説明

光反射が低減されたナノ構造化薄膜

本発明は、支持体上に1つ又は2つ以上の機能層を含んで成る、ディスプレイ又はその構成部品内で使用するための多層光学フィルムであって、最も上側の機能層が、細長い形状の有機変性シリカ粒子を含む反射防止層を有する支持体を含む多層光学フィルムに向けられている。本発明のもう一つの形態は、該単一の反射防止層を形成する方法およびディスプレイおよびその構成部品を含めた種々の用途におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概ね、光学フィルムの分野に関する。より具体的には、本発明は、反射防止特性を有する単一塗膜、及びこのような塗膜を製造する方法に関する。塗膜は典型的には、ナノ構造化表面を示す。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムの分野において、光学的に透明な支持体はしばしば平滑であり、また、全ての平滑な塗膜の場合のように、これは結果として、塗膜/空気の界面からの光を或る程度反射させる。この特性は、多くの種々異なる用途における問題として当業者に認識されている。一例は、ディスプレイ装置表面におけるガラスの望ましくない反射である。一般にこの問題は、支持体に関する光の透過率の増大によって測定されるように、改善された反射防止性能をもたらすために、厚さ及び屈折率を調整された適用塗膜を使用することによって、対処されている。
【0003】
米国特許第5,582,859号明細書に記載されているように、各塗膜が注意深く選択された厚さ及び屈折率を有するような多層塗膜系の一部として、適用塗膜が、全可視光スペクトル領域にわたって光透過の増大を達成できることが知られている。このような塗膜の基本原理は、空気-フィルムの界面及びフィルム-支持体の界面から反射された光相互間の弱め合い干渉という意味で理解することができる。ガラス支持体又はプラスチック支持体は、例えば反射防止フィルムが約1.2の低い有効屈折率neffを有することを必要とする。このような低複屈折率材料は存在しないので、この要件は、均質な単一層塗膜では実現することができず、従って、多層塗膜が使用されている。
【0004】
単層フィルムは極めて狭い波長範囲内の光の反射を効果的に低減できはするものの、幅広い波長領域にわたる反射を低減する(すなわち広帯域反射制御)ためには、互いに重ね合わされたいくつかの(典型的には金属酸化物系の)透明層を含む多層フィルムを使用することの方が多い。このような構造の場合、性能を改善するために、半波長層が四分の一波長層と交互に配置される。多層反射防止フィルムは、2つ、3つ、4つ、又は5つ以上の層を含んでよい。このような多層フィルムの形成は、典型的には、それぞれが所定の屈折率と厚さとを有する層の数に相当する多数回の蒸着処置又はゾルゲル塗布を含む複雑なプロセスを必要とする。これらの干渉層には、各層の厚さの正確な制御が必要とされる。好適な多層反射防止フィルムの構成は特許文献及び技術文献においてよく知られており、また、種々のテキスト及び特許文献、例えばH. A. Macleod, 「Thin Film Optical Filters(薄膜光学フィルター)」, Adam Hilger, Ltd., Bristol 1985、及びJames D. Rancourt, 「Optical Thin Films User's Handbook(光学薄膜ユーザーのハンドブック)」, Macmillan Publishing Company, 1987、及び米国特許第6,210,858号明細書に記載されており、前記明細書には、無機微粒子を含有する低屈折率層から成る反射防止多層フィルムが記載されている。このフィルムの屈折率低減は、主として間隙性空気ボイドによって得られる。多層フィルム塗膜は3組の問題を被る。第1は、多層塗膜の反射防止性能が角度に依存することである。これは、法線角から斜角へと透過が変化することを意味する。第2には、正確に制御される厚さ及び光学特性を有するこのような多層塗膜の再現可能な処理は難しく、ひいてはコスト高であり、また多大な時間がかかる。第3に、これは極めて高価なプロセスである。
【0005】
単層を含む反射防止層も知られている。典型的には、このような単層は、(450〜650 nmのより広い範囲内の)ただ1つの波長において1%未満の反射率値を提供する。一般に採用される単層反射防止塗膜は、金属フッ化物、例えばフッ化マグネシウム(MgF2)の層を含む。この層は、よく知られた真空蒸着技術又はゾルゲル技術によって適用することができる。典型的には、このような層は、反射率最小値が望まれる波長において、ほぼ四分の一波長の光学的厚さ(すなわち層の屈折率と層厚との積)を有する。
【0006】
2005年4月7日付で出願された同一譲受人による同時係属中の米国特許出願第11/101,004号明細書には、層の下側に位置する表面に対して形状が実質的に合致している反射防止層を有する透明支持体が開示されている。反射防止層は50 m2/gを上回る表面積を有するようにナノボイド化された球形の、バインダーポリマー中に分散されたポリマー粒子を含有する。
【0007】
或いは、制御された表面構造を有する多孔質フィルムを形成することによって、単一塗膜を反射防止性にすることもできる。孔サイズが四分の一波長未満であるものとすれば、多孔質フィルムは、フィルム全体にわたって平均して与えられる有効屈折率を有する連続フィルムとして現れることになる。孔の容積分率が高くなればなるほど、neffは低くなる。この概念に基づいて、種々のアプローチが開発されている。例えばSteiner他、Science、第283巻、第520〜522頁(1999);Ibn-Elhaj他、Nature、第410巻、第796〜799頁(2001);国際公開第01/29148号パンフレットを参照されたい。前記パンフレットには、一方の材料が架橋性であり他方の材料は架橋性でない、少なくとも2種の材料を均質に混合し、次に混合物を支持体に適用し、そして次いで、例えば溶剤を採用することにより材料の少なくとも一方を除去することにより、位相構造化ポリマーフィルムを形成することが開示されている。制御された表面構造に基づく、このような単一の反射防止塗膜は、その光学特性の角度依存をさほど示さない。他方において、このような塗膜は、魅力的な機械堅牢性を欠いている。このことは、反射防止用途において用いられるフィルムにとって、これらのフィルムがしばしば極めて薄いため、特に重大である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
欧州特許出願第1418448号明細書にはまた、十分な反射防止特性を依然として有し、しかも硬質塗膜の機械的堅牢性を提供する単一層として適用することができる反射防止塗膜系が開示されている。具体的には欧州特許出願公開第1418448号明細書には、(a)架橋しない第1材料と架橋する第2材料とを、さらにナノ粒子及び任意選択の溶剤との組み合わせにおいて含む混合物を支持体上に適用し;(b)支持体に適用された混合物中に架橋を誘発し、そして(c)続いて第1材料の少なくとも一部を除去する工程を含むプロセスによって製造することができる、単一層反射防止硬質塗膜が開示されている。
【0009】
制御された表面構造に基づくこのような単一反射防止塗膜は、その光学特性の角度依存をさほど示さず、そしてまた、魅力的な硬質塗膜特性を提供する。しかしながら、上記単一反射防止塗膜は、所望の構造化表面を得るために、2工程プロセス、すなわち、塗布を達成するための第1工程と、塗布用材料の一部を除去することにより構造化表面及び空気ボイドの形成を達成するための第2工程とから成るプロセスが必要とされるという欠点を有している。この2工程プロセスは、経済上現実的でないだけでなく、洗浄工程と関連する環境汚染を招くおそれもある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記問題の1つ又は2つ以上を克服することを目的とする。簡潔に要約すると、本発明の1つの形態によれば、ディスプレイ又はその構成部品内で使用するための多層光学フィルムが、支持体に隣接する又は隣接しない1つ又は2つ以上の機能層を有し、1つ又は2つ以上の機能層の最も上側の層は、細長い形状の有機変性シリカ粒子を含む反射防止層である。この層内の粒子は有利には、ナノスケールの尾根及び谷を含むナノ構造化表面を形成することができる(AFM又は原子間力顕微鏡分析によって観察可能)。この層は、空気ボイドがシリカ粒子相互間で、該ナノ粒子表面の下に存在する間隙性多孔質によって特徴づけることもできる。1つの好ましい態様の場合、反射防止層は、さらに高分子バインダー材料を含むシリカ-ポリマーナノ複合体である。
