説明

光学式ガス濃度検出器およびそれに用いられるマイクロ構造体の製造方法

【課題】平面を3次元的に加工する手法を提供し、この方法によってガス濃度検出器に用いる凹面ミラーを製造する。
【解決手段】Si基板110上にマスク200を形成する(図4(a))。このとき、マスク200を半径の異なる複数の同心円として形成すると共に、各同心円間の開口部が外径方向に向かうほど小さくなるようにマスク200を形成する。この後、Si基板110をドライエッチングし、マスク200の開口部の面積に応じた深さの溝を形成する(図4(b))。続いて、Si基板110が露出した部分を熱酸化し(図4(c))、フッ酸でSi基板110の表面に形成された熱酸化膜を除去する(図4(d))。そして、Si基板110を熱処理し(図4(e))、Si基板110の表面に金属を蒸着して反射膜300を形成する。こうして、ガス濃度検出器に用いられる凹面ミラーが完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式ガス濃度検出器およびそれに用いられるマイクロ構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガス分子は特定波長の光を吸収することが知られており、この性質を利用した様々なガス濃度検出装置が知られている。このような装置でガス濃度を測定する場合、ガス分子に吸収される光の強度は、計測する光の光路長とガス濃度とによって決まるため、ガス濃度が極端に低い場合では長い光路長が必要となる。これに伴い、ガス濃度検出装置が大型化してしまうという問題が生じる。
【0003】
そこで、特許文献1では、特定波長の光を特定ガスが存在するガスセルに入光させると共に、ガスセル内に配置させた平面鏡で光を多重反射させた後、ガスセルから射出した光を受光して、ガス濃度を検出する装置が提案されている。このように、ガスセル内に導いた光をガスセル内で多重反射させることによって、その光の光路長を長くしている。このため、小サイズのガスセルであっても長い光路長を確保することができると共に、低濃度のガスであってもガス分子による光吸収を充分に行うことができるようになっている。
【0004】
上記のようなガス濃度検出装置を実現するためには、ガスセル内に光を閉じこめることができる一対のミラー、特に凹面ミラーが必要となる。このような凹面ミラーは、ガス濃度を検知する場合に必要な中赤外領域から遠赤外の波長領域に対して透過する材料で形成される必要があり、材料としてSi、Ge、ZnSeなどがある。しかしながら、これらの材料で凹面ミラーを形成する場合、機械加工後に表面を研磨しなければならず、コスト高の要因となっている。そのため、高精度加工を平易に実現することが求められている。
【0005】
このような要求に対して、特許文献2では、シリコン基板を用いて凹面ミラーを製造する方法が提案されている。具体的に、特許文献2では、第1層としてのシリコン基板上にエッチング率の異なる第2層を形成し、第2層上にマスクパターンを形成する。この後、エッチングを行うことで、各層を各層のエッチング率に従ってエッチングする。このようにして、シリコン基板の表面にレンズを形成している。
【特許文献1】特開2005−147962号公報
【特許文献2】特開2005−181961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、入射光をガスセル内の鏡面部で多重反射させて出光させることから、LD(レーザダイオード)やLED(発光ダイオード)など、指向性の高い光を用いることが必要である。そこで、ガスの吸収係数が高く、高感度検出ができる中赤外領域〜遠赤外領域(波長:2μm以上)の波長を扱う量子カスケードレーザ光源を用いることが考えられる。しかし、量子カスケードレーザ光源は高価であり、実用的ではない。
【0007】
したがって、一般には光源として熱線を用いた電球光源が用いられる。しかしながら、電球光源は、光源温度に依存した連続的な波長を発光するものの、LDやLEDと比較して指向性が低い。すなわち、特許文献1のようなガスセルでは、ガスセル内で光線が定まらず、安定した光路長を確保することができない。
【0008】
また、特許文献2では、各層のエッチング率が異なることを利用して凹面ミラーを形成するようになっているが、第2層の厚さのばらつきに応じてミラー形状にばらつきが生じてしまう。
【0009】
なお、特開2003−185803号公報には、予め基板にトレンチを形成した後に、等方性エッチングによってトレンチの形状を凹面に整える方法が開示されている。この方法は、上記特許文献2に示される手法よりも形状を制御する上で有利である。しかしながら、ガス濃度検出のための多重反射用ミラーは例えばミリオーダーのサイズであり、上記公報による方法では、ミクロンサイズのミラーを形成できたとしても、ミリオーダーのサイズのミラーを形成することはできない。
【0010】
本発明は、上記点に鑑み、電球光源を用いたとしても光路長を確保することができる光学式ガス濃度検出器を提供することを第1の目的とし、この光学式ガス濃度検出器に用いられるミラーとしてのマイクロ構造体の製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第1の特徴では、平面を3次元加工することでマイクロ構造体を製造する製造方法において、基板(110)を用意し、この基板上に異なる面積を有する少なくとも2つの開口部を備えたマスク(200)を形成する。そして、マスクの開口部の面積に応じて基板をドライエッチングすることで、基板の表面にマイクロ構造体の表面形状の少なくとも一部を形成する。
【0012】
このように、基板上に面積が異なる複数の開口部を有するマスクを形成してエッチングすることで、開口部の面積が広いほど深くエッチングされるというマイクロローディング効果を利用して、基板上に深さの異なる溝を形成することができる。すなわち、形成したい表面形状に応じてマスクの開口部の面積を調整することで、任意の3次元構造を形成することができる。
【0013】
この手法は、基板の厚さやマスクの厚さに関係なく、マスクに設けられた開口部の面積によって基板に対する加工度合いを調整することができるので、基板に形成する3次元構造体の形状ばらつきを低減させることができる。また、マスクに設けた複数の開口部によって基板に深さの異なる溝を形成していくので、ミリオーダーのサイズの加工物を容易に形成することができる。
【0014】
