説明

光照射によるフラボノイド類合成系遺伝子の発現増強

【課題】植物によるフラボノイド類の合成を向上させる方法、この方法により効率的に生産されるフラボノイド類の製造方法、この製造方法により生産されたフラボノイド類を含む医薬組成物または飲食物などを提供する。
【解決手段】植物に435nm〜780nmの波長領域内の波長成分の光量子束密度が50μmol m-2s-1〜300μmol m-2s-1の範囲内である光を照射し、カルコン合成酵素遺伝子、フラバノン3-ヒドロキシラーゼ遺伝子、ジヒドロフラバノール4-レダクターゼ遺伝子またはUDP-グルコシルトランスフェラーゼファミリーの遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子発現を促進することによる植物によるフラボノイド類の合成を向上させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択した照射条件下において植物を生育させる方法に関する。より具体的には、本発明は、選択した照射条件下において植物を生育させることにより、遺伝子の発現を増強し、これにより有用な化合物の生産性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は光に対して応答することが知られており、光照射により特定成分含量の増大が期待される。光照射による植物成分の変動として、青色光や紫外線の照射によりフラボノイド類、特にアントシアニンが合成され (非特許文献1)、赤色光や赤外光によりカロチノイド等が合成されることが報告されている (非特許文献2)。これまでの研究では光量子束密度10μmol m-2 s-1程度の青色光が用いられてきたが、より強い青色光の植物に対する効果についてはこれまで知見がない。
【0003】
植物において、機能性・薬効性を有する生成物は、各種代謝経路に介在する酵素の働きにより合成される。植物には数十の代謝経路の存在が想定され、それぞれの代謝経路は、また数十の代謝酵素によって構成されている。これらの代謝酵素のうち9割以上は、すべての植物に共通であり、残りの1割弱の酵素の違いにより、植物に固有の成分が蓄積すると考えられる。したがって、発光ダイオード(LED)照射によりどの種の機能性・薬効成分が増大するかは、LED照射により何れの代謝経路に介在する酵素の発現が増大するかで推定することができる。
【0004】
様々な照射条件下における遺伝子発現について、遺伝子レベルでの解析が最も進んでいるモデル植物はシロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana)であり、Arabidopsis ATH1 Genome Array (Affymetrix)のような遺伝子チップが市販されていることもあって、このシロイヌナズナは、この種の発現解析に最適な実験系と言える。シロイヌナズナはアブラナ科に属し、ナタネ、キャベツ、ハクサイ、ダイコン等の野菜と類縁である。
【0005】
本発明は、高輝度LEDを搭載した人工気象機を用いてシロイヌナズナに高輝度青色光を照射し、このシロイヌナズナに対してDNAチップを駆使した発現遺伝子の網羅的解析 (マイクロアレイ) を実施したところ、フラボノイド類合成系遺伝子の発現が増大したという知見に基づいている。これらフラボノイド類には活性酸素除去能力があり、乾燥、塩などの環境ストレスを受けた際に植物体内に発生する活性酸素を除去する機能を有することが報告されている。そのため、これら抗酸化作用を有するフラボノイド類は、ヒトに投与した場合の薬効・機能性成分について注目されている。したがって、植物への光照射による高効率のフラボノイド類の生産が期待される。
【0006】
【非特許文献1】Bharti, A.K. and Khurana, J.P. (1997): Photochem. Photobiol., 65, 765-776.
【非特許文献2】von Lintig, J., Welsch, R., Bonk, M., Giuliano, G., Batschauer, A., and Kleinig, H. (1997): Sinapis alba and Arabidopsis thaliana seedlings. Plant J., 12, 625-634.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記状況において、植物から抽出したフラボノイド類を単離・精製することによりこれらフラボノイド類を製造する方法は広く行われているが、これらの植物中の含量は微量であるため、大量の植物が必要であるという問題があった。そこで、植物のフラボノイド類の生成能を向上させる方法が強く望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討し、代謝産物の網羅的解析 (メダボローム解析)を実施したた結果、植物に光を照射する条件を設定することにより、シロイヌナズナにおいてフラボノイド類の生合成に関係する遺伝子である、 (1) カルコン合成酵素遺伝子子(遺伝子番号At5g13930)、(2) フラバノン3-ヒドロキシラーゼ遺伝子(遺伝子番号A3g51240)、(3) ジヒドロフラバノール4-レダクターゼ遺伝子(遺伝子番号At5g42800)および/もしくは(4) UDP-グルコシルトランスフェラーゼファミリーの遺伝子(遺伝子番号At1g30530)の発現、または(5) 4-クマロイル-CoA-シンターゼ3遺伝子(遺伝子番号At1g65060)の発現を促進することを見出した。本発明者らは、この知見に基づいてさらに検討を行い、本発明を完成するに至った。
【0009】
したがって、本発明は以下に示すように、特定の波長領域内の波長成分を含む光を照射することを含む、植物によるフラボノイド類の合成を向上させる方法、この方法により効率的に生産されるフラボノイド類の製造方法、この製造方法により生産されたフラボノイド類を含む医薬組成物または飲食物などを提供する:
[1] 435nm〜780nmの波長領域内の波長成分を含む光を照射することを含む、植物によるフラボノイド類の合成を向上させる方法。
[2] 435nm〜780nmの波長領域内の波長成分の光量子束密度が、50μmol m-2s-1〜300μmol m-2s-1の範囲内である、項目2に記載の方法。
[3] 光が、450nm〜490nmまたは610nm〜780nmの波長領域内の波長成分を含む、項目1に記載の方法。
[4] 450nm〜490nmまたは610nm〜780nmの波長領域内の波長成分の光量子束密度が、100μmol m-2s-1〜250μmol m-2s-1の範囲内である、項目4に記載の方法。
[5] 光を2日〜2週間照射する、項目2〜5のいずれか1項に記載の方法。
[6] 光を2日間照射する、項目2〜5のいずれか1項に記載の方法。
[7] 前記植物が双子葉植物または単子葉植物である、項目1〜7のいずれか1項に記載の方法。
[8] 前記植物がシロイヌナズナ、ナタネ、キャベツ、ハクサイ、ダイコン、カリフラワー、ブロッコリー、レッドキャベツ、マスタード、ルッコラまたはクレソである、項目1〜7のいずれか1項に記載の方法。
[9] 前記植物がシロイヌナズナである、項目8に記載の方法。
[10] 前記フラボノイド類がケンフェロール、ケルセリンまたはフラボノールグリコシドである、項目1〜9のいずれか1項に記載の方法。
[11] 前記フラボノイド類がケンフェロールである、項目10に記載の方法。
[12] (1) カルコン合成酵素遺伝子、(2) フラバノン3-ヒドロキシラーゼ遺伝子、(3) ジヒドロフラバノール4-レダクターゼ遺伝子または(4) UDP-グルコシルトランスフェラーゼファミリーの遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の発現を促進する、項目1〜11のいずれか1項に記載の方法。
[13] (5) 4-クマロイル-CoA-シンターゼ3遺伝子の発現促進をさらに含む、項目12に記載の方法。
