説明

光情報記録媒体、情報記録方法、および、アゾ金属錯体色素

【課題】短波長レーザ光照射による記録再生における記録再生特性および耐光性に優れる光情報記録媒体、ならびに前記光情報記録媒体の記録層用色素として好適な新規化合物を提供の提供。
【解決手段】トラックピッチ50〜500nmのプリグルーブを表面に有する基板の該表面上に記録層を有する光情報記録媒体。前記記録層は、アゾ色素6つと、遷移金属イオン7つとの錯体であるアゾ金属錯体色素を含む。更に本発明は、上記光情報記録媒体への情報記録方法および新規アゾ金属錯体色素を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いて情報の記録および再生が可能な光情報記録媒体に関し、より詳しくは、波長440nm以下の短波長レーザ光を用いる情報の記録および再生に好適なヒートモード型の光情報記録媒体および波長440nm以下の短波長レーザ光照射により上記光情報記録媒体へ情報を記録する情報記録方法に関する。
更に本発明は、光情報記録媒体の記録層用色素として好適な新規アゾ金属錯体色素に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ光により1回限りの情報記録が可能な光情報記録媒体として、追記型CD(CD−R)および追記型DVD(DVD−R)が知られている。CD−Rへの情報の記録は、近赤外域のレーザ光(通常、波長780nm程度)により行われるのに対し、DVD−Rへの情報の記録は可視レーザ光(約630〜680nm)によって行われる。DVD−Rは、記録用レーザ光としてCD−Rより短波長のレーザ光を使用するため、CD−Rと比べて高密度記録可能であるという利点を有する。そのため、近年、DVD−Rは、大容量の記録媒体としての地位をある程度まで確保している。
【0003】
最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映を間近にひかえて、画像情報を安価簡便に記録するための大容量の記録媒体の要求が高まっている。しかし、CD−RおよびDVD−Rは、将来の要求に対応できる程の充分に大きな記録容量を有しているとはいえない。そこで、DVD−Rよりも更に短波長のレーザ光を用いることによって記録密度を向上させるため、短波長レーザ(例えば波長440nm以下)による記録が可能な大容量光ディスクの開発が進められている。そのような光ディスクとして、例えば405nmの青色レーザを用いたBlu−ray方式と称される光記録ディスク(Blu−ray Disc、以下、「BD」ともいう)、HD−DVD等の情報記録用レーザ光を短波長化して記録密度を高めることが提案されている。
【0004】
例えば特許文献1〜4には、DVD−R型の光ディスクにおいて、記録層に含有する色素化合物としてアゾ金属錯体色素を用いることが提案されている。これらのアゾ金属錯体色素は赤色レーザに対応した吸収波形を有しており、短波長(例えば405nm)のレーザ光による記録では十分な記録特性を発揮することはできない。
【0005】
そこで、短波長レーザ光(例えば405nmの青色レーザ光)を用いた光記録ディスクにおいては、DVD−Rで用いられたアゾ金属錯体に対して吸収波長の短波長化を図ることが検討されている(特許文献5〜7等)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−310728号公報
【特許文献2】特開平11−130970号公報
【特許文献3】特開2002−274040号公報
【特許文献4】特開2000−168237号公報
【特許文献5】特開2001−158862号公報
【特許文献6】特開2006−142789号公報
【特許文献7】特開2006−306070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明者らが、上記特許文献5〜7に記載されているアゾ金属錯体について、色素膜の耐光性、および青色レーザ等の短波長レーザ対応光情報記録媒体の記録再生特性を評価した結果、耐光性および記録再生特性(ジッター、再生耐久性)のすべてを満足できるものを見つけることができなかった。
【0008】
そこで、本発明は、短波長レーザ光照射による記録再生(特に、波長が440nm以下のレーザ光照射による情報記録)における記録再生特性および耐光性に優れる光情報記録媒体、および前記光情報記録媒体の記録層用色素として好適な新規化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、色素の耐光性および青色レーザ対応光情報記録媒体の記録再生特性について検討を重ねた結果、以下の知見を得た。
特許文献5〜7において具体的に開示されているアゾ金属錯体色素は、いずれも金属イオン1つに対してアゾ色素が2つ配位したアゾ金属錯体色素である。しかし、これらの金属錯体では、上記短波長レーザ光照射による記録再生では十分な耐光性と記録再生特性を得ることができなかった。
そこで本発明者らは検討を行い、まず、短波長領域での記録再生特性の点からは、アゾ金属錯体色素の中でも遷移金属イオンを含むアゾ金属錯体色素が優れているとの知見を得た。しかし、遷移金属イオンを含むアゾ金属錯体色素でも、特許文献5〜7に記載されているアゾ金属錯体色素では、耐光性と記録再生特性を両立するものを見出すことはできなかった。更には、上記アゾ金属錯体色素の中から再生耐久性が良好な色素を見出すこともできなかった。
上記知見に基づき本発明者らは、上記アゾ金属錯体色素が耐光性あるいは再生耐久性を満足できない理由はアゾ配位子の励起状態を効率よく失活させることができていないことにあると考えた。そこで本発明者らは、アゾ金属錯体色素中の遷移金属イオンの数をアゾ色素の数より多くすること、かつ、1つのアゾ色素と配位結合する遷移金属イオンの数を増やすことにより、アゾ配位子から金属イオンへのエネルギー移動を促進させることを考え、これにより耐光性と短波長レーザ光照射に対する再生耐久性、更には記録再生特性に優れる光情報記録媒体が得られることを見出した。
更に、遷移金属イオンとアゾ配位子の数が7対6の特定のアゾ金属錯体色素を、ブルーレイ・ディスク等の短波長レーザ対応の光情報記録媒体において記録層用色素として使用することにより、極めて良好な記録再生特性を得ることができるとともに、上記色素は耐光性、溶解性、溶液安定性、粉体および色素膜での高温高湿保存性にも優れることも新たに見出した。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
【0010】
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
[1]トラックピッチ50〜500nmのプリグルーブを表面に有する基板の該表面上に記録層を有する光情報記録媒体であって、
前記記録層は、アゾ色素6つと、遷移金属イオン7つとの錯体であるアゾ金属錯体色素を含み、但し、上記アゾ金属錯体色素1分子中に含まれる複数の遷移金属イオンはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、上記アゾ金属錯体色素1分子中に含まれる複数のアゾ色素はそれぞれ同一でも異なっていてもよい、前記光情報記録媒体。
[2]前記アゾ色素は、下記一般式(A)で表される部分構造を有するアゾ色素である[1]に記載の光情報記録媒体。
【化1】

[一般式(A)中、R1およびR2は、各々独立に、水素原子または置換基を表し、Y1はアゾ金属錯体色素形成時に解離してもよい水素原子を表し、*は−N=N−基との結合位置を表す。]
[3]前記アゾ色素は、下記一般式(1)で表されるアゾ色素である[2]に記載の光情報記録媒体。
【化2】

[一般式(1)中、Q1は隣り合う2つの炭素原子とともに複素環または炭素環を形成する原子群を表し、Yはアゾ金属錯体色素形成時に解離してもよい水素原子を含有する基を表し、R1、R2およびY1は、それぞれ一般式(A)における定義と同義である。]
[4]一般式(1)中の下記部分構造:
【化3】

は、下記一般式(B)で表される部分構造である[2]または[3]に記載の光情報記録媒体。
【化4】

[一般式(B)中、Yは一般式(1)における定義と同義であり、Q2は隣り合う窒素原子および炭素原子ならびにYで表される基と結合する炭素原子とともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表し、R3はアリール基またはヘテロアリール基を表す。]
[5]前記アゾ色素は、下記一般式(2)で表されるアゾ色素である[4]に記載の光情報記録媒体。
【化5】

[一般式(2)中、R1、R2、Y1およびYは、それぞれ一般式(1)における定義と同義であり、R3は一般式(B)における定義と同義であり、R4は水素原子または置換基を表す。]
[6]前記アゾ金属錯体色素は、下記一般式(C)で表されるアゾ金属錯体色素である[3]〜[5]のいずれかに記載の光情報記録媒体。
【化6】

[一般式(C)中、M2+は2価の遷移金属イオンを表し、L2-は一般式(1)で表されるアゾ色素から水素原子2つが解離した2価アニオンを表し、pおよびqはそれぞれ0〜2の範囲の整数を表し、ただしp+q=2である。Xn+はn価のカチオンを表し、nは1〜10の範囲の整数を表し、L’は配位子を表し、rは0〜5の範囲の整数を表す。]
[7]一般式(C)中、Xn+はアンモニウムイオンを表す[6]に記載の光情報記録媒体。
[8]前記遷移金属イオンは銅イオンである[1]〜[7]のいずれかに記載の光情報記録媒体。
[9]前記アゾ金属錯体色素は、O2-および/またはOH-を含むアゾ金属錯体色素である[1]〜[8]のいずれかに記載の光情報記録媒体。
[10]前記アゾ金属錯体色素は、アゾ色素と遷移金属イオンとを塩基存在下で反応させることにより得られたものである[1]〜[9]のいずれかに記載の光情報記録媒体。
[11]前記記録層は、塩基(塩基がプロトン化されたものを含む)を含む[1]〜[10]のいずれかに記載の光情報記録媒体。
[12]前記記録層は、波長405nmに吸収を有するカチオン性色素を含む[1]〜[11]のいずれかに記載の光情報記録媒体。
[13]前記記録層は、前記アゾ金属錯体色素と前記カチオン性色素との錯塩を含む[12]に記載の光情報記録媒体。
[14]前記カチオン性色素に含まれるカチオン性色素部位は、下記一般式(D)〜(F)のいずれかで表される[12]または[13]に記載の光情報記録媒体。
【化7】

[一般式(D)中、R110、R111、R112、R113、R114およびR115は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R111およびR112、R114およびR115は、互いに連結して環構造を形成してもよく、X110およびX111は、各々独立に炭素原子、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を表し、n1は0以上の整数を表す。]
【化8】

[一般式(E)中、R120、R121およびR122は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R121とR122は互いに連結して環構造を形成してもよく、R123およびR124は、各々独立に置換基を表し、互いに連結して環構造を形成してもよく、X120は、炭素原子、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を表し、n2は0以上の整数を表す。]
【化9】

[一般式(F)中、R130、R131、R132およびR133は、各々独立に置換基を表し、R130とR131、R132とR133は互いに連結して環構造を形成してもよく、n3は0以上の整数を表す。]
[15]前記カチオン性色素は、吸収極大波長を385〜450nmの範囲の波長域に有する[12]〜[14]のいずれかに記載の光情報記録媒体。
[16]前記記録層は、下記一般式(G)で表されるアゾ化合物と金属イオンまたは金属酸化物イオンとの錯体である中性色素を含む[1]〜[11]のいずれかに記載の光情報記録媒体。
【化10】

[一般式(G)中、Q11は含窒素複素環を形成する原子群を表し、Q12は複素環または炭素環を形成する原子群を表し、Y11は前記錯体の形成時に解離してもよい水素原子を含有する基を表す。]
[17]波長440nm以下のレーザー光を照射することにより情報を記録するために使用される[1]〜[16]のいずれかに記載の光情報記録媒体。
[18]前記基板と前記記録層との間に反射層を有し、前記レーザー光は基板と反対の面側から記録層へ照射される[17]に記載の光情報記録媒体。
[19][1]〜[18]のいずれかに記載の光情報記録媒体に、波長440nm以下のレーザー光を照射することにより前記光情報記録媒体が有する記録層へ情報を記録する情報記録方法。
[20]下記一般式(C)で表されるアゾ金属錯体色素。
【化11】

[一般式(C)中、M2+は2価の遷移金属イオンを表し、L2-は下記一般式(1)で表されるアゾ色素から水素原子2つが解離した2価アニオンを表し、pおよびqはそれぞれ0〜2の範囲の整数を表し、ただしp+q=2である。Xn+はn価のカチオンを表し、nは1〜10の範囲の整数を表し、L’は配位子を表し、rは0〜5の範囲の整数を表す。]
【化12】

[一般式(1)中、Q1は隣り合う2つの炭素原子とともに複素環または炭素環を形成する原子群を表し、Yはアゾ金属錯体色素形成時に解離してもよい水素原子を含有する基を表し、R1およびR2は、各々独立に、水素原子または置換基を表し、Y1はアゾ金属錯体色素形成時に解離してもよい水素原子を表す。]
[21]一般式(1)中の下記部分構造:
【化13】

は、下記一般式(B)で表される部分構造である[20]に記載のアゾ金属錯体色素。
【化14】

[一般式(B)中、Yは一般式(1)における定義と同義であり、Q2は隣り合う窒素原子および炭素原子ならびにYで表される基と結合する炭素原子とともにとともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表し、R3はアリール基またはヘテロアリール基を表す。]
[22]一般式(C)中、L2-は下記一般式(2)で表されるアゾ色素から水素原子2つが解離した2価アニオンを表す[21]に記載のアゾ金属錯体色素。
【化15】

