説明

光偏向素子及び光偏向方法

【課題】二次元フォトニック結晶との光結合効率が高く、二次元フォトニック結晶のスーパープリズム効果により広い偏光角度で入射光を偏向することができる光偏向素子及び光偏光方法を提供する。
【解決手段】上部反射ミラー18と下部反射ミラー20とは、反射面が互いに対向するように離間配置されている。二次元フォトニック結晶14は、二次元周期構造を有する板状体であり、上部反射ミラー18と下部反射ミラー20との間に挿入され、下部反射ミラー20と略平行に配置されている。所定波長の入射光Linを下部反射ミラー20に対して垂直に近い角度で入射させると、入射光Linは上部反射ミラー18と下部反射ミラー20との間で繰り返し反射され、二次元フォトニック結晶14を複数回通過する。これにより光偏光素子全体として見たときに、光波の伝搬方向が大幅に変換され、回折光Ldifが入射光Linが入射した方向とは異なる方向に射出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光偏向素子及び光偏向方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトニック結晶は、その内部に周期的な屈折率分布を有する構造体である。フォトニック結晶では、特定波長範囲の光の存在が許されない「フォトニックバンドギャップ」が現れる。このバンド端での分散を利用すると、スネルの法則に従った界面での通常の屈折とは全く異なる概念の屈折が得られる。即ち、フォトニック結晶による屈折効果は、入射波長、入射角度等、種々の要因により大幅に変化する。例えば、三次元フォトニック結晶を用いて、入射波長が1%変化しただけで、光線の屈折角が50°も変化するプリズムが得られている(非特許文献1)。この屈折効果は、「スーパープリズム」効果と称されている。
【0003】
また、強誘電体から構成された二次元フォトニック結晶を用いて、印加する電圧に応じて強誘電体の屈折率を変化させて、フォトニック結晶から射出される走査光線の方向を変化させる光走査装置が提案されている(特許文献1参照)。フォトニック結晶を用いた光偏向器は、ポリゴンミラーやMEMSミラー等を用いた機械式の光偏向器と比較すると、精密な動作制御を行う必要がない、動作音が発生しない、走査角度(偏向角度)を広くできる、という利点を有している。
【0004】
【非特許文献1】小坂英男等、ジャーナル・オブ・ライトウエイブ・テクノロジー, 17巻, No.11, p2032〜2038, 1999年11月
【特許文献1】特開2006−178363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された光走査装置では、二次元フォトニック結晶を、面内方向に光を伝搬するスラブ型導波路として用いているため、端面から光を入射させなければならず、光結合効率が低くなるという問題があった。
【0006】
一方、光偏光素子に応用可能なフォトニック結晶としては、二次元周期構造を有する二次元フォトニック結晶の外に、三次元周期構造を有する三次元フォトニック結晶も存在する。しかしながら、三次元フォトニック結晶は製造工程が煩雑であり高価である。従って、光偏光素子等の汎用用途には、二次元フォトニック結晶の方が好適である。
【0007】
本発明は、上記問題を鑑みなされたものであり、本発明の目的は、二次元フォトニック結晶との光結合効率が高く、二次元フォトニック結晶のスーパープリズム効果により広い偏光角度で入射光を偏向することができる光偏向素子及び光偏光方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の光偏光素子は、入射光を反射する第1反射面を備えた第1反射板と、入射光を反射する第2反射面を備え、前記第2反射面が前記第1反射面に対向するように配置された第2反射板と、前記第1反射板と前記第2反射板との間に、前記第1反射板と平行に配置され、第1媒体で構成された基板内に前記第1媒体とは屈折率の異なる柱状の第2媒体が二次元周期的に配列された二次元フォトニック結晶と、を備えて構成されている。
【0009】
本発明の光偏光方法は、本発明の光偏向素子を用いた光偏向方法であって、前記第1反射板及び前記第2反射板の何れか一方に入射された入射光が、前記第1反射板と前記第2反射板との間で反射されて前記二次元フォトニック結晶を複数回通過し、前記二次元フォトニック結晶により回折されて射出されるように、前記入射光を数度の入射角で入射させることを特徴としている。
【0010】
上記の光偏光素子は、前記第1反射板と前記二次元フォトニック結晶との間に、電気光学効果により屈折率が変化する強誘電体層を更に挿入した構成とすることができる。この場合は、上述したように前記入射光を数度の入射角で入射させると共に、前記強誘電体層に電界を印加して電気光学効果により屈折率を変化させ、前記二次元フォトニック結晶に入射する入射光の角度を変化させて、前記回折光が射出される方向を変化させる。
【0011】
また、上記の光偏光素子は、前記第2反射面の前記第1反射面に対する傾きが変化するように、前記第2反射板が回転可能に配置された構成とすることができる。この場合には、上述したように前記入射光を数度の入射角で入射させると共に、前記第2反射板を回転させ、前記第2反射面の前記第1反射面に対する傾きを変化させて、前記回折光が射出される方向を変化させる。
【0012】
