説明

光学系

【課題】アポダイゼーション効果が可変であり、諸収差を良好に補正可能な形状可変素子を有する光学系を提供する。
【解決手段】複数の光学材料からなり、界面の形状が変化する形状可変素子AO1,AO2を有する光学系であって、d線の吸収係数の差Δα(mm-1)が0.2<|Δα|<1.5を満たす2材料からなる形状可変な界面A及び満たさない2材料からなる形状可変な界面Bを含む、2以上の形状可変な界面を有し、該界面Aの内i番目の界面Aiにおける屈折力変化量をΔφAi、該界面Bの内i番目の界面Biにおける屈折力変化量をΔφBiとしたとき、全ての該界面Aの屈折力変化量の総和をΔφA、及び全て該界面Bの屈折力変化量の総和をΔφBとすると、ΔφA×ΔφB&#60;0を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学系に関し、特に異なる2つの媒質が形成する界面の形状を可変とした形状可変素子を用いることで、光学系を通過する光束の光量を制御することを可能とする撮像光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、撮像光学系においては、合焦物体の結像性能以外にも焦点外れ像(ボケ像)の見え方も重要視される。特に望遠レンズや、マクロレンズにおいては、焦点外れ像を意図して撮影することもあり、焦点外れ像の見え方を意図した設計を行う必要性がある。
【0003】
焦点外れ像を美しく見せるような手法として、アポダイゼーションフィルターを備えた光学系が特許文献1に開示されている。特許文献1において、アポダイゼーションフィルターは、光軸から光軸と垂直な方向に離れるに従って次第に透過光量が減少するように構成されたフィルターである。このアポダイゼーションフィルターによって、撮像光束内に強度分布を付加することができ、焦点外れ像の輪郭を美しく見せることができる。また、アポダイゼーション効果を可変にすることが出来れば、焦点外れ像の見え方を自在にコントロールすることができ、その結果、撮影における表現力が増し、好ましい。
【0004】
アポダイゼーション効果を可変にする手法が、特許文献2に開示されている。特許文献2においては、透過率が異なり、互いに混合しない2種類の液体を略球面の界面を介して密閉空間内に配置し、かつ、印加電圧の出力を制御することにより液体界面形状を変化させ、アポダイゼーション効果を可変とした光学素子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−231209号公報
【特許文献2】特開2000−356792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された従来技術では、アポダイゼーション効果を可変にすることができない。
【0007】
また、特許文献2においては、互いに混合せず透過率が互いに異なる2種類の液体を使用するためアポダイゼーション効果は可変であるが、2種類の液体には同じ屈折率のものが使用されている。
【0008】
光学系中に可変アポダイゼーション素子を用いた場合、屈折率が同じ液体にて界面を形成すれば、面形状を変化させる際に収差変動が生じないので好ましい。しかし、現実には2種類の液体の屈折率を完全に合わせることは難しく、さらには、1つの波長において屈折率を近くすることができても、波長分散(アッベ数)も同時に同じとなるように調整することは、さらに困難となる。また、屈折率、またはアッベ数が異なる2種類の液体で可変アポダイゼーション素子の界面を形成した場合、アポダイゼーション効果を変化させる際に収差変動が生じ、結像性能が劣化してしまう。
【0009】
本発明は、可変アポダイゼーション機能を持つ形状可変素子を用い、かつアポダイゼーション効果を変化させる際にも、諸収差を良好に補正可能な光学系、及びこれを用いた光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の光学系は、複数の光学材料からなり、界面の面形状を変化させる形状可変素子を有する光学系であって、d線における吸収係数の差Δα(mm−1)が、
0.2<|Δα|<1.5
を満たす2つの材料からなる形状可変な界面A及び該条件式を満たさない2つの材料から形成される形状可変な界面Bを含む、2以上の形状可変な界面を有し、該界面Aの内、i番目の界面Aにおける屈折力変化量をΔφAi、該界面Bの内、i番目の界面Bにおける屈折力変化量をΔφBiとしたとき、全ての該界面Aにおける屈折力変化量の総和をΔφ、及び、全ての該界面Bにおける屈折力変化量の総和をΔφとすると、
Δφ×Δφ<0
を満たすことを特徴とする。
【0011】
ただし、
【数1】

ここで、NAif、NAirはそれぞれ該界面Aを形成する物体側の材料と像側の材料のd線における屈折率であり、rAia、rAibはそれぞれ該界面Aの曲率が最も小さい時と大きい時の曲率半径であり、NBif、NBirはそれぞれ該界面Bを形成する物体側の材料と像側の材料のd線における屈折率であり、rBia、rBibはそれぞれ該界面Bの曲率が最も小さい時と大きい時の曲率半径である。
【0012】
本発明の第2の光学系は、複数の光学材料からなり、界面の面形状を変化させる形状可変素子を有する光学系において、d線における吸収係数の差Δα(mm−1)が、
0.2<|Δα|<1.5
を満たす2つの材料からなる形状可変な界面A及び該条件式を満たさない2つの材料から形成される形状可変な界面Bを含む、2以上の形状可変な界面を有し、該界面Aの内、i番目の界面Aの形状が変化したときの色収差変動量をΔφcAi、該界面Bの内、i番目の界面Bにおいて界面形状が変化したときの色収差変動量をΔφcBiとしたとき、全ての該界面Aの色収差変動量の総和をΔφc、全ての該界面Bの色収差変動量の総和をΔφcとすると、
Δφc×Δφc<0
を満たすことを特徴としている。
【0013】
ただし、
【数2】