この場合、基板として、酸化工程を行うことが可能なものを用意することが好適である。すなわち、エッチングによって基板表面を加工した後の表面処理を容易にすることができる。
【0015】
また、マスクを形成する工程では、少なくとも2つの開口部を分離する領域として、幅が狭いものを形成し、酸化可能な基板を用いることで、開口部を分離する領域を酸化して除去することもできる。
【0016】
マイクロ構造体の表面形状の少なくとも一部を形成する工程では、開口部を分離する領域をウェットエッチングにより除去することができる。基板を液体に浸すだけであるので、容易にエッチングを行うことができる。
【0017】
開口部を分離する領域を除去する工程の後では、水素雰囲気中で熱処理を行うことで表面を平滑化処理することができる。好適には、さらにその後、表面を酸化して除去する工程と水素雰囲気中での熱処理による平滑化処理する工程とを複数回行うことで、基板の加工による凹凸をより滑らかな表面にすることができる。
【0018】
上記のようにして、基板の表面を3次元加工する手法によって基板に凹面を形成する場合では、マスクを形成する際、凹面の周辺部から中心部にかけて、マスクの開口部が漸次大きくなるようにする。これにより、上記マイクロローディング効果を利用して凹部となる中心部分を深く、周辺部分を浅くエッチングすることができる。
【0019】
また、マスクを形成する工程では、マスクを複数の同心円状に形成すると共に、半径の異なる各同心円間を開口部としており、当該各同心円間の開口部が外径方向に向かうほど小さくなるようにマスクを形成する。このようにすることで、凹面の形状の基礎となる溝を形成することができる。
【0020】
そして、基板の表面をエッチングし、各開口部を分離する領域を酸化して除去することで基板の表面に凹面部(21、31)を形成した後、凹面部に反射膜(300)を形成すると共に、基板のうち凹面部が形成された面とは反対側の平面部(22、32)に反射防止膜(310)を形成することもできる。これにより、基板を凹面鏡として構成することができる。
【0021】
上記反射膜を形成する工程では、赤外光に対して幅広い反射特性を持つ金などの金属膜が好適である。さらに、当該金属膜をパターニングすることも可能である。このパターニングした金属膜を例えば光源として用いることができる。
【0022】
一方、基板の表面をエッチングし、各開口部を分離する領域を酸化して除去することで基板の表面に凹面部(21、31)を形成した後、凹面部の外縁部に絶縁膜(25)を形成すると共に、この絶縁膜上に金属膜を形成してパターニングし、マイクロヒータ(23)を形成することもできる。これにより、凹面部の外周に形成した当該マイクロヒータを光源として用いることができる。
【0023】
また、マスクを形成する際、当該マスクを構成する各同心円を繋ぐ梁(201)をマスクの一部として形成することもできる。このような梁として、マスクを構成する各同心円の接線に垂直なものを形成することができる。これにより、エッチングされたことによって薄くなった開口部を分離する同心円状の領域が割れてしまうことを防止することができる。
【0024】
上記のようにして梁を形成する場合、各同心円を構成する部分と梁を構成する部分との各幅が同じになるようにマスクを形成することが好ましい。
【0025】
本発明の第2の特徴では、一対の第1ミラー(20)および第2ミラー(30)で光を多重反射させた後、当該光の強度を検出することでガスの濃度を取得する光学式ガス濃度検出器において、各ミラーそれぞれは、一方の面に光の反射面としての凹面部(21、31)が形成されており、各凹面部が対向配置されている。
【0026】
このように、凹面鏡を対向配置させて、各凹面鏡間で光を多重反射させることで、光の光路長を確保することができる。この場合、凹面鏡を用いているので、各凹面鏡間の光を集めて対向する凹面鏡に導くことができる。これにより、各凹面鏡間を多重反射する光の強度を落とさずに光を検出するようにすることができる。すなわち、光源にLDやLEDを用いずに電球光源を用いたとしても、安定した光の光路長を確保することができる。
【0027】
上記各ミラーそれぞれに、凹面部の反対側に平面部(22、32)を備え、第1ミラーの平面部(22)に対向する位置に光源(50)を配置することで前記各ミラーおよび前記光源を一直線上に配置することができ、光源から発せられた光を第1ミラーを透過させて各ミラー間で多重反射させた後、第2ミラーを透過させて検出することができる。
【0028】
一方、各ミラーそれぞれに、凹面部の反対側に平面部(22、32)を備え、各ミラーの各凹面部の外縁部の一方または両方に光源(23)を配置することができ、光源から発せられた光を各ミラー間で多重反射させた後、各ミラーのうち一方を透過させて検出することもできる。
【0029】
このように凹面部の外縁部に光源を設ける場合、光源は、絶縁膜(25、26)で構成される薄膜メンブレン内のマイクロヒータ(23)として構成することができる。また、このマイクロヒータを、各ミラーを構成する基板(110)と封止用基板(120)との間に形成される空間に真空封止することが好ましい。これにより、マイクロヒータから発せられる熱の空気への伝達がなくなり、高効率な光源を実現することができる。
【0030】
各ミラーの各凹面部に反射膜(300)を形成すると共に、各平面部に反射防止膜(310)を形成することが好ましい。
【0031】
また、各ミラーのうち一方の凹面部に光源としてのマイクロヒータ(23)を形成すると共に、マイクロヒータを反射膜としても機能させ、マイクロヒータから発せられた光を各ミラー間で多重反射させた後、各ミラーのうち一方を透過して検出するようにしても良い。
【0032】
このような場合においても、各ミラーそれぞれの凹面部の反対側に設けられた各平面部(22、32)にそれぞれ反射防止膜(310)を設けることが好ましい。
【0033】
また、各ミラーのうち一方に光源が配置されている場合、光源が配置されたミラーの凹面部の径よりも、対向するミラーの凹面部の径を大きくすることもできる。
【0034】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0036】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。以下で示されるガス濃度検出器は、例えばCO(二酸化炭素)やHC(炭化水素)等のガスが空気中に含まれる濃度を検出するものとして用いられる。これらのガスは、例えば中赤外域の波長の光を吸収することが知られているため、本実施形態では中赤外域の波長の光強度を検出することでガス濃度を検出するガス濃度検出器について説明する。
