説明

光学的測定を血液培養瓶に対して行う装置

封止可能な容器内の陰性血液培養体から陽性血液培養体を迅速に弁別し、封止可能な容器内の血液量と赤血球容積率との組み合わせを決定するための装置および方法。この装置は、光束をある傾斜角で血液培養体に照射し、データ解析器に接続された画像検出器に映し出される後方散乱光の非対称空間分布をもたらす光源を具えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液培養瓶の如き封止可能な容器内の微生物を増殖に基づいて検出する分野に概ね関する。特に本発明は、陰性血液培養体から陽性血液培養体を迅速に弁別し、かつ封止可能な容器内の血液量と赤血球容積率との組み合わせを決定するために用いることができる封止可能な容器に対して光学的測定を行うためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、患者体液中の細菌またはマイコバクテリアなどの生理活性物質の存在は、培養瓶を使用して決定される。少量の体液が、封入ゴム製隔壁を介して、培地が入っている滅菌瓶内に注入される。この瓶は、37℃で保温され、細菌が増殖していないか監視される。知られている方法では、好ましくは、細菌増殖の代謝副産物である、培養瓶の二酸化炭素含量の変化を検出する。二酸化炭素濃度の変化は、通常、培養瓶の内壁に配された化学センサを使用して監視される。化学センサは、その色を変化させるか、またはその蛍光強度を変化させることにより、二酸化炭素濃度の変化に応答する(例えば非特許文献1および特許文献1,2,3,4,5を参照のこと。これらを参照することによりこれらの内容のすべては本明細書に組み入れられる)。さらに、蛍光センサ物質の蛍光寿命の二酸化炭素依存および/または酸素依存変化を利用することも提案されている(例えば特許文献6,7,8,9を参照のこと。これらを参照することによりこれらの内容のすべては本明細書に組み入れられる)。
【0003】
しかし、これらの方法および他の知られている方法は、一般に、検出の確実さに関する特定の因子を考慮していない。これらの因子としては、検出を行う上で十分に大きな血液量および抽出から検出までの時間遅延の問題がある。
【0004】
血液量因子に関して、血液試料から細菌を適時に、効率よく回収するためには、十分に多い血液量が必要であることが判明している(例えば非特許文献2,3,4,5,6,7,8,9を参照このこと。これらを参照することによりこれらの内容のすべては本明細書に組み入れられる)。
【0005】
大量の血液を培養瓶で使う必要があるのは、微生物種によっては、患者血液1mL当たりの細胞形成単位数が非常に小さくなる場合があるからである。実際、患者の様態に応じて、最適な量よりも少ない量の血液が頻繁に使用され、このような検査の信頼性に対し悪影響を及ぼす。
【0006】
しかし、この時点までに、血液量測定の決まりきったやり方というものは、市場に出回っていない。充填し、平均重量を差し引いた後の試料容器の秤量は、一部の研究において使用されてきた(例えば非特許文献10を参照のこと。これを参照することによりその内容の全ては本明細書に組み入れられる)。しかし、個々の容器の重量にはばらつきがあるため、この秤量法は、特に関わる血液量が少ない場合に、かなりの誤差に悩まされる。
【0007】
当業者に知られているように、血液自体の代謝作用は、容器内のバクテリア活性とは無関係に、二酸化炭素の濃度の増加の観察された上昇に寄与し、従って疑陽性の培養結果を生じさせる可能性がある。この人為的要素の大きさは血液量に依存し、その大きさは、血液量が多いほど大きい。この結果、疑陽性培養結果を回避しながら検出までの時間を短縮しようと高度な検出アルゴリズムの最適化に多大な労力が振り向けられている(例えば非特許文献11および12を参照のこと。これらを参照することによりこれらの内容のすべては本明細書に組み入れられる)。
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,945,060号明細書
【特許文献2】米国特許第5,217,875号明細書
【特許文献3】米国特許第5,266,486号明細書
【特許文献4】米国特許第5,372,936号明細書
【特許文献5】米国特許第5,580,784号明細書
【特許文献6】米国特許第5,593,854号明細書
【特許文献7】米国特許第5,686,300号明細書
【特許文献8】米国特許第6,074,870号明細書
【特許文献9】米国特許第6,080,574号明細書
【非特許文献1】Thorpe et al. "BacT/Alert: An automated colorimetric microbial detection system", J. Clin. Microbiol., July 1990, pp. 1608-12
【非特許文献2】Jonsson et al. "Theoretical aspects of detection of bacteremia as a function of the volume of blood cultured", APMIS 1993 (101:595-601)
【非特許文献3】Mermel et al. "Detection of bacteremia in adults - Consequences of culturing an inadequate volume of blood", Annals Internal Med 1993 (119:270-272)
【非特許文献4】Arpi et al. "Importance of blood volume cultured in the detection of bacteremia", Eur J Clin Microbiol Infect Dis 1989 (8:838-842)
【非特許文献5】Isaacman et al. "Effect of number of blood cultures and volume of blood on detection of bacteremia in children", J Pediatr 1996 (128:190-195)
【非特許文献6】Li et al. "Effects of volume and periodicity on blood cultures", J Clin Microbiol 1994 (32:2829-2831)
【非特許文献7】Wilson et al. "Controlled evaluation of Bact/Alert standard anaerobic and FAN anaerobic blood culture bottles for the detection of bacteremia and fungemia", J Clin Microbiol 1995 (33:2265-2270)
【非特許文献8】Wormser et al. "Improving the yield of blood cultures for patients with early Lyme Disease", J Clin Microbiol 1998 (36:296-298)
【非特許文献9】Shafazand et al. "Blood cultures in the critical care unit - Improving utilization and yield", Chest 2002 (122:1727-1736)
【非特許文献10】Mensa et al. "Yield of blood cultures in relation to the cultured blood volume in BACTEC 6A bottles", Med Clin (Barcelona) 1997 (108:521-523)
【非特許文献11】Marchandin et al. "Detection kinetics for positive blood culture bottles by using the VITAL automated system", J Clin Microbiol 1995 (33:2098-2101)
【非特許文献12】Chapin et al. "Comparison of BACTEC 9240 and Difco ESP blood culture systems for detection of organisms from vials whose entry was delayed", J Clin Microbiol 1996 (34:543-549)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
時間遅延因子に関し、血液培養容器は、患者の血液が接種された後、計測器を備えた血液培養検出システムに即座に装填されることが好ましかろう。しかし、接種時間と計測器の保温時間との間に実質的な時間遅延が頻繁に発生することがよく知られている。いくつかの国々では、最大48時間までの遅延時間が予測され得る。この「容器装填遅延」現象は、遅延期間中、血液培養容器においてすでに細菌増殖を与える可能性のある高い温度になっている場合、重大な問題を引き起こすことが考えられる。その結果、容器は、検出器に到達したときにはすでに「陽性」である可能性がある(つまり、成長しきった微生物群を含んでいる可能性がある)。もちろん、容器を保温し、35℃の熱平衡になるのを待ち、次いで、さらなる細菌増殖が発生しているかどうか容器を監視するのは、勧められない。その代わり、「陽性」があり得るか否かを入ってくる瓶を迅速にチェックできれば大いに有益であるし、すでに陽性であれば、適切な抗生物質が患者治療のため選択できるように、微生物の同定を行う計測器に容器を転送することができる。
【0010】
加えて、計測器付きの検出システムに到着した時点で「遅延」血液培養容器がすでに成長しきった微生物群を含んでいる場合、このシステムのセンサは、一般的な過度現象を認識しない。従って、このシステムは、絶対検出信号の大きさにのみ依存する可能性がある。特に変動の大きい血液量の培養瓶が予想される場合、この問題は、検出方法の遂行特性に依存して一般的な監視条件よりも大きなものとなる。
【0011】
従って、陰性血液培養体から陽性血液培養体を迅速に弁別し、人体から抽出した後の血液量と血液試料の赤血球容積率との組み合わせを決定することができるシステムおよび方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によると、装置は、液体試料、例えば培養基と血液との混合物を含む容器に対して光学的測定を行う。この装置は、容器の壁の所定個所に光束を当てて光束が瓶の壁の所定個所における垂線からある角度だけずれるようにし、それにより所定個所の近傍の容器内の培養基と血液との混合物から後方散乱した光の非対称空間分布を発生することができる光源と、この所定個所の近傍にて容器内の培養基と血液との混合物から後方散乱した光の空間分布を概ね単一平面に映し出し、容器の外壁および内壁の界面で反射した光束が画像形成手段に入らないように配置された画像形成手段と、画像検出器とを装備している。
【0013】
他の実施形態において、画像検出器は、非対称空間光分布の解析的特徴を抽出し、データを供給するためデータ解析システムに接続される。一つの形態において、このような特徴およびデータは、封止可能な容器内の成長した微生物群の有無か、あるいは封止可能な容器内に存在する赤血球容積率と血液の量との組み合わせに関し、培養基と血液との混合物の状態を特徴付けるために用いることができる。
【0014】
本発明の他の実施形態によると、封止可能な容器に対して光学的測定を行う方法は、液体試料を収めた容器を用意することと、容器の壁の第1の場所に光束を向け、この光束は容器の壁の第1の場所における垂線から第1の角度だけずれ、それにより第1の場所の近傍にて試料からの後方散乱光の非対称空間分布をもたらすことと、容器の外壁面および内壁面の界面により反射する光束の部分の検出を実質的に回避しつつ、後方散乱する光の非対称空間分布の少なくとも一部を概ね一平面内で検出することと、後方散乱光の非対称空間分布から解析的特徴を抽出することとを具えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のいくつかの実施形態が添付図面を参照しつつ詳細に説明される。図面において同じまたは類似の要素は、異なる図面で示されているとしても、同じ参照符合により示される。
【0016】
本発明の一実施形態による血液培養物を含む封止可能な容器に対して光学的測定を行うための装置は、中に液体試料を入れた容器と、典型的には封止可能な容器と、典型的には培養基と血液との混合物が入っている円筒型容器とを含む。好ましい一実施形態において、封止可能な容器は血液培養瓶である。測定を行うために、容器を2、3回ひっくり返し、均一な懸濁を生じさせると都合がよい。その後、懸濁液は1/4時間またはさらにそれ以上長い期間に亙って実質的に安定する。先進の血液培地は、抗生物質を吸収する樹脂ビーズを含むことができる。この場合、測定を行う前に、瓶を回した後、数秒間の待ち時間があるのが好ましい。この短い期間があれば、ビーズは充分に処理することができる。容器は、用いられる光の波長に対して光学的に透明である。
【0017】
一実施形態において、光学的測定を行うための装置は、光束を容器の壁に当てるようにされた光源を含む。この光束は、容器の壁に対する垂線からある角度だけずれ、既知の場所の近傍にて容器内の液体から後方散乱した光の非対称空間分布を生じさせる。この実施形態の装置は、既知の場所の近傍の瓶内の培養基と血液との混合物から後方散乱された光の空間分布を一般的には一平面内に映し出す画像形成手段をさらに含む。この画像形成手段は、瓶の外壁および内壁の界面によって反射する光束が画像形成手段に入らないように配置されることが好ましい。
【0018】
本発明の一実施形態による装置は、映し出された後方散乱光の空間分布の少なくとも一部を記録するのに好適な光検出器を先の平面内にさらに含む。この光検出器は、非対称空間光分布の解析的特徴を抽出してデータを供給するためのデータ解析システムに対して一般的に接続される。これらの特徴およびデータは、培養基と血液との混合物の状態を、容器内の育成された微生物群の有無に関するか、あるいは瓶内に存在する赤血球容積率と血液の量との組み合わせに関して特徴付けるために用いることができる。
【0019】
図1Aは、画像検出器を有する本発明の一実施形態による装置の光学配置の概略を示す。「画像検出器」という用語は、空間的1次元または二次元光分布を記録するのに好適な、任意の光検出器またはそれと同等の機器を意味する。
【0020】
図1Aにおいて、血液培養瓶(1)は、外側空気−壁の界面(2)と、内側壁−液体の界面(3)と、一般的なゴム製隔壁(4)と、血液培養懸濁液(5)(例えば培養基と血液との混合物)とを含むように示されている。光源(6)は、光束(7)をレンズ(8)の方に導き、光束(7)を空気−壁の界面(2)の1次光束衝突点(9)にて小さな点に集束させる。1次光束衝突点(9)において、光束(7)は、内側壁−液体の界面(3)にある点に向けて屈折する。屈折した光束(7)が当たる内側壁−液体の界面(3)の点は、2次光束衝突点(11)である。2次光束衝突点(11)において、光束(7)は、懸濁液(5)へと再び屈折し、ここで光束(7)により運ばれる光子が多数の散乱および吸収事象を受け、その結果、懸濁液(5)により再放出される後方散乱光子の空間分布が得られる。後方散乱光子の空間分布の強度および分布内において、懸濁液(5)の内容物に関する情報を抽出することができる。
【0021】
