説明

光学特性測定装置

【課題】 透過測定及び反射測定を可能とし、装置の小型化、測定時の作業性及び測定精度の向上が図られた光学特性測定装置の提供。
【解決手段】 反射測定時には、反射試料開口2sにおいて拡散照明された反射試料からの反射光を、受光開口2bを通して受光光学系5及び2チャンネル分光装置6により測定し、信号処理装置7及び制御演算装置8により反射特性の算出を行う。透過測定時には、透過試料開口2tにおいて拡散照明された透過試料1の透過光1pを、反射鏡42によって折り曲げられた光路を経由させて、反射試料開口2s及び受光開口2bを通して受光光学系5及び2チャンネル分光装置6により測定し、信号処理装置7及び制御演算装置8により透過特性の算出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射試料に対する反射特性の測定及び透過試料に対する透過特性の測定が可能な積分球照明を用いる光学特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定試料(反射試料)の反射特性の測定に関し、例えば図8、9に示すような積分球照明を用いた反射特性測定装置(光学特性測定装置)が知られている。図8、9は同じ測定装置を示しており、図8は上面図、図9はその側面図である。図8、9に示すように、反射特性測定装置800は、内壁に高拡散、高反射率の白色塗料が塗布された積分球811の反射試料開口811aの位置に反射試料801が配設されている。光源815が制御演算装置830の指令によって発光すると、光源815からの光束は、積分球811内で拡散多重反射され、反射試料801の試料面と反射試料開口811a近傍の積分球内壁である参照面811rとを拡散照明する。
【0003】
上記反射試料801の試料面反射光のうち、試料面に略垂直(実際には垂直方向から約8°傾斜している)な成分(反射光801s)が、受光開口811bを通り、さらに対物レンズ812と絞り813の開口(絞り開口813a)とを通って2チャンネル分光装置820における入射スリット821の試料光スリット821sに入射する。試料光スリット821sを通過した光束は、コリメータレンズ822によって平行光束とされて回折格子823に入射する。回折格子823はこの入射光を波長毎に異なる方向に分散反射し、再びコリメータレンズ822を介して2チャンネルセンサーアレイ824における試料光チャンネル824sの画素列上に、試料光スリット821sの波長分散像をつくる。同時に、参照面811rの反射光の略垂直な成分(参照光801r)が、受光開口811bを通り、対物レンズ812と絞り開口813aとを通って2チャンネル分光装置820の参照光スリット821rに入射する。参照光スリット821rを通過した光束は、コリメータレンズ822と回折格子823とによって参照光スリット821rの波長分散像を2チャンネルセンサーアレイ824における参照光チャンネル824rの画素列上につくる。
【0004】
入射スリット821の近傍には、絞り開口813aと回折格子823とを共役にするフィールドレンズ814が配設されており、試料光スリット821s及び参照光スリット821rを通過した光束を有効に回折格子823に導く。2チャンネルセンサーアレイ824における試料光チャンネル824s及び参照光チャンネル824rの、試料光(反射光801s)及び参照光801rの分光分布に準じた画素出力は信号処理装置831によって処理され、画素信号として制御演算装置830に送信される。制御演算装置830は、この各チャンネルの画素信号から反射試料801の分光反射特性を求める。
【0005】
ところで、例えば図10に示すように、上記反射特性の測定だけでなく、測定試料(透過試料)の透過特性の測定も可能な反射特性測定装置800aが知られている。上記反射特性測定装置800との主な違いは、積分球811の受光開口811bに近接して配置され、積分球811側に入射開口841aを、対物レンズ812側に射出開口841bを備える透過試料室840を備えることである。ただし、同図の符号804に示すものは、対物レンズ812や絞り813を支持するための支持部材であり、符号805に示すものは、積分球811、透過試料室840及び2チャンネル分光装置820等を保持するための保持部材(保持部材805)であり、また符号806に示すものは、保持部材805を支持固定するための光学台板(光学台板806)である。
【0006】
反射特性の測定(反射測定)を行う場合、この透過試料室840には透過試料が設置されないので、反射試料開口811aに設置された反射試料(例えば図8に示す反射試料801)の反射光は、透過試料室840を通過し、対物レンズ812を経て2チャンネル分光装置820の試料光スリット821sに入射する。透過特性の測定(透過測定)を行う場合、反射試料開口811aには積分球811の一部をなすように、つまり反射試料開口811aに蓋をするように、積分球内壁と同様の高反射率、高拡散特性を有した部材、具体的には白板802が取り付けられる。一方、透過試料室840内には、受光開口811bに一致する上記入射開口841aの位置に透過試料841が設置される。積分球811において拡散された照明光により透過試料841が照明されて得られた透過光の試料面に略垂直な成分(透過光841t)が、射出開口841bを通過し、対物レンズ812を経て2チャンネル分光装置820の試料光スリット821sに入射する。
【0007】
これと同時に、積分球811の参照光開口811cに入射端を有する光学ファイバー803によって参照光801rが取り込まれる。この際、参照光開口811cに対向する積分球811内壁部が参照面811rとなる。参照光801rは光学ファイバー803によって2チャンネル分光装置820の参照光スリット821rに導かれる。透過測定の場合、受光開口811bを通過する光束は必ず透過試料841を透過するので、参照光を、これとは別の経路で2チャンネル分光装置820に導く必要がある。試料光スリット821s及び参照光スリット821rに入射した透過光841t及び参照光801rは上述と同様に処理され、透過試料841の分光透過特性が求められる。