[一般式(2)中、R1、R2、Y1およびYは、それぞれ一般式(1)における定義と同義であり、R3は一般式(B)における定義と同義であり、R4は水素原子または置換基を表す。]
[23]前記遷移金属イオンは銅イオンである[20]〜[22]のいずれかに記載のアゾ金属錯体色素。
[24]一般式(C)中、Xn+は下記一般式(D)〜(F)のいずれかで表されるカチオンである[20]〜[23]のいずれかに記載のアゾ金属錯体色素。
【化16】

[一般式(D)中、R110、R111、R112、R113、R114およびR115は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R111およびR112、R114およびR115は、互いに連結して環構造を形成してもよく、X110およびX111は、各々独立に炭素原子、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を表し、n1は0以上の整数を表す。]
【化17】

[一般式(E)中、R120、R121およびR122は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R121とR122は互いに連結して環構造を形成してもよく、R123およびR124は、各々独立に置換基を表し、互いに連結して環構造を形成してもよく、X120は、炭素原子、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を表し、n2は0以上の整数を表す。]
【化18】

[一般式(F)中、R130、R131、R132およびR133は、各々独立に置換基を表し、R130とR131、R132とR133は互いに連結して環構造を形成してもよく、n3は0以上の整数を表す。]
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、波長が440nm以下の青色レーザ光を用いて良好な記録再生特性が得られ、且つ、極めて耐光性に優れる光情報記録媒体(特に、波長が440nm以下のレーザ光照射による情報の記録が可能な光情報記録媒体)を得ることができる。
本発明のアゾ金属錯体色素は、優れた耐光性を示すことから各種用途に好適であり、膜安定性が良好であることから、光情報記録材料として特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光情報記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の光情報記録媒体、情報記録方法およびアゾ金属錯体色素について詳細に説明する。
【0014】
光情報記録媒体
本発明の光情報記録媒体は、トラックピッチ50〜500nmのプリグルーブを表面に有する基板の該表面上に、直接または反射層等の層を介して記録層を有する。本発明の光情報記録媒体は、BD、HD−DVD等の短波長レーザにより情報の記録を行う高密度記録用光ディスクとして好適である。
上記高密度記録用光ディスクは、従来の追記型光ディスクと比べてトラックピッチが狭いという構造上の特徴を有する。また、BD構成の光ディスクは、基板上に反射層と記録層をこの順に有し、更に記録層の上に比較的薄い光透過性を有する層(一般に、カバー層と呼ばれる)を有するという、従来の追記型光ディスクと異なる層構成を有する。このような短波長レーザ対応光情報記録媒体では、CD−R、DVD−R等の従来の追記型光情報記録媒体用記録色素として使用されていた色素では、十分な記録再生特性が得られない点が課題であった。
これに対し、本発明では、従来の追記型光情報記録媒体と比べてトラックピッチが狭い光情報記録媒体において、アゾ色素6つと、遷移金属イオン7つを含有するアゾ金属錯体色素を記録層に含むことにより、良好な記録再生特性を得ることを可能にした。本発明の光情報記録媒体によれば、短波長(例えば波長440nm以下)のレーザ光照射により、良好な記録再生特性を得ることができ、更に、極めて良好な耐光性、良好な湿熱安定性を得ることができる。特に、本発明の光情報記録媒体は、基板と記録層との間に反射層を有し、記録再生に使用するレーザ光が上記反射層と対向する面とは反対の面側から記録層へ照射されるBD構成の媒体として好適である。
更に、一般式(C)で表される本発明のアゾ金属錯体色素は、極めて良好な耐光性、良好な溶解性、優れた湿熱保存性を示すことも新たに見出された。こうして本発明によれば、短波長レーザ光照射による記録特性に優れ、かつ高い耐光性を有し、更に溶解性および湿熱安定性にも優れる光情報記録媒体を提供することができる。
なお、本発明においてアゾ色素とは、非環状のアゾ基(−N=N−)を有し、金属イオンと錯形成可能な色素化合物を表し、金属錯体中で配位子となっている場合も含む。例えば、1分子中で1つの金属イオンに対して2つのアゾ配位子が配位している場合、1分子中のアゾ色素の数は2つである。アゾ色素が金属イオンと錯形成した場合をアゾ金属錯体色素と呼ぶ。また、本発明においてアゾ配位子とは、アゾ色素が配位子となった場合を言う。アゾ配位子は解離性水素原子を失うことによりアニオン性配位子となり、解離性水素原子を2つ失うことにより、2価のアニオン性配位子となることが好ましい。
【0015】
本発明において遷移金属イオンとは、遷移金属原子のイオンを表す。遷移金属原子とは、周期表のIIIa族〜VIII族の元素およびIb族の元素の総称である。遷移金属原子としては、特に限定されるものではないが、Mn、Fe、Co、Ni、Cuが好ましく、Co、Ni、Cuがより好ましく、Cuが更に好ましい。
【0016】
遷移金属イオンとしては、2価の遷移金属イオンが好ましい。2価の遷移金属イオンとしては、例えば、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Ru2+、Pd2+、Pt2+等が挙げられ、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+が好ましく、Co2+、Ni2+、Cu2+がより好ましく、Cu2+がさらに好ましい。
【0017】
以下に、本発明の光情報記録媒体の記録層について説明する。
【0018】
本発明の光情報記録媒体の記録層は、アゾ色素(アゾ配位子を含む)6つと、遷移金属イオン7つとの錯体であるアゾ金属錯体色素を含む。ここで、上記アゾ金属錯体色素1分子中に含まれる複数の遷移金属イオンはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、上記アゾ金属錯体色素1分子中に含まれる複数のアゾ色素はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。アゾ色素6つと遷移金属イオン7つとの錯体を記録層用色素として使用することにより、記録層の耐光性を向上させることができる。更には記録前後の光安定性および湿熱安定性、再生耐久性をも向上させることができる。なお、前記アゾ金属錯体色素は、アゾ色素6つと遷移金属イオン7つを構成成分として含む錯体であればよく、アゾ色素と遷移金属イオンとともに、配位子、分子の電荷を中和するために必要なイオンおよび架橋配位子等の他成分が含まれていてもよい。
【0019】
アゾ金属錯体色素の構成成分の種類、それら成分の1分子中の数、配位状態等の分析は、ESI−MS、MALDI−MS、ESI−TOF−MS、MALDI−TOF−MS、X線構造解析、ICP、元素分析、HPLC、GC等の公知の分析方法により行うことができる。例えば、ESI−TOF−MS、MALDI−TOF−MSおよびX線構造解析からなる群から選ばれる少なくとも一つの分析により、アゾ金属錯体色素が、1分子中に6つのアゾ色素(2価のアニオン)と7つの遷移金属イオンを含有する錯体であることを確認することができる。
【0020】
前記アゾ金属錯体色素に含まれるアゾ色素の少なくとも一部は、2価アゾ色素アニオンであることが好ましい。これは、アゾ配位子の励起状態を効率よく失活させることが耐光性向上につながるため、エネルギー移動効率を向上させる為にσ供与性を大きくし、金属イオンの配位子場分裂を大きくすることが望ましいと考えられるからである(講談社サイエンティフィク、新版錯体化学、基礎錯体工学研究会/編、p.30〜p.42参照)。
【0021】
前記アゾ金属錯体色素は、1分子中に7つの遷移金属イオンを含有し、アゾ色素1つに対して、3つ遷移金属イオンが配位結合することが好ましい。このようなアゾ金属錯体色素を形成可能なアゾ色素としては、一般式(A)で表される部分構造を有するアゾ色素を挙げることができ、好ましい態様としては、一般式(1)で表されるアゾ色素を挙げることができ、さらに好ましい態様としては、一般式(2)で表されるアゾ色素を挙げることができる。また、形成されるアゾ金属錯体色素としては、一般式(C)で表されるアゾ金属錯体色素と同様の配位構造を示すアゾ金属錯体色素を挙げることができ、特に好ましい態様としては、一般式(C)で表されるアゾ金属錯体色素を挙げることができる。上記のように1分子中に複数のアゾ色素および複数の遷移金属イオンを含むアゾ金属錯体色素において、複数のアゾ色素はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、複数の遷移金属イオンはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。複数のアゾ色素および複数の遷移金属イオンは、それぞれ同一であることが好ましい。
以下に、アゾ金属錯体色素を形成するアゾ色素の詳細を説明する。
【0022】
上記アゾ色素としては、2価のアゾ色素アニオンを形成し得る下記一般式(A)で表される部分構造を有するアゾ色素、または下記一般式(A)のR1と結合する炭素原子が窒素原子である下記一般式で表されるトリアゾール構造を有するアゾ色素が好ましく、下記一般式(A)で表される部分構造を有するアゾ色素がより好ましい。
【0023】
【化19】

[一般式(A)および(A)’中、R1およびR2は、各々独立に、水素原子または置換基を表し、Y1はアゾ金属錯体色素形成時に解離してもよい水素原子を表し、*は−N=N−基との結合位置を表す。]
【0024】
以下、一般式(A)について更に詳細に説明する。なお、一般式(A)’に含まれるR2およびY1の詳細は、一般式(A)について以下に記載する通りである。
【0025】
一般式(A)中、Y1はアゾ金属錯体色素形成時に解離してもよい水素原子(以下、「解離性水素原子」ともいう)を表す。一般式(A)で表される部分構造は、ピラゾール環上の水素原子Y1が解離することにより、部分構造(A)におけるピラゾール環上のもう一方の窒素原子を介して遷移金属イオンとの錯形成が可能となり、アゾ色素の数より遷移金属イオンの数が多くなっても、膜安定性が高く、良好な記録特性を得ることができる。
【0026】
一般式(A)中、R1およびR2は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R1、R2は溶解性向上の観点からは置換基であることが好ましい。置換基としては特に限定されないが、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
更に詳しくは、R1およびR2は、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、2−ピリジルカルボニル基、2−フリルカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、アリールおよびヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)が挙げられる。
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。R1とR2は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0027】
1が電子求引性基であると、極めて耐光性に優れるアゾ金属錯体を得られやすく、溶解性の観点からも好ましい。R1として好ましい電子求引性基としては、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7〜10の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキルアミノカルボニル基、炭素数7〜10の置換もしくは無置換のアリールアミノカルボニル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、シアノ基より選ばれる基であることが好ましく、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、シアノ基より選ばれる基を挙げることができ、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、シアノ基より選ばれる基であることが更に好ましく、シアノ基であることが特に好ましい。
【0028】
2は、水素原子、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、記録特性の観点から、水素原子、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基がより好ましく、溶解性の観点から、炭素数3〜10の置換もしくは無置換のアルキル基がさらに好ましい。加えて、炭素数3〜10の第2級アルキル基または第3級アルキル基であることが好ましく、炭素数4〜10の第3級アルキル基であることがより好ましい。
【0029】
前記一般式(A)で表される部分構造を含むアゾ色素としては、下記一般式(1)で表されるアゾ色素が好ましい。
【0030】
【化20】

【0031】
一般式(1)で表されるアゾ色素については、アゾ−ヒドラゾン互変異性平衡におけるアゾフォームのみを記載しているが、対応するヒドラゾンフォームであってもよく、その場合のヒドラゾンフォームは本発明におけるアゾフォームと同一成分とする。一般式(2)についても同様である。
また、一般式(1)中に表記されているピラゾール環やQ1により形成される環についても互変異性体あるいは共鳴構造をとり得るが、その場合も一般式(1)に含まれるものとする。
【0032】
一般式(1)中、R1、R2およびY1は、それぞれ一般式(A)における定義と同義であり、それらの詳細は前述の通りである。
【0033】
一般式(1)中、Q1は隣り合う2つの炭素原子とともに複素環または炭素環を形成する原子群を表す。Q1は、特に限定されないが、後述の一般式(B)で表される部分構造に含まれる環を形成することが好ましい。
【0034】
Yはアゾ金属錯体色素形成時に解離してもよい水素原子(解離性水素原子)を含有する基を表す。上記水素原子は、脱プロトン化し易い水素原子であり、遷移金属イオンと錯形成する際に解離し得る水素原子である。一般式(1)で表されるアゾ色素は、解離性水素原子が解離することによりアニオン性配位子となることができ、2つの解離性水素原子が解離することにより2価のアニオン性配位子となることができる。
【0035】
Yで表される基としては、ヒドロキシル基、アミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)などが挙げられる。
【0036】
Yが置換基を有するアミノ基である場合、該置換基がQ1で表される原子群と結合して環を形成してもよい。
【0037】
Yはヒドロキシル基、炭素数0〜4の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数3〜10の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基であることが好ましく、ヒドロキシル基、炭素数0〜4の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基であることがより好ましく、ヒドロキシル基であることがさらに好ましい。
【0038】
一般式(1)中の下記部分構造:
【化21】

は、下記一般式(B)で表される部分構造であることが好ましい。
【0039】
【化22】

【0040】
一般式(B)中、Yは一般式(1)における定義と同義であり、好ましい範囲等の詳細も同様である。
【0041】
3はアリール基またはヘテロアリール基を表す。R3は炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基または炭素数1〜10の置換もしくは無置換のヘテロアリール基であることが好ましく、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基であることがより好ましい。これらは縮環されていてもよい。
【0042】
2は隣り合う窒素原子および炭素原子ならびにYで表される基と結合する炭素原子とともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表す。Q2により形成される含窒素へテロ環は、5員環または6員環であることが好ましく、5員環であることがより好ましく、ピラゾール環であることが更に好ましい。
【0043】
一般式(1)で表されるアゾ色素は、一般式(2)で表されるアゾ色素であることが好ましい。
【0044】
【化23】

