説明

光反射フィルムおよび光反射板

【課題】優れた光反射性を維持し、静電気による汚染を防止し、電磁波ノイズによる画像の表示の乱れを防止することができる光反射フィルムを提供する。
【解決手段】白色熱可塑性樹脂フィルム、および、表層に導電層を備えて構成される光反射フィルムであって、白色熱可塑性樹脂フィルム表面の波長550nmの光に対する反射率Aを90%以上とし、導電層の表面抵抗率を1013Ω/□以下とし、光反射フィルムの導電層側表面の波長550nmの光に対する光反射率Bが以下の式(1)を満たすようにする。
(反射率A)−(反射率B)≦1% (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光反射フィルムおよび該反射フィルムを金属板もしくは樹脂板に積層してなる光反射板に関する。具体的には、照明器具、照明看板、液晶表示装置等において使用される光反射フィルムおよび光反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明器具用反射板、照明看板用反射板、液晶表示装置用の反射板、投影用スクリーンや面状光源の部材等において、光反射フィルムが使用されている。例えば、液晶ディスプレイの光反射板では装置の大画面化および表示性能の高度化の要求から、少しでも多くの光を液晶に供給してバックライトユニットの性能を向上させるために、高い反射性能の光反射フィルムが求められている。
【0003】
しかしながら、光反射フィルムの表面は帯電しやすいため、ホコリ等が付着しやすく、反射率が著しく低下するという問題があった。さらには、液晶表示装置用の光反射板に使用する場合、冷陰極線管やインバータから発生する電磁波ノイズによって、光反射フィルムに電荷が蓄積し放電するといったプロセスを経るので、画像の表示が乱れるという問題があった。
【0004】
そこで、光反射フィルムの表面に導電層を設け、静電気による光反射フィルムの表面の汚染を防止したり、電磁波ノイズによる画像の表示の乱れを防止したりすることが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開2006−163378号公報
【特許文献2】特開2006−106231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光反射フィルムの表面に導電層を設けると、反射率が低下するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、優れた光反射性を維持し、静電気による汚染を防止し、電磁波ノイズによる画像の表示の乱れを防止することができる光反射フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、これにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
第1の本発明は、白色熱可塑性樹脂フィルム(10)、および、表層に導電層(20)を備えて構成される光反射フィルムであって、
該白色熱可塑性樹脂フィルム(10)表面の波長550nmの光に対する反射率Aが90%以上であり、
該導電層(20)の表面抵抗率が1013Ω/□以下であり、
該光反射フィルムの導電層(20)側表面の波長550nmの光に対する光反射率Bが、以下の式(1)を満たす、光反射フィルムである。
(反射率A)−(反射率B)≦1% (1)
ここで、導電層(20)が設けられる表層とは、光反射フィルムにおいて、光が反射される側の表面層をいう。
【0008】
第1の本発明において、導電層(20)は、バインダー樹脂および導電剤を備えて構成され、該バインダー樹脂と該導電剤との質量比が、10/90以上50/50以下の範囲とすることが好ましい。当該範囲でバインダー樹脂および導電剤を含んでなる導電層(20)を形成することにより、導電層(20)と白色熱可塑性樹脂フィルム(10)との密着性を良好にできるとともに、導電層(20)の表面低効率を所望の範囲とすることができる。
【0009】
また、導電層(20)中の導電剤の体積抵抗値は、10Ω・cm以上1010Ω・cm以下の範囲であることが好ましい。このような体積抵抗値の導電剤を使用することで、光反射率Bを所望のものとすることができる。
【0010】
第2の本発明は、第1の本発明の光反射フィルム、および、金属板(30)を備えて構成され、光反射フィルムの導電層(20)が形成された側とは反対側が金属板(30)に積層されてなる、光反射板である。
【0011】