【特許文献1】特開2003−90761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記構成を有する反射特性測定装置800aによって反射測定と透過測定との両方の測定が可能となるものの、積分球811と2チャンネル分光装置820(対物光学系)との間に配置される透過試料室840は、そのサイズが小さい場合には、透過試料841の設置に際しての作業がし難くなり、これとは逆に、作業性を考慮して透過試料室840のサイズを大きくすると、装置全体が大型化してしまう。また、積分球811と2チャンネル分光装置820間に透過試料室840が設置されることで、積分球811と2チャンネル分光装置820とが透過試料室840を挟んで離間し、或いは積分球811及び2チャンネル分光装置820間の距離(光路長)が長くなり、積分球811、受光光学系及び2チャンネル分光装置820等の各光学要素間の相対的な位置ズレ(光軸ズレ)が発生し易くなる。このため、当該光学配置の精度を維持するべく、より高い強度と精度とを有する光学台板や支持部材が必要となり、その結果、高重量化、高コスト化を招くことになる。しかも、透過試料室840の大サイズ化は、反射測定しか行わないユーザにとっては無意味である。また、反射測定だけを行う場合、図8、9に示す反射特性測定装置800を用いるのであれば、反射試料開口811a近傍の積分球内壁を参照面811rとして、反射光801s及び参照光801rを共通の受光光学系(対物レンズ812及び絞り813)を用いて2チャンネル分光装置820に導くことが可能であるが、透過測定が可能な反射特性測定装置800aを用いる場合には、参照光801r専用の光学系(光学ファイバー803)を別途備える必要が生じてしまう。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、同じ装置を用いて反射試料及び透過試料の光学特性の測定が可能であり、積分球と分光装置との間に透過試料室を配置することなく、装置の小型化、測定時の作業性(作業効率)を向上させることができるとともに、重量やコストの低減を図ることができ、また、各光学要素間の位置ズレ(光軸ズレ)等が発生し難く、ひいては高精度な光学特性測定を行うことが可能な光学特性測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る光学特性測定装置は、光源を内蔵する積分球からなる照明手段と、該照明手段によって照明された試料からの光束を受光する受光手段と、所定の演算を行う演算処理手段とを備え、前記積分球の第1の開口に配設された反射試料を前記照明手段の光束によって照明し、該照明された反射試料の反射光を積分球の第2の開口を通して前記受光手段によって測定し、該受光手段による測定情報に基づき前記演算処理手段によって反射試料の反射特性を算出することが可能に構成された光学特性測定装置であって、前記積分球における第1の開口と異なる位置に設けられた、透過試料に対する第3の開口と、光束の光路を折り曲げることが可能に構成された光路折り曲げ手段とを備え、前記第3の開口から射出された照明手段の光束によって透過試料を照明し、該照明された透過試料の透過光を、前記光路折り曲げ手段によって折り曲げられた光路を経て第1の開口から第2の開口及び受光手段へ向けて射出するとともに、該射出された透過光を受光手段によって測定し、該受光手段による測定情報に基づき前記演算処理手段によって透過試料の透過特性を算出することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、積分球の第1の開口に配設された反射試料が、光源を内蔵する該積分球からなる照明手段の光束によって照明され、該照明された反射試料の反射光が積分球の第2の開口を通して受光手段によって測定され、該受光手段による測定情報に基づき演算処理手段によって反射試料の反射特性が算出される。また、透過試料に対する第3の開口が、積分球における第1の開口と異なる位置に設けられ、光路折り曲げ手段によって光束の光路が折り曲げられる。第3の開口から射出された照明手段の光束によって透過試料が照明され、該照明された透過試料の透過光が、光路折り曲げ手段によって折り曲げられた光路を経て第1の開口から第2の開口及び受光手段へ向けて射出されるとともに、該射出された透過光が受光手段によって測定され、該受光手段による測定情報に基づき演算処理手段によって透過試料の透過特性が算出される。
【0012】
これにより、反射試料の測定を行う場合には、積分球の第1の開口において照明手段の光束により照明された反射試料からの反射光が積分球の第2の開口を通して受光手段によって測定されて、演算処理手段によって反射特性の算出が行われる。一方、透過試料の測定を行う場合には、第3の開口から射出された照明手段の光束により照明された透過試料の透過光が、光路折り曲げ手段によって折り曲げられた光路を経て、第1の開口及び第2の開口を通して受光手段によって測定されて、演算処理手段によって透過特性の算出が行われる。すなわち、反射試料の測定に際しては第1及び第2の開口を用いて測定が行われ、透過試料の測定に際しては、第3の開口が用いられるとともに、反射試料測定に用いられる第1及び第2の開口を利用して測定が行われるので、同じ装置を用いて反射試料及び透過試料の光学特性の測定を行うことが可能となる。
【0013】
また、第3の開口から射出された照明手段の光束により照明された透過試料の透過光を、光路折り曲げ手段によって折り曲げられた光路を経て、第1の開口及び第2の開口を通して受光手段によって測定する構成により透過試料の測定が行われるので、積分球と受光手段との間に透過試料室を配置する必要がなく装置の小型化を図ることができるとともに、透過試料設置作業場所が第3の開口に対応する位置、例えば装置前面となり、積分球及び受光手段間で透過試料設置作業を行わずともよく、透過試料の設置作業がし易くなり、測定時の作業性(作業効率)を向上させることができる。
【0014】
また、積分球と分光装置との間に透過試料室を配置する必要がないことから、例えば受光手段を積分球に直結し、積分球によって該受光手段を支持する構成とすることができるので、高強度、高精度な光学台板或いは積分球及び受光手段を保持する保持部材等を備える必要がなく、重量やコストの低減を図ることができるとともに、各光学要素間の位置ズレ(光軸ズレ)等が発生し難くなり、ひいては高精度な光学特性測定を行うことが可能となる。
【0015】
本発明の請求項2に係る光学特性測定装置は、請求項1において、前記第3の開口は、前記第1の開口の近傍に設けられたものであることを特徴とする。この構成によれば、第3の開口が、第1の開口の近傍に設けられる、すなわち、透過試料の設置位置と反射試料の設置位置とが一箇所(装置前面)に揃えられるので、透過試料の設置作業と反射試料の設置作業とを同じ場所で行うことが可能となり、測定時の作業性(作業効率)をより向上させることができる。
【0016】
本発明の請求項3に係る光学特性測定装置は、請求項1又は2において、前記光路折り曲げ手段は、光の反射又は光の屈折により前記光束の方向を所定の方向に変更可能な1つ以上の反射体若しくは屈折体又は反射体と屈折体とを組み合わたもので構成されることを特徴とする。これによれば、光路折り曲げ手段が、光の反射又は光の屈折により光束の方向を所定の方向に変更可能な1つ以上の反射体若しくは屈折体又は反射体と屈折体とを組み合わたもので構成されるので、例えば反射鏡といった反射体や、プリズムといった屈折体など、一般的な光学部品を用いて当該光路を折り曲げる構成を容易に実現することができる。
【0017】