【0045】
以下、一般式(2)について説明する。
【0046】
一般式(2)中、R1、R2、Y1およびYは、それぞれ一般式(1)における定義と同義であり、好ましい範囲等の詳細も同様である。
【0047】
3は一般式(B)における定義と同義であり、好ましい範囲等の詳細も同様である。
【0048】
4は水素原子または置換基を表す。置換基としては、前記R1およびR2の説明で挙げた置換基が挙げられる。R4は置換基であることが好ましい。R4で表される置換基としては、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基(ジアルキルアミノ基を含む)、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリールアミノ基が好ましく、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基がより好ましく、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基がさらに好ましい。
【0049】
一般式(2)で表されるアゾ色素は、R3が炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基であり、R4が炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基または炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基であり、R1がシアノ基であり、R2が炭素数4〜10の第3級アルキル基であることが好ましい。
【0050】
以下に一般式(1)で表されるアゾ色素の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
【化24】

【0052】
【化25】

【0053】
前記アゾ金属錯体色素としては、下記一般式(C)と同様の配位構造を示すアゾ金属錯体色素が好ましく、下記一般式(C)で表されるアゾ金属錯体色素がさらに好ましい。
【0054】
【化26】

【0055】
以下、一般式(C)について説明する。
【0056】
一般式(C)中、M2+は2価の遷移金属イオンを表す。2価の遷移金属イオンとしては、前述のように、例えば、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Ru2+、Pd2+、Pt2+等が挙げられ、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+が好ましく、Co2+、Ni2+、Cu2+がより好ましく、Cu2+がさらに好ましい。
【0057】
pおよびqはそれぞれ0〜2の範囲の整数を表し、ただしp+q=2である。pおよびqはp+q=2を満たす範囲で、化合物の存在状態により、および/または、Xn+の種類によって変化し得る。
【0058】
n+はn価のカチオンを表し、nは1〜10の範囲の整数を表す。Xn+は、n価のカチオンであれば特に限定されないが、有機カチオンであることが好ましい。有機カチオンとしては、アンモニウムイオン、アミジニウムイオン、グアニジウムイオン、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、アニリニウムイオン、後述の色素カチオン、即ち一般式(D)〜(F)のいずれかで表されるカチオンなどが挙げられる。これらは置換基により置換されていてもよく、2つ以上の置換基同士が結合して環を形成していてもよい。
【0059】
n+は、アンモニウムイオンまたはアミジニウムイオンであることが好ましく、アンモニウムイオンであることがより好ましい。アンモニウムとしては、無置換のアンモニウム、置換もしくは無置換の第1級アンモニウム(例えば、tert−ブタノールなど)、置換もしくは無置換の第2級アンモニウム(例えばジシクロヘキシルアミン、ジイソプロピルアミンなど)、置換もしくは無置換の第3級アンモニウム(例えばトリエチルアミンなど)、置換もしくは無置換の第4級アンモニウム(例えば、テトラブチルアンモニウムなど)が挙げられるが、置換もしくは無置換の第2級アンモニウム、置換もしくは無置換の第3級アンモニウムが好ましく、置換もしくは無置換の第2級アンモニウムがより好ましい。
【0060】
nは1〜4の範囲の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
【0061】
一般式(C)中、L’は配位子を表す。本発明において、「配位子」とは金属イオンと結合可能な原子または原子団のことをいう。L’が複数存在する場合、複数存在するL’は互いに同じであっても異なっていてもよい。
L’で表される配位子としては、後述の好ましい例で挙げる配位子のほか、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」(Springer−Verlag社、H.Yersin著、1987年発行)、「有機金属化学−基礎と応用−」(裳華房株式会社、山本明夫著、1982年発行)等に記載の配位子が挙げられる。配位子の具体例について以下に説明する。
【0062】
前記L’に含まれ、かつ金属イオンに配位する原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が好ましく、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子がより好ましく、窒素原子、酸素原子が更に好ましく、窒素原子が特に好ましい。
【0063】
L’が金属イオンに配位する場合、L’はアニオン性配位子であっても、中性配位子であってもよい。
【0064】
上記のうち、金属イオンに窒素原子で配位するL’としては、特に限定されないが、含窒素芳香族へテロ環配位子{例えば、ピリジン配位子、ピラジン配位子、ピリミジン配位子、ピリダジン配位子、トリアジン配位子、チアゾール配位子、オキサゾール配位子、ピロール配位子、イミダゾール配位子、ピラゾール配位子、トリアゾール配位子、オキサジアゾール配位子、チアジアゾール配位子、およびこれらを含む縮配位子体(例えば、キノリン配位子、ベンズオキサゾール配位子、ベンズイミダゾール配位子など)、およびこれらの互変異性体など}、アミン配位子(例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジベンジルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、アリールアミンなど)、アニリン配位子(例えば、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ジフェニルアミン、N−アシルアニリン、N−アルキルスルホニルアニリンなど)、イミン配位子、ニトリル配位子(例えばアセトニトリル配位子など)、イソニトリル配位子(例えばt−ブチルイソニトリル配位子など)、アミド配位子(例えばジメチルホルムアミド配位子、ジメチルアセトアミド配位子など)、アミジン配位子(例えば、DBU、DBN)、グアニジン配位子(例えばテトラメチルグアニジン)などが挙げられる。これらの配位子は置換基を有していてもよい。
【0065】
金属イオンに酸素原子で配位するL’としては、特に限定されないが、アルコール配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、2−エチルヘキシロキシなどのプロトンを解離させた一価のアニオン配位子が挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェノール、1−ナフトール、2−ナフトールなどプロトンを解離させた一価のアニオン配位子が挙げられる。)、ジケトン配位子(例えばアセチルアセトン配位子)、シリルオキシ配位子(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、エーテル配位子(環状エーテルを含む)カルボン酸配位子、スルホン酸配位子、アクア配位子、O2配位子などが挙げられる。これらの配位子は置換基を有していてもよい。
【0066】
金属イオンに硫黄原子で配位するL’としては、特に限定されないが、アルキルチオール配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばブタンチオールなどプロトンを解離させた一価のアニオン配位子が挙げられる。)、アリールチオール配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばチオフェノールなどが上げられる。)、チオエーテル配位子が挙げられる。これらの配位子は置換基を有していてもよい。
【0067】
金属イオンにリン原子で配位するL’としては、特に限定されないが、アルキルホスフィン配位子(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばメチルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジベンジルホスフィン、などが挙げられる。)、アリールホスフィン配位子(好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数4〜20、特に好ましくは炭素数5〜10であり、例えばフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、ピリジルホスフィンなどが挙げられる。)が挙げられる。これらの配位子は置換基を有していてもよい。
【0068】
L’としては、有機塩基が好ましく、置換もしくは無置換のアミン、置換もしくは無置換のアミジンが好ましい。
【0069】
rは0〜5の範囲の整数であり、0〜3の範囲の整数であることが好ましく、0〜2の範囲の整数であることがより好ましく、0または1であることがさらに好ましく、0であることが特に好ましい。
【0070】
一般式(C)中、L2-は、一般式(1)で表されるアゾ色素から水素原子2つが解離した2価アニオンを表す。一般式(1)の詳細は先に説明した通りである。一般式(1)で表されるアゾ色素は、Yで表される基に含まれる解離性水素原子とY1で表される解離性水素原子が解離することにより2価アニオンとなることができる。
【0071】
一般式(1)で表されるアゾ色素の一般的合成法としては、特開昭61−36362号公報および特開2006−57076号公報に記載の方法が挙げられる。ただし、これに限定するものではなく、他の反応溶媒、酸を用いてもよく、また、カップリング反応を塩基(例えば、酢酸ナトリウム、ピリジン、水酸化ナトリウム等)存在下で行ってもよい。アゾ色素の合成法の具体例を、以下に示す。
【0072】
【化27】

【0073】
【化28】

【0074】
アゾ色素と遷移金属イオンを反応させて前記アゾ金属錯体色素を得る方法としては、アゾ色素、金属塩(金属錯体、金属酸化物塩を含む)を、有機溶媒中もしくは水中、またはその混合液中において、攪拌する方法が挙げられる。本発明において使用されるアゾ金属錯体色素を合成する場合、1分子中にアゾ色素6つと遷移金属イオン7つを含むアゾ金属錯体色素を得るためには、塩基存在下にて反応させることが好ましい。一般式(1)で表されるアゾ色素を配位子として含むアゾ金属錯体色素は、一般式(1)で表されるアゾ色素と遷移金属イオンとを塩基存在下で反応させることにより得られるものであることが好ましい。これにより得られるアゾ金属錯体色素を含む記録層は、通常、該アゾ金属錯体中および/または記録層中に塩基(プロトン化されたものも含む)が含まれる。
【0075】
塩基としては、特に限定されないが、アンモニアまたは有機塩基が好ましく、有機塩基がより好ましい。有機塩基としては例えば、第1〜3級アミン(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、tert−ブチルアミンなど)、アミジン類{例えば、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)など}、グアニジン類(例えば、テトラメチルグアニジンなど)、含窒素へテロ環(例えば、ピリジン、イミダゾールなど)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
有機塩基としては、炭素数1〜10の置換もしくは無置換の第1〜3級アミン、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアミジン類が好ましく、炭素数1〜10の置換もしくは無置換の第2級アミン、炭素数1〜10の置換もしくは無置換の第3級アミン、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアミジン類がより好ましく、炭素数1〜10の置換もしくは無置換の2級アミン、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアミジン類がさらに好ましい。
【0076】
なお、化合物(L−11)と銅イオンをジイソプロピルアミン存在下で反応させることにより得られたアゾ金属錯体等の前記アゾ金属錯体は、ESI−TOF-MS等のMSにて同定を行うと、アゾ配位子6分子と遷移金属7つから形成され、かつ、架橋配位子(例えば酸素イオン、水酸化物イオンなど)2つを含む分子の分子量をMとした場合に、Mのnegaピークで検出される場合、M/2のnegaピークが検出される場合などがある。塩基単体も検出され得る。単座配位子(塩基や溶媒など)は、錯体となって検出されることは殆どなく、フラグメントとして検出されることが多い。
【0077】
また、X線構造解析や元素分析によって、錯体の構造を確認することもできる。化合物(L−11)と銅イオンをジイソプロピルアミン存在下で反応させることにより得られたアゾ金属錯体のX線構造解析結果は、以下の構造(以下、「構造A」という)であることを示した。中心部に位置する架橋配位子のO2-、OH-は、両者ともO2-となる場合、両者ともOH-となる場合もあり得る。下記構造Aにおいて、実線と点線は結合の違いを明確に表すものではなく、共鳴構造をとっていてもよい。また、配位子と金属イオンの間の結合はこの表記に限らず、互いに存在位置が十分に近ければよく、この他に結合が存在してもよい。
【0078】
【化29】

【0079】
一般式(C)で表されるアゾ金属錯体色素は、一般式(1)で表されるアゾ色素と遷移金属の塩を反応させることにより得ることができる。塩基存在下で反応させることが好ましく、塩基は、有機塩基を用いることが好ましい。無機塩基を用いた場合、塩基中の金属イオンがアゾ配位子とイオン対を形成する場合があり、この場合は所望のアゾ金属錯体を得ることが困難となるからである。有機塩基の例としては、前述の有機塩基が挙げられる。溶媒としては、例えばメタノールなどのアルコールを使用することができるが、一般式(C)中のL’で表される配位子は、塩基または溶媒由来であるため塩基および溶媒を選択することにより所望の配位子を有するアゾ金属錯体色素を得ることができる。また、本発明において、金属塩の種類、塩基の種類、有機溶媒またはその混合液の種類、反応温度等は限定されない。反応液中のアゾ色素および金属塩の濃度および混合割合、反応温度および反応時間等の反応条件は、適宜設定すればよい。目的のアゾ金属錯体色素が得られたことは、ESI−MS、MALDI−MS、ESI−TOF−MS、MALDI−TOF−MS、ESR、X線構造解析、ICP、元素分析、HPLC、GC等の公知の方法によって確認することができる。塩基存在下で反応させることにより、短波長レーザー光照射による記録再生特性、耐光性、再生耐久性に優れるアゾ金属錯体色素を得ることができる。
【0080】
以下に、一般式(C)で表されるアゾ金属錯体色素の具体例を示す。また、一般式(C)で表されるアゾ金属錯体色素の具体例としては、後述の実施例に示す例示化合物(M−101)〜(M−112)を挙げることもできる。ただし、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】


