説明

光学系、光学装置、および光学系の製造方法

【課題】ゴーストやフレアをより低減させて、良好な光学性能を有した光学系を提供する。
【解決手段】光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とからなる光学系WLにおいて、無限遠物体から有限距離物体への合焦の際、第1レンズ群G1が固定されて、第2レンズ群G2が移動するようになっており、第2レンズ群G2は、第2レンズ群G2に配置された絞りSよりも物体側に位置する前群G2aと、絞りSよりも像側に位置する後群G2bとからなり、第1レンズ群G1および第2レンズ群G2における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、当該反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系、光学装置、および光学系の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、写真用カメラ、電子スチルカメラ、ビデオカメラ等に適した広角レンズが種々提案されている(例えば、特許文献1を参照)。また近年、このような広角レンズに対しては、収差性能だけではなく、光学性能を損なう要因の一つであるゴーストやフレアに関する要求も厳しさを増している。そのため、レンズ面に施される反射防止膜にもより高い性能が要求され、要求に応えるべく多層膜設計技術や多層膜成膜技術も進歩を続けている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−211978号公報
【特許文献2】特開2000−356704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の広角レンズは、良好な光学性能を達成できていないという問題があった。また、このような広角レンズにおける光学面からは、ゴーストやフレアとなる反射光が発生しやすいという問題もあった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、ゴーストやフレアをより低減させて、良好な光学性能を有した光学系、光学装置、および光学系の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的達成のため、本発明に係る光学系は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とからなる光学系であって、無限遠物体から有限距離物体への合焦の際、前記第1レンズ群が固定されて、前記第2レンズ群が移動し、前記第2レンズ群は、前記第2レンズ群に配置された絞りよりも物体側に位置する前群と、前記絞りよりも像側に位置する後群とからなり、前記第1レンズ群および前記第2レンズ群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むように構成され、以下の条件式を満足している。
0.10<f2a/f<1.70
但し、
f2a:前記第2レンズ群の前群の焦点距離、
f:無限遠合焦状態での前記光学系の焦点距離。
【0007】
なお、上述の光学系において、前記反射防止膜は多層膜であり、前記ウェットプロセスを用いて形成された層は、前記多層膜を構成する層のうち最も表面側の層であることが好ましい。
【0008】
また、上述の光学系において、前記ウェットプロセスを用いて形成された層の屈折率が1.30以下であることが好ましい。
【0009】
また、上述の光学系において、前記絞りから見て凹形状の前記光学面に、前記反射防止膜が設けられることが好ましい。
【0010】
また、上述の光学系において、前記絞りから見て凹形状の前記光学面は、前記第1レンズ群および前記第2レンズ群内のレンズにおける物体側のレンズ面であることが好ましい。
【0011】
また、上述の光学系において、前記絞りから見て凹形状の前記光学面は、前記第1レンズ群および前記第2レンズ群内のレンズにおける像面側のレンズ面であることが好ましい。
【0012】
また、上述の光学系において、像面から見て凹形状の前記光学面に、前記反射防止膜が設けられることが好ましい。
【0013】
また、上述の光学系において、前記像面から見て凹形状の前記光学面は、前記第2レンズ群内のレンズにおける物体側のレンズ面であることが好ましい。
【0014】
また、上述の光学系において、前記像面から見て凹形状の前記光学面は、前記第2レンズ群内のレンズにおける像面側のレンズ面であることが好ましい。
【0015】
また、上述の光学系において、前記第2レンズ群の後群の焦点距離をf2bとしたとき、次式
0.10<f2a/f2b<1.00
の条件を満足することが好ましい。
【0016】
また、上述の光学系において、前記第1レンズ群の焦点距離をf1とし、前記第2レンズ群の焦点距離をf2としたとき、次式
0.10<(−f1)/f2<2.50
の条件を満足することが好ましい。
【0017】
また、上述の光学系において、前記第2レンズ群の焦点距離をf2としたとき、次式
0.20<f2/f<1.55
の条件を満足することが好ましい。
【0018】
また、上述の光学系において、前記第2レンズ群の後群は、少なくとも1つの非球面レンズを有することが好ましい。
【0019】
また、上述の光学系において、前記第2レンズ群の後群は、光軸に沿って像側から順に並んだ2つの正レンズを有することが好ましい。
【0020】
また、上述の光学系において、前記第1レンズ群の焦点距離をf1としたとき、次式
(−f1)/f<5.0
の条件を満足することが好ましい。
【0021】
また、上述の光学系において、前記第1レンズ群は、光軸に沿って物体側から順に並んだ2つの負レンズを有することが好ましい。
【0022】
また、上述の光学系において、前記第1レンズ群は、少なくとも1つの非球面レンズを有することが好ましい。
【0023】
また、上述の光学系において、前記第1レンズ群は正レンズを有し、前記正レンズの屈折率の平均値をn1pとし、前記正レンズのアッベ数の平均値をν1pとしたとき、次式
n1p>1.800
ν1p>28.00
の条件をそれぞれ満足することが好ましい。
【0024】
また、上述の光学系において、無限遠物体から有限距離物体への合焦の際、前記第2レンズ群の前群と後群が一体となって光軸に沿って移動することが好ましい。
【0025】
また、本発明に係る光学装置は、物体の像を所定の面上に結像させる光学系を備えた光学装置であって、前記光学系として本発明に係る光学系を用いている。
【0026】
また、本発明に係る光学系の製造方法は、光軸に沿って物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とを配置する光学系の製造方法であって、無限遠物体から有限距離物体への合焦の際、前記第1レンズ群が固定されて、前記第2レンズ群が移動し、前記第2レンズ群は、前記第2レンズ群に配置された絞りよりも物体側に位置する前群と、前記絞りよりも像側に位置する後群とからなり、前記第1レンズ群および前記第2レンズ群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むように構成され、以下の条件式を満足するようにしている。
0.10<f2a/f<1.70
但し、
f2a:前記第2レンズ群の前群の焦点距離、
f:無限遠合焦状態での前記光学系の焦点距離。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ゴーストやフレアをより低減させて、良好な光学性能を有した光学系、光学装置、および光学系の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施例に係る光学系のレンズ構成を示す断面図である。
【図2】(a)は第1実施例に係る光学系の無限遠合焦時の諸収差図であり、(b)は近距離合焦時(D0=200mm)の諸収差図である。
【図3】第1実施例に係る光学系のレンズ構成を示す断面図であって、入射した光線が第1番目の反射光発生面と第2番目の反射光発生面で反射する様子の一例を説明する図である。
【図4】第2実施例に係る光学系のレンズ構成を示す断面図である。
【図5】(a)は第2実施例に係る光学系の無限遠合焦時の諸収差図であり、(b)は近距離合焦時(D0=200mm)の諸収差図である。
【図6】第3実施例に係る光学系のレンズ構成を示す断面図である。
【図7】(a)は第3実施例に係る光学系の無限遠合焦時の諸収差図であり、(b)は近距離合焦時(D0=200mm)の諸収差図である。
【図8】第4実施例に係る光学系のレンズ構成を示す断面図である。
【図9】(a)は第4実施例に係る光学系の無限遠合焦時の諸収差図であり、(b)は近距離合焦時(D0=200mm)の諸収差図である。
【図10】デジタル一眼レフカメラの断面図である。
【図11】光学系の製造方法を示すフローチャートである。
【図12】反射防止膜の層構造の一例を示す説明図である。
【図13】反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
【図14】変形例に係る反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
【図15】変形例に係る反射防止膜の分光特性における入射角度依存性を示すグラフである。
【図16】従来技術で作成した反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
