説明

光半導体用封止剤、光半導体及びその製造方法

【課題】 本発明の目的は、白色発光ダイオードを初めとする光半導体素子用の封止剤用として、近紫外から可視光にかけて光吸収がなく、はんだ耐熱性を有する透明性樹脂を提供すること。
【解決手段】
(A)テトラカルボン酸二無水物と(B)ジアミンとをイミド化して得られるポリイミド、及び有機溶剤を含有する光半導体封止剤であって、該ポリイミドが、
(i)脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物が、(A)成分中の50モル%以上であるか、
(ii)脂環構造を有するジアミンが、(B)成分中の50モル%以上であるか、又は、
(iii)脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物が、(A)成分中の50モル%以上であり、且つ、脂環構造を有するジアミンが、(B)成分中の50モル%以上である、
ポリイミドであることを特徴とする光半導体封止剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、透明性、低線熱膨張係数に優れたポリイミドを含有する光半導体用の封止剤、封止樹脂、光半導体及びその製造方法に関する。更に詳しくは、分子内に脂環構造を有する溶剤可溶性ポリイミドを必須成分とする光半導体用封止剤及び該封止剤で封止された光半導体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(Light Emitting Diode/LED)の分野では、InGaAl1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1)系の窒化物半導体を用いた青色または紫外発光素子が開発されるなど短波長化・高出力化が進んでいる。これらの発光素子の光と、YAG:Ceなどの蛍光体やRGB蛍光体により波長変換された光を組合せることで白色光を得ることができ、液晶・携帯電話バックライト用途として積極的に利用されている。また、その低消費電力・長寿命性を理由に、白熱電球・蛍光灯などの照明器具代替、車両用ヘッドライト用途としても今後大いに期待されている。発光ダイオードの封止剤としては、従来、化学的安定性・電気絶縁性の観点からエポキシ樹脂が用いられてきた。一般的には、ビスフェノールAジグリシジルエーテルをメチルヘキサヒドロフタル酸無水物で硬化したものであるが、短波長化・高出力化の進んだ発光ダイオードの主発光ピークは365〜500nm領域にあり、樹脂中の芳香環の吸収により経時的な樹脂の劣化が起こり、黄変など発光輝度が顕著に低下する問題が起きている。さらに、ダブルへテロ接合や多重井戸接合など高輝度化を達成する接合技術の進歩により高出力発光が一般的となり、発熱による劣化、熱応力による半導体チップの損傷の問題も無視できなくなっている。
【0003】
これらの問題を解決するため、ビスフェノール型エポキシ樹脂に代えて水素化エポキシモノマーや脂環式エポキシモノマーと酸無水物(特許文献1)の使用が提案されている。しかし、近年の半導体実装法の主流となっている表面実装型の半導体では、封止樹脂の薄膜化が重要で数百〜数十μm以下が要求される場合もある。一般的なエポキシ樹脂の場合、この様な薄膜状態で硬化する際に、空気との接触面積が大きくなることで、酸無水物の昇華、吸湿により、硬化不良が起こる問題が指摘されている。そのため硬化剤を、酸無水物から不揮発性のカチオン硬化剤に代えることが提案されている(特許文献2)。しかし、一般的にカチオン硬化剤は芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩など芳香環を含んでいるため、透明性、耐黄変性に劣る傾向が見られる。また、シクロヘキサントリカルボン酸モノエステルを硬化剤に用い硬化性能を向上させる方法も提案されている(特許文献3)。該硬化剤と水素化エポキシ樹脂とから得られる封止樹脂は、ガラス転移温度が100℃前後と低く、高出力発光の発熱に耐えない他、表面実装工程での冷熱サイクル中にクッラクが生じたり、Sn−Ag系など無鉛はんだ耐熱性(240〜265℃)が不足している問題があった。このように、白色発光ダイオードを始めとする光半導体封止用として、近紫外領域から可視領域にかけて光吸収がなく、耐熱性を有し、且つ薄膜上でも半導体の保護に十分な硬度を有する透明性の封止樹脂が求められていた。
【0004】
【特許文献1】特開2000−196151
【特許文献2】特開2005− 68303
【特許文献3】特開2005− 53874
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、白色発光ダイオードを初めとする光半導体用の封止材料として、近紫外領域から可視領域にかけて光吸収がなく、耐熱性を有し、且つ硬度に優れた封止剤、特に、表面実装型の光半導体を封止するのに適した上記物性を有する封止剤、該封止剤によって封止された光半導体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題を解決するため鋭意検討を行い、下記の知見を得た。
(1)特定のテトラカルボン酸二無水物と、特定のジアミンとをイミド化して得られるポリイミドが、近紫外領域から可視領域の範囲で透明性に優れていること。
(2)また、上記ポリイミドは、耐熱性に優れ、高温下での色相安定性に優れること。
(3)上記ポリイミドは、機械強度(表面硬度)に優れていること。
(4)また、上記ポリイミドと有機溶剤とを含有するポリイミド溶液が、表面実装用の半導体の製造工程に適した、粘度特性と固化特性を有していること。
(5)更に、エポキシ樹脂と併用することにより、特に低い線熱膨張係数の封止樹脂が得られること。
【0007】
本発明は係る知見に基づき完成されたものであり、以下の発明を提供するものである。
【0008】
[項1] (A)テトラカルボン酸二無水物と(B)ジアミンとをイミド化して得られるポリイミド、及び有機溶剤を含有する光半導体封止剤であって、該ポリイミドが、
(i)脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物が、(A)成分中の50モル%以上であるか、
(ii)脂環構造を有するジアミンが、(B)成分中の50モル%以上であるか、又は、
(iii)脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物が、(A)成分中の50モル%以上であり、且つ、脂環構造を有するジアミンが、(B)成分中の50モル%以上である、
ポリイミドであることを特徴とする光半導体封止剤。
【0009】
[項2] (A)が、脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物100モル%である項1に記載の光半導体封止剤。
【0010】
[項3] (B)が、脂環構造を有するジアミン100モル%である項1に記載の光半導体封止剤。
【0011】
[項4] (A)が、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物である項1〜3のいずれかに記載の光半導体封止剤。
【0012】
[項5] (B)が、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン及び1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種である項1〜3のいずれかに記載の光半導体封止剤。
【0013】
[項6] ポリイミド100重量部に対して、有機溶剤100〜2,000重量部を含有する項1〜5のいずれかに記載の光半導体封止剤。
【0014】
[項7] 有機溶剤が、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン、N,N−ジメチルアセトアミド、クレゾール、及びγ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である項1〜6のいずれかに記載の光半導体封止剤。
【0015】
[項8] 更に、蛍光体を含有する項1〜7のいずれかに記載の光半導体封止剤。
【0016】
[項9] 更に、エポキシ樹脂を含有する項1〜8のいずれかに記載の光半導体封止剤。
【0017】
[項10] 光半導体封止剤の25℃における粘度が、0.1〜30Pa・sである項1〜9のいずれかに記載の光半導体封止剤。