【0083】
本発明の光情報記録媒体は、前記アゾ金属錯体色素を少なくとも一種記録層に含有する。記録層中に含まれる前記アゾ金属錯体色素は、一種でもよく二種以上の異なる種類のものが含まれていてもよい。記録層中の上記アゾ金属錯体色素の含有量は、記録層の全質量に対して、例えば1〜100質量%の範囲であり、好ましくは70〜100質量%の範囲であり、より好ましくは80〜100質量%の範囲であり、最も好ましくは90〜100質量%の範囲である。
【0084】
前記アゾ金属錯体色素は、前述のように優れた記録再生特性を発揮することができ、更に優れた耐光性等を有するものであるが、他成分を併用することにより、その優れた性能をよりいっそう向上することができる場合がある。性能向上のために併用する成分としては、目的に応じて最適なものを選択すればよいが、好適な併用成分としては、例えば、(i)波長405nmに吸収を有するカチオン性色素、(ii)下記中性色素、を挙げることができる。
以下、上記(i)、(ii)を併用する態様について、順次説明する。
【0085】
(i)波長405nmに吸収を有するカチオン性色素
本発明の光情報記録媒体は、前記アゾ金属錯体色素とともに、波長405nmに吸収を有するカチオン性色素を記録層に含むことができる。前記カチオン性色素を併用することにより、記録特性、特に、BD等の短波長レーザ光対応の光情報記録媒体における記録特性を向上することができる。これは、前記カチオン性色素が前記アゾ金属錯体色素に対して増感作用を示すことによるものと考えられる。更に、前記カチオン性色素を併用することにより、記録層の製膜性および耐光性の向上等も期待できる。これは、前記カチオン性色素が記録層中での前記アゾ金属錯体色素の安定化に寄与するからと考えられる。
【0086】
本発明において、「波長405nmに吸収を有する」とは、波長405nmにおけるモル吸光係数が1万l・mol-1・cm-1以上であることをいう。BD等の短波長レーザ光対応の光情報記録媒体における記録特性を向上する観点から、前記モル吸光係数は3万l・mol-1・cm-1以上であることがより好ましい。また、前記波長405nmにおけるモル吸光係数は、Blu-ray Discのトラッキング適性の観点からは、例えばカチオン性部分の分子量が400以下のものについては、15万l・mol-1・cm-1以上であることが好ましい。
【0087】
前記カチオン性色素としては、波長405nmに吸収を有する、カチオン性色素部位を含む色素であればよいが、増感効果の点からは、記録波長域に強い吸収を有することが好ましく、記録波長域に吸収極大波長を有することがより好ましい。BD等の短波長レーザ光対応の光情報記録媒体における増感効果の点からは、前記カチオン性色素としては、シアニン色素に代表されるメチン色素がまず挙げられるが、この他にもアゾメチン色素、アゾ色素、メロシアニン色素、フタロシアニン色素、キノン系色素などにカチオン性基を導入したものも含まれる。シアニン色素には、置換基の末端部位にアニオン性基(例えば−SO3-基、−CO2-基)を1つまたは2つ有することにより中性またはアニオン性の色素になるものがあるが、これらについても例外的に本発明におけるカチオン性色素に含めるものとする。これらの中でも、特に405nm付近の光を効率良く吸収するシアニン色素、メロシアニン色素が好ましく、一般式(D)〜一般式(F)のいずれかで表されるカチオン性色素部位を有するカチオン性色素がより好ましく、耐光性、溶液安定性等の観点から、一般式(D)で表されるシアニン色素がさらに好ましい。また、記録特性向上の点からは、前記カチオン性色素としては、385nm〜450nmの波長域に吸収極大波長を有するものを用いることがより好ましく、385nm〜430nmの波長域に吸収極大波長を有するものを用いることがさらに好ましい。ここで吸収極大波長は、炭素数1〜3のアルコール溶媒中、例えばメタノール中で測定される吸収極大波長をいうものとする。また、増感効果の点からは、記録波長において、前記アゾ金属錯体色素よりも強い吸収を有するカチオン性色素を使用することが好ましい。記録光を吸収することによりカチオン性色素も発熱し、この発熱により前記アゾ金属錯体色素の熱分解が促進される結果、記録感度の向上が達成されると考えられるからである。記録層に使用するカチオン性色素は、上記特性に加えて、良好な溶剤溶解性および製膜性を有すること、熱分解温度が併用するアゾ金属錯体色素と同程度であること等を考慮して選択することが好ましい。前記アゾ金属錯体色素およびカチオン性色素の熱分解温度は150度以上500度以下であることが好ましく、200度以上400度以下であることがより好ましく、250度以上350度以下であることが更に好ましい。本発明において、熱分解温度とは、TG/TDA測定において、質量減少率が10%に達した時点の温度を意味する。この場合のTG/TDA測定は、N2気流下(流量200ml/min)で、30℃〜550℃の範囲において10℃/minで昇温を行うものとする。測定装置としては、Seiko Instruments Inc.製のEXSTAR6000が用いられる。
【0088】
以下、一般式(D)〜(F)について順次説明する。なお、一般式(D)および(E)において、……は、単結合または二重結合を表す。
【0089】
一般式(D)
【0090】
【化30】

【0091】
一般式(D)中、X110およびX111は、各々独立に炭素原子、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を表し、X110およびX111は、前記アゾ金属錯体色素に対する増感効果の点からは硫黄原子または酸素原子であることが好ましい。
【0092】
110、R111、R112、R113、R114およびR115は、各々独立に水素原子または置換基を表す。置換基としては、一般式(A)中のR1、R2で表される置換基として例示した基を挙げることができる。
上記R110、R113で表される置換基しては、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜2の置換もしくは無置換のアルキル基が更に好ましい。上記各基を置換する置換基としては、一般式(A)中のR1、R2で表される置換基として例示した基を挙げることができる。R110およびR113は、化合物の安定性の観点から置換基であることが好ましい。
【0093】
111とR112、R114とR115は、互いに連結して環構造を形成することができ、双方とも環構造を形成することが好ましい。R111とR112、R114とR115が互いに連結して環構造を形成する場合、……は二重結合であることが好ましく、芳香環の一部であることが好ましい。芳香環の一部である場合、該芳香環は置換もしくは無置換のベンゼン環であることが好ましい。
【0094】
111とR112が互いに連結して環構造を形成する場合、置換している含窒素5員環と形成する縮合環、および、R114とR115が互いに連結して環構造を形成する場合、置換している含窒素5員環と形成する縮合環としては、下記縮合環を例示できる。但し、これらに限定されるものではない。
【0095】
【化31】

[上記において、Rは水素原子または置換基(例えばアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基等)であり、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。*は炭素原子との結合位置を示す。]
【0096】
一般式(D)中、n1は0以上の整数を表す。n1は、吸収波長の観点から、0または1であることがより好ましい。耐光性、溶液安定性の観点から、n1が0であり、かつ、R111とR112、R114とR115は、互いに連結して環構造を形成することがさらに好ましい。
【0097】
一般式(E)
【0098】
【化32】

【0099】
一般式(E)中、X120は、炭素原子、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を表し、前記アゾ金属錯体色素に対する増感効果の点からは硫黄原子または酸素原子であることが好ましい。
【0100】
一般式(E)中、R120、R121およびR122は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R120、R121、R122で表される置換基の詳細は、それぞれ一般式(D)中のR110、R111、R112で表される置換基と同様である。
【0101】
121とR122は互いに連結して環構造を形成してもよい。R121とR122が連結して形成する環構造の詳細は、先に一般式(D)中のR111とR112が形成する環構造について述べた通りである。
【0102】
一般式(E)中、R123およびR124は、各々独立に置換基を表し、互いに連結して環構造を形成してもよい。R123およびR124で表される置換基としては、一般式(A)中のR1、R2で表される置換基として例示した基を挙げることができる。上記置換基としては、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、更にはR123−N−R124部分において炭素、窒素、酸素および硫黄のいずれかの原子を含む環を形成してもよい。R123およびR124で表される置換基としては、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、またはR123−N−R124部分において炭素と窒素原子からなる置換もしくは無置換の5〜7員環、炭素と窒素と硫黄原子からなる置換もしくは無置換の5〜7員環を形成することがより好ましく、炭素と窒素原子からなる置換もしくは無置換の5〜6員環、炭素と窒素と硫黄原子からなる置換もしくは無置換の5〜6員環を形成することが更に好ましく、炭素と窒素原子からなる置換もしくは無置換の6員環、炭素と窒素と硫黄原子からなる置換もしくは無置換の6員環を形成することがよりいっそう好ましい。上記各基または環構造を置換する置換基としては、一般式(A)中のR1、R2で表される置換基として例示した基を挙げることができる。
【0103】
一般式(E)中、n2は0以上の整数を表す。n2は、吸収波長の観点から、0であることが好ましい。
【0104】
一般式(F)
【0105】
【化33】

【0106】
一般式(F)中、R130、R131、R132およびR133は、各々独立に置換基を表し、R130とR131、R132とR133は互いに連結して環構造を形成してもよい。R130、R131、R132およびR133で表される置換基の詳細は、一般式(D)中のR123およびR124で表される置換基と同様である。
【0107】
一般式(F)中、n3は0以上の整数を表す。n3は、吸収波長の観点から、1であることが好ましい。
【0108】
一般式(D)〜(F)で表されるカチオン性色素部位は、吸収波長の観点から、1価または2価カチオンであることが好ましい。
【0109】
一般式(D)〜(F)で表されるカチオン性色素部位は、分子内の電荷を中和する量の対アニオンと塩を形成した状態で存在することができる。対アニオンとしては、分子内の電荷を中和できるものであればよく、単独の原子または原子団のアニオンであり、カチオン性色素内に置換基として含まれていてもよい。前記アゾ金属錯体色素とカチオン性色素とを併用する場合、カチオン性色素の対アニオンとしては、吸収波長の観点から、ハロゲン化物イオン、アルキルまたはアリールスルホン酸イオン、硝酸イオン、アルキルまたはアリールカルボン酸イオン、アルコキサイドイオン、PF6-イオン、BF4-イオン、ClO4-イオン、が好ましく、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、アルキルまたはアリールスルホン酸イオン、アルキルまたはアリールカルボン酸イオン、PF6-イオン、BF4-イオン、ClO4-イオン、がより好ましく、アルキルまたはアリールスルホン酸イオンが更に好ましい。
【0110】
一般式(D)〜(F)で表されるカチオン性色素部位を有するカチオン色素は、公知の方法で合成可能であり、市販品として入手可能なものもある。合成方法については、例えば「The Chemistry of Synthetic Dyes」(Academic Press社、K.Venkataraman著、1971年発行)とその参照文献等に詳述されている。また、WO01/44374号公報等も参照できる。
【0111】
以下に、本発明で使用可能なカチオン性色素の具体例を示す。但し、本発明は下記具体例の限定されるものではない。
【0112】
【化34】

【0113】
前記アゾ金属錯体色素は、非イオン性色素またはアニオン性色素であることができる。前記アゾ金属錯体色素が非イオン性色素である場合、前記アゾ金属錯体色素および前記カチオン性色素は、前記カチオン性色素が対アニオンとともに塩を形成した状態で存在し得る。この場合、記録層において前記アゾ金属錯体色素と前記カチオン性色素は、錯塩を形成することなく混合状態で存在することができる。一方、前記アゾ金属錯体色素がアニオン性色素である場合、記録層において前記アゾ金属錯体色素と前記カチオン性色素は、錯塩を形成した状態で存在することができる。なお、前記錯塩は、前記アゾ金属錯体色素と前記カチオン性色素とを構成成分として含む錯塩であればよく、前記アゾ金属錯体色素および前記カチオン性色素とともに、配位子等の他成分が含まれていてもよい。前記アゾ金属錯体色素とカチオン性色素とが錯塩を形成することで余分な塩を除去することができるため、より良好な記録特性を発揮する記録層が得られると考えられる。
【0114】
前記アゾ金属錯体色素と前記カチオン性色素が混合状態で存在する場合、前記アゾ金属錯体色素と前記カチオン性色素との記録層中での混合比は、質量比として、前記アゾ金属錯体色素:前記カチオン性色素=95:5〜50:50であることが好ましい。上記質量比が95:5以上であれば、前記カチオン性色素が増感作用を効果的に発揮することができ、50:50以下であれば、記録層において前記アゾ金属錯体色素の優れた耐光性および溶液安定性を維持することができる。上記質量比は、より好ましくは95:5〜80:20、更に好ましくは95:5〜90:10である。また、前記カチオン性色素を併用する場合、記録層中の前記アゾ金属錯体色素の含有量は、記録層の全質量に対して、例えば50〜95質量%の範囲であり、好ましくは70〜95質量%の範囲であり、より好ましくは80〜95質量%の範囲であり、最も好ましくは90〜95質量%の範囲である。
【0115】
一方、前記アゾ金属錯体色素と前記カチオン性色素が錯塩を形成した状態で存在する場合、記録層中での該錯塩の含有量は、記録層の全質量に対して、例えば1〜100質量%の範囲であり、好ましくは70〜100質量%の範囲であり、より好ましくは80〜100質量%の範囲であり、最も好ましくは90〜100質量%の範囲である。
【0116】
記録層中で前記アゾ金属錯体色素と前記カチオン性色素を錯塩の状態で存在させるには、前記アゾ金属錯体色素と前記カチオン性色素を混合等することにより予め錯塩を固体として取り出した後、この固体を記録層の調製のために使用することが好ましい。これにより、余分な塩を除去することができるため、カチオン性色素の増感効果がさらに向上すると考えられる。
【0117】
(ii)中性色素
本発明の光情報記録媒体は、前記アゾ金属錯体色素とともに、下記一般式(G)で表されるアゾ化合物と金属イオンまたは金属酸化物イオンとの錯体である中性色素を記録層に含むことができる。なお、一般式(G)としては、アゾ−ヒドラゾン互変異性平衡におけるアゾフォームのみを示してしているが、対応するヒドラゾンフォームであってもよい。
【0118】
【化35】