【0011】
本発明の別の形態は、このような反射防止層の形成方法であって、この方法が、(a)細長い形状のシリカナノ粒子のコロイド溶液;(b)任意選択のポリマー、オリゴマー、及び/又はモノマー;(c)任意選択の有機溶剤を含む組成物を、シリカナノ粒子が1〜99重量%固形分の量で塗布用組成物中に存在する状態で、支持体上に塗布し;そして(d)有機溶剤を除去するために塗膜を乾燥させ、これにより反射防止ポリマー、任意選択的にバインダーポリマーを含むシリカ-ポリマーナノ複合フィルムを形成することを含む、反射防止層の形成方法に関する。
【0012】
1つの態様の場合、細長いシリカ(SiO2)ナノ粒子は、多官能性有機モノマー又はオリゴマー、及び重合開始剤と混合される。支持体上に塗布されると、組成物は次いで重合され、そしてSiO2ナノ粒子は、構造化表面を形成する。フィルムは結果として多孔質であるとともに、構造化表面における山頂間に空気が存在することにより、フィルムの成分よりも低い平均屈折率を有する。
【0013】
好ましい態様の場合、フィルムは、硬質塗膜として役立つこともでき、そしてこれが塗布される支持体よりも高い硬度と、シリカの存在に起因して、ポリマー成分単独よりも高い硬度とを有することになる。
【0014】
1つの具体的な態様の場合、フッ素化オリゴマーの使用はさらに、平均屈折率を低減し、より低い反射率さえをももたらす。フルオロ-オリゴマーの使用は、多孔質フィルム内への汚染物質に対する良好な耐浸透性を有する、比較的低い表面エネルギーのフィルムを提供することもできる。
【0015】
反射防止フィルム又は塗膜は本明細書中では、(支持体上に堆積された場合に)可視光スペクトルの少なくとも一部において、支持体の透過率よりも高い透過率を有するフィルム又は塗膜と定義される。典型的には、このようなフィルムには、可視光を散乱させることができるのに十分なほど大きい構造的構成要件が全く又は実質的になく、そしてこのようなフィルムは従って、本質的に光学的に透明であるのがよい。
【0016】
反射防止層は、1 %未満の平均正反射率値を提供する(分光光度計によって測定され、そして波長範囲450〜650 nmにわたって平均される)。対照的に、低反射層が提供する平均正反射率は2 %未満ではあるが、しかし1 %以上である。
【0017】
本発明の枠組みの中で、「ナノ構造化表面」という用語は、ランダムに分配することができるナノスケールの尾根及び谷を示す表面を意味する。より具体的には、尾根の高さ(h)及び尾根間の平均距離(λC)は、(平均して)マイクロメートルからナノメートルの範囲にある。反射防止用途に適した好ましい態様の場合、尾根の高さ(h)は、50〜200 nmの範囲内にあってよく、尾根間の横方向距離(λC)は、可視光の最短波長(λlight)よりも短く、例えば400 nm未満であるのがよい。本明細書に使用される「ナノスケール」という用語は、500 nm未満、好ましくは250 nm未満、より好ましくは100 nm未満の平均寸法を意味する。
【0018】
同様に、間隙性ボイド又は小孔の結果としての、層内部のいかなる空気ボイドもナノサイズを有していてよく、好ましくは50〜400 nmであってよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の塗膜は、自動車及び航空機ウィンドスクリーン、テレビ受信機及びコンピュータモニターに使用されるような陰極線管(CRT)、可撓性ディスプレイ、及び眼鏡のための反射防止硬質塗膜を含む多様な用途を有している。本発明による塗膜は有利には、CRT、プラズマ、液晶、及びOLEDディスプレイを含む一般的な任意のディスプレイ用途に適用することもできる。
【0020】
本発明の反射防止フィルムは、LC(液晶)ディスプレイのようなディスプレイの構成部品である偏光板において、偏光子の耐久性及び性能を改善するための付加価値塗膜として特に有用である。本発明によるこのようなフィルムは、可視スペクトル全体にわたって1 %未満の反射率を提供し、そして任意には、硬質塗膜耐久性をも提供するように使用することができる。本発明による反射防止塗膜は、多層システムと比較して、反射防止性能の角度依存をさほど示さない。任意には、本発明の反射防止塗膜は、反射防止塗膜が何らかの種類の機械力と接触すると考えられるいかなる光学系にも、例えば表面のクリーニングが定期的に必要とされ得るいかなる光学系にも適用することができるので有利である。
【0021】
本発明の上記及びその他の目的、特徴、及び利点は、下記説明及び図面と併せて考えればより明らかになる。図面に共通な同一の構成要件を指定するために、可能な場合には、同一の参照番号が使用されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の枠組みの中で、「ナノ粒子」という用語は、その大部分が直径1マイクロメートル未満であるような粒子と定義され、直径はナノ粒子の「等価円直径」(ECD)を意味する。本発明に使用される細長い非球形ナノ粒子の場合、粒子の一方の側から反対側へ引くことができる最長直線は、長さの値として使用することができ、そして垂直寸法は、細長いナノ粒子の厚さ又は幅の値として使用することができる。
【0023】
好ましい態様の場合、ナノ粒子の大部分は直径500 nm未満であり、より好ましくは、粒子の大部分は直径150 nm未満である。最も好ましくは、全ての粒子の直径が、50 nmよりも小さい。粒子は、最終的な塗膜の透明性に対して顕著な又は不必要な影響を及ぼさないような直径を有するべきである。粒子直径を測定する方法は、BET吸着、光学顕微鏡又は走査電子顕微鏡、又は原子間力顕微鏡(AFM)による画像形成を含む。
【0024】
本明細書中に使用される「等価円直径」(ECD)という用語は、ナノ粒子と同じ投影面積を有する円の直径を意味する。これは、周知の技術を用いて測定することができる。「アスペクト比」という用語は、ナノ粒子厚に対するナノ粒子ECDの比を定義するために使用される。
【0025】
或いは、ナノ粒子は、米国特許第5,597,512号明細書及び同第5,221,497号明細書(Watanabe他)に記載されているような伸長度によって特徴づけることもできる。ナノ粒子の伸長度は、サイズ比D1/D2で定義され、D1は、Journal of Chemical Physics、第57巻、第11号(1972年12月)、第4814頁において詳細に説明された動的光散乱法によって測定された粒子サイズ(nm)を意味し、この粒子サイズは、商業的に入手可能な動的光散乱測定機器を使用することにより測定することができる。粒子サイズ(D2 nm)は、D2=2720/Sの式から計算され(Sは、コンベンショナルなBET法(窒素ガス吸着法)によって測定されるべき粒子の比表面積(m2/g)を意味する)、そして細長いコロイドシリカ粒子と同じ比表面積S(m2/g)を有する仮想上の球形コロイドシリカ粒子の直径を意味する。従って、BET法によって測定された粒子サイズ(D2 nm)に対する、前記動的光散乱法によって測定された粒子サイズ(D1 nm)の比D1/D2は、細長いコロイドシリカ粒子の伸長度を表す。
【0026】
好ましくは、本発明において使用される細長いシリカ粒子は、アスペクト比、又は伸長度(D1/D2比)が5以上であることによって特徴づけられる。本発明の塗膜を形成するために使用されるゾル又はコロイド溶液中のシリカのナノ粒子は、ただ1つの平面内に伸長を有し、そしてその伸長に沿って均一な厚さ5〜20 nmを有するとともに、好ましくは、ナノ粒子の大部分に関して、動的光散乱法によって測定して、又はTEM電子顕微鏡法で観察して、粒子サイズD1が40〜300 nmである。
【0027】
本発明において使用される細長いシリカナノ粒子は、該ナノ粒子の該表面に有機材料を結合することにより、有機変性される。好ましくは、ナノ粒子は、有機部分を有するアルコキシ-シラン官能性化合物で有機変性され、アルコキシ-シラン官能基はナノ粒子に結合され、そして有機部分は、ナノ粒子を安定化させるために表面から延びる。アルコキシ-シラン官能基は、置換型又は無置換型アルキル基を含むこともできる。好ましいアルコキシ-シラン官能性化合物は、Aldrich Chemical Co.(PA)から商業的に入手可能なメタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシランである。