第2の本発明の光反射板は、照明器具、照明看板、または、液晶ディスプレイにおいて好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0012】
第1の本発明の光反射フィルムは、所定の白色熱可塑性フィルム、および、表層に所定の導電層を備えてなることにより、優れた光反射性を維持しつつ、静電気による汚染を防止し、電磁波ノイズによる画像の表示の乱れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。なお、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0014】
<光反射フィルム>
本発明の光反射フィルムは、光反射性の白色熱可塑性樹脂フィルム、および、表面に設けられた導電層を備えて構成される。図1(a)に示すように、導電層20は、光反射フィルムにおいて、光が照射される側に設ければよい。
【0015】
(白色熱可塑性樹脂フィルム10)
白色熱可塑性樹脂フィルム10としては、光の反射率が高く、色調に偏りがないことから、フィルム内部に微細な気泡を含有する白色熱可塑性樹脂フィルム10が用いられる。フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。
【0016】
フィルム内部に微細な気泡を含有する白色熱可塑性樹脂フィルム10は、(1)発泡剤を含有せしめ押出時や製膜時の熱によって発泡、あるいは化学的分解により発泡させる方法、(2)押出時または押出後に炭酸ガス等の気体または気化可能な物質を添加し、発泡させる方法、(3)熱可塑性樹脂フィルムと非相溶性の熱可塑性樹脂を添加し、溶融押出後、1軸または2軸に延伸する方法、(4)有機もしくは無機の微粒子を添加して溶融押出後、1軸または2軸に延伸する方法等を挙げることができる。本発明においては、微細な気泡を形成することにより反射界面を増加させることが好ましく、この点から上記(3)もしくは(4)の方法を用いることが好ましい。
【0017】
さらに、内部に微細な気泡を形成させたフィルムの少なくとも片面に、有機もしくは無機の微粒子を添加した熱可塑性樹脂を共押出等の方法によって積層して、さらに延伸し、表層部に内層部よりも微細な気泡を形成させた複合フィルムを用いることが特に好ましい。
【0018】
上記の方法によって得られる気泡の大きさ(フィルム厚み方向の断面積サイズ)は、0.5μm以上50μm以下、好ましくは1μm以上30μm以下とすることが、輝度向上の点で好ましい。気泡の断面形状は、円状、楕円状のいずれでもよい。これらの気泡の数については特に限定されないが、フィルムの厚み方向において10個以上の気泡が存在している構造(このとき、フィルムの面内においてどの位置の厚み方向を観察しても気泡が10個以上存在すること)が反射率向上の点で好ましく、さらには20個以上200個以下存在しているのが好ましい。気泡の数は、走査型電子顕微鏡S−2100A型(日立製作所社製)の画像にて観察することができる。
【0019】
光反射板としたときに光源から発せられる光がフィルム表面から入射するが、この入射光が内部の気泡によってすべて反射されることがもっとも好ましい形態である。なお、実際にはフィルム内部を通過する光もあり、この部分は反射の損失となるが、これをカバーするために入射光側(光源側)とは反対面のフィルム面側にアルミニウム、銀等の金属蒸着をしても良い。
【0020】
(導電層20)
光反射フィルムの表層には、導電層20が形成されている。表層とは、光反射フィルムにおける入射光側(光源側)のことである。該導電層を形成することにより、光反射フィルムにおいて、静電気による汚染を防止し、電磁波ノイズによる画像の表示の乱れを防止することができる。
【0021】
導電層20の表面低効率は、1013Ω/□以下である。該導電層20は、バインダー樹脂および導電剤を備えて構成されている。バインダー樹脂としては、白色熱可塑性樹脂フィルムと相溶性のある樹脂を適意選択すればよく、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂およびこれらの変性体等が挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂およびこれらの変性体から選ばれる少なくとも一種を好ましく用いることができる。これらのバインダー成分は、水、または有機溶媒等の任意の溶媒に溶解もしくは分散した状態で用いるのが好ましい。
導電層20と白色熱可塑性樹脂フィルム10との密着性が十分に発現しない場合は、白色熱可塑性樹脂フィルム10の導電層側表面を、コロナ処理、プラズマ処理、電子線照射処理、アルカリ処理、酸処理をした後、導電層20を付設しても良いし、白色熱可塑性樹脂フィルム10の導電層20側表面にプライマー層を設けても良い。
