説明

光源装置、およびプロジェクタ

【課題】光源ランプに副反射鏡を取り付けた構成において、光源ランプの温度分布の偏りを低減し、光源ランプの照度の低下や破損を回避して長寿命化が図れる光源装置、およびプロジェクタを提供する。
【解決手段】光源装置は、光源ランプ11と、主反射鏡12と、副反射鏡13とを備える。光源ランプ11を構成する発光管111は、内部に放電空間を有する発光部1111と、発光部1111の両側に設けられる封止部1112,1113とを有する。副反射鏡13は、発光管111の発光部1111を覆う椀状に形成され、発光管111の一方の封止部1113を挿通可能とし副反射鏡13を発光管111に取り付けるための挿通孔131Aを有する。発光管111の発光部1111および他方の封止部1112のうち少なくとも一部には、保温部材15が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、およびプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調し光学像を拡大投射するプロジェクタが利用されている。
このようなプロジェクタの光源装置としては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等の放電型の光源ランプと、光源ランプから射出された光束を反射するリフレクタと、光源ランプから前方側に放射される光束をリフレクタ側に反射する副反射鏡とを備えた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−148293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の光源装置のように、光源ランプに副反射鏡を取り付けた場合には、照射される光束により副反射鏡に生じる熱による影響や、光源ランプに生じた熱の放熱状態が副反射鏡により制限されることにより、例えば副反射鏡を設けない構成と比較して、光源ランプの温度が高くなりやすい。より具体的には、光源ランプにおいて、副反射鏡が取り付けられる側の温度は、副反射鏡が取り付けられる側と反対側の温度に対して高いものとなり、光源ランプの温度分布に偏りが生じる。ここで、光源ランプの温度を低減させるために、強制空冷等により冷却を強化した場合には、副反射鏡が取り付けられる側と反対側の温度が必要以上に低くなり、蒸発した電極材料が光源ランプ(発光管)の内壁に付着するいわゆる黒化現象が生じる恐れがある。このような黒化現象は、光源ランプの照度の低下や破損を引き起こす要因となる。
したがって、光源ランプに副反射鏡を取り付けた構成において、光源ランプの温度分布の偏りを低減し、光源ランプの照度の低下や破損を回避して光源装置の長寿命化が図れる技術が要望されている。
【0005】
本発明の目的は、光源ランプに副反射鏡を取り付けた構成において、光源ランプの温度分布の偏りを低減し、光源ランプの照度の低下や破損を回避して長寿命化が図れる光源装置、およびプロジェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光源装置は、放電空間を有する発光管、および前記発光管の放電空間に配置される一対の電極を有する光源ランプと、断面略凹状に拡がり前記光源ランプから放射された光束を反射するリフレクタと、反射面が前記リフレクタの反射面と対向配置され前記光源ランプから放射された光束の一部を前記放電空間に向けて反射する副反射鏡とを備えた光源装置であって、前記発光管は、内部に前記放電空間を有する発光部と、前記発光部の両側に設けられる封止部とを有し、前記副反射鏡は、前記発光管の発光部を覆う椀状に形成され、前記発光管の一方の封止部を挿通可能とし前記副反射鏡を前記発光管に取り付けるための開口部を有し、前記発光管の前記発光部および他方の封止部のうち少なくとも一部には、保温部材が設けられていることを特徴とする。
ここで、リフレクタとしては、パラボラリフレクタおよび楕円面リフレクタのいずれを採用してもよい。
また、保温部材としては、発光管に対して機械的に接続する構成としてもよいし、発光管の外壁面に塗布等により膜状に形成する構成としてもよい。
本発明によれば、発光管の発光部と、一対の封止部のうち副反射鏡が取り付けられる封止部とは反対側の封止部とのうち少なくとも一部に保温部材が設けられているので、発光管において、副反射鏡が取り付けられる側と反対側を保温部材により保温することができる。このため、光源ランプの温度を低減させるために、強制空冷等により冷却を強化した場合であっても、副反射鏡が取り付けられる側と反対側の温度が必要以上に低くなることを防止し、光源ランプの温度分布の偏りを低減できる。したがって、光源ランプに黒化現象が生じることを回避して、光源装置の長寿命化が図れる。
【0007】