この実施形態によると、懸濁液(5)により再放出される後方散乱光子の空間分布の近傍に配置されるのは、画像形成手段(12)および光検出器(13)である。画像形成手段(12)は、例えば単レンズ,円柱レンズ,対物レンズ,またはファイバ入力端が瓶の外側壁の界面の近傍に配される光ファイバアレイとすることができ、前記アレイのファイバ出力端はCCD読み取り装置(24)の近傍にある。このような光ファイバの配置は、しばしば「近焦点構成」と呼称される。実質的に類似の方法で作用する他の合焦手段もまた、画像形成手段(12)の代わりに用いることができる。画像形成手段(12)は、一つの画像面に空間光分布の像を生成し、ここに後方散乱光が映し出された空間分布の少なくとも一部を記録するのに好適な光検出器(13)が配される。光検出器(13)は、例えば光電子カメラ,デジタル二次元カメラ,二次元(2D)電荷結合素子(CDD)アレイ,直線状CCDアレイとするか、あるいは光分布の少なくとも一部を記録するために軸線に沿って移動する「映し出さない」光検出器とすることができる。あるいは、光検出器(13)を「映し出さない」静止光検出器とすることができ、この場合、画像形成手段(12)が光分布の一部を記録するために軸線に沿って移動する。実質的に同じ方法で動作する他の集光および測定機器を光検出器(13)の代わりに用いることも可能である。
【0022】
図1Aおよび図1Bに示すように、光束(7)は、瓶の壁の1次光束衝突点(9)における垂線(10)から、ある角度だけずれるように血液培養瓶(1)の壁に当てられる。光束(7)は、瓶の対称軸線に実質的に垂直な平面内を伝搬するように向けることができる。光束(7)は、さらに、瓶の対称軸線に実質的に平行な平面を伝搬するように向けることもできる。これらの2つの光束の配向は、その後のデータ解析をやりやすくする実質的に規則正しい空間光分布をもたらす。光束(7)が瓶の壁の1次光束衝突点(9)での垂線から既知の角度だけずれている限り、別な光束の配向も可能である。図1Aに示した構成では、光束(7)が瓶(1)に衝突する1次光束衝突点(9)は、瓶の円柱部分にある。しかし、本発明の他の実施形態では、光束(7)を瓶(1)の非円柱部分(例えば瓶(1)の円錐状の首部分)に向けて、あるいは瓶(1)の底に向けてさらに当てることもできる。
【0023】
図1Aの装置において、光束(7)が瓶の円柱部分に向けられ、瓶の対称軸線に実質的に垂直な平面内を伝搬するように向けられる。この実施形態において、光束(7)と瓶の壁(10)に対する垂線とのなす角度Θは、約45度である。0から90度までの間の角度が可能であるが、本発明の一実施形態においては、角度Θが約25度から約45度までの範囲にある。本発明の他の実施形態における角度Θは約35度である。
【0024】
光束(7)が血液培養瓶の壁に対して垂直に当たらないのがよいことにはいくつかの理由がある。第1に、光束(7)は、1次光束衝突点(9)にて空気−壁の界面に出会うと、空気と瓶の壁の材料との間の屈折率の違いにより強い後方反射を起こす。ゼロでない角度Θを用いることにより、1次光束衝突点(9)での瓶の外側壁の界面により反射される光束(14)が画像形成手段(12)内に入らないように、画像形成手段(12)を配することができる。同じことが、2次光束衝突点(11)で瓶の内側壁−液体の界面(3)から起こる第2の後方反射についても成り立つ。この第2の後方反射の強さは、外側空気−壁の界面(2)からの後方反射よりも弱いが、これは瓶の壁の材料と液体血液培養試料との間の屈折率の差が小さいからである。
【0025】
瓶の壁に対して光束(7)をある傾斜角で当てる第2の理由は、1次光束衝突点(9)から発せられる正の後方反射を引き起こす反射光束(14)だけでなく、図1Bに示すように予測不可能な後方散乱現象(後方散乱)(26)もあることである。小さなひび割れなどの瓶(1)の外側空気−壁の界面(2)での小さな欠陥、または指紋および塵埃などの不純物でさえも、この後方散乱(26)の発生元となる。予測不可能ということは、まったく同じ瓶における複数の記録であっても、その強度は広範囲にばらつくことを意味する。後方散乱(26)は、比較的広い円錐状領域に生じ、従って画像形成手段(12)に入って光検出器(13)のスパイク状誤差信号を引き起こす。光束(7)が瓶(1)に対して垂直入射で当てられると、このスパイク状誤差信号は、注目する信号を表す後方散乱光子の空間分布の中心のごく近傍に記録される。この領域は、懸濁液(5)の状態に関する貴重な情報を含み、従ってスパイク状誤差信号の影響を強く受け、信頼できる測定ができなくなる場合がある。
【0026】
光束(7)をある傾斜角以下で瓶の壁に当てると、上述の問題が実質的に克服される。図1Bに概略を示すように、ある角度で内側壁−液体の界面(3)のある場所(11)に到達する光束(7)は、ピーク(17)と、入射光束(7)から離れた側でゆるやかに減衰するフランク(18)と、入射光束(7)の側の急激に減衰するフランク(27)とを示す非対称空間の後方散乱光分布(15)を引き起こす。注目すべきは、1次光束衝突点(9)で外壁の界面に発生する後方散乱(26)が画像形成手段(12)および方向(16)に沿って向けられ、非対称空間の後方散乱光分布(15)の縁に配された光検出器(13)によって検出されることである。非対称空間の後方散乱光分布(15)および後方散乱(26)が組み合わさり、以下に詳しく説明する組み合わせ後方散乱光分布(200)を形成する。
【0027】
後方散乱(26)は、非対称空間の後方散乱分布(15)の急速に減衰するフランク(27)の側の位置で、つまり入射光束(7)の方向に向かって検出される。従って、ピーク(17)と、緩やかに減衰するフランク(18)と、急激に減衰するフランク(27)とは、後方散乱(26)によって乱されず、信頼できる測定が得られる。この状況は、図2Aおよび図2Bにさらに示される。
【0028】
図2Aは、内側壁−液体の界面(3)で発生する非対称の後方散乱光分布(15)と外側空気−壁の界面(2)で発生する入射光束(7)からのスパイク(30)を伴う狭い後方散乱(26)とからなる組み合わせ後方散乱光分布(200)を示す3次元(3D)データ表現の側面図である。図2Bは、図2Aに示したものと同じ組み合わせ後方散乱光分布(200)を示す立体三次元データ表現を示している。図2Aおよび図2Bから理解されるように、図1Bの後方散乱(26)は、解析が損なわれないように非対称の後方散乱光分布(15)から十分に隔たったところに位置する。
【0029】
光束(7)をある傾斜角により瓶の壁に当てる第3の理由が図2Cと、図2Dと、図2Eと、図2Fとに示されている。図2Cは、第1の光子が後方散乱される場所からの懸濁液(5)の内側の場所を破線(29A)で示しているが、これは入射光束(7)が内側壁−液体の界面(3)の1次光束衝突点(9)および2次光束衝突点(11)にて瓶(1)のガラス壁に対する垂線と一致する場合のことである。この場合、図1Aの画像形成手段(12)および光検出器(13)は、図2Cの瓶の壁に沿って全く同じX位置にすべて位置する第1の後方散乱光子に起因する後方散乱光子を受け取る。図2Eは、図2Cに示すような状況の液体−壁の界面に沿った投影距離Xに対する第1の後方散乱事象の作用を受ける光子の個数Yの関係の概略を示している。図2Eに記録された光分布は、高血液量に対応する実線の曲線と低血液量に対応する破線の曲線とを示している。
【0030】
垂線入射の場合とは対照的に、図2Dは、第1の光子が破線(29B)のように後方散乱されるところからの懸濁液(5)の内側の場所を示している。この構成では、入射光束(7)は、ガラス壁の1次光束衝突点(9)での垂線から角度Θだけずれる。当業者であれば理解できるように、光束(7)は、角度Θにて外側壁−空気の界面(2)に到達し、光の屈折のスネルの法則により、異なる角度で瓶の壁にて屈折する。このため、光束(7)は、Θよりも小さいが、Θに依存した角度Ωで内側壁−液体の界面(3)に到達する。図1Cは、角度ΘおよびΩと、入射光束(7)と、瓶の壁(10)に対する垂線との間の関係を示している。図1Aの画像形成手段(12)および光検出器(13)は、図2Dに示すように内側壁−液体の界面(3)の瓶の壁に沿った複数のX位置に配される第1の後方散乱光子に起因する後方散乱光子を受け取る。図2Fは、図2Dに示すような状況の内側壁−液体の界面(3)に沿った投影距離Xに対する第1の後方散乱事象の作用を受ける光子の個数Yの関係の概略を示している。ここもまた、図2Fの実線の曲線が高血液量に対応し、破線の曲線が低血液量に対応している。高血液量では、単位長さ当たりで、より多くの散乱事象が生じる。従って、高い後方散乱強度が内側壁−液体の界面(3)の2次光束衝突点(11)の近傍にて観察されるが、この後方散乱強度は、散乱速度が大きいために2次光束衝突点(11)からX方向に距離が長くなるほど比較的速く減衰する。低血液量では、単位長さ当たりで、より少ない散乱事象が生じる。従って、低い後方散乱強度が内側壁−液体の界面(3)の2次光束衝突点(11)の近傍にて観察されるが、さらに多くの非散乱光子がより深く、懸濁液(5)中の一方の側に伝搬することができ、この後方散乱強度は、内側壁−液体の界面(3)での2次光束衝突点(11)からX方向に距離が長くなるほど比較的ゆるやかに減衰する。従って、光束(7)を斜めの入射で瓶(1)に当てる上述のような本発明の一実施形態による装置では、低血液量および高血液量の瓶(1)をかなり高い確度で弁別する。
【0031】
図3Aは、移動光検出器を有する本発明の一実施形態による第2の装置の光学配置の概略を示す。第2の装置(60)の一部は、図1Aの光検出器(13)がフォトダイオードなどの単純な光検出器(19)で置き換えられていることを除き、図1Aに示した第1の装置(50)の一部と類似している。単純な光検出器(19)は、狭いスリット(21)を持つ不透明な板(20)により遮蔽されている。単純光検出器(19)を第1の両矢印(22)の方向に沿って移動させることにより、図1Bに示した非対称空間の後方散乱光分布(15)の一部を一方の軸線に沿って記録することができる。同じ結果は、光検出器(19)を一方の位置に静止したままにしておき、画像形成手段(12)を代わりに第2の両矢印28に沿って移動させることにより得られる。
【0032】
図3Bは、本発明の一実施形態による血液培養光学測定装置の全体の概略を示している。図1Aに示した要素に加え、本発明の例示的一実施形態における光源(6)がレーザー励振器電源(レーザー励振器)(23)に接続したレーザーとして示されている。光検出器(13)は、本発明の例示的な一実施形態において、専用CCD読み取り装置(24)に接続されるCCDカメラである。レーザー励振器(23)およびCCD読み取り装置(24)は、これら両機器共にデータを記録し、データ解析を実行し、測定結果をユーザに提示するための装置(70)の作動を制御するコンピュータ(25)に接続される。
【0033】
さらに、当業者であれば理解できるように、コンピュータ(25)は、ネットワーク(LAN,WAN,ワイヤレスインターネットまたは他の種類のネットワーク)に接続することができ、これによって1人または複数のユーザが装置(70)を遠隔で使用したり、あるいは装置(70)を自分自身で操作するか、もしくは他人が操作した結果としてデータを受信することができる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によると、完全な血液培養光学測定装置(70)は、約500nmから1500nmまでの波長の範囲内の光を発する光源を具えることができる。好ましくは、波長範囲が約600nmから約1200nmまでの範囲である。本発明のより具体的な実施形態において、約600nmから760nmまでの波長範囲内の光を発する光源を用いている。約640nmから720nmまでの波長範囲内の光を発する光源を用いた本発明の一実施形態による装置(70)を使用することで、有利な結果が得られた。光源は、レーザーや、発光ダイオードまたは上記波長範囲内で十分な強度の光を発する他の光源とすることができる。本発明の例示的な一実施形態では、約640nmの波長で約5mWの出力を発する半導体レーザーを使用している。
【0035】
本発明の他の実施形態によると、完全な血液培養光学測定システム(70)は、単純な光検出器(19)として移動するフォトダイオードを用いる第2の血液培養光学測定装置(60)の一部を使用することができる。この装置(60)はまた、周期的強度変調光束(7)および同期検出手段をさらに具えている。同期検出手段の一実施例は、ロックイン電圧計である。ロックイン電圧計を用いると、迷光と、残留室内光と、フォトダイオードの暗電流の効果による人為的要素とをなくすことができるため、確実な測定結果が得られる。リニアまたは二次元検出器アレイの場合であっても同じことが可能である。
【0036】
(実施例1)
図4は、図3Aに示す装置を用いて得られた1つの血液培養瓶における後方散乱光の空間分布の多数の記録を示している。光源(6)は、約633nmの波長で約5mWの出力を発するレーザーである。光束(7)は、瓶の壁に対する垂線から約35度の角度だけずれている。PNフォトダイオードが単純光検出器(19)として用いられ、また狭いスリット(21)の開口を使用した。光束(7)は、光学式チョッパー(図示せず)を用いて遮断され、単純光検出器(19)からの信号は、Stanford Research Systems のSR850 DSP型 ロックイン増幅器を使用し、検出すると共に記録した。単純光検出器(19)は、瓶の壁から16mmの距離に対応する血液培養瓶の対称軸線に垂直なX方向に沿った非対称空間の後方散乱光分布(15)を記録するためにモーター駆動の平行移動ステージに取り付けられた。(以下のすべての実施例において、これと同じ装置を使用している。)本明細書で述べられる実施例にて用いる血液培養瓶は、Becton Dickinson and Company (米国ニュージャージー州 Franklin Lakes)のBACTEC(登録商標)Standard/10 Aerobic/F 血液培養基を充填したBACTEC(登録商標)瓶として市販されている円柱状ガラス培養瓶であった。使用した瓶のいくつかからのデータは、多数の実施例および図に反映されている。
【0037】
図4に示した結果を得るため、新鮮な血液5mLを好気血液培養瓶に加え、長期間に亙って3,8,13,25,32および49時間と等しい時間で瓶の異なる場所で多数の記録を取った。図4の多数のプロットからわかるように、非対称な後方散乱光分布(15)は、49時間では実質的に安定している。図4から明らかなように、この49時間の間に後方散乱分布がいつ記録されようと、実質的に同じプロットが得られる。しかしながら、非対称空間の後方散乱光分布(15)とは対照的に、後方散乱現象(26)によるスパイク状誤差信号(30)は、記録毎に振幅の著しいばらつきを示す(例えば30A,30B,30Cの振幅のばらつきを参照)。しかしながら、このスパイク状誤差信号(30)は、非対称空間の後方散乱光分布(15)の左の十分に離れたところにあるため、このようなばらつきは、非対称空間の後方散乱光分布(15)に関する測定に対し影響を及ぼさない。
【0038】
図5は、図4からの非対称空間の後方散乱光分布(15)の1つを示しており、また陽性血液培養瓶と陰性血液培養瓶とを弁別し、赤血球容積率と血液量との組み合わせを決定するために用いられるいくつかの相異なる特性パラメータを示している。図5中の「LIP」という用語は「光衝突点」を指し、非対称空間の後方散乱光分布(15)の特別な位置、つまり2次光束衝突点(11)での後方散乱強度を示している。「IALIP」という用語は光衝突点での後方散乱強度を表す。「FWHM」は「半値全幅」を意味し、「MAX」は波形の最大値を示す。「IMAX」という用語は、空間後方散乱分布での最大後方散乱強度を表す。「SL」は「傾き」を指す。緩やかに減衰するフランク(18)における非対称空間の後方散乱光分布(15)の傾きが対象であり、図6のデータの半対数表現は、傾きをどのように高精度で決定できるのかを示している。