【0022】
導電層20中の導電剤は、体積抵抗値が、下限が好ましくは10Ω・cm以上、より好ましくは10Ω・cm以上であり、上限が好ましくは1010Ω・cm以下、より好ましくは10Ω・cm以下である。このような導電剤としては、界面活性剤、イオン系導電ポリマー、導電性金属酸化物が挙げられる。
【0023】
界面活性剤としては、スルホン酸塩化化合物、N−アシルアミノ酸またはその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等の陰イオン界面活性剤、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤、カルボキシベタイン、イミダゾリニウムベタイン、アミノカルボン酸塩等の両性界面活性剤等が挙げられる。中でも、スルホン酸塩化化合物が好ましく、具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ステアリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム、オクチルナフタレンスルホン酸リチウム、オキシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンスルホン酸カリウム、ブチルスルホン酸ナトリウム、ペンチルスルホン酸ナトリウム、ヘキシルスルホン酸ナトリウム、ヘプチルスルホン酸ナトリウム、オクチルスルホン酸ナトリウム、ノニルスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸ナトリウム、ウンデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、トリデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウム、ペンタデシルスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、ヘプタデシルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸カリウム、ドデシルスルホン酸カリウム、オクタデシルスルホン酸カリウム等が挙げられる。
【0024】
イオン系導電性ポリマーとしては、ポリスチレンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等のポリスチレンスルホン酸塩類、アルキルリン酸エステル塩やアルキルエーテルリン酸エステル塩に代表されるリン酸塩系低分子化合物をモノマーとして共重合したリン酸高分子化合物、イオン性官能基を有するポリアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0025】
導電性金属酸化物としては、酸化錫が挙げられる。なお、ここでの酸化錫とは、アンチモンやインジウム等が、ドープされているいわゆる、ATO、ITOとは異なり、体積抵抗値が10Ω・cm以上1010Ω・cm以下の範囲であり、他の金属がドープされていない酸化錫である。
【0026】
上記した導電剤の中でも、酸化錫を使用することがもっとも好ましい。酸化錫は、白色熱可塑性樹脂フィルム表面の導電層20中に使用された際に、白色熱可塑性樹脂フィルムの反射率を阻害しにくい導電剤である。
【0027】
導電層20中のバインダー樹脂と導電剤との質量比(バインダー樹脂/導電剤)は、好ましくは10/90以上50/50以下であり、より好ましくは10/90以上40/60以下であり、さらに好ましくは15/85以上35/65以下である。バインダー樹脂の割合が少なすぎると、白色熱可塑性樹脂フィルム10との密着性に劣るばかりでなく、導電剤が欠落しやすくなるといった問題が発生しやすい。一方、バインダー樹脂の割合が多すぎると、導電剤量が少ないため、導電層の導電性が発現しにくくなり、静電気が帯電しやすく、電磁波ノイズも発生しやすい。
【0028】
また、白色熱可塑性樹脂フィルム10と導電層20との密着性が劣る場合は、白色熱可塑性樹脂フィルム10と導電層20との間に、接着層およびプライマー層を設けても良い。
【0029】
導電層20の厚さは、導電性の点から、下限が好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、反射率の点から、上限が好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
