説明

光学素子、光学素子の製造方法、及び電子機器

【課題】防塵性を向上させることができ、光学特性に優れた光学素子、光学素子の製造方法、及び電子機器を提供する。
【解決手段】
基板1と、当該基板1上に配置され、低屈折率層2Aと高屈折率層2Bとを交互に順にそれぞれ複数積層された光学機能膜と、を備える光学素子であって、前記光学機能膜の基板1から最も離れた最表層2Sは、第1低屈折率層2Aであり、第1低屈折率層2Aに隣接する第1高屈折率層2Bは、複数層から構成され、当該複数層は最表層2S側から順に導電層22と非導電層23を配置して構成され、前記光学機能膜がUV−IRカットフィルター膜である場合、前記導電層22の物理膜厚は60nm未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子、光学素子の製造方法、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター等の映像装置、デジタルカメラ等の撮像装置、光ピックアップ等の記録・再生装置等の電子機器には、UV−IRカットフィルター膜や反射防止膜を有する光学素子が組み込まれている。
このような光学素子は、埃が付着すると、光学特性に悪影響を及ぼすため、防塵性が求められる。
防塵性を有する光学素子は、反射防止膜又はUV−IRカットフィルター膜が低屈折率層と高屈折率層とを交互に順次積層された構成を有し、最表層の低屈折率層に隣接する高屈折率層が、ITO(Indium Tin Oxide)にて形成されている。このように、最表層に隣接してITOの導電層を形成することにより、最表層の帯電性を低下させて、防塵性を向上させている(特許文献1から特許文献3まで)。
また、特許文献3の従来例では、反射防止膜として、基板側から順に、物理膜厚が71nmの酸化セリウムの層、物理膜厚が118nmの酸化シリコンの層、物理膜厚が8.1nmのITOの導電層、物理膜厚が10nmの最表層としての酸化シリコンの層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4207083号公報
【特許文献2】特許第4462197号公報
【特許文献3】国際公開第2008/018340号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1から特許文献3までのような光学素子では、ITOのような光を吸収する導電性材料を用いた場合、光の透過率が低くなり、高精細化が求められる撮像装置などに適用するには光学特性が不十分であるという問題がある。
ここで、ITOによる光の吸収量を低減するために、ITOの導電層を薄くすることも考えられる。しかし、導電層の物理膜厚が小さい場合、高屈折率層として必要な光学膜厚を確保できなくなる。その結果、光の反射を良好に防止できなくなり、光の透過率が低下するという問題が生じる。
さらに、上述の特許文献3のような光学素子では、最表層及び導電層が薄いため、剥がれやすく光学特性の劣化を引き起こす虞があるという問題もある。また、特許文献3のような光学素子では、最表層及び導電層の2層のみが反射防止膜として機能しているので、光の反射を防止できる帯域が非常に狭いという問題がある。このような観点からも、特許文献3のような光学素子では、光学特性が不十分であり、高精細化が求められる撮像装置などに適用することが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、防塵性を向上させることができ、光学特性に優れた光学素子、光学素子の製造方法、及び電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[適用例1]
本適用例に係わる光学素子は、基板と、当該基板上に配置され、低屈折率層と高屈折率層とを交互に順にそれぞれ複数積層された光学機能膜と、を備える光学素子であって、前記光学機能膜の前記基板から最も離れた最表層は、第1低屈折率層であり、当該第1低屈折率層に隣接する第1高屈折率層は、複数層から構成され、当該複数層は前記最表層側から順に導電層と非導電層を配置して構成され、前記光学機能膜がUV−IRカットフィルター膜である場合、前記導電層の物理膜厚は60nm未満であることを特徴とする。
【0007】
この構成の本適用例では、最表層の第1低屈折率層側に導電層を形成するため、第1低屈折率層の電荷を導電層に移動させて、帯電性を低下させることができる。従って、光学素子の防塵性を容易に向上させることができる。
また、第1高屈折率層は、導電層と、他の高屈折率材料からなる非導電層とにより構成されているため、導電層の物理膜厚を小さくすることにより光の透過率の低下を抑制するとともに、非導電層により第1高屈折率層として必要な光学膜厚を確保できる。これにより、光の透過率を向上できる。
また、光学機能膜が反射防止膜である場合、反射防止膜は複数の低屈折率層と複数の高屈折率層とにより構成されているため、広い帯域で良好に反射を防止できる。そして、第1高屈折率層を構成する非導電層の物理膜厚を大きくすることにより、第1高屈折率層を剥がれにくくすることができる。
従って、本適用例では、防塵性を向上させることができ、光学特性に優れた光学素子を提供できる。
【0008】
