光情報記録再生装置用対物レンズ
【課題】 複数の光束を使用して各光ディスクに対する情報の記録等を行った時でも、各光ディスクの記録面上で球面収差を抑えるとともに、トラッキング時にも収差の発生を抑える対物レンズを提供すること。
【解決手段】 対物レンズは、各光束が平行光束であり、少なくとも一方の面に複数の同心円状の屈折面で構成された位相シフト構造を有し、該構造は、第三の光ディスク使用時に第三の光束の収束に寄与する第一領域を有し、該領域における輪帯間の段差は、第一の光束に対して絶対値の異なる少なくとも二種類の光路長変化量を付与し、その各絶対値は、第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍、および(iB+ΔB)倍で表され、各光路長変化量のうち少なくとも一つは、iAがiA=2k+1で表され、かつ第三の波長の光束における最大回折次数が(k+1)次であり、ΔAは、以下の条件(1)、
0.000≦ΔA≦0.384・・・(1)
を満たす構成にした。
【解決手段】 対物レンズは、各光束が平行光束であり、少なくとも一方の面に複数の同心円状の屈折面で構成された位相シフト構造を有し、該構造は、第三の光ディスク使用時に第三の光束の収束に寄与する第一領域を有し、該領域における輪帯間の段差は、第一の光束に対して絶対値の異なる少なくとも二種類の光路長変化量を付与し、その各絶対値は、第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍、および(iB+ΔB)倍で表され、各光路長変化量のうち少なくとも一つは、iAがiA=2k+1で表され、かつ第三の波長の光束における最大回折次数が(k+1)次であり、ΔAは、以下の条件(1)、
0.000≦ΔA≦0.384・・・(1)
を満たす構成にした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、記録密度や保護層の厚みが異なる複数種類の光ディスクに対する情報の記録または再生を行う光情報記録再生装置といった波長が各々異なる複数種類の光を使用する装置に搭載される対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクには、従来、CDやDVDといった記録密度や保護層の厚みが異なる複数の規格が存在する。また近年、情報記録のさらなる高容量化を実現すべく、DVDよりも一層記録密度の高い新規格の光ディスクが実用化されつつある。該新規格の光ディスクとしては、例えばHD DVDやBD(Blu-ray Disc)等がある。このような新規格の光ディスクは、DVDの保護層厚と同等もしくはそれ以下の保護層厚を有する。このように規格の異なる複数の光ディスクが存在するためユーザの利便性に鑑み、近年、光情報記録再生装置、より厳密には装置内に設けられる対物光学系は、上記の三種類の光ディスクに対して互換性を持つことが要求される。なお、本文において、光情報記録再生装置と記した場合には、情報の記録専用装置、情報の再生専用装置、情報の記録および再生兼用装置、の全てを含むものとする。また、互換性を持つとは、使用する光ディスクを切り替えたとしても部品を交換したりすることなく情報の記録または再生が保証されることをいう。
【0003】
装置が規格の異なる複数の光ディスクに対して互換性を持つためには、まず、規格が異なる光ディスクの切り替え時に、保護層の厚みによって変化してしまう球面収差を補正しつつ、情報の記録または再生に使用する光の開口数(NA)を変化させて記録密度の違いに対応したビームスポットが得られるようにする必要がある。一般にスポット径は波長が短いほど小さい。そこで従来、記録密度に応じて、光情報記録再生装置では、複数の波長のレーザー光が使用される。例えば、DVD使用時には、CD使用時に用いられる約790nmより短い約660nmの波長のレーザー光が用いられる。また、該新規格の光ディスク使用時には、その記録密度の高さからDVDに対する情報の記録または再生時に用いられる波長よりもさらに短波長な光(例えば408nmあたりのいわゆる青色レーザー光)が用いられる。
【0004】
次いで、各々の光ディスクに対して、良好な状態で各光ディスクの記録面位置に収束させる一つの手段として、対物光学系を構成する1または複数の光学素子(例えば対物レンズ)における任意の一面に輪帯状の微細な段差を有する輪帯構造を設け、該輪帯構造の作用によって、異なる波長の光を各々対応する光ディスクの記録面において良好に収束させる技術が実用化されている。
【0005】
また、上記光学素子は、光源の個体差や温度変化等の環境変化によって、使用するレーザー光の波長が設計波長からずれることにより生じる球面収差も補正するような作用を持つことが好ましい。なお設計波長とは、各光ディスクに対する情報の記録または再生に最適とされる各レーザー光の波長を意味する。
【0006】
上記のように、例えば、CD、DVD、HD DVDのように三種類の光ディスクに対して互換性を持つ対物レンズとしては、例えば以下の特許文献1に提案される。
【0007】
【特許文献1】特開2004−362626号公報
【0008】
特許文献1に記載の対物レンズは、記録密度の異なる3種類の光ディスクに対して互換性を持たせるために、波長の異なる3種類の光束のうち、2つの波長の光束に対しては輪帯構造により球面収差を補正し、残りの1つの波長に対しては対物レンズに入射する光束の発散度をコントロールすることにより球面収差を補正している。
【0009】
ここで、情報の記録または再生を行う際に高いNAが要求される、HD DVDやDVDを使用する時は、収差に対する許容度が低いとされる。そのため、上記特許文献1では、上記の比較的記録密度が高いHD DVDやDVDに対する情報の記録または再生時には、対物レンズに略平行光束が入射するような構成にしている。そして、情報の記録または再生を行う際にそれほど高いNAを要求されないCDを使用する時は、対物レンズに発散光が入射するような構成にしている。これにより、記録密度の異なる3種類の光ディスクに対して互換性を持つ対物レンズを提供している。
【0010】
しかし、対物レンズに発散光が入射する場合、トラッキング時にコマ収差等の収差が発生してしまう。そのため、たとえ収差に対する許容度が低いCD等の光ディスク使用時であっても、これらの収差を良好に抑えることができる対物レンズが要望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の事情に鑑み、波長が異なる複数種類の光束を使用して規格の異なる三種類の光ディスクのいずれに対する情報の記録または再生を行った時であっても、各光ディスクの記録面上において球面収差を抑えて良好なスポットを形成するとともに、トラッキング時にも収差の発生を抑えることができる、光情報記録再生装置用の対物レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の光情報記録再生装置用対物レンズは、記録密度の異なる複数の光ディスクに対して第一から第三の波長を持つ三種類の略平行光束を使い分けることにより、各光ディスクに対する情報の記録または再生を行う光情報記録再生装置に用いられる対物レンズであって、第一から第三の波長のうち最も波長が短い第一の波長をλ1、前記第一の波長より長い第二の波長をλ2、最も長い第三の波長をλ3とすると、
λ1<λ2<λ3
1.9<λ3/λ1<2.1
であり、
第一の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第一の光ディスクの保護層厚をt1、第二の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第二の光ディスクの保護層厚をt2、第三の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第三の光ディスクの保護層厚をt3、とすると、
t1≦t2<t3
であり、
第一の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA1、第二の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA2、第三の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA3、とすると、
NA1>NA3かつNA2>NA3
であり、少なくとも一方の面に、複数の同心円状の屈折面で構成された位相シフト構造を有しており、位相シフト構造は、第三の波長の光束を第三の光ディスクの記録面上に収束する第一領域を有し、第一領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において、第一の波長の光束に対して絶対値が異なる少なくとも二種類の光路長変化量を付与する段差を有し、当該少なくとも二種類の光路長変化量の各絶対値は、第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍、および(iB+ΔB)倍(但し、iA、iBは自然数、かつiA≠iB、−0.5<ΔA<0.5、−0.5<ΔB<0.5)で表され、さらに、iAがiA=2k+1(但し、kは自然数)で表され、かつ前記第三の波長の光束において回折効率が最大となる回折次数が(k+1)次であり、ΔAは以下の条件(1)、
0.000≦ΔA≦0.384・・・(1)
を満たすことを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載の光情報記録再生装置用対物レンズによれば、上記第一の領域の段差で付与する光路長変化量のうち、少なくとも一種類の光路長変化量iAを奇数値であるように構成することにより、規格の異なる三種類の光ディスクに対する高い互換性を持たせることができる。しかも各光ディスクのいずれを使用する場合でも略平行光束を使用するため、トラッキングシフト時に収差の発生を抑えることができ、情報の記録または再生に好適なスポットを形成することができる。
【0014】
さらにiAは、以下の条件(2)より好ましくは条件(3)を満たすことが望ましい。
0.020≦ΔA≦0.324・・・(2)(請求項2)
0.020≦ΔA≦0.258・・・(3)(請求項3)
【0015】
さらにiAは、以下の条件(4)を満たすことが望ましい。
0.020≦ΔA≦0.178・・・(4)(請求項4)
これにより、記録密度の最も高い第一の光ディスクに対する情報の記録または再生時において第一の波長の光束の利用効率を非常に高く設定することができる。
【0016】
また、請求項5に記載の光情報記録再生装置用対物レンズは、記録密度の異なる複数の光ディスクに対して第一から第三の波長を持つ三種類の略平行光束を使い分けることにより、各光ディスクに対する情報の記録または再生を行う光情報記録再生装置に用いられる対物レンズであって、第一から第三の波長のうち最も短い第一の波長をλ1、前記第一の波長より長い第二の波長λ2、最も長い第三の波長をλ3とすると、
λ1<λ2<λ3
1.9<λ3/λ1<2.1
であり、
第一の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第一の光ディスクの保護層厚をt1、第二の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第二の光ディスクの保護層厚をt2、第三の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第三の光ディスクの保護層厚をt3、とすると、
t1≦t2<t3
であり、
第一の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA1、第二の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA2、第三の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA3、とすると、
NA1>NA3かつNA2>NA3
であり、
少なくとも一方の面に、複数の同心円状の屈折面で構成された位相シフト構造を有しており、位相シフト構造は、第三の波長の光束を第三の光ディスクの記録面上に収束する第一領域を有し、該第一領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において第一の波長の光束に対して絶対値が異なる少なくとも二種類の光路長変化量を付与する段差を有し、少なくとも二種類の光路長変化量は、第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍、および(iB+ΔB)(但し、iA、iBは自然数、かつ、iA≠iB、−0.5<ΔA<0.5、−0.5<ΔB<0.5)で表され、iAがiA=2k+1(但し、kは自然数)で表され、かつ前記第三の波長の光束において回折効率が最大となる回折次数がk次であり、ΔAは以下の条件(5)、
−0.384≦ΔA≦−0.070・・・(5)
を満たすことを特徴とする。
【0017】
さらにΔAは、以下の条件(6)より好ましくは条件(7)を満たすことが望ましい。
−0.324≦ΔA≦−0.070・・・(6)(請求項6)
−0.258≦ΔA≦−0.070・・・(7)(請求項7)
【0018】
さらにΔAは、以下の条件(8)を満たすことが望ましい。
−0.178≦ΔA≦−0.070・・・(8)(請求項8)
【0019】
例えば、第一領域の段差が付与する光路長付加量の種類が二種類である場合、各段差のiAとiBの組み合わせは、3と2(請求項9)あるいは5と2(請求項10)が好適である。また、第一領域の段差が付与する光路長付加量の種類が三種類である場合、各段差のiA、iB、iCの組み合わせは、3、2、8(請求項11)、または、3、2、10(請求項12)、または、5、2、8(請求項13)、または、5、2、10(請求項14)が好適である。
【0020】
また、本発明に係る光情報記録再生装置用対物レンズは単レンズとして構成される(請求項15)。
【0021】
請求項16に記載の光情報記録再生装置用対物レンズによれば、位相シフト構造は、第一領域の外側に、第一の波長の光束および第二の波長の光束をそれぞれ第一の光ディスクおよび第二の光ディスクの記録面上に収束し、かつ第三の波長の光束の収束には寄与しない第二領域を有し、第二領域における互いに隣り合う屈折面の境界において、第一の光束に対して少なくとも一種類の光路長変化量を付与する段差を有し、一種類の光路長変化量の絶対値が、第一領域における少なくとも一種類の光路長変化量の絶対値とは異なる。
【0022】
また、請求項17に記載の光情報記録再生装置用対物レンズによれば、以下の条件(9)が成立する場合、上記位相シフト構造には、第二領域の外側に、第二の波長の光束のみ収束し、第一および第三の波長の光束の収束には寄与しない第三領域を設けることが望ましい。該第三領域においては、互いに隣り合う屈折面の境界において、第二の光束に対して、少なくとも一種類の光路長変化量を有する段差を有し、該光路長変化量の絶対値が、第二領域における光路長変化量の絶対値と異なる。
f1×NA1<f2×NA2・・・(9)
但し、f1は、第一の光ディスク使用時における焦点距離を、
f2は、第二の光ディスク使用時における焦点距離を、それぞれ表す。
【0023】
また、請求項18に記載の光情報記録再生装置用対物レンズによれば、以下の条件(10)が成立する場合、上記位相シフト構造には、第二領域の外側に、第一の波長の光束のみ収束し、第二および第三の波長の光束の収束には寄与しない第三領域を設けることが望ましい。該第三領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において、第一の光束に対して、少なくとも一種類の光路長変化量を有する段差を有し、該光路長変化量の絶対値が、第二領域における光路長変化量の絶対値と異なる。
f1×NA1>f2×NA2・・・(10)
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、少なくとも一面に所定の位相シフト構造を形成することにより、各光ディスクの記録面上で発生する収差を良好に抑えている。また本発明によれば、どの光ディスクを使用する場合にも略平行光束が用いられる。これにより、既存の光ディスクおよび新規格の光ディスクのいずれを使用した場合であっても、球面収差のみならずトラッキングシフト時に発生する収差を良好に抑えることができる。すなわち、記録密度の異なる三種類の光ディスクの記録面上において良好なスポットを形成可能な光情報記録再生用対物レンズおよび該対物レンズを搭載する光情報記録再生装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態の対物レンズについて説明する。本実施形態の対物レンズは、光情報記録再生装置に搭載され、保護層厚、記録密度等といった規格がそれぞれ異なる三種類の光ディスクについて互換性を有している。
【0026】
以下では説明の便宜上、上記三種類の光ディスクのうち、記録密度が最も高い光ディスク(例えばHD DVDやBD等の新規格の光ディスク)を第一の光ディスクD1、第一の光ディスクD1に比べて相対的に記録密度が低い(例えばDVDやDVD−R等)を第二の光ディスクD2、記録密度が最も低い光ディスク(例えばCDやCD−R等)を第三の光ディスクD3、と記す。
【0027】
各光ディスクD1〜D3の保護層厚をそれぞれt1〜t3とすると、各保護層厚には、以下のような関係がある。
t1≦t2<t3
【0028】
また、各光ディスクD1〜D3のそれぞれに対して情報の記録または再生を行う場合、記録密度の違いに対応したビームスポットが得られるように、必要とされるNAの値を変化させる必要がある。ここで、各光ディスクD1〜D3に対する情報の記録または再生時に必要とされる最適な設計開口数を、それぞれNA1、NA2、NA3とすると、各NAには以下のような関係がある。
NA1>NA3かつNA2>NA3
【0029】
つまり、記録密度の高い第一の光ディスクD1および第二の光ディスクD2に対する情報の記録または再生時には、より小径なスポットの形成が要求されるため、必要なNAが高くなる。これに対し、最も記録密度の低い第三の光ディスクD3に対する情報の記録または再生時には、必要とされるNAは比較的小さい。なお、どの光ディスクも、情報の記録または再生時には、図示しないターンテーブル上に載置され回転駆動される。
【0030】
上記のように記録密度が異なる各光ディスクD1〜D3を使用する場合、各記録密度に対応したビームスポットが得られるように、光情報記録再生装置内において、それぞれ異なる波長のレーザー光が用いられる。具体的には、第一の光ディスクD1に対して情報の記録または再生を行う際には、最も小径のビームスポットを第一の光ディスクD1の記録面上において形成するために、最も短波長(第一の波長)であるレーザー光(以下、第一のレーザー光という)を光源から照射する。また、第三の光ディスクD3に対して情報の記録または再生を行う際には、最も大きな径のビームスポットを第三の光ディスクD3の記録面上において形成するために、最も長波長(第三の波長)であるレーザー光(以下、第三のレーザー光という)を光源から照射する。そして第二の光ディスクD2に対して情報の記録または再生を行う際には、第二の光ディスクD2の記録面上において比較的小径のスポットを形成するために、第一のレーザー光よりは長波長であってかつ第三のレーザー光よりは短波長(第二の波長)であるレーザー光(以下、第二のレーザー光という)を光源から照射する。なお、第一の波長をλ1、第三の波長をλ3とすると、両者には、
1.9<λ3/λ1<2.1
という関係がある。
【0031】
図1は、本実施形態の対物レンズ10を有する光情報記録再生装置100の概略構成を表す模式図である。光情報記録再生装置100は、第一のレーザー光を照射する光源1A、第二のレーザー光を照射する光源2A、第三のレーザー光を照射する光源3A、カップリングレンズ1B、2B、3B、ビームスプリッタ41、42、ハーフミラー43、受光部44を有する。なお、光情報記録再生装置100では、上記の各光ディスク使用時に必要とされるNAが各々異なることに対応する必要がある。そのため、光情報記録再生装置100では、図示しないが、光源3A〜対物レンズ10間に第三のレーザー光の光束径を規定する開口制限素子が配設されていてもよい。
【0032】
図1に示すように、各光源1A〜3Aから照射された第一〜第三の各レーザー光束は、各カップリングレンズ1B〜3Bにより平行光束に変換される。つまり本実施形態では、各カップリングレンズ1B〜3Bは、コリメートレンズとして機能する。各カップリングレンズ1B〜3Bを透過した各レーザー光束は、ビームスプリッタ41、42によって共通の光路に導かれ、対物レンズ10に入射する。対物レンズ10を透過した各光束は、情報の記録または再生の対象となる各光ディスクD1〜D3の記録面近傍に収束する。記録面で反射した各レーザー光は、ハーフミラー43で偏向され、受光部44により検出される。
【0033】
上記のように、対物レンズ10に入射する各レーザー光を平行光束にすることにより、対物レンズ10をトラッキング時におけるコマ収差等の収差の発生を抑えることができる。
【0034】