【図17】従来技術で作成した反射防止膜の分光特性における入射角度依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本願の好ましい実施形態について図を参照しながら説明する。本願に係る光学系を備えたデジタル一眼レフカメラCAMが図10に示されている。図10に示すデジタル一眼レフカメラCAMにおいて、不図示の物体(被写体)からの光は、撮影レンズ(光学系WL)で集光されて、クイックリターンミラーMを介して焦点板F上に結像される。焦点板F上に結像された光は、ペンタプリズムP中で複数回反射されて接眼レンズEへと導かれる。これにより、撮影者は、接眼レンズEを介して物体(被写体)の像を正立像として観察することができる。
【0030】
また、撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、クイックリターンミラーMが光路外へ退避し、撮影レンズ(光学系WL)で集光された物体(被写体)からの光は、撮像素子C上に結像されて被写体の像を形成する。これにより、物体(被写体)からの光は、撮像素子C上に結像されて当該撮像素子Cにより撮像され、物体(被写体)の画像として不図示のメモリーに記録される。このようにして、撮影者はデジタル一眼レフカメラCAMによる物体(被写体)の撮影を行うことができる。なお、クイックリターンミラーMを有しないミラーレスカメラであっても、上記カメラCAMと同様の効果を得ることができる。また、図10に示すデジタル一眼レフカメラCAMは、撮影レンズ(光学系WL)を着脱可能に保持する構成であってもよく、撮影レンズ(光学系WL)と一体に構成されるものであってもよい。
【0031】
撮影レンズは、本実施形態に係る光学系WLから構成される。本実施形態に係る光学系WLは、例えば図1に示すように、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成される。このような構成により、鏡筒を小型化できるとともに、各収差を良好に補正することができる。なお、第2レンズ群G2は、第2レンズ群G2に配置された絞りSよりも物体側に位置する前群G2aと、絞りSよりも像側に位置する後群G2bとから構成される。また、無限遠物体から近距離(有限距離)物体へのフォーカシング(合焦)の際、第1レンズ群G1が固定されて、第2レンズ群G2が移動するようになっている。このような構成により、鏡筒を小型化できるとともに、フォーカシングによる収差変動を良好に補正することができる。
【0032】
このような構成の光学系WLにおいて、第2レンズ群G2の前群G2aの焦点距離をf2aとし、無限遠合焦状態での光学系WLの焦点距離をfとしたとき、次の条件式(1)で表される条件を満足することが好ましい。
【0033】
0.10<f2a/f<1.70 …(1)
【0034】
条件式(1)は、第2レンズ群G2の前群G2aの焦点距離f2aと無限遠合焦状態での光学系WL全系の焦点距離fとの比を規定するものである。本実施形態の光学系WLは、この条件式(1)を満足することで、良好な光学性能を実現することができる。条件式(1)の下限値を下回る条件である場合、第2レンズ群G2の前群G2aの屈折力が強くなり、球面収差の補正が困難になるとともに、バックフォーカスの確保が困難になる。一方、条件式(1)の上限値を上回る条件である場合、前群G2aの屈折力が弱くなり、サジタルコマ収差の補正が困難になる。また、第2レンズ群G2の後群G2bの屈折力が強
くなり、球面収差、コマ収差の補正が困難になる。
【0035】
なお、本実施形態の効果を確実なものとするために、条件式(1)の上限値を1.65とすることが好ましい。また、本実施形態の効果をより確実なものとするために、条件式(1)の上限値を1.60とすることが好ましい。一方、本実施形態の効果を確実なものとするために、条件式(1)の下限値を0.50とすることが好ましい。また、本実施形態の効果をより確実なものとするために、条件式(1)の下限値を1.00とすることが好ましい。
【0036】
また、本実施形態に係る光学系WLでは、第1レンズ群G1および第2レンズ群G2における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、この反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含んでいる。このように構成することで、物体からの光が光学面で反射されて生じるゴーストやフレアをさらに低減させることができ、高い結像性能を達成することができる。
【0037】
また、このような光学系WLにおいて、反射防止膜は多層膜であり、ウェットプロセスで形成された層は、多層膜を構成する層のうち最も表面の層であることが好ましい。このようにすれば、空気との屈折率差を小さくすることができるため、光の反射をより小さくすることが可能になり、ゴーストやフレアをさらに低減させることができる。
【0038】
また、このような光学系WLにおいて、ウェットプロセスを用いて形成された層の(d線に対する)屈折率ndが1.30以下であることが好ましい。このようにすれば、空気との屈折率差を小さくすることができるため、光の反射をより小さくすることが可能になり、ゴーストやフレアをさらに低減させることができる。
【0039】
また、このような光学系WLにおいて、絞りSから見て凹形状の光学面に、反射防止膜が設けられることが好ましい。このようにすれば、第1レンズ群G1および第2レンズ群G2における光学面のうち絞りSから見て凹形状の光学面に反射光が発生し易いため、このような光学面に反射防止膜を形成することで、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0040】
また、このような光学系WLにおいて、絞りSから見て凹形状の光学面は、第1レンズ群G1および第2レンズ群G2内のレンズにおける物体側のレンズ面であることが好ましい。このようにすれば、第1レンズ群G1および第2レンズ群G2における光学面のうち絞りSから見て凹形状のレンズ面に反射光が発生し易いため、このようなレンズ面に反射防止膜を形成することで、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0041】
また、このような光学系WLにおいて、絞りSから見て凹形状の光学面は、第1レンズ群G1および第2レンズ群G2内のレンズにおける像面側のレンズ面であることが好ましい。このようにすれば、第1レンズ群G1および第2レンズ群G2における光学面のうち絞りSから見て凹形状のレンズ面に反射光が発生し易いため、このようなレンズ面に反射防止膜を形成することで、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0042】
また、このような光学系WLにおいて、像面から見て凹形状の光学面に、反射防止膜が設けられることが好ましい。このようにすれば、第2レンズ群G2における光学面のうち像面から見て凹形状の光学面に反射光が発生し易いため、このような光学面に反射防止膜を形成することで、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0043】
また、このような光学系WLにおいて、像面から見て凹形状の光学面は、第2レンズ群G2内のレンズにおける物体側のレンズ面であることが好ましい。このようにすれば、第
2レンズ群G2における光学面のうち像面から見て凹形状のレンズ面に反射光が発生し易いため、このようなレンズ面に反射防止膜を形成することで、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0044】
また、このような光学系WLにおいて、像面から見て凹形状の光学面は、第2レンズ群G2内のレンズにおける像面側のレンズ面であることが好ましい。このようにすれば、第2レンズ群G2における光学面のうち像面から見て凹形状のレンズ面に反射光が発生し易いため、このようなレンズ面に反射防止膜を形成することで、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0045】
なお、反射防止膜は、ウェットプロセスに限らず、ドライプロセス等により形成されてもよい。この場合、反射防止膜は、屈折率が1.30以下となる層を少なくとも1層含むようにすることが好ましい。屈折率が1.30以下となる層を少なくとも1層含むようにすることで、反射防止膜をドライプロセス等で形成しても、ウェットプロセスを用いた場合と同様の効果を得ることができる。なおこのとき、屈折率が1.30以下となる層は、多層膜を構成する層のうち最も表面側の層であることが好ましい。
【0046】
また、このような光学系WLにおいて、第2レンズ群G2の後群G2bの焦点距離をf2bとしたとき、次の条件式(2)で表される条件を満足することが好ましい。
【0047】
0.10<f2a/f2b<1.00 …(2)
【0048】
条件式(2)は、第2レンズ群G2における前群G2aの焦点距離f2aと後群G2bの焦点距離f2bの比を規定するものである。本実施形態の光学系WLは、この条件式(2)を満足することで、サジタルコマフレアを良好に補正することができる。条件式(2)の上限値を上回る条件である場合、前群G2aの屈折力が弱くなり、サジタルコマ収差の補正が困難になる。また、後群G2bの屈折力が強くなり、球面収差、コマ収差の補正が困難になる。一方、条件式(2)の下限値を下回る条件である場合、前群G2aの屈折力が強くなり、球面収差の補正が困難になるとともに、バックフォーカスの確保が困難になる。