[14] (1) カルコン合成酵素遺伝子、(2) フラバノン3-ヒドロキシラーゼ遺伝子、(3) ジヒドロフラバノール4-レダクターゼ遺伝子、(4) UDP-グルコシルトランスフェラーゼファミリーの遺伝子、および/または(5) 4-クマロイル-CoA-シンターゼ3遺伝子の発現が、対照と比較して2倍以上の発現量を示す、項目12または13に記載の方法。
[15] (1) カルコン合成酵素遺伝子が、以下(1a)〜(1f)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含有する、項目12〜14のいずれか1項に記載の方法:
(1a)配列番号:3の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(1b)配列番号:4のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(1c)配列番号:4のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつカルコン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(1d)配列番号:4のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつカルコン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(1e)配列番号:3の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつカルコン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
(1f)配列番号:4のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつカルコン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
[16] (2) フラバノン3-ヒドロキシラーゼ遺伝子が、以下(2a)〜(2f)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含有する、項目12〜14のいずれか1項に記載の方法:
(2a)配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(2b)配列番号:6のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(2c)配列番号:6のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつフラバノン3-ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(2d)配列番号:6のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつフラバノン3-ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(2e)配列番号:5の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフラバノン3-ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
(2f)配列番号:6のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフラバノン3-ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
[17] (3) ジヒドロフラバノール4-レダクターゼ遺伝子が、以下(3a)〜(3f)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含有する、項目12〜14のいずれか1項に記載の方法:
(3a)配列番号:7の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(3b)配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(3c)配列番号:8のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつジヒドロフラバノール4-レダクターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(3d)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつジヒドロフラバノール4-レダクターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(3e)配列番号:7の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつジヒドロフラバノール4-レダクターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
(3f)配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつジヒドロフラバノール4-レダクターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
[18] (4) UDP-グルコシルトランスフェラーゼファミリーの遺伝子が、以下(4a)〜(4f)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含有する、項目12〜14のいずれか1項に記載の方法:
(4a)配列番号:9の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(4b)配列番号:10のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(4c)配列番号:10のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつUDP-グルコシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(4d)配列番号:10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつUDP-グルコシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(4e)配列番号:9の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP-グルコシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
(4f)配列番号:10のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP-グルコシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
[19] (5) 4-クマロイル-CoA-シンターゼ3遺伝子が、以下(5a)〜(5f)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含有する、項目13または14に記載の方法:
(5a)配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(5b)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(5c)配列番号:2のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつ4-クマロイル-CoA-シンターゼ3活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(5d)配列番号:2のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ4-クマロイル-CoA-シンターゼ3活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(5e)配列番号:1の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ4-クマロイル-CoA-シンターゼ3活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
