光増幅器および光受信モジュール
【課題】受信光のパワーレベルの急変を補償可能であり、かつ、機能部品の光損失等にばらつきがあっても雑音光の発生状態が実質的に変化しない低コストの光増幅器および光受信モジュールを提供する。
【解決手段】受信器25の前段に配置される単一波長用の光増幅器について、前段および後段光増幅部の間の光路上に機能部品22および可変光減衰器23Aを配置し、高速ALC動作する後段光増幅部の利得が一定となるように、可変光減衰器23Aの光減衰量を相対的に遅い速度でフィードバック制御して、機能部品22の光損失の個体ばらつきを補償する。
【解決手段】受信器25の前段に配置される単一波長用の光増幅器について、前段および後段光増幅部の間の光路上に機能部品22および可変光減衰器23Aを配置し、高速ALC動作する後段光増幅部の利得が一定となるように、可変光減衰器23Aの光減衰量を相対的に遅い速度でフィードバック制御して、機能部品22の光損失の個体ばらつきを補償する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信において受信器に入力される単一波長の光信号を増幅するための光増幅器および光受信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムにおいて、伝送速度が40Gb/s以上の高速になると、伝送信号の光パルス幅は数ピコ秒と狭くなるために、光ファイバの僅かな波長分散(Chromatic Dispersion)や偏波モード分散(Polarization-Mode Dispersion)による波形歪みが伝送特性を著しく劣化させる。また、伝送ファイバの分散値は、温度や環境の変化に伴い時間的に変動し、その僅かな変化が伝送特性に影響することが知られている(例えば、下記の非特許文献1参照)。
【0003】
図11は、波長分散補償または偏波モード分散補償技術を用いた波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)伝送システムの光受信ユニットを示す図である。図11において、光受信ユニット100は、光プリアンプ101で一括増幅されたWDM光を分波器102で波長毎に分波し、該分波器102から出力される各波長の光信号CH1,CH2,…,CHnを各受信モジュール103_1,103_2,…,103_nに与えて受信処理する。各受信モジュール103_1,103_2,…,103_n内の光路上には、可変分散補償器(Tunable Dispersion Compensator:TDC)や偏波モード分散補償器(Polarization-Mode Dispersion Compensator:PMDC)などの機能部品111をそれぞれ設け、該各機能部品111で受信光に対して好ましい分散補償を実施する。
【0004】
上記のようなTDCやPMDCなどの機能部品111を適用した場合、該機能部品111の光損失により受信光のパワーレベルが小さくなると、受信器112および識別再生器113におけるビット誤り率(Bit Error Rate:BER)は増加する。このBERの増加を抑えるため、各波長に対応した受信モジュール103_1〜103_nには、上記機能部品111と共に、受信器112の前段に光増幅器114を適用して、機能部品111の光損失を補償する機能が必要になる。しかしながら、上記光増幅器114の適用により、該光増幅器114が光信号を増幅する際に発生する自然放出光(Amplified Spontaneous Emission:ASE)等の雑音光が要因となって受信光の波形を劣化させる可能性があり問題になる。
【0005】
ここで、多波長を一括増幅するWDM用光増幅器と、一波を増幅する単一波長用光増幅器との相違について説明する。WDM伝送システムにおいては、上記のような各波長に対応した受信器の前段に配置される単一波長用の光増幅器以外にも、WDM光が伝搬する光路上に多波長を一括増幅するWDM用の光増幅器(例えば、図11中の光プリアンプ101等)が多数適用されている。図12に示すように、該WDM用の光増幅器で発生するASE等の雑音光(図12の上段を参照)は、光受信ユニット100の分波器102を通るため、各々の光信号の帯域内に存在する雑音成分のみが分波器102を透過して各信号波長に対応した受信器112に送られ、帯域外に存在する雑音成分は分波器102で遮断される(図12の中段を参照)。このため、WDM用の光増幅器で発生する雑音光が各波長の光信号の受信特性に与える影響は比較的小さく、多くの場合無視することができる。
【0006】
これに対して、上記単一波長用の光増幅器114は、上記分波器102で分波された各波長の光信号が伝搬する光路上に設けられるため、該光増幅器114で広い波長帯域にわたって発生する雑音光がそのまま受信器112に入力されてしまう(図12の下段を参照)。このため、雑音光のトータルパワーに対する単一波長の光信号のパワーの割合が小さくなり、BERを増加させる原因になる。
【0007】
上記のような単一波長用の光増幅器で発生する雑音光による受信特性の劣化を低減させるための従来技術としては、例えば図13に示すように光増幅器114と受信器112の間の光路上に光フィルタ115を設け、受信する光信号の帯域以外の光を該光フィルタ115により除去する構成が知られている。(例えば、下記の特許文献1,2参照)。
【0008】
また、上記のようなWDM伝送システムに適用される光受信装置の更なる問題点として、受信光のパワーレベルが急激に変化することにより発生する伝送エラーがある。すなわち、伝送速度が40Gb/s以上になると、伝送信号の光パルス幅は数ピコ秒(ps)と狭くなる。このような高速の光信号に対応した受信器は、そもそも伝送マージン(余裕)が少ない上に、受信光のパワーレベルの急変により、受信レベルの識別点の追従が不十分になる、または、受信パワーが許容範囲を超えてしまうなどの要因が重なることによって、伝送エラーの発生する可能性が増大する。
【0009】
上記受信光のパワーレベルの急変は、システムの運用中に、当該波長の光信号の伝送光路上において、人為的ミスによるコネクタ抜き差しが行われる、または、光ファイバが外的刺激(例えば、光ファイバに触れることによる応力や配線環境の変化)を受けるなどの原因により、容易に発生することが想定される。また、受信光のパワーが変化するだけでなく、WDM光の波長数が急激に変化した場合にも、残留光信号のパワーレベルが変化する現象が発生し、伝送エラーを生じさせる要因となることも知られている(例えば、下記の特許文献3参照)。波長数の急激な変化についても、光伝送パスのダイナミックな再構築や、人為的ミスによるコネクタ抜け、光ファイバの切断などの原因により、容易に発生することが想定される。
【0010】
上記のような受信光のパワーレベルの急変による伝送エラーの発生を抑えるためには、例えば、光受信装置内の光増幅器に対して高速な出力一定制御(Automatic Level Control:ALC)を適用することが有効である。ALCは、通常、光増幅器の出力光パワーを光検出器等でモニタし、そのモニタ値が目標出力光パワーになるように、光増幅器の駆動状態(例えば、励起光源の出力パワー)をフィードバック制御することにより行われる(例えば、下記の特許文献4参照)。
【0011】
【特許文献1】特開平8−321805号公報
【特許文献2】特開2004−179799号公報
【特許文献3】特開2006−295113号公報
【特許文献4】特開平8−248455号公報
【非特許文献1】中沢正隆、廣岡俊彦,「超短光パルスを用いた高速光伝送技術の現状と将来展望」,電子情報通信学会論文誌B,Vol.J89-B,No.11,pp.2067-2081
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、前述したようなWDM光の各波長に対応した受信器の前段に配置される単一波長用の光増幅器は、WDM光の波長数に対応させて多数用意する必要がある。個々の光増幅器の構成や制御方式は、コストの上昇等を抑えるために、入力される光信号の波長に応じて異なるものにするのではなく、WDM光の広い波長帯域に対し共通の設計とすることが望まれる。このような要望に応えるにあたり、前述したTDCやPMDCなどの機能部品の光損失には部品個別のばらつきがあり、かつ、40Gb/sを超えるような高速な光信号に対応した受信器の性能にも現状ばらつきは避けられないので、これらのばらつきを補償可能にするような光増幅器の設計共通化が重要になる。しかしながら、前述したような従来技術を組み合わせただけでは次に述べるような課題が生じるため、上記要望に充分に応えることは難しい。
【0013】
単一波長用の光増幅器で発生する雑音光による受信特性の劣化を低減させるために、受信光の帯域外の光を除去する光フィルタを光増幅器と受信器の間の光路上に挿入した場合、雑音光のトータルパワーに対する単一波長の光信号のパワーの割合が大きくなるので受信特性の改善効果は大きい。しかし、該光フィルタの挿入損失とそのばらつきが加わることになり、単一波長用の光増幅器の設計が更に複雑化してしまう。また、単一波長用の光増幅器と同様に、上記光フィルタもWDM光の波長数に対応させて多数用意する必要があり、汎用性をもたせた可変光フィルタは高価であるので、システム全体に与えるコスト上昇の影響は大きく、受信特性の改善効果がたとえ大きくでも、現実的な対応策として上記光フィルタを適用することは難しいという課題がある。
【0014】
また、受信光のパワーレベルの急変による伝送エラーの発生を抑えるために、単一波長用の光増幅器に対して高速な出力一定制御(ALC)を適用した場合、該ALCは、受信光パワーの動的な変化を補償するだけでなく、受信モジュール内外の静的な要因による受信パワーの相違も補償することになり、該補償により光増幅器の利得に大きな変化が生じる。上記受信モジュール外の静的な要因には、分波器の前段でWDM光を一括増幅する光プリアンプの出力レベルの変動や、分波器の挿入損失のばらつきなどがある。また、受信モジュール内の静的な要因には、TDCやPMDCなどの機能部品の光損失のばらつきや、受信器の性能のばらつきによる各々の受信器への光入力レベルの目標値(単一波長用の光増幅器におけるALCの目標制御レベルに対応)のばらつきなどがある。
【0015】
光増幅器の利得が変化すると、雑音光の発生量およびその波長特性も大きく変化することが知られている。これは、WDM光の波長数に対応して複数設けられる単一波長用の光増幅器の間で利得に相違が生じている場合に、各々の光増幅器における雑音光の発生状態が異なることも意味する。例えば、図14はエルビウム添加ファイバ増幅器(Erbium-Doped Fiber Amplifier:EDFA)の利得スペクトルをエルビウムイオンの反転分布率に応じて示しているが、このようなEDFAにおいて利得が大きい(反転分布率が高い)状態では、短波長側での雑音光の発生量が相対的に多くなり、逆に利得が小さい(反転分布率が低い)状態では、長波長側での雑音光の発生量が相対的に多くなることが分かる。
【0016】
TDCやPMDCなどの機能部品の光損失が大きい場合、または、受信器への光入力レベルの目標値が高い場合には、単一波長用の光増幅器に要求される利得は大きくなり、上記EDFAの例では短波長側の雑音光の発生量が相対的に多い状態となる。このような状態の光増幅器において短波長側の光信号の増幅が行われると、該光増幅器の出力光(受信器の入力光)における雑音光のトータルパワーに対する信号光のパワーの割合が小さくなる。一方、機能部品の光損失が小さい場合、または、受信器への光入力レベルの目標値が低い場合には、単一波長用の光増幅器に要求される利得は小さくなり、上記EDFAの例では長波長側の雑音光の発生量が相対的に多い状態となる。このような状態の光増幅器において長波長側の光信号の増幅が行われると、該光増幅器の出力光における雑音光のトータルパワーに対する信号光のパワーの割合が小さくなる。