本発明の請求項4に係る光学特性測定装置は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記第3の開口から射出された光束が入射する入射開口と、前記透過試料を透過した光束を前記第1の開口から射出する射出開口と、前記透過試料を透過した光束を前記射出開口から射出させるべく該光束の光路を折り曲げる前記光路折り曲げ手段と、前記入射開口から射出開口への光路中に透過試料を設置するための試料設置手段とを備え、前記積分球に対して着脱自在に構成された透過測定用のアダプターをさらに備えることを特徴とする。この構成によれば、装置に対して着脱自在に構成された透過測定用のアダプターが備えられているので、透過測定を行う場合にのみ、つまり必要に応じて当該アダプターを購入、装着して透過測定を行うといったことが可能となり、透過測定を行わないユーザまでもが透過測定に関するコスト負担を強いられないようにすることができる。
【0018】
また、アダプターの着脱が可能(自在)であるため、例えば、反射測定を行う場合には、当該透過測定用のアダプターを取り外すことで、透過測定及び反射測定のセッティング(又は透過測定と反射測定との測定方法の切り替え操作)が容易に且つ迅速に行えるようになる。また、透過測定用のアダプターが、第3の開口から射出された光束が入射する入射開口と、透過試料を透過した光束が射出される射出開口と、透過試料を透過した光束を射出開口から射出させるべく該光束の光路を折り曲げる光路折り曲げ手段と、入射開口から射出開口への光路中に透過試料を設置するための試料設置手段とを備えて構成されるので、当該透過測定用のアダプターを簡易な構成で実現することができる。
【0019】
本発明の請求項5に係る光学特性測定装置は、請求項4において、前記アダプターを、前記入射開口及び射出開口がそれぞれ第3の開口及び第1の開口に対応して配設されるように前記積分球に対して圧接した状態で保持する保持手段をさらに備えることを特徴とする。この構成によれば、透過測定用のアダプターが、保持手段によって、入射開口及び射出開口がそれぞれ第3の開口及び第1の開口に対応して配設されるように積分球に対して圧接した状態で保持されるので、装置(積分球)に当該アダプターを簡単に装着することができ、ひいては透過測定時の作業性が向上する。
【0020】
本発明の請求項6に係る光学特性測定装置は、請求項5において、前記保持手段は、一端側を回転中心として回転し、該回転に伴い他端側で前記アダプターを積分球に押し付けることが可能に構成された押付部材と、前記押付部材に対して、前記アダプターを積分球に押し付ける方向に付勢力を与える付勢部材とを備えたものであることを特徴とする。この構成によれば、保持手段が、一端側を回転中心として回転し、該回転に伴い他端側でアダプターを積分球に押し付けることが可能に構成された押付部材と、押付部材に対して、アダプターを積分球に押し付ける方向に付勢力を与える付勢部材とを備えたものとされるので、当該アダプターを保持する(積分球に装着する)ための保持手段を簡易な構成で実現することができる。
【0021】
本発明の請求項7に係る光学特性測定装置は、請求項1〜6のいずれかにおいて、前記積分球の第1の開口近傍の内壁部に、前記反射試料又は透過試料の光学特性測定時の参照光を得るための参照面をさらに備え、前記受光手段は、受光光学系と、前記反射光又は透過光の分光情報測定用の試料光チャンネル、及び前記参照光の分光情報測定用の参照光チャンネルを有する分光手段とを備えたものであって、前記第1の開口から入射された反射光又は透過光と前記参照面からの参照光とを、それぞれ前記受光光学系を経て前記分光手段の試料光チャンネルと参照光チャンネルとで受光することを特徴とする。この構成によれば、受光手段が、受光光学系と、反射光又は透過光の分光情報測定用の試料光チャンネル及び参照光の分光情報測定用の参照光チャンネルを有する分光手段とを備えたものとされ、受光手段によって、第1の開口から入射された反射光又は透過光と参照面からの参照光とが、それぞれ受光光学系を経て分光手段の試料光チャンネルと参照光チャンネルとで受光されるので、共通の受光手段によって、反射光又は透過光と参照光とを同時に受光することができ、当該参照光を分光手段に導く光学系を別途設ける必要がなくなり、ひいては装置の簡素化、小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の発明によれば、反射試料の測定に際しては第1及び第2の開口を用いて測定が行われ、透過試料の測定に際しては、第3の開口が用いられるとともに、反射試料測定に用いられる第1及び第2の開口を利用して測定が行われるので、同じ装置を用いて反射試料及び透過試料の光学特性の測定を行うことが可能となる。また、第3の開口から射出された照明手段の光束により照明された透過試料の透過光を、光路折り曲げ手段によって折り曲げられた光路を経て、第1の開口及び第2の開口を通して受光手段によって測定する構成により透過試料の測定が行われるので、積分球と受光手段との間に透過試料室を配置する必要がなく装置の小型化を図ることができるとともに、透過試料設置作業場所が第3の開口に対応する位置、例えば装置前面となり、積分球及び受光手段間で透過試料設置作業を行わずともよく、透過試料の設置作業がし易くなり、測定時の作業性(作業効率)を向上させることができる。また、積分球と受光手段との間に透過試料室を配置する必要がないことから、例えば受光手段を積分球に直結し、積分球によって該受光手段を支持する構成とすることができるので、高強度、高精度な光学台板或いは積分球及び受光手段を保持する保持部材等を備える必要がなく、重量やコストの低減を図ることができるとともに、各光学要素間の位置ズレ(光軸ズレ)等が発生し難くなり、ひいては高精度な光学特性測定を行うことが可能となる。
【0023】
請求項2記載の発明によれば、透過試料の設置位置と反射試料の設置位置とが一箇所(装置前面)に揃えられるので、透過試料の設置作業と反射試料の設置作業とを同じ場所で行うことが可能となり、測定時の作業性(作業効率)をより向上させることができる。
【0024】
請求項3記載の発明によれば、光路折り曲げ手段が、光の反射又は光の屈折により光束の方向を所定の方向に変更可能な1つ以上の反射体若しくは屈折体又は反射体と屈折体とを組み合わたもので構成されるので、例えば反射鏡といった反射体や、プリズムといった屈折体など、一般的な光学部品を用いて当該光路を折り曲げる構成を容易に実現することができる。
【0025】
請求項4記載の発明によれば、装置に対して着脱自在に構成された透過測定用のアダプターが備えられているので、透過測定を行う場合にのみ、つまり必要に応じて当該アダプターを購入、装着して透過測定を行うといったことが可能となり、透過測定を行わないユーザまでもが透過測定に関するコスト負担を強いられないようにすることができる。また、アダプターの着脱が可能(自在)であるため、例えば、反射測定を行う場合には、当該透過測定用のアダプターを取り外すことで、透過測定及び反射測定のセッティング(又は透過測定と反射測定との測定方法の切り替え操作)が容易に且つ迅速に行えるようになる。また、透過測定用のアダプターが、第3の開口から射出された光束が入射する入射開口と、透過試料を透過した光束が射出される射出開口と、透過試料を透過した光束を射出開口から射出させるべく該光束の光路を折り曲げる光路折り曲げ手段と、入射開口から射出開口への光路中に透過試料を設置するための試料設置手段とを備えて構成されるので、当該透過測定用のアダプターを簡易な構成で実現することができる。