[一般式(G)中、Q11は含窒素複素環を形成する原子群を表し、Q12は複素環または炭素環を形成する原子群を表し、Y11は前記錯体の形成時に解離してもよい水素原子を含有する基を表す。]
【0119】
前記アゾ金属錯体色素と前記中性色素を併用することにより、理由は明らかではないが、記録特性、特に、BD等の短波長レーザ光対応の光情報記録媒体における記録特性および記録層の耐光性を向上することができる。なお、本発明において、「中性色素」とは、配位子によって金属イオンが中和され、金属イオンと結合しない対イオンを有していない色素のことを言う。
以下、前記中性色素について説明する。
【0120】
一般式(G)中、Q11は含窒素複素環を形成する原子群を表す。Q11により形成される含窒素複素環としては、特に限定されないが、例えば、ピラゾール環、ピロール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアゾール環等が挙げられる。前記含窒素複素環としては、前記アゾ金属錯体色素の性能をよりいっそう向上する観点から、イソオキサゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−チアジアゾール環またはトリアゾール環が好ましい。
【0121】
12は複素環または炭素環を形成する原子群を表す。Q12により形成される環は、炭素原子およびヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子、窒素原子等)とともに形成される環であればよく、特に限定されないが、例えば、ベンゼン環、ピラゾール環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、下記部分構造(C−1)〜(C−7)で表される環を挙げることができる。これらの環は置換基を有していてもよく、また、縮環していてもよい。
【0122】
また、一般式(G)中、下記部分構造:
【化36】

の具体例としては、下記部分構造式(C−1)〜(C−7)が好ましい。下記部分構造式は、一般式(G)中のY11がヒドロキシル基である態様である。
【化37】

【0123】
上記において、R3は水素原子または置換基を表し、R3同士は互いに同じであっても異なっていてもよい。R3同士は連結基を介して互いに結合してもよい。R3は置換基であることが好ましい。置換基としては、特に限定されないが、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル基、エチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ピリジル基、チアゾール基、オキサゾール基、トリアゾール基などが挙げられる。)、などが挙げられる。
【0124】
11およびQ12で表される原子群は置換基を有していてもよく、塗布溶剤への溶解性の観点から、置換基を有することが好ましい。置換基としては、特に限定されないが、前記R1、R2で説明した置換基等が挙げられる。
【0125】
11は、前記錯体の形成時に解離してもよい水素原子(解離性水素原子)を含有する基を表す。Y11で表される基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。Y11は、ヒドロキシル基であることが好ましい。
【0126】
前記中性色素は、前記アゾ化合物と金属イオンまたは金属酸化物イオンとの錯体であり、アゾ化合物と金属イオンまたは金属酸化物イオンとを反応させることによりアゾ化合物が金属イオンに配位結合し、生成する色素である。錯体形成時、配位子となる一般式(G)で表されるアゾ化合物は、Y11で表される基に含まれる解離性水素原子が解離してアニオン性基となることが好ましい。
【0127】
前記金属イオンとしては、例えば、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Pr、Eu、Yb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Th等の金属のイオンが挙げられ、中でも、遷移金属原子のイオンが好ましい。また、金属酸化物イオンとしては、前記金属の酸化物イオンを挙げることができる。
【0128】
前記中性色素における遷移金属原子とは、前述の通りである。中性色素に含まれる遷移金属原子としては、特に限定されるものではないが、Mn、Fe、Co、Ni、Cuが好ましく、Fe、Co、Ni、Cuがより好ましく、Fe、Co、Niがさらに好ましい。
【0129】
金属イオンとしては、2価または3価の金属原子が好ましく、2価の金属原子がより好ましい。2価または3価の金属(金属イオンで表す)としては、例えば、Mn2+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、Ni2+、Ni3+、Cu2+、Zn2+、Cr3+、Ru2+、Rh3+、Pd2+、Ir3+、Pt2+等が挙げられ、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+が好ましく、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+がより好ましい。
【0130】
一般式(G)で表されるアゾ化合物の一般的合成法としては、特開昭61−36362号公報および特開2006−57076号公報に記載の方法が挙げられる。ただし、これに限定するものではなく、他の酸、反応溶媒を用いてもよく、また、カップリング反応を塩基(例えば、酢酸ナトリウム、ピリジン、水酸化ナトリウム等)存在下で行ってもよい。
【0131】
アゾ化合物と金属イオン(または金属酸化物イオン)を反応させて金属アゾキレート色素を得る一般的方法としては、アゾ化合物、金属塩(金属錯体、金属酸化物塩を含む)を、塩基存在下、有機溶媒中もしくは水中、またはその混合液中において、攪拌する方法が挙げられる。金属塩の種類、塩基の種類、有機溶媒またはその混合液の種類、反応温度等は限定されない。例えば、反応溶媒としてはメタノールを挙げることができるが、使用する金属イオンおよび配位子を溶解できる溶媒であればよくメタノールに限定されるものではない。また、塩基としては、有機塩基が好ましく、有機塩基としては例えば、炭素数1〜30の1〜3級アミン(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、t−ブチルアミンなど)、アミジン類{例えば、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)など}、グアニジン類(例えば、テトラメチルグアニジンなど)、含窒素へテロ環(例えば、ピリジン、イミダゾールなど)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。有機塩基としては、炭素数1〜30の1〜3級アミンが好ましく、炭素数1〜20の1〜3級アミンがより好ましく、炭素数1〜10の1〜3級アミンがさらに好ましい。
【0132】
以下に、前記中性色素の具体例を示すが、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
【0133】
【化38】


