説明

光測定装置

【課題】精度の高い分光測定が可能な光測定装置を提供するを提供する。
【解決手段】 分光測定装置1は、第一測定波長域内の第一波長の光を取り出す短波長域用エタロン2Aと、第一測定波長域よりも波長が長い第二測定波長域内の第二波長の光を取り出す長波長域用エタロン2Bと、短波長域用エタロン2Aに入射される測定対象光の光量を調整する短波長域用アパーチャー4Aと、長波長域用エタロン2Bに入射される前記測定対象光の光量を調整する長波長域用アパーチャー4Bと、第一波長光を受光して検出信号を出力する短波長域用光検出器3Aと、第二波長光を受光して検出信号を出力する長波長域用光検出器3Bと、を具備し、短波長域用アパーチャー4Aを通過する光の光量は、長波長域用アパーチャー4Bを通過する光の光量よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光特性を測定する光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入射光の各波長光の光特性(色度や明るさなど)を測定する分光測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の分析装置は、光源から射出され、試料により反射された光を、波長可変干渉フィルターに入射させ、波長可変干渉フィルターを透過した光をフォトダイオード(PD)で受光する。そして、PDから出力される電流を検出することで、測定を実施する装置である。このような分析装置では、波長可変干渉フィルターを制御することで、波長可変干渉フィルターを透過する光を可変でき、入射した光から所望の波長の光を順次切り替えてPDで受信させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−106753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、図11に、シリコン製フォトダイオードの一般的な分光感度特性を示す。この図11に示すように、一般的なPDでは、短波長域の光に対する相対感度は、長波長域の光よりも低くなる。このため、短波長光の光量と長波長光の光量とが同一であったとしても、PDでは、短波長光を十分に検出できず、短波長光の光量の方が少ないとした検出結果が出される不都合がある。したがって、上記特許文献1に記載のような分光測定装置では、短波長域の測定結果に対して精度が悪く、入射光に対する正確な光特性の測定が実施できないという問題がある。
【0006】
本発明は、上述のような問題に鑑みて、精度の高い分光測定が可能な光測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光測定装置は、測定対象光のうち、第一測定波長域内の第一波長の光を取り出す第一光フィルターと、前記測定対象光のうち、前記第一測定波長域よりも波長が長い第二測定波長域内の第二波長の光を取り出す第二光フィルターと、前記第一光フィルターに入射される前記測定対象光の光量を調整する第一光量調整部と、前記第二光フィルターに入射される前記測定対象光の光量を調整する第二光量調整部と、前記第一光フィルターにより取り出された第一波長の光の光量を受光し、受光量に応じた検出信号を出力する第一光検出器と、前記第二光フィルターにより取り出された第二波長の光の光量を受光し、受光量に応じた検出信号を出力する第二光検出器と、を具備し、前記第一光量調整部により調整される、前記第一光フィルターに入射される光の光量は、前記第二光量調整部により調整される、前記第二光フィルターに入射される光の光量よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
この発明では、第一測定波長域内の第一波長の光を取り出すための第一光フィルターと、第一測定波長域より長波長域である第二測定波長域内の第二波長の光を取り出すための第二光フィルターとを分離し、第一光量調整部および第二光量調整部により、第一光フィルターおよび第二光フィルターに入射される測定対象光の光量を調整している。すなわち、第一光量調整部および第二光量調整部は、第一光フィルターに入射される測定対象光の光量の方が、第二光フィルターに入射される測定対象光の光量よりも多くなるように、測定対象光の光量を調整する。そして、第一光フィルターから取り出された光を第一検出部で受光させ、第二光フィルターから取り出された光を第二検出部で受光させている。
ここで、第一検出部および第二検出部は、光電変換処理により、受光量に応じて検出信号(電気信号)を出力する素子であり、例えばフォトダイオード、フォトICなどが例示できる。このような第一および第二検出部では、図11に示すように、短波長域での分光感度が低く、長波長域での分光感度が高くなる。これに対して、本発明では、第一光量調整部および第二光量調整部により、短波長域である第一測定波長域の第一波長の光を取り出すための第一光フィルターに入射される測定対象光の光量は、長波長域である第二測定波長域の第二波長の光を取り出すための第二光フィルターに入射される測定対象光の光量よりも多くなるように設定されている。したがって、第一検出部での短波長域の分光感度が低い場合でも、より多くの光量に基づいた測定を実施することができ、測定対象光における各波長の光量をより正確に測定することができ、精度の高い分光測定を実施することができる。
【0009】
本発明の光測定装置では、前記第一光量調整部は、前記第一光フィルターに入射される前記測定対象光の光量を絞る第一開口部を有する第一アパーチャーを備え、前記第二光量調整部は、前記第二光フィルターに入射される前記測定対象光の光量を絞る第二開口部を有する第二アパーチャーを備え、前記第一アパーチャーの前記第一開口部は、前記第二アパーチャーの前記第二開口部よりも開口径が大きいことが好ましい。
【0010】
この発明では、第一アパーチャーの第一開口径が、第二アパーチャーの第二開口径よりも大きく形成されている。このため、第一アパーチャーにより絞られて第一光フィルターに入射される測定対象光の光量が、第二アパーチャーにより絞られて第二光フィルターに入射される測定対象光の光量よりも多くなる。これにより、第一検出部での短波長域の分光感度が低い場合でも、より多くの光量に基づいた測定を実施することができ、測定対象光における各波長の光量をより正確に測定することができ、精度の高い分光測定を実施することができる。
【0011】
本発明の光測定装置は、前記第一光量調整部は、前記測定対象光を第一フォーカス点に向かって反射して集光し、前記第一光フィルターに入射させる第一凹面反射鏡を備え、前記第二光量調整部は、前記測定対象光を第二フォーカス点に向かって反射して集光し、前記第二光フィルターに入射させる第二凹面反射鏡を備え、前記第一凹面反射鏡から前記第一フォーカス点までの第一集光距離は、前記第二凹面反射鏡から前記第二フォーカス点までの第二集光距離よりも短いことが好ましい。
【0012】
この発明では、第一光量調整部および第二光量調整部は、それぞれ第一凹面反射鏡および第二凹面反射鏡を備えている。そして、第一凹面反射鏡は、第一集光距離が、第二凹面反射鏡の第二集光距離よりも短くなるように、凹面形状が形成されている。
ここで、第一凹面反射鏡と第一光フィルターとの距離、第二凹面反射鏡と第二フィルターとの距離がそれぞれ同じ距離であり、第一光フィルターおよび第二光フィルターが、それぞれ、第一凹面反射鏡および第二凹面反射鏡から第一集光距離程度の位置に配設される場合、第一光フィルターに、より多くの測定対象光が集光されることになる。したがって、第一光フィルターに入射される測定対象光および第一検出器により受光される第一波長の光の光量を、第二フィルターに入射される測定対象光および第二検出器により受光される第二波長の光の光量よりも多くすることができる。
また、第一光フィルターおよび第二光フィルターの光入射側に、測定対象光の光量を絞るアパーチャーが設けられる場合、第一凹面反射鏡の第一集光距離が第二凹面反射鏡の第二集光距離よりも短いため、第一凹面反射鏡により反射された測定対象光の方が、第二凹面反射鏡により反射された測定対象光よりも、アパーチャーの開口内により多く入射される。これにより、第一光フィルターに入射される測定対象光および第一検出器により受光される第一波長の光の光量を、第二フィルターに入射される測定対象光および第二検出器により受光される第二波長の光の光量よりも多くすることができる。
以上により、第一検出部での短波長域の分光感度が低い場合でも、より多くの光量に基づいた測定を実施することができ、測定対象光における各波長の光量をより正確に測定することができ、精度の高い分光測定を実施することができる。
【0013】
本発明の光測定装置では、前記第一光量調整部は、第一反射領域に入射された前記測定対象光を反射して集光し、前記第一光フィルターに入射させる第一凹面反射鏡を備え、前記第二光量調整部は、第二反射領域に入射された前記測定対象光を反射して集光し、前記第二光フィルターに入射させる第二凹面反射鏡を備え、前記第一凹面反射鏡の前記第一反射領域は、前記第二凹面反射鏡の前記第二反射領域よりも大きいことが好ましい。
