説明

光受信装置および分散補償シーケンス制御方法

【課題】光位相が誤設定して信号疎通が不可となる現象を回避する。
【解決手段】VDC1aは、光信号を受信して、制御部30から与えられた分散補償値により、光信号の分散補償を行う。復調部10は、分散補償後の光信号の位相変調の情報を強度変調の情報にし、強度変調された光信号の検波を行って、光信号を電気信号に変換する。データ再生部20は、電気信号からクロックを抽出し、データを再生する。制御部30は、装置起動時に、遅延干渉計11−1、11−2に光位相が設定されたことを認識したにもかかわらず、一定時間内にデータ再生部20が正常動作しない場合には、光位相の誤設定がなされたものとみなし、遅延干渉計11−1、11−2に光位相が設定されて、かつデータ再生部20の正常動作を認識するまで、異なる分散補償値を順次設定するシーケンス制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変調された光信号の受信処理を行う光受信装置および変調された光信号を受信して分散補償を行う分散補償シーケンス制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、伝送容量の増大に伴い、DWDM(Dense Wavelength Division Multiplex)伝送を可能とする光ネットワークが構築されており、さらなる情報量の増加に対応すべく、伝送スピードが40Gb/sといった超高速レートのシステムも商用化されつつある。
【0003】
また、光の変調方式もNRZ(Non Return to Zero)から、より長距離伝送に適したDPSK(Differential Phase Shift Keying)やDQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)が採用される傾向にある。
【0004】
一方、WDMの伝送を行う場合、光ファイバにおける伝送速度は、光の波長毎に異なるため、伝送距離が伸びるにつれ、光のパルス波形が鈍る波長分散が生じる。大容量・長距離の光伝送を実現するWDMシステムで、波長分散によるパルス広がりが生じると、受信レベルを著しく劣化させて、システムに有害な影響を及ぼすことになる。このため、波長分散を等価的にゼロに(キャンセル)する分散補償を行って、光ファイバ伝送路で生じた分散を抑制する必要がある。
【0005】
分散補償制御では、波長多重されたWDM信号に対して、DCF(Dispersion Compensation Fiber:分散補償ファイバ)を使用しての、一括した分散補償が行われる。ただし、DCFによる分散補償だけでは不十分であるため、波長毎の分散補償も行われている。
【0006】
波長毎に分散補償を行う場合、波長分離後の各波長の受信処理を行うトランスポンダ(光レシーバ)において、トランスポンダ個々に可変分散補償器(VDC:Variable Dispersion Compensator)が設置される。また、信頼性向上のためには、波長分散を相殺するため分散補償値(光ファイバ伝送路で生じた分散値とは符号が逆の分散値)を、VDCに対してすみやかに設定することが必要である。
【0007】
分散補償の従来技術として、伝送路のファイバ長と、あらかじめ記録された分散波長依存特性とを併用して分散補償量を算出して、VDCを制御する技術が提案されている(特許文献1参照)。また、VDCの設定を符号誤りが減少する方向に変化させて、最小の誤り率となるように制御する技術が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−202009号公報(段落番号〔0010〕〜〔0012〕,第1図)
【特許文献2】特許第4011290号(段落番号〔0024〕,第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の光変調方式として、長距離伝送には波長分散耐力やPMD(Polarization Mode Dispersion:偏波モード分散)耐力にすぐれたRZ−DQPSK(Return to Zero−Differential Quadrature Phase-Shift Keying:4値差動位相変調方式)が広く採用されている。
【0009】
図18はトランスポンダの構成を示す図である。RZ−DQPSKの変調信号を受信処理するトランスポンダの構成を示している。トランスポンダ70は、VDC71、RZ−DQPSK受信処理部72、データ出力部73から構成される。
【0010】
VDC71は、伝送されたWDM信号の波長分離後の単一波長(1チャネル)の光信号を受信し、与えられた分散補償値により光信号の分散補償を行う。
RZ−DQPSK受信処理部72は、光信号の位相変調の情報を強度変調の情報に復元する遅延干渉計72−1、72−2と、光信号を電気信号に変換する光検波器72aとを含み、分散補償後の光信号のRZ−DQPSK復調処理を行って、光信号を電気信号のデータに変換する。データ出力部73は、受信データを所定のフォーマットの形式に変換して次段へ出力する。
【0011】
上記のような従来のトランスポンダ70の構成において、初期起動時に遅延干渉計72−1、72−2の許容範囲外の非常に大きな波長分散を持った光信号が入力された場合で、かつ光位相が本来の収束点から遠く離れた状態にあった場合、光位相設定の誤ロックを引き起こす場合がある。
【0012】
一度、光位相設定が誤ロックしてしまうと、本来の正常な光位相に調整できなくなり、その後、VDC71に最適な分散補償値を設定したとしても、光主信号成分を復調できないために、正常な信号疎通ができなくなり、伝送品質および信頼性の低下を引き起こすといった問題があった。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、光位相が誤設定して信号疎通が不可となる現象を回避して、伝送品質および信頼性の向上を図った光受信装置を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明の他の目的は、光位相が誤設定して信号疎通が不可となる現象を回避して、伝送品質および信頼性の向上を図った分散補償シーケンス制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、変調された光信号の受信処理を行う光受信装置が提供される。この光受信装置は、前記光信号を受信して、与えられた分散補償値により、前記光信号の分散補償を行う可変分散補償器と、分散補償後の前記光信号の位相変調の情報を強度変調の情報にする遅延干渉計と、強度変調された前記光信号の検波を行って、前記光信号を電気信号に変換する光検波器とを含む復調部と、前記電気信号からクロックを抽出し、データを再生するデータ再生部と、前記遅延干渉計に光位相を設定する機能と、前記分散補償値を前記可変分散補償器に設定する機能とを持つ制御部とを備える。
【0016】
ここで、制御部は、装置起動時に、遅延干渉計に光位相が設定されたことを認識したにもかかわらず、一定時間内にデータ再生部が正常動作しない場合には、光位相の誤設定がなされたものとみなし、遅延干渉計に光位相が設定されて、かつデータ再生部の正常動作を認識するまで、異なる分散補償値を順次設定する分散補償シーケンス制御を行う。
【発明の効果】
【0017】
