説明

光半導体封止用樹脂組成物

【課題】線膨張係数が小さく、機械的強度に優れ、かつ、光半導体素子封止後の光取り出し効率に優れる光半導体封止用樹脂組成物、該組成物の製造方法、及び、該組成物の成型体である光半導体封止用樹脂を提供すること。
【解決手段】分子末端にアルコキシシリル基を有し、かつ分子量が100〜3000のポリシロキサン誘導体と、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子とを重合反応させて得られる、該金属酸化物微粒子が均一に分散した光半導体封止用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体封止用樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、光半導体素子封止後の光取り出し効率に優れる光半導体封止用樹脂組成物、該組成物の製造方法、及び、該組成物の成型体である光半導体封止用樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
固体のエポキシ樹脂は、加熱溶融後、金型内で高圧で成型するというトランスファー成型法に適応できるので、成型後の樹脂を用いて、簡便にしかも、短時間で多くのLEDを封止することが可能であり、製造コストの面からも優れた樹脂である。また、硬化後のエポキシ樹脂は堅く、機械的強度に優れていることから、保護層を要しない。
【0003】
しかし、エポキシ樹脂は耐久性に劣るため、強い光を発し、また発熱量も多い高輝度の光半導体(以降、LEDと記載する)の封止には使用できず、比較的弱いローパワーのLEDの封止に用いられている。
【0004】
一方、高輝度LEDの封止には、透明性に優れ、かつ、耐久性を有するシリコーン系の材料が現在、汎用されている。
【0005】
高輝度LED封止用シリコーン樹脂としては、液状のシリコーンエラストマーが挙げられる。シリコーンエラストマーは、A液、B液等の2種類の液を混合して調製する場合、混合により化学反応が生じて粘度が上昇したシリコーン樹脂溶液が得られる。得られた樹脂溶液はポッティング等の方法にて塗布された後、150〜200℃で1〜2時間程度加熱することにより硬化して、LEDを封止する(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2001−123045号公報
【特許文献2】特開2008−150437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シリコーン樹脂溶液は、粘度が高くなり過ぎると溶液中に存在する空気が抜けにくくなり、ボイド発生の原因になるため、通常、封止工程は減圧下で行われる。しかし、工程が煩雑になり、また、装置が複雑化する等の課題がある。
【0007】
また、2種類の液状成分は混合によって徐々に粘度が上昇していくために、塗布までの時間が短くハンドリングに注意を要したり、成型中にも粘度が変化したりするために、所望の封止樹脂を得ることは困難である。
【0008】
またさらに、シリコーンエラストマーは、硬化後も柔らかいため、封止後のLEDチップ上に何らかの刺激がかかるとチップが断線し、LEDが光らなくなるなどの問題が生じやすく、保護層としてさらにもう一層設ける等の工程が必要となる場合が多い。
【0009】
一方、シリコーンエラストマーは線膨張係数が大きいため、パワーの大きい光半導体の封止材としての使用には制限があり、さらなる良好な特性を有する封止樹脂が求められる。
【0010】
本発明の課題は、線膨張係数が小さく、機械的強度に優れ、かつ、光半導体素子封止後の光取り出し効率に優れる光半導体封止用樹脂組成物、該組成物の製造方法、及び、該組成物の成型体である光半導体封止用樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決する為に検討を重ねた結果、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子と、分子末端にアルコキシシリル基を有し、かつ特定の分子量を有するポリシロキサン誘導体とを反応させることにより、該金属酸化物微粒子が均一に分散して、光半導体素子封止後の光取り出し効率に優れ、かつ、線膨張係数が小さく、硬化成型後の機械的強度にも優れる光半導体封止用樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、
〔1〕 分子末端にアルコキシシリル基を有する分子量100〜3000のポリシロキサン誘導体と、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子とを重合反応させて得られる光半導体封止用樹脂組成物、