【0014】
この発明では、第一凹面反射鏡の第一反射領域が、第二凹面反射鏡の第二反射領域よりも大きいため、第二凹面反射鏡より多くの測定対象光が第一凹面反射鏡で反射されて、第一光フィルターに入射される。したがって、第一光フィルターに入射される測定対象光および第一検出器により受光される第一波長の光の光量を、第二フィルターに入射される測定対象光および第二検出器により受光される第二波長の光の光量よりも多くすることができる。これにより、第一検出部での短波長域の分光感度が低い場合でも、より多くの光量に基づいた測定を実施することができ、測定対象光における各波長の光量をより正確に測定することができ、精度の高い分光測定を実施することができる。
【0015】
本発明の光測定装置では、前記第一光量調整部は、前記測定対象光を反射して集光し、前記第一光フィルターに入射させる複数の第一凹面反射鏡を備え、前記第二光量調整部は、前記測定対象光を反射して集光し、前記第二光フィルターに入射させる少なくとも1つ以上の第二凹面反射鏡を備え、前記第一光量調整部の前記第一凹面反射鏡の数は、前記第二光量調整部の前記第二凹面反射鏡の数よりも多いことが好ましい。
【0016】
この発明では、第一光フィルターに向かって測定対象光を反射させる第一凹面反射鏡の数が、第二光フィルターに向かって測定対象光を反射させる第二凹面反射鏡よりも多い。このため、これらの第一凹面反射鏡により、より多くの光を第一光フィルターに入射させることができる。したがって、第一光フィルターに入射される測定対象光および第一検出器により受光される第一波長の光の光量を、第二フィルターに入射される測定対象光および第二検出器により受光される第二波長の光の光量よりも多くすることができる。これにより、第一検出部での短波長域の分光感度が低い場合でも、より多くの光量に基づいた測定を実施することができ、測定対象光における各波長の光量をより正確に測定することができ、精度の高い分光測定を実施することができる。
【0017】
本発明の光測定装置では、前記第一光量調整部は、前記測定対象光を第一レンズフォーカス点に向かって集光し、前記第一光フィルターに入射させる第一集光レンズを備え、前記第二光量調整部は、前記測定対象光を第二レンズフォーカス点に向かって集光し、前記第二光フィルターに入射させる第二集光レンズを備え、前記第一集光レンズから前記第一レンズフォーカス点までの第一レンズ集光距離は、前記第二集光レンズから前記第二レンズフォーカス点までの第二レンズ集光距離よりも短いことが好ましい。
【0018】
この発明では、第一光量調整部および第二光量調整部は、それぞれ第一集光レンズおよび第二集光レンズを備えている。そして、第一集光レンズは、第一レンズ集光距離が、第二集光レンズの第二レンズ集光距離よりも短くなるように、レンズ曲率が形成されている。
ここで、第一集光レンズと第一光フィルターとの距離、第二集光レンズと第二フィルターとの距離がそれぞれ同じ距離であり、第一光フィルターおよび第二光フィルターが、それぞれ、第一集光レンズおよび第二集光レンズから第一レンズ集光距離程度の位置に配設されている場合、第一光フィルターにより多くの測定対象光が集光されることになる。したがって、第一光フィルターに入射される測定対象光および第一検出器により受光される第一波長の光の光量を、第二フィルターに入射される測定対象光および第二検出器により受光される第二波長の光の光量よりも多くすることができる。
また、第一光フィルターおよび第二光フィルターの光入射側に測定対象光の光量を絞るアパーチャーが設けられる場合、第一集光レンズの第一レンズ集光距離が第二集光レンズの第二レンズ集光距離よりも短いため、第一集光レンズで集光される測定対象光の方が、第二集光レンズで集光される測定対象光よりも、アパーチャーの開口内により多く入射される。これにより、第一光フィルターに入射される測定対象光および第一検出器により受光される第一波長の光の光量を、第二フィルターに入射される測定対象光および第二検出器により受光される第二波長の光の光量よりも多くすることができる。
以上により、第一検出部での短波長域の分光感度が低い場合でも、より多くの光量に基づいた測定を実施することができ、測定対象光における各波長の光量をより正確に測定することができ、精度の高い分光測定を実施することができる。
【0019】
本発明の光測定装置では、前記第一光量調整部は、第一レンズ径内に入射された前記測定対象光を集光し、前記第一光フィルターに入射させる第一集光レンズを備え、前記第二光量調整部は、第二レンズ径内に入射された前記測定対象光を集光し、前記第二光フィルターに入射させる第二集光レンズを備え、前記第一集光レンズの前記第一レンズ径は、前記第二集光レンズの前記第二レンズ径よりも大きいことが好ましい。
【0020】
この発明では、第一集光レンズの第一レンズ径が、第二集光レンズの第二レンズ径よりも大きいため、第二集光レンズより多くの測定対象光が第一集光レンズに入射して集光され、第一光フィルターに入射される。したがって、第一光フィルターに入射される測定対象光および第一検出器により受光される第一波長の光の光量を、第二フィルターに入射される測定対象光および第二検出器により受光される第二波長の光の光量よりも多くすることができる。これにより、第一検出部での短波長域の分光感度が低い場合でも、より多くの光量に基づいた測定を実施することができ、測定対象光における各波長の光量をより正確に測定することができ、精度の高い分光測定を実施することができる。
【0021】
本発明の光測定装置では、測定対象に光を照射する光源を備え、前記第一光量調整部および前記第二調整部は、前記光源から射出され、前記測定対象により反射された測定対象光の光量を調整することが好ましい。
【0022】
この発明では、例えば色度測定などにおいて、基準光源として用いられる白熱電球などの光源を用いて、測定対象に光を照射し、測定対象で反射された測定対象光の光量を第一検出部および第二検出部で測定する。このような光源は、一般に、短波長域の光の放射エネルギーが小さく、長波長域の光の放射エネルギーが大きくなる。したがって、例えば、1つの光フィルターにより、所望の波長光を取り出し、その波長光の光量を1つの検出器により検出する場合、短波長側の波長光の検出精度が低下してしまう。また、検出器においても、上述したように短波長域の分光感度は、長波長域の分光感度よりも小さいため、より検出精度が低下することが考えられる。しかしながら、本発明では、上記のように、このような光源を用いた場合であっても、第一および第二光量調整部により、第一光フィルターに入射される測定対象光の光量を、第二光フィルターに入射される測定対象光の光量よりも大きくすることができるため、光源の放射エネルギーの差による検出精度の低下を抑制することができ、より高精度な光量の検出を実施することができる。
【0023】
本発明の光測定装置では、前記第一光フィルターおよび前記第二光フィルターは、第一基板と、前記第一基板と対向する第二基板と、前記第一基板に設けられた第一反射膜と、前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜に対向する第二反射膜と、前記第一反射膜および第二反射膜の間のギャップの間隔を可変させる静電アクチュエーターと、備えることが好ましい。
【0024】
この発明によれば、第一光フィルターおよび第二光フィルターは、互いに対向配置された第一基板および第二基板と、これらの基板間に配設される第一反射膜および第二反射膜と、これらの第一反射膜および第二反射膜の間のギャップ間隔を調整する静電アクチュエーターとを備えている。このような構成の第一および第二光フィルターは、いわゆるファブリーペロー・エタロンとして機能し、半波長の整数倍が第一反射膜および第二反射膜間のギャップ間隔に一致する光のみが強め合って反射膜を透過する。したがって、静電アクチュエーターを制御して、第一反射膜および第二反射膜間のギャップ間隔を切り替えることで、容易に第一波長および第二波長を切り替えることが可能となる。これにより、第一光フィルターにより、第一波長域内の所望の第一波長の光を取り出すことができ、第二光フィルターにより、第二波長域内の所望の第二波長の光を取り出すことができる。
【0025】
本発明の光測定装置では、前記測定対象光は可視光であり、前記第一測定波長域および前記第二測定波長域は、可視光域を含むことが好ましい。
この発明では、可視光範囲内を測定対象の波長域とすることで、測定対象光の色度の測定を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る第一実施形態の分光測定装置の概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態におけるエタロンの概略構成を示す平面図である。