光位相が誤設定して信号疎通が不可となる現象を回避するように、分散補償値を可変的に設定する分散補償シーケンス制御を行って、伝送品質および信頼性の向上を図る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本実施形態にかかる光受信装置の構成図である。光受信装置1は、波長単位に光信号を受信するトランスポンダに該当し、VDC(可変分散補償器)1a、復調部10、データ再生部20、エラー検出部1bおよび制御部30から構成され、変調された光信号の受信処理を行う。
【0019】
VDC1aは、光信号を受信して、制御部30から与えられた分散補償値を設定して、光信号の分散補償を行う。復調部10は、遅延干渉計11−1、11−2と光検波器12を含む。遅延干渉計11−1、11−2は、分散補償後の光信号の位相変調の情報を強度変調の情報にする。光検波器12は、強度変調された光信号の検波を行って、光信号を電気信号に変換する。
【0020】
データ再生部20は、電気信号からクロックを抽出し、データを再生する。エラー検出部1bは、データ再生部20から出力されたデータのエラー検出・訂正を行う。
制御部30は、光受信装置1の動作の全体制御を行う構成ブロックである。制御としては例えば、遅延干渉計11−1、11−2に光位相を設定する制御を行ったり、または分散補償値をVDC1aに設定する制御を行ったりする。
【0021】
ここで、制御部30は、装置起動時に、遅延干渉計11−1、11−2に光位相が設定されたことを認識したにもかかわらず、一定時間内にデータ再生部20が正常動作しない場合には、光位相の誤設定がなされたものとみなす。そして、遅延干渉計11−1、11−2に光位相が設定されて、かつデータ再生部20の正常動作を認識するまで、異なる分散補償値を順次設定する分散補償シーケンス制御を行う。
【0022】
次に光受信装置1の構成および動作を説明する前に、RZ−DQPSKの基本概念および解決すべき課題について詳しく説明する。RZ−DQPSKの基本概念については図2〜図11で説明し、解決すべき課題については図12で説明する。なお、光受信装置1の詳細については図13以降で説明する。
【0023】
図2、図3はRZ−DQPSKシステムの構成を示す図であり、図2はRZ−DQPSK送信装置5を示し、図3はRZ−DQPSK受信装置6を示す。RZ−DQPSKシステム2は、RZ−DQPSK送信装置5と、RZ−DQPSK受信装置6から構成され、光ファイバ伝送路Fで接続される。
【0024】
図2のRZ−DQPSK送信装置5は、データ送信部51、位相変調器52a、52b、光源53、分岐部Ca、合波部Cb、π/2移相部54、RZパルス化強度変調器55から構成され、20Gbit/sec(以下、Gbit/secは単にGとも表記する)の互いに独立した2つの光位相変調を行って、光ファイバ伝送路Fへ流す際には、40Gの情報量を持つ光信号にして送信する装置である。
【0025】
データ送信部51は、20GのI信号と、20GのQ信号との2つのチャネル信号を出力し、I信号を位相変調器52aに入力し、Q信号を位相変調器52bに入力する。
光源53は、連続光を出射する。分岐部Caは、連続光を2分岐して、分岐された一方の光を位相変調器52aに入力し、他方の光をπ/2移相部54に入力する。π/2移相部54は、光の電界の位相をπ/2移相して、位相変調器52bに入力する。ここで、π/2移相部54と位相変調器52bの順番は逆であってもよく、またπ/2移相部54による移相量は−π/2であってもよい。
【0026】
位相変調器52aは、I信号の0、1に対応させて、入力光の位相を変化させ、位相変調器52bは、Q信号の0、1に対応させて、π/2移相された入力光の位相を変化させる(あるいはπ/2移相部54と位相変調器52bの順番が逆である場合には、Q信号の0、1に対応させて位相を変化させたのちに、π/2移相される)。合波部Cbは、位相変調器52a、52bからの出力を合波して合波信号を生成する。
【0027】
このように、I信号、Q信号によってそれぞれ別々に位相変調を施し、位相変調した成分を光の電界の位相でπ/2ずらして合波することで、4値の直交位相変調(QPSK)を行っている。
【0028】
RZパルス化強度変調器55は、変調を行う信号源に20Gのクロック源(図示せず)を有し、20Gのクロック信号によって、位相だけが変調されている合波信号に対して、繰り返し強度変調を行い、合波信号の強度波形をRZのパルス列の波形に整形する。そして、RZパルスに整形された1波長の40G光信号は、光ファイバ伝送路Fから出力される。
【0029】
図4はQPSKのフェーズダイアグラムを示す図である。横軸は実部Re、縦軸は虚部Imである。ここで、光の電界の時間の関数E(t)は、振幅をA(t)、電界の振動を表す関数をexp(j(ωt−θ(t)))とすると、以下の式(1a)のように表され、式(1a)を展開して式(1b)になる。
【0030】
E(t)=A(t)・exp(j(ωt−θ(t)))・・・(1a)
=A(t)・exp(−jθ(t))・exp(jωt)・・・(1b)
式(1b)のA(t)・exp(−jθ(t))の部分を複素平面で図示したものがフェーズダイアグラム(位相図)である。
【0031】
位相変調器52aがI信号で変調すると、図4に示すフェーズダイアグラムにおいて、実軸上方向に0(I=0)になるか、π(I=1)になるかが決まり、位相変調器52bがQ信号で変調すると、I信号に対しπ/2回転しているので、虚軸上方向にπ/2(Q=0)になるか、3π/2(Q=1)になるかが決まる。
【0032】
そして、これらの変調信号が合波部Cbで合波されると、フェーズダイアグラム上では、実軸と虚軸上での直交加算に対応することになるので、光信号の位相状態(合波信号の位相状態)は、π/4(0、0)、3π/4(1、0)、5π/4(1、1)、7π/4(0、1)のそれぞれの位相状態となる(隣接する位相はすべて直交している)。
【0033】
図5はRZパルス化強度変調器55の動作を示す図である。グラフg1は、横軸が時間、縦軸が強度であり、RZパルス化強度変調器55の光強度パルスを示している。グラフg2は、横軸が時間、縦軸が位相であり、時間に伴って変化している合波信号の位相状態を示している。
【0034】
RZパルス化強度変調器55では、合波信号の位相が変化するときには、位相が変化する瞬間と強度パルスのボトムとが一致するようにして出力を消光し(光出力=0)、合波信号の位相が一定のときには、合波信号の符号の中心が強度パルスのピークに一致するようにして出力を強めて(光出力=1)、RZのパルスに整形する。
【0035】
なお、RZパルス化強度変調器55は、送信装置の構成要素として存在しなくても位相変調されたデータの伝送は可能ではあるが、位相変調信号をRZパターンにして光ファイバ伝送路Fへ流すことで、光ファイバ伝送路F上の光信号の非線形効果によって生じる歪みを低減することが可能になる。
【0036】
次に図3に戻りRZ−DQPSK受信装置6について説明する。RZ−DQPSK受信装置6は、分岐部C1、遅延干渉計60a、60b、差動光電変換検出(balanced detection)を行うデュアルピンフォトダイオードであるTwin PD(Photo Diode)63a、63b、プリアンプ部64a、64b、CDR(Clock Data Recovery)65a、65b、データ受信部66から構成され、40Gの光変調信号を復調して受信処理を行う装置である。
【0037】
分岐部C1は、受信した1波長の光信号を2分岐し、分岐した光信号をそれぞれ遅延干渉計60a、60bへ出力する。遅延干渉計60a、60bは、分岐された2つのチャネル毎に配置されて、独立に光信号の位相変調の情報を強度変調の情報に復元するマッハ・ツェンダ型遅延干渉計(Mach-Zehnder Interferometer)である。
