説明

光学フィルター用の粘着性材料、粘着剤および粘着シート

【課題】金属メッシュに貼付したときにも光線透過率変化を抑制することができ、かつ、防錆剤の溶け残りによる異物発生および架橋反応の遅延を抑制することのできる光学フィルター用の粘着性材料、粘着剤および粘着シートを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とし、長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物、好ましくはN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンと、架橋剤と、溶剤としてのトルエンとを含有する光学フィルター用粘着性材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイパネル等に用いられる光学フィルター用の粘着性材料、粘着剤(粘着性材料を架橋させた材料)および粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)は、セルに封入されているネオンとキセノンとの混合ガスをプラズマ化することにより紫外線を発生させ、セル壁に塗工された蛍光体を励起させることにより発光する。しかし、このとき、必要な可視光以外に近赤外線、ネオン光、電磁波等が同時に発生する。近赤外線は、リモコン等に用いられるため、他の電気機器の誤作動を引き起こす。また、ネオン光は、オレンジ色を示すため、ディスプレイの色調を崩してしまう。さらに、電磁波は、人体に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、PDPにおいては、それら近赤外線、ネオン光、電磁波等が外部に漏れることを抑制するために、通常光学フィルターが用いられる。
【0003】
また、光学フィルターは、上記のようにセルから発生する近赤外線、ネオン光および電磁波を吸収する性能以外に、色調調整等に用いられる色素を外部の紫外線から守るために、紫外線吸収性能等も付与されている。
【0004】
従来の光学フィルターは、ガラスを支持体として、上記のような各種性能を有するフィルムを、粘着剤を介して積層する構成をとっていたが、近年は、光学フィルター構成の簡素化を目的として、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、ネオン光吸収剤、色調調整用色素等が粘着剤に添加された着色粘着剤層を、電磁波吸収として用いられる金属メッシュフィルム等のメッシュ面に貼付する構成がトレンドとなっている。
【0005】
着色粘着剤層は、色素、紫外線吸収剤等の各添加剤を溶剤に溶解させ、それを粘着剤に加えて混合した塗液を、塗布、乾燥することにより形成される。通常、粘着剤は単独では保持力が低く、形状を維持できないため、架橋剤を添加して粘着剤中の官能基と反応させることにより、保持力を向上させている。
【0006】
上記溶剤としては、各添加剤の溶解性を考慮して、極性の高い溶剤(メチルエチルケトン等)が用いられることが多い。着色粘着剤層を形成するときに、ドライヤーにて溶剤を蒸発させるが、微量に溶剤が着色粘着剤層中に残留する。そのため、極性の高い溶剤は、粘着剤および架橋剤の官能基と溶媒和を起こし、架橋反応(例:水酸基とイソシアネート基との反応)を遅らせる。
【0007】
これまで、着色粘着剤層を金属メッシュフィルムの金属メッシュ面に貼付すると、加速試験の1つである耐湿試験(試験条件:60℃・90%RH・250時間,構成:ガラス/着色粘着剤/金属メッシュフィルム)にて、金属メッシュと各添加剤(色素、紫外線吸収剤等)、金属メッシュと粘着剤の相互作用により、透過率が変化するおそれがあることが分かっている。そのため、透過率変化を抑制する方法として、防錆剤として1H−ベンゾトリアゾールを粘着剤に添加することが提案されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−15707号公報
【特許文献2】特開2009−73866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、常温で固体である1H−ベンゾトリアゾールは溶剤に対して溶解性が低く、特に粘着剤の重合や塗液の粘度調整に用いられるトルエンに対して極めて難溶であるため、溶け残った物が着色粘着剤層に含まれ異物となってしまうことがある。
【0010】
一方、1H−ベンゾトリアゾールに対して溶解性が高い高極性溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)は、1H−ベンゾトリアゾールを容易に溶解させることができるが、粘着剤の架橋反応の遅延効果があるため、架橋反応が終了するまでの時間が長くなり、その結果、在庫量の増加につながる。また、添加剤または架橋剤の種類によっては架橋反応が想定通り進まず、粘着剤の凝集力不足を引き起こすおそれがある。
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、金属メッシュに貼付したときにも光線透過率変化を抑制することができ、かつ、防錆剤の溶け残りによる異物発生および架橋反応の遅延を抑制することのできる光学フィルター用の粘着性材料、粘着剤および粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物を含有することを特徴とする光学フィルター用粘着性材料を提供する(発明1)。
【0013】
上記発明(発明1)によれば、長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物が防錆剤として作用することにより、得られる粘着剤層を金属メッシュに貼付しても、当該粘着剤層の光線透過率が殆ど変化しない。また、長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物はトルエンに易溶であることから、溶剤としてトルエンを使用することで、防錆剤の溶け残りによる異物発生および架橋反応の遅延を抑制することができる。