また、上記の光偏光素子は、前記二次元フォトニック結晶に隣接して、前記二次元フォトニック結晶を変形させる圧電素子が更に配置された構成とすることができる。この場合には、上述したように前記入射光を数度の入射角で入射させると共に、前記圧電素子により前記二次元フォトニック結晶を変形させて、前記回折光が射出される方向を変化させる。
【0013】
更に、上記の光偏光素子は、前記第1反射面と前記第2反射面との距離が、入射光の波長に対し定在波が生じる距離となるように、前記第1反射板と前記第2反射板とを離間配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光偏向素子及び光偏光方法は、二次元フォトニック結晶との光結合効率が高く、二次元フォトニック結晶のスーパープリズム効果により広い偏光角度で入射光を偏向することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0016】
(基本的な動作原理)
図1は本発明の光偏光素子の基本的な動作原理を説明するための説明図である。
本発明の光偏光素子は、少なくとも、二次元フォトニック結晶14、上部反射ミラー18、及び下部反射ミラー20を備えて構成されている。二次元フォトニック結晶14は、二次元周期構造を有する板状体である。上部反射ミラー18と下部反射ミラー20とは、反射面同士が互いに対向するように離間して配置されている。二次元フォトニック結晶14は、上部反射ミラー18と下部反射ミラー20との間に挿入され、下部反射ミラー20と略平行に配置されている。
【0017】
本発明の光偏光素子では、所定波長の入射光Linを下部反射ミラー20に対して垂直に近い角度で入射させる。即ち、入射角が数°〜十数°となるように、入射光Linを下部反射ミラー20に入射させる。入射された入射光Linは、下部反射ミラー20により反射される。反射光は、二次元フォトニック結晶14に対し面入射し、二次元フォトニック結晶14を通過して、上部反射ミラー18に到達する。上部反射ミラー18に照射された光は、上部反射ミラー18により反射される。反射光は、再度、二次元フォトニック結晶14を通過して、下部反射ミラー20に到達する。
【0018】
入射光Linは、上部反射ミラー18と下部反射ミラー20との間で、上述した通り、繰り返し反射される。繰り返し反射される間に、入射光Linは、二次元フォトニック結晶14を複数回通過する。入射光Linは、二次元フォトニック結晶14に対し、常に面方向に結合するように動作する。即ち、二次元フォトニック結晶14は、その二次元周期構造によって入射された光を回折する。
【0019】
しかしながら、二次元フォトニック結晶14を1回通過するだけでは、光波の伝搬方向を変換させる効果(回折効果)は小さい。二次元フォトニック結晶14を複数回通過することで、光偏光素子全体として見たときに、光波の伝搬方向(エネルギーの向き)が大幅に変換される。これにより回折光Ldifが、入射光Linが入射された方向(又は入射光Linが反射される方向)とは異なる方向に射出される。
【0020】
上述したように、上部反射ミラー18と下部反射ミラー20との間で、入射光Linを何度も反射させて、入射光Linが二次元フォトニック結晶14を複数回通過するように構成することで、スラブ型光導波路のように端面から入射させる場合と比べて、二次元フォトニック結晶14への光結合効率を増加させることができる。
【0021】
(第1の実施の形態)
<光偏光素子の概略構成>
まず、本発明の第1の実施の形態に係る光偏光素子の概略構成を説明する。
図2は第1の実施の形態に係る光偏光素子の斜視図である。図3は図2のA-A断面図である。第1の実施の形態に係る光偏光素子は、平面視が略矩形状の基板10を備えている。基板10上には、下部スペーサ層12、二次元フォトニック結晶14、上部スペーサ層16、及び上部反射ミラー18が、基板側からこの順に積層されて、角柱状のメサが形成されている。メサの断面形状は、基板10よりも一回り小さい矩形状である。また、基板10の裏面側には、裏面を覆うように下部反射ミラー20が形成されている。上部反射ミラー18及び下部反射ミラー20以外は、入射光Linに対し透明な材料で構成されている。
【0022】
上部反射ミラー18及び下部反射ミラー20の各々は、屈折率の異なる誘電体を交互に積層した誘電体多層膜で構成された多層膜反射鏡である。上部反射ミラー18と下部反射ミラー20とは反射面が対向するように、平行に配置されている。下部スペーサ層12及び上部スペーサ層16は、メサの周辺部に枠状に形成されている。メサの中央部では、二次元フォトニック結晶14の上方及び下方には、キャビティ(空洞部)が形成されている。二次元フォトニック結晶14の構造については後述する
【0023】
本実施の形態では、基板10はシリコン(Si)基板であり、下部スペーサ層12及び上部スペーサ層16は酸化シリコン(SiO)で形成されている。二次元フォトニック結晶14もシリコン(Si)基板を備えている。上部反射ミラー18と下部反射ミラー20の各々は、酸化シリコン(SiO)と酸化チタン(TiO)とを交互に積層した誘電体多層膜で構成されている。誘電体多層膜としては、例えば、厚さ263nmのSiO層と厚さ154nmのTiO層とを交互に3組ほど積層したものを用いることができる。
【0024】
上部反射ミラー18と下部反射ミラー20とは、反射面間の距離が、入射光Linの波長に対し定在波が生じる距離となるように離間配置することが好ましい。即ち、入射光Linの波長がλ(例えば、1550nm)の場合には、基板10の厚さをLsub、二次元フォトニック結晶14の厚さをLpc、二次元フォトニック結晶14の上下に存在する空気層の厚さをLair、基板10の屈折率をnsub、二次元フォトニック結晶14の屈折率をnpc、とした場合に、下記関係式を満たすように、上部反射ミラー18と下部反射ミラー20との離間距離(Lpc+Lair)を定めることができる。
