説明

光伝送モジュール及びこれを採用した熱補助磁気記録ヘッド

【課題】光伝送モジュール及びこれを採用した熱補助磁気記録ヘッドを提供する。
【解決手段】第1設置溝を有するベースと、ベース上に設置されて、光源から照射された光の進行をガイドする光学素子と、ベースに結合設置されて光源と光学素子とを保護するものであって、第1設置溝に対向する位置に形成された第2設置溝を有するカバー部材と、第1及び第2設置溝内に結合されて、光学素子を通じて伝送された光エネルギー分布を変えることで、強化された近接場を形成するナノアパーチャとを備えることを特徴とする光伝送モジュールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化された近接場を具現できる構造の光伝送モジュール及びこれを採用した熱補助磁気記録ヘッドに係り、さらに詳細には、構成要素間の正確なアラインメントが可能な構造の光伝送モジュール及びこれを採用した熱補助磁気記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな科学技術分野で回折限界以下の高い分解能を有する光の伝送が要求されているところ、このために強化された近接場を具現できる技術が研究されつつある。
【0003】
特に、磁気記録ヘッド分野において、磁気記録の高密度化のための研究が持続的に進められている。一方、データを記録するために磁場のみを使用する磁気記録方式は、高密度化されるほど記録ビットの熱的不安定性が存在するため、高密度化に限界がある。これを克服するための方案として、光を照射して磁気記録媒体を局部的に加熱して、媒体の保磁力を一時的に低下させて記録を促進する光伝送モジュールが適用された熱補助磁気記録ヘッド(Heat−Assisted Magnetic Recording head、以下、HAMRヘッドという)が開示された。
【0004】
図1を参照すれば、開示された従来のHAMRヘッド10は、磁気記録部20と、磁気記録媒体40を加熱するための光伝送モジュール30とを備える。
【0005】
磁気記録部20は、磁気記録媒体40に磁気記録場を印加するための記録ポール21と、ヨーク23によって記録ポール21と磁気的に連結されて磁路Mを形成するリターンポール25とを備える。
【0006】
前記光伝送モジュール30は、近接場照明を通じて前記磁気記録媒体40の所定部位Aを加熱するためのものであって、光源31と、この光源31から照射された光を導波する光導波路35とを備える。ここで、光源31は、光を伝送する光ファイバー33と、この光ファイバー33から出射された光をコリメーティングする集積型球面レンズ34とを通じて前記光導波路35にカップリングされる。
【0007】
ここで、前記磁気記録媒体40は、前記HAMRヘッド10に対して矢印D方向に相対移動するものであり、前記加熱部位Aは、前記磁気記録媒体40の相対運動によって前記記録ポール21に位置する。したがって、前記記録ポール21が加熱された部分に対して垂直磁気記録を行うことによって、熱的不安定性が解消された状態で磁気記録を行うことができる。
【0008】
前記のように構成されたHAMRヘッドは、前記磁気記録部20に対する前記光伝送モジュール30を設置するに当たって、前記記録ポール21の外側に前記光導波路35を付着する構造を有する。したがって、空気軸受システムによって、前記磁気記録部20が前記磁気記録媒体40から浮上するとき、光導波路35と磁気記録媒体40との間隔を一定に維持できる。
【0009】
一方、高密度記録のために光強度分布を改善するナノアパーチャ37と前記光導波路35との間の精密な偏光アラインメントが要求される。また、光導波路35と前記ナノアパーチャ37とのみが前記磁気記録部20に結合され、光源31及び光ファイバー33が別途の構造物(図示せず)により設置される構造は、その構成が複雑なので、組立工数の増加及び製造コストの上昇などの問題を引き起こす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記問題点に鑑みて案出されたものであって、構成要素の間の正確な偏光アラインメントが可能であり、かつ単一ユニットで集積できる構造の光伝送モジュール及びこれを採用したHAMRヘッドを提供するところに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための本発明による光伝送モジュールは、第1設置溝を有するベースと、前記ベース上に設置されて、前記光源から照射された光の進行をガイドする光学素子と、前記ベースに結合設置されて前記光源と前記光学素子とを保護するものであって、前記第1設置溝に対向する位置に形成された第2設置溝を有するカバー部材と、前記第1及び第2設置溝内に結合されて、前記光学素子を通じて伝送された光エネルギー分布を変えることで、強化された近接場を形成するナノアパーチャとを備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