[適用例2]
本適用例に係わる光学素子では、前記導電層は、前記非導電層に比べて物理膜厚が小さいことを特徴とする。
この構成の本適用例では、非導電層に比べて導電層の物理膜厚を小さくすることにより、光の吸収を抑制して、光の透過率を向上できる。
【0009】
[適用例3]
本適用例に係わる光学素子では、前記第1低屈折率層は、前記複数の低屈折率層のうちで最も密度が小さいことを特徴とする。
この構成の本適用例では、最表層の密度を低くすることにより、層内に空隙が形成されるため、導電層への電荷移動の効率が増し、防塵性能を高めることができる。
【0010】
[適用例4]
本適用例に係わる光学素子では、前記光学機能膜の表面抵抗値が、1×10Ω/cm以下であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、表面抵抗値が1×10Ω/cm以下であるため、防塵性を向上できる。
【0011】
[適用例5]
本適用例に係わる光学素子では、前記光学機能膜が可視光領域である400nmから800nmまでの波長帯域で機能することを特徴とする。
この構成の本適用例では、可視光領域において、光学機能膜を、例えば、反射防止膜又はUV−IRカットフィルター膜として機能させることができる。
【0012】
[適用例6]
本適用例に係わる光学素子では、前記光学機能膜が反射防止膜であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、上述した導電層及び非導電層を有するので、光学機能膜を反射防止膜として良好に機能させることができる。
【0013】
[適用例7]
本適用例に係わる光学素子では、前記導電層の物理膜厚は、5nmよりも大きく40nmよりも小さいことを特徴とする。
この構成の本適用例では、反射防止膜の導電層の物理膜厚を5nmよりも大きく40nmよりも小さくすることにより、さらに光の吸収を良好に抑制して、光の透過率を向上できる。
【0014】
[適用例8]
本適用例に係わる光学素子の製造方法は、基板と、当該基板上に配置され、低屈折率層と高屈折率層とを交互に順にそれぞれ複数積層して構成される光学機能膜と、を備える光学素子を製造する光学素子の製造方法であって、前記光学機能膜の前記基板から最も離れた最表層を第1低屈折率層とし、当該第1低屈折率層に隣接する層を第1高屈折率層とし、前記低屈折率層の表面に、前記第1高屈折率層を積層する第1工程と、前記第1高屈折率層に、前記第1低屈折率層を積層する第2工程と、を実施し、前記第1工程で積層される前記第1高屈折率層は導電層と非導電層とを形成してなり、前記導電層は前記最表層側に形成され、前記光学機能膜がUV−IRカットフィルター膜である場合、前記導電層の物理膜厚が60nm未満となるように形成されることを特徴とする。
この構成の本適用例では、上述したように、防塵性を向上させることができ、光学特性に優れた光学素子の製造方法を提供できる。
【0015】
[適用例9]
本適用例に係わる電子機器は、光源と、ダイクロイックプリズムと、前記光源と前記ダイクロイックプリズムとの間の光路に配置された光学素子と、を備え、前記光学素子が、適用例6又は7に記載の光学素子であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、上述の光学素子を備えるため、防塵性を向上させることができ、光学特性に優れた電子機器を提供できる。
【0016】
[適用例10]
本適用例に係わる電子機器は、撮像素子と、当該撮像素子に対向配置された光学素子と、を備え、前記光学素子が、上述の光学素子であり、前記光学機能膜が、UV−IRカットフィルター膜であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、上述の光学素子を備えるため、防塵性を向上させることができ、光学特性に優れた電子機器を提供できる。
【0017】
[適用例11]
本適用例に係わる電子機器は、光源と、対物レンズと、前記光源と前記対物レンズとの間の光路に配置された光学素子と、を備え、前記光学素子が、適用例6又は7に記載の光学素子であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、上述の光学素子を備えるため、防塵性を向上させることができ、光学特性に優れた電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態に係る電子機器を示す概略図。
【図2】第一実施形態の光学素子の断面図。
【図3】第一実施形態の光学素子と、特許文献3の光学素子との透過率を示す図。
【図4】基板に成膜するための装置の概略図。
【図5】第二実施形態に係る電子機器を示す概略図。
【図6】第二実施形態の光学素子の断面図。
【図7】第三実施形態に係る電子機器を示す概略図。
【図8】第一実施形態の光学素子に対応する実施例と参考例と比較例とにおける反射率を示す図。
【図9】第一実施形態の光学素子に対応する実施例と参考例と比較例とにおける透過率を示す図。
【図10】第二実施形態の光学素子に対応する実施例と参考例と比較例とにおける透過率を示す図。
