説明

光学式エンコーダ

【課題】発光素子に過大な電流が流れることを防ぎ、角度変換精度を最大限維持したままエンコーダの長寿命化を図れる光学式エンコーダを提供する。
【解決手段】アナログ原信号を生成する光学回路と、発光素子の駆動電流を制御する光量制御部と、前記アナログ原信号を増幅しアナログ正弦波信号を生成する信号増幅部と、前記アナログ正弦波信号を2相ディジタル正弦波信号に変換するA/D変換部と、前記2相ディジタル正弦波信号を補正して変換用2相正弦波信号を生成する信号補正部と、前記アナログ原信号をディジタルパルス信号に変換するパルス変換部と、前記変換用2相正弦波信号の角度変換値と前記ディジタルパルス信号から位置情報を生成する位置情報生成部とを備え、前記光量制御部は前記発光素子の光量を一定量に維持し、且つ駆動電流が許容電流値を許容電流値で制限すると共に許容電流到達信号を出力し、前記許容電流到達信号で信号補正動作を切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学回路からのアナログ正弦波を内挿分割処理することで高分解能化を行う光学式エンコーダにおいて、発光素子の光量制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にFA(Factory Automation)のサーボモータ制御装置で使用される光学式エンコーダでは、赤外線LED(Light Emitting Diode)などの発光素子から出力される光をフォトダイオードなどの受光素子が受取る際に、モータ回転軸に取付けられたスリット板のスリットパターンと受光素子表面のマスクパターンとの相対位置により透過する光量を増減させ、受光素子の光電変換によって出力される2相アナログ信号をコンパレータによりパルス変換し、パルスをアップ/ダウンカウントすることで位置情報を検出している。
【0003】
この種のエンコーダに対し高分解能化を図る方法として、スリットとマスクのパターン間隔を微細化することでパルスカウント数を増加させる方法がある。しかしこの方法では、パターンの加工精度の限界や隣接するスリット同士での光の干渉等が発生し高分解能化は困難であるため、近年ではスリットとマスクのパターン形状を変更することで受光量を調整して2相アナログ信号を直交する正弦波状とし、直交する2相アナログ正弦波信号を用いた内挿分割処理でパルスカウント間を補間することで高分解能化を図る方法が主流となっている。
【0004】
通常内挿分割処理はアナログ正弦波信号をA/D変換(Analog to Digital Converter)し、ディジタル信号処理による逆三角関数を用いた角度変換で角度情報を生成しているが、精度の高い角度情報を得るためには正弦波信号を角度変換する前に補正処理を施し正規化しなければならない。特に振幅に対しては、A/D変換後のディジタル信号を処理して正規化を行う場合、変換前のアナログ正弦波の振幅が小さいとSN比(Signal to Noise ratio)が下がり信号のノイズ成分が増幅され、さらにA/D変換に対するダイナミックレンジが小さくなるため角度分解能が粗くなり角度変換の精度が大幅に悪化する。従って、アナログ正弦波の振幅は可能な限り大きく維持しておかなければならない。
【0005】
しかし光学回路に使用している発光素子は経年変化や温度特性の変化により光量が低下し、必要な振幅を維持することが出来なくなる。
【0006】
そのため、受光素子から出力されるA相信号およびB相信号の大きさよりA^2+B^2の値を計算し、これが一定の値に保たれるように発光素子に流れる電流を制御することにより、新たに受光素子を追加することなく、素子の経年変化および温度特性の影響による振幅の変化を補正する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−94217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら前記従来の構成では、劣化により低下した光量を補うために発光素子に流す電流(以下駆動電流)を増加させて光量を上昇させるように制御しているが、発光素子
は素子に流す電流と発光積算時間により劣化が進行(経年変化)し光量が低下するため、駆動電流を増加させると劣化の進行速度が急激に加速されるため、時間経過と共に過大な駆動電流が流れることとなり素子の寿命が著しく短くなる。