【0026】
請求項5記載の発明によれば、透過測定用のアダプターが、保持手段によって、入射開口及び射出開口がそれぞれ第3の開口及び第1の開口に対応して配設されるように積分球に対して圧接した状態で保持されるので、装置(積分球)に当該アダプターを簡単に装着することができ、ひいては透過測定時の作業性が向上する。
【0027】
請求項6記載の発明によれば、保持手段が、一端側を回転中心として回転し、該回転に伴い他端側でアダプターを積分球に押し付けることが可能に構成された押付部材と、押付部材に対して、アダプターを積分球に押し付ける方向に付勢力を与える付勢部材とを備えたものとされるので、当該アダプターを保持する(積分球に装着する)ための保持手段を簡易な構成で実現することができる。
【0028】
請求項7記載の発明によれば、受光手段が、受光光学系と、反射光又は透過光の分光情報測定用の試料光チャンネル及び参照光の分光情報測定用の参照光チャンネルを有する分光手段とを備えたものとされ、受光手段によって、第1の開口から入射された反射光又は透過光と参照面からの参照光とが、それぞれ受光光学系を経て分光手段の試料光チャンネルと参照光チャンネルとで受光されるので、共通の受光手段によって、反射光又は透過光と参照光とを同時に受光することができ、当該参照光を分光手段に導く光学系を別途設ける必要がなくなり、ひいては装置の簡素化、小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(光学特性測定装置の全体的な説明)
図1は、本発明に係る光学特性測定装置の一例を示す概略構成断面図である。ただし、図1は、上記従来例に示す図8、9の関係と同様、後述の図2を光学特性測定装置10の側面図とした場合の上面図を示しており、同図の説明において、適宜、図2を参照する。光学特性測定装置10は、被測定試料、ここでは透過試料及び反射試料の光学特性を測定するものであり、図1に示すように、透過試料1、積分球2、光源3、透過測定アダプター4、受光光学系5、2チャンネル分光装置6、信号処理装置7及び制御演算装置8等を備えて構成されている。透過試料1は、食品や薬品等の色の付いた液体、或いは色の付いた透明或いは半透明のプラスチックや照明器具の拡散板等の固体などからなる、光を透過することが可能な透過特性測定対象となる試料である。
【0030】
積分球2は、内壁部が高反射率特性、高拡散特性を有する、すなわち内壁にBaSOなどの高反射率、高拡散特性を有する白色塗料が塗布された球状体であり、照明光の拡散多重反射を行うものである。積分球2は、後述する反射試料30に対する反射試料開口2s(図9の反射試料開口811aに相当)、透過試料1に対する透過試料開口2t及び受光光学系5に対する受光開口2bを備えている。透過試料開口2tは、本実施形態では反射試料開口2sの近傍位置に設けられている。また、積分球2は、該積分球2内壁の一部をなす白色拡散面からなる参照面21を有している。参照面21は、透過試料開口2t及び反射試料開口2sの近傍(図2参照)に位置し、積分球2内で拡散多重反射された照明光を、受光光学系5(受光開口2b)へ向けて参照光21rとして反射する。これにより、参照光21rは、上記試料透過光1p(又は後述の反射試料30を設置した場合の反射光)とは異なる光軸で2チャンネル分光装置6に導かれる。光源3は、キセノンフラッシュ或いは白熱ランプ等からなり、透過試料1又は後述の反射試料30を照明するべく積分球2内で発光するものである。なお、光源3は制御演算装置8に接続されている。
【0031】
透過測定アダプター4は、透過試料1を設置(収納;位置固定)するとともに、透過試料開口2tから射出された光束により透過試料1を拡散照明し、当該照明された透過試料1の透過光を、所定の光路(後述の折り曲げられた光路)を経由させて、反射試料開口2sから、受光開口2b及び後述の受光光学系5や2チャンネル分光装置6へ向けて射出するものである。透過測定アダプター4は、透過試料1を設置(収納)するための設置部材41(試料収納室)、透過試料1の透過光を反射させて光路の向きを変える反射鏡42、これらを取り囲むように設けられた筐体43(ケース)からなる。また、透過測定アダプター4は、入射開口4t及び射出開口4sを備えており、これらがそれぞれ上記透過試料開口2t及び反射試料開口2sの位置に合致するように積分球2の外周(外壁)部に装着される。
【0032】
筐体43は、例えば、該筐体43の上部などに開閉自在の蓋部材431(図2参照)を備え、透過測定の際にはこの蓋部材431を開けて透過試料1を設置(セット)する構成となっている。ただし、筐体43は、透過測定時に外部光が遮蔽される構造(暗室)となっている。反射鏡42は、筐体43内に配置されており、反射鏡421、422から構成され、透過試料1からの透過光1pを、反射鏡421によって反射鏡422へ向けて(図1中の下方へ)反射し、さらに反射鏡422によってこの透過光1pを射出開口4s(反射試料開口2s)へ向けて反射する。なお、反射鏡の個数やその配置位置(透過光の光路)はこれに限定されない。また、透過測定アダプター4(筐体43内)における透過試料1の設置位置は、図1に示す位置、すなわち積分球2外周直近部の透過試料開口2tの位置に限定されず、要は、拡散照明による所望の透過光1pが得られるのであれば、透過試料開口2tから射出された光束が反射試料開口2sに至るまでの光路中における何れの位置に設置してもよい。
【0033】
受光光学系5は、対物レンズ51(光学レンズ群)及び絞り52等からなり、受光開口2bを通って射出された透過光1p(又は反射光)や参照光21rを受光するとともに、該受光した光束を2チャンネル分光装置6の各スリットへ向けて入射させるものである。受光光学系5は、対物レンズ51の位置を例えば符号Mに示す方向に可変とする機構を備えており、これにより、後述の反射測定時の測定域(測定径)を変化させることが可能とされている。例えば図1に示すように、対物レンズ51の位置が絞り52に近接した位置Aとなるときには例えば約25mmの測定径で測定され、絞り52より離間した位置Bとなるときには上記位置Aの場合と比べて所謂焦点が絞られた状態となり例えば約5mmの測定径で測定される、というようにして反射測定が行われる(図9に示す位置A、Bも参照)。透過測定時には、対物レンズ51の位置を、絞り52から所定距離離間した位置C(上記位置Bと同じ位置となってもよい)とすることで、透過試料1の近傍に後述の試料光スリット61sの像をつくることができ、例えばキュベット(光路長が決められている透明な四角の容器)を用いるような小さい透過試料1の測定を可能にしている。なお、絞り52の開口(絞り開口52a)の径と、後述の入射スリット61との距離が固定されているので、対物レンズ51の位置に拘わらず、2チャンネル分光装置6への入射光のNA(Numerical Aperture;開口数)は一定に保たれる。
