説明

光学フィルム

【課題】位相差変化を抑えて視認性の低下を防ぐ。
【解決手段】面内位相差値Re、厚み方向位相差値Rthがともに10nm以下である透明高分子フィルムと複屈折層とを有する光学フィルムにおいて、前記複屈折層の残存溶媒量が2.5mg/g以下である光学フィルム。
Re=(nx−ny)×d
Rth=(nx−nz)×d
nx、ny、nzは透明高分子フィルムのX軸、Y軸、Z軸方向の屈折率を表し、dは透明高分子フィルムの厚みを表す。X軸は面内の最大の屈折率を示す方向であり、Y軸は面内でX軸と直交している。Z軸はX軸及びY軸に垂直な厚み方向を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明高分子フィルムと複屈折層とを有する光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は、液晶分子の電気光学特性を利用して、文字や画像を表示する素子であり、携帯電話やノートパソコン、液晶テレビ等に広く普及している。LCDには、通常、液晶セルの両側に偏光板が配置された液晶パネルが用いられており、例えばノーマリーブラック方式では、電圧無印加時に黒表示を得ることができる(例えば、特許文献1参照)。近年、LCDは、高精細化が進み、用途も多岐にわたっている。それに伴い、LCDには、文字や画像をより鮮明に描くことのできる高いコントラスト比が求められている。高いコントラスト比のノーマリーブラックモード方式LCDを実現するために、ポリイミド等の非液晶材料を透明高分子フィルムに塗工して、複屈折層を形成して光学補償を行う技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3648240号公報
【特許文献2】特開2004−46065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の光学補償を行ったLCDにおいては、実装後に例えばバックライトの熱で複屈折層の位相差が変化し、経時的に視認性が低下するという問題があった。そこで本発明は位相差変化を抑えて視認性の低下を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、光学フィルムを実装したときに、バックライトに対向する複屈折層の残存溶媒がバックライトからの熱の影響を受けて揮発する際に分子鎖が動き、複屈折層の位相差が変化するとの知見を得た。また透明高分子フィルムも同様に位相差が変化するとの知見を得た。
【0005】
そして上記知見に基づき、本発明の光学フィルムは、面内位相差値Re、厚み方向位相差値Rthがともに10nm以下である透明高分子フィルムと複屈折層とを有する光学フィルムにおいて、前記複屈折層の残存溶媒量が2.5mg/g以下とした。この構成によれば、実用上問題のない位相差変化率の上限を3%程度に想定した場合に、通常、5mg/g程度の複屈折層の残存溶媒量を2.5mg/gに減らしておくことで、残存溶媒が揮発した場合でも、位相差変化率を略3%程度に抑えることができ、視認性の低下を防ぐことができる。
【0006】
本発明において、前記複屈折層が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドから選択される少なくとも1つの非液晶材料から形成されることが好ましい。
【0007】
本発明において、前記複屈折層の厚みが、0.5〜4μmの範囲であることが好ましい。複屈折層の厚みを薄くすることで残存溶媒量を少なくすることができることから、上限を4μmとした。また、余り薄くても、位相差が発現しないため、下限を0.5μmとした。
【0008】
本発明において、前記複屈折層の残存溶媒が、メチルイソブチルケトンであることが好ましい。メチルイソブチルケトンは基材に対して侵食しないため、揮発した場合に本発明の透明高分子フィルムを白濁させることがない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複屈折層の残存溶媒量を2.5mg/gに減らしておくことで、残存溶媒が揮発した場合でも、位相差変化率を低く抑えることができ、視認性の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(透明高分子フィルム)