【0028】
1つの態様の場合、シランカップリング剤と第1有機溶剤とを含む溶液を形成し、第1有機溶剤(相対的に低い沸点を有する)が徐々に蒸発される温度で、第2有機溶剤中のナノ粒子分散体にこの溶液を、第2有機溶剤中の有機変性ナノ粒子分散体を産出するようにゆっくりと添加することにより、有機変性ナノ粒子は形成される。
【0029】
シリカナノ粒子の調製それ自体は当業者に知られており、例えば上述の米国特許第5,221,497号明細書及び同第5,597,512号明細書に記載されている。このような材料は、Nissan Chemical Industries, Ltd.(日本国東京)から商業的に入手可能である。いくつかの事例において、シリカ粒子は任意には、他の多価金属の微量の酸化物を含有してよい。多価金属のこのような任意の追加の酸化物の濃度は、粒子を形成するために使用されるシリカゾル中の重量比として、SiO2に対して全体で1500〜15000 ppmである。このような他の多価金属は、二価金属、例えばカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、鉛(Pb)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及びマンガン(Mn);三価金属、例えばアルミニウム(Al)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、イットリウム(Y)、及びチタン(Ti);及び四価金属、例えばTi、Zn、及びSnを含む。
【0030】
本発明による方法において使用されるナノ粒子は、しばしば懸濁液の形態で提供される。本発明の反射防止層は、シリカ粒子が層内に1〜99重量%固形分の量で、好ましくは5〜95重量%の量で、より好ましくは15〜90重量%で存在する、細長い形状のシリカ粒子のコロイド溶液を塗布することにより形成することができる。
【0031】
本発明による方法の場合、ポリマーバインダー材料が任意選択的に使用される。このポリマーは、架橋されていても、いなくてもよい。基本的には、バインダー材料として使用するには、多種多様の材料が適している。しかしながら、バインダー材料と全ての他の材料との組み合わせが、均質混合物を有利にもたらすべきである。
【0032】
或いは、別個のバインダー材料の代わりに、又はこれに加えて、層に機械的耐久性を提供するように、ポリマーを有機変性するために使用されるナノ粒子安定剤を架橋することもできる。
【0033】
ポリマーは、予め形成されたポリマー(重合性オリゴマーを含む)を使用することによって、又は塗布用組成物中で重合されるモノマーを使用することによって得ることができる。1つの好ましい態様の場合、バインダー材料は、塗布用組成物のためのナノ粒子と均質に混合されたポリマーである。最終ポリマーは、架橋されていない場合、好ましくは重量平均分子量が500〜106、より好ましくは1000〜106である。
【0034】
上記のように、最終的な反射防止層内のバインダー材料として、多種多様なポリマーが基本的には適している。これらのポリマーは、縮合重合から形成される全てのポリマー、例えばポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリウレタン系樹脂、ポリマーアミド、及びポリマーイミド;及び付加重合から形成されるポリマー、例えばポリアクリル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、及びポリエーテル、並びに天然由来のポリマー、例えば酢酸セルロースを含む。好ましくは、塗膜内のポリマーは、反射防止層の付着を促進するために、下側の支持体内に浸透する。一般に、ポリマーの分子量が低いほど、より多くの量が浸透する。また、より低速の塗布プロセスが、浸透を促進する傾向がある。塗布プロセス中に、支持体内に拡散することができ、支持体を或る程度膨潤させ、支持体内へのポリマーの浸透を許すか又は増強する溶剤を選択することができる。
【0035】
任意選択的に、反射防止塗膜のための塗布用組成物中のポリマー、オリゴマー、又はモノマーを架橋することができる。本発明によるプロセスにおいて用いるためには、いかなる架橋法も適している。好適な架橋開始方法は、例えば電子ビーム照射、電磁線照射(UV、可視光、及び近IR)、加熱であり、また湿分硬化性化合物の場合には加湿である。
【0036】
1つの好ましい態様の場合、ポリマーバインダーは、UV照射によって架橋される。UV架橋は、フリーラジカルメカニズムを介して、又はカチオン性メカニズムによって、又はこれらの組み合わせによって行うことができる。別の好ましい態様の場合、架橋は熱によって達成される。
【0037】
アクリレートモノマー(反応性希釈剤)及びオリゴマー(反応性樹脂及びラッカー)が、フリーラジカル系配合物の主成分であり、硬化された塗膜にその物理特性のほとんどを与える。UV線エネルギーを吸収し、フリーラジカルを形成するように分解し、そして重合を開始するようにアクリレート基のC=C二重結合を攻撃するためには、光重合開始剤が必要となる。カチオン化学反応は、脂環式エポキシ樹脂及びビニルエーテルモノマーを主成分として利用する。光重合開始剤がルイス酸を形成するためにUV光を吸収し、ルイス酸はエポキシ環を攻撃して重合を開始する。UV硬化とは、紫外線硬化を意味し、波長280〜420nm、好ましくは320〜410nmのUV線の使用を伴う。
【0038】
反射防止層のために使用できるUV線硬化性樹脂及びラッカーの例は、光重合性モノマー及びオリゴマー、例えば多官能性化合物、例えば(メタ)アクリレート官能基(例えばエトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、又はネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びこれらの混合物)を有する多価アルコール及びこれらの誘導体のアクリレート及びメタクリレートオリゴマー(本明細書中の(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートを意味する)から誘導されたもの、及び低分子量ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、スピロアセタール樹脂、エポキシアクリレート、ポリブタジエン樹脂、及びポリチオール-ポリエン樹脂など及びこれらの混合物から誘導されたアクリレート及びメタクリレートオリゴマー、及び比較的多量の反応性希釈剤を含有する電離線硬化性樹脂である。本明細書中で使用可能な反応性希釈剤は、単官能性モノマー、例えばエチル(メタ)アクリレート、エチルへキシル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン及びN-ビニルピロリドン、及び多官能性モノマー、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、又はネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートを含む。
【0039】
とりわけ、好都合に使用される輻射線硬化性ラッカーは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む。これらのオリゴマーは、イソシアネートを末端基とするウレタンを産出するために、ジイソシアネートと、オリゴ(ポリ)エステル又はオリゴ(ポリ)エーテルポリオールとを反応させることから誘導される。続いて、ヒドロキシを末端基とするアクリレートを末端イソシアネート基と反応させる。このアクリル化は、オリゴマーの末端に不飽和を提供する。ウレタンアクリレートの脂肪族又は芳香族の性質は、ジイソシアネートの選択によって決定される。芳香族ジイソシアネート、例えばトルエンジイソシアネートは、芳香族ウレタンアクリレートオリゴマーを産出することになる。脂肪族ジイソシアネート、例えばイソフォロンジイソシアネート又はヘキシルメチルジイソシアネートを選ぶことにより、脂肪族ウレタンアクリレートが生じる。ポリオールは一般に、エステル、エーテル又はこれら2つの組み合わせとして分類される。ポリオールのオリゴマー主鎖は2つ又は3つ以上のアクリレート単位又はメタクリレート単位によって末端形成され、これらの単位は、フリーラジカル開始重合のための反応部位として役立つ。イソシアネート、ポリオール、及びアクリレート又はメタクリレート末端単位の中からの選択は、ウレタンアクリレートオリゴマーの発生においてかなりの自由度を可能にする。これらのオリゴマーは多官能性であり、そして複数の反応部位を含有する。反応部位数が増大することにより、硬化速度は改善され、最終生成物は架橋される。オリゴマー官能価は2〜6であってよい。