(5f)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ4-クマロイル-CoA-シンターゼ3を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
[20] 項目1〜19のいずれか1項に記載の方法によりフラボノイド類を製造する方法。
[21] 項目20に記載の方法により生産される、フラボノイド類。
[22] 前記フラボノイド類がケンフェロールである、項目21に記載のフラボノイド類。
[23] 項目21に記載のフラボノイド類を含む、医薬組成物。
[24] 項目21に記載のフラボノイド類を含む、飲食物または栄養補助食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法にしたがって、特定の波長領域内の波長成分を含む光を照射することを含む、植物によるフラボノイド類の合成を向上させることができる。したがって、本発明は、植物を利用したフラボノイド類またはその代謝物の効率的な生産に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
先ず、本発明は、特定の波長領域内の波長成分を含む光を照射することを含む、植物によるフラボノイド類の合成を向上させる方法に関する。以下に、本発明で使用する植物、光照射方法、生合成される代謝系産物などについて記載する。
【0012】
1.本発明において使用され得る植物について
本発明で使用される植物としては、光に応答してリグナン類、リグニン類を生合成する植物であればよく、特に制限されない。このような植物としては、例えば、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana )、チョウセンニンジン(Panax Binseng)、ワタ(Gossypium indicum )、アサ(Cannabis sativa )、アブラナ(Brassica campestris )、カブラ(Brassica campestris )、キャベツ(Brassica oleracea )、ダイコン(Raphanus sativus )、セイヨウカボチャ(Cucurbita Pepo )、カボチャ(Cucurbita moschata )、キウリ(Cucumis sativus )、メロン(Cucumis Melo )、スイカ(Citrullus Battich )、オランダイチゴ(Fragaria chiloensis )、アラスカエンドウ(Pisum sativum Alaska )、アズキ(Phaseolus angularis )、ナンキンマメ(Arachis hypogaea )、ダイズ(Glycine max )、インゲンマメ(Phaseolusvulgaris )、ソラマメ(Vicia Faba )、エンドウ(Pisum sativum )、ミカン(Citrus deliciosa )、ブドウ(Vitis vinifera )、ゴマ(Sesamum indicum )、サツマイモ(Ipomoea Batatas )、ナス(Solanum melongena )、ジャガイモ(Solanum tuberosum )、トマト(Lycopersicon esculentum )、トウガラシ(Capsicum annuum )、タバコ(Nicotiana tabacum )、ツクバネアサガオ(Petunia hybrida )、ヒマワリ(Helianthus annuus )、ゴボウ(Arctium Lappa )、キク(Chrysanthemum morifolium )、ホウレンソウ(Spinacia oleracea )、カリフラワー(Brassica oleracea var. botrytis)、ブロッコリー(Brassica oleracea var. italica)、レッドキャベツ(Brassica oleracea var. capitata f. rubra)、マスタード(Brassica juncea)、ルッコラ(Eruca vesicaria)またはクレソ(Nasturtium officinale)などの双子葉植物;イネ(Oryza sativa )、コムギ(Triticum aestivum )、オオムギ(Hordeum vulgare )、トウモロコシ(Zea mays )、エンバク(Avena sativa )、ヒエ(Panicum Crus-galli L. var. frumentaceum )、モロコシ(Sorghum bicolor )、アワ(Setaria italica )、キビ(Panicum miliaceum )、チューリップ(Tulipa Gesneriana )、サトイモ(Colocasia antiquorum )、アオウキクサ(Lemna paucicostata )またはサトウキビ(Saccharum officinarum )などの単子葉植物;テーダマツ(Pinus taeda)、カイガンショウ(Pinus pinaster)、カナダトウヒ(Picea glauca)、シトカトウヒ(Picea sitchensis)などのその他の種子植物などが挙げられる。好ましくは、当該分野で通常栽培される双子葉植物または単子葉植物であり、さらに好ましくはシロイヌナズナ、ナタネ、キャベツ、ハクサイ、ダイコン、カリフラワー、ブロッコリー、レッドキャベツ、マスタード、ルッコラまたはクレソなどである。
【0013】
2.本発明で使用される光照射について
2−1.本発明で使用される光の波長について
上記のように、本発明は、特定の波長領域内の波長成分を含む光を照射することを含む、植物によるフラボノイド類の合成を向上させる方法に関する。好ましくは約435nm〜約780nmの波長領域内、より好ましくは約435nm〜約490nmまたは約610nm〜約780nmの波長領域内、特に好ましくは約460nm〜約490nmまたは約650nm〜約670nmの波長領域内、特に好ましくは約470nmまたは約660nmの波長の波長成分を含む光が挙げられる。好ましくは、上記の光照射によって、植物において (1) カルコン合成酵素遺伝子、(2) フラバノン3-ヒドロキシラーゼ遺伝子、(3) ジヒドロフラバノール4-レダクターゼ遺伝子 (4) UDP-グルコシルトランスフェラーゼファミリーの遺伝子および/または(5) 4-クマロイル-CoA-シンターゼ3遺伝子の発現を促進することができる。
【0014】
2−2.本発明で使用される光の光量子束密度について
光量子束密度としては、植物の(1) 4-クマロイル-CoA-シンターゼ3遺伝子、(1) カルコン合成酵素遺伝子、(2) フラバノン3-ヒドロキシラーゼ遺伝子、(3) ジヒドロフラバノール4-レダクターゼ遺伝子および/または(4) UDP-グルコシルトランスフェラーゼファミリーの遺伝子の発現を促進できる光量子束密度であればよく、特に制限はない。これら遺伝子の発現促進効率の観点からは、上記波長領域または波長の波長成分の光量子束密度は、好ましくは50μmol m-2s-1〜300μmol m-2s-1の範囲内、さらに好ましくは75μmol m-2s-1〜300μmol m-2s-1または100μmol m-2s-1〜250μmol m-2s-1の範囲内である。
【0015】
2−3.本発明で使用される光の照射時間について