【0018】
[項11] 項1〜10のいずれかに記載の光半導体封止剤を、乾燥、固化して得られる光半導体封止樹脂。
【0019】
[項12] 層状ないし皮膜状の形態にある項11に記載の光半導体封止樹脂。
【0020】
[項13] 光半導体封止樹脂のTgが、200〜350℃である項11又は12に記載の光半導体封止樹脂。
【0021】
[項14] 光半導体封止樹脂の400nm光線透過率が、60〜99.5%である項11〜13のいずれかに記載の光半導体封止樹脂。
【0022】
[項15] 項11〜14のいずれかに記載の光半導体封止樹脂を備えた光半導体。
【0023】
[項16] 光半導体が、表面実装型光半導体である項15に記載の光半導体。
【0024】
[項17] 光半導体が、発光ダイオードである項15又は16に記載の光半導体。
【0025】
[項18] 項1〜10のいずれかに記載の光半導体封止剤を、半導体上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜から溶剤を乾燥留去し、層状ないし皮膜状に固化した封止樹脂成形体を形成して、半導体を封止する工程とを含む、光半導体の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明の光半導体封止剤は、透明性、耐熱性及び機械強度に優れた封止樹脂を与えるため、光半導体等の封止樹脂として好適に用いられる。また、耐黄変性に優れており、高温下での色相の変化が少ないため、本発明の光半導体封止剤で封止された光半導体は、長期使用によっても変色が少なく、長期寿命を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[ポリイミド]
本発明に係るポリイミドは、分子内に脂環構造を特定比率で含有するポリイミドであり、特定の(A)テトラカルボン酸二無水物と、特定の(B)ジアミンとをイミド化することにより得ることができる。
【0028】
[(A)成分:テトラカルボン酸二無水物]
(A)成分としては、脂環式テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、分子内に少なくとも1個の脂環構造を有する炭素数8〜30のテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。脂環構造は、単環、多環、縮合環のいずれの構造であってもよい。係る脂環式テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ニ無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸ニ無水物、3−カルボキシメチルシクロペンタン−1,2,4−トリカルボン酸ニ無水物、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸ニ無水物、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタンテトラカルボン酸ニ無水物、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン−5−カルボキシメチル−2,3,6−トリカルボン酸ニ無水物、ビシクロ〔2.2.2〕オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ニ無水物、ビシクロ〔2.2.2〕オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ニ無水物、ペンタシクロ〔8.2.1.14,7.02,9.03,8〕テトラデカン−5,6,11,12−テトラカルボン酸ニ無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン−2−カルボキシメチル−2,5,6−トリカルボン酸ニ無水物、ビシクロ〔2.2.2〕オクタン−2−カルボキシエチル−2,5,6−トリカルボン酸ニ無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸ニ無水物などが挙げられる。この中でも、得られるポリイミドの耐熱性及び透明性に優れる点で、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が好ましい。これらの脂環式テトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上を混合してイミド化反応に供することができる。
【0029】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、炭素数8〜30の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられ、具体的には、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上を混合して、イミド化反応に供することができる。
【0030】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、分子内に少なくとも1個の芳香環を含む炭素数10〜30のテトラカルボン酸二無水物が挙げられ、具体的には、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸ニ無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物、4,4’−オキシジフタル酸ニ無水物、ピロメリット酸ニ無水物、2,2’ ,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、2,2’ ,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパンニ無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパンニ無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタンニ無水物、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタンニ無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタンニ無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタンニ無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタンニ無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタンニ無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸ニ無水物、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸ニ無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸ニ無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ニ無水物、1,2−エチレンビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−フェニレンビス(アンヒドロトリメリテート)、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト〔1,2−c〕フラン−1.3−ジオン等が例示される。この中でも、高分子量のポリイミドが得られやすく、透明性及び溶剤溶解性に優れたポリイミドが得られる点から、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸ニ無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物、4,4’−オキシジフタル酸ニ無水物が好ましい。これらの芳香族テトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上を混合してイミド化反応に供することができる。
【0031】