【0039】
本発明の実施形態による方法で用いることができる追加の解析的特徴としては、非対称空間の後方散乱分布(15)の完全空間分布を解析することによって求められるパラメータがある。このような特徴は、与えられた閾値を超えるピクセル強度を持つ非対称空間の後方散乱分布(15)の二次元像のピクセルの数、またはとりわけ非対称空間の後方散乱分布(15)の二次元像のすべてのピクセル強度の総和を含む。さらに、非対称空間の後方散乱分布(15)の追加の「処理済み解析的特徴」は、解析的特徴のうちの2つ以上の数学的結合により生成することができる。この実施例については、以下で詳述する。
【0040】
図5および図6に示した特性パラメータは、培養瓶内の赤血球の個数に依存する。これは、赤血球の個数が多ければ多いほど、液体試料中を伝搬する光子に対する散乱事象の間の距離が短くなるためである。単位長さ当たりの散乱事象が多いと、観察される後方散乱分布に影響を及ぼす。赤血球の個数は、血液量と赤血球容積率値との組み合わせにより決定される。図5および図6に示した特性パラメータは、育成された微生物群の有無にも依存する。微生物が存在する場合、赤血球内のヘモグロビンは、微生物の代謝作用により「脱酸素化」される。このシステムにて一般的に用いられる光束の波長では、ヘモグロビンの吸収係数は、実質的に脱酸素化時に変化する。従って、培養瓶が陽性(つまり細菌が存在する)の場合、さらに多くの光子が吸収され、観察される非対称空間の後方散乱光分布(15)に影響を及ぼす。血液量および育成された微生物群の有無の影響は、図7A〜図9Cに示されている。
【0041】
(実施例2)
図7A〜図7Cは、第1の血液培養瓶に対照血液試料1mLを入れ、第2の血液培養瓶に大腸菌と共に血液1mLを入れた2つの血液培養瓶について、時間に対する光衝突点強度と、時間に対する強度の半値全幅の測定結果と、X位置グラフの時間に対する強度の傾きとをそれぞれ約144時間の期間に亙って示したグラフである。
【0042】
(実施例3)
図8A〜図8Cは、図7A〜図7Cと同じパラメータであるが、血液5mLを入れた第1の血液培養瓶と、大腸菌と共に血液5mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、同様なグラフを示している。
【0043】
(実施例4)
図9A〜図9Cは、図7A〜図8Cと同じパラメータであるが、血液10mLを入れた第1の血液培養瓶と、大腸菌と共に血液10mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、同様なグラフを示している。図7A〜図9Cに示すように、5および10mLを含む血液培養瓶についても、すぐ前で説明した1mLしか含まない血液培養瓶と同じ依存関係が存在する。
【0044】
図10は、0.5mLから10mLまでの様々な量の血液を充填した血液培養瓶における後方散乱光の空間分布の多数の記録を示すグラフである。図10は、実施例1の装置を用いて得られた0.5mLから10mLまでの様々な量の血液を充填した血液培養瓶における後方散乱光の空間分布の多数の記録を示している。
【0045】
図11は、半対数表現の図10のデータを示している。これから理解できるように、図1Bからの緩やかに減衰するフランク(18)は、傾き値を決定するうえで都合のよい直線の形態をとる。
【0046】
本発明は、その一形態において、本明細書で開示するような装置を用いて血液試料の量および赤血球容積率値を決定するための方法を提供する。一実施形態において、抽出される解析的特徴に関してあらかじめ記録された較正値を得る。次いで、試料の抽出された解析的特徴を得て較正値と比較し、試料の量および赤血球容積率値を決定する。本発明のいくつかの実施形態による方法では、光束(7)を1次光束衝突点で血液培養瓶(1)の外側空気−壁の界面(壁)(2)に当て、光束(7)が瓶の壁(2)の1次光束衝突点(9)での垂線(10)から0から90度の範囲の角度Θだけずれるようにする。角度Θが非常に小さくなる場合、光の生成される非対称空間の後方散乱分布(15)は、ますます対称的になる。この対称空間分布は、懸濁液(5)の状態に関する情報もさらに含んでおり、本発明の一実施形態により利用することができる。しかしながら、上述のように角度Θを大きくすることによって得られる結果が改善され得る。従って、特定の例示的な一実施形態による方法では、約25から45度の範囲の角度Θを使用する。光束(7)がレーザーから出力され、瓶の壁(2)の1次衝突点(9)に対して垂線入射で当てられる場合、光束(7)は、レーザー(6)へと後方反射する。
【0047】
本明細書ですでに使用しているように、「FWHM」という用語は「半値全幅」を表す。図2Bに示すように、後方散乱光の非対称空間分布は、2つの次元に延在するため、X軸線に沿って測定される「FWHMX」とY軸線に沿って測定される「FWHMY」とを弁別することができる。Y軸線は、瓶の壁に垂直な平面内の瓶の壁に沿って向けられ、IMAXの位置を含むが、X軸線に対して垂直に延在する。
【0048】
「FWHM*」という用語は、「IALIPの半値全幅」を表す。すぐ上で説明したように、「FWHMX*」はX軸線に沿って測定することができ、「FWHMY*」は上述のY方向でIALIPの位置を含む平面内のY軸線と平行にY軸線に沿って測定することができる。
【0049】
本明細書ですでに使用しているように、「SL」という用語は「傾き」を表す。緩やかに減衰するフランク(18)の非対称空間の後方散乱分布(15)の傾きを対象とするものであり、図6のデータの半対数表現は、高い精度で傾きをどのように決定できるのかを示している。図7の半対数表現から理解できるように、緩やかに減衰するフランク(18)は、ある直線と「適合する」直線に対応した延在部分を示す。実用上の理由から、傾きは、与えられた係数で強度が減少する記録された非対称空間の後方散乱分布(15)のX軸線に沿った距離の逆数として定義される。上で定義された傾きはX軸線に沿って測定されるため、用語「SLX」を使用する。実用上の理由から、SLXに対しては値10が好ましいが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、傾きの他の定義を使用することもできることを理解できよう。
【0050】
幅と同様に、傾きもまたY軸線に沿って測定されるものとして定義される。傾き「SLY」(18A)という用語は、与えられた係数で強度が減少する記録された非対称空間の後方散乱分布(15)のY軸線に沿った距離の逆数として定義される。例示的な一実施形態では、係数10を使用できるが、上述のように傾きの他の定義により他の係数も同等に可能である。
【0051】
傾きの他の測定は、IALIPの位置を含む平面内のY軸線に平行なY方向に沿って測定される「SLY*」(18B)であり、SLY*(18B)は、与えられた係数で強度が減少する記録された非対称空間の後方散乱分布(15)のY方向に沿った距離の逆数として定義される。例示的な一実施形態では、係数10を使用できるが、上述のように傾きの他の定義にて他の係数も同じく可能である。
【0052】
(実施例6)
図12は、3つの異なる赤血球容積率値の血液を充填した12本の培養瓶に対して測定された血液量に対する傾きを示すグラフである。それぞれのデータ点は、異なる培養瓶を表す。
【0053】
図13は、12本の培養瓶に対して測定されるような血液量と赤血球容積率との積に対する傾きを示すグラフである。それぞれのデータ点は、異なる培養瓶を表す。挿入された表は、上述の積が12本の培養瓶内でどのように生成されたのかを示している。図13に示したグラフから理解できるように、傾き値は、上述の血液量と赤血球容積率との積の関数として表すことができる。図13の破線は、最良適合
Y=K×XM (1)
に対応し、Y=SLは傾きを表し、K=5.70×10-3は第1の定数であり、X=VOL×HCTは血液量(VO)Lと赤血球容積率の値(HCT)との積であり、M=0.72は第2の定数である。図13に示したデータに基づき、VOLとHCTとの組み合わせ(ここでは積)は、傾きSLを測定し、式
VOL×HCT=(SL/K)(1/M) (2)
に従ってVOL×HCTの値を計算することにより決定することができる。
【0054】
支配的な赤血球の代謝の結果である細菌増殖曲線内のいわゆる「血液バックグラウンド」の人為的要素は血液充填量VOLに比例し、また赤血球容積率の値HCTに比例する。つまり、血液バックグラウンドの人為的要素は、与えられた血液培養瓶の赤血球の個数に相関する積VOL×HCTに比例する。従って、積VOL×HCTを決定するための式(2)によるアプローチは、上述のように最適化された検出アルゴリズムの設計に対し非常に有用な方法である。積が大きい場合、大きな血液バックグラウンドを期待しなければならず、検出アルゴリズムはエラー強さがあるものでなければならない。積が小さい場合、小さな血液バックグラウンドが期待でき、検出アルゴリズムを敏感なものにできる。このアルゴリズムは、本明細書で説明されている方法により決定されると、その後、与えられた試料に対する血液量または赤血球容積率値を確認するために使用することができる。
【0055】
すでに説明したように、培養瓶に充填される血液試料の量は、十分に多くする必要があり、好ましくは10mL程度である。微生物の種類によっては、患者血液1mL当たり細胞形成単位数が非常に小さくなる場合があるという事実から、培養瓶中で大量の血液を使用する必要が生じる。実際、患者の具合に応じて、最適な量よりも少ない量の血液が頻繁に用いられ、このような検査の信頼性に対し悪影響を及ぼす可能性がある。このような状況では、計測器内に装填されるすべての瓶内の患者血液の実際の充填量を決定する手順は、疑いもなく、大きなメリットを有する。傾きSLが本発明の一実施形態により決定された場合、血液量自体は、正確には決定できない。これは、図14に示されており、与えられた傾き値に対する可能な量の範囲を両矢印の形で示している。しかし、図14が示しているように、両矢印の長さが短くなるほど、血液充填量は少なくなる。従って、血液充填量自体を決定する際の不確定性は、量が少ない範囲では小さくなる。従って、本発明の一実施形態による方法は、真に「充填不足」の血液培養瓶、つまり1mL未満の血液試料を収容する瓶を識別するのに好適である。血液試料が少なくとも1つの微生物を含む可能性は比較的高いため、スケールの高容量端では、充填量を正確に知る決定的な必要性というのはないということ指摘しておいても無駄ではない。低容量端では、選択された1つの小血液量分は、微生物を含まない可能性があり、その結果、偽陰性の培養物が得られる。
【0056】
(実施例7)
図15は、異なる赤血球容積率の値の血液を充填した12本の培養瓶に対して決定された血液量に対するレーザー衝突点について測定された後方散乱強度を示すグラフである。図15は、血液量に対するレーザー衝突点において測定された後方散乱強度IALIPを示している。それぞれのデータ点は、異なる培養瓶を表す。
【0057】
図16は、12本の培養瓶に対して測定される血液量と赤血球容積率との積に対するレーザー衝突点で測定された後方散乱強度を示すグラフである。それぞれのデータ点は、異なる培養瓶を表す。挿入された表は、上述の血液量と赤血球容積率との積が12本の培養瓶内でどのように生成されたのかを示している。レーザーを使用しているので、図16および他の図は、「光衝突点での強度」の代わりに「レーザー衝突点」という言い回しを含む。図16の破線は、最良適合
Y=A×X (3)
に対応する。
【0058】
ただし、Y=IALIPはレーザー衝突点での強度を表し、A=3.05×10-6は定数であり、X=VOL×HCTは血液量VOLと赤血球容積率の値HCTとの積である。定数Aの値が使用した装置の正確な詳細に依存することに留意されたい。図16に示したデータに基づき、VOLとHCTとの組み合わせ(ここでは積)は、強度IALIPを測定し、式
VOL×HCT=IALIP/A (4)
に従ってVOL×HCTの値を計算することにより決定することができる。
【0059】
血液量自体の決定に関する類似の考慮事項は、図14に関して説明したように適用される。
【0060】
(実施例8)
図17は、様々な量の血液を充填した12本の血液培養瓶における図4に示したような後方散乱光の空間分布の記録についての積分の値を示すグラフである。積分は、空気−ガラスの界面から発する約2.8mmのX位置の近傍のばらつきの大きい散乱ピークを除外するため、約3.5mmのX位置から始めた。積分は、3つの異なる赤血球容積率値の血液を充填した培養瓶に対して測定された積VOL×HCTに関してプロットされる。それぞれのデータ点は、異なる培養瓶を表す。挿入された表は、積がどのように生成されたのかを示している。図17の破線は、最良適合
Y=U×[1−exp(−X/V)] (5)
に対応する。
【0061】
ただし、Y=INTEGは積分値を表し、U=3.709×10-3は第1の定数であり、X=VOL×HCTは血液量VOLと赤血球容積率の値HCTとの積であり、V=162.52は第2の定数である。さらに、定数UおよびVの値は、使用した装置の正確な詳細に依存する。図19に示したデータに基づき、VOLとHCTとの組み合わせ(ここでは積)は、本発明の実施形態により積分INTEGを測定し、式
VOL×HCT=−V×ln[1−(INTEG/U)] (6)
に従ってVOL×HCTの値を計算することにより決定することができる。
【0062】
図18は、血液量と赤血球容積率との積(VOL×HCT)に対する12本の血液培養瓶における後方散乱光の空間分布の記録からの半値全幅の逆数(「1/FWHM」)を示すグラフである。それぞれのデータ点は、異なる培養瓶を表す。挿入された表は、積がどのように生成されたのかを示している。図20の破線は、最良適合
Y=C+D×X (7)
に対応する。
【0063】
ただし、Y=1/FWHMは半値全幅の逆数を表し、C=0.0822は第1の定数であり、X=VOL×HCTは血液量VOLと赤血球容積率値HCTとの積であり、D=1.16×10-3は第2の定数である。図20に示したデータに基づき、VOLとHCTとの組み合わせ(ここでは積)は、本発明の実施形態による傾きSLを測定し、式
VOL×HCT={(1/FWHM)−C}/D (8)
に従ってVOL×HCTの値を計算することにより決定することができる。
【0064】
図19は、血液量と赤血球容積率との積(VOL×HCT)に対する血液培養瓶における後方散乱光の空間分布の記録から、図12に示したレーザー衝突点LIPと最大値MAXとの間のX軸線に沿った距離の逆数を示すグラフである。それぞれのデータ点は、異なる培養瓶を表す。図19の破線は、最良適合
Y=B×X (9)
に対応する。
【0065】
ただし、Y=1/DISTは図12に示したレーザー衝突点LIPと最大値MAXとの間のX軸線に沿った距離の逆数を表し、B=5.90×10-3は定数であり、X=VOL×HCTは血液量VOLと赤血球容積率値HCTとの積である。図19に示したデータに基づき、VOLとHCTとの組み合わせ(ここでは積)は、本発明の実施形態により距離の逆数1/DISTを測定し、式
VOL×HCT=(1/DIST)/B (10)
に従ってVOL×HCTの値を計算することにより決定できる。
【0066】