【0049】
なお、本実施形態の効果を確実なものとするために、条件式(2)の上限値を0.95とすることが好ましい。また、本実施形態の効果をより確実なものとするために、条件式(2)の上限値を0.90とすることが好ましい。一方、本実施形態の効果を確実なものとするために、条件式(2)の下限値を0.20とすることが好ましい。また、本実施形態の効果をより確実なものとするために、条件式(2)の下限値を0.30とすることが好ましい。
【0050】
また、このような光学系WLにおいて、第1レンズ群G1の焦点距離をf1とし、第2レンズ群G2の焦点距離をf2としたとき、次の条件式(3)で表される条件を満足することが好ましい。
【0051】
0.10<(−f1)/f2<2.50 …(3)
【0052】
条件式(3)は、第1レンズ群G1の焦点距離f1と第2レンズ群G2の焦点距離f2の比を規定するものである。本実施形態の光学系WLは、この条件式(3)を満足することで、良好な光学性能を実現することができる。条件式(3)の上限値を上回る条件である場合、第2レンズ群G2の屈折力が強くなり、球面収差とコマ収差の補正が困難になる。一方、条件式(3)の下限値を下回る条件である場合、第1レンズ群G1の屈折力が強くなり、像面湾曲と歪曲収差の補正が困難になる。
【0053】
なお、本実施形態の効果を確実なものとするために、条件式(3)の上限値を2.30とすることが好ましい。また、本実施形態の効果をより確実なものとするために、条件式(3)の上限値を2.10とすることが好ましい。一方、本実施形態の効果を確実なものとするために、条件式(3)の下限値を0.70とすることが好ましい。また、本実施形態の効果をより確実なものとするために、条件式(3)の下限値を1.20とすることが好ましい。
【0054】
また、このような光学系WLにおいて、第2レンズ群G2の焦点距離をf2としたとき、次の条件式(4)で表される条件を満足することが好ましい。
【0055】
0.20<f2/f<1.55 …(4)
【0056】
条件式(4)は、第2レンズ群G2の焦点距離f2と無限遠合焦状態での光学系WL全系の焦点距離fとの比を規定するものである。本実施形態の光学系WLは、この条件式(4)を満足することで、良好な光学性能を実現することができる。条件式(4)の下限値を下回る条件である場合、第2レンズ群G2の屈折力が強くなり、バックフォーカスの確保が困難になるだけでなく、球面収差とコマ収差の補正が困難になる。一方、条件式(4)の上限値を上回る条件である場合、第2レンズ群G2の屈折力が弱くなり、光学系WLの全長が大型化する。また、球面収差とコマ収差の補正が困難になる。
【0057】
なお、本実施形態の効果を確実なものとするために、条件式(4)の上限値を1.45とすることが好ましい。また、本実施形態の効果をより確実なものとするために、条件式(4)の上限値を1.35とすることが好ましい。一方、本実施形態の効果を確実なものとするために、条件式(4)の下限値を0.35とすることが好ましい。また、本実施形態の効果をより確実なものとするために、条件式(4)の下限値を0.65とすることが好ましい。また、本実施形態の効果をより確実なものとするために、条件式(4)の下限値を1.00とすることが好ましい。
【0058】
また、このような光学系WLにおいて、第2レンズ群G2の後群G2bは、少なくとも1つの非球面レンズを有することが好ましい。この構成により、球面収差とサジタルコマ収差を良好に補正することができる。
【0059】
また、このような光学系WLにおいて、第2レンズ群G2の後群G2bは、光軸に沿って像側から順に並んだ2つの正レンズを有することが好ましい。この構成により、球面収差とコマ収差を良好に補正することができる。
【0060】
また、このような光学系WLにおいて、第1レンズ群G1の焦点距離をf1としたとき、次の条件式(5)で表される条件を満足することが好ましい。
【0061】
(−f1)/f<5.0 …(5)
【0062】
条件式(5)は、第1レンズ群G1の焦点距離f1と無限遠合焦状態での光学系WL全系の焦点距離fの比を規定するものである。本実施形態の光学系WLは、この条件式(5)を満足することで、良好な光学性能を実現することができる。条件式(5)の上限値を上回る条件である場合、第1レンズ群G1の屈折力が弱くなり、所定の画角を得るために第2レンズ群G2の屈折力が強くなり、球面収差とコマ収差の補正が困難になる。
【0063】
なお、条件式(5)の上限値を4.0とすることで、本実施形態の効果をより確実なものにすることができる。また、好ましくは、条件式(5)の上限値を3.0とすることで
、本実施形態の効果をより確実なものにすることができる。
【0064】
また、このような光学系WLにおいて、第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ2つの負レンズを有することが好ましい。この構成により、コマ収差、像面湾曲、歪曲収差を良好に補正することができる。
【0065】
また、このような光学系WLにおいて、第1レンズ群G1は、少なくとも1つの非球面レンズを有することが好ましい。この構成により、像面湾曲、歪曲収差を良好に補正することができる。
【0066】
また、このような光学系WLにおいて、第1レンズ群G1は正レンズを有し、当該正レンズの屈折率の平均値をn1pとし、当該正レンズのアッベ数の平均値をν1pとしたとき、次の条件式(6)および条件式(7)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0067】
n1p>1.800 …(6)
ν1p>28.00 …(7)
【0068】
条件式(6)および条件式(7)は、第1レンズ群G1の正レンズ硝材の特性を規定している。本実施形態の光学系WLは、この条件を満足することで、第1レンズ群G1の負レンズで発生した倍率色収差と歪曲収差と像面湾曲を良好に補正することができる。条件式(6)の下限値を下回る条件である場合、負レンズで発生する歪曲収差、像面湾曲、コマ収差の補正が困難になる。また、条件式(7)の下限値を下回る条件である場合、2次分散が大きくなるため、倍率色収差を十分補正することが困難になる。
【0069】
なお、本実施形態の効果を確実なものとするために、条件式(6)の下限値を1.840とすることが好ましい。また、本実施形態の効果を確実なものとするために、条件式(7)の下限値を30.00とすることが好ましい。
【0070】
また、このような光学系WLにおいて、無限遠物体から近距離(有限距離)物体へのフォーカシング(合焦)の際、第2レンズ群G2の前群G2aと後群G2bが一体となって光軸に沿って移動することが好ましい。このような構成にすることで、製造誤差に起因するフォーカシングの収差変動を軽減することができる。このように、本実施形態によれば、ゴーストやフレアをより低減させて、良好な光学性能を有した光学系WLおよびこれを備えた光学装置(デジタル一眼レフカメラCAM)を得ることが可能になる。
【0071】
ここで、上述のような構成の光学系WLの製造方法について、図11を参照しながら説明する。まず、円筒状の鏡筒内に、本実施形態の第1レンズ群G1および第2レンズ群G2を組み込む(ステップS1)。このとき、上述の条件式(1)等を満足するように、第1〜第2レンズ群G1〜G2の各レンズをそれぞれ配置する。なお、各レンズを鏡筒内に組み込む際、光軸に沿った順にレンズ群を1つずつ鏡筒内に組み込んでもよく、一部または全てのレンズ群を保持部材で一体保持してから鏡筒部材と組み立ててもよい。
【0072】
鏡筒内に各レンズ群を組み込んだ後、鏡筒内に各レンズ群が組み込まれた状態で物体の像が形成されるか、すなわち各レンズ群の中心が揃っているかを確認する(ステップS2)。なお、本実施形態においては、第1レンズ群G1および第2レンズ群G2における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、この反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むように構成されており、ゴーストやフレアを低減させている。
【0073】
そして、像が形成されるか確認した後、光学系WLの各種動作を確認する(ステップS
3)。各種動作の一例としては、遠距離物体から近距離物体への合焦を行うレンズ群が光軸方向に沿って移動する合焦動作、少なくとも一部のレンズが光軸と直交方向の成分を持つように移動する手ブレ補正動作などが挙げられる。なお、本実施形態においては、遠距離物体(無限遠物体)から近距離物体(有限距離物体)への合焦の際、第1レンズ群G1が固定されて、第2レンズ群G2が移動するようになっている。また、各種動作の確認順番は任意である。このような製造方法によれば、収差変動を抑え、ゴーストやフレアをより低減させて、良好な光学性能を有した光学系WLを製造することができる。
【実施例】
【0074】
(第1実施例)
以下、本願の各実施例を添付図面に基づいて説明する。まず、本願の第1実施例について図1〜図3および表1を用いて説明する。図1は、第1実施例に係る光学系WL(WL1)のレンズ構成を示す断面図である。第1実施例に係る光学系WL1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成され、第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する前群G2aと、開口絞りSと、正の屈折力を有する後群G2bとから構成される。