【図11】図10の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ここで、各実施形態において、同一の構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
[第一実施形態]
まず、第一実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。
第一実施形態は電子機器をプロジェクターなどの投射装置とし、その投射装置に組み込まれる光学素子を防塵ガラスとした例である。
図1はプロジェクターの概略構成図である。
図1において、プロジェクター100は、インテグレーター照明光学系110と、色分離光学系120と、リレー光学系130と、電気光学装置140と、投写レンズ150とを備えている。
インテグレーター照明光学系110は、光源111と、第1レンズアレイ112と、第2レンズアレイ113と、偏光変換素子114と、重畳レンズ115とを備えている。このインテグレーター照明光学系110は、電気光学装置140を構成する3枚の透過型液晶パネル141(赤、緑、青の色光毎にそれぞれ液晶パネル141R,141G,141Bとする)の画像形成領域をほぼ均一に照明する。
【0020】
色分離光学系120は、2枚のダイクロイックミラー121,122と、反射ミラー123とを備えている。この色分離光学系120は、ダイクロイックミラー121、122によりインテグレーター照明光学系110から射出された複数の部分光束を赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色光に分離する。
ダイクロイックミラー121及び反射ミラー123は、青色光を透過型液晶パネル141Bに導く。
ダイクロイックミラー122は、ダイクロイックミラー121を透過した赤色光と緑色光のうちで緑色光を、フィールドレンズ151を通して、透過型液晶パネル141Gに導く。
リレー光学系130は、ダイクロイックミラー122を透過した赤色光を、入射側レンズ131と、リレーレンズ133と、反射ミラー132、134とを通して、赤色光を透過型液晶パネル141Rに導く。
【0021】
電気光学装置140は、入射された光束を画像情報に応じて変調してカラー画像を形成する。この電気光学装置140は、透過型液晶パネル141R,141G,141Bと、各透過型液晶パネル141R,141G,141Bの光入射面に設けられる防塵ガラス10と、クロスダイクロイックプリズム142とを備えている。
防塵ガラス10は、光源111とクロスダイクロイックプリズム142との間の光路に配置され、クロスダイクロイックプリズム142は、色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する。
投写レンズ150は、クロスダイクロイックプリズム142にて形成されたカラー画像を拡大して投写する。
【0022】
図2は、防塵ガラス10の概略構成図である。
図2において、防塵ガラス10は、基板1と、この基板1に形成された反射防止膜2とを備え、図示しないケースに収納されている。基板1は、例えば、石英、水晶、無アルカリガラス等から形成される。
この反射防止膜2は、可視光領域である400nmから800nmまでの波長帯域で機能し、低屈折率層2Aと、高屈折率層2Bとが交互に順次積層されている。基板1から最も離れた最表層2Sは、第1低屈折率層2Aである。この第1低屈折率層2Aに隣接する層は、複数層から構成された第1高屈折率層2Bである。
【0023】
第1高屈折率層2Bは、最表層2S側から順に第2層としての導電層22と、第3層としての非導電層23とを有する。
第1高屈折率層2Bに隣接する第4層24は、第2低屈折率層2Aであり、第2低屈折率層2Aに隣接する第5層25は、第2高屈折率層2Bであり、第2高屈折率層2Bに隣接する第6層26は、基板1に隣接した第3低屈折率層2Aである。第1高屈折率層2Bは、2層からなるため、反射防止膜2は全体として6層からなる。なお、第1高屈折率層2Bは、3層以上からなってもよい。
この第1低屈折率層2Aは、第1低屈折率層2Aと、第2低屈折率層2Aと、第3低屈折率層2Aとのうちで最も密度が低いことが好ましい。
【0024】
導電層22は、非導電層23に比べて物理膜厚が小さいことが好ましい。すなわち、導電層22の物理膜厚をtiとし、非導電層23の物理膜厚をthとしたとき、ti<thであることが好ましい。また、tiの厚みは、5nm<ti<40nmであることが好ましい。
低屈折率層2Aを形成する低屈折率材料としては、二酸化ケイ素(SiO)、フッ化マグネシウム(MgF)などが挙げられる。高屈折率層2Bを形成する高屈折率材料としては、酸化チタン(TiO)、ITO、IWO、SnO、酸化亜鉛(ZnO)、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、五酸化二タンタル、五酸化二ニオブ、酸化ハフニウム(HfO)、ランタンチタネート(混合物)などが挙げられる。これらの材料のうち導電層22を形成する導電性材料としては、ITO、IWO、SnO、酸化亜鉛(ZnO)などが挙げられる。非導電層23を形成する非導電性材料としては、TiO2、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、五酸化二タンタル、五酸化二ニオブ、酸化ハフニウム(HfO)、ランタンチタネート(混合物)などが挙げられる。