【図3】図2においてエタロンをIII-III線で断面した際の断面図である。
【図4】エタロンの分光特性を示す図である。
【図5】第一実施形態の分光測定装置において、各光検出器の検出信号により求められた受光量を示す図である。
【図6】図5に対する比較例であり、1つのエタロンにより測定対象光を分光し、1つの光検出器により分光された光を受光した際の、光検出器の検出信号により求められた受光量を示す図である。
【図7】本発明に係る第二実施形態の分光測定装置の概略構成を示す図である。
【図8】白熱電球から射出される白色光において、各波長の光の放射エネルギーを示す図である。
【図9】本発明に係る第三実施形態の分光測定装置の概略構成を示す図である。
【図10】本発明に係る第四実施形態の分光測定装置の概略構成を示す図である。
【図11】一般的なシリコン製フォトダイオードの分光感度特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る第一実施形態の分光測定装置(光測定装置)について、図面を参照して説明する。
〔1.分光測定装置の全体構成〕
図1は、本発明に係る第一実施形態の光測定装置としての分光測定装置の概略構成を示す図である。
この分光測定装置1は、検査対象Aで反射された測定対象光の各波長における光量を測定する装置である。具体的には、分光測定装置1は、図1に示すように、短波長域用測定部10Aと、長波長域用測定部10Bと、図示しない測定制御部と、を備えている。また、短波長域用測定部10Aは、本発明の第一光フィルターである短波長域用エタロン2Aと、第一光検出器である短波長域用光検出器3Aと、本発明の第一光量調整部および第一アパーチャーを構成する短波長域用アパーチャー4Aと、を備えている。また、長波長域用測定部10Bは、本発明の第二光フィルターである長波長域用エタロン2Bと、第二光検出器である長波長域用光検出器3Bと、本発明の第二光量調整部および第二アパーチャーを構成する長波長域用アパーチャー4Bと、を備えている。
【0028】
〔1−1.エタロンの構成〕
短波長域用測定部10Aの短波長域用エタロン2A、および長波長域用測定部10Bの長波長域用エタロン2Bは、略同一構成を有するエタロン2である。
図2は、本実施形態におけるエタロン2の概略構成を示す平面図である。図3は、図2におけるIII−III線を断面した断面図である。
【0029】
エタロン2(2A,2B)は、図2、図3に示すように、例えば平面正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン2は、第一基板21、および第二基板22を備えている。これらの2枚の基板21,22は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。これらの中でも、各基板21,22の構成材料としては、例えばナトリウム(Na)やカリウム(K)などのアルカリ金属を含有したガラスが好ましく、このようなガラスにより各基板21,22を形成することで、後述する反射膜23,24や、各電極の密着性や、基板同士の接合強度を向上させることが可能となる。そして、これらの2つの基板21,22は、外周部近傍に形成される接合面213,223が、例えば常温活性化接合や、接着層による接着接合などの接合方法により接合されて、一体的に構成されている。
【0030】
また、第一基板21と、第二基板22との間には、第一反射膜23および第二反射膜24が設けられる。ここで、第一反射膜23は、第一基板21の第二基板22に対向する面に固定され、第二反射膜24は、第二基板22の第一基板21に対向する面に固定されている。また、これらの第一反射膜23および第二反射膜24は、ギャップGを介して対向配置されている。
さらに、第一基板21と第二基板22との間には、第一反射膜23および第二反射膜24の間のギャップGの寸法を調整するための静電アクチュエーター25が設けられている。
【0031】
(1−1−1.第一基板の構成)
第一基板21は、厚みが例えば500μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。具体的には、図2、図3に示すように、第一基板21には、エッチングにより電極形成溝211および反射膜固定部212が形成される。
電極形成溝211は、図2に示すようなエタロン2を厚み方向から見た平面視(以降、エタロン平面視と称す)において、平面中心点を中心とした円形に形成されている。反射膜固定部212は、前記平面視において、電極形成溝211の中心部から第二基板22側に突出して形成される。
【0032】
電極形成溝211は、反射膜固定部212の外周縁から、当該電極形成溝211の内周壁面までの間に、リング状に形成される電極固定面211A(図3参照)を備えている。この電極固定面211Aにリング状の第一電極251(図3参照)が形成される。
また、第一基板21には、電極形成溝211から、当該第一基板21の頂点方向に向かって、図示略の凹溝が形成されている。さらに、図2に示すエタロン平面視において、電極固定面211Aに形成される第一電極251から、紙面左上方向および右下方向に、それぞれ第一引出電極251Aが、前記凹溝に沿って延出している。これらの第一引出電極251Aは、先端には、それぞれ第一電極パッド251Bが形成され、これらの第一電極パッド251Bが測定制御部に接続される。
【0033】
反射膜固定部212は、上述したように、電極形成溝211と同軸上で、電極形成溝211よりも小さい径寸法となる円柱状に形成されている。なお、本実施形態では、図3に示すように、反射膜固定部212の第二基板22に対向する反射膜固定面212Aが、電極固定面211Aよりも第二基板22に近接して形成される例を示すが、これに限らない。電極固定面211Aおよび反射膜固定面212Aの高さ位置は、反射膜固定面212Aに固定される第一反射膜23、および第二基板22に形成される第二反射膜24の間のギャップGの寸法、第一電極251および第二基板22に形成される後述の第二電極252の間の寸法、第一反射膜23や第二反射膜24の厚み寸法により適宜設定されるものであり、上記のような構成に限られない。例えば反射膜23,24として、誘電体多層膜反射膜を用いた場合など、その厚み寸法が増大する場合、電極固定面211Aと反射膜固定面212Aとが同一面に形成される構成や、電極固定面211Aの中心部に、円柱凹溝上の反射膜固定溝が形成され、この反射膜固定溝の底面に反射膜固定面212Aが形成される構成などとしてもよい。
ただし、第一電極251および第二電極252の間に作用する静電引力は、第一電極251および第二電極252の距離の二乗に反比例する。したがって、これら第一電極251および第二電極252の距離が近接するほど、静電引力の電圧値に対するギャップGの変動量も大きくなる。特に、ギャップGの可変寸法が微小な場合、ギャップGの可変制御が困難となる。したがって、上記のように、反射膜固定溝を形成する場合であっても、電極形成溝211の深さ寸法をある程度確保する方が好ましく、本実施形態では、例えば、1μmに形成されることが好ましい。
【0034】
また、反射膜固定部212の反射膜固定面212Aは、エタロン2を透過させる波長域をも考慮して、溝深さが設計されることが好ましい。例えば、本実施形態では、短波長域用エタロン2Aでは、350nm〜500nmの第一測定波長域の光を取り出すため、第一反射膜23および第二反射膜24の間のギャップGは、少なくとも175nm〜250nmの範囲で調整可能に溝深さが設定される。また、長波長域用エタロン2Bでは、500nm〜750nmの第二測定波長域の光を取り出すため、第一反射膜23および第二反射膜24の間のギャップGは、少なくとも、250nm〜350nmの範囲で調整可能に溝深さが設定される。
【0035】
そして、反射膜固定面212Aには、直径が例えば約3mmの円形状に形成される第一反射膜23が固定されている。この第一反射膜23としては、金属の単層膜により形成されるものであってもよく、誘電体多層膜により形成されるものであってもよい。
ここで、AgC層などの金属単層膜を用いた場合、1つのエタロン2で分光可能な波長域として可視光全域をカバーすることが可能となるが、透過率や分解能が低下する。これに対して、誘電体多層膜を用いた場合、1つのエタロン2で分光可能な波長域が狭くなるが、分光された光の透過率が大きく、分解能も高くなる。
ところで、本実施形態では、第一測定波長域の範囲で光を分光させるための、短波長域用エタロン2Aと、第二測定波長域の範囲で光を分光させるための、長波長域用エタロン2Bと、を用いるため、1つのエタロン2で広い波長域をカバーする必要がない。以上の理由から、本実施形態では、第一反射膜23として、より透過率が大きく、分解能が良好な誘電体多層膜を用いることが好ましい。
【0036】
