説明

光学式変位測定装置

【課題】光源から放射された入射光の微小な変位を測定するにあたり、出力信号のS/Nを向上させるとともに、回路構成を小型化することができる光学式変位測定装置を得る。
【解決手段】受光面が光に対して不感なギャップを介して複数の領域に分割された4分割フォトダイオード10に対して、光源から放射された入射光を入射させ、4分割フォトダイオード10のフォトダイオード11A〜11Dからの出力を増幅し、増幅された出力の変化に基づいて、4分割フォトダイオード10に対する入射光の相対的な変位を測定する光学式変位測定装置であって、4分割フォトダイオード10のフォトダイオード11A〜11Dには、それぞれ入射光によって出力を生じない不感領域12と、入射光によって出力を生じる感光領域13とが形成され、4分割フォトダイオード10全体について、不感領域12は、感光領域13に囲まれているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光検出素子を用いて、光源から放射された入射光の微小な変位を測定する光学式変位測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入射光の微小な変位を測定するために、受光面が複数の領域に分割された光検出素子に対して光源からスポット光(入射光)を入射させ、光検出素子の各領域からの出力の変化に基づいて、光検出素子に対するスポット光の相対的な変位を測定する装置が知られている。これは、光検出素子上でのスポット光の位置の変化に応じて、各領域に入射する光量が変化し、各領域からの出力が光量に比例して変化することを利用するものである。
【0003】
このような装置として、受光面が複数の受光部に分割された受光器(光検出素子)に対して発光ダイオードからビーム光(入射光)を入射させ、各受光部からの受光出力の変化に基づいて、ビーム光の2次元の変位を測定する変位検出装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
以下、図面を参照しながら、従来の光学式変位測定装置について説明する。
図6は、従来の光学式変位測定装置の光検出素子である4分割フォトダイオード50を、光源60とともに示す斜視図である。図6において、4分割フォトダイオード50には、発光ダイオード(LED)およびピンホールキャップ等により構成された光源60から、スポット光(入射光)61が入射されている。
【0005】
図7は、図6に示した4分割フォトダイオード50の受光面を抜粋して示す構成図である。図7において、4分割フォトダイオード50の受光面は、同一面積の4つのフォトダイオード(素子)51A〜51Dにより構成されている。すなわち、4分割フォトダイオード50は、受光面が4つの領域に分割されている。また、4つのフォトダイオード51A〜51Dの境界は、光に対して不感なギャップと呼ばれる領域で区切られている。
【0006】
フォトダイオードは、光が入射されると、その光量に応じた電流を出力する。そのため、4分割フォトダイオード50に対して光源60からスポット光が入射されると、フォトダイオード51A〜51Dのそれぞれに入射する光量の割合に応じた出力が得られる。ここで、フォトダイオード51A〜51Dのそれぞれからの出力の比をとることにより、スポット光の重心位置を得ることができる。
【0007】
これにより、フォトダイオード51A〜51Dのそれぞれからの出力の変化に基づいて、4分割フォトダイオード50に対するスポット光の相対的な変位を測定することができる。すなわち、光源60から放射されたスポット光の微小な変位を測定する光学式変位測定装置を構成することができる。
【0008】
図8は、従来の光学式変位測定装置の回路構成を示す概略図である。この回路構成により、スポット光の横方向および縦方向の変位量を得ることができる。図8において、この光学式変位測定装置は、フォトダイオード51A〜51Dから受光面が構成される4分割フォトダイオード50、1段目増幅部52、2段目増幅部53および3段目増幅部54を備えている。
【0009】
フォトダイオード51A〜51Dは、それぞれ入射したスポット光の光量に応じた電流を出力する。1段目増幅部52は、フォトダイオード51A〜51Dにそれぞれ対応して設けられた増幅器を用いて、フォトダイオード51A〜51Dからの出力信号を、電圧に変換するとともに増幅する。
【0010】