なお、厳密には、各光源1A〜3Aの個体差や設置位置、さらには光情報記録再生装置100のおかれた環境の変化等の理由によって、各カップリングレンズ1B〜3Bから射出される光束は必ずしも平行光束にはならない場合もある。しかし、上記の理由による光束の発散角は、非常に小さいため、トラッキングシフト時に生じる収差も小さい。よって、実使用上問題ないと言える。
【0035】
図2(A)〜図2(C)は、対物レンズ10および各光ディスクD1〜D3を各光ディスク使用時における光路ごとに分けて示した図である。図2(A)〜(C)において、光情報記録再生装置100の基準軸AXは、図中一点鎖線で表示されている。図2(A)〜(C)に示す状態では、対物レンズの光軸は光学系の基準軸AXと一致しているが、トラッキング動作などにより対物レンズの光軸が光学系の基準軸AXから外れる状態もある。
【0036】
対物レンズ10は、光源側から順に第一面11と第二面12を有する。対物レンズ10は、図2(A)〜(C)に示すように各面11、12とも非球面である両凸のプラスチック製単レンズである。非球面の形状は光軸からの高さがhとなる非球面上の座標点の該非球面の光軸上での接平面からの距離(サグ量)をX(h)、非球面の光軸上での曲率(1/r)をC、円錐係数をK、四次、六次、八次、十次、十二次…の非球面係数をA2i(但し、iは1以上の整数)として、以下の式で表される。
【数1】
【0037】
また各光ディスクD1〜D3は、それぞれ保護層21、記録面22を有する。なお、実際の光ディスクD1〜D3において、記録面22は、保護層21と図示しないレーベル層によって挟持されている。
【0038】
光情報記録再生装置100のように、各光ディスクD1〜D3使用時には異なる波長のレーザー光を用いる場合、各光ディスク使用時によって、対物レンズの屈折率の変化や、各光ディスクD1〜D3の保護層21の厚さの違いに起因して、球面収差が変化する。
【0039】
従って、三種類の光ディスクD1〜D3をそれぞれ使用する時に発生する球面収差を補正して各光ディスクD1〜D3に対する互換性を持たせるために、本実施形態の対物レンズ10には、三種類の光束に影響を与える回折作用を持つ位相シフト構造が第一面11に設けられている。第一面11に設けられた位相シフト構造は、光軸AXを中心とした同心円状の複数の屈折面と各屈折面間に形成される複数の微小な段差からなる。
【0040】
本実施形態の位相シフト構造は、第一から第三の各レーザー光で使用波長の違いによる球面収差をそれぞれ略0になるようにコントロールする回折作用を持つ。該回折作用は、対物レンズ10を透過した各レーザー光が、対応する光ディスクの記録面22上において、球面収差が良好に抑えられ、情報の記録または再生に好適なスポットを形成できるような回折作用、つまり三波長互換作用といえる。
【0041】
以上のような位相シフト構造を持つ対物レンズ10は、例えば以下のように設計される。まず、第一から第三の各レーザー光束における回折効率が最大となる回折次数の比率が互いに異なる少なくとも二種類の光路差関数、例えば第一の光路差関数と第二の光路差関数を算出する。
【0042】
なお、光路差関数は、対物レンズ10の回折レンズとしての機能を光軸からの高さhにおける光路長付加量の形で表現される。光路差関数をφ(h)とすると、該φ(h)は、以下の式によって表される。
【0043】
【数2】
【0044】
光路差関数φ(h)において、P2i(但し、iは1以上の整数)はそれぞれ二次、四次、六次、…の係数である。mは使用するレーザー光の回折効率が最大となる回折次数を、λは使用するレーザー光の設計波長を、それぞれ表す。
【0045】
次いで、算出された各光路差関数を重ね合わせることにより、上記位相シフト構造の形状を求める。なお、ここで、比率が異なる、とは、使用する光束のうち少なくとも一つの光束における回折効率が最大となる回折次数が異なっていれば足りる。従って、例えば、使用する光束が三種類ある場合に、第一の光路差関数における比率が3:2:2、第二の光路差関数における比率が3:2:1であれば比率が異なるといえる。また、各光路差関数における次数の組み合わせは異なるものの回折次数の比率が同一であるケース、例えば第一の光路差関数における比率が2:1:1、第二の光路差関数における比率が4:2:2である場合、各光路差関数により付与される回折作用は同一である。従って、本発明においては、次数の組み合わせが異なることではなく、回折次数の比率が異なることを各光路差関数を定める要件としている。
【0046】
上記のように、互いに異なる二つの光路差関数に基づき求められた位相シフト構造に形成される段差は、第一のレーザー光に対して光路長変化量の絶対値が異なる二種類の光路長変化をもたらす。なお、光路長変化量の絶対値が異なる、と記載したのは、対物レンズ10から各光ディスクに向かう方向の光路長変化量を正、逆方向を負と定義した場合、正負の符号の不一致を光路長変化量が異なるとは言わないことを明確にしたものである。ここで、二種類の光路長変化量(単位:λ)は、第一のレーザー光一波長分の(iA+ΔA)倍、および(iB+ΔB)倍として定義される。但し、iA、iBは互いに異なる自然数であり、特にiAは2k+1(kは自然数)で表される。なおΔAとΔBはそれぞれ、−0.5<ΔA<0.5、−0.5<ΔB<0.5の範囲で規定される。またΔAは、第三のレーザー光において回折効率が最も高くなる回折次数を(k+1)次に設定すると、以下の条件(1)を満たし、該回折次数をk次に設定すると、以下の条件(5)を満たす。
0.000≦ΔA≦0.384・・・(1)
−0.384≦ΔA≦−0.070・・・(5)
【0047】
条件(1)の上限を超えるあるいは条件(5)の下限を越えると、第三のレーザー光の光利用効率をさらに高くすることができるものの、特に第一のレーザー光の光利用効率が低くなるため好ましくない。また、条件(1)の下限を越えるあるいは条件(5)の上限を超えると、特に第三のレーザー光の光利用効率が低下するため好ましくない。
【0048】
図3は、第一面11に設けられた位相シフト構造の拡大図である。図3において、jは、位相シフト構造における光軸AXからj番目の屈折面を示す。また、二点鎖線で示すhjは第j屈折面と第(j−1)屈折面間に形成された段差sの位置、換言すれば第j屈折面と第(j−1)屈折面の境界位置を示す。ここで、光路長変化量とは、図3に示すように、第(j−1)屈折面の形状を光軸から離れる方向に延長させた仮想上の延長面(A−A'面)の境界位置hjで屈折した場合に得られる像面までで評価した時の光路長と、第j屈折面の形状を光軸に向かう方向に延長させた仮想上の延長面(B−B'面)の境界位置hjで屈折した場合に得られる像面までで評価した時の光路長の差を意味する。
【0049】
なお、図3に示すように、実際の位相シフト構造は、形成時に各屈折面の境界位置近傍(エッジ)がだれて丸みを帯びることがある。しかし、このようなエッジの形状の変化は、実使用上何ら問題はない。
【0050】
図4〜図7は、iA、iB、…(便宜上、まとめてiと記す)とΔA、ΔB、…(便宜上、まとめてΔと記す)を様々に設定した場合、対物レンズ10から射出される第一から第三の各レーザー光の光利用効率について示すグラフである。図4は、i=2つまり第一のレーザー光の二次回折光、第二、第三の各レーザー光の一次回折光の光利用効率を示すグラフである。図5は、i=3つまり第一のレーザー光の三次回折光、第二レーザー光の二次回折光、第三レーザー光の二次回折光および一次回折光の光利用効率を示すグラフである。図6は、i=5つまり第一のレーザー光の五次回折光、第二レーザー光の三次回折光、第三レーザー光の三次回折光および二次回折光の光利用効率を示すグラフである。図7がi=10つまり第一のレーザー光の十次回折光、第二のレーザー光の六次回折光、第三のレーザー光の五次回折光の光利用効率を示すグラフである。
【0051】
なお、各グラフにおいて、縦軸が光利用効率を、横軸がΔを、それぞれ示す。また、各グラフにおいて、実線が設計波長を408nmと想定した第一のレーザー光、破線が設計波長を660nmと想定した第二のレーザー光、一点鎖線(および二点鎖線)が設計波長を790nmと想定した第三のレーザー光を、それぞれ示す。
【0052】
図4〜図7に示すように、Δの値が0に近づけば近づくほど、第一のレーザー光のi次回折光の光利用効率がより高くなる。Δを0に設定すれば、第一のレーザー光のi次回折光の光利用効率は略100%になる。
【0053】
これに対し、他のレーザー光は、必ずしもΔを0に近づければ高い光利用効率が得られるとは限らない。一般に第一の光ディスクD1に対する情報の記録または再生時には、他の光ディスク使用時に比べ、より多くの光量が要求される。そのため、第一のレーザー光の光利用効率を高く維持しつつも、第二および第三のレーザー光においても、できるだけ高い光利用効率であることがより好ましい。
【0054】
よって、第三のレーザー光において回折効率が最も高くなる回折次数を(k+1)次に設定すると、ΔAは、少なくとも上記の条件(1)、さらには、以下の条件(2)〜(4)の少なくとも一つを満たすように設定される。
0.020≦ΔA≦0.324・・・(2)
0.020≦ΔA≦0.258・・・(3)
0.020≦ΔA≦0.178・・・(4)
【0055】
また、第三のレーザー光において回折効率が最も高くなる回折次数をk次に設定すると、ΔAは、少なくとも上記の条件(5)、さらには、以下の条件(6)〜(8)の少なくとも一つを満たすように設定される。
−0.324≦ΔA≦−0.070・・・(6)
−0.258≦ΔA≦−0.070・・・(7)
−0.178≦ΔA≦−0.070・・・(8)
【0056】
ΔAが上記の条件(1)を満たすことにより、図4〜図7に示すように、iの如何を問わず、第一のレーザー光の光利用効率が最低限約60%確保することができる。特に、図5や図6に示すようにiAがiA=2k+1で表されるように奇数値を採る場合、第三のレーザー光は、光利用効率が約40%の異なる回折次数光が2種類発生する。そこで、第三のレーザー光において回折効率が最も高くなる回折次数を(k+1)次に、ΔAを条件(1)の範囲内に、それぞれ設定することにより、第三のレーザー光の光利用効率を最低限約50%確保することができる。さらに、i=3に設定すれば、第二のレーザー光の光利用効率が略100%になっていることが分かる。
【0057】
ΔAが条件(2)を満たすことにより、図4〜図7に示すように、iの如何を問わず、第一のレーザー光の光利用効率を約70%確保することができる。
【0058】
ΔAが条件(3)を満たすことにより、図4〜図7に示すように、iの如何を問わず、第一のレーザー光の光利用効率を約80%確保することができる。
【0059】
ΔAが条件(4)を満たすことにより、図4〜図7に示すように、iの如何を問わず、第一のレーザー光の光利用効率を約90%確保することができる。
【0060】
また、iAがiA=2k+1で表される場合に、第三のレーザー光において回折効率が最も高くなる回折次数をk次に、ΔAを条件(5)の範囲内に、それぞれ設定することにより、第三のレーザー光の光利用効率を最低限約50%確保することができる。
【0061】
ΔAが条件(6)を満たすことにより、図4〜図7に示すように、iの如何を問わず、第一のレーザー光の光利用効率を約70%確保することができる。
【0062】
ΔAが条件(7)を満たすことにより、図4〜図7に示すように、iの如何を問わず、第一のレーザー光の光利用効率を約80%確保することができる。
【0063】
ΔAが条件(8)を満たすことにより、図4〜図7に示すように、iの如何を問わず、第一のレーザー光の光利用効率を約90%確保することができる。
【0064】
また、位相シフト構造に三波長互換作用を付与するため、二種類の光路長変化量のいずれか一方の光路長変化量iAを奇数値に設定する。これにより、第一のレーザー光の光利用効率を高く維持しつつも、第三のレーザー光使用時に発生する球面収差を良好に補正することができる。そして、他方の光路長変化量iBを偶数値にすることにより、特に第一のレーザー光と第三のレーザー光の光利用効率を共に高めることが可能になる。つまり、位相シフト構造には、三波長互換作用が付与される。詳しくは、対物レンズ10は、各光ディスクD1〜D3に対応する設計波長の平行光束が入射すると、各光ディスクD1〜D3の記録面22上において球面収差を抑えて情報の記録または再生に好適なビームスポットを形成することができる。
【0065】
上記の三波長互換作用は、第一の光路差関数と第二の光路差関数が相互に作用し合って得られるものであり、例えば、一方の光路差関数が特定の二種類のレーザー光に関する互換作用を与えるというものではない。
【0066】
なお、本実施形態の対物レンズ10には、第一のレーザー光に対する光路長変化量が上記二種類の光路長変化量の和または差として現れる段差(以下、便宜上、特殊段差という)が形成される場合もある。
【0067】
また、例えば第一の光ディスクD1使用時に用いられるレーザー光が、光源の個体差や経時変化等によって、該光ディスクD1に関する設計波長である第一の波長から微小に変化することが想定される。他の光ディスクD1〜D3使用時においても同様である。このように、使用するレーザー光の波長が設計波長からずれると球面収差が生じてしまう。
【0068】
そこで、本実施形態の対物レンズ10では、第一面11に設けられる位相シフト構造に、温度変化や個体差に起因して各光ディスク使用時に用いられる光束の波長が設計波長から微小にずれることによる球面収差を抑える回折作用も付与することができる。該回折作用は、対物レンズ10に入射する各レーザー光の波長が設計波長からずれた場合であっても、該波長ずれの影響を受けることなく、対応する光ディスクの記録面22上において情報の記録または再生に好適なスポットが形成されるような回折作用、つまり波長ずれ補償作用である。
【0069】
位相シフト構造に波長の微小にずれることによる球面収差を抑える回折作用も付与する場合、位相シフト構造の設計自由度をさらに高める必要がある。そのために、さらに上記の第一、第二の光路差関数に加えて、第三の光路差関数も算出し、三種類の光路差関数を重ね合わせることにより、三波長互換作用と波長ずれ補償作用を兼ね備える位相シフト構造の形状を求める。従って、形成される段差により第一のレーザー光に付与される光路長変化量は、三種類になる。なお、ここで、三波長互換作用と波長ずれ補償作用は、第一から第三の各光路差関数が互いに作用し合って得られるものであり、いずれかの光路差関数が特定の作用にのみ寄与するというものではない。
【0070】
三種類目の光路長変化量(単位:λ)は、第一のレーザー光一波長分の(iC+ΔC)倍、として定義される。但し、iCは、iA、iBとは異なる自然数である。またΔCは、−0.5<ΔC<0.5の範囲で規定される。
【0071】
以上説明した位相シフト構造は、必ずしも第一面11の全域に設ける必要はなく、光軸を含む最も内側の領域であってかつ第三のレーザー光の収束に寄与する領域、つまりいずれのレーザー光の収束にも寄与する領域(以下、第一領域という)に設けられていればよい。
【0072】
本実施形態の対物レンズ10は、情報の記録または再生に必要なNAを確保するための有効光束径の違いから、第一領域の外側に第二領域を、場合によっては第二領域の外側にさらに第三領域を設けている。
【0073】
第二領域の位相シフト構造は、一般に第三のレーザー光よりも有効光束径が大きいとされる第一および第二のレーザー光を、対応する光ディスクD1、D2の記録面22に良好に収束させるための二波長互換作用を持つ。また、第二領域の位相シフト構造は、必要に応じて第一のレーザー光と第二のレーザー光に対する波長ずれ補償作用も持つ。第二領域の位相シフト構造に該波長ずれ補償作用も付与する場合には、上記第一領域と同様に二種類の光路差関数を算出し重ね合わせることにより、位相シフト構造を形成する。
【0074】
第二領域の位相シフト構造は、第三のレーザー光の収束に寄与しないような段差を有する。つまり、第二領域の段差における光路長変化量のうち少なくとも一種類は、第一領域における少なくとも一種類の光路長変化量とは異なる。
【0075】
なお、二種類の光路差関数を用いて第二領域の位相シフト構造を形成した場合、該第二領域にも特殊段差が形成されることがある。
【0076】
第三領域は、対物レンズ10の第一面11における第一のレーザー光の入射光束径と、第二のレーザー光の有効光束径が異なる場合に設けられる。
【0077】
まず、第一の光ディスクD1使用時の焦点距離をf1、第二の光ディスクD2使用時の焦点距離をf2としたとき、以下の条件(9)、
f1×NA1<f2×NA2・・・(9)
が成立する場合、つまり、第二のレーザー光が入射する場合の対物レンズ10の入射面での有効光束径が、第一のレーザー光が入射する場合の対物レンズ10の入射面での有効光束径より大きい場合、第二のレーザー光が第二の光ディスクD2の記録面上において略無収差で良好に収束するような位相シフト構造を有する第三領域が第一面11に形成される。条件(9)が成立する場合に形成される第三領域は、第二領域とは異なり、第一のレーザー光の収束には寄与しない。つまり、条件(9)が成立するときに形成される第三領域は、第一のレーザー光に対する開口制限機能を有する。そのため、該位相シフト構造は、第二のレーザー光について互いに隣り合う屈折面の境界において付与される光路長変化量が、第二領域における第二のレーザー光についての光路長変化量とは異なるように設計される。該設計時には、第三領域は、第二のレーザー光に対する回折効率が最大となるようにブレーズ化される。
【0078】
また以下の条件(10)、
f1×NA1>f2×NA2・・・(10)
が成立する場合、つまり、第一のレーザー光が入射する場合の対物レンズ10の入射面での有効光束径が、第二のレーザー光が入射する場合の対物レンズ10の入射面での有効光束径より大きい場合、第一のレーザー光が第一の光ディスクD1の記録面上において略無収差で良好に収束するような位相シフト構造を有する第三領域が第一面11に形成される。条件(10)が成立する場合に形成される第三領域は、第二領域とは異なり、第二のレーザー光の収束には寄与しない。つまり、条件(10)が成立するときに形成される第三領域は、第二のレーザー光に対する開口制限機能を有する。そのため、該構造は、第一のレーザー光について互いに隣り合う屈折面の境界において付与される光路長変化量が、第二領域における第一のレーザー光についての光路長変化量とは異なるように設計される。該設計時には、第三領域は、第一のレーザー光に対する回折効率が最大となるようにブレーズ化される。
【0079】
以上説明した第一実施形態の設計方法により設計された対物レンズ10を対物光学系として用いた光情報記録再生装置100の具体的な実施例を6例(実施例1〜6)示す。実施例1〜5は、第三のレーザー光において回折効率が最も高くなる回折次数を(k+1)次に設定した構成例である。実施例6は、第三のレーザー光において回折効率が最も高くなる回折次数をk次に設定した構成例である。
【0080】
各実施例1〜6の対物レンズ10を搭載する光情報記録再生装置100は、図1、および図2(A)〜(C)に示される。なお、実施例1、実施例2、実施例4および実施例6に関しては、第三の光ディスクD3使用時は、情報の記録または再生に好適な開口数を得るために図示しない開口制限素子を用いて光束径を規定している。そのため、図2(A)〜(C)に示すように、第三の光ディスクD3使用時は、第一、第二の光ディスクD1、D2使用時に比べて有効光束径が小さくなる。
【0081】
各実施例のうち、三種類の光ディスクに対する互換性を有する光情報記録再生装置100の実施例において使用される光ディスクは、保護層厚0.6mmの最も記録密度の高い第一の光ディスクD1、保護層厚0.6mmであり第一の光ディスクD1よりは記録密度の低い第二の光ディスクD2、保護層厚1.2mmの最も記録密度の低い第三の光ディスクD3を想定する。
【実施例1】
【0082】
実施例1の対物レンズ10は、二種類の光路長変化量を与える位相シフト構造を第一面11に有している。実施例1の対物レンズ10の具体的な仕様は、表1に示されている。
【0083】
【表1】
【0084】
表1中、倍率の値が示すように、実施例1では、いずれの光ディスクD1〜D3使用時であっても、レーザー光は平行光束として対物レンズ10に入射する。表1に示す対物レンズ10を備える光情報記録再生装置100の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表2〜表4に示される。但し、表2〜表4では、説明の便宜上、光源と対物レンズの間に配設される部材に関する数値構成を省略している。以下に示す各実施例の具体的数値構成においても同様である。
【0085】
【表2】
【表3】
【表4】
【0086】
表2〜表4中、面番号0は光源1A〜3A、面番号1は対物レンズ10の第一面11、面番号2は対物レンズ10の第二面12、面番号3と4はそれぞれ各光ディスクD1〜D3における保護層21と記録面22、をそれぞれ表す。rはレンズ各面の曲率半径(単位:mm)、dは情報の記録または再生時におけるレンズ厚またはレンズ間隔(単位:mm)、n(Xnm)は波長Xnmでの屈折率である。後述する実施例2および実施例3における各表においても同様である。
【0087】
対物レンズ10の両面11、12(面番号1、2)は、非球面である。各面11、12の各非球面の形状を規定する円錐係数と非球面係数は、表5に示される。なお各表における表記Eは、10を基数、Eの右の数字を指数とする累乗を表している。
【0088】
【表5】
【0089】