さらに、第一基板21は、第二基板22に対向する上面とは反対側の下面において、第一反射膜23に対応する位置に図示略の反射防止膜(AR)が形成されている。この反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成され、第一基板21の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
【0037】
(1−1−2.第二基板の構成)
第二基板22は、厚みが例えば200μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。
具体的には、第二基板22には、図2に示すような平面視において、基板中心点を中心とした円形の可動部221と、可動部221と同軸であり可動部221を保持する連結保持部222と、を備えている。
【0038】
可動部221は、連結保持部222よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、第二基板22の厚み寸法と同一寸法である200μmに形成されている。また、可動部221は、反射膜固定部212に平行な可動面221Aを備え、この可動面221Aに、第一反射膜23にギャップGを介して対向する第二反射膜24が固定されている。
ここで、この第二反射膜24は、上述した第一反射膜23と同一の構成の反射膜、すなわち誘電体多層膜により形成されることが好ましい。
【0039】
さらに、可動部221は、可動面221Aとは反対側の上面において、第二反射膜24に対応する位置に図示略の反射防止膜(AR)が形成されている。この反射防止膜は、第一基板21に形成される反射防止膜と同様の構成を有し、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成される。
【0040】
連結保持部222は、可動部221の周囲を囲うダイヤフラムであり、例えば厚み寸法が50μmに形成されている。この連結保持部222の第一基板21に対向する面には、第一電極251と、約1μmの電磁ギャップを介して対向する、リング状の第二電極252が形成されている。ここで、この第二電極252および前述した第一電極251により、静電アクチュエーター25が構成される。
また、第二電極252の外周縁の一部からは、一対の第二引出電極252Aが外周方向に向かって形成されている。具体的には、図2に示すエタロン平面視において、第二引出電極252Aは、エタロン2の右上方向および左下方向に向かって、それぞれ延出して形成されている。そして、これらの第二引出電極252Aは、先端には、それぞれ第二電極パッド252Bが形成され、これらの第二電極パッド252Bが測定制御部に接続されている。
【0041】
次に、上述のようなエタロン2の動作について説明する。図4は、短波長域用エタロン2Aおよび長波長域用エタロン2Bの分光特性を示す図である。
上述のようなエタロン2では、例えば測定対象光が第二基板22側から入射されると、この測定対象光は、第一反射膜23および第二反射膜24間で多重干渉される。そして、測定対象光のうち、波長の1/2の整数倍が、第一反射膜23および第二反射膜24間のギャップGの寸法と一致する光が多重干渉により強め合い、第一基板21側へ透過する。この時、測定制御部から静電アクチュエーター25の第一電極251および第二電極252に駆動電圧が印加されることで、第一電極251および第二電極252間に静電引力が働き、第二基板22の可動部221が第一基板21側に変位する。これにより、第一反射膜23および第二反射膜24のギャップGの寸法が変化し、図4に示すように、第一基板21側に透過する光の波長が変化する。
具体的には、図4に示すように、短波長域用エタロン2Aでは、測定対象光のうち、第一測定波長域(350〜500nm)の範囲でギャップGの寸法に対応した第一波長の光(第一波長光)のみが透過される。長波長域用エタロン2Bでは、測定対象光のうち、第二測定波長域(500〜750nm)の範囲でギャップGの寸法に対応した第二波長の光(第二波長光)のみが透過される。
【0042】
〔1−2.光検出器の構成〕
短波長域用光検出器3A、および長波長域用光検出器3Bは、同一構成を有する光検出器3である。これらの光検出器3(3A,3B)は、例えばフォトダイオードやフォトICなどの複数の光電変換素子を備えており、光を受光すると、受光量に応じた検出信号を出力する。具体的には、短波長域用光検出器3Aは、短波長域用エタロン2Aを透過した第一波長光を受光し、第一波長光の光量に応じた検出信号(短波長側検出信号)が測定制御部に出力される。また、長波長域用光検出器3Bは、長波長域用エタロン2Bを透過した第二波長光を受光し、第二波長光の光量に応じた検出信号(長波長側検出信号)が測定制御部に出力される。
【0043】
また、このような光電変換素子(例えばシリコン製フォトダイオード)を用いた光検出器3(3A,3B)は、上記において説明した図11に示すような、分光感度特性を有する。すなわち、光検出器3では、長波長の光では、分光感度が高く、高精度に光量を検出することが可能となるが、短波長側に向かうに従って、分光感度が低くなり、光量の検出精度が低下する。
このような問題に対して、本発明では、測定対象光のうち、短波長域側である第一測定波長域の範囲から第一波長光を透過させる短波長域用エタロン2Aに対して入射される測定対象光の光量を調整する第一光量調整部と、測定対象光のうち、長波長域側である第二測定波長域の範囲から第二波長光を透過させる長波長域用エタロン2Bに対して入射される測定対象光の光量を調整する第二光量調整部とを設けることで、上記のような光量の検出精度の低下を抑制する。そして、第一実施形態では、これらの第一光量調整部および第二光量調整部の一例として、アパーチャー4により測定対象光を絞り、エタロン2に入射される測定対象光の光量を制限する例を示す。
【0044】
〔1−3.アパーチャーの構成〕
短波長域用アパーチャー4A、および長波長域用アパーチャー4Bは、それぞれ、短波長域用エタロン2A、および長波長域用エタロン2Bの測定対象光の入射側、すなわち、第二基板22側に設けられている。これらの短波長域用アパーチャー4Aおよび長波長域用アパーチャー4Bは、図1に示すように、それぞれ、第一開口部41および第二開口部42を備えている。そして、これらの短波長域用アパーチャー4Aおよび長波長域用アパーチャー4Bは、第一開口部41および第二開口部42により、短波長域用エタロン2Aや長波長域用エタロン2Bに入射される測定対象光の光路径を絞ることで、測定対象光の光量を制限する。
【0045】
本実施形態における短波長域用アパーチャー4Aの第一開口部41の径寸法(Da)は、長波長域用アパーチャー4Bの第二開口部42の径寸法(Db)よりも大きく形成されている。従って、短波長域用アパーチャー4Aにより絞られて短波長域用エタロン2Aに入射する測定対象光の光量は、長波長域用アパーチャー4Bにより絞られて長波長域用エタロン2Bに入射する測定対象光の光量よりも多くなる。
これらの第一開口部41および第二開口部42の開口径Da,Dbとしては、短波長域用光検出器3Aおよび長波長域用光検出器3Bにより検出される測定対象光の測定波長域により適宜設定されるものである。例えば、本実施形態では、短波長域用エタロン2Aにおいて、可視光域のうち350nm〜500nmの第一測定波長域から所定の第一波長光を取り出し、短波長域用光検出器3Aで第一波長光を受光する。また、長波長域用エタロン2Bでは、可視光域のうち500nm〜750nmの第二測定波長域から所定の第二波長光を取り出し、長波長域用光検出器3Bで第二波長光を受光する。この場合、測定対象光として、全波長の光の光量が同一である白色光を用い、短波長域用エタロン2Aにより、第一測定波長域内の最大波長の第一波長光(500nm)を取り出し、長波長域用エタロン2Bにより、第二測定波長域内の最大波長の第二波長光(750nm)を取り出した際に、短波長域用光検出器3Aから出力される短波長側検出信号の大きさと、長波長域用光検出器3Bから出力される長波長側検出信号の大きさとが、略同一となるように、第一開口部41および第二開口部42の開口径Da,Dbが調整されている。
【0046】
〔1−4.測定制御部の構成〕
測定制御部は、上述したように、エタロン2(2A,2B)の第一電極パッド251B、第二電極パッド252Bに接続されている。そして、測定制御部は、これらの第一電極パッド251B、第二電極パッドを介して、第一電極251および第二電極252に駆動電圧を印加することで、エタロン2のギャップGの寸法を変化させ、エタロン2を透過する第一波長光および第二波長光の波長を切り替える。
また、測定制御部は、光検出器3(3A,3B)に接続され、これらの光検出器3から出力される検出信号を受信する。そして、測定制御部は、これらの入力された検出信号に基づいて、各波長に対する受光量を算出し、測定対象光の分光特性の測定処理を実施する。
【0047】
〔2.分光測定装置の分光感度〕
