説明

光導波路保持部材及び光トランシーバ

【課題】本発明は高温環境下における光導波路保持部材の熱膨張を抑制することを課題とする。
【解決手段】光ファイバからの光信号が入射される入射部と、該入射部に入射された前記光信号をプリント基板に実装された光電変換素子に導くように曲面形状に形成された光導波路と、前記光導波路を通過した光信号を前記光電変換素子の受発光部に出射するレンズ部と、前記入射部と、前記光導波路と、前記レンズ部における各々を固定するための筐体部と、を有する光導波路保持部材において、前記入射部、前記導波路及び前記レンズ部は、樹脂材料により形成されており、前記筐体部は、金属材料または、セラミックス材料により形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光導波路保持部材及び光トランシーバに係り、特に光信号をプリント基板上の光電変換素子に導くように樹脂成型された光導波路を有する光導波路保持部材及び光導波路保持部材がプリント基板に実装された光トランシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高速、大容量の通信網や通信制御機器等の発達により光ファイバによる通信が主流となっている。例えばオフィスや家庭に設置された情報端末等にも光ファイバによりインターネット等の通信網を接続して信号の送受信が行われている。サーバ、パソコンや周辺機器と光ファイバ(外部光ファイバ)の接続部には、電気信号と光信号を双方向に変換可能な光トランシーバが用いられている。このような光トランシーバは、外部光ファイバと光電変換素子との間に形成される光導波路を備える(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−115346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような光トランシーバは、光電変換素子が配設されるプリント基板の上に光導波路を有する光導波路保持部材が実装される。通常、プリント基板はガラスエポキシ樹脂で構成され、一方、光導波路保持部材は、クラッド材料としての機能を確保するためにオレフィン系の樹脂で構成される。プリント基板側に配設される光電変換素子と光導波路保持部材側に配設される光導波路との間の光路の接続は、光電変換素子の受発光部と、光導波路の端部に形成されたレンズ部とを対向させ、それぞれの光学中心を一致させることによって実現される。また、光トランシーバにおいては、光学中心同士の位置精度は、±数μmレベルが求められる。
【0004】
ところで、一方のプリント基板がガラスエポキシ樹脂を材料として形成されている場合、プリント基板の線膨張係数は、13×10−6/°Cである。他方の光導波路の線膨張係数は、70×10−6/°Cである。そのため、例えば、常温25°Cの環境下でプリント基板に光導波路保持部材を実装した後、周辺機器からの熱により85°Cの雰囲気に晒された場合、プリント基板上に実装された光電変換素子の位置が熱膨張により10.007mmに変位し、光電変換素子の受発光部に対向する光導波路保持部材のレンズ部が10.038mmに変位する。この場合の両部材の相対位置のずれは、31μm程度のずれとなる。
【0005】
このような熱膨張による光導波路保持部材のレンズ部と光電変換素子の受発光部との相対位置のずれを抑制する方法として、従来は、光トランシーバの組立工程の際、光トランシーバの標準的な動作温度に加熱した雰囲気において光軸の位置合わせを行なうことで熱膨張による光軸のずれを抑制していた。
【0006】
しかしながら、この製造工程では、作業が繁雑になると共に、所望の位置精度(抑制効果)を得ることができず、歩留まりの低下を招くという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、光導波路保持部材の熱膨張による光信号のずれを抑制する光導波路保持部材及び光トランシーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
【0009】
本発明は、樹脂材により形成され、光ファイバからの光信号が入射される入射部と、該入射部に入射された前記光信号をプリント基板に実装された光電変換素子に導くように曲面形状に形成された光導波路と、前記光導波路を通過した光信号を前記光電変換素子の受発光部に出射するレンズ部と、を有する光導波路保持部材において、金属材料または、セラミックス材料により形成されたカバー部材を前記樹脂材の表面を覆うように設けることにより、上記課題を解決するものである。
【0010】
前記カバー部材は、前記光導波路の外側を覆う外側カバー部材と、前記光導波路の内側を覆う内側カバー部材と、により構成され、少なくとも前記外側カバー部材と前記内側カバー部材の何れか一方を有することが望ましい。
【0011】
前記外側カバー部材は、前記入射部に光信号を透過させるための第1の開口を有し、前記内側カバー部材は、前記レンズ部に対向する部分に光信号を透過させるための第2の開口を有することが望ましい。
【0012】
前記カバー部材は、前記外側カバー部材及び前記内側カバー部材は、前記光導波路のコア部を除く部分に接着されることが望ましい。
【0013】
前記外側カバー部材及び前記内側カバー部材は、ステンレス材により形成されることにより形成されることが望ましい。
【0014】
前記外側カバー部材及び前記内側カバー部材は、プレス加工、鋳造、切削加工の何れかの加工方法によって形成されることが望ましい。
【0015】
前記外側カバー部材は、前記光導波路のコア部に対向する部分にスリットを有することが望ましい。
【0016】
また、本発明は、光ファイバからの光信号が入射される入射部と、該入射部に入射された前記光信号をプリント基板に実装された光電変換素子に導くように曲面形状に形成された光導波路と、前記光導波路を通過した光信号を前記光電変換素子の受発光部に出射するレンズ部と、前記入射部と、前記光導波路と、前記レンズ部における各々を固定するための筐体部と、を有する光導波路保持部材において、前記入射部と、前記導波路と、前記レンズ部は、樹脂材料により形成されており、前記筐体部は、金属材料または、セラミックス材料により形成することにより、上記課題を解決するものである。
【0017】
前記筐体部を形成する金属材料または、セラミックス材料の線膨張係数は、前記樹脂材料の線膨張係数よりも低い値であることが望ましい。
【0018】
前記筐体部は、プレス加工、鋳造又は切削加工により形成されたものであることが望ましい。
【0019】
前記入射部、前記導波路及び前記レンズ部は、形成されている前記筐体部において、インサート成形することにより形成したものであることが望ましい。