〔2〕 分子末端にアルコキシシリル基を有する分子量100〜3000のポリシロキサン誘導体と、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子とを重合反応させる工程を含む、前記〔1〕記載の光半導体封止用樹脂組成物の製造方法、ならびに
〔3〕 前記〔1〕記載の光半導体封止用樹脂組成物を加熱して硬化させてなる、光半導体封止用樹脂
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、線膨張係数が小さく、機械的強度に優れ、かつ、光半導体素子封止後の光取り出し効率に優れるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、ポリシロキサン誘導体、及び金属酸化物微粒子を含有するものであって、前記ポリシロキサン誘導体が分子末端にアルコキシシリル基を有し、前記金属酸化物微粒子が微粒子表面に反応性官能基を有するものであることに1つの特徴を有する。
【0015】
ポリシロキサン誘導体は、その架橋数により、固形状、半固形状、高粘性液状等の各種状態の樹脂組成物を形成でき、また、加熱することにより硬化するため、各種成型法に適用可能な樹脂である。しかし、硬化後の樹脂は機械的強度に劣るので、本発明では、分子末端に反応性のアルコキシシリル基を有するポリシロキサン誘導体に、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子を重合反応させて、該誘導体のアルコキシシリル基の一部と金属酸化物微粒子の表面官能基の一部とが共有結合、あるいは水素結合等の相互作用により架橋することにより、得られる樹脂組成物において金属酸化物微粒子を均一に分散させることが可能となり、機械的強度を向上することが可能になる。また、金属酸化物微粒子は屈折率が高いことから、該微粒子が良分散することにより、光半導体(以下、LEDと記載する)素子封止後の光取出し効率も向上する。またさらに、特定の分子量のポリシロキサン誘導体を用いることにより、微粒子表面との相互作用が高まることから、線膨張係数の小さい樹脂組成物が得られると推察される。
【0016】
本発明におけるポリシロキサン誘導体は、分子末端にアルコキシシリル基を有し、分子量が100〜3000の化合物であるが、硬化収縮量の低減の観点から、分子量は好ましくは400〜3000、より好ましくは600〜3000であることが望ましい。なお、本明細書において、ポリシロキサン誘導体の分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0017】
上記分子量を有するポリシロキサン誘導体としては、例えば、下記式(I):
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、R1 、R2 、R3 及びR4 は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又は芳香族基であり、nは正の整数を示し、但し、R1 、R2 及びR4 は、共に水素原子ではなく、共に芳香族基ではなく、n個のR3 は同一でも異なっていてもよい)
で表される化合物、式(II):
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、R5 、R6、R7 及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又は芳香族基であり、但し、R6 及びRは、共に水素原子ではなく、共に芳香族基ではない)
で表される化合物、及びこれらの部分加水分解縮合物からなる群より選ばれる原料化合物を少なくとも1つ含有することが好ましく、ポリシロキサン誘導体はこれらの原料化合物を公知の方法に従って縮合させて得られ、該原料化合物は縮重合することにより、Si−O−Si骨格のランダム構造、ラダー構造、カゴ構造等を有する化合物となる。なお、本明細書において、部分加水分解縮合物とは、式(I)で表わされる化合物のみ、式(II)で表わされる化合物のみ、あるいは式(I)で表される化合物と式(II)で表わされる化合物の混合物、を加水分解して縮重合させたものであり、組成は特に限定されない。
【0022】
式(I)中のR1 、R2 、R3 及びR4 は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又は芳香族基を示し、但し、R1 、R2 及びR4 は、共に水素原子ではなく、共に芳香族基ではなく、n個のR3 は同一でも異なっていてもよい。即ち、R1 、R2 及びR4 の少なくとも1つはアルキル基である。
【0023】
式(I)中のR1 、R2 、R3 及びR4 のアルキル基の炭素数は、微粒子表面での反応性、加水分解速度の観点から、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基等が例示される。なかでも、メチル基が好ましく、OR1 、OR2 、OR3 及びOR4 はいずれもメトキシ基であることが好ましい。なお、n個のOR3 も全てメトキシ基であることが好ましい。