次に上述のような分光測定装置における分光感度について説明する。図5は、本実施形態の分光測定装置において各光検出器の検出信号により求められた受光量を示す図である。図6は、図5に対する比較例であり、1つのエタロンにより測定対象光を分光し、1つの光検出器により分光された光を受光した際の、光検出器の検出信号により求められた受光量を示す図である。なお、図5、図6において、各波長の光の光量がほぼ同等である白色光を測定対象光とした場合の受光量を示す。
図6に示すように、1つのエタロンにより測定対象光を分光させ、分光させた光を光検出器で受光させると、光検出器の分光感度が、図11に示すような特性を有するため、分光測定装置においても、長波長側の光に対する受光量が大きく、短波長側の光に対する受光量が小さくなる。これに対して、本実施形態では、短波長域用エタロン2Aに入射される測定対象光の光量が増大するため、その分、短波長域の第一測定波長域内での受光量も増大し、図5に示すように、短波長域用光検出器3Aで検出される第一波長光の光量も増大する。したがって、本実施形態の分光測定装置では、図6に示すような1つのエタロンおよび1つの検出器により測定対象光の分光特性を測定する場合に比べて、短波長域での測定精度が向上し、全体として、分光特性の測定精度を向上させることが可能となる。
【0048】
〔3.第一実施形態の作用効果〕
上述したように、上記第一実施形態の分光測定装置1では、測定対象光のうち、短波長側の第一測定波長域の範囲内の光から第一波長光を取り出す短波長域用エタロン2Aと、測定対象光のうち、長波長側の第二測定波長域の範囲内の光から第二波長光を取り出す長波長域用エタロン2Bと、第一波長光を受光して検出信号を出力する短波長域用光検出器3Aと、第二波長光を受光して検出信号を出力する長波長域用光検出器3Bと、を備えている。そして、短波長域用エタロン2Aの光入射側には、短波長域用アパーチャー4Aが設けられ、長波長域用エタロン2Bの光入射側には、長波長域用アパーチャー4Bが設けられ、短波長域用アパーチャー4Aの第一開口部41は、長波長域用アパーチャー4Bの第二開口部42よりも大きい開口径を有している。
このため、短波長域用エタロン2Aに入射される測定対象光の光量が、長波長域用エタロン2Bに入射される測定対象光の光量よりも多くなる。このため、第一波長光の光量が増大し、これに伴って、短波長域用光検出器3Aにおいても第一波長光の受光量が増大する。したがって、分光測定装置1の分光特性の測定精度を向上させることができる。
【0049】
また、本発明の第一および第二光フィルターは、互いに対向配置される第一基板21および第二基板22と、第一基板21および第二基板22の間に設けられる第一反射膜23および第二反射膜24と、これらの第一反射膜23および第二反射膜24のギャップGの寸法を調整する静電アクチュエーター25とを備えたエタロン2(2A,2B)により構成されている。このようなエタロン2では、静電アクチュエーター25に印加する電圧を制御することで、静電引力により、ギャップGの隙間寸法を調整することが可能であり、ギャップGの隙間寸法に応じた光を取り出すことができる。したがって、短波長域用エタロン2Aでは、第一測定波長域内で、第一波長を切り替えて透過させることができ、長波長域用エタロン2Bでは、第二測定波長域内で、第二波長を切り替えて透過させることができる。このため、分光測定装置1では、例えば可視光全域に対して、各波長域に対する光量を測定することができ、精度の高い分光特性の測定を実施することができる。
【0050】
また、1つのエタロン2により、測定対象光から1つの波長の光を取り出す場合に比べて、2つのエタロン2A,2Bによりそれぞれ異なる波長の光を取り出すことができるため、分光特性測定における測定時間も短縮させることができる。
【0051】
また、第一測定波長域が350〜500nmに設定され、第二測定波長域が500〜750nmに設定されているため、可視光のほぼ全域をカバーすることができ、測定対象光の正確な色特性などをも実施することができる。
【0052】
[第二実施形態]
次に本発明に係る第二実施形態の分光測定装置について、図面に基づいて説明する。
図7は、第二実施形態の分光測定装置の概略構成を示す図である。なお、以降の実施形態の説明に当たり、上記第一実施形態と同様の構成については同符号を付すとともに、その説明を省略、又は簡略する。
上記第一実施形態の分光測定装置1では、測定対象Aで反射された平行光である測定対象光を、アパーチャー4(4A,4B)により絞ることで、短波長域用エタロン2Aに入射される測定対象光の光量を、長波長域用エタロン2Bに入射される測定対象光の光量よりも多くし、測定精度を向上させた。
これに対して、第二実施形態の分光測定装置1Aでは、さらに、凹面反射鏡を用いて、測定対象光を集光して、短波長域用エタロン2Aおよび長波長域用エタロン2Bに入射される測定対象光の光量を調整する。
また、上記第一実施形態では、測定対象Aにより反射された自然光を測定対象光としたが、第二実施形態では、光源5から白色光を射出して、レンズ6により例えば白色光を平行光とした後、測定対象Aで反射させ、その反射光を測定対象光とする。
【0053】
具体的には、図7に示すように、分光測定装置1Aは、光源5と、短波長域用測定部10Aと、長波長域用測定部10Bと、本発明の第一光量調整部を構成する第一凹面反射鏡である短波長域用凹面反射鏡7Aと、本発明の第二光量調整部を構成する第二凹面反射鏡である長波長域用凹面反射鏡7Bとを備えている。
【0054】
光源5は、測定対象Aに対して光を射出する装置である。この光源5としては、例えば白熱電球やLEDなど、光を射出可能な構成であれば、いかなる装置を用いてもよいが、特に、分光測定装置1Aより、測定対象Aの色度を測定する場合、CIE(国際照明委員会)により定められたCIE標準光源である白熱電球を用いることが好ましい。
【0055】
ここで、図8に白熱電球の一般的な分光特性を示す。
CIE表色系に基づいた色度の測定を実施する場合、光源5として、上述のように白熱電球を用いることが好ましいが、この白熱電球は、図8に示すような分光特性を有している。すなわち、白熱電球から射出される白色光は、短波長域の光の放射エネルギーに比べて、長波長域の光の放射エネルギーの方が大きくなる。また、上述したように、各光検出器3においても、短波長域における分光感度が、長波長域における分光感度よりも低い。したがって、このような白熱電球を光源5として用いる場合、上記第一実施形態のような自然光を用いる場合に比べて、短波長域用エタロン2Aに入射される測定対象光の光量を、さらに多くする必要が生じる。
そこで、第二実施形態では、凹面反射鏡7を用いて、測定対象光を集光させることで、測定対象光の光量を増加させている。
【0056】
具体的には、これらの凹面反射鏡7(7A,7B)は、それぞれ測定部10(10A,10B)に対向して設けられており、測定対象Aで反射された測定対象光を、測定部10(10A,10B)に向かって反射させる反射領域71を備えている。ここで、短波長域用測定部10Aに対向する、第一凹面反射鏡である短波長域用凹面反射鏡7Aと、長波長域用測定部10Bに対向する、第二凹面反射鏡である長波長域用凹面反射鏡7Bとでは、測定対象光を反射可能な領域である反射領域71の面積および凹面曲率が異なっている。
すなわち、図7に示すように、短波長域用凹面反射鏡7Aの第一反射領域71Aの面積Saは、長波長域用凹面反射鏡7Bの第二反射領域71Bの面積Sbよりも大きく形成されている。これにより、短波長域用凹面反射鏡7Aでは、長波長域用凹面反射鏡7Bよりも多くの測定対象光を短波長域用測定部10Aに入射させることが可能となり、短波長域用光検出器3Aで受光される第一波長光の光量も多くなる。
【0057】
また、短波長域用凹面反射鏡7Aおよび長波長域用凹面反射鏡7Bでは、反射領域71における曲率が異なり、これにより、反射領域71から、測定対象光が集光されるフォーカス点までの距離(集光距離)が異なっている。具体的には、短波長域用凹面反射鏡7Aの第一反射領域71Aの中心点から、当該短波長域用凹面反射鏡7Aのフォーカス点(第一フォーカス点F1)までの距離(第一集光距離La1)は、長波長域用凹面反射鏡7Bの第二反射領域71Bの中心点から、当該長波長域用凹面反射鏡7Bのフォーカス点(第二フォーカス点F2)までの集光距離(第二集光距離Lb1)に比べて、短く設定されている。
このため、短波長域用凹面反射鏡7Aにより反射される測定対象光のうち、短波長域用アパーチャー4Aの第一開口部41を通り、短波長域用エタロン2A側に射出される測定対象光の光量の方が、長波長域用凹面反射鏡7Bにより反射される測定対象光のうち、長波長域用アパーチャー4Bの第二開口部42を通り、長波長域用エタロン2B側に射出される測定対象光の光量の方よりも多くなる。
【0058】
また、上記第一実施形態と同様に、短波長域用アパーチャー4Aの第一開口部41の開口径は、長波長域用アパーチャー4Bの第二開口部の開口径よりも大きいため、さらに、短波長域用エタロン2A側に入射される測定対象光の光量が、長波長域用エタロン2B側に入射される測定対象光の光量よりも多くなる。