【0020】
前記筐体部は、ステンレス材により形成されていることが望ましい。
【0021】
また、本発明は、光ファイバからの光信号が入射される入射部と、該入射部に入射された前記光信号をプリント基板に実装された光電変換素子に導くように曲面形状に形成された光導波路と、前記光導波路を通過した光信号を前記光電変換素子の受発光部に出射するレンズ部と、前記入射部と、前記光導波路と、前記レンズ部における各々を固定するための筐体部と、を有する光導波路保持部材において、前記入射部、前記導波路及び前記レンズ部は、樹脂材料により形成されており、前記筐体部は、前記樹脂材料とは異なる熱可塑性樹脂材料により形成することにより、上記課題を解決するものである。
【0022】
前記筐体部を形成する熱可塑性樹脂材料の線膨張係数は、前記樹脂材料の線膨張係数よりも低い値であることが望ましい。
【0023】
前記筐体部は、射出成形により形成したものであることが望ましい。
【0024】
前記入射部、前記導波路及び前記レンズ部は、形成されている前記筐体部において、樹脂材料を二重成形又は二色成形することにより形成したものであることが望ましい。
【0025】
また、本発明は、光ファイバからの光信号が入射される入射部と、該入射部に入射された前記光信号をプリント基板に実装された光電変換素子に導くように曲面形状に形成された光導波路と、前記光導波路を通過した光信号を前記光電変換素子の受発光部に出射するレンズ部と、前記入射部と、前記光導波路と、前記レンズ部における各々を固定するための筐体部と、を有する光導波路保持部材において、前記入射部、前記導波路及び前記レンズ部は、樹脂材料により形成されており、前記筐体部は、前記樹脂材料とは異なる熱硬化性樹脂材料により形成することにより、上記課題を解決するものである。
【0026】
前記筐体部を形成する熱硬化性樹脂材料の線膨張係数は、前記樹脂材料の線膨張係数よりも低い値であることが望ましい。
【0027】
前記筐体部は、注型成形又はトランスファー成形により形成したものであることが望ましい。
【0028】
前記入射部、前記導波路及び前記レンズ部は、形成されている前記筐体部において、樹脂材料を二重成形又は二色成形することにより形成したものであることが望ましい。
【0029】
また、本発明は、プリント基板と、該プリント基板に実装される光電変換素子と、樹脂材により形成され光ファイバから入射された光信号を前記光電変換素子に導く光導波路を有する光導波路保持部材とを備えた光トランシーバにおいて、金属材料または、セラミックス材料により形成されたカバー部材を前記光導波路保持部材の表面を覆うように設けたことにより、上記課題を解決するものである。
【0030】
前記外側カバー部材及び前記内側カバー部材は、前記プリント基板に接着、半田付け、プレスフィット、熱溶着の何れかの固定手段により固定されることが望ましい。
【0031】
前記光導波路保持部材は、接着剤、プレスフィット又はハンダ付けによりプリント基板に固定することが望ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、金属材料または、セラミックス材料により形成されたカバー部材を樹脂材の表面を覆うように設けることにより、また、筐体部分を金属等の膨張係数の低い材料により形成することにより、樹脂材の熱膨張を抑制して光導波路の端部と光電変換素子の受発光部との相対位置のずれを抑制することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0034】
図1は本発明による光導波路保持部材及び光トランシーバの実施例1を示す縦断面図である。図2は外側カバー部材(一点鎖線で示す)、光導波路保持部材、プリント基板の組み付け状態を示す斜視図である。図3は実施例1の光導波路保持部材から外側カバー部材を分離した組立前の状態を示す分解斜視図である。
【0035】
図1及び図2に示されるように、光トランシーバ10は、プリント基板20上に光導波路保持部材30を実装してなる。光導波路保持部材30には、外側の表面を覆うように金属材により形成された外側カバー部材40が被せてある。光導波路保持部材30及び外側カバー部材40の下部は、接着剤22(図2中、梨地模様で示す)によりプリント基板20上に固定される。尚、プリント基板20上には、その他の電子部品も実装されているが、ここではそれらの図示及び説明を省略する。
【0036】
図1及び図3に示されるように、光導波路保持部材30は、後述するような樹脂材により形成されており、光ファイバからの光信号が入射される入射部32と、入射部32に入射された光信号をプリント基板20に実装された光電変換素子70(図1、図5参照)に導くように曲面形状に形成された光導波路34と、光導波路34のコア部34aを通過した光信号を光電変換素子70の受発光部72に出射するレンズ部36とを有する。尚、本実施例においては、光導波路34及びコア部34aは、紫外線硬化エポキシ樹脂により形成されており、光導波路34の溝内にコア部34aが挿入される構成である。また、コア部34aの数は、適宜選択されるものであり、本実施例においては4本ずつ2箇所に並列に設けられている。
【0037】
入射部32は、図1及び図2に示すように、プリント基板20の上面と平行な方向から引き出された光ファイバのコネクタが接続しやすいように光導波路保持部材30の背面31側に設けられている。
【0038】
また、複数のコア部34aは、光導波路34の曲面に沿って光導波路保持部材30の背面側の入射部32から光導波路保持部材30の下面側のレンズ部36に接続されるように形成されている。光ファイバを介して送信された光信号は、コア部34aに沿って伝送されてレンズ部36から垂下方向に出射され、レンズ部36の下方に配置されたプリント基板20上の光電変換素子70に到達する。
【0039】
図4に示されるように、レンズ部36は、プリント基板20に対向する光導波路保持部材30の下面側に設けられている。また、レンズ部36は、光導波路34のコア部34aに対応する位置に、コア部34aを通過した光信号を光電変換素子70の受発光部72(図5参照)に照射するための複数の球面レンズ36aを有する。
【0040】
図5に示されるように、光電変換素子70は、複数の受発光部72がレンズ部36の複数の球面レンズ36aの夫々に対向する位置になるようにプリント基板20の所定位置に実装されている。
【0041】