光照射時間は、照射する光の光量子束密度によっても異なるが、植物の(1) 4-クマロイル-CoA-シンターゼ3遺伝子、(1) カルコン合成酵素遺伝子、(2) フラバノン3-ヒドロキシラーゼ遺伝子、(3) ジヒドロフラバノール4-レダクターゼ遺伝子および/または(4) UDP-グルコシルトランスフェラーゼファミリーの遺伝子の発現を促進できる光照射時間であればよく、特に制限はないが、連続照射であるのが好ましい。これら遺伝子の発現促進効率の観点からは、光量子束密度が50μmol m-2s-1〜300μmol m-2s-1の範囲内である場合には、光照射時間は、通常1時間以上、好ましくは6時間〜8週間、より好ましくは12時間〜6週間、さらに好ましくは24時間から4週間程度である。光量子束密度が50μmol m-2s-1〜200μmol m-2s-1の範囲内である場合には、光照射時間は、通常1日以上、好ましくは1日〜8週間、より好ましくは1.5日〜6週間、さらに好ましくは2日から4週間程度である。光量子束密度が200μmol m-2s-1〜300μmol m-2s-1の範囲内である場合には、光照射時間は、通常1時間〜14日、好ましくは2時間〜10日、より好ましくは6時間〜1週間、さらに好ましくは12時間から4日間程度である。
【0016】
2−4.本発明で使用される光の光源について
本発明で用いられる光源としては、人工光源を用いる場合には、エネルギー効率の観点から、なるべく (1) カルコン合成酵素遺伝子、(2) フラバノン3-ヒドロキシラーゼ遺伝子、(3) ジヒドロフラバノール4-レダクターゼ遺伝子、(4) UDP-グルコシルトランスフェラーゼファミリーの遺伝子および/または(5) 4-クマロイル-CoA-シンターゼ3遺伝子の発現促進効率の高い波長成分の光のみを用いるのが好ましい。好ましくは、上記に示される特定の波長を発する光源が挙げられる。
【0017】
本発明で用いられる光源としては、上記の例示的な条件の光照射に用いることができるものであればよく、特に制限はない。例えば、発光ダイオード(LED)、白色蛍光灯、放電ランプ(例、水銀灯、キセノンランプなど)、さらに、回折格子、プリズムなどとの組み合わせにより取り出された特定の波長の光などを適宜用いることができる。過剰な光による植物の障害(光合成能の低下、組織傷害など)を抑制するために目的以外の波長成分、例えば200nm〜435nmの波長領域内の波長成分または755nm〜3000nmの波長領域内の波長成分を減少させるためには、所望の波長選択性を有するフィルター(例、色ガラスフィルター、ゼラチンフィルター、干渉フィルターなど)を使用することができる。また、LEDやレーザーは、不要な波長領域の波長成分を含まず、かつ、好ましい光量子束密度を有する光を得るために好ましく用いることができる。
【0018】
本発明において光照射するための手段としては、好ましくはLEDを用いた手段である。LEDは一般に、従来の他の照明器具と比較して、
(1) 電力消費量が少なく、かつ効率がよい
(2) 発熱がほとんど無い
(3) 発光ダイオード単体が小さいため、光源としての発光機器はその形状を自由に変化させることできる
(4) 発光ダイオードはそれぞれの種類によって光の波長域が狭く(スペクトル幅が小さく)、その組み合わせによって自由に目的の波長域を得ることができるので、植物の栽培に適した波長域を容易に設定して照射を行なうことができる、
などの特徴および効果を有している。すなわち、LEDは、スペクトル幅の小さな単色光/低電圧で駆動可能/コンパクト/発熱が少ないという特性を有しており、植物に必要な波長の光を組み合わせて照射を行なうことにより、小さなエネルギで効率よく特定の植物生理機能や形態形成を促すことが可能になるとともに、植物の要部に対する近接照射を容易に行なうことが可能である。さらに、高輝度LEDを利用することによって、より強い光量子束密度を提供することが可能であり、このことによって、より強い生合成を植物に誘導させることが可能である。
【0019】
したがって、好ましくは本発明において使用される光源は、青色LED (435〜480 nm)、赤色LED (610〜750 nm)、または青色LED+赤色LEDの組合わせであり、より好ましくは、使用される光源は青色LEDである。高輝度LEDを使用して比較的強い光量子束密度を短期間に提供することがさらに好ましい。
【0020】
3.遺伝子発現
3−1.本発明に関係する遺伝子について
上記のように、本発明は、植物に光を照射することを含む、植物のフラボノイド類の合成に関する (1) カルコン合成酵素遺伝子、(2) フラバノン3-ヒドロキシラーゼ遺伝子、(3) ジヒドロフラバノール4-レダクターゼ遺伝子および/もしくは(4) UDP-グルコシルトランスフェラーゼファミリーの遺伝子の発現、または(5) 4-クマロイル-CoA-シンターゼ3遺伝子の発現を促進する方法を提供する。すなわち、上記の(1)、(2)、(3)、(4)および/または(5)の遺伝子の発現の促進によって、フラボノイド類およびその代謝物の生産能を向上させることができる。植物におけるフラボノイド類についての例示の生合成経路については、図3に示される。この過程において、(1)に由来するカルコン合成酵素はp-クマロイルCoA→ナリンゲニンカルコンの反応過程を促進し、(2)に由来するフラバノン3-ヒドロキシラーゼはナリンゲニンカルコンより生成されるナリンゲニン(フラバノン)→ジヒドロカンフェロールの反応過程を促進し、(3)に由来するジヒドロフラバノール4-レダクターゼはジヒドロカンフェロール→ペラルゴニジン(アントシアニジン)の反応過程またはジヒドロカンフェロールより生成されるジヒドロケルセリン→シアニジンの反応過程を促進し、そして(4)に由来するUDP-グルコシルトランスフェラーゼはジヒドロカンフェロールより生成されるカンフェロール(フラボノール)→フラボノールグリコシドの反応過程またはジヒドロケルセリンより生成されるケルセリン(フラボノール)→フラボノールグリコシドの反応過程を促進する。また、(5)に由来する4-クマロイル-CoA-シンターゼ3は、p-クマリン酸→p-クマロイルCoAの反応過程を促進し、(1) カルコン合成酵素の出発物質を提供する。例えば、本発明において使用されるシロイヌナズナにおいて、これらの遺伝子は、 (1) カルコン合成酵素遺伝子(遺伝子番号At5g13930)(配列番号:3)、(2) フラバノン3-ヒドロキシラーゼ遺伝子(遺伝子番号A3g51240)(配列番号:5)、(3) ジヒドロフラバノール4-レダクターゼ遺伝子(遺伝子番号At5g42800)(配列番号:7)および/もしくは(4) UDP-グルコシルトランスフェラーゼファミリーの遺伝子(遺伝子番号At1g30530)(配列番号:9)、または(5) 4-クマロイル-CoA-シンターゼ3遺伝子(遺伝子番号At1g65060)(配列番号:1)、が関係しており、それらの遺伝子産物はそれぞれ、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10および配列番号:2に示される。それぞれの配列の情報に関しては、以下URLなどを参照のこと:
At1g65060:http://www.arabidopsis.org/servlets/TairObject?type=aa_sequence&id=1009105083、
At5g13930: http://www.arabidopsis.org/servlets/TairObject?id=132598&type=locus
A3g51240: http://www.arabidopsis.org/servlets/TairObject?id=36753&type=locus
At5g42800: http://www.arabidopsis.org/servlets/TairObject?id=133488&type=locus
At1g30530: http://www.arabidopsis.org/servlets/TairObject?id=29619&type=locus。
【0021】
本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子発現」とは、ゲノム遺伝子を鋳型として、プロモーター配列の制御下でmRNAを発現する過程(転写)、および/またはこのmRNAを鋳型としてタンパク質を生成する過程(翻訳)を含む。本明細書中で使用される場合、「ポリヌクレオチド」、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」はそれぞれと交換可能に使用され得る。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示される。また、「配列番号:1の塩基配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメント」とは、配列番号:1の各デオキシヌクレオチドA、G、Cおよび/またはTによって示される配列を含むポリヌクレオチドまたはその断片部分が意図される。