【0075】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた第1の負メニスカスレンズL11と、物体側に凸面を向けた第1の正メニスカスレンズL12と物体側に凸面を向けた第2の負メニスカスレンズL13との接合によりなる接合負レンズと、両凸形状の第1の正レンズL14と両凹形状の第1の負レンズL15との接合によりなる接合正レンズとから構成される。第1レンズ群G1において、第2の負メニスカスレンズL13における像面I側のレンズ面が非球面となっている。
【0076】
第2レンズ群G2の前群G2aは、両凸形状の第2の正レンズL21から構成される。第2レンズ群G2の後群G2bは、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた第3の負メニスカスレンズL22と、両凹形状の第2の負レンズL23と両凸形状の第3の正レンズL24との接合によりなる接合負レンズと、両凸形状の第4の正レンズL25と、像面I側に凸面を向けた第2の正メニスカスレンズL26とから構成される。第2レンズ群G2の後群G2bにおいて、第4の正レンズL25における像面I側のレンズ面が非球面となっている。また、第3の負メニスカスレンズL22における像面I側のレンズ面(面番号14)と、第4の正レンズL25における像面I側のレンズ面(面番号19)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0077】
そして、無限遠物体から近距離(有限距離)物体へのフォーカシング(合焦)の際、第1レンズ群G1が固定されて、第2レンズ群G2が移動するようになっている。またこのとき、第2レンズ群G2の前群G2a、絞りS、および後群G2bは、それぞれ一体的に移動するようになっている。
【0078】
以下に、表1〜表4を示すが、これらは第1〜第4実施例に係る光学系の諸元の値をそれぞれ掲げた表である。各表の[全体諸元]において、fは焦点距離を、FNOはFナンバーを、ωは半画角(最大入射角:単位は「°」)を、Yは像高を、TLはレンズ全長(空気換算長)を、Bfはバックフォーカス(空気換算長)をそれぞれ示す。また、[レンズ諸元]において、第1カラムNは物体側から数えたレンズ面の番号を、第2カラムRはレンズ面の曲率半径を、第3カラムDはレンズ面間隔を、第4カラムndはd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率を、第5カラムνdはd線(波長λ=587.6nm)に対するアッベ数をそれぞれ示す。なお、面番号の右に付した*は、そのレンズ面が非
球面であることを示す。また、曲率半径「0.0000」は平面を示し、空気の屈折率nd=1.00000はその記載を省略している。
【0079】
また、[非球面データ]において示す非球面係数は、面の頂点を基準としたときの光軸からの高さhの位置での光軸方向の変位をxとし、円錐定数をκとし、n次(n=4,6,8,10)の非球面係数をAnとし、[レンズ諸元]中に示される近軸曲率半径をrと
したとき、次の式(8)で表される。なお、各実施例において、2次の非球面係数A2は
0であり、記載を省略している。また、[非球面データ]において、「E-n」は「×10-n」を示す。
【0080】
x=(h2/r)/[1+{1−κ×(h/r)21/2}]
+A4×h4+A6×h6+A8×h8+A10×h10 …(8)
【0081】
また、[可変間隔データ]には、物体から最も物体側のレンズ面までの距離をD0として、無限遠合焦時(D0=∞)および近距離合焦時(D0=200mm)の各可変間隔の値を示す。なお、以下の全ての諸元値において掲載されている焦点距離f、曲率半径R、面間隔D、その他長さの単位は一般に「mm」が使われるが、光学系は、比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。また、後述の第2〜第4実施例の諸元値においても、本実施例と同様の符号を用いる。
【0082】
下の表1に、第1実施例における各諸元を示す。なお、表1における第1面〜第21面の曲率半径Rは、図1における第1面〜第21面に付した符号R1〜R21に対応している。また、第1実施例において、第6面および第19面の各レンズ面は非球面形状に形成されている。
【0083】
(表1)
[全体諸元]
f=28.70
FNO=1.85
ω=37.65
Y=21.60
TL=115.14
Bf=38.90
[レンズ諸元]
N R D nd νd
物面 ∞ ∞
1 49.1524 1.5000 1.77250 49.61
2 22.6487 6.3000
3 64.7809 3.5000 1.83481 42.73
4 150.0000 1.7000 1.51680 63.88
5 32.5000 0.1000 1.55389 38.23
6* 28.4668 15.0000
7 41.4076 4.5000 1.83481 42.73
8 -157.2545 1.4000 1.51742 52.32
9 39.7009 (d1)
10 31.9258 5.8146 1.69680 55.52
11 -152.5356 3.9000
12 0.0000 0.9989 (絞り)
13 89.3478 1.3000 1.51742 52.20
14 39.6652 5.0000
15 -26.3069 1.4000 1.78472 25.64
16 50.5684 3.5000 1.59319 67.87
17 -98.4501 0.5000
18 151.4501 3.0000 1.77250 49.62
19* -89.8749 1.1000
20 -169.6497 4.5000 1.80400 46.60
21 -29.4540 (Bf)
像面 ∞
[非球面データ]
第6面
κ=1.0000,A4=-4.67675E-06,A6=-7.54681E-09,A8=-1.54602E-11,A10=-1.83890E-14
第19面
κ=1.0000,A4=1.47607E-05,A6=-2.02245E-10,A8=0.00000E+00,A10=0.00000E+00
[可変間隔データ]
無限遠 近距離
D0= ∞ 200.0000
d1= 11.2300 6.3103
【0084】
図2(a)〜(b)は、第1実施例に係る光学系WL1の諸収差図である。ここで、図2(a)は無限遠合焦時の諸収差図であり、図2(b)は近距離合焦時(D0=200mm)の諸収差図である。各収差図において、FNOはFナンバーを、Yは像高をそれぞれ示す。また、各収差図において、dはd線(λ=587.6nm)、gはg線(λ=435.8nm)における収差をそれぞれ示す。また、非点収差を示す収差図において、実線はサジタル像面を示し、破線はメリディオナル像面を示している。以上、収差図の説明は他の実施例においても同様である。
【0085】
そして、各収差図より、第1実施例では、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。その結果、第1実施例の光学系WL1を搭載することにより、デジタル一眼レフカメラCAMにおいても、優れた光学性能を確保することができる。
【0086】
また図3は、上記第1実施例と同様の構成の光学系WL1であって、入射した光線が第1番目の反射面と第2番目の反射面で反射して像面Iにゴーストやフレアを形成する様子の一例を示す図である。図3において、物体側からの光線BMが図示のように光学系WL1に入射すると、第4の正レンズL25における像面I側のレンズ面(第1番目の反射光の発生面であり、その面番号は19)で反射し、その反射光は第3の負メニスカスレンズL22における像面I側のレンズ面(第2番目の反射光の発生面であり、その面番号は14)で再度反射して像面Iに到達し、ゴーストおよびフレアを発生させてしまう。なお、第1番目の反射光の発生面である第19面は、開口絞りSから見て凹形状のレンズ面であり、第2番目の反射光の発生面である第14面は、像面Iから見て凹形状のレンズ面である。このような面に、より広い波長範囲で広入射角に対応した反射防止膜を形成することで、ゴーストおよびフレアを効果的に低減させることができる。
【0087】
(第2実施例)
次に、本願の第2実施例について図4〜図5および表2を用いて説明する。図4は、第2実施例に係る光学系WL(WL2)のレンズ構成を示す断面図である。第2実施例に係る光学系WL2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成され、第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する前群G2aと、開口絞りSと、正の屈折力を有する後群G2bとから構成される。
【0088】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた第1の負メニスカスレンズL11と、物体側に凸面を向けた第2の負メニスカスレンズL12
と、物体側に凸面を向けた第1の正メニスカスレンズL13と物体側に凸面を向けた第3の負メニスカスレンズL14との接合によりなる接合正レンズとから構成される。第1レンズ群G1において、第2の負メニスカスレンズL12における像面I側のレンズ面が非球面となっている。また、第1の負メニスカスレンズL11における像面I側のレンズ面(面番号2)と、第2の負メニスカスレンズL12における物体側のレンズ面(面番号3)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0089】