さらに、光導波路保持部材30は、図1及び図2に示されるように、光導波路34の左右両側より上方に突出する上部取付部38と、光導波路34の前方に突出する前部取付部39とを有する。上部取付部38及び前部取付部39は、外側カバー部材40に嵌合して固着される。また、光導波路保持部材30の下面側に形成された凹部60には、前部取付部39の下方に延在してプリント基板20の上面に当接する脚部62が形成され、上部取付部38の下方に延在してプリント基板20の上面に当接する脚部64が形成されている。
【0042】
本実施例の光導波路保持部材30は、クラッド材料としての機能を有するオレフィン系の樹脂により成型されている。また、光導波路保持部材30は、樹脂材により成型されているので、おおよそ線膨張係数が70×10−6/°Cである。
【0043】
光導波路保持部材30が実装されるプリント基板20は、ガラスエポキシ樹脂により形成されているため、線膨張係数が13×10−6/°Cである。そのため、プリント基板20と光導波路保持部材30との間では、温度上昇に伴う熱膨張が発生した場合、上記線膨張係数の差に基づく相対的な位置ずれが発生する。
【0044】
外側カバー部材40は、ステンレス材(SUS304)などの金属材により加工されており、樹脂材よりも十分に大きい剛性を有している。外側カバー部材40の線膨張係数は、おおよそ10.4×10−6/°Cであり、プリント基板20(ガラスエポキシ樹脂)の線膨張係数に近い値である。そのため、外側カバー部材40とプリント基板20との熱膨張差は、小さくなるように設定されている。
【0045】
外側カバー部材40は、光導波路保持部材30の外側の形状(光導波路34、上部取付部38、前部取付部39を含む)に応じた凹部80を有するため、光導波路保持部材30の外側表面に対して密着した状態に組み付けることが可能である。また、外側カバー部材40は、光導波路34のコア部34aを除く光導波路保持部材30の外側表面に接着される。
【0046】
そのため、光導波路保持部材30は、外側表面が樹脂材よりも高い剛性を有する金属材からなる外側カバー部材40で覆われ、外側カバー部材40と共に下部が接着剤22によりプリント基板20に固着されるため、常温(25°C)よりも高い温度の雰囲気で使用される場合、光導波路保持部材30を形成する樹脂材のX方向及びY方向の熱膨張が外側カバー部材40によって拘束される。さらに、光導波路保持部材30は、光信号が伝送するコア部34aの外側を外側カバー部材40によって保護されるため、プリント基板20への実装作業時にコア部34aが損傷することが防止される。
【0047】
尚、外側カバー部材40の凹部80は、光導波路34との間に微小な隙間を有するように形成することで、熱膨張時に光導波路34に接触しないようにしてコア部34aに応力を与えないようにすることが望ましい。
【0048】
外側カバー部材40は、例えば、ステンレス板をプレス加工により光導波路保持部材30の外側の形状に対応した凹部80を形成される方法、あるいは、鋳型またはダイキャスト金型に溶融したステンレス材を注入して鋳造で製作される方法、あるいはステンレス材からなる金属ブロックを切削加工して製作する方法の何れかの方法で加工される。尚、外側カバー部材40を鋳造で製作する場合には、肉厚を適宜変更することが可能であるので、熱膨張の応力が作用する箇所の肉厚を厚くすることが可能になり、より強固に光導波路保持部材30の外側表面を保持することができる。
【0049】
また、外側カバー部材40は、導波路保持部材30の外側の形状に対応した凹部80を有することが重要であるので、外側形状は光導波路保持部材30の外観形状に応じた上部凸部42、曲面44、下部突部46を有する形状であっても良いし、あるいは、凹凸の無い箱形形状としても良い。
【0050】
さらに、外側カバー部材40は、光導波路保持部材30の背面31に密着する背面41を有しており、背面41には入射部32に対向する部分に第1の開口41aを有する。この第1の開口41aは、光信号を入力するための開口であり、光ファイバ側コネクタが挿入できるように左右方向に細長い長方形に形成され、入射部32の横幅寸法に対応する長さ形状とされている。
【0051】
また、外側カバー部材40の左右側面47の内壁は、内壁面が光導波路保持部材30の左右側面33に密着するように形成されている。
【0052】
また、上部凸部42と曲面44との間の段差43は、光導波路保持部材30の上部取付部38の段差38aに密着し、下部突部46の前側の段差45は、光導波路保持部材30の前部取付部39の前側の段差39aに密着するように形成されている。
【0053】
このように、外側カバー部材40は、内壁形状が光導波路保持部材30の外側形状に対応する形状に形成されているので、光導波路保持部材30のX方向及びY方向の外側に向かう熱膨張を拘束することが可能になる。そのため、光導波路保持部材30の下面側に設けられたレンズ部36と、プリント基板20上に実装された光電変換素子70との相対的な位置ずれを拘束して光信号の送受信可能範囲内に抑えることができる。
【0054】
上記のように構成された光トランシーバ10によれば、組立工程を行なう際の温度環境に神経を使わずに済むので、光トランシーバ10の生産効率を高めることができ、歩留まりも良好になり、生産性が向上する。
【実施例2】
【0055】
図6は実施例2の光トランシーバを示す縦断面図である。図7は実施例2の光導波路保持部材と内側カバー部材とを分離した組立前の状態を示す分解斜視図である。尚、図6及び図7において、上記実施例1と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
図6及び図7に示されるように、実施例2の光トランシーバ10Aでは、光導波路保持部材30の下面側に形成された凹部60に内側カバー部材90が嵌合固定されている。
【0057】
内側カバー部材90は、前述した外側カバー部材40と同様に、ステンレス材(SUS304)などの金属材により加工されており、樹脂材よりも十分に大きい剛性を有している。また、内側カバー部材90の線膨張係数は、おおよそ10.4×10−6/°Cであり、プリント基板20との熱膨張差が小さくなるように設定されている。
【0058】
また、内側カバー部材90は、上面側が光導波路保持部材30の凹部60の形状に対応した膨出部91と、前部取付部39の下面側を覆う水平延在部92と、膨出部91の左右方向(X方向)を囲む側面93と、膨出部91の背面側(Y方向)を囲む背面94とを有する。水平延在部92には、レンズ部36からの光信号を通過させるための第2の開口92aが形成されている。第2の開口92aは、左右方向に細長い長方形の開口であり、レンズ部36の横幅寸法に対応する長さ形状とされている。
【0059】