【0134】
前記アゾ金属錯体色素と前記中性色素との記録層中での混合比は、質量比として、前記アゾ金属錯体色素:前記中性色素=95:5〜50:50であることが好ましい。上記質量比が95:5以上であれば、前記中性色素の添加効果を効果的に得ることができ、50:50以下であれば、記録層において前記アゾ金属錯体色素の優れた耐光性および溶液安定性を維持することができる。上記質量比は、より好ましくは95:5〜80:20、更に好ましくは95:5〜90:10である。また、前記中性色素を併用する場合、記録層中の前記アゾ金属錯体色素の含有量は、記録層の全質量に対して、例えば50〜95質量%の範囲であり、好ましくは70〜95質量%の範囲であり、より好ましくは80〜95質量%の範囲であり、最も好ましくは90〜95質量%の範囲である。
【0135】
本発明の光情報記録媒体は、前記記録層を基板上(トラックピッチ50〜500nmのプレグルーブを有する表面上)に少なくとも一層有するものであればよく、前記記録層を二層以上有することもできる。または、前記アゾ金属錯体色素を含む記録層以外の記録層を有することも可能である。前記アゾ金属錯体色素を含む記録層において、記録用色素として他の色素を併用する場合、全色素成分に対する前記アゾ金属錯体色素の割合が、70〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることが更に好ましい。
【0136】
本発明において、色素成分として、前記アゾ金属錯体色素以外の色素を使用する場合、該色素としては、例えば波長440nm以下の短波長領域において吸収を有するものが好ましい。そのような色素としては、特に限定されないが、アゾ色素、アゾ金属錯体色素、フタロシアニン色素、オキソノール色素、シアニン色素、スクアリリウム色素などが挙げられる。
【0137】
本発明の光情報記録媒体において、前記アゾ金属錯体色素を含む記録層は、レーザ光の照射により情報の記録が可能な層である。ここで、レーザ光の照射により情報の記録が可能とは、記録層のレーザ光が照射された部分がその光学的特性を変えることをいう。光学的特性の変化は、記録層のレーザ光が照射された部分がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的または化学的変化(例えば、ピットの生成)を生じすることによってもたらされると考えられる。記録層に記録された情報の読み取り(再生)は、例えば記録用のレーザ光と同様の波長のレーザ光を照射することにより、記録層の光学的特性が変化した部位(記録部分)と変化しない部位(未記録部分)との反射率等の光学的特性の違いを検出することにより行うことができる。前記アゾ金属錯体色素は、例えば440nm以下のレーザ光に対して吸収性を有するものである。このように短波長領域に吸収性を有する金属錯体化合物を含む記録層を有する本発明の光情報記録媒体は、405nmの青色レーザを用いるBlu−ray方式の光ディスクなどの短波長レーザによる記録が可能な大容量光ディスクとして好適である。本発明の光情報記録媒体への情報の記録方法については後述する。
【0138】
本発明の光情報記録媒体は、少なくとも前記アゾ金属錯体色素を含む記録層を基板上に有するものであり、更に、前記記録層に加えて光反射層、保護層などを有することもできる。
【0139】
本発明に用いられる基板としては、従来の光情報記録媒体の基板材料として用いられている各種の材料を任意に選択して使用することができる。基板としては、透明な円盤状基板を用いることが好ましい。
具体的には、ガラス;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン;ポリエステル;アルミニウム等の金属;等を挙げることができ、所望によりこれらを併用してもよい。
前記材料の中では、耐湿性、寸法安定性および低価格等の点から、アモルファスポリオレフィン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。これらの樹脂を用いた場合、射出成型を用いて基板を作製することができる。
また、基板の厚さは、一般に0.7〜2mmの範囲であり、0.9〜1.6mmの範囲であることが好ましく、1.0〜1.3mmとすることがより好ましい。
なお、後述する光反射層が設けられる側の基板表面には、平面性の改善、接着力の向上の目的で、下塗層を形成することもできる。
【0140】
前記基板の記録層が形成される面には、トラッキング用の案内溝またはアドレス信号等の情報を表わす凹凸(プリグルーブ)が形成されている。前記プリグルーブのトラックピッチは、50〜500nmの範囲である。トラックピッチが50nm以上であれば、プリグルーブを正確に形成することができる上に、クロストークの発生を回避することができ、500nm以下であれば、高密度記録を行うことができる。本発明の光情報記録媒体は、より高い記録密度を達成するためにCD−RやDVD−Rに比べてより狭いトラックピッチを形成した基板を用いる。トラックピッチの好ましい範囲等の詳細は後述する。
【0141】
本発明の光情報記録媒体の好ましい態様としては、厚さ0.7〜2mmの基板上に、色素を含有する追記型記録層と、厚さ0.01〜0.5mmのカバー層とを基板側から順に有する光情報記録媒体(以下、「態様(1)」という)を挙げることができる。
【0142】
態様(1)においては、基板に形成されるプリグルーブのトラックピッチが50〜500nm、溝幅が25〜250nm、溝深さが5〜150nmであることが好ましい。
以下、態様(1)の光情報記録媒体について更に詳細に説明する。但し、本発明の光情報記録媒体は、態様(1)に限定されるものではない。
【0143】
[態様(1)の光情報記録媒体]
態様(1)の光情報記録媒体は、少なくとも、基板と、追記型記録層と、カバー層とを有する態様である。態様(1)の光情報記録媒体は、ブルーレイ方式の記録用媒体として好適である。ブルーレイ方式では、カバー層側からレーザ光を照射し情報の記録再生が行われ、通常、基板と記録層との間に反射層が設けられる。
態様(1)の光情報記録媒体の具体例を、図1に示す。図1に示す第1光情報記録媒体10Aは、第1基板12上に、第1光反射層18と、第1追記型記録層14と、バリア層20と、第1接着層または第1粘着層22と、カバー層16とをこの順に有する。
以下に、これらを構成する材料について順次説明する。
【0144】
基板
態様(1)の基板には、トラックピッチ、溝幅(半値幅)、溝深さ、およびウォブル振幅のいずれもが下記の範囲である形状を有するプリグルーブ(案内溝)が形成されている。このプリグルーブは、CD−RやDVD−Rに比べてより高い記録密度を達成するために設けられたものであり、例えば、本発明の光情報記録媒体を、青紫色レーザに対応する媒体として使用する場合に好適である。
【0145】
プリグルーブのトラックピッチは、50〜500nmの範囲である。トラックピッチが50nm以上であれば、プリグルーブを正確に形成することができる上に、クロストークの発生を回避することができ、500nm以下であれば、高密度記録を行うことができる。プリグルーブのトラックピッチは、100nm以上420nm以下であることが好ましく、200nm以上370nm以下であることがより好ましく、260nm以上330nm以下であることが更に好ましい。
【0146】
プリグルーブの溝幅(半値幅)は、25〜250nmの範囲であり、50nm以上240nm以下であることが好ましく、80nm以上230nm以下であることがより好ましく、100nm以上220nm以下であることが更に好ましい。プリグルーブの溝幅が25nm以上であれば、成型時に溝を十分に転写することができ、さらに記録時のエラーレート上昇を抑制することができ、250nm以下であれば、同じく成型時に溝を十分に転写することができ、更に記録時に形成されるピットの広がりによりクロストークが発生することを回避することができる。
【0147】
プリグルーブの溝深さは、5〜150nmの範囲である。プリグルーブの溝深さが5nm以上であれば十分な記録変調度を得ることができ、150nm以下であれば、高い反射率を得ることができる。プリグルーブの溝深さは、10nm以上85nm以下であることが好ましく、20nm以上80nm以下であることがより好ましく、28nm以上75nm以下であることが更に好ましい。
【0148】
また、プリグルーブの溝傾斜角度は、上限値が80°以下であることが好ましく、75°以下であることがより好ましく、70°以下であることが更に好ましく、65°以下であることが特に好ましい。また、下限値は、20°以上であることが好ましく、30°以上であることがより好ましく、40°以上であることが更に好ましい。
プリグルーブの溝傾斜角度が20°以上であれば、十分なトラッキングエラー信号振幅を得ることができ、80°以下であれば成型性が良好である。
【0149】
追記型記録層
態様(1)の追記型記録層は、色素を、結合剤等と共にまたは結合剤を用いないで適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いで、この塗布液を基板上または後述する光反射層上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成することができる。ここで、追記型記録層は、単層でも重層でもよく、重層構造の場合、塗布液を塗布する工程が複数回行なわれることになる。
塗布液中の色素の濃度は、一般に0.01〜15質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜10質量%の範囲、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲、最も好ましくは0.5〜3質量%の範囲である。
【0150】
塗布液の調製に用いる溶剤としては、例えば、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;等を挙げることができる。
溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液中には、さらに、結合剤、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0151】
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。塗布方法としては、スピンコート法が好ましい。
塗布の際、塗布液の温度は23〜50℃の範囲であることが好ましく、24〜40℃の範囲であることがより好ましく、中でも、25〜40℃の範囲であることが特に好ましい。
【0152】
追記型記録層の厚さは、ランド(前記基板において凸部)上で、300nm以下であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが更に好ましく、180nm以下であることが特に好ましい。下限値としては1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることが更に好ましく、7nm以上であることが特に好ましい。
また、追記型記録層の厚さは、グルーブ上(前記基板において凹部)で、400nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、250nm以下であることが更に好ましい。下限値としては、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、25nm以上であることが更に好ましい。
更に、ランド上の追記型記録層の厚さ/グルーブ上の追記型記録層の厚さの比は、0.1以上であることが好ましく、0.13以上であることがより好ましく、0.15以上であることが更に好ましく、0.17以上であることが特に好ましい。上限値としては、1未満であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.85以下であることが更に好ましく、0.8以下であることが特に好ましい。
【0153】
また、追記型記録層には、追記型記録層の耐光性をさらに向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。褪色防止剤としては一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。本発明においてもこの一重項酸素クエンチャーを混合させることによって更なる耐光性の向上が期待できる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。
その具体例としては、特開昭58−175693号公報、同59−81194号公報、同60−18387号公報、同60−19586号公報、同60−19587号公報、同60−35054号公報、同60−36190号公報、同60−36191号公報、同60−44554号公報、同60−44555号公報、同60−44389号公報、同60−44390号公報、同60−54892号公報、同60−47069号公報、同63−209995号公報、特開平4−25492号公報、特公平1−38680号公報、および同6−26028号公報等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものを挙げることができる。
前記一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、色素の量に対して、通常0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは、0.5〜45質量%の範囲、更に好ましくは、3〜40質量%の範囲、特に好ましくは5〜25質量%の範囲である。
【0154】
カバー層
態様(1)のカバー層は、通常、上述した追記型記録層上に、または図1に示すようにバリア層上に、接着剤や粘着材を介して貼り合わされる。
カバー層としては、透明な材質のフィルムであれば、特に限定されないが、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン;ポリエステル;三酢酸セルロース等を使用することが好ましく、中でも、ポリカーボネートまたは三酢酸セルロースを使用することがより好ましい。
なお、「透明」とは、記録および再生に用いられる光に対して、透過率80%以上であることを意味する。
【0155】
また、カバー層は、本発明の効果を妨げない範囲において、種々の添加剤が含有されていてもよい。例えば、波長400nm以下の光をカットするためのUV吸収剤および/または500nm以上の光をカットするための色素が含有されていてもよい。
更に、カバー層の表面物性としては、表面粗さが2次元粗さパラメータおよび3次元粗さパラメータのいずれも5nm以下であることが好ましい。
また、記録および再生に用いられる光の集光度の観点から、カバー層の複屈折は10nm以下であることが好ましい。
【0156】
カバー層の厚さは、記録および再生のために照射されるレーザ光の波長やNAにより、適宜、規定することができるが、本発明においては、0.01〜0.5mmの範囲内であることが好ましく、0.05〜0.12mmの範囲であることがより好ましい。
また、カバー層と、接着剤または粘着剤からなる層と、を合わせた総厚は、0.09〜0.11mmであることが好ましく、0.095〜0.105mmであることがより好ましい。
なお、カバー層の光入射面には、光情報記録媒体の製造時に、光入射面が傷つくことを防止するための保護層(図1に示す態様ではハードコート層44)が設けられていてもよい。
【0157】
カバー層と追記型記録層またはバリア層を貼り合わせるために、両層の間に接着層または粘着層を設けることができる。
接着層に使用される接着剤としては、UV硬化樹脂、EB硬化樹脂、熱硬化樹脂等を使用することが好ましい。
接着剤としてUV硬化樹脂を使用する場合は、該UV硬化樹脂をそのまま、またはメチルエチルケトン、酢酸エチル等の適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、ディスペンサからバリア層表面に供給してもよい。また、作製される光情報記録媒体の反りを防止するため、接着層を構成するUV硬化樹脂としては硬化収縮率の小さいものを使用することが好ましい。このようなUV硬化樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製の「SD−640」等のUV硬化樹脂を挙げることができる。
【0158】
接着層の形成方法は特に限定されないが、バリア層または追記型記録層の表面(被貼り合わせ面)上に、接着剤を所定量塗布し、その上にカバー層を載置した後、スピンコートにより接着剤を、被貼り合わせ面とカバー層との間に均一になるように広げた後、硬化させることが好ましい。
接着層の厚さは、0.1〜100μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜50μmの範囲、更に好ましくは1〜30μmの範囲である。
【0159】
粘着層に使用される粘着剤としては、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコン系の粘着剤を使用することができる。透明性、耐久性の観点から、アクリル系の粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤としては、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレートなどを主成分とし、凝集力を向上させるために、短鎖のアルキルアクリレートやメタクリレート、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレートと、架橋剤との架橋点となり得るアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド誘導体、マレイン酸、ヒドロキシルエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなどとを共重合したものを用いることが好ましい。主成分、短鎖成分および架橋点を付加するための成分との混合比率およびそれら成分の種類を、適宜調節することにより、ガラス転移温度(Tg)や架橋密度を変えることができる。
前記ガラス転移温度(Tg)は、ガラス転移温度Tgが0℃以下であることが好ましく、−15℃以下であることがより好ましく、−25℃以下であることがさらに好ましい。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、Seiko Instruments Inc.製DSC6200Rを用い、DSC(Differential Scanning Calorimetry)法によって測定できる。
【0160】
粘着剤の調製方法としては、例えば、特開2003−217177、特開2003−203387、特開平9−147418等に記載の方法等を用いることができる。
【0161】
粘着層の形成方法は特に限定されないが、バリア層または追記型記録層の表面(被貼り合わせ面)上に、粘着剤を所定量均一に塗布し、その上にカバー層を載置した後、硬化させてもよいし、予め、カバー層の片面に、所定量の粘着剤を均一に塗布して粘着剤塗膜を形成しておき、該塗膜を被貼り合わせ面に貼り合わせ、その後、硬化させてもよい。
また、カバー層に、予め、粘着層が設けられた市販の粘着フィルムを用いてもよい。
粘着層の厚さは、0.1〜100μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜50μmの範囲、更に好ましくは10〜30μmの範囲である。
またカバー層は、UV硬化樹脂を利用してスピンコーティング法により形成してもよい。
【0162】
その他の層
態様(1)の光情報記録媒体は、本発明の効果を損なわない範囲においては、上記の必須の層に加え、他の任意の層を有していてもよい。他の任意の層としては、例えば、基板の裏面(追記型記録層が形成された側と逆側の非形成面側)に形成される、所望の画像を有するレーベル層や、基板と追記型記録層との間に設けられる光反射層(詳細は後述する)、追記型記録層とカバー層との間に設けられるバリア層(詳細は後述する)、該光反射層と追記型記録層との間に設けられる界面層などが挙げられる。ここで、前記レーベル層は、紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂、および熱乾燥樹脂などを用いて形成することができる。
なお、上記した必須および任意の層はいずれも、単層でも、多層構造でもよい。
【0163】
態様(1)の光情報記録媒体では、レーザ光に対する反射率を高めたり、記録再生特性を改良する機能を付与するために、基板と追記型記録層との間に、光反射層を形成することが好ましい。
【0164】
光反射層は、レーザ光に対する反射率が高い光反射性物質を、例えば、真空蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングすることにより基板上に形成することができる。
光反射層の層厚は、一般的には10〜300nmの範囲とし、30〜200nmの範囲とすることが好ましい。
なお、前記反射率は、70%以上であることが好ましい。
【0165】
反射率が高い光反射性物質としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属および半金属またはステンレス鋼を挙げることができる。これらの光反射性物質は単独で用いてもよいし、あるいは二種以上の組合せで、または合金として用いてもよい。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Alおよびステンレス鋼である。特に好ましくは、Au、Ag、Alまたはこれらの合金であり、最も好ましくは、Au、Agまたはこれらの合金である。
【0166】
バリア層(中間層)
態様(1)の光情報記録媒体においては、図1に示すように、追記型記録層とカバー層との間にバリア層を形成することが好ましい。
バリア層は、追記型記録層の保存性向上、追記型記録層とカバー層との接着性向上、反射率調整、熱伝導率調整等のために設けることができる。
バリア層に用いられる材料としては、記録および再生に用いられる光を透過する材料であり、上記の機能を発現し得るものであれば、特に制限されるものではないが、例えば、一般的には、ガスや水分の透過性の低い材料であり、誘電体であることが好ましい。
具体的には、Zn、Si、Ti、Te、Sn、Mo、Ge、Nb、Ta等の窒化物、酸化物、炭化物、硫化物からなる材料が好ましく、MoO2、GeO2、TeO、SiO2、TiO2、ZnO、SnO2、ZnO−Ga23、Nb25、Ta25が好ましく、SnO2、ZnO−Ga23、SiO2、Nb25、Ta25がより好ましい。
【0167】
また、バリア層は、真空蒸着、DCスパッタリング、RFスパッタリング、イオンプレーティングなどの真空成膜法により形成することができる。中でも、スパッタリングを用いることがより好ましい。
バリア層の厚さは、1〜200nmの範囲が好ましく、2〜100nmの範囲がより好ましく、3〜50nmの範囲が更に好ましい。
【0168】
情報記録方法
更に、本発明は、本発明の光情報記録媒体に、波長440nm以下のレーザ光を照射することにより、本発明の光情報記録媒体が有する記録層へ情報を記録する情報記録方法に関する。
【0169】
前述の好ましい態様(1)の光情報記録媒体に対する情報の記録は、例えば次のように行われる。
まず、光情報記録媒体を定線速度(例えば0.5〜10m/秒)または定角速度にて回転させながら、保護層側から半導体レーザ光などの記録用の光を照射する。この光の照射により、レーザ光照射部分の光学的特性が変化して情報が記録される。図1に示す態様では、カバー層16側から半導体レーザ光等の記録用のレーザ光46を、第一対物レンズ42(例えば開口数NAが0.85)を介して照射する。このレーザ光46の照射により、追記型記録層14がレーザ光46を吸収して局所的に温度上昇し、物理的または化学的変化(例えばピットの生成)が生じてその光学的特性を変えることにより、情報が記録されると考えられる。
【0170】
本発明の情報記録方法では、波長440nm以下のレーザ光を照射することにより情報を記録する。記録光としては、440nm以下の範囲の発振波長を有する半導体レーザ光が好適に用いられ、好ましい光源としては390〜415nmの範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザ光、中心発振波長850nmの赤外半導体レーザ光を光導波路素子を使って半分の波長にした中心発振波長425nmの青紫色SHGレーザ光を挙げることができる。特に、記録密度の点で390〜415nmの範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザ光を用いることが好ましい。態様(1)の光情報記録媒体は、前述のように基板と追記型記録層との間に反射層を有し、カバー層側、即ち反射層と対向する面とは反対の面側から記録層へレーザ光が照射される。
【0171】
上記のように記録された情報の再生は、光情報記録媒体を上記と同一の定線速度で回転させながら半導体レーザ光を基板側または保護層側から照射して、その反射光を検出することにより行うことができる。
【0172】
アゾ金属錯体色素
更に、本発明は、前述の一般式(C)で表されるアゾ金属錯体色素に関する。
本発明のアゾ金属錯体色素は、顔料、写真用材料、UV吸収材料、カラーフィルター用染料、色変換フィルター、導電膜などの各種用途に使用することができる。好ましくは、色素含有記録層を有する光情報記録媒体における記録層用色素として使用される。本発明のアゾ金属錯体色素およびその製造方法の詳細は、先に説明した通りである。
【実施例】
【0173】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0174】
以下に、一般式(1)で表されるアゾ色素の合成法の具体例を示すが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。
【0175】
[化合物(L−11)の合成]
【化39】