【0037】
図1は、本発明の第1実施形態に係るガス濃度検出器の全体構成図である。この図に示されるように、ガス濃度検出器S1は、筒状の筐体10に一対の第1、第2ミラー20、30が固定されている。
【0038】
これら一対のミラー20、30は、それぞれ平凹構造として構成されている。そして、各ミラー20、30の各凹面部21、31が対向すると共に、一方のミラー20、30の焦点が対向する他方のミラー20、30の凹面部21、31の中心に位置するように配置されている。すなわち、各ミラー20、30の間隔は、凹面部21、31の焦点距離に相当する。
【0039】
上記各ミラー20、30は、赤外光に対して透過率が高い材質で形成されており、SiやGe等の材料が採用される。このような各ミラー20、30のうち各凹面部21、31には、90%以上の高い反射率となる反射膜がそれぞれ形成されている。本実施形態では、各凹面部21、31の反射率は95%になっており、一対のミラー20、30に導かれた光の光路長は各ミラー20、30間の間隔の10倍を得ることができる。
【0040】
また、各ミラー20、30において各凹面部21、31とは反対側はそれぞれ平面部22、32になっている。これら平面部22、32には、低反射率の反射防止膜がそれぞれ形成されている。なお、各ミラー20、30の径は例えば凹面部21、31の直径が3mmのサイズになっている。
【0041】
そして、筐体10のうち各ミラー20、30が配置された間に空気孔11、13が設けられている。これにより、この空気孔11、13からガス40が筐体10内に流入することで、ガス40が筐体10の内壁面および各ミラー20、30の凹面部21、31により形成される空間12内に閉じこめられる。
【0042】
また、筐体10の端部のうちの一方、すなわち第1ミラー20の平面部22に対向する位置に光源部50が固定されている。この光源部50には図示しない光源が備えられている。本実施形態では、光源として、1000℃程度の高温フィラメントを持つ赤外光源が採用される。このような約1000℃の高温フィラメントを用いることで、赤外領域に強い発光強度の光を発することができる。
【0043】
上記光源部50から光が発せられると、第1ミラー20を透過して筐体10の空間12に光が導かれると共に、各ミラー20、30の各凹面部21、31で多重反射することとなる。
【0044】
さらに、筐体10の端部のうちの他方、すなわち第2ミラー30の平面部32に対向する位置にバンドパスフィルタ60が固定されている。このバンドパスフィルタ60は、可視光〜近赤外、遠赤外の波長の光を除去するものである。
【0045】
このバンドパスフィルタ60において第2ミラー30とは反対側に分光デバイス70が配置されている。この分光デバイス70は、例えばファブリペロー型のものとして構成され、分光素子が備えられている。この分光素子は、バンドパスフィルタ60を介して入射された光の波長のうち特定波長を分光して射出するものである。
【0046】
ただし、分光デバイス70では、原理的にある数μmの波長域以外の波長を分光することができない。このため、中赤外域の波長を測定する場合、本実施形態で測定しない波長域、例えば可視光〜近赤外、遠赤外の波長をバンドパスフィルタ60により除去している。
【0047】
なお、分光デバイス70は周知の光学デバイスであり、本実施形態ではその詳細な説明を割愛する。この分光デバイス70については、例えば『光マイクロマシン』(オーム社、澤田廉士、羽根一博、日暮栄治著、p30〜33、p205〜210)等に詳細な説明の記載がある。
【0048】
また、分光デバイス70においてバンドパスフィルタ60の反対側には赤外線センサデバイス80が配置されている。この赤外線センサデバイス80は、受光素子を備えており、分光デバイス70から射出された特定波長の光を受光すると共に、受光した光の強度に相当する電圧信号を外部に出力する。
【0049】
上記バンドパスフィルタ60、分光デバイス70、および赤外線センサデバイス80は1つのパッケージとして構成され、筐体10のうち一対のミラー20、30において光源部50とは反対側に設置される。
【0050】
本実施形態では、光源部50、第1、第2ミラー20、30、バンドパスフィルタ60、分光デバイス70、赤外線センサデバイス80が筐体10の長軸上に配置されている。これにより、光源部50から射出された光は、第1ミラー20を透過して一対のミラー20、30間に閉じこめられて各ミラー20、30間で多重反射すると共に、第2ミラー30を透過してバンドパスフィルタ60、分光デバイス70を介して赤外線センサデバイス80に入射するようになっている。以上が、本実施形態に係るガス濃度検出器S1の全体構成である。
【0051】
次に、上記ガス濃度検出器S1に用いられる各ミラー20、30の製造方法について、図を参照して説明する。まず、各ミラー20、30の各凹面部21、31の形成手法について説明する。本実施形態では、SiやGeなどの基板を任意形状に加工することにより、各ミラー20、30を製造する。
【0052】
具体的には、基板をエッチングするに際し、マスクの開口部の開口幅が狭い場所は浅くエッチングされ、逆に、マスクの開口部の開口幅が広い場所は深くエッチングされるマイクロローディング効果を利用する。
【0053】
実際に、基板に形成したトレンチの幅(≒マスクの開口幅)を0.8μm〜18μmの範囲で変化させたときの基板のエッチングレートを測定した。図2は、トレンチ幅(抜き幅)とエッチングレートとの相関関係を示した図である。この図に示されるように、トレンチ幅が大きくなるほど、エッチングレートも大きくなり、より深くエッチングされることがわかる。
【0054】
そこで、本実施形態では、用意したSi基板に各ミラー20、30の各凹面部21、31を形成すべく、図3(a)に示される形状のマスクを用いることにより、マイクロローディング効果を利用してSi基板をエッチングする。
【0055】
図3(a)は、Si基板上にマスクを形成したものの平面図、図3(b)は図3(a)のA−A断面図であり、マスクの開口部の開口幅に応じてエッチングされたSi基板の断面図を示したものである。
【0056】
図3(a)に示されるように、Si基板100上に同心円状のマスク200を形成する。ここで、図3(a)の実線部分がSi基板100上に形成されるマスクとなる部分であり、実線(黒色)以外の部分が開口した領域を示している。
【0057】