一般に光学式エンコーダの製品寿命は発光素子の寿命が支配的なため、結果として製品寿命が短くなり信頼性を損なうという課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、経年変化による光量低下に対して駆動電流の制御とディジタル信号処理の補正処理とを組み合わせることにより角度情報の精度を維持したままで長寿命化を図り信頼性を損なうことのない光学式エンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために本発明の光学式エンコーダは、発光素子から出力される光をスリット板のスリットパターンと受光素子表面のマスクパターンとの相対位置で増減させて光電変換することにより生成される直交する2相アナログ原信号とアナログパルス原信号と光量フィードバック信号とを生成する光学回路と、前記光量フィードバック信号から前記発光素子に流す駆動電流を制御する光量制御部と、前記アナログ原信号を増幅し直交する2相アナログ正弦波信号を生成する信号増幅部と、前記アナログ正弦波信号をA/D変換により2相ディジタル正弦波信号を生成するA/D変換部と、前記2相ディジタル正弦波信号を信号処理により補正して変換用2相正弦波信号を生成する信号補正部と、前記アナログパルス原信号を2値化してディジタルパルス信号に変換するパルス変換部と前記変換用2相正弦波信号を逆三角関数して得られる角度変換値により前記ディジタルパルス信号を補間することで位置情報を生成する位置情報生成部と、前記位置情報をパラレル/シリアル変換して外部装置との通信を行う通信部とを備え、前記光量制御部は前記駆動電流を制御することで前記光量フィードバック信号を一定量に維持し、且つ駆動電流があらかじめ設定された許容電流値を超える場合は許容電流値で制限すると共に許容電流到達信号を出力し、前記信号補正部は前記許容電流到達信号により信号補正の動作を切替える構成としたものである。
【0011】
これによって駆動電流を許容電流値で制限することで発光素子に過大な電流が流れることを防ぎ、さらに信号補正処理の動作を切替えることによって角度変換精度を最大限維持したままエンコーダの長寿命化を図り、信頼性を高めることができる。
【0012】
また、本発明の光学式エンコーダは、前記信号補正部から出力される補正量信号と前記光量フィードバック信号と前記許容電流到達信号から発光素子の寿命情報を出力する寿命演算部をさらに備え、前記寿命演算部は寿命が近づいていることを示す警告情報と、警告情報出力後に前記補正量信号と前記光量フィードバック信号から演算した発光素子の余寿命とを寿命情報として出力する構成としたものである。
【0013】
これによって、エンコーダの長寿命化を図ることで寿命がきたエンコーダの交換回数を最小にしたうえで、光学式エンコーダの上位装置側で寿命情報を元にエンコーダの交換時期を判断してあらかじめ交換作業を計画することが可能となり、交換におけるデッドタイムを短縮あるいはなくすことができ、システム全体の信頼性を高めることができる。
【0014】
また、本発明の光学式エンコーダは、エンコーダ周囲温度を検出し温度情報を出力する温度検出部をさらに備え、前記寿命演算部は前記余寿命を温度情報で補正する構成としたものである。
【0015】
これによって、光学式エンコーダの上位装置側でより正確な寿命情報から交換時期を判断することができ、光学式エンコーダの寿命を最大限に生かして運用することができ、高
信頼性のシステムを構築することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光学式エンコーダは、駆動電流を許容電流値で制限することで発光素子に過大な電流が流れることを防ぎ、さらに信号補正処理の動作を切替えることによって角度変換精度を最大限維持したままエンコーダの長寿命化を図り、信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1における光学式エンコーダの構成図
【図2】本発明の実施の形態1における駆動電流と光量と許容電流到達信号波形を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の発明は発光素子から出力される光をスリット板のスリットパターンと受光素子表面のマスクパターンとの相対位置で増減させて光電変換することにより生成される直交する2相アナログ原信号とアナログパルス原信号と光量フィードバック信号とを生成する光学回路と、前記光量フィードバック信号から前記発光素子に流す駆動電流を制御する光量制御部と、前記アナログ原信号を増幅し直交する2相アナログ正弦波信号を生成する信号増幅部と、前記アナログ正弦波信号をA/D変換により2相ディジタル正弦波信号を生成するA/D変換部と、前記2相ディジタル正弦波信号を信号処理により補正して変換用2相正弦波信号を生成する信号補正部と、前記アナログパルス原信号を2値化してディジタルパルス信号に変換するパルス変換部と前記2相変換用正弦波信号を逆三角関数して得られる角度変換値により前記ディジタルパルス信号を補間することで位置情報を生成する位置情報生成部と、前記位置情報をパラレル/シリアル変換して外部装置との通信を行う通信部とを備え、前記光量制御部は前記駆動電流を制御することで前記光量フィードバック信号を一定量に維持し、且つ駆動電流があらかじめ設定された許容電流値を超える場合は許容電流値で制限すると共に許容電流到達信号を出力し、前記信号補正部は前記許容電流到達信号により信号補正の動作を切替える構成とすることにより、駆動電流を許容電流値で制限することで発光素子に過大な電流が流れることを防ぎ、さらに信号補正処理の動作を切替えることによって角度変換精度を最大限維持したままエンコーダの長寿命化を図り、信頼性を高めることができる。
