説明

光学デバイス

【課題】光学デバイスの長期信頼性を支える上で、高い耐熱性、耐光性、ガスバリア性を有し、さらに耐冷熱衝撃性に優れる封止層を有する光学デバイスが求められている。
【解決手段】(1)周波数10Hzで測定した損失正接の極大値が−10℃〜50℃の温度範囲に少なくとも1つあり、貯蔵弾性率が50℃において20MPa以下であり、
(2)200℃に24時間放置した前後において、波長400nmの光における透過率の維持率が95%以上であり、
(3)40℃/90%RHの環境下における透湿度が20g/m2/day以下である封止層を有することを特徴とする光学デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学デバイスの長期使用信頼性を実現する封止層、及びこれらを有する光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)、太陽電池、光ディスク用受光素子をはじめとする光学デバイスの多くは発光部位あるいは受光部位と、これらを保護する1層以上の封止層を有している。封止層は、光学素子を外部環境から保護して、光学デバイスの長期信頼性を確保するために、耐熱性、耐光性、耐冷熱衝撃性が厳しく要求される。さらに、デバイスの高出力化に伴い、封止層はこれまで以上の耐熱性、耐光性、耐冷熱衝撃性を兼ね備えることが求められている。
【0003】
一方、ガスバリア性も封止層にとって重要な特性であり、たとえばLED等の光半導体用途の封止層の場合、ガスバリア性が低ければ、リフレクターとして使用されている銀メッキ基盤が硫化物等によって黒色化するといった問題が起こる場合がある(たとえば特許文献1)。
【0004】
これに対し、現在、光学デバイスの封止層としては、使用環境、目的等に応じて、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が用いられてきている(たとえば特許文献2)。しかし、エポキシ樹脂を用いた場合、耐熱性および耐光性が不十分であり、黄変する等の課題がある。また、シリコーン樹脂を用いた場合には、耐熱性及び耐光性は優れるものの、軟質材料としたときにガスバリア性が低い場合や、埃等の付着が問題となる場合があるなどの課題があり、また、硬質材料としたときに耐冷熱衝撃性が不十分な場合があるなどの課題がある。
【0005】
以上のことから、近年発展の目覚しい光学デバイスの長期信頼性を支える上で、高い耐熱性、耐光性、ガスバリア性を有し、さらに耐冷熱衝撃性に優れる封止層と、これらを有する光学デバイスが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−206124
【特許文献2】特開2008−179811
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は高い耐熱性、耐光性、ガスバリア性を有し、さらに耐冷熱衝撃性に優れた封止層を有する光学デバイスに関する。本光学デバイスは、求められている長期信頼性を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明以下の構成を有するものである。
【0009】
1). (1)周波数10Hzで測定した損失正接の極大値が−10℃〜50℃の温度範囲に少なくとも1つあり、貯蔵弾性率が50℃において20MPa以下であり、
(2)200℃に24時間放置した前後において、波長400nmの光における透過率の維持率が95%以上であり、
(3)40℃、90%RHの環境下における透湿度が20g/m2/day以下である封止層を有することを特徴とする光学デバイス。
【0010】
2). 封止層が、多面体構造ポリシロキサン(A)を含有する硬化性組成物を硬化して得られることを特徴とする1)に記載の光学デバイス。
【0011】
3). 多面体構造ポリシロキサン(A)が、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)と、ヒドロシリル基を有する化合物(b)を反応させて得られることを特徴とする多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)であることを特徴とする、2)に記載の光学デバイス。
【0012】
4). 多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)が、
[XRSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基、Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
(lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子である))を構成単位とすることを特徴とする3)に記載の光学デバイス。
【0016】
5). 多面体構造ポリシロキサン(A)を含有する硬化性組成物が、硬化剤(B)を含有することを特徴とする2)〜4)のいずれか1に記載の光学デバイス。
【0017】
6). 多面体構造ポリシロキサン(A)を含有する硬化性組成物が、ヒドロシリル化触媒を含有することを特徴とする2)〜5)のいずれか1に記載の光学デバイス。
【0018】
7). 多面体構造ポリシロキサン(A)を含有する硬化性組成物が、硬化遅延剤を含有することを特徴とする2)〜6)のいずれか1に記載の光学デバイス。
【0019】
8). 多面体構造ポリシロキサン(A)を含有する硬化性組成物が、接着性付与剤を含有することを特徴とする2)〜7)のいずれか1に記載の光学デバイス。
【発明の効果】
【0020】
高い耐熱性、耐光性、ガスバリア性を有し、さらに耐冷熱衝撃性に優れる封止層を有する光学デバイスを提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
<封止層の粘弾性挙動>
本発明における光学デバイスに用いられる封止層は特定の粘弾性挙動を示すものである。
【0022】
一般に角周波数ωの正弦波形震動応力(歪)を受けた場合、歪と応力における複素弾性率はE*=E’+iE”で示される。ここでE’は貯蔵弾性率、E”は損失弾性率である。応力と歪の位相差がδである場合、損失正接(tanδ)は、E”/E’で表される。
【0023】
本発明における封止層の粘弾性挙動は、−10℃〜50℃において、少なくとも1つの損失正接の極大値を有し、且つ50℃での貯蔵弾性率が20MPa以下であることが特徴である。損失正接の極大値は、−5℃〜45℃の範囲内にあることがより好ましく、0℃〜45℃の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0024】
低温に極大値を有すると封止層のガスバリア性が低下する場合があり、高温に極大値を有すると封止層を硬化させる際の内部(残留)応力が大きくなり、封止層の耐冷熱衝撃性が悪化する場合がある。さらに、50℃での貯蔵弾性率は16MPa以下であることがより好ましく、12MPa以下であることがさらに好ましい。貯蔵弾性率が大きいと、封止層を硬化させる際の内部(残留)応力が大きくなり、封止層の耐冷熱衝撃性が悪化する場合がある。
【0025】
さらに、50℃での貯蔵弾性率は0.05MPa以上であることが好ましく、0.1MPa以上であることがより好ましく、0.2MPa以上であることがさらに好ましい。貯蔵弾性率が小さいと、樹脂がもろくなり封止層の耐冷熱衝撃性が悪化する場合がある。
【0026】
封止層の粘弾性挙動が前記の範囲内において、光学デバイスの製作過程で起こり得る封止層のクラックなどの現象がなく良好な光学デバイスが得られる。
【0027】
<封止層の耐熱性>
本発明における封止層は、高温条件下に放置した場合でも、所定の波長を有する光の透過率が変化しにくい性質を有するものである。