そして、図3(a)に示されるように、マスク200の各同心円の間隔が、外径方向に向かうほど小さくなっている。これにより、図3(b)に示されるように、円状のマスク200の中心部分を深くエッチングすると共に、円状マスク200の外径方向へ向かうほど浅くエッチングすることができる。このように、マスク200の開口部の開口幅に応じてSi基板に対するエッチング深さを制御し、各ミラー20、30の各凹面部21、31となる形状を得ることができる。
【0058】
なお、図3(b)では、Si基板100の裏面がエッチングされないように、Si基板100の裏面全体にマスク210が形成されている。
【0059】
当該マイクロローディング効果を利用したエッチング方法は、マスク200の開口部の開口幅を制御するだけでSi基板の所望の場所を所望の深さにエッチングすることができるので、凹面形状に限らず、凸面形状のマクロ的な外郭を形成することもできる。また、3次元的な形状が必要な場合でも、自由に曲面を形成することができる。以下、上記のマイクロローディング効果を利用した各ミラー20、30の製造方法を説明する。
【0060】
図4は、図1に示されるガス濃度検出器S1に用いられる第1、第2ミラー20、30の製造工程を示した図である。図4は、図3(b)に示される断面図に対応している。
【0061】
本実施形態では、光源部50から発した中赤外から遠赤外領域の波長の光を各ミラー20、30で透過させるため、中赤外から遠赤外領域の波長領域で光を透過する材料を選択する必要がある。上述のように、材料としてSi、Ge、ZnSeなどが採用され、本工程ではSi基板110が採用される。
【0062】
図4(a)に示す工程では、Si基板110に図3(a)に示されるものと同様のマスクを形成する。具体的には、Si基板110を用意すると共に、このSi基板110を熱酸化(1150℃、2時間)して、Si基板110の表裏面に厚さが例えば1μmの熱酸化膜を形成する。
【0063】
この後、Si基板110のうち表面側に形成された熱酸化膜をパターニングすることで、マスク200を形成する。このように熱酸化膜をパターニングする際、上述のように、凹面部21、31の中心部分が凹面部21、31の外縁部分よりも開口幅が大きくなるようにマスク200を形成する。すなわち、図3(a)および図4(a)に示されるように、同心円状の各マスク200の間隔が、外径方向に向かうほど狭くされている。この際、酸化膜を残す部分は開口部を分離する領域となる。この部分はその後の図4(c)の酸化時に、完全に酸化されるように細いことが好適であり、本実施例では1μm幅とした。
【0064】
また、Si基板110の裏面に形成した熱酸化膜をSi基板110の裏面側のマスク251として用いる。
【0065】
図4(b)に示す工程では、Si基板110をドライエッチングする。上述のように、マスク200の開口部の開口幅に応じてエッチングされる深さが異なることから、図4(b)に示されるように、凹面部21、31となる中心部分は深くエッチングされ、エッチングされた部分の中でもっとも深い凹部111が形成される。また、凹面部21、31の外縁部となる部分はマスク200の各開口部の間隔が狭いため、中心部分の凹部111よりも浅い凹部112が形成される。
【0066】
図4(c)に示す工程では、Si基板110が露出した部分を熱酸化する。すなわち、本工程では、図4(b)に示す工程でエッチングされずに残された部位を、図4(a)に示す工程と同様に熱酸化する。これにより、エッチングされたことで露出したSi基板110を酸化させ、Si基板110の表面全体に熱酸化膜260を形成する。
【0067】
図4(d)に示す工程では、図4(b)に示す工程でエッチングされずに残された部位を除去する。本実施形態では、フッ酸でSi基板110の表裏面に形成された熱酸化膜260を除去する。これにより、Si基板110の表面にマクロ的な凹形状を得ることができる。なお、本工程の段階では、この凹形状は各マスク200の間隔に応じた凹凸が残されている。
【0068】
図4(e)に示す工程では、Si基板110に熱処理を施す。本実施形態では、図4(d)に示す工程を終えたSi基板110に対し、水素雰囲気中で1100℃の熱処理を実施する。これにより、Si基板110の表面側の凹形状部分で流動化が生じると共に、凹凸が激減する。こうしてSi基板110の表面側がミラーとして十分機能を持つ表面へと変化する。
【0069】
図4(f)に示す工程では、反射膜300および反射防止膜310を形成する。まず、Si基板110の表面側(凹構造が形成された側)に広帯域の反射特性を持つ厚さ0.2μmのAu(金)を蒸着して反射膜300を形成する。次に、Si基板110の裏面側に厚さ0.5μmのSiN膜を反射防止膜310として形成する。こうして、図1に示されるガス濃度検出器S1に用いられる各ミラー20、30が完成する。以上のようにして製造された各ミラー20、30は、図1に示されるガス濃度検出器S1の一構成部品として用いられることとなる。
【0070】
上記構成を有するガス濃度検出器S1において、ガス濃度は以下のようにして得られる。まず、空気孔11、13から空気を導入する。そして、光源部50から光を射出させる。光源部50から射出された光は、第1ミラー20を透過して筐体10の空間12に導かれると共に、各ミラー20、30の各凹面部21、31で多重反射する。これにより、光の光路を長光路化することができる。
【0071】
そして、各ミラー20、30間で多重反射する光は、空間12内に導入された空気に含まれるCO分子などにより特定波長のみが吸収されるため、特定波長の光は減衰され、強度が弱くなる。この後、光は第2ミラー30を透過して、バンドパスフィルタ60で可視光〜近赤外、遠赤外の波長の光が除去され、分光デバイス70で分光されて赤外線センサデバイス80に入射する。
【0072】
赤外線センサデバイス80では、分光デバイス70を介して入射された光の強度に応じたレベルの電圧信号が検出され、外部に出力される。そして、電圧信号に応じたガス濃度が取得されることとなる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態では、マイクロローディング効果を利用してSi基板110に凹面部21、31を形成すると共に、このような手法により形成した各ミラー20、30を用いてガス濃度検出器S1を構成したことが特徴となっている。
【0074】