【0024】
式(I)中のnは、正の整数を示すが、溶媒への溶解性の観点から、好ましくは1〜3の整数である。
【0025】
式(II)中のR5 、R6、R7 及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又は芳香族基を示し、但し、R6 及びRは、共に水素原子ではなく、共に芳香族基ではない。即ち、R6 及びRの少なくとも1つはアルキル基である。
【0026】
式(II)中のR5 、R6、R7 及びRのアルキル基の炭素数は、微粒子表面での反応性、加水分解速度の観点から、微粒子表面の親水性/疎水性制御、アルコキシシランの重合反応の効率などの観点から、1〜18が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が例示される。なかでも、R5 、R6、R7 及びRは、それぞれ独立してメチル基もしくは芳香族基であることが好ましく、いずれもメチル基であることがより好ましい。
【0027】
上記原料化合物を含有するポリメチルシルセスキオキサン誘導体としては、Si−O−Si骨格のランダム構造を有する化合物(ランダム型)、ラダー構造を有する化合物(ラダー型)、カゴ構造を有する化合物(カゴ型)、該カゴ型が部分的に開裂した化合物(部分開裂カゴ型)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、式(I)におけるR1 、R2 、R3 (n個のR3 全て)及びR4 がいずれもメチル基である化合物と式(II)におけるR5 、R6、R7 及びRがいずれもメチル基である化合物の部分加水分解縮合物が好ましい。なお、本明細書において、部分加水分解縮合物とは、各種構造を有するポリメチルシルセスキオキサン誘導体の混合物を加水分解して縮重合させたものであり、組成は特に限定されない。
【0028】
ポリシロキサン誘導体における、式(I)で表される化合物の含有量は、高屈折率の達成、微粒子表面での反応効率、シラン同士の重縮合反応の効率、クラック抑制の観点から、好ましくは0〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは20〜80重量%である。なお、ここでいう含有量とは、部分加水分解縮合物を構成する式(I)で表される化合物の含有量も含む。
【0029】
ポリシロキサン誘導体における、式(II)で表される化合物の含有量は、金属酸化物微粒子を分散したシリコーン樹脂組成物の物性制御の観点から、好ましくは5〜100重量%、より好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは20〜80重量%である。なお、ここでいう含有量とは、部分加水分解縮合物を構成する式(II)で表される化合物の含有量も含む。
【0030】
アルコキシ基の含有量は、溶解性や反応性の観点から、ポリシロキサン誘導体1分子中、好ましくは10〜55重量%、より好ましくは10〜47重量%、さらに好ましくは10〜30重量%である。なお、2種以上のポリシロキサン誘導体を用いる場合には、各誘導体のアルコキシ基の含有量が前記範囲内であることが望ましいが、前記範囲外のものが一部含まれていてもよく、ポリシロキサン誘導体全体のアルコキシ基含有量として、加重平均アルコキシ基含有量が前記範囲内に含まれていればよい。本明細書において、アルコキシ基含有量は、1H−NMRによる定量及び加熱による重量減少から求めることができる。
【0031】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、前記式(I)で表される化合物及び式(II)で表される化合物から得られるポリシロキサン誘導体以外の他のシリコーン誘導体を含有していてもよい。他のシリコーン誘導体としては、公知のシリコーン誘導体が挙げられるが、誘導体中のポリシロキサン誘導体の含有量は、80重量%以上が好ましく、90重量%がより好ましく、実質的に100重量%であることがさらに好ましい。
【0032】
微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、チタン酸鉛、二酸化ケイ素等が挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、高屈折率の観点から、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、及び二酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。なお、酸化チタンとしては、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタンのいずれを用いてもよい。