内側カバー部材90は、凹部60の上面、前後左右の各面、及び光導波路34の内側に対応する形状であるので、光導波路保持部材30のX方向及びY方向の内側に向かう熱膨張を拘束することが可能になる。そのため、光トランシーバ10Aでは、光導波路保持部材30の下面側に設けられたレンズ部36と、プリント基板20上に実装された光電変換素子70との熱膨張差による相対的な位置ずれを拘束して光信号の送受信可能範囲内に抑えることができる。
【0060】
このように、実施例2の光トランシーバ10Aによれば、組立工程を行なう際の温度環境に神経を使わずに済むので、光トランシーバ10Aの生産効率を高めることができ、歩留まりも良好になり、生産性が向上する。
【実施例3】
【0061】
図8は実施例3の光トランシーバを示す縦断面図である。図9は実施例3の光導波路保持部材と外側カバー部材と内側カバー部材とを分離した組立前の状態を示す分解斜視図である。尚、図8及び図9において、上記実施例1と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0062】
図8及び図9に示されるように、実施例3の光トランシーバ10Bでは、光導波路保持部材30の外側には、外側表面を覆うように形成された外側カバー部材40が嵌合固定され、光導波路保持部材30の下面側に形成された凹部60には、内側カバー部材90が嵌合固定されている。
【0063】
そのため、光導波路保持部材30は、外側カバー部材40によりX方向及びY方向の外側に向かう熱膨張が拘束され、内側カバー部材90によりX方向及びY方向の内側に向かう熱膨張が拘束される。この実施例3の光トランシーバ10Bでは、光導波路保持部材30の外側及び内側に外側カバー部材40及び内側カバー部材90が嵌合固定されているので、より強固に挟持することが可能である。そのため、光トランシーバ10Bによれば、より高温環境下で使用する場合でも、光導波路保持部材30の下面側に設けられたレンズ部36と、プリント基板20上に実装された光電変換素子70との相対的な位置ずれを拘束して光信号の送受信可能範囲内に抑えることができる。
【0064】
これにより、光トランシーバ10Bでは、組立工程を行なう際の温度環境に神経を使わずに済むので、光トランシーバ10Bの生産効率を高めることができ、歩留まりも良好になり、生産性が向上する。
【実施例4】
【0065】
図10は実施例4の光トランシーバを示す縦断面図である。図11は実施例4の光導波路保持部材と外側カバー部材と内側カバー部材とを分離した組立前の状態を示す分解斜視図である。尚、図10及び図11において、上記実施例1〜3と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0066】
図10及び図11に示されるように、実施例4の光トランシーバ10Cでは、光導波路保持部材30の外側に外側表面を覆うように形成された外側カバー部材140が嵌合固定され、光導波路保持部材30の下面側に形成された凹部60には、内側カバー部材190が嵌合固定されている。
【0067】
外側カバー部材140は、前述した外側カバー部材40と同様に、ステンレス材(SUS304)などの金属材により加工されている。また、外側カバー部材140は、光導波路保持部材30の背面31に密着する背面141を有しており、背面141には入射部32に対向する部分に第1の開口141aを有する。この第1の開口141aは、光信号を入力するための開口であり、光ファイバ側コネクタが挿入できるように左右方向に細長い長方形に形成され、且つ入射部32の横幅寸法に対応する長さ形状とされている。
【0068】
また、外側カバー部材140の左右側面147の内壁は、内壁面が光導波路保持部材30の左右側面33に密着するように形成されている。
【0069】
また、上部凸部142と垂直面144とは、光導波路保持部材30の上部取付部38の段差38a及び光導波路34から離間する空間からなる逃げ部200を形成している。また、下部突部146の前側の段差145は、光導波路保持部材30の前部取付部39の前側の段差39aに密着するように形成されている。
【0070】
このように、外側カバー部材40は、内壁形状が光導波路保持部材30の外側形状に対応しておらず、光導波路34の外側に接触しない形状に形成されているので、光導波路34の表面を圧迫することなく光導波路保持部材30のX方向及びY方向の外側に向かう熱膨張を拘束することが可能になる。そのため、光導波路保持部材30の下面側に設けられたレンズ部36と、プリント基板20上に実装された光電変換素子70との相対的な位置ずれを拘束して光信号の送受信可能範囲内に抑えることができる。
【0071】
内側カバー部材190は、前述した内側カバー部材90と同様に、ステンレス材(SUS304)などの金属材により加工されており、樹脂材よりも十分に大きい剛性を有している。また、内側カバー部材190は、上面側が光導波路保持部材30の凹部60の内壁に当接する膨出部191と、前部取付部39の下面側を覆う水平延在部192と、膨出部191の左右方向(X方向)を囲む側面193と、膨出部191の背面側(Y方向)を囲む背面194とを有する。膨出部191は、光導波路34の内側に接触しないように導波路保持部材30の凹部60のY方向の長さよりも短く形成されている。そのため、膨出部191の前側に形成された垂直面195は、光導波路34に接触しないように光導波路34の下方に空間からなる逃げ部210を形成している。
【0072】
また、水平延在部192には、レンズ部36からの光信号を通過させるための第2の開口192aが形成されている。第2の開口192aは、左右方向に細長い長方形の開口であり、レンズ部36の横幅寸法に対応する長さ形状とされている。
【0073】
内側カバー部材190は、光導波路34を除く光導波路保持部材30の凹部60の内壁(凹部60の前後左右の背面31、段差39a、左右側面33の内壁)に当接して、光導波路保持部材30のX方向及びY方向の内側に向かう熱膨張を拘束することが可能になる。そのため、光トランシーバ10Cでは、光導波路保持部材30の下面側に設けられたレンズ部36と、プリント基板20上に実装された光電変換素子70との熱膨張差による相対的な位置ずれを拘束して光信号の送受信可能範囲内に抑えることができる。
【0074】
そのため、光導波路保持部材30は、外側カバー部材140によりX方向及びY方向の外側に向かう熱膨張が拘束され、内側カバー部材190によりX方向及びY方向の内側に向かう熱膨張が拘束される。この実施例4の光トランシーバ10Cでは、光導波路保持部材30の外側及び内側に外側カバー部材140及び内側カバー部材190が嵌合固定されているので、逃げ部200,210によって光導波路34を外側、内側から拘束することなく、より強固に挟持することが可能である。
【0075】