【0040】
とりわけ、好都合に使用される輻射線硬化性樹脂は、多価アルコール及びこれらの誘導体、例えば、ペンタエリトリトールのアクリレート誘導体、例えばペンタエリトリトールテトラアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートで官能化された、イソフォロンジイソシアネートから誘導された脂肪族ウレタンの混合物から誘導された多官能性アクリル化合物を含む。商業的に入手可能な本発明の実施において使用されるウレタンアクリレートオリゴマーのいくつかの例は、Sartomer Company(ペンシルヴェニア州Exton)のオリゴマーを含む。本発明の実施において好都合に使用される樹脂の例は、Sartomer CompanyのCN 968である。
【0041】
架橋反応を開始するために、塗布用組成物中に開始剤が存在してよい。光開始剤は、光を吸収すると架橋反応を開始することができる。このように、UV光開始剤は、紫外線スペクトル領域内の光を吸収する。本発明による方法においては、任意の好適な周知のUV光開始剤を使用することができる。光重合開始剤、例えばアセトフェノン化合物、ベンゾフェノン化合物、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート、α-アミルオキシムエステル、又はチオキサントン化合物、及び光増感剤、例えばn-ブチルアミン、トリエチルアミン、又はトリ-n-ブチルホスフィン、又はこれらの混合物を紫外線硬化用組成物中に内蔵することができる。本発明において、好都合に使用される開始剤は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1である。
【0042】
UV重合性モノマー及びオリゴマーは、塗布され、そして乾燥させられ、続いて、光学的に透明な架橋された層を形成するためにUV線に当てられる。好ましいUV硬化線量は、50〜1000 mJ/cm2である。開始剤の量は、広い範囲の間で変動し得る。光開始剤の適量は、架橋反応に参加する化合物の総量に対して、例えば0超〜20重量%である。光開始剤の相対量は、架橋工程の動態を決定することになり、こうして、(ナノ)表面構造、ひいては反射防止性能に影響を与えるように使用することができる。
【0043】
UV硬化性塗布用組成物を、例えば下記のように形成することができる。溶剤中のUV硬化性モノマー又はオリゴマー又はポリマーを撹拌装置内に入れる。この混合物に、光開始剤を添加する。所定の時間にわたる撹拌後、別の溶剤中に分散された有機変性ナノ粒子を混合物に液滴状に添加する。得られた混合物は、移動しているXホッパーを介してマイクロポンピングし、そしてプラスチックフィルム支持体に適用することができるほど、粘性が十分に低い。塗布された支持体は、次いで乾燥させ、そして完全に硬化するまでUVランプに当てることができる。塗膜の厚さは、種々のプロセス因子、例えば溶剤、被覆率、及び濃度などによって制御することができる。
【0044】
或いは、非UV硬化性ポリマーは、反射防止層内で使用することができる。例えば、別の態様において、好ましいポリマーは、屈折率1.48未満、好ましくは屈折率約1.35〜1.40のフッ素含有ホモポリマー又はコポリマーである。好適なフッ素含有ホモポリマー及びコポリマーは:フルオロオレフィン(例えばフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、(メタ)アクリル酸の部分フッ素化又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体、及び完全フッ素化又は部分フッ素化ビニルエーテル、フルオロエチレン及びビニルエーテルを基剤とするコポリマーなどを含む。
【0045】
好ましいポリマーバインダーは、モノマー混合物、上述のメタクリルオリゴマー、例えばSANTOMERモノマーから予め形成された、又はその場で形成される、架橋型又は非架橋型の、ポリアクリル、例えばポリメタクリル系樹脂である。他の好ましいバインダー材料は、フルオロポリマー、例えばAsahi Chemical Co.(日本国東京)から商業的に入手可能なLUMIFLONである。さらに別の好ましいバインダー材料は、天然由来の酢酸セルロース、例えば酢酸酪酸セルロースである。
【0046】
本発明による方法における支持体としては、種々様々な支持体を使用することができる。好適な支持体は例えば、平坦な又は湾曲した、剛性又は可撓性の支持体である。好適な支持体は、例えばポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ポリノルボルネン、又は非晶質固形物、例えばガラス、又は結晶性材料、例えばシリコン又はガリウムヒ素から成るフィルムを含む。ディスプレイ用途において使用するための好ましい支持体は、例えばガラス、ポリノルボルネン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、及びポリエチレンナフタレートである。
【0047】
上述のように、本発明の別の形態は、反射防止層の形成方法であって、該方法が、(a)細長い形状の有機変性シリカナノ粒子のコロイド溶液;(b)任意選択のポリマー材料、又はそのオリゴマー前駆体又はモノマー前駆体;(c)任意選択の有機溶剤(例えば、モノマーによって置き換えることができる)を含む塗布用組成物を、該シリカナノ粒子が1〜99重量%固形分、より好ましくは15〜90重量%固形分の量で塗布用組成物中に存在する状態で、支持体上に塗布し;そして(d)有機溶剤を除去するために塗膜を乾燥させ、これにより反射防止層、好ましくはシリカ-ポリマーナノ複合フィルムを形成することを含む、反射防止層の形成方法に関する。ナノスケールの尾根及び谷を含むナノ構造化表面を有する反射防止層をこうして形成することができ、この反射防止層は、ナノ構造化表面の下に空気ボイドを含むこともでき、これにより、層は、粒子間の空間によって形成された間隙性小孔によって特徴づけられる。
【0048】
混合物は、湿潤塗膜堆積の当業者に知られた任意のプロセスによって、支持体上に塗布することができる。好適なプロセスの例は、スピン塗布、浸漬塗布、噴霧塗布、流し塗布、メニスカス塗布、毛管塗布、及びロール塗布である。
【0049】
基本的には、例えばナノ粒子を使用し、そしてナノ粒子を他の成分の液状混合物中、例えば液状モノマー中に混合することにより、溶剤を使用することなしに、支持体に塗布用混合物を適用することが可能である。しかしながら、典型的には、ポリマー又はモノマー及びナノ粒子は、選ばれた塗布法を用いて支持体に適用するのに適した混合物を調製するために、少なくとも1種の溶剤と混合される。
【0050】
基本的には、多様な溶剤を使用することができる。しかし、混合物中に存在する溶剤と全ての他の材料との組み合わせは、均質な混合物を有利にもたらすべきである。
【0051】
ナノ粒子は典型的には、混合物にコロイド懸濁液の形態で添加される。所期特性を有するように混合物を調節するために、同じ溶剤を使用することができる。しかし、他の溶剤を使用することもできる。
【0052】