上に示したように、本発明の一実施形態による方法は、非対称空間の後方散乱光分布(15)の解析的特徴SL,IALIP,INTEG,(1/FWHM)または(1/DIST)を抽出し、前記抽出された解析的特徴と、このような特徴のあらかじめ記録されている値とを比較することにより、培養瓶内に充填されている血液試料の量と赤血球容積率値との組み合わせを決定するために用いることができる。上述の本発明の例示的なすべての実施形態において、抽出された特徴は、すべてX軸線に沿って記録される。類似の解析的特徴は、Y軸線に沿って定義および記録することができる。さらに、本発明の実施形態による方法における解析的特徴は、後方散乱光の完全空間分布を解析することによって求められるパラメータを含むこともできる。このような特徴は、与えられた閾値を超えるピクセル強度を持った前記非対称光分布の二次元像内のピクセルの数、またはとりわけ、前記非対称光分布の二次元像内のすべてのピクセル強度の総和を含むことができる。
【0067】
非対称空間の後方散乱光分布(15)の追加の処理済み解析的特徴は、2つまたはそれ以上の解析的特徴の数学的結合により生成することができる。使用可能な数学的結合は、限定はしないが、総和,差分,積,比またはとりわけ巾乗を含む。
【0068】
処理済み解析的特徴を生成する他の実施例では、上述のすべてのステップを使用し、PRODSL,PRODIALIP,PRODINTEG,PRODFWHMおよびPRODDISTなどの積を個別に決定することにより、積PROD=VOL×HCTに対する値を決定し、次いで式
PRODAV=(PRODSL+PRODIALIP+PRODINTEG+PRODFWHM+PRODDIST)/5 (11)
に従って個々の結果を組み合わせて平均の積PRODAVを得る。
【0069】
式(11)による手順はエラー強さがあり、前記積に対する信頼度の高い値PRODAVを生成する。
【0070】
上述したように十分に多い血液量を得る重要性に加え、通常の状態が陰性であることが望ましいので、迅速に血液培養瓶などの封止可能な容器内の血液培養物の状態を調べることも重要である(つまり、存在し得る微生物の個数は非常に少ないままである)。
【0071】
本発明の一実施形態により培養瓶内の血液培養物の状態をチェックし、血液培養瓶の陽性,陰性を迅速に弁別することができる。この実施形態では、光束(7)を1次光束衝突点(9)で血液培養瓶(1)の外側空気−壁の界面(壁)(2)に当て、光束(7)が瓶の壁(2)の1次光束衝突点(9)での垂線(10)から0から90度の範囲の角度Θだけずれるようにする。角度Θが非常に小さくなる場合、光の生成される非対称空間の後方散乱分布(15)がますます対称的になる。対称空間分布は懸濁液(5)の状態に関する情報もさらに含み、本発明の実施形態による方法で使用することができる。しかしながら、上述のように角度Θを大きくすることにより、得られる結果が改善され得る。従って、特定の例示的な一実施形態による方法では、約25から45度の範囲の角度Θを使用する。光束(7)がレーザーから出力され、瓶の壁(2)の1次衝突点(9)に対して垂線入射で当てられる場合、光束(7)は、レーザー(6)内に後方反射する。
【0072】
(実施例9)
図20は、新鮮な血液の対照試料1mLを入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料1mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、時間に対する光衝突点強度を約5日間に亙って示すグラフである。
【0073】
図20の第1の測定は、瓶のうちの1つに微生物として約20個の大腸菌を接種した直後に行われた。このため、時刻0では、大腸菌データは、一般的な微生物なしの対照瓶のデータに近い。次いで、大腸菌を約12時間保温したところ、完全陽性培養瓶ができあがった。大腸菌瓶が細菌培養器に入れられている間に対照瓶に対し、さらに2回測定を実施した。12時間後、両方の瓶を室温に保った。図20の2つのプロットから、解析的特徴IALIPが約5日間の監視期間に対照瓶と大腸菌瓶とで実質的な差を示すことがわかる。後述の追加の測定は、非常に似た条件の下で実施された。すべての場合において、測定はX軸線に沿って実施され、従って「FWHMX」という用語は短縮され、単に「FWHM」とされた。同じ短縮が他のすべての用語に対しても適用された。
【0074】
図21は、新鮮な血液の対照試料1mLを入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料1mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、時間に対する後方散乱光の空間分布の半値全幅(FWHM)を約5日間に亙って示すグラフである。ここでもまた、約5日間の監視期間全体に亙り、FWHMに実質的差がある。図22から図28は、対照瓶と陽性瓶(2)との間で測定された解析的特徴に実質的な差があることを示している。
【0075】
図22は、新鮮な血液1mLの対照試料を入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料1mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、図23および図24に従った経過時間グラフに対する後方散乱光の空間分布の傾きを約5日間に亙って示すグラフである。
【0076】
(実施例10)
図25は、新鮮な血液の対照試料5mLを入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料5mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、時間に対する光衝突点の強度を約5日間に亙って示すグラフである。
【0077】
図26は、新鮮な血液の対照試料5mLを入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料5mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、時間に対する後方散乱光の空間分布の半値全幅(FWHM)を約5日間に亙って示すグラフである。
【0078】
図27は、新鮮な血液5mLの対照試料を入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料5mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、図25および図26に従った経過時間グラフに対する後方散乱光の空間分布の傾きを約5日間に亙って示すグラフである。
【0079】
(実施例11)
図28は、新鮮な血液の対照試料10mLを入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料10mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、時間に対する光衝突点の強度を約5日間に亙って示すグラフである。
【0080】
図29は、新鮮な血液の対照試料10mLを入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料10mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、時間に対する後方散乱光の強度の空間分布の半値全幅(FWHM)を約5日間に亙って示すグラフである。
【0081】
図30は、新鮮な血液10mLの対照試料を入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料10mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、図28および図29に従った経過時間グラフに対する後方散乱光の空間分布の傾きを約5日間に亙って示すグラフである。
【0082】
(実施例12)
図31は、新鮮な血液10mLに対し育成しきった大腸菌培養物を入れた血液培養瓶(1)となる陰性血液培養瓶(つまり、対照血液培養瓶)(2)の後方散乱分布変化を例示するグラフである。
【0083】
(実施例13)
図32は、第1の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液1mLを入れ、第2の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物1mLを入れ、第3の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液5mLを入れ、第4の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物5mLを入れ、第5の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液10mLを入れ、第6の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物10mLを入れた6本の血液培養瓶について、約6日間に亙って記録され、光衝突点での後方散乱強度(IALIP)に対するFWHMを示す二次元(2D)グラフである。この二次元プロットを生成するため、図20,図21,図25,図26,図28および図29に示したすべてのデータ点を使用した。図32の点の6つの集合は、未知の状態の瓶について5日間のうちの与えられた時刻に測定を1回だけ行った場合に予測できる誤差についての情報を与える。これから理解されるように、データ点に一定の広がりがあるにもかかわらず、対照瓶の3つのグループ(1,5および10mL)と、陽性瓶の対応するグループとの間の明確な分離が可能である。
【0084】
以下で説明するような本発明の実施形態による方法、および図32の二次元表現を用い、育成された微生物群が存在するか存在しないかに関係する決定は、検査対象の瓶(1)について測定されたデータを、あらかじめ記録した較正データと比較することにより行うことができる。例えば、図22,図25〜図30および図32に示した測定結果は、既知の状態の瓶からのデータを表しているため、このデータは、未知の状態の瓶に関する将来の測定用の較正データとして使用することができる。
【0085】
(実施例14)
図33は、第1の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液1mLを入れ、第2の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物1mLを入れ、第3の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液5mLを入れ、第4の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物5mLを入れ、第5の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液10mLを入れ、第6の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物10mLを入れた6本の血液培養瓶について、約6日間に亙って記録され、IALIPに対するSLを示す二次元グラフである。
【0086】
図33に示した二次元プロットを生成するため、図20,図22,図25,図26,図28および図29に示したデータ点を用いた。ここでもまた、対照瓶と陽性瓶との明確な弁別が明らかである。
【0087】
(実施例15)
図34は、第1の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液1mLを入れ、第2の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物1mLを入れ、第3の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液5mLを入れ、第4の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物5mLを入れ、第5の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液10mLを入れ、第6の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物10mLを入れた6本の血液培養瓶について、約6日間に亙って記録され、IALIP対FWHM対SLを示す3次元(3D)グラフである。図34の三次元プロットを生成するため、図20〜図22および図25〜図30に示したデータ点を用い、図32および図33に示されているものよりも、対照瓶と陽性瓶との間のさらに良好な弁別が明らかである。
【0088】
(実施例16)
図35は、第1の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液5mLを入れ、第2の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液5mLを入れ、第3の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液10mLを入れ、第4の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液10mLを入れた4本の血液培養瓶について、処理された後方散乱分布の解析的特徴Q5の測定結果を約6日間に亙って示している。図35は、接種以降の経過時間に対する処理済み特徴Q5を、二次元データ表現で示している。処理済み解析的特徴Q5は、式(12)により解析的特徴IALIP,FWHMおよびSLを組み合わせることにより生成される。
式(12):
Q5={104×(IALIP×FWHM)1.5}/SL
IALIP,FWHMおよびSLの定量的組み合わせは、対照瓶データと陽性瓶データとの最大の分離が得られるよう、ただし血液量に対するQ5の依存性が最小となるように選択される。図37において、正方形の記号は5mLのデータを表し、丸形の記号は10mLのデータを表す。対照点の大半は、領域A内に位置し、大腸菌点の大半は、領域B内に位置している。破線Cは、接種時間に対応している。予想通り、接種直後に測定された大腸菌データ点は、対照データ点に非常に近いところに位置する。全体として、ごく短時間が経過した後、対照データ点と大腸菌データ点との間に完全な分離がある。従って、処理済み特徴Q5は、対応する血液培養瓶(1)内の育成された微生物群の有無に関係する決定を下すための優れたデータとなる。
【0089】
(実施例17)
図36は、第1の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液1mLを入れ、第2の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液1mLを入れ、第3の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液5mLを入れ、第4の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液5mLを入れ、第5の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液10mLを入れ、第6の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液10mLを入れた6本の血液培養瓶(2)について、後方散乱分布の処理済み解析的特徴Q5の測定結果の第2集合を約6日間に亙って示している。図35に関し上述のように、図36に示した大半の対照データ点は、第1の領域D内に位置し、大半の大腸菌データ点は、第2の領域E内に位置する。「ずれの値」は、接種直後に観察されたデータ点のみである。従って、図36は、本発明の実施形態による方法が1mLから10mLまでの血液量の範囲について、陰性血液培養瓶と陽性血液培養瓶とを迅速に弁別できることを実証している。