すなわち、Si基板110上に面積が異なる複数の開口部を有するマスク200を形成してエッチングすることで、開口部の面積が広いほど深くエッチングされるというマイクロローディング効果を利用することで、Si基板110に深さの異なる溝を形成することができる。つまり、マスク200の開口部の面積や配置を調整することで、Si基板110に任意の3次元構造を容易に形成することができる。
【0075】
また、マイクロローディング効果を利用した加工方法は、マスク200に設けられた開口部の面積のみによってSi基板110に対する加工度合いを調整することができる。このため、マスク200の厚さやエッチングレート等を考慮する必要はない。したがって、エッチングによる加工精度の低下も防止することができ、各Si基板110における加工ばらつきや形状ばらつきも抑制することができる。
【0076】
さらに、マスク200に設けた複数の開口部によってSi基板110に深さの異なる溝を形成していくので、従来では形成できなかったサイズの構造物を形成することができる。すなわち、ミリオーダーのサイズの加工物を容易に形成することができる。
【0077】
上記のようにして形成したミラー20、30を用いてガス濃度検出器S1を構成することができる。すなわち、各ミラー20、30の各凹面部21、31を対向配置させて、各ミラー20、30間で光を多重反射させることで、光の光路長を確保することができる。
【0078】
このように、光の光路を確保することができるので、低濃度のガスであっても、測定対象となるガス40に光の特定の波長を吸収させることができる。すなわち、光源としてLDやLEDを用いる必要はなく、上記光源部50を用いたとしても、安定した光路長を確保することができると共に、低濃度のガスの濃度を検出することができる。
【0079】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。第1実施形態では、第1ミラー20の平面部22に対向する位置に光源部50を配置すると共に、光源部50から発した光を、第1ミラー20を透過させて空間12に導いていた。
【0080】
しかし、第1ミラー20の反射率が高いため、このような構造では各ミラー20、30間に入射される光の量が少なくなっている。そのため、大きな光量を持つ光源が必要となると共に、長時間光源を駆動させると筐体10自体が温まるという問題が生じる可能性がある。
【0081】
そこで、本実施形態で、第1ミラー20に光源を内蔵し、第1実施形態で用いられた光源部50を無くしてしまったことが特徴となっている。以下、本実施形態に係るガス濃度検出器について、図を参照して説明する。
【0082】
図5は、本発明の第2実施形態に係るガス濃度検出器の全体構成図である。この図に示されるように、本実施形態に係るガス濃度検出器S2は、光源が備えられた第1ミラー20を有している。
【0083】
図6(a)は、本実施形態に係る第1ミラー20のB矢視図であり、図6(b)は(a)のC−C断面図である。図6(a)に示されるように、第1ミラー20の表面側(凹面部21が形成された側)の外縁部に光源となるマイクロヒータ(薄膜ヒータ)23が形成されている。マイクロヒータ23の両端には電極24がそれぞれ形成されており、各電極24間に電流が流れることでマイクロヒータ23が発光するようになっている。
【0084】
また、図6(b)に示されるように、Si基板110の表面側のうち外縁部に絶縁膜としてメンブレン下部膜25が形成されており、このメンブレン下部膜25上にマイクロヒータ23が形成されている。そして、マイクロヒータ23を覆うように絶縁膜としてメンブレン上部膜26が形成されている。また、Si基板100のうちマイクロヒータ23に対向する部分が除去され、凹部27が形成されている。
【0085】
このように光源となるマイクロヒータ23を第1ミラー20に備えることで、マイクロヒータ23から発せられた光における空間12への入射効率を高めることができる。
【0086】
次に、本実施形態に係る第1ミラー20の製造方法について、図を参照して説明する。図7は、本実施形態に係る第1ミラー20の製造工程を示した図である。本実施形態では、図4(e)に示す工程までの工程は、第1実施形態と同様である。ただし、メンブレン形成を行うため、Si(100)の基板を採用している。なお、図7は、マイクロヒータ23および電極24を貫く場所に対応した断面図になっている。
【0087】
図7(a)に示す工程では、メンブレン下部膜25を形成する。まず、Si基板110の表面全体にLPCVD法によるSiN膜とSiO膜との絶縁膜を組み合わせて形成する。なお、この場合、膜種や形成方法などは、マイクロヒータ23を形成できるメンブレンを作ることができれば膜の種類および形成方法は問わない。
【0088】
この後、当該絶縁膜上にマイクロヒータ23としてPt(白金)膜を形成すると共にエッチングし、図6(a)のようにパターニングする。さらにマイクロヒータ23およびメンブレン下部膜25を覆うように、メンブレン上部膜26としてSiN膜とSiO膜を形成する。
【0089】
図7(b)に示す工程では、マイクロヒータ23に通電するための電極24となる部位のメンブレン上部膜26、および凹面部21に形成されたメンブレン下部膜25およびメンブレン上部膜26をエッチングして除去する。
【0090】
図7(c)に示す工程では、Si基板110の表面側(凹面部21側)に広帯域の反射特性を持つ厚さ0.2μmのAu(金)を蒸着してパターニングすることで、凹面部21に反射膜300を形成すると共に、メンブレン上部膜26のうち開口した部分に電極24を形成する。
【0091】
図7(d)に示す工程では、Si基板110の裏面側に反射防止膜310として厚さ0.5μmのSiN膜を形成する。また、Si基板110の裏面に形成された反射防止膜310うち、マイクロヒータ23と対向する部分をパターニングにより除去する。そして、Si基板110を裏面からエッチング液に浸すことでSi基板110の裏面のうち反射防止膜310が開口した部分を異方性エッチングして凹部27を形成する。これにより、メンブレンを形成することができる。
【0092】
以上のようにして、図6に示される本実施形態に係る第1ミラー20が完成する。このように、第1ミラー20に光源(マイクロヒータ23)を一体化させることもできる。
【0093】
(第3実施形態)
本実施形態では、各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。上記第2実施形態では、メンブレン下部膜25上にマイクロヒータ23を形成することで発熱効率を高めると共に、発光効率を向上させていた。しかしながら、マイクロヒータ23の熱がメンブレンを通してSi基板110に放熱される場合や空気中へ放熱される場合によって、その放熱分がロスとなる。そこで、本実施形態では、ブリッジ型のマイクロヒータ23とすることで、Si基板110への放熱を低減することが特徴となっている。