【0059】
以上により、短波長域用測定部10Aに入射される測定対象光の光量は、長波長域用測定部10Bに入射される測定対象光の光量よりも大きくなる。また、アパーチャー4の開口径による光量調整に加え、凹面反射鏡7の反射領域71の面積、集光距離の違いにより光量調整が行われることで、上記第一実施形態の分光測定装置1よりも効果的に短波長域用測定部10Aへ入射される測定対象光の光量を増大させることができる。
【0060】
また、凹面反射鏡7の反射領域71の面積Sa,Sb、集光距離La1、Lb1としては、上記第一実施形態と同様に、白色光の測定対象光を短波長域用測定部10Aおよび長波長域用測定部10Bに入射させた状態で、正しく白色光である測定対象光の測定結果が得られるように、設定する。すなわち、測定対象光を白色光とし、短波長域用エタロン2Aにより、第一測定波長域内の最大波長の第一波長光(500nm)を取り出し、長波長域用エタロン2Bにより、第二測定波長域内の最大波長の第二波長光(750nm)を取り出した際に、短波長域用光検出器3Aから出力される短波長側検出信号の大きさと、長波長域用光検出器3Bから出力される長波長側検出信号の大きさとが、略同一となるように、凹面反射鏡7の反射領域71の面積Sa,Sb、集光距離La1、Lb1が調整されている。
【0061】
〔第二実施形態の作用効果〕
上述したように、第二実施形態の分光測定装置1Aでは、短波長域用測定部10Aおよび長波長域用測定部10Bに対向して、短波長域用凹面反射鏡7Aおよび長波長域用凹面反射鏡7Bが設けられる。そして、これらの凹面反射鏡7において、短波長域用凹面反射鏡7Aの第一集光距離La1は、長波長域用凹面反射鏡7Bの第二集光距離Lb1よりも短く設定されている。
このため、短波長域用凹面反射鏡7Aで反射されて短波長域用アパーチャー4Aの第一開口部41を通過する測定対象光の光量が、長波長域用凹面反射鏡7Bで反射されて長波長域用アパーチャー4Bの第二開口部42を通過する測定対象光の光量よりも多くなる。したがって、短波長域用測定部10Aで測定される短波長域の測定対象光の光量が大きくなるため、短波長域用エタロン2Aで取り出される第一波長光の光量も多くなる。これにより、光検出器3において、短波長域側の分光感度が低い場合であっても、大きい光量により測定を実施することができるため、測定精度を向上させることができる。
【0062】
また、分光測定装置1Aでは、凹面反射鏡7において、短波長域用凹面反射鏡7Aの第一反射領域71Aの面積Saは、長波長域用凹面反射鏡7Bの第二反射領域71Bの面積Sbよりも大きく設定されている。
このため、短波長域用凹面反射鏡7Aでは、長波長域用凹面反射鏡7Bより多くの測定対象光を短波長域用測定部10Aに反射させることができる。これにより、光検出器3において、短波長域側の分光感度が低い場合であっても、大きい光量により測定を実施することができるため、測定精度を向上させることができる。
【0063】
そして、第二実施形態の分光測定装置1Aでは、白熱電球である光源5からの光が測定対象Aに反射された測定対象光としている。このようなCIE(国際照明委員会)により定められたCIE標準光源を用いることで、測定制御部により各波長光の光量に基づいて測定対象Aの色度を分析する際に、国際標準であるCIE表色系に合致した色度に補正することなく、測定結果をそのままCIE表色系に合致した色度として用いることができる。このため、色度測定を効率よく実施することができる。
また、このような光源5では、短波長域側の光の放射エネルギーが、光波長域側の光の放射エネルギーよりも小さくなり、これに加えて、光検出器3の分光感度においても、上記のように、短波長域側で小さくなる。このため、これらの損失分を補正するために、短波長域用測定部10Aにより多くの光量の測定対象光を入射させる必要がある。
これに対して、本実施形態の分光測定装置1Aでは、上記したしたように、アパーチャー4の開口径による測定対象光の光量調整に加え、短波長域用凹面反射鏡7Aおよび長波長域用凹面反射鏡7Bにより、短波長域用測定部10Aに入射される測定対象光の光量をさらに増大させている。このため、上述のように、短波長域の放射エネルギーが低い光源5を用い、かつ短波長域の分光感度が低い光検出器3を用いる場合でも、測定対象光の短波長域側を測定する短波長域用測定部10Aにより多くの測定対象光を入射させることができ、測定精度を向上させることができる。
【0064】
[第三実施形態]
次に、本発明に係る第三実施形態の分光測定装置1Bについて、図面に基づいて説明する。
図9は、第三実施形態の分光測定装置1Bの概略構成を示す図である。
【0065】
上記第二実施形態の分光測定装置1Aでは、短波長域用凹面反射鏡7Aおよび長波長域用凹面反射鏡7Bが、それぞれ1つずつ設けられ、これらの反射領域71の面積Sa,Sb、集光距離La1,Lb1をそれぞれ異ならせることで、短波長域用測定部10Aに入射させる測定対象光の光量を増大させた。これに対して、第三実施形態の分光測定装置1Bでは、図9に示すように、短波長域用凹面反射鏡7Aおよび長波長域用凹面反射鏡7Bとして、反射領域71の面積や、集光距離が同一であるが、設置する個数が異ならせることで、短波長域用測定部10Aに入射させる測定対象光の光量を増大させる。
【0066】
具体的には、分光測定装置1Bでは、短波長域用測定部10Aに対向して、2つの短波長域用凹面反射鏡7Aを設け、長波長域用測定部10Bに対向して1つの長波長域用凹面反射鏡7Bが設けられている。これらの2つの短波長域用凹面反射鏡7Aおよび1つの長波長域用凹面反射鏡7Bは、それぞれ追う面反射領域の面積が同一であり、同形状に形成されており、集光距離も同一となる。
このような第三実施形態の分光測定装置1Bでは、長波長域用測定部10Bにおいて、1つの長波長域用凹面反射鏡7Bにより反射される測定対象光が入射されるのに対し、短波長域用測定部10Aでは、2つの短波長域用凹面反射鏡7Aにより反射される測定対象光が入射されるため、短波長域用測定部10Aに入射される測定対象光の光量が、長波長域用測定部10Bに入射される測定対象光の光量よりも多くなる。
【0067】
なお、第三実施形態の分光測定装置1Bでは、短波長域用凹面反射鏡7Aの個数を2個としたが、これに限定されず、さらに多くの短波長域用凹面反射鏡7Aが設けられる構成としてもよい。さらに、長波長域用凹面反射鏡7Bとしても、複数設けられていてもよく、この場合、上記のように、短波長域用凹面反射鏡7Aと長波長域用凹面反射鏡7Bの反射領域71の面積、曲率が同一である場合は、長波長域用凹面反射鏡7Bの数以上の短波長域用凹面反射鏡7Aを設けるとともに、これらの短波長域用凹面反射鏡7Aにより反射される光を短波長域用測定部10A内に通過させる必要がある。
また、上記第二実施形態と同様に、短波長域用凹面反射鏡7Aの第一反射領域71Aの面積を長波長域用凹面反射鏡7Bの第二反射領域71Bの面積よりも大きくしたり、短波長域用凹面反射鏡7Aの集光距離を、長波長域用凹面反射鏡7Bの集光距離より短くしたりすることで、短波長域用測定部10Aに入射される測定対象光の光量をより増大させる構成としてもよい。
【0068】
このような第三実施形態においても、上記第一実施形態や第二実施形態と略同様にして、短波長域用凹面反射鏡7Aおよび長波長域用凹面反射鏡7Bの個数を決定する。すなわち、白色光の測定対象光を短波長域用測定部10Aおよび長波長域用測定部10Bに入射させた状態で、短波長域用エタロン2Aにより、第一測定波長域内の最大波長の第一波長光(500nm)を取り出し、長波長域用エタロン2Bにより、第二測定波長域内の最大波長の第二波長光(750nm)を取り出す。そして、短波長域用光検出器3Aから出力される短波長側検出信号の大きさと、長波長域用光検出器3Bから出力される長波長側検出信号の大きさとが、略同一となるように、短波長域用凹面反射鏡7Aおよび長波長域用凹面反射鏡7Bの個数が設定される。
【0069】
〔第三実施形態の作用効果〕
上述したように第三実施形態の分光測定装置1Bでは、短波長域用測定部10Aに対して2つの短波長域用凹面反射鏡7Aが設けられ、長波長域用測定部10Bに1つの長波長域用凹面反射鏡7Bが設けられている。このため、2つの短波長域用凹面反射鏡7Aにより測定対象光が集光される短波長域用測定部10Aでは、1つの長波長域用凹面反射鏡7Bのみにより測定対象光が集光される長波長域用測定部10Bに比べて、入射される測定対象光の光量が多くなる。このため、上記第一および第二実施形態と同様に、光検出器3において、短波長域側の分光感度が低い場合であっても、大きい光量により測定を実施することができるため、測定精度を向上させることができる。
【0070】
[第四実施形態]
次に、本発明に係る第四実施形態の分光測定装置1Cについて、図面に基づいて説明する。