【0090】
(実施例18)
図37は、第1の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液1mLを入れ、第2の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液1mLを入れ、第3の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液5mLを入れ、第4の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液5mLを入れ、第5の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液10mLを入れ、第6の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液10mLを入れた6本の血液培養瓶(2)について、後方散乱分布の後処理パラメータQ5の平均値を示し、対照試料と、血液を育成された大腸菌培養物と共に含む試料との両方について、15mLの血液に対する推定を表す破線をさらに含んでいる。図37の破線は、15mLの血液に対する推定を表す。そのすべての対照データ点は第1の領域F内にあり、すべての大腸菌データ点は、第2の領域G内にあり、1mLから15mLまでの血液量の範囲内で陰性血液培養瓶と陽性血液培養瓶とを弁別する本発明の実施形態による方法の能力を示している。
【0091】
図38は、本発明の一実施形態により育成された微生物群の有無を判定する方法を示すフローチャートである。このフローチャートは、検査対象の血液培養瓶の状態を判別するため、図36に示したデータを用いる本発明の一実施形態による方法のステップを示す。図38に示したフローチャートに表される方法は、約1mLから15mLまでの血液量の値の範囲について適用可能である。
【0092】
血液培養瓶(1)が陽性であるが陰性であるかを判定するためのこの実施形態の方法2300は、ステップ230から始まる。ステップ230において、血液培養瓶(1)が図3Aに示すような装置に置かれ(他の構成も利用できるが、本明細書で説明したように本発明の方法を実施する)、像(つまり非対称空間の後方散乱分布(15))が光検出器(19)により記録され、結果が格納される。本発明の一実施形態において、結果(図4に示したものと類似)がデジタル化され、光検出器(19)に接続されたコンピュータ25に格納され、場合によってネットワーク(LAN,WANやインターネットなど)を介してオペレータにより遠隔アクセスされる。手動によるか、またはデータ解析ソフトウェアを利用することにより、IALIPがステップ232にて決定され、FWHMがステップ234にて決定され、SL(18)がステップ236にて決定される。次いで、オペレータまたはソフトウェアは、ステップ238にて式(1)(上述)によりQ5を決定する。決定ステップ240において、Q5は第1の閾値T1と比較される。本発明の特定の一実施形態において、T1が2.5に設定されるが、当業者であれば理解できるように、そうである必要はない。T1の他の値は、用いられる異なる傾きの式に応じて利用することができ、これについても上述した通りである。
【0093】
Q5が2.5よりも大きい場合(決定ステップ240から「YES」の経路)、ステップ242にて判定が行われ、血液培養試料が陰性であること、または血液培養瓶(1)内に極少量の細菌があるという通知がオペレータに対してなされる。この場合、さらに検査するために血液培養瓶を自動細菌検出システムに装填することが推奨され、認識されよう。Q5が2.5よりも小さい場合(決定ステップ240から「NO」の経路)、決定ステップ244にてQ5がT2よりも小さいか否かということに対する第2の判定が行われる。本発明のこの実施形態において、T2は1.3に設定される。Q5がさらに1.3よりも小さい場合(決定ステップ244から「YES」の経路)、血液培養瓶(1)が陽性であるか、または血液培養瓶(1)内にある種の細菌があるという判定が行われる。この場合、血液培養瓶(1)を自動細菌検出システムに装填する必要性はない。その代わり、血液培養瓶(1)の細菌同定および抗菌薬感受性について、すぐに検査することができる。ここでの利点は、微生物の存在に関する結果を直ちに利用でき、また自動細菌検出システム内に無駄な占有空間を持たないという点である。しかしながら、Q5が1.3よりも大きい(ただし、2.5未満)場合、ステップ246にて決定されたように血液培養瓶(1)内に細菌が存在する可能性がある(決定ステップ244から「NO」の経路)。この場合、細菌個体群は、発生段階にある場合があり、推定結果の確認のために瓶を自動検出システムに装填することが勧められる。
【0094】
上述した本発明の実施形態による方法は、非常に迅速かつ高度な自動化機械の場合、血液培養瓶(1)を図3Aに示した装置によって解析されるように、コンベヤに装填する時点に至るまで完全自動的で行うことができる。データは迅速に編成され、格納され、次いでネットワーク(上述)上で共有され、レポートが生成され、というように進行し得る。
【0095】
(実施例19)
図39は、第1の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液1mLを入れ、第2の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液1mLを入れ、第3の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液5mLを入れ、第4の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液5mLを入れ、第5の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液10mLを入れ、第6の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液10mLを入れた6本の血液培養瓶について、式(式13および式14)により定義された解析的特徴IALIPと、処理済み解析的特徴P1およびQ1との6日平均値を示す三次元グラフである。
式(13):
P1=IALIP×FWHM
および
式(14):
Q1=P1/SL
【0096】
図39と図34とを比較することにより、上で定義したような処理済み解析的特徴は、陰性血液培養瓶(1)と陽性血液培養瓶(1)との改善された弁別を可能にする。上述のような処理済み解析的特徴P1,Q1およびQ5は、多数の可能な処理済み解析的特徴のうちのごく少数の例に過ぎない。陽性血液培養瓶と陰性血液培養瓶とを弁別するために用いることができる他の処理済み解析的特徴を生成することは、本発明の精神および範囲内にある。解析的特徴自体についても同じくことが言える。この場合、他の解析的特徴をさらに選択して使用することができる。本発明のいくつかの実施形態による方法は、育成された微生物群の有無に関係する決定を下すために二次元または三次元データ表現およびフローチャートに決して限定されない。その代わり、専用ソフトウェアを使用し、検査対象の瓶から得られる新しいデータを既知の状態の他の血液培養瓶(1)からのあらかじめ記録された較正データと比較することができる。
【0097】
(実施例20)
図40は、12本の血液培養瓶(1)について時間に対する後方散乱分布の後処理パラメータQ5を約6日間に亙って示す二次元グラフであり、6本の瓶には2から12mLの様々な量による新鮮な血液の対照試料が入り、残り6本の瓶には2から12mLの様々な量による育成された大腸菌培養物を含む血液の試料が入っている。図42は、図38と同じデータを示しているが、6本の対照瓶と表皮ブドウ球菌およびB群連鎖菌の育成された培養物を含む6本の瓶とについて、約6日間に亙って測定され、2mLから12mLの新鮮な血液から得られた結果が加えられている。図40は、図36に示したものとほとんど同じ領域DおよびEを含む。これから理解されるように、ほとんどすべての対照は、領域D内に配されている。図40の真円は大腸菌データを表し、完全な正方形は表皮ブドウ球菌データを表し、菱形はB群連鎖菌データである。対照と表皮ブドウ球菌との分離は、対照と大腸菌との分離によく似ているが、分離は、B群連鎖菌の場合の方がなおいっそう優れている。
【0098】
本明細書で述べたものと類似の結果は、以下の微生物種の育成された培養物を含む血液培養瓶により得られる。
黄色ブドウ球菌
緑膿菌
肺炎球菌
エンテロバクタークロアカエ
腸球菌
肺炎桿菌
A群連鎖菌
髄膜炎菌
淋菌
【0099】
このリストは、本明細書で説明した本発明の実施形態に関していっさい含まれるものでも、制限的であるものでもない。このリストは、単に本発明の実施形態のシステムおよび方法を使用することにより検出することができる微生物の種類の一部の一例として示されているだけである。
【0100】
上述したように、「まだ陰性」である瓶は、微生物をまったく含まないか、またはその患者が実際に細菌に感染している場合、比較的少数の微生物しか含んでいない可能性がある。「まだ陰性の瓶」の場合、どのような微生物が存在するかは問題にならないことに留意されたい。本発明の一実施形態による方法は、培養瓶を明確に「まだ陰性」に分類する。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態において、これらの方法(つまり血液試料の量および赤血球容積率値を測定する方法や、陽性の血液培養物と陰性の血液培養物とを迅速に弁別する方法)は、同時にまたは別々の時間に行う(つまり一方の方法を他方の方法の前に行う)ことができる。異なる時間に行われる場合、これらの方法は任意の順序で行うことができる。
【0102】
この実施形態の方法は、陰性血液培養瓶と陽性血液培養瓶とを迅速に弁別できることのほかに、血液培養瓶中の微生物の検出にもさらに適用することができる。上述したように正確に開始しても、検査対象のすべての瓶がまだ陰性であることが知られよう。上の方法は、5日間など長期間に亙って10分毎に繰り返しモードで検査対象の瓶に適用される。特定の瓶内に存在する微生物群がその数を十分に増やした場合、本発明による解析的特徴および処理済み特徴が変化を示し、これは陽性の兆候である。
【0103】
本発明の方法は、樹脂ビーズがあるか、あるいはない好気血液培養瓶に作用する。これらの方法は、赤血球がある種の化学物質により破裂させられる溶解血液培養瓶にも作用する。他の種類の培養容器を同様に用いることができる。異なる解析的特徴について得られる正確な値は、レーザー波長と、説明したような光束と瓶の壁に対する垂線との間の角度と、画像形成条件と、特に用いた光検出器などの使用される装置の具体的詳細とに依存する。これらの方法は、必要な較正データが生成され、等しい実験条件の下であらかじめ記録されている場合、装置のわずかに修正された実験詳細についてもさらに機能する。
【0104】
本発明の上述のすべての実施形態において、光束は、これが瓶の壁の1次光束衝突点における垂線から0から90度の範囲のある角度だけずれるように、血液培養瓶の壁の1次光束衝突点に当てられる。角度が非常に小さくなる場合、後方散乱光の生成される空間分布は、より対称的となる。非対称分布で形成される情報は有益であるが、対称空間分布は血液培養試料の状態に関する情報をも伝達する。
【0105】
図41は、図1Aの装置に類似しているが、光ファイバアレイの形態である画像形成手段を持った本発明の一実施形態による装置の概略図である。図41は、光源(106)により放出される光束(107)が瓶の外側壁の界面(102)の1次光束衝突点(109)でレンズ(108)により血液培養瓶(100)の壁(101)に集束され、光束(107)が1次光束衝突点(109)にて瓶の壁(101)の垂線(110)から角度Ωだけずれる他の構成(70)を示している。光束(107)は、壁(101)で屈折し、2次光束衝突点(111)にて瓶の内側壁の界面(103)に到達し、そこで光束は血液培養物懸濁液に入り、非対称空間の後方散乱分布を生じる。光ファイバアレイ(ファイバ)(114)は、瓶の外側壁の界面(102)に対向して配され、血液培養物により再放出された光子がファイバ(114)の入力端に入るようにブロック(112)を用いて適所に保持される。ファイバ(114)の出力端は、専用CCD読み取り器(115)に接続された電荷結合素子(CCD)アレイ(113)に光学的に結合されている。ファイバ(114)の入力端は、外壁の界面(102)の近傍に配され、前記ファイバ(114)のファイバ出力端は、CCDアレイ(113)の近傍にあるという事実により、図41に示した配列を「近焦点構成」と呼ぶことができる。
【0106】
他の実施形態が図42に示されている。図42の装置(80)は、取り付けられた光励起ファイバ(117)を持つレーザー(116)が光源として存在しているという点で図41の装置と異なり、この場合、励起ファイバ(117)の出力端が瓶の壁(101)の外側壁の界面(102)の1次光束衝突点(109)に配される。この構成において、ファイバ(117)の軸線は、その出力端のところで、瓶の壁の界面(102)の1次光束衝突点(109)にて垂線からある角度だけずれる。図42の装置(80)は、図1A,図3Aおよび図3Bに示した配列に実質的に類似している。図42に示した本発明の実施形態による装置(80)には、光束が大気中で伝搬せず、光学素子の高精度な光学的調整を必要とせず、図42による装置(80)は幾分サイズを小さくできるという利点がある。
【0107】
図43Aおよび図43Bはまた、他の実施形態を示している。図43Aおよび図43Bの装置(100)は、第2の非対称空間の後方散乱光分布(124)を光検出器(113)に映し出すための光ファイバアレイ(114)が存在するという点で図42の装置(80)と類似している。この装置(100)は、レーザー(116)からの光を瓶の壁(101)に当てる励起ファイバ(117)も具えている。しかしながら、図42の装置における励起ファイバの出力端は、ファイバアレイの一端の近傍に配されるが、図43Aの装置の励起ファイバ(117)の出力端は、ファイバアレイ(114)の中心近くに配される。励起ファイバ(117)の軸線は、その出力端にて外側壁の界面の1次光束衝突点(109)の垂線(125)からある角度Φだけずれる。図45Aおよび図45Bの構成を使用することにより、第2の非対称空間の後方散乱光分布(124)が生成されるが、これは、上述の本発明の実施形態による他の装置の場合と同様である。第2の非対称空間の後方散乱光分布(124)を生成することにより、上で詳しく説明したように、血液量の少ない場合の陽性の血液培養物と陰性の血液培養物とを弁別する能力が改善される。図43Aおよび図43Bの配列において、ファイバアレイ(114)は、上述の本発明の実施形態による装置(60,70,80)にて採用した方向に対して垂直に配向される第2の非対称空間の後方散乱光分布(124)の断面を捕捉する。
【0108】