2段目増幅部53は、1段目増幅部52で増幅されたフォトダイオード51Aからの出力信号とフォトダイオード51Cからの出力信号との差をとるとともに、1段目増幅部52で増幅されたフォトダイオード51Dからの出力信号とフォトダイオード51Bからの出力信号との差をとり、それぞれの出力信号を増幅する(差動増幅処理)。
【0011】
3段目増幅部54は、2段目増幅部53からのそれぞれの出力信号の和をとるとともに(和演算)、2段目増幅部53からのそれぞれの出力信号の差をとる(差演算)。このとき、必要であれば、3段目増幅部54は、それぞれの出力信号を増幅する。ここで、フォトダイオード51A〜51Dからの出力信号をそれぞれ単にA〜Dとすると、これらの処理により、最終的には、スポット光の横方向の変位を表すA−B−C+Dを増幅した信号と、縦方向の変位を表すA+B−C−Dを増幅した信号とが得られる。
【0012】
一般的に、初期状態において、スポット光は、フォトダイオード51A〜51Dのそれぞれから均等な出力信号を得られる位置(中央)に配置される。この状態では、図9に示されるように、フォトダイオード51A〜51Dのそれぞれからの出力信号A〜Dは互いに等しく、フォトダイオード51A〜51Dのそれぞれに入射する光量の割合に応じた出力信号が得られる。ここでは、各出力信号が等しいので、2段目増幅部53で出力信号の差をとった結果、2段目増幅部53からの出力信号は何れも0になる。
【0013】
ここで、この状態からスポット光の位置が、図10に示されるように、右方向に変位した場合について考える。このとき、フォトダイオード51A、51Dからの出力信号A、Dは、光量の増加分に応じて増加する一方、フォトダイオード51B、51Cからの出力信号B、Dは、光量の減少分に応じて減少する。
【0014】
そのため、2段目増幅部53において、出力信号Aと出力信号Cとの差が0から正になるとともに、出力信号Dと出力信号Bとの差も0から正になる。したがって、3段目増幅部54において、(A−C)+(D−B)が正になり、(A−C)−(D−B)が0になるので、スポット光が右方向に変位したことを検知することができる。
【0015】
ここで、スポット光の微小な変位を測定しようとする場合には、増幅部において大きな増幅倍率を設定する必要がある。図8に示した回路では、1段目増幅部52から3段目増幅部54までの3段の増幅部が存在するので、3回に分けて出力信号を増幅することができる。
【0016】
しかしながら、増幅は、できるだけ少ない段数で行うことが望ましい。なぜならば、増幅器から出力される信号には、増幅された入力信号の他に、増幅器での処理によって生じる雑音が重畳されるからである。そのため、後段の増幅器では、前段の増幅器で重畳された雑音も併せて増幅することになるので、増幅を重ねる毎に信号中の雑音成分の大きさが増加することになる。
【0017】
そこで、1段目増幅部52でできる限り増幅率を大きくとることを考える。一般的に、増幅器は、その電源電圧以上の電圧を出力することができないので、増幅器の増幅率Gと、出力が範囲外とならない最大増幅率Gmaxとの関係は、出力信号をVout、入力信号をIin、電源電圧をVsupplyとし、入力信号Iin=0のとき出力信号Vout=0とし、入力信号Iinの想定される最大値をImaxとおくと、次式(1)で表される。
【0018】
【数1】

【0019】
式(1)において、入力信号Iinは、スポット光の変位の前後においてともにフォトダイオードに入射している光量に応じたバイアス出力Iと、スポット光が微小変位Δdだけ変位したときのフォトダイオードからの変位出力ΔIとを加算した値になる(Iin=I+Δd)。このとき、スポット光が変位した後の入力信号Iinにおいては、I≫ΔIであることから、入力信号Iinのほとんどをバイアス出力Iが占めることが分かる。
【0020】
ここで、入力信号Iinにおいて、出力として意味があるのは変位出力ΔIなので、この信号を増幅することが重要になるが、バイアス出力Iを含む入力信号Iinが増幅された成分によって、出力信号Voutが電源電圧Vsupplyを超えないことが必要になるので、最大増幅率Gmaxを高めることができない。そのため、2段目増幅部53においては、出力信号どうしの差をとることにより、バイアス出力Iの増幅成分を相殺し、これ以降、変位出力ΔIの成分のみを増幅している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開平1−201129号公報
【特許文献2】特開平5−60557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