ここで、rAia、rAibはそれぞれ該界面Aの曲率が最も小さい時と大きい時の曲率半径であり、νAif、νAirはそれぞれ該界面Aの物体側の材料と像側の材料のアッベ数であり、、rBia、rBibはそれぞれ該界面Bの曲率が最も小さい時と大きい時の曲率半径であり、νBif、νBirはそれぞれ該界面Bの物体側の材料と像側の材料のアッベ数である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、界面の形状を変化させてアポダイゼーション効果を可変とすることができ、かつ、形状可変時にも諸収差を十分に補正する(低減する)ことが可能な光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電気駆動方式の形状可変素子の構成例を説明する図。
【図2】弾性膜駆動方式の形状可変素子の構成例を説明する図。
【図3】形状可変素子の界面変化を示す模式図。
【図4】光束内の透過率分布の変化を示す模式図。
【図5】本発明の実施例1である形状可変素子を用いた光学系の断面図。
【図6】実施例1の収差図。
【図7】本発明の実施例2である形状可変素子を用いた光学系の断面図。
【図8】実施例2の収差図。
【図9】本発明の実施例2である形状可変素子を用いた光学系の断面図。
【図10】実施例3の収差図。
【図11】本発明の実施例4である形状可変素子を用いた光学系の断面図。
【図12】実施例4の収差図。
【図13】本発明の実施例5である形状可変素子を用いた光学系の断面図。
【図14】実施例5の収差図。
【図15】本発明の実施例6である形状可変素子を用いた光学系の断面図。
【図16】実施例6の収差図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
まず、後述する本発明の実施例に共通する事項について説明する。実施例の形状可変素子は、界面の面形状を変化させてアポダイぜーション効果、及び屈折力または色収差量を変化させる。そして、この形状可変素子を構成する材料は、後述する条件を満足する。
実施例の光学系は、デジタルスチルカメラ、銀塩フィルムカメラ、ビデオカメラ、等の光学機器に最適な構成となるものである。
【0018】
実施例の形状可変素子は、複数の光学材料から構成されており、その界面の面形状を変化させることで屈折力を変化させており、凸レンズもしくは凹レンズとして作用する。形状可変素子としては、電気駆動方式の素子によって実現することが可能である。図1に示す電気駆動方式とは、互いに混合しない2以上の液体材料からなり、電圧を印加することによって界面形状を変化させるものである。例えば、電解液としては水や、エタノール、エチレングリコール等の液体(Nd:約1.33〜1.5程度)を任意の体積比で混合することで、ある程度任意の光学特性を持った材料を得られる。同様に、非電解液としては、シリコンオイル等の液体(Nd:約1.37〜1.6程度)を任意の体積比で混合することで、ある程度の任意の光学特性を持った材料を得ることができる。
【0019】
また、図2に示す界面に弾性膜を使用してアクチュエーターなどの駆動手段を設け、機構的制御を加えることでも形状可変の効果を得ることが可能である。これによれば、互いに混合する液体であっても実現が可能であり、材料の選択性が高いという利点がある。
【0020】
次に、図1、図2に示したような形状可変素子の一方の液体に透過率が低い材料を用いた場合について考える。
【0021】
図3に透過率が低い液体を用いた形状可変素子の模式図を示す。電解液31と非電解液32の間に界面を設けており、さらに電解液31には透過率が低い材料を用いている。また、印加する電圧によって、界面の形状は図3(a)から図3(b)のように変化する。
【0022】
図4に、入射光束位置に対する透過率の値を模式的に示す。このとき、透過率が低い液体を作成するためには、例えば電解液の場合はカーボンブラックや酸化チタン等の材料を加えることで得られる。非電解質液において、透過率が低い液体を作成するためには、例えば油脂に溶解する染料を混合させることで得られる。該染料は、キレートアゾ顔料やニトロソ顔料等が好適である。
一般に該顔料は、色をもっていることが多いため、これらを所定比率で混合することで無彩色顔料が得られる。
【0023】
図3に示す構成の素子の場合、電解液31が成す液体部は一点鎖線で示す光軸から高さが高くなるほど光路長が長くなる構成となっているため、入射光束のうち光軸から高い位置を通る光線の透過率が下がる構成となっている。 このため、図3(a)に示すように、界面の曲率がきつい状態であるほど、焦点外れ像の輪郭が大きくボケていくように見える。
逆に図3(b)のように、界面の曲率をゆるくしていくと、入射光束内の透過率分布が均一になっていき、焦点外れ像の輪郭がはっきりした像となる。
以上のように、形状可変素子の一方の材料に透過率が低い材料を用いて、界面形状を変化させることで、焦点外れ像の様子を変えられることを説明した。
【0024】
通常の光学系においては、焦点外れ像の輪郭は比較的はっきりしているものが多い。通常の光学系に対し焦点外れ像の見え方に差をつけるためには、図3(a)に示すような界面の曲率がきつい状態を有する必要がある。 しかしながら、界面を成す2つの材料の屈折率やアッベ数が異なっていた場合、その強い曲率のため、非常に大きな収差が生じてしまい、他のレンズでの補正が困難となる。そのうえ界面形状を変化させると、さらに収差変動が大きく発生し、補正はより困難となる。
上記のような液体材料を用いた形状可変素子の場合、数種類の材料を混合することで、界面を成す2つの材料の光学特性をある程度調整することができるが、それ以外の比重や耐環境性等に関する物性を所望の値にすることも考えると、完全に一致させることは難しい。
【0025】
そこで、本発明の光学系においては、まず、少なくとも1つの界面の面形状を変化させる形状可変素子を有し、該形状可変な界面Aを成す材料MAf、MArのd線における吸収係数の差Δα(mm−1)を以下の条件を満たすような構成としている。
0.2<|Δα|<1.5 ・・・(1)
ここで吸収係数αとは、厚さd(mm)の材料に光が入射するときに、入射する光の光量をI、出射する光の光量をIとしたとき、
【数3】