【0034】
2チャンネル分光装置6は、受光光学系5からの入射光に対する分光測定を行い、該入射光の分光分布データ(分光情報)を出力するものである。2チャンネル分光装置6は、分光装置本体60に、入射スリット61、コリメータレンズ62、回折格子63、2チャンネルセンサーアレイ64及びフィールドレンズ65を備えている。入射スリット61は、試料光、すなわち透過試料1からの透過光1s又は反射試料からの反射光が入射する試料光スリット61s、及び参照面21からの参照光21rが入射する参照光スリット61rを備えるスリット体である。コリメータレンズ62は、入射スリット61を通過した光束を平行光束にして回折格子63に入射させるとともに、該回折格子63により反射された波長分散光を2チャンネルセンサーアレイ64に入射(結像)させるもの(光学レンズ)である。回折格子63は、該回折格子63に入射された光を波長毎に異なる方向に分散反射するものである。2チャンネルセンサーアレイ64は、複数の受光素子(画素列)からなる試料光チャンネル64s及び参照光チャンネル64rを備え、当該各チャンネルに入射した試料光及び参照光21rの波長分散光を受光して分光分布情報を各チャンネル出力として出力するものである。フィールドレンズ65は、入射スリット61近傍に配設され、絞り開口52aと回折格子63とを共役にし、試料光スリット61s及び参照光スリット61rを通過した光束を有効に回折格子63に導くもの(光学レンズ)である。
【0035】
信号処理装置7は、2チャンネルセンサーアレイ64における試料光チャンネル64s及び参照光チャンネル64rからの試料光及び参照光21rの分光分布に準じた画素出力(チャンネル出力)に対する信号処理を行い、画素信号として制御演算装置8に出力するものである。制御演算装置8は、各制御プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、演算処理や制御処理用のデータを格納するRAM(Random Access Memory)、及び当該制御プログラム等をROMから読み出して実行するCPU(中央演算処理装置)等からなり、光学特性測定装置10全体の動作制御を司るものである。具体的には、光源3の点灯動作や信号処理装置7を介した2チャンネルセンサーアレイ64の受光信号取り込みに関する駆動制御を行ったり、信号処理装置7からの画素信号(分光情報)に基づいて、測定試料(透過試料1や反射試料)の分光特性(透過特性や反射特性)に関する各種演算処理を行う。
【0036】
このような構成を備える光学特性測定装置10は、透過測定を行う場合、制御演算装置8の指令によって光源3が発光すると、透過試料開口2t及び入射開口4tを通して透過試料1が拡散照明される。そして、拡散照明による透過試料1の透過光における該試料面に略垂直な成分(透過光1p)が、筐体43内の反射鏡421、422による反射によって向きを変え(折り曲げられ)、射出開口4s及び反射試料開口2sを通って積分球2内に射出され、受光開口2b、受光光学系5(対物レンズ51及び絞り開口52a)及びフィールドレンズ65を経て2チャンネル分光装置6の試料光スリット61sに入射される。一方、反射試料開口2s及び透過試料開口2t近傍の積分球2内壁の参照面21の反射光の略垂直な成分(参照光21r)が、上記透過光1pと同時に、受光開口2b、受光光学系5(対物レンズ51及び絞り開口52a)及びフィールドレンズ65を経て2チャンネル分光装置6の参照光スリット61rに入射する。2チャンネル分光装置6及び信号処理装置7は、これら試料光スリット61s及び参照光スリット61rに入射した透過光1p及び参照光21rの分光分布に準じた画素信号を制御演算装置8に送信し、制御演算装置8はこれらの画素信号に基づいて透過試料1の分光透過特性を算出する。
【0037】
光学特性測定装置10によって反射測定を行う場合は、図8、9に示す従来の方法と同様、後述の図4、5に示すように反射試料30を反射試料開口2sに設置し(この場合、透過試料開口2tが塞がれた状態にする)、該反射試料からの反射光を、受光開口2b、受光光学系5(対物レンズ51及び絞り開口52a)及びフィールドレンズ65を経て2チャンネル分光装置6の試料光スリット61sに入射させる。同時に、参照面21からの参照光21rを、受光開口2b、受光光学系5(対物レンズ51及び絞り開口52a)及びフィールドレンズ65を経て2チャンネル分光装置6の参照光スリット61rに入射させ、これら反射光及び参照光21rから、2チャンネル分光装置6、信号処理装置7及び制御演算装置8によって反射試料30の分光反射特性を求める。
【0038】
なお、上記透過測定においては、透過試料1が参照面21からの参照光21rの光路外に配置されており(例えば図10に示すように受光開口2bの位置に配置されず)、参照光21rが透過試料1を透過することはないので、換言すれば、試料透過光1pが試料反射光と同様に反射試料開口2sから受光光学系5へ導かれる構成となっているので、反射測定を行う場合と同様、試料光(透過光1p)と参照光21rとを共通の受光光学系5を用いて2チャンネル分光装置6に導くことができる。また、透過試料開口2tが反射試料開口2sの近傍位置に備えられているので、透過試料の設置位置を反射試料の設置位置と一箇所に揃えることができ、すなわち各測定における作業位置を光学特性測定装置10の前面側(ここでは光学特性測定装置10の積分球2側を装置前面とする)に統一することができるため、作業性を向上させることができ、また、入射開口4t(透過試料開口2t)から射出開口4s(反射試料開口2s)までの光路(折り曲げ経路)を短くすることができ、透過測定アダプター4の小型化、簡素化を図ることが可能となる。また、参照面21が反射試料開口2s及び透過試料開口2tの近傍に設けられ、この位置から受光開口2b及び受光光学系5へ向けて参照光21rを射出することができるため、図10に示す光学ファイバー803等を別途備える必要がなく、ひいては装置の小型化、簡素化を図ることができる。
【0039】
ところで、図1に示す光学特性測定装置10は、より具体的な構成として、例えば図2、3に示すように、透過測定アダプター4を保持するための保持機構9を備えている(ただし、図3は図2に示す保持機構9の上面図を示している)。この保持機構9は、押圧部材91、押え部材92及び付勢部材93等からなる構成されている。押圧部材91はその一端側を回転軸911として回転可能に構成されたアーム状の部材であり、押え部材92に対して例えば符号Fで示す矢印方向(矢印F方向)に押圧力を加えるものである。押え部材92は、押圧部材91の他端側に設けられ、例えば透過測定アダプター4における射出開口4sと反対側の側面部432に圧接して、押圧部材91からの押圧力を好適に透過測定アダプター4に伝達するものである。付勢部材93は、例えば一端(端部931)が固定されたスプリング(コイルバネ)からなり、押圧部材91に対し、該押圧部材91が回転軸911を中心として符号Gで示す矢印方向(矢印G方向)に回転しようとする向きに付勢力を与えるものである。