【0094】
図8(a)は、本実施形態に係る第1ミラー20の平面図であり、図8(b)は(a)のD−D断面図である。図8(a)に示されるように、第1ミラー20の表面側(凹面部21が形成された側)の外縁部に光源となるマイクロヒータ23および電極24が形成されている。本実施形態では、マイクロヒータ23はSi基板110上で三角波状に配置されている。
【0095】
また、図8(b)に示されるように、マイクロヒータ23はメンブレン下部膜25およびメンブレン上部膜26に挟まれていると共に、メンブレン下部膜25およびメンブレン上部膜26で構成されるメンブレンによってブリッジ状になっている。すなわち、マイクロヒータ23は、凹部28が設けられたSi基板110と、凹部121が形成された真空封止用基板120とに挟まれた構造になっている。本実施形態では、Si基板110の凹部28と真空封止用基板120の凹部121とによって構成される空間は真空になっている。
【0096】
次に、本実施形態に係る第1ミラー20の製造方法について、図を参照して説明する。図9は、本実施形態に係る第1ミラー20の製造工程を示した図である。本実施形態では、図7(a)に示す工程までの工程は、第2実施形態と同様である。なお、図9で、マイクロヒータ23および電極24を貫く場所に対応した断面図になっている。また、メンブレン形成を行うため、Si基板110としてSi(100)を用いている。
【0097】
図9(a)に示す工程では、マイクロヒータ23に通電するための電極24となる部位のメンブレン上部膜26、および凹面部21に形成されたメンブレン下部膜25およびメンブレン上部膜26をエッチングして除去する。さらに、マイクロヒータ23のブリッジ構造を形成するため、メンブレン上部膜26およびメンブレン下部膜25をエッチングすることでマイクロヒータ23の内周側および外周側にそれぞれ開口部29を形成する。
【0098】
図9(b)に示す工程では、図7(c)に示す工程と同様に、凹面部21に反射膜300を形成すると共に、メンブレン上部膜26のうち開口した部分に電極24を形成する。
【0099】
図9(c)に示す工程では、Si基板110の裏面側に反射防止膜310としてSiN膜を形成する。さらに、Si基板110の表面側をシリコンエッチング液に浸すことで、開口部29からSi基板110を異方性エッチングする。これにより、Si基板110のうちマイクロヒータ23に対向する部分を除去し、凹部28を形成する。こうして、メンブレン上部膜26およびメンブレン下部膜25で構成されるメンブレンのブリッジを形成することができる。
【0100】
図9(d)に示す工程では、凹部121が設けられた真空封止用基板120を真空中でSi基板110に接合することで、ブリッジを真空封止した図8に示される構造を形成する。
【0101】
このように、マイクロヒータ23をSi基板110および真空封止用基板120で真空中に封止することで、マイクロヒータ23から空気への放熱が無くなり、極めて高効率なマイクロヒータ23を実現することができる。
【0102】
(第4実施形態)
本実施形態では、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。上記第2、第3実施形態では、光源としてのマイクロヒータ23は第1ミラー20の表面側のうち凹面部21の外縁部に設けられていた。本実施形態では、この光源としてのマイクロヒータ23を凹面部21に設けることで、各ミラー20、30間で多重反射される光の効率をより高めることが特徴となっている。
【0103】
図10(a)は、本実施形態に係る第1ミラー20の平面図であり、図10(b)は(a)のE−E断面図である。図10(a)に示されるように、第1ミラー20の凹面部21に光源となるマイクロヒータ23が形成されており、マイクロヒータ23から引き伸ばされた配線が凹面部21の外縁部に設けられた電極24に接続されている。また、図10(b)に示されるように、第1ミラー20の裏面側に凹部27aが形成されており、マイクロヒータ23は薄膜メンブレンとしての反射膜300に形成されている。
【0104】
次に、本実施形態に係る第1ミラー20の製造方法について、図を参照して説明する。図11は、本実施形態に係る第1ミラー20の製造工程を示した図である。本実施形態では、図4(e)に示す工程までの工程は、第1実施形態と同様である。なお、図11は、マイクロヒータ23および電極24を貫く場所に対応した断面図になっている。また、メンブレン形成を行うため、Si基板110としてSi(100)を用いている。
【0105】
図11(a)に示す工程では、メンブレン下部膜25を形成する。本実施形態では、図7(a)に示す工程と同様に、LPCVD法によるSiN膜とSiO膜の絶縁膜を組み合わせて用いた。
【0106】
図11(b)に示す工程では、メンブレン下部膜25上に反射膜300として広帯域の反射特性を持つ厚さ0.2μmのAuを蒸着し、パターニングする。また、図10(a)に示されるようにマイクロヒータ23をパターニングする。
【0107】
図11(c)に示す工程では、Si基板110の裏面側に反射防止膜310としてSiN膜を形成する。さらに、Si基板110のうちマイクロヒータ23と対向する部分の反射防止膜310を開口し、Si基板110の裏面をシリコンエッチング液に浸すことで、Si基板110の裏面を異方性エッチングする。これにより、凹面部21においてマイクロヒータ23が形成された部分をメンブレンとして形成することができる。
【0108】
以上説明したように、第1ミラー20の凹面部21にマイクロヒータ23を形成することもできる。
【0109】
(第5実施形態)
本実施形態では、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。上記各実施形態では、各ミラー20、30の各凹面部21、31を形成する際、Si基板110上に図3(a)に示されるマスク200を形成してエッチングを行っていた。このような場合、図3(b)に示されるように、マスク200によって残されたSi基板110は筒状の壁となって残るが、Si基板110の歪みや洗浄等によって壁が割れる可能性がある。
【0110】