本発明の光源装置では、前記保温部材は、前記保温部材における当該光源装置から射出される光束の中心軸からの離間寸法が最大でかつ、前記光源ランプの発光中心に最も近接した保温臨界点、および前記発光中心を結ぶ直線と前記中心軸の光射出後方側とのなす角度をθ1とし、前記リフレクタの利用光反射領域における前記中心軸に最も近接した反射臨界点、および前記発光中心を結ぶ直線と前記中心軸の光射出後方側とのなす角度をθ2とした場合に、θ1≦θ2の関係を満たすように前記発光管の前記発光部および他方の封止部のうち少なくとも一部に設けられていることが好ましい。
【0008】
ここで、利用光反射領域とは、副反射鏡や発光管の外形寸法、およびリフレクタの焦点距離等により設定される領域である。より具体的に、利用光反射領域は、発光部から放射された光束を照明対象に対して照射可能な利用光として反射する領域であり、すなわち、発光部から放射された光束をリフレクタにて反射した場合でも、発光管や副反射鏡により遮光されずに照明対象に対して照射可能な利用光として反射する領域である。
ところで、上述したθ1≦θ2の関係を満たさないθ1>θ2の関係を満たすように保温部材を発光管に設けた場合には、発光部から放射された光束のうち利用光が保温部材にて遮光されることとなり、光源装置から射出される光の利用効率の向上を阻害する恐れがある。
本発明によれば、保温部材は、θ1≦θ2の関係を満たすように発光管に設けられているので、発光部から放射された光束のうち利用光が保温部材にて遮光されることがなく、光源装置から射出される光の利用効率の向上が阻害されることがない。
【0009】
本発明の光源装置では、前記保温部材は、少なくとも前記発光部に設けられていることが好ましい。
本発明では、保温部材は、発光管において、最も温度が高くなる発光部に設けられている。このため、発光管において、副反射鏡が取付けられる側と反対側を保温部材により効果的に保温でき、強制空冷等により冷却を強化した場合であっても、副反射鏡が取付けられる側と反対側の温度の低減を効果的に抑制できる。
【0010】
本発明の光源装置では、前記保温部材は、入射光束および輻射熱を吸収することが好ましい。
本発明によれば、保温部材が入射光束および輻射熱を吸収するので、発光部から放射された光束が照射されるとともに輻射熱が放射される位置(例えば、発光部の表面)に保温部材を設けることで、保温部材により照射される光束および輻射熱が吸収されて保温部材の温度が高くなり、発光管から保温部材への伝熱量を減少させることができる。このため、発光管において、副反射鏡が取付けられる側と反対側の温度の低減をより一層効果的に抑制できる。
【0011】
本発明の光源装置では、前記保温部材は、前記発光管の熱伝導率よりも小さい熱伝導率であることが好ましい。
本発明によれば、保温部材が発光管の熱伝導率よりも小さい熱伝導率であるので、発光管表面のうち保温部材が設けられた部位の温度をより効果的に高く維持することができる。このため、発光管において、強制空冷等により冷却を強化した場合であっても、副反射鏡が取付けられる側と反対側の温度の低減を効果的に抑制できる。
【0012】
本発明のプロジェクタは、光源装置と、前記光源装置から射出された光束を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置にて変調された光束を拡大投射する投射光学装置とを備えたプロジェクタであって、前記光源装置は、上述した光源装置であることを特徴とする。
本発明によれば、プロジェクタは、上述した光源装置を備えているので、上述した光源装置と同様の作用・効果を享受できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔プロジェクタの構成〕
図1は、本実施形態におけるプロジェクタ1の概略構成を示す平面図である。
プロジェクタ1は、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調して画像光を形成し、該画像光をスクリーン等の投射面上に拡大投射する光学機器である。このプロジェクタ1は、図1に示すように、略直方体状の外装筺体2と、この外装筺体2内部に収納配置される光学ユニット3とで大略構成される。
なお、具体的な図示は省略するが、外装筺体2内部には、光学ユニット3の他、プロジェクタ1の構成部材に外部からの電力を供給する電源ユニット、プロジェクタ1内部を冷却する冷却ユニット、プロジェクタ1全体を制御する制御装置等が配置されるものとする。
【0014】
外装筺体2は、射出成型等による合成樹脂製品であり、プロジェクタ1の天面、前面、背面、および側面をそれぞれ構成するアッパーケース、およびプロジェクタ1の底面、前面、背面、および側面をそれぞれ構成するロアーケース等で構成される。そして、各ケースは、互いにねじ等で固定されている。
なお、外装筺体2は、合成樹脂製に限らず、その他の材料にて形成してもよく、例えば、金属等により構成してもよい。