【0176】
3L3つ口フラスコに化合物(1)、酢酸120ml、プロピオン酸180mlを注ぎ、氷冷下で塩酸(35〜37%)185mlをゆっくり滴下した。氷浴にて−5〜5℃に冷却し、そこへNaNO2 42gを溶解させた水溶液80mlをゆっくり滴下した後、0〜5℃にて30分間攪拌した。この酸性溶液を、氷冷下で0〜5℃に保った化合物(2)106.1gを含むメタノール溶液500mlに徐々に加え、0〜10℃にて1時間攪拌した。室温に戻し、沈殿物をろ過しメタノール250mlで洗浄し、その後蒸留水600mlで洗浄した。得られた固体をエタノールに分散させ、60℃にて1時間攪拌させた後、結晶をろ過し、メタノールで洗浄し乾燥させ、化合物(L−11)140gを得た。化合物の同定は300MHz1H−NMRにより行った。
1H-NMR(DMSO-d6)[ppm];δ13.33(1H,br),7.88(2H,d),7.47(2H,t),7.25(1H,t),2.26(3H,s),1.42(9H,s)
【0177】
上述した化合物(L−11)の合成と同様の方法により、(L−1)〜(L−10)、(L−12)〜(L−22)を合成した。本発明に使用可能な種々のアゾ色素は同様に合成できる。化合物の同定は300MHz1H−NMRにより行った。
【0178】
次に、例示化合物(M−11)で表されるアゾ金属錯体色素の合成法の具体例を示すが、本発明は、これらの方法に限定されるものではない。
【0179】
[(M−11)の合成]
3L3つ口フラスコに化合物(L−11)120g、メタノール1200mlを入れ、攪拌しながらジイソプロピルアミン193mlを滴下した。完溶させた後、攪拌しながら、さらに酢酸銅一水和物 82.3gを加え、60〜65℃で2時間させた。室温に戻し、沈殿物をろ過し、メタノールにて洗浄し、乾燥を施し化合物(M−11)117gを得た。化合物の同定はICP−OESを用いたCu含有量測定およびESI−TOF−MS、X線構造解析にて行った。
ESI−TOF−MS:m/z=2556(nega)、1279(nega)
ICP−OES:Cu含有量=168±4g/kg
X線構造解析により、生成物はアゾ色素6つと銅イオン7つからなる下記の多核銅錯体であることが確認できた。ESI−TOF−MSの結果は下記構造と一致した。
【0180】
【化40】

【0181】
(M−11)と同様の製造法を用い(但し、反応スケールは各々異なる)、それぞれ原料や当量比を替えることにより(M−1)、(M−12)〜(M−14)、(M−21)〜(M−26)、(M−28)、(M−41)〜(M−54)を合成した。化合物の同定はESI−TOF−MSにより行った。また、ICP−OES、X線構造解析、HPLC、GC等により確認できる。
【0182】
上述した化合物の合成法と同様の方法により、本発明の光情報記録媒体に使用可能な種々のアゾ金属錯体色素を合成できる。化合物の同定は、MALDI−TOF−MS、ESI−TOF−MS、ICP−OES、X線構造解析、HPLC、GC等により確認できる。ICP−OESによる測定方法を以下に示す。
【0183】
≪ICP−OES(ICP発光分光)の測定≫
試料0.05gを採取し、硝酸3mlを添加後、マイクロウェーブ灰化を行った。水で100mlにメスアップし、ICP−OES(島津製作所製1000−IV)にてCuを絶対検量線法を用いて定量した。
【0184】
[実施例1〜18]
≪光情報記録媒体の作製≫
(基板の作製)
厚さ1.1mm、外径120mm、内径15mmでスパイラル状のプリグルーブ(トラックピッチ:320nm、溝幅:グルーブ(凹部)幅170nm、溝深さ:37nm、溝傾斜角度:52°、ウォブル振幅:20nm)を有する、ポリカーボネート樹脂からなる射出成形基板を作製した。射出成型時に用いられたスタンパのマスタリングは、レーザーカッティング(351nm)を用いて行なわれた。
【0185】
(光反射層の形成)
基板上に、Unaxis社製Cubeを使用し、Ar雰囲気中で、DCスパッタリングにより、膜厚60nmの真空成膜層としてのANC光反射層(Ag:98.1at%、Nd:0.7at%、Cu:0.9at%)を形成した。光反射層の膜厚の調整は、スパッタ時間により行った。
【0186】
(追記型記録層の形成)
実施例1〜18として、表3に示す例示化合物それぞれ0.7gを、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール100ml中に添加して溶解し、色素含有塗布液を調製した。そして、第1光反射層上に、調製した色素含有塗布液を、スピンコート法により回転数500〜2200rpmまで変化させながら23℃、50%RHの条件で塗布して、第1追記型記録層を形成した。
【0187】
追記型記録層を形成した後、クリーンオーブンにてアニール処理を施した。アニール処理は、基板を垂直のスタックポールにスペーサーで間をあけながら支持し、80℃で1時間保持して行った。
【0188】
(バリア層の形成)
その後、追記型記録層上に、Unaxis社製Cubeを使用し、Ar雰囲気中で、DCスパッタリングによりNb25からなる、厚さ10nmのバリア層を形成した。
【0189】
(カバー層の貼り合わせ)
カバー層としては、内径15mm、外径120mmで、片面に粘着層(ガラス転移温度−52℃)を有するポリカーボネート製フィルム(帝人ピュアエース、厚さ:80μm)を用い、該粘着層とポリカーボネート製フィルムとの厚さの合計が100μmとなるように設定した。
そして、バリア層上に、カバー層を粘着層を介して載置した後、そのカバー層を押し当て部材にて圧接して、貼り合わせた。以上の工程により、基板上に、光反射層、追記型記録層、バリア層、粘着層およびカバー層をこの順に有する、実施例1〜12の光情報記録媒体を作製した。
【0190】
<色素層膜厚測定>
得られた光情報記録媒体の断面図を、SEMで観察し、色素層のグルーブ凹部、凸部それぞれの膜厚を読み取った。色素層のグルーブ凹部は溝深さ+0〜10nmであり、色素層のグルーブ凸部は10〜30nm程度であった。
【0191】
[比較例1〜7]
≪光情報記録媒体の作製≫
追記型記録層に使用する色素として例示化合物に代えて比較化合物(A)〜(G)を使用した以外は実施例と同様の方法で比較例1〜7の光情報記録媒体を作製した。
【0192】
【化41】

【0193】
【化42】

【0194】
【化43】

【0195】
【化44】

【0196】
【化45】

【0197】
【化46】

【0198】
【化47】

【0199】
<光情報記録媒体の評価>
(1) ジッター評価
作製した光情報記録媒体を、405nmレーザ、NA0.85ピックアップを有する記録再生評価機(パルステック工業株式会社製:DDU1000)を用い、カバー層側から光照射を行い、クロック周波数66MHz、線速4.92m/sにて、(1.7)RLL−NRZI変調されたマーク長変調信号(17PP)を記録した。ジッター測定は記録信号をリミットイコライザーに通し、タイムインターバルアナライザ(横河電機株式会社製:TA520)を用いて測定した。
【0200】
(2) 色素膜の耐光性評価
実施例1〜18、比較例1〜7と同様の色素含有塗布液を調製し、厚さ1.1mmのガラス板上に、調製した色素含有塗布液を、スピンコート法により回転数500〜1000rpmまで変化させながら常温、窒素雰囲気下で塗布した。その後、常温で24時間保存した後、メリーゴーランド型耐光試験機(イーグルエンジニアリング社製、セルテスト機III型、Schott製WG320フィルタ付)を用いて耐光性試験を行った。耐光性試験直前の色素膜および耐光性試験48時間後の色素膜について、UV−1600PC(SHIMADZU社製)を用いて色素膜の吸収スペクトルを測定し、最大吸収波長における吸光度の変化を読み取った。
【0201】
【表3】

【0202】
(注1)Xe光照射48時間後の吸収λmaxにおける色素残存率が90%以上のとき◎、80%以上90%未満のとき○、70%以上80%未満のとき△、70%未満のとき×。
【0203】
(注2)ジッター値が7%未満のとき◎、7%以上8%未満のとき○、8%以上のとき×。
【0204】
(注3)溶解性が悪く、記録層の形成が十分にできなかったため、測定あるいは記録ができなかった。
【0205】
表3に示すように、従来のアゾ金属錯体を用いた比較例1〜7に比べ、実施例1〜18では、いずれも耐光性と記録再生特性の両立ができており、ブルーレイ・ディスク用色素として良好な特性を有することが示された。金属イオンとしてはこれまでアゾ金属錯体で好適に用いられていたNiイオンやCoイオンを含む色素に比べて、Cuイオンを含む本発明のアゾ金属錯体色素の方が耐光性がより優れており、かつ、記録再生特性もより優れることがわかった。すべての実施例において、55時間Xe光照射した後の光情報記録媒体の記録再生も可能であり、光情報記録媒体下でも耐光性が良好であった。
【0206】
また、実施例において使用したアゾ金属錯体色素は塗布溶剤に対し、良好な溶解性を示し、溶液中での保存安定性も良好であった。実施例1で作製した光情報記録媒体を、記録後に高温高湿下168時間保存したが、ジッター変化が殆ど見られず、高温高湿下での保存安定性にきわめて優れることがわかった。
【0207】
また、上記実施例においてカバー層の貼り合わせを粘着層の代わりに接着層(UV硬化樹脂)を用いた以外は同様に光情報記録媒体を形成したところ、上記実施例と同様に記録再生特性、耐光性、保存安定性にきわめて優れることが確認された。
【0208】
また、化合物(M−11)の粉末を、空気下60℃にて3ヶ月間保存したところ、物性変化が見られず、熱安定性に極めて優れることがわかった。
【0209】
[実施例19〜24]
(1)錯塩の形成
100 mLフラスコに(M−11)40g、p−トルエンスルホン酸イオンを対アニオンに有する(Cat−2)7.24gを入れ、メタノール600mLを加えて室温で2時間攪拌させた後、得られた沈殿物をろ別してMeOHで洗浄し、乾燥させ、一般式(C)で表される化合物である(M−102)43gを得た。得られた錯体は、ESI−TOF−MS、MALDI−MS、HPLCにより同定した。また、得られた錯体にはジイソプロピルアンモニウムおよびp−トルエンスルホン酸イオンが実質的に含まれないことを、HPLCおよびGCにより確認した。このHPLCおよびGCの分析結果から、得られた錯体が(An−1)および(Cat−2)を構成成分として含む錯塩であることが確認できる。
(M−102)と同様にして、(M−101)、(M−103)〜(M−112)を合成した。得られた化合物をESI−TOF−MS、MALDI−MS、HPLCにより同定し、下記表4に示す組み合わせのアニオンとカチオンを含む錯体が得られたことを確認した。
【0210】
【表4】

【0211】
【化48】

【0212】
【化49】

【0213】
(2)光情報記録媒体の作製
記録層用色素として、上記(1)で調製した錯体それぞれ0.7gを使用した点以外、実施例1〜18と同様の方法により光情報記録媒体を作製した。
【0214】
(3)色素膜の形成および物性評価
(i)消衰係数kの測定
(M−11)および上記方法で調製した(M−101)〜(M−106)それぞれ10mgを1mLの2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに溶解させて色素含有塗布液を調製した。厚さ1.1mmのガラス板上に、調製した色素含有塗布液1mLを、スピンコート法により回転数500〜1000rpmまで変化させながら常温、窒素雰囲気下で塗布し色素膜を作製し、分光エリプソメトリー法によって波長405nmにおける消衰係数kの測定を行った。
消衰係数kは、光の波長λに依存する物質固有のパラメータであり、複素屈折率N、屈折率nおよび虚数単位iを用いて次式のように定義される。
N≡n−ik
ここで、kは吸収係数α、光の波長λと次の関係を満たす。
α=4πk/λ
即ちある波長における物質の吸収係数αはkに比例する。従って、kを増加させることによって吸光度が増加し、効率的に光吸収が起こるようになる。光記録は、記録層色素の光吸収による励起・光熱変換と、それにより引き起こされる色素の分解を利用するものである。したがって、効率的な光吸収を行うことができれば分解過程が促進されるため、記録感度の向上が期待される。高感度化は高速記録対応につながることから、次世代における光記録媒体設計に強く要求されている課題であり、そのための一手法として、kの高い物質を光記録色素層に用いることが考えられる。
(ii)耐光性の評価
上記(i)と同様の方法で作製した色素膜を常温で24時間保存した後、メリーゴーランド型耐光試験機(イーグルエンジニアリング社製、セルテスト機III型、Schott製WG320フィルタ付)を用いて耐光性試験を行った。耐光性試験直前の色素膜および耐光性試験48時間後の色素膜について、UV−1600PC(SHIMADZU社製)を用いて色素膜の吸収スペクトルを測定し、最大吸収波長における吸光度の変化を読み取った。
(iii)溶液安定性の評価
各錯体を2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール中に添加して溶解し、吸光度が0.9〜1.1になるよう濃度を調製した。この溶液の調製直後および60℃で48時間保存後の溶液の吸収スペクトルを測定し、吸光度の変化から残存率を求めた。
(iv)ジッター評価
上記(2)で作製した光情報記録媒体を、405nmレーザ、NA0.85ピックアップを有する記録再生評価機(パルステック工業株式会社製:DDU1000)を用い、カバー層側から光照射を行い、クロック周波数66MHz、線速4.92m/sにて、(1.7)RLL−NRZI変調されたマーク長変調信号(17PP)を記録した。ジッター測定は記録信号をリミットイコライザーに通し、タイムインターバルアナライザ(横河電機株式会社製:TA520)を用いて測定した。
以上の結果を、下記表5に示す。
【0215】
【表5】