【0022】
3−2.本発明に関係するポリヌクレオチドおよびその等価物について
本発明に係るポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在し得る。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であり得るか、またはそれは、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であり得る。
【0023】
また、本発明において発現を促進する遺伝子には、例えば、(5) 4-クマロイル-CoA-シンターゼ3遺伝子の塩基配列(配列番号:1)と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ4-クマロイル-CoA-シンターゼ3活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する遺伝子;及び4-クマロイル-CoA-シンターゼ3のアミノ酸配列(配列番号:2)からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ4-クマロイル-CoA-シンターゼ3活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する遺伝子も含まれる。
【0024】
ここで、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド(DNA)」とは、配列番号:1の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド又は配列番号:2のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全部又は一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法又はサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。ハイブリダイゼーションの方法としては、例えばMolecular Cloning 3rd Ed.、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1987-1997などに記載されている方法を利用することができる。
【0025】
本明細書でいう「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5% SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5% SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5% SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0026】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコルにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたポリヌクレオチド(例えば、DNA)を検出することができる。
【0027】
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、FASTA、BLASTなどの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:2のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約60%以上、約70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するポリヌクレオチドをあげることができる。
【0028】
3−3.本発明に関係するポリペプチドおよびその等価物について
一実施形態において、本発明の方法において対象とする遺伝子は、ポリペプチドをコードする遺伝子の塩基配列において1または複数個の塩基が欠失、挿入、置換、または付加された変異体であってもよい。変異体は、コードもしくは非コード領域、またはその両方において変異され得る。コード領域における変異は、保存的または非保存的なアミノ酸の欠失、挿入、置換および/または付加を含み得る。本明細書中で使用される場合、例えば、4-クマロイル-CoA-合成酵素3のアミノ酸配列(配列番号:2)において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつ4-クマロイル-CoA-合成酵素3活性を有するタンパク質などが挙げられる。
【0029】
このようなタンパク質としては、例えば配列番号:2のアミノ酸配列において、例えば、1〜100個、1〜90個、1〜80個、1〜70個、1〜60個、1〜50個、1〜40個、1〜39個、1〜38個、1〜37個、1〜36個、1〜35個、1〜34個、1〜33個、1〜32個、1〜31個、1〜30個、1〜29個、1〜28個、1〜27個、1〜26個、1〜25個、1〜24個、1〜23個、1〜22個、1〜21個、1〜20個、1〜19個、1〜18個、1〜17個、1〜16個、1〜15個、1〜14個、1〜13個、1〜12個、1〜11個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ4-クマロイル-CoA-合成酵素3活性を有するタンパク質が挙げられる。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加の数は、一般的には小さい程好ましい。また、このようなタンパク質としては、例えば配列番号:2のアミノ酸配列と約60%以上、約70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつもとのアミノ酸配列の有する活性を有するタンパク質が挙げられる。上記相同性の数値は一般的に大きい程好ましい。
【0030】
なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、カーリン及びアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 2264-2268, 1990; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J. Mol. Biol. 215: 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメータは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメータは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメータを用いる。
【0031】
4.代謝系産物
4−1.代謝、代謝経路について
上記のように、本発明は、特定の波長領域内の波長成分を含む光を照射することを含む、植物によるフラボノイド類の合成を向上させる方法を提供する。ここで、本明細書において、「代謝」には、同化(合成)および異化(分解)のいずれも含まれる。植物における各種代謝経路を媒介する酵素の働きにより、有用性の高い機能性・薬効性成分が生合成される。植物には数十種に及ぶ代謝経路の存在が予想されており、それぞれの代謝経路は、さらに数十種の代謝酵素によって構成されている。これらの代謝酵素のうち9割以上はすべての植物に共通であり、残りの1割弱の酵素の違いにより植物に固有の成分が蓄積すると考えられる。
【0032】