図10は、本発明に係る第四実施形態の分光測定装置の概略構成を示す図である。
【0071】
上記第二実施形態では、短波長域用測定部10Aおよび長波長域用測定部10Bに対向して、短波長域用凹面反射鏡7Aおよび長波長域用凹面反射鏡7Bを設け、これらの凹面反射鏡7における反射領域71の面積、集光距離を異ならせることで、測定対象光の光量を調整する構成を示した。これに対して、第四実施形態では、凹面反射鏡7に代えて、集光レンズ8を用いることで、測定対象光の光量の調整を行っている。
【0072】
具体的には、分光測定装置1Cでは、測定対象Aから短波長域用測定部10Aまでの光路上に、本発明の第一光量調整部を構成する、第一集光レンズとしての短波長域用集光レンズ8Aが設けられ、測定対象Aから長波長域用測定部10Bまでの光路上に、本発明の第二光量調整部を構成する、第二集光レンズとしての長波長域用集光レンズ8Bが設けられている。
ここで、短波長域用測定部10Aに対向する、第一集光レンズである短波長域用集光レンズ8Aと、長波長域用測定部10Bに対向する、第二集光レンズである長波長域用集光レンズ8Bとでは、レンズ径、およびレンズ曲率が異なっている。
すなわち、図10に示すように、短波長域用集光レンズ8Aのレンズ径Raは、長波長域用集光レンズ8Bのレンズ径Rbよりも大きく形成されている。これにより、短波長域用集光レンズ8Aでは、長波長域用集光レンズ8Bよりも多くの測定対象光を短波長域用測定部10Aに集光させることが可能となり、短波長域用光検出器3Aで受光される第一波長光の光量も多くなる。
【0073】
また、短波長域用集光レンズ8Aおよび長波長域用集光レンズ8Bでは、レンズ曲率が異なり、これにより、集光レンズ8から、測定対象光が集光されるレンズフォーカス点までの距離(レンズ集光距離)が異なっている。具体的には、短波長域用集光レンズ8Aのレンズ中心から、当該短波長域用集光レンズ8Aのフォーカス点(第一レンズフォーカス点F3)までの距離(第一レンズ集光距離La2)は、長波長域用集光レンズ8Bのレンズ中心から、当該長波長域用集光レンズ8Bのフォーカス点(第二レンズフォーカス点F4)までの距離(第二レンズ集光距離Lb2)に比べて、短く設定されている。
このため、短波長域用集光レンズ8Aにより集光される測定対象光のうち、短波長域用アパーチャー4Aの第一開口部41を通り、短波長域用エタロン2A側に射出される測定対象光の光量の方が、長波長域用集光レンズ8Bにより集光される測定対象光のうち、長波長域用アパーチャー4Bの第二開口部42を通り、長波長域用エタロン2B側に射出される測定対象光の光量の方よりも多くなる。
【0074】
また、上記第一実施形態と同様に、短波長域用アパーチャー4Aの第一開口部41の開口径は、長波長域用アパーチャー4Bの第二開口部の開口径よりも大きいため、さらに、短波長域用エタロン2A側に入射される測定対象光の光量が、長波長域用エタロン2B側に入射される測定対象光の光量よりも多くなる。
【0075】
以上により、短波長域用測定部10Aに入射される測定対象光の光量は、長波長域用測定部10Bに入射される測定対象光の光量よりも大きくなる。また、アパーチャー4の開口径による光量調整に加え、集光レンズ8のレンズ径、レンズ集光距離の違いにより光量調整が行われることで、上記第二実施形態と同様に、効果的に短波長域用測定部10Aへ入射される測定対象光の光量を増大させることができる。
【0076】
なお、この第四実施形態においても、上記第一〜第三実施形態と略同様にして、短波長域用集光レンズ8Aおよび長波長域用集光レンズ8Bのレンズ径Ra,Rbや、レンズ曲率(レンズ集光距離La2,Lb2)を決定する。すなわち、白色光の測定対象光を短波長域用測定部10Aおよび長波長域用測定部10Bに入射させた状態で、短波長域用エタロン2Aにより、第一測定波長域内の最大波長の第一波長光(500nm)を取り出し、長波長域用エタロン2Bにより、第二測定波長域内の最大波長の第二波長光(750nm)を取り出す。そして、短波長域用光検出器3Aから出力される短波長側検出信号の大きさと、長波長域用光検出器3Bから出力される長波長側検出信号の大きさとが、略同一となるように、レンズ径Ra,Rbや、レンズ曲率が設定される。
【0077】
〔第四実施形態の作用効果〕
上述したように、第四実施形態の分光測定装置1Cでは、短波長域用測定部10Aおよび長波長域用測定部10Bに入射される測定対象光の光路上に、短波長域用集光レンズ8Aおよび長波長域用集光レンズ8Bが設けられる。そして、これらの集光レンズ8において、短波長域用集光レンズ8Aのレンズ集光距離は、長波長域用集光レンズ8Bのレンズ集光距離よりも短く設定されている。
このため、短波長域用集光レンズ8Aで反射されて短波長域用アパーチャー4Aの第一開口部41を通過する測定対象光の光量が、長波長域用集光レンズ8Bで反射されて長波長域用アパーチャー4Bの第二開口部42を通過する測定対象光の光量よりも多くなる。したがって、短波長域用測定部10Aで測定される短波長域の測定対象光の光量が大きくなるため、短波長域用エタロン2Aで取り出される第一波長光の光量も多くなる。これにより、光検出器3において、短波長域側の分光感度が低い場合であっても、大きい光量により測定を実施することができるため、測定精度を向上させることができる。
【0078】
また、分光測定装置1Cでは、集光レンズ8において、短波長域用集光レンズ8Aのレンズ径Raは、長波長域用集光レンズ8Bのレンズ径Rbよりも大きく設定されている。
このため、短波長域用集光レンズ8Aでは、長波長域用集光レンズ8Bより多くの測定対象光を短波長域用測定部10Aに集光させることができる。これにより、短波長域用光検出器3において、短波長域側の分光感度が低い場合であっても、大きい光量により測定を実施することができるため、測定精度を向上させることができる。
【0079】
[他の実施形態]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0080】
例えば、上記第二〜第三実施形態において、短波長域用アパーチャー4Aの第一開口部41の開口径が長波長域用アパーチャー4Bの第二開口部42の開口径よりも大きい径寸法に形成されており、より多くの測定対象光を入射可能な構成としているが、これに限らない。例えば、アパーチャー4(4A,4B)の開口部の開口径としては、同一径寸法に形成される構成としてもよく、アパーチャー4が設けられない構成などとしてもよい。この場合であっても、凹面反射鏡7(7A,7B)や、集光レンズ8(8A,8B)により、短波長域用測定部10Aおよび長波長域用測定部10Bに入射される測定対象光の光量を調整することが可能である。
【0081】
また、第二実施形態において、凹面反射鏡7(7A,7B)において、凹面反射鏡域の面積および凹面曲率(集光距離)の双方を異ならせることで、短波長域用測定部10Aに入射させる測定対象光の光量を増大させる構成としたが、例えば、凹面反射鏡域の面積および凹面曲率のうち、いずれか一方のみが異なる構成であってもよい。
同様に、第四実施形態において、集光レンズ8(8A,8B)において、レンズ径およびレンズ曲率(レンズ集光距離)の双方を異ならせることで、短波長域用測定部10Aに入射させる測定対象光の光量を増大させる構成としたが、例えば、レンズ径およびレンズ曲率のうち、いずれか一方のみが異なる構成であってもよい。
【0082】
さらに、第二〜第三実施形態において、測定対象光の光路上に、さらに、第四実施形態のような集光レンズ8を配設する構成としてもよい。この場合でも、第一測定部での測定対象光の光量を増大させることが可能となる。
【0083】
さらに、第一〜第四実施形態において、アパーチャー4(4A,4B)の第一開口部41および第二開口部42は、それぞれ開口径Da,Dbが固定される構成を例示したが、これに限定されない。例えば、アパーチャー4(4A,4B)は、虹彩絞りを有し、開口部の開口径を変えることが可能な構成としてもよい。
【0084】
また、第一〜第四実施形態において、分光測定装置1,1A,1B,1Cは、測定対象光の短波長域側を測定対象とした短波長域用測定部10Aと、長波長域側を測定対象とした長波長域用測定部10Bとの2つの測定部10を備える構成としたが、さらに多くの測定部を備える構成としてもよい。