【0015】
光学ユニット3は、外装筺体2内部に配置され、画像光を形成して拡大投射する。この光学ユニット3は、図1に示すように、光源装置10、均一照明光学系20、色分離光学系30、リレー光学系35、光学装置40、および投射光学装置としての投射光学系50を備えて構成され、これらの光学系20〜35を構成する光学素子および光学装置40は、所定の照明光軸Aが設定された光学部品用筐体60内に位置決め調整されて収納されている。
【0016】
光源装置10は、光源ランプ11から放射された光束を一定方向に揃えて射出し、光学装置40を照明するものである。この光源装置10は、詳しくは後述するが、図1に示すように、光源ランプ11、リフレクタとしての主反射鏡12、副反射鏡13、および平行化凹レンズ14を備えて構成されている。この光源装置10は、光学部品用筐体60に接続するランプハウジング10Bに収納配置される。光源装置10は、ランプハウジング10Bに収納配置されることで、光学部品用筐体60に対する所定位置(光源装置10から射出される光束の中心軸と光学部品用筐体60内に設定された照明光軸Aとが一致する位置)に位置決めされる。
そして、光源ランプ11から放射された光束は、主反射鏡12により光源装置10の前方側に射出方向を揃えて集束光として射出され、平行化凹レンズ14によって平行化され、均一照明光学系20に射出される。
なお、図1では主反射鏡12が楕円面リフレクタとして構成されている場合を示しており、主反射鏡12がパラボラリフレクタとして構成されている場合には平行化凹レンズ14を省略する。
【0017】
均一照明光学系20は、光源装置10から射出された光束を複数の部分光束に分割し、照明領域の面内照度を均一化する光学系である。この均一照明光学系20は、第1レンズアレイ21、第2レンズアレイ22、偏光変換素子23、および重畳レンズ24を備えている。
第1レンズアレイ21は、光源装置10から射出された光束を複数の部分光束に分割する光束分割光学素子としての機能を有し、照明光軸Aと直交する面内にマトリクス状に配列される複数の小レンズを備えて構成される。
第2レンズアレイ22は、上述した第1レンズアレイ21により分割された複数の部分光束を集光する光学素子であり、第1レンズアレイ21と同様に照明光軸Aに直交する面内にマトリクス状に配列される複数の小レンズを備えた構成を有している。
【0018】
偏光変換素子23は、第1レンズアレイ21により分割された各部分光束の偏光方向を略一方向の直線偏光に揃える偏光変換素子である。
この偏光変換素子23は、図示を略したが、照明光軸Aに対して傾斜配置される偏光分離膜および反射膜を交互に配列した構成を具備する。偏光分離膜は、各部分光束に含まれるP偏光光束およびS偏光光束のうち、一方の偏光光束を透過し、他方の偏光光束を反射する。反射された他方の偏光光束は、反射膜によって曲折され、一方の偏光光束の射出方向、すなわち照明光軸Aに沿った方向に射出される。射出された偏光光束のいずれかは、偏光変換素子23の光束射出面に設けられる位相差板によって偏光変換され、略全ての偏光光束の偏光方向が揃えられる。このような偏光変換素子23を用いることにより、光源ランプ11から射出される光束を、略一方向の偏光光束に揃えることができるため、光学装置40で利用する光源光の利用率を向上することができる。
【0019】
重畳レンズ24は、第1レンズアレイ21、第2レンズアレイ22、および偏光変換素子23を経た複数の部分光束を集光して光学装置40の後述する3つの液晶パネルの画像形成領域上に重畳させる光学素子である。
【0020】
色分離光学系30は、2枚のダイクロイックミラー31,32と、反射ミラー33とを備え、ダイクロイックミラー31,32により均一照明光学系20から射出された複数の部分光束を、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色光に分離する機能を具備する。
ダイクロイックミラー31,32は、基板上に所定の波長領域の光束を反射し、他の波長領域の光束を透過する波長選択膜が形成された光学素子である。そして、光路前段に配置されるダイクロイックミラー31は、青色光を反射し、その他の色光を透過するミラーである。また、光路後段に配置されるダイクロイックミラー32は、緑色光を反射し、赤色光を透過するミラーである。
【0021】
リレー光学系35は、入射側レンズ36と、リレーレンズ38と、反射ミラー37,39とを備え、色分離光学系30を構成するダイクロイックミラー31,32を透過した赤色光を光学装置40まで導く機能を有している。なお、赤色光の光路にこのようなリレー光学系35が設けられているのは、赤色光の光路の長さが他の色光の光路の長さよりも長いため、光の発散等による光の利用効率の低下を防止するためである。本実施形態においては赤色光の光路の長さが長いのでこのような構成とされているが、青色光の光路の長さを長くしてリレー光学系35を青色光の光路に用いる構成も考えられる。