スポット光の微小な変位を測定する場合、スポット光の変位の前後においてフォトダイオードから定常的に出力されるバイアス出力の大きさと比較して、フォトダイオードに対するスポット光の相対的な変位によって生じる変位出力の大きさは、極めて小さい。
【0023】
ここで、フォトダイオードからの出力信号を増幅する1段目増幅部では、バイアス出力と変位出力とがともに増幅される。そのため、バイアス出力によって1段目増幅部の出力制限に達してしまい、変位出力を十分に増幅することができない。そこで、2段目増幅部において、出力信号どうしの差をとる等の処理により、バイアス出力を打ち消してから増幅を行う必要があった。
【0024】
その結果、1段目増幅部において出力信号に重畳された雑音が、2段目以降の増幅部で増幅されてしまい、出力信号のS/Nが悪化するという問題がある。また、増幅器の段数が増加することにより、光学式変位測定装置の回路構成が大型化するという問題もある。
【0025】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、光源から放射された入射光の微小な変位を測定するにあたり、出力信号のS/Nを向上させるとともに、回路構成を小型化することができる光学式変位測定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この発明に係る光学式変位測定装置は、受光面が光に対して不感なギャップを介して複数の領域に分割された光検出素子に対して、光源から放射された入射光を入射させ、光検出素子の各領域からの出力を増幅し、増幅された出力の変化に基づいて、光検出素子に対する入射光の相対的な変位を測定する光学式変位測定装置であって、光検出素子の各領域には、それぞれ入射光によって出力を生じない不感領域と、入射光によって出力を生じる感光領域とが形成され、光検出素子全体について、各領域に形成された不感領域は、各領域に形成された感光領域に囲まれているものである。
【発明の効果】
【0027】
この発明に係る光学式変位測定装置によれば、光検出素子の各領域には、それぞれ入射光によって出力を生じない不感領域と、入射光によって出力を生じる感光領域とが形成され、光検出素子全体について、各領域に形成された不感領域は、各領域に形成された感光領域に囲まれている。
これにより、入射光の変位の前後において光検出素子の各領域に入射している光量に応じたバイアス出力の、光検出素子の各領域からの全出力に対する割合が低減され、入射光の変位に応じた光検出素子の各領域からの変位出力の割合が増大する。そのため、光検出素子の各領域からの出力を増幅する際に、変位出力を十分に増幅することができる。
したがって、光源から放射された入射光の微小な変位を測定するにあたり、出力信号のS/Nを向上させるとともに、回路構成を小型化することができる光学式変位測定装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施の形態1に係る光学式変位測定装置の光検出素子の受光面を抜粋して示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る光学式変位測定装置の光検出素子の中央に光が入射している状態、およびそのときの各素子からの出力信号を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る光学式変位測定装置の光検出素子に入射する光が中央から右方向に変位した状態、およびそのときの各素子からの出力信号を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る光学式変位測定装置の光検出素子の別の受光面を抜粋して示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る光学式変位測定装置の光検出素子の受光面を抜粋して示す構成図である。
【図6】従来の光学式変位測定装置の光検出素子を光源とともに示す斜視図である。
【図7】図6に示した光検出素子の受光面を抜粋して示す構成図である。
【図8】従来の光学式変位測定装置の回路構成を示す概略図である。
【図9】従来の光学式変位測定装置の光検出素子の中央に光が入射している状態、およびそのときの各素子からの出力信号を示す説明図である。
【図10】従来の光学式変位測定装置の光検出素子に入射する光が中央から右方向に変位した状態、およびそのときの各素子からの出力信号を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明に係る光学式変位測定装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。この発明に係る光学式変位測定装置は、受光面が複数の領域に分割された光検出素子に対して、光源から放射された入射光を入射させ、光検出素子の各領域からの出力を増幅し、増幅された出力の変化に基づいて、光検出素子に対する入射光の相対的な変位を測定するものである。