pcpc+nsubsub+Lair=m(λ/2) (mは1以上の整数である)
【0025】
なお、空気層の厚さLairは、二次元フォトニック結晶14と上部反射ミラー18との間に存在する空気層の厚さと、二次元フォトニック結晶14と下部反射ミラー20との間に存在する空気層の厚さと、を足した総和である。また、各層の厚さは、波長や材料の屈折率に応じて、上記関係式を満たすように、適宜設計することができる。
【0026】
次に、二次元フォトニック結晶の構造について説明する。二次元フォトニック結晶は、第1媒体で構成された基板内に第1媒体とは屈折率の異なる柱状の第2媒体が二次元周期的に配列されたフォトニック結晶である。柱状の第2媒体は、円柱状でもよく、断面が六角形の角柱状でもよい。二次元周期配列は、正方格子配列でもよく、三角格子配列でもよい。
【0027】
図4(A)は二次元フォトニック結晶14の平面図であり、図4(B)は図4(A)のB-B断面図である。本実施の形態では、二次元フォトニック結晶14として、三角格子状に配列された複数の空気ロッド(貫通孔)14aを有するシリコン基板14bを用いている。このような二次元フォトニック結晶14は、シリコン基板14bに、所定直径の貫通孔14aを形成して得ることができる。
【0028】
本実施の形態では、第1媒体はシリコンであり、第2媒体は空気である。また、約0.5mm四方のシリコン基板14bに、16個の空気ロッド14aが、三角格子状に配列されている。シリコン基板14bの厚さは、0.1μm〜0.2μmとすることができる。
【0029】
<光偏光素子の製造方法>
次に、図2に示す光偏光素子の製造方法について説明する。まず、Si基板10を準備する。次に、Si基板10上に、スパッタリングにより下部スペーサ層12となるSiO膜を堆積する。この下部スペーサ層12上に、スパッタリングにより二次元フォトニック結晶14となるSi膜を堆積する。二次元フォトニック結晶14となるSi膜に、放射線描画装置でフォトニック結晶パターンを描画する。このとき、二次元フォトニック結晶14にアライメント用のマークも付しておく。二次元フォトニック結晶14となるSi膜をCF等でドライエッチングして貫通孔14aを形成する。
【0030】
次に、二次元フォトニック結晶14上に、スパッタリングにより上部スペーサ層16となるSiO膜を堆積する。その後、バッファードフッ酸に浸漬して、枠状の下部スペーサ層12及び枠状の上部スペーサ層16を残し、これ以外のSiO膜を溶解して水洗する。これにより、二次元フォトニック結晶14の上下に空間が形成される。次いで、Si基板10の裏面に、SiO膜とTiO膜とをスパッタリングにより交互に堆積した誘電体多層膜である下部反射ミラー20を形成する。
【0031】
一方、別のSi基板上に、SiO膜とTiO膜とをスパッタリングにより交互に堆積して誘電体多層膜である上部反射ミラー18を形成する。上部反射ミラー18を、ミラー側を下にして、上部スペーサ層16上に重ねて外周側を接着する。最後に、レジストを厚めに塗布して、基板10上の不要なSiO膜、Si膜、及び誘電体多層膜をエッチングにより除去してメサを形成し、図2に示す光偏光素子が完成する。
【0032】
<光偏光素子の偏光動作>
次に、第1の実施の形態に係る光偏光素子の偏光動作を説明する。
図5は光偏光素子の偏向作用の動作原理を説明するための説明図である。第1の実施の形態に係る光偏光素子では、基本的な動作原理として説明したように、入射光Linを下部反射ミラー20に対して垂直に近い角度で入射させる。入射光Linは、上部反射ミラー18と下部反射ミラー20との間で、繰り返し反射される。
【0033】
繰り返し反射される間に、入射光Linは、二次元フォトニック結晶14を複数回通過する。二次元フォトニック結晶14は、その二次元周期構造により入射(交差)する光を回折する。二次元フォトニック結晶14を複数回通過することで、光波の伝搬方向が大幅に変換される。これにより回折光Ldifが、入射光Linが入射された方向(又は入射光Linが反射される方向)とは異なる方向に射出される。
【0034】
図5に示すように、入射光Linの下部反射ミラー20に対する入射角を変更する。前の入射光Lin(1)より小さい入射角で、次の入射光Lin(2)を入射させる。入射光Lin(1)に応じて回折光Ldif(1)が射出され、入射光Lin(2)に応じて回折光Ldif(2)が射出される。このように入射光Linの下部反射ミラー20に対する入射角を変化させることで、回折光Ldifの出射方向が変化する。
【0035】
図6(A)及び(B)は波数ベクトル間の関係を表す波数ベクトル図である。光子の運動量保存則から、位相整合した状態では、関係する光波の波数ベクトルを合成した波数ベクトル図は閉じた三角形となる。従って、入射光Linの波数が変動すると、射出される回折光Ldifの波数も変動する。二次元フォトニック結晶の波数ベクトルをKとする。フォトニック結晶では、群速度が大幅に変化する「スーパープリズム効果」が発現する。このため、波数ベクトルKの「向き」や「大きさ」は、入射光Linの入射角に応じて大幅に変化する。
【0036】