好適であり得る溶剤の例は、1,4-ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、クロロホルム、クロロフェノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジクロロメタン、ジエチルアセテート、ジエチルケトン、炭酸ジメチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、エチルアセテート、m-クレゾール、モノ-及びジ-アルキル置換型グリコール、N,N-ジメチルアセトアミド、p-クロロフェノール、1,2-プロパンジオール、1-ペンタノール、1-プロパノール、2-ヘキサノン、2-メトキシエタノール、2-メチル-2-プロパノール、2-オクタノン、2-プロパノール、3-ペンタノン、4-メチル-2-ペンタノン、ヘキサフルオロイソプロパノール、メタノール、メチルアセテート、n-プロピルアセテート、メチルアセトアセテート、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、n-メチルピロリドン-2、n-ペンチルアセテート、フェノール、テトラフルオロ-n-プロパノール、テトラフルオロイソプロパノール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、及び水である。アルコール、ケトン、及びエステルを基剤とする溶剤を使用することもできるものの、アクリレートの溶解度は、高分子量アルコールを用いると問題になることがある。ハロゲン化溶剤(例えばジクロロメタン及びクロロホルム)及び炭化水素(例えばヘキサン及びシクロヘキサン)が好適な場合もある。一般に、支持体に対する低反射層の付着を増強するためには、溶剤は、特定の支持体が付着力を増強するように選択することができる。例えば、酢酸セルロース支持体を使用する場合には、n-プロピルアセテートが好ましい溶剤である。
【0053】
本発明によるフィルム又は塗膜には、任意のその他の好適な添加剤を添加することができる。しかし、混合物が塗布前に均質であることは依然として有利である。
【0054】
塗布用組成物を適用した後、ボイドを得るために洗浄することは必要でない。このように、1工程塗布プロセスで、ナノ構造化表面を得ることができる。理論に縛られたくはないが、細長いシリカナノ粒子が、乾燥させられるのに伴って塗膜内に異方性集成されるので、粒子は、反射防止層内に尾根と谷とを形成する際に或る程度鉛直方向に整列されるようになると考えられる。加えて、ナノ粒子からの有機溶剤の蒸発中、及び/又は下側に位置する支持体内への有機溶剤の浸透中に孔を形成することもできる。
【0055】
反射防止層の厚さは、概ね50 nm〜10マイクロメートル、好ましくは100〜800ナノメートル、より好ましくは100〜200ナノメートルである。
【0056】
反射防止層は好ましくは無色であるが、しかし、上塗り膜を通してディスプレイの構成又は観察に有害な影響を与えない限り、この反射防止層が色補正のために又は特殊効果のために何らかの色を有し得ることが具体的には考えられる。従って、反射防止層のための塗布用組成物中には、色を付与する色素を内蔵することができる。加えて、ポリマー中には、この層に所望の特性を与えることになる添加剤を内蔵することもできる。追加の化合物は、界面活性剤、乳化剤、塗布助剤、滑剤、艶消し粒子、レオロジー改質剤、架橋剤、カブリ防止剤、無機充填剤、例えば導電性及び非導電性金属酸化物粒子、顔料、磁性粒子、及び殺生剤などを含む。
【0057】
この層の効果は、塗膜内部に間隙性空気ボイドを誘発することができるサブミクロンサイズの無機粒子又はポリマー粒子を内蔵することにより、改善することができる。この技術はさらに、米国特許第6,210,858号明細書及び同第5,919,555号明細書に記載されている。2003年11月18日付けで出願された、同一譲受人による米国特許出願第10/715,655号明細書に記載されているように、塗膜曇りの不利益が低減されたサブミクロンサイズのポリマー粒子の内部粒子空間内の空気ボイドによって、低反射層の効果をさらに改善することができる。
【0058】
反射防止層のための塗布用組成物の組成、並びに、種々の工程及びプロセスにおける工程の正確なプロセス条件を含む、選択されたプロセスは共に、得られる反射防止フィルム又は塗膜の表面構造を決定することになる。表面構造(すなわち谷間の深さ、及び尾根間の距離)は、例えば、温度、ナノ粒子ローディング率、ナノ粒子及び有機バインダーの性質、溶剤、UV硬化プロセスなどによって影響を及ぼされる。例えばナノ構造が微細であればあるほど(十分に小さなボイド及び尾根)、また塗膜の密度が低ければひくいほど、反射が小さくなり、又は散乱が小さくなる傾向がある。また、塗膜プロセスが低速であればあるほど、生成される構造は薄く微細になる傾向がある。屈折率「n」は、ボイド密度によって制御され、また、反射防止特性は、層の有効屈折率及び有効厚の両方によって制御される。
【0059】
フィルム又は塗膜の機械特性には、選択された方法及び条件によって影響を与えることができる。例えば、いかなる架橋の架橋密度も、架橋中又は架橋後にフィルム又は塗膜を加熱することにより高めることができる。フィルムの架橋密度を高めることによって、結果として得られるフィルム又は塗膜の硬度、モジュラス、及びTgを増大させることができる。
【0060】
一般に、本発明による塗膜の屈折率値は、層内の多孔度又は空気ボイド度に応じて、反射率に基づいて計算して、1.1〜1.4、好ましくは1.2〜1.3である。
【0061】
本発明の好ましい態様の場合、本発明による反射防止フィルムは、用途に応じて300 nm未満、好ましくは150 nm未満である大多数の尾根を含む。表面構造を特徴づける有用な方法は、AFM(原子間力顕微鏡法)画像形成、及びTEM(透過電子顕微鏡法)を用いることによる。本発明の1つの態様の場合、反射防止フィルムのRMS表面粗さは2〜15、好ましくは5〜10である。好ましい態様の場合、本発明によるナノ構造化フィルム又は塗膜は、これらが載置された支持体の、可視電磁スペクトル波長に対する光透過特性を低減することはない。
【0062】
別の好ましい態様の場合、本発明によるナノ構造化フィルム又は塗膜は、これらが載置された支持体の、可視電磁スペクトル波長に対する光透過を高める。
【0063】
本発明による多層光学フィルムは、液晶ディスプレイ用偏光子板を製作する際に使用されるカバーシートとして有用である。反射防止フィルムに加えて、本発明の多層フィルム内に使用するための好適な補助機能層は、例えば耐摩耗硬質塗膜層、防眩層、スマッジ防止層、耐ステイン層、低反射層、静電防止層、視角補償層、及び湿分バリヤ層を含む。任意には、本発明において使用されるカバーシート複合体は、カバーシートの上側に、引き剥がし可能な保護層を含むこともできる。
【0064】
1つの態様の場合、このようなカバーシートは例えば、任意選択のキャリヤ支持体、低複屈折ポリマーフィルム、対PVA付着促進層、及び、前記キャリヤ支持体の、低複屈折ポリマーフィルムと同じ側に位置する、反射防止フィルムに加えた少なくとも1つの補助(機能)層を含む複合シートを含むことができる。
【0065】
カバーシート内の使用に適した低複屈折保護ポリマーフィルムは、高い光透過率(すなわち>85%)の高透明性フィルムを形成する、低い固有複屈折Δnintを有する高分子材料を含む。好ましくは、低複屈折保護ポリマーフィルムの面内複屈折Δninは約1×10-4未満であり、面外複屈折Δnthは、0.005から-0.005である。本発明において使用される低複屈折ポリマーフィルム内で使用するための高分子材料の一例としては、とりわけ、セルロースエステル(トリアセチルセルロース(TAC)、二酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロースを含む)、ポリカーボネート(例えばGeneral Electric Corp.から入手可能なLEXAN)、ポリスルホン(例えば、Amoco Performance Products Inc.から入手可能なUDEL)、ポリアクリレート、及び環状オレフィンポリマー(例えばJSR Corp.から入手可能なARTON、Nippon Zeonから入手可能なZEONEX及びZEONOR、Ticonaによって供給されるTOPAS)が挙げられる。好ましくは、低複屈折保護ポリマーフィルム(多層光学フィルム内の支持体)は、商業的な入手可能性、及び優れた光学特性に基づいて、TAC、ポリカーボネート、又は環状オレフィンポリマーを含む。
【0066】
低複屈折ポリマーフィルムの厚さは、5〜100マイクロメートル、好ましくは5〜50マイクロメートル、最も好ましくは10〜40マイクロメートルであってよい。
【0067】