【0040】
このような構成を備える保持機構9において、例えば積分球2と押え部材92との間に透過測定アダプター4を取り付けようと、矢印F方向と反対方向に押圧部材91及び押え部材92が押し開かれると、これに反発して付勢部材93に押圧部材91を矢印G方向に引っ張るような付勢力(引っ張り力)が発生する。これにより、押圧部材91は当該発生した付勢力によって押え部材92を介して透過測定アダプター4に押圧力を与えることができる。透過測定アダプター4は、この押圧力により積分球2(積分球2の透過試料開口2t及び反射試料開口2sの位置)に押し付けられるようにして装着(位置固定)される。
【0041】
上記透過測定アダプター4は、積分球2に対する位置決めを行うための位置決め構造を備えることが好ましい。具体的には、透過測定アダプター4は、積分球2との接触面に例えば2つ以上の位置決めピン(図示省略)を備え、この位置決めピンを積分球2外周面の嵌合孔(図示省略)に嵌合させることで、透過測定アダプター4の入射開口4t及び射出開口4sが積分球2の透過試料開口2t及び反射試料開口2sの位置と合致するように積分球2に装着される。これにより、透過測定アダプター4装着時の取り付け誤差の発生が防止され、透過試料1に対する照明光の照射、或いは透過光1pの積分球2内への入射(受光光学系5への入射)が好適に(精度良く)行えるようになる。
【0042】
また、上記押え部材92は押圧部材91に対してフレキシブルに、つまり押圧部材91の矢印F方向の移動に対して柔軟に可動できる状態に取り付けられていることが好ましい。具体的には、例えば押圧部材91の突起体921の先端をボール状とし(図示せず)、押え部材92とボールジョイントを構成することで、この突起体921先端のボールを中心として、押え部材92が押圧部材91に対して任意方向に回動可能とされる構成とすることができる。これにより、押圧部材91の回転軸911を中心とした回転移動による押圧部材91の押し付け角度(傾き)の変位に依らず、常に一定方向(例えば矢印F方向)に押圧力を加えることが可能となるため、積分球2との間で透過測定アダプター4を好適につまり安定して保持することができる。
【0043】
また、押圧部材91は上記アーム状体に限定されず、任意の形状・構成でよい。また、付勢部材93も図2に示す構成に限らず、例えば押圧部材91を挟んで図2に示す位置と反対側に設けて、押圧部材91を矢印G方向に押すようにして付勢力を与える構成としてもよい。また、押圧部材91自身を例えば板状のバネで構成し(付勢部材93を設けず)、このバネによる付勢力によって押え部材92や透過測定アダプター4に押圧を加える構成としてもよい。また、保持機構9は、押圧部材91と押え部材92とが一体になって形成されたものであってもよいし、押え部材92を備えず、押圧部材91のみで構成されたものであってもよい。いずれにしても、保持機構9は、透過測定アダプター4(又は後述の反射試料30)を積分球2に対して圧接させた状態で取り付けることが可能であり且つ容易に取り外し可能な構成であればいずれの構成であってもよい。
【0044】
光学特性測定装置10は、保持機構9の他に、受光光学系5やフィールドレンズ65を支持するための例えば複数の柱状体或いは筐体からなる支持部材101(図10の支持部材804参照)を備えてもよい。これは、上記図10に示すように、従来では、積分球811と対物光学系(対物レンズ812や絞り813)との間に大きな透過試料室840を備えるため、これら積分球811、透過試料室840、対物光学系及び分光装置(2チャンネル分光装置820等)を保持部材805によって保持し、これらを十分な強度と精度とを有する光学台板806上に固定して位置精度を確保する必要があった。しかしながら、図2(図1)に示すように、本光学特性測定装置10では、積分球2と受光光学系5との間に透過試料室840を備える必要がないため、受光光学系5と分光装置(2チャンネル分光装置6)とを、上記支持部材101によって積分球2に固定することが可能となる。これにより、強度と精度とを有する上記光学台板806が不要となり、コスト低減や重量低減を図ることができるとともに、測定に関わる全ての光学要素が積分球2に固定されるので、光学要素間の相対的な位置変化を生じ難くする、すなわち光学配置の位置ズレの発生を防止することができる。
【0045】
図4は、光学特性測定装置10に反射試料を設置する場合の一例を示す上面図であり、図5は、その側面図である。これらの図に示すように、光学特性測定装置10を用いて反射測定を行う場合、保持機構9によって、反射試料30を積分球2(積分球2の反射試料開口2sの位置)に圧接させて保持し、換言すれば、反射試料30を保持機構9つまり押え部材92と積分球2との間で挟持された状態に装着し、反射試料開口2sにおいて反射試料30表面が拡散照明されるようにすればよい。この場合、透過測定の際に使用する透過試料開口2tは、積分球2の一部をなす、すなわち内面が積分球2内壁と同様の高反射率、高拡散特性を有した蓋部材22によって塞がれる。この蓋部材22は、上記図10で説明した白板であってもよい。なお、蓋部材22の主たる役割は、積分球2内への異物の侵入防止であり、高反射率、高拡散特性は必ずしも必要ではない。
【0046】
以上のように本実施形態における光学特性測定装置10によれば、積分球2の反射試料開口2s(第1の開口)に配設された反射試料30が、光源3を内蔵する当該積分球2(照明手段)の光束によって照明(拡散照明)され、該照明された反射試料30の反射光が、積分球2の受光開口2b(第2の開口)を通して、受光光学系5及び2チャンネル分光装置6(受光手段)によって測定され、当該受光手段による測定情報に基づいて信号処理装置7及び制御演算装置8(演算処理手段)によって反射試料30の反射特性が算出される。また、透過試料1に対する透過試料開口2t(第3の開口)が、積分球2における反射試料開口2sと異なる位置に設けられ、反射鏡42(光路折り曲げ手段)によって光束(本実施形態では透過試料1から射出された透過光1p)の光路が折り曲げられる(光束の進行方向の向きが変えられる;光路が変更される)。そして、透過試料開口2tから射出された積分球2の光束によって透過試料1が照明(拡散照明)され、該照明された透過試料1の透過光1pが、反射鏡42によって折り曲げられた光路を経由して、反射試料開口2sから受光開口2b及び受光手段へ向けて射出されるとともに、該射出された透過光1pが受光手段によって測定され、該受光手段による測定情報に基づいて演算処理手段によって透過試料1の透過特性が算出される。
【0047】