そのため、光トランシーバ10Cによれば、より高温環境下で使用する場合でも、光導波路保持部材30の下面側に設けられたレンズ部36と、プリント基板20上に実装された光電変換素子70との相対的な位置ずれを拘束して光信号の送受信可能範囲内に抑えることができる。
【0076】
尚、実施例4の光トランシーバ10Cにおいては、光導波路保持部材30の外側に外側表面を覆うように形成された外側カバー部材140が嵌合固定され、光導波路保持部材30の下面側に形成された凹部60には、内側カバー部材190が嵌合固定された構成について説明したが、外側カバー部材140または内側カバー部材190の何れか一方で光導波路保持部材30の外側または内側を覆うようにしても良い。
【0077】
以下、変形例について説明する。
【0078】
ここで、図12を参照して変形例1について説明する。図12に示されるように、外側カバー部材40Aは、光導波路34に対向する曲面44に複数のスリット44aが設けられている。この複数のスリット44aは、光導波路34のコア34aに対向する部分に位置ように設けられている。これにより、熱膨張時に光導波路34のコア34aが外側カバー部材40Aに押圧されて応力を受けることが防止される。
【0079】
また、この変形例1では、複数のスリット44aによってX方向の剛性が弱まり、光導波路保持部材30のX方向の熱膨張を拘束する強度が低下するが、熱膨張によるレンズ部36と光電変換素子70との相対的な位置ずれは、Y方向に対して大きく影響するため、X方向の影響は小さくて済む。
【0080】
次に図13を参照して変形例2について説明する。図13に示されるように、外側カバー部材40をプリント基板20に固定する手段として前述した接着剤22以外の固定手段を用いても良い。
【0081】
例えば、図13中A部に示すように、外側カバー部材40の縁部から下方に延在する固定用端部100を延在させ、固定用端部100をプリント基板20の貫通孔123に挿入する。さらに、固定用端部100は、半田付けによりプリント基板20に形成された導体パターン124に固定される。このように、半田付けを用いた固定手段により外側カバー部材40をプリント基板20に固定するようにしても良い。この場合、固定用端部100がプリント基板20を貫通することで、前後左右方向(X,Y方向)の動きが拘束される。さらに、このA部では、半田110が固定用端部100をプリント基板20の下面側に配された導体パターン124に固定されるため、外側カバー部材40の上方(Z方向)への変位も拘束される。
【0082】
尚、図13においては、固定用端部100が1箇所(A部)のみしか図示していないが、固定用端部100を複数箇所に設けることで外側カバー部材40をプリント基板20に強固に固定することができる。
【0083】
このように、外側カバー部材40がプリント基板20に固定されることにより、高温環境での熱膨張によるレンズ部36と光電変換素子70との相対的な位置ずれをより小さく抑えることが可能になる。
【0084】
また、図13中B部に示すように、プリント基板20の貫通孔126に外側カバー部材40の縁部から下方に延在する固定用端部120を挿通し、上下方向からプレス加工機により荷重を加えて固定用端部120を径方向に変形(大径化)させる固定手段を用いても良い。この変形例でも外側カバー部材40がプリント基板20に固定されることにより、高温環境での熱膨張によるレンズ部36と光電変換素子70との相対的な位置ずれをより小さく抑えることが可能になる。
【0085】
尚、図13においては、固定用端部120が1箇所(B部)のみしか図示していないが、固定用端部120を複数箇所に設けることで外側カバー部材40をプリント基板20に強固に固定することができる。
【0086】
また、上記以外の固定手段としては、プリント基板20の貫通孔126に外側カバー部材40の縁部から下方に延在する固定用端部120を挿通した状態に高熱を加え、プリント基板20の一部を溶融させて熱溶着により固定用端部120を貫通孔126に固着する固定手段を用いて良い。また、この熱溶着法を用いた場合も外側カバー部材40がプリント基板20に固定されることにより、高温環境下での熱膨張によるレンズ部36と光電変換素子70との相対的な位置ずれをより小さく抑えることが可能になる。
【0087】
尚、実施例1から4においては、内側カバー部材90、190、及び外側カバー部材40、40A、140は、金属材料であるステンレス材について説明したが、金属材料以外のセラミックス材料であってもよい。具体的には、SiCやアルミナ(Al2O3)等の材料が挙げられる。特に、アルミナ(Al2O3)においては、硬度も高く、線膨張係数も、おおよそ7.1×10−6/°Cであり、高温環境下でのレンズ部36等の熱膨張を抑えることが可能であるからである。
【実施例5】
【0088】
本実施例は、光導波路保持部材及び光トランシーバに係るものである。具体的に、図14に本実施例における光導波路保持部材を示す。この光導波路保持部材330の構成は、光ファイバからの光信号が入射される入射部332と、入射部332に入射された光信号を後述するプリント基板に実装された光電変換素子に導くように曲面形状に形成された光導波路334と、光導波路334を通過した光信号を光電変換素子の受発光部に出射するレンズ部336と、これらを固定するための筐体部304により構成されている。この入射部332、光導波路334、レンズ部336は、樹脂材料により成型されており、筐体部304は金属材により構成されている。
【0089】
具体的に、図15、図16に基づき説明する。図15は本実施例における光導波路保持部材及び光トランシーバを示す縦断面図である。図16は光導波路保持部材、プリント基板の組み付け状態を示す斜視図である。
【0090】
図15及び図16に示されるように、光トランシーバ310は、プリント基板320上に光導波路保持部材330を実装してなる。光導波路保持部材330の下部は、接着剤322(図16中、梨地模様で示す)によりプリント基板320上に固定される。尚、プリント基板320上には、その他の電子部品も実装されているが、ここではそれらの図示及び説明を省略する。
【0091】
尚、本実施例においては、光導波路334及びコア部334aは、紫外線硬化エポキシ樹脂により形成されており、光導波路334の溝内にコア部334aが挿入される構成である。また、コア部334aの数は、適宜選択されるものであり、本実施例においては4本ずつ2箇所に並列に設けられている。
【0092】
入射部332は、図15及び図16に示すように、プリント基板320の上面と平行な方向から引き出された光ファイバのコネクタが接続しやすいように光導波路保持部材330の背面331側に設けられている。
【0093】