液晶ディスプレイは典型的には、液晶セルの各側に1つずつ、2つの偏光子板を採用する。各偏光子板は、PVA二色性フィルムの各側に1つずつ、2つのカバーシートを採用する。各カバーシートは、液晶ディスプレイの性能を改善するために必要な種々の補助層を有することができる。カバーシート内に採用される有用な補助層は、上述のものを含む。典型的には、観察者に最も近いカバーシートは、下記補助層のうちの1つ又は2つ以上を含有する:耐摩耗層、スマッジ防止層又は耐ステイン層、反射防止層、及び防眩層。液晶セルに最も近いカバーシートのうちの一方又は両方は典型的には、視角補償層を含有する。LCDにおいて採用される4つのカバーシートのうちのいずれか又は全ては、任意には、静電防止層及び湿分バリヤ層を含有することができる。
【0068】
1つの特定の態様の場合、カバーシート複合体は、反射防止層に加えて防眩層を含有する。好ましくは、防眩層及び反射防止層は、偏光子板内の偏光フィルムとは反対側の低複屈折ポリマーフィルムの表側に配置される。
【0069】
防眩塗膜は、正反射を低減するために使用される粗面化又はテキスチャ加工された表面を提供する。望ましくない反射光の全てがまだ存在するが、しかし、この反射光は正反射させられるのではなく、散乱させられる。本発明の別の態様の場合、本発明による反射防止層は、耐摩耗硬質塗膜層及び/又は防眩層との組み合わせにおいて使用される。反射防止塗膜は、防眩層又は耐摩耗層又はその両方の上側に適用される。
【0070】
例えば、図1は、キャリヤ支持体20に最も近い最下層12と、3つの中間機能層14, 15及び16と、最上層18とから成るカバーシート25を含むカバーシート複合体5の1つの態様を示し、このカバーシート25は、偏光板の製造の際に偏光フィルムとの付着前にキャリヤ支持体20から剥離される。この図において、層12は、ポリ(ビニルアルコール)含有偏光フィルムに対する付着促進層であり、層14は、低複屈折保護ポリマーフィルムであり、層15は、湿分バリヤ層であり、層16は、防眩層であり、そして層18は、本発明による反射防止層である。
【0071】
補助層は、多くのよく知られた液体塗布技術、例えば浸漬塗布、ロッド塗布、ブレード塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、マイクログラビア塗布、リバースロール塗布、スロット塗布、押出塗布、スライド塗布、カーテン塗布のいずれかによって、又は真空蒸着技術によって適用することができる。液体塗布の場合、湿潤層は一般に、シンプルな蒸発によって乾燥させられる。この蒸発は既知の技術、例えば対流加熱によって加速することができる。補助層は、他の層、例えば下塗り層及び低複屈折ポリマーフィルムと同時に適用することができる。いくつかの異なる補助層を、スライド塗布を用いて同時に塗布することができ、例えば静電防止層を湿分バリヤ層と同時に塗布することができ、或いは、湿分バリヤ層を視角補償層と同時に塗布することもできる。Research Disclosure No. 308119(1989年12月発行) 第1007〜1008頁には、既知の塗布法及び乾燥法がさらに詳細に記載されている。
【0072】
本発明の多層光学フィルムは、種々様々なLCDディスプレイ様式、例えばねじれネマティック(Twisted Nematic(TN))、超ねじれネマティック(Super Twisted Nematic(STN))、光学補償屈曲(Optically Compensated Bend(OCB))、面内切換え(In Plane Switching(IPS))、又は垂直配向(Vertically Aligned(VA))液晶ディスプレイを有するカバーシートとして使用するのに適している。これら種々の液晶ディスプレイ技術は、米国特許第5,619,352号明細書(Koch他)、同第5,410,422号明細書(Bos)、及び同第4,701,028号明細書(Clerc他)に概説されている。
【0073】
前述の詳細な説明に基づいて明らかなはずであるが、補助層の種々のタイプ及び配列を有する多様なガード付きカバーシート複合体が調製されてよい。本発明に従って考えられ得る形態のいくつかは、2005年1月3日付けで出願された米国特許出願第11/028,036号明細書に示されている。この出願も、ガード付きカバーシート複合体から偏光子板を製作する方法であって、対PVA付着促進層が、カバーシートの、PVA二色性フィルムと接触する側に位置するように、カバーシートをPVA二色性偏光フィルムにラミネートする方法を開示している。カバーフィルムとPVA二色性フィルムとをラミネートするために、接着剤溶液を使用することができる。
【0074】
図2は、いずれの側にも偏光子板2及び4が配置された液晶セル10を示す断面図である。偏光子板4は、LCDセルの、観察者に最も近い側にある。各偏光子板は2つのカバーシートを採用する。説明のため、偏光板4は、対PVA付着促進層12と、低複屈折保護ポリマーフィルム14と、湿分バリヤ層15と、静電防止層19と、反射防止層18とを含む最上カバーシート(これは観察者に最も近いカバーシートである)とともに示されている。偏光子板4内に含有される最下カバーシートは、対PVA付着促進層12と、低複屈折ポリマーフィルム14と、湿分バリヤ層15と、静電防止層19と、視角補償層22とを含む。LCDセルの反対側には、偏光子板2が最上カバーシートとともに示されており、最上カバーシートは説明のため、対PVA付着促進層12と、低複屈折ポリマーフィルム14と、湿分バリヤ層15と、静電防止層19と、視角補償層22とを含む。偏光子板2はまた、対PVA付着促進層12と、低複屈折ポリマーフィルム14と、湿分バリヤ層15と、静電防止層19とを含む最下カバーシートを有する。
【実施例】
【0075】
A.有機変性ナノ粒子の合成
この例では、シランカップリング剤と第1溶剤とを含む溶液を、より低い沸点を有する第1溶剤が徐々に蒸発される特定の温度で、第2有機溶剤中のナノ粒子分散体にゆっくりと添加し、これにより第2有機溶剤中の有機変性ナノ粒子分散体を生成した。具体的には、プロピルアセテート中の、メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシランで官能化された細長いSiO2ナノ粒子を以下のように調製した。
【0076】
MA-ST-UPとして知られているNissan Chemicalsから購入されたメタノール中に分散された20重量%の細長いSiO2ナノ粒子(10〜50 nm平均直径)100グラムを含む分散体を、添加漏斗、蒸発凝縮器、及び磁気撹拌バーを備えた500 mlの3首丸底フラスコ内に挿入した。分散体が還流を開始したら、4.5グラムのメタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン(Aldrich)と、100 mのプロピルアセテートとを含有する溶液を、ナノ- SiO2メタノール分散体に一滴ずつ添加した。約65℃で蒸留することができるメタノールがほとんどなくなったら、プロピルアセテート中の、22重量%のメタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン官能化SiO2ナノ粒子の新しい分散体を集めた。
【0077】
B.反射率の測定
60 mm積分球アタッチメントを備えたPerkin Elmer LAMBDA 800 UV/Vis分光光度計に付属する標準的なソフトウェアを使用して、反射率パーセント(%)を測定する。この機器は、SPECTRALON標準を使用して基準線補正される。2 nm幅スリットを用いて1 nm解像度で200 nmから900 nmまで、試料の走査を行った。
【0078】
C.反射防止フィルムの調製及び特性
例1〜4
溶剤中のUV硬化性モノマーを小型プロペラ撹拌装置上に置いた。この混合物に、光開始剤を添加した。所定の時間にわたる撹拌後、別の溶剤中に分散された有機変性ナノ粒子を混合物に液滴状に添加した。結果として得られる混合物は、移動するXホッパーを介してマイクロポンピングし、そしてプラスチックフィルム支持体に適用することができるほど、粘性が十分に低い。塗布された支持体を乾燥させ、そして完全に硬化するまでUVランプに当てた。塗膜の厚さは、種々異なる試験因子、例えば溶剤、被覆率、及び濃度などによって制御することができ、そして透過電子顕微鏡法(TEM)によって測定することができる。
【0079】