なお、反射防止膜2は、第1低屈折率層2Aの基板1と反対側の表面に防塵層3を有してもよい。
反射防止膜2が防塵層3を有する場合、その反射防止膜2の表面抵抗値が1×10Ω/cm以下であることが好ましい。
防塵層3を形成する防塵性材料としては、フッ素含有有機ケイ素化合物、フッ化マグネシウムなどが挙げられる。
【0025】
ここで、第一実施形態の防塵ガラス10と、上記特許文献3に記載された光学素子とについて、可視光領域における光の透過率を対比した結果が図3に示されている。
特許文献3の光学素子では、上述したように、反射防止膜として機能する層が1つの低屈折率層と1つの高屈折率層との2層しかないため、可視光領域のうちの狭い波長領域でしか反射を防止できない。
一方、第一実施形態の防塵ガラス10では、反射防止膜として機能する層が3つの低屈折率層2Aと2つの高屈折率層2Bとで構成されているため、可視光領域において全体的に反射を防止できる。
【0026】
次に、防塵ガラス10を製造する方法について説明する。
図4は、基板1に反射防止膜2を形成するための装置の概略図である。
図4において、成膜装置は、アースされた室50と、この室50の天井部分に回動自在に支持されたドーム51を備えている。
ドーム51は、その中央部に設けられた回転軸51Aを介してモーター52により回動される。ドーム51には成膜対象となる基板1が複数取り付けられており、これらの基板1に対向するように室50の下部に第一蒸着源53と第二蒸着源541と第三蒸着源542とが設けられている。第一蒸着源53にはSiOなどの低屈折率材料が収納され、第二蒸着源541には、TiOなどの高屈折率材料が収納され、第三蒸着源542には、ITOなどの導電性材料が収納されている。
第一蒸着源53と第二蒸着源541との間にはイオン源55と電子銃56とが配置されている。イオン源55はイオンを放出してアシストするものである。電子銃56は電子ビームを照射するものである。ドーム51の中央部には監視装置57が設けられている。この監視装置57は、基板1に成膜される膜厚を管理する光学モニターと、レート管理する水晶モニターとを備えている。
【0027】
次に、この成膜装置を用いて基板1に6層からなる反射防止膜2を形成する方法を説明する。まず基板1がドーム51にセットされた後、ドーム51が回転しつつ、電子銃56から電子ビームが照射され、第一蒸着源53に収納されるSiOと、第二蒸着源541に収納されるTiOとが基板1に蒸着される。
この際、イオン源55からイオン化した酸素が加速照射されることにより、基板1の上にSiOの第3低屈折率層2Aと、TiOの第2高屈折率層2Bと、SiOの第2低屈折率層2Aと、TiOの非導電層23とが交互に積層される。
そして、非導電層23が形成された後、第三蒸着源542に収納されるITOが非導電層23に積層されて、導電層22が形成される。これにより、第1高屈折率層2Bが形成される(第1工程)。そして、導電層22にSiOの最表層2Sが形成される(第2工程)。
ここで、最表層2S及び導電層22は、ノンアシストパワー(EB蒸着)又は300V以上500V以下の加速電圧(450mA以上600mA以下の加速電流)の低アシストパワー(IAD)で形成されることが好ましい。
一方、最表層2S及び導電層22以外の第3低屈折率層2Aと、第2高屈折率層2Bと、第2低屈折率層2Aと、非導電層23とは、700V以上1000V以下の加速電圧(800mA以上1200mA以下の加速電流)の高アシストパワー(IAD)で形成されることが好ましい。
【0028】
基板1に反射防止膜2が成形された後、この反射防止膜2の上に防塵層3が必要に応じて形成される。
この防塵層3が形成される際は、反射防止膜2が形成された基板1と、防塵性材料が収納された蒸着源が真空装置の内部にセットされ、減圧排気が行われる。そして、基板1の温度を60℃とした状態で蒸発源が約600℃に加熱され、防塵性材料が蒸発して反射防止膜2に防塵層3が形成される。
【0029】
[第一実施形態の効果]
本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)最表層2S側に導電層22を形成するため、最表層2Sの電荷を低減でき、防塵ガラス10の防塵性を容易に向上できる。また、最表層2Sは、導電層22と、非導電層23とにより構成されているため、導電層22の物理膜厚を小さくして光の透過率の低下を抑制するとともに、非導電層23により第1高屈折率層2Bとして必要な光学膜厚を確保して光の反射を防止できる。
【0030】
(2)反射防止膜2が複数の低屈折率層2Aと複数の高屈折率層2Bとにより構成されているため、可視光領域である400nmから800nmまでの波長帯域において広く光の反射を防止できる。
(3)非導電層23の物理膜厚を大きくすることにより、第1高屈折率層2Bを剥がれにくくすることができる。
(4)導電層22の物理膜厚を非導電層23よりも小さくすることにより、さらに光の吸収を抑制して、光の透過率を向上できる。
(5)導電層22の物理膜厚を5nmよりも大きく40nmよりも小さくすることにより、さらに光の吸収を良好に抑制して、光の透過率を向上できる。