【0022】
上述したダイクロイックミラー31により分離された青色光は、反射ミラー33により曲折された後、フィールドレンズ41を介して光学装置40に供給される。また、ダイクロイックミラー32により分離された緑色光は、そのままフィールドレンズ41を介して光学装置40に供給される。さらに、赤色光は、リレー光学系35を構成するレンズ36,38および反射ミラー37,39により集光、曲折されてフィールドレンズ41を介して光学装置40に供給される。なお、光学装置40の各色光の光路前段に設けられるフィールドレンズ41は、第2レンズアレイ22から射出された各部分光束を、各部分光束の主光線に対して平行な光束に変換するために設けられている。
【0023】
光学装置40は、入射した光束を画像情報に応じて変調してカラー画像を形成するものである。この光学装置40は、照明対象となる光変調装置としての液晶パネル42R,42G,42B(赤色光側の液晶パネルを42R、緑色光側の液晶パネルを42G、青色光側の液晶パネルを42Bとする)と、クロスダイクロイックプリズム43とを備えて構成される。なお、フィールドレンズ41および各液晶パネル42R,42G,42Bの間には、入射側偏光板44が介在配置され、各液晶パネル42R,42G,42Bおよびクロスダイクロイックプリズム43の間には、射出側偏光板45が介在配置され、入射側偏光板44、液晶パネル42R,42G,42B、および射出側偏光板45によって入射する各色光の光変調が行なわれる。
【0024】
液晶パネル42R,42G,42Bは、一対の透明なガラス基板に電気光学物質である液晶を密閉封入したものであり、例えば、ポリシリコンTFT(Thin Film Transistor)をスイッチング素子として、与えられた画像信号にしたがって、入射側偏光板44から射出された偏光光束の偏光方向を変調する。
クロスダイクロイックプリズム43は、射出側偏光板45から射出された色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する光学素子である。このクロスダイクロイックプリズム43は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の誘電体多層膜は、赤色光を反射するものであり、他方の誘電体多層膜は、青色光を反射するものであり、これらの誘電体多層膜によって赤色光および青色光は曲折され、緑色光の進行方向と揃えられることにより、3つの色光が合成される。
そして、クロスダイクロイックプリズム43から射出されたカラー画像は、投射光学系50によって拡大投射され、図示を略したスクリーン上で大画面画像を形成する。
【0025】
〔光源装置の構成〕
図2は、光源装置本体10Aの概略構成を示す断面図である。
光源装置10は、上述したように、光源ランプ11と、主反射鏡12と、副反射鏡13と、平行化凹レンズ14と、保温部材15とを備える。そして、これら各部材のうち、光源ランプ11、主反射鏡12、副反射鏡13、および保温部材15が一体化されて光源装置本体10Aを構成する。また、光源装置本体10Aおよび平行化凹レンズ14は、ランプハウジング10Bにより一体化されて光学部品用筐体60に対する所定位置に配置される。
【0026】
光源ランプ11は、図2に示すように、石英ガラス管から構成される発光管111と、この発光管111内に配置される一対の電極112および図示しない封入物とを備える。
ここで、光源ランプ11としては、高輝度発光する種々の光源ランプを採用でき、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を採用できる。
【0027】
発光管111は、中央部分に位置し略球状に膨出する発光部1111と、この発光部1111の両側に延びる一対の封止部1112,1113とで構成される。
発光部1111には、略球状の放電空間が形成され、この放電空間内に、一対の電極112と、水銀、希ガス、および少量のハロゲンが封入される。
一対の封止部1112,1113の内部には、一対の電極112と電気的に接続されるモリブデン製の金属箔112Aが挿入され、ガラス材料等で封止されている。各金属箔112Aには、さらに電極引出線としてのリード線113が接続され、このリード線113は、光源ランプ11の外部まで延出している。
そして、リード線113に電圧を印加すると、図2に示すように、金属箔112Aを介して電極112間に電位差が生じて放電が生じ、アーク像Dが生成して発光部1111内部が発光する。なお、以下では、発光中心を電極112間に生成されるアーク像Dの中心位置Oとして説明する。また、アーク像Dの中心位置Oは、一対の電極112間の略中央に位置する。さらに、アーク像Dの中心位置Oは、封止部1112,1113の延出方向に沿った発光管111の中心軸(図2では照明光軸Aと一致)と、発光部1111が最も膨出している部位の照明光軸Aに直交する平面に沿った断面との交点(発光管111の中心)に略一致するものとする。