本発明における封止層は、200℃に温度設定した対流式オーブン内(空気中)にて24時間養生する前後において、波長400nmの光における透過率の維持率が、95%以上の耐熱性を有するものであるが、好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上である封止層である。本発明における透過率の維持率は、後述の方法に従って算出されるものである。
【0028】
<封止層の透湿度>
本発明における封止層は20g/m2/day以下の透湿度(水蒸気透過率)を有するものである。
本発明における封止層の透湿度は、さらには18g/m/day以下、特には16g/m/day以下、とすることも可能である。本発明における透湿度は、封止層のガスバリア性を表す値であり、例えば、LED等の光半導体用途でリフレクターとして使用されている銀メッキ基盤の腐食抑制の目安となる値である。
【0029】
封止層の透湿度が高い場合(すなわちガスバリア性が低い場合)、具体的には、20g/m/dayより高い場合においては、水分、更には、硫化物等のガスも透過しやすく、銀メッキ基盤が腐食され、発光特性の低下を招く恐れがある。本発明における透湿度は、後述の方法に従って算出されるものである。
【0030】
<封止層の組成>
本発明における封止層は、硬化性組成物を硬化させて得られる封止層であることが好ましい。本発明における封止層に使用される硬化性組成物としては、特にその構造は限定しないが、たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド、シリコーン樹脂が挙げられる。耐熱性、耐光性が優れる封止層を得る点からはシリコーン樹脂であることが好ましく、付加型シリコーン樹脂であることがより好ましい。本発明における封止層が得られる硬化性組成物は、多面体構造ポリシロキサン(A)を含有することが、耐熱性、耐光性、ガスバリア性、耐冷熱衝撃性の観点から好ましい。
【0031】
<多面体構造ポリシロキサン(A)>
多面体構造ポリシロキサン(A)は、公知の多面体構造ポリシロキサンを広く使用することができ、一般式[RSiO3/2]や一般式[RSiO−SiO3/2](Rは任意の有機基であり、同一であっても異なっていてもよい;aは6〜24の整数)で表されるシロキサン単位から構成される多面体構造ポリシロキサンが例示されるが、その構造中に[RSiO2/2]単位や[RSiO1/2]単位を含む部分開裂型の多面体構造ポリシロキサンであってもよい。本発明において使用される多面体構造ポリシロキサン(A)は多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)であることが、耐熱性、耐光性、ガスバリア性、耐冷熱衝撃性の点からさらに好ましい。
【0032】
<多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)>
多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)は、ヒドロシリル化触媒の存在化、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)とヒドロシリル基を有する化合物(b)とのヒドロシリル化反応により合成することが出来る。
【0033】
ヒドロシリル基を有する化合物(b)は、多面体構造シロキサン(a)のアルケニル基の個数1個あたり、Si原子に直結した水素原子の数が2.5〜20個になるように(b)成分を用いることが好ましい。用いる量が少ないと、架橋反応によりゲル化が進行するため、多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)のハンドリング性が劣り、多すぎると、封止層の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0034】
多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)の合成時には、過剰量のヒドロシリル基を有する化合物(b)を存在させることが好ましいが、過剰量用いない場合でも、未反応のヒドロシリル基を有する化合物(b)を取り除くことが好ましい。その際には例えば減圧及び又は加熱により行うことができる。
【0035】
このようにして得られた多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)は、各種化合物、特にはシロキサン系化合物との相溶性を確保でき、さらに、分子内にヒドロシリル基が導入されていると、各種アルケニルを有する化合物と反応させる場合に好ましい。分子内にヒドロシリル基が導入されているために、多面体構造シロキサン(a)のアルケニル基の個数1個あたり、Si原子に直結した水素原子の数が2〜20個になるように(b)成分を用いることが好ましい。多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)におけるヒドロシリル基は、分子中に少なくとも平均3個含有することが好ましい。ヒドロシリル基が少ないと、得られる封止層の強度が不十分となる恐れがある。
【0036】
多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)のSiH価は、多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)とジブロモエタンの混合物を作り、そのNMR測定を行うことで、下記計算式(1)
SiH価(mol/g)=[多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)のSiH基に帰属されるピークの積分値]/[ジブロモエタンのメチル基に帰属されるピークの積分値]×4×[混合物中のジブロモエタン重量]/[ジブロモエタンの分子量]/[混合物中の多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)重量] (1)
を用いて計算できる。
【0037】
本発明における多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)のSiH価は、0.0020〜0.0040であることが好ましく、0.0021〜0.0038であることがより好ましく、0.0022〜0.0036であることがさらに好ましい。
【0038】
SiH価が大きいと貯蔵弾性率が高くなり光学デバイスの製作過程で封止層にクラックが発生する場合があり、小さいと得られる封止層の透湿度が高くなる場合がある。
【0039】
また、本発明における多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)は、温度20℃において液状とすることも可能である。多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)を液状とすることで、ハンドリング性に優れることから好ましい。
【0040】
本発明における好ましい多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)について、以下、具体的に説明する。
【0041】
本発明における好ましい多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)は、反応可能な官能基を有するシロキサン単位として[XRSiO−SiO3/2]を必須単位として構成されることを特徴とし、必要に応じて、物性調整ユニットとして次のシロキサン単位 [RSiO−SiO3/2]を構成単位として含有し、以下の式、
[XRSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Xは一般式(1)あるいは(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い;Rは、アルキル基またはアリール基、;Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、水素原子、または、他の多面体構造ポリシロキサンと連結している基)で表されるシロキサン単位から構成される多面体構造ポリシロキサン変性体が例示される。ここで、aは平均して1以上、好ましくは2以上であることが好ましく、また、bは、0または1以上の整数である。a+bは6〜24の整数、好ましくは、6〜12の整数である。