【0033】
金属酸化物微粒子における反応性官能基としては、ヒドロキシル基、イソシアネート基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、エポキシ基、ビニル型不飽和基、ハロゲン基、イソシアヌレート基などが例示される。
【0034】
金属酸化物微粒子の微粒子表面における反応性官能基の含有量は、微粒子量、微粒子の表面積、反応した表面処理剤量などから求めることができるが、本発明では、表面処理剤との反応量が微粒子重量の0.1重量%以上となる微粒子を「微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子」という。ここで、該反応量を反応性官能基の含有量とし、金属酸化物微粒子における含有量は0.1重量%以上であれば、特に限定されない。なお、本明細書において、金属酸化物微粒子表面における反応性官能基の含有量は、後述の実施例の方法により測定することができ、「反応性官能基の含有量」とは、反応性官能基の「含有量」及び/又は「存在量」のことを意味する。
【0035】
また、金属酸化物微粒子の微粒子表面における反応性官能基の含有量は、例えば、メチルトリメトキシシランを有機溶媒に溶解した溶液と微粒子を反応させることにより低減することができる。また、微粒子を高温で焼成することにより、微粒子表面の反応性官能基量を低減させることができる。
【0036】
金属酸化物微粒子は、公知の方法で製造されたものを用いることできるが、なかでも、粒子の大きさの均一性や微粒子化の観点から、水熱合成法、ゾル−ゲル法、超臨界水熱合成法、共沈法、及び均一沈殿法からなる群より選ばれる少なくとも1つの製造方法により得られたものが好ましい。
【0037】
金属酸化物微粒子の平均粒子径は、組成物を成形体としたときの透明性の観点から、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜70nm、さらに好ましくは1〜20nmである。本明細書において、金属酸化物微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法での粒子分散液の粒子径測定あるいは透過型電子顕微鏡による直接観察により測定することができる。
【0038】
なお、金属酸化物微粒子は、分散安定性の観点から、分散液中に調製されたものを用いてもよい(「金属酸化物微粒子分散液」ともいう)。分散媒としては水、アルコール、ケトン系溶媒、アセトアミド系溶媒などが挙げられ、水、メタノール、メチルブチルケトン、ジメチルアセトアミドを用いることが好ましい。分散液中の金属酸化物微粒子の量(固形分濃度)は、効率的に微粒子表面で反応を行う観点から、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは20〜40重量%である。このような金属酸化物微粒子分散液は、酸化チタンとして触媒化成社のNEOSUNVEILあるいはQUEEN TITANICシリーズ、多木化学社のタイノック、酸化ジルコニウムとして第一希元素化学工業社のZSLシリーズ、住友大阪セメント社のNZDシリーズ、日産化学社のナノユースシリーズなどの市販のものを用いることができる。
【0039】
金属酸化物微粒子の含有量は、ポリシロキサン誘導体100重量部に対して、好ましくは10〜200重量部、より好ましくは30〜150重量部、さらに好ましくは50〜140重量部である。
【0040】
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、前記ポリシロキサン誘導体、及び、金属酸化物微粒子に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0041】
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、例えば、前記金属酸化物微粒子分散液に、ポリシロキサン誘導体を含有する樹脂溶液を40〜70℃で重合反応させて、該重合反応の反応率が好ましくは30〜70%、より好ましくは40〜70%となるまで重合反応させた後、溶媒を除去して重合反応を終了させることにより調製することができる。なお、本明細書において反応率(%)とは、ポリシロキサン誘導体と金属酸化物微粒子との重合反応終了時点の反応率のことをいい、具体的には、例えば、150℃の乾燥機に3時間放置する前後の重量変化を測定し、生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の式より算出することができる。また、反応率は反応時間や反応温度を制御することにより調整することができる。
【0042】