透明高分子フィルムは、透明であり、色付が無いことが好ましい。透明高分子フィルムの面内位相差値Re(550)は、0nm以上10nm以下であり、好ましくは0nm以上6nm以下、さらに好ましくは0nm以上3nm以下である。透明高分子フィルムの厚み方向の位相差値Rth(550)は、0nm以上10nm以下であり、好ましくは0nm以上6nm以下、さらに好ましくは0nm以上3nm以下である。ここで透明高分子フィルムのRe、Rthが上記の範囲であればLCDに実装した際に位相差の低下が抑制され、その結果、視認性の低下が抑制できる。
【0011】
面内位相差値Re(550)は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルム面内の位相差値をいう。Re(550)は、波長550nmにおけるフィルムの遅相軸方向、進相軸方向の屈折率をそれぞれ、nx、nyとし、d(nm)をフィルムの厚みとしたとき、Re=(nx−ny)×dによって求められる。厚み方向位相差値Rth(550)は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差値をいう。Rth(550)は、波長550nmにおけるフィルムの遅相軸方向、厚み方向の屈折率をそれぞれ、nx、nzとし、d(nm)をフィルムの厚みとしたとき、Rth=(nx−nz)×dによって求められる。遅相軸方向の屈折率nxは面内の屈折率が最大になる方向の屈折率であり、進相軸方向の屈折率nyは面内で遅相軸に垂直な方向の屈折率である。
【0012】
透明高分子フィルムの厚みは、目的に応じて適宜設定され得る。具体的には、厚みは、20〜200μmであることが好ましく、より好ましくは30〜100μm、さらに好ましくは35〜95μmである。
【0013】
透明高分子フィルムとしては、代表的には、セルロース系フィルムが用いられる。例えば、トリアセチルセルロースフィルムの場合、厚さ40μmにおいて厚み方向位相差値(Rth)は40nm程度である。したがって、本発明における透明高分子フィルムとして、このような厚み方向位相差値(Rth)の大きいセルロース系フィルムを、そのまま採用すれば位相差変動が大きくなり、経時的に視認性が低下する虞がある。本発明では、厚み方向位相差値(Rth)の大きいセルロース系フィルムについて、厚み方向位相差値(Rth)を小さくするための適当な処理を施すことにより、本発明における透明高分子フィルムを好ましく得ることができる。
【0014】
厚み方向位相差値(Rth)を小さくするための上記処理としては、任意の適切な処理方法を採用できる。例えば、シクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤を塗布したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ステンレス等の基材を、一般的なセルロース系フィルムに貼り合わせ、加熱乾燥(例えば、80〜150℃程度で3〜10分程度)した後、基材フィルムを剥離する方法;ノルボルネン系樹脂、アクリル系樹脂等をシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解した溶液を、一般的なセルロース系フィルムに塗布し、加熱乾燥(例えば、80〜150℃程度で3〜10分程度)した後、塗布フィルムを剥離する方法などが挙げられる。
【0015】
セルロース系フィルムを構成する材料としては、好ましくは、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等の脂肪酸置換セルロース系ポリマーが挙げられる。一般的に用いられているトリアセチルセルロースでは、酢酸置換度が2.8程度であるが、好ましくは酢酸置換度を1.8〜2.7、より好ましくはプロピオン酸置換度を0.1〜1に制御することによって、厚み方向位相差値(Rth)を小さく制御することができる。
【0016】
上記脂肪酸置換セルロース系ポリマーに、ジブチルフタレート、p−トルエンスルホンアニリド、クエン酸アセチルトリエチル等の可塑剤を添加することにより、厚み方向位相差値(Rth)を小さく制御することができる。可塑剤の添加量は、脂肪酸置換セルロース系ポリマー100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
【0017】
上述したような厚み方向位相差値(Rth)を小さく制御するための技術は、適宜組み合わせて用いてもよい。また、厚み方向位相差値(Rth)が小さいセルロース系フィルムとしては富士フイルム社製商品名「ZRF80S」が好ましく用いられる。
【0018】