上記(A)成分は、単独で又は2種以上を混合してイミド化反応に供することができるが、得られるポリイミドが透明性、耐黄変性に優れる点から、(A)成分としては、脂環式テトラカルボン酸二無水物を単独でイミド化反応に供することが好ましい。又、2種以上を混合してイミド化反応に供する場合には、脂環式テトラカルボン酸二無水物が、全(A)成分中の50モル%以上、好ましくは80モル%以上となるようにイミド化反応に供することが推奨される。
【0032】
又、上記テトラカルボン酸二無水物と同様に、これらのテトラカルボン酸、炭素数1〜4の脂肪族アルコールとのエステル、炭素数6〜10のフェノール類とのアリールエステル、又は酸塩化物等の形態でイミド化反応に供することができる。
【0033】
[(B)成分:ジアミン]
(B)成分としては、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンが挙げられる。脂環式ジアミンとしては、分子内に少なくとも1個の脂環基を有する炭素数4〜30の脂環式ジアミンが挙げられる。脂環構造は、単環、多環、縮合環のいずれの構造であってもよい。係る脂環式ジアミンの具体例としては、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルシクロヘキシルメタン、4、4’−ジアミノ−3,3’,5、5’−テトラメチルシクロヘキシルメタン
1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4,4’−ジアミノシクロヘキシル)プロパン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,3−ジアミノビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、
2,5−ジアミノビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ジアミノビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,7−ジアミノビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)−ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)−ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,3−ビス(アミノメチル)−ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)−トリシクロ〔5.2.1.0.6〕デカン等が挙げられる。これらの中でも、高分子量のポリイミドが得られやすく、透明性及び溶剤溶解性に優れたポリイミドが得られる点から4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンが好ましい。これらの脂環式ジアミンは、単独で又は2種以上を混合してイミド化反応に供することができる。
【0034】
脂肪族ジアミンとしては、炭素数2〜22の脂肪族ジアミンが挙げられ、その具体例としては、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ヘブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等のアルキレンジアミン、オキシジ(2−アミノエタン)、オキシジ(2−アミノプロパン)、2−(2−アミノエトキシ)エトキシアミノエタン等のポリオキシアルキレンジアミン等が例示される。これら脂肪族ジアミンは、単独で又は2種以上を混合してイミド化反応に供することができる。
【0035】
芳香族ジアミンとしては、分子内に少なくとも1個の芳香環を有する炭素数6〜30ジアミンが挙げられ、具体的には、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、4、4’−ジアミノビフェニル、4、4’−ジアミノジフェニルメタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4、4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、
1,1−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、
2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル〕プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3’−メチルビフェニル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン等が例示される。これらの中でも、高分子量のポリイミドが得られやすく、溶剤溶解性に優れたポリイミドが得られる点から、4、4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンが好ましい。これらの芳香族ジアミンは、単独で又は2種以上を混合してイミド化反応に供することができる。
【0036】
上記(B)成分は、単独で又は2種以上を混合してイミド化反応に供することができるが、得られるポリイミドが透明性、耐黄変性に優れる点から、(B)成分としては、脂環式ジアミンを単独でイミド化反応に供することが好ましい。又、2種以上を混合してイミド化反応に供する場合には、脂環式ジアミンが、全(B)成分中の50モル%以上、好ましくは80モル%以上となるようにイミド化反応に供することが推奨される。
【0037】
上記ジアミンと同様に、これらのイソシアネート誘導体の形態でイミド化反応に供してもよい。また、透明性に優れたポリイミドを得るため、イミド化反応に供する前に、ジアミンを精製してもよい。精製の方法は、特に限定はなく、例えば、蒸留、再結晶などの方法を使用することができる。再結晶溶剤は、特に制限がないが、オクタン、ノナン等の炭化水素類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類などが例示される。
【0038】
[好ましい(A)成分と(B)成分の組み合わせ]
上記、(A)成分と(B)成分の中でも、下記の組み合わせから得られるポリイミドは、特に、透明性に優れる点で好ましい。
【0039】
(A)成分が、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸ニ無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ニ無水物及び4,4’−オキシジフタル酸ニ無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、(B)成分が、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、4、4’−ジアミノジフェニルエーテル及び2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンから選ばれる少なくとも1種のジアミンとの組み合わせ。但し、(A)成分が、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含むか、及び/又は、(B)成分が、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン及び1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンからなる群から選ばれる脂環式ジアミンを50モル%以上含むものに限る。
【0040】
また、イミド化反応の原料として、(A)成分に、脂環式テトラカルボン酸二無水物100モル%を用いてイミド化するか、及び/又は(B)成分に、脂環式ジアミン100モル%を用いてイミド化することにより得られるポリイミドは、溶剤溶解性と透明性に優れる傾向がある。
【0041】
さらに、(A)成分に脂環式テトラカルボン酸二無水物を用い、且つ(B)成分に脂環式ジアミンを用いて得られる全脂環式ポリイミドは、特に透明性と耐黄変性に優れる点で好ましい。特に、(A)成分が、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物であり、且つ(B)成分が、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン又は1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンである全脂環式ポリイミドが好ましい。