【0028】
主反射鏡12は、図2に示すように、光源ランプ11の基端側の一方の封止部1112が挿通される筒状の首状部121、およびこの首状部121から拡がる凹曲面状の反射部122を備えた透光性を有するガラス製の一体成形品である。
首状部121には、図2に示すように、略円筒状となるように中央に挿入孔123が成形加工により形成されており、この挿入孔123の中心に封止部1112が配置される。
反射部122は、回転曲線形状のガラス面に金属薄膜を蒸着形成して構成された反射面122Aを備える。そして、この反射面122Aは、可視光を反射して赤外線および紫外線を透過するコールドミラーとなっている。
【0029】
このような主反射鏡12の反射部122内部に配置される光源ランプ11は、アーク像Dの中心位置Oが反射部122の反射面122Aの回転曲線形状の第1焦点位置F1の近傍となるように配置される。
そして、光源ランプ11を点灯すると、図2に示すように、発光部1111から放射された光束のうち主反射鏡12に向った光束R1は、主反射鏡12の反射部122の反射面122Aで反射して、回転曲線形状の第2焦点位置F2に集束する集束光となる。
また、反射部122における光射出前方側端部は、図2に示すように、発光管111の中心軸(図2では照明光軸Aに一致)に略直交して外側に延出し、平面視矩形枠形状を有する。そして、反射部122における光射出前方側端部は、ランプハウジング10Bに対する所定位置に位置決めする位置決め面として機能する。
【0030】
副反射鏡13は、図2に示すように、光源ランプ11の発光管111を構成する他方の封止部1113が挿通される略筒状の首状部131、およびこの首状部131から拡がる略球面状の反射部132を備え、これら首状部131および反射部132が一体的に形成されたものである。
首状部131は、光源ランプ11に対して副反射鏡13を固着する部分であり、筒状の開口部としての挿通孔131Aに光源ランプ11の封止部1113を挿通することで、図2に示すように、光源ランプ11に対して副反射鏡13が設置される。そして、この挿通孔131Aの内周面は、封止部1113との固定用接着剤が充填される接着面とされる。このように、副反射鏡13に首状部131を設けることで、首状部131を設けない構成と比較して、光源ランプ11に対する副反射鏡13の固着領域を大きくとることができ、光源ランプ11に対する副反射鏡13の固着状態を良好に維持できる。
【0031】
反射部132は、図2に示すように、光源ランプ11に対して副反射鏡13を設置した状態で、光源ランプ11の発光部1111の前側略半分を覆う反射部材であり、椀形状に構成されている。
この反射部132は、その内面が光源ランプ11の発光部1111の球面に倣う球面状に形成された反射面132Aとなる。なお、この反射面132Aは、主反射鏡12の反射面122Aと同様に、可視光を反射して赤外線および紫外線を透過するコールドミラーとなっている。
上述した副反射鏡13は、低熱膨張材および/または高熱伝導材である、例えば石英、アルミナセラミックス等の無機系材料から構成される。
【0032】
そして、上述した副反射鏡13を発光管111に装着することにより、図2に示すように、発光部1111から放射された光束のうち主反射鏡12とは反対側(前方側)に放射される光束R2は、光源ランプ11から主反射鏡12の反射面122Aに直接入射した光束R1と同様に、第2焦点位置F2に集束する。
【0033】
以上のように、副反射鏡13を設けることで、光源ランプ11から主反射鏡12とは反対側に放射される光束を副反射鏡13にて主反射鏡12の反射面122Aに入射するよう後方側に反射させることができる。このため、主反射鏡12の光軸方向寸法および開口径を例えば副反射鏡13を設けない場合と比較して小さくすることができる。すなわち、光源装置10やプロジェクタ1を光の利用効率を低減させずに小型化でき、光源装置10をプロジェクタ1に組み込むレイアウトも容易になる。
【0034】
図3は、保温部材15の設置位置、および光源装置10内部を流通する空気の流路Fを説明するための図である。
保温部材15は、比較的に小さい熱伝導率(例えば、発光管111の熱伝導率よりも小さい)を有し熱を吸収する材料から構成され、図3に示すように、発光管111に取り付けられ、発光管111からの放熱量を小さくするものである。