図6(A)及び(B)に示すように、入射光Lin(1)の波数ベクトルをki、入射光Lin(2)の波数ベクトルをkinとし、回折光Ldif(1)の波数ベクトルをkout、回折光Ldif(2)の波数ベクトルをkoutとする。入射光Linの波数ベクトルがkiからkinに変化すると、光子の運動量保存則から、二次元フォトニック結晶の波数ベクトルKの変化に応じて、回折光Ldifの波数ベクトルがkoutからkoutに大きく変化する。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態では、入射光Linの入射角が少し変化しただけでも、二次元フォトニック結晶のスーパープリズム効果により、回折光Ldifの出射方向(偏向方向)が大幅に変化する。これにより、広い偏向角度で偏向可能な光偏向素子を得ることができる。
【0038】
(第2の実施の形態)
<光偏光素子の概略構成>
図7は本発明の第2の実施の形態に係る光偏光素子の斜視図である。図8は図7のC-C断面図である。第2の実施の形態に係る光偏光素子は、二次元フォトニック結晶14と上部反射ミラー18との間に、上部スペーサ層16に代えて強誘電体層22を積層した以外は、第1の実施の形態と同じ構成である。従って、同じ構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0039】
強誘電体層22は、入射光Linに対し透明であり、電気光学効果により屈折率が変化する強誘電体材料により構成されている。このような強誘電体材料としては、ニオブ酸リチウム(LiNbO)やPLZTを用いることができる。PLZTは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:PbZrO−PbTiO)のPb(鉛)の一部をLa(ランタン)で置換して得られる強誘電性多結晶体である。その組成は(Pb1-xLax)(Zr1-yTiy)で表される。一般には、x=0.07〜0.12、y=0.35の組成物が汎用されている。
【0040】
本実施の形態では、強誘電体層22以外の各部材の材料、大きさ、厚さは、第1の実施の形態と同様である。強誘電体層22の厚さは約0.1μmである。第2の実施の形態に係る光偏光素子には、図示しない一対の電極が設けられている。これら一対の電極間に電圧を印加することで電界が発生し、強誘電体層22に電界が印加されて、電気光学効果により強誘電体層22の屈折率が変動する。電界強度の大きい領域に、二次元フォトニック結晶14及び強誘電体層22が配置されるように、電界を発生させることが好ましい。
【0041】
<光偏光素子の製造方法>
次に、図7に示す光偏光素子の製造方法について説明する。二次元フォトニック結晶14を形成する工程までは、第1の実施の形態と同様にして、貫通孔14aを備えた二次元フォトニック結晶14を形成する。その後、バッファードフッ酸に浸漬して、枠状の下部スペーサ層12を残し、これ以外のSiO膜を溶解して水洗する。これにより、二次元フォトニック結晶14の下方に空間が形成される。次いで、Si基板10の裏面に、SiO膜とTiO膜とをスパッタリングにより交互に堆積した誘電体多層膜である下部反射ミラー20を形成する。
【0042】
次に、強誘電体層22上に上部反射ミラー18が形成された別の基板を用意する。まず、強誘電体層22となる強誘電体薄膜を成膜する。強誘電体薄膜の堆積方法には、ゾルゲル法などの溶液塗布法、スパッタなどの物理堆積法、及びCVDといった化学堆積法がある。いずれの方法も最初に非晶質の強誘電体薄膜を堆積した後に、熱処理による結晶化を行う方法である。次いで、強誘電体層22上に、SiO膜とTiO膜とをスパッタリングにより交互に堆積した誘電体多層膜である上部反射ミラー18を形成する。次いで、電界を印加するための電極(図示せず)を形成する。
【0043】
別に用意した基板を、強誘電体層22側を下にして、二次元フォトニック結晶14上に重ねて外周側を接着する。最後に、レジストを厚めに塗布して、基板10上の不要なSiO膜、Si膜、強誘電体薄膜、及び誘電体多層膜をエッチングにより除去してメサを形成し、図7に示す光偏光素子が完成する。
【0044】
<光偏光素子の偏光動作>
次に、第2の実施の形態に係る光偏光素子の偏光動作を説明する。
図9は光偏光素子の偏向作用の動作原理を説明するための説明図である。第2の実施の形態に係る光偏光素子では、基本的な動作原理として説明したように、入射光Linを下部反射ミラー20に対して垂直に近い角度で入射させる。入射光Linは、上部反射ミラー18と下部反射ミラー20との間で、繰り返し反射される。
【0045】
繰り返し反射される間に、入射光Linは、二次元フォトニック結晶14及び強誘電体層22を複数回通過する。二次元フォトニック結晶14は、その二次元周期構造により入射(交差)する光を回折する。また、強誘電体層22は、通過時の屈折率で、入射した光波の伝搬方向を変化させる。従って、二次元フォトニック結晶14及び強誘電体層22を複数回通過することで、光波の伝搬方向が大幅に変換される。これにより回折光Ldifが、入射光Linが入射された方向(又は入射光Linが反射される方向)とは異なる方向に射出される。
【0046】
図9に示すように、入射光Linの入射角は一定とする。図10に示すように、電界の印加により強誘電体層22の屈折率を変化させる。強誘電体層22の屈折率が変化する前は、実線で示すように、二次元フォトニック結晶14及び強誘電体層22を入射光Lin(1)が通過する。一方、強誘電体層22の屈折率が変化した後は、点線で示すように、二次元フォトニック結晶14及び強誘電体層22を入射光Lin(2)が通過する。
【0047】