上記のような光学特性(面内位相差値Re(550)、厚み方向の位相差値Rth(550))を満足し得る別の好ましい具体例として、アクリル樹脂フィルムも挙げられる。アクリル樹脂フィルムとして好ましくは、特開2005−314534号公報に記載の、下記構造式で表されるグルタル酸無水物単位を含有するアクリル樹脂(A)を主成分として含むアクリル樹脂フィルムである。下記構造式で表されるグルタル酸無水物単位を含有することにより、耐熱性が向上し得る。下記構造式中、R、Rは、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0019】
【化2】

【0020】
上記アクリル樹脂(A)中、上記構造式で表されるグルタル酸無水物単位の含有割合は、好ましくは20〜40重量%、より好ましくは25〜35重量%である。
【0021】
上記アクリル樹脂(A)は、上記構造式で表されるグルタル酸無水物単位の他に、任意の適切なモノマー単位を1種または2種以上含んでいても良い。このようなモノマー単位として、好ましくは、ビニルカルボン酸アルキルエステル単位が挙げられる。上記アクリル樹脂(A)中、ビニルカルボン酸アルキルエステル単位の含有割合は、好ましくは60〜80重量%、より好ましくは65〜75重量%である。
【0022】
上記ビニルカルボン酸アルキルエステル単位としては、例えば、下記一般式で表される単位が挙げられる。下記一般式中、Rは水素原子または炭素数1〜5の脂肪族もしくは脂環式炭化水素、Rは炭素数1〜5の脂肪族炭化水素を表す。
【0023】
【化3】

【0024】
上記アクリル樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは80000〜150000である。
【0025】
上記アクリル樹脂フィルム中の上記アクリル樹脂(A)の含有割合は、好ましくは60〜90重量%である。
【0026】
上記アクリル樹脂フィルム中には、上記アクリル樹脂(A)の他に、任意の適切な成分が1種または2種以上含まれていても良い。このような成分としては、本発明の目的を損なわない範囲で任意の適切な成分を採用し得る。例えば、上記アクリル樹脂(A)以外の樹脂、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。
【0027】
(複屈折層)
透明高分子フィルム上に複屈折層を形成する方法の一つは、面内において一方向に収縮性を示す透明高分子フィルム上に、複屈折層の形成材料を塗工して塗工膜を形成し、透明高分子フィルムの収縮に伴い塗工膜を収縮させる方法である。収縮した塗工膜は複屈折層となって、透明高分子フィルム上に、複屈折層が直接固定化された本発明の光学フィルムが得られる。また、本発明においては、透明高分子フィルムと複屈折層の間に密着層等の別の層を介在させてもよい。
【0028】
透明高分子フィルム上に複屈折層の形成材料を塗工する方法としては、特に限定されないが、例えば、非液晶性ポリマーを加熱溶融して塗工する方法や、非液晶ポリマーを溶媒に溶解させたポリマー溶液を塗工する方法等が挙げられる。その中でも、作業性に優れることから、前記ポリマー溶液を塗工する方法が好ましい。
【0029】
ポリマー溶液の溶媒としては、非液晶性ポリマー等の形成材料を溶解できれば特に制限されず、形成材料の種類に応じて適宜決定できるが、基材に対して侵食しないケトン系溶媒、特に、メチルイソブチルケトンであれば揮発した場合に、透明高分子フィルムを白濁させることがない点で好ましい。
【0030】
ポリマー溶液の塗工方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等があげられる。また、塗工に際しては、必要に応じて、ポリマー層の重畳方式も採用できる。
【0031】
透明高分子フィルム上の塗工膜に加熱処理を施すことによって、透明高分子フィルムを収縮させる。透明高分子フィルムの収縮に伴って塗工膜が収縮し、複屈折層が形成される。この場合、複屈折層はnx>ny>nzの二軸性を有する。加熱処理において、加熱温度は80℃〜140℃が好ましく、より好ましくは90℃〜130℃であり、更に好ましくは100℃〜125℃である。加熱温度は3分〜120分が好ましく、より好ましくは5分〜90分であり、更に好ましくは10分〜50分である。
【0032】
加熱処理後、複屈折層に残存するポリマー溶液の溶媒は、バックライトからの熱で揮発する際に分子鎖が動き、複屈折層の位相差が変化し、経時的に視認性が低下する虞があるため、複屈折層の残存溶媒量は2.5mg/g以下が必要である。複屈折層の残存溶媒量はより好ましくは2.0以下であり、さらに好ましくは1.2以下である。
【0033】