なる式を満たすものとする。
【0026】
上記(1)式を満たす材料を用いることで、界面Aの界面形状を変化させてアポダイゼーション効果を可変とすることができる。(1)式の下限の条件が満たされないと、十分なアポダイゼーション効果を得るためには界面の曲率をかなりきつくしなければならず、界面における収差の発生が大きくなってしまうため好ましくない。(1)式の上限の条件がみたされないと、光束内の平均透過率が下がってしまい、かつ、製造誤差や界面形状変化誤差による透過率の敏感度が高くなり、所望の透過率分布を得にくくなってしまうため、好ましくない。
(1)式はさらに望ましくは、以下の範囲とするのがよい。
0.25<|Δα|<1.0 ・・・(1a)
【0027】
また、本発明の光学系は、上記のアポダイゼーション効果を可変にするための形状可変な界面A以外に、(1)式の条件を満足しない1つ以上の形状可変な界面Bを有する。さらに、アポダイゼーション効果を可変にするための形状可変な界面Aにおける屈折力変化量の総和Δφ、界面Bにおける屈折力変化量の総和Δφは、下記の条件式を満足する。
Δφ×Δφ<0 ・・・(2)
【0028】
なお、界面i(i=A,B)における屈折力変化量Δφは、界面iを形成する材料のd線における屈折率を物体側からそれぞれNf、Nr、界面iの曲率変化量をΔRとしたとき、以下の式であらわされる。
Δφ=(Nr−Nf)×ΔR・・・(b)
但し、ΔR=1/ra−1/rb ・・・(c)
ここで、
aは、界面iの曲率が最も小さい値をとるときの曲率半径、
bは、界面iの曲率が最も大きい値をとるときの曲率半径
である。式(2)中のΔφ、Δφに対しては、具体的には、形状可変な界面Aの内、i番目の形状可変な界面Aにおける屈折力変化量をΔφAiとし、形状可変な界面Bの内、i番目の形状可変な界面Bにおける屈折力変化量をΔφBiとしたとき、
【数4】

と表せる。なお、界面Aにおける屈折力変化量をΔφAi、及び、界面Bにおける屈折力変化量をΔφBiは、以下のように表せる。
【0029】
【数5】

ここで、
Aif:形状可変な界面Aを形成する物体側の材料のd線における屈折率、
Air:形状可変な界面Aを形成する像側の材料のd線における屈折率、
Aia:形状可変な界面Aの曲率が最も小さい時の曲率半径、
Aib:形状可変な界面Aの曲率が最も大きい時の曲率半径、
Bif:形状可変な界面Bを形成する物体側の材料のd線における屈折率、
Bir:形状可変な界面Bを形成する像側の材料のd線における屈折率、
Bia:形状可変な界面Bの曲率が最も小さい時の曲率半径、
Bib:形状可変な界面Bの曲率が最も大きい時の曲率半径、
である。
【0030】
(2)式は、界面Aの形状変化の際に生じる屈折力変動を、他の形状可変な界面Bで打ち消す事を意味する。
形状可変な界面を変化させてアポダイゼーション効果を変化させる際に、光学系全体のパワーが変化してしまうと、焦点距離が変わり物像倍率が変わってしまうため好ましくない。
【0031】
さらには、同距離物体撮影時に形状可変な界面を変化させた時の焦点距離の変化量をΔf、光学系の焦点距離をfとしたとき、以下の条件式を満たすことで、物像倍率を大きく変えることなくアポダイゼーション効果を変えることができるため、より好ましい。
−0.05<Δf/f<0.05 ・・・(3)
ただし、焦点距離fは無限遠物体合焦時の値であり、界面の形状変化によって焦点距離が変化する場合は、界面の曲率が最も大きい値をとるときの焦点距離の値を示す。
さらに、形状可変な界面iを形成している、物体側の材料Mfと像側の材料Mrの、d線における屈折率をそれぞれNf、Nrとし、かつ界面iが形状変化する時のペッツバール和の変化量をΔPとしたとき、以下の条件式を満たす構成としている。
|ΣΔP×f|<0.1 ・・・(4)
ただし、ΔP=(1/Nr−1/Nf)×ΔR・・・(d)
【0032】
(4)式の上限の条件が満たされないと、界面形状変更時に生じる像面湾曲変化が大きくなり、諸収差の補正が困難となる。さらに望ましくは以下の範囲とするとよい。
|ΣΔP×f|<0.08 ・・・(4a)
また、形状可変な界面Aを形成する材料の、d線における屈折率をそれぞれNf、Nrとしたとき、以下の条件を満たす構成としている。
0.0005<|Nf−Nr|<0.2 ・・・(5)
(5)式の上限の条件が満たされないと、界面Aの形状変形の際に生じる収差が増大し、他の形状可変な界面で補正がしきれなくなる。また、下限の条件が満たされないと、材料選択の自由度が無くなり、材料作製の難易度が上がってしまう。
(5)式は好ましくは以下の範囲とするのがよい。
0.001<|Nf−Nr|<0.1 ・・・(5a)
【0033】
また、形状可変な界面Aを形成する2つの材料の、d線における屈折率が実質的に同じである場合にも、下記の(6)式の条件を満たす形状可変な界面Bを少なくとも1つ以上有する構成とすることで、界面の形状変化の際に生じる色収差変動を抑えた構成とすることができる。
Δφc×Δφc<0 ・・・(6)
【0034】
ここで、Δφc、Δφcは、それぞれ形状可変な界面Aと形状可変な界面Bの色収差変動量であり、
【数6】