【0014】
上記発明(発明1)においては、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とすることが好ましい(発明2)。
【0015】
上記発明(発明1,2)においては、前記長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物が、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンであることが好ましい(発明3)。
【0016】
上記発明(発明1〜3)においては、さらに架橋剤を含有することが好ましい(発明4)。
【0017】
上記発明(発明1〜4)においては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物およびトリアジン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤をさらに含有することが好ましい(発明5)。
【0018】
上記発明(発明1〜5)においては、フタロシアニン系化合物、イモニウム系化合物、チオール錯体系化合物およびセシウム酸化タングステン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の近赤外線吸収剤をさらに含有することが好ましい(発明6)。
【0019】
上記発明(発明1〜6)においては、さらに溶剤としてトルエンを含有することが好ましい(発明7)。
【0020】
第2に本発明は、前記光学フィルター用粘着性材料(発明1〜7)を架橋してなる光学フィルター用粘着剤を提供する(発明8)。
【0021】
上記発明(発明8)においては、23℃の貯蔵弾性率が0.05〜0.25MPaであることが好ましい(発明9)。
【0022】
第3に本発明は、基材と、粘着剤層とを備えた光学フィルター用粘着シートであって、前記粘着剤層は、前記光学フィルター用粘着剤(発明8,9)からなることを特徴とする光学フィルター用粘着シートを提供する(発明10)。
【0023】
上記発明(発明10)において、前記基材は、光学部材であることが好ましい(発明11)。
【0024】
第4に本発明は、2枚の剥離シートと、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層とを備えた光学フィルター用粘着シートであって、前記粘着剤層は、請求項8または9に記載の前記光学フィルター用粘着剤(発明8,9)からなることを特徴とする光学フィルター用粘着シートを提供する(発明12)。
【0025】
上記発明(発明10〜12)に係る光学フィルター用粘着シートは、プラズマディスプレイパネルに用いられることが好ましい(発明13)。
【発明の効果】
【0026】
本発明の光学フィルター用の粘着性材料、粘着剤および粘着シートによれば、防錆剤として長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物を用いることにより、粘着剤層を金属メッシュに貼付しても当該粘着剤層の光線透過率が殆ど変化しない。また、長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物はトルエンに易溶であることから、溶剤としてトルエンを使用することで、防錆剤の溶け残りによる異物発生および架橋反応の遅延を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光学フィルター用粘着シートの断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る光学フィルター用粘着シートの断面図である。
【図3】光学フィルターの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔光学フィルター用粘着性材料〕
本実施形態に係る光学フィルター用粘着性材料(以下「光学フィルター用」を省略する場合がある。)は、主成分としての粘着成分と、長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物とを含有する。
【0029】
粘着成分としては、特に限定されるものではなく、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ポリウレタン系、ポリエステル系等の粘着剤を用いることができるが、中でもアクリル系粘着剤が好ましい。
【0030】
アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を挙げることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0031】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、好ましくは、各種架橋方法によって架橋が可能な架橋点を有するものが用いられる。このような架橋点を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては特に制限はなく、従来粘着剤の樹脂成分として慣用されている(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。
【0032】
このような架橋点を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に架橋性官能基を有する単量体と、所望により用いられる他の単量体との共重合体を好ましく挙げることができる。ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