本発明において関係する代謝経路としては、フラボノイド合成系などのいわゆる機能性成分の合成に関係すると考えられる系が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な系および遺伝子としては、実施例の表2〜4に記載される。
【0033】
4−2.フラボノイド類について
フラボノイド類としては、図3に示されるナリンゲニンカルコン以後の代謝物が挙げられる。例えば、ナリンゲニンカルコン、ナリンゲニン(フラバノン)、ジヒドロカンフェロール、カンフェロール(フラボノール)、ジヒドロケルセリン、ケルセリン(フラボノール)、フラボノールグリコシド、ペラルゴニジン(アントシアニジン)、シアニジンまたはアントシアニン誘導体などが挙げられる。
【0034】
これらフラボノイド類は、抗アレルギー薬(クロモン類)、肝機能向上および癌予防(クルクミン)、抗炎症作用(リンドレイン)もしくは抗酸化作用(アントシアニン)といった薬理作用、またはラズベリー香気成分、ホップ苦味成分もしくはカテキンなどにも利用される。
【0035】
また、茶、リンゴ、ブドウや豆類等の各種植物体に含まれているフラボノイドが、強い抗酸化作用をはじめとする様々な生理効果を有するところから、最近では健康食品素材として注目され、様々な食物に利用されている。フラボノイドの生理機能としては、例えば、赤ワイン中のフラボノイドの一種であるアントシアニジンがLDLコレステロールの酸化を抑制し、心臓病を予防すると考えられている。カカオ豆中のフラボノイドの一種であるケルセチンやカテキン等は、抗酸化作用を示すことが知られており、アルコール性胃粘膜障害に対する予防作用、アレルギー抑制作用(ヒトTリンパ球増殖抑制作用やBリンパ球による抗体産生抑制作用)を有することが公知である。緑茶中のフラボノイドの一種であるカテキン類にも抗酸化作用があり、がんや動脈硬化症の予防作用などについて研究されており、糞便消臭効果や、血圧上昇抑制作用に関する報告も知られている。大豆中のフラボノイドの一種であるイソフラボンについて、動物実験で皮膚がんや肺がん抑制作用、骨粗鬆症の予防効果が報告されている(特開2005-145933)。さらに、大豆由来のイソフラボンは、糖尿病治療における高血糖値改善のため、血圧上昇抑制のため、または脂肪前駆細胞の分化促進のため、などが報告される(特開2003-000211など)。
【0036】
5.本発明のフラボノイド類に係る製造方法
【0037】
本発明により生産されるフラボノイド類またはその代謝物に係る製造方法(「本発明の製造方法」と略記することがある)は、上記した植物体に、上記した方法により光を照射することにより、特定の波長領域内の波長成分を含む光を照射することを含む、植物により合成されるフラボノイド類を向上させ、フラボノイド類の含有量を増加させた植物体を原材料とする。
【0038】
フラボノイド類の抽出は、植物における有効成分の抽出において当業者に公知の一般に用いられる方法によって行うことができる。具体的には、本明細書の実施例において行われる方法が挙げられるが、この方法に限定されない。
【0039】
6.医薬組成物
6−1.本発明に関する医薬組成物およびその形態について
上記のように、本発明は、特定の波長領域内の波長成分を含む光を照射することを含む、植物によるフラボノイド類の合成を向上させる方法を提供する。さらに本発明は、上記の方法により生産されたフラボノイド類を提供する。本発明により高効率に生産されたフラボノイド類は、種々の医薬組成物において利用可能である。本発明の医薬組成物は、生体、すなわち、哺乳動物(例、ヒト、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して、投与することができる。本発明において、当該生体は、上記に列挙された疾患または障害、すなわち、アレルギー、肝障害、癌、腫瘍、潰瘍、微生物などの感染、血小板凝集などを患う生体に投与され得る。
【0040】
本発明に関する医薬組成物は、疾患の症状を軽減すること、疾患の症状の進行を抑制すること、疾患の症状を除去すること、疾患の予後を改善することおよび疾患の再発を予防することなどが含まれる。
【0041】
本発明において、上記の医薬組成物は様々な添加剤を含み得る。この添加剤としては、一般に医薬に使用される、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、矯味矯臭剤、乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、吸収促進剤等を挙げることができ、所望により、これらを適宜組み合わせて使用することもできる。また、必要に応じて、ビタミン類、アミノ酸等の成分を配合してもよい。
【0042】
また、上記医薬組成物の剤形としては、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤等の経口剤;坐剤、軟膏剤、眼軟膏剤、テープ剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤等の外用剤または注射剤を挙げることができる。
【0043】
6−2.本発明に関する医薬組成物のキットについて
本発明に関するキットに含まれる製剤は、前記医薬組成物を含む限り、その剤形は特に限定されない。本発明に関する医薬組成物またはキットを使用する場合には、経口もしくは非経口的に投与することができる。
【0044】
本発明に関するキットにおいて、キットに含まれる製剤は、混合されていてもよいし、あるいは、別個に収納されて一体に包装されていてもよい。また、これらの製剤は、同時に投与されてもよいし、いずれか一方を先に投与してもよい。
【0045】
本発明に関する医薬組成物またはキットにおいて、さらに一以上の他の治療剤を組み合わせてもよい。他の治療剤は、目的とする治療作用を有するか、補助・増強などの有益な効果を示する製剤であれば、特に限定されない。
【0046】
本発明に関する医薬組成物またはキットはさらに、包装容器、取扱説明書、添付文書等を含んでいてもよい。包装容器、取扱説明書、添付文書等には、化合物を併用して用いるための組み合わせを記載することができ、また、別々の物質を投与時に併用する形態または混合物としての形態について、用法、用量などを記載することができる。
【0047】
7.飲食品・栄養補助食品
7−1.本発明に関する飲食品・栄養補助食品の一般的形態について
本発明の方法によって高効率に生産されるフラボノイド類またはこれを含む植物体を、生鮮食料品、各種飲食品、飼料、ペットフード等に利用することができる。また本発明の方法によって生産されるフラボノイド類またはこれを含む植物体を、例えば、果物、野菜、ハーブ、任意のビタミン、ミネラルなど、およびそれらの材料の栄養の偏りを補助する栄養補助食品に利用できる。
【0048】
7−2.本発明に関する飲食品・栄養補助食品の効果について
本発明に関する方法によって生産されるフラボノイド類または植物体は、動物(好ましくは、哺乳動物、より好ましくは霊長類、ペットまたは家畜、最も好ましくはヒトが挙げられる)の健康に寄与し得る。例えば、一実施態様においては、栄養的に不十分な食事を消費するヒトの健康を維持することができ、抗酸化や栄養の状況を改善することができ、ある種の変性疾患状態のリスクの減少と関連しているレベルに対して不十分な食事の結果として血清栄養素や植物化学レベルを補充することができ、正常な老化現象や環境ストレスに曝さらされる結果として起こるフリーラジカル損傷を最小限に抑えることができ、そして/または最適健康、即ち、ホモシステイン、脂質副産物、無機質状態及びグルタチオンペルオキシダーゼを表す特定のバイオマーカー等の状態を改善することができる。
【0049】
7−3.本発明に関する飲食品・栄養補助食品の具体的な形態について