これにより、反射試料30の測定を行う場合には、積分球2の反射試料開口2sにおいて照明手段の光束により照明された反射試料30からの反射光が積分球2の受光開口2bを通して受光手段によって測定されて、演算処理手段によって反射特性の算出が行われる。一方、透過試料1の測定を行う場合には、透過試料開口2tから射出された照明手段の光束により照明された透過試料1の透過光1pが、反射鏡42によって折り曲げられた光路を経て、反射試料開口2s及び受光開口2bを通して受光手段によって測定されて、演算処理手段によって透過特性の算出が行われる。すなわち、反射試料30の測定に際しては反射試料開口2s及び受光開口2bを用いて測定が行われ、透過試料1の測定に際しては、透過試料開口2tが用いられるとともに、上記反射測定に用いられる反射試料開口2s及び受光開口2bを利用して測定が行われるので、同じ光学特性測定装置10を用いて反射試料30及び透過試料1の光学特性の測定を行うことが可能となる。
【0048】
また、透過試料開口2tから射出された照明手段の光束により照明された透過試料1の透過光1pを、反射鏡42によって折り曲げられた光路を経て、反射試料開口2s及び受光開口2bを通して受光手段によって測定する構成を用いて透過試料1の測定が行われるので、積分球2と受光手段(具体的には受光光学系5)との間に図10に示すように透過試料室840を配置する必要がなくなり、装置の小型化を図ることができるとともに、透過試料設置作業場所が透過試料開口2tに対応する位置、例えば装置前面となり、積分球2及び受光手段(分光装置)間で透過試料設置作業を行わずともよく、透過試料1の設置作業がし易くなり、測定時の作業性(作業効率)を向上させることができる。
【0049】
また、積分球2と受光手段との間に透過試料室840を配置する必要がないことから、例えば図2に示すように支持部材101を用いて受光手段を積分球2に直結させ、積分球2によって該受光手段を支持する構成とすることができるので、高強度、高精度な光学台板(図10に示す光学台板806参照)或いは積分球2及び受光手段を保持する保持部材(図10に示す保持部材805参照)等を備える必要がなく、重量やコストの低減を図ることができるとともに、各光学要素間の位置ズレ(光軸ズレ)等が発生し難くなり、ひいては高精度な光学特性測定を行うことが可能となる。
【0050】
また、透過試料開口2tが、反射試料開口2sの近傍に設けられる、すなわち、透過試料1の設置位置と反射試料30の設置位置とが装置における一箇所(装置前面)に揃えられるので、透過試料1の設置作業と反射試料30の設置作業とを同じ場所で行うことが可能となり、測定時の作業性(作業効率)をより向上させることができる。
【0051】
また、光学特性測定装置10に、積分球2に対して着脱自在に構成された透過測定アダプター4(透過測定用開口部アクセサリー230)が備えられているので、透過測定を行う場合にのみ、つまり必要に応じて当該透過測定アダプター4を購入、装着して透過測定を行うといったことが可能となり、透過測定を行わないユーザまでもが透過測定に関するコスト負担を強いられないようにすることができる。
【0052】
また、透過測定アダプター4(透過測定用開口部アクセサリー230)の着脱が可能(自在)であるため、例えば、反射測定を行う場合には、当該透過測定アダプター4を取り外すことで、透過測定及び反射測定のセッティング(又は透過測定と反射測定との測定方法の切り替え操作)が容易に且つ迅速に行えるようになる。また、透過測定アダプター4が、透過試料開口2tから射出された光束が入射する入射開口4tと、透過試料を透過した光束が射出される射出開口4sと、透過試料を透過した光束を射出開口4sから射出させるべく該光束の光路を折り曲げる反射鏡42と、入射開口4tから射出開口4sへの光路中に透過試料1を設置するための設置部材41(試料設置手段)とを備えて構成されるので、当該透過測定アダプター4を簡易な構成で実現することができる。
【0053】
また、透過測定アダプター4が、保持機構9(保持手段)によって、入射開口4t及び射出開口4sがそれぞれ透過試料開口2t及び反射試料開口2sに対応して配設されるように積分球2に対して圧接した状態で保持されるので、装置(積分球2)に当該透過測定アダプター4を簡単に装着することができ、ひいては透過測定時の作業性が向上する。
【0054】
また、保持機構9が、一端側を回転中心として回転し、該回転に伴い他端側で透過測定アダプター4を積分球2に押し付けることが可能に構成された押圧部材91及び押え部材92(押付部材)と、押付部材(具体的には、この押付部材における押圧部材91)に対して、透過測定アダプター4を積分球2に押し付ける方向に付勢力を与える付勢部材93とを備えたものとされるので、当該透過測定アダプター4を保持する(積分球2に装着する)ための保持機構9を簡易な構成で実現することができる。
【0055】
さらに、受光手段が、受光光学系5と、反射光又は透過光の分光情報測定用の試料光チャンネル及び参照光の分光情報測定用の参照光チャンネルを有する分光手段とを備えたものとされ、受光手段によって、反射試料開口2sから入射された反射光又は透過光1pと参照面21からの参照光21rとが、それぞれ受光光学系5を経て2チャンネル分光装置(分光手段)の試料光チャンネル64sと参照光チャンネル64rとで受光されるので、共通の受光手段によって、反射光又は透過光と参照光とを同時に受光することができ、当該参照光21rを2チャンネル分光装置に導く光学系(例えば図10に示す光学ファイバー803)を別途設ける必要がなくなり、ひいては装置の簡素化、小型化を図ることができる。
【0056】
なお、本発明は、以下の態様をとることができる。
(A)透過測定アダプター4(透過測定用開口部アクセサリー230)における反射鏡42は、反射するものであれば、鏡でなくともよい。また、このように反射鏡42を用いた構成に限定されず、例えばプリズム、レンズ、光ファイバー、或いは反射鏡を含めこれらを組み合わせたもの、すなわち、光の反射、或いは屈折を利用して、光束の方向を所定の方向に変更する(光路を折り曲げる)ことが可能な1つ以上の反射体若しくは屈折体又は反射体と屈折体とを組み合わたものが採用可能である。このようにすることで、上記反射鏡(反射体)や、プリズム(屈折体)など、一般的な光学部品を用いて当該光路を折り曲げる構成を容易に実現することが可能となる。
【0057】
(B)図6に示すように、積分球200(この変形態様における上記積分球2に相当する積分球を積分球200とする)を、反射試料開口201sの周辺部(この周辺部には参照面を含んでいる)における例えば符号202に示す位置(分断位置202)で分断して二分し、当該反射試料開口201s周辺の部分を、積分球本体220に対して着脱自在なアクセサリー(開口部アクセサリーという)とする構成にしてもよい。この反射測定用の開口部アクセサリー(反射測定用開口部アクセサリー210という)の積分球本体220への装着は、例えば該開口部アクセサリー周縁部における所定数の例えば3個程度のネジ止め固定により行うことができる。
【0058】