【0042】
イミド化反応の方法には、特に制限はなく、従来公知の方法に従って行うことができる。
例えば100℃未満の温度で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶剤中で、重合させて、ポリアミド酸(ポリイミド前駆体)を調製した後、脱水閉環してポリイミドを調製する二段法や、ポリアミド酸を調製することなく、直接ポリイミドを合成する一段法などが例示される。これらの方法の中でも、色相が良好なポリイミドが得られる点で、二段法が推奨される。
【0043】
以下に、二段法によるイミド化反応について説明する。二段法は上記の通り、ポリアミド酸への重合反応工程と、閉環イミド化工程と二つの工程からなる。まず、前者のポリアミド酸の重合反応工程について記載する。アルゴン、窒素等の不活性ガス気流下、ジアミンを有機溶剤に溶解した後、−10℃〜100℃、好ましくは40〜80℃の温度範囲で、テトラカルボン酸ニ無水物を徐々に添加する。又は、テトラカルボン酸二無水物を有機溶剤に溶解した後、ジアミンを徐々に添加してもよい。この際、高重合度のポリアミド酸が得られやすい点で、(A)テトラカルボン酸二無水物成分と、(B)ジアミン成分とのモル比は、(A)/(B)=0.7〜1.3であることが好ましく、特に0.9〜1.1の範囲が好ましい。又、本発明に係るポリイミドとエポキシ樹脂とを併用する場合には、得られる封止樹脂成形体の硬度に優れる点から、(A)/(B)=0.9〜1.3の範囲が好ましく、特に1.0〜1.2の範囲が好ましい。
【0044】
又、この時の基質濃度((A)成分と(B)成分との総重量/(A)成分と(B)成分と有機溶剤との総重量)は、5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%である。5重量%未満の基質濃度では、重合度の高いポリアミド酸が得られにくく、最終的に得られるポリイミドが、機械的に脆弱になる傾向が見られる。一方、40重量%を越える基質濃度では、有機溶剤に不溶な塩の析出により、重合が完了しなかったり、或いは重合が完了するまでに長時間を要する傾向が見られる。
【0045】
有機溶剤としては、例えば、非プロトン系極性溶剤、フェノール系溶剤、グリコール系溶剤が挙げられる。非プロトン性極性溶剤の具体例としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド、等の含リン系アミド系溶剤、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶剤、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤等が挙げられる。
【0046】
フェノール系溶剤の具体例として、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等が挙げられる。
【0047】
グリコール系溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
【0048】
上記の有機溶剤の中でも、重合反応中に不溶塩の発生が少なく、高重合度のポリアミド酸が得られ易い点で、アミド系溶剤、ラクトン系溶剤が好ましく、特にN−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン、N,N−ジメチルアセトアミド、クレゾール、及びγ−ブチロラクトンが好ましい。
【0049】
これらの有機溶剤は、単独で又は2種以上を混合して重合反応に供することができる。
【0050】
ポリアミド酸の重合反応工程に要する時間は、使用するテトラカルボン酸二無水物、ジアミン及び有機溶剤の種類やそれらの使用比率等により異なるが、通常0.5〜100時間である。
【0051】
次に、ポリアミド酸を閉環イミド化する工程について記載する。閉環イミド化工程は、重合反応工程終了後に、引き続き加熱脱水イミド化することにより行う。ポリアミド酸が脱水閉環してイミド化することにより発生する水は、ポリアミド酸を加水分解し、重合度を低下させる原因となるため、速やかに反応系外に留去することが好ましい。係る目的で、前記有機溶剤に加えて、共沸溶剤を使用することが好ましい。共沸溶剤は、イミド化反応時に添加してもよいし、ポリアミド酸の重合反応工程の時から予め添加しておいてもよい。共沸溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等のアルキル基で置換されていてもよい芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等のアルキル基で置換されていてもよいシクロヘキサン類が挙げられる。これらは、市販されているものでもよく、前者の例としてはソルベッソ100(エクソン・モービル社製)、後者の例としてはリカソルブ800、900(新日本理化社製)等を挙げることができる。これらの共沸溶剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。。これら共沸溶剤を使用する場合、その使用量は、全有機溶剤中の5〜50重量%の範囲が好ましい。又、共沸溶剤は、閉環イミド化工程終了後、減圧下で留去してもよい。
【0052】
閉環イミド化工程の反応温度は、120℃〜200℃の範囲が例示され、160〜190℃の範囲が好ましい。重合時間は使用するテトラカルボン酸ニ無水物、ジアミン及び有機溶剤の種類やそれらの使用比率等により異なるが、通常0.5〜20時間である。
【0053】
また、加熱脱水による閉環イミド化に代えて、又は加熱脱水による閉環イミド化を促進する目的で、無水酢酸等の低級脂肪酸二無水物、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリンなどの3級アミンを加えて化学的方法により閉環イミド化を行うことにより、本発明に係るポリイミドを得ることができる。
【0054】
かくして得られるポリイミド重合溶液は、イミド化反応に供した(A)成分及び(B)成分に由来する構造単位を有する以下の3つのいずれかの本発明に係るポリイミドを、イミド化反応に使用した有機溶剤に溶解してなるポリイミド重合溶液である。
【0055】
(i)脂環構造を有するテトラカルボン酸成分が、(A)成分中の50モル%以上、好ましくは80モル%以上、特に好ましくは100モル%である(A)成分と、(B)成分とをイミド化反応することによって得られるポリイミド。換言すると、(A)成分が、(a1)脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物、及び(a2)脂環構造を有さないテトラカルボン酸二無水物とからなり、そのモル比が(a1)/(a2)=50〜100/50〜0、好ましくは(a1)/(a2)=80〜100/20〜0、特に好ましくは(a1)/(a2)=100/0であるテトラカルボン酸二無水物と、(B)ジアミンとをイミド化することによって得られるポリイミド。
【0056】
(ii)(A)成分と、脂環構造を有するジアミンが、(B)成分中の50モル%以上、好ましくは80モル%以上、特に好ましくは100モル%である(B)成分とをイミド化反応することによって得られるポリイミド。換言すると、(B)成分が、(b1)脂環構造を有するジアミン、及び(a2)脂環構造を有さないジアミンとからなり、そのモル比が(b1)/(b2)=50〜100/50〜0、好ましくは(b1)/(b2)=80〜100/20〜0である(B)成分と、(A)成分とをイミド化することにより得られるポリイミド。
【0057】
(iii)脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物が、(A)成分中の50モル%以上、好ましくは80モル%以上、特に好ましくは100モル%以上であり(A)成分と、且つ、脂環構造を有するジアミンが、(B)成分中の50モル%以上、好ましくは80モル%以上、特に好ましくは100モル%である(B)成分とをイミド化することにより得られるポリイミド。換言すると、(A)成分が、(a1)脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物、及び(a2)脂環構造を有さないテトラカルボン酸二無水物とからなり、そのモル比が(a1)/(a2)=50〜100/50〜0、好ましくは(a1)/(a2)=80〜100/20〜0、特に好ましくは、(a1)単独であるテトラカルボン酸二無水物と、(B)成分が、(b1)脂環構造を有するジアミン、及び(b2)脂環構造を有さないジアミンとからなり、そのモル比が(b1)/(b2)=50〜100/50〜0、好ましくは(b1)/(b2)=80〜100/20〜0、特に好ましくは(b1)単独である(B)成分とをイミド化することにより得られるポリイミド。