また実施例1の対物レンズ10の第一面11に形成されることになる位相シフト構造を規定するための第一の光路差関数および第二の光路差関数における係数P2iは表6に示される。また、各レーザー光の回折効率が最大になる回折次数mは表7に示される。表7や図3〜6に示すように、iすなわち、第一のレーザー光の回折効率が最大になる回折次数と、他の各レーザー光の回折効率が最大になる回折次数は異なる。また、本実施例1および後に示す実施例2〜5において、第三のレーザー光において回折効率が最大になる回折次数mは(k+1)で表される。
【0090】
【表6】
【表7】
【0091】
実施例1の対物レンズ10の第一面11に形成される位相シフト構造は具体的には表8に示される。表8は、実施例1の対物レンズ10の第一面11に形成される各輪帯(上記の屈折面に相当)の範囲と、第一のレーザー光が各輪帯を透過することにより与えられる光路長変化量を示した表である。各輪帯の範囲は、光軸AXからの高さhmin〜hmaxで表している。
【0092】
【表8】
【0093】
表8に示すように、第一のレーザー光が各輪帯間の段差により付与される光路長変化量は、−3または−2波長分であることがわかる。つまり、iA=3、iB=2で、ΔA=ΔB=0である。なお、輪帯番号17、18の各輪帯間および輪帯番号24、25の各輪帯間に形成される段差は、光路長変化量が−5波長分、つまり二種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。
【0094】
図8(A)〜(C)は、実施例1の対物レンズ10を有する光情報記録再生装置100において、第一から第三の各レーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。図8(A)が第一のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図8(B)が第二のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図8(C)が第三のレーザー光使用時に発生する球面収差を、それぞれ表す。各収差図において、各レーザー光が設計波長であるときの球面収差を実線で示す。また各収差図では、各レーザー光の波長が該設計波長から+5nmずれたときの球面収差を破線で示している。以下の各実施例で示す収差図においても同様である。
【0095】
図8(A)〜(C)に示すように、実施例1の対物レンズ10を使用すると、各光ディスクD1〜D3のいずれに対する情報の記録または再生時であっても、対応する設計波長のレーザー光が球面収差を生じることなく各光ディスクの記録面22上に良好に収束することがわかる。さらに、該レーザー光が設計波長からずれたことによる球面収差の変化も実使用上支障がない程度に抑えていることが分かる。なお、該レーザー光が設計波長からずれたことによる収束位置の光軸方向のずれは図示しないアクチュエータ等を用いて対物レンズ10を光軸AX方向に駆動することにより補正可能である。このアクチュエータ等を用いた補正は以下の各実施例においても同様に適用される。
【実施例2】
【0096】
実施例2の対物レンズ10は、三種類の光路長変化量を与える位相シフト構造を第一面11に有している。実施例2の対物レンズ10の具体的な仕様は、表9に示されている。
【0097】
【表9】
【0098】
表9中、倍率の値が示すように、実施例2でも、いずれの光ディスクD1〜D3使用時における各レーザー光は平行光束として対物レンズ10に入射する。表9に示す対物レンズ10を備える光情報記録再生装置100の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表10〜表12に示される。
【0099】
【表10】
【表11】
【表12】
【0100】
対物レンズ10の両面11、12(面番号1、2)は、実施例1と同様に非球面である。各面11、12の各非球面の形状を規定する円錐係数と非球面係数は、表13に示される。
【0101】
【表13】
【0102】
また実施例2の対物レンズ10の第一面11に形成されることになる位相シフト構造を規定するための第一から第三の光路差関数における係数P2iは表14に示される。また、各レーザー光の回折効率が最大になる回折次数mは表15に示される。
【0103】
【表14】
【表15】
【0104】
実施例2の対物レンズ10の第一面11に形成される位相シフト構造は具体的には表16に示される。表16は、実施例2の対物レンズ10の第一面11に形成される各輪帯の範囲と、第一のレーザー光が各輪帯間の段差を透過することにより与えられる光路長変化量を示した表である。
【0105】
【表16】
【0106】
表16に示すように、第一のレーザー光が各輪帯間の段差により付与される光路長変化量は、−3、−2または10波長分であることがわかる。つまり、iA=3、iB=2、iC=10で、ΔA=ΔB=Δc=0である。なお、輪帯番号22、23の各輪帯間、輪帯番号26、27の各輪帯間、輪帯番号28、29の各輪帯間、輪帯番号31、32の各輪帯間それぞれに形成される各段差は、三種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。
【0107】
図9(A)〜(C)は、実施例2の対物レンズ10を有する光情報記録再生装置100において、第一から第三の各レーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。図9(A)が第一のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図9(B)が第二のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図9(C)が第三のレーザー光使用時に発生する球面収差を、それぞれ表す。
【0108】
図9(A)〜(C)に示すように、実施例2の対物レンズ10を使用すると、各光ディスクD1〜D3のいずれに対する情報の記録または再生時であっても、対応する設計波長のレーザー光が球面収差を生じることなく各光ディスクの記録面22上に良好に収束することがわかる。さらに、実施例2の対物レンズ10は、三種類の光路長変化量を付与するような段差を持つ位相シフト構造が形成されている。つまり、実施例2の対物レンズ10に形成された位相シフト構造は、三波長互換作用と波長ずれ補償作用を併せ持つ。従って、図9(A)〜(C)に示すように、第一から第三の各レーザー光が設計波長からずれた場合であっても、球面収差の変化が極めて良好に抑えられ、常に球面収差が補正された状態にあることが分かる。
【実施例3】
【0109】
実施例3の対物レンズ10の対物レンズ10の具体的な仕様は、表17に示されている。
【0110】
【表17】
【0111】
表17中、倍率の値が示すように、実施例3でも、いずれの光ディスクD1〜D3使用時における各レーザー光は平行光束として対物レンズ10に入射する。表17に示す対物レンズ10を備える光情報記録再生装置100の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表18〜表20に示される。
【0112】
【表18】
【表19】
【表20】
【0113】
なお、表17によれば、f1×NA1が2.015、f2×NA2が2.079となる。つまり、実施例3の光ピックアップ装置100は、条件(10)を満たす。従って実施例3の対物レンズ10の第一面11は、二種類の光路長変化量を付与する位相シフト構造を持つ第一領域と、第三のレーザー光に対する開口制限機能を有する位相シフト構造を持つ第二領域と、第一のレーザー光に対する開口制限機能を有する位相シフト構造を持つ第三領域が形成されている。なお、第一面11における各領域の範囲を光軸AXからの高さhで表すと、
第一領域…h≦1.640、
第二領域…1.640<h≦2.015、
第三領域…2.015<h≦2.080、となる。
【0114】
なお、上記の通り、第三領域は、第二のレーザー光の収束にのみ寄与し、第一のレーザー光の収束には寄与しない。従って、実施例3では、第三領域における光路長変化量は、第二のレーザー光一波長分の(i+Δ)倍として表される。
【0115】
実施例3の対物レンズ10の両面11、12(面番号1、2)は、実施例1や2と同様に非球面である。各面11、12の各非球面の形状を規定する円錐係数と非球面係数は、表21に示される。なお、表21に示すように、第一面11の非球面形状は、第一から第三の各領域で異なる。
【0116】
【表21】
【0117】
また実施例3の対物レンズ10の第一面11に形成されることになる位相シフト構造を規定するための光路差関数における係数P2iは表22に示される。また、各レーザー光の回折効率が最大になる回折次数mは表23に示される。
【0118】
【表22】
【表23】
【0119】
表23に示すように、回折次数mは、使用するレーザー光ごと、および位相シフト構造が設けられる領域ごとに異なる値が設定されている。詳しくは、第一領域は、回折効率が最大となる回折次数が異なるものの、第一から第三の各レーザー光の収束に寄与するような位相シフト構造になっている。第二領域は、第一のレーザー光および第二のレーザー光の収束に寄与するような位相シフト構造になっている。第三領域は、第二のレーザー光の収束にのみ寄与するような位相シフト構造になっている。
【0120】
実施例3の対物レンズ10の第一面11に形成される位相シフト構造は具体的には表24に示される。表24は、実施例3の対物レンズ10の第一面11に形成される各輪帯の範囲と、光路長変化量を示した表である。
【0121】
【表24】
【0122】
上述したように、実施例3の対物レンズ10では、第一面11において領域毎に異なる位相シフト構造が形成されている。従って、表24に示すように、領域毎で第一のレーザー光が各輪帯間の段差により付与される光路長変化量が異なる。
【0123】
つまり、表24に示すように、第一領域では、第一のレーザー光が各輪帯間の段差により付与される光路長変化量は、−5または2波長分であることがわかる。つまり、iA=5、iB=2であり、ΔA=ΔB=0である。第二領域では、上記光路長変化量は、±5または−3波長分であることがわる。つまり、iA=5、iB=3であり、ΔA=ΔB=0である。第三領域では、上記光路長変化量は、−1波長分である。
【0124】
なお、輪帯番号20、21の各輪帯間に形成される各段差は、第二領域における二種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。
【0125】
図10(A)〜(C)は、実施例3の対物レンズ10を有する光情報記録再生装置100において、第一から第三の各レーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。図10(A)が第一のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図10(B)が第二のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図10(C)が第三のレーザー光使用時に発生する球面収差を、それぞれ表す。
【0126】
図10(A)〜(C)に示すように、実施例3の対物レンズ10を使用すると、各光ディスクD1〜D3のいずれに対する情報の記録または再生時であっても、対応する設計波長のレーザー光が球面収差を生じることなく各光ディスクの記録面22上に良好に収束することがわかる。また、該レーザー光が設計波長からずれたことによる球面収差の変化も実使用上支障がない程度に抑えていることが分かる。特に、実施例3の対物レンズ10によれば、図10(C)に示すように、第三の光ディスクD3使用時において、第三のレーザー光が設計波長からずれた場合であっても、球面収差の変化が極めて良好に抑えられ、常に球面収差が補正された状態にあることが分かる。
【実施例4】
【0127】
実施例4の対物レンズ10は、実施例2と同様に、三種類の光路長変化量を与える位相シフト構造を第一面11に有している。実施例4の対物レンズ10の具体的な仕様は、表25に示されている。
【0128】
【表25】
【0129】
表25中、倍率の値が示すように、実施例4でも、いずれの光ディスクD1〜D3使用時における各レーザー光は平行光束として対物レンズ10に入射する。表25に示す対物レンズ10を備える光情報記録再生装置100の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表26〜表28に示される。
【0130】
【表26】
【表27】
【表28】
【0131】
対物レンズ10の両面11、12(面番号1、2)は、上記各実施例と同様に非球面である。各面11、12の各非球面の形状を規定する円錐係数と非球面係数は、表29に示される。
【0132】
【表29】
【0133】
また実施例4の対物レンズ10の第一面11に形成されることになる位相シフト構造を規定するための第一から第三の光路差関数における係数P2iは表30に示される。また、各レーザー光の回折効率が最大になる回折次数mは表31に示される。
【0134】
【表30】
【表31】
【0135】
実施例4の対物レンズ10の第一面11に形成される位相シフト構造は具体的には表32に示される。表32は、実施例4の対物レンズ10の第一面11に形成される各輪帯の範囲と、第一のレーザー光が各輪帯間の段差を透過することにより与えられる光路長変化量を示した表である。
【0136】
【表32】
【0137】
表32に示すように、第一のレーザー光が各輪帯間の段差により付与される光路長変化量は、−3、−2または8波長分であることがわかる。つまり、iA=3、iB=2、iC=8で、ΔA=0.22、ΔB=Δc=0である。従って、実施例4の対物レンズ10は、上記条件(1)〜(3)を満たす。なお、輪帯番号27、28の各輪帯間に形成される段差は、iA=3とiC=8の二種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。
【0138】
図11(A)〜(C)は、実施例4の対物レンズ10を有する光情報記録再生装置100において、第一から第三の各レーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。図11(A)が第一のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図11(B)が第二のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図11(C)が第三のレーザー光使用時に発生する球面収差を、それぞれ表す。
【0139】
図11(A)〜(C)に示すように、実施例4の対物レンズ10を使用すると、各光ディスクD1〜D3のいずれに対する情報の記録または再生時であっても、対応する設計波長のレーザー光が球面収差を生じることなく各光ディスクの記録面22上に良好に収束することがわかる。さらに、実施例4の対物レンズ10は、三種類の光路長変化量を付与するような段差を持つ位相シフト構造が形成されている。つまり、実施例4の対物レンズ10に形成された位相シフト構造は、三波長互換作用と波長ずれ補償作用を併せ持つ。従って、図11(A)〜(C)に示すように、第一から第三の各レーザー光が設計波長からずれた場合であっても、球面収差の変化が極めて良好に抑えられ、常に球面収差が補正された状態にあることが分かる。
【実施例5】
【0140】
実施例5の対物レンズ10の対物レンズ10の具体的な仕様は、表34に示されている。
【0141】
【表33】
【0142】
表33中、倍率の値が示すように、実施例5でも、他の実施例同様、いずれの光ディスクD1〜D3使用時における各レーザー光も平行光束として対物レンズ10に入射する。表33に示す対物レンズ10を備える光情報記録再生装置100の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表34〜表36に示される。
【0143】
【表34】
【表35】
【表36】
【0144】
実施例5の対物レンズ10の第一面11は、三種類の光路長変化量を付与する位相シフト構造を持つ第一領域と、三種類の光路長変化量を付与しかつ第三のレーザー光に対する開口制限機能を有する位相シフト構造を持つ第二領域が形成されている。なお、第一面11における各領域の範囲を光軸AXからの高さhで表すと、
第一領域…h≦1.580、
第二領域…1.580<h≦1.950、となる。
【0145】
実施例5の対物レンズ10の両面11、12(面番号1、2)も、上記各実施例と同様に非球面である。各面11、12の各非球面の形状を規定する円錐係数と非球面係数は、表37に示される。なお、表37に示すように、第一面11の非球面形状は、第一領域と第二領域で異なる。
【0146】
【表37】
【0147】
また実施例5の対物レンズ10の第一面11に形成されることになる位相シフト構造を規定するための光路差関数における係数P2iは表38に示される。また、各レーザー光の回折効率が最大になる回折次数mは表39に示される。
【0148】
【表38】
【表39】
【0149】
なお、表38に示すように、各領域を規定する各光路差関数における係数P2の値が異なる。従って、表34〜表36に示すように、実施例5の対物レンズ10の第一面11は、領域毎に曲率半径rの値が異なる。
【0150】
表39に示すように、回折次数mは、使用するレーザー光ごと、および位相シフト構造が設けられる領域ごとに異なる値が設定されている。詳しくは、第一領域は、回折効率が最大となる回折次数が異なるものの、第一から第三の各レーザー光の収束に寄与するような位相シフト構造になっている。第二領域は、第一のレーザー光および第二のレーザー光の収束に寄与するような位相シフト構造になっている。
【0151】
実施例5の対物レンズ10の第一面11に形成される位相シフト構造は具体的には表40に示される。表40は、実施例5の対物レンズ10の第一面11に形成される各輪帯の範囲と光路長変化量を示した表である。
【0152】
【表40】
【0153】
上述したように、実施例5の対物レンズ10では、第一面11の領域によって異なる位相シフト構造が形成されている。そのため、従って、表40に示すように、領域毎で第一のレーザー光が各輪帯間の段差により付与される光路長変化量が異なる。
【0154】
つまり、表40に示すように、第一領域では、第一のレーザー光が各輪帯間の段差により付与される光路長変化量は、−5、2または8波長分であることがわかる。つまり、iA=5、iB=2、iC=8であり、ΔA=ΔB=ΔC=0.05である。第二領域では、上記光路長変化量は、±5または−3波長分であることがわる。つまり、iA=5、iB=3であり、ΔA=ΔB=0である。従って、実施例5の対物レンズ10は、上記条件(1)〜(4)を満たす。
【0155】
なお、第一領域において、輪帯番号20、21の輪帯間、21、22の輪帯間、23〜27の各輪帯間に形成される各段差は、iA=5とiC=8の二種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。また、第二領域において、輪帯番号33、34の輪帯間および45、46の輪帯間に形成される段差は、二種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。
【0156】
図12(A)〜(C)は、実施例5の対物レンズ10を有する光情報記録再生装置100において、第一から第三の各レーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。図12(A)が第一のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図12(B)が第二のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図12(C)が第三のレーザー光使用時に発生する球面収差を、それぞれ表す。
【0157】
図12(A)〜(C)に示すように、実施例5の対物レンズ10を使用すると、各光ディスクD1〜D3のいずれに対する情報の記録または再生時であっても、対応する設計波長のレーザー光が球面収差を生じることなく各光ディスクの記録面22上に良好に収束することがわかる。また、該レーザー光が設計波長からずれたことによる球面収差の変化も実使用上支障がない程度に抑えていることが分かる。特に、実施例5の対物レンズ10によれば、図12(C)に示すように、第三の光ディスクD3使用時において、第三のレーザー光が設計波長からずれた場合であっても、球面収差の変化が極めて良好に抑えられ、常に球面収差が補正された状態にあることが分かる。
【実施例6】
【0158】
実施例6の対物レンズ10は、三種類の光路長変化量を与える位相シフト構造を第一面11に有している。実施例6の対物レンズ10の具体的な仕様は、表41に示されている。
【0159】
【表41】
【0160】
表41中、倍率の値が示すように、実施例6でも、いずれの光ディスクD1〜D3使用時における各レーザー光は平行光束として対物レンズ10に入射する。表41に示す対物レンズ10を備える光情報記録再生装置100の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表42〜表44に示される。
【0161】
【表42】
【表43】
【表44】
【0162】