第2レンズ群G2の前群G2aは、光軸に沿って物体側から順に並んだ、両凸形状の第1の正レンズL21と、両凹形状の第1の負レンズL22とから構成される。第2レンズ群G2の後群G2bは、光軸に沿って物体側から順に並んだ、両凹形状の第2の負レンズL23と両凸形状の第2の正レンズL24との接合によりなる接合負レンズと、像面I側に凸面を向けた第2の正メニスカスレンズL25と、像面I側に凸面を向けた第3の正メニスカスレンズL26とから構成される。第2レンズ群G2の後群G2bにおいて、第2の正レンズL24における像面I側のレンズ面が非球面となっている。
【0090】
そして、無限遠物体から近距離(有限距離)物体へのフォーカシング(合焦)の際、第1レンズ群G1が固定されて、第2レンズ群G2が移動するようになっている。なおこのとき、第2レンズ群G2では、前群G2aと後群G2bの間隔が縮小するように、前群G2aと絞りSが一体的に移動するとともに、前群G2aおよび絞りSとは異なる移動量で後群G2bが移動するようになっている。
【0091】
下の表2に、第2実施例における各諸元を示す。なお、表2における第1面〜第20面の曲率半径Rは、図4における第1面〜第20面に付した符号R1〜R20に対応している。また、第2実施例において、第5面および第16面の各レンズ面は非球面形状に形成されている。
【0092】
(表2)
[全体諸元]
f=31.02
FNO=1.85
ω=35.53
Y=21.60
TL=112.35
Bf=41.12
[レンズ諸元]
N R D nd νd
物面 ∞ ∞
1 51.3500 1.5000 1.69679 55.52
2 25.2423 4.9661
3 68.6565 1.5000 1.51680 64.11
4 28.1354 0.1000 1.52050 50.97
5* 26.2816 11.5436
6 40.1060 3.7730 1.83480 42.72
7 245.2122 1.3000 1.51822 58.94
8 55.0388 (d1)
9 35.8474 5.4498 1.75499 52.31
10 -90.5185 0.2911
11 -1293.1200 1.3203 1.51742 52.31
12 59.5863 2.7402
13 0.0000 (d2) (絞り)
14 -21.2472 1.4020 1.78472 25.68
15 62.9942 3.1710 1.72915 54.66
16* -81.0024 2.1794
17 -55.3719 3.3993 1.59319 67.90
18 -29.4567 0.1000
19 -608.4131 5.2751 1.80400 46.58
20 -29.8770 (Bf)
像面 ∞
[非球面データ]
第5面
κ=1.0000,A4=-3.12860E-06,A6=-6.82480E-09,A8=9.01370E-12,A10=-1.54600E-14
第16面
κ=1.0000,A4=1.80620E-05,A6=-5.80110E-09,A8=0.00000E+00,A10=0.00000E+00
[可変間隔データ]
無限遠 近距離
D0= ∞ 200.0000
d1= 10.2521 4.3259
d2= 10.9700 10.7329
【0093】
図5(a)〜(b)は、第2実施例に係る光学系WL2の諸収差図である。ここで、図5(a)は無限遠合焦時の諸収差図であり、図5(b)は近距離合焦時(D0=200mm)の諸収差図である。各収差図より、第2実施例では、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。その結果、第2実施例の光学系WL2を搭載することにより、デジタル一眼レフカメラCAMにおいても、優れた光学性能を確保することができる。
【0094】
(第3実施例)
次に、本願の第3実施例について図6〜図7および表3を用いて説明する。図6は、第3実施例に係る光学系WL(WL3)のレンズ構成を示す断面図である。第3実施例に係る光学系WL3は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成され、第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する前群G2aと、開口絞りSと、正の屈折力を有する後群G2bとから構成される。
【0095】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた第1の負メニスカスレンズL11と、物体側に凸面を向けた第2の負メニスカスレンズL12と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13と物体側に凸面を向けた第3の負メニスカスレンズL14との接合によりなる接合正レンズとから構成される。第1レンズ群G1において、第2の負メニスカスレンズL12における像面I側のレンズ面が非球面となっている。
【0096】
第2レンズ群G2の前群G2aは、両凸形状の第1の正レンズL21から構成される。第2レンズ群G2の後群G2bは、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた第4の負メニスカスレンズL22と、両凹形状の負レンズL23と両凸形状の第2の正レンズL24との接合によりなる接合負レンズと、両凸形状の第3の正レンズL25とから構成される。第2レンズ群G2の後群G2bにおいて、第2の正レンズL24における像面I側のレンズ面が非球面となっている。また、第4の負メニスカスレンズL22における物体側のレンズ面(面番号12)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0097】
そして、無限遠物体から近距離(有限距離)物体へのフォーカシング(合焦)の際、第
1レンズ群G1が固定されて、第2レンズ群G2が移動するようになっている。またこのとき、第2レンズ群G2の前群G2a、絞りS、および後群G2bは、それぞれ一体的に移動するようになっている。
【0098】
下の表3に、第3実施例における各諸元を示す。なお、表3における第1面〜第18面の曲率半径Rは、図6における第1面〜第18面に付した符号R1〜R18に対応している。また、第3実施例において、第5面および第16面の各レンズ面は非球面形状に形成されている。
【0099】
(表3)
[全体諸元]
f=28.70
FNO=1.85
ω=37.68
Y=21.60
TL=115.35
Bf=38.90
[レンズ諸元]
N R D nd νd
物面 ∞ ∞
1 47.3292 1.5000 1.72915 54.66
2 22.8109 5.5771
3 35.4413 1.5000 1.51680 64.11
4 23.4810 0.2000 1.52050 50.97
5* 21.5311 17.0000
6 37.4414 3.3161 1.81600 46.62
7 104.2195 1.3000 1.51822 58.94
8 40.6864 (d1)
9 35.8877 5.2516 1.69679 55.52
10 -232.6661 5.9928
11 0.0000 5.0287 (絞り)
12 31.9060 1.3000 1.75519 27.51
13 27.2893 5.6256
14 -25.1103 1.4000 1.78472 25.68
15 30.2467 5.0249 1.80332 41.71
16* -69.5995 0.1000
17 160.9651 5.4531 1.80610 40.94
18 -31.3476 (Bf)
像面 ∞
[非球面データ]
第5面
κ=1.0000,A4=-5.69480E-06,A6=-3.25880E-08,A8=6.98270E-11,A10=-2.50300E-13
第16面
κ=1.0000,A4=1.27800E-05,A6=8.55920E-09,A8=0.00000E+00,A10=0.00000E+00
[可変間隔データ]
無限遠 近距離
D0= ∞ 200.0000
d1= 10.8827 4.8932
【0100】
図7(a)〜(b)は、第3実施例に係る光学系WL3の諸収差図である。ここで、図
7(a)は無限遠合焦時の諸収差図であり、図7(b)は近距離合焦時(D0=200mm)の諸収差図である。各収差図より、第3実施例では、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。その結果、第3実施例の光学系WL3を搭載することにより、デジタル一眼レフカメラCAMにおいても、優れた光学性能を確保することができる。
【0101】
(第4実施例)
次に、本願の第4実施例について図8〜図9および表4を用いて説明する。図8は、第4実施例に係る光学系WL(WL4)のレンズ構成を示す断面図である。第4実施例に係る光学系WL4は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成され、第2レンズ群G2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、正の屈折力を有する前群G2aと、開口絞りSと、正の屈折力を有する後群G2bとから構成される。
【0102】