【0038】
遅延干渉計60aの2本の導波路(アーム:arm)a1、a2の内、一方のアームa2にはπ/4移相器61aが設けられている。そして、図示しない制御部により、π/4移相器61aに対応する導波路の屈折率を調整することにより干渉点Xでのアーム間の光位相差がπ/4となるようにする。移相器61aが設置されていないアームa1側の導波路は、a2と比較し概略1符号化時間分の遅延を与えるだけ光路長が長くなっている。
【0039】
これにより、アームa1の光路を通ってきた1つ前の符号と、アームa2の光路を通ってきた現在受信した符号を位相差π/4だけずらした符号と、を干渉点Xにおいて干渉させる。なお、遅延干渉計60bは、片側のアームa2に−π/4移相器61bを設けたことが遅延干渉計60aと異なり、その他の基本動作は遅延干渉計60aと同じである。
【0040】
また、遅延干渉計60a、60bそれぞれは、干渉点Xにおいて干渉を受けた光を出力する2本の出力アームとして、上出力側アーム62a−1、62b−1と下出力側アーム62a−2、62b−2が備えられている。上出力側アーム62a−1、62b−1の出力値と下出力側アーム62a−2、62b−2の出力値とは相補的関係をとり、例えば、上出力側アーム62a−1の出力値が“+a”ならば、下出力側アーム62a−2の出力値は“−a”となる。
【0041】
Twin PD(差動受光器)63a、63bは、O/E変換部であって、強度変調された光信号の直接検波を行い、光強度を電流信号に直接置き換える直接光検波器である。Twin PD63a、63bは、2つのPDp1、PDp2が接続された構成をとり、その接続点から出力をとる構成となっている。
【0042】
上側PDp1のカソードにはプラスのバイアス電圧がかかり、上側PDp1のアノードは、下側PDp2のカソードと接続する。下側PDp2のアノードにはマイナスのバイアス電圧がかかる。また、遅延干渉計60a、60bの上出力側アーム62a−1、62b−1のそれぞれは、Twin PD63a、63bの上側PDp1に接続され、下出力側アーム62a−2、62b−2はTwin PD63a、63bの下側PDp2に接続される。
【0043】
CDR65a、65bは、クロック抽出と2値しきい値判定機能を有し、プリアンプ部64a、64bでI/V(電流/電圧)変換された信号から、クロック再生および2値の判定を行い、ディジタル信号を生成して出力する。なお、CDR65a、65bは、内部にPLL(Phase-locked loop)を有しており、PLLがロック(同期)することで、クロックの抽出が行われる。
【0044】
データ受信部66は、CDR65aから出力された20Gbpsのディジタル信号と、CDR65bから出力された20Gbpsのディジタル信号とを受信して所定のデータ受信処理を行う。その際、2チャネルの20Gディジタル信号をシリアル多重化して40Gディジタル信号として出力してもよい。
【0045】
また、データ受信部66は、OTN(Optical Transport Network)またはSDH/SONET(Synchronous Digital Hierarchy/Synchronous Optical Network)などの フレーム処理を行うframer、FEC(Forward Error Correction)decoder等の機能を含んでいる。
【0046】
ここで、QPSK復調動作について図6〜図9を用いて詳しく説明する。図6、図7は遅延干渉計60a、60bの透過率を示す図である。横軸は干渉点Xに到来する、相対的に遅延された2つの符号、すなわちi番目の符号とi−1番目の符号の間の位相差Δθであり、縦軸は遅延干渉計60a、60bの光出力パワーである。図中、上出力側アーム62a−1、62b−1の光出力パワーを実線で示し、下出力側アーム62a−2、62b−2の光出力パワーを点線で示す。
【0047】
なお、遅延干渉計60a、60bでは、1つ前に到着した符号と、現在到着した符号にπ/4位相差を付けた符号とを干渉させており、そのため干渉点Xにおける干渉が最大または最小になるΔθは−π/4となっている。
【0048】
図6の遅延干渉計60aの透過率に対し、符号間の位相差Δθ=0のとき、上出力側アーム62a−1の光出力は、光出力P1となり、Δθ=π/2のときも、上出力側アーム62a−1の光出力は、光出力P1となって、Δθ=0、π/2のときは、比較的強め合う光出力となる(Δθ=0、π/2のときは同じ光出力値をとるようにするために、0からπ/4ずらす干渉計構成にしている)。また、Δθ=π、3π/2のときは、上出力側アーム62a−1の出力は、光出力P2となり、比較的弱め合う光出力となる(この場合も、0からπ/4ずらしているので、Δθ=π、3π/2のときは同じ光出力値をとる)。
【0049】
一方、下出力側アーム62a−2の光出力について見ると、上出力側アーム62a−1の光出力と相補的な関係になっている(よって、同一位相差Δθにおける上出力側アーム62a−1の光出力と下出力側アーム62a−2の光出力とを加算した値は常に一定である)。すなわち、Δθ=0、π/2のときは、下出力側アーム62a−2の光出力は、比較的弱め合う光出力P2となり、Δθ=π、3π/2のときは、下出力側アーム62a−2の光出力は、比較的強め合う光出力P1となる。
【0050】
上出力側アーム62a−1は、Twin PD63aの上側PDp1に接続され、下出力側アーム62a−2は、Twin PD63aの下側PDp2に接続されるので、Δθ=0、π/2のときは、上側PDp1に電流が多く流れ、Δθ=π、3π/2のときは、下側PDp2に電流が多く流れることになる。
【0051】
図8はTwin PD63a、63bを流れる電流の向きを示す図である。図8(A)はTwin PD63aを流れる電流の向きを示しており、図8(B)はTwin PD63bを流れる電流の向きを示している。
【0052】
図8(A)に対し、上側PDp1に電流が多く流れるときは、図に示すように、Twin PD63aからの出力電流の向きは矢印r1となり(プラスの出力電流)、下側PDp2に電流が多く流れるときは、Twin PD63aからの出力電流の向きは矢印r2(マイナスの出力電流)となる。
【0053】
次に遅延干渉計60bの透過率に対しても同様に見ていくと、符号間位相差Δθ=0のとき、上出力側アーム62b−1の光出力は、Δθ=0、3π/2のときは、光出力P1となって、比較的強め合う光出力となり、Δθ=π/2、πのときは、光出力P2となって、比較的弱め合う光出力となる。
【0054】
また、下出力側アーム62b−2の光出力は、Δθ=0、3π/2のときは、比較的弱め合う光出力P2となり、Δθ=π/2、πのときは、比較的強め合う光出力P1となる。
【0055】
したがって、Δθ=0、3π/2のときは、上側PDp1に電流が多く流れ、Δθ=π/2、πのときは、下側PDp2に電流が多く流れるので、図8の(B)に示すように、上側PDp1に電流が多く流れるときは、Twin PD63bからの出力電流の向きは矢印r1となり(プラスの出力電流)、下側PDp2に電流が多く流れるときは、Twin PD63bからの出力電流の向きは矢印r2(マイナスの出力電流)となる。
【0056】
図9は符号間位相差Δθと電流の向きとの関係を示す図である。遅延干渉計60aでは、Δθ=0、π/2のときは、Twin PD63aの出力電流はプラスの電流なので、図中“+”と記し、Δθ=π、3π/2のときは、Twin PD63aの出力電流はマイナスの電流なので“−”と記す。