(6)最表層2Sを3つの低屈折率層2Aの中で最も低密度とすることにより、防塵性能を向上できる。
(7)反射防止膜2の表面抵抗値を1×10Ω/cm以下とすることにより、さらに防塵性を向上できる。
【0031】
(8)本実施形態の製造方法は、第1高屈折率層2Bとして、最表層2S側から順に導電層22と非導電層23とを形成するため、防塵性を向上させることができ、光学特性に優れた防塵ガラス10の製造方法を提供できる。
(9)プロジェクター100は、防塵ガラス10を備えるため、防塵性を向上させることができ、光学特性に優れる。
【0032】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態を図5及び図6に基づいて説明する。
第二実施形態は電子機器をデジタルスチールカメラの撮像装置とし、その撮像装置に組み込まれる光学素子を光学多層膜フィルターとした例である。
図5は、撮像装置の概略構成図である。
図5において、撮像装置200は、撮像モジュール210と、光入射側に配置されるレンズ220と、撮像モジュール210から出力される撮像信号の記録・再生等を行う本体部230とを含んで構成されている。この本体部230には、撮像信号の補正等を行う信号処理部と、撮像信号を磁気テープ等の記録媒体に記録する記録部と、この撮像信号を再生する再生部と、再生された映像を表示する表示部などの構成要素が含まれる。
撮像モジュール210は、光学多層膜フィルター20と、光学ローパスフィルター211と、光学像を電気的に変換する撮像素子のCCD(電荷結合素子)212と、この撮像素子212を駆動する駆動部213とを含んで構成されている。
【0033】
光学多層膜フィルター20は、CCD212の前面に、ケースとしての固定治具214によってCCD212と一体的に構成されている。この光学多層膜フィルター20は、IRとUVとをカットする機能の他、CCD212の防塵ガラス機能を併せて有している。
固定治具214は金属によって構成されており、光学多層膜フィルター20と電気的に接続されている。そして、固定治具214は、アースケーブル215によってアース(地落)されている。
【0034】
図6は、光学多層膜フィルター20の概略構成である。
図6において、光学多層膜フィルター20は、基板1と、基板1に形成されたUV−IRカットフィルター膜4とを備えている。
UV−IRカットフィルター膜4は、可視光領域である400nmから800nmまでの波長帯域で機能し、低屈折率層2Aと、高屈折率層2Bとがそれぞれ交互に複数積層されている。UV−IRカットフィルター膜4は、最表層2Sである第1低屈折率層2Aと、第2層の導電層22と第3層の非導電層23とを構成する第1高屈折率層2Bと、第4層24である第2低屈折率層2Aと、第5層25である第2高屈折率層2Bとなどを順に備える。そして、第39層239は、第19高屈折率層2Bであり、第40層240は、基板1に隣接する第20低屈折率層2Aである。
ここで、第2層の導電層22は、その物理膜厚が60nm未満である。物理膜厚が60nm以上の場合、光の透過率が低くなる。
なお、光学多層膜フィルター20のUV−IRカットフィルター膜4は、基板1と反対側の表面に防塵層3を有していても良い。
【0035】
次に、光学多層膜フィルター20を製造する方法について説明する。
この光学多層膜フィルター20は第一実施形態の防塵ガラスと同様に図4で示される装置を用いて製造される。
まず、基板1がドーム51にセットされ、その後、ドーム51が回転しながら、電子銃56で電子ビームが照射されて第一蒸着源53のSiOと、第二蒸着源541のTiOとが交互に積層される。
そして、第4層の第2低屈折率層2Aが積層された後、第2低屈折率層2Aに第二蒸着源541のTiOが蒸着され、第3層の非導電層23が形成される。
続けて、第3層の非導電層23に、第三蒸着源542のITOが蒸着され、導電層22が形成される(第1工程)。ここで、導電層22は、その物理膜厚が60nm未満となるように形成される。これにより、第1高屈折率層2Bが形成される。そして、導電層22にSiOの最表層2Sが形成される(第2工程)。
なお、第一実施形態と同様に、最表層2S及び導電層22は、ノンアシストパワー又は低アシストパワーで形成されることが好ましく、最表層2S及び導電層22以外の層23、2A,2Bは高アシストパワーで形成されることが好ましい。
【0036】
第二実施形態においても、基板1に形成されたUV−IRカットフィルター膜4に必要に応じて防塵層3が設けられてもよいが、その場合は、第一実施形態と同様の方法で実施される。
第二実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
【0037】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態を図7に基づいて説明する。
第三実施形態は電子機器を光ピックアップ装置とし、その光ピックアップ装置に組み込まれる光学素子をビームスプリッターとした例である。
図7は、記録再生装置の概略構成図である。
図7において、光ピックアップ300は、焦点位置の異なる3種の光記録媒体である光ディスク(CD301、DVD302、BD303)に対して互いに波長の異なる3種類のレーザービームを照射し、それぞれ所定の信号を検出するように構成されている。