そこで、本実施形態では、各ミラー20、30の各凹面部21、31を形成するためのエッチングを施す場合、複数の同心円で構成されるマスク200を梁で連結することにより、Si基板110の強度を確保することが特徴となっている。
【0111】
図12は、本実施形態に係るマスク200の平面図である。この図に示されるように、各同心円を繋ぐ梁201が設けられている。この梁201は、各同心円の中心を貫く直線状になっており、複数設けられている。言い換えると、梁201は、各同心円の接線に垂直な直線になっている。
【0112】
このようにして設けられる梁201の幅は、マスク200を構成する各同心円の幅と同じになっている。もちろん、この梁201の幅は、同心円の部分と異なる幅になっていても構わない。
【0113】
以上説明したように、複数の同心円で構成されるマスク200に梁201を設けることで、エッチング後のSi基板110の強度を確保することができ、Si基板110の割れを防止することができる。
【0114】
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、図4(c)、図4(d)に示す工程で酸化膜処理、エッチングという工程順で説明したが、図4(b)に示す工程の後、シリコンウェットエッチング処理を施しても良い。
【0115】
また、第1実施形態において、図4(c)および図4(d)に示す工程を繰り返すことで、Si基板110の表面側の凹凸をさらに低減でき、さらに好適である。
【0116】
上記第1実施形態では、図4(f)に示す工程において反射膜300の材質としてAuを採用したが、GeやZnSeなどで多層膜を形成して反射膜300を形成しても良い。
【0117】
上記各実施形態では、各ミラー20、30の基板の材質としてSi基板110を採用したが、Ge基板など酸化膜が形成できる材料のウェハであれば構わない。
【0118】
また、上記第2実施形態では、各ミラー20、30の各凹面部21、31の径が同じサイズであった。そこで、図13(a)に示されるように各ミラー20、30を構成することもできる。図13(a)は、第2ミラー30の凹面部31の径を第1ミラー20の凹面部31よりも大きくした模式図である。第2ミラー30をこのような構造とすることで、マイクロヒータ23からの発光強度を効率的に多重反射させることができる。
【0119】
さらに、第2実施形態では、第1ミラー20のみに光源であるマイクロヒータ23が形成されていたが、図13(b)に示されるように、各ミラー20、30にマイクロヒータ23を設けるようにしても構わない。このように、各ミラー20、30に光源を設けることで、光の量を2倍にすることが可能となり、好適である。なお、図13ではメンブレン下部膜25およびメンブレン上部膜26を省略してある。
【0120】
上記第3実施形態では、マイクロヒータ23をブリッジ構造とすること、および真空封止することの両方で記載したが、いずれか一方の方法のみでも十分効果的に光量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガス濃度検出器の全体構成図である。
【図2】トレンチ幅(抜き幅)とエッチングレートとの相関関係を示した図である。
【図3】(a)は、Si基板上にマスクを形成したものの平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図4】図1に示されるガス濃度検出器に用いられる第1、第2ミラーの製造工程を示した図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るガス濃度検出器の全体構成図である。
【図6】(a)は、第2実施形態に係る第1ミラーのB矢視図であり、(b)は(a)のC−C断面図である。
【図7】第2実施形態に係る第1ミラーの製造工程を示した図である。
【図8】(a)は、第3実施形態に係る第1ミラーの平面図であり、(b)は(a)のD−D断面図である。
【図9】第3実施形態に係る第1ミラーの製造工程を示した図である。
【図10】(a)は、第4実施形態に係る第1ミラーの平面図であり、(b)は(a)のE−E断面図である。
【図11】第4実施形態に係る第1ミラーの製造工程を示した図である。
【図12】第5実施形態に係るマスクの平面図である。
【図13】他の実施形態として、(a)は、第2ミラーの凹面部の径を第1ミラーの凹面部よりも大きくした模式図、(b)は各ミラーに光源としてのマイクロヒータを設けた模式図である。
【符号の説明】
【0122】
20…第1ミラー、30…第2ミラー、21、31…凹面部、22、32…平面部、23…光源としてのマイクロヒータ、25、26…絶縁膜としてのメンブレン下部膜およびメンブレン上部膜、50…光源部、110…Si基板、120…封止用基板、201…梁、200…マスク、300…反射膜、310…反射防止膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面を3次元加工することでマイクロ構造体を製造する製造方法であって、
基板(110)を用意する工程と、
前記基板上に、異なる面積を有する少なくとも2つの開口部を備えたマスク(200)を形成する工程と、
前記マスクの前記開口部の面積に応じて前記基板をドライエッチングすることで、前記基板の表面にマイクロ構造体の表面形状の少なくとも一部を形成する工程と、を含んでいることを特徴とするマイクロ構造体の製造方法。
【請求項2】
前記基板を用意する工程では、前記基板として、酸化工程を行うことが可能なものを用意し、
前記マイクロ構造体の表面形状の少なくとも一部を形成する工程では、前記開口部を分離する領域を酸化して除去する工程を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項3】
前記マイクロ構造体の表面形状の少なくとも一部を形成する工程では、前記開口部を分離する領域をウェットエッチングにより除去することを特徴とする請求項1に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項4】
前記開口部を分離する領域を除去する工程の後、水素雰囲気中で熱処理を行うことで平滑化処理することを特徴とする請求項2または3に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理後に、表面を酸化して除去する工程と水素雰囲気中での熱処理による平滑化処理する工程とを複数回行うこと特徴とする請求項4に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項6】