【0017】
つまり、受信光のパワーレベルの急変は光増幅器に高速なALCを適用することにより補償できるようになる。しかし、ALCの適用による利得の変化がWDM光の各波長の光信号に対応した受信特性に与える影響については、TDCやPMDCなどの機能部品の光損失および受信器の性能の個体ばらつきに起因した各波長間での雑音光の発生状態の違いまでを総合的に考慮する必要があり、現状、単一波長用の光増幅器の設計共通化を困難にしているという課題がある。
【0018】
本発明は上記の課題に着目してなされたもので、受信光のパワーレベルの急変を補償可能であり、かつ、機能部品の光損失等にばらつきがあっても雑音光の発生状態が実質的に変化しない低コストの光増幅器および光受信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するため、本発明は単一波長の光信号を増幅するための光増幅器を提供する。該光増幅器の一態様は、縦続接続された前段光増幅手段および後段光増幅手段と、前記前段および後段光増幅手段の間の光路上に配置され、前記光路を伝搬する光信号の劣化の補償を行う機能部品と、前記前段および後段光増幅手段の間の光路上に配置され、前記光路を伝搬する光信号を減衰させる可変光減衰手段と、前記後段光増幅手段からの光出力パワーを検出し、該光出力パワーが予め設定した目標レベルで一定となるように、前記後段光増幅手段の駆動状態を制御する後段出力一定制御手段と、前記後段光増幅手段に対して入出力される光信号のパワーより得られる利得に基づき、前記可変光減衰手段における光減衰量を制御する後段利得一定制御手段と、を備える。
【0020】
また、本発明による光受信モジュールの一態様は、前記光増幅器と、該光増幅器から出力される光信号を受信し、該光信号を復調した電気信号を生成する受信器と、前記受信器からの出力信号を用いて受信データを識別再生する識別再生回路と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
上記のような光増幅器および光受信モジュールによれば、前段および後段光増幅手段の間の光路上に機能部品および可変光減衰手段を配置し、出力一定制御された後段光増幅手段における利得に基づいて可変光減衰手段の光減衰量が制御されるようにしたことで、機能部品の光損失の個体ばらつきが補償され、前段および後段光増幅手段での雑音光の発生状態が実質的に変化しなくなり、受信特性の劣化を低減することができる。また、後段光増幅部手段には出力一定制御が適用されるので、受信光のパワーレベルの急変による伝送エラーの発生も回避することが可能である。これにより、WDM光の各チャネルに対応した光受信モジュール内の受信器の前段に配置される単一波長用の光増幅器の設計共通化が容易になり、40Gb/sを超えるような高速な光信号を確実に受信できる光受信モジュールを低コストで実現することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、全図を通して同一の符号は同一または相当部分を示すものとする。
図1は、本発明の第1実施形態による光受信モジュールを用いたWDM伝送システムの光受信装置の要部構成を示すブロック図である。
【0023】
図1において、光受信ユニット1は、例えば、光プリアンプ11、分波器12および第1実施形態の光受信モジュール13_1〜13_nを備える。光プリアンプ11は、光受信ユニット1を含むWDM伝送システムの光伝送路に接続されており、該光伝送路を伝送されてきたWDM光が入力される。該WDM光は、波長の異なる複数の光信号(チャネル)CH1,CH2,…,CHnを含んでおり、各チャネルCH1〜CHnが光プリアンプ11によって所要のレベルまで一括増幅される。上記光プリアンプ11の構成は、公知のWDM用光増幅器の構成と同様である。なお、ここでは光受信ユニット1に入力されるWDM光の波長数(チャネル数)をnとしている。
【0024】
分波器12は、光プリアンプ11で一括増幅されたWDM光が入力ポートに与えられ、該WDM光を波長毎に分波する。該分波された各チャネルCH1〜CHnは、分波器12の対応する出力ポートからそれぞれ出力される。上記分波器12の各出力ポートには、光受信モジュール13_1〜13_nがそれぞれ接続される。
【0025】
各光受信モジュール13_1〜13_nは、例えば、縦続接続された前段光増幅部21および後段光増幅部24と、該2段構成の光増幅部21,24の段間に順に配置された、機能部品22および可変光減衰部23と、後段光増幅部24の出力端に接続する受信器25と、該受信器の出力端に接続する識別再生器26とを有する。なお、図1には、チャネルCH1に対応した光受信モジュール13_1の構成だけが示してあるが、その他のチャネルCH2〜CHnに対応した光受信モジュール13_2〜13_nの構成も、光受信モジュール13_1の構成と同じである。以下では、光受信モジュール13_1〜13_nを代表してチャネルCH1に対応した構成および動作について詳しく説明することにし、その他のチャネルCH2〜CHnに対応した構成および動作については説明を省略する。
【0026】
図2は、上記光受信モジュール13_1の詳細な構成を示すブロック図である。
図2の構成例において、前段光増幅部21は、増幅媒体21A、励起光源(LD)21B、分岐器21C、光検出器(PD)21DおよびALC回路21Eからなる。また、これと同様に後段光増幅部24も、増幅媒体24A,励起光源(LD)24B,分岐器24C,光検出器(PD)24DおよびALC回路24Eからなる。
【0027】
増幅媒体21A,24Aは、例えば、光ファイバのコアにエルビウム等の希土類を添加した希土類添加ファイバが用いられる。励起光源21B,24Bは、増幅媒体21A,24Aを励起状態にするための励起光を発生する。なお、ここでは希土類添加ファイバを増幅媒体として用いた希土類添加ファイバ増幅器を前段および後段光増幅部21,24に適用した一例を示すが、本発明はこれに限らず、例えば、高非線形ファイバを増幅媒体とする集中ラマン増幅器や半導体光増幅器などの公知の光増幅器を、各段の光増幅部にそれぞれ適用することも可能である。
【0028】
分岐器21C,24Cは、増幅媒体21A,24Aを伝搬して増幅された光信号の一部を分岐して光検出器21D,24Dに与える。光検出器21D,24Dは、分岐器21C,24Cからの分岐光のパワーを検出し、該検出結果を示す電気信号をALC回路21E,24Eに出力する。なお、光検出器24Dの検出結果は、後述する利得演算回路23Eにも伝えられる。
【0029】
ALC回路21E,24Eは、光検出器21D,24Dでの検出結果に応じて、増幅媒体21A,24Aから出力される光信号のパワーが予め設定した目標レベルで一定となるように、励起光源21B,24Bの駆動状態をフィードバック制御する。ALC回路21E,24Eによる励起光源21B,24Bのフィードバック制御は、その制御速度が上述したような受信光のパワーレベルの急変を補償可能な高速なものとなるように、各々のフィードバックループの時定数が設計されている。
【0030】
機能部品22は、波長分散補償器または偏波モード分散補償器などを含んでおり、前段光増幅部21で増幅された光信号が与えられ、該光信号についての波長分散補償または偏波モード分散補償などを行う。この機能部品22には固有の光損失があり、該光損失は、各チャネルに対応させて設けられる機能部品22の間でばらつきが生じる。以下の説明では、各チャネル間における機能部品22の光損失の個体ばらつきをΔLOSSで表す場合がある。
【0031】
可変光減衰部23は、可変光減衰器(VOA)23A、分岐器23B、光検出器(PD)23C、前述の後段光増幅部24と共用する分岐器24Cおよび光検出器24D、並びに、制御部23Dを有する。また、制御部23Dは、利得演算回路23Eおよび減衰量制御部23Fからなる。
【0032】
可変光減衰器23Aは、機能部品22から出力される光信号に可変の光減衰量を与える。分岐器23Bは、可変光減衰器23Aで減衰され後段光増幅部24に送られる光信号の一部を分岐して光検出器23Cに与える。光検出器23Cは、分岐器23Bからの分岐光のパワーを検出し、該検出結果を示す電気信号を制御部23Dの利得演算回路23Eに出力する。
【0033】
利得演算回路23Eは、各光検出器23C,24Dでの検出結果に応じて、後段光増幅部24に対して入出力される光信号のパワーを判断し、該入出力パワーを用いて後段光増幅部24の利得を演算して、該演算結果を減衰量制御部23Fに伝える。減衰量制御部23Fは、利得演算回路23Eで演算される後段光増幅部24の利得が一定になるように、可変光減衰器23Aにおける光減衰量をフィードバック制御する。なお、減衰量制御部23Fによる可変光減衰器23Aのフィードバック制御は、その制御速度がALC回路24Eによる励起光源24Bのフィードバック制御の速度よりも遅くなるように、フィードバックループの時定数が設計されている。また、制御部23Dは、外部よりチャネル情報27を受信する。
【0034】
受信器25は、後段光増幅部24から出力される光信号を受信し、該光信号を復調した電気信号を生成して識別再生器26に出力する。この受信器25には固有の光入力レベルの目標値(後段光増幅部24におけるALCの目標制御レベルに対応)があり、該光入力レベルの目標値は、各チャネルに対応させて設けられる受信器25の間でばらつきが生じる。以下の説明では、各チャネル間における受信器25の光入力レベル目標値の個体ばらつきをΔPinで表す場合がある。識別再生器26は、受信器25の出力信号を用いて受信データを識別再生するための周知の処理を実行する。
【0035】
次に、第1実施形態の動作について説明する。
上記図1に示したような構成の光受信ユニット1では、伝送路を伝搬したWDM光が光プリアンプ11で一括増幅された後、分波器で各チャネルCHI〜CHnに分波されて各光受信モジュール13_1〜13_nにそれぞれ送られる。各光受信モジュール13_1〜13_nでは、分波器12からの光信号が前段増幅部21の増幅媒体21Aに与えられる。増幅媒体21Aには、励起光源21Bからの励起光が供給されており、励起された希土類イオンの誘導放出現象により増幅媒体21Aを伝搬する光信号が増幅されて機能部品12に出力される。このとき、増幅媒体21Aからの出力光の一部が分岐器21Cで分岐されて光検出器21Dに与えられ、該分岐光のパワーが光検出器21Dで検出されて、その検出結果がALC回路21Eに伝えられる。
【0036】
ALC回路21Eでは、光検出器21Dの検出結果に応じて、増幅媒体21Aから出力され分岐器21Cを介して機能部品22に送られる光信号のパワーが判断され、前段増幅部21への光入力パワーが変動しても前段増幅部21からの光出力パワーが予め設定した目標レベルで一定になるように、励起光源21Bの駆動状態がフィードバック制御される。このようにALC動作する前段増幅部21では、その光入力レベルが低下して利得が大きくなるほど、発生する雑音光のトータルパワーが増加し、該雑音光を含んだ光信号が機能部品22に送られることになる。
【0037】