かくして得られる本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、ポリシロキサン誘導体と金属酸化物微粒子とを反応率が上記範囲内となるように重合反応を行うため、ポリシロキサン誘導体同士の架橋反応も制限される。従って、本発明の光半導体封止用樹脂組成物の25℃における粘度は、好ましくは0.01〜30Pa・s、より好ましくは0.10〜30Pa・s、さらに好ましくは1〜30Pa・sである。本明細書において、粘度は、B形粘度計を用いて測定することができる。
【0043】
なお、上記粘度を有する本発明の組成物の性状は、半固形状、又は液状を示す。本明細書において、半固形状とは60℃以上に加熱した際に粘度低下して流動性を呈するような状態のことを意味する。
【0044】
本発明の光半導体封止用樹脂組成物の好ましい製造方法は、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子と、分子末端にアルコキシシリル基を有するポリシロキサン誘導体とを重合反応させる工程〔工程(1)〕を含む方法である。
【0045】
工程(1)の具体例としては、例えば、金属酸化物微粒子分散液に、メタノール、エタノール、2-メトキシエタノール、2-プロパノール、テトラヒドロフラン等の有機溶剤を添加して攪拌した液に、ポリシロキサン誘導体をメタノール、エタノール、2-プロパノール、テトラヒドロフラン等の有機溶剤に好ましくは20〜50重量%になるように溶解して調製した樹脂溶液を40〜70℃で滴下混合して重合反応させる工程等が挙げられる。なお、得られた反応液は、減圧下にて溶媒を留去して濃縮させる工程等に供することができる。
【0046】
かくして得られた光半導体封止用樹脂組成物は、加工成型性に優れるため、例えば、トランスファー成型機に充填して適当な温度に保持後、加熱、加圧工程を経て成型することができる。また、表面を剥離処理した物体(例えば、LED素子)の上にキャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により、適当な厚さに塗工して、真空プレス装置等を用いて、溶媒の除去が可能な程度の温度で乾燥して加圧することにより成型することができる。なお、樹脂溶液を乾燥させる温度は、樹脂や溶媒の種類によって異なるため一概には決定できないが、80〜150℃が好ましい。また、乾燥は2段階に分けて行ってもよく、その場合、1段階目の温度は90〜120℃、2段階目の温度は130〜150℃が好ましい。
【0047】
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、光透過性が高く、また、加工成型性に優れるため、例えば、青色又は白色LED素子を搭載した光半導体装置(液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイ、広告看板等)に用いられる光半導体素子封止材として好適に使用し得るものである。従って、本発明はまた、前記光半導体封止用樹脂組成物を加熱硬化させて成型した光半導体封止用樹脂を提供する。
【0048】
本発明の光半導体封止用樹脂は、本発明の光半導体封止用樹脂組成物を、例えば、好ましくは80〜150℃、より好ましくは100〜150℃で加熱することにより成型される。
【0049】
本発明の光半導体封止用樹脂は、封止前のLED素子の輝度を100%とした場合、光取り出し効率が、好ましくは120%以上、より好ましくは120〜180%である。なお、本明細書において、光取り出し効率は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0051】
〔シリコーン誘導体の分子量〕
ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算にて求める。
【0052】
〔シリコーン誘導体のアルコキシ基含有量〕
内部標準物質を用いた1H−NMRによる定量及び示差熱熱重量分析による重量減少の値から算出する。
【0053】
〔金属酸化物微粒子の平均粒子径〕
本明細書において、金属酸化物微粒子の平均粒子径とは一次粒子の平均粒子径を意味し、金属酸化物微粒子の粒子分散液について動的光散乱法で測定して算出される体積中位粒径(D50)のことである。
【0054】
〔金属酸化物微粒子表面における反応性官能基の含有量〕
微粒子分散液に表面処理剤としてエチルトリメトキシシランを加えて反応させ、遠心分離もしくはpH変動によって微粒子を凝集沈降させて、濾別回収、洗浄、乾燥し、示差熱熱重量分析によって重量減量を求めて含有量を算出する。
【0055】
実施例1