具体的には、光ピックアップ300は、CD301に関する光学系として、レーザー光を発生するレーザー光源としてのレーザーダイオード310、コリメートレンズ311、偏光ビームスプリッター30、レンズ313、ダイクロイックプリズム314、1/4波長板315、開口フィルター316、対物レンズ317、及びCD301のデータピットから反射された反射レーザー光を受光し、電気信号に変換することにより前記データピットに書き込まれた信号を検出する信号検出系318を含んで構成される。
【0038】
光ピックアップ300は、DVD302に関する光学系として、レーザービームを発生するレーザー光源としてのLD321、レンズ322、偏光ビームスプリッター30、及びレーザービームでDVD302のデータピットから反射された反射レーザー光を受光し、電気信号に変換することにより前記データピットに書き込まれた信号を検出する信号検出系323を含んで構成される。
光ピックアップ300は、BD303に関する光学系として、レーザービームを発生するレーザー光源としてのLD331、レンズ332、偏光ビームスプリッター30、レンズ333、ダイクロイックプリズム334及びレーザービームでBD303のデータピットから反射された反射レーザー光を受光し、電気信号に変換することにより前記データピットに書き込まれた信号を検出する信号検出系335を含んで構成される。
偏光ビームスプリッター30の概略構成は基板1の形状を除いては図2で示される防塵ガラス10と同じである。つまり、偏光ビームスプリッター30は、プリズムの入出射面に反射防止膜2が設けられ、この反射防止膜2の表面に防塵層3が必要に応じて設けられた構造である。さらに、前記プリズムに反射防止膜2が成膜され、この反射防止膜2に防塵層3が成膜される方法は第一実施形態と同じである。
前記光ディスクが搭載された部位の近くに配置された対物レンズ317、1/4波長板315、及び開口フィルター316の表面には、光ディスク(CD301、DVD302、BD303)を交換する際に、外界の塵などのほこりが前記部位から浸入し、当該塵が付着し易いので、前記表面に形成されている反射防止膜の表面に前記防塵層を配置することも有効である。
第三実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
【0039】
なお、本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
例えば、本発明では、光学素子は前述の構成のものに限定されない。例えば、第一実施形態では、本発明の対象となる光学素子を、例えば、偏光変換素子としてもよい。さらに、第二実施形態では、本発明の対象となる光学素子を、例えば、光学ローパスフィルターとしてもよい。要するに、本発明では、基板の上に反射防止膜やUV−IRカットフィルター膜を含め光学機能膜が形成される光学素子であれば、いかなるものでも適用される。
また、第一実施形態では、光学機能膜として反射防止膜を説明し、第二実施形態では、光学機能膜としてUV−IRカットフィルター膜を説明したがこれに限られない。例えば、光学機能膜としては、UVカットフィルター膜、IRカットフィルター膜、偏光分離膜等でもよい。
【実施例】
【0040】
本実施形態の実施例について説明する。
[反射防止膜を有する光学素子]
本発明の第一実施形態の光学素子に対応する実施例1から実施例5まで、参考例1、比較例1について説明する。なお、蒸着実験では、シンクロン製蒸着機(商品名SID−1350)を用いた。また、各実験では、所定形状のサンプル、例えば、直径30mm、厚さ0.3mmの白板ガラス(屈折率n=1.51)の表面に、各実施例、参考例及び比較例に応じた条件で反射防止膜を作製した。
【0041】
(実施例1)
実施例1では、基板1の上に表1のような反射防止膜を形成した。
反射防止膜の最表層2S(第1層)及び導電層(第2層)は、ノンアシストパワー(EB蒸着)で成膜した。第3層から第6層までは、高アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着(IAD)で成膜した。この場合のアシストパワーは加速電圧が1000Vであり、加速電流が1200mAである。ここで、導電層(第2層)の物理膜厚は、5nmとなるように設定した。また、設計波長は、510nmに設定し、入射角は、0°に設定した。
【0042】
(実施例2から実施例5まで)
実施例2から実施例5まででは、それぞれ表2から表5までに示すように、導電層の物理膜厚を10nm、20nm、40nm、60nmとした以外は、実施例1と同様にして光学素子を作製した。
(参考例1)
TiOのみで第1高屈折率層を形成した以外は、実施例1と同様にして表6に示すように参考例1の光学素子を作製した。
(比較例1)
ITOのみで第1高屈折率層を形成した以外は、実施例1と同様にして表7に示すように比較例1の光学素子を作製した。
【0043】
(評価方法)
実施例、参考例及び比較例の光学素子について、可視光領域での光の反射率及び透過率を測定した。その結果が図8,9に示されている。
【0044】
(実施例1)
【0045】
【表1】