なお、前段光増幅部21の光出力パワーの制御目標レベルは、前段光増幅部21への光入力パワーの下限値に対して、後述する後段光増幅部24への光入力パワーの下限値が十分に大きくなる(例えば、10dB以上)ように設定しておくのが好ましい。その理由は、2段構成の光増幅器において、後段の光入力パワーを前段の光入力パワーよりも十分に大きくしておくことにより、後段での雑音光の発生量が前段での雑音光の発生量に対して無視できる程度に少なくなるため、後段における実質的な雑音光の発生量としては、前段で発生した雑音光の増幅分のみを考えればよく、光受信モジュールの設計が容易になるためである。
【0038】
機能部品22では、前段増幅部21からの出力光に対する波長分散補償または偏波モード分散補償が行われる。このとき、機能部品22の光損失により光信号のパワーが低下し、該光損失には個体ばらつきΔLOSSがあるので、機能部品22からの出力光のパワーレベルはΔLOSSの範囲でばらつくことになる。
【0039】
図3は、光受信モジュール内における光信号のレベルダイヤを例示した図である。図3の上段は、前段および後段光増幅部21,24の段間に機能部品22のみを設け、可変光減衰部23を設けていない構成を想定した場合のレベルダイヤを示し、図3の下段は、段間に機能部品22および可変光減衰部23を設けた本実施形態の構成の場合のレベルダイヤを示している。図3の上段のように、段間に機能部品22のみが設けられている場合、機能部品22の光損失の個体ばらつきΔLOSSに対応したレベル範囲を持つ光信号が、機能部品22から出力され後段光増幅部24に入力されることになる。この場合、後段光増幅部24はALC動作するので、後段光増幅部24への光入力パワーに関係なく光出力パワーが目標レベルで一定にされる。これにより、後段光増幅部24における利得(レベルダイヤの傾きに対応)が変化し、後段光増幅部24で発生する雑音光の波長特性が変化する。なお、ALC動作する前段光増幅部21においても光入力パワーに応じて利得が変化する。前段光増幅部21での雑音光の発生量は光入力パワーが小さくなるほど増加するので、図3では前段光増幅部21への光入力パワーが最小(下限値)になる最悪条件のレベルダイヤを実線で示している。
【0040】
上記のような機能部品22の光損失の個体ばらつき起因した後段光増幅部24における雑音光の発生状態の変化は、受信光の波長との関係において、受信回路25および識別再生器26での受信特性の劣化要因となる。このため、本実施形態では、機能部品22および後段光増幅部24の間の光路上に可変光減衰器23Aを設け、その光減衰量を制御することにより、機能部品22の光損失の個体ばらつきを補償して、後段光増幅部24における雑音光の発生状態に実質的な変化が生じないようにしている。具体的には、後段光増幅部24のALC回路24Eによる励起光源24Bのフィードバック制御の速度よりも遅い制御速度で、後段光増幅部24における利得が一定となるように可変光減衰器23Aの光減衰量がフィードバック制御されるようにする。この可変光減衰器23Aのフィードバック制御は、利得演算回路23Eでの演算結果に従い減衰量制御部23Fにより実現される。
【0041】
上記可変光減衰器23Aのフィードバック制御により後段光増幅部24の利得が固定されることにより、前段光増幅部21への光入力パワーが最小になる最悪条件下での光信号のパワーレベルは図3下段の実線に示すような変化となり、前段光増幅部21で雑音光が多量に発生し、その雑音光が後段光増幅部24で増幅されても、該雑音光の波長特性は固定される。その結果、雑音光のトータルパワーに対する信号光のパワーの割合が最も小さくなる最悪受信波長が固定されるようになり、機能部品22の光損失の個体ばらつきに起因した受信特性の劣化を低減することが可能になる。
【0042】
例えば、機能部品22の光損失の個体ばらつきが5dBの場合に、該ばらつきが可変光減衰部23により補償されて後段光増幅部24の利得変動が5dB改善されたとすると、1530〜1563nmの波長帯域において後段光増幅部24の利得が1dB変動したときの雑音光のトータルパワーの増加量は0.4dB程度であるため、受信器25の入力における雑音光のトータルパワーに対する信号光のパワーの割合は2dB程度の改善が期待できる。
【0043】
なお、可変光減衰部23の減衰量制御部23Fにおける制御目標値(後段光増幅部24の利得の目標値)は、上記最悪条件下において、WDM光の各チャネルに対応した光受信モジュール13_1〜13_nの全てで所要のBERが実現可能になる利得が設定される。このAGCの制御目標値は、受信波長に関係なく一律に設定しても、受信波長に応じて個別に設定してもよい。具体例として、WDM光の波長帯域をC−バンドとして短波長側から順にチャネルCH1〜CH40を配置し、前段および後段光増幅部の各増幅媒体21B,24Bがエルビウム添加ファイバ(EDF)を適用した場合を考えると、後段光増幅部24の利得に対して、BERに影響を及ぼす雑音光のトータルパワーに対する信号光のパワーの割合(光SN比)は図4に例示するような関係となる。この場合にAGCの制御目標値を受信波長に関係なく一律に設定しようとすれば、図4の上段に示すように、全てのチャネルCH1〜CH40についての光SN比が最も大きくなる利得Gを、AGCの制御目標値に設定するのがよい。この利得Gでの光SN比の最小値SNは、AGCを適用しないときの光SN比の最悪値SN’よりも、図中の矢印線相当分の改善が図られることになる(前述した数値例における2dB程度の改善に相当)。
【0044】
また、AGCの制御目標値を受信波長に応じて個別に設定しようとすれば、制御部23Dに供給されるチャネル情報27を用いることにより、図4の下段に示すように、短波長側のチャネルCH1に対して、相対的に大きな利得GCH1をAGCの制御目標値に設定し、長波長側のチャネルCH40に対しては、相対的に小さな利得GCH40(図4上段の利得Gと同等)をAGCの制御目標値として設定するのが好ましい。これにより、AGCの制御目標値を一律に設定した場合と比べると、チャネルCH1について、利得GSのときに得られる光SN比SNCH1は、利得GLのときに得られる光SN比SNCH1’よりも、図中の矢印線相当分の改善が図られることになる。
【0045】
上記のように本実施形態の光受信モジュールによれば、機能部品22および後段光増幅部24の間の光路上に可変光減衰器23Aを設け、ALC動作する後段光増幅部24における利得が一定となるように可変光減衰器23Aの光減衰量をフィードバック制御して、機能部品22の光損失の個体ばらつきを補償するようにしたことで、前段および後段光増幅部21,24で発生する雑音光による受信特性の劣化を低減することができる。また、前段および後段光増幅部21,24には高速なALCが適用されているので、受信光のパワーレベルの急変による伝送エラーの発生も回避することが可能である。これにより、WDM光の各チャネルに対応した光受信モジュール13_1〜13_n内の受信器25前段に配置される単一波長用の光増幅器の設計共通化が容易になり、40Gb/sを超えるような高速な光信号を確実に受信できる光受信モジュールを低コストで実現することが可能になる。
【0046】
なお、上記第1実施形態では、前段および後段光増幅部21,24の双方にALCが適用される一例を示したが、前段光増幅部21についてはAGCを適用することも可能である。この場合の光受信モジュール13_1の構成例を図5に示す。この構成例では、前段光増幅部21への光入力パワーをモニタするための分岐器21Fおよび光検出器21Gが追加されており、各光検出器21D,21Dの検出結果がAGC回路21Hに伝えられる。AGC回路21Hでは、各光検出器21D,21Dの検出結果を基に利得が演算され、該利得が所要の目標値で一定となるように、励起光源21Bのフィードバック制御が行われる。
【0047】
図6は、前段光増幅部21にAGCを適用した場合のレベルダイヤの一例である。このように、前段光増幅部21への入力ダイナミックレンジおよび機能部品22の光損失の個体ばらつきの双方が可変光減衰部23によって補償されることによって、第1実施形態の場合と同様にして、後段光増幅部24での雑音光の発生状態が実質的に変化しなくなり、受信特性の改善が図られる。
【0048】
次に、本発明による光受信モジュールの第2実施形態について説明する。
図7は、第2実施形態の光受信モジュールの構成を示すブロック図である。
図7において、本実施形態における光受信モジュール13_1の構成が前述の図2に示した第1実施形態の場合と異なる点は、受信器25が光入力レベルの目標値に関する情報を外部に通知する機能を具備しており、該受信器25の光入力レベルの目標値情報が、後段光増幅部24のALC回路24Eに与えられるようにしている点である。
【0049】
上述したように各光受信モジュール13_1〜13_nにそれぞれ設けられる各受信器25の性能には個体ばらつきがあり、各受信器25への光入力レベルの目標値は各々の性能に応じて異なってくる。このため、後段光増幅部24におけるALCの制御目標レベルは、後段光増幅部24の出力に実際に接続される受信器25の光入力レベルの目標値に対応させて設定しておくことが望ましい。そこで、本実施形態では、受信器25が自身への光入力レベルの目標値に関する情報を後段光増幅部24のALC回路24Eに通知し、該ALC回路24Eでは、受信器25からの通知情報に対応させてALCの制御目標レベルが自動的に設定される。これにより、第1実施形態の場合と同様にして、後段光増幅部24では、増幅後の光出力パワーが上記制御目標レベルで一定になるように励起光源24Bのフィードバック制御が行われ、また、該後段光増幅部24での利得が一定になるように、機能部品22の光損失のばらつきの補償が可変光減衰部23により行われる。
【0050】
図8は、上記光受信モジュール内における光信号のレベルダイヤを上述した図3の場合と同様にして例示したものである。図8のレベルダイヤでは、後段光増幅部24の光出力パワーが、受信器24の光入力レベル目標値のばらつきΔPinに対応したレベル範囲を持っている。図8の上段に示すように、各光増幅部21,24の段間に機能部品22のみを設けた構成を想定した場合には、機能部品22の光損失のばらつきΔLOSSと、受信器25の光入力レベルの目標値のばらつきΔPinとの組み合わせに応じて、後段光増幅部24の利得(レベルダイヤの傾き)が変化し、該後段光増幅部24で発生する雑音光の波長特性に変化が生じる。一方、図8の下段に示すように、各光増幅部21,24の段間に機能部品22および可変光減衰部23を設けた構成の場合には、機能部品22の光損失のばらつきΔLOSSが可変光減衰部23により補償されて、各光増幅部21,24の段間における損失が後段光増幅部24の光出力パワーの設定に応じて変化することになるので、後段光増幅部24の利得一定が実現される。
【0051】
上記のように第2実施形態の光受信モジュールによれば、第1実施形態の場合と同様の効果に加えて、受信器25の光入力レベルの目標値のばらつきが比較的大きな場合でも、後段光増幅部24に実際に接続される受信器25の光入力レベル目標値に対応させて、後段光増幅部24のALCの制御目標レベルを自動的に設定することが可能になる。これにより、WDM光の各チャネルに対応した光受信モジュール13_1〜13_n内の受信器25前段に配置される単一波長用の光増幅器の設計共通化が一層容易になる。
【0052】
なお、上記第2実施形態についても、上述の図5および図6に示した場合と同様にして、前段光増幅部21にAGCを適用することが可能である。この場合の光受信モジュールの構成例およびレベルダイヤを図9および図10に示しておく。前段光増幅部21にAGCを適用した場合、各光増幅部21,24の段間における損失が、前段光増幅部21の光入力ダイナミックレンジと後段光増幅部24の光出力パワーの設定に応じて変化することになる。
【0053】