【0057】
同様に、遅延干渉計60bでのΔθに対し、Δθ=0、3π/2のときは、Twin PD63bの出力電流はプラスの電流なので、図中“+”と記し、Δθ=π/2、πのときは、Twin PD63bの出力電流はマイナスの電流なので“−”と記す。
【0058】
ここで、送信側では、位相差がπ/2毎の4値をとるので、受信側でも1つ前に到着した符号と、現在到着した符号との間の位相差は4通り存在することになる。位相が回転しないときはΔθ=0、位相が反時計回りに1つ動くとΔθ=π/2、2つ動くとΔθ=π、3つ動くとΔθ=3π/2である。そして、1つ前に到着した符号と現在到着した符号で位相が何度回転したかに応じてTwin PDの出力電流が+、−で2通り出てくる。
【0059】
これにより、一方の遅延干渉計60aとTwin PD63aとから、4値の位相変調から2つの状態を取り出しており(送信された40Gの情報量の内、半分の20Gを取り出している)、もう片方の遅延干渉計60bとTwin PD63bとからも、4値の位相変調から別の2つの状態を取り出している。
【0060】
したがって、2組の遅延干渉計60aとTwin PD63a、遅延干渉計60bとTwin PD63bからは、+、−の組み合わせとして、(+、+)、(+、−)、(−、−)、(−、+)の4状態を再生していることになる。その後の処理としては、後段のCDR65a、65bにおいて、プラス/マイナスの電流信号を電圧信号に変換し、しきい値により、電圧信号から0、1のビット判定を行い、ディジタル信号を生成する。
【0061】
このように、RZ−DQPSK受信装置6では、ほぼ同じ回路構成を2系統配置して復調処理を行うことで、RZ−DQPSK受信処理を行っており、回路構成の簡易化が実現されている。
【0062】
図10は符号間位相差ΔθがPD電流で取り出される様子を示す図である。RZ−DQPSKの受信信号がπ/2→π→0→3π/2→3π/2→π/2→0といった順序で変調されており、遅延干渉計60a、60bにより、上記の位相差の順に、対応するPD電流(Twin PD63a、63bからの出力電流)が出力する例を示している。
【0063】
遅延干渉計60aに関して、Δθ=π/2のとき、遅延干渉計60aの透過率から、上出力側アーム62a−1のパワーは大、下出力側アーム62a−2のパワーは小である。したがって、グラフg3の時間t1において、PDp1はプラスの出力電流となり、PDp2はマイナスの出力電流となる。
【0064】
Δθ=πのとき、遅延干渉計60aの透過率から、上出力側アーム62a−1のパワーは小、下出力側アーム62a−2のパワーは大である。したがって、グラフg3の時間t2において、PDp1はマイナスの出力電流となり、PDp2はプラスの出力電流となる。
【0065】
Δθ=0のとき、遅延干渉計60aの透過率から、上出力側アーム62a−1は大、下出力側アーム62a−2は小である。したがって、グラフg3の時間t3において、PDp1はプラスの出力電流となり、PDp2はマイナスの出力電流となる。
【0066】
Δθ=3π/2のとき、遅延干渉計60aの透過率から、上出力側アーム62a−1は小、下出力側アーム62a−2は大である。したがって、グラフg3の時間t4において、PDp1はマイナスの出力電流となり、PDp2はプラスの出力電流となる。
【0067】
Δθ=3π/2のとき、遅延干渉計60aの透過率から、上出力側アーム62a−1は小、下出力側アーム62a−2は大である。したがって、グラフg3の時間t5において、PDp1はマイナスの出力電流となり、PDp2はプラスの出力電流となる。
【0068】
一方、遅延干渉計60bに関して、Δθ=π/2のとき、遅延干渉計60bの透過率から、上出力側アーム62b−1のパワーは小、下出力側アーム62b−2のパワーは大である。したがって、グラフg4の時間t1において、PDp1はマイナスの出力電流となり、PDp2はプラスの出力電流となる。
【0069】
Δθ=πのとき、遅延干渉計60bの透過率から、上出力側アーム62b−1のパワーは小、下出力側アーム62b−2のパワーは大である。したがって、グラフg4の時間t2において、PDp1はマイナスの出力電流となり、PDp2はプラスの出力電流となる。
【0070】
Δθ=0のとき、遅延干渉計60bの透過率から、上出力側アーム62b−1は大、下出力側アーム62b−2は小である。したがって、グラフg4の時間t3において、PDp1は、プラスの出力電流となり、PDp2はマイナスの出力電流となる。
【0071】
Δθ=3π/2のとき、遅延干渉計60bの透過率から、上出力側アーム62b−1は大、下出力側アーム62b−2は小である。したがって、グラフg4の時間t4において、PDp1はプラスの出力電流となり、PDp2はマイナスの出力電流となる。
【0072】
Δθ=3π/2のとき、遅延干渉計60bの透過率から、上出力側アーム62b−1は大、下出力側アーム62b−2は小である。したがって、グラフg4の時間t5において、PDp1はプラスの出力電流となり、PDp2はマイナスの出力電流となる。
【0073】
図11はPD差電流を示す図である。横軸は時間、縦軸はPD差電流である。PD差電流は、PDp1の出力電流からPDp2の出力電流を減算した電流値のことである。グラフg3の波形からグラフg3aに示すようなPD差電流が得られ、グラフg4の波形からグラフg4aに示すようなPD差電流が得られる。したがって、受信信号は、(1、0)、(0、0)、(1、1)、(0、1)、(0、1)、(1、0)、(1、1)、・・・というように復調される。
【0074】
次に解決すべき課題について説明する。上述したように、遅延干渉計60aのアームa2にはπ/4移相器61aが設けられており、干渉点Xでのアーム間光位相差をπ/4にして、2本の導波路を流れてきた光を干渉させる。また、遅延干渉計60bのアームa2には−π/4移相器61aが設けられており、干渉点Xでのアーム間光位相差を−π/4にして、2本の導波路を流れてきた光を干渉させる。
【0075】
遅延干渉計60aに正確にπ/4の光位相が設定され、遅延干渉計60bに正確に−π/4の光位相が設定されているならば、遅延干渉計60aの光出力を差動光電変換検出し、後段のプリアンプ部64aから出力される信号を平均化したレベルと、遅延干渉計60bの光出力を差動光電変換検出し、後段のプリアンプ部64bから出力される信号を平均化したレベルとは一致することになる。
【0076】
なお、遅延干渉計60a、60bのいずれかまたは両方の光位相が正確にπ/4および−π/4と調整されていない場合には、2つの信号レベルの間には差分が生じることになる。
【0077】
したがって、プリアンプ部64bの出力レベルからプリアンプ部64aの出力レベルを減算した値を遅延干渉計60a側のモニタ値とし、プリアンプ部64aの出力レベルからプリアンプ部64bの出力レベルを減算した値を遅延干渉計60b側のモニタ値として、2つのモニタ値が0となるように制御することが必要であり、ゼロとなれば正しく復調されることになる。なお、遅延干渉計に対して光位相の設定が完了した状態、すなわち、モニタ値が0となった状態を光位相設定がロックした状態という。
【0078】
ここで、装置の初期起動時に、遅延干渉計60a、60bに入力される光信号の残留分散値が、遅延干渉計60a、60bの動作範囲外であり、かつ光位相が収束点から遠く離れている場合、光波形は原形を留めず、Twin PD63a、63bからの出力信号は不定となり、受信した光信号から主信号成分を抽出することができない。
【0079】