【0042】
【化3】

【0043】
【化4】

【0044】
(lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。ただし、YあるいはZの少なくとも1つはアルケニル基または水素原子である;Rは、アルキル基またはアリール基;また、Xが複数ある場合は式(1)あるいは式(2)の構造が異なっていても良くまた式(1)あるいは式(2)の構造が混在していても良い)。
【0045】
以下、反応可能な官能基を有するシロキサン単位
[XRSiO−SiO3/2]
について説明する。
【0046】
反応可能な官能基を有するシロキサン単位は、例えば、後述のヒドロシリル化触媒存在下、ヒドロシリル化反応により後述の硬化剤との架橋反応を発生させる、あるいは、熱硬化開始剤あるいは光硬化開始剤の存在下、架橋し、硬化させる役割を担うユニットである。
【0047】
ここで、好ましい反応性官能基を有する基Xとしては、一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの式で表される基であれば特に限定はないが、mは1〜7の整数であることが好ましく、nは2〜4の整数であることが好ましい。
【0048】
反応可能な官能基を有するシロキサン単位におけるRとしては、実質的に反応性を有しない置換基、具体的に例えば、アルキル基、アリール基を使用することができる。
【0049】
本発明における反応可能な官能基を有するシロキサン単位は、多面体骨格を構成する全シロキサン単位のうち、平均して2つ以上含有することが好ましい。すなわち、一般式(1)におけるaは2以上が好ましい。反応可能な官能基を含有するシロキサン単位が少ないと硬化性が不十分となり、さらには、得られる封止層の強度が低下する恐れがある。
【0050】
次に、シロキサン単位
[RSiO−SiO3/2]
について説明する。
【0051】
本シロキサン単位を導入することにより、本発明における多面体構造ポリシロキサン変性体および封止層の物性調整を行うことができる。本シロキサン単位により、架橋密度の調整、皮膜性、レベリング性、脆さ改善などが可能となる。
本シロキサン単位におけるRとしては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、水素原子、または、他の多面体構造ポリシロキサンと連結している基を好適に用いることができる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基などが例示される。
【0052】
他の多面体構造ポリシロキサンと連結している基としては、ポリシロキサンやポリ(メタ)アクリレート、ポリイソブチレン等のポリマー成分を介して連結している基が例示される。
【0053】
<多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)の製造方法>
まず、アルケニル基含有多面体構造シロキサン系化合物(a)について、説明する。
【0054】
アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて合成される。例えば、RSiX(式中Rは、アルケニル基を表し、Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)のシラン化合物の加水分解縮合反応によって、得られる。または、RSiXの加水分解縮合反応によって分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成したのち、さらに、同一もしくは異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより閉環し、合成する方法も知られている。さらには、前記トリシラノール化合物に、1官能性シランおよび/または2官能性シランを反応させることにより、部分開裂型の多面体構造ポリシロキサンを合成することもできる。
【0055】
その他にも、例えば、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下、加水分解縮合させる方法が挙げられる。
【0056】
本合成方法においては、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、多面体構造を有するケイ酸塩が得られ、さらに得られたケイ酸塩をアルケニル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより、多面体構造を形成するSi原子とアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合した多面体構造ポリシロキサンを得ることが可能となる。テトラアルコキシランの替わりに、シリカや稲籾殻等のシリカを含有する物質からも、同様の多面体構造ポリシロキサンを得ることが可能である。
【0057】
本発明におけるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)は、分子中にアルケニル基を含有する、多面体骨格を有するポリシロキサンであれば、特に限定はない。具体的に、例えば、以下の式
[RSiO3/2[RSiO3/2
(x+yは6〜24の整数;xは1以上の整数、yは0または1以上の整数;Rはアルケニル基、または、アルケニル基を有する基;Rは、任意の有機基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)
で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサンを好適に用いることができる。
【0058】
さらには、式
[WRSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Wは、アルケニル基;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)
で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物が好ましいものとして例示される。
【0059】
アルケニル基Wとしては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性、耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
前記Rは、アルキル基またはアリール基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるRとしては、耐熱性、耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
【0060】
は、水素原子、アルキル基またはアリール基が好ましい。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるRとしては、耐熱性、耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
【0061】
数値aは1以上の整数であれば、特に制限はないが、化合物の取り扱い性や得られる封止層の物性から、2以上が好ましい。また、前記数値bは、0または1以上の整数であれば、特に制限はない。数値aと数値bの和(=a+b)は、6〜24の整数であるが、化合物の安定性、得られる封止層の安定性の観点から、6〜12であることが好ましい。
【0062】