対物レンズ10の両面11、12(面番号1、2)は、上記各実施例と同様に非球面である。各面11、12の各非球面の形状を規定する円錐係数と非球面係数は、表45に示される。
【0163】
【表45】
【0164】
また実施例6の対物レンズ10の第一面11に形成されることになる位相シフト構造を規定するための第一から第三の光路差関数における係数P2iは表46に示される。また、各レーザー光の回折効率が最大になる回折次数mは表47に示される。本実施例6では、第三のレーザー光において回折効率が最大になる回折次数mはkで表される。
【0165】
【表46】
【表47】
【0166】
実施例6の対物レンズ10の第一面11に形成される位相シフト構造は具体的には表50に示される。表48は、実施例6の対物レンズ10の第一面11に形成される各輪帯の範囲と、第一のレーザー光が各輪帯間の段差を透過することにより与えられる光路長変化量を示した表である。
【0167】
【表48】
【0168】
表48に示すように、第一のレーザー光が各輪帯間の段差により付与される光路長変化量は、3、2または−10波長分であることがわかる。つまり、iA=3、iB=2、iC=10で、ΔA=−0.10、ΔB=Δc=0である。従って、実施例6の対物レンズ10は、上記条件(5)〜(8)を満たす。なお、輪帯番号12、13の各輪帯間、24、25の各輪帯間、32、33の各輪帯間、34、35の各輪帯間、38、39の各輪帯間、40、41の各輪帯間、46、47の各輪帯間、48、49の各輪帯間、51、52の各輪帯間、にそれぞれ形成される段差は、iB=2とiA=3の二種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。
【0169】
また、輪帯番号25、26の各輪帯間、35、36の各輪帯間、39、40の各輪帯間、47、48の各輪帯間、にそれぞれ形成される段差は、iB=2とiC=10の二種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。
【0170】
また、輪帯番号42、43の各輪帯間、50、51の各輪帯間、にそれぞれ形成される段差は、iB=2、iA=3、iC=10の三種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。
【0171】
図13(A)〜(C)は、実施例6の対物レンズ10を有する光情報記録再生装置100において、第一から第三の各レーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。図13(A)が第一のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図13(B)が第二のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図13(C)が第三のレーザー光使用時に発生する球面収差を、それぞれ表す。
【0172】
図13(A)〜(C)に示すように、実施例6の対物レンズ10を使用すると、各光ディスクD1〜D3のいずれに対する情報の記録または再生時であっても、対応する設計波長のレーザー光が球面収差を生じることなく各光ディスクの記録面22上に良好に収束することがわかる。さらに、実施例6の対物レンズ10は、三種類の光路長変化量を付与するような段差を持つ位相シフト構造が形成されている。つまり、実施例6の対物レンズ10に形成された位相シフト構造は、三波長互換作用と波長ずれ補償作用を併せ持つ。従って、図13(A)〜(C)に示すように、第一から第三の各レーザー光が設計波長からずれた場合であっても、球面収差の変化が極めて良好に抑えられ、常に球面収差が補正された状態にあることが分かる。
【0173】
なお、実施例4の対物レンズ10を用いて第一から第三の光ディスクD1〜D3に対する情報の記録または再生をした場合の光利用効率は、第一のレーザー光が約85%、第二のレーザー光が約73%、第三のレーザー光が56%となる。また、実施例5の対物レンズ10を用いて第一から第三の光ディスクD1〜D3に対する情報の記録または再生をした場合の光利用効率は、第一のレーザー光が約98%、第二のレーザー光が約75%、第三のレーザー光が41%となる。また、実施例6の対物レンズ10を用いて第一から第三の光ディスクD1〜D3に対する情報の記録または再生をした場合の光利用効率は、第一のレーザー光が約97%、第二のレーザー光が約69%、第三のレーザー光が51%となる。以上のように、本発明の実施形態の対物レンズによれば、第三のレーザー光において回折効率が最大になる回折次数に応じた各条件を満たすように構成することにより、記録密度が高い光ディスクD1、D2使用時にはより多くの光量を利用することができ、かつ第三の光ディスクD3使用時には、情報の記録または再生に関して実使用上何ら問題ない程度の光量を確保することができる。
【0174】
以上が本発明に係る設計方法により設計された対物レンズの具体的実施例である。なお、上記の各実施例はあくまでも本発明に係る対物レンズの一例である。つまり本発明に係る対物レンズは、各実施例の具体的数値構成に限定されるものではない。例えば、光情報記録再生装置の対物光学系を構成するレンズ等の光学素子の数は複数であっても良い。対物光学系が複数の光学素子から構成される場合、本発明に係る設計方法により設計される光学素子は、片側一面のみならず両面に位相シフト構造を設けることができる。
【0175】
また、三波長互換作用で調整される球面収差の値は、0でなくてもよく、設計者が任意に設定することが可能である。同様に波長ずれ補償作用でも波長ずれに起因して変化する球面収差を必ずしも打ち消す作用を与える必要はなく、球面収差の変化の度合いは設計者が任意に設定することができる。
【0176】
さらに、上記の各実施例で提示した各段差のiの組み合わせも例示であって、必ずしも各実施例の組み合わせに限定されるものではない。例えば、対物レンズの第一面に設けられた位相シフト構造によって付与される光路長変化量が三種類ある場合、各段差の組み合わせは、iA=5、iB=2、iC=10であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明の実施形態の光情報記録再生装置の概略構成を表す模式図である。
【図2】本発明の実施形態の光情報記録再生装置を各光ディスク使用時における光路ごとに分けて示す図である。
【図3】本発明の実施形態の対物レンズの、第一面に設けられた位相シフト構造の拡大図である。
【図4】本発明の実施形態の対物レンズの、iを2に設定したときの第一から第三の各レーザー光の光利用効率について示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態の対物レンズの、iを3に設定したときの第一から第三の各レーザー光の光利用効率について示すグラフである。
【図6】本発明の実施形態の対物レンズの、iを5に設定したときの第一から第三の各レーザー光の光利用効率について示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態の対物レンズの、iを10に設定したときの第一から第三の各レーザー光の光利用効率について示すグラフである。
【図8】実施例1の光情報記録再生装置の、第一から第三の各レーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。
【図9】実施例2の光情報記録再生装置の、第一から第三のレーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。
【図10】実施例3の光情報記録再生装置の、第一から第三のレーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。
【図11】実施例4の光情報記録再生装置の、第一から第三のレーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。
【図12】実施例5の光情報記録再生装置の、第一から第三のレーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。
【図13】実施例6の光情報記録再生装置の、第一から第三のレーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。
【符号の説明】
【0178】
1A、2A、3A 光源
10 対物レンズ
D1〜D3 光ディスク
100 光情報記録再生装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、記録密度や保護層の厚みが異なる複数種類の光ディスクに対する情報の記録または再生を行う光情報記録再生装置といった波長が各々異なる複数種類の光を使用する装置に搭載される対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクには、従来、CDやDVDといった記録密度や保護層の厚みが異なる複数の規格が存在する。また近年、情報記録のさらなる高容量化を実現すべく、DVDよりも一層記録密度の高い新規格の光ディスクが実用化されつつある。該新規格の光ディスクとしては、例えばHD DVDやBD(Blu-ray Disc)等がある。このような新規格の光ディスクは、DVDの保護層厚と同等もしくはそれ以下の保護層厚を有する。このように規格の異なる複数の光ディスクが存在するためユーザの利便性に鑑み、近年、光情報記録再生装置、より厳密には装置内に設けられる対物光学系は、上記の三種類の光ディスクに対して互換性を持つことが要求される。なお、本文において、光情報記録再生装置と記した場合には、情報の記録専用装置、情報の再生専用装置、情報の記録および再生兼用装置、の全てを含むものとする。また、互換性を持つとは、使用する光ディスクを切り替えたとしても部品を交換したりすることなく情報の記録または再生が保証されることをいう。
【0003】
装置が規格の異なる複数の光ディスクに対して互換性を持つためには、まず、規格が異なる光ディスクの切り替え時に、保護層の厚みによって変化してしまう球面収差を補正しつつ、情報の記録または再生に使用する光の開口数(NA)を変化させて記録密度の違いに対応したビームスポットが得られるようにする必要がある。一般にスポット径は波長が短いほど小さい。そこで従来、記録密度に応じて、光情報記録再生装置では、複数の波長のレーザー光が使用される。例えば、DVD使用時には、CD使用時に用いられる約790nmより短い約660nmの波長のレーザー光が用いられる。また、該新規格の光ディスク使用時には、その記録密度の高さからDVDに対する情報の記録または再生時に用いられる波長よりもさらに短波長な光(例えば408nmあたりのいわゆる青色レーザー光)が用いられる。
【0004】
次いで、各々の光ディスクに対して、良好な状態で各光ディスクの記録面位置に収束させる一つの手段として、対物光学系を構成する1または複数の光学素子(例えば対物レンズ)における任意の一面に輪帯状の微細な段差を有する輪帯構造を設け、該輪帯構造の作用によって、異なる波長の光を各々対応する光ディスクの記録面において良好に収束させる技術が実用化されている。
【0005】
また、上記光学素子は、光源の個体差や温度変化等の環境変化によって、使用するレーザー光の波長が設計波長からずれることにより生じる球面収差も補正するような作用を持つことが好ましい。なお設計波長とは、各光ディスクに対する情報の記録または再生に最適とされる各レーザー光の波長を意味する。
【0006】
上記のように、例えば、CD、DVD、HD DVDのように三種類の光ディスクに対して互換性を持つ対物レンズとしては、例えば以下の特許文献1に提案される。
【0007】
【特許文献1】特開2004−362626号公報
【0008】
特許文献1に記載の対物レンズは、記録密度の異なる3種類の光ディスクに対して互換性を持たせるために、波長の異なる3種類の光束のうち、2つの波長の光束に対しては輪帯構造により球面収差を補正し、残りの1つの波長に対しては対物レンズに入射する光束の発散度をコントロールすることにより球面収差を補正している。
【0009】
ここで、情報の記録または再生を行う際に高いNAが要求される、HD DVDやDVDを使用する時は、収差に対する許容度が低いとされる。そのため、上記特許文献1では、上記の比較的記録密度が高いHD DVDやDVDに対する情報の記録または再生時には、対物レンズに略平行光束が入射するような構成にしている。そして、情報の記録または再生を行う際にそれほど高いNAを要求されないCDを使用する時は、対物レンズに発散光が入射するような構成にしている。これにより、記録密度の異なる3種類の光ディスクに対して互換性を持つ対物レンズを提供している。
【0010】
しかし、対物レンズに発散光が入射する場合、トラッキング時にコマ収差等の収差が発生してしまう。そのため、たとえ収差に対する許容度が低いCD等の光ディスク使用時であっても、これらの収差を良好に抑えることができる対物レンズが要望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の事情に鑑み、波長が異なる複数種類の光束を使用して規格の異なる三種類の光ディスクのいずれに対する情報の記録または再生を行った時であっても、各光ディスクの記録面上において球面収差を抑えて良好なスポットを形成するとともに、トラッキング時にも収差の発生を抑えることができる、光情報記録再生装置用の対物レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の光情報記録再生装置用対物レンズは、記録密度の異なる複数の光ディスクに対して第一から第三の波長を持つ三種類の略平行光束を使い分けることにより、各光ディスクに対する情報の記録または再生を行う光情報記録再生装置に用いられる対物レンズであって、第一から第三の波長のうち最も波長が短い第一の波長をλ1、前記第一の波長より長い第二の波長をλ2、最も長い第三の波長をλ3とすると、
λ1<λ2<λ3
1.9<λ3/λ1<2.1
であり、
第一の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第一の光ディスクの保護層厚をt1、第二の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第二の光ディスクの保護層厚をt2、第三の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第三の光ディスクの保護層厚をt3、とすると、
t1≦t2<t3
であり、
第一の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA1、第二の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA2、第三の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA3、とすると、
NA1>NA3かつNA2>NA3
であり、少なくとも一方の面に、複数の同心円状の屈折面で構成された位相シフト構造を有しており、位相シフト構造は、第三の波長の光束を第三の光ディスクの記録面上に収束する第一領域を有し、第一領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において、第一の波長の光束に対して絶対値が異なる少なくとも二種類の光路長変化量を付与する段差を有し、当該少なくとも二種類の光路長変化量の各絶対値は、第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍、および(iB+ΔB)倍(但し、iA、iBは自然数、かつiA≠iB、−0.5<ΔA<0.5、−0.5<ΔB<0.5)で表され、さらに、iAがiA=2k+1(但し、kは自然数)で表され、かつ前記第三の波長の光束において回折効率が最大となる回折次数が(k+1)次であり、ΔAは以下の条件(1)、
0.000≦ΔA≦0.384・・・(1)
を満たすことを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載の光情報記録再生装置用対物レンズによれば、上記第一の領域の段差で付与する光路長変化量のうち、少なくとも一種類の光路長変化量iAを奇数値であるように構成することにより、規格の異なる三種類の光ディスクに対する高い互換性を持たせることができる。しかも各光ディスクのいずれを使用する場合でも略平行光束を使用するため、トラッキングシフト時に収差の発生を抑えることができ、情報の記録または再生に好適なスポットを形成することができる。
【0014】
さらにiAは、以下の条件(2)より好ましくは条件(3)を満たすことが望ましい。
0.020≦ΔA≦0.324・・・(2)(請求項2)
0.020≦ΔA≦0.258・・・(3)(請求項3)
【0015】
さらにiAは、以下の条件(4)を満たすことが望ましい。
0.020≦ΔA≦0.178・・・(4)(請求項4)
これにより、記録密度の最も高い第一の光ディスクに対する情報の記録または再生時において第一の波長の光束の利用効率を非常に高く設定することができる。
【0016】
また、請求項5に記載の光情報記録再生装置用対物レンズは、記録密度の異なる複数の光ディスクに対して第一から第三の波長を持つ三種類の略平行光束を使い分けることにより、各光ディスクに対する情報の記録または再生を行う光情報記録再生装置に用いられる対物レンズであって、第一から第三の波長のうち最も短い第一の波長をλ1、前記第一の波長より長い第二の波長λ2、最も長い第三の波長をλ3とすると、
λ1<λ2<λ3
1.9<λ3/λ1<2.1
であり、
第一の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第一の光ディスクの保護層厚をt1、第二の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第二の光ディスクの保護層厚をt2、第三の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第三の光ディスクの保護層厚をt3、とすると、
t1≦t2<t3
であり、
第一の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA1、第二の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA2、第三の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA3、とすると、
NA1>NA3かつNA2>NA3
であり、
少なくとも一方の面に、複数の同心円状の屈折面で構成された位相シフト構造を有しており、位相シフト構造は、第三の波長の光束を第三の光ディスクの記録面上に収束する第一領域を有し、該第一領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において第一の波長の光束に対して絶対値が異なる少なくとも二種類の光路長変化量を付与する段差を有し、少なくとも二種類の光路長変化量は、第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍、および(iB+ΔB)(但し、iA、iBは自然数、かつ、iA≠iB、−0.5<ΔA<0.5、−0.5<ΔB<0.5)で表され、iAがiA=2k+1(但し、kは自然数)で表され、かつ前記第三の波長の光束において回折効率が最大となる回折次数がk次であり、ΔAは以下の条件(5)、
−0.384≦ΔA≦−0.070・・・(5)
を満たすことを特徴とする。
【0017】
さらにΔAは、以下の条件(6)より好ましくは条件(7)を満たすことが望ましい。
−0.324≦ΔA≦−0.070・・・(6)(請求項6)
−0.258≦ΔA≦−0.070・・・(7)(請求項7)
【0018】
さらにΔAは、以下の条件(8)を満たすことが望ましい。
−0.178≦ΔA≦−0.070・・・(8)(請求項8)
【0019】
例えば、第一領域の段差が付与する光路長付加量の種類が二種類である場合、各段差のiAとiBの組み合わせは、3と2(請求項9)あるいは5と2(請求項10)が好適である。また、第一領域の段差が付与する光路長付加量の種類が三種類である場合、各段差のiA、iB、iCの組み合わせは、3、2、8(請求項11)、または、3、2、10(請求項12)、または、5、2、8(請求項13)、または、5、2、10(請求項14)が好適である。
【0020】
また、本発明に係る光情報記録再生装置用対物レンズは単レンズとして構成される(請求項15)。
【0021】
請求項16に記載の光情報記録再生装置用対物レンズによれば、位相シフト構造は、第一領域の外側に、第一の波長の光束および第二の波長の光束をそれぞれ第一の光ディスクおよび第二の光ディスクの記録面上に収束し、かつ第三の波長の光束の収束には寄与しない第二領域を有し、第二領域における互いに隣り合う屈折面の境界において、第一の光束に対して少なくとも一種類の光路長変化量を付与する段差を有し、一種類の光路長変化量の絶対値が、第一領域における少なくとも一種類の光路長変化量の絶対値とは異なる。
【0022】