上記図6の場合に対応して、図7に示すように、積分球200を分断位置202で二分した構成とし、透過試料開口230tと射出開口230sとを備え(参照面も備えている)、上述の透過測定アダプター4と一体化されてなる着脱自在な透過測定用の開口部アクセサリー(透過測定用開口部アクセサリー230という)とする構成としてもよい。この場合の装着方法も上記反射測定用開口部アクセサリー210の場合と同じである。このように図6、7に示す構成とすることで、反射測定時には積分球本体220に反射測定用開口部アクセサリー210を装着し、透過測定時には同積分球本体220に透過測定用開口部アクセサリー230を装着することができる。したがって、測定方法(測定試料)に応じて当該アクセサリーを交換することで、透過測定と反射測定との切り替え作業が効率良く行えるようになる。また、透過測定及び反射測定においてアクセサリー部分以外は同じ装置構成とすることができるため、該アクセサリー部分をオプション化して光学特性測定装置10を測定の種類に応じて使い分けることができ(例えば透過測定を行わないユーザは反射測定用開口部アクセサリー210のみ購入すればよい)経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る光学特性測定装置の一例を示す概略構成断面図である。
【図2】図1に示す光学特性測定装置の実際における具体的な構成の一例を示す側断面図である。
【図3】図2に示す保持機構の上面図である。
【図4】光学特性測定装置に反射試料を設置する場合の一例を示す上面図である。
【図5】光学特性測定装置に反射試料を設置する場合の一例を示す側面図である。
【図6】反射測定アクセサリーを説明する図である。
【図7】透過測定アクセサリーを説明する図である。
【図8】従来の光学特性測定装置を示す図である。
【図9】従来の光学特性測定装置を示す図である。
【図10】従来の光学特性測定装置を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 透過試料
2 積分球(照明手段)
3 光源(照明手段)
4 透過測定アダプター(アダプター)
5 受光光学系(受光手段)
6 2チャンネル分光装置(受光手段、分光手段)
7 信号処理装置(演算処理手段)
8 制御演算装置(演算処理手段)
9 保持機構(保持手段)
91 押圧部材(押付部材)
92 押え部材(押付部材)
93 付勢部材
10 光学特性測定装置
21 参照面
30 反射試料
41 設置部材(試料設置手段)
42 反射鏡(光路折り曲げ手段)
101 支持部材
210 反射測定用開口部アクセサリー
220 積分球本体
230 透過測定用開口部アクセサリー
803 光学ファイバー
805 保持部材
806 光学台板
840 透過試料室
1p 透過光
2b 受光開口(第2の開口)
2s 反射試料開口(第1の開口)
2t 透過試料開口(第3の開口)
4s、841b 射出開口
4t、841a 入射開口
21r 参照光
64r 参照光チャンネル
64s 試料光チャンネル
230s 射出開口
230t 透過試料開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を内蔵する積分球からなる照明手段と、該照明手段によって照明された試料からの光束を受光する受光手段と、所定の演算を行う演算処理手段とを備え、
前記積分球の第1の開口に配設された反射試料を前記照明手段の光束によって照明し、該照明された反射試料の反射光を積分球の第2の開口を通して前記受光手段によって測定し、該受光手段による測定情報に基づき前記演算処理手段によって反射試料の反射特性を算出することが可能に構成された光学特性測定装置であって、
前記積分球における第1の開口と異なる位置に設けられた、透過試料に対する第3の開口と、
光束の光路を折り曲げることが可能に構成された光路折り曲げ手段とを備え、
前記第3の開口から射出された照明手段の光束によって透過試料を照明し、該照明された透過試料の透過光を、前記光路折り曲げ手段によって折り曲げられた光路を経て第1の開口から第2の開口及び受光手段へ向けて射出するとともに、該射出された透過光を受光手段によって測定し、該受光手段による測定情報に基づき前記演算処理手段によって透過試料の透過特性を算出することを特徴とする光学特性測定装置。
【請求項2】
前記第3の開口は、前記第1の開口の近傍に設けられたものであることを特徴とする請求項1記載の光学特性測定装置。
【請求項3】
前記光路折り曲げ手段は、光の反射又は光の屈折により前記光束の方向を所定の方向に変更可能な1つ以上の反射体若しくは屈折体又は反射体と屈折体とを組み合わたもので構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の光学特性測定装置。
【請求項4】
前記第3の開口から射出された光束が入射する入射開口と、
前記透過試料を透過した光束を前記第1の開口から射出する射出開口と、
前記透過試料を透過した光束を前記射出開口から射出させるべく該光束の光路を折り曲げる前記光路折り曲げ手段と、
前記入射開口から射出開口への光路中に透過試料を設置するための試料設置手段とを備え、前記積分球に対して着脱自在に構成された透過測定用のアダプターをさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学特性測定装置。
【請求項5】
前記アダプターを、前記入射開口及び射出開口がそれぞれ第3の開口及び第1の開口に対応して配設されるように前記積分球に対して圧接した状態で保持する保持手段をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の光学特性測定装置。
【請求項6】
前記保持手段は、一端側を回転中心として回転し、該回転に伴い他端側で前記アダプターを積分球に押し付けることが可能に構成された押付部材と、
前記押付部材に対して、前記アダプターを積分球に押し付ける方向に付勢力を与える付勢部材とを備えたものであることを特徴とする請求項5記載の光学特性測定装置。
【請求項7】
前記積分球の第1の開口近傍の内壁部に、前記反射試料又は透過試料の光学特性測定時の参照光を得るための参照面をさらに備え、
前記受光手段は、受光光学系と、前記反射光又は透過光の分光情報測定用の試料光チャンネル、及び前記参照光の分光情報測定用の参照光チャンネルを有する分光手段とを備えたものであって、
前記第1の開口から入射された反射光又は透過光と前記参照面からの参照光とを、それぞれ前記受光光学系を経て前記分光手段の試料光チャンネルと参照光チャンネルとで受光することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学特性測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−10362(P2007−10362A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188708(P2005−188708)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】