攪拌機、還流冷却機、及び窒素導入管を備えた容器に、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子として、平均粒子径10〜30nmのコロイダルシリカゾル(商品名「スノーテックスOS」、日産化学社製、固形分濃度20重量%、反応性官能基として水酸基を含有、反応性官能基含有量0.1重量%以上)34g(ポリシロキサン誘導体100重量部に対して19重量部)を入れ、さらにメタノール34g、2-メトキシエタノール20gを添加後、そこに、分子末端にアルコキシシリル基を有するポリシロキサン誘導体〔商品名「KR500」、信越化学社製、式(I)のR、R、R及びRはメチル基、分子量1000〜2000、メトキシ含有量28重量%〕35gを2-プロパノール10gに溶解した液を、滴下ロートを用いて30分かけて滴下して、70℃で1時間反応させた。その後、室温(25℃)まで冷却して、減圧下、溶媒を留去して濃縮することにより、実施例1の液状の透明樹脂組成物を得た。得られた組成物の25℃における粘度は15Pa・sであった。また、得られた組成物は、一部を採取して150℃の乾燥機に3時間放置した際の重量変化から反応率を求めたところ、反応率は54%であった。
【0056】
実施例2
実施例1と同様の装置に、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子として、平均粒子径7nmの酸化ジルコニア水分散液(商品名「NZD-3007」、住友大阪セメント社製、固形分濃度40重量%、反応性官能基として水酸基を含有、反応性官能基含有量1.0重量%以上)25g(ポリシロキサン誘導体100重量部に対して56重量部)を入れ、さらにメタノール20g、2-メトキシエタノール20gを添加後、濃塩酸を用いて液のpHを2.5に調整した。そこに、分子末端にアルコキシシリル基を有するポリシロキサン誘導体〔商品名「X-40-9225」、信越化学社製、式(I)のR、R、R及びRはメチル基、分子量2000〜3000、メトキシ含有量24重量%〕18gを2-プロパノール20gに溶解した液を、滴下ロートを用いて30分かけて滴下して、60℃で1時間反応させた。その後、室温(25℃)まで冷却して、減圧下、溶媒を留去して濃縮することにより、実施例2の半固形状の透明樹脂組成物を得た。得られた組成物の25℃における粘度は25Pa・s、反応率は62%であった。
【0057】
実施例3
実施例1と同様の装置に、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子として、平均粒子径50nmのアルミナゾル(商品名「アルミナゾル520」、日産化学社製、固形分濃度30重量%、反応性官能基として水酸基を含有、反応性官能基含有量1.0重量%以上)25g(ポリシロキサン誘導体100重量部に対して50重量部)を入れ、さらにテトラヒドロフラン20g、2-メトキシエタノール20gを添加後、そこに、分子末端にアルコキシシリル基を有するポリシロキサン誘導体(X-40-9225)15gを2-プロパノール15gに溶解した液を、滴下ロートを用いて30分かけて滴下して、60℃で1時間反応させた。その後、室温(25℃)まで冷却して、減圧下、溶媒を留去して濃縮することにより、実施例3の半固形状の透明樹脂組成物を得た。得られた組成物の25℃における粘度は30Pa・s、反応率は69%であった。
【0058】
実施例4
実施例1と同様の装置に、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子として、平均粒子径15nmの酸化チタン分散液(商品名「ELCOM NT-1089TTV」、触媒化成社製、メタノール分散液、固形分濃度30重量%、反応性官能基として水酸基を含有、反応性官能基含有量1.0重量%以上)35g(ポリシロキサン誘導体100重量部に対して50重量部)に、ポリシロキサン誘導体(X-40-9225)20gを2-プロパノール20gに溶解した液を、滴下ロートを用いて30分かけて滴下して、70℃で1時間反応させた。その後、室温(25℃)まで冷却して、減圧下、溶媒を留去して濃縮することにより、実施例4の液状の透明樹脂組成物を得た。得られた組成物の25℃における粘度は15Pa・s、反応率は48%であった。
【0059】
比較例1
市販のシリコーンエラストマー(商品名「SCR1011」、信越化学社製)30gに、平均粒子径300nmのシリカ粉末(商品名「クォートロン SP-03F」、扶桑化学社製)5g(シリコーン誘導体100重量部に対して17重量部)を混合して、比較例1の樹脂組成物を得た。
【0060】
比較例2
シリコーンエラストマー(SCR1011)30gに、平均粒子径20nmの酸化チタン粉末(商品名「TT-51A」、石原産業社製)5g(シリコーン誘導体100重量部に対して17重量部)を混合して、比較例2の樹脂組成物を得た。
【0061】
比較例3
実施例1において、コロイダルシリカゾル34.0gを用いる代わりに、微粒子表面の反応性官能基がシランカップリング剤で保護された、平均粒子径10〜20nmのオルガノシリカゾル(商品名「ST-IPA」、日産化学社製、2-プロパノール分散液、固形分濃度20重量%、反応性官能基として水酸基を含有、反応性官能基含有量0.1重量%未満)51.0g(ポリシロキサン誘導体100重量部に対して29重量部)を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例3のシリコーン樹脂組成物を得た。