記した目的を達成するための本発明によるHAMRヘッドは、磁気記録媒体に磁気記録場を印加するための記録ポールと、前記記録ポールと磁気的に連結されて磁路を形成するリターンポールとを備える磁気記録部と;前記磁気記録部に付着されるものであって、第1設置溝を有するベースと、前記ベース上に搭載される光源と、前記ベース上に設置されて前記光源から照射された光の進行をガイドする光学素子と、前記ベースに結合設置されて前記光源と前記光学素子とを保護するものであって、前記第1設置溝に対向する位置に形成された第2設置溝を有するカバー部材と、前記第1及び第2設置溝内に結合されて、前記光学素子を通じて伝送された光強度分布を変えることで、強化された近接場を形成するナノアパーチャとを備える光伝送モジュールとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明による光伝送モジュールは、光学素子とナノアパーチャとをベース及びカバー部材を利用して設置することによって、光学素子とナノアパーチャとの間の精巧な偏光アラインメントが可能である。また、光学素子の末端に直接にナノアパーチャを形成せず、光学素子とナノアパーチャとを個別に製造する構造を有するので、その製造工程が容易であるという利点がある。また、カバー部材の内部空間に光源及びモニター用の光検出器を設置するので、それらの汚染を低減させることができる。
【0014】
また、本発明によるHAMRヘッドは、前記した構造の単一ユニットからなる光伝送モジュールを磁気記録部に付着することによって、構成を単純化することができて、組立工数を減らし、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付された図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【0016】
図2は、本発明の実施形態による光伝送モジュールを示す断面図であり、図3は、図2の分離斜視図である。
【0017】
図面を参照すれば、本発明の実施形態による光伝送モジュール100は、ベース110と、このベース110上に設置されて光の進行をガイドする光学素子131及び光源133と、前記ベース110に結合設置されて前記光源133と前記光学素子131とを保護するカバー部材120と、強化された近接場を形成するナノアパーチャ140とを備える。ここで、光学素子131は、示されたような構造の光導波路132、または勾配率屈折レンズ(Graded Index lens;GRINレンズ)またはロッドなどのレンズから構成される。以下では、光導波路132を中心として説明し、光学素子131をレンズで構成した場合は省略する。
【0018】
さらに望ましくは、前記光源133から出射された光の一部を受光して、前記光源133の光出力をモニタリングするモニター用の光検出器135をさらに備える。
【0019】
前記ベース110は、シリコンなどの材質から構成されるものであって、その一側面に引き込み形成された第1設置溝111を有する。
【0020】
前記光源133は、前記ベース110上に搭載されるものであって、所定波長のビームを照射する。この光源133の代表的な例としては、所定偏光の光を照射するレーザーダイオードがある。
【0021】
前記光導波路132は、前記ベース110上に結合設置されるものであって、前記光源133から照射された光を前記ナノアパーチャ140側に導波する。前記光導波路132は、内部全反射によって入射された光を導波するものであって、前記ベース110及び前記カバー部材120の屈折率より相対的に高い屈折率を有する素材から構成される。
【0022】
光導波路132は、示されたように平板型構造からなり、所定方向、すなわち光導波路132の出射面132aの幅方向に偏光が強化されるようにする。本実施形態による光導波路132は、その端部にナノアパーチャ140構造が形成されていない単純構造からなっているので、その製作が容易であるという利点がある。
【0023】
前記カバー部材120は、前記ベース110の上部に結合設置されるものであって、前記光源133、前記光導波路132、及び前記モニター用の光検出器135を保護する。したがって、前記光源133の光出射面133a、133bや、前記モニター用の光検出器135の受光面135aなどが汚染されることを低減させうる。前記カバー部材120は、前記第1設置溝111に対向する位置に引き込み形成された第2設置溝121を備える。
【0024】
したがって、前記第1及び第2設置溝111、121の間に入射光の偏光方向を考慮してナノアパーチャ140を設置することによって、光導波路132と前記ナノアパーチャ140との間の正確な偏光アラインメントを具現できる。
【0025】
また、前記カバー部材120は、前記ベース110に結合される部分であるボンディングブリッジ125をさらに備える。このボンディングブリッジ125は、前記ベース110と対向する部分に前記光源133、前記光導波路132、及び前記モニター用の光検出器135を回避して突出形成される。