【0030】
(反射率A、反射率B)
本発明の光反射フィルムにおいては、上記した白色熱可塑性樹脂フィルム10表面の、波長550nmの光に対する反射率を反射率Aとして、本発明の光反射フィルムの導電層20表面の、波長550nmの光に対する反射率を反射率Bとした場合、反射率Aと反射率Bとの間に以下の式(1)の関係が成り立つ。
(反射率A)−(反射率B)≦1% (1)
【0031】
また、この関係は、以下の式(2)であることがより好ましく、以下の式(3)であることがさらに好ましい。
(反射率A)−(反射率B)≦0.8% (2)
(反射率A)−(反射率B)≦0.5% (3)
式(1)の関係を満たせば、導電層20を有しても白色熱可塑性樹脂フィルム10の反射特性を阻害しないため、液晶ディスプレイ等の画面に十分な明るさを与えることができる。
【0032】
波長550nmの光に対する白色熱可塑性樹脂フィルム10の反射率Aは90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。また、波長550nmの光に対する導電層20を有する光反射フィルムの反射率Bは、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上である。反射率Bが90%以上であれば、良好な反射特性を示し、液晶ディスプレイ等の画面に十分な明るさを与えることができる。
本発明の光反射フィルムにおいては、例えば、上記した所定の白色熱可塑性フィルムおよび所定の導電層を備えることにより、上記の式(1)の関係を満たす反射率Aおよび反射率Bを備えたものとすることができる。
【0033】
<光反射板>
本発明の光反射板は、上記した光反射フィルムと金属板30とを備えて構成され、光反射フィルムの導電層20側が表面(入射光側(光源側))となるようにして光反射フィルムと金属板30とが積層されて形成される。この光反射板は、液晶表示装置、照明器具、照明看板等に用いられる光反射板として有用である。また、金属板30の代わりに樹脂板を使用して、光反射板を形成してもよい。
【0034】
金属板30としては、例えば、厚さ0.05mm〜0.5mmのステンレス鋼板、厚さ0.1mm〜0.6mmのアルミニウム合金板、あるいは厚さ0.2mm〜0.4mmの黄銅板等が挙げられ、照明器具照明看板、液晶表示装置の種類等に応じて適宜選択して用いられる。ただし、これらに限定されるものではない。
樹脂板としては、例えば、エチレンを含む単独重合体または共重合体等のポリオレフィン(PO)系樹脂またはポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン(PS)、ABS、SBS、SIS等のポリスチレン系樹脂またはSEBS、SEPS、SEEPS等の水素添加されたスチレン系エラストマー、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、共重合アクリル等のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド(PA)系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルホン(PS)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、フッ化ビニリデンー四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(THV)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、等のフッ素計樹脂またはエラストマー、(メタ)アクリレート系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂などを用いることができる。
【0035】
光反射フィルムを金属板30もしくは樹脂板に被覆する方法としては、接着剤を使用する方法、接着剤を使用せずに熱融着する方法、接着性シートを介して接着する方法、押出しコーティングする方法等があり、特に限定されるものではない。例えば、金属板もしくは樹脂板の光反射フィルムを貼り合わせる側の面に、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系等の接着剤を塗布し、光反射フィルムを貼り合わせることができる。この方法においては、リバースロールコーター、キスロールコーター等の一般的に使用されるコーティング設備を使用し、反射フィルムを貼り合わせる金属板等の表面に乾燥後の接着剤膜厚が2μm〜4μm程度となるように接着剤を塗布する。次いで、赤外線ヒーターおよび熱風加熱炉により塗布面の乾燥および加熱を行い、板の表面を所定の温度に保持しつつ、直にロールラミネーターを用いて、光反射フィルムを被覆、冷却することにより、光反射板を得ることできる。この場合、金属板等の表面を210℃以下に保持すると、光反射板の光反射性を高く維持できる。なお、金属板等の表面温度は、160℃以上であることが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を示して本発明について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