このような状態において、遅延干渉計60a側のモニタ値および遅延干渉計60b側のモニタ値がともに0となる場合が生じる。このように、正常に光位相が設定されていないにもかかわらず、モニタ値が0となる状態を光位相設定の誤ロックの状態と呼ぶ。
【0080】
光位相が最適な点に調整できている訳ではないので、次段のCDR65a、65bではクロック抽出ができず、主信号は復調されず、いつまでもエラーが続く状態となり、制御を停止してしまうといった問題が発生する。なお、以降では、CDRでクロック抽出制御が正常になされた状態を、クロック抽出制御がロックする、またはCDRロックといった表現をする。
【0081】
図12は光位相設定のロック範囲およびクロック抽出制御のロック範囲を示す図である。縦軸は波長分散値(ps/nm)、横軸は位相(deg)である。遅延干渉計60a、60bに入力される残留分散値と光位相の関係を示している。光受信装置が正常動作するためには、光位相設定は、実線に示す内側のロック範囲に位置し、かつクロック抽出制御が点線に示す内側のロック範囲に位置することが必要である。
【0082】
装置起動時の遅延干渉計60a、60bに入力される光の残留分散値と光位相とが、図の黒丸のポイントP1であった場合(残留分散値=300ps/nm、光位相=−40°)、遅延干渉計60a、60bのロック範囲外であり、かつCDRのロック範囲外にもなっている(なお、最も伝送特性の良好な最適ポイントはポイントPmである)。
【0083】
このとき、遅延干渉計60aのモニタ値および遅延干渉計60bのモニタ値が0となる場合がある。
すると、遅延干渉計60a、60bの光位相設定がロックしたものとして光位相設定制御を停止するが、CDRロック範囲外であるため、クロックを抽出できず主信号の再生には至らなくなる。
【0084】
以上説明したように、遅延干渉計に入力される光信号の残留分散値が、遅延干渉計の許容する分散値より非常に大きく、かつ光位相が収束点から遠く離れている場合、遅延干渉計の光位相設定において誤ロックが発生するおそれがある。
【0085】
従来のRZ−DQPSKの受信装置では、光位相設定のロックが正常ロックなのか、誤ロックなのかの識別を行わないため、誤ロックであるにもかかわらず、光位相設定が正常に完了したものとみなして受信処理を継続しようとするため、結果的に主信号が復調できず、装置のエラー状態が続いてしまうことになる。
【0086】
次に上記の課題を解決する光受信装置1の構成および動作に関して、RZ−DQPSKの受信処理を行う場合を例にして説明する。
図13は光受信装置1の構成を示す図である。光受信装置1は、VDC1a、復調部10、データ再生部20、OTN部1b−1および制御部30から構成される。
【0087】
復調部10は、分岐部C1、遅延干渉計11−1、11−2、Twin PD12a、12b、プリアンプ13a、13bから構成される。また、データ再生部20は、CDR部21a、21b、多重化部22、DES(DE-Sirializer)23から構成される。さらに、OTN部1b−1は、エラー検出部1bを含む。
【0088】
制御部30は、Aアームモニタ部31a、Bアームモニタ部31b、Aアーム温度制御部32a、Bアーム温度制御部32b、VDC制御部33から構成される。
分岐部C1は、VDC1aから出力された単一波長の光信号を2つのチャネルに分岐し、分岐した光信号をそれぞれ遅延干渉計11−1、11−2へ出力する。なお、遅延干渉計11−1側をAアーム、遅延干渉計11−2側をBアームとも表現する。
【0089】
遅延干渉計11−1、11−2は、分岐された2つのチャネル毎に配置されて、独立に光信号の位相変調の情報を強度変調の情報に復元するマッハ・ツェンダ型遅延干渉計である。
【0090】
遅延干渉計11−1の2本のアームa1、a2の内、一方のアームa2の近傍にはπ/4移相器11aが設けられ、制御部30からの光位相の設定制御にもとづき、干渉点Xでのアーム間光位相差がπ/4となるように調整する。
【0091】
遅延干渉計11−2の2本のアームa1、a2の内、一方のアームa2の近傍には−π/4移相器11bが設けられ、制御部30からの光位相の設定制御にもとづき、干渉点Xでのアーム間光位相差が−π/4となるように調整する。
【0092】
なお、図示はしていないが、π/4移相器11aおよび−π/4移相器11bには、導波路の温度を局所的に可変させて光位相を可変するヒータ、温度センサーおよび印加電圧に応じて発熱量の増減を調整するペルチェ素子などが含まれており、制御部30からの光位相設定信号にもとづいて制御される。
【0093】
Twin PD12a、12bは、強度変調された光信号の直接検波を行い、光強度を電流信号に直接置き換える。プリアンプ13aは、Twin PD12aから出力された光電流を電圧信号Vaに変換し(I/V変換)、プリアンプ13bは、Twin PD12bから出力された光電流を電圧信号Vbに変換する。
【0094】
CDR部21a、21bは、PLLによるクロック抽出機能と、2値しきい値判定機能とを有しており、CDR部21aは、プリアンプ13aから出力された電圧信号Vaからクロックck1の抽出および2値の識別判定を行い、制御部30に含まれるVDC制御部33に通知する。また、CDR部21aは、ディジタルデータを生成して、データ再生部20に含まれる多重化部22に出力する。
【0095】
同様に、CDR部21bは、プリアンプ13bから出力された電圧信号Vbからクロックck2の抽出および2値の識別判定を行い、制御部30に含まれるVDC制御部33に通知する。また、CDR部21bは、ディジタルデータを生成して、データ再生部20に含まれる多重化部22に出力する。
【0096】
多重化部22は、CDR部21aからのディジタルデータ出力と、CDR部21bからのディジタルデータ出力とを多重化してシリアル信号を出力する。DES23は、シリアル/パラレル変換を行って、多重化部22から出力されたシリアル信号をパラレル信号に変換する。
【0097】
OTN部1b−1は、FEC機能を有するエラー検出部1bを含み、DES23から出力された信号のエラー検出・訂正を行ってエラー値eをVDC制御部33へ送信し、かつエラー訂正を行う。なお、OTN部1b−1は、FECのエラー検出の他にもフレーマ(framer)機能なども有し、エラー訂正後のディジタル信号を、OTNと呼ばれる光ネットワーク規格に準拠したフォーマットのフレームに構成して出力したりする。
【0098】
Aアームモニタ部31aは、Aアーム側の復調信号として、プリアンプ13aから出力された電圧信号Vaを受信し、フィルタリングを行って平滑化して、平均信号(SVaとする)を生成する。また、Bアーム側の復調信号として、プリアンプ13bから出力された電圧信号Vbを受信し、フィルタリングを行って平滑化し、平均信号(SVbとする)を生成する。そして平均信号SVbから平均信号SVaを減算し、減算したレベル値をモニタ値m1として出力する。
【0099】
Aアーム温度制御部32aは、モニタ値m1を受信し、モニタ値m1のレベル判定を行う。モニタ値m1のレベルが0よりも大きいときは、Aアーム側の光位相制御として(+π/4を調整・設定する制御として)、π/4移相器11aに対して、温度が低くなるような信号を印加して、遅延が小さくなるように温度制御する(遅延干渉計11−1のアームa2の光路長を短くする)。
【0100】
また、モニタ値m1のレベルが0よりも小さいときは、π/4移相器11aに対して、温度が高くなるような信号を印加して、遅延が大きくなるように温度制御する(遅延干渉計11−1のアームa2の光路長を長くする)。
【0101】