透明高分子フィルム上に複屈折層を形成する他の方法は、透明高分子フィルム上に、複屈折層の形成材料を塗工して塗工膜を形成し、透明高分子フィルムと塗工膜とを共に延伸する方法である。延伸した塗工膜は複屈折層となって、透明高分子フィルム上に複屈折層が固定化された本発明の光学フィルムが得られる。複屈折層の形成材料の塗工は、上述のように行うことができる。この場合も複屈折層はnx>ny>nzの二軸性を有する。
【0034】
透明基板と塗工膜との積層体の延伸方法は、特に制限されないが、例えば、長手方向に一軸延伸する自由端縦延伸、フィルムの長手方向を固定した状態で、幅方向に一軸延伸する固定端横延伸、長手方向および幅方向の両方に延伸を行う逐次または同時二軸延伸等の方法が挙げられる。
【0035】
本発明においては透明高分子フィルム上に複屈折層の形成材料を塗工し、収縮または延伸させないで加熱硬化させることも可能である。この場合、複屈折層はnx=ny>nzの負の一軸性となる。
【0036】
複屈折層の厚みは、本発明の効果を奏する限りにおいて任意の適切な厚みが採用され得る。具体的には、厚みは、0.5〜4μmであることが好ましく、より好ましくは、0.5〜3μmさらに好ましくは0.5〜2.5μmである。
【0037】
複屈折層を構成する材料としては、例えば、非液晶性材料が挙げられる。非液晶性材料としては、例えば、耐熱性、耐薬品性、透明性に優れ、剛性にも富むことから、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーが好ましい。こられのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性、高延伸性であることから、ポリイミドが特に好ましい。
【0038】
上記ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは2,000〜500,000の範囲である。
【0039】
上記ポリイミドとしては、例えば、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミドが好ましい。具体的には、下記式で表されるポリイミド骨格を有するポリマーが使用できる。
【0040】
【化4】

【0041】
本発明において複屈折層の面内位相差値Reは、0〜80nmであることが好ましく、より好ましくは0〜70nmであり、更に好ましくは0〜60nmである。複屈折層の厚み方向位相差値Rthは、100〜300nmであることが好ましく、より好ましくは120〜250nmであり、更に好ましくは130〜200nmである。
【実施例】
【0042】
(複屈折層の残存溶媒量)
メチルイソブチルケトンを溶媒として用いてポリイミドを塗工したトリアセチルセルロースフィルム約5mgを試料カップに入れ、加熱炉型パイロライザー(DSP、フロンティア・ラボ社製)にて、250℃で10分間加熱して残存溶媒を揮発させた。揮発した成分を液体窒素に浸したカラム中にトラップし、加熱終了後にカラムを液体窒素から取り出してガスクロマトグラフ装置(GC,アジレント・テクノロジー社製)で測定した。メチルイソブチルケトンの純薬を酢酸エチルで希釈して一定濃度の試料を調整した。測定したGCピークと調整濃度から検量線を作成し、試料1g当たりのメチルイソブチルケトンの残存量を求めた。
【0043】
(分析装置)
GC:Agilent,HP6890
DSP:フロンティア・ラボ,PY2010D
<GC測定条件>
GCカラム:HP−1(0.25mmφ×30m,df=1.0μm)
カラム温度:40℃(3min)→10℃/min→150℃→20℃/min→300℃(10min)
カラム圧力:定流量モード(80kPa)
カラム流量:1ml/min(He)
注入口温度:250℃
注入方法:スプリット(200:1)
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
検出温度:250℃
【0044】
(複屈折層の膜厚)
塗工、乾燥後のトリアセチルセルロースフィルムからポリイミドを糊付きのガラスに転写させ、大塚電子社製瞬間マルチ測光システム商品名「MCPD−200」を用いて膜厚を測定した。
【0045】
(実施例1)
トリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム社製商品名「ZRF80S」(厚み80μm、面内位相差値Re=0nm、厚み方向位相差値Rth=0nm))に下記構造式のポリイミドをメチルイソブチルケトンを溶媒として用いて15重量%で調整した溶液を塗布厚み48.2μmで塗布した。その後、120℃で10分間、乾燥処理を施すことによりトリアセチルセルロースフィルムにポリイミド層を形成した。このときのポリイミド層の厚さは2.9μmであった。また。メチルイソブチルケトンの残存溶媒量は2.50mg/gであった。ポリイミド層はnx=ny>nzの負の一軸性を示し、Re=0nm、Rth=180nmであった。