で与えられる。また、形状可変な界面Aと形状可変な界面Bのいずれか又は双方が複数含まれている場合は、界面Aiの形状が変化したときの色収差変動量をΔφcAi、界面Biの界面形状が変化したときの色収差変動量をΔφcBiとしたとき、全ての該界面Aiの色収差変動量の総和ΔφcA、全ての界面Biの色収差変動量の総和ΔφcBは、
【数7】

で与えられる。ただし、
Aia:形状可変な界面Aの曲率が最も小さい時の曲率半径、
Aib:形状可変な界面Aの曲率が最も大きい時の曲率半径、
νAif:形状可変な界面Aの物体側の材料のアッベ数、
νAir:形状可変な界面Aの像側の材料のアッベ数、
Bia:形状可変な界面Bの曲率が最も小さい時の曲率半径、
Bib:形状可変な界面Bの曲率が最も大きい時の曲率半径、
νBif:形状可変な界面Bの物体側の材料のアッベ数、
νBir:形状可変な界面Bの像側の材料のアッベ数、
である。
【0035】
このとき、波長λの光線に関する屈折率をnλとする時、フラウンフォーファー線であるg線(435.8nm)、F線(486.1nm)、d線(587.6nm)およびC線(656.3nm)に関する屈折率はそれぞれng、nF、nd、nCで表される。d線に関するアッベ数νdはそれぞれ以下で表される。
νd=(nd−1)/(nF−nC)
【0036】
さらに、形状可変な界面iにおける色収差変動量Δφcの全ての界面iに対する総和をΔφCとしたとき、総和ΔφCが下記の条件を満たすと、より色収差変動を抑えた光学系を得ることが出来る。
−0.05<ΔφC×f<0.05 ・・・(7)
【0037】
ただし、
【数8】