具体的には、例1の場合には、n-プロピルアセテート中のSARTOMER CN968(UV硬化性オリゴマー)の6.94 %固形分溶液11.37グラムを含む組成物を、1200 rpmの小型プロペラ撹拌装置上に置いた。この混合物に、n-プロピルアセテート中のCIBA IRGACURE 184光開始剤の5 %溶液0.316グラムを添加した。5分間の撹拌後、n-プロピルアセテート中の細長い変性シリカの10.2 %分散体3.31グラムを混合物に液滴状に添加した。結果として得られた7.6 %固形分の混合物は、移動Xホッパーを介してマイクロポンピングし、そして静的に保持されたセルローストリアセテート支持体に1.5 cc/ft2(16.15 cc/m2)で適用することができるほど、粘性が十分に低い。完全に硬化させるために1.6mジュールのHバルブのUVに当てる前に5分間にわたって29.4℃の層流フード内で塗布された支持体を乾燥させた。
【0080】
例2〜4において、異なる塗膜被覆率(例2及び3)、又はモノマーに対する細長いSiO2の異なる比(例4)を用いたことを除いて、塗布プロセスは例1と同様である。
【0081】
比較例5、6及び8
比較例5は、いかなる塗膜も有さない、ポリマーバインダーもナノ粒子もないTACフィルムから成った。
【0082】
比較例6は、シリカナノ粒子なしのUV硬化型ポリマーフィルムから成った。ポリマーフィルムのための組成は、プロピルアセテート中のSARTOMER CN968モノマーの7.75 %溶液14.55グラムを含み、この組成物を1200 rpmの小型プロペラ撹拌装置上に置いた。次いで、プロピルアセテート溶剤中のCIBA IRGACURE 184開始剤の5 %溶液0.45グラムを液滴状に添加した。5分間、撹拌を続けた。結果として得られた7.66 %固形分溶液を、移動Xホッパーを介してマイクロポンピングし、そして静的に保持されたセルローストリアセテート支持体に1.5 cc/ft2(16.15 cc/m2)で適用した。完全に硬化させるために1.6 mジュールのHバルブのUVに当てる前に5分間にわたって85°F(29.4℃)の層流フード内で塗布された支持体を乾燥させた。結果として生じた乾燥被覆率は、102 mg/ft2(1098 mg/m2)であった。
【0083】
比較例8は、異なる被覆率を用いることを除けば、例7と同様に、シリカナノ粒子なしのUV硬化型ポリマーフィルムから成った。
【0084】
比較例7
この比較例7は、細長いシリカ(E-SiO2)の代わりに、球形の有機変性シリカ(S-SiO2)を使用することにより、UV硬化型反射防止フィルムを形成することを示す。プロピルアセテート溶剤中のSARTOMER CN968モノマーの6.2 %固形分溶液12.784グラムを含む組成物を、1200 rpmの小型プロペラ撹拌装置上に置いた。次いで、プロピルアセテート中のCIBA IRGACURE 184開始剤の5 %溶液0.32グラムを液滴状に添加した。撹拌を5分間続けた。プロピルアセテート溶剤中の変性球形シリカの17.8 %分散体1.9グラムを含む組成物を、混合物に液滴状に添加した。結果として得られた7.6 %固形分の混合物は、移動Xホッパーを介してマイクロポンピングし、そして静的に保持されたセルローストリアセテート支持体に1.5 cc/ft2(16.15 cc/m2)で適用することができるほど、粘性が十分に低かった。硬化を完成させるために1.6 mジュールのHバルブのUVに当てる前に5分間にわたって層流フード内で85°F(29.4℃)で塗布された支持体を乾燥させた。生じた乾燥被覆率は、101.4 mg/ft2(1091.5 mg/m2)であった。
【0085】
上記のように、Perkin Elmer LAMBDA 800 UV/Vis分光光度計に付属する標準的なソフトウェアを使用して、反射率%を測定した。測定前に、第2表面反射を最小化するために、個々の試料の非塗布側を黒化した。全反射の結果を下記表1に示す。表2は、全反射率に対する被覆率の効果を示す。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
図3は、上記比較例5に従った、いかなる塗膜も有さない裸のTACフィルムを示すAFT(原子間力顕微鏡分析)画像であり、図4は、上記比較例6に従って、いかなるナノ粒子も有さずに裸のTACフィルム上に形成されたアクリルポリマーの5マイクロメートルフィルム(固形被覆率に基づいて計算)を示すAFM画像であり、図5は、比較例7に従って、裸のTAC上に形成された、球形ナノ粒子を有するアクリルポリマーの5マイクロメートルフィルムを示すAFM画像であり、そして図6は、上記例1に記載された本発明に従って、裸のTAC上に形成された、細長いナノ粒子を有するアクリルポリマーの5マイクロメートルフィルムを示すAFM画像である。
【0089】
上に示す結果に基づいて、裸のTAC及びモノマーを塗布されたTACの両方が、極めて平滑な表面を示したことは明らかである。球形シリカ及び細長いシリカを有する表面塗膜は、粗い表面をもたらすが、しかし表面構造のサイズは、球形シリカを有する構造の方が、細長いシリカを有する構造よりもはるかに大きい。
【0090】
例9、10及び11
この例は、細長い有機変性SiO2ナノ粒子とLUMIFLONフッ素化ポリマーとを含むナノ構造化反射防止フィルムを調製することを示す。
【0091】
例9の場合、n-プロピルアセテート中のLUMIFLONポリマーの6.8 %固形分溶液11.62グラムを含む組成物を、1200 rpmの小型プロペラ撹拌装置上に置いた。次いで、n-プロピルアセテート中の細長い変性シリカの10 %分散体3.38グラムを混合物に液滴状に添加した。結果として得られた7.5 %固形分の混合物を、移動Xホッパーを介してマイクロポンピングし、そして静的に保持されたセルローストリアセテート支持体に1.5 cc/ft2(16.15 cc/m2)で適用した。5分間にわたって85°F(29.4℃)の層流フード内で塗布された支持体を乾燥させた。
【0092】
例10の場合、異なる固形被覆率を用いることを除けば、例9におけるものと同様の方法で、反射防止層を生成した。
【0093】
比較例11の場合、球形シリカナノ粒子を使用することを除けば、例9におけるものと同様の方法で、塗布層を生成した。
【0094】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、本発明による反射防止フィルムを含むカバーシート複合体の1つの態様を示す図である。
【図2】図2は、液晶セルを、本発明に従ってセルの両側に偏光子板を有する状態で示す断面図である。
【図3】図3は、下記比較例5に従った、いかなる塗膜も有さない裸のTAC(トリセルロースアセテート)フィルムを示すAFT(原子間力顕微鏡分析)画像である。
【図4】図4は、下記比較例6に従って、いかなるナノ粒子も有さずに裸のTACフィルム上に形成されたアクリルポリマーの5マイクロメートルフィルムを示すAFM画像である。
【図5】図5は、下記比較例7に従って、裸のTAC上に形成された、30重量%の球形SiO2ナノ粒子を有するアクリルポリマーの5マイクロメートルフィルムを示すAFM画像である。
【図6】図6は、下記例1に記載された本発明に従って、裸のTAC上に形成された、30重量%の細長いSiO2ナノ粒子と混和されたアクリルポリマーの5マイクロメートルフィルムを示すAFM画像である。
【符号の説明】
【0096】
2 偏光子板
4 偏光子板
5 カバーシート複合体
10 液晶セル
12 付着促進層
14 低複屈折保護フィルム
15 湿分バリヤ層
16 機能層
18 反射防止層
19 静電防止層
20 キャリヤ支持体
22 視角補償層
25 カバーシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に1つ又は2つ以上の機能層を含んで成る、ディスプレイ又はその構成部品内で使用するための多層光学フィルムであって、最も上側の機能層が、細長い形状の有機変性シリカ粒子を含む反射防止層である多層光学フィルム。
【請求項2】
該反射防止層が、ナノスケールの尾根及び谷を含むナノ構造化表面を有する請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項3】
該反射防止層が、該ナノ構造化表面の下に間隙性空気ボイドをさらに含む請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項4】