また、請求項17に記載の光情報記録再生装置用対物レンズによれば、以下の条件(9)が成立する場合、上記位相シフト構造には、第二領域の外側に、第二の波長の光束のみ収束し、第一および第三の波長の光束の収束には寄与しない第三領域を設けることが望ましい。該第三領域においては、互いに隣り合う屈折面の境界において、第二の光束に対して、少なくとも一種類の光路長変化量を有する段差を有し、該光路長変化量の絶対値が、第二領域における光路長変化量の絶対値と異なる。
f1×NA1<f2×NA2・・・(9)
但し、f1は、第一の光ディスク使用時における焦点距離を、
f2は、第二の光ディスク使用時における焦点距離を、それぞれ表す。
【0023】
また、請求項18に記載の光情報記録再生装置用対物レンズによれば、以下の条件(10)が成立する場合、上記位相シフト構造には、第二領域の外側に、第一の波長の光束のみ収束し、第二および第三の波長の光束の収束には寄与しない第三領域を設けることが望ましい。該第三領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において、第一の光束に対して、少なくとも一種類の光路長変化量を有する段差を有し、該光路長変化量の絶対値が、第二領域における光路長変化量の絶対値と異なる。
f1×NA1>f2×NA2・・・(10)
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、少なくとも一面に所定の位相シフト構造を形成することにより、各光ディスクの記録面上で発生する収差を良好に抑えている。また本発明によれば、どの光ディスクを使用する場合にも略平行光束が用いられる。これにより、既存の光ディスクおよび新規格の光ディスクのいずれを使用した場合であっても、球面収差のみならずトラッキングシフト時に発生する収差を良好に抑えることができる。すなわち、記録密度の異なる三種類の光ディスクの記録面上において良好なスポットを形成可能な光情報記録再生用対物レンズおよび該対物レンズを搭載する光情報記録再生装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態の対物レンズについて説明する。本実施形態の対物レンズは、光情報記録再生装置に搭載され、保護層厚、記録密度等といった規格がそれぞれ異なる三種類の光ディスクについて互換性を有している。
【0026】
以下では説明の便宜上、上記三種類の光ディスクのうち、記録密度が最も高い光ディスク(例えばHD DVDやBD等の新規格の光ディスク)を第一の光ディスクD1、第一の光ディスクD1に比べて相対的に記録密度が低い(例えばDVDやDVD−R等)を第二の光ディスクD2、記録密度が最も低い光ディスク(例えばCDやCD−R等)を第三の光ディスクD3、と記す。
【0027】
各光ディスクD1〜D3の保護層厚をそれぞれt1〜t3とすると、各保護層厚には、以下のような関係がある。
t1≦t2<t3
【0028】
また、各光ディスクD1〜D3のそれぞれに対して情報の記録または再生を行う場合、記録密度の違いに対応したビームスポットが得られるように、必要とされるNAの値を変化させる必要がある。ここで、各光ディスクD1〜D3に対する情報の記録または再生時に必要とされる最適な設計開口数を、それぞれNA1、NA2、NA3とすると、各NAには以下のような関係がある。
NA1>NA3かつNA2>NA3
【0029】
つまり、記録密度の高い第一の光ディスクD1および第二の光ディスクD2に対する情報の記録または再生時には、より小径なスポットの形成が要求されるため、必要なNAが高くなる。これに対し、最も記録密度の低い第三の光ディスクD3に対する情報の記録または再生時には、必要とされるNAは比較的小さい。なお、どの光ディスクも、情報の記録または再生時には、図示しないターンテーブル上に載置され回転駆動される。
【0030】
上記のように記録密度が異なる各光ディスクD1〜D3を使用する場合、各記録密度に対応したビームスポットが得られるように、光情報記録再生装置内において、それぞれ異なる波長のレーザー光が用いられる。具体的には、第一の光ディスクD1に対して情報の記録または再生を行う際には、最も小径のビームスポットを第一の光ディスクD1の記録面上において形成するために、最も短波長(第一の波長)であるレーザー光(以下、第一のレーザー光という)を光源から照射する。また、第三の光ディスクD3に対して情報の記録または再生を行う際には、最も大きな径のビームスポットを第三の光ディスクD3の記録面上において形成するために、最も長波長(第三の波長)であるレーザー光(以下、第三のレーザー光という)を光源から照射する。そして第二の光ディスクD2に対して情報の記録または再生を行う際には、第二の光ディスクD2の記録面上において比較的小径のスポットを形成するために、第一のレーザー光よりは長波長であってかつ第三のレーザー光よりは短波長(第二の波長)であるレーザー光(以下、第二のレーザー光という)を光源から照射する。なお、第一の波長をλ1、第三の波長をλ3とすると、両者には、
1.9<λ3/λ1<2.1
という関係がある。
【0031】
図1は、本実施形態の対物レンズ10を有する光情報記録再生装置100の概略構成を表す模式図である。光情報記録再生装置100は、第一のレーザー光を照射する光源1A、第二のレーザー光を照射する光源2A、第三のレーザー光を照射する光源3A、カップリングレンズ1B、2B、3B、ビームスプリッタ41、42、ハーフミラー43、受光部44を有する。なお、光情報記録再生装置100では、上記の各光ディスク使用時に必要とされるNAが各々異なることに対応する必要がある。そのため、光情報記録再生装置100では、図示しないが、光源3A〜対物レンズ10間に第三のレーザー光の光束径を規定する開口制限素子が配設されていてもよい。
【0032】
図1に示すように、各光源1A〜3Aから照射された第一〜第三の各レーザー光束は、各カップリングレンズ1B〜3Bにより平行光束に変換される。つまり本実施形態では、各カップリングレンズ1B〜3Bは、コリメートレンズとして機能する。各カップリングレンズ1B〜3Bを透過した各レーザー光束は、ビームスプリッタ41、42によって共通の光路に導かれ、対物レンズ10に入射する。対物レンズ10を透過した各光束は、情報の記録または再生の対象となる各光ディスクD1〜D3の記録面近傍に収束する。記録面で反射した各レーザー光は、ハーフミラー43で偏向され、受光部44により検出される。
【0033】
上記のように、対物レンズ10に入射する各レーザー光を平行光束にすることにより、対物レンズ10をトラッキング時におけるコマ収差等の収差の発生を抑えることができる。
【0034】
なお、厳密には、各光源1A〜3Aの個体差や設置位置、さらには光情報記録再生装置100のおかれた環境の変化等の理由によって、各カップリングレンズ1B〜3Bから射出される光束は必ずしも平行光束にはならない場合もある。しかし、上記の理由による光束の発散角は、非常に小さいため、トラッキングシフト時に生じる収差も小さい。よって、実使用上問題ないと言える。
【0035】
図2(A)〜図2(C)は、対物レンズ10および各光ディスクD1〜D3を各光ディスク使用時における光路ごとに分けて示した図である。図2(A)〜(C)において、光情報記録再生装置100の基準軸AXは、図中一点鎖線で表示されている。図2(A)〜(C)に示す状態では、対物レンズの光軸は光学系の基準軸AXと一致しているが、トラッキング動作などにより対物レンズの光軸が光学系の基準軸AXから外れる状態もある。
【0036】
対物レンズ10は、光源側から順に第一面11と第二面12を有する。対物レンズ10は、図2(A)〜(C)に示すように各面11、12とも非球面である両凸のプラスチック製単レンズである。非球面の形状は光軸からの高さがhとなる非球面上の座標点の該非球面の光軸上での接平面からの距離(サグ量)をX(h)、非球面の光軸上での曲率(1/r)をC、円錐係数をK、四次、六次、八次、十次、十二次…の非球面係数をA2i(但し、iは1以上の整数)として、以下の式で表される。
【数1】
【0037】
また各光ディスクD1〜D3は、それぞれ保護層21、記録面22を有する。なお、実際の光ディスクD1〜D3において、記録面22は、保護層21と図示しないレーベル層によって挟持されている。
【0038】
光情報記録再生装置100のように、各光ディスクD1〜D3使用時には異なる波長のレーザー光を用いる場合、各光ディスク使用時によって、対物レンズの屈折率の変化や、各光ディスクD1〜D3の保護層21の厚さの違いに起因して、球面収差が変化する。
【0039】
従って、三種類の光ディスクD1〜D3をそれぞれ使用する時に発生する球面収差を補正して各光ディスクD1〜D3に対する互換性を持たせるために、本実施形態の対物レンズ10には、三種類の光束に影響を与える回折作用を持つ位相シフト構造が第一面11に設けられている。第一面11に設けられた位相シフト構造は、光軸AXを中心とした同心円状の複数の屈折面と各屈折面間に形成される複数の微小な段差からなる。
【0040】
本実施形態の位相シフト構造は、第一から第三の各レーザー光で使用波長の違いによる球面収差をそれぞれ略0になるようにコントロールする回折作用を持つ。該回折作用は、対物レンズ10を透過した各レーザー光が、対応する光ディスクの記録面22上において、球面収差が良好に抑えられ、情報の記録または再生に好適なスポットを形成できるような回折作用、つまり三波長互換作用といえる。
【0041】
以上のような位相シフト構造を持つ対物レンズ10は、例えば以下のように設計される。まず、第一から第三の各レーザー光束における回折効率が最大となる回折次数の比率が互いに異なる少なくとも二種類の光路差関数、例えば第一の光路差関数と第二の光路差関数を算出する。
【0042】
なお、光路差関数は、対物レンズ10の回折レンズとしての機能を光軸からの高さhにおける光路長付加量の形で表現される。光路差関数をφ(h)とすると、該φ(h)は、以下の式によって表される。
【0043】
【数2】
【0044】
光路差関数φ(h)において、P2i(但し、iは1以上の整数)はそれぞれ二次、四次、六次、…の係数である。mは使用するレーザー光の回折効率が最大となる回折次数を、λは使用するレーザー光の設計波長を、それぞれ表す。
【0045】
次いで、算出された各光路差関数を重ね合わせることにより、上記位相シフト構造の形状を求める。なお、ここで、比率が異なる、とは、使用する光束のうち少なくとも一つの光束における回折効率が最大となる回折次数が異なっていれば足りる。従って、例えば、使用する光束が三種類ある場合に、第一の光路差関数における比率が3:2:2、第二の光路差関数における比率が3:2:1であれば比率が異なるといえる。また、各光路差関数における次数の組み合わせは異なるものの回折次数の比率が同一であるケース、例えば第一の光路差関数における比率が2:1:1、第二の光路差関数における比率が4:2:2である場合、各光路差関数により付与される回折作用は同一である。従って、本発明においては、次数の組み合わせが異なることではなく、回折次数の比率が異なることを各光路差関数を定める要件としている。
【0046】
上記のように、互いに異なる二つの光路差関数に基づき求められた位相シフト構造に形成される段差は、第一のレーザー光に対して光路長変化量の絶対値が異なる二種類の光路長変化をもたらす。なお、光路長変化量の絶対値が異なる、と記載したのは、対物レンズ10から各光ディスクに向かう方向の光路長変化量を正、逆方向を負と定義した場合、正負の符号の不一致を光路長変化量が異なるとは言わないことを明確にしたものである。ここで、二種類の光路長変化量(単位:λ)は、第一のレーザー光一波長分の(iA+ΔA)倍、および(iB+ΔB)倍として定義される。但し、iA、iBは互いに異なる自然数であり、特にiAは2k+1(kは自然数)で表される。なおΔAとΔBはそれぞれ、−0.5<ΔA<0.5、−0.5<ΔB<0.5の範囲で規定される。またΔAは、第三のレーザー光において回折効率が最も高くなる回折次数を(k+1)次に設定すると、以下の条件(1)を満たし、該回折次数をk次に設定すると、以下の条件(5)を満たす。
0.000≦ΔA≦0.384・・・(1)
−0.384≦ΔA≦−0.070・・・(5)
【0047】
条件(1)の上限を超えるあるいは条件(5)の下限を越えると、第三のレーザー光の光利用効率をさらに高くすることができるものの、特に第一のレーザー光の光利用効率が低くなるため好ましくない。また、条件(1)の下限を越えるあるいは条件(5)の上限を超えると、特に第三のレーザー光の光利用効率が低下するため好ましくない。
【0048】
図3は、第一面11に設けられた位相シフト構造の拡大図である。図3において、jは、位相シフト構造における光軸AXからj番目の屈折面を示す。また、二点鎖線で示すhjは第j屈折面と第(j−1)屈折面間に形成された段差sの位置、換言すれば第j屈折面と第(j−1)屈折面の境界位置を示す。ここで、光路長変化量とは、図3に示すように、第(j−1)屈折面の形状を光軸から離れる方向に延長させた仮想上の延長面(A−A'面)の境界位置hjで屈折した場合に得られる像面までで評価した時の光路長と、第j屈折面の形状を光軸に向かう方向に延長させた仮想上の延長面(B−B'面)の境界位置hjで屈折した場合に得られる像面までで評価した時の光路長の差を意味する。
【0049】
なお、図3に示すように、実際の位相シフト構造は、形成時に各屈折面の境界位置近傍(エッジ)がだれて丸みを帯びることがある。しかし、このようなエッジの形状の変化は、実使用上何ら問題はない。
【0050】
図4〜図7は、iA、iB、…(便宜上、まとめてiと記す)とΔA、ΔB、…(便宜上、まとめてΔと記す)を様々に設定した場合、対物レンズ10から射出される第一から第三の各レーザー光の光利用効率について示すグラフである。図4は、i=2つまり第一のレーザー光の二次回折光、第二、第三の各レーザー光の一次回折光の光利用効率を示すグラフである。図5は、i=3つまり第一のレーザー光の三次回折光、第二レーザー光の二次回折光、第三レーザー光の二次回折光および一次回折光の光利用効率を示すグラフである。図6は、i=5つまり第一のレーザー光の五次回折光、第二レーザー光の三次回折光、第三レーザー光の三次回折光および二次回折光の光利用効率を示すグラフである。図7がi=10つまり第一のレーザー光の十次回折光、第二のレーザー光の六次回折光、第三のレーザー光の五次回折光の光利用効率を示すグラフである。
【0051】
なお、各グラフにおいて、縦軸が光利用効率を、横軸がΔを、それぞれ示す。また、各グラフにおいて、実線が設計波長を408nmと想定した第一のレーザー光、破線が設計波長を660nmと想定した第二のレーザー光、一点鎖線(および二点鎖線)が設計波長を790nmと想定した第三のレーザー光を、それぞれ示す。
【0052】
図4〜図7に示すように、Δの値が0に近づけば近づくほど、第一のレーザー光のi次回折光の光利用効率がより高くなる。Δを0に設定すれば、第一のレーザー光のi次回折光の光利用効率は略100%になる。
【0053】
これに対し、他のレーザー光は、必ずしもΔを0に近づければ高い光利用効率が得られるとは限らない。一般に第一の光ディスクD1に対する情報の記録または再生時には、他の光ディスク使用時に比べ、より多くの光量が要求される。そのため、第一のレーザー光の光利用効率を高く維持しつつも、第二および第三のレーザー光においても、できるだけ高い光利用効率であることがより好ましい。
【0054】
よって、第三のレーザー光において回折効率が最も高くなる回折次数を(k+1)次に設定すると、ΔAは、少なくとも上記の条件(1)、さらには、以下の条件(2)〜(4)の少なくとも一つを満たすように設定される。
0.020≦ΔA≦0.324・・・(2)
0.020≦ΔA≦0.258・・・(3)
0.020≦ΔA≦0.178・・・(4)
【0055】
また、第三のレーザー光において回折効率が最も高くなる回折次数をk次に設定すると、ΔAは、少なくとも上記の条件(5)、さらには、以下の条件(6)〜(8)の少なくとも一つを満たすように設定される。
−0.324≦ΔA≦−0.070・・・(6)
−0.258≦ΔA≦−0.070・・・(7)
−0.178≦ΔA≦−0.070・・・(8)
【0056】
ΔAが上記の条件(1)を満たすことにより、図4〜図7に示すように、iの如何を問わず、第一のレーザー光の光利用効率が最低限約60%確保することができる。特に、図5や図6に示すようにiAがiA=2k+1で表されるように奇数値を採る場合、第三のレーザー光は、光利用効率が約40%の異なる回折次数光が2種類発生する。そこで、第三のレーザー光において回折効率が最も高くなる回折次数を(k+1)次に、ΔAを条件(1)の範囲内に、それぞれ設定することにより、第三のレーザー光の光利用効率を最低限約50%確保することができる。さらに、i=3に設定すれば、第二のレーザー光の光利用効率が略100%になっていることが分かる。
【0057】
ΔAが条件(2)を満たすことにより、図4〜図7に示すように、iの如何を問わず、第一のレーザー光の光利用効率を約70%確保することができる。
【0058】
ΔAが条件(3)を満たすことにより、図4〜図7に示すように、iの如何を問わず、第一のレーザー光の光利用効率を約80%確保することができる。
【0059】
ΔAが条件(4)を満たすことにより、図4〜図7に示すように、iの如何を問わず、第一のレーザー光の光利用効率を約90%確保することができる。
【0060】
また、iAがiA=2k+1で表される場合に、第三のレーザー光において回折効率が最も高くなる回折次数をk次に、ΔAを条件(5)の範囲内に、それぞれ設定することにより、第三のレーザー光の光利用効率を最低限約50%確保することができる。
【0061】
ΔAが条件(6)を満たすことにより、図4〜図7に示すように、iの如何を問わず、第一のレーザー光の光利用効率を約70%確保することができる。
【0062】
ΔAが条件(7)を満たすことにより、図4〜図7に示すように、iの如何を問わず、第一のレーザー光の光利用効率を約80%確保することができる。
【0063】
ΔAが条件(8)を満たすことにより、図4〜図7に示すように、iの如何を問わず、第一のレーザー光の光利用効率を約90%確保することができる。
【0064】
また、位相シフト構造に三波長互換作用を付与するため、二種類の光路長変化量のいずれか一方の光路長変化量iAを奇数値に設定する。これにより、第一のレーザー光の光利用効率を高く維持しつつも、第三のレーザー光使用時に発生する球面収差を良好に補正することができる。そして、他方の光路長変化量iBを偶数値にすることにより、特に第一のレーザー光と第三のレーザー光の光利用効率を共に高めることが可能になる。つまり、位相シフト構造には、三波長互換作用が付与される。詳しくは、対物レンズ10は、各光ディスクD1〜D3に対応する設計波長の平行光束が入射すると、各光ディスクD1〜D3の記録面22上において球面収差を抑えて情報の記録または再生に好適なビームスポットを形成することができる。
【0065】
上記の三波長互換作用は、第一の光路差関数と第二の光路差関数が相互に作用し合って得られるものであり、例えば、一方の光路差関数が特定の二種類のレーザー光に関する互換作用を与えるというものではない。
【0066】
なお、本実施形態の対物レンズ10には、第一のレーザー光に対する光路長変化量が上記二種類の光路長変化量の和または差として現れる段差(以下、便宜上、特殊段差という)が形成される場合もある。
【0067】
また、例えば第一の光ディスクD1使用時に用いられるレーザー光が、光源の個体差や経時変化等によって、該光ディスクD1に関する設計波長である第一の波長から微小に変化することが想定される。他の光ディスクD1〜D3使用時においても同様である。このように、使用するレーザー光の波長が設計波長からずれると球面収差が生じてしまう。
【0068】
そこで、本実施形態の対物レンズ10では、第一面11に設けられる位相シフト構造に、温度変化や個体差に起因して各光ディスク使用時に用いられる光束の波長が設計波長から微小にずれることによる球面収差を抑える回折作用も付与することができる。該回折作用は、対物レンズ10に入射する各レーザー光の波長が設計波長からずれた場合であっても、該波長ずれの影響を受けることなく、対応する光ディスクの記録面22上において情報の記録または再生に好適なスポットが形成されるような回折作用、つまり波長ずれ補償作用である。
【0069】
位相シフト構造に波長の微小にずれることによる球面収差を抑える回折作用も付与する場合、位相シフト構造の設計自由度をさらに高める必要がある。そのために、さらに上記の第一、第二の光路差関数に加えて、第三の光路差関数も算出し、三種類の光路差関数を重ね合わせることにより、三波長互換作用と波長ずれ補償作用を兼ね備える位相シフト構造の形状を求める。従って、形成される段差により第一のレーザー光に付与される光路長変化量は、三種類になる。なお、ここで、三波長互換作用と波長ずれ補償作用は、第一から第三の各光路差関数が互いに作用し合って得られるものであり、いずれかの光路差関数が特定の作用にのみ寄与するというものではない。
【0070】
三種類目の光路長変化量(単位:λ)は、第一のレーザー光一波長分の(iC+ΔC)倍、として定義される。但し、iCは、iA、iBとは異なる自然数である。またΔCは、−0.5<ΔC<0.5の範囲で規定される。
【0071】
以上説明した位相シフト構造は、必ずしも第一面11の全域に設ける必要はなく、光軸を含む最も内側の領域であってかつ第三のレーザー光の収束に寄与する領域、つまりいずれのレーザー光の収束にも寄与する領域(以下、第一領域という)に設けられていればよい。