また、上述した第1,2実施形態における、前段光増幅部21の分岐器21Cおよび光検出器21Dについては、可変光減衰部23の分岐器23Bおよび光検出器23Bを共用することにより、省略可能である。この場合、光検出器23Bの検出結果が利得演算回路23EだけでなくALC回路21Eにも伝えられるようにしておく。これにより光受信モジュールの小型化を図ることが可能になる。さらに、前段および後段の光増幅部の増幅媒体21A,24Aについては、各々の温度を一定に保つための図示しない温度調整装置を設けるようにしてもよい。温度調整装置を設けることにより、増幅媒体21A,24Aの温度変動による利得波長特性の変化を防止することができ、受信特性の改善効果が増すようになる。
【0054】
以上の各実施形態に関して、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 単一波長の光信号を増幅するための光増幅器であって、
縦続接続された前段光増幅手段および後段光増幅手段と、
前記前段および後段光増幅手段の間の光路上に配置され、前記光路を伝搬する光信号の劣化の補償を行う機能部品と、
前記前段および後段光増幅手段の間の光路上に配置され、前記光路を伝搬する光信号を減衰させる可変光減衰手段と、
前記後段光増幅手段からの光出力パワーを検出し、該光出力パワーが予め設定した目標レベルで一定となるように、前記後段光増幅手段の駆動状態を制御する後段出力一定制御手段と、
前記後段光増幅手段に対して入出力される光信号のパワーより得られる利得に基づき、前記可変光減衰手段における光減衰量を制御する後段利得一定制御手段と、
を備えたことを特徴とする光増幅器。
【0055】
(付記2) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記後段利得一定制御手段は、前記後段出力一定制手段による制御の速度よりも遅い速度で、前記可変光減衰手段における光減衰量を制御することを特徴とする光増幅器。
【0056】
(付記3) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記前段光増幅手段からの光出力パワーを検出し、該光出力パワーが予め設定した目標レベルで一定となるように、前記前段光増幅手段の駆動状態を制御する前段出力一定制御手段を備えたことを特徴とする光増幅器。
【0057】
(付記4) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記前段光増幅手段に対して入出力される光信号のパワーを検出して前記前段光増幅手段における利得を演算し、該利得が一定になるように、前記前段光増幅手段の駆動状態を制御する前段利得一定制御手段を備えたことを特徴とする光増幅器。
【0058】
(付記5) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記後段光増幅手段の光入力パワーの下限値が、前記前段光増幅手段の光入力パワーの下限値よりも10dB以上大きいことを特徴とする光増幅器。
【0059】
(付記6) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記機能部品は、波長分散補償器および偏波モード分散補償器のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする光増幅器。
【0060】
(付記7) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記後段出力一定制御手段は、
前記後段光増幅手段から出力される光信号の一部を分岐する第1分岐器と、
前記第1分岐器で分岐された光信号のパワーを検出する第1光検出器と、
前記第1光検出器で検出された光信号のパワーが前記目標レベルで一定となるように、前記後段光増幅手段の駆動状態を制御する出力一定制御回路と、を有し、
前記後段利得一定制御手段は、
前記後段光増幅手段に入力される光信号の一部を分岐する第2分岐器と、
前記第2分岐器で分岐された光信号のパワーを検出する第2光検出器と、
前記第1および第2光検出器でそれぞれ検出された光信号のパワーを用いて、前記後段光増幅手段における利得を演算する利得演算回路と、
前記利得演算回路で演算された利得が一定になるように、前記可変光減衰手段における光減衰量を制御する減衰量制御部と、を有することを特徴とする光増幅器。
【0061】
(付記8) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記後段利得一定制御手段は、光信号の波長に応じて利得の制御目標値が設定されることを特徴とする光増幅器。
【0062】
(付記9) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記前段および後段光増幅手段は、希土類添加ファイバおよび該希土類添加ファイバを励起する励起光源をそれぞれ含むことを特徴とする光増幅器。
【0063】
(付記10) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記前段および後段光増幅手段の温度を一定にする温度調整手段を備えたことを特徴とする光増幅器。
【0064】
(付記11) 付記1に記載の光増幅器と、
前記光増幅器から出力される光信号を受信し、該光信号を復調した電気信号を生成する受信器と、
前記受信器からの出力信号を用いて受信データを識別再生する識別再生回路と、
を備えたことを特徴とする光受信モジュール。
【0065】
(付記12) 付記11に記載の光受信モジュールであって、
前記受信器は、光入力レベルの目標値に関する情報を前記光増幅器の後段出力一定制御手段に通知し、
前記後段出力一定制御手段は、前記受信器の光入力レベルの目標値に対応させて、前記後段光増幅手段の光出力パワーの目標レベルを自動的に設定することを特徴とする光受信モジュール。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施形態による光受信モジュールを用いたWDM伝送システムの光受信装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】上記第1実施形態の光受信モジュールの詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】上記第1実施形態における光信号のレベルダイヤを例示した図である。
【図4】後段光増幅部の利得に対する光SN比の関係を例示した図である。
【図5】上記第1実施形態に関連して前段光増幅部にAGCを適用した場合の構成例を示すブロック図である。
【図6】図5の構成例における光信号のレベルダイヤを例示した図である。
【図7】第2実施形態の光受信モジュールの構成を示すブロック図である。
【図8】上記第2実施形態における光信号のレベルダイヤを例示した図である。
【図9】上記第2実施形態に関連して前段光増幅部にAGCを適用した場合の構成例を示すブロック図である。
【図10】図9の構成例における光信号のレベルダイヤを例示した図である。
【図11】従来のWDM伝送システムの光受信装置の構成例を示したブロック図である。
【図12】受信器への入力光に含まれる雑音光について説明するための図である。
【図13】単一波長用の光増幅器で発生する雑音光を光フィルタを用いて除去するようにした従来の構成例を示す図である。
【図14】EDFAの利得スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1…光受信ユニット
11…光プリアンプ
12…分波器
13_1〜13_n…光受信モジュール
21…前段光増幅部
21A,24A…増幅媒体
21B,24B…励起光源(LD)
21C,21F,23B,24C…分岐器
21D,21G,23C,24D…光検出器(PD)
21E,24E…ALC回路
21H…AGC回路
22…機能部品
23…可変光減衰部
23D…制御部
23E…利得演算回路
23F…減衰量制御部
24…後段光増幅部
25…受信部
26…識別再生部
27…チャネル情報
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信において受信器に入力される単一波長の光信号を増幅するための光増幅器および光受信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムにおいて、伝送速度が40Gb/s以上の高速になると、伝送信号の光パルス幅は数ピコ秒と狭くなるために、光ファイバの僅かな波長分散(Chromatic Dispersion)や偏波モード分散(Polarization-Mode Dispersion)による波形歪みが伝送特性を著しく劣化させる。また、伝送ファイバの分散値は、温度や環境の変化に伴い時間的に変動し、その僅かな変化が伝送特性に影響することが知られている(例えば、下記の非特許文献1参照)。
【0003】
図11は、波長分散補償または偏波モード分散補償技術を用いた波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)伝送システムの光受信ユニットを示す図である。図11において、光受信ユニット100は、光プリアンプ101で一括増幅されたWDM光を分波器102で波長毎に分波し、該分波器102から出力される各波長の光信号CH1,CH2,…,CHnを各受信モジュール103_1,103_2,…,103_nに与えて受信処理する。各受信モジュール103_1,103_2,…,103_n内の光路上には、可変分散補償器(Tunable Dispersion Compensator:TDC)や偏波モード分散補償器(Polarization-Mode Dispersion Compensator:PMDC)などの機能部品111をそれぞれ設け、該各機能部品111で受信光に対して好ましい分散補償を実施する。
【0004】
上記のようなTDCやPMDCなどの機能部品111を適用した場合、該機能部品111の光損失により受信光のパワーレベルが小さくなると、受信器112および識別再生器113におけるビット誤り率(Bit Error Rate:BER)は増加する。このBERの増加を抑えるため、各波長に対応した受信モジュール103_1〜103_nには、上記機能部品111と共に、受信器112の前段に光増幅器114を適用して、機能部品111の光損失を補償する機能が必要になる。しかしながら、上記光増幅器114の適用により、該光増幅器114が光信号を増幅する際に発生する自然放出光(Amplified Spontaneous Emission:ASE)等の雑音光が要因となって受信光の波形を劣化させる可能性があり問題になる。
【0005】
ここで、多波長を一括増幅するWDM用光増幅器と、一波を増幅する単一波長用光増幅器との相違について説明する。WDM伝送システムにおいては、上記のような各波長に対応した受信器の前段に配置される単一波長用の光増幅器以外にも、WDM光が伝搬する光路上に多波長を一括増幅するWDM用の光増幅器(例えば、図11中の光プリアンプ101等)が多数適用されている。図12に示すように、該WDM用の光増幅器で発生するASE等の雑音光(図12の上段を参照)は、光受信ユニット100の分波器102を通るため、各々の光信号の帯域内に存在する雑音成分のみが分波器102を透過して各信号波長に対応した受信器112に送られ、帯域外に存在する雑音成分は分波器102で遮断される(図12の中段を参照)。このため、WDM用の光増幅器で発生する雑音光が各波長の光信号の受信特性に与える影響は比較的小さく、多くの場合無視することができる。
【0006】