一方、Bアームモニタ部31bは、Bアーム側の復調信号として、プリアンプ13bから出力された電圧信号Vbを受信し、フィルタリングを行って平滑化して、平均信号SVbを生成する。また、Aアーム側の復調信号として、プリアンプ13aから出力された電圧信号Vaを受信し、フィルタリングを行って平滑化し、平均信号SVaを生成する。そして平均信号SVaから平均信号SVbを減算し、減算したレベル値をモニタ値m2として出力する。
【0102】
Bアーム温度制御部32bは、モニタ値m2を受信し、モニタ値m2のレベル判定を行う。モニタ値m2のレベルが0よりも大きいときは、Bアーム側の光位相制御として(−π/4を調整・設定する制御として)、−π/4移相器11bに対して、温度が低くなるような信号を印加して、遅延が小さくなるように温度制御する(遅延干渉計11−2のアームa2の光路長を短くする)。
【0103】
また、モニタ値m2のレベルが0よりも小さいときは、−π/4移相器11bに対して、温度が高くなるような信号を印加して、遅延が大きくなるように温度制御する(遅延干渉計11−2のアームa2の光路長を長くする)。
【0104】
VDC制御部33は、モニタ値m1、モニタ値m2、クロックck1、クロックck2およびエラー値eを受信する。モニタ値m1、m2に関して、モニタ値m1が0であるならば、遅延干渉計11−1に対して光位相設定(+π/4位相の設定)がなされ、モニタ値m2が0であるならば、遅延干渉計11−2に対して光位相設定(−π/4位相の設定)がなされたことになるが、上述したように、正常に光位相が設定されるとは限らず、誤設定によって0となる場合もありえるので、光位相の設定認識としては、モニタ値m1、m2が0になるか否かのみ判別している。
【0105】
一方、クロックck1、ck2に関しては、クロックck1、ck2が共に正常に受信できている場合は、CDR21a、21bが正常動作している、すなわちデータ再生部20が正常動作していると判別する(すなわち、クロック抽出制御がロックしている、またはCDRがロックしている)。なお、エラー値eに関しては、分散補償値の微調整を行うときに用いるもので、エラー値eが最小になるように、VDC1aに設定すべき分散補償値を微調整する。なお、VDC制御部33は、Aアーム温度制御部32a、Bアーム温度制御部32bに対して、リセット信号を送出し、光位相設定制御のリセットを行う。
【0106】
次に分散補償のシーケンス制御について説明する。図14は分散補償シーケンス制御を示すフローチャートである。
〔S1〕制御部30は、光ファイバ伝送により生じた波長分散を補償するために、あらかじめ異なる複数の分散補償値をメモリに保持しておく。例えば、分散補償値D1=0、D2=−200、D3=−400、D4=−600、D5=−800が登録されているものとする(単位の記載は省略する)。
【0107】
〔S2〕制御部30は、nを+1インクリメントし(電源投入時などの装置起動時はn=0)、VDC1aに分散補償値Dnを設定する。例えば、装置起動時の1回目の分散補償値は、分散補償値D1=0が設定される。また、分散補償値D1=0で光位相設定が完了しなかった場合、または分散補償値D1=0で光位相設定は完了したが、データ再生部20が正常動作しない場合には、2回目の分散補償値である分散補償値D2=−200が設定されることになる。
【0108】
〔S3〕制御部30は、Aアーム温度制御部32aとBアーム温度制御部32bに対してリセット信号を送出し、光位相設定制御をリセットする。
〔S4〕制御部30は、遅延干渉計11−1、11−2に対して、一定時間内に光位相設定が完了したか否かを判別する。すなわち、制御部30は、タイマを有しており、一定時間内にモニタ値m1、m2がともに0となるか否かを判別する。一定時間内に光位相設定が完了した場合(モニタ値m1、m2がともに0の場合)はステップS5に移行し(分散補償値をスイープさせる可変制御へ移行し)、一定時間内に光位相設定が完了しない場合(モニタ値m1、m2のどれか一方でも0にならない場合)はステップS2へ戻る。
【0109】
〔S5〕制御部30は、ステップS2で設定した分散補償値を中心に、プラス方向およびマイナス方向に分散補償値をスイープさせる可変制御を行う。
〔S6〕スイープ範囲内でデータ再生部20が正常動作する分散補償値があるか否か(データ再生部20からクロックck1、ck2を受信できるか否か)を判別する。
【0110】
例えば、分散補償値D2=−200で光位相設定の完了を認識した場合は、−200を中心に分散補償値をプラス方向およびマイナス方向にスイープさせて、そのスイープさせた範囲内で、クロックck1、ck2がともに正常受信できる分散補償値の範囲を検出する。
【0111】
データ再生部20の正常動作を認識できる分散補償値範囲を一定時間内に検出できた場合(クロックck1、ck2をともに正常受信した場合)はステップS7へいき、データ再生部20の正常動作を認識できる分散補償値範囲を一定時間内に検出できない場合(クロックck1、ck2をともに正常受信できない場合)はステップS2へ戻る。
【0112】
〔S7〕制御部30は、ステップS6で検出した範囲(分散補償値範囲)内で分散補償値を微調整して、エラー値eが最小になるポイント(最適分散補償値)を検出し、求めた最適分散補償値をVDC1aに最終的に設定する。
【0113】
次に図14のフローチャートにもとづいて、具体的な数値を用いて分散補償シーケンス制御について説明する。遅延干渉計11−1、11−2、CDRの特性が図12であると仮定する(CDR部21a、21bがロックする波長分散範囲が−100ps/nm〜+100ps/nmである)。また、光ファイバ伝送路の分散値が+650ps/nm、光受信装置1の分散値保証範囲が0〜+800ps/nm、VDC1aの初期分散補償設定値が0ps/nmとする。
【0114】
VDC1aの分散補償設定値を0(フローの1回目)とし(ステップS2)、光位相設定制御リセットを実行する(ステップS3)。
ステップS4で遅延干渉計11−1、11−2のロック待ちとなる。ここで、伝送路分散値が+650ps/nmでVDC1aの設定値が0なので、遅延干渉計11−1、11−2に入力される残留分散値は+650ps/nmとなる。
【0115】
この状況で光位相が収束点から40°近く離れていたとすると、遅延干渉計11−1、11−2の誤ロックが発生する可能性がある。いま仮に誤ロックしたとする。ステップS4で遅延干渉計11−1、11−2はロックし(誤ロックである)、分散補償値を自動的に可変させ(ステップS5)、CDR21a、21bがロックしたことを示すクロックの抽出確認を実施するが、遅延干渉計11−1、11−2が誤ロックしているためにCDR21a、21bがロックすることはなく、正常なクロックck1、ck2が出力されることはない。
【0116】
一定時間内にCDR21a、21bがロックしない場合、ステップS2へ戻り(ステップS6)、2回目の分散補償値(−200ps/nm)をVDC1aに設定し(ステップS2)、光位相設定制御リセットを実行する(ステップS3)。
【0117】
この場合は、伝送路分散値+650ps/nmに対し、VDC1aの設定値が−200ps/nmなので、遅延干渉計11−1、11−2に入力される残留分散値は+450ps/nmとなる。
【0118】
図12で分散値+450ps/nmは、まだ遅延干渉計11−1、11−2の動作範囲外なので、これも誤ロックする可能性があり、誤ロックしたとする。同様に3回目でVDCの設定値を−400ps/nmとし(ステップS2)、光位相設定制御リセットを実行する(ステップS3)。