このような(a)成分を用いる場合、例えば、後述の(b)成分であるヒドロシリル基を有する化合物、後述のヒドロシリル化触媒の存在下、ヒドロシリル化反応によって多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)を得ることができる。この際、前記多面体構造シロキサン系化合物(a)のアルケニル基は、すべて反応する必要はなく、一部残存していてもよい。また、複数の多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)と複数のヒドロシリル基を有する化合物(b)が反応していても良い。
【0063】
多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)の合成時に用いるヒドロシリル化触媒の添加量としては特に制限はないが、多面体構造シロキサン(a)のアルケニル基1モルに対して10−1〜10−10モルの範囲で用いるのがよい。好ましくは10−4〜10−8モルの範囲で用いるのがよい。ヒドロシリル化触媒が多すぎると、ヒドロシリル化触媒の種類によっては、短波長の光に吸収を示すため、着色原因になったり、得られる封止層の耐光性が低下する恐れがあり、また、封止層が発泡する恐れもある。また、ヒドロシリル化触媒が少なすぎると、反応が進まず、目的物が得られない恐れがある。
【0064】
ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、45〜140℃である。温度が低すぎると反応が十分に進行せず、温度が高すぎると、ゲル化が生じ、ハンドリング性が悪化する恐れがある。
【0065】
次に、ヒドロシリル基を有する化合物(b)について、説明する。
【0066】
本発明におけるヒドロシリル基を有する化合物(b)としては、ヒドロシリル基を1つ以上有する化合物であれば特に制限はないが、透明性、耐熱性、耐光性の観点から、ヒドロシリル基含有シロキサン化合物であることが好ましく、具体的に例えば、両末端にヒドロシリル基を含有する直鎖状のポリシロキサン、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンなどが好ましいものとして挙げられる。これらヒドロシリル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
ヒドロシリル基を有する化合物(b)が有するヒドロシリル基の数(ヒドロシリル基を有する化合物(b)が複数種の場合はそれらが有するヒドロシリル基の平均数)に特に制限はないが、ヒドロシリル基を有する化合物(b)1分子あたりのヒドロシリル基の数が多すぎるとSiH価が大きくなり光学デバイスの製作過程で封止層にクラックが発生する場合があり、少なすぎるとSiH価が小さくなり得られる封止層の透湿度が高くなる場合がある。
【0068】
ヒドロシリル基を含有する直鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封止されたポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサンなどが例示される。本発明における直鎖状シロキサンとしては、変性させる際の反応性や得られる封止層の耐熱性、耐光性等の観点から、具体的に例えば、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサンなどが、好ましい例として例示される。
【0069】
ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−1,3,5−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。本発明における環状シロキサンとしては、工業的入手性および変性させる場合の反応性、あるいは、得られる封止層の耐熱性、耐光性、強度等の観点から、具体的に例えば、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを好適に用いることができる。
【0070】
また、多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)として多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)にヒドロシリル基を有する環状シロキサンとヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサンからなる構造が直接あるいは間接に結合した構造であることが変性体(A1)を用いて封止層と成した場合、封止層の特性のバランスを取る上で好ましい。そのためには、ヒドロシリル基を有する環状シロキサンとヒドロシリル基を有する直鎖状シロキサンを併用して用いることが好ましい。
【0071】
環状シロキサンと直鎖状シロキサンの用いる割合はそれぞれが有するヒドロシリル基の数によって一概には言えないが、SiH等量(分子量/Siに結合した水素の数)を用いて表せば、併用する場合、(環状シロキサンの使用量/環状シロキサンのSiH等量)/(直鎖シロキサンの使用量/直鎖シロキサンのSiH等量)=5/1〜1/4、さらには、3/1〜1/3、特には2.5/1〜1.5/1の割合で用いることが好ましい。
【0072】
用いる環状シロキサンが多いと耐冷熱衝撃試験結果が低下する傾向がある。また、直鎖状シロキサンが多いと水蒸気透過率が高くなり、長期の耐硫化水素試験結果が悪くなる傾向がある。
【0073】
<硬化剤(B)>
本発明における封止層が得られる硬化性組成物は、硬化剤(B)を含有することが好ましい。硬化剤(B)とは、多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)と反応可能なアルケニル基を有する化合物が好ましい。以下、詳細に説明する。
【0074】
硬化剤(B)は、アルケニル基を有する化合物であれば特に限定されないが、1分子中に少なくともアルケニル基を2個含有するものが好ましく、アルケニル基を有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサン、アルケニル基を含有する環状シロキサンなどのシロキサン化合物がさらに好ましく、特には、高温加熱時における耐クラック性等の観点より直鎖構造のポリシロキサンであることが好ましい。これらアルケニル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
直鎖構造を有するアルケニル基含有ポリシロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖された(ポリ)ジメチルシロキサン、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖された(ポリ)ジフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖された(ポリ)メチルフェニルシロキサンなどが例示される。
【0076】
本発明における直鎖構造を有するアルケニル基含有ポリシロキサンとしては、得られる封止層の靭性や耐クラック性の観点から、分子末端にアルケニル基を有することが好ましく、さらに透湿度の低い封止層が得られることからフェニル基を有していることが好ましく、得られる封止層の強度等の観点から、具体的に例えば、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン、1,5−ジビニル−3−フェニル−1,1,3,5,5−ペンタメチルトリシロキサンなどが例示される。
【0077】
硬化剤(B)の添加量は種々設定できるが、アルケニル基1個あたり、Si原子に直結した水素原子が0.3〜5個、好ましくは、0.5〜3.5個となる割合であることが望ましい。アルケニル基の割合が少なすぎると、発泡等による外観不良が生じやすくなり、また、多すぎると、封止層の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0078】
<ヒドロシリル化触媒>