【0030】
なお、この発明に係る光学式変位測定装置は、例えば微小ステージの変位を測定する場合に用いられる。また、この光学式変位測定装置の用途はこれに限定されず、他の用途に用いられてもよい。
【0031】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る光学式変位測定装置の光検出素子である4分割フォトダイオード10の受光面を抜粋して示す構成図である。図1において、4分割フォトダイオード10には、発光ダイオード(LED)およびピンホールキャップ等により構成された光源(図示せず)から、スポット光(入射光)21が入射されている。
【0032】
また、4分割フォトダイオード10の受光面は、同一面積の4つのフォトダイオード(素子)11A〜11Dにより構成されている。すなわち、4分割フォトダイオード10は、受光面が4つの領域に分割されている。また、4つのフォトダイオード11A〜11Dの境界は、光に対して不感なギャップと呼ばれる領域で区切られている。
【0033】
ここで、フォトダイオード11A〜11Dの各領域には、それぞれスポット光によって出力を生じない不感領域と、スポット光によって出力を生じる感光領域とが形成されている。以下、フォトダイオード11A〜11Dの各領域に形成された不感領域をまとめて不感領域12と表し、フォトダイオード11A〜11Dの各領域に形成された感光領域をまとめて感光領域13と表す。
【0034】
不感領域12は、フォトダイオード11A〜11Dの中央部に、感光領域13に囲まれて形成されている。この不感領域12は、不感領域12が形成されていない通常の多分割フォトダイオードの表面に、遮光材料でマスクを作成することにより形成されてもよいし、遮光材料を塗布することにより形成されてもよい。また、あらかじめ不感領域12が形成されるように、フォトダイオードを製造してもよい。
【0035】
また、この光学式変位測定装置の回路構成は、図8に示したものとほぼ同等の構成である。しかしながら、2段目増幅部は、必要があれば、1段目増幅部で増幅されたフォトダイオード11Aからの出力信号とフォトダイオード11Cからの出力信号との差、および1段目増幅部で増幅されたフォトダイオード11Dからの出力信号とフォトダイオード11Bからの出力信号との差をとった後、それぞれの出力信号を増幅する。
【0036】
ここで、フォトダイオード11A〜11Dの中央にスポット光が入射している状態、およびそのときの各素子からの出力信号を図2に示す。図9に示した、不感領域12が形成されていないものと比較すると、各素子からの出力から、フォトダイオード11A〜11D中央部の不感領域12の面積に相当するバイアス出力の分だけ出力が減少していることが分かる。
【0037】
次に、フォトダイオード11A〜11Dに入射するスポット光が中央から右方向に変位した状態、およびそのときの各素子からの出力信号を図3に示す。図10に示した、不感領域12が形成されていないものと比較すると、フォトダイオード11A〜11D中央部の不感領域12の面積に相当するバイアス出力の分だけ出力は減少しているものの、スポット光の変位によって変化した各素子の面積は同じなので、出力の変化の大きさは同じであることが分かる。
【0038】
このことから、フォトダイオード11A〜11Dに不感領域12を形成することにより、フォトダイオード11A〜11Dからの出力全体に対するスポット光の変位に応じた変位出力の割合を増大させることができる。そのため、1段目増幅部においてフォトダイオード11A〜11Dのそれぞれからの出力を増幅する際に、変位出力に対して十分に大きな増幅をかけることができる。
【0039】
また、上述した従来の光学式変位測定装置では、3段目増幅部54までアナログ信号のまま演算処理を行っていたが、この発明の実施の形態1に係る光学式変位測定装置では、1段目増幅部で変位出力を十分に増幅することができるので、1段目増幅部での増幅後、すぐにデジタル信号に変換して演算処理を行うことができる。そのため、装置構成を簡略化することができる。
【0040】
なお、不感領域12の大きさについては、スポット光が測定を想定している範囲内を変位した場合に、不感領域12が常にスポット光の領域内に含まれる大きさに設定されることが望ましい。すなわち、不感領域12は、スポット光の変位の前後において、スポット光が入射され続ける範囲内に形成されることが望ましい。