【0072】
本実施形態の対物レンズ10は、情報の記録または再生に必要なNAを確保するための有効光束径の違いから、第一領域の外側に第二領域を、場合によっては第二領域の外側にさらに第三領域を設けている。
【0073】
第二領域の位相シフト構造は、一般に第三のレーザー光よりも有効光束径が大きいとされる第一および第二のレーザー光を、対応する光ディスクD1、D2の記録面22に良好に収束させるための二波長互換作用を持つ。また、第二領域の位相シフト構造は、必要に応じて第一のレーザー光と第二のレーザー光に対する波長ずれ補償作用も持つ。第二領域の位相シフト構造に該波長ずれ補償作用も付与する場合には、上記第一領域と同様に二種類の光路差関数を算出し重ね合わせることにより、位相シフト構造を形成する。
【0074】
第二領域の位相シフト構造は、第三のレーザー光の収束に寄与しないような段差を有する。つまり、第二領域の段差における光路長変化量のうち少なくとも一種類は、第一領域における少なくとも一種類の光路長変化量とは異なる。
【0075】
なお、二種類の光路差関数を用いて第二領域の位相シフト構造を形成した場合、該第二領域にも特殊段差が形成されることがある。
【0076】
第三領域は、対物レンズ10の第一面11における第一のレーザー光の入射光束径と、第二のレーザー光の有効光束径が異なる場合に設けられる。
【0077】
まず、第一の光ディスクD1使用時の焦点距離をf1、第二の光ディスクD2使用時の焦点距離をf2としたとき、以下の条件(9)、
f1×NA1<f2×NA2・・・(9)
が成立する場合、つまり、第二のレーザー光が入射する場合の対物レンズ10の入射面での有効光束径が、第一のレーザー光が入射する場合の対物レンズ10の入射面での有効光束径より大きい場合、第二のレーザー光が第二の光ディスクD2の記録面上において略無収差で良好に収束するような位相シフト構造を有する第三領域が第一面11に形成される。条件(9)が成立する場合に形成される第三領域は、第二領域とは異なり、第一のレーザー光の収束には寄与しない。つまり、条件(9)が成立するときに形成される第三領域は、第一のレーザー光に対する開口制限機能を有する。そのため、該位相シフト構造は、第二のレーザー光について互いに隣り合う屈折面の境界において付与される光路長変化量が、第二領域における第二のレーザー光についての光路長変化量とは異なるように設計される。該設計時には、第三領域は、第二のレーザー光に対する回折効率が最大となるようにブレーズ化される。
【0078】
また以下の条件(10)、
f1×NA1>f2×NA2・・・(10)
が成立する場合、つまり、第一のレーザー光が入射する場合の対物レンズ10の入射面での有効光束径が、第二のレーザー光が入射する場合の対物レンズ10の入射面での有効光束径より大きい場合、第一のレーザー光が第一の光ディスクD1の記録面上において略無収差で良好に収束するような位相シフト構造を有する第三領域が第一面11に形成される。条件(10)が成立する場合に形成される第三領域は、第二領域とは異なり、第二のレーザー光の収束には寄与しない。つまり、条件(10)が成立するときに形成される第三領域は、第二のレーザー光に対する開口制限機能を有する。そのため、該構造は、第一のレーザー光について互いに隣り合う屈折面の境界において付与される光路長変化量が、第二領域における第一のレーザー光についての光路長変化量とは異なるように設計される。該設計時には、第三領域は、第一のレーザー光に対する回折効率が最大となるようにブレーズ化される。
【0079】
以上説明した第一実施形態の設計方法により設計された対物レンズ10を対物光学系として用いた光情報記録再生装置100の具体的な実施例を6例(実施例1〜6)示す。実施例1〜5は、第三のレーザー光において回折効率が最も高くなる回折次数を(k+1)次に設定した構成例である。実施例6は、第三のレーザー光において回折効率が最も高くなる回折次数をk次に設定した構成例である。
【0080】
各実施例1〜6の対物レンズ10を搭載する光情報記録再生装置100は、図1、および図2(A)〜(C)に示される。なお、実施例1、実施例2、実施例4および実施例6に関しては、第三の光ディスクD3使用時は、情報の記録または再生に好適な開口数を得るために図示しない開口制限素子を用いて光束径を規定している。そのため、図2(A)〜(C)に示すように、第三の光ディスクD3使用時は、第一、第二の光ディスクD1、D2使用時に比べて有効光束径が小さくなる。
【0081】
各実施例のうち、三種類の光ディスクに対する互換性を有する光情報記録再生装置100の実施例において使用される光ディスクは、保護層厚0.6mmの最も記録密度の高い第一の光ディスクD1、保護層厚0.6mmであり第一の光ディスクD1よりは記録密度の低い第二の光ディスクD2、保護層厚1.2mmの最も記録密度の低い第三の光ディスクD3を想定する。
【実施例1】
【0082】
実施例1の対物レンズ10は、二種類の光路長変化量を与える位相シフト構造を第一面11に有している。実施例1の対物レンズ10の具体的な仕様は、表1に示されている。
【0083】
【表1】
【0084】
表1中、倍率の値が示すように、実施例1では、いずれの光ディスクD1〜D3使用時であっても、レーザー光は平行光束として対物レンズ10に入射する。表1に示す対物レンズ10を備える光情報記録再生装置100の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表2〜表4に示される。但し、表2〜表4では、説明の便宜上、光源と対物レンズの間に配設される部材に関する数値構成を省略している。以下に示す各実施例の具体的数値構成においても同様である。
【0085】
【表2】
【表3】
【表4】
【0086】
表2〜表4中、面番号0は光源1A〜3A、面番号1は対物レンズ10の第一面11、面番号2は対物レンズ10の第二面12、面番号3と4はそれぞれ各光ディスクD1〜D3における保護層21と記録面22、をそれぞれ表す。rはレンズ各面の曲率半径(単位:mm)、dは情報の記録または再生時におけるレンズ厚またはレンズ間隔(単位:mm)、n(Xnm)は波長Xnmでの屈折率である。後述する実施例2および実施例3における各表においても同様である。
【0087】
対物レンズ10の両面11、12(面番号1、2)は、非球面である。各面11、12の各非球面の形状を規定する円錐係数と非球面係数は、表5に示される。なお各表における表記Eは、10を基数、Eの右の数字を指数とする累乗を表している。
【0088】
【表5】
【0089】
また実施例1の対物レンズ10の第一面11に形成されることになる位相シフト構造を規定するための第一の光路差関数および第二の光路差関数における係数P2iは表6に示される。また、各レーザー光の回折効率が最大になる回折次数mは表7に示される。表7や図3〜6に示すように、iすなわち、第一のレーザー光の回折効率が最大になる回折次数と、他の各レーザー光の回折効率が最大になる回折次数は異なる。また、本実施例1および後に示す実施例2〜5において、第三のレーザー光において回折効率が最大になる回折次数mは(k+1)で表される。
【0090】
【表6】
【表7】
【0091】
実施例1の対物レンズ10の第一面11に形成される位相シフト構造は具体的には表8に示される。表8は、実施例1の対物レンズ10の第一面11に形成される各輪帯(上記の屈折面に相当)の範囲と、第一のレーザー光が各輪帯を透過することにより与えられる光路長変化量を示した表である。各輪帯の範囲は、光軸AXからの高さhmin〜hmaxで表している。
【0092】
【表8】
【0093】
表8に示すように、第一のレーザー光が各輪帯間の段差により付与される光路長変化量は、−3または−2波長分であることがわかる。つまり、iA=3、iB=2で、ΔA=ΔB=0である。なお、輪帯番号17、18の各輪帯間および輪帯番号24、25の各輪帯間に形成される段差は、光路長変化量が−5波長分、つまり二種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。
【0094】
図8(A)〜(C)は、実施例1の対物レンズ10を有する光情報記録再生装置100において、第一から第三の各レーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。図8(A)が第一のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図8(B)が第二のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図8(C)が第三のレーザー光使用時に発生する球面収差を、それぞれ表す。各収差図において、各レーザー光が設計波長であるときの球面収差を実線で示す。また各収差図では、各レーザー光の波長が該設計波長から+5nmずれたときの球面収差を破線で示している。以下の各実施例で示す収差図においても同様である。
【0095】
図8(A)〜(C)に示すように、実施例1の対物レンズ10を使用すると、各光ディスクD1〜D3のいずれに対する情報の記録または再生時であっても、対応する設計波長のレーザー光が球面収差を生じることなく各光ディスクの記録面22上に良好に収束することがわかる。さらに、該レーザー光が設計波長からずれたことによる球面収差の変化も実使用上支障がない程度に抑えていることが分かる。なお、該レーザー光が設計波長からずれたことによる収束位置の光軸方向のずれは図示しないアクチュエータ等を用いて対物レンズ10を光軸AX方向に駆動することにより補正可能である。このアクチュエータ等を用いた補正は以下の各実施例においても同様に適用される。
【実施例2】
【0096】
実施例2の対物レンズ10は、三種類の光路長変化量を与える位相シフト構造を第一面11に有している。実施例2の対物レンズ10の具体的な仕様は、表9に示されている。
【0097】
【表9】
【0098】
表9中、倍率の値が示すように、実施例2でも、いずれの光ディスクD1〜D3使用時における各レーザー光は平行光束として対物レンズ10に入射する。表9に示す対物レンズ10を備える光情報記録再生装置100の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表10〜表12に示される。
【0099】
【表10】
【表11】
【表12】
【0100】
対物レンズ10の両面11、12(面番号1、2)は、実施例1と同様に非球面である。各面11、12の各非球面の形状を規定する円錐係数と非球面係数は、表13に示される。
【0101】
【表13】
【0102】
また実施例2の対物レンズ10の第一面11に形成されることになる位相シフト構造を規定するための第一から第三の光路差関数における係数P2iは表14に示される。また、各レーザー光の回折効率が最大になる回折次数mは表15に示される。
【0103】
【表14】
【表15】
【0104】
実施例2の対物レンズ10の第一面11に形成される位相シフト構造は具体的には表16に示される。表16は、実施例2の対物レンズ10の第一面11に形成される各輪帯の範囲と、第一のレーザー光が各輪帯間の段差を透過することにより与えられる光路長変化量を示した表である。
【0105】
【表16】
【0106】
表16に示すように、第一のレーザー光が各輪帯間の段差により付与される光路長変化量は、−3、−2または10波長分であることがわかる。つまり、iA=3、iB=2、iC=10で、ΔA=ΔB=Δc=0である。なお、輪帯番号22、23の各輪帯間、輪帯番号26、27の各輪帯間、輪帯番号28、29の各輪帯間、輪帯番号31、32の各輪帯間それぞれに形成される各段差は、三種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。
【0107】
図9(A)〜(C)は、実施例2の対物レンズ10を有する光情報記録再生装置100において、第一から第三の各レーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。図9(A)が第一のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図9(B)が第二のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図9(C)が第三のレーザー光使用時に発生する球面収差を、それぞれ表す。
【0108】
図9(A)〜(C)に示すように、実施例2の対物レンズ10を使用すると、各光ディスクD1〜D3のいずれに対する情報の記録または再生時であっても、対応する設計波長のレーザー光が球面収差を生じることなく各光ディスクの記録面22上に良好に収束することがわかる。さらに、実施例2の対物レンズ10は、三種類の光路長変化量を付与するような段差を持つ位相シフト構造が形成されている。つまり、実施例2の対物レンズ10に形成された位相シフト構造は、三波長互換作用と波長ずれ補償作用を併せ持つ。従って、図9(A)〜(C)に示すように、第一から第三の各レーザー光が設計波長からずれた場合であっても、球面収差の変化が極めて良好に抑えられ、常に球面収差が補正された状態にあることが分かる。
【実施例3】
【0109】
実施例3の対物レンズ10の対物レンズ10の具体的な仕様は、表17に示されている。
【0110】
【表17】
【0111】
表17中、倍率の値が示すように、実施例3でも、いずれの光ディスクD1〜D3使用時における各レーザー光は平行光束として対物レンズ10に入射する。表17に示す対物レンズ10を備える光情報記録再生装置100の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表18〜表20に示される。
【0112】
【表18】
【表19】
【表20】
【0113】
なお、表17によれば、f1×NA1が2.015、f2×NA2が2.079となる。つまり、実施例3の光ピックアップ装置100は、条件(10)を満たす。従って実施例3の対物レンズ10の第一面11は、二種類の光路長変化量を付与する位相シフト構造を持つ第一領域と、第三のレーザー光に対する開口制限機能を有する位相シフト構造を持つ第二領域と、第一のレーザー光に対する開口制限機能を有する位相シフト構造を持つ第三領域が形成されている。なお、第一面11における各領域の範囲を光軸AXからの高さhで表すと、
第一領域…h≦1.640、
第二領域…1.640<h≦2.015、
第三領域…2.015<h≦2.080、となる。
【0114】
なお、上記の通り、第三領域は、第二のレーザー光の収束にのみ寄与し、第一のレーザー光の収束には寄与しない。従って、実施例3では、第三領域における光路長変化量は、第二のレーザー光一波長分の(i+Δ)倍として表される。
【0115】
実施例3の対物レンズ10の両面11、12(面番号1、2)は、実施例1や2と同様に非球面である。各面11、12の各非球面の形状を規定する円錐係数と非球面係数は、表21に示される。なお、表21に示すように、第一面11の非球面形状は、第一から第三の各領域で異なる。
【0116】
【表21】
【0117】
また実施例3の対物レンズ10の第一面11に形成されることになる位相シフト構造を規定するための光路差関数における係数P2iは表22に示される。また、各レーザー光の回折効率が最大になる回折次数mは表23に示される。
【0118】
【表22】
【表23】
【0119】
表23に示すように、回折次数mは、使用するレーザー光ごと、および位相シフト構造が設けられる領域ごとに異なる値が設定されている。詳しくは、第一領域は、回折効率が最大となる回折次数が異なるものの、第一から第三の各レーザー光の収束に寄与するような位相シフト構造になっている。第二領域は、第一のレーザー光および第二のレーザー光の収束に寄与するような位相シフト構造になっている。第三領域は、第二のレーザー光の収束にのみ寄与するような位相シフト構造になっている。
【0120】
実施例3の対物レンズ10の第一面11に形成される位相シフト構造は具体的には表24に示される。表24は、実施例3の対物レンズ10の第一面11に形成される各輪帯の範囲と、光路長変化量を示した表である。
【0121】
【表24】
【0122】
上述したように、実施例3の対物レンズ10では、第一面11において領域毎に異なる位相シフト構造が形成されている。従って、表24に示すように、領域毎で第一のレーザー光が各輪帯間の段差により付与される光路長変化量が異なる。
【0123】
つまり、表24に示すように、第一領域では、第一のレーザー光が各輪帯間の段差により付与される光路長変化量は、−5または2波長分であることがわかる。つまり、iA=5、iB=2であり、ΔA=ΔB=0である。第二領域では、上記光路長変化量は、±5または−3波長分であることがわる。つまり、iA=5、iB=3であり、ΔA=ΔB=0である。第三領域では、上記光路長変化量は、−1波長分である。
【0124】
なお、輪帯番号20、21の各輪帯間に形成される各段差は、第二領域における二種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。
【0125】
図10(A)〜(C)は、実施例3の対物レンズ10を有する光情報記録再生装置100において、第一から第三の各レーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。図10(A)が第一のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図10(B)が第二のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図10(C)が第三のレーザー光使用時に発生する球面収差を、それぞれ表す。
【0126】
図10(A)〜(C)に示すように、実施例3の対物レンズ10を使用すると、各光ディスクD1〜D3のいずれに対する情報の記録または再生時であっても、対応する設計波長のレーザー光が球面収差を生じることなく各光ディスクの記録面22上に良好に収束することがわかる。また、該レーザー光が設計波長からずれたことによる球面収差の変化も実使用上支障がない程度に抑えていることが分かる。特に、実施例3の対物レンズ10によれば、図10(C)に示すように、第三の光ディスクD3使用時において、第三のレーザー光が設計波長からずれた場合であっても、球面収差の変化が極めて良好に抑えられ、常に球面収差が補正された状態にあることが分かる。
【実施例4】
【0127】
実施例4の対物レンズ10は、実施例2と同様に、三種類の光路長変化量を与える位相シフト構造を第一面11に有している。実施例4の対物レンズ10の具体的な仕様は、表25に示されている。
【0128】
【表25】
【0129】
表25中、倍率の値が示すように、実施例4でも、いずれの光ディスクD1〜D3使用時における各レーザー光は平行光束として対物レンズ10に入射する。表25に示す対物レンズ10を備える光情報記録再生装置100の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表26〜表28に示される。
【0130】
【表26】
【表27】
【表28】
【0131】
対物レンズ10の両面11、12(面番号1、2)は、上記各実施例と同様に非球面である。各面11、12の各非球面の形状を規定する円錐係数と非球面係数は、表29に示される。
【0132】
【表29】
【0133】
また実施例4の対物レンズ10の第一面11に形成されることになる位相シフト構造を規定するための第一から第三の光路差関数における係数P2iは表30に示される。また、各レーザー光の回折効率が最大になる回折次数mは表31に示される。
【0134】
【表30】
【表31】
【0135】
実施例4の対物レンズ10の第一面11に形成される位相シフト構造は具体的には表32に示される。表32は、実施例4の対物レンズ10の第一面11に形成される各輪帯の範囲と、第一のレーザー光が各輪帯間の段差を透過することにより与えられる光路長変化量を示した表である。
【0136】
【表32】
【0137】
表32に示すように、第一のレーザー光が各輪帯間の段差により付与される光路長変化量は、−3、−2または8波長分であることがわかる。つまり、iA=3、iB=2、iC=8で、ΔA=0.22、ΔB=Δc=0である。従って、実施例4の対物レンズ10は、上記条件(1)〜(3)を満たす。なお、輪帯番号27、28の各輪帯間に形成される段差は、iA=3とiC=8の二種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。
【0138】
図11(A)〜(C)は、実施例4の対物レンズ10を有する光情報記録再生装置100において、第一から第三の各レーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。図11(A)が第一のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図11(B)が第二のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図11(C)が第三のレーザー光使用時に発生する球面収差を、それぞれ表す。
【0139】