【0216】
(注4)吸収λmaxのabs.が95%以上かつλmaxの波長変化が±3nm未満のとき◎、吸収λmaxのabs.が90%以上かつ95%未満かつλmaxの波長変化が±3nm未満のとき○、吸収λmaxのabs.が90%未満またはλmaxの波長変化が±3nm以上のとき×。
【0217】
(注5)Xe光照射48時間後の吸収λmaxにおける色素残存率が90%以上のとき◎、80%以上90%未満のとき○、70%以上80%未満のとき△、70%未満のとき×。
【0218】
評価結果
(M−11)を含む色素膜の消衰係数kは、0.40であった。これに対し、(M−101)〜(M−106)は、(M−11)単独の場合と比べて高い消衰係数kを示した。この結果から、実施例19〜24では、記録層を(M−11)単独で作製した場合に比べて、記録感度を向上させることができることが確認できる。また、実施例19〜24では、低パワーのレーザー出力で、(M−11)単独の場合と同等の記録ピット形成が可能であった。
【0219】
[実施例25〜37]
(1)中性色素の合成および同定
以下の方法により、表6に示す中性色素を特開2006−306070号公報、特開2007−45147号公報記載の方法に従い合成した。
【0220】
(2)光情報記録媒体の作製
記録層に、例示化合物M−11またはM−12に加えて表6に示す中性色素を添加(添加量は表6参照)した点以外、実施例1〜18と同様の方法により光情報記録媒体を作製した。
【0221】
(3)色素膜の形成および物性評価
【0222】
【表6】

【0223】
評価結果
実施例25〜37と同様の色素含有塗布液を調製し、厚さ1.1mmのガラス板上に、調製した色素含有塗布液を、スピンコート法により回転数500〜1000rpmまで変化させながら常温、窒素雰囲気下で塗布した。その後、常温で24時間保存した後、メリーゴーランド型耐光試験機(イーグルエンジニアリング社製、セルテスト機III型、Schott製WG320フィルタ付)を用いて耐光性試験を行った。耐光性試験直前の色素膜および耐光性試験48時間後の色素膜について、UV−1600PC(SHIMADZU社製)を用いて色素膜の吸収スペクトルを測定し、最大吸収波長における吸光度の変化を読み取った。いずれの混合系においても、Xe光照射48時間後の吸収λmaxにおける色素残存率が85%以上であり、優れた耐光性を示すことが判明した。実施例25において使用した中性色素(S−1)は、先に示した比較化合物(F)であり、前記アゾ金属錯体色素と併用することにより、中性色素単独の場合と比べて明らかに耐光性が良好となることが確認された。また、実施例25について、上記方法で得られた色素膜の消衰係数kを前述の方法により測定したところ、波長405nmでの消衰係数kは0.43であり、(M−11)単独に比べて色素膜の消衰係数が増大し、光情報記録媒体の記録感度向上に寄与することがわかった。実施例26〜37についても同様に消衰係数kを測定したところ、(M−11)単独に比べて色素膜の消衰係数が増大したことが確認された。
【0224】
なお、本発明に係る光情報記録媒体およびアゾ金属錯体色素は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。耐光性および高温高湿下での安定性に優れることから、写真用材料、カラーフィルター用染料、色変換フィルター、導電膜、熱転写記録材料、インク等の種々の用途において好ましい性質を有することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0225】
本発明のアゾ金属錯体色素を記録層用色素として用いることにより、良好な記録再生特性を示し、かつ、極めて高い耐光性を持つ光情報記録媒体(特に、波長が440nm以下のレーザ光照射による情報の記録が可能な光情報記録媒体)を製造することができる。
また、本発明のアゾ金属錯体色素は、写真用材料、カラーフィルター用染料、色変換フィルター、熱転写記録材料、インク等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0226】
10A…第1光情報記録媒体
12…第1基板 14…第1追記型記録層
16…カバー層 18…第1光反射層
20…バリア層 22…第1接着層または第1粘着層
38…ランド 40…グルーブ
42…第一対物レンズ 44…ハードコート層
46…レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックピッチ50〜500nmのプリグルーブを表面に有する基板の該表面上に記録層を有する光情報記録媒体であって、
前記記録層は、アゾ色素6つと、遷移金属イオン7つとの錯体であるアゾ金属錯体色素を含み、但し、上記アゾ金属錯体色素1分子中に含まれる複数の遷移金属イオンはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、上記アゾ金属錯体色素1分子中に含まれる複数のアゾ色素はそれぞれ同一でも異なっていてもよい、前記光情報記録媒体。
【請求項2】
前記アゾ色素は、下記一般式(A)で表される部分構造を有するアゾ色素である請求項1に記載の光情報記録媒体。
【化1】

[一般式(A)中、R1およびR2は、各々独立に、水素原子または置換基を表し、Y1はアゾ金属錯体色素形成時に解離してもよい水素原子を表し、*は−N=N−基との結合位置を表す。]
【請求項3】
前記アゾ色素は、下記一般式(1)で表されるアゾ色素である請求項2に記載の光情報記録媒体。
【化2】

[一般式(1)中、Q1は隣り合う2つの炭素原子とともに複素環または炭素環を形成する原子群を表し、Yはアゾ金属錯体色素形成時に解離してもよい水素原子を含有する基を表し、R1、R2およびY1は、それぞれ一般式(A)における定義と同義である。]
【請求項4】
一般式(1)中の下記部分構造:
【化3】

は、下記一般式(B)で表される部分構造である請求項2または3に記載の光情報記録媒体。
【化4】

[一般式(B)中、Yは一般式(1)における定義と同義であり、Q2は隣り合う窒素原子および炭素原子ならびにYで表される基と結合する炭素原子とともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表し、R3はアリール基またはヘテロアリール基を表す。]
【請求項5】
前記アゾ色素は、下記一般式(2)で表されるアゾ色素である請求項4に記載の光情報記録媒体。
【化5】

[一般式(2)中、R1、R2、Y1およびYは、それぞれ一般式(1)における定義と同義であり、R3は一般式(B)における定義と同義であり、R4は水素原子または置換基を表す。]
【請求項6】
前記アゾ金属錯体色素は、下記一般式(C)で表されるアゾ金属錯体色素である請求項3〜5のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【化6】

[一般式(C)中、M2+は2価の遷移金属イオンを表し、L2-は一般式(1)で表されるアゾ色素から水素原子2つが解離した2価アニオンを表し、pおよびqはそれぞれ0〜2の範囲の整数を表し、ただしp+q=2である。Xn+はn価のカチオンを表し、nは1〜10の範囲の整数を表し、L’は配位子を表し、rは0〜5の範囲の整数を表す。]
【請求項7】
一般式(C)中、Xn+はアンモニウムイオンを表す請求項6に記載の光情報記録媒体。
【請求項8】
前記遷移金属イオンは銅イオンである請求項1〜7のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項9】
前記アゾ金属錯体色素は、O2-および/またはOH-を含むアゾ金属錯体色素である請求項1〜8のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項10】
前記アゾ金属錯体色素は、アゾ色素と遷移金属イオンとを塩基存在下で反応させることにより得られたものである請求項1〜9のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項11】
前記記録層は、塩基(塩基がプロトン化されたものを含む)を含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項12】
前記記録層は、波長405nmに吸収を有するカチオン性色素を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項13】
前記記録層は、前記アゾ金属錯体色素と前記カチオン性色素との錯塩を含む請求項12に記載の光情報記録媒体。
【請求項14】
前記カチオン性色素に含まれるカチオン性色素部位は、下記一般式(D)〜(F)のいずれかで表される請求項12または13に記載の光情報記録媒体。
【化7】

[一般式(D)中、R110、R111、R112、R113、R114およびR115は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R111およびR112、R114およびR115は、互いに連結して環構造を形成してもよく、X110およびX111は、各々独立に炭素原子、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を表し、n1は0以上の整数を表す。]
【化8】

[一般式(E)中、R120、R121およびR122は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R121とR122は互いに連結して環構造を形成してもよく、R123およびR124は、各々独立に置換基を表し、互いに連結して環構造を形成してもよく、X120は、炭素原子、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を表し、n2は0以上の整数を表す。]
【化9】

[一般式(F)中、R130、R131、R132およびR133は、各々独立に置換基を表し、R130とR131、R132とR133は互いに連結して環構造を形成してもよく、n3は0以上の整数を表す。]
【請求項15】
前記カチオン性色素は、吸収極大波長を385〜450nmの範囲の波長域に有する請求項12〜14のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項16】
前記記録層は、下記一般式(G)で表されるアゾ化合物と金属イオンまたは金属酸化物イオンとの錯体である中性色素を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【化10】

[一般式(G)中、Q11は含窒素複素環を形成する原子群を表し、Q12は複素環または炭素環を形成する原子群を表し、Y11は前記錯体の形成時に解離してもよい水素原子を含有する基を表す。]
【請求項17】
波長440nm以下のレーザー光を照射することにより情報を記録するために使用される請求項1〜16のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項18】
前記基板と前記記録層との間に反射層を有し、前記レーザー光は基板と反対の面側から記録層へ照射される請求項17に記載の光情報記録媒体。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の光情報記録媒体に、波長440nm以下のレーザー光を照射することにより前記光情報記録媒体が有する記録層へ情報を記録する情報記録方法。
【請求項20】
下記一般式(C)で表されるアゾ金属錯体色素。
【化11】

[一般式(C)中、M2+は2価の遷移金属イオンを表し、L2-は下記一般式(1)で表されるアゾ色素から水素原子2つが解離した2価アニオンを表し、pおよびqはそれぞれ0〜2の範囲の整数を表し、ただしp+q=2である。Xn+はn価のカチオンを表し、nは1〜10の範囲の整数を表し、L’は配位子を表し、rは0〜5の範囲の整数を表す。]
【化12】

[一般式(1)中、Q1は隣り合う2つの炭素原子とともに複素環または炭素環を形成する原子群を表し、Yはアゾ金属錯体色素形成時に解離してもよい水素原子を含有する基を表し、R1およびR2は、各々独立に、水素原子または置換基を表し、Y1はアゾ金属錯体色素形成時に解離してもよい水素原子を表す。]
【請求項21】
一般式(1)中の下記部分構造:
【化13】

は、下記一般式(B)で表される部分構造である請求項20に記載のアゾ金属錯体色素。
【化14】

[一般式(B)中、Yは一般式(1)における定義と同義であり、Q2は隣り合う窒素原子および炭素原子ならびにYで表される基と結合する炭素原子とともにとともに含窒素ヘテロ環を形成する原子群を表し、R3はアリール基またはヘテロアリール基を表す。]
【請求項22】
一般式(C)中、L2-は下記一般式(2)で表されるアゾ色素から水素原子2つが解離した2価アニオンを表す請求項21に記載のアゾ金属錯体色素。
【化15】

[一般式(2)中、R1、R2、Y1およびYは、それぞれ一般式(1)における定義と同義であり、R3は一般式(B)における定義と同義であり、R4は水素原子または置換基を表す。]
【請求項23】
前記遷移金属イオンは銅イオンである請求項20〜22のいずれか1項に記載のアゾ金属錯体色素。
【請求項24】
一般式(C)中、Xn+は下記一般式(D)〜(F)のいずれかで表されるカチオンである請求項20〜23のいずれか1項に記載のアゾ金属錯体色素。
【化16】

[一般式(D)中、R110、R111、R112、R113、R114およびR115は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R111およびR112、R114およびR115は、互いに連結して環構造を形成してもよく、X110およびX111は、各々独立に炭素原子、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を表し、n1は0以上の整数を表す。]
【化17】

[一般式(E)中、R120、R121およびR122は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R121とR122は互いに連結して環構造を形成してもよく、R123およびR124は、各々独立に置換基を表し、互いに連結して環構造を形成してもよく、X120は、炭素原子、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を表し、n2は0以上の整数を表す。]
【化18】

[一般式(F)中、R130、R131、R132およびR133は、各々独立に置換基を表し、R130とR131、R132とR133は互いに連結して環構造を形成してもよく、n3は0以上の整数を表す。]

【図1】
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【公開番号】特開2010−100029(P2010−100029A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50910(P2009−50910)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】