【0019】
第2の発明は、特に、第1の発明の光学式エンコーダに前記信号補正部から出力される補正量信号と前記光量フィードバック信号と前記許容電流到達信号から発光素子の寿命情報を出力する寿命演算部をさらに備え、前記寿命演算部は寿命が近づいていることを示す警告情報と、警告情報出力後に前記補正量信号と前記光量フィードバック信号から演算した発光素子の余寿命とを寿命情報として出力する構成とすることにより、エンコーダの長寿命化を図ることで寿命がきたエンコーダの交換回数を最小にしたうえで、光学式エンコーダの上位装置側で寿命情報を元にエンコーダの交換時期を判断してあらかじめ交換作業を計画することが可能となり、交換におけるデッドタイムを短縮あるいはなくすことができ、システム全体の信頼性を高めることができる。
【0020】
第3の発明は、特に、第2の発明の光学式エンコーダにエンコーダ周囲温度を検出し温度情報を出力する温度検出部をさらに備え、前記寿命演算部は前記余寿命を温度情報で補正する構成とすることにより、光学式エンコーダの上位装置側でより正確な寿命情報から交換時期を判断することができ、光学式エンコーダの寿命を最大限に生かして運用することができ、高信頼性のシステムを構築することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における光学式エンコーダの構成図を示すものである。
【0023】
図1において光学式エンコーダは、発光素子1とスリット板2と受光素子3からなる光学回路100、光量制御部4、信号増幅部5、A/D変換部6、信号補整部7、パルス変換部8、位置情報生成部9、寿命演算部10、温度検出部11、通信部20から成り、通信部20はRS485などの双方向シリアル通信手段により図示しない上位装置と情報の送受信を行う。
【0024】
発光素子1は赤外線LEDや半導体レーザーなどの光源であり、一般にFAのサーボモータでは安価で信頼性の高い赤外線LEDが採用され、超高分解能の角度測定用エンコーダなどでは半導体レーザーが採用されている。スリット板2は、光を透過するガラスや樹脂材でできた板上に光を遮断する格子状のスリットパターンや全周に渡り透過するオープンパターンを設けたものや、ステンレス鋼の薄板に光を透過する部分を穴あけ加工したもの、あるいは透過部分に反射膜を形成したものが使用される。受光素子3はフォトダイオードやフォトトランジスタが用いられ、受光素子表面に格子状のマスクパターンや受光光量を検出する開口部などが配置されている。発光素子1からの発光光1Aがスリット板2を介して受光素子3で透過光または反射光2Aとなり受けるように配置し、スリット板はモータシャフトに接続されるエンコーダ回転軸に設置されている。エンコーダ回転軸が回転するとスリット板2のスリットパターンと受光素子3のマスクパターンの相対位置が変化するため、回転に合わせて受光素子から正弦波の直交する2相アナログ原信号3Bとアナログパルス信号3Cが出力され、スリット板のオープンパターンと受光素子の開口部からは受光素子が受取る光量を表す光量フィードバック信号3Aが出力される。ここでアナログパルス信号3Cは、インクリメンタルタイプのエンコーダでは2相パルスと原点パルスが出力され、アブソリュートタイプのエンコーダではMコードやグレイコードなどの絶対番地を判別可能なコードパルスが出力される。
【0025】
光量制御部4は受光素子3からの光量フィードバック信号3Aをもとに発光素子1の発光量を一定量に維持するように発光素子の駆動電流4Aをフィードバックコントロールし、駆動電流が許容電流値を超えた場合は許容電流値で制限をかけたうえで許容電流到達信号4Bの出力をLowからHighに切替るものであり、光量フィードバック信号をA/D変換してDSP(Digital Signal Processor)やマイクロコンピュータあるいはASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)に入力し、ソフトウェアやロジック回路のディジタルフィードバック処理で駆動電流の指令値を演算し、指令値をPWM(Pulse Width Modulation)やD/A変換(Digital to Analog Converter)で出力してトランジスタで駆動電流に変換する構成としてもよいし、オペアンプとトランジスタを使用したアナログ回路で構成してもよい。ここで許容電流値は、駆動電流が過大とならないような値であり、例えば発光素子の絶対最大定格電流値に対して余裕を持たせた値としてもよいし、絶対最大定格電流を超えない範囲で起動直後の電流値に一定の倍率を乗じた値としてもよい。また、許容電流値は図示しない不揮発性メモリなどに格納して任意に読み出しまたは書き換えができるようにしてもよいし、通信部を介して上位装置から値を設定してもよい。図4は光量制御部4の駆動電流4Aと発光素子1の光量の関係を示したものであり、従来構成の駆動電流201は時間が経過すると共に発光素子の劣化による光量低下を補うように駆動電流を増加させるため、従来構成の発光光量301に示すように許容電流値を超えた一定時間は光量を維持することはできるが、駆動電流が許容電流値を越えて過大な電流量となるため発光素子の劣化速度も大きくなり、急激に光