【0041】
これは、スポット光の変位によって、不感領域12がスポット光の領域外に出ることがあれば、不感領域12が形成されている場合とされていない場合とで、フォトダイオード11A〜11Dからの出力の変化量が異なることになるからである。このような場合には、スポット光の位置変化と変位出力との相関関係が崩れることとなる。
【0042】
特に、スポット光の変位によって出力が増加するフォトダイオードについては、不感領域12が形成されていないものと出力の増加分が変わらないのに対して、スポット光の変位によって出力が減少するフォトダイオードについては、スポット光からはみ出した不感領域12は、出力が変化しない。そのため、出力の増加と減少とのバランスが狂い、スポット光の変位に対する出力変化の直線性が悪化する。
【0043】
したがって、不感領域12を、スポット光の変位の前後において、スポット光が入射され続ける範囲内に形成することにより、スポット光の変位に対する出力変化の直線性を確保することができる。
【0044】
ここで、スポット光が半径Rの円形で、スポット光の定格変位量が横方向および縦方向ともに±Δdである場合に、フォトダイオードからのバイアス出力を最も削減することができる不感領域12が形成された4分割フォトダイオード10の受光面を図4に示す。図4において、不感領域12は、スポット光がフォトダイオード11A〜11Dの中央から定格変位量変位した場合であっても、スポット光の領域外に出ることがないという条件下で最大化されている。
【0045】
不感領域12の形状や大きさを、スポット光が定格変位量のぎりぎりまで変位した場合の形状や大きさに合わせて設計することにより、フォトダイオードからのバイアス出力を最も小さくすることができる。
【0046】
しかしながら、実際には、スポット光と4分割フォトダイオード10との初期位置が、不感領域12やフォトダイオード11A〜11Dの中心位置と一致せず、ある程度のずれをもって設置されることが考えられる。このような場合に、不感領域12がスポット光の領域外に出ることを防止するためには、想定されうる初期位置のずれ分だけ、不感領域12を小さめに設定しておく必要がある。
【0047】
このことは、不感領域12の大きさを、スポット光の定格変位量から算出されるぎりぎりの大きさに設定していた場合に、スポット光と4分割フォトダイオード10との初期位置がずれたことにより、不感領域12が予想外にスポット光の領域外に出てしまい、スポット光の変位に対する出力変化の直線性が悪化することを防止するためである。
【0048】
以上のように、実施の形態1によれば、光検出素子の各領域には、それぞれ入射光によって出力を生じない不感領域と、入射光によって出力を生じる感光領域とが形成され、光検出素子全体について、各領域に形成された不感領域は、各領域に形成された感光領域に囲まれている。
これにより、入射光の変位の前後において光検出素子の各領域に入射している光量に応じたバイアス出力の、光検出素子の各領域からの全出力に対する割合が低減され、入射光の変位に応じた光検出素子の各領域からの変位出力の割合が増大する。そのため、光検出素子の各領域からの出力を増幅する際に、変位出力を十分に増幅することができる。
したがって、光源から放射された入射光の微小な変位を測定するにあたり、出力信号のS/Nを向上させるとともに、回路構成を小型化することができる光学式変位測定装置を得ることができる。
【0049】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、フォトダイオード11A〜11Dの中央部に、スポット光によって出力を生じない不感領域12が形成されると説明した。この実施の形態2では、不感領域を単にマスクするだけでなく、この領域に入射したスポット光を光源方向に反射するように、不感領域にリフレクタ部14を設ける場合について説明する。
【0050】
図5は、この発明の実施の形態2に係る光学式変位測定装置の4分割フォトダイオード10の受光面を抜粋して示す構成図である。図5において、図1に示した不感領域12に対応する部分には、光を反射するリフレクタ部14が設けられている。リフレクタ部14を設けたことにより、光源から放射されたスポット光(入射光22)は、リフレクタ部14で反射して光源に戻され(反射光23)、光源で反射されることによって、再び4分割フォトダイオード10に入射される。
【0051】