【0026】
ここで、前記ボンディングブリッジ125の間には、前記光導波路132が収容される第1空間部127と、前記光源133とモニター用の光検出器135とが収容される第2空間部129が形成される。したがって、前記ベース110上に前記カバー部材120を結合するとき、前記光源133及び前記モニター用の光検出器135の電気的配線が損傷されることを防止できる。
【0027】
前記ナノアパーチャ140は、前記第1設置溝111及び前記第2設置溝121内に結合される。このナノアパーチャ140は、前記光導波路132を通じて伝送された光エネルギー分布を変えて、強化された近接場を形成する。図4Aないし図4Cのそれぞれは、本発明による光伝送モジュールのナノアパーチャの実施形態を示す図面である。
【0028】
図4Aは、“C”型ナノアパーチャ141を示す図面である。本図面では、光導波路132を通じて伝送される光の偏光方向、すなわち電場の方向
【0029】
【数1】

【0030】
が前記出射面131aの幅方向に偏光されたことを例として示した。この際、示されたように“C”型ナノアパーチャ141を配置することによって、ナノアパーチャ141の狭幅の中央部分で電気双極子振動によって電場が強化されて、広い領域の光エネルギーを局所部位に集中できる。したがって、局部的に強化された光エネルギーの光を伝送できる。図面において、Lは、前記ナノアパーチャ141に入射される光の直径を示す。
【0031】
図4Bは、チョウネクタイ型ナノアパーチャ143を示したものであり、図4Cは、“X”型ナノアパーチャ145を示したものである。図4B及び図4Cのようにアパーチャを形成した場合は、アパーチャ143、145の頂点に形成される電場が大きく増加するので、図4Aのように光エネルギーを局所部位に集中できる。
【0032】
図5は、本発明の実施形態による熱補助磁気記録ヘッドを示す概略的な断面図である。
【0033】
図面を参照すれば、本発明の実施形態による熱補助磁気記録ヘッド(以下、HAMRヘッドという)は、磁気記録部200と、磁気記録媒体300を加熱するための光伝送モジュール100とを備える。
【0034】
磁気記録部200は、磁気記録媒体300に磁気記録場を印加するための記録ポール210と、ヨーク230によって記録ポール210と磁気的に連結されて磁路Mを形成するリターンポール220と、ヨーク230の周りを包み込む磁化コイル240とを備える。また、前記磁気記録部200は、通常の記録ヘッド(図示せず)を備えうる。この記録ヘッド自体は、広く知られているので、その詳細な説明は省略する。
【0035】
前記光伝送モジュール100は、近接場照明を通じて前記磁気記録媒体300の所定部位A’を加熱するためのものであって、単一ユニットから構成される。この光伝送モジュール100は、磁気記録部200に付着されるベース110、このベース110に設置された光学素子131、光源133、モニター用の光検出器135、カバー部材120、ナノアパーチャ140を備える。前記光伝送モジュール100は、図2ないし図4を参照して説明された光伝送モジュール100と実質的に同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0036】
前記磁気記録媒体300は、前記HAMRヘッドに対して矢印D’方向に相対移動するものであって、前記加熱部位Aは、前記磁気記録媒体300の相対運動によって前記記録ポール210に対向される。したがって、前記記録ポール210が加熱された部分に対して垂直磁気記録を行うことによって、熱的不安定性が解消された状態で磁気記録を行うことができる。
【0037】
前記のように構成されたHAMRヘッドは、前記磁気記録部200に対する前記光伝送モジュール100を設置するに当たって、前記記録ポール210の外側に前記ベース110の外側面が付着されている。したがって、空気軸受システムによって、前記磁気記録部200が前記磁気記録媒体300から浮上するとき、ナノアパーチャ140と磁気記録媒体300との間隔を一定に維持できる。
【0038】
前記した実施形態は、例示的なものに過ぎず、当技術分野の当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能である。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲内によって決定されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、磁気記録媒体関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】従来の熱補助磁気記録ヘッドを示す概略的な図面である。