これに対して、上記単一波長用の光増幅器114は、上記分波器102で分波された各波長の光信号が伝搬する光路上に設けられるため、該光増幅器114で広い波長帯域にわたって発生する雑音光がそのまま受信器112に入力されてしまう(図12の下段を参照)。このため、雑音光のトータルパワーに対する単一波長の光信号のパワーの割合が小さくなり、BERを増加させる原因になる。
【0007】
上記のような単一波長用の光増幅器で発生する雑音光による受信特性の劣化を低減させるための従来技術としては、例えば図13に示すように光増幅器114と受信器112の間の光路上に光フィルタ115を設け、受信する光信号の帯域以外の光を該光フィルタ115により除去する構成が知られている。(例えば、下記の特許文献1,2参照)。
【0008】
また、上記のようなWDM伝送システムに適用される光受信装置の更なる問題点として、受信光のパワーレベルが急激に変化することにより発生する伝送エラーがある。すなわち、伝送速度が40Gb/s以上になると、伝送信号の光パルス幅は数ピコ秒(ps)と狭くなる。このような高速の光信号に対応した受信器は、そもそも伝送マージン(余裕)が少ない上に、受信光のパワーレベルの急変により、受信レベルの識別点の追従が不十分になる、または、受信パワーが許容範囲を超えてしまうなどの要因が重なることによって、伝送エラーの発生する可能性が増大する。
【0009】
上記受信光のパワーレベルの急変は、システムの運用中に、当該波長の光信号の伝送光路上において、人為的ミスによるコネクタ抜き差しが行われる、または、光ファイバが外的刺激(例えば、光ファイバに触れることによる応力や配線環境の変化)を受けるなどの原因により、容易に発生することが想定される。また、受信光のパワーが変化するだけでなく、WDM光の波長数が急激に変化した場合にも、残留光信号のパワーレベルが変化する現象が発生し、伝送エラーを生じさせる要因となることも知られている(例えば、下記の特許文献3参照)。波長数の急激な変化についても、光伝送パスのダイナミックな再構築や、人為的ミスによるコネクタ抜け、光ファイバの切断などの原因により、容易に発生することが想定される。
【0010】
上記のような受信光のパワーレベルの急変による伝送エラーの発生を抑えるためには、例えば、光受信装置内の光増幅器に対して高速な出力一定制御(Automatic Level Control:ALC)を適用することが有効である。ALCは、通常、光増幅器の出力光パワーを光検出器等でモニタし、そのモニタ値が目標出力光パワーになるように、光増幅器の駆動状態(例えば、励起光源の出力パワー)をフィードバック制御することにより行われる(例えば、下記の特許文献4参照)。
【0011】
【特許文献1】特開平8−321805号公報
【特許文献2】特開2004−179799号公報
【特許文献3】特開2006−295113号公報
【特許文献4】特開平8−248455号公報
【非特許文献1】中沢正隆、廣岡俊彦,「超短光パルスを用いた高速光伝送技術の現状と将来展望」,電子情報通信学会論文誌B,Vol.J89-B,No.11,pp.2067-2081
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、前述したようなWDM光の各波長に対応した受信器の前段に配置される単一波長用の光増幅器は、WDM光の波長数に対応させて多数用意する必要がある。個々の光増幅器の構成や制御方式は、コストの上昇等を抑えるために、入力される光信号の波長に応じて異なるものにするのではなく、WDM光の広い波長帯域に対し共通の設計とすることが望まれる。このような要望に応えるにあたり、前述したTDCやPMDCなどの機能部品の光損失には部品個別のばらつきがあり、かつ、40Gb/sを超えるような高速な光信号に対応した受信器の性能にも現状ばらつきは避けられないので、これらのばらつきを補償可能にするような光増幅器の設計共通化が重要になる。しかしながら、前述したような従来技術を組み合わせただけでは次に述べるような課題が生じるため、上記要望に充分に応えることは難しい。
【0013】
単一波長用の光増幅器で発生する雑音光による受信特性の劣化を低減させるために、受信光の帯域外の光を除去する光フィルタを光増幅器と受信器の間の光路上に挿入した場合、雑音光のトータルパワーに対する単一波長の光信号のパワーの割合が大きくなるので受信特性の改善効果は大きい。しかし、該光フィルタの挿入損失とそのばらつきが加わることになり、単一波長用の光増幅器の設計が更に複雑化してしまう。また、単一波長用の光増幅器と同様に、上記光フィルタもWDM光の波長数に対応させて多数用意する必要があり、汎用性をもたせた可変光フィルタは高価であるので、システム全体に与えるコスト上昇の影響は大きく、受信特性の改善効果がたとえ大きくでも、現実的な対応策として上記光フィルタを適用することは難しいという課題がある。
【0014】
また、受信光のパワーレベルの急変による伝送エラーの発生を抑えるために、単一波長用の光増幅器に対して高速な出力一定制御(ALC)を適用した場合、該ALCは、受信光パワーの動的な変化を補償するだけでなく、受信モジュール内外の静的な要因による受信パワーの相違も補償することになり、該補償により光増幅器の利得に大きな変化が生じる。上記受信モジュール外の静的な要因には、分波器の前段でWDM光を一括増幅する光プリアンプの出力レベルの変動や、分波器の挿入損失のばらつきなどがある。また、受信モジュール内の静的な要因には、TDCやPMDCなどの機能部品の光損失のばらつきや、受信器の性能のばらつきによる各々の受信器への光入力レベルの目標値(単一波長用の光増幅器におけるALCの目標制御レベルに対応)のばらつきなどがある。
【0015】
光増幅器の利得が変化すると、雑音光の発生量およびその波長特性も大きく変化することが知られている。これは、WDM光の波長数に対応して複数設けられる単一波長用の光増幅器の間で利得に相違が生じている場合に、各々の光増幅器における雑音光の発生状態が異なることも意味する。例えば、図14はエルビウム添加ファイバ増幅器(Erbium-Doped Fiber Amplifier:EDFA)の利得スペクトルをエルビウムイオンの反転分布率に応じて示しているが、このようなEDFAにおいて利得が大きい(反転分布率が高い)状態では、短波長側での雑音光の発生量が相対的に多くなり、逆に利得が小さい(反転分布率が低い)状態では、長波長側での雑音光の発生量が相対的に多くなることが分かる。
【0016】
TDCやPMDCなどの機能部品の光損失が大きい場合、または、受信器への光入力レベルの目標値が高い場合には、単一波長用の光増幅器に要求される利得は大きくなり、上記EDFAの例では短波長側の雑音光の発生量が相対的に多い状態となる。このような状態の光増幅器において短波長側の光信号の増幅が行われると、該光増幅器の出力光(受信器の入力光)における雑音光のトータルパワーに対する信号光のパワーの割合が小さくなる。一方、機能部品の光損失が小さい場合、または、受信器への光入力レベルの目標値が低い場合には、単一波長用の光増幅器に要求される利得は小さくなり、上記EDFAの例では長波長側の雑音光の発生量が相対的に多い状態となる。このような状態の光増幅器において長波長側の光信号の増幅が行われると、該光増幅器の出力光における雑音光のトータルパワーに対する信号光のパワーの割合が小さくなる。
【0017】
つまり、受信光のパワーレベルの急変は光増幅器に高速なALCを適用することにより補償できるようになる。しかし、ALCの適用による利得の変化がWDM光の各波長の光信号に対応した受信特性に与える影響については、TDCやPMDCなどの機能部品の光損失および受信器の性能の個体ばらつきに起因した各波長間での雑音光の発生状態の違いまでを総合的に考慮する必要があり、現状、単一波長用の光増幅器の設計共通化を困難にしているという課題がある。
【0018】
本発明は上記の課題に着目してなされたもので、受信光のパワーレベルの急変を補償可能であり、かつ、機能部品の光損失等にばらつきがあっても雑音光の発生状態が実質的に変化しない低コストの光増幅器および光受信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するため、本発明は単一波長の光信号を増幅するための光増幅器を提供する。該光増幅器の一態様は、縦続接続された前段光増幅手段および後段光増幅手段と、前記前段および後段光増幅手段の間の光路上に配置され、前記光路を伝搬する光信号の劣化の補償を行う機能部品と、前記前段および後段光増幅手段の間の光路上に配置され、前記光路を伝搬する光信号を減衰させる可変光減衰手段と、前記後段光増幅手段からの光出力パワーを検出し、該光出力パワーが予め設定した目標レベルで一定となるように、前記後段光増幅手段の駆動状態を制御する後段出力一定制御手段と、前記後段光増幅手段に対して入出力される光信号のパワーより得られる利得に基づき、前記可変光減衰手段における光減衰量を制御する後段利得一定制御手段と、を備える。
【0020】
また、本発明による光受信モジュールの一態様は、前記光増幅器と、該光増幅器から出力される光信号を受信し、該光信号を復調した電気信号を生成する受信器と、前記受信器からの出力信号を用いて受信データを識別再生する識別再生回路と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
上記のような光増幅器および光受信モジュールによれば、前段および後段光増幅手段の間の光路上に機能部品および可変光減衰手段を配置し、出力一定制御された後段光増幅手段における利得に基づいて可変光減衰手段の光減衰量が制御されるようにしたことで、機能部品の光損失の個体ばらつきが補償され、前段および後段光増幅手段での雑音光の発生状態が実質的に変化しなくなり、受信特性の劣化を低減することができる。また、後段光増幅部手段には出力一定制御が適用されるので、受信光のパワーレベルの急変による伝送エラーの発生も回避することが可能である。これにより、WDM光の各チャネルに対応した光受信モジュール内の受信器の前段に配置される単一波長用の光増幅器の設計共通化が容易になり、40Gb/sを超えるような高速な光信号を確実に受信できる光受信モジュールを低コストで実現することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、全図を通して同一の符号は同一または相当部分を示すものとする。
図1は、本発明の第1実施形態による光受信モジュールを用いたWDM伝送システムの光受信装置の要部構成を示すブロック図である。
【0023】
図1において、光受信ユニット1は、例えば、光プリアンプ11、分波器12および第1実施形態の光受信モジュール13_1〜13_nを備える。光プリアンプ11は、光受信ユニット1を含むWDM伝送システムの光伝送路に接続されており、該光伝送路を伝送されてきたWDM光が入力される。該WDM光は、波長の異なる複数の光信号(チャネル)CH1,CH2,…,CHnを含んでおり、各チャネルCH1〜CHnが光プリアンプ11によって所要のレベルまで一括増幅される。上記光プリアンプ11の構成は、公知のWDM用光増幅器の構成と同様である。なお、ここでは光受信ユニット1に入力されるWDM光の波長数(チャネル数)をnとしている。
【0024】
分波器12は、光プリアンプ11で一括増幅されたWDM光が入力ポートに与えられ、該WDM光を波長毎に分波する。該分波された各チャネルCH1〜CHnは、分波器12の対応する出力ポートからそれぞれ出力される。上記分波器12の各出力ポートには、光受信モジュール13_1〜13_nがそれぞれ接続される。
【0025】