第1レンズ群G1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた第1の負メニスカスレンズL11と、物体側に凸面を向けた第2の負メニスカスレンズL12と、物体側に凸面を向けた第1の正メニスカスレンズL13と物体側に凸面を向けた第3の負メニスカスレンズL14との接合によりなる接合正レンズとから構成される。第1レンズ群G1において、第2の負メニスカスレンズL12における像面I側のレンズ面が非球面となっている。
【0103】
第2レンズ群G2の前群G2aは、両凸形状の第1の正レンズL21から構成される。第2レンズ群G2の後群G2bは、光軸に沿って物体側から順に並んだ、物体側に凸面を向けた第4の負メニスカスレンズL22と、両凹形状の負レンズL23と両凸形状の第2の正レンズL24との接合によりなる接合負レンズと、両凸形状の第3の正レンズL25と、像面I側に凸面を向けた第2の正メニスカスレンズL26とから構成される。第2レンズ群G2の後群G2bにおいて、第3の正レンズL25における像面I側のレンズ面が非球面となっている。また、第4の負メニスカスレンズL22における像面I側のレンズ面(面番号13)と、第2の正メニスカスレンズL26における物体側のレンズ面(面番号19)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0104】
そして、無限遠物体から近距離(有限距離)物体へのフォーカシング(合焦)の際、第1レンズ群G1が固定されて、第2レンズ群G2が移動するようになっている。またこのとき、第2レンズ群G2の前群G2a、絞りS、および後群G2bは、それぞれ一体的に移動するようになっている。
【0105】
下の表4に、第4実施例における各諸元を示す。なお、表4における第1面〜第20面の曲率半径Rは、図8における第1面〜第20面に付した符号R1〜R20に対応している。また、第4実施例において、第5面および第18面の各レンズ面は非球面形状に形成されている。
【0106】
(表4)
[全体諸元]
f=31.00
FNO=1.84
ω=35.45
Y=21.60
TL=111.05
Bf=40.08
[レンズ諸元]
N R D nd νd
物面 ∞ ∞
1 54.8755 1.5000 1.77250 49.61
2 24.3470 6.4422
3 46.8800 1.5000 1.77250 49.61
4 30.0000 0.1000 1.52050 50.97
5* 28.1565 10.0000
6 39.4043 6.0000 1.83481 42.76
7 799.7751 1.3000 1.51823 58.82
8 50.6325 (d1)
9 34.7711 5.7076 1.80400 46.58
10 -127.3217 4.2607
11 0.0000 1.8217 (絞り)
12 311.4924 1.2000 1.58144 40.98
13 50.7052 5.0000
14 -23.2205 1.4000 1.78472 25.64
15 45.6877 4.0000 1.59319 67.90
16 -102.0531 0.5000
17 224.5463 3.3243 1.77250 49.62
18* -72.9478 1.1000
19 -271.1411 4.5000 1.80400 46.60
20 -28.5408 (Bf)
像面 ∞
[非球面データ]
第5面
κ=1.0000,A4=-3.78292E-06,A6=-3.64587E-09,A8=-1.01198E-11,A10=3.37967E-15
第18面
κ=1.0000,A4=1.43983E-05,A6=6.14666E-11,A8=0.00000E+00,A10=0.00000E+00
[可変間隔データ]
無限遠 近距離
D0= ∞ 200.0000
d1= 11.3148 4.5052
【0107】
図9(a)〜(b)は、第4実施例に係る光学系WL4の諸収差図である。ここで、図9(a)は無限遠合焦時の諸収差図であり、図9(b)は近距離合焦時(D0=200mm)の諸収差図である。各収差図より、第4実施例では、諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。その結果、第4実施例の光学系WL4を搭載することにより、デジタル一眼レフカメラCAMにおいても、優れた光学性能を確保することができる。
【0108】
下の表5に、各実施例における条件式対応値を示す。
【0109】
(表5)
第1実施例 第2実施例 第3実施例 第4実施例
条件式(1) 1.33 1.56 1.57 1.11
条件式(2) 0.43 0.87 0.66 0.38
条件式(3) 2.03 1.90 1.52 1.79
条件式(4) 1.37 1.33 1.38 1.28
条件式(5) 2.78 2.53 2.10 2.29
条件式(6) 1.83481 1.83481 1.81600 1.83481
条件式(7) 42.76 42.76 46.62 42.76
【0110】
このように各実施例では、上述した各条件式がそれぞれ満たされていることが分かる。以上、各実施例によれば、良好な光学性能を有する光学系WLおよび光学装置(デジタル一眼レフカメラCAM)を実現することができる。
【0111】
ここで、本実施形態に係る光学系WLに用いられる反射防止膜(多層広帯域反射防止膜とも言う)について説明する。図12は、反射防止膜の膜構成の一例を示す図である。この反射防止膜101は7層からなり、レンズ等の光学部材102の光学面に形成される。第1層101aは真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムで形成されている。また、この第1層101aの上に更に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第2層101bが形成される。さらに、この第2層101bの上に真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムからなる第3層101cが形成され、この第3層101cの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第4層101dが形成される。またさらに、この第4層101dの上に真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムからなる第5層101eが形成され、この第5層101eの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第6層101fが形成される。
【0112】
そして、このようにして形成された第6層101fの上に、ウェットプロセスによりフッ化マグネシウムとシリカの混合物からなる第7層101gが形成されて本実施形態の反射防止膜101が形成される。第7層101gの形成には、ウェットプロセスの一種であるゾル−ゲル法を用いている。ゾル−ゲル法とは、原料を混合することにより得られたゾルを、加水分解・重縮合反応などにより流動性のないゲルとし、このゲルを加熱・分解して生成物を得る方法であり、光学薄膜の作製においては、光学部材の光学面上に光学薄膜材料ゾルを塗布し、乾燥固化によりゲル膜とすることで膜を生成することができる。なお、ウェットプロセスとして、ゾル−ゲル法に限らず、ゲル状態を経ないで固体膜を得る方法を用いるようにしてもよい。
【0113】
このように、この反射防止膜101の第1層101a〜第6層101fまではドライプロセスである電子ビーム蒸着により形成され、最上層である第7層101gは、フッ酸/酢酸マグネシウム法で調製したゾル液を用いるウェットプロセスにより以下の手順で形成されている。まず、予めレンズ成膜面(上述の光学部材102の光学面)に真空蒸着装置を用いて第1層101aとなる酸化アルミニウム層、第2層101bとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層、第3層101cとなる酸化アルミニウム層、第4層101dとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層、第5層101eとなる酸化アルミニウム層、第6層101fとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層を順に形成する。そして、蒸着装置より光学部材102を取り出した後、フッ酸/酢酸マグネシウム法により調製したゾル液にシリコンアルコキシドを加えたものをスピンコート法により塗布することにより、第7層101gとなるフッ化マグネシウムとシリカの混合物からなる層を形成する。フッ酸/酢酸マグネシウム法によって調製される際の反応式を以下の式(a)に示す。
【0114】
2HF+Mg(CH3COO)2→MgF2+2CH3COOH …(a)
【0115】
この成膜に用いたゾル液は、原料混合後、オートクレーブで140℃、24時間高温加圧熟成処理を施した後、成膜に用いられる。この光学部材102は、第7層101gの成膜終了後、大気中で160℃、1時間加熱処理して完成される。このようなゾル−ゲル法を用いることにより、大きさが数nmから数十nmの粒子が空隙を残して堆積することにより第7層101gが形成される。
【0116】
このようにして形成された反射防止膜101を有する光学部材の光学的性能について図13に示す分光特性を用いて説明する。
【0117】