【0046】
(実施例2)
【0047】
【表2】

【0048】
(実施例3)
【0049】
【表3】

【0050】
(実施例4)
【0051】
【表4】

【0052】
(実施例5)
【0053】
【表5】

【0054】
(参考例1)
【0055】
【表6】

【0056】
(比較例1)
【0057】
【表7】

【0058】
(実験結果)
(1−1)反射率
図8に示される通り、実施例1から実施例5まででは、ITOの導電層の物理膜厚を小さくし、かつ、第1高屈折率層を構成する非導電層を設けたため、反射率が小さくなることが分かった。
また、ITOのみを用いて第1高屈折率層を形成した比較例1では、ITOの導電層の物理膜厚が大きいため、反射率は比較的低かった。
一方、TiOのみを用いて第1高屈折率層を形成した参考例1では、低波長帯域において、やや反射率が高くなり、光学特性が低下することが分かった。
(1−2)透過率
図9に示される通り、参考例1では、ITOを用いていないため、全ての可視光領域において透過率が優れていた。また、実施例1から実施例5でも同様に、ITOの導電層を小さくしたため、透過率が90%を超えて良好となることが分かった。
一方、比較例1では、特に低波長帯域において、透過率が低くなり、光学特性が低下することが分かった。
【0059】
[UV−IRカットフィルター膜を有する光学素子]
本発明の第二実施形態の光学素子に対応する実施例6から実施例9まで、参考例2、比較例2,3について説明する。なお、各層の蒸着方法に関しては、上述の実施例1と同様である。
【0060】
(実施例6)
実施例6では、基板1上に表8に示すようなUV−IRカットフィルター膜を形成した。
UV−IRカットフィルター膜の最表層2S(第1層)及び導電層(第2層)は、ノンアシストパワー(EB蒸着)で成膜した。第3層から第40層までの層は、高アシストパワーによるイオンアシストを用いた電子ビーム蒸着で成膜した。この場合のアシストパワーは加速電圧が1000Vであり、加速電流が1200mAである。ここで、導電層(第2層)の物理膜厚は、5nmとなるように設定した。また、入射角は、0°に設定した。
【0061】
(実施例7から実施例9まで)
実施例7から実施例9まででは、それぞれ表9から表11までに示すように、導電層の物理膜厚を10nm、20nm、40nmとした以外は、実施例6と同様にして光学素子を作製した。
(参考例2)
TiOのみで第1高屈折率層を形成した以外は、表12に示すように実施例6と同様にして参考例2の光学素子を作製した。
(比較例2)
ITOのみで第1高屈折率層を形成した以外は、表13に示すように実施例6と同様にして比較例2の光学素子を作製した。
(比較例3)
導電層の物理膜厚を60nmとした以外は、表14に示すように実施例6と同様にして比較例3の光学素子を作製した。
(評価方法)
実施例及び比較例の光学素子について、紫外線領域、可視光領域、赤外線領域での光の透過率を測定した。その結果を図10,11に示す。
【0062】
(実施例6)
【0063】
【表8】

【0064】
(実施例7)
【0065】
【表9】

【0066】
(実施例8)
【0067】
【表10】

【0068】
(実施例9)
【0069】
【表11】

【0070】
(参考例2)
【0071】
【表12】

【0072】
(比較例2)
【0073】
【表13】

【0074】
(比較例3)
【0075】
【表14】

【0076】
(実験結果)
(2)透過率
図10,11に示される通り、TiOのみを用いて第1高屈折率層を形成した参考例2では、ITOを用いていないため、可視光領域において透過率が高かった。
実施例6から実施例9では、第1高屈折率層にITOの導電層を形成し、このITOの導電層の物理膜厚を60nm未満としたため、参考例1と同様に、透過率が高くなることが分かった。
一方、ITOのみを用いて第1高屈折率層を形成した比較例2と、ITOの導電層の物理膜厚を60nmとした比較例3では、透過率が低くなり、光学特性が低下することが分かった。
【0077】
[防塵層を有する光学素子]
(実施例10)
実施例10では、基板の上に実施例6ようなのUV−IRカットフィルター膜を設け、さらにUV−IRカットフィルター膜上にフッ素含有有機ケイ素化合物膜を形成した。
フッ素含有有機ケイ素化合物膜は、例えば、信越化学工業株式会社製フッ素含有有機ケイ素化合物(製品名KY−130)をフッ素系溶剤(住友スリーエム株式会社製:ノベックHFE−7200)で希釈して固形分濃度3%の溶液を調製し、これを多孔質セラミック製ペレットに1g含浸させ乾燥したものである。
最表層は、表15に示すようにノンアシストパワーにて成膜した。最表層以外の層は、表16に示す条件で形成した。
【0078】
(実施例11,12及び比較例4,5)
最表層を、表15のように、実施例11,12では低アシストパワーにて成膜し、比較例4,5では高アシストパワーにて成膜した以外は、実施例10と同様にして防塵層を有する光学素子を作製した。
【0079】
【表15】