図44Aは、2つの異なる位置で血液培養瓶から再び現れる光強度を測定するために2つの光検出器を有する一実施形態を示している。図44Aに示した装置(100)は、図1Aに示した血液培養物光学測定装置(50)から余分な装備を取り除いたものとして考えられている。図1Aの装置(50)は、後方散乱光の空間分布の全断面を一平面上に結像し、光検出器(13)を用いてそれを記録している。図44Aに示した装置(100)において、非対称空間の後方散乱光分布の2つの別々の点状位置からの後方散乱強度のみが監視され、記録される。2つの強度のみを測定することにより、修正された傾きを計算する必要がある。さらに、図1Aの装置(50)において、与えられた係数により強度が減少する瓶の壁に沿った距離が測定される。しかしながら、図44Aの装置(100)において、与えられた距離に亙って強度の減少を特徴付ける係数が得られる。
【0109】
図44Aの装置(100)は、瓶の壁(102)を持つ血液培養瓶(101)を具え、瓶(101)を封止するための隔壁(103)を含む。瓶(101)は、培養基と血液との混合物(104)を含む。レーザーなどの光源(106)により放出された光束(107)は、瓶の壁(102)の光学的に透明な領域における第1の衝突点(111)に当てられる。光束(107)は、瓶の壁(102)の第1の衝突点(111)にて垂線から特定の角度だけずれるように位置決めされる。次いで、光束(107)は、第1の衝突点(111)の近傍にて培養基と血液との混合物(混合物)(104)から非対称空間の後方散乱光分布を生じさせる。光束(107)は、主に後方反射レーザー光子がレーザーに入るのを回避するため、瓶の壁(102)の第1の衝突点(111)における垂線からずれる。しかしながら、この角度は非常に小さく、従って図44Aに示していない。
【0110】
この装置の第1の光検出器(112)は、第1の衝突点(111)から約90度の角度Ω1だけ離れた第1の位置にて瓶の壁(102)に隣接して取り付けられ、血液(104)から後方散乱光を受光する。この装置の第2の光検出器(113)は、第1の衝突点(111)から約135度の角度Ω2だけ離れた第2の位置にて瓶の壁(102)に隣接して取り付けられ、さらに混合物(104)から後方散乱光を受光する。
【0111】
図44Bは、図46Aに示した種類の血液培養光学測定システム150の概略ブロック図である。レーザー(106)は、血液培養光学測定システム(123)のレーザー励振器に接続され、これは次にコンピュータ(125)に接続される。第1の光検出器(112)の出力端が第1のA/Dコンバータ(114)に接続され、第1のA/Dコンバータ(114)の出力端がコンピュータ(125)に接続される。これに対応して第2の光検出器(113)の出力が第2のA/Dコンバータ(115)に接続され、第2のA/Dコンバータ(115)の出力端もコンピュータ(125)に接続される。
【0112】
(実施例20)
図45は、図44Aおよび図44Bの血液培養光学測定システムで測定された強度比を表し、これにより第1および第2の光検出器が瓶の円周に沿ってそれぞれ約90度および約135の角度位置にある第1の衝突点から離れたところに位置決めされたデータを示すグラフである。(あるいは、実施例1で説明したようにこの装置を他の方法で構成して同じ部品を使用する。)図45は、第1および第2の位置の後方散乱強度に対応する第1の光検出器および第2の光検出器によって記録される光電流の比を示している。図45に示したすべての測定は、約35%の赤血球容積率値の血液を用いて行われた。図45から理解されるように、この比は、約0.5から10mLの量の範囲内で第3の瓶の混合物の量と比例する。図44Aおよび図44Bによる配列の利点は、その簡素さにある。撮像または移動光検出器は必要でなく、2つの光電流のみが処理されればよい。
【0113】
本発明は、いくつかの例示的な実施形態を参照しつつ説明されている。しかしながら、当業者にとっては、上述の例示的な実施形態以外の特定の形態で本発明を具現化することが可能であることは直ちに理解できよう。これは、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。例示的な実施形態は、単に例示することを目的としているだけであり、いかなる形態でも限定するものであるとみなすべきではない。本発明の範囲は、先行する説明ではなく、添付の特許請求の範囲により規定され、特許請求の範囲内にあるすべての変更形態および等価形態が本発明に包含されることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1A】撮像光検出器を有する本発明の一実施形態による第1の装置の光学的配置を示す概念図である。
【図1B】図1による装置における試料を照射する方法を示す詳細図である。
【図1C】血液培養瓶の壁に入射し、壁を通って屈折する入射光束の詳細図である。
【図2A】本発明の一実施形態による非対称空間の後方散乱光分布と、内壁−液体の界面にて発生する入射光束からの後方散乱現象とからなる組み合わせ後方散乱光分布を示す3次元(3D)データ表現の側面図である。
【図2B】本発明の一実施形態による非対称空間の後方散乱光分布と、内壁−液体の界面にて発生する入射光束からの後方散乱現象とからなる組み合わせ後方散乱光分布を示す3次元データ表現の斜視図である。
【図2C】入射光束が本発明の一実施形態によるガラス壁の衝突位置における垂線と一致する場合、第1の光子群が後方散乱される液体血液培養物の内側の場所を破線で示す図である。
【図2D】入射光束が本発明の一実施形態によるガラス壁の衝突位置における垂線から角度Ωだけずれた場合、第1の光子群が後方散乱される液体血液培養物の内側の場所を破線で示す図である。
【図2E】図2Cに示した後方散乱の実施形態に関し、内壁−液体の界面に沿った投影距離Xに対して第1の後方散乱事象の作用を受ける光子の個数Yのグラフである。
【図2F】図2Dに示した後方散乱の実施形態に関し、内壁−液体の界面に沿った投影距離Xに対すて第1の後方散乱事象の作用を受ける光子の個数Yのグラフである。
【図3A】移動光検出器を有する本発明の一実施形態による第2の装置の光学的配置を示す概念図である。
【図3B】本発明の一実施形態による血液培養光学測定装置の全体を示す概念図である。
【図4】本発明の一実施形態による1つの血液培養瓶における後方散乱光の空間分布の多数の記録を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態によるデータ解析に適した記録済み空間光分布における複数の異なる図形的特徴を示すグラフである。
【図6】図5と同じデータであるが、半対数表現で示すグラフである。
【図7A】第1の血液培養瓶に対照血液試料1mLを入れ、大腸菌と共に血液1mLを第2の血液培養瓶に入れた2つの血液培養瓶に関し、時間に対する光衝突点の強度を約144時間の期間に亙って示すグラフである。
【図7B】第1の血液培養瓶に対照血液試料1mLを入れ、大腸菌と共に血液1mLを第2の血液培養瓶に入れた2つの血液培養瓶に関し、時間に対する強度の半値全幅の測定結果を約144時間の期間に亙って示すグラフである。
【図7C】第1の血液培養瓶に対照血液試料1mLを入れ、大腸菌と共に血液1mLを第2の血液培養瓶に入れた2つの血液培養瓶に関し、時間に対する強度対X位置グラフの傾きを約144時間の期間に亙って示すグラフである。
【図8A】図7Aと同じパラメータであるが、血液5mLを入れた第1の血液培養瓶および大腸菌と共に血液5mLを入れた第2の血液培養瓶について示すグラフである。
【図8B】図7Bと同じパラメータであるが、血液5mLを入れた第1の血液培養瓶および大腸菌と共に血液5mLを入れた第2の血液培養瓶について示すグラフである。
【図8C】図7Cと同じパラメータであるが、血液5mLを入れた第1の血液培養瓶および大腸菌と共に血液5mLを入れた第2の血液培養瓶について示すグラフである。
【図9A】図7Aと同じパラメータであるが、血液10mLを入れた第1の血液培養瓶および大腸菌と共に血液10mLを入れた第2の血液培養瓶について示すグラフである。
【図9B】図7Bと同じパラメータであるが、血液10mLを入れた第1の血液培養瓶および大腸菌と共に血液10mLを入れた第2の血液培養瓶について示すグラフである。
【図9C】図7Cの同じパラメータであるが、血液10mLを入れた第1の血液培養瓶および大腸菌と共に血液10mLを入れた第2の血液培養瓶について示すグラフである。
【図10】0.5mLから10mLまでの様々な量の血液を充填した血液培養瓶における後方散乱光の空間分布の多数の記録を示すグラフである。
【図11】図4と同じデータであるが、半対数表現で示すグラフである。
【図12】3つの異なる赤血球容積率値の血液を充填した12本の培養瓶に対して測定された血液量に対する傾きを示すグラフである。
【図13】3つの異なる赤血球容積率値の血液を充填した12本の培養瓶に対して測定された血液量と赤血球容積率との積に対する傾きを示すグラフである。
【図14】図10のデータを示すが、充填量のみを決定する際の不確定性の範囲を示す両矢印が付加されたグラフである。
【図15】3つの異なる赤血球容積率の値の血液を充填した12本の培養瓶について決定された血液量に対するレーザー衝突点に関して測定された後方散乱強度を示すグラフである。
【図16】3つの異なる赤血球容積率の値の血液を充填した12本の培養瓶について測定された血液量と赤血球容積率との積に対するレーザー衝突点にて測定された後方散乱強度を示すグラフである。
【図17】様々な量の血液を充填した12本の血液培養瓶に対し、図4に示した後方散乱光の空間分布の記録についての積分値を示すグラフである。
【図18】血液量と赤血球容積率との積に対する12本の血液培養瓶における後方散乱光の空間分布の記録からの半値全幅の逆数(「1/FWHM」)を示すグラフである。
【図19】図42に示すレーザー衝突点LIPと、血液量と赤血球容積率との積に対する血液培養瓶における後方散乱光の空間分布の記録からの最大値MAXとの間のX軸線に沿った距離の逆数を示すグラフである。
【図20】新鮮な血液の対照試料1mLを入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料1mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、時間に対する光衝突点の強度を約5日間に亙って示すグラフである。
【図21】新鮮な血液の対照試料1mLを入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料1mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、時間に対する後方散乱光の空間分布の半値全幅(FWHM)を約5日間に亙って示すグラフである。
【図22】新鮮な血液1mLの対照試料を入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料1mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、経過時間グラフに対する後方散乱光の空間分布の傾きを約5日間に亙って示すグラフである。
【図23】本発明の一実施形態によるデータ解析に適した記録済み空間光分布における複数の異なる図形的特徴を示すグラフである。
【図24】図23と同じデータであるが、半対数表現で示すグラフである。
【図25】新鮮な血液の対照試料5mLを入れた第5の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料5mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、時間に対する光衝突点の強度を約5日間に亙って示すグラフである。
【図26】新鮮な血液の対照試料5mLを入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料5mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、時間に対する後方散乱光の空間分布の半値全幅(FWHM)を約5日間に亙って示すグラフである。
【図27】新鮮な血液5mLの対照試料を入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料5mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、経過時間グラフに対する後方散乱光の空間分布の傾きを約5日間に亙って示すグラフである。
【図28】新鮮な血液の対照試料10mLを入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料10mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、時間に対する後方散乱光の空間分布の傾きを約5日間に亙って示すグラフである。
【図29】新鮮な血液の対照試料10mLを入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物の試料10mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、時間に対する後方散乱光の空間分布の半値全幅(FWHM)を約5日間に亙って示すグラフである。
【図30】新鮮な血液10mLの対照試料を入れた第1の血液培養瓶と、血液および育成させた大腸菌培養物との試料10mLを入れた第2の血液培養瓶とについて、経過時間グラフに対する後方散乱光の空間分布の傾きを約5日間に亙って示すグラフである。
【図31】新鮮な血液10mLに対し育成しきった大腸菌培養物を入れた血液培養瓶となる陰性血液培養瓶(すなわち対照血液培養瓶)についての後方散乱分布変化を示すグラフである。
【図32】第1の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液1mLを入れ、第2の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物1mLを入れ、第3の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液5mLを入れ、第4の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物5mLを入れ、第5の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液10mLを入れ、第6の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物10mLを入れた6本の血液培養瓶について、約6日間に亙って記録され、光衝突点での後方散乱強度(IALIP)に対するFWHMを示す二次元(2D)グラフである。
【図33】第1の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液1mLを入れ、第2の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物1mLを入れ、第3の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液5mLを入れ、第4の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物5mLを入れ、第5の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液10mLを入れ、第6の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物10mLを入れた6本の血液培養瓶について、約6日間に亙って記録されたIALIP対SLを示す二次元グラフである。