各光受信モジュール13_1〜13_nは、例えば、縦続接続された前段光増幅部21および後段光増幅部24と、該2段構成の光増幅部21,24の段間に順に配置された、機能部品22および可変光減衰部23と、後段光増幅部24の出力端に接続する受信器25と、該受信器の出力端に接続する識別再生器26とを有する。なお、図1には、チャネルCH1に対応した光受信モジュール13_1の構成だけが示してあるが、その他のチャネルCH2〜CHnに対応した光受信モジュール13_2〜13_nの構成も、光受信モジュール13_1の構成と同じである。以下では、光受信モジュール13_1〜13_nを代表してチャネルCH1に対応した構成および動作について詳しく説明することにし、その他のチャネルCH2〜CHnに対応した構成および動作については説明を省略する。
【0026】
図2は、上記光受信モジュール13_1の詳細な構成を示すブロック図である。
図2の構成例において、前段光増幅部21は、増幅媒体21A、励起光源(LD)21B、分岐器21C、光検出器(PD)21DおよびALC回路21Eからなる。また、これと同様に後段光増幅部24も、増幅媒体24A,励起光源(LD)24B,分岐器24C,光検出器(PD)24DおよびALC回路24Eからなる。
【0027】
増幅媒体21A,24Aは、例えば、光ファイバのコアにエルビウム等の希土類を添加した希土類添加ファイバが用いられる。励起光源21B,24Bは、増幅媒体21A,24Aを励起状態にするための励起光を発生する。なお、ここでは希土類添加ファイバを増幅媒体として用いた希土類添加ファイバ増幅器を前段および後段光増幅部21,24に適用した一例を示すが、本発明はこれに限らず、例えば、高非線形ファイバを増幅媒体とする集中ラマン増幅器や半導体光増幅器などの公知の光増幅器を、各段の光増幅部にそれぞれ適用することも可能である。
【0028】
分岐器21C,24Cは、増幅媒体21A,24Aを伝搬して増幅された光信号の一部を分岐して光検出器21D,24Dに与える。光検出器21D,24Dは、分岐器21C,24Cからの分岐光のパワーを検出し、該検出結果を示す電気信号をALC回路21E,24Eに出力する。なお、光検出器24Dの検出結果は、後述する利得演算回路23Eにも伝えられる。
【0029】
ALC回路21E,24Eは、光検出器21D,24Dでの検出結果に応じて、増幅媒体21A,24Aから出力される光信号のパワーが予め設定した目標レベルで一定となるように、励起光源21B,24Bの駆動状態をフィードバック制御する。ALC回路21E,24Eによる励起光源21B,24Bのフィードバック制御は、その制御速度が上述したような受信光のパワーレベルの急変を補償可能な高速なものとなるように、各々のフィードバックループの時定数が設計されている。
【0030】
機能部品22は、波長分散補償器または偏波モード分散補償器などを含んでおり、前段光増幅部21で増幅された光信号が与えられ、該光信号についての波長分散補償または偏波モード分散補償などを行う。この機能部品22には固有の光損失があり、該光損失は、各チャネルに対応させて設けられる機能部品22の間でばらつきが生じる。以下の説明では、各チャネル間における機能部品22の光損失の個体ばらつきをΔLOSSで表す場合がある。
【0031】
可変光減衰部23は、可変光減衰器(VOA)23A、分岐器23B、光検出器(PD)23C、前述の後段光増幅部24と共用する分岐器24Cおよび光検出器24D、並びに、制御部23Dを有する。また、制御部23Dは、利得演算回路23Eおよび減衰量制御部23Fからなる。
【0032】
可変光減衰器23Aは、機能部品22から出力される光信号に可変の光減衰量を与える。分岐器23Bは、可変光減衰器23Aで減衰され後段光増幅部24に送られる光信号の一部を分岐して光検出器23Cに与える。光検出器23Cは、分岐器23Bからの分岐光のパワーを検出し、該検出結果を示す電気信号を制御部23Dの利得演算回路23Eに出力する。
【0033】
利得演算回路23Eは、各光検出器23C,24Dでの検出結果に応じて、後段光増幅部24に対して入出力される光信号のパワーを判断し、該入出力パワーを用いて後段光増幅部24の利得を演算して、該演算結果を減衰量制御部23Fに伝える。減衰量制御部23Fは、利得演算回路23Eで演算される後段光増幅部24の利得が一定になるように、可変光減衰器23Aにおける光減衰量をフィードバック制御する。なお、減衰量制御部23Fによる可変光減衰器23Aのフィードバック制御は、その制御速度がALC回路24Eによる励起光源24Bのフィードバック制御の速度よりも遅くなるように、フィードバックループの時定数が設計されている。また、制御部23Dは、外部よりチャネル情報27を受信する。
【0034】
受信器25は、後段光増幅部24から出力される光信号を受信し、該光信号を復調した電気信号を生成して識別再生器26に出力する。この受信器25には固有の光入力レベルの目標値(後段光増幅部24におけるALCの目標制御レベルに対応)があり、該光入力レベルの目標値は、各チャネルに対応させて設けられる受信器25の間でばらつきが生じる。以下の説明では、各チャネル間における受信器25の光入力レベル目標値の個体ばらつきをΔPinで表す場合がある。識別再生器26は、受信器25の出力信号を用いて受信データを識別再生するための周知の処理を実行する。
【0035】
次に、第1実施形態の動作について説明する。
上記図1に示したような構成の光受信ユニット1では、伝送路を伝搬したWDM光が光プリアンプ11で一括増幅された後、分波器で各チャネルCHI〜CHnに分波されて各光受信モジュール13_1〜13_nにそれぞれ送られる。各光受信モジュール13_1〜13_nでは、分波器12からの光信号が前段増幅部21の増幅媒体21Aに与えられる。増幅媒体21Aには、励起光源21Bからの励起光が供給されており、励起された希土類イオンの誘導放出現象により増幅媒体21Aを伝搬する光信号が増幅されて機能部品12に出力される。このとき、増幅媒体21Aからの出力光の一部が分岐器21Cで分岐されて光検出器21Dに与えられ、該分岐光のパワーが光検出器21Dで検出されて、その検出結果がALC回路21Eに伝えられる。
【0036】
ALC回路21Eでは、光検出器21Dの検出結果に応じて、増幅媒体21Aから出力され分岐器21Cを介して機能部品22に送られる光信号のパワーが判断され、前段増幅部21への光入力パワーが変動しても前段増幅部21からの光出力パワーが予め設定した目標レベルで一定になるように、励起光源21Bの駆動状態がフィードバック制御される。このようにALC動作する前段増幅部21では、その光入力レベルが低下して利得が大きくなるほど、発生する雑音光のトータルパワーが増加し、該雑音光を含んだ光信号が機能部品22に送られることになる。
【0037】
なお、前段光増幅部21の光出力パワーの制御目標レベルは、前段光増幅部21への光入力パワーの下限値に対して、後述する後段光増幅部24への光入力パワーの下限値が十分に大きくなる(例えば、10dB以上)ように設定しておくのが好ましい。その理由は、2段構成の光増幅器において、後段の光入力パワーを前段の光入力パワーよりも十分に大きくしておくことにより、後段での雑音光の発生量が前段での雑音光の発生量に対して無視できる程度に少なくなるため、後段における実質的な雑音光の発生量としては、前段で発生した雑音光の増幅分のみを考えればよく、光受信モジュールの設計が容易になるためである。
【0038】
機能部品22では、前段増幅部21からの出力光に対する波長分散補償または偏波モード分散補償が行われる。このとき、機能部品22の光損失により光信号のパワーが低下し、該光損失には個体ばらつきΔLOSSがあるので、機能部品22からの出力光のパワーレベルはΔLOSSの範囲でばらつくことになる。
【0039】
図3は、光受信モジュール内における光信号のレベルダイヤを例示した図である。図3の上段は、前段および後段光増幅部21,24の段間に機能部品22のみを設け、可変光減衰部23を設けていない構成を想定した場合のレベルダイヤを示し、図3の下段は、段間に機能部品22および可変光減衰部23を設けた本実施形態の構成の場合のレベルダイヤを示している。図3の上段のように、段間に機能部品22のみが設けられている場合、機能部品22の光損失の個体ばらつきΔLOSSに対応したレベル範囲を持つ光信号が、機能部品22から出力され後段光増幅部24に入力されることになる。この場合、後段光増幅部24はALC動作するので、後段光増幅部24への光入力パワーに関係なく光出力パワーが目標レベルで一定にされる。これにより、後段光増幅部24における利得(レベルダイヤの傾きに対応)が変化し、後段光増幅部24で発生する雑音光の波長特性が変化する。なお、ALC動作する前段光増幅部21においても光入力パワーに応じて利得が変化する。前段光増幅部21での雑音光の発生量は光入力パワーが小さくなるほど増加するので、図3では前段光増幅部21への光入力パワーが最小(下限値)になる最悪条件のレベルダイヤを実線で示している。
【0040】
上記のような機能部品22の光損失の個体ばらつき起因した後段光増幅部24における雑音光の発生状態の変化は、受信光の波長との関係において、受信回路25および識別再生器26での受信特性の劣化要因となる。このため、本実施形態では、機能部品22および後段光増幅部24の間の光路上に可変光減衰器23Aを設け、その光減衰量を制御することにより、機能部品22の光損失の個体ばらつきを補償して、後段光増幅部24における雑音光の発生状態に実質的な変化が生じないようにしている。具体的には、後段光増幅部24のALC回路24Eによる励起光源24Bのフィードバック制御の速度よりも遅い制御速度で、後段光増幅部24における利得が一定となるように可変光減衰器23Aの光減衰量がフィードバック制御されるようにする。この可変光減衰器23Aのフィードバック制御は、利得演算回路23Eでの演算結果に従い減衰量制御部23Fにより実現される。
【0041】
上記可変光減衰器23Aのフィードバック制御により後段光増幅部24の利得が固定されることにより、前段光増幅部21への光入力パワーが最小になる最悪条件下での光信号のパワーレベルは図3下段の実線に示すような変化となり、前段光増幅部21で雑音光が多量に発生し、その雑音光が後段光増幅部24で増幅されても、該雑音光の波長特性は固定される。その結果、雑音光のトータルパワーに対する信号光のパワーの割合が最も小さくなる最悪受信波長が固定されるようになり、機能部品22の光損失の個体ばらつきに起因した受信特性の劣化を低減することが可能になる。
【0042】
例えば、機能部品22の光損失の個体ばらつきが5dBの場合に、該ばらつきが可変光減衰部23により補償されて後段光増幅部24の利得変動が5dB改善されたとすると、1530〜1563nmの波長帯域において後段光増幅部24の利得が1dB変動したときの雑音光のトータルパワーの増加量は0.4dB程度であるため、受信器25の入力における雑音光のトータルパワーに対する信号光のパワーの割合は2dB程度の改善が期待できる。
【0043】