である。ここで、
νf:形状可変な界面iを形成する物体側の材料のd線におけるアッベ数、
νr:形状可変な界面iを形成する像側の材料のd線におけるアッベ数、
a:界面iの曲率が最も小さい時の曲率半径、
b:界面iの曲率が最も大きい時の曲率半径、
である。
【0038】
このとき、形状可変な界面Aを成す材料のアッベ数をそれぞれνf、νrとしたとき、以下の条件を満たすことで、界面形状を変化させた場合にも色収差変動が少ない構成とすることができる。
0.1<|νf−νr|<30 ・・・(8)
また、可変アポダイゼーション効果を持つ形状可変な界面Aは、絞り近傍にあることが好ましい。
【0039】
界面Aを絞り位置から離していくと、軸上光束と軸外光束が界面Aに入射する位置が異なってくる。そのため、焦点外れ像の画角によってアポダイゼーション効果が異なってあらわれてしまうこととなる。
具体的には、無限物体合焦時における形状可変な界面Aと絞り位置の間隔をLA、光学全長をLとした時、以下の条件式を満たす構成とすることで、全画角において同様のアポダイゼーション効果を得ることができる。
0.01<LA/L<0.15 ・・・(9)
ただし、(9)式の値が界面形状変化によって変わる際は、LA、及びLは界面Aの曲率の絶対値が最も大きい時の値のことをしめす。
【0040】
上記式(6)において、界面Aと界面Bの色収差変動量の符号が逆であることが望ましいことを述べた。これを軸上色収差と倍率色収差に当てはめて考える。
軸上色収差に関しては、収差量が軸上光高さの二乗に比例するため、絞りの前後に関わらず、式(6)に示したように、界面形状変化時の色収差変動量の符号が逆とならないと、軸上色収差が補正できない。
しかし、倍率色収差に関しては、収差量が軸外光束高さに比例するため、絞りの前後にそれぞれ形状可変な界面がある場合、それぞれの収差量をキャンセルすることができず、逆に収差量が増大してしまうことになる。
【0041】
そのため上記形状可変な界面Aとは異なる形状可変な界面のうち、少なくとも一つ以上を絞りに対して、界面Aと同じ側に配置することで、軸上色収差と倍率色収差を共に良好に補正することができる。
また、上記形状可変な界面Aの界面形状を変化させる際に、同時に少なくとも一つ以上の群間隔を移動させることで収差補正の自由度が増し、諸収差を良好に補正することが容易となる。
【0042】
以下、上述した形状可変素子を用いた光学系の具体的な実施例について説明する。
各実施例の光学系は、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、銀塩フィルムカメラ等の撮像装置に用いられる撮影レンズ系である。レンズ断面図において、左方が物体側(前方)、右方が像側(後方)である。
レンズ群とは、ズーミングもしくはフォーカシングによって変化する光軸方向のレンズ間隔によって分けられる部分とする。また、光学防振のために、光軸と垂直方向に稼動させるブロックについてもレンズ群としてもよい。
レンズ断面図において、iは物体側からのレンズの順番を示し、Liは第iレンズ群である。SPは開口絞りである。IPは像面であり、撮像装置における固体撮像素子の撮像面や銀塩フィルムカメラのフィルム面に相当する感光面が配置される。
【0043】
AOj(j=1、2、3…)は形状可変素子を表す。各実施例の光学系は、形状可変素子を少なくとも1つ含む。
収差図において、d、g、C、Fはそれぞれd線、g線、C線およびF線に関する収差であることを示す。ΔMおよびΔSはそれぞれメリディオナル像面およびサジタル像面である。倍率色収差はg線によって表している。ωは半画角、FnoはFナンバーである。
【実施例1】
【0044】
図5(a)、(b)は実施例1(数値実施例1)の光学系であって、無限遠物体合焦時において、界面Aの曲率が最も大きい状態と、最も小さい状態のレンズ断面図である。
物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1、開口絞りSP、正の屈折力を有する第2レンズ群L2からなり、形状可変素子AO1と形状可変素子AO2を、開口絞りSPの像側に配置した、焦点距離135mmF2.83の光学系である。
該光学系はフォーカシングの際に、レンズ全体(L1,L2)を物体側にくりだすと同時に、第2レンズ群L2を動かすことで、無限遠物体から結像倍率−0.25倍までの近接撮影を可能にしている。
【0045】
また、開口絞りSPに近い形状可変素子AO1は、その物体側に非電解質からなり、透過率が低い材料(吸収係数α=0.4)からなるレンズ部L1fと、像側に電解質からなるレンズ部L1rを有し、界面形状を電気的に変更できる構成としている。
また、形状可変素子AO2は、その物体側に非電解質からなるレンズ部L2fと、像側に電解質からなるレンズ部L2rを有し、界面形状を電気的に変更できる構成としている。レンズ部L2fとL2rを成す液体は、可視域において実質的に透明である。
形状可変素子AO1は透過率が低い材料からなるレンズ部L1fに負のパワーを持たせている。
【0046】
図5(a)において、形状可変素子AO1の曲率が最も大きい状態となっている。このとき、レンズ部L1fを通る光線は、光束の光軸からの高さが高くなるにつれて透過率が低くなる構成となり、焦点外れ像の輪郭をぼやかすことができる。 図5(b)は、形状可変素子AO1の曲率が最も小さい状態を示している。このとき、レンズ部L1fを通る光線は、光束内の透過率分布が均一に近くなり、焦点外れ像の輪郭を図5(a)の状態に比べてはっきりと写すことができる。
さらに、形状可変素子AO1の曲率を変えると同時に形状可変素子AO2の曲率も同時に変えることで、形状可変素子AO1で生じる収差変動を補正し、光学系全体として諸収差が補正された光学系となっている。
【0047】
図6(a)、(b)はそれぞれ、実施例1の光学系の無限遠物体合焦時において、界面Aの曲率が最も大きい状態と、最も小さい状態の収差図であり、図6(c)は、結像倍率−0.25において、界面Aの曲率が最も大きい状態の収差図である。図6(a)、(b)、(c)より、光学系全体として諸収差が補正された光学系となっていることがわかる。
【実施例2】
【0048】
図7(a)、(b)は実施例2(数値実施例2)の光学系であって、無限遠物体合焦時において、界面Aの曲率が最も大きい状態と、最も小さい状態のレンズ断面図である。
物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1、開口絞りSP、正の屈折力を有する第2レンズ群L2からなり、形状可変素子AO1と形状可変素子AO2を、開口絞りSPの像側に配置した、焦点距離135mmF2.83の光学系である。
該光学系はフォーカシングの際に、レンズ全体(L1,L2)を物体側にくりだすと同時に、第2レンズ群L2を動かすことで、無限遠物体から結像倍率−0.25倍までの近接撮影を可能にしている。
【0049】
また、開口絞りSPに近い形状可変素子AO1は、その物体側に電解質からなり、透過率が低い材料(吸収係数α=0.51)からなるレンズ部L1fと、像側に非電解質からなるレンズ部L1rを有し、界面形状を電気的に変更できる構成としている。
また、形状可変素子AO2は、その物体側に電解質からなるレンズ部L2fと、像側に非電解質からなるレンズ部L2rを有し、界面形状を電気的に変更できる構成としている。レンズ部L2fとL2rを成す液体は、可視域において実質的に透明である。
【0050】
さらに、形状可変素子AO1とAO2は、共にd線における屈折率を実質的に同一としてアッベ数のみ異なる構成としている。
形状可変素子AO1は透過率が低い材料からなるレンズ部L1fに負のパワーを持たせており、実施例1と同様に界面形状の曲率を変化させることで、焦点外れ像のアポダイゼーション効果を可変とできる構成となっている。
さらに、形状可変素子AO1の曲率を変えると同時に形状可変素子AO2の曲率も同時に変えることで、形状可変素子AO1で生じる色収差変動を補正し、光学系全体として諸収差が補正された光学系となっている。
【0051】
図8(a)、(b)はそれぞれ、実施例2の光学系の無限遠物体合焦時において、界面Aの曲率が最も大きい状態と、最も小さい状態の収差図であり、図8(c)は、結像倍率−0.25において、界面Aの曲率が最も大きい状態の収差図である。図8(a)、(b)、(c)より、光学系全体として諸収差が補正された光学系となっていることがわかる。
【実施例3】
【0052】
図9(a)、(b)は、実施例3(数値実施例例3)の光学系であって、無限遠物体合焦時において、界面Aの曲率が最も大きい状態と、最も小さい状態のレンズ断面図である。
物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1、開口絞りSP、正の屈折力を有する第2レンズ群L2からなり、形状可変素子AO1と形状可変素子AO2を、開口絞りSPの像側に配置した、焦点距離135mmF2.83の光学系である。
該光学系はフォーカシングの際に、レンズ全体(L1,L2)を物体側にくりだすと同時に、第2レンズ群L2を動かすことで、無限遠物体から結像倍率−0.25倍までの近接撮影を可能にしている。
【0053】