電界の印加により強誘電体層22の屈折率が増加しており、強誘電体層22に入射したときに、入射光Lin(2)の光路は、入射光Lin(1)の光路よりも折り曲げられる。入射光Lin(1)に応じて回折光Ldif(1)が射出され、入射光Lin(2)に応じて回折光Ldif(2)が射出される。このように強誘電体層22の屈折率を変化させることで、強誘電体層22を通過する入射光Linの光路が変更され、回折光Ldifの出射方向が変化する。
【0048】
図11(A)及び(B)は波数ベクトル間の関係を表す波数ベクトル図である。光子の運動量保存則から、位相整合した状態では、関係する光波の波数ベクトルを合成した波数ベクトル図は閉じた三角形となる。二次元フォトニック結晶の波数ベクトルKは、スーパープリズム効果により、入射光Linの光路に応じて大幅に変化する。
【0049】
入射光Lin(1)の波数ベクトルをki、入射光Lin(2)の波数ベクトルをkinとし、回折光Ldif(1)の波数ベクトルをkout、回折光Ldif(2)の波数ベクトルをkoutとする。入射光Linの波数ベクトルがkiからkinに変化すると、光子の運動量保存則から、二次元フォトニック結晶の波数ベクトルKの変化に応じて、回折光Ldifの波数ベクトルがkoutからkoutに大きく変化する。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態では、外部電場により強誘電体層22の屈折率が変化する。強誘電体層22の屈折率変化によって、強誘電体層22を通過する入射光Linの光路が変化する。入射光Linの光路が少し変化しただけでも、二次元フォトニック結晶のスーパープリズム効果により、回折光Ldifの出射方向(偏向方向)が大幅に変化する。これにより、広い偏向角度で偏向可能な光偏向素子を得ることができる。
【0051】
(第3の実施の形態)
<光偏光素子の概略構成>
図12は本発明の第3の実施の形態に係る光偏光素子の斜視図である。図13は図12のD-D断面図である。第3の実施の形態に係る光偏光素子は、固定配置された上部反射ミラー18に代えて、上部回転反射ミラー18Rを回転可能に配置すると共に、二次元フォトニック結晶14と上部回転反射ミラー18Rとの間の上部スペーサ層16を取り除いた以外は、第1の実施の形態と同じ構成である。従って、同じ構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0052】
上部回転反射ミラー18Rは、メサ断面と同じ大きさの平面視が略矩形状の板状体である。上部回転反射ミラー18Rには、図示しない取り付け部材により、対向する一対の側面の各々に一対の回転軸24が取り付けられている。一方、基板10上には、軸受け部を備えた柱状の保持部材26が2本(一対)立設されている。一対の保持部材26は、メサを挟んで対向するように配置されている。回転軸24及び保持部材26は、光路を避けて配置されている。
【0053】
一対の回転軸24の各々は、対応する保持部材26の軸受け部に嵌め込まれている。こうして、上部回転反射ミラー18Rは、一対の保持部材26によって、回転軸24の周りに(矢印E方向に)回転可能に保持されている。回転軸24には、回転軸を僅かな角度ずつ回転させるモータ28が取り付けられている。このようなモータ28としては、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)技術を用いた小型モータを用いることが好ましい。
【0054】
本実施の形態では、上部回転反射ミラー18Rは、酸化シリコン(SiO)と酸化チタン(TiO)を交互に積層した誘電体多層膜で構成されている。上部回転反射ミラー18R以外の各部材の材料、大きさ、厚さは、第1の実施の形態と同様である。回転軸24及び保持部材26は、どのような材料で構成されていても良いが、半導体製造技術を適用して形成する場合には、下部スペーサ層12と同様に酸化シリコン(SiO)で形成することが好ましい。
【0055】
<光偏光素子の製造方法>
次に、図12に示す光偏光素子の製造方法について説明する。二次元フォトニック結晶14を形成する工程までは、第1の実施の形態と同様にして、貫通孔14aを備えた二次元フォトニック結晶14を形成する。その後、バッファードフッ酸に浸漬して、枠状の下部スペーサ層12を残し、これ以外のSiO膜を溶解して水洗する。これにより、二次元フォトニック結晶14の下方に空間が形成される。次いで、Si基板10の裏面に、SiO膜とTiO膜とをスパッタリングにより交互に堆積した誘電体多層膜である下部反射ミラー20を形成する。
【0056】
次に、レジストを厚めに塗布して、基板10上の不要なSiO膜、Si膜をエッチングにより除去してメサを形成する。エッチングにより露出した基板10上に、軸受け部を備えた柱状の保持部材26を立設する。一方、別の基板上に、SiO膜とTiO膜とをスパッタリングにより交互に堆積した誘電体多層膜である上部回転反射ミラー18Rを形成する。上部回転反射ミラー18Rに、回転軸24を取り付ける。
【0057】
回転軸24を備えた上部回転反射ミラー18Rを、軸受け部を備えた柱状の保持部材26に回転可能に取り付ける。そして、モータ28を回転軸24に取り付ける。これにより、図12に示す光偏光素子が完成する。なお、上部回転反射ミラー18Rとして、日本信号社製の「エコスキャン(商品名)」等、市販のMEMSミラーデバイスを用いることもできる。
【0058】
<光偏光素子の偏光動作>
次に、第3の実施の形態に係る光偏光素子の偏光動作を説明する。