なお、可変光減衰部23の減衰量制御部23Fにおける制御目標値(後段光増幅部24の利得の目標値)は、上記最悪条件下において、WDM光の各チャネルに対応した光受信モジュール13_1〜13_nの全てで所要のBERが実現可能になる利得が設定される。このAGCの制御目標値は、受信波長に関係なく一律に設定しても、受信波長に応じて個別に設定してもよい。具体例として、WDM光の波長帯域をC−バンドとして短波長側から順にチャネルCH1〜CH40を配置し、前段および後段光増幅部の各増幅媒体21B,24Bがエルビウム添加ファイバ(EDF)を適用した場合を考えると、後段光増幅部24の利得に対して、BERに影響を及ぼす雑音光のトータルパワーに対する信号光のパワーの割合(光SN比)は図4に例示するような関係となる。この場合にAGCの制御目標値を受信波長に関係なく一律に設定しようとすれば、図4の上段に示すように、全てのチャネルCH1〜CH40についての光SN比が最も大きくなる利得Gを、AGCの制御目標値に設定するのがよい。この利得Gでの光SN比の最小値SNは、AGCを適用しないときの光SN比の最悪値SN’よりも、図中の矢印線相当分の改善が図られることになる(前述した数値例における2dB程度の改善に相当)。
【0044】
また、AGCの制御目標値を受信波長に応じて個別に設定しようとすれば、制御部23Dに供給されるチャネル情報27を用いることにより、図4の下段に示すように、短波長側のチャネルCH1に対して、相対的に大きな利得GCH1をAGCの制御目標値に設定し、長波長側のチャネルCH40に対しては、相対的に小さな利得GCH40(図4上段の利得Gと同等)をAGCの制御目標値として設定するのが好ましい。これにより、AGCの制御目標値を一律に設定した場合と比べると、チャネルCH1について、利得GSのときに得られる光SN比SNCH1は、利得GLのときに得られる光SN比SNCH1’よりも、図中の矢印線相当分の改善が図られることになる。
【0045】
上記のように本実施形態の光受信モジュールによれば、機能部品22および後段光増幅部24の間の光路上に可変光減衰器23Aを設け、ALC動作する後段光増幅部24における利得が一定となるように可変光減衰器23Aの光減衰量をフィードバック制御して、機能部品22の光損失の個体ばらつきを補償するようにしたことで、前段および後段光増幅部21,24で発生する雑音光による受信特性の劣化を低減することができる。また、前段および後段光増幅部21,24には高速なALCが適用されているので、受信光のパワーレベルの急変による伝送エラーの発生も回避することが可能である。これにより、WDM光の各チャネルに対応した光受信モジュール13_1〜13_n内の受信器25前段に配置される単一波長用の光増幅器の設計共通化が容易になり、40Gb/sを超えるような高速な光信号を確実に受信できる光受信モジュールを低コストで実現することが可能になる。
【0046】
なお、上記第1実施形態では、前段および後段光増幅部21,24の双方にALCが適用される一例を示したが、前段光増幅部21についてはAGCを適用することも可能である。この場合の光受信モジュール13_1の構成例を図5に示す。この構成例では、前段光増幅部21への光入力パワーをモニタするための分岐器21Fおよび光検出器21Gが追加されており、各光検出器21D,21Dの検出結果がAGC回路21Hに伝えられる。AGC回路21Hでは、各光検出器21D,21Dの検出結果を基に利得が演算され、該利得が所要の目標値で一定となるように、励起光源21Bのフィードバック制御が行われる。
【0047】
図6は、前段光増幅部21にAGCを適用した場合のレベルダイヤの一例である。このように、前段光増幅部21への入力ダイナミックレンジおよび機能部品22の光損失の個体ばらつきの双方が可変光減衰部23によって補償されることによって、第1実施形態の場合と同様にして、後段光増幅部24での雑音光の発生状態が実質的に変化しなくなり、受信特性の改善が図られる。
【0048】
次に、本発明による光受信モジュールの第2実施形態について説明する。
図7は、第2実施形態の光受信モジュールの構成を示すブロック図である。
図7において、本実施形態における光受信モジュール13_1の構成が前述の図2に示した第1実施形態の場合と異なる点は、受信器25が光入力レベルの目標値に関する情報を外部に通知する機能を具備しており、該受信器25の光入力レベルの目標値情報が、後段光増幅部24のALC回路24Eに与えられるようにしている点である。
【0049】
上述したように各光受信モジュール13_1〜13_nにそれぞれ設けられる各受信器25の性能には個体ばらつきがあり、各受信器25への光入力レベルの目標値は各々の性能に応じて異なってくる。このため、後段光増幅部24におけるALCの制御目標レベルは、後段光増幅部24の出力に実際に接続される受信器25の光入力レベルの目標値に対応させて設定しておくことが望ましい。そこで、本実施形態では、受信器25が自身への光入力レベルの目標値に関する情報を後段光増幅部24のALC回路24Eに通知し、該ALC回路24Eでは、受信器25からの通知情報に対応させてALCの制御目標レベルが自動的に設定される。これにより、第1実施形態の場合と同様にして、後段光増幅部24では、増幅後の光出力パワーが上記制御目標レベルで一定になるように励起光源24Bのフィードバック制御が行われ、また、該後段光増幅部24での利得が一定になるように、機能部品22の光損失のばらつきの補償が可変光減衰部23により行われる。
【0050】
図8は、上記光受信モジュール内における光信号のレベルダイヤを上述した図3の場合と同様にして例示したものである。図8のレベルダイヤでは、後段光増幅部24の光出力パワーが、受信器24の光入力レベル目標値のばらつきΔPinに対応したレベル範囲を持っている。図8の上段に示すように、各光増幅部21,24の段間に機能部品22のみを設けた構成を想定した場合には、機能部品22の光損失のばらつきΔLOSSと、受信器25の光入力レベルの目標値のばらつきΔPinとの組み合わせに応じて、後段光増幅部24の利得(レベルダイヤの傾き)が変化し、該後段光増幅部24で発生する雑音光の波長特性に変化が生じる。一方、図8の下段に示すように、各光増幅部21,24の段間に機能部品22および可変光減衰部23を設けた構成の場合には、機能部品22の光損失のばらつきΔLOSSが可変光減衰部23により補償されて、各光増幅部21,24の段間における損失が後段光増幅部24の光出力パワーの設定に応じて変化することになるので、後段光増幅部24の利得一定が実現される。
【0051】
上記のように第2実施形態の光受信モジュールによれば、第1実施形態の場合と同様の効果に加えて、受信器25の光入力レベルの目標値のばらつきが比較的大きな場合でも、後段光増幅部24に実際に接続される受信器25の光入力レベル目標値に対応させて、後段光増幅部24のALCの制御目標レベルを自動的に設定することが可能になる。これにより、WDM光の各チャネルに対応した光受信モジュール13_1〜13_n内の受信器25前段に配置される単一波長用の光増幅器の設計共通化が一層容易になる。
【0052】
なお、上記第2実施形態についても、上述の図5および図6に示した場合と同様にして、前段光増幅部21にAGCを適用することが可能である。この場合の光受信モジュールの構成例およびレベルダイヤを図9および図10に示しておく。前段光増幅部21にAGCを適用した場合、各光増幅部21,24の段間における損失が、前段光増幅部21の光入力ダイナミックレンジと後段光増幅部24の光出力パワーの設定に応じて変化することになる。
【0053】
また、上述した第1,2実施形態における、前段光増幅部21の分岐器21Cおよび光検出器21Dについては、可変光減衰部23の分岐器23Bおよび光検出器23Bを共用することにより、省略可能である。この場合、光検出器23Bの検出結果が利得演算回路23EだけでなくALC回路21Eにも伝えられるようにしておく。これにより光受信モジュールの小型化を図ることが可能になる。さらに、前段および後段の光増幅部の増幅媒体21A,24Aについては、各々の温度を一定に保つための図示しない温度調整装置を設けるようにしてもよい。温度調整装置を設けることにより、増幅媒体21A,24Aの温度変動による利得波長特性の変化を防止することができ、受信特性の改善効果が増すようになる。
【0054】
以上の各実施形態に関して、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 単一波長の光信号を増幅するための光増幅器であって、
縦続接続された前段光増幅手段および後段光増幅手段と、
前記前段および後段光増幅手段の間の光路上に配置され、前記光路を伝搬する光信号の劣化の補償を行う機能部品と、
前記前段および後段光増幅手段の間の光路上に配置され、前記光路を伝搬する光信号を減衰させる可変光減衰手段と、
前記後段光増幅手段からの光出力パワーを検出し、該光出力パワーが予め設定した目標レベルで一定となるように、前記後段光増幅手段の駆動状態を制御する後段出力一定制御手段と、
前記後段光増幅手段に対して入出力される光信号のパワーより得られる利得に基づき、前記可変光減衰手段における光減衰量を制御する後段利得一定制御手段と、
を備えたことを特徴とする光増幅器。
【0055】
(付記2) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記後段利得一定制御手段は、前記後段出力一定制手段による制御の速度よりも遅い速度で、前記可変光減衰手段における光減衰量を制御することを特徴とする光増幅器。
【0056】
(付記3) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記前段光増幅手段からの光出力パワーを検出し、該光出力パワーが予め設定した目標レベルで一定となるように、前記前段光増幅手段の駆動状態を制御する前段出力一定制御手段を備えたことを特徴とする光増幅器。
【0057】
(付記4) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記前段光増幅手段に対して入出力される光信号のパワーを検出して前記前段光増幅手段における利得を演算し、該利得が一定になるように、前記前段光増幅手段の駆動状態を制御する前段利得一定制御手段を備えたことを特徴とする光増幅器。
【0058】
(付記5) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記後段光増幅手段の光入力パワーの下限値が、前記前段光増幅手段の光入力パワーの下限値よりも10dB以上大きいことを特徴とする光増幅器。
【0059】
(付記6) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記機能部品は、波長分散補償器および偏波モード分散補償器のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする光増幅器。
【0060】
(付記7) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記後段出力一定制御手段は、
前記後段光増幅手段から出力される光信号の一部を分岐する第1分岐器と、
前記第1分岐器で分岐された光信号のパワーを検出する第1光検出器と、
前記第1光検出器で検出された光信号のパワーが前記目標レベルで一定となるように、前記後段光増幅手段の駆動状態を制御する出力一定制御回路と、を有し、
前記後段利得一定制御手段は、
前記後段光増幅手段に入力される光信号の一部を分岐する第2分岐器と、
前記第2分岐器で分岐された光信号のパワーを検出する第2光検出器と、
前記第1および第2光検出器でそれぞれ検出された光信号のパワーを用いて、前記後段光増幅手段における利得を演算する利得演算回路と、
前記利得演算回路で演算された利得が一定になるように、前記可変光減衰手段における光減衰量を制御する減衰量制御部と、を有することを特徴とする光増幅器。
【0061】
(付記8) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記後段利得一定制御手段は、光信号の波長に応じて利得の制御目標値が設定されることを特徴とする光増幅器。