図11(A)〜(C)に示すように、実施例4の対物レンズ10を使用すると、各光ディスクD1〜D3のいずれに対する情報の記録または再生時であっても、対応する設計波長のレーザー光が球面収差を生じることなく各光ディスクの記録面22上に良好に収束することがわかる。さらに、実施例4の対物レンズ10は、三種類の光路長変化量を付与するような段差を持つ位相シフト構造が形成されている。つまり、実施例4の対物レンズ10に形成された位相シフト構造は、三波長互換作用と波長ずれ補償作用を併せ持つ。従って、図11(A)〜(C)に示すように、第一から第三の各レーザー光が設計波長からずれた場合であっても、球面収差の変化が極めて良好に抑えられ、常に球面収差が補正された状態にあることが分かる。
【実施例5】
【0140】
実施例5の対物レンズ10の対物レンズ10の具体的な仕様は、表34に示されている。
【0141】
【表33】
【0142】
表33中、倍率の値が示すように、実施例5でも、他の実施例同様、いずれの光ディスクD1〜D3使用時における各レーザー光も平行光束として対物レンズ10に入射する。表33に示す対物レンズ10を備える光情報記録再生装置100の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表34〜表36に示される。
【0143】
【表34】
【表35】
【表36】
【0144】
実施例5の対物レンズ10の第一面11は、三種類の光路長変化量を付与する位相シフト構造を持つ第一領域と、三種類の光路長変化量を付与しかつ第三のレーザー光に対する開口制限機能を有する位相シフト構造を持つ第二領域が形成されている。なお、第一面11における各領域の範囲を光軸AXからの高さhで表すと、
第一領域…h≦1.580、
第二領域…1.580<h≦1.950、となる。
【0145】
実施例5の対物レンズ10の両面11、12(面番号1、2)も、上記各実施例と同様に非球面である。各面11、12の各非球面の形状を規定する円錐係数と非球面係数は、表37に示される。なお、表37に示すように、第一面11の非球面形状は、第一領域と第二領域で異なる。
【0146】
【表37】
【0147】
また実施例5の対物レンズ10の第一面11に形成されることになる位相シフト構造を規定するための光路差関数における係数P2iは表38に示される。また、各レーザー光の回折効率が最大になる回折次数mは表39に示される。
【0148】
【表38】
【表39】
【0149】
なお、表38に示すように、各領域を規定する各光路差関数における係数P2の値が異なる。従って、表34〜表36に示すように、実施例5の対物レンズ10の第一面11は、領域毎に曲率半径rの値が異なる。
【0150】
表39に示すように、回折次数mは、使用するレーザー光ごと、および位相シフト構造が設けられる領域ごとに異なる値が設定されている。詳しくは、第一領域は、回折効率が最大となる回折次数が異なるものの、第一から第三の各レーザー光の収束に寄与するような位相シフト構造になっている。第二領域は、第一のレーザー光および第二のレーザー光の収束に寄与するような位相シフト構造になっている。
【0151】
実施例5の対物レンズ10の第一面11に形成される位相シフト構造は具体的には表40に示される。表40は、実施例5の対物レンズ10の第一面11に形成される各輪帯の範囲と光路長変化量を示した表である。
【0152】
【表40】
【0153】
上述したように、実施例5の対物レンズ10では、第一面11の領域によって異なる位相シフト構造が形成されている。そのため、従って、表40に示すように、領域毎で第一のレーザー光が各輪帯間の段差により付与される光路長変化量が異なる。
【0154】
つまり、表40に示すように、第一領域では、第一のレーザー光が各輪帯間の段差により付与される光路長変化量は、−5、2または8波長分であることがわかる。つまり、iA=5、iB=2、iC=8であり、ΔA=ΔB=ΔC=0.05である。第二領域では、上記光路長変化量は、±5または−3波長分であることがわる。つまり、iA=5、iB=3であり、ΔA=ΔB=0である。従って、実施例5の対物レンズ10は、上記条件(1)〜(4)を満たす。
【0155】
なお、第一領域において、輪帯番号20、21の輪帯間、21、22の輪帯間、23〜27の各輪帯間に形成される各段差は、iA=5とiC=8の二種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。また、第二領域において、輪帯番号33、34の輪帯間および45、46の輪帯間に形成される段差は、二種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。
【0156】
図12(A)〜(C)は、実施例5の対物レンズ10を有する光情報記録再生装置100において、第一から第三の各レーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。図12(A)が第一のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図12(B)が第二のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図12(C)が第三のレーザー光使用時に発生する球面収差を、それぞれ表す。
【0157】
図12(A)〜(C)に示すように、実施例5の対物レンズ10を使用すると、各光ディスクD1〜D3のいずれに対する情報の記録または再生時であっても、対応する設計波長のレーザー光が球面収差を生じることなく各光ディスクの記録面22上に良好に収束することがわかる。また、該レーザー光が設計波長からずれたことによる球面収差の変化も実使用上支障がない程度に抑えていることが分かる。特に、実施例5の対物レンズ10によれば、図12(C)に示すように、第三の光ディスクD3使用時において、第三のレーザー光が設計波長からずれた場合であっても、球面収差の変化が極めて良好に抑えられ、常に球面収差が補正された状態にあることが分かる。
【実施例6】
【0158】
実施例6の対物レンズ10は、三種類の光路長変化量を与える位相シフト構造を第一面11に有している。実施例6の対物レンズ10の具体的な仕様は、表41に示されている。
【0159】
【表41】
【0160】
表41中、倍率の値が示すように、実施例6でも、いずれの光ディスクD1〜D3使用時における各レーザー光は平行光束として対物レンズ10に入射する。表41に示す対物レンズ10を備える光情報記録再生装置100の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表42〜表44に示される。
【0161】
【表42】
【表43】
【表44】
【0162】
対物レンズ10の両面11、12(面番号1、2)は、上記各実施例と同様に非球面である。各面11、12の各非球面の形状を規定する円錐係数と非球面係数は、表45に示される。
【0163】
【表45】
【0164】
また実施例6の対物レンズ10の第一面11に形成されることになる位相シフト構造を規定するための第一から第三の光路差関数における係数P2iは表46に示される。また、各レーザー光の回折効率が最大になる回折次数mは表47に示される。本実施例6では、第三のレーザー光において回折効率が最大になる回折次数mはkで表される。
【0165】
【表46】
【表47】
【0166】
実施例6の対物レンズ10の第一面11に形成される位相シフト構造は具体的には表50に示される。表48は、実施例6の対物レンズ10の第一面11に形成される各輪帯の範囲と、第一のレーザー光が各輪帯間の段差を透過することにより与えられる光路長変化量を示した表である。
【0167】
【表48】
【0168】
表48に示すように、第一のレーザー光が各輪帯間の段差により付与される光路長変化量は、3、2または−10波長分であることがわかる。つまり、iA=3、iB=2、iC=10で、ΔA=−0.10、ΔB=Δc=0である。従って、実施例6の対物レンズ10は、上記条件(5)〜(8)を満たす。なお、輪帯番号12、13の各輪帯間、24、25の各輪帯間、32、33の各輪帯間、34、35の各輪帯間、38、39の各輪帯間、40、41の各輪帯間、46、47の各輪帯間、48、49の各輪帯間、51、52の各輪帯間、にそれぞれ形成される段差は、iB=2とiA=3の二種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。
【0169】
また、輪帯番号25、26の各輪帯間、35、36の各輪帯間、39、40の各輪帯間、47、48の各輪帯間、にそれぞれ形成される段差は、iB=2とiC=10の二種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。
【0170】
また、輪帯番号42、43の各輪帯間、50、51の各輪帯間、にそれぞれ形成される段差は、iB=2、iA=3、iC=10の三種類の光路長変化量の和として求まる特殊段差である。
【0171】
図13(A)〜(C)は、実施例6の対物レンズ10を有する光情報記録再生装置100において、第一から第三の各レーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。図13(A)が第一のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図13(B)が第二のレーザー光使用時に発生する球面収差を、図13(C)が第三のレーザー光使用時に発生する球面収差を、それぞれ表す。
【0172】
図13(A)〜(C)に示すように、実施例6の対物レンズ10を使用すると、各光ディスクD1〜D3のいずれに対する情報の記録または再生時であっても、対応する設計波長のレーザー光が球面収差を生じることなく各光ディスクの記録面22上に良好に収束することがわかる。さらに、実施例6の対物レンズ10は、三種類の光路長変化量を付与するような段差を持つ位相シフト構造が形成されている。つまり、実施例6の対物レンズ10に形成された位相シフト構造は、三波長互換作用と波長ずれ補償作用を併せ持つ。従って、図13(A)〜(C)に示すように、第一から第三の各レーザー光が設計波長からずれた場合であっても、球面収差の変化が極めて良好に抑えられ、常に球面収差が補正された状態にあることが分かる。
【0173】
なお、実施例4の対物レンズ10を用いて第一から第三の光ディスクD1〜D3に対する情報の記録または再生をした場合の光利用効率は、第一のレーザー光が約85%、第二のレーザー光が約73%、第三のレーザー光が56%となる。また、実施例5の対物レンズ10を用いて第一から第三の光ディスクD1〜D3に対する情報の記録または再生をした場合の光利用効率は、第一のレーザー光が約98%、第二のレーザー光が約75%、第三のレーザー光が41%となる。また、実施例6の対物レンズ10を用いて第一から第三の光ディスクD1〜D3に対する情報の記録または再生をした場合の光利用効率は、第一のレーザー光が約97%、第二のレーザー光が約69%、第三のレーザー光が51%となる。以上のように、本発明の実施形態の対物レンズによれば、第三のレーザー光において回折効率が最大になる回折次数に応じた各条件を満たすように構成することにより、記録密度が高い光ディスクD1、D2使用時にはより多くの光量を利用することができ、かつ第三の光ディスクD3使用時には、情報の記録または再生に関して実使用上何ら問題ない程度の光量を確保することができる。
【0174】
以上が本発明に係る設計方法により設計された対物レンズの具体的実施例である。なお、上記の各実施例はあくまでも本発明に係る対物レンズの一例である。つまり本発明に係る対物レンズは、各実施例の具体的数値構成に限定されるものではない。例えば、光情報記録再生装置の対物光学系を構成するレンズ等の光学素子の数は複数であっても良い。対物光学系が複数の光学素子から構成される場合、本発明に係る設計方法により設計される光学素子は、片側一面のみならず両面に位相シフト構造を設けることができる。
【0175】
また、三波長互換作用で調整される球面収差の値は、0でなくてもよく、設計者が任意に設定することが可能である。同様に波長ずれ補償作用でも波長ずれに起因して変化する球面収差を必ずしも打ち消す作用を与える必要はなく、球面収差の変化の度合いは設計者が任意に設定することができる。
【0176】
さらに、上記の各実施例で提示した各段差のiの組み合わせも例示であって、必ずしも各実施例の組み合わせに限定されるものではない。例えば、対物レンズの第一面に設けられた位相シフト構造によって付与される光路長変化量が三種類ある場合、各段差の組み合わせは、iA=5、iB=2、iC=10であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明の実施形態の光情報記録再生装置の概略構成を表す模式図である。
【図2】本発明の実施形態の光情報記録再生装置を各光ディスク使用時における光路ごとに分けて示す図である。
【図3】本発明の実施形態の対物レンズの、第一面に設けられた位相シフト構造の拡大図である。
【図4】本発明の実施形態の対物レンズの、iを2に設定したときの第一から第三の各レーザー光の光利用効率について示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態の対物レンズの、iを3に設定したときの第一から第三の各レーザー光の光利用効率について示すグラフである。
【図6】本発明の実施形態の対物レンズの、iを5に設定したときの第一から第三の各レーザー光の光利用効率について示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態の対物レンズの、iを10に設定したときの第一から第三の各レーザー光の光利用効率について示すグラフである。
【図8】実施例1の光情報記録再生装置の、第一から第三の各レーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。
【図9】実施例2の光情報記録再生装置の、第一から第三のレーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。
【図10】実施例3の光情報記録再生装置の、第一から第三のレーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。
【図11】実施例4の光情報記録再生装置の、第一から第三のレーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。
【図12】実施例5の光情報記録再生装置の、第一から第三のレーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。
【図13】実施例6の光情報記録再生装置の、第一から第三のレーザー光を使用した時に発生する球面収差を表す収差図である。
【符号の説明】
【0178】
1A、2A、3A 光源
10 対物レンズ
D1〜D3 光ディスク
100 光情報記録再生装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録密度の異なる複数の光ディスクに対して第一から第三の波長を持つ三種類の略平行光束を使い分けることにより、各光ディスクに対する情報の記録または再生を行う光情報記録再生装置に用いられる対物レンズであって、
前記第一から第三の波長を、それぞれλ1、λ2、λ3、とすると、
λ1<λ2<λ3
1.9<λ3/λ1<2.1
であり、
前記第一の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第一の光ディスクの保護層厚をt1、前記第二の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第二の光ディスクの保護層厚をt2、前記第三の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第三の光ディスクの保護層厚をt3、とすると、
t1≦t2<t3
であり、
前記第一の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA1、前記第二の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA2、前記第三の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA3、とすると、
NA1>NA3かつNA2>NA3
であり、
少なくとも一方の面に、複数の同心円状の屈折面で構成された位相シフト構造を有しており、
前記位相シフト構造は、前記第三の波長の光束を前記第三の光ディスクの記録面上に収束する第一領域を有し、
前記第一領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において第一の波長の光束に対して絶対値が異なる少なくとも二種類の光路長変化量を付与する段差を有し、
前記少なくとも二種類の光路長変化量の各絶対値は、前記第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍、および(iB+ΔB)倍(但し、iA、iBは自然数かつ、iA≠iB、−0.5<ΔA<0.5、−0.5<ΔB<0.5)で表され、
さらに、前記iAがiA=2k+1(但し、kは自然数)で表され、かつ前記第三の波長の光束において回折効率が最大となる回折次数が(k+1)次であり、前記ΔAは以下の条件(1)、
0.000≦ΔA≦0.384・・・(1)
を満たすことを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記ΔAは、以下の条件(2)、
0.020≦ΔA≦0.324・・・(2)
を満たすことを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項3】
請求項1から請求項2のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記ΔAは、以下の条件(3)、
0.020≦ΔA≦0.258・・・(3)
を満たすことを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項4】
請求項1または請求項3のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記ΔAは、以下の条件(4)、
0.020≦ΔA≦0.178・・・(4)
を満たすことを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項5】
記録密度の異なる複数の光ディスクに対して第一から第三の波長を持つ三種類の略平行光束を使い分けることにより、各光ディスクに対する情報の記録または再生を行う光情報記録再生装置に用いられる対物レンズであって、
前記第一から第三の波長を、それぞれλ1、λ2、λ3、とすると、
λ1<λ2<λ3
1.9<λ3/λ1<2.1
であり、
前記第一の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第一の光ディスクの保護層厚をt1、前記第二の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第二の光ディスクの保護層厚をt2、前記第三の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第三の光ディスクの保護層厚をt3、とすると、
t1≦t2<t3
であり、
前記第一の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA1、前記第二の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA2、前記第三の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA3、とすると、
NA1>NA3かつNA2>NA3
であり、
少なくとも一方の面に、複数の同心円状の屈折面で構成された位相シフト構造を有しており、
前記位相シフト構造は、前記第三の波長の光束を前記第三の光ディスクの記録面上に収束する第一領域を有し、
前記第一領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において第一の波長の光束に対して絶対値が異なる少なくとも二種類の光路長変化量を付与する段差を有し、
前記少なくとも二種類の光路長変化量の各絶対値は、前記第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍、および(iB+ΔB)倍(但し、iA、iBは自然数、かつ、iA≠iB、−0.5<ΔA<0.5、−0.5<ΔB<0.5)で表され、
さらに、前記iAがiA=2k+1(但し、kは自然数)で表され、かつ前記第三の波長の光束において回折効率が最大となる回折次数がk次であり、前記ΔAは以下の条件(5)、
−0.384≦ΔA≦−0.070・・・(5)
を満たすことを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項6】
請求項5に記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記ΔAは、以下の条件(6)、
−0.324≦ΔA≦−0.070・・・(6)
を満たすことを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記ΔAは、以下の条件(7)、