図14は光偏光素子の偏向作用の動作原理を説明するための説明図である。第3の実施の形態に係る光偏光素子では、基本的な動作原理として説明したように、入射光Linを下部反射ミラー20に対して垂直に近い角度で入射させる。入射光Linは、上部回転反射ミラー18Rと下部反射ミラー20との間で、繰り返し反射される。
【0059】
繰り返し反射される間に、入射光Linは、二次元フォトニック結晶14を複数回通過する。二次元フォトニック結晶14は、その二次元周期構造により入射(交差)する光を回折する。また、上部回転反射ミラー18Rの位置に応じて、入射した光波の伝搬方向(反射方向)を変化させる。従って、二次元フォトニック結晶14を複数回通過することで、光波の伝搬方向が大幅に変換される。これにより回折光Ldifが、入射光Linが入射された方向(又は入射光Linが反射される方向)とは異なる方向に射出される。
【0060】
図14に示すように、入射光Linの入射角は一定とする。図15に示すように、モータ等の機械的機構により、上部回転反射ミラー18Rを回転軸24の周りに回転させて、上部回転反射ミラー18Rの傾きを変化させる。上部回転反射ミラー18Rの傾きが変化する前は、実線で示すように、二次元フォトニック結晶14を入射光Lin(1)が通過する。一方、上部回転反射ミラー18Rの傾きが変化した後は、点線で示すように、二次元フォトニック結晶14を入射光Lin(2)が通過する。
【0061】
上部回転反射ミラー18Rが、回転軸24周りに矢印E方向(図15では左回り)に回転して、上部回転反射ミラー18Rの傾きが変化する。これにより、入射光Linの上部回転反射ミラー18Rへの入射角(=反射角)が増加する。入射光Lin(2)が二次元フォトニック結晶14と交差する角度は、入射光Lin(1)が二次元フォトニック結晶14と交差する角度よりも大きくなる。入射光Lin(1)に応じて回折光Ldif(1)が射出され、入射光Lin(2)に応じて回折光Ldif(2)が射出される。このように上部回転反射ミラー18Rを回転させてその位置を変化させることで、二次元フォトニック結晶14を通過する入射光Linの光路が変更され、回折光Ldifの出射方向が変化する。
【0062】
図16(A)及び(B)は波数ベクトル間の関係を表す波数ベクトル図である。光子の運動量保存則から、位相整合した状態では、関係する光波の波数ベクトルを合成した波数ベクトル図は閉じた三角形となる。二次元フォトニック結晶の波数ベクトルKは、スーパープリズム効果により、入射光Linの光路に応じて大幅に変化する。
【0063】
入射光Lin(1)の波数ベクトルをki、入射光Lin(2)の波数ベクトルをkinとし、回折光Ldif(1)の波数ベクトルをkout、回折光Ldif(2)の波数ベクトルをkoutとする。入射光Linの波数ベクトルがkiからkinに変化すると、光子の運動量保存則から、二次元フォトニック結晶の波数ベクトルKの変化に応じて、回折光Ldifの波数ベクトルがkoutからkoutに大きく変化する。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態では、上部回転反射ミラー18Rの回転という機械的変動を加えることにより、上部回転反射ミラー18Rの傾きが変化する。上部回転反射ミラー18Rの傾きの変化によって、二次元フォトニック結晶14を通過する入射光Linの光路が変化する。入射光Linの光路が少し変化しただけでも、二次元フォトニック結晶のスーパープリズム効果により、回折光Ldifの出射方向(偏向方向)が大幅に変化する。これにより、広い偏向角度で偏向可能な光偏向素子を得ることができる。
【0065】
(第4の実施の形態)
<光偏光素子の概略構成>
図17は本発明の第4の実施の形態に係る光偏光素子の斜視図である。図18は図17のF-F断面図である。第4の実施の形態に係る光偏光素子は、二次元フォトニック結晶14と上部反射ミラー18との間の上部スペーサ層16を取り除くと共に、上部反射ミラー18上に圧電素子30を載置した以外は、第1の実施の形態と同じ構成である。従って、同じ構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0066】
圧電素子30は、メサ断面と同じ大きさの平面視が略矩形状の板状体である。圧電素子とは、一般に、加えられた力を電圧に変換、又は印加された電圧を力に変換する「圧電効果」を利用した受動素子であり、ピエゾ素子と通称されている。本実施の形態では、圧電素子30として、電圧を加えると微小に伸縮する電歪素子が用いられる。圧電素子30には、図示しない一対の電極が設けられている。これら一対の電極間に電圧を印加することで、圧電素子30が積層方向に伸縮して、下方に配置された二次元フォトニック結晶14を変形させる。
【0067】
上述した圧電素子30としては、PZT、PLZT等の圧電セラミクスや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、ナイロン11(ポリアミド)、ビニリデンシアナイド系共重合体などの圧電性高分子などの圧電材料を用いた圧電素子が挙げられる。PZTは、チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO−PbTiO)の略称である。
【0068】
本実施の形態では、圧電素子30以外の各部材の材料、大きさ、厚さは、第1の実施の形態と同様である。
【0069】
<光偏光素子の製造方法>