本実施形態に係る反射防止膜を有する光学部材(レンズ)は、以下の表6に示す条件で形成されている。ここで表6は、基準波長をλとし、基板の屈折率(光学部材)が1.62、1.74及び1.85について反射防止膜101の各層101a(第1層)〜101g(第7層)の光学膜厚をそれぞれ求めたものである。なお、表6では、酸化アルミニウムをAl2O3、酸化チタンと酸化ジルコニウム混合物をZrO2+TiO2、フッ化マグネシウムと
シリカの混合物をMgF2+SiO2とそれぞれ表している。
【0118】
(表6)
物質 屈折率 光学膜厚 光学膜厚 光学膜厚
媒質 空気 1
第7層 MgF2+SiO2 1.26 0.268λ 0.271λ 0.269λ
第6層 ZrO2+TiO2 2.12 0.057λ 0.054λ 0.059λ
第5層 Al2O3 1.65 0.171λ 0.178λ 0.162λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.127λ 0.13λ 0.158λ
第3層 Al2O3 1.65 0.122λ 0.107λ 0.08λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.059λ 0.075λ 0.105λ
第1層 Al2O3 1.65 0.257λ 0.03λ 0.03λ
基板の屈折率 1.62 1.74 1.85
【0119】
図13は、表6において基準波長λを550nmとして反射防止膜101の各層の光学膜厚を設計した光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を表している。
【0120】
図13から、基準波長λを550nmで設計した反射防止膜101を有する光学部材は、光線の波長が420nm〜720nmの全域で反射率を0.2%以下に抑えられることが判る。また、表6において基準波長λをd線(波長587.6nm)として各光学膜厚を設計した反射防止膜101を有する光学部材でも、その分光特性にはほとんど影響せず、図13に示す基準波長λが550nmの場合とほぼ同等の分光特性を有する。
【0121】
次に、反射防止膜の変形例について説明する。変形例の反射防止膜は5層からなり、表6と同様、以下の表7で示される条件で基準波長λに対する各層の光学膜厚が設計される。本変形例では、第5層の形成に前述のゾル−ゲル法を用いている。
【0122】
(表7)
物質 屈折率 光学膜厚 光学膜厚
媒質 空気 1
第5層 MgF2+SiO2 1.26 0.275λ 0.269λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.045λ 0.043λ
第3層 Al2O3 1.65 0.212λ 0.217λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.077λ 0.066λ
第1層 Al2O3 1.65 0.288λ 0.290λ
基板の屈折率 1.46 1.52
【0123】
図14は、表7において、基板の屈折率が1.52及び基準波長λを550nmとして各光学膜厚を設計した反射防止膜を有する光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を示している。図14から、変形例の反射防止膜は、光線の波長が420nm〜720nmの全域で反射率が0.2%以下に抑えられることがわかる。なお、表7において基準波長λをd線(波長587.6nm)として各光学膜厚を設計した反射防止膜を有する光学部
材でも、その分光特性にはほとんど影響せず、図14に示す分光特性とほぼ同等の特性を有する。
【0124】
図15は、図14に示す分光特性を有する光学部材への光線の入射角が30度、45度、60度の場合の分光特性をそれぞれ示す。なお、図14、図15には表7に示す基板の屈折率が1.46の反射防止膜を有する光学部材の分光特性が図示されていないが、基板の屈折率が1.52とほぼ同等の分光特性を有していることは言うまでもない。
【0125】
また比較のため、図16に、従来の真空蒸着法などのドライプロセスのみで成膜した反射防止膜の一例を示す。図16は、表7と同じ基板の屈折率1.52に以下の表8で示される条件で構成される反射防止膜を設計した光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を示す。また、図17は、図16に示す分光特性を有する光学部材への光線の入射角が30度、45度、60度の場合の分光特性をそれぞれ示す。
【0126】
(表8)
物質 屈折率 光学膜厚
媒質 空気 1
第7層 MgF2 1.39 0.243λ
第6層 ZrO2+TiO2 2.12 0.119λ
第5層 Al2O3 1.65 0.057λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.220λ
第3層 Al2O3 1.65 0.064λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.057λ
第1層 Al2O3 1.65 0.193λ
基板の屈折率 1.52
【0127】
図13〜図15で示される本実施形態に係る反射防止膜を有する光学部材の分光特性を、図16および図17で示される従来例の分光特性と比較すると、本実施形態に係る反射防止膜はいずれの入射角においてもより低い反射率を有し、しかもより広い帯域で低い反射率を有することが良くわかる。
【0128】
次に、本願の第1実施例から第4実施例に、上記表6および表7に示す反射防止膜を適用した例について説明する。
【0129】
第1実施例の光学系WL1において、第2レンズ群G2を構成する第3の負メニスカスレンズL22の屈折率ndは、表1に示すように、nd=1.51742であり、第2レンズ群G2を構成する第4の正レンズL25の屈折率ndは、nd=1.77250である。そのため、第3の負メニスカスレンズL22における像面I側のレンズ面に、基板の屈折率が1.52に対応する反射防止膜101(表7を参照)を用い、第4の正レンズL25における像面I側のレンズ面に、基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜(表6を参照)を用いる。なお、第3の負メニスカスレンズL22における像面I側のレンズ面(第14面)は、像面Iから見て凹形状のレンズ面であり、第4の正レンズL25における像面I側のレンズ面(第19面)は、開口絞りSから見て凹形状のレンズ面である。これにより、各レンズ面(第14面および第19面)からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減させることができる。
【0130】
第2実施例の光学系WL2において、第1レンズ群G1を構成する第1の負メニスカスレンズL11の屈折率ndは、表2に示すように、nd=1.69679であり、第1レンズ群G1を構成する第2の負メニスカスレンズL12の屈折率ndは、nd=1.51680である。そのため、第1の負メニスカスレンズL11における像面I側のレンズ面
に、基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表6を参照)を用い、第2の負メニスカスレンズL12における物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.52に対応する反射防止膜(表7を参照)を用いる。なお、第1の負メニスカスレンズL11における像面I側のレンズ面(第2面)は、開口絞りSから見て凹形状のレンズ面であり、第2の負メニスカスレンズL12における物体側のレンズ面(第3面)は、開口絞りSから見て凹形状のレンズ面である。これにより、各レンズ面(第2面および第3面)からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減させることができる。
【0131】
第3実施例の光学系WL3において、第2レンズ群G2を構成する第4の負メニスカスレンズL22の屈折率は、表3に示すように、nd=1.75519である。そのため、第4の負メニスカスレンズL22における物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜(表6を参照)を用いる。なお、第4の負メニスカスレンズL22における物体側のレンズ面(第12面)は、像面Iから見て凹形状のレンズ面である。これにより、各レンズ面(第12面)からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減させることができる。
【0132】
第4実施例の光学系WL4において、第2レンズ群G2を構成する第4の負メニスカスレンズL22の屈折率は、表4に示すように、nd=1.58144であり、第2レンズ群G2を構成する第2の正メニスカスレンズL26の屈折率は、nd=1.80400である。そのため、第4の負メニスカスレンズL22における像面I側のレンズ面に基板の屈折率が1.62に対応する反射防止膜101(表6を参照)を用い、第2の正メニスカスレンズL26における物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.85に対応する反射防止膜(表6を参照)を用いる。なお、第4の負メニスカスレンズL22における像面I側のレンズ面(第13面)は、像面Iから見て凹形状のレンズ面であり、第2の正メニスカスレンズL26における物体側のレンズ面(第19面)は、開口絞りSから見て凹形状のレンズ面である。これにより、各レンズ面(第13面および第19面)からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減させることができる。