【0062】
(付記9) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記前段および後段光増幅手段は、希土類添加ファイバおよび該希土類添加ファイバを励起する励起光源をそれぞれ含むことを特徴とする光増幅器。
【0063】
(付記10) 付記1に記載の光増幅器であって、
前記前段および後段光増幅手段の温度を一定にする温度調整手段を備えたことを特徴とする光増幅器。
【0064】
(付記11) 付記1に記載の光増幅器と、
前記光増幅器から出力される光信号を受信し、該光信号を復調した電気信号を生成する受信器と、
前記受信器からの出力信号を用いて受信データを識別再生する識別再生回路と、
を備えたことを特徴とする光受信モジュール。
【0065】
(付記12) 付記11に記載の光受信モジュールであって、
前記受信器は、光入力レベルの目標値に関する情報を前記光増幅器の後段出力一定制御手段に通知し、
前記後段出力一定制御手段は、前記受信器の光入力レベルの目標値に対応させて、前記後段光増幅手段の光出力パワーの目標レベルを自動的に設定することを特徴とする光受信モジュール。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施形態による光受信モジュールを用いたWDM伝送システムの光受信装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】上記第1実施形態の光受信モジュールの詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】上記第1実施形態における光信号のレベルダイヤを例示した図である。
【図4】後段光増幅部の利得に対する光SN比の関係を例示した図である。
【図5】上記第1実施形態に関連して前段光増幅部にAGCを適用した場合の構成例を示すブロック図である。
【図6】図5の構成例における光信号のレベルダイヤを例示した図である。
【図7】第2実施形態の光受信モジュールの構成を示すブロック図である。
【図8】上記第2実施形態における光信号のレベルダイヤを例示した図である。
【図9】上記第2実施形態に関連して前段光増幅部にAGCを適用した場合の構成例を示すブロック図である。
【図10】図9の構成例における光信号のレベルダイヤを例示した図である。
【図11】従来のWDM伝送システムの光受信装置の構成例を示したブロック図である。
【図12】受信器への入力光に含まれる雑音光について説明するための図である。
【図13】単一波長用の光増幅器で発生する雑音光を光フィルタを用いて除去するようにした従来の構成例を示す図である。
【図14】EDFAの利得スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1…光受信ユニット
11…光プリアンプ
12…分波器
13_1〜13_n…光受信モジュール
21…前段光増幅部
21A,24A…増幅媒体
21B,24B…励起光源(LD)
21C,21F,23B,24C…分岐器
21D,21G,23C,24D…光検出器(PD)
21E,24E…ALC回路
21H…AGC回路
22…機能部品
23…可変光減衰部
23D…制御部
23E…利得演算回路
23F…減衰量制御部
24…後段光増幅部
25…受信部
26…識別再生部
27…チャネル情報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一波長の光信号を増幅するための光増幅器であって、
縦続接続された前段光増幅手段および後段光増幅手段と、
前記前段および後段光増幅手段の間の光路上に配置され、前記光路を伝搬する光信号の劣化の補償を行う機能部品と、
前記前段および後段光増幅手段の間の光路上に配置され、前記光路を伝搬する光信号を減衰させる可変光減衰手段と、
前記後段光増幅手段からの光出力パワーを検出し、該光出力パワーが予め設定した目標レベルで一定となるように、前記後段光増幅手段の駆動状態を制御する後段出力一定制御手段と、
前記後段光増幅手段に対して入出力される光信号のパワーより得られる利得に基づき、前記可変光減衰手段における光減衰量を制御する後段利得一定制御手段と、
を備えたことを特徴とする光増幅器。
【請求項2】
請求項1に記載の光増幅器であって、
前記後段利得一定制御手段は、前記後段出力一定制手段による制御の速度よりも遅い速度で、前記可変光減衰手段における光減衰量を制御することを特徴とする光増幅器。
【請求項3】
請求項1に記載の光増幅器であって、
前記前段光増幅手段からの光出力パワーを検出し、該光出力パワーが予め設定した目標レベルで一定となるように、前記前段光増幅手段の駆動状態を制御する前段出力一定制御手段を備えたことを特徴とする光増幅器。
【請求項4】
請求項1に記載の光増幅器であって、
前記前段光増幅手段に対して入出力される光信号のパワーを検出して前記前段光増幅手段における利得を演算し、該利得が一定になるように、前記前段光増幅手段の駆動状態を制御する前段利得一定制御手段を備えたことを特徴とする光増幅器。
【請求項5】
請求項1に記載の光増幅器であって、
前記後段光増幅手段の光入力パワーの下限値が、前記前段光増幅手段の光入力パワーの下限値よりも10dB以上大きいことを特徴とする光増幅器。
【請求項6】
請求項1に記載の光増幅器であって、
前記機能部品は、波長分散補償器および偏波モード分散補償器のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする光増幅器。
【請求項7】
請求項1に記載の光増幅器であって、
前記後段出力一定制御手段は、
前記後段光増幅手段から出力される光信号の一部を分岐する第1分岐器と、
前記第1分岐器で分岐された光信号のパワーを検出する第1光検出器と、
前記第1光検出器で検出された光信号のパワーが前記目標レベルで一定となるように、前記後段光増幅手段の駆動状態を制御する出力一定制御回路と、を有し、
前記後段利得一定制御手段は、
前記後段光増幅手段に入力される光信号の一部を分岐する第2分岐器と、
前記第2分岐器で分岐された光信号のパワーを検出する第2光検出器と、
前記第1および第2光検出器でそれぞれ検出された光信号のパワーを用いて、前記後段光増幅手段における利得を演算する利得演算回路と、
前記利得演算回路で演算された利得が一定になるように、前記可変光減衰手段における光減衰量を制御する減衰量制御部と、を有することを特徴とする光増幅器。
【請求項8】
請求項1に記載の光増幅器であって、
前記後段利得一定制御手段は、光信号の波長に応じて利得の制御目標値が設定されることを特徴とする光増幅器。
【請求項9】
請求項1に記載の光増幅器と、
前記光増幅器から出力される光信号を受信し、該光信号を復調した電気信号を生成する受信器と、
前記受信器からの出力信号を用いて受信データを識別再生する識別再生回路と、
を備えたことを特徴とする光受信モジュール。
【請求項10】
請求項9に記載の光受信モジュールであって、
前記受信器は、光入力レベルの目標値に関する情報を前記光増幅器の後段出力一定制御手段に通知し、
前記後段出力一定制御手段は、前記受信器の光入力レベルの目標値に対応させて、前記後段光増幅手段の光出力パワーの目標レベルを自動的に設定することを特徴とする光受信モジュール。
【請求項1】
単一波長の光信号を増幅するための光増幅器であって、
縦続接続された前段光増幅手段および後段光増幅手段と、
前記前段および後段光増幅手段の間の光路上に配置され、前記光路を伝搬する光信号の劣化の補償を行う機能部品と、
前記前段および後段光増幅手段の間の光路上に配置され、前記光路を伝搬する光信号を減衰させる可変光減衰手段と、
前記後段光増幅手段からの光出力パワーを検出し、該光出力パワーが予め設定した目標レベルで一定となるように、前記後段光増幅手段の駆動状態を制御する後段出力一定制御手段と、
前記後段光増幅手段に対して入出力される光信号のパワーより得られる利得に基づき、前記可変光減衰手段における光減衰量を制御する後段利得一定制御手段と、
を備えたことを特徴とする光増幅器。
【請求項2】
請求項1に記載の光増幅器であって、
前記後段利得一定制御手段は、前記後段出力一定制手段による制御の速度よりも遅い速度で、前記可変光減衰手段における光減衰量を制御することを特徴とする光増幅器。
【請求項3】
請求項1に記載の光増幅器であって、
前記前段光増幅手段からの光出力パワーを検出し、該光出力パワーが予め設定した目標レベルで一定となるように、前記前段光増幅手段の駆動状態を制御する前段出力一定制御手段を備えたことを特徴とする光増幅器。
【請求項4】
請求項1に記載の光増幅器であって、
前記前段光増幅手段に対して入出力される光信号のパワーを検出して前記前段光増幅手段における利得を演算し、該利得が一定になるように、前記前段光増幅手段の駆動状態を制御する前段利得一定制御手段を備えたことを特徴とする光増幅器。
【請求項5】
請求項1に記載の光増幅器であって、
前記後段光増幅手段の光入力パワーの下限値が、前記前段光増幅手段の光入力パワーの下限値よりも10dB以上大きいことを特徴とする光増幅器。
【請求項6】
請求項1に記載の光増幅器であって、
前記機能部品は、波長分散補償器および偏波モード分散補償器のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする光増幅器。
【請求項7】
請求項1に記載の光増幅器であって、
前記後段出力一定制御手段は、
前記後段光増幅手段から出力される光信号の一部を分岐する第1分岐器と、
前記第1分岐器で分岐された光信号のパワーを検出する第1光検出器と、
前記第1光検出器で検出された光信号のパワーが前記目標レベルで一定となるように、前記後段光増幅手段の駆動状態を制御する出力一定制御回路と、を有し、
前記後段利得一定制御手段は、
前記後段光増幅手段に入力される光信号の一部を分岐する第2分岐器と、
前記第2分岐器で分岐された光信号のパワーを検出する第2光検出器と、
前記第1および第2光検出器でそれぞれ検出された光信号のパワーを用いて、前記後段光増幅手段における利得を演算する利得演算回路と、
前記利得演算回路で演算された利得が一定になるように、前記可変光減衰手段における光減衰量を制御する減衰量制御部と、を有することを特徴とする光増幅器。
【請求項8】
請求項1に記載の光増幅器であって、
前記後段利得一定制御手段は、光信号の波長に応じて利得の制御目標値が設定されることを特徴とする光増幅器。
【請求項9】
請求項1に記載の光増幅器と、
前記光増幅器から出力される光信号を受信し、該光信号を復調した電気信号を生成する受信器と、
前記受信器からの出力信号を用いて受信データを識別再生する識別再生回路と、
を備えたことを特徴とする光受信モジュール。
【請求項10】
請求項9に記載の光受信モジュールであって、
前記受信器は、光入力レベルの目標値に関する情報を前記光増幅器の後段出力一定制御手段に通知し、
前記後段出力一定制御手段は、前記受信器の光入力レベルの目標値に対応させて、前記後段光増幅手段の光出力パワーの目標レベルを自動的に設定することを特徴とする光受信モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−123698(P2010−123698A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294955(P2008−294955)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]