一方、分子内に架橋性官能基を有する単量体は、官能基として水酸基、アミノ基、アミド基の少なくとも1種を含むことが好ましく、具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキルなどが挙げられる。これらの単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
なお、分子内に架橋性官能基としてカルボキシル基を有する単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸は、金属メッシュを錆び易くし、また、粘着性材料中に含まれる色素の色を変化させるおそれがあるため、使用しない方が好ましい。
【0035】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。また、分子量としては、重量平均分子量で40万以上であるものが好ましく用いられる。この重量平均分子量が40万以上であると、被着体との密着性や、高熱・湿熱条件下での接着耐久性が十分となり、浮きや剥がれなどが生じない。密着性及び接着耐久性などを考慮すると、この重量平均分子量は、50万以上のものが好ましく、特に50万〜200万のものが好ましい。
【0036】
さらに、この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体においては、分子内に架橋性官能基を有する単量体単位の含有量は、0.01〜15質量%の範囲が好ましい。この含有量が0.01質量%以上であると、後述する架橋剤との反応により、架橋が十分となり、耐久性が良好となる。一方、15質量%以下であると、架橋性が高くなりすぎることによる、被着体、例えば金属メッシュ等への貼合適性の低下がなく好ましい。耐久性と被着体への貼合適性などを考慮すると、この架橋性官能基を有する単量体単位のより好ましい含有量は0.1〜10質量%であり、特に1.0〜5.0質量%の範囲が好ましい。上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
本実施形態において、長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物は、防錆剤として作用する。これにより、本実施形態に係る粘着性材料から得られる粘着剤(粘着剤層)を金属メッシュに貼付したときに、光線透過率変化を効果的に抑制することができる。また、長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物は、無極性溶剤であるトルエンに対して易溶である。したがって、本実施形態に係る粘着性材料では溶剤としてトルエンを使用することができ、得られる粘着剤層中に防錆剤が溶け残ること、それにより異物が発生することを抑制することができる。さらに、溶剤としてトルエンを使用することで、粘着性材料の架橋反応が速やかに進行するとともに、得られる粘着剤の凝集力が十分なものとなる。
【0038】
ここで、長鎖アルキル基とは、炭素数が4〜18の直鎖または分岐鎖のアルキル鎖をいう。
長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物としては、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンまたはN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−1H−メチルベンゾトリアゾール−1−メチルアミンが好ましい。これらの化合物は、カルボキシル基や水酸基等のイソシアネート基と反応する可能性がある官能基を含まない。防錆剤に官能基が存在すると、粘着成分((メタ)アクリル酸エステル系共重合体)と架橋剤との架橋反応が崩れ、粘着物性が変化するおそれがある。
【0039】
上記長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物の中でも、特に、淡黄色を示し、臭いの少ないN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンが好ましい。防錆剤に濃い色がついていると、フィルターの色調を崩すおそれがある。なお、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−1H−メチルベンゾトリアゾール−1−メチルアミンは、黄色を示し、また臭いが若干強く、さらにメチル基の位置によっては防錆性能が十分でない場合がある。
【0040】
本実施形態に係る粘着性材料(不揮発分)中における長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物の含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、特に0.3〜2質量%であることが好ましい。長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物がこの範囲内にあることより、上記防錆剤としての効果が良好に発揮され、かつ粘着性も阻害されない。
【0041】
本実施形態に係る粘着性材料は、好ましくは架橋剤をさらに含有する。この架橋剤は、粘着成分として架橋可能なもの、例えば架橋点を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を使用したときに、当該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を効果的に架橋し、得られる粘着剤の保持力を向上させ、もって粘着剤層としての形状が良好に維持されることとなる。
【0042】
架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、金属キレート化合物、ポリエポキシ化合物、アジリジン系化合物等のポリイミン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、金属アルコキシド、金属塩等が挙げられるが、中でも多官能架橋剤であるポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0043】