本発明における封止層が得られる硬化性組成物は、ヒドロシリル化触媒を含有することが好ましい。
【0079】
本発明では、多面体構造ポリシロキサン変性体の合成、および、該変性体を含有する組成物を硬化させる際に、ヒドロシリル化触媒を用いることができる。
【0080】
本発明におけるヒドロシリル化触媒としては、通常ヒドロシリル化触媒として用いられるものを用いることができ特に制限はなく、任意のものが使用できる。
【0081】
具体的には例示すれば、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体、例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt〔(MeViSiO);白金−ホスフィン錯体、例えば、Pt(PPh、Pt(PBu;白金−ホスファイト錯体、例えば、Pt〔P(OPh)、Pt〔P(OBu)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0082】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh、RhCl、Rh/Al、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)等が好ましい。
【0083】
<硬化遅延剤>
本発明における封止層が得られる硬化性組成物は、硬化遅延剤を含有することが好ましい。
【0084】
硬化遅延剤は、硬化性組成物、および、多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)の保存安定性を改良あるいは、硬化過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整するための成分である。本発明においては、硬化遅延剤としては、ヒドロシリル化触媒による付加型硬化性組成物で用いられている公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもよい。
【0085】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、具体的には3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示できる。
【0086】
有機リン化合物としては、具体的にはトリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示できる。
【0087】
有機イオウ化合物としては、具体的にはオルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示できる。
【0088】
窒素含有化合物としては、具体的にはN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジン等が例示できる。
【0089】
スズ系化合物としては、具体的にはハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示できる。
【0090】
有機過酸化物としては、具体的にはジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。これらのうち、マレイン酸ジメチル、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが、特に好ましい硬化遅延剤として例示できる。
【0091】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10−1〜10モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜500モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0092】
<接着性付与剤>
本発明における封止層が得られる硬化性組成物は、接着性付与剤を含有することが好ましい。
【0093】
接着性付与剤は本発明の封止層と機材との接着性を向上する目的で用いるものであり、その様な効果があるものは時に制限はないが、シランカップリング剤、エポキシ化合物が好ましい物として例示できる。
【0094】
シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0095】
好ましいシランカップリング剤としては、具体的には3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0096】
シランカップリング剤の添加量としては、多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)および硬化剤(B)の合計重量の0.05〜30重量%であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜15重量%である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと封止層の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0097】
エポキシ化合物としては、例えば、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができる。
【0098】
エポキシ化合物の添加量としては、多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)および硬化剤(B)の合計重量の0.1〜50重量%であることが好ましく、さらに好ましくは、0.2〜15重量%である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと封止層の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0099】
また、シランカップリング剤、エポキシ化合物等は単独で使用してもよく、2種併用してもよい。
本発明においては、接着性付与剤の効果を高めるために、公知の接着性促進剤を用いることができる。接着性促進剤としては、ボロン酸エステル化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
本発明における封止層は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じ、粉砕石英、炭酸カルシウム、カーボンブラック、シリカなどの無機フィラー(充填剤)を含有してもよい。
【0101】
無機フィラーを本発明で用いることにより、得られる封止層の硬度、熱膨張率、熱伝導率、放熱性、電気的特性、光の反射率、難燃性、耐火性、およびガスバリア性等の諸物性を改善することができる。
【0102】
本発明で用いることが出来る無機フィラーは、無機物もしくは無機物を含む化合物であれば特に限定されないが、具体的に例えば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機フィラー、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、ガラスフレーク、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン、銀粉等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0103】
無機フィラーは、適宜表面処理をほどこしてもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、カップリング剤による処理等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0104】
カップリング剤の例としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。