より具体的に、保温部材15は、セラミックス塗布体等の吸収体で構成される。保温部材15は、入射した光束を吸収して熱に変換するとともに、発光管111の表面から放射される輻射熱を吸収する。また、強制空冷等により保温部材15の表面からの放熱量が大きくなっても、保温部材15は熱伝導率が小さいため、発光管111の表面のうち保温部材15が設けられた部位(発光管111と保温部材15の境界部分)の温度が高く維持される。これにより、冷却を強化した場合であっても発光管111の保温効果が得られる。そして、保温部材15は、図3に示すように、発光管111における発光部1111と、一対の封止部1112,1113のうち副反射鏡13が取り付けられる封止部1113の反対側の封止部1112とを跨ぐようにかつ、照明光軸Aを中心とした周方向全体に亘って発光部1111の一部の外壁面(領域Ar1)および封止部1112の一部の外壁面(領域Ar2)に塗布されている。発光部1111から放射される光束が保温部材15に照射されることで保温部材15にて吸収されて熱に変換され、また、発光管111の表面から放射される輻射熱が吸収され、保温部材15の温度が高くなり、発光部1111および封止部1112から保温部材15への伝熱量が減少される。また、冷却を強化した場合であっても、保温部材15は熱伝導率が小さいため、発光管111の表面のうち保温部材15が設けられた部位(発光管111と保温部材15の境界部分)の温度が高く維持される。
【0035】
なお、保温部材15が取り付けられる領域Ar1および領域Ar2は、以下に示すように設定されたものである。
すなわち、図3に示すように、保温部材15における照明光軸Aからの離間寸法が最大でかつ、アーク像Dの中心位置Oに最も近接した保温臨界点P1、および中心位置Oを結ぶ直線L1と照明光軸Aの光射出後方側とのなす角度をθ1とする。
また、図3に示すように、主反射鏡12の利用光反射領域Arにおける照明光軸Aに最も近接した反射臨界点P2、および中心位置Oを結ぶ直線L2と照明光軸Aの光射出後方側とのなす角度をθ2とする。
なお、利用光反射領域Arとは、副反射鏡13や発光管111の外形寸法、および主反射鏡12の第1焦点距離、第2焦点距離等により設定される領域である。より具体的に、利用光反射領域Arは、発光部1111から放射された光束を照明対象(液晶パネル42R,42G,42B)に対して照射可能な利用光として反射する領域であり、すなわち、発光部1111から放射された光束を主反射鏡12にて反射した場合でも、発光管111や副反射鏡13により遮光されずに照明対象に対して照射可能な利用光として反射する領域である。また、図3では、利用光反射領域Arとして、副反射鏡13の外形寸法により規定される領域としているが、発光管111の外形寸法、例えば、封止部1113の外形寸法により規定される場合もある。
そして、保温部材15は、θ1≦θ2の関係を満たすように発光部1111および封止部1112に塗布形成されている。本実施形態では、保温部材15は、θ1=θ2の関係となるように発光部1111および封止部1112に塗布形成されている。
【0036】
また、具体的な図示は省略するが、ランプハウジング10Bには、一対の開口部が形成されており、前記一対の開口部を介してランプハウジング10B内部に空気が流通可能に構成されている。すなわち、前記冷却ユニットを構成する冷却ファンによりランプハウジング10B内の流路Fを辿る空気は、図3に示すように、発光管111の周囲を流通し、光源ランプ11、副反射鏡13、および保温部材15等を強制空冷する。
【0037】
上述した本実施形態においては、以下の効果がある。
本実施形態では、発光管111の発光部1111の一部の領域Ar1、および副反射鏡13が取り付けられる封止部1113とは反対側の封止部1112の一部の領域Ar2に保温部材15が形成されている。このことにより、発光管111において、副反射鏡13が取り付けられる側と反対側を保温部材15により保温することができる。このため、光源ランプ11の温度を低減させるために、流路Fを辿る空気による強制空冷により冷却を強化した場合であっても、副反射鏡13が取り付けられる側と反対側の温度が必要以上に低くなることを防止し、光源ランプ11の温度分布の偏りを低減できる。したがって、光源ランプ11に黒化現象が生じることを回避して、光源装置10の長寿命化が図れる。
【0038】
ここで、黒化現象は、発光部1111と封止部1112との境界付近で生じることが確認されている。本実施形態では、保温部材15は、発光部1111および封止部1112を跨ぐように形成されているので、光源ランプ11の黒化現象を効果的に抑制できる。
【0039】
また、保温部材15は、発光管111において、最も温度が高くなる発光部1111の一部の領域Ar1に設けられている。このため、発光管111において、副反射鏡13が取付けられる側と反対側を保温部材15により効果的に保温でき、流路Fを辿る空気による強制空冷により冷却を強化した場合であっても、副反射鏡13が取付けられる側と反対側の温度の低減を効果的に抑制できる。