例えば、測定対象光のうち、350〜500nmの短波長域を測定対象とした短波長域用測定部と、500〜650nmの中波長域を測定対象とした中波長域用測定部と、650nm〜800nmの長波長域を測定対象とした長波長域用測定部とを備える構成としてもよい。この場合、短波長域用測定部および中波長域用測定部の関係に着目すると、短波長域用測定部における短波長域用エタロン、短波長域用光検出器、および短波長域用の光量調整部(例えばアパーチャーや凹面反射鏡、集光レンズなど)が、本発明の第一光フィルター、第一光検出器、および第一光量調整部を構成し、中波長域用測定部における中波長域用エタロン、中波長域用光検出器、および中波長域用の光量調整部(例えばアパーチャーや凹面反射鏡、集光レンズなど)が、本発明の第二光フィルター、第二光検出器、および第二光量調整部を構成する。また、中波長域用測定部および長波長域用測定部の関係に着目すると、中波長域用測定部における中波長域用エタロン、中波長域用光検出器、および中波長域用の光量調整部(例えばアパーチャーや凹面反射鏡、集光レンズなど)が、本発明の第一光フィルター、第一光検出器、および第一光量調整部を構成し、長波長域用測定部における長波長域用エタロン、長波長域用光検出器、および長波長域用の光量調整部(例えばアパーチャーや凹面反射鏡、集光レンズなど)が、本発明の第二光フィルター、第二光検出器、および第二光量調整部を構成する。
このような構成では、短波長域用測定部に入射される測定対象光の光量を、中波長域用測定部に入射される測定対象光の光量よりも多くし、中波長域用測定部に入射される測定対象光の光量を、長波長域用測定部に入射される測定対象光の光量よりも多くすることで、各波長域に対するより正確な受光量を検出することができ、さらに測定精度を向上させることができる。
【0085】
さらに、第一光フィルターおよび第二光フィルターとして、エタロン2を例示したが、これに限定されない。例えば、測定対象光をプリズム等により分光させ、各分光させた光を光検出器3で受光させる構成、カラーフィルターなどにより、所望の波長の光だけを取り出し、光検出器3で受光させる構成などとしてもよい。
【0086】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0087】
1,1A,1B,1C…光測定装置としての分光測定装置、2A…第一光フィルターとしての短波長域用エタロン、2B…第二光フィルターとしての長波長域用エタロン、3A…第一光検出器としての短波長域用光検出器、3B…第二光検出器としての長波長域用光検出器、4A…第一光量調整部を構成する第一アパーチャーとしての短波長域用アパーチャー、4B…第二光量調整部を構成する第二アパーチャーとしての長波長域用アパーチャー、5…光源、7A…第一光量調整部を構成する第一凹面反射鏡としての短波長域用凹面反射鏡、7B…第二光量調整部を構成する第二凹面反射鏡としての長波長域用凹面反射鏡、8A…第一光量調整部を構成する第一集光レンズとしての短波長域用集光レンズ、8B…第二光量調整部を構成する第二集光レンズとしての長波長域用集光レンズ、21…第一基板、22…第二基板、23…第一反射膜、24…第二反射膜、25…静電アクチュエーター、71A…第一反射領域、71B…第二反射領域、F1…第一フォーカス点、F2…第二フォーカス点、F3…第一レンズフォーカス点、F4…第二レンズフォーカス点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象光のうち、第一測定波長域内の第一波長の光を取り出す第一光フィルターと、
前記測定対象光のうち、前記第一測定波長域よりも波長が長い第二測定波長域内の第二波長の光を取り出す第二光フィルターと、
前記第一光フィルターに入射される前記測定対象光の光量を調整する第一光量調整部と、
前記第二光フィルターに入射される前記測定対象光の光量を調整する第二光量調整部と、
前記第一光フィルターにより取り出された第一波長の光の光量を受光し、受光量に応じた検出信号を出力する第一光検出器と、
前記第二光フィルターにより取り出された第二波長の光の光量を受光し、受光量に応じた検出信号を出力する第二光検出器と、
を具備し、
前記第一光量調整部により調整される、前記第一光フィルターに入射される光の光量は、前記第二光量調整部により調整される、前記第二光フィルターに入射される光の光量よりも大きい
ことを特徴とする光測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光測定装置において、
前記第一光量調整部は、前記第一光フィルターに入射される前記測定対象光の光量を絞る第一開口部を有する第一アパーチャーを備え、
前記第二光量調整部は、前記第二光フィルターに入射される前記測定対象光の光量を絞る第二開口部を有する第二アパーチャーを備え、
前記第一アパーチャーの前記第一開口部は、前記第二アパーチャーの前記第二開口部よりも開口径が大きい
ことを特徴とする光測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光測定装置において、
前記第一光量調整部は、前記測定対象光を第一フォーカス点に向かって反射して集光し、前記第一光フィルターに入射させる第一凹面反射鏡を備え、
前記第二光量調整部は、前記測定対象光を第二フォーカス点に向かって反射して集光し、前記第二光フィルターに入射させる第二凹面反射鏡を備え、
前記第一凹面反射鏡から前記第一フォーカス点までの第一集光距離は、前記第二凹面反射鏡から前記第二フォーカス点までの第二集光距離よりも短い
ことを特徴とする光測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の光測定装置において、
前記第一光量調整部は、第一反射領域に入射された前記測定対象光を反射して集光し、前記第一光フィルターに入射させる第一凹面反射鏡を備え、
前記第二光量調整部は、第二反射領域に入射された前記測定対象光を反射して集光し、前記第二光フィルターに入射させる第二凹面反射鏡を備え、
前記第一凹面反射鏡の前記第一反射領域は、前記第二凹面反射鏡の前記第二反射領域よりも大きい
ことを特徴とする光測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の光測定装置において、
前記第一光量調整部は、前記測定対象光を反射して集光し、前記第一光フィルターに入射させる複数の第一凹面反射鏡を備え、
前記第二光量調整部は、前記測定対象光を反射して集光し、前記第二光フィルターに入射させる少なくとも1つ以上の第二凹面反射鏡を備え、
前記第一光量調整部の前記第一凹面反射鏡の数は、前記第二光量調整部の前記第二凹面反射鏡の数よりも多い
ことを特徴とする光測定装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の光測定装置において、
前記第一光量調整部は、前記測定対象光を第一レンズフォーカス点に向かって集光し、前記第一光フィルターに入射させる第一集光レンズを備え、
前記第二光量調整部は、前記測定対象光を第二レンズフォーカス点に向かって集光し、前記第二光フィルターに入射させる第二集光レンズを備え、
前記第一集光レンズから前記第一レンズフォーカス点までの第一レンズ集光距離は、前記第二集光レンズから前記第二レンズフォーカス点までの第二レンズ集光距離よりも短い
ことを特徴とする光測定装置。
【請求項7】
請求項1、請求項2、および請求項6のいずれかに記載の光測定装置において、
前記第一光量調整部は、第一レンズ径内に入射された前記測定対象光を集光し、前記第一光フィルターに入射させる第一集光レンズを備え、
前記第二光量調整部は、第二レンズ径内に入射された前記測定対象光を集光し、前記第二光フィルターに入射させる第二集光レンズを備え、
前記第一集光レンズの前記第一レンズ径は、前記第二集光レンズの前記第二レンズ径よりも大きい
ことを特徴とする光測定装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の光測定装置において、
測定対象に光を照射する光源を備え、
前記第一光量調整部および前記第二調整部は、前記光源から射出され、前記測定対象により反射された測定対象光の光量を調整する
ことを特徴とする光測定装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の光測定装置において、
前記第一光フィルターおよび前記第二光フィルターは、
第一基板と、
前記第一基板と対向する第二基板と、
前記第一基板に設けられた第一反射膜と、
前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜に対向する第二反射膜と、
前記第一反射膜および第二反射膜の間のギャップの間隔を可変させる静電アクチュエーターと、
を備えたことを特徴とする光測定装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の光測定装置において、
前記測定対象光は可視光であり、前記第一測定波長域および前記第二測定波長域は、可視光域を含む
ことを特徴とする光測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−232129(P2011−232129A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101775(P2010−101775)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】