【0058】
本発明に係るポリイミドの酸価としては、特に制限がないが、エポキシ樹脂を併用する場合には、得られる封止樹脂の耐熱性、線熱膨張係数のバランスに優れる点で、酸価が1〜100mgKOH/g、好ましくは、2〜90mgKOH/g、特に好ましくは3〜80mgKOH/gが推奨される。この酸価は、後記実施例の項に記載の方法により測定した値である。
【0059】
本発明に係るポリイミドの固有粘度としては、得られる光半導体封止樹脂の機械強度に優れる点から、0.3〜3.0dl/gが好ましく、より好ましくは0.4〜2.5、特に好ましくは0.5〜2.2が推奨される。この固有粘度は、後記実施例の項に記載の方法により測定した値である。
【0060】
上記ポリイミド重合溶液は、その状態でポリイミド溶液となっており、そのまま光半導体封止剤として用いることができる他、必要に応じて、濾過・脱泡工程を経て、又は濃縮・希釈などして粘度調整を施した後、光半導体封止剤として用いることができる。更に、イミド化反応に用いた有機溶剤の一部又は全部を低沸点の溶剤(例えば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒)に置換したり、或いは該ポリイミド重合溶液を乾燥するか又は貧溶剤(例えば、メタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類等)を添加するなどして本発明に係るポリイミドを単離した後、所望の有機溶剤に溶解してポリイミド溶液を調製し、それを光半導体封止剤とすることができる。有機溶剤としては、イミド化反応と同様の有機溶剤が挙げられる。その具体例としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド等の含リン系アミド系溶剤、ジメチルスルホン、
ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶剤、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のフェノール系溶剤、
エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤の使用量としては、ポリイミド100重量部に対して、100〜2,000重量部が好ましく、特に150〜900重量部が好ましい。
【0061】
[蛍光体]
本発明の光半導体封止剤には必要に応じて、蛍光体を添加することができる。蛍光体は、例えば、青色LED素子から発せられた青色光の一部を吸収し、波長変換された黄色光を発することにより、白色光を形成する作用を有するものである。蛍光体を、ポリイミドを含む溶液に予め分散させておいてから、光半導体上に塗布することで、蛍光体を封止樹脂中に均一に分散させることができる。蛍光体は樹脂溶液に比し密度が高いことから、光半導体を製造する際の塗布、乾燥中に沈降する傾向にある。沈降を抑制するため、光半導体封止剤の粘度を高くすることが好ましい。光半導体封止剤の粘度を高くする方法としては、ポリイミドの種類、濃度を適宜変更することにより容易に調整することができる。蛍光体としては特に制限がなく、従来公知の蛍光体を使用することができ、例えば、希土類元素のアルミン酸塩、チオ没食子酸酸塩、オルトケイ酸塩等が例示される。より具体的には、YAG蛍光体、TAG蛍光体、オルトシリケート蛍光体、チオガレート蛍光体、硫化物蛍光体等の蛍光体が挙げられ、YAlO:Ce、YAl12:Ce,YAl:Ce、YS:Eu、Sr(POCl:Eu、(SrEu)O・Alなどが例示される。係る蛍光体の粒径としては、この分野で公知の粒径のものが使用されるが、平均粒径としては、1〜250μm、特に2〜50μmが好ましい。これらの蛍光体を使用する場合、その添加量は、ポリイミド100重量部に対して、1〜80重量部、好ましくは、5〜60重量部が推奨される。
【0062】
[エポキシ樹脂]
更に、本発明の光半導体封止剤には、エポキシ樹脂を配合することができる。本発明で使用するエポキシ樹脂としとは、従来公知のエポキシ樹脂が使用できる。エポキシ樹脂を構成しているエポキシ化合物としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が、好ましく使用できる。その中でも、エポキシ当量が、100〜10,000、特に100〜3,000のエポキシ樹脂を使用するのが好ましい。更に、透明性及び対黄変性に優れる点から、分子内に芳香環を有さないエポキシ樹脂が好ましい。係る好ましいエポキシ樹脂としては、水添ビスフェノールAのジクリシジルエーテル、脂環式エポキシ樹脂、脂環式ポリカルボン酸のグリシジルエステル等が例示される。脂環式エポキシ樹脂とは、分子内に、エポキシシクロアルカン骨格を有するエポキシ化合物で、具体的には、
1−ビニル−3−シクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルヘキシル)アジペート、テトラキス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ブタンテトラカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)−4,5−エポキシテトラヒドロフタレート)、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エチレンビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルポキシレート)、リモネンジオキサイド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)、1,2,5,6−シクロオクタジエンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド等が例示される。脂環式ポリカルボン酸のグリシジルエステルとしては、テトラヒドロフタル酸ジクリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジクリジシルエステル、メチルヘキサヒドロフタル酸ジクリシジルエステル、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸トリグリシジルエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラグリシジルエステル等が例示される。
【0063】
エポキシ樹脂を使用する場合、その使用量は、ポリイミド100重量部に対して、1〜100重量部が好ましく、特に5〜50重量部が推奨される。
【0064】
[エポキシ樹脂硬化剤]
本発明の光半導体封止剤にエポキシ樹脂を配合する場合、エポキシ樹脂硬化剤を使用することができる。エポキシ樹脂硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化又は硬化促進作用を有する限り、特に制限なく使用できる。エポキシ樹脂硬化剤としては、具体的には、アミン系化合物、酸無水物系化合物等が例示される。
【0065】