【0105】
有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0106】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が挙げられる。
【0107】
無機フィラーの形状としては、破砕状、片状、球状、棒状等、各種用いることができる。無機フィラーの平均粒径や粒径分布は、特に限定されるものではないが、平均粒径が0.005〜100μmであることが好ましく、さらには0.01〜50μmであることが好ましい。同様に、比表面積についても、特に限定されない。
【0108】
無機フィラーの添加量は特に限定されないが、多面体構造ポリシロキサン変性体と硬化剤の混合物100重量部に対して、1〜1000重量部、よりこの好ましくは、52〜500重量部、さらに好ましくは、3〜300重量部である。無機フィラーの添加量が多すぎると、光学デバイスの製作過程で封止層にクラックが発生する場合や上記混合物の流動性が悪くなる問題があり、少なすぎると、所望の効果が得られない場合がある。
また、本発明の封止層は、必要に応じて、顔料、蛍光体、着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で含有することができる。
【0109】
この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。
【0110】
また、本発明の封止層は、難燃性、耐火性にするために、二酸化チタン、炭酸マンガン、Fe、フェライト、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレークなどの公知の添加剤を含有してもよい。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0111】
本発明における封止層を得る方法としては、特に限定されないが、各成分を単に混合するだけで反応させて得ることもできるし、加熱して反応させて得ることもできる。反応が速く、耐熱性が高くなり易いという観点から、加熱して反応させて得る方法が好ましい。
【0112】
反応温度としては種々設定できるが、25℃〜300℃の温度範囲が好ましく、30℃〜280℃がより好ましく、35℃〜260℃がさらに好ましい。反応温度が高くなり過ぎると、得られる封止層に外観不良が生じる傾向があり、低すぎると硬度が不十分となる。
【0113】
反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより、多段階あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、均一な封止層が得られ易いという点で好ましい。反応時の圧力も必要に応じて種々設定でき、常圧、高圧又は減圧状態で反応させて得ることもできる。
【0114】
反応時間は硬化温度、用いるヒドロシリル化触媒の量及びヒドロシリル基の量その他、封止層の組成その他の配合物の組み合わせにより適宜選択することができるが、あえて例示すれば、好ましくは1分〜12時間、さらには5分〜10時間行うことにより、良好な封止層を得ることができる。
【0115】
本発明における封止層は、高い耐熱性、耐光性、ガスバリア性を有し、さらに優れた耐冷熱衝撃性を有し、広い波長領域および温度領域において、高い透明性を発現することから、該封止層を用いた光学デバイスは求められている長期信頼性を実現するものである。
【0116】
本発明における光学デバイスとは、記録装置や撮像装置、センシング装置などを含めた広範な光学装置を意味する。具体的には、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)などの光記録ディスク用受光素子、LED、固体撮像素子であるラインセンサーやエリアセンサー、太陽電池、携帯電話用光学系装置、デジタルカメラ用光学系装置、光学薄膜製品、レーザービームプリンター光学系装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ装置、光学フィルター、光ファイバー、光半導体集積回路、非線形光学材料を用いた光学系装置、プロジェクタ/リアプロTV用光学デバイス、空間光変調器、空間位相変調器、オプティカルアイソレーター、などが挙げられるがこれらの光学デバイスに限定されるものではない。
【実施例】
【0117】
以下の実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(動的粘弾性測定用サンプル作成)
封止層を形成させる硬化性組成物を型に充填し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×6時間熱硬化させて、長さ35mm、幅5mm、厚さ2mmのサンプルを作成した。
【0118】
(動的粘弾性測定)
上記の通り作成したサンプルの動的粘弾性を、UBM社製動的粘弾性測定装置ReogelE4000を用い、測定温度−40℃〜150℃、昇温速度4℃毎分、歪み4μメートル、周波数10Hz、チャック間25mm、引張モードで測定した。
【0119】
(耐熱試験・耐光試験用サンプル作成)
封止層を形成させる硬化性組成物を型に充填し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×6時間熱硬化させて、厚さ3mmのサンプルを作成した。
【0120】
(耐熱試験)
サンプルの耐熱性は波長400nmの光における透過率の維持率で評価した。すなわち、上記で作成したサンプルの透過率を、紫外可視分光光度計V−560(日本分光株式会社製)を用いて測定し、さらに、200℃に温度設定した対流式オーブン内(空気中)で該サンプルを24時間養生した後、再度透過率を測定し、維持率を下記計算式(2)
維持率(%)=[200℃で24時間養生後のサンプルの波長400nmの光における透過率]/[養生前のサンプルの波長400nmの光における透過率]×100 (2)
に従って算出した。
【0121】
(耐光試験)
スガ試験機(株)社製、メタリングウェザーメーター(形式M6T)を用いた。上記で作成したサンプルを、ブラックパネル温度120℃、放射照度0.53kW/mで、積算放射照度50MJ/mまで照射し、目視にて観察した。着色などによる色目の変化が見られなかったものを○、見られたものを×と評価した。
【0122】
(耐冷熱衝撃試験用サンプル作成)
株式会社エノモト製LEDパッケージ(品名:TOP LED 1−IN−1)に、0.4mm×0.4mm×0.2mmの単結晶シリコンチップ1個を、株式会社ヘンケルジャパン製エポキシ系接着剤(品名:LOCTITE348)で貼り付け、150℃に温度設定した対流式オーブンで30分加熱して固定した。ここに封止層を形成させる硬化性組成物を注入し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×6時間熱硬化させてサンプルを作成した。
【0123】
(耐冷熱衝撃試験)
上記で作成したサンプルを、熱衝撃試験機(エスペック製 TSA−71H−W)を用いて、高温保持100℃、30分間、低温保持−40℃、30分間のサイクルを100サイクル行った後、サンプルを観察した。試験後、目視で変化が無ければ○、クラックが入ったり、パッケージとの間に剥離、あるいは着色が起きたりした場合は×とした。
【0124】
(透湿性試験用サンプル作成)
封止層を形成させる硬化性組成物を型に充填し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×6時間熱硬化させて、5cm角で厚さ2mmのサンプルを作成した。このサンプルを室温25℃、湿度55%RHの状態で24時間養生した。
【0125】
(透湿性試験)