スポット光の反射を繰り返すことにより、不感領域に入射されたスポット光を感光領域に導くことで、光源から放射されたスポット光を有効に利用し、光源の変位によってフォトダイオード11A〜11Dからの出力が変化する領域における単位面積あたりの光量を増加させることができる。そのため、光源からのスポット光の光量が同一であっても、スポット光の変位に対する出力変化を増加させることができ、出力信号のS/Nを向上させることができる。
【0052】
なお、リフレクタ部14によってスポット光が乱反射し、反射したスポット光が光源にそのまま戻ることなく、周囲で再び反射して4分割フォトダイオード10に戻ってくる場合が考えられる。このような場合に、光源からのスポット光が、もともと入射しているフォトダイオード以外の領域のフォトダイオードに戻ってくると、スポット光の位置にかかわらず、迷光として一定の出力を生じさせることになる。そのため、スポット光の変位に対する出力の感度が低下する恐れがある。したがって、リフレクタ部14は、光を乱反射させず、光源方向に真っ直ぐに光を反射させることが望ましい。
【0053】
また、上記実施の形態1、2では、光検出素子として4分割フォトダイオード10を例に挙げて説明したが、これに限定されず、光検出素子は、受光面が2つの領域に分割された2分割フォトダイオードであっても、同様の効果を得ることができる。
また、分割された複数の領域の各素子のある頂点が、全てある領域に集中しており、各素子に対して同時にスポット光を入射させることができるような多分割の光検出素子に対しても、同様の効果を得ることができる。
さらに、上記実施の形態1、2では、光検出素子としてフォトダイオードを用いているが、これに限定されず、フォトダイオードと同様に、光の入射によって出力を得ることができる光検出素子であれば、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0054】
10 4分割フォトダイオード(光検出素子)、11A〜11D フォトダイオード、12 不感領域、13 感光領域、14 リフレクタ部、21 スポット光、22 入射光、23 反射光、50 4分割フォトダイオード、51A〜51D フォトダイオード、52 1段目増幅部、53 2段目増幅部、54 3段目増幅部、60 光源、61 スポット光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面が光に対して不感なギャップを介して複数の領域に分割された光検出素子に対して、光源から放射された入射光を入射させ、前記光検出素子の各領域からの出力を増幅し、増幅された出力の変化に基づいて、前記光検出素子に対する前記入射光の相対的な変位を測定する光学式変位測定装置であって、
前記光検出素子の各領域には、それぞれ前記入射光によって出力を生じない不感領域と、前記入射光によって出力を生じる感光領域とが形成され、前記光検出素子全体について、前記各領域に形成された不感領域は、前記各領域に形成された感光領域に囲まれている
ことを特徴とする光学式変位測定装置。
【請求項2】
前記光検出素子全体について、前記各領域に形成された不感領域は、前記入射光の変位の前後において、前記入射光が入射され続ける範囲内に形成されることを特徴とする請求項1に記載の光学式変位測定装置。
【請求項3】
前記光検出素子全体について、前記各領域に形成された不感領域の大きさは、前記入射光の変位の前後において、前記入射光が入射され続ける範囲の外縁から、前記入射光と前記光検出素子との初期位置のずれ分だけ縮小されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学式変位測定装置。
【請求項4】
前記光検出素子全体について、前記各領域に形成された不感領域に、前記入射光を前記光源方向に反射するリフレクタ部を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の光学式変位測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−61233(P2013−61233A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199660(P2011−199660)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト、柔軟物も取扱える生産用ロボットシステム(次世代産業用ロボット分野)、FA機器組立ロボットシステムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】