アミン系化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;ジエチレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、一般式(4)で表されるポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ポリアミン;メタキシリレンジアミン、バラキシリレンジアミン、1,3,5−トリス(アミノメチル)ベンゼン等の芳香環を含む脂肪族ジアミン;ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、ノルボルネンジアミン等の脂環式ジアミン;フェニレンジアミン、メチレンジアニリン、ジアミノジフェニルスルホン、メタアミノベンジルアミン等の芳香族アミン;トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエタノールアミン、ピリジン、ピコリン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン等の3級アミン;2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール等のイミダソール化合物;アジピン酸ジヒドラジト等の有機酸ヒドラジト、ジシアミンジアミド化合物、メラミン化合物、これらのアミン系化合物とエポキシ樹脂、尿素、イソシアネート化合物又は酸無水物とを反応させたアミンアダクト(味の素社製、「アミキュアPN−23」、アミキュア「MY−24」、富士化成社製、「フジキュアFXE」、「フジキュアFXR」等、チバスペシャルティケミカルズ社製「HT−939」等)、上記アミン化合物とポリカルボン酸との塩(味の素社製、「アミキュアATU」)、アミン化合物とイソシアヌル酸との分子化合物等が例示される。
【0066】
酸無水物系化合物としては、アルケニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物などの脂肪族酸無水物;テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸一無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等の脂環式酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等の芳香族酸無水物が例示される。
【0067】
上記の中でも、得られる光半導体封止樹脂の透明性、硬度に優れる点で、脂環式酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物が好ましい。
【0068】
エポキシ樹脂硬化剤を使用する場合には、その使用量は、エポキシ樹脂の種類、配合量にもよるが、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜200重量部、特に0.1〜100重量部が好ましい。
【0069】
[その他成分]
本発明の光半導体封止剤には、更に、必要に応じて、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、帯電防止剤、界面活性剤など発光ダイオードの特性改善のため種々の添加剤を配合することができる。光拡散剤は、半導体素子から発生した光を封止樹脂中で分散させ、発光を均一化する作用を有するもので、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、シリカ、ゼオライト、石英ガラス、タルク、炭酸カルシウム、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などが挙げられる。
【0070】
[光半導体封止剤]
本発明の光半導体封止剤は、上記成分(ポリイミド及び有機溶剤、及び必要に応じて用いられる蛍光体、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、その他成分)を、前記使用割合で使用し、公知の混合方法によって調製することができる。蛍光体、エポキシ樹脂及びその他の成分を使用する場合、その混合方法、混合の順番には特に制限が無く、イミド化反応終了後の重合溶液に、蛍光体、エポキシ樹脂をそのまま添加混合してもよいし、それらを有機溶剤に分散させて添加、混合してもよいし、使用時にこれらを混合してもよい。
【0071】
本発明の光半導体封止剤の25℃における粘度は、塗布工程での作業性及び、蛍光体を使用した場合の蛍光体の沈降性のバランスに優れる点から、0.1〜30Pa・sの範囲が好ましく、より好ましくは1〜20Pa・sの範囲が推奨される。尚、粘度は、後記実施例の項に記載の方法で測定した値である。
【0072】
[光半導体封止樹脂]
かくして得られる本発明の光半導体封止剤を、従来公知の方法に従って乾燥、固化することによって、本発明の光半導体封止樹脂を得ることができる。例えば、本発明の光半導体封止剤を、そのまま半導体の表面に公知の方法で塗布又は充填し、或いは、半導体を本発明の光半導体封止剤中に浸漬した後、光半導体封止剤の塗膜或いは充填物を乾燥、固化することにより光半導体封止樹脂(即ち、光半導体封止樹脂成形体)とすることができる。ここで、「乾燥、固化」とは、光半導体封止剤から有機溶剤を揮発させ、ポリイミド及び必要に応じて用いられるエポキシ樹脂とを化学的に反応させることであるが、実際の操業上は厳密に区別されるものではない。乾燥、固化の条件としては、光半導体の種類、使用方法等により異なるが、通常、70℃〜350℃(好ましくは80〜320℃)、10〜300分(好ましくは30〜180分)、の条件が例示される。尚、乾燥、固化の際に、温度は段階的に昇温していくことが好ましく、又、減圧下で行うことも好ましい。
【0073】
この場合、得られる光半導体封止樹脂は、通常、透明性の層状ないし皮膜状の形態にある。この層ないし皮膜の厚さは、使用目的にもよるが、通常10〜2,000μm、より好ましくは20〜1,000μm、特に50〜500μmが推奨される。係る層状ないし皮膜状の厚さの光半導体封止樹脂成形体を得る好ましい方法としては、本発明の光半導体封止剤を、塗布した後、乾燥、固化させる方法が挙げられ、特に、前記粘度範囲の光半導体封止剤は、この方法に好適である。
【0074】
乾燥、固化して得られた本発明の光半導体封止樹脂は、透明性、耐熱性、機械強度等に優れ、光半導体の封止剤として好適に使用することができる。例えば、本発明の光半導体封止成形体のガラス転移温度(Tg)は、200〜350℃が好ましく、特に220〜320℃が推奨される。尚、Tgは、後記実施例の項に記載の方法で測定した値である。
【0075】
本発明の光半導体封止樹脂の全光線透過率は、85〜99.5%が好ましく、特に90〜99.5%が推奨される。また、400nmにおける光線透過率が60〜99.5%が好ましく、特に、70〜99.5%が推奨される。尚、これらの光線透過率は、後記実施例の項に記載の方法で測定した値である。
【0076】
本発明の光半導体封止樹脂の線熱膨張係数は、10〜100ppmが好ましく、特に20〜80ppmが推奨される。尚、線熱膨張係数は、後記実施例の項に記載の方法で測定した値である。
【0077】
[光半導体]
本発明は、上記本発明の光半導体封止剤を乾燥、固化して得られる光半導体樹脂を備えた光半導体を提供するものでもある。該光半導体としては、広い範囲のものが挙げられ、
具体的には、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー、有機EL(electro Luminescence)、フォトダイオード等の発光素子、光カプラー、フォトトランジスタ、電荷結合素子(CCD:charge coupled device)、等の受光素子が例示される。これらは、単独の素子であっても複数の素子で構成されるアレイであってもよい。光半導体の形状には特に制限がなく、砲弾型、ランプ型、SMD型(表面実装型)等いずれの形態であってもよい。この中でも、本発明の光半導体封止樹脂を層ないし被膜の形態で有するSMD型の光半導体が好ましい。また、本願発明に係るポリイミドは、近紫外領域での透明性に優れるので、LED、半導体レーザー等に好適に用いられ、特に、青色LED、紫色LED、白色LED等の500nm以下の波長の光を発するLEDに好適である。
【0078】
[光半導体の製造方法]
上記の様に、本発明の光半導体封止剤は、表面実装型の光半導体、特にLEDの封止剤として有用である。以下に、光半導体の製造方法の一例として、表面実装型のLEDにおける本発明の光半導体封止剤の使用方法について説明する。
【0079】
図1は、本発明の半導体を模式断面図である。リード電極の正端子2aと負端子2bをインサート成型したガラスエポキシ基板1上に、サファイア基板3上に形成した半導体素子4がエポキシ樹脂などのダイボンド樹脂で接着され、更に、この光半導体素子の一面側に正負の電極5a、5bを設け、リード電極2a、2bと金線等の導電性ワイヤー6で電気的に接続された構造を有している。尚、半導体素子の材質としては、従来公知のGaAs、GaP、GaAlAs、GaN、InGaN、InGaAlN等が使用できる。
【0080】