さらに、保温部材15がセラミックス塗布体等の吸収体で構成され、発光部1111の一部の領域Ar1に形成されているので、保温部材15に照射される光束および輻射熱が吸収されて保温部材15の熱が高くなり、発光管111から保温部材15への伝熱量を減少させることができる。また、強制空冷等により保温部材15の表面からの放熱量が大きくなっても、保温部材15は熱伝導率が小さいため、発光管111の表面のうち保温部材15が設けられた部位(発光管111と保温部材15の境界部分)の保温効果が得られる。このため、発光管111において、流路Fを辿る空気による強制空冷により冷却を強化した場合であっても、副反射鏡13が取り付けられる側と反対側の温度の低減をより一層効果的に抑制できる。
したがって、光源ランプ11の温度を低減させるために、冷却を強化した場合であっても、副反射鏡13が取り付けられる側と反対側の温度が必要以上に低くなることを効果的に防止し、光源ランプ11の温度分布の偏りを効果的に低減できる。
【0040】
さらに、保温部材15がセラミックス塗布体等で構成され、発光管111に塗布形成されているので、例えば、保温部材を発光管111に対して機械的に取り付ける構成と比較して、発光管111に対する保温部材の取り付け構造が煩雑化することがなく、保温部材15の形成を容易に実施でき、光源装置10を容易に製造できる。
【0041】
ところで、上述したθ1≦θ2の関係を満たさないθ1>θ2の関係を満たすように保温部材を発光管111に設けた場合には、発光部1111から放射された光束のうち利用光が保温部材にて遮光されることとなり、光源装置10から射出される光の利用効率の向上を阻害する恐れがある。
本実施形態では、保温部材15は、θ1=θ2の関係を満たすように発光管111に設けられているので、発光部1111から放射された光束のうち利用光が保温部材15にて遮光されることがなく、光源装置10から射出される光の利用効率の向上が阻害されることがない。
【0042】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良並びに設計の変更が可能である。
前記実施形態では、発光管111の基材の熱伝導率よりも小さい熱伝導率であって、熱を吸収する保温部材について説明したが、これに限らず、熱吸収性は悪いが、熱伝導率が小さい保温部材や、熱伝導率は発光管111の基材の熱伝導率よりも高いが熱吸収性がよい保温部材を採用し、その大きさや厚みを適宜設定し所望の保温効果を有する保温部材としても構わない。
前記実施形態では、主反射鏡12が楕円面リフレクタとして構成されていたが、これに限らず、光源ランプ11から射出された光束を略平行光として反射するパラボラリフレクタとして構成しても構わない。
【0043】
前記実施形態では、保温部材15は、セラミックス塗布体等の吸収体で構成され、膜状に形成された構成(保温膜)であったが、これに限らない。例えば、保温部材をセラミックス等の吸収体で構成し、発光管111に対して機械的に接続する構成としてもよい。また、保温部材としては吸収体に限らず、発光管111に取り付けられることで発光管111の熱損失を低減可能とする材料であれば、いずれの材料でも構わない。
【0044】
前記実施形態では、保温部材15を発光管111の領域Ar1および領域Ar2に配設していたが、これに限らない。保温部材としては、副反射鏡13が取付けられた封止部1113とは反対側の封止部1112と発光部1111との少なくとも一部に配設されていれば、いずれの位置に配設してもよく、例えば、保温部材を領域Ar1のみに配設する構成、領域Ar2のみに配設する構成、あるいは、封止部1112全体に配設する構成等としても構わない。また、例えば、保温部材15は、照明光軸Aを中心とした周方向全体に亘って領域Ar1および領域Ar2に配設されていたが、周方向全体でなく、一部のみに配設する構成としてもよい。さらに、保温部材15は、θ1=θ2の関係を満たすように設けられていたが、これに限らず、θ1≦θ2を満たすように配設すればよい。
【0045】
前記実施形態では、光源装置10は、副反射鏡13を設けた構成を説明したが、これに限らず、副反射鏡13を省略した構成でも構わない。
【0046】
前記実施形態では、3つの液晶パネル42R,42G,42Bを用いたプロジェクタ1の例のみを挙げたが、本発明は、1つの液晶パネルのみを用いたプロジェクタ、2つの液晶パネルを用いたプロジェクタ、あるいは、4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクタにも適用可能である。
前記実施形態では、光入射面と光射出面とが異なる透過型の液晶パネルを用いていたが、光入射面と光射出面とが同一となる反射型の液晶パネルを用いてもよい。
前記実施形態では、光変調装置として液晶パネルを用いていたが、マイクロミラーを用いたデバイスなど、液晶以外の光変調装置を用いてもよい。この場合は、光束入射側および光束射出側の偏光板は省略できる。
前記実施形態では、スクリーンを観察する方向から投射を行なうフロントタイプのプロジェクタの例のみを挙げたが、本発明は、スクリーンを観察する方向とは反対側から投射を行なうリアタイプのプロジェクタにも適用可能である。