ここで、ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。
【0044】
上記架橋剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、架橋対象となる粘着成分(架橋点を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体)100質量部に対して、通常0.01〜20質量部、好ましくは、0.1〜10質量部である。
【0045】
本実施形態に係る粘着性材料は、好ましくは紫外線吸収剤をさらに含有する。紫外線吸収剤を含有することで、色調調整等に用いられる色素(当該粘着性材料に含有されてもよいし、他の層に含有されてもよい)を、外部の紫外線から保護することができる。
【0046】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
粘着性材料(不揮発分)中における紫外線吸収剤の含有量は、1〜20質量%であることが好ましく、特に2〜10質量%であることが好ましい。
【0048】
本実施形態に係る粘着性材料は、好ましくは近赤外線吸収剤をさらに含有する。近赤外線吸収剤を含有することで、プラズマディスプレイパネル等から近赤外線が漏れることを防ぎ、他の電気機器の誤作動を防止することができる。
【0049】
近赤外線吸収剤としては、例えば、フタロシアニン系化合物、イモニウム系化合物、チオール錯体系化合物、セシウム酸化タングステン系化合物等が挙げられる。これらの近赤外線吸収剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
粘着性材料(不揮発分)中における近赤外線吸収剤の含有量は、0.01〜5質量%であることが好ましく、特に0.1〜2質量%であることが好ましい。
【0051】
本実施形態に係る粘着性材料は、上記成分の他にも、通常の光学フィルター用粘着性材料に用いられる成分、例えば、ネオン光吸収剤、色調調整用色素、シランカップリング剤、酸化防止剤等を含有していてもよい。
【0052】
本実施形態に係る粘着性材料は、溶剤として、トルエンを含有することが好ましい。前述した通り、長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物はトルエンに対して易溶であるため、溶剤としてトルエンを含有すれば、得られる粘着剤層中に防錆剤が溶け残ることにより異物が発生することを抑制することができる。また、溶剤としてトルエンを使用すれば、粘着性材料の架橋反応が速やかに進行するとともに、得られる粘着剤の凝集力が十分なものとなる。
【0053】
本実施形態に係る粘着性材料が溶剤としてトルエンを含有する場合、不揮発分濃度は10〜50質量%であることが好ましく、特に20〜40質量%であることが好ましい。不揮発分濃度がこの範囲にあることで、当該粘着性材料をそのまま塗布溶液として使用し、各種塗布方法により塗布することができる。
【0054】
〔光学フィルター用粘着剤〕
本実施形態に係る光学フィルター用粘着剤は、上記光学フィルター用粘着性材料を架橋してなるものである。上記光学フィルター用粘着性材料を架橋するには、通常は加熱処理を行う。
【0055】
加熱処理を行う場合、加熱温度は、60〜150℃であることが好ましく、特に80〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、30秒〜3分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。
【0056】
上記の加熱処理により、架橋可能な粘着成分、例えば架橋点を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が架橋し、粘着剤層としての形状が良好に維持されることとなる。このとき、上記粘着性材料の溶剤としてトルエンを使用することで、上記の架橋反応が速やかに進行するため、養生期間を短期間、例えば7日以内に抑えることができる。
【0057】
上記のようにして得られる粘着剤は、23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.05〜0.25MPaであることが好ましく、特に0.10〜0.15MPaであることが好ましい。この貯蔵弾性率(G’)が0.05MPa以上であれば、外部から衝撃を受けても粘着剤が変形し難く、打痕が付き難い。また、貯蔵弾性率(G’)が0.25MPa以下であれば、金属メッシュへの追従性が良好となり、気泡残りも防止することができる。なお、上記貯蔵弾性率(G’)は、後述するねじり剪断法により測定した値である。
【0058】
以上説明した粘着剤は、プラズマディスプレイパネル等に使用される光学フィルターに好ましく用いることができ、例えば、金属メッシュフィルム(金属メッシュを有する電磁波遮蔽フィルム)と、他のフィルム(例えばコントラスト向上フィルム)との接着に好適である。上記粘着剤からなる粘着剤層は、防錆剤として長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物を含有するため、金属メッシュと添加剤、金属メッシュと粘着剤の相互作用等による光線透過率の変化が抑制される。また、上記粘着性材料の溶剤としてトルエンを使用することで、粘着剤層中に長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物が溶け残ること、そしてそれが異物となることが抑制されている。
【0059】
〔光学フィルター用粘着シート〕
図1に示すように、第1の実施形態に係る光学フィルター用粘着シート1Aは、下から順に、剥離シート12と、剥離シート12の剥離面に積層された粘着剤層11と、粘着剤層11に積層された基材13とから構成される。
【0060】