【0119】
残留分散値は+250ps/nmとなり、図12よりまだ誤ロックの可能性がある。次に4回目でVDCを−600ps/nmとし(ステップS2)、光位相設定制御リセットを実行する(ステップS3)。
【0120】
このとき、遅延干渉計11−1、11−2に入力される残留分散値は、+50ps/nmとなり、図12より遅延干渉計11−1、11−2の動作可能範囲となる。遅延干渉計11−1、11−2に光位相設定制御が実行され(ステップS4)、遅延干渉計11−1、11−2がロックすると(正常ロックである)、分散補償値を−600ps/nmを中心に可変させ(ステップS5)、CDR21a、21bがロックする分散補償値範囲が抽出される(ステップS6)。CDR21a、21bがロックされると、エラー値eが最小となるように、VDC1aに設定した分散補償値を自動で微調整して最適ポイントを見つけ(ステップS7)、分散補償制御シーケンスを完了させる。
【0121】
ここで、遅延干渉計11−1、11−2には正常に動作できる(光位相を調整できる)分散範囲があり、その分散範囲内であるならば光位相設定制御が可能で、DQPSK信号の復調が可能であるが、その分散範囲外では、上述のように遅延干渉計11−1、11−2が誤ロックしてしまう可能性がある。
【0122】
一方、実際にトランスポンダ(光受信装置1)が置かれる光ファイバ伝送路の分散値は、遅延干渉計11−1、11−2の動作補償範囲よりも大きい場合があるため、VDC1aにより残留分散値を小さくする必要がある。
【0123】
あらかじめ光ファイバ伝送路の分散値が判明している場合には、初期起動時のVDC1aをその光ファイバ伝送路の分散値を補正する値に調整しておくことで、遅延干渉計11−1、11−2に入力する残留分散値を小さくすることが可能であるが、どのような分散値を持つ光ファイバ伝送路に設置されるか解らない場合には、図14で示したフローによる分散補償シーケンス制御を実行する必要がある。
【0124】
上記のような、分散補償シーケンス制御を行うことにより、どのような光ファイバ伝送路の波長分散に対しても、最適な分散補償値をVDC1aに効率よく設定することができ、信号の復調を行うことが可能になる。
【0125】
次に分散補償シーケンス制御の変形例について説明する。図14で示したシーケンスでは、VDC1aの初期分散値を設定し、遅延干渉計11−1、11−2のロック後に、設定した分散補償値の可変制御を行うといったように、装置起動時に適切な分散補償値を逐一検出する制御を行うために、信号疎通が可能となるまでに、時間を消費してしまうことになる。
【0126】
したがって、変形例のシーケンス制御では、装置運用中にVDC1aに設定された分散補償値を、バックアップ値としてメモリに保持しておき、電源断などが生じた後の再起動時には、保持しておいた分散補償値をVDC1aに設定するところから、分散補償シーケンス制御を開始するものである。
【0127】
図15は分散補償シーケンス制御を示すフローチャートである。
〔S1a〕制御部30は、装置起動時、バックアップ値があるか否かを判別する。バックアップ値がない場合はステップS1へいき、バックアップ値がある場合はステップS1bへいく。なお、バックアップ値がない場合は、ステップS4、S5で判断がNoの場合はステップS1aに戻る以外は、図14のフローと同じになるので説明は省略する。
【0128】
〔S1b〕制御部30は、バックアップされている分散補償値をVDC1aに設定し、ステップS3へいく。以降の動作は図14のフローと基本的に同じである。
このように、装置運用中の分散補償値を保持しておき、再起動時には、保持しておいた分散補償値からシーケンス制御を開始する。これにより、電源断などが生じた後の再起動時には、適切な分散補償値が即時にVDC1aに設定されることになり、信号疎通に要する時間を短縮化することが可能になる。
【0129】
次に制御部30への分散補償値の登録(図14のステップS1)と、分散補償値を可変制御する場合(図14のステップS5)のスイープ範囲について説明する。図16は分散補償範囲を示す図である。光受信装置1が分散補償可能な分散トレランス特性を示しており、この例では、波長分散が−800ps/nm〜+500ps/nmが、分散補償が可能な範囲とする。
【0130】
制御部30内のメモリに対して、1回目の分散補償値=0ps/nm、2回目の分散補償値=−400ps/nm、3回目の分散補償値=+400ps/nm、4回目の分散補償値=−800ps/nmをあらかじめ登録しておく。
【0131】
また、各登録値に対して、±200ps/nm(幅で400ps/nm)を分散補償値のスイープ範囲とする。例えば、1回目の分散補償値=0ps/nmに対して、分散補償値を可変制御する場合は、−200ps/nm〜+200ps/nmのスイープ範囲内で、CDR21a、21bがロックする(データ再生部20が正常動作する)分散補償値範囲を検出することになる。
【0132】
また、例えば、2回目の分散補償値=−400ps/nmに対して、分散補償値を可変制御する場合は、−600ps/nm〜+600ps/nmのスイープ範囲内で、CDR21a、21bがロックする分散補償値範囲を検出することになる。なお、検出した分散補償値範囲内で分散補償値をさらに微調整することで、エラー値eが最小となるポイント(最適分散補償値)を検出することになる。
【0133】
ここで、あらかじめ登録しておく複数の分散補償値と、スイープ範囲とは、光受信装置1の分散トレランス特性および許容可能なエラー値eから決めているものである。
上記では、分散トレランス特性が−800ps/nm〜+500ps/nmであり、幅が400ps/nmの範囲で1E−9以下のエラー特性が得られるとした場合には、登録する分散補償値を0、−400、+400、−800の値とし、スイープ範囲をそれぞれ−200ps/nm〜+200ps/nmとすることにより、分散トレランス特性の範囲内で、すべての分散値をカバーすることが可能になる。なお、図16に対応する光位相設定のロック範囲およびクロック抽出制御のロック範囲を図17に示す。
【0134】
以上説明したように、本発明によれば、遅延干渉計の誤ロック時においてもデッドロックすることなく、最適な分散補償値を効率よく設定することが可能になる。また、電源の瞬断等で装置が落ちて再起動した場合でも、分散補償シーケンス制御に要する時間が短縮化でき、信号復旧時間も大幅に短縮化することができるので、信頼性の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】光受信装置の構成図である。
【図2】RZ−DQPSKシステムの構成を示す図である。
【図3】RZ−DQPSKシステムの構成を示す図である。
【図4】QPSKのフェーズダイアグラムを示す図である。
【図5】RZパルス化強度変調器の動作を示す図である。
【図6】遅延干渉計の透過率を示す図である。
【図7】遅延干渉計の透過率を示す図である。
【図8】Twin PDを流れる電流の向きを示す図である。
【図9】符号間位相差と電流の向きとの関係を示す図である。
【図10】符号間位相差がPD電流で取り出される様子を示す図である。
【図11】PD差電流を示す図である。
【図12】光位相設定のロック範囲およびクロック抽出制御のロック範囲を示す図である。
【図13】光受信装置の構成を示す図である。
【図14】分散補償シーケンス制御を示すフローチャートである。
【図15】分散補償シーケンス制御を示すフローチャートである。
【図16】分散補償範囲を示す図である。