次に、図17に示す光偏光素子の製造方法について説明する。二次元フォトニック結晶14を形成する工程までは、第1の実施の形態と同様にして、貫通孔14aを備えた二次元フォトニック結晶14を形成する。その後、バッファードフッ酸に浸漬して、枠状の下部スペーサ層12を残し、これ以外のSiO膜を溶解して水洗する。これにより、二次元フォトニック結晶14の下方に空間が形成される。次いで、Si基板10の裏面に、SiO膜とTiO膜とをスパッタリングにより交互に堆積した誘電体多層膜である下部反射ミラー20を形成する。
【0070】
次に、圧電素子30上に上部反射ミラー18が形成された別の基板を用意する。圧電素子30を用意し、この圧電素子30上に、SiO膜とTiO膜とをスパッタリングにより交互に堆積した誘電体多層膜である上部反射ミラー18を形成する。次いで、電圧を印加するための電極(図示せず)を形成する。
【0071】
別に用意した基板を、上部反射ミラー18側を下にして、二次元フォトニック結晶14上に重ねて外周側を接着する。最後に、レジストを厚めに塗布して、基板10上の不要なSiO膜、Si膜、及び誘電体多層膜等をエッチングにより除去してメサを形成し、図17に示す光偏光素子が完成する。なお、図17に示す光偏光素子は、剛性の高い金属性の枠などに嵌め込むことで、圧電素子30が積層方向に伸縮したときに、下方に配置された二次元フォトニック結晶14を効率よく変形させることができる。
【0072】
<光偏光素子の偏光動作>
次に、第4実施の形態に係る光偏光素子の偏光動作を説明する。
図19は光偏光素子の偏向作用の動作原理を説明するための説明図である。第4の実施の形態に係る光偏光素子では、基本的な動作原理として説明したように、入射光Linを下部反射ミラー20に対して垂直に近い角度で入射させる。入射光Linは、上部反射ミラー18と下部反射ミラー20との間で、繰り返し反射される。
【0073】
繰り返し反射される間に、入射光Linは、二次元フォトニック結晶14を複数回通過する。二次元フォトニック結晶14は、その二次元周期構造により入射(交差)する光を回折する。また、二次元フォトニック結晶14は、圧電素子30によって付与された歪みに応じて、入射した光波の伝搬方向(反射方向)を変化させる。従って、二次元フォトニック結晶14を複数回通過することで、光波の伝搬方向が大幅に変換される。これにより回折光Ldifが、入射光Linが入射された方向(又は入射光Linが反射される方向)とは異なる方向に射出される。
【0074】
図19に示すように、入射光Linの入射角は一定とする。図20に示すように、二次元フォトニック結晶14を変形させる前は、実線で示すように、二次元フォトニック結晶14からは、回折光Ldif(1)が射出される。一方、二次元フォトニック結晶14が変形した後は、点線で示すように、二次元フォトニック結晶14からは、回折光Ldif(2)が射出される。
【0075】
圧電素子30により歪みを付与して、二次元フォトニック結晶14を僅かに変形させると、スーパープリズム効果により大きな群速度変化が生じ、二次元フォトニック結晶の波数ベクトルKが大きく変化する。従って、入射光Linの入射角が一定であっても、回折光Ldif(1)と回折光Ldif(2)とは、全く異なる方向に射出される。このように二次元フォトニック結晶14を変形させることで、二次元フォトニック結晶14から射出される回折光Ldifの出射方向が変化する。
【0076】
図21(A)及び(B)は波数ベクトル間の関係を表す波数ベクトル図である。光子の運動量保存則から、位相整合した状態では、関係する光波の波数ベクトルを合成した波数ベクトル図は閉じた三角形となる。入射光Linの波数ベクトルをkiとし、回折光Ldif(1)の波数ベクトルをkout、回折光Ldif(2)の波数ベクトルをkoutとする。入射光Linの波数ベクトルkiは一定であるが、二次元フォトニック結晶の波数ベクトルKが変化すると、光子の運動量保存則から、回折光Ldifの波数ベクトルがkoutからkoutに大きく変化する。
【0077】
以上説明したように、本実施の形態では、二次元フォトニック結晶14を僅かに変形させることにより、二次元フォトニック結晶のスーパープリズム効果により、二次元フォトニック結晶14から射出される回折光Ldifの出射方向(偏向方向)が大幅に変化する。これにより、広い偏向角度で偏向可能な光偏向素子を得ることができる。
【0078】
なお、上記の第1〜第4の実施の形態では、所定波長の入射光を入射させて回折光が射出する方向(偏向角度)を変化させる光偏向素子について説明したが、図1に示した基本構成は、偏光角度は入射光の波長に応じて変化するので光分光器にも適用することが可能である。この場合、上部反射ミラー及び下部反射ミラーとしては、多層膜反射鏡よりも、反射面に金や銀等の光反射率の高い金属を蒸着した反射板を用いることが好ましい。
【0079】
例えば、波長の異なる複数の光波が多重化された入射光を用いた場合には、図22に示すように、回折光が波長毎に分離され、分離された光波が各々異なる方向に射出される。図22に示す例では、回折光が、波長λ1の光波、波長λ2の光波、及び波長λ3の光波に分離される。波長の異なる3種類の光波λ1、λ2、λ3は、各々異なる方向に射出される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の光偏光素子の基本的な動作原理を説明するための説明図である。
【図2】第1の実施の形態に係る光偏光素子の斜視図である。
【図3】図2のA-A断面図である。
【図4】(A)は二次元フォトニック結晶14の平面図であり、(B)は(A)のB-B断面図である。
【図5】光偏光素子の偏向作用の動作原理を説明するための説明図である。