また、開口絞りSPに近い形状可変素子AO1は、その物体側に非電解質からなり、透過率が低い材料(吸収係数α=0.67)からなるレンズ部L1fと、像側に電解質からなるレンズ部L1rを有し、界面形状を電気的に変更できる構成としている。
また、形状可変素子AO2は、その物体側に非電解質からなるレンズ部L2fと、像側に電解質からなるレンズ部L2rを有し、界面形状を電気的に変更できる構成としている。レンズ部L2fとL2rを成す液体は、可視域において実質的に透明である。
形状可変素子AO1は透過率が低い材料からなるレンズ部L1fに負のパワーを持たせており、実施例1と同様に界面形状の曲率を変化させることで、焦点外れ像のアポダイゼーション効果を可変とできる構成となっている。
【0054】
さらに、形状可変素子AO1の曲率を変えると同時に形状可変素子AO2の曲率も同時に変えることで、形状可変素子AO1で生じる収差変動を補正し、光学系全体として諸収差が補正された光学系となっている。
図10(a)、(b)はそれぞれ、実施例3の光学系の無限遠物体合焦時において、界面Aの曲率が最も大きい状態と、最も小さい状態の収差図であり、図10(c)は、結像倍率−0.25において、界面Aの曲率が最も大きい状態の収差図である。図10(a)、(b)、(c)より、光学系全体として諸収差が補正された光学系となっていることがわかる。
【実施例4】
【0055】
図11(a)、(b)は、実施例4(数値実施例例4)の光学系であって、無限遠物体合焦時において、界面Aの曲率が最も大きい状態と、最も小さい状態のレンズ断面図である。
物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1、開口絞りSP、正の屈折力を有する第2レンズ群L2からなり、形状可変素子AO1と形状可変素子AO2を、開口絞りSPの像側に配置した、焦点距離135mmF2.83の光学系である。
該光学系はフォーカシングの際に、レンズ全体(L1,L2)を物体側にくりだすと同時に、第2レンズ群L2を動かすことで、無限遠物体から結像倍率−0.25倍までの近接撮影を可能にしている。
【0056】
また、開口絞りSPに近い形状可変素子AO1は、その物体側に電解質からなり、透過率が低い材料(吸収係数α=0.49)からなるレンズ部L1fと、像側に非電解質からなるレンズ部L1rを有し、界面形状を電気的に変更できる構成としている。
また、形状可変素子AO2は、その物体側に電解質からなるレンズ部L2fと、像側に非電解質からなるレンズ部L2rを有し、界面形状を電気的に変更できる構成としている。レンズ部L2fとL2rを成す液体は、可視域において実質的に透明である。
形状可変素子AO1は透過率が低い材料からなるレンズ部L1fに負のパワーを持たせており、実施例1と同様に界面形状の曲率を変化させることで、焦点外れ像のアポダイゼーション効果を可変とできる構成となっている。
【0057】
さらに、形状可変素子AO1の曲率を変えると同時に形状可変素子AO2の曲率も同時に変えることで、形状可変素子AO1で生じる収差変動を補正し、光学系全体として諸収差が補正された光学系となっている。
さらに、実施例4においては、至近物体撮影時にも、形状可変素子AO2の曲率も変えられる構成としている。その結果、物体距離変化による収差変動をより抑えることができ、無限遠物体から至近物体までの収差が良好に補正された光学系を得ている。
【0058】
図12(a)、(b)はそれぞれ、実施例4の光学系の無限遠物体合焦時において、界面Aの曲率が最も大きい状態と、最も小さい状態の収差図であり、図12(c)は、結像倍率−0.25において、界面Aの曲率が最も大きい状態の収差図である。図12(a)、(b)、(c)より、光学系全体として諸収差が補正された光学系となっていることがわかる。
【実施例5】
【0059】
図13(a)、(b)は示す実施例5(数値実施例例5)の光学系であって、無限遠物体合焦時において、界面Aの曲率が最も大きい状態と、最も小さい状態のレンズ断面図である。
物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1、開口絞りSP、正の屈折力を有する第2レンズ群L2からなり、形状可変素子AO1と形状可変素子AO2、及び形状可変素子AO3を、開口絞りSPの像側に配置した、焦点距離135mmF2.83の光学系である。
該光学系はフォーカシングの際に、レンズ全体(L1,L2)を物体側にくりだすと同時に、第2レンズ群L2を動かすことで、無限遠物体から結像倍率−0.25倍までの近接撮影を可能にしている。
【0060】
また、開口絞りSPに近い形状可変素子AO1は、その物体側に非電解質からなり、透過率が低い材料(吸収係数α=0.37)からなるレンズ部L1fと、像側に電解質からなるレンズ部L1rを有し、界面形状を電気的に変更できる構成としている。
また、形状可変素子AO2は、その物体側に非電解質からなるレンズ部L2fと、像側に電解質からなるレンズ部L2rを有し、界面形状を電気的に変更できる構成としている。レンズ部L2fとL2rを成す液体は、可視域において実質的に透明である。
また、形状可変素子AO3は、その物体側に電解質からなるレンズ部L3fと、像側に非電解質からなるレンズ部L3rを有し、界面形状を電気的に変更できる構成としている。レンズ部L3fとL3rを成す液体は、可視域において実質的に透明である。
【0061】
形状可変素子AO1は透過率が低い材料からなるレンズ部L1fに負のパワーを持たせており、実施例1と同様に界面形状の曲率を変化させることで、焦点外れ像のアポダイゼーション効果を可変とできる構成となっている。
さらに、形状可変素子AO1の曲率を変えると同時に、形状可変素子AO2の曲率と形状可変素子AO3の曲率も同時に変えることで、形状可変素子AO1で生じる収差変動を補正し、光学系全体として諸収差が補正された光学系となっている。
【0062】
図14(a)、(b)はそれぞれ、実施例5の光学系の無限遠物体合焦時において、界面Aの曲率が最も大きい状態と、最も小さい状態の収差図であり、図14(c)は、結像倍率−0.25において、界面Aの曲率が最も大きい状態の収差図である。図14(a)、(b)、(c)より、光学系全体として諸収差が補正された光学系となっていることがわかる。
【実施例6】
【0063】
図15(a)、(b)は実施例6(数値実施例6)の光学系であって、無限遠物体合焦時において、界面Aの曲率が最も大きい状態と、最も小さい状態のレンズ断面図である。
物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1(開口絞りSPを含む)、正の屈折力を有する第2レンズ群L2からなり、形状可変素子AO1と形状可変素子AO2を、開口絞りSPの像側に配置した、焦点距離180mmF3.5の光学系である。
該光学系はフォーカシングの際に、レンズ全体(L1,L2)を物体側にくりだすと同時に、第2レンズ群L2を動かすことで、無限遠物体から物体距離結像倍率−0.11倍までの近接撮影を可能にしている。
【0064】
また、開口絞りSPに近い形状可変素子AO1は、その物体側に非電解質からなり、透過率が低い材料(吸収係数α=0.50)からなるレンズ部L1fと、像側に電解質からなるレンズ部L1rを有し、界面形状を電気的に変更できる構成としている。
また、形状可変素子AO2は、その物体側に非電解質からなるレンズ部L2fと、像側に電解質からなるレンズ部L2rを有し、界面形状を電気的に変更できる構成としている。レンズ部L2fとL2rを成す液体は、可視域において実質的に透明である。
形状可変素子AO1は透過率が低い材料からなるレンズ部L1fに負のパワーを持たせており、実施例1と同様に界面形状の曲率を変化させることで、焦点外れ像のアポダイゼーション効果を可変とできる構成となっている。
さらに、形状可変素子AO1の曲率を変えると同時に形状可変素子AO2の曲率も同時に変えることで、形状可変素子AO1で生じる収差変動を補正し、光学系全体として諸収差が補正された光学系となっている。
【0065】
図16(a)、(b)はそれぞれ、実施例6の光学系の無限遠物体合焦時において、界面Aの曲率が最も大きい状態と、最も小さい状態の収差図であり、図16(c)は、至近物体合焦時において、界面Aの曲率が最も大きい状態の収差図である。図16(a)、(b)、(c)より、光学系全体として諸収差が補正された光学系となっていることがわかる。
【0066】
以下、各実施例(数値例)の具体的な数値データを示す。各実施例において、iは物体側から数えた面の番号を示す。Riはi番目の光学面(第i面)の曲率半径であり、Diは第i面と第(i+1)面との間の軸上間隔である。距離の単位はミリメートルとして表記している。
【0067】
Ndi,νdiはそれぞれ、d線に対するi番目の光学部材の材料の屈折率、アッベ数を表す。
なお、各数値における「E±XX」は「×10±XX」を意味する。
Fnoは有効Fナンバー、ωは半画角で単位は度である。
又前述の条件式(1)〜(9)と数値実施例との関係を表7に示す。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
【表6】