平面を3次元加工するに際し、前記基板に凹面を形成する場合、前記マスクを形成する工程では、前記凹面の周辺部から中心部にかけて、開口部が漸次大きくなるように複数の開口部を有するマスクを形成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項7】
前記マスクを形成する工程では、前記マスクを複数の同心円状に形成すると共に、半径の異なる各同心円間を開口部としており、当該各同心円間の開口部が外径方向に向かうほど小さくなるように前記マスクを形成することを特徴とする請求項6に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項8】
前記マスクを用いて前記基板の表面をエッチングすると共に、前記開口部を分離する領域を酸化して除去する工程によって前記基板の表面に凹面部(21、31)を形成した後、前記凹面部に反射膜(300)を形成する工程を含んでいることを特徴とする請求項6または7に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項9】
前記基板のうち前記凹面部が形成された面とは反対側の平面部(22、32)に反射防止膜(310)を形成する工程を含んでいることを特徴とする請求項8に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項10】
前記反射膜を形成する工程は、金属膜を塗布する工程を含んでいることを特徴とする請求項8または9に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項11】
前記マスクを用いて前記基板の表面をエッチングすると共に、前記開口部を分離する領域を酸化して除去する工程によって前記基板の表面に凹面部(21、31)を形成した後、
前記凹面部の外縁部に絶縁膜(25)を形成する工程と、
前記絶縁膜上に金属膜を形成してパターニングし、マイクロヒータ(23)を形成する工程と、を含んでいることを特徴とする請求項6または7に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項12】
前記マスクを形成する工程では、当該マスクを構成する前記各同心円を繋ぐ梁(201)を前記マスクの一部として形成することを特徴とする請求項7ないし11のいずれか1つに記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項13】
前記マスクを形成する工程では、前記梁として、前記マスクを構成する前記各同心円の接線に垂直なものを形成することを特徴とする請求項12に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項14】
前記マスクを形成する工程では、前記各同心円を構成する部分と前記梁を構成する部分との各幅が同じになるように前記マスクを形成することを特徴とする請求項12または13に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項15】
一対の第1ミラー(20)および第2ミラー(30)を備え、当該一対の各ミラーの間に測定対象となるガスを含んだ空気を導くと共に、前記各ミラー間に光を入射して当該各ミラー間で光を多重反射させた後、光の波長に対応した光の強度を検出することで前記ガスの濃度を取得する光学式ガス濃度検出器において、
前記各ミラーそれぞれは、一方の面に光の反射面としての凹面部(21、31)が形成されており、前記各凹面部が対向配置されていることを特徴とする光学式ガス濃度検出器。
【請求項16】
前記各ミラーそれぞれは、前記凹面部の反対側に平面部(22、32)を有し、前記第1ミラーの平面部(22)に対向する位置に光源(50)が配置されることで前記各ミラーおよび前記光源が一直線上に配置されており、
前記光源から発せられた光は前記第1ミラーを透過して前記各ミラー間で多重反射した後、前記第2ミラーを透過して検出されるようになっていることを特徴とする請求項15に記載の光学式ガス濃度検出器。
【請求項17】
前記各ミラーそれぞれは、前記凹面部の反対側に平面部(22、32)を有し、前記各ミラーの前記各凹面部の外縁部の一方または両方に光源(23)が配置されており、
前記光源から発せられた光は前記各ミラー間で多重反射した後、前記各ミラーのうち一方を透過して検出されるようになっていることを特徴とする請求項15に記載の光学式ガス濃度検出器。
【請求項18】
前記光源は、絶縁膜(25、26)で構成される薄膜メンブレン内のマイクロヒータ(23)として構成されていることを特徴とする請求項17に記載の光学式ガス濃度検出器。
【請求項19】
前記マイクロヒータは、前記各ミラーを構成する基板(110)と封止用基板(120)との間に形成される空間に真空封止されていることを特徴とする請求項18に記載の光学式ガス濃度検出器。
【請求項20】
前記各ミラーの前記各凹面部には反射膜(300)が形成されていると共に、前記各平面部には反射防止膜(310)が形成されていることを特徴とする請求項15ないし19のいずれか1つに記載の光学式ガス濃度検出器。
【請求項21】
前記各ミラーのうち一方の凹面部に光源としてのマイクロヒータ(23)が形成されていると共に、前記マイクロヒータは反射膜としても機能するようになっており、
前記マイクロヒータから発せられた光は前記各ミラー間で多重反射した後、前記各ミラーのうち一方を透過して検出されるようになっていることを特徴とする請求項15に記載の光学式ガス濃度検出器。
【請求項22】
前記各ミラーそれぞれは、前記凹面部の反対側に平面部(22、32)を有し、前記各ミラーの前記各平面部には反射防止膜(310)が形成されていることを特徴とする請求項21に記載の光学式ガス濃度検出器。
【請求項23】
前記各ミラーのうち一方に前記光源が配置されている場合、前記光源が配置されたミラーの凹面部の径よりも、対向するミラーの凹面部の径が大きくなっていることを特徴とする請求項15ないし22のいずれか1つに記載の光学式ガス濃度検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−23627(P2008−23627A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196659(P2006−196659)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】