5cm角の板ガラス(0.5mm厚)の上部に5cm角のポリイソブチレンゴムシート(3mm厚、ロの字型になるように内部の3cm角を切り取ったもの)を固定した治具を作製し、和光純薬工業製塩化カルシウム(水分測定用)1gをロの字型内に充填する。さらに上部に上記で作成した5cm角のサンプル(2mm厚)を固定し、これを試験体とする。試験体を恒温恒湿機(エスペック製 PR‐2KP)内で温度40℃、湿度90%RHで24時間養生し、下記計算式(3)
透湿度(g/m/day)={(透湿性試験後の試験体総重量(g))−(透湿性試験前の試験体総重量(g))}×10000/9 (3)
に従って透湿度(水蒸気透過率)を算出する。
【0126】
(硫化水素試験)
株式会社エノモト製LEDパッケージ(品名:TOP LED 1−IN−1)に封止層を形成させる硬化性組成物を注入し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×6時間熱硬化させてサンプルを作成した。このサンプルを、フロー式ガス腐食試験機(ファクトケイ株式会社製KG130S)内に入れ、40℃、80%RH、硫化水素3ppmの条件下で、96時間、硫化水素暴露試験を行った。試験後、パッケージのリフレクターが変色していなければ○、ごくわずかに変色が見られた場合を○´、変色している場合は×とした。
【0127】
(製造例1)
48%コリン水溶液1934gにテトラエトキシシラン1562gを加え、室温で2時間激しく攪拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、攪拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール1150mLを加え、均一溶液とした。
【0128】
ジメチルビニルクロロシラン785g、トリメチルクロロシラン923gおよびヘキサン2000mLの溶液を激しく攪拌しながら、メタノール溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をメタノール中で激しく攪拌することにより洗浄し、ろ別することにより、ビニル基含有六面体構造ポリシロキサン(重量平均分子量1887、分子1個あたりの平均ビニル基数3.0)を白色固体として720g得た。
【0129】
(製造例2)
製造例1で得られたビニル基含有六面体構造ポリシロキサン20.0gをトルエン40.0gに溶解させ、さらに白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt-VTSC-3X)3.85μLを溶解させた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン30.93g、トルエン30.93gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させ、室温まで冷却した。
【0130】
反応終了後、トルエンと過剰量加えた1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを留去することにより、六面体構造ポリシロキサン変性体31.1gを得た。NMRによりアルケニル基が残っていないこと、SiH価が0.00411であることを確認した。
【0131】
(製造例3)
製造例1で得られたビニル基含有六面体構造ポリシロキサン20.0gをトルエン40.0gに溶解させ、さらに白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt-VTSC-3X)3.85μLを溶解させた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン20.62g、テトラメチルジシロキサン11.52g、トルエン32.14gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させ、室温まで冷却した。
【0132】
反応終了後、トルエンと過剰量加えた1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとテトラメチルジシロキサンを留去することにより、六面体構造ポリシロキサン変性体29.6gを得た。NMRによりアルケニル基が残っていないこと、SiH価が0.00334であることを確認した。
【0133】
(製造例4)
製造例1で得られたビニル基含有六面体構造ポリシロキサン20.0gをトルエン40.0gに溶解させ、さらに白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt-VTSC-3X)3.85μLを溶解させた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン15.47g、テトラメチルジシロキサン17.28g、トルエン32.74gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させ、室温まで冷却した。
【0134】
反応終了後、トルエンと過剰量加えた1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとテトラメチルジシロキサンを留去することにより、六面体構造ポリシロキサン変性体28.2gを得た。NMRによりアルケニル基が残っていないこと、SiH価が0.00291であることを確認した。
【0135】
(製造例5)
製造例1で得られたビニル基含有六面体構造ポリシロキサン20.0gをトルエン40.0gに溶解させ、さらに白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt-VTSC-3X)3.85μLを溶解させた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン10.31g、テトラメチルジシロキサン23.04g、トルエン33.35gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させ、室温まで冷却した。
【0136】
反応終了後、トルエンと過剰量加えた1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとテトラメチルジシロキサンを留去することにより、六面体構造ポリシロキサン変性体27.0gを得た。NMRによりアルケニル基が残っていないこと、SiH価が0.00245であることを確認した。
【0137】
(製造例6)
製造例1で得られたビニル基含有六面体構造ポリシロキサン20.0gをトルエン40.0gに溶解させ、さらに白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt-VTSC-3X)3.85μLを溶解させた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン5.16g、テトラメチルジシロキサン28.79g、トルエン33.95gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させ、室温まで冷却した。
【0138】
反応終了後、トルエンと過剰量加えた1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとテトラメチルジシロキサンを留去することにより、六面体構造ポリシロキサン変性体25.3gを得た。NMRによりアルケニル基が残っていないこと、SiH価が0.00188であることを確認した。
【0139】
(実施例1)
製造例3で得た六面体構造ポリシロキサン変性体5.00gに、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(Gelest社製、SID4609.0、重量平均分子量385、Vi価数5.20mol/kg)2.24g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レダウコーニング製、SH6040)0.36g、1−エチニル−1−シクロヘキサノールを0.53μl、マレイン酸ジメチルを0.54μl、を加え、さらにヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジルR812)0.36gを加え、良く混合することによりポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られた組成物を型枠およびLEDパッケージに流し込み、上述の方法で各種試験用のサンプルを得た。