また、複数のコア部334aは、光導波路334の曲面に沿って光導波路保持部材330の背面側の入射部332から光導波路保持部材330の下面側のレンズ部336に接続されるように形成されている。光ファイバを介して送信された光信号は、コア部334aに沿って伝送されてレンズ部336から垂下方向に出射され、レンズ部336の下方に配置されたプリント基板320上の光電変換素子370に到達する。
【0094】
図17に示されるように、レンズ部336は、プリント基板320に対向する光導波路保持部材330の下面側に設けられている。また、レンズ部336は、光導波路334のコア部334aに対応する位置に、コア部334aを通過した光信号を光電変換素子370の受発光部372(図18参照)に照射するための複数の球面レンズ336aを有する。
【0095】
図18に示されるように、光電変換素子370は、複数の受発光部372がレンズ部336の複数の球面レンズ336aの夫々に対向する位置になるようにプリント基板320の所定位置に実装されている。
【0096】
さらに、光導波路保持部材330における筐体部304は、図15及び図16に示されるように、光導波路334の左右両側より上方に突出する上部取付部338と、光導波路334の前方に突出する前部取付部339とを有する。
【0097】
本実施例の入射部332、光導波路334、レンズ部336は、クラッド材料としての機能を有するオレフィン系の樹脂により成型されている。よって、入射部332、光導波路334、レンズ部336は、樹脂材料により成型されているので、おおよそ線膨張係数が70×10−6/°Cである。
【0098】
光導波路保持部材330が実装されるプリント基板320は、ガラスエポキシ樹脂により形成されているため、線膨張係数が13×10−6/°Cである。そのため、プリント基板320と入射部332、光導波路334、レンズ部336との間では、温度上昇に伴う熱膨張が発生した場合、上記線膨張係数の差に基づく相対的な位置ずれが発生する。
【0099】
筐体部304は、ステンレス材(SUS304)などの金属材により加工されており、樹脂材料よりも十分に大きい剛性を有している。筐体部304における線膨張係数は、おおよそ10.4×10−6/°Cであり、プリント基板320(ガラスエポキシ樹脂)の線膨張係数に近い値である。そのため、筐体部304とプリント基板320との熱膨張差は、小さくなるように設定されている。このようなことから、筐体部304を構成する材料は、少なくとも樹脂材の線膨張係数よりも小さな値を有する材料であることを要し、プリント基板320の線膨張係数に近い値となる材料であることが望ましい。
【0100】
光導波路保持部材330は、筐体部304が樹脂材料よりも高い剛性を有する金属材からなり、下部が接着剤322によりプリント基板320に固着されるため、常温(25°C)よりも高い温度の雰囲気で使用される場合、光導波路保持部材330を形成する樹脂材料のX方向及びY方向の熱膨張が筐体部304によって拘束される。
【0101】
筐体部304は、例えば、ステンレス板をプレス加工により光導波路保持部材330の外側の形状に対応した凹部380を形成される方法、あるいは、鋳型またはダイキャスト金型に溶融したステンレス材を注入して鋳造で製作される方法、あるいはステンレス材からなる金属ブロックを切削加工して製作する方法の何れかの方法で加工される。尚、筐体部304を鋳造で製作する場合には、肉厚を適宜変更することが可能であるので、熱膨張の応力が作用する箇所の肉厚を厚くすることが可能になり、より強固に樹脂材料の線膨張を拘束することができる。
【0102】
このように、筐体部304は、樹脂材料のX方向及びY方向の外側に向かう熱膨張を拘束することが可能になる。そのため、光導波路保持部材330の下面側に設けられたレンズ部336と、プリント基板20上に実装された光電変換素子370との相対的な位置ずれを拘束して光信号の送受信可能範囲内に抑えることができる。
【0103】
上記のように構成された光トランシーバ310によれば、組立工程を行なう際の温度環境に神経を使わずに済むので、光トランシーバ310の生産効率を高めることができ、歩留まりも良好になり、生産性が向上する。
【0104】
次に、本実施の形態における光導波路保持部材330の作製方法について説明する。
上述したように光導波路保持部材330における筐体部304は金属材により形成されており、入射部332、光導波路334、レンズ部336は樹脂材料により形成されている。
【0105】
最初に、金属材からなる筐体部304を作製した後、金型に樹脂材料を流し込み固めることにより入射部332、光導波路334、レンズ部336を形成する。具体的には、図19、図20及び図21に基づき説明する。図19は、作製方法を説明するための全体の斜視図であり、図19(a)は、前方方向における斜視図であり、図19(b)は、後方方向における斜視図である。また、図20、図21は、要部となる部分の斜視図である。
【0106】
図19(a)、図19(b)に示すように、筐体部304が収まる形状の金型350a、350bに筐体部304を入れる。尚、筐体部304には、入射部332、光導波路334、レンズ部336が形成される部分には何も形成されていない。
【0107】
この後、金型350a、350bを合せ、金型350a、350bにおける樹脂充填口より樹脂の流し込みを行う。全体に樹脂を流し込んだ後、樹脂を固形化させ、その後、金型350a、350bを取り外すことにより本実施の形態における光導波路保持部材330が完成する。
【0108】
図19(a)、(b)は、筐体部304と形成される樹脂材料による部分、即ち、筐体部403と、入射部332、光導波路334、レンズ部336における部分とを分解した際の様子を示すものである。
【0109】
また、図20(a)は、作製される光導波路保持部材330を示しており、上は光導波路保持部材330の上面図、下は光導波路保持部材330の側面図である。図20(b)は、この光導波路保持部材330において、破線20A−20Bにおいて切断した部分が製造される様子の斜視図を示すものである。筐体部304は金型350a、350bにより挟み込んだ状態において、筐体部304と金型350a、350bとの間に空間が生じる。樹脂材料は、この空間を樹脂流路として流れ込み、空間全体を樹脂材料で埋める。図20(c)は、この樹脂流路の部分を拡大した斜視図である。
【0110】
同様に、図21(a)は、作製される光導波路保持部材330を示しており、上は光導波路保持部材330の上面図、下は光導波路保持部材330の側面図である。図21(b)は、この光導波路保持部材330において、破線21A−21Bにおいて切断した部分が製造される様子の斜視図を示すものである。筐体部304は金型350a、350bにより挟み込んだ状態において、筐体部304と金型350a、350bとの間に空間が生じる。樹脂材料は、この空間を樹脂流路として流れ込み、空間全体を樹脂材料で埋める。図21(c)は、この樹脂流路の部分を拡大した斜視図である。