<評価方法>
(1)反射率(%)
分光光度計(「U―4000」、日立製作所社製)に積分球を取付け、波長550nmの光に対する反射率を測定した。
なお測定前に、アルミナ白板の反射率が100%になるように光度計を設定した。
【0038】
(2)表面抵抗率測定
導電層の表面抵抗率はJIS K6911に準じて、以下のように測定した。
1.測定装置
ハイレスターUP MCP−HT450型(三菱化学社製)
2.測定方式
定電圧印加方式
3.印加電圧
1000V
【0039】
(3)密着性評価
導電層の密着性を、JIS K5400の碁盤目テープ法に準じて測定した。すきま間隔は1mm、ます目の数は100とし、セロハン粘着テープ“ニチバン405”の18mmを用いた。90/100以上を合格とした。
【0040】
<実施例1>
アクリルエマルジョン(AE986B、固形分濃度:35%、JSR社製)と酸化錫(S−1、体積抵抗値:10Ω・cm、1次粒子径:0.03μm、JEMCO社製)とイオン交換水を、質量比でアクリル樹脂/酸化錫=20/80、固形分濃度10%になるように混合させ、導電塗料を作製した。作製した導電塗料50ccに対し、ジルコニアビーズ(直径0.4mm)を50cc添加し、PAINT SHAKER(東洋精機製作所社製)を使用し、2時間撹拌後、ジルコニニアビーズをメッシュにて濾過し、導電塗料1を作製した。得られた導電塗料1は、酸化錫の分散性が良好であった。
【0041】
上記導電塗料1を白色ポリエステルフィルム(ルミラー E60L、東レ社製、厚み188μm、波長550nmの光に対するフィルム表面の反射率A:95.2%)に、乾燥後の導電層厚みが2.0μmとなるようバーコータを用いて塗布し、100℃、1分で乾燥させ、導電層を形成し、本発明の光反射フィルムを得た。実施例1の波長550nmの光に対するフィルム表面の反射率B、表面抵抗率、密着性を評価した。結果を表1に示した。
【0042】
<実施例2〜4>
実施例1と同様の方法で、アクリル樹脂/酸化錫の質量比を表1のように変更した、導電塗料2〜4を作製した。実施例1と同様、上記導電塗料2〜4を白色ポリエステルフィルムに、乾燥後の導電層厚みが2.0μmとなるようバーコータを用いて塗布し、100℃、1分で乾燥させ、導電層が設けられた光反射フィルムを得た。実施例2〜4の波長550nmの光に対するフィルム表面の反射率B、表面抵抗率、密着性を評価した。結果を表1に示した。
【0043】
<参考例1、比較例1>
実施例1と同様の方法で、アクリル樹脂/酸化錫の重量比を表1のように変更した、導電塗料5、6を作製した。実施例1と同様、上記導電塗料5、6を白色ポリエステルフィルムに、乾燥後の導電層厚みが2.0μmとなるようバーコータを用いて塗布し、100℃、1分で乾燥させ、導電層が設けられた光反射フィルムを得た。参考例1、比較例1の波長550nmの光に対するフィルム表面の反射率B、表面抵抗率、密着性を評価した。結果を表1に示した。
【0044】
<比較例2>
アクリルエマルジョン(AE986B、固形分濃度:35%、JSR社製)とATO(錫−アンチモン系酸化物 T−1、体積抵抗値:1〜5Ω・cm、1次粒子径:0.02μm、JEMCO社製)とイオン交換水を、質量比でアクリル樹脂/ATO=60/40、固形分濃度10%になるように混合させ、導電塗料を作製した。作製した導電塗料50ccに対し、ジルコニアビーズ(直径0.4mm)を50cc添加し、PAINT SHAKER(東洋精機製作所社製)を使用し、2時間撹拌後、ジルコニニアビーズをメッシュにて濾過し、導電塗料7を作製した。得られた導電塗料7は、ATOの分散性が良好であった。
【0045】
上記導電塗料7を白色ポリエステルフィルム(ルミラー E60L、東レ社製、厚み:188μm、波長550nmの光に対するフィルム表面の反射率A:95.2%)に、乾燥後の導電層厚みが2.0μmとなるようバーコータを用いて塗布し、100℃、1分で乾燥させ、導電層が設けられた光反射フィルムを得た。比較例2の波長550nmの光に対するフィルム表面の反射率B、表面抵抗率、密着性評価を表1に示した。