【0140】
(実施例2)
製造例4で得た六面体構造ポリシロキサン変性体5.00gに、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(Gelest社製、SID4609.0、重量平均分子量385、Vi価数5.20mol/kg)1.98g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レダウコーニング製、SH6040)0.35g、1−エチニル−1−シクロヘキサノールを0.54μl、マレイン酸ジメチルを0.56μl、を加え、さらにヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジルR812)0.35gを加え、良く混合することによりポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られた組成物を型枠およびLEDパッケージに流し込み、上述の方法で各種試験用のサンプルを得た。
【0141】
(実施例3)
製造例5で得た六面体構造ポリシロキサン変性体5.00gに、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(Gelest社製、SID4609.0、重量平均分子量385、Vi価数5.20mol/kg)1.70g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レダウコーニング製、SH6040)0.33g、1−エチニル−1−シクロヘキサノールを0.56μl、マレイン酸ジメチルを0.58μl、を加え、さらにヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジルR812)0.33gを加え、良く混合することによりポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られた組成物を型枠およびLEDパッケージに流し込み、上述の方法で各種試験用のサンプルを得た。
【0142】
(比較例1)
製造例2で得た六面体構造ポリシロキサン変性体5.00gに、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(Gelest社製、SID4609.0、重量平均分子量385、Vi価数5.20mol/kg)2.72g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レダウコーニング製、SH6040)0.39g、1−エチニル−1−シクロヘキサノールを0.50μl、マレイン酸ジメチルを0.51μl、を加え、さらにヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジルR812)0.39g良く混合することによりポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られた組成物を型枠およびLEDパッケージに流し込み、上述の方法で各種試験用のサンプルを得た。
【0143】
(比較例2)
製造例6で得た六面体構造ポリシロキサン変性体5.00gに、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン(Gelest社製、SID4609.0、重量平均分子量385、Vi価数5.20mol/kg)1.40g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レダウコーニング製、SH6040)0.32g、1−エチニル−1−シクロヘキサノールを0.58μl、マレイン酸ジメチルを0.59μl、を加え、さらにヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジルR812)0.32gを加え、良く混合することによりポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られた組成物を型枠およびLEDパッケージに流し込み、上述の方法で各種試験用のサンプルを得た。各種試験結果を表1に示す。
【0144】
【表1】

【0145】
表1に示されるように、本発明の特徴を有する実施例1〜3の硬化性組成物からなる封止層は、耐熱性、耐光性、耐冷熱衝撃性、ガスバリア性に優れ、またこれを封止層とした光学デバイスは長期信頼性に優れることが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)周波数10Hzで測定した損失正接の極大値が−10℃〜50℃の温度範囲に少なくとも1つあり、貯蔵弾性率が50℃において20MPa以下であり、
(2)200℃に24時間放置した前後において、波長400nmの光における透過率の維持率が95%以上であり、
(3)40℃、90%RHの環境下における透湿度が20g/m2/day以下である封止層を有することを特徴とする光学デバイス。
【請求項2】
封止層が、多面体構造ポリシロキサン(A)を含有する硬化性組成物を硬化して得られることを特徴とする請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
多面体構造ポリシロキサン(A)が、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)と、ヒドロシリル基を有する化合物(b)を反応させて得られることを特徴とする多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)であることを特徴とする、請求項2に記載の光学デバイス。
【請求項4】
多面体構造ポリシロキサン変性体(A1)が、
[XRSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基、Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【化1】

【化2】

(lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子である))を構成単位とすることを特徴とする請求項3に記載の光学デバイス。
【請求項5】
多面体構造ポリシロキサン(A)を含有する硬化性組成物が、硬化剤(B)を含有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の光学デバイス。
【請求項6】
多面体構造ポリシロキサン(A)を含有する硬化性組成物が、ヒドロシリル化触媒を含有することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の光学デバイス。
【請求項7】
多面体構造ポリシロキサン(A)を含有する硬化性組成物が、硬化遅延剤を含有することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の光学デバイス。
【請求項8】
多面体構造ポリシロキサン(A)を含有する硬化性組成物が、接着性付与剤を含有することを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の光学デバイス。


【公開番号】特開2012−4298(P2012−4298A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137279(P2010−137279)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】