−0.258≦ΔA≦−0.070・・・(7)
を満たすことを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記ΔAは、以下の条件(8)、
−0.178≦ΔA≦−0.070・・・(8)
を満たすことを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記第一領域の段差が付与する前記光路長変化量の種類は二種類あり、
各段差のiAとiBは、
iA=3、
iB=2
であることを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記第一領域の段差が付与する前記光路長変化量の種類は二種類あり、
各段差のiAとiBは、
iA=5、
iB=2
であることを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項11】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記第一領域の段差が付与する前記光路長変化量の種類は三種類あり、
前記第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍および(iB+ΔB)倍とは異なる光路長変化量の絶対値が、(iC+ΔC)倍
但し、iCは自然数、かつ、iC≠iA、iC≠iB、−0.5<ΔC<0.5
で表され、
各段差のiA、iBおよびiCは、
iA=3、
iB=2、
iC=8、
であることを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項12】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記第一領域の段差が付与する前記光路長変化量の種類は三種類あり、
前記第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍および(iB+ΔB)倍とは異なる光路長変化量の絶対値が、(iC+ΔC)倍
但し、iCは自然数、かつ、iC≠iA、iC≠iB、−0.5<ΔC<0.5
で表され、
各段差のiA、iBおよびiCは、
iA=3、
iB=2、
iC=10、
であることを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項13】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記第一領域の段差が付与する前記光路長変化量の種類は三種類あり、
前記第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍および(iB+ΔB)倍とは異なる光路長変化量の絶対値が、(iC+ΔC)倍
但し、iCは自然数、かつ、iC≠iA、iC≠iB、−0.5<ΔC<0.5
で表され、
各段差のiA、iBおよびiCは、
iA=5、
iB=2、
iC=8、
であることを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項14】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記第一領域の段差が付与する前記光路長変化量の種類は三種類あり、
前記第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍および(iB+ΔB)倍とは異なる光路長変化量の絶対値が、(iC+ΔC)倍
但し、iCは自然数、かつ、iC≠iA、iC≠iB、−0.5<ΔC<0.5
で表され、
各段差のiA、iBおよびiCは、
iA=5、
iB=2、
iC=10、
であることを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項15】
単レンズであることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれかに記載の光情報再生装置用対物レンズ。
【請求項16】
前記位相シフト構造は、前記第一領域の外側に、前記第一の波長の光束および前記第二の波長の光束をそれぞれ前記第一の光ディスクおよび前記第二の光ディスクの記録面上に収束し、かつ前記第三の波長の光束の収束には寄与しない第二領域を有し、
前記第二領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において、第一の光束に対して少なくとも一種類の光路長変化量を付与する段差を有し、
前記少なくとも一種類の光路長変化量の絶対値は、前記第一領域における少なくとも一種類の光路長変化量の絶対値とは異なることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項17】
請求項16に記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記第一の光ディスクに対する情報の記録または再生時における焦点距離をf1、前記第二の光ディスクに対する情報の記録または再生時における焦点距離をf2とすると、以下の条件(9)、
f1×NA1<f2×NA2・・・(9)
を満たし、
前記位相シフト構造は、前記第二領域の外側に、前記第二の波長の光束のみを収束し、前記第一および第三の波長の光束の収束には寄与しない第三領域を有し、
前記第三領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において、第二の光束に対して少なくとも一種類の光路長変化量を付与する段差を有し、
前記少なくとも一種類の光路長変化量の絶対値が、前記第二領域における光路長変化量の絶対値とは異なることを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項18】
請求項16に記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記第一の光ディスクに対する情報の記録または再生時における焦点距離をf1、前記第二の光ディスクに対する情報の記録または再生時における焦点距離をf2とすると、以下の条件(10)、
f1×NA1>f2×NA2・・・(10)
を満たし、
前記位相シフト構造は、前記第二領域の外側に、前記第一の波長の光束のみを収束し、前記第二および第三の波長の光束の収束には寄与しない第三領域を有し、
前記第三領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において、第一の光束に対して少なくとも一種類の光路長変化量を付与する段差を有し、
前記少なくとも一種類の光路長変化量の絶対値が、前記第二領域における光路長変化量の絶対値とは異なることを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項19】
使用される光ディスクに対応して第一から第三の波長を持つ三種類の光束をそれぞれ照射する第一から第三の光源と、
請求項1から請求項18のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズと、
前記第一から第三の光源から照射された光を前記対物レンズを介して前記光ディスクに導く偏向手段と、
前記光ディスクからの戻り光を受光するセンサと、を有することを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項1】
記録密度の異なる複数の光ディスクに対して第一から第三の波長を持つ三種類の略平行光束を使い分けることにより、各光ディスクに対する情報の記録または再生を行う光情報記録再生装置に用いられる対物レンズであって、
前記第一から第三の波長を、それぞれλ1、λ2、λ3、とすると、
λ1<λ2<λ3
1.9<λ3/λ1<2.1
であり、
前記第一の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第一の光ディスクの保護層厚をt1、前記第二の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第二の光ディスクの保護層厚をt2、前記第三の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第三の光ディスクの保護層厚をt3、とすると、
t1≦t2<t3
であり、
前記第一の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA1、前記第二の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA2、前記第三の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA3、とすると、
NA1>NA3かつNA2>NA3
であり、
少なくとも一方の面に、複数の同心円状の屈折面で構成された位相シフト構造を有しており、
前記位相シフト構造は、前記第三の波長の光束を前記第三の光ディスクの記録面上に収束する第一領域を有し、
前記第一領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において第一の波長の光束に対して絶対値が異なる少なくとも二種類の光路長変化量を付与する段差を有し、
前記少なくとも二種類の光路長変化量の各絶対値は、前記第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍、および(iB+ΔB)倍(但し、iA、iBは自然数かつ、iA≠iB、−0.5<ΔA<0.5、−0.5<ΔB<0.5)で表され、
さらに、前記iAがiA=2k+1(但し、kは自然数)で表され、かつ前記第三の波長の光束において回折効率が最大となる回折次数が(k+1)次であり、前記ΔAは以下の条件(1)、
0.000≦ΔA≦0.384・・・(1)
を満たすことを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記ΔAは、以下の条件(2)、
0.020≦ΔA≦0.324・・・(2)
を満たすことを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項3】
請求項1から請求項2のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記ΔAは、以下の条件(3)、
0.020≦ΔA≦0.258・・・(3)
を満たすことを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項4】
請求項1または請求項3のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記ΔAは、以下の条件(4)、
0.020≦ΔA≦0.178・・・(4)
を満たすことを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項5】
記録密度の異なる複数の光ディスクに対して第一から第三の波長を持つ三種類の略平行光束を使い分けることにより、各光ディスクに対する情報の記録または再生を行う光情報記録再生装置に用いられる対物レンズであって、
前記第一から第三の波長を、それぞれλ1、λ2、λ3、とすると、
λ1<λ2<λ3
1.9<λ3/λ1<2.1
であり、
前記第一の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第一の光ディスクの保護層厚をt1、前記第二の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第二の光ディスクの保護層厚をt2、前記第三の波長の光束を用いて情報の記録または再生が行われる第三の光ディスクの保護層厚をt3、とすると、
t1≦t2<t3
であり、
前記第一の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA1、前記第二の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA2、前記第三の光ディスクに対する情報の記録または再生に必要な開口数をNA3、とすると、
NA1>NA3かつNA2>NA3
であり、
少なくとも一方の面に、複数の同心円状の屈折面で構成された位相シフト構造を有しており、
前記位相シフト構造は、前記第三の波長の光束を前記第三の光ディスクの記録面上に収束する第一領域を有し、
前記第一領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において第一の波長の光束に対して絶対値が異なる少なくとも二種類の光路長変化量を付与する段差を有し、
前記少なくとも二種類の光路長変化量の各絶対値は、前記第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍、および(iB+ΔB)倍(但し、iA、iBは自然数、かつ、iA≠iB、−0.5<ΔA<0.5、−0.5<ΔB<0.5)で表され、
さらに、前記iAがiA=2k+1(但し、kは自然数)で表され、かつ前記第三の波長の光束において回折効率が最大となる回折次数がk次であり、前記ΔAは以下の条件(5)、
−0.384≦ΔA≦−0.070・・・(5)
を満たすことを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項6】
請求項5に記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記ΔAは、以下の条件(6)、
−0.324≦ΔA≦−0.070・・・(6)
を満たすことを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記ΔAは、以下の条件(7)、
−0.258≦ΔA≦−0.070・・・(7)
を満たすことを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記ΔAは、以下の条件(8)、
−0.178≦ΔA≦−0.070・・・(8)
を満たすことを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記第一領域の段差が付与する前記光路長変化量の種類は二種類あり、
各段差のiAとiBは、
iA=3、
iB=2
であることを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記第一領域の段差が付与する前記光路長変化量の種類は二種類あり、
各段差のiAとiBは、
iA=5、
iB=2
であることを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項11】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記第一領域の段差が付与する前記光路長変化量の種類は三種類あり、
前記第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍および(iB+ΔB)倍とは異なる光路長変化量の絶対値が、(iC+ΔC)倍
但し、iCは自然数、かつ、iC≠iA、iC≠iB、−0.5<ΔC<0.5
で表され、
各段差のiA、iBおよびiCは、
iA=3、
iB=2、
iC=8、
であることを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項12】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記第一領域の段差が付与する前記光路長変化量の種類は三種類あり、
前記第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍および(iB+ΔB)倍とは異なる光路長変化量の絶対値が、(iC+ΔC)倍
但し、iCは自然数、かつ、iC≠iA、iC≠iB、−0.5<ΔC<0.5
で表され、
各段差のiA、iBおよびiCは、
iA=3、
iB=2、
iC=10、
であることを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項13】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記第一領域の段差が付与する前記光路長変化量の種類は三種類あり、
前記第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍および(iB+ΔB)倍とは異なる光路長変化量の絶対値が、(iC+ΔC)倍
但し、iCは自然数、かつ、iC≠iA、iC≠iB、−0.5<ΔC<0.5
で表され、
各段差のiA、iBおよびiCは、
iA=5、
iB=2、
iC=8、
であることを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項14】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記第一領域の段差が付与する前記光路長変化量の種類は三種類あり、
前記第一の波長の光束一波長分の(iA+ΔA)倍および(iB+ΔB)倍とは異なる光路長変化量の絶対値が、(iC+ΔC)倍
但し、iCは自然数、かつ、iC≠iA、iC≠iB、−0.5<ΔC<0.5
で表され、
各段差のiA、iBおよびiCは、
iA=5、
iB=2、
iC=10、
であることを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項15】
単レンズであることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれかに記載の光情報再生装置用対物レンズ。
【請求項16】
前記位相シフト構造は、前記第一領域の外側に、前記第一の波長の光束および前記第二の波長の光束をそれぞれ前記第一の光ディスクおよび前記第二の光ディスクの記録面上に収束し、かつ前記第三の波長の光束の収束には寄与しない第二領域を有し、
前記第二領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において、第一の光束に対して少なくとも一種類の光路長変化量を付与する段差を有し、
前記少なくとも一種類の光路長変化量の絶対値は、前記第一領域における少なくとも一種類の光路長変化量の絶対値とは異なることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項17】
請求項16に記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記第一の光ディスクに対する情報の記録または再生時における焦点距離をf1、前記第二の光ディスクに対する情報の記録または再生時における焦点距離をf2とすると、以下の条件(9)、
f1×NA1<f2×NA2・・・(9)
を満たし、
前記位相シフト構造は、前記第二領域の外側に、前記第二の波長の光束のみを収束し、前記第一および第三の波長の光束の収束には寄与しない第三領域を有し、
前記第三領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において、第二の光束に対して少なくとも一種類の光路長変化量を付与する段差を有し、
前記少なくとも一種類の光路長変化量の絶対値が、前記第二領域における光路長変化量の絶対値とは異なることを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項18】
請求項16に記載の光情報記録再生装置用対物レンズにおいて、
前記第一の光ディスクに対する情報の記録または再生時における焦点距離をf1、前記第二の光ディスクに対する情報の記録または再生時における焦点距離をf2とすると、以下の条件(10)、
f1×NA1>f2×NA2・・・(10)
を満たし、
前記位相シフト構造は、前記第二領域の外側に、前記第一の波長の光束のみを収束し、前記第二および第三の波長の光束の収束には寄与しない第三領域を有し、
前記第三領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において、第一の光束に対して少なくとも一種類の光路長変化量を付与する段差を有し、
前記少なくとも一種類の光路長変化量の絶対値が、前記第二領域における光路長変化量の絶対値とは異なることを特徴とする光情報記録再生装置用対物レンズ。
【請求項19】
使用される光ディスクに対応して第一から第三の波長を持つ三種類の光束をそれぞれ照射する第一から第三の光源と、
請求項1から請求項18のいずれかに記載の光情報記録再生装置用対物レンズと、
前記第一から第三の光源から照射された光を前記対物レンズを介して前記光ディスクに導く偏向手段と、
前記光ディスクからの戻り光を受光するセンサと、を有することを特徴とする光情報記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−318622(P2006−318622A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343556(P2005−343556)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】
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