前記実施形態では、プロジェクタに本発明の光源装置を採用していたが、本発明はこれに限らず、他の光学機器に本発明の光源装置を採用してもよい。
【0047】
本発明を実施するための最良の構成などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の光源装置は、光源ランプに副反射鏡を取り付けた構成において、光源ランプの温度分布の偏りを低減し、光源ランプの照度の低下や破損を回避して長寿命化が図れるため、ホームシアタやプレゼンテーションで利用されるプロジェクタの光源装置として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態におけるプロジェクタの概略構成を示す平面図。
【図2】前記実施形態における光源装置本体の概略構成を示す断面図。
【図3】前記実施形態における保温部材の設置位置、および光源装置内部を流通する空気の流路を説明するための図。
【符号の説明】
【0050】
1・・・プロジェクタ、10・・・光源装置、11・・・光源ランプ、12・・・リフレクタ(主反射鏡)、13・・・副反射鏡、15・・・保温部材、42R,42G,42B・・・液晶パネル(光変調装置)、50・・・投射光学系(投射光学装置)、111・・・発光管、112・・・電極、122A,132A・・・反射面、131A・・・挿通孔(開口部)、1111・・・発光部、1112,1113・・・封止部、Ar・・・利用光反射領域、L1,L2・・・直線、O・・・中心位置(発光中心)、P1・・・保温臨界点、P2・・・反射臨界点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を有する発光管、および前記発光管の放電空間に配置される一対の電極を有する光源ランプと、断面略凹状に拡がり前記光源ランプから放射された光束を反射するリフレクタと、反射面が前記リフレクタの反射面と対向配置され前記光源ランプから放射された光束の一部を前記放電空間に向けて反射する副反射鏡とを備えた光源装置であって、
前記発光管は、内部に前記放電空間を有する発光部と、前記発光部の両側に設けられる封止部とを有し、
前記副反射鏡は、前記発光管の発光部を覆う椀状に形成され、前記発光管の一方の封止部を挿通可能とし前記副反射鏡を前記発光管に取り付けるための開口部を有し、
前記発光管の前記発光部および他方の封止部のうち少なくとも一部には、保温部材が設けられていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源装置において、
前記保温部材は、
前記保温部材における当該光源装置から射出される光束の中心軸からの離間寸法が最大でかつ、前記光源ランプの発光中心に最も近接した保温臨界点、および前記発光中心を結ぶ直線と前記中心軸の光射出後方側とのなす角度をθ1とし、
前記リフレクタの利用光反射領域における前記中心軸に最も近接した反射臨界点、および前記発光中心を結ぶ直線と前記中心軸の光射出後方側とのなす角度をθ2とした場合に、
θ1≦θ2
の関係を満たすように前記発光管の前記発光部および他方の封止部のうち少なくとも一部に設けられていることを特徴とする光源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光源装置において、
前記保温部材は、少なくとも前記発光部に設けられていることを特徴とする光源装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の光源装置において、
前記保温部材は、入射光束および輻射熱を吸収することを特徴とする光源装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の光源装置において、
前記保温部材は、前記発光管の熱伝導率よりも小さい熱伝導率であることを特徴とする光源装置。
【請求項6】
光源装置と、前記光源装置から射出された光束を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置にて変調された光束を拡大投射する投射光学装置とを備えたプロジェクタであって、
前記光源装置は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の光源装置であることを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−220435(P2007−220435A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38621(P2006−38621)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】