本発明において飲食品とは、植物体そのものの未加工である生鮮食料品などの形態、または加工された溶液、懸濁物、粉末、固体成形物などの経口摂取可能な形態であれば良く特に限定されない。例えば、本発明の方法にしたがって収穫前後に所定の条件の下で光照射を行い、より効率的にフラボノイド類を生産させた植物体は、その植物体の商品価値を大いに向上させ得る。本発明の方法によって生産されるフラボノイド類または植物体を加工した飲食品としては、より具体的には、即席麺、レトルト食品、缶詰、、フリーズドライ食品等の即席食品類、清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料等の飲料類、パン、パスタ、麺等の小麦粉製品、飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ等の菓子類、ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス等の調味料、加工油脂、バター、マーガリン等の油脂類、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類等の乳製品、冷凍食品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品等の水産加工品、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品、農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアル等の農産加工品、栄養食品、流動食、経口・経管栄養剤、ベビーフード、錠剤、カプセル等が例示される。
【0050】
7−3.本発明に関する飲食品・栄養補助食品の製造に関して
本発明に関する方法によって生産されるフラボノイド類または植物体を各種飲食品、飼料、ペットフード等に加工する際、殺菌をともなっても良い。殺菌としては、常圧蒸気殺菌、過熱蒸気殺菌、UHT殺菌、マイクロ波殺菌、レトルト殺菌、ボイル殺菌、ガス殺菌、通電殺菌、放射線殺菌等が挙げられる。
【0051】
本発明に関する方法によって生産されるフラボノイド類を含む組成物または植物体を各種飲食品、飼料、ペットフード等に加工する際、各種栄養成分等を添加することができる。栄養成分等としては、蛋白質、ペプチド、アミノ酸、脂質、界面活性剤、糖類、糖アルコール、多糖類、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン(ニコチン酸)、パントテン酸、葉酸等のビタミン類、リジン、スレオニン、トリプトファン等の必須アミノ酸類や、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅等のミネラル類及び、例えば、α−リノレン酸、EPA、DHA、月見草油、オクタコサノール、カゼインホスホペプチド(CPP)、カゼインカルシウムペプチド(CCP)、食物繊維、オリゴ糖等の人の健康に寄与する物質類、その他の食品や食品添加物として認可されている有用物質の一種又は二種以上が使用できる。
【0052】
本発明に関するフラボノイド類を含む組成物または植物体を消臭食品として利用する際に、整腸や消臭効果の増強の目的で、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖等の難消化性オリゴ糖、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、グアガム酵素分解物、サイリウム種皮、グルコマンナン、寒天、水溶性大豆多糖類、水溶性コーンファイバー等の食物繊維、ビフィズス菌、乳酸菌等の腸内良性菌、緑茶抽出物、烏龍茶抽出物、マッシュルーム抽出物、柿抽出物(柿渋)、リンゴ抽出物、よもぎ抽出物、ニンジンやパセリ等のセリ科植物葉乾燥物、ヒレハリソウ抽出物等から選ばれる一種又は二種以上を添加してもよい。
【0053】
なお、本発明において、詳細な実験操作は、特に述べる場合を除き、モレキュラー・クローニング第3版、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている方法などの公知の方法により、または市販のキットの取扱い説明書に記載の方法により行うことができる。
【実施例】
【0054】
(材料と方法)
実験植物:
当研究室で継代されているモデル植物シロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana) の野生系統Columbia (Col-0) を用いた。
【0055】
生育条件:
人工気象機 (Biotron NC220, NKsystem) を用い,22℃,湿度40-60%,MS培地 (後述) において、白色蛍光灯 (100 μmol m-2 s-1) 下で生育させた植物を「対照」とし、以下の条件で3週間生育後、分析に供した。
光質 青色LED (470 nm),赤色LED (660 nm),青色LED+赤色LED,青色LED (パルス光)
照射時間/光量子束密度 2週間 (白色蛍光灯で1週間生育後2週間照射)/110 μmol m-2 s-1,2日 (白色蛍光灯で19日間生育後2日間照射)/240 μmol m-2 s-1
【0056】
種子の滅菌・播種:
1.5-mlチューブに種子を分注し、70% エタノール 1 mlを加え、1分間振盪した。遠心し、上清を捨て、滅菌溶液 (0.25% 次亜塩素酸,0.1% Tween 20) 1 mlを加えて、10-15分振盪した。クリーンベンチ内で軽く遠心し、上清を捨て、純水1 mlを加えて洗浄した。洗浄を5回繰り返し、純水1 mlを加えた状態でアルミホイルに包み、4℃で約1週間春化処理を行った。再び、クリーンベンチ内で軽く遠心し、上清を捨て、別にオートクレーブ処理(121℃,20分)した0.3% アガロース溶液1 mlに懸濁した。ピペットのチップに取りシャーレに播種した。
【0057】
無菌培地の調製:
【表1−1】

培地溶液を調製後オートクレーブ処理(121℃ 20分)し、約50℃程度まで冷やしてからシャーレに分注した。
【表1−2】

調製後、4℃で遮光保存した。
【0058】
マイクロアレイ:
シロイヌナズナ葉50 mgよりRNeasy Plant Mini Kit (Qiagen) を用い、標準プロトコルに従って全 RNAを回収した。全RNA 15 μgを初期量とし、One-Cycle cDNA Synthesis Kit (Affymetrix) を用いてcDNA合成を行った。GeneChip Sample Cleanup Module (Affymetrix) を用いてcDNAを精製後、GeneChip IVT Labeling Kit (Affymetrix) を用いてビオチン標識されたcRNAを合成した。GeneChip Sample Cleanup Module (Affymetrix) を用いてcRNAを精製した。cDNA合成からの作業手順はGene Chip Expression Analysis Technical Manualに従って行った。引き続き、GeneChip Arabidpsis ATH1 Genome Array (Affymetrix) に対し標準プロトコルに従って16時間ハイブリダイズを行った。Fluidics Station 450 (Affymetrix) を用いて49 Format用のプログラムにより自動で洗浄と染色を行い、Affymetrix GeneChip Scanner 3000 (Affymetrix) によりデータの取り込みを行った。シグナルの数値化および補正にはGeneChip Operating Software (Affymetrix) を用い、その後の解析にはExcel (Microsoft) を使用した。
【0059】
HPLC/クーロアレイ電気化学検出器:
生試料100 mgを評量し、液体窒素を用いて凍結させ、乳鉢ですり潰した。50%MeOH (0.5%AcOHを含む) 2 ml加え、攪拌後、0.22 μmのメンブレンフィルターで濾過した。HPLCの条件は以下の通りである。
カラム CAPCELL PAK C18 ACR (Shiseido) , 5 μm, 4.6 mm×250 mm
溶媒A 100 mM リン酸:MeOH = 99 : 1
溶媒B 200 mMリン酸:MeCN:MeOH = 30 : 60 : 10
【表1−3】

流速 1 ml/min
注入 50 μl
オートサンプラー温度 4℃
オーブン温度 40℃
加電圧 (mV) 0, +100, +200, +300, +400, +500, +600, +700