【0046】
【化5】

【0047】
(実施例2)
120℃で15分間、乾燥処理を施す以外は実施例1と同様の条件でトリアセチルセルロースフィルムにポリイミド層を形成した。このときのメチルイソブチルケトンの残存溶媒量は2.00mg/gであった。ポリイミド層の光学特性は、実施例1と同様であった。
【0048】
(実施例3)
120℃で45分間、乾燥処理を施す以外は実施例1と同様の条件でトリアセチルセルロースフィルムにポリイミド層を形成した。このときのメチルイソブチルケトンの残存溶媒量は1.20mg/gであった。ポリイミド層の光学特性は、実施例1と同様であった。
【0049】
(実施例4)
120℃で90分間、乾燥処理を施す以外は実施例1と同様の条件でトリアセチルセルロースフィルムにポリイミド層を形成した。このときのメチルイソブチルケトンの残存溶媒量は1.00mg/gであった。ポリイミド層の光学特性は、実施例1と同様であった。
【0050】
(比較例1)
乾燥処理を施さず実施例1と同様の条件でトリアセチルセルロースフィルムにポリイミド層を形成した。このときのメチルイソブチルケトンの残存溶媒量は3.70mg/gであった。ポリイミド層の光学特性は、実施例1と同様であった。
【0051】
(比較例2)
トリアセチルセルロースフィルムとして富士フイルム社製商品名「TD80UL」(厚み80μm、面内位相差値Re=5nm、厚み方向位相差値Rth=50nm)を用いたこと以外は実施例1と同じ条件でトリアセチルセルロースフィルム上にポリイミド層を形成した。
【0052】
(評価)
転写したポリイミド試料を加熱(80℃)、加湿(60℃/90%)の環境に500時間置き、王子計測器社製商品名「KOBRA−WPR」を用いて位相差を測定し、その変化率を求めた。位相差の測定は3回行い、その平均値を使用した。
【0053】
表1は乾燥時間を変えて残存溶媒量を変化させたときの位相差変化率を示している。表1に示されるように、実施例1〜4において、残存溶媒量が2.5mg/g以下である場合に、位相差変化率が3%程度に抑えられることが分かる。一方、残存溶媒量が3.70mg/gであった比較例1は位相差変化率が3.39%であり実用レベルではなかった。また、Re、Rthの大きいトリアセチルセルロースフィルムを用いた比較例2も位相差変化率が10.00%であり、実用レベルではなかった。
【0054】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
面内位相差値Re、厚み方向位相差値Rthがともに10nm以下である透明高分子フィルムと複屈折層とを有する光学フィルムにおいて、前記複屈折層の残存溶媒量が2.5mg/g以下である光学フィルム。
Re=(nx−ny)×d
Rth=(nx−nz)×d
nx、ny、nzは透明高分子フィルムのX軸、Y軸、Z軸方向の屈折率を表し、dは透明高分子フィルムの厚みを表す。X軸は面内の最大の屈折率を示す方向であり、Y軸は面内でX軸と直交している。Z軸はX軸及びY軸に垂直な厚み方向を表す。
【請求項2】
前記複屈折層が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドから選択される少なくとも1つの非液晶材料から形成される請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記複屈折層の厚みが、0.5〜4μmの範囲である請求項1または2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記複屈折層が、下記式で表されるポリイミド骨格を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【化1】

【請求項5】
前記複屈折層の残存溶媒が、メチルイソブチルケトンである請求項1から4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の光学フィルムを含む液晶表示装置。

【公開番号】特開2009−75455(P2009−75455A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245859(P2007−245859)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】