また、図2に示すように、第2の実施形態に係る光学フィルター用粘着シート1Bは、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0061】
いずれの粘着シート1A,1Bにおいても、粘着剤層11は、前述した粘着性材料を架橋してなる粘着剤からなる。
【0062】
粘着剤層11の厚さは、粘着シート1A,1Bの使用目的に応じて適宜決定されるが、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲であり、例えば、金属メッシュに貼付される粘着剤層として使用する場合には、10〜50μm、特に20〜40μmであることが好ましい。
【0063】
基材13としては、特に制限は無く、通常の光学フィルター用粘着シートの基材として用いられているものは全て使用できる。例えば、所望の光学部材の他、ガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリウレタンアクリレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルム等のプラスチックフィルム;これらの2種以上の積層体などを挙げることができる。プラスチックフィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものでもよい。
【0064】
光学部材としては、例えば、金属メッシュを有する電磁波遮蔽フィルム、コントラスト向上フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム等が挙げられる。
【0065】
基材13の厚さは、その種類によっても異なるが、例えば光学部材の場合には、通常10μm〜500μmであり、好ましくは50μm〜300μmである。
【0066】
剥離シート12,12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0067】
上記剥離シートの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
【0068】
剥離シート12,12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0069】
上記粘着シート1Aを製造するには、剥離シート12の剥離面に、溶剤としてのトルエンで希釈した上記粘着性材料を含む塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に基材13を積層する。なお、加熱処理の条件については、前述した通りである。
【0070】
また、上記粘着シート1Bを製造するには、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、溶剤としてのトルエンで希釈した上記粘着性材料を含む塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。なお、塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
【0071】
上記塗布溶液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0072】
ここで、例えば、図3に示すような、金属メッシュ21を有する電磁波遮蔽フィルム2と、コントラスト向上フィルム3とから構成される、プラズマディスプレイパネル用の光学フィルター4を製造する方法について説明する。
【0073】
粘着シート1Aを使用する場合、粘着シート1Aの基材13としてコントラスト向上フィルム3を使用し、当該粘着シート1Aの剥離シート12を剥離して、露出した粘着剤層11と電磁波遮蔽フィルム2とを貼合するか、粘着シート1Aの基材13として電磁波遮蔽フィルム2を使用し、当該粘着シート1Aの剥離シート12を剥離して、露出した粘着剤層11とコントラスト向上フィルム3とを貼合する。
【0074】
また、粘着シート1Bを使用する場合、粘着シート1Bの一方の剥離シート12a(または12b)を剥離して、露出した粘着剤層11とコントラスト向上フィルム3とを貼合し、次いで他方の剥離シート12b(または12a)を剥離して、露出した粘着剤層11と電磁波遮蔽フィルム2とを貼合するか、粘着シート1Bの一方の剥離シート12a(または12b)を剥離して、露出した粘着剤層11と電磁波遮蔽フィルム2とを貼合し、次いで他方の剥離シート12b(または12a)を剥離して、露出した粘着剤層11とコントラスト向上フィルム3とを貼合する。
【0075】
以上の粘着シート1A,1Bによれば、粘着剤層11に含まれる長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物により、粘着剤層11が金属メッシュ21と隣接していても光線透過率の変化が抑制される。また、この粘着剤層11中においては、長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物の溶け残りは抑制されている。
【0076】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0077】
例えば、粘着シート1Aの剥離シート12は省略されてもよいし、粘着シート1Bにおける剥離シート12a,12bのいずれか一方は省略されてもよい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。なお、各成分の配合量は、全て固形分換算値で示す。
【0079】
〔実施例1〕
アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸メチル(MA)およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)をBA/MA/HEA=67/30/3の質量比で共重合して得られたアクリル酸エステル系共重合体(重量平均分子量:60万)100質量部と、架橋剤(日本ポリウレタン社製,ポリイソシアネート系架橋剤,コロネートL)3質量部と、長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物(防錆剤)としてのN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン(城北化学社製)0.5質量部と、近赤外線吸収色素(APIコーポレーション社製,APE−004)1.7質量部と、紫外線吸収剤(シプロ化成社製,SEESORB 107)6質量部とを混合し、次いで溶剤としてのトルエンにて希釈して、不揮発分濃度25質量%の粘着性材料を作製した。
【0080】
上記粘着性材料を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン樹脂で剥離処理した剥離フィルム(リンテック社製,SP−PET38103−1,厚さ:38μm)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmとなるようにナイフコーターを用いて塗布し、90℃で60秒間乾燥し、粘着剤層を形成した。
【0081】
次いで、上記粘着剤層を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン樹脂で剥離処理した剥離フィルム(リンテック社製,SP−PET38103−1C)の剥離処理面に貼合し、これをサンプル(1)(剥離フィルム/粘着剤/剥離フィルム)とした。また、上記粘着剤層を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績社製,PET100A4300)に貼合し、これをサンプル(2)(PETフィルム/剥離フィルム/粘着剤)とした。
【0082】
〔実施例2〕
紫外線吸収剤を未添加にしたこと以外は、実施例1と同じ方法にてサンプルを作製した。
【0083】
〔実施例3〕
紫外線吸収剤および近赤外線吸収色素を未添加にしたこと以外は、実施例1と同じ方法にてサンプルを作製した。
【0084】
〔比較例1〕
防錆剤および紫外線吸収剤を未添加にしたこと以外は、実施例1と同じ方法にてサンプルを作製した。
【0085】
〔比較例2〕
防錆剤を1H−ベンゾトリアゾールに変更し、紫外線吸収剤を未添加にしたこと以外は、実施例1と同じ方法にてサンプルを作製した。
【0086】
〔比較例3〕
防錆剤を1H−ベンゾトリアゾールに変更し、溶剤をメチルエチルケトンに変更した以外は、実施例1と同じ方法にてサンプルを作製した。
【0087】
〔比較例4〕
アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)をアクリル酸(AA)に変更し、近赤外線吸収色素、UV吸収剤および防錆剤を未添加にしたこと以外は、実施例1と同じ方法にてサンプルを作製した。
【0088】
〔試験例1〕(貯蔵弾性率測定)
実施例または比較例で得られた粘着剤層を積層し、直径8mm×厚さ3mmの円柱状の試験片を作製し、ねじり剪断法により下記の条件で貯蔵弾性率(G’)を測定した。結果を表1に示す。
・測定装置:レオメトリック社製動的粘弾性測定装置「DYNAMIC ANALYZER RDAII」
・周波数:1Hz
・温度:23℃
【0089】
〔試験例2〕(溶解性評価)
実施例または比較例で使用した各防錆剤0.1gを10gのトルエンに添加した後、超音波洗浄機(東京硝子機械社製,FU−926)で5分超音波攪拌し、目視にて未溶解分または相溶状態を確認した。未溶解分または非相溶が確認できなかった場合は○、未溶解分または非相溶が確認できた場合は×とした。結果を表1に示す。
【0090】
〔試験例3〕(光線透過率変化の測定)
最初に、電磁波遮蔽フィルムを以下のようにして作製した。
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製,PET100A4100)と、片面を黒化処理した厚さ10μmの銅箔(古河サーキットフォイル社製,BW−S)とを準備した。ポリウレタン樹脂からなる接着剤(竹田薬品工業社製,タケラックA310/タケネートA10/酢酸エチル=12/1/21,質量比)を介して、上記銅箔の黒化処理面とは反対側の表面と、上記ポリエチレンテレフタレートフィルムとを貼合し、PETフィルム/接着剤/銅箔の構成の積層体とした。
【0091】
得られた積層体の銅箔側にカゼインを塗布し、乾燥させて感光性樹脂層を形成した。その後、パターンが形成されたマスクを用いて紫外線の密着露光を行い、露光後に水で現像した。次いで、硬化処理を施した後、100℃の温度でベーキングを行い、レジストパターンを形成した。マスクとしては、ピッチが300μm、線幅が10μmのパターンを有するものを使用した。
【0092】
レジストパターンが形成された上記の積層体に、レジストパターン側より、塩化第2鉄溶液(ボーメ度:42,温度:30℃)を噴射してエッチングを行った。その後、水洗いを行ってから、アルカリ溶液を用いてレジスト剥離を行った。剥離後に洗浄および乾燥を行って、PETフィルム/接着剤/金属メッシュの構成からなる電磁波遮蔽フィルムを得た。
【0093】
実施例または比較例で得られたサンプル(1)の一方の剥離フィルム(SP−PET38103−1)を剥がして、露出した粘着剤層を電磁波遮蔽フィルムの金属メッシュ側に貼合した。また、他方の剥離フィルムを剥がして、露出した粘着剤層をソーダライムガラス(コーニング社製,イーグルXG)に貼付し、これをサンプル(3)(電磁波遮蔽フィルム/粘着剤/ソーダライムガラス)とした。
【0094】
得られたサンプル(3)を、60℃・0.5MPaの条件下に20分置き、標準環境下(23℃・50%RH)で1時間放置した後、分光光度計(SHIMADZU社製,UV−VIS−NIR SPECTROPHOTOMETER UV−3600)で300〜1200nmの領域の光線透過率を測定した。その後、耐湿条件(60℃・90%RH)に上記サンプル(3)を投入し、500時間後に取り出し、標準環境下(23℃・50%RH)で1時間放置した後、再度光線透過率測定を行った。