【0074】
【表7】

【0075】
【表8】

【0076】
【表9】

【0077】
【表10】

【0078】
【表11】

【0079】
【表12】

【0080】
【表13】

【0081】
上記した実施例1乃至4、6においては、d線における吸収係数の差Δα(mm−1)が、
0.2<|Δα|<1.5 (1)
を満たす2つの材料からなる形状可変な界面Aと、(1)式を満たさない形状可変な界面Bとを1面ずつ有する光学系を例示して説明した。上記した実施例5においては、(1)式を満たす形状可変な界面Aを1面有し、(1)式を満たさない形状可変な界面Bを2面有する光学系を例示して説明した。しかし、本発明はこの構成に限定されることはない。(1)式を満たす形状可変な界面A、(1)式を満たさない形状可変な界面Bのいずれか又は双方が複数であっても本発明の効果を得ることができる。その場合には、屈折力変化量ΔφAについては個々の界面Aに対する屈折力変化量ΔφAの和で、屈折力変化量ΔφBについては個々の界面Bに対する屈折力変化量ΔφBの和に対して、式(2)を適用すればよい。また、色収差変動量ΔφcAについては個々の界面Aに対する色収差変動量ΔφcAの和で、色収差変動量ΔφcBについては個々の界面Bに対する色収差変動量ΔφcBの和に対して、式(6)を適用すればよい。
【0082】
また、実施例1乃至6においては、1つの形状可変素子は、1つの形状可変な界面を有する例を例示したが本発明はこれに限定されることはない。1つの形状可変素子に、2以上の形状可変な界面を有するよう場合でも、それぞれの形状可変な界面について、(1)式を満たす界面Aであるのか、見たさない界面Bであるかを判断して本発明を適用することによって、本発明の効果を享受できる。
【0083】
また、上記の実施例1乃至6の光学系を含むレンズ装置と、撮像素子を含みレンズ装置によって撮像素子上に結像する被写体像を撮像するカメラ装置とを含む撮像装置を構成することによって、本発明のアポダイゼーション効果を実現しつつ諸収差を良好に補正した撮像装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0084】
AO1 形状可変素子
AO2 形状可変素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学材料からなり界面の面形状を変化させる形状可変素子を有する、光学系であって、
d線における吸収係数の差Δα(mm−1)が、
0.2<|Δα|<1.5
を満たす2つの材料から形成される形状可変な界面A及び上記条件式を満たさない2つの材料から形成される形状可変な界面Bを含む、2以上の形状可変な界面を有し、
該界面Aの内、i番目の界面Aにおける屈折力変化量をΔφAi、該界面Bの内、i番目の界面Bにおける屈折力変化量をΔφBiとしたとき、全ての該界面Aにおける屈折力変化量の総和Δφ、及び、全ての該界面Bにおける屈折力変化量の総和Δφは、
Δφ×Δφ<0、
を満たすことを特徴とする光学系。
ただし、
【数1】

