエチルアクリレートからなるウレタンアクリレート、平均分子量1700。
オリゴマーD:イソホロンジイソシアネート及び2官能型ポリエチレングリコール及びハイドロキシエチルアクリレートからなるウレタンアクリレート、平均分子量1400。
光ラジカル重合開始剤:ダロキュア1173(チバスペシャリティーケミカルズ社製)。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
これらの塗料組成物を、生地研磨と、シーラー処理をした合板(オーク突き板貼りラワン合板、単板厚0.3mm)に、基材温60℃、塗料温度80℃に於いて、塗布量が50g/mになるようにそれぞれ塗工した。それぞれの紫外線照射は、40℃の条件で、100mJ/cmの紫外線照射量で硬化させた。得られた硬化皮膜に対し、#240の耐水研磨紙で研磨を行い、その後、それぞれ下記の上塗り塗料を塗工した。
【0051】
上塗り塗料としては、アクリレートオリゴマー成分として、ユニディックV−5508(大日本インキ化学工業:エポキシアクリレート)を50部、2官能アクリレートモノマーとして、トリメチロールプロパンジアクリレート(東亞合成:アロニックスM−220)を20部、光重合開始剤として、イルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ)を5部、ベンゾフェノンを1部、艶消し剤として、ミネックス#7(白石カルシウム)を15部、サイロイドE−50(グレースジャパン)を3部、ミクロンホワイト5000A(林化成)を15部配合し、攪拌、混合し、塗料を得た。
【0052】
前記した上塗り塗料を、材温40℃、塗料温度40℃において塗布量が10g/mになるようにそれぞれ塗工した。それぞれの紫外線照射は、常温で、160mJ/cmの紫外線照射量で硬化させた。得られた硬化皮膜に対してJAS寒熱試験と、JIS引っかき硬度試験(鉛筆法)の両試験を行った。JAS寒熱試験は同一基材に対し複数サイクル繰り返すことで性能の優劣を評価した。
【0053】
(耐クラック性能評価)
◎:割れ無し
○:1cm以下の割れが数本
△:1cm以上の割れが1〜5本
×:1cm以上の割れ複数
【0054】
引っかき硬度試験は、鉛筆で硬化塗膜を引っかく際に、塗膜に塑性変形(押し傷)が生じない硬度の上限で評価した。例えば、実施例1では、硬度2Hまでは塑性変形が生じず、硬度3Hで塑性変形が生じたことを意味する。評価結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明により、耐クラック性能と硬度を両立させた、塗装木質基材を得るための光ラジカル反応性塗料組成物、該塗料組成物を用いた塗装木質基材及びその製造方法を提供することができる。この結果、木質基材の使用の自由度が高まり、例えば、国内産の針葉樹等の比較的軟らかく従来床板に不向きであった木材も床板に採用する可能性が示唆される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールA骨格を有する数平均分子量300〜2500のエポキシアクリレートオリゴマー成分(A)と、水添ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネート、3官能型ポリプロピレングリコール、及び、水酸基含有(メタ)アクリレートを必須成分として反応させてなる数平均分子量800〜3000のウレタンアクリレートオリゴマー(B)、及び、光ラジカル重合開始剤を含有し、かつ反応性希釈剤を実質的に含有しないことを特徴とする光ラジカル反応性塗料組成物。
【請求項2】
塗料温度50℃に於ける粘度が10,000mPa・s以上であり、80℃に於ける粘度が100〜10,000mPa・sである請求項1に記載の光ラジカル反応性塗料組成物。
【請求項3】
単板厚0.03mm〜2.0mmの合板木質基材に、請求項1又は2に記載の光ラジカル反応性塗料組成物の硬化塗膜層を下塗り層として有することを特徴とする塗装木質基材。
【請求項4】
日本農林規格(JAS)の合板規格に定める寒熱繰り返しB試験に於いて、クラックが発生しない請求項3に記載の塗装木質基材。
【請求項5】
(1)単板厚0.03mm〜2.0mmの合板木質基材に、請求項1又は2に記載の光ラジカル反応性塗料組成物を、塗料温度50〜150℃で、且つ、塗料粘度100〜10,000mPa・sの条件で塗布する工程と、
(2)塗布後、合板木質基材上の塗料の温度が40℃以上で紫外線を照射する工程と、
(3)該塗料に紫外線照射後、240時間以内に中塗層塗料、または上塗層塗料を塗装する工程とを有することを特徴とする塗装木質基材の製造方法。


【公開番号】特開2007−254529(P2007−254529A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78615(P2006−78615)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】