【図2】本発明の実施形態による光伝送モジュールを示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態による光伝送モジュールを示す分離斜視図である。
【図4A】本発明による光伝送モジュールのナノアパーチャの実施形態を示す図面である。
【図4B】本発明による光伝送モジュールのナノアパーチャの実施形態を示す図面である。
【図4C】本発明による光伝送モジュールのナノアパーチャの実施形態を示す図面である。
【図5】本発明の実施形態による熱補助磁気記録ヘッドを示す概略的な断面図である。
【符号の説明】
【0041】
100 光伝送モジュール
110 ベース
111 第1設置溝
120 カバー部材
121 第2設置溝
125 ボンディングブリッジ
127 第1空間部
129 第2空間部
131 光学素子
132 光導波路
132a 出射面
133 光源
133a、133b 光出射面
135 モニター用の光検出器
135a 受光面
140 ナノアパーチャ
141 “C”型ナノアパーチャ
143 チョウネクタイ型ナノアパーチャ
145 “X”型ナノアパーチャ
200 磁気記録部
210 記録ポール
220 リターンポール
230 ヨーク
240 磁化コイル
300 磁気記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1設置溝を有するベースと、
前記ベース上に搭載される光源と、
前記ベース上に設置されて、前記光源から照射された光の進行をガイドする光学素子と、
前記ベースに結合設置されて前記光源と前記光学素子とを保護するものであって、前記第1設置溝に対向する位置に形成された第2設置溝を有するカバー部材と、
前記第1及び第2設置溝内に結合されて、前記光学素子を通じて伝送された光エネルギー分布を変えることで、強化された近接場を形成するナノアパーチャ、とを備えることを特徴とする光伝送モジュール。
【請求項2】
前記ベースと前記カバー部材との間に介在するものであって、前記光源から出射された光の一部を受光して、前記光源の光出力をモニタリングするモニター用の光検出器をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光伝送モジュール。
【請求項3】
前記カバー部材は、
前記ベースに結合される部分であって、前記ベースと対向する部分に前記光源、前記光学素子、及び前記モニター用の光検出器を回避して突設されたボンディングブリッジをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の光伝送モジュール。
【請求項4】
前記光学素子は、
入射光を導波する光導波路またはレンズからなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項に記載の光伝送モジュール。
【請求項5】
磁気記録媒体に磁気記録場を印加するための記録ポールと、前記記録ポールと磁気的に連結されて磁路を形成するリターンポールとを備える磁気記録部と;
前記磁気記録部に付着されるものであって、第1設置溝を有するベースと、前記ベース上に搭載される光源と、前記ベース上に設置されて前記光源から照射された光の進行をガイドする光学素子と、前記ベースに結合設置されて前記光源と前記光学素子とを保護するものであって、前記第1設置溝に対向する位置に形成された第2設置溝を有するカバー部材と、前記第1及び第2設置溝内に結合されて、前記光学素子を通じて伝送された光強度分布を変えることで、強化された近接場を形成するナノアパーチャとを備える光伝送モジュールとを備えたことを特徴とする熱補助磁気記録ヘッド。
【請求項6】
前記光学素子は、
入射光を導波する光導波路またはレンズからなることを特徴とする請求項5に記載の熱補助磁気記録ヘッド。
【請求項7】
前記光伝送モジュールは、
前記ベースと前記カバー部材との間に介在するものであって、前記光源から出射された光の一部を受光して、前記光源の光出力をモニタリングするモニター用の光検出器をさらに備えることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の熱補助磁気記録ヘッド。
【請求項8】
前記カバー部材は、
前記ベースに結合される部分であって、前記ベースと対向する部分に前記光源、前記光学素子、及び前記モニター用の光検出器を回避して突設されたボンディングブリッジをさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の熱補助磁気記録ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−102993(P2007−102993A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253139(P2006−253139)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】