【0095】
各波長(450,550,650,900nm)において、耐湿条件に投入前の光線透過率と投入後の光線透過率との差(光線透過率差)を求めた。その光線透過率差の絶対値が5%未満であれば○、5%以上であれば×と判断した。結果を表1に示す。
光線透過率差=耐湿投入前光線透過率−耐湿投入後光線透過率
【0096】
〔試験例4〕(養生評価)
実施例または比較例で得られた粘着剤層形成直後のサンプル(2)を、標準環境下(23℃・50%)に所定期間放置した。放置1日、3日、5日、7日、9日、11日後の各段階で、当該サンプル(2)を25mm×250mmに切り出した。次いで、剥離フィルムを剥離して、露出した粘着剤層をソーダライムガラス(コーニング社製のイーグルXG)に2kgのゴムローラを使用して貼付し、これをサンプル(4)(PETフィルム/粘着剤/ソーダライムガラス)とした。
【0097】
サンプル(4)を標準環境下(23℃・50%)に1日放置し、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、JIS Z 0237に準拠して、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。そして、その粘着力が放置により変化しなくなるまでの期間(養生期間)を観測した。その結果、養生期間が7日以内であれば○、9日以上であれば×と判断した。結果を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
表1から分かるように、実施例のサンプルは、溶解性に優れ、養生期間が短かく、光線透過率変化が殆どなかった。これに対し、比較例1および4のサンプルは、防錆剤を含有しないため、光線透過率変化が大きかった。また、比較例2のサンプルは、1H−ベンゾトリアゾールとトルエンとの組み合わせを使用したため、溶解性が悪かった。比較例3のサンプルは、溶剤としてメチルエチルケトンを使用したため、養生期間が長かった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の粘着性材料および粘着剤は、光学フィルター、特にプラズマディスプレイパネルの光学フィルターにおける金属メッシュとの接着に好適であり、また、本発明の粘着シートは、光学フィルター、特にプラズマディスプレイパネルにおける金属メッシュを有する光学フィルター用の粘着シートとして好適である。
【符号の説明】
【0101】
1A,1B…粘着シート
11…粘着層
12,12a,12b…剥離シート
13…基材
2…電磁波遮蔽フィルム
21…金属メッシュ
3…コントラスト向上フィルム
4…光学フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物を含有することを特徴とする光学フィルター用粘着性材料。
【請求項2】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルター用粘着性材料。
【請求項3】
前記長鎖アルキル基を有するベンゾトリアゾール系化合物が、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルター用粘着性材料。
【請求項4】
さらに架橋剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルター用粘着性材料。
【請求項5】
ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物およびトリアジン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルター用粘着性材料。
【請求項6】
フタロシアニン系化合物、イモニウム系化合物、チオール錯体系化合物およびセシウム酸化タングステン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の近赤外線吸収剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルター用粘着性材料。
【請求項7】
さらに溶剤としてトルエンを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルター用粘着性材料。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の光学フィルター用粘着性材料を架橋してなる光学フィルター用粘着剤。
【請求項9】
23℃の貯蔵弾性率が0.05〜0.25MPaであることを特徴とする請求項8に記載の光学フィルター用粘着剤。
【請求項10】
基材と、粘着剤層とを備えた光学フィルター用粘着シートであって、
前記粘着剤層は、請求項8または9に記載の光学フィルター用粘着剤からなる
ことを特徴とする光学フィルター用粘着シート。
【請求項11】
前記基材は、光学部材であることを特徴とする請求項10に記載の光学フィルター用粘着シート。
【請求項12】
2枚の剥離シートと、
前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層と
を備えた光学フィルター用粘着シートであって、
前記粘着剤層は、請求項8または9に記載の光学フィルター用粘着剤からなる
ことを特徴とする光学フィルター用粘着シート。
【請求項13】
プラズマディスプレイパネルに用いられる請求項10〜12のいずれかに記載の光学フィルター用粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−168684(P2011−168684A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33205(P2010−33205)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】