【0046】
【表1】

【0047】
表1より、実施例1〜4の光反射フィルムは、(白色ポリエステルフィルムの反射率A(95.2%))−(導電層を有する光反射フィルムの反射率B)がいずれも1%以下であり、白色ポリエステルフィルムの反射率を阻害する事なく、また、導電性および導電層と白色ポリエステルフィルムとの密着性に優れた光反射フィルムであった。
【0048】
一方、参考例1は、バインダー樹脂であるアクリル樹脂の含有量が少ないため、導電層と白色ポリエステルフィルムとの密着性に劣ることがわかった。また、比較例1は、導電剤量が少ないため、十分な導電性が発現しないことがわかった。
【0049】
さらに、導電剤としてATO使用した比較例2は、導電性および導電層と白色ポリエステルフィルムとの密着性には優れているが、(白色ポリエステルフィルムの反射率A(95.2%))−(導電層を有する光反射フィルムの反射率B)が1%を越えており、白色ポリエステルフィルムの反射率を阻害していることがわかった。
【0050】
<実施例5>
次の手順で、実施例1で得られた光反射フィルムを亜鉛メッキ鋼板(厚み0.45mm)に被覆して反射板を得た。反射フィルムを貼り合わせる鋼板表面に、市販されているポリエステル系接着剤を、乾燥後の接着剤膜厚が2〜4μm程度になるように塗布した。次いで赤外線ヒーターおよび熱風加熱炉により塗布面の乾燥および加熱を行い、鋼板の表面温度を180℃に保持しつつ、直ちにロールラミネーターを用いて、反射フィルムを被覆、冷却することにより、光反射板を得た。得られた反射板は、波長550nmの光に対する反射率が、95.2%であった。
【0051】
このように、本発明の光反射フィルムは、優れた光反射性を維持し、静電気による汚染を防止し、電磁波ノイズによる画像の表示の乱れを防止することができる反射フィルムであることが分かった。特に、照明器具照明看板、液晶表示装置、等の反射シートに使用される反射フィルムおよび前記反射フィルムを金属板もしくは樹脂板に被覆してなる、照明器具、照明看板、液晶表示装置等に使用される光反射板に好適に利用できることが分かった。
【0052】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う光反射フィルムおよび光反射板もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】(a)は、光反射フィルムの層構成を示す概念図である。(b)は、光反射板の層構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0054】
10 白色熱可塑性樹脂フィルム
20 導電層
30 金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色熱可塑性樹脂フィルム、および、表層に導電層を備えて構成される光反射フィルムであって、
該白色熱可塑性樹脂フィルム表面の波長550nmの光に対する反射率Aが90%以上であり、
該導電層の表面抵抗率が1013Ω/□以下であり、
該光反射フィルムの導電層側表面の波長550nmの光に対する光反射率Bが、以下の式(1)を満たす、光反射フィルム。
(反射率A)−(反射率B)≦1% (1)
【請求項2】
前記導電層が、バインダー樹脂および導電剤を備えて構成され、
該バインダー樹脂と該導電剤との質量比が、10/90以上50/50以下の範囲である、請求項1記載の光反射フィルム。
【請求項3】
前記導電剤の体積抵抗値が、10Ω・cm以上1010Ω・cm以下の範囲である、請求項2に記載の光反射フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光反射フィルム、および、金属板を備えて構成され、
前記光反射フィルムにおける導電層が形成された側とは反対側が金属板に積層されてなる、光反射板。
【請求項5】
照明器具、照明看板、または、液晶ディスプレイに使用される、請求項4に記載の光反射板。

【図1】
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【公開番号】特開2009−276396(P2009−276396A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125119(P2008−125119)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】