【図17】光位相設定のロック範囲およびクロック抽出制御のロック範囲を示す図である。
【図18】トランスポンダの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0136】
1 光受信装置
1a 可変分散補償器(VDC)
1b エラー検出部
10 復調部
11−1、11−2 遅延干渉計
12 光検波器
20 データ再生部
30 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調された光信号の受信処理を行う光受信装置において、
前記光信号を受信して、与えられた分散補償値により、前記光信号の分散補償を行う可変分散補償器と、
分散補償後の前記光信号の位相変調の情報を強度変調の情報にする遅延干渉計と、強度変調された前記光信号の検波を行って、前記光信号を電気信号に変換する光検波器とを含む復調部と、
前記電気信号からクロックを抽出し、データを再生するデータ再生部と、
前記遅延干渉計に光位相を設定する機能と、前記分散補償値を前記可変分散補償器に設定する機能とを持つ制御部と、
を備え、
前記制御部は、
装置起動時に、前記遅延干渉計に前記光位相が設定されたことを認識したにもかかわらず、一定時間内に前記データ再生部が正常動作しない場合には、前記光位相の誤設定がなされたものとみなし、
前記遅延干渉計に前記光位相が設定されて、かつ前記データ再生部の正常動作を認識するまで、異なる前記分散補償値を順次設定する分散補償シーケンス制御を行う、
ことを特徴とする光受信装置。
【請求項2】
前記データ再生部から出力された前記データのエラー検出・訂正を行うエラー検出部をさらに有し、
前記制御部は、設定した前記分散補償値によって、前記遅延干渉計に前記光位相が設定されて、かつ前記データ再生部の正常動作を認識した後は、エラーが最小となるように、前記分散補償値を微調整することを特徴とする請求項1記載の光受信装置。
【請求項3】
前記制御部は、装置運用中の前記分散補償値を保持しておき、再起動時には、保持しておいた前記分散補償値から前記分散補償シーケンス制御を開始することを特徴とする請求項1記載の光受信装置。
【請求項4】
前記制御部は、
登録されたk(kは2以上の自然数)個の異なる値の前記分散補償値を保持し、1つの前記分散補償値を分散補償値Dkと表す場合、
装置起動時に、分散補償値Dp(1≦p≦k:pは自然数)を前記可変分散補償器に設定し、
前記遅延干渉計に対して前記光位相の設定が完了したことを示す、光位相設定のロック状態に関して、前記光位相設定のロック状態を一定時間内に認識するか否かの判別処理である第1の判別処理を行い、
前記光位相設定がロックしない場合には、登録された他の分散補償値Dq(q≠p、1≦q≦k:qは自然数)を設定して、前記第1の判別処理を繰り返し行い、
分散補償値Dr(1≦r≦k:rは自然数)で、前記光位相設定がロックした場合には、前記分散補償値Drを一定範囲内で可変させ、
前記データ再生部から前記クロックが抽出されたことを示す、クロック抽出制御のロック状態に関して、前記クロック抽出制御のロック状態を一定時間内に認識するか否かの判別処理である第2の判別処理を行い、
前記クロック抽出制御がロックしない場合には、前記光位相設定が誤ロックしているものとみなして、登録された他の分散補償値Ds(s≠r、1≦s≦k:sは自然数)を設定して、前記第1の判別処理および第2の判別処理を繰り返し行い、
分散補償値Dt(1≦t≦k:tは自然数)で、前記クロック抽出制御がロックした場合には、前記データ再生部から出力された前記データのエラー結果が最小となるように、前記分散補償値Dtの微調整を行って、前記可変分散補償器に設定することで、前記分散補償シーケンス制御を完了する、
ことを特徴とする請求項1記載の光受信装置。
【請求項5】
変調された光信号を受信して分散補償を行う分散補償シーケンス制御方法において、
可変分散補償器は、前記光信号を受信して、与えられた分散補償値により、前記光信号の分散補償を行い、
復調部は、分散補償後の前記光信号の位相変調の情報を強度変調の情報にする遅延干渉計と、強度変調された前記光信号の検波を行って、前記光信号を電気信号に変換する光検波器とを含んで、受信信号の復調を行い、
データ再生部は、前記電気信号からクロックを抽出し、データを再生し、
制御部は、前記遅延干渉計に光位相を設定する機能と、前記分散補償値を前記可変分散補償器に設定する機能とを有し、
前記制御部は、
装置起動時に、前記遅延干渉計に前記光位相が設定されたことを認識したにもかかわらず、一定時間内に前記データ再生部が正常動作しない場合には、前記光位相の誤設定がなされたものとみなし、
前記遅延干渉計に前記光位相が設定されて、かつ前記データ再生部の正常動作を認識するまで、異なる前記分散補償値を順次設定する分散補償シーケンス制御を行う、
ことを特徴とする分散補償シーケンス制御方法。
【請求項6】
前記データ再生部から出力された前記データのエラー検出・訂正を行うエラー検出部をさらに有し、
前記制御部は、設定した前記分散補償値によって、前記遅延干渉計に前記光位相が設定されて、かつ前記データ再生部の正常動作を認識した後は、エラーが最小となるように、前記分散補償値を微調整することを特徴とする請求項5記載の分散補償シーケンス制御方法。
【請求項7】
前記制御部は、装置運用中の前記分散補償値を保持しておき、再起動時には、保持しておいた前記分散補償値から前記分散補償シーケンス制御を開始することを特徴とする請求項5記載の分散補償シーケンス制御方法。
【請求項8】
前記制御部は、
登録されたk(kは2以上の自然数)個の異なる値の前記分散補償値を保持し、1つの前記分散補償値を分散補償値Dkと表す場合、
装置起動時に、分散補償値Dp(1≦p≦k:pは自然数)を前記可変分散補償器に設定し、
前記遅延干渉計に対して前記光位相の設定が完了したことを示す、光位相設定のロック状態に関して、前記光位相設定のロック状態を一定時間内に認識するか否かの判別処理である第1の判別処理を行い、
前記光位相設定がロックしない場合には、登録された他の分散補償値Dq(q≠p、1≦q≦k:qは自然数)を設定して、前記第1の判別処理を繰り返し行い、
分散補償値Dr(1≦r≦k:rは自然数)で、前記光位相設定がロックした場合には、前記分散補償値Drを一定範囲内で可変させ、
前記データ再生部から前記クロックが抽出されたことを示す、クロック抽出制御のロック状態に関して、前記クロック抽出制御のロック状態を一定時間内に認識するか否かの判別処理である第2の判別処理を行い、
前記クロック抽出制御がロックしない場合には、前記光位相設定が誤ロックしているものとみなして、登録された他の分散補償値Ds(s≠r、1≦s≦k:sは自然数)を設定して、前記第1の判別処理および第2の判別処理を繰り返し行い、
分散補償値Dt(1≦t≦k:tは自然数)で、前記クロック抽出制御がロックした場合には、前記データ再生部から出力された前記データのエラー結果が最小となるように、前記分散補償値Dtの微調整を行って、前記可変分散補償器に設定することで、前記分散補償シーケンス制御を完了する、
ことを特徴とする請求項5記載の分散補償シーケンス制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−93677(P2010−93677A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263589(P2008−263589)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】