係る光半導体上に、本発明の光半導体封止剤を、浸漬、スプレー、スピンコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート又はスクリーン印刷等により、塗布した後、乾燥、固化することにより、光半導体上に本発明の光半導体封止樹脂の層ないし皮膜8を形成することができる。又、光半導体封止剤に蛍光体を配合した場合には、蛍光体7が分散した光半導体樹脂の層ないし皮膜8を得ることができる。ここで、「乾燥、固化」とは、光半導体封止剤から有機溶剤を揮発させ、ポリイミド及び必要に応じて用いられるエポキシ樹脂とを化学的に反応させることであるが、実際の操業上は厳密に区別されるものではない。乾燥、固化の条件としては、光半導体の種類、使用方法等により異なるが、通常、70℃〜300℃(好ましくは80〜250℃)、10〜300分(好ましくは30〜180分)、の条件が例示される。尚、乾燥、固化の際に、温度は段階的に昇温していくことが好ましく、又、減圧下で行うことも好ましい。
【0081】
尚、光半導体封止樹脂の層ないし皮膜は単層である必要はなく、例えば、半導体素子上に、蛍光体を含まない本発明の光半導体封止剤を、塗布、乾燥、固化させて下層を作成した後、その上に、蛍光体を含む本発明の光半導体封止剤を塗布、乾燥、固化して、封止樹脂の上層にのみ蛍光粒子を分散させた多層構造とすることもできる。また、反対に、蛍光体を含有する封止樹脂を下層を形成した後、蛍光体を含有しない封止樹脂を上層として形成した多層構造とすることもできる。
【0082】
かくして得られる光半導体は、更に、銅張積層板などの配線基板9に形成された電子回路上にはんだ付けされる。はんだは近年、Pbフリーが主流となりつつあり、例えば、Sn−Ag系はんだが代替として使用されつつある。このようなはんだ工程に必要な温度は260℃であり、本発明の光半導体封止樹脂は、係るはんだ工程に耐えうる耐熱性を有している。
【実施例】
【0083】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものでない。下記の製造例、実施例及び比較例において、各特性の測定方法は以下の通りである。
【0084】
[ポリイミドの物性評価]
(a)ポリイミド濃度
イミド化反応終了後の反応生成物であるポリイミド溶液を、TG−DTA装置(セイコーインスツル株式会社製 EXSTAR 6000、TG−DTA 6200)を用いて、窒素気流下(100ml/min)、5℃/minの昇温速度で400℃まで昇温したときの残存重量を測定し、ポリイミド濃度(wt%)とした。
【0085】
(b)固有粘度
イミド化反応終了後の反応生成物であるポリイミド溶液を、ポリイミド濃度が0.5g/dlとなるように、NMP又はミックスクレゾールで希釈した溶液の流下時間を、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。尚、対照としてNMP又はミックスクレゾールの流下時間を測定し、下記式より固有粘度を算出した。
固有粘度(dl/g)=ln[(t−t)/t)]/0.5
【0086】
(c)溶液粘度
イミド化反応終了後の反応生成物であるポリイミド溶液を、E型粘度系を用いて、25℃で測定した。
(d)酸価
イミド化反応終了後の反応生成物であるポリイミド溶液約2gを精秤し、NMP50mlで希釈した後、JIS K 0070−1966に準じて酸価を測定し、ポリイミド樹脂純分に換算した。
【0087】
[製造例1]
温度計、撹拌機、窒素導入管、分液デカンタ、冷却管を備えた5L4つ口フラスコに、窒素気流下、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(以下、「HDAM」と略記する。)272.8g(1.30モル)と、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」という。)2350gを仕込んで溶解させた後、50℃で1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸ニ無水物(以下、「HPMDA」と略記する。)299.7g(1.33モル)を固体のまま投入し、120℃まで昇温して完全に溶解させた。共沸溶剤としてキシレンを280g添加し、分液デカンタでキシレンと共沸してくる水を分離しながら、180℃で5時間反応を行った。温度を100℃まで冷却し、反応系を40mmHgの減圧とし、約30gのキシレンを留去、回収し、イミド化反応生成物であるポリイミド(ポリイミドA)を含有する溶液を得た。このポリイミドA溶液の樹脂濃度、固有粘度、溶液粘度及び酸価を表1に示した。
【0088】
[製造例2]
温度計、撹拌機、窒素導入管、分液デカンタ、冷却管を備えた1L4つ口フラスコに、窒素気流下で、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(以下、「BAPP」と略記する。)49.81g(0.121モル)と、ミックスクレゾール(ナカライテスク製)420gを仕込んで溶解させた後、50℃でHPMDA27.20g(0.121モル)を固体のまま投入し、120℃まで昇温して完全に溶解させた。共沸溶剤としてキシレンを60g添加し、分液デカンタでキシレンと共沸してくる水を分離しながら、180℃で5時間反応を行った。温度を100℃まで冷却し、反応系を40mmHgの減圧とし、約40gのキシレンを留去、回収し、イミド化反応生成物であるポリイミド(ポリイミドB)を含有する溶液を得た。このポリイミドB溶液の樹脂濃度、固有粘度、溶液粘度を表1に示した。
【0089】
[製造例3]
温度計、撹拌機、窒素導入管、分液デカンタ、冷却管を備えた1L4つ口フラスコに、窒素気流下で、HDAM25.5g(0.121モル)と、溶剤NPM300g仕込んで溶解させた後、50℃で3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(以下、「DSDA」と略記する。)43.3g(0.121モル)を固体のまま投入し、120℃まで昇温して完全に溶解させた。共沸溶剤としてキシレンを90g添加し、分液デカンタでキシレンと共沸してくる水を分離しながら、180℃で5時間反応を行った。温度を100℃まで冷却し、反応系を40mmHgの減圧とし、約20gのキシレンを留去、回収し、イミド化反応生成物であるポリイミド(ポリイミドC)を含有するポリイミド溶液を得た。このポリイミドC溶液の樹脂濃度、固有粘度、溶液粘度及び酸価を表1に示した。
【0090】
[製造例4]
HDAMに代えてBAPP49.8g(0.121モル)を用い、キシレンを30g添加した以外は、製造例3と同様にして、イミド化反応生成物であるポリイミド(ポリイミドD)を含有するポリイミド溶液を得た。このポリイミドD溶液の樹脂濃度、溶液粘度、固有粘度を表1に示した。
【0091】
[実施例1〜4、比較例1]
<光半導体封止樹脂の評価>
上記製造例で得られたポリイミド溶液又は、ポリイミド溶液及びエポキシ樹脂硬化剤からなる表2に記載の組成を有する光半導体封止剤を調製した。
【0092】
<光半導体封止樹脂の製造、評価1>
各実施例、比較例の光半導体封止剤を、ガラス基板上に塗布し、ギャップ長0.8mmになるようにテープシールを巻いたガラス棒で流延した。この基板を、減圧下80℃で1時間さらに180℃で1時間乾燥し、冷却後、光半導体封止剤の乾燥フィルムをガラス基板から剥離し、ステンレス製の金枠で固定して減圧下320℃で1時間乾燥させることで、膜厚100μmの光半導体封止樹脂のフィルム1を得た。得られたフィルムAを用いて、全光線透過率、400nm光線透過率、黄色度(YI)、硬度を下記条件で測定した。その結果を表2に示す。
【0093】
<光半導体封止樹脂の製造、評価2>
各実施例、比較例の光半導体封止剤を、ガラス基板上に塗布し、ギャップ長0.4mmになるようにテープシールを巻いたガラス棒で流延した。この基板を、減圧下80℃で1時間さらに180℃で1時間乾燥し、冷却後、光半導体封止剤の乾燥フィルムをガラス基板から剥離し、ステンレス製の金枠で固定して減圧下320℃で1時間乾燥させることで、膜厚50μmの光半導体封止樹脂のフィルム2を得た。得られたフィルムBを用いて、ガラス転移温度、線熱膨張係数を下記条件で測定した。その結果を表2に示す。
【0094】