【図6】(A)及び(B)は波数ベクトル間の関係を表す波数ベクトル図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る光偏光素子の斜視図である。
【図8】図7のC-C断面図である。
【図9】光偏光素子の偏向作用の動作原理を説明するための説明図である。
【図10】光偏光素子の偏向作用の動作原理を説明するための説明図である。
【図11】(A)及び(B)は波数ベクトル間の関係を表す波数ベクトル図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る光偏光素子の斜視図である。
【図13】図12のD-D断面図である。
【図14】光偏光素子の偏向作用の動作原理を説明するための説明図である。
【図15】光偏光素子の偏向作用の動作原理を説明するための説明図である。
【図16】(A)及び(B)は波数ベクトル間の関係を表す波数ベクトル図である。
【図17】本発明の第4の実施の形態に係る光偏光素子の斜視図である。
【図18】図17のF-F断面図である。
【図19】光偏光素子の偏向作用の動作原理を説明するための説明図である。
【図20】光偏光素子の偏向作用の動作原理を説明するための説明図である。
【図21】(A)及び(B)は波数ベクトル間の関係を表す波数ベクトル図である。
【図22】本発明の光偏光素子の構造を光分光器に応用した変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
10 基板
12 下部スペーサ層
14 二次元フォトニック結晶
14b シリコン基板
14a 貫通孔
16 上部スペーサ層
18 上部反射ミラー
18R 上部回転反射ミラー
20 下部反射ミラー
22 強誘電体層
24 回転軸
26 保持部材
28 モータ
30 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を反射する第1反射面を備えた第1反射板と、
入射光を反射する第2反射面を備え、前記第2反射面が前記第1反射面に対向するように配置された第2反射板と、
前記第1反射板と前記第2反射板との間に、前記第1反射板と平行に配置され、第1媒体で構成された基板内に前記第1媒体とは屈折率の異なる柱状の第2媒体が二次元周期的に配列された二次元フォトニック結晶と、
を備えた光偏向素子。
【請求項2】
前記第1反射板と前記二次元フォトニック結晶との間に、電気光学効果により屈折率が変化する強誘電体層を更に挿入した、請求項1に記載の光偏向素子。
【請求項3】
前記第2反射面の前記第1反射面に対する傾きが変化するように、前記第2反射板が回転可能に配置された、請求項1に記載の光偏向素子。
【請求項4】
前記二次元フォトニック結晶に隣接して、前記二次元フォトニック結晶を変形させる圧電素子が更に配置された、請求項1に記載の光偏向素子。
【請求項5】
前記第1反射面と前記第2反射面との距離が、入射光の波長に対し定在波が生じる距離となるように、前記第1反射板と前記第2反射板とを離間配置した、請求項1〜4の何れか1項に記載の光偏向素子。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の光偏向素子を用いた光偏向方法であって、
前記第1反射板及び前記第2反射板の何れか一方に入射された入射光が、前記第1反射板と前記第2反射板との間で反射されて前記二次元フォトニック結晶を複数回通過し、前記二次元フォトニック結晶により回折されて射出されるように、前記入射光を数度の入射角で入射させる光偏向方法。
【請求項7】
請求項2に記載の光偏向素子を用いた光偏向方法であって、
前記第1反射板及び前記第2反射板の何れか一方に入射された入射光が、前記第1反射板と前記第2反射板との間で反射されて前記二次元フォトニック結晶を複数回通過し、前記二次元フォトニック結晶により回折されて射出されるように、前記入射光を数度の入射角で入射させると共に、
前記強誘電体層に電界を印加して電気光学効果により屈折率を変化させ、前記二次元フォトニック結晶に入射する入射光の角度を変化させて、前記回折光が射出される方向を変化させる光偏向方法。
【請求項8】
請求項3に記載の光偏向素子を用いた光偏向方法であって、
前記第1反射板及び前記第2反射板の何れか一方に入射された入射光が、前記第1反射板と前記第2反射板との間で反射されて前記二次元フォトニック結晶を複数回通過し、前記二次元フォトニック結晶により回折されて射出されるように、前記入射光を数度の入射角で入射させると共に、
前記第2反射板を回転させ、前記第2反射面の前記第1反射面に対する傾きを変化させて、前記回折光が射出される方向を変化させる光偏向方法。
【請求項9】
請求項4に記載の光偏向素子を用いた光偏向方法であって、
前記第1反射板及び前記第2反射板の何れか一方に入射された入射光が、前記第1反射板と前記第2反射板との間で反射されて前記二次元フォトニック結晶を複数回通過し、前記二次元フォトニック結晶により回折されて射出されるように、前記入射光を数度の入射角で入射させると共に、
前記圧電素子により前記二次元フォトニック結晶を変形させて、前記回折光が射出される方向を変化させる光偏向方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−78675(P2010−78675A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244218(P2008−244218)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】