【図34】第1の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液1mLを入れ、第2の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物1mLを入れ、第3の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液5mLを入れ、第4の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物5mLを入れ、第5の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液10mLを入れ、第6の血液培養瓶に血液および育成された大腸菌培養物10mLを入れた6本の血液培養瓶について、約6日間に亙って記録されたIALIP対FWHM対SLを示す3次元(3D)グラフである。
【図35】第1の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液5mLを入れ、第2の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液5mLを入れ、第3の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液10mLを入れ、第4の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液10mLを入れた4本の血液培養瓶について、後方散乱分布の処理された解析的特徴Q5の測定結果を約6日間に亙って示す図である。
【図36】第1の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液1mLを入れ、第2の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液1mLを入れ、第3の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液5mLを入れ、第4の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液5mLを入れ、第5の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液10mLを入れ、第6の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液10mLを入れた6本の血液培養瓶について、後方散乱分布の処理された解析的特徴Q5の約6日間に亙る測定結果の第2集合を示す図である。
【図37】第1の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液1mLを入れ、第2の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液1mLを入れ、第3の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液5mLを入れ、第4の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液5mLを入れ、第5の血液培養瓶(対照瓶)に新鮮な血液10mLを入れ、第6の血液培養瓶に育成された大腸菌培養物を含む血液10mLを入れた6本の血液培養瓶について、後方散乱分布の後処理パラメータQ5の平均値を示すグラフであり、対照試料と、血液を育成された大腸菌培養物と共に含む試料との両方について、15mLの血液に対する推定を表す破線をさらに含んでいる。
【図38】本発明の一実施形態により育成された微生物群の有無を判定する方法を示すフローチャートである。
【図39】本発明の一実施形態による解析的特徴IALIPと、処理済み解析的特徴P1と、Q1との6日間の平均値を示す三次元グラフである。
【図40】2から12mLの様々な量の場合において、多数の対照血液培養瓶と、育成された大腸菌,表皮ブドウ球菌,B群連鎖菌培養物と共に血液の試料を入れた瓶とに関し、時間に対する後方散乱分布の後処理パラメータQ5を約6日間に亙って示す二次元グラフである。
【図41】図1Aの装置に類似した本発明の一実施形態による装置の概略図であるが、光ファイバアレイの形態の画像形成手段を持つ。
【図42】図41の装置に類似した本発明の一実施形態による装置の概略図であるが、血液培養物に光を導く光ファイバを持つ。
【図43A】本発明の一実施形態による血液培養光学測定装置の変形例を示す図である。
【図43B】図43Aの装置の詳細図である。
【図44A】血液培養瓶の2つの異なる位置から再出現する光強度を測定する2つの光検出器を持った本発明の一実施形態による方法を実施するための第3の血液培養光学測定装置を示す図である。
【図44B】血液培養瓶に対して2つの位置に配された2つの光検出器を持つ本発明の一実施形態による方法を実施するための血液培養光学測定システムの概略ブロック図である。
【図45】2つの光検出器が瓶の円周に沿って約90度および約135の角度位置でのレーザー衝突点から離して配置された図44Aおよび図44Bに示す装置にて測定された強度比を表すデータを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を含む容器に対して光学的測定を行うためのシステムであって、
容器の壁の第1の位置に光束を当てるようにされ、前記第1の位置の近傍にて前記液体からの後方散乱光の非対称空間分布をもたらす光源であって、前記光束が前記容器の壁の前記第1の位置における垂線から第1の角度だけずれている光源と、
前記後方散乱光の非対称空間分布を映し出すようにされ、瓶の外壁面および内壁面により反射される前記光束の部分の画像を実質的に回避するように配された画像形成手段と、
映し出された前記後方散乱光の非対称空間分布の少なくとも一部を記録するようにされた画像検出器と、
前記画像検出器に接続されて前記後方散乱光の非対称空間分布の解析的特徴を抽出するようにされたデータ解析システムと
を具えていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
液体を含む円柱状容器をさらに具えていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記容器が血液および培養基を含む血液培養瓶であることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記光源は、レーザーおよび発光ダイオードからなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記光源は、約500から約1500nmまでの波長の光を発するようになっていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記光源は、約640から約720nmまでの波長の光を発するようになっていることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記光源は、容器の対称軸線に対して実質的に垂直か、または実質的に平行な平面内を伝搬する光束を生じさせるようになっていることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記光源が前記光束の強度を変調するようになっていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の角度が約0度と約90度との間にあることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の角度が約25度と約45度との間にあることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の角度が約35度であることを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記画像形成手段は、レンズおよび光ファイバアレイからなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記画像形成手段は、映し出された前記後方散乱光の非対称空間分布の少なくとも一部を記録するため、軸線に沿って移動するようになっていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記画像検出器が光検出器であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記光検出器は、光電子カメラと、デジタル二次元カメラと、二次元CCDアレイと、直線状CCDアレイとからなるグループから選択されることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記光検出器は、映し出された前記後方散乱光の非対称空間分布の少なくとも一部を記録するため、軸線に沿って移動するようになっていることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記データ解析システムは、育成された微生物群の有無と、前記液体試料の量と、前記液体試料の赤血球容積率の値とからなるグループから選択される少なくとも1つのパラメータを決定するためのデータをさらに与えるようになっていることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項18】
前記データ解析システムが同期検出手段を具えていることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記第1の位置が前記容器の円柱状の部分にあることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項20】
前記第1の位置が前記容器の円柱状以外の部分にあることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項21】
前記第1の位置が前記容器の底部にあることを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
容器に対して光学的測定を行う方法であって、
液体試料を含む容器を用意することと、
この容器の光学的に透明な壁の第1の位置に光束を当て、この光束が前記容器の壁の前記第1の位置における垂線から第1の角度だけずれ、前記第1の位置の近傍にて前記容器の液体試料からの後方散乱光の非対称空間分布をもたらすようにすることと、
容器の外壁面および内壁面により反射した前記光束の部分を検出することを実質的に回避すると共に、前記後方散乱光の非対称空間分布の少なくとも一部を検出することと、
前記後方散乱光の非対称空間分布から解析的特徴を抽出することと
を具えていることを特徴とする方法。
【請求項23】
前記光束は、レーザーおよび発光ダイオードからなるグループから選択される光源から導かれることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記光源は、強度変調光束をもたらすようになっていることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記光束を前記光源からレンズを介して導き、前記容器の壁に前記光束を集束させることをさらに具えていることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記光束を導くステップは、
約500nmから約1500nmまでの波長の光束を発することを具えていることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記波長が約640nmから約720nmまでであることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記容器が円柱状の瓶であり、前記光束は、前記瓶の対称軸線に対して実質的に垂直か、または実質的に平行な平面内を伝搬することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項29】
画像形成手段を介して前記非対称空間分布を映し出すステップをさらに具えていることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記画像形成手段は、レンズおよび光ファイバアレイから選択されることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記検出するステップは、映し出された前記後方散乱光の非対称空間分布の少なくとも一部を光検出器により検出することを具えていることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記光検出器は、光電子カメラと、デジタル二次元カメラと、二次元CCDアレイと、直線状CCDアレイとからなるグループから選択されることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記液体試料が血液および培養基を具え、前記後方散乱光の非対称空間分布から解析的特徴を抽出するステップは、
育成された微生物群の有無と、前記液体試料の量と、前記液体試料の赤血球容積率の値とからなるグループから選択される少なくとも1つのパラメータを決定するためのデータを解析することを具えていることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記データの解析は、画像検出器に接続されたデータ解析システムにより行われ、このデータ解析システムは、映し出された前記後方散乱光の空間分布の少なくとも一部を記録するようになっていることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記データ解析システムが同期検出手段を具えていることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の角度が約0度と約90度との間にあることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の角度が約25度と約45度との間にあることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の角度が約35度であることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記容器が円柱状であり、前記第1の位置が前記容器の円柱状の部分にあることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項40】
前記容器が円柱状であり、前記第1の位置が前記容器の円柱状でない部分にあることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の位置が前記容器の底部にあることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記後方散乱光の非対称空間分布の一部を記録するため、前記画像検出器を軸線に沿って移動させるステップをさらに具えていることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項43】
培養基および血液を含む試料を入れた容器を用意するステップと、
この容器の光学的に透明な壁領域の第1の位置に光束を当て、この光束が前記容器の壁の前記第1の位置における垂線から第1の角度だけずれ、前記第1の位置の近傍にて前記容器内の培養基と血液との混合物からの後方散乱光の非対称空間分布をもたらすようにするステップと、