該反射防止層が、細長い形状のシリカ粒子のコロイド溶液を塗布することにより形成され、該シリカ粒子が、1〜99重量%固形分の量で該反射防止層内に存在する請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項5】
該シリカ粒子が、5〜95重量%の量で該層内に存在する請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項6】
該ナノ粒子が、アルコキシ-シラン官能化合物で有機変性されている請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項7】
塗布するか、予め形成するか、又は該層が塗布された後でその場で形成することができるポリマーを、バインダー材料として、さらに含む請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項8】
該ポリマーが、架橋されていない場合に、500〜106の重量平均分子量を有する請求項7に記載の多層光学フィルム。
【請求項9】
該ポリマーが、セルロースポリマー、アクリルポリマー、及びフッ素化ポリマーから成る群から選択される請求項7に記載の多層光学フィルム。
【請求項10】
該ポリマーが、塗布されたモノマー又はオリゴマーの重合生成物であるUV架橋されたポリマーである請求項7に記載の多層光学フィルム。
【請求項11】
該多層光学フィルム内の該反射防止層が、波長500〜700 nmの光に対して0.5 %未満に反射を低減する請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項12】
該反射防止層の有効屈折率が、反射に基づいて計算して、1.1〜1.4である請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項13】
該反射防止層の厚さが、50 nm〜10マイクロメートルである請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項14】
該反射防止層のRMS表面粗さが、2〜15である請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項15】
該細長い粒子のアスペクト比が、5を上回る請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項16】
該支持体が、高分子材料又はガラスを含む請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項17】
該高分子材料が、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ポリノルボルネン、ガラス、シリコン、ポリエチレンテレフタレート、及びセルローストリアセテートから成る群から選択される請求項16に記載の多層光学フィルム。
【請求項18】
該高分子材料が、セルローストリアセテート又はポリエチレンテレフタレートである請求項16に記載の多層光学フィルム。
【請求項19】
該多層光学フィルムが、ディスプレイ又はその構成部品である請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項20】
該多層光学フィルムが、偏光子のために有用な保護カバーシートであり、そして、該支持体が低複屈折保護ポリマーフィルムを含む請求項19に記載の多層光学フィルム。
【請求項21】
該保護カバーシートが、ポリ(ビニルアルコール)含有フィルムに対する付着促進層をさらに含む請求項20に記載の多層光学フィルム。
【請求項22】
該ディスプレイ又はその構成部品が、該反射防止層に加えて、低複屈折保護ポリマーフィルムと少なくとも1つの他の機能層とを含むカバーシート複合体である請求項19に記載の多層光学フィルム。
【請求項23】
該支持体が低複屈折保護ポリマーフィルムであり、そして該1つ又は2つ以上の機能層が、該低複屈折保護ポリマーフィルムに対するポリ(ビニルアルコール)含有フィルムの付着のための付着促進層を含み、該多層光学フィルムが、キャリヤ支持体をさらに含み、該付着促進層が、該支持体と該低複屈折保護ポリマーフィルムとの間に位置する請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項24】
該1つ又は2つ以上の機能層が、防眩層及び/又は硬質塗膜層をさらに含む請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項25】
該ディスプレイが、保護カバーシートが該多層光学フィルムを構成している偏光板を含む請求項19に記載の多層光学フィルム。
【請求項26】
該反射防止層が、単一層反射防止フィルムである請求項1に記載の多層光学フィルム。
【請求項27】
反射防止層の形成方法であって、該方法は、(a)細長い形状の有機変性シリカナノ粒子のコロイド溶液;(b)ポリマー、又はそのオリゴマー前駆体又はモノマー前駆体を含む任意選択のバインダー材料;(c)任意選択の有機溶剤を含む塗布用組成物を、該シリカナノ粒子が1〜99重量%固形分の量で該塗布用組成物中に存在する状態で、支持体上に塗布し;そして(d)有機溶剤を除去するために該塗膜を乾燥させ、これにより反射防止層を形成し、そしてシリカ-ポリマーナノ複合フィルムを形成することを含んで成る。
【請求項28】
該反射防止層が、シリカ-ポリマーナノ複合フィルムである請求項27に記載の方法。
【請求項29】
該反射防止層が、ナノスケールの尾根及び谷を含むナノ構造化表面を有する請求項27に記載の方法。
【請求項30】
該反射防止層が、該ナノ構造化表面の下に間隙性空気ボイドをさらに含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
該塗布用組成物が、重合開始剤をさらに含む請求項27に記載の方法。
【請求項32】
該塗布用組成物が、ポリマー又はオリゴマーのための架橋剤をさらに含む請求項27に記載の方法。
【請求項33】
該塗布用組成物の適用後、ナノボイドを得るために、該塗膜から固形材料が除去されない請求項27に記載の方法。
【請求項34】
(a) (i)任意選択のキャリヤ支持体と;
(ii)請求項1に記載の多層光学フィルムの形態の保護カバーシートと
を含む表側カバーシート複合体を用意し;
(b) ポリ(ビニルアルコール)含有二色性フィルムを用意し;そして
(c) 該保護カバーシートを該ポリ(ビニルアルコール)含有二色性フィルムと接触させる
ことを含んで成る偏光板の形成方法。
【請求項35】
該保護カバーシート内に、ポリ(ビニルアルコール)含有フィルムに対する付着促進層が存在しており、該保護カバーシートを該ポリ(ビニルアルコール)含有二色性フィルムと接触させると、該ポリ(ビニルアルコール)含有フィルムに対する付着促進層が、該ポリ(ビニルアルコール)含有二色性フィルムと接触させられる請求項34に記載の方法。
【請求項36】
該表側カバーシート複合体と同時に、又は該表側カバーシート複合体に続いて、該ポリ(ビニルアルコール)含有二色性フィルムと接触させられる裏側カバーシート複合体が存在する請求項34に記載の方法。
【請求項37】
請求項1に記載の2つのカバーシートを用意し、ポリ(ビニルアルコール)含有二色性フィルムを用意し、そして、該2つのカバーシートのそれぞれにおける該ポリ(ビニルアルコール)含有フィルムに対する付着促進層が該ポリ(ビニルアルコール)含有二色性フィルムと接触するように、同時又は順次に該2つのカバーシートを該ポリ(ビニルアルコール)含有二色性フィルムと接触させることを含んで成り、該付着促進層のうちの少なくとも一方が、水溶性ポリマー粒子及び疎水性ポリマー粒子を含む、偏光板の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−509207(P2009−509207A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532334(P2008−532334)
【出願日】平成18年9月18日(2006.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/036581
【国際公開番号】WO2007/035794
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】