量が低下する。光量が低下すると2相アナログ原信号3Bの信号レベルも低下するため、光量が信号補正部7での補正処理が動作可能な限界量を示す補正可能限界レベル未満となる時間T1で補正不可能となり、位置情報9Aを生成できなくなる。それに対し本発明の駆動電流202は、駆動電流が許容電流値以上に上昇しないように制御するため、許容電流値に達した時間T0以降は発光素子の劣化により光量は低下するが、その低下速度は従来構成の場合よりも小さいため、結果として光量が補正可能限界レベル未満となる時間T2(>T1)まで位置情報を生成することができる。
【0026】
信号増幅部5はオペアンプやトランジスタ等のアナログ増幅回路で構成され、入力された受光素子3からの直交する2相アナログ原信号3Bを、後段のA/D変換部6の入力レンジに合わせた固定倍率で増幅し2相アナログ正弦波信号5Aを出力する。
【0027】
A/D変換部6は2相アナログ正弦波信号5Aを一定周期でサンプリングし、2相ディジタル正弦波信号6Aを生成する。一般にはDSPやASICに内蔵されているA/D変換器を使用するが、高サンプリング周波数が必要な場合はパラレル出力タイプの変換器を使用してもよいし、小型高分解能化が必要な場合はシリアル出力タイプの変換器を使用してもよい。また、変換したディジタル信号を複数回平均化あるいはディジタルフィルタ処理を施してノイズの影響を低減した信号を出力してもよい。
【0028】
信号補正部7はソフトウェアあるいはロジック回路で構成され、2相ディジタル正弦波信号6Aに含まれるオフセット、振幅、位相のずれや変動を補正処理して正規化された変換用2相正弦波信号7Aを出力する。角度変換精度を最大限維持できるように許容電流到達信号4Bに基づきそれぞれの補正の有効/無効を独立して切替え、例えば許容電流到達信号がLowのときは振幅補正を無効且つ他の補正を有効として補正処理をおこない、Highのときはすべての補正を有効にして補正処理をおこなう。あるいはすべての補正を許容電流到達信号がLowのときは無効とし、Highのときは有効としてもよい。なお、有効/無効の切替えではなく、LowとHighのそれぞれで異なる補正処理をおこなってもよい。
【0029】
パルス変換部8はコンパレータ等の比較増幅器により構成され、アナログパルス信号3Cを2値化してディジタルパルス信号8Aを出力する。一般にインクリメンタルタイプのエンコーダでは汎用の比較増幅器で構成され、アブソリュートタイプのエンコーダでは多数の比較増幅器が必要となるため専用のカスタムアナログICで構成される場合もある。
【0030】
位置情報生成部9はディジタルパルス信号8Aを計数し、変換用2相正弦波信号7Aから逆三角関数を用いた角度変換による内挿処理でパルス間を補間し、高分解能の位置情報9Aを生成するものである。ディジタルパルスの計数動作は、インクリメンタルタイプでは2相パルスをUP/DOWNカウントし、原点パルスが入力された場合はカウントをリセットする動作となり、アブソリュートタイプではコードパルスを論理回路やROMテーブルを用いた変換処理により絶対位置を算出する動作となる。内挿処理では2相正弦波を直接逆正接で角度変換してもよいし、2相正弦波それぞれを逆正弦/逆余弦で角度変換して重み付け関数による合成処理の結果を用いてもよい。
【0031】
以上の構成により、光学式エンコーダは駆動電流を許容電流値で制限することにより発光素子に過大な電流が流れることを防ぎ、さらに信号補正部7の補正処理動作を切替えることによって角度変換精度を最大限維持したまま位置情報が生成できる時間が長くなるため、エンコーダを長寿命化して信頼性を高めることができる。
【0032】
さらに信号補正部7は補正処理で検出する振幅、オフセット、位相の補正量信号7Bを出力し、寿命演算部10を備えた光学式エンコーダは、寿命演算部で光量フィードバック
信号3Aと許容電流到達信号4Bと補正量信号とから発光素子の寿命情報10Aを出力する。寿命情報は寿命が近づいていることを示す警告情報と発光素子の余寿命からなる。警告情報は、許容電流到達信号がHighとなったときに警告出力してもよいし、許容電流到達信号がHighとなってから光量フィードバック信号が一定比率以下となったときに警告出力してもよいし、許容電流到達信号がHighとなってから補正量信号がエンコーダ動作開始時の補正量から一定比率以上(あるいは以下)となったときに警告出力してもよい。発光素子の余寿命は、光量が補正可能限界レベル未満になるまでの残りの時間を光量フィードバック信号の減少量と経過時間の比率からを演算して出力してもよいし、エンコーダ動作開始直後の補正量信号を保持して現在の補正量信号との比率から演算して出力してもよい。