【0062】
実施例5〜9及び比較例4〜6
次に、得られた組成物の特性を、以下の試験例1〜3の方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0063】
試験例1(光取り出し効率)
得られた組成物を用いて、青色LED(商品名「C460MB290」、クリー社製)に表1に示す成型機により定法に従って封止を行った。具体的には、トランスファー成型加工機(型式:TDF-37、東邦インターナショナル社製)を用いて成型する場合には、組成物を成型機内で150℃で4分間処理後に封止を行い、120℃で1時間、さらに150℃で1時間加熱を行った。真空プレス装置(ニチゴーモートン社製)を用いて成型する場合には、組成物を装置内で150℃で3分間処理後に封止を行い、その後100℃で1時間、150℃で1時間乾燥機内に保存して反応を完結させた。封止前後の青色LEDの明るさを瞬間マルチ測光システム(MCPD-3000、大塚電子社製)により測定し、下記の式に従って光取り出し効率を求めた。
光取り出し効率(%)=(封止後の輝度/封止前の輝度)×100
【0064】
試験例2(線膨張係数)
得られた組成物を-150℃から25℃まで10℃/分にて昇温した際の線膨張係数を、熱機械分析装置(TMA、セイコーインスツルメント社製)により測定した。
【0065】
試験例3(硬度)
得られた組成物について、ショアD硬度計にてショアD硬度を測定した。
【0066】
【表1】

【0067】
結果、実施例の組成物は、線膨張係数が小さく、硬度も高く、また光半導体素子封止後の光取り出し効率が高いことから、高輝度LEDに対しても優れた封止材であることが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、例えば、液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイや広告看板等の半導体素子を封止するものとして好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子末端にアルコキシシリル基を有する分子量100〜3000のポリシロキサン誘導体と、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子とを重合反応させて得られる光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項2】
金属酸化物微粒子の含有量が、ポリシロキサン誘導体100重量部に対して、10〜200重量部である、請求項1記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項3】
金属酸化物微粒子の平均粒子径が1〜100nmである、請求項1又は2記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項4】
金属酸化物微粒子が、水、アルコール、又はそれらの混合物中に分散されてなる、請求項1〜3いずれか記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項5】
アルコキシ基の含有量が、ポリシロキサン誘導体1分子中、18〜55重量%である、請求項1〜4いずれか記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項6】
重合反応終了時の反応率が30〜70%である、請求項1〜5いずれか記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項7】
25℃における粘度が0.01〜30Pa・sである、請求項1〜6いずれか記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項8】
分子末端にアルコキシシリル基を有する分子量100〜3000のポリシロキサン誘導体と、微粒子表面に反応性官能基を有する金属酸化物微粒子とを重合反応させる工程を含む、請求項1〜7いずれか記載の光半導体封止用樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7いずれか記載の光半導体封止用樹脂組成物を加熱して硬化させてなる、光半導体封止用樹脂。

【公開番号】特開2010−150342(P2010−150342A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328413(P2008−328413)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】