【0111】
このようにして、本実施の形態における光導波路保持部材及び光トランシーバが作製される。
【0112】
なお、本実施の形態では、プリント基板320と筐体部304とが接着剤により接続する方法について説明したが、図22に示すように、プリント基板320と筐体部304とをプレスフィットにより接続する方法や、ハンダにより接続する方法であってもよい。プレスフィットにより接続する方法とは、予め筐体部304を形成する際に、プレスフィット端子402を形成しておき、プリント基板320との接続の際にプレスフィット端子402により接続するものである。また、ハンダにより接続する方法とは、予め筐体部304を形成する際に、ハンダ接合端子404を形成しておき、プリント基板320との接続の際にハンダ接合端子404をハンダ406によりハンダ付けすることにより接続するものである。これらの方法では、接着剤よりも強固にプリント基板320に取り付けることが可能であるため、樹脂材料の熱膨張をより一層抑制することができ、光軸の位置ズレをおさえることが可能となる。
【0113】
尚、本実施例においては、筐体部304は、金属材料であるステンレス材である場合について説明したが、筐体部304は金属材料以外のセラミックス材料であってもよい。具体的には、SiCやアルミナ(Al2O3)等の材料が挙げられる。特に、アルミナ(Al2O3)においては、硬度も高く、線膨張係数も、おおよそ7.1×10−6/°Cであり、高温環境下において、入射部332、光導波路334、レンズ部336を構成する樹脂材料の熱膨張を抑えることが可能であるからである。
【実施例6】
【0114】
本実施例は、筐体部404を熱可塑性樹脂材料又は、熱硬化性樹脂材料により形成した光導波路保持部材及び光トランシーバに関するものである。図23に本実施例を示す。本実施例における光導波路保持部材430は、熱可塑性樹脂材料又は、熱硬化性樹脂材料からなる筐体部404、筐体部404を構成する熱可塑性樹脂材料又は、熱硬化性樹脂材料とは異なる樹脂材料により構成される入射部432、光導波路434、レンズ部436からなるものである。尚、筐体部404を構成する熱可塑性樹脂材料又は、熱硬化性樹脂材料における線膨張係数は、入射部432、光導波路434、レンズ部436を構成する樹脂材料の線膨張係数よりも小さな値であることを要し、取り付けられるプリント基板(不図示)の線膨張係数に近い値であるものが望ましい。
【0115】
筐体部404を熱可塑性樹脂材料により形成する場合には、筐体部404は射出成形等の方法により形成され、このように形成された筐体部404において、実施例5の場合と同様に、金型に樹脂材料を流し込み、固形化させることにより作製される。このように、2種類の樹脂材料を用いて形成する方法を、二重成形又は二色成形という。
【0116】
一方、筐体部404を熱硬化性樹脂材料により形成する場合には、筐体部404は、注型成形又はトランスファー成形等の方法により形成され、このように形成された筐体部404において、実施例5の場合と同様に、金型に樹脂材料を流し込み、固形化させることにより作製される。
【0117】
尚、本実施の形態における光導波路保持部材430は、基板との接着は接着剤により接着がなされる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
上記実施例では、外側カバー部材40,140及び内側カバー部材90,190の形状が光導波路保持部材30の外側形状、内側形状に対応する形状である場合と、光導波路34の内側と外側とを圧迫しないように構成されたものを例示して説明したが、これに限らず、例えば、X方向及びY方向の熱膨張が発生する部分(熱膨張が顕著に表れる部分)を抑制するように部分的に光導波路保持部材30の表面に密着するように形状にしても良いのは勿論である。
【0119】
また、上記実施例では、外側カバー部材40,140及び内側カバー部材90,190が一体に形成された場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、光導波路保持部材30の表面形状(凹凸の存在)に応じて、例えば、外側カバー部材40,140及び内側カバー部材90,190を左右方向(X方向)または上下方向(Z方向)に2分割し、組立時に結合する構成としても良いのは勿論である。
【0120】
また、上記実施例では、外側カバー部材40,140及び内側カバー部材90,190をステンレス鋼により形成する場合について説明したが、プリント基板20と同じような線膨張係数を有する材料であれば、ステンレス以外の金属材料または、セラミックス材料によって形成しても良いのは勿論である。
【0121】
また、上記実施例では、筐体部304をステンレス鋼により形成する場合について説明したが、プリント基板320と同じような線膨張係数を有する材料であれば、ステンレス以外の金属材料または、セラミックス材料によって形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明による光導波路保持部材及び光トランシーバの実施例1を示す縦断面図
【図2】外側カバー部材(一点鎖線で示す)、光導波路保持部材、プリント基板の組み付け状態を示す斜視図
【図3】実施例1の光導波路保持部材から外側カバー部材を分離した組立前の状態を示す分解斜視図
【図4】光導波路保持部材の下面側に配されたレンズ部の構成を示す斜視図
【図5】プリント基板の上面に実装された光電変換素子70を示す斜視図
【図6】実施例2の光トランシーバを示す縦断面図
【図7】実施例2の光導波路保持部材と内側カバー部材とを分離した組立前の状態を示す分解斜視図
【図8】実施例3の光トランシーバを示す縦断面図
【図9】実施例3の光導波路保持部材と外側カバー部材と内側カバー部材とを分離した組立前の状態を示す分解斜視図
【図10】実施例4の光トランシーバを示す縦断面図
【図11】実施例4の光導波路保持部材と外側カバー部材と内側カバー部材とを分離した組立前の状態を示す分解斜視図
【図12】変形例1を説明するための斜視図
【図13】変形例2を説明するための縦断面図
【図14】実施例5における光導波路保持部材を示す縦断面図
【図15】実施例5における光導波路保持部材及び光トランシーバの縦断面図
【図16】実施例5における光導波路保持部材、プリント基板の組み付け状態を示す斜視図
【図17】実施例5における光導波路保持部材の下面側に配されたレンズ部の構成を示す斜視図