【0033】
以上の構成により、エンコーダの長寿命化によりエンコーダ交換回数は最小となり、さらに寿命演算部10を備えることで警告情報からエンコーダの交換部品の手配を事前に行うことが可能となり、発光素子の余寿命から交換時期を予測できるため交換作業を計画することが可能となり、エンコーダ交換におけるデッドタイムを短縮あるいはなくすことができシステム全体の信頼性を高めることができる。
【0034】
さらに温度検出部11を備える光学式エンコーダは、温度検出部を温度検出ICやサーミスタなどの温度検出用センサで構成し、エンコーダあるいは発光素子の周囲温度を測定し温度情報11Aとして出力する。寿命演算部10は温度情報からアレニウスの定理などを用いて寿命情報を補正演算して出力することができる。
【0035】
以上の構成により、温度検出部を備えることで寿命情報の正確性が増し、エンコーダ交換回数の最小化を図ることができ、信頼性をさらに高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明にかかる光学式エンコーダは、発光素子に過大な電流が流れることを防ぎ、角度変換精度を最大限維持したまま長寿命化を図ることが可能となるので、発光素子の光量を制御するレーザプリンタやスキャナ等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0037】
100 光学回路
1 発光素子
1A 発光光
2 スリット板
2A 透過光または反射光
3 受光素子
3A 光量フィードバック信号
3B 2相アナログ原信号
3C アナログパルス信号
4 光量制御部
4A 駆動電流
4B 許容電流到達信号
5 信号増幅部
5A 2相アナログ正弦波信号
6 A/D変換部
6A 2相ディジタル正弦波信号
7 信号補正部
7A 変換用2相正弦波信号
7B 信号補正量信号
8 パルス変換部
8A ディジタルパルス信号
9 位置情報生成部
9A 位置情報
10 寿命演算部
10A 寿命情報
11 温度検出部
11A 温度情報
20 通信部
20A 双方向通信信号
201 従来構成の駆動電流
202 本発明の駆動電流
301 従来構成の発光素子光量
302 本発明の発光素子光量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子から出力される光をスリット板のスリットパターンと受光素子表面のマスクパターンの相対位置で増減させて光電変換することにより生成される直交する2相アナログ原信号とアナログパルス原信号と光量フィードバック信号とを生成する光学回路と、前記光量フィードバック信号から前記発光素子に流す駆動電流を制御する光量制御部と、前記アナログ原信号を増幅し直交する2相アナログ正弦波信号を生成する信号増幅部と、前記アナログ正弦波信号をA/D変換により2相ディジタル正弦波信号を生成するA/D変換部と、前記2相ディジタル正弦波信号を信号処理により補正して変換用2相正弦波信号を生成する信号補正部と、前記アナログパルス原信号を2値化してディジタルパルス信号に変換するパルス変換部と前記変換用2相正弦波信号を逆三角関数して得られる角度変換値により前記ディジタルパルス信号を補間することで位置情報を生成する位置情報生成部と、前記位置情報をパラレル/シリアル変換して外部装置との通信を行う通信部とを備え、前記光量制御部は前記駆動電流を制御することで前記光量フィードバック信号を一定量に維持し、且つ駆動電流があらかじめ設定された許容電流値を超える場合は許容電流値で制限すると共に許容電流到達信号を出力し、前記信号補正部は前記許容電流到達信号により信号補正の動作を切替えることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
前記信号補正部から出力される補正量信号と前記光量フィードバック信号と前記許容電流到達信号から発光素子の寿命情報を出力する寿命演算部をさらに備え、前記寿命演算部は寿命が近づいていることを示す警告情報と、警告情報出力後に前記補正量信号と前記光量フィードバック信号から演算した発光素子の余寿命とを寿命情報として出力することを特徴とする請求項1の光学式エンコーダ。
【請求項3】
エンコーダ周囲温度を検出し温度情報を出力する温度検出部をさらに備え、前記寿命演算部は前記余寿命を温度情報で補正することを特徴とする請求項2の光学式エンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−68077(P2012−68077A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211779(P2010−211779)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】