【0133】
なお、上述の実施形態において、以下に記載の内容は、光学性能を損なわない範囲で適宜採用可能である。
【0134】
上述の各実施例において、2群構成を示したが、3群、4群等の他の群構成にも適用可能である。また、最も物体側にレンズまたはレンズ群を追加した構成や、最も像側にレンズまたはレンズ群を追加した構成でも構わない。また、レンズ群とは、変倍時に変化する空気間隔で分離された、少なくとも1枚のレンズを有する部分を示す。
【0135】
また、単独または複数のレンズ群、または部分レンズ群を光軸方向に移動させて、無限遠物体から近距離物体への合焦を行う合焦レンズ群としてもよい。この合焦レンズ群は、オートフォーカスにも適用することができ、オートフォーカス用の(超音波モーター等を用いた)モーター駆動にも適している。特に、第2レンズ群の少なくとも一部を合焦レンズ群とするのが好ましい。
【0136】
また、レンズ群または部分レンズ群を光軸に垂直な方向の成分を持つように移動させ、または、光軸を含む面内方向に回転移動(揺動)させて、手ブレによって生じる像ブレを補正する防振レンズ群としてもよい。特に、第2レンズ群の後群の少なくとも一部を防振レンズ群とするのが好ましい。
【0137】
また、レンズ面は、球面または平面で形成されても、非球面で形成されても構わない。レンズ面が球面または平面の場合、レンズ加工および組立調整が容易になり、加工および組立調整の誤差による光学性能の劣化を防げるので好ましい。また、像面がずれた場合で
も描写性能の劣化が少ないので好ましい。レンズ面が非球面の場合、非球面は、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に形成したガラスモールド非球面、ガラスの表面に樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれの非球面でも構わない。また、レンズ面は回折面としてもよく、レンズを屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)あるいはプラスチックレンズとしてもよい。
【0138】
また、開口絞りは第2レンズ群近傍に配置されるのが好ましいが、開口絞りとしての部材を設けずに、レンズの枠でその役割を代用してもよい。
【0139】
また、各レンズ面には、フレアやゴーストを軽減し高コントラストの高い光学性能を達成するために、広い波長域で高い透過率を有する反射防止膜を施してもよい。
【符号の説明】
【0140】
CAM デジタル一眼レフカメラ(光学装置)
WL 光学系
G1 第1レンズ群 G2 第2レンズ群
G2a 前群 G2b 後群
S 開口絞り I 像面
101 反射防止膜
101a 第1層 101b 第2層
101c 第3層 101d 第4層
101e 第5層 101f 第6層
101g 第7層
102 光学部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とからなる光学系であって、
無限遠物体から有限距離物体への合焦の際、前記第1レンズ群が固定されて、前記第2レンズ群が移動し、
前記第2レンズ群は、前記第2レンズ群に配置された絞りよりも物体側に位置する前群と、前記絞りよりも像側に位置する後群とからなり、
前記第1レンズ群および前記第2レンズ群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むように構成され、
以下の条件式を満足することを特徴とする光学系。
0.10<f2a/f<1.70
但し、
f2a:前記第2レンズ群の前群の焦点距離、
f:無限遠合焦状態での前記光学系の焦点距離。
【請求項2】
前記反射防止膜は多層膜であり、
前記ウェットプロセスを用いて形成された層は、前記多層膜を構成する層のうち最も表面側の層であることを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記ウェットプロセスを用いて形成された層の屈折率が1.30以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
前記絞りから見て凹形状の前記光学面に、前記反射防止膜が設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項5】
前記絞りから見て凹形状の前記光学面は、前記第1レンズ群および前記第2レンズ群内のレンズにおける物体側のレンズ面であることを特徴とする請求項4に記載の光学系。
【請求項6】
前記絞りから見て凹形状の前記光学面は、前記第1レンズ群および前記第2レンズ群内のレンズにおける像面側のレンズ面であることを特徴とする請求項4に記載の光学系。
【請求項7】
像面から見て凹形状の前記光学面に、前記反射防止膜が設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項8】
前記像面から見て凹形状の前記光学面は、前記第2レンズ群内のレンズにおける物体側のレンズ面であることを特徴とする請求項7に記載の光学系。
【請求項9】
前記像面から見て凹形状の前記光学面は、前記第2レンズ群内のレンズにおける像面側のレンズ面であることを特徴とする請求項7に記載の光学系。
【請求項10】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の光学系。
0.10<f2a/f2b<1.00
但し、
f2b:前記第2レンズ群の後群の焦点距離。
【請求項11】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の光学系。
0.10<(−f1)/f2<2.50
但し、
f1:前記第1レンズ群の焦点距離、
f2:前記第2レンズ群の焦点距離。
【請求項12】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の光学系。
0.20<f2/f<1.55
但し、
f2:前記第2レンズ群の焦点距離。
【請求項13】
前記第2レンズ群の後群は、少なくとも1つの非球面レンズを有することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項14】
前記第2レンズ群の後群は、光軸に沿って像側から順に並んだ2つの正レンズを有することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項15】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の光学系。
(−f1)/f<5.0
但し、
f1:前記第1レンズ群の焦点距離。
【請求項16】
前記第1レンズ群は、光軸に沿って物体側から順に並んだ2つの負レンズを有することを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項17】
前記第1レンズ群は、少なくとも1つの非球面レンズを有することを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項18】
前記第1レンズ群は正レンズを有し、
以下の条件式をそれぞれ満足することを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の光学系。
n1p>1.800
ν1p>28.00
但し、
n1p:前記正レンズの屈折率の平均値、
ν1p:前記正レンズのアッベ数の平均値。
【請求項19】
無限遠物体から有限距離物体への合焦の際、前記第2レンズ群の前群と後群が一体となって光軸に沿って移動することを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項20】
物体の像を所定の面上に結像させる光学系を備えた光学装置であって、
前記光学系が請求項1から19のいずれか一項に記載の光学系であることを特徴とする光学装置。
【請求項21】
光軸に沿って物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とを配置する光学系の製造方法であって、
無限遠物体から有限距離物体への合焦の際、前記第1レンズ群が固定されて、前記第2レンズ群が移動し、
前記第2レンズ群は、前記第2レンズ群に配置された絞りよりも物体側に位置する前群と、前記絞りよりも像側に位置する後群とからなり、
前記第1レンズ群および前記第2レンズ群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むように構成され、
以下の条件式を満足するようにしたことを特徴とする光学系の製造方法。
0.10<f2a/f<1.70
但し、
f2a:前記第2レンズ群の前群の焦点距離、
f:無限遠合焦状態での前記光学系の焦点距離。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−83782(P2013−83782A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223414(P2011−223414)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】