容器の外壁面および内壁面により反射された前記光束の一部を検出することを実質的に回避すると共に、前記第1の位置の近傍にて前記容器内の培養基と血液との混合物からの前記後方散乱光の非対称空間分布の少なくとも一部を検出器により検出するステップと、
前記後方散乱光の非対称空間分布から解析的特徴を抽出するステップと、
前記抽出された解析的特徴またはそれから生成されるデータを較正情報と比較することにより、前記封止可能な容器内の試料の量と前記赤血球容積率の値とを決定するステップと
を具えていることを特徴とする方法。
【請求項44】
画像形成手段を介して前記非対称の空間分布を映し出すステップをさらに具えていることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記映し出しは、一平面内で行われることを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記抽出するステップは、
前記検出器に接続されたデータ解析システムを用い、前記検出器が光検出器を具え、前記データ解析器システムは、前記後方散乱光の非対称空間分布の少なくとも一部を記録するようになっており、さらに記録された前記後方散乱光の非対称空間分布から前記解析的特徴を抽出するようになっていることを具えたことを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記抽出するステップは、
最大記録後方散乱強度(IMAX)の解析的特徴と、光衝突点における後方散乱強度(IALIP)の解析的特徴と、IMAXの半値全幅(FWHM)の解析的特徴と、前記後方散乱光の非対称空間分布の緩やかに消滅するフランクの傾きの解析的特徴とからなるグループから選択される1つ以上の特徴を抽出することを具えていることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項48】
抽出される前記解析的特徴は、X軸線に沿って測定される前記後方散乱光の非対称空間分布から抽出され、前記X軸線は、前記容器の壁に沿って前記光束を含む平面内に向けられ、前記抽出される解析的特徴は、前記X軸線におけるIMAXの半値全幅(FWHMX)と、前記X軸線の傾き(SLX)とを具えていることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記傾きSLXは、第1の係数にて強度が減少する記録された光量分布の前記X軸線に沿った距離の逆数であることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記X軸線に沿って測定されるIALIPの半値全幅(FWHMX*)を抽出するステップをさらに具えていることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記抽出される解析的特徴は、Y軸線に沿って測定される前記後方散乱光の非対称空間分布から抽出され、前記Y軸線は、前記容器の壁に沿ってこの容器の壁に対して垂直な平面内に向けられ、前記非対称空間分布はIMAXの領域を具えているが、前記X軸線に対して垂直に延在し、前記抽出される解析的特徴は、Y軸線におけるIMAXの半値全幅(FWHMY)と、前記Y軸線の傾き(SLY)とを具えていることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記傾きSLYは、第2の係数にて強度が減少する記録された光量分布の前記Y軸線に沿った距離の逆数であることを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
IALIPの領域を含む平面において前記Y軸線と平行なY方向に沿って測定される傾きを抽出するステップをさらに含むことを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記半値全幅FWHMY*を抽出するステップをさらに具え、このFWHMY*は、IALIPの半値全幅であって、IALIPの領域を含む平面において前記Y軸線と平行なY方向に沿って測定されることを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記傾きSLY*は、第3の係数にて強度が減少する記録された光量分布の前記Y軸線に沿った距離の逆数であることを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記抽出するステップは、
第1の閾値を超えるピクセル強度を持った前記後方散乱光の非対称空間分布の二次元像のピクセルの個数を蓄積することを具えたことを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項57】
前記抽出するステップは、
前記後方散乱光の非対称空間分布の二次元像のほぼすべてのピクセルの強度を総和することを含むことを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項58】
前記決定するステップは、
前記抽出された解析的特徴のうちの2つ以上を組み合わせることにより、第1の処理済み解析的特徴を生成することと、
この第1の処理済み解析的特徴に基づいて前記血液培養物の量と赤血球容積率の値との組み合わせを決定することと
を具えていることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項59】
前記決定するステップは、前記血液培養物の量と赤血球容積率の値との数学的積を計算することを具えたことを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項60】
培養基および血液を含む試料を入れた容器を用意するステップと、
前記容器の光学的に透明な壁領域の第1の位置に光束を当て、この光束が、前記容器の前記第1の位置における垂線から第1の角度だけずれ、前記第1の位置の近傍にて前記容器内の培養基と血液との混合物からの後方散乱光の非対称空間分布をもたらすようにするステップと、
容器の外壁面および内壁面により反射した前記光束の部分を検出することを実質的に回避すると共に、前記第1の位置の近傍にて封止可能な前記容器内の培養基と血液との混合物からの前記後方散乱光の非対称空間分布の少なくとも一部を検出器により検出するステップと、
前記後方散乱光の非対称空間分布から解析的特徴を抽出するステップと、
抽出された前記解析的特徴か、あるいはこれから生成されるデータを較正情報と比較することにより、前記容器内の育成された微生物群の有無を判定するステップと
を具えたことを特徴とする方法。
【請求項61】
画像形成手段を介して前記非対称空間分布を映し出すステップをさらに具えたことを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記映し出しは、一平面内で行われることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記抽出するステップは、
前記検出器に接続されたデータ解析システムを使用することを具え、前記検出器は、光検出器を具え、前記データ解析システムは、前記後方散乱光の非対称空間分布の少なくとも一部を記録するようになっており、さらに記録された前記後方散乱光の非対称空間分布から前記解析的特徴を抽出するようになっていることを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記抽出するステップは、
最大記録後方散乱強度(IMAX)の解析的特徴と、前記光衝突点における後方散乱強度(IALIP)の解析的特徴と、IMAXの半値全幅(FWHM)の解析的特徴と、前記後方散乱光の非対称空間分布の緩やかに消滅するフランクの傾きの解析的特徴とからなるグループから選択される1つ以上の特徴を抽出することを具えたことを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項65】
抽出される前記解析的特徴は、X軸線に沿って測定される前記後方散乱光の非対称空間分布から抽出され、前記X軸線は、前記容器の壁に沿って前記光束を含む平面内に向けられ、前記抽出される解析的特徴は、X軸線におけるIMAXの半値全幅(FWHMX)と、前記X軸線の傾き(SLX)とを具えていることを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記傾きSLXは、第1の係数にて強度が減少する記録された光量分布の前記X軸線に沿った距離の逆数であることを特徴とする請求項65に記載の方法。
【請求項67】
X軸線に沿って測定されるIALIPの半値全幅(FWHMX*)を抽出するステップをさらに具えていることを特徴とする請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記抽出される解析的特徴は、Y軸線に沿って測定される前記後方散乱光の非対称空間分布から抽出され、前記Y軸線は、前記瓶の壁に沿って前記瓶の壁に対して垂直な平面内に向けられ、前記非対称空間分布は、IMAXの領域を具えているが、X軸線に対して垂直に延在し、前記抽出される解析的特徴は、Y軸線におけるIMAXの半値全幅(FWHMY)と、Y軸線の傾き(SLY)とを具えていることを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記傾きSLYは、第2の係数にて強度が減少する記録された光量分布の前記Y軸線に沿った距離の逆数であることを特徴とする請求項68に記載の方法。
【請求項70】
IALIPの領域を含む前記Y軸線と平行な平面内においてY方向に沿って測定される傾きを抽出するステップをさらに具えたことを特徴とする請求項68に記載の方法。
【請求項71】
幅FWHMY*を抽出するステップをさらに具え、FWHMY*は、IALIPの半値全幅であり、IALIPの領域を含む前記Y軸線と平行な平面内にてY方向に沿って測定されることを特徴とする請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記傾きSLY*は、第3の係数にて強度が減少する記録された光量分布のY軸線に沿った距離の逆数であることを特徴とする請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記抽出するステップは、
第1の閾値を超えるピクセル強度を持った前記後方散乱光の非対称空間分布の二次元像のピクセルの個数を蓄積することを具えたことを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項74】
前記抽出するステップは、
前記後方散乱光の非対称空間分布の二次元像のほぼすべてのピクセルの強度を総和することを具えたことを特徴とする請求項を60に記載の方法。
【請求項75】
前記決定するステップは、
前記抽出される解析的特徴のうちの2つ以上を組み合わせることにより、第1の処理済み解析的特徴を生成することと、
この第1の処理済み解析的特徴を第1の定数と比較し、当該第1の処理済み解析的特徴が前記第1の定数よりも大きい場合、前記血液培養瓶には育成された微生物が存在しないと判定することと、
前記第1の処理済み解析的特徴が前記第1の定数よりも小さい場合、前記血液培養瓶内に育成された微生物が存在する可能性があると判定すること
とを具えていることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項76】
前記第1の処理済み解析的特徴が前記第1の定数よりも小さいと判定された場合、前記第1の処理済み解析的特徴を第2の定数と比較することをさらに具えたことを特徴とする請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記第1の処理済み解析的特徴は、以下の式
Q5={104×(LALIP×FWHM)1.5}/SL
により生成されることを特徴とする請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記第1の定数が約2.5であり、前記第2の定数が約1.3であることを特徴とする請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記決定するステップは、
前記容器の2つ以上の前記抽出された解析的特徴を、較正集合からの同一の前記抽出された解析的特徴と共に二次元グラフにプロットするか、あるいはこのようなプロットを表示する計算を行うことと、
プロットされている対照血液培養瓶の抽出された解析的特徴の近似性に対し、プロットされている前記容器の抽出された解析的特徴の近似性に基づき、前記育成された微生物の有無を検証することと
を具えていることを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項80】
培養基および血液を含む試料を入れた容器を用意するステップと、
前記容器の光学的に透明な壁領域の第1の位置に光束を当て、前記光束が前記容器の壁の前記第1の位置における垂線から第1の角度だけずれ、前記第1の位置の近傍にて前記容器内の培養基と血液との混合物からの後方散乱光の非対称空間分布をもたらすようにするステップと、
前記容器の外壁面および内壁面により反射される前記光束の部分を検出することを実質的に回避すると共に、前記第1の位置の近傍にて前記容器内の培養基と血液との混合物からの前記後方散乱光の非対称空間分布の少なくとも一部を検出器により検出するステップと、
前記後方散乱光の非対称空間分布から解析的特徴を抽出するステップと、
前記血液培養瓶内の育成された微生物群の存在を判定するステップであって、前記生成されたデータを、前記光束を当てるステップと、前記検出するステップと、前記抽出するステップと、この判定するステップとを1回以上繰り返すことによる較正情報と比較することによって判定するステップと
を具えたことを特徴とする方法。
【請求項81】
前記繰り返しが約10分間隔で行われることを特徴とする請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記繰り返しが約10分間隔で約5日に亙って行われることを特徴とする請求項81に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43A】
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【図43B】
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【図44A】
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【図44B】
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【図45】
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【公表番号】特表2008−510169(P2008−510169A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527930(P2007−527930)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/029058
【国際公開番号】WO2006/023470
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】