【0080】
【表16】

【0081】
[実験結果]
各実施例、参考例、比較例について、防塵性能試験を(3−1)ポリエチレンパウダー法、(3−2)関東ローム法、(3−3)コットンリンタ法で実施した。
(3−1)ポリエチレンパウダー法
ポリエチレンパウダー法は、トレイに敷き詰めたポリエチレンパウダー(セイシン製:SK−PE−20L)の上にサンプルを1cm上から落とし、その後、ゆっくり引き上げ、サンプルに付着したパウダーの着塵量と残存量とを量るものである。着塵量はパウダーが付着したサンプルを簡単に払い、サンプルの表面を撮像し、画像解析により塵面積を計算する。残存量はパウダーがついたサンプルの表面をエアーブロー(サンプルからの距離が3cm、圧力が約50KPa、回数3回)で除塵した後、サンプルの表面を撮像し、画像解析により塵面積を計算する。
(3−2)関東ローム法
関東ローム法は、路上、野外の塵を想定してJISで規格化されたパウダー(JIS試験粉体1,7種)を試験に使用するもので、トレイに敷き詰めたパウダーにサンプルを落とし、余分な塵を落とした後、サンプルに付着したパウダーの着塵量と残存量とを量るものである。着塵量と残存量との求め方はポリエチレンパウダー法と同じである。
(3−3)コットンリンタ法
コットンリンタ法は、トレイに敷き詰められたコットンリンタと称される繊維塵を試験に使用するもので、トレイに敷き詰めたパウダーにサンプルを落とし、余分な塵を落とした後、サンプルに付着したパウダーの着塵量と残存量とを量るものである。着塵量と残存量との求め方はポリエチレンパウダー法と同じである。
【0082】
これらの方法で実施した防塵性能試験の結果を表17に示す。
表17では、(4−1)ポリエチレンパウダー法、(4−2)関東ローム法及び(4−3)コットンリンタ法の結果が示される。
表17に示される通り、ポリエチレンパウダー法、関東ローム法、コットンリンタ法の全てにおいて、実施例10から実施例12までの光学素子では比較例4,5の光学素子と比較して着塵量と残存量とがともに小さいことが分かった。
すなわち、実施例10から実施例12まででは、第1低屈折率層のSiO密度を低下させ、さらに、第1低屈折率層に隣接する層として導電層を形成したため、防塵性に優れることが分かった。
【0083】
【表17】

【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、プロジェクター、デジタルスチールカメラの撮像装置、光ピックアップ、その他の電子機器に組み込まれる光学素子に利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1…基板、2…反射防止膜、2A…低屈折率層、2B…高屈折率層、2S…最表層、4…UV−IRカットフィルター膜、10…防塵ガラス(光学素子)、20…光学多層膜フィルター(光学素子)、30…偏光ビームスプリッター(光学素子)、100…プロジェクター(電子機器)、200…撮像装置(電子機器)、300…光ピックアップ(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
当該基板上に配置され、低屈折率層と高屈折率層とを交互に順にそれぞれ複数積層された光学機能膜と、
を備える光学素子であって、
前記光学機能膜の前記基板から最も離れた最表層は、第1低屈折率層であり、
当該第1低屈折率層に隣接する第1高屈折率層は、複数層から構成され、
当該複数層は前記最表層側から順に導電層と非導電層を配置して構成され、
前記光学機能膜がUV−IRカットフィルター膜である場合、前記導電層の物理膜厚は60nm未満である
ことを特徴とする光学素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光学素子において、
前記導電層は、前記非導電層に比べて物理膜厚が小さい
ことを特徴とする光学素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学素子において、
前記第1低屈折率層は、前記複数の低屈折率層のうちで最も密度が小さい
ことを特徴とする光学素子。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の光学素子において、
前記光学機能膜の表面抵抗値が、1×10Ω/cm以下である
ことを特徴とする光学素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載の光学素子において、
前記光学機能膜が可視光領域である400nmから800nmまでの波長帯域で機能する
ことを特徴とする光学素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の光学素子において、
前記光学機能膜が反射防止膜である
ことを特徴とする光学素子。
【請求項7】
請求項6に記載の光学素子において、
前記導電層の物理膜厚は、5nmよりも大きく40nmよりも小さい
ことを特徴とする光学素子。
【請求項8】
基板と、
当該基板上に配置され、低屈折率層と高屈折率層とを交互に順にそれぞれ複数積層して構成される光学機能膜と、
を備える光学素子を製造する光学素子の製造方法であって、
前記光学機能膜の前記基板から最も離れた最表層を第1低屈折率層とし、
当該第1低屈折率層に隣接する層を第1高屈折率層とし、
前記低屈折率層の表面に、前記第1高屈折率層を積層する第1工程と、
前記第1高屈折率層に、前記第1低屈折率層を積層する第2工程と、
を実施し、
前記第1工程で積層される前記第1高屈折率層は導電層と非導電層とを形成してなり、
前記導電層は前記最表層側に形成され、
前記光学機能膜がUV−IRカットフィルター膜である場合、前記導電層の物理膜厚が60nm未満となるように形成される
ことを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項9】
光源と、
ダイクロイックプリズムと、
前記光源と前記ダイクロイックプリズムとの間の光路に配置された光学素子と、
を備え、
前記光学素子が、請求項6又は7に記載の光学素子である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
撮像素子と、
当該撮像素子に対向配置された光学素子と、
を備え、
前記光学素子が、請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の光学素子であり、
前記光学機能膜が、UV−IRカットフィルター膜である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項11】
光源と、
対物レンズと、
前記光源と前記対物レンズとの間の光路に配置された光学素子と、
を備え、
前記光学素子が、請求項6又は7に記載の光学素子である
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−108204(P2012−108204A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255124(P2010−255124)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】