[比較例2]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量205、以下、「エポキシ樹脂F」と略記する。)100重量部に対して、ヘキサヒドロ無水フタル酸無水物(新本理化製、商品名「リカシッド MH−700」、以下、「硬化剤G」と略記する。)82重量部、2−エチルー4−メチルイミダゾール(以下、「促進剤H」と略記する。)1.8部を混合し、120℃で2時間さらに150℃で3時間硬化させ、膜厚100μmの硬化物を得た。得られた硬化物の、全光線透過率、400nm光線透過率、黄色度(YI)、硬度、ガラス転移温度、線熱膨張係数を測定した。
【0095】
(e)全光線透過率
各実施例又は比較例で得られたフィルム1又は硬化物から、30mmx30mmの測定試料を切り出し、ヘイズメーター(東洋精機社製 HAZE GARD II)を用い、JIS K−7361−1に準じて、全光線透過率を測定した。
【0096】
(f)400nm光線透過率
各実施例又は比較例で得られたフィルム1又は硬化物から、30mmx30mmの測定試料を切り出し、分光光度計(Shimadzu UV-2100、積分球使用)を用いて400nm光線透過率を測定した。また、空気中、150℃で24時間熱処理した後、再度測定した。
【0097】
(g)黄色度:YI
各実施例又は比較例で得られたフィルム1から、30mmx30mmの測定用試料として、JIS K−7105に準じてYIを測定した。また、空気中、150℃で24時間加熱処理した後、再度測定した。
【0098】
(h)硬度(鉛筆ひっかき値)
各実施例又は比較例で得られたフィルム1又は硬化物から、測定試料として、JIS K−7105−1990に準じて硬度測定した。
【0099】
(i)ガラス転移温度(Tg)
各実施例又は比較例で得られたフィルム2又は硬化物から、20mmx5mmの測定用試料を切り出し、動的粘弾性測定機(Rheogel-E4000)を用いて、正弦波で周波数10Hzによる引張りモードで、昇温速度5℃/分における損失ピーク(tanδ)より求めた。
【0100】
(j)線熱膨張係数
各実施例又は比較例で得られたフィルム2又は硬化物から、15mmx5mmの測定試料を切り出し、TMA−4000(マックサイエンンス社製)を用いて、引張りモード荷重10gにて、昇温速度10℃/分の条件下で測定し、100℃〜200℃の範囲での伸びの平均値として線熱膨張係数を求めた。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
表2から明らかなように、芳香族ポリイミドの皮膜(比較例1)では、透明性が低く、YIが高いため光半導体封止剤としては不適である。また、従来のエポキシ樹脂(比較例2)では、硬度が低く、全光線透過率、熱処理後の400nm光線透過率、及びTgが低く、耐熱性、耐黄変性に劣ることが明かである。これに対して、本願発明の脂環構造を有するポリイミドを含有する光半導体封止剤から得られる光半導体封止樹脂は、十分な硬度を有し、また、Tg、透明性が高く、耐黄変性の全てに優れた特性を有しており、光半導体封止樹脂として優れていることが明かである。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、耐熱性、透明性、機械強度に優れた封止膜を形成できる光半導体封止剤を提供することができる。該光半導体封止剤は、上記の優れた特徴を生かし、光半導体用途材料として、工業的に極めて利用価値が高く、特に表面実装型の白色LEDの封止剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】表面実装型発光ダイオードの模式的断面図
【符号の説明】
【0106】
1 ・・・ガラスエポキシ基板
2a、b・・・正負リード電極
3 ・・・サファイア基板
4 ・・・光半導体素子
5a、b・・・正負電極
6 ・・・ワイヤー
7 ・・・蛍光体
8 ・・・封止樹脂の層ないし皮膜
9 ・・・配線基板
10 ・・・はんだ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)テトラカルボン酸二無水物と(B)ジアミンとをイミド化して得られるポリイミド、及び有機溶剤を含有する光半導体封止剤であって、該ポリイミドが、
(i)脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物が、(A)成分中の50モル%以上であるか、
(ii)脂環構造を有するジアミンが、(B)成分中の50モル%以上であるか、又は、
(iii)脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物が、(A)成分中の50モル%以上であり、且つ、脂環構造を有するジアミンが、(B)成分中の50モル%以上である、
ポリイミドであることを特徴とする光半導体封止剤。
【請求項2】
(A)が、脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物100モル%である請求項1に記載の光半導体封止剤。
【請求項3】
(B)が、脂環構造を有するジアミン100モル%である請求項1に記載の光半導体封止剤。
【請求項4】
(A)が、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物である請求項1〜3のいずれかに記載の光半導体封止剤。
【請求項5】
(B)が、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン及び1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の光半導体封止剤。
【請求項6】
ポリイミド100重量部に対して、有機溶剤100〜2,000重量部を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の光半導体封止剤。
【請求項7】
有機溶剤が、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン、N,N−ジメチルアセトアミド、クレゾール、及びγ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載の光半導体封止剤。
【請求項8】
更に、蛍光体を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の光半導体封止剤。
【請求項9】
更に、エポキシ樹脂を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の光半導体封止剤。
【請求項10】
光半導体封止剤の25℃における粘度が、0.1〜30Pa・sである請求項1〜9のいずれかに記載の光半導体封止剤。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の光半導体封止剤を、乾燥、固化して得られる光半導体封止樹脂。
【請求項12】
層状ないし皮膜状の形態にある請求項11に記載の光半導体封止樹脂。
【請求項13】
光半導体封止樹脂のTgが、200〜350℃である請求項11又は12に記載の光半導体封止樹脂。
【請求項14】
光半導体封止樹脂の400nm光線透過率が、60〜99.5%である請求項11〜13のいずれかに記載の光半導体封止樹脂。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれかに記載の光半導体封止樹脂を備えた光半導体。
【請求項16】
光半導体が、表面実装型光半導体である請求項15に記載の光半導体。
【請求項17】
光半導体が、発光ダイオードである請求項15又は16に記載の光半導体。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれかに記載の光半導体封止剤を、半導体上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜から溶剤を乾燥留去し、層状ないし皮膜状に固化した封止樹脂成形体を形成して、半導体を封止する工程とを含む、光半導体の製造方法。



【図1】
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【公開番号】特開2007−80885(P2007−80885A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263095(P2005−263095)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000191250)新日本理化株式会社 (90)
【Fターム(参考)】