ここで、NAif、NAirはそれぞれ該界面Aを形成する物体側の材料と像側の材料のd線における屈折率であり、rAia、rAibはそれぞれ該界面Aの曲率が最も小さい時と大きい時の曲率半径であり、NBif、NBirはそれぞれ該界面Bを形成する物体側の材料と像側の材料のd線における屈折率であり、rBia、rBibはそれぞれ該界面Bの曲率が最も小さい時と大きい時の曲率半径である。
【請求項2】
前記形状可変な界面iを形成している、物体側の材料と像側の材料の、d線における屈折率がそれぞれNf、Nrであり、かつ該界面iが形状変化する時のペッツバール和の変化量をΔPとしたとき、以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光学系。
|ΣΔP×f|<0.1
ただし、
【数2】

ここで、fは無限遠物体合焦時、かつ界面iの曲率が最も大きい時における、光学系の焦点距離、raは界面iの曲率が最も小さい時の曲率半径、rbは界面iの曲率が最も大きい時の曲率半径である。
【請求項3】
前記形状可変な界面Aをなす材料のd線における屈折率をそれぞれNf、Nrとしたとき、
0.0005<|Nf−Nr|<0.2
を満たすことを特徴とする、請求項1乃至に記載の光学系。
【請求項4】
複数の光学材料からなり、界面の面形状を変化させる形状可変素子を有する光学系において、
d線における吸収係数の差Δα(mm−1)が、
0.2<|Δα|<1.5
を満たす2つの材料から形成される形状可変な界面A及び上記条件式を満たさない2つの材料から形成される形状可変な界面Bを含む、2以上の形状可変な面を有し、
該界面Aの内、i番目の該界面Aの形状が変化したときの色収差変動量をΔφcAi、該界面Bの内、i番目の界面Biにおいて界面形状が変化したときの色収差変動量をΔφcBiとしたとき、全ての該界面Aの色収差変動量の総和Δφc、及び、全ての界面Bの色収差変動量の総和Δφcは、
Δφc×Δφc<0
を満たすことを特徴とする光学系。
ただし、
【数3】

ここで、rAia、rAibはそれぞれ該界面Aの曲率が最も小さい時及び大きい時の曲率半径であり、νAif、νAirはそれぞれ該界面Aの物体側及び像側の材料のアッベ数であり、rBia、rBibはそれぞれ該界面Bの曲率が最も小さい時及び大きい時の曲率半径であり、νBif、νBirはそれぞれ該界面Bの物体側及び像側の材料のアッベ数である。
【請求項5】
無限物体合焦時における前記形状可変な界面Aと絞りの間の距離をLA、光学全長をLとした時、
0.01<LA/L<0.15
を満たすことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項6】
前記形状可変な界面iの形状を変化させた時の色収差変動量Δφcの、全ての該界面iについての総和ΔφC、無限遠物体合焦時の焦点距離fは、以下の条件式を満たすことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学系。
−0.05<ΔφC×f<0.05
ただし、
【数4】

ここで、前記形状可変な界面iを形成する、物体側の材料と像側の材料の、d線におけるアッベ数をそれぞれνf、νr、該界面iの曲率が最も小さい時の曲率半径をra、該界面iの曲率が最も大きい時の曲率半径をrbである。
【請求項7】
前記形状可変な界面Aを形成する、物体側及び像側の材料の、d線におけるアッベ数をそれぞれνf、νrとしたとき、
0.1<|νf−νr|<30
を満たすことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項8】
前記形状可変な界面Aと、界面Aとは異なる1つ以上の形状可変な界面とが、絞りに対して同じ側に配置されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項9】
前記光学系は、同距離物体撮影時において、2つ以上の形状可変な界面を同時に変化させることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項10】
前記光学系において、同距離物体撮影時に形状可変な界面を変化させた時の焦点距離の変化量をΔf、該光学系の焦点距離をf、としたとき、
−0.05<Δf/f<0.05
を満たすことを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項11】
前記形状可変な界面Aの界面形状を変化させる際に、1つ以上のレンズ群の間隔を変化させることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項12】
前記形状可変な界面は、互いに混合しない複数の液体材料からなることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の光学系を含むレンズ装置と、撮像素子を含み該レンズ装置によって該撮像素子上に結像する被写体像を撮像するカメラ装置と、を含む撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−128151(P2012−128151A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279039(P2010−279039)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】