【図18】実施例5におけるプリント基板の上面に実装された光電変換素子を示す斜視図
【図19】実施例5における光導波路保持部材の製造工程説明図
【図20】実施例5における光導波路保持部材の要部における製造工程説明図(1)
【図21】実施例5における光導波路保持部材の要部における製造工程説明図(2)
【図22】実施例5における光導波路保持部材の別の取り付け方法説明図
【図23】実施例6における光導波路保持部材を示す縦断面図
【符号の説明】
【0123】
10,10A,10B,10C 光トランシーバ
20 プリント基板
22 接着剤
30 光導波路保持部材
40,40A,140 外側カバー部材
41 背面
41a 第1の開口
44a スリット
32 入射部
34 光導波路
34a コア部
36 レンズ部
60 凹部
70 光電変換素子
72 受発光部
80 凹部
90,190 内側カバー部材
92 水平延在部
92a 第2の開口
100,120 固定用端部
110 半田
123,126 貫通孔
124 導体パターン
200,210 逃げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバからの光信号が入射される入射部と、該入射部に入射された前記光信号をプリント基板に実装された光電変換素子に導くように曲面形状に形成された光導波路と、前記光導波路を通過した光信号を前記光電変換素子の受発光部に出射するレンズ部と、前記入射部と、前記光導波路と、前記レンズ部における各々を固定するための筐体部と、を有する光導波路保持部材において、
前記入射部、前記導波路及び前記レンズ部は、樹脂材料により形成されており、前記筐体部は、金属材料または、セラミックス材料により形成されていることを特徴とする光導波路保持部材。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路保持部材であって、
前記筐体部を形成する金属材料または、セラミックス材料の線膨張係数は、前記樹脂材料の線膨張係数よりも低い値であることを特徴とする光導波路保持部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光導波路保持部材であって、
前記筐体部は、プレス加工、鋳造又は切削加工により形成されたものであることを特徴とする光導波路保持部材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光導波路保持部材であって、
前記入射部、前記導波路及び前記レンズ部は、形成されている前記筐体部において、インサート成形することにより形成したものであることを特徴とする光導波路保持部材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光導波路保持部材であって、
前記筐体部は、ステンレス材により形成されていることを特徴とする光導波路保持部材。
【請求項6】
光ファイバからの光信号が入射される入射部と、該入射部に入射された前記光信号をプリント基板に実装された光電変換素子に導くように曲面形状に形成された光導波路と、前記光導波路を通過した光信号を前記光電変換素子の受発光部に出射するレンズ部と、前記入射部と、前記光導波路と、前記レンズ部における各々を固定するための筐体部と、を有する光導波路保持部材において、
前記入射部、前記導波路及び前記レンズ部は、樹脂材料により形成されており、前記筐体部は、前記樹脂材料とは異なる熱可塑性樹脂材料により形成されていることを特徴とする光導波路保持部材。
【請求項7】
請求項6に記載の光導波路保持部材であって、
前記筐体部を形成する熱可塑性樹脂材料の線膨張係数は、前記樹脂材料の線膨張係数よりも低い値であることを特徴とする光導波路保持部材。
【請求項8】
請求項6または7に記載の光導波路保持部材であって、
前記筐体部は、射出成形により形成したものであることを特徴とする光導波路保持部材。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかに記載の光導波路保持部材であって、
前記入射部、前記導波路及び前記レンズ部は、形成されている前記筐体部において、樹脂材料を二重成形又は二色成形することにより形成したものであることを特徴とする光導波路保持部材。
【請求項10】
光ファイバからの光信号が入射される入射部と、該入射部に入射された前記光信号をプリント基板に実装された光電変換素子に導くように曲面形状に形成された光導波路と、前記光導波路を通過した光信号を前記光電変換素子の受発光部に出射するレンズ部と、前記入射部と、前記光導波路と、前記レンズ部における各々を固定するための筐体部と、を有する光導波路保持部材において、
前記入射部、前記導波路及び前記レンズ部は、樹脂材料により形成されており、前記筐体部は、前記樹脂材料とは異なる熱硬化性樹脂材料により形成されていることを特徴とする光導波路保持部材。
【請求項11】
請求項10に記載の光導波路保持部材であって、
前記筐体部を形成する熱硬化性樹脂材料の線膨張係数は、前記樹脂材料の線膨張係数よりも低い値であることを特徴とする光導波路保持部材。
【請求項12】
請求項10または11に記載の光導波路保持部材であって、
前記筐体部は、注型成形又はトランスファー成形により形成したものであることを特徴とする光導波路保持部材。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれかに記載の光導波路保持部材であって、
前記入射部、前記導波路及び前記レンズ部は、形成されている前記筐体部において、樹脂材料を二重成形又は二色成形することにより形成したものであることを特徴とする光導波路保持部材。
【請求項14】
請求項1乃至5のいずれかに記載の光導波路保持部材を、接着剤、プレスフィット又はハンダ付けによりプリント基板に固定したものであることを特徴とする光トランシーバ。
【請求項15】
請求項6乃至13のいずれかに記載の光導波路保持部材を、接着剤によりプリント基板に固定したものであることを特徴とする光トランシーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−226384(P2012−226384A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−181842(P2012−181842)
【出願日】平成24年8月20日(2012.8.20)
【分割の表示】特願2008−163829(P2008−163829)の分割
【原出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】