測定直前にサンプルを解凍し、オートサンプラーにセットした。ブランクとして、溶媒Aを用いた。
【0060】
HPLC/フォト・ダイオード・アレイ (PDA):
粉砕によるロスを防ぐために、凍結した試料を2 mlチューブ内で粉砕し、そこへ抽出液を500 μl加えた。さらに超音波破砕後、15,000 rpmで10分間遠心した。上清を0.22 μmフィルターに通し、HPLC試料とした。抽出液は、MeOH:AcOH:H2O = 9:1:10の割合で混ぜ、内部標準として、フラボンを最終濃度50 μMになるように加えたものを使用した。HPLCの条件は以下の通りである。
カラム CAPCELL PAK C18 ACR (SHISEIDO) , 5 μm, 4.6 mm×250 mm
溶媒A MeCN:H2O:TFA = 10:90:0.1
溶媒B MeCN:H2O:TFA = 90:10:0.1
【表1−4】

流速 0.5 ml/min
注入 50 μl
可視吸光 250〜650 nm
ケンフェロールの標品として、商品名:「Kaempferol」(製造業者:SSX(EXTRASYNTHESE S.A.)、商品コード:1124S)を使用した。
【0061】
どのようなLED照射でどのような機能性・薬効成分含量が増大するかの見通しをつけるため、遺伝子発現の包括的解析 (マイクロアレイ) を行った。シロイヌナズナを実験材料に用いることにより、マイクロアレイは威力を発揮する。使用したArabidopsis ATH1 Genome Array (Affymetrix) は、約24,000種の遺伝子配列に対応する22,500種以上のプローブセットが1枚のアレイに含まれており、データベースで入手できる遺伝子としては、26,200種に対応する。光源としては、青色LED (470 nm),赤色LED (660 nm),青色LED+赤色LED,青色LED (パルス光) を用い、2週間あるいは2日間照射し、白色蛍光灯照射「対照」植物と比較した。
【0062】
(結果)
「青色2週」では237種の遺伝子、「青色2日」では203種の遺伝子について、「対照」と比較して2倍以上発現が増大していることが明らかになった。また、それら遺伝子はKyoto Encyclopedia of Genes and Genomes (KEGG) により、「青色2週」では29種遺伝子 (表1)、「青色2日」では26種の遺伝子 (表2) がシロイヌナズナにおける代謝系関連遺伝子として分類された。具体的には、「青色2週」の29種の遺伝子は34種の代謝系において23種の酵素番号に分類され、「青色2日」の26種の遺伝子は29種の代謝系において22種の酵素番号に分類された。分類された代謝系にはフラボノイド合成系、スチルベン・クマリン・リグニン合成系、フェニルアラニン・チロシン・トリプトファン合成系といった、いわゆる機能性成分の合成につながると考えられる系や、アスコルビン酸代謝系、アルカロイド合成系といったビタミン類の代謝・合成に関連すると考えられる系が含まれていた (表2,表3の「代謝系」カラム)。取り分け、フラボノイド合成経路に介在する酵素の遺伝子の発現増大が顕著であった。さらに、KEGG未収録分から、フラボノイド合成系の3種の酵素の遺伝子発現が「青色2日」で2倍以上に増大していた (表4)。
【表2】

「青色2週」のシロイヌナズナで「対照」に対し2倍以上遺伝子発現の上昇していたタンパク質のうち代謝系に関連すると予測された酵素。左から代謝系名、シロイヌナズナ遺伝子番号、酵素番号、酵素名を示す。各代謝系への分類はKEGGデータベースに従う。
【表3】

「青色2日」のシロイヌナズナで「対照」に対し2倍以上遺伝子発現の上昇していたタンパク質のうち代謝系に関連すると予測された酵素。左から代謝系名、シロイヌナズナ遺伝子番号、酵素番号、酵素名を示す。各代謝系への分類はKEGGデータベースに従う。
【表4】

【0063】
さらに、この研究において、シロイヌナズナにおける(5)4-クマロイル-CoA-シンターゼ3遺伝子(遺伝子番号At1g65060)(配列番号:1)の発現量を、本発明の条件下における青色光の照射によって効率的に増大させ得ることを初めて見出した(表3中の「Stilben,Coumarine and Lignin Biosynthesis」の欄を参照のこと)。この酵素は、図3に示されるように、p-クマロイルCoAの生成量を向上させて、効率的なフラボノイド類の生産に寄与することが期待される。したがって、このシロイヌナズナと同様の、図3に示される代謝機構を有する植物に対しても、本発明に示される照射条件を使用して効率的にフラボノイド合成系に関わる酵素を発現でき、効率的なフラボノイド類の生産に役立てることができる。
【0064】
「対照」に対し、「赤色2週」および「赤色2日」では、それぞれ、17種および38種の代謝系の酵素の遺伝子発現が2倍以上上昇していた。つぎに、「『青色+赤色』2週間」および「『青色+赤色』2日」の場合は、それぞれ、32種および39種の代謝系の酵素の遺伝子発現が2倍以上増加していた。青色LED (パルス光) では、「青色パルス2週間」および「青色パルス2日」において、38種の代謝系酵素の遺伝子の中で、それぞれ18種および4種の遺伝子発現が2倍以上上昇していた。
【0065】
青色LED照射において発現が2倍以上増大している遺伝子をMap Man Bin (MMB:アミノ酸配列からタンパク質の機能を予測分類するデータベース) により機能別に分類した。RNA transcriptionに分類されたものは「青色2日」で13種、「青色2週」で43種存在していた。これらはフラボノイド関連遺伝子や他の青光依存した有効成分の代謝系遺伝子の転写調節に重要なタンパク質である。また、両者とも翻訳後修飾に関与するタンパク質やタンパク質分解遺伝子が上昇していた。これらもまた同様フラボノイド関連遺伝子や他の青光依存した有効成分の代謝系遺伝子の活性制御に重要なタンパク質である。さらに、細胞壁、脂質合成、植物ホルモン性合成、ストレス、レドックスに対する防御機構に関与する遺伝子発現も高輝度青光LEDで上昇しており、本実験で使用した光によって植物の免疫機能が増強される可能性が示唆された。これらの結果、照射された植物はよりいっそう商品価値を高める機能を有することができる。
【0066】
クーロアレイ検出器によるフラボノイド類の網羅的解析の結果、「青色2週」ではa〜dのピークを新たに検出し、「青色2日」で図1中のピーク6などの増大が明らかになった (図1)。また、シロイヌナズナと同じくアブラナ科植物であるブロッコリーを用い、そのスプラウトに青色LEDを2日間照射したところ、フラボノイド類の中でも特に高い抗酸化活性を有するケンフェロール (溶出ピーク約30分) が増大していた (図2)。上記のとおり、ケンフェロールの標品としては、商品名:「Kaempferol」(製造業者:SSX(EXTRASYNTHESE S.A.)、商品コード:1124S)を使用した。
【0067】
発現が増大した遺伝子の数と増大の程度において、今回の条件下では、青色LEDが最も良好な結果を与えた。ただし、赤色LEDでは、青色LED照射では効果が認められなかったいくつかの遺伝子が含まれていたため、別の有用成分の生成量の増加をもたらす可能性がある。本実験における青色LED+赤色LEDの照射の結果は、それぞれの単独照射の結果を合算した結果の遺伝子発現を示した。青色LED (パルス光) は、発現が増大した遺伝子の数と増大の程度において、再下位の成績であった。
【0068】
(考察)
高輝度青色LEDの連続照射により、一定期間に合成される産物の量的増加が期待できる。具体的には、フラボノールやフラボンといったフラボノイド類の合成系 (図3:合成経路については、Besseau S, Hoffmann L, et al.: Plant Cell 19, 148-162 (2007)を参照した) に関する酵素の量的増加、これによるフラボノイド類の生成量の増加が、本発明のの光条件による生育で期待できる。図2に示されるように、実際に本発明の光照射条件下によって、ブロッコリーにおいてケンフェロールの生成量の増加が可能であった。
【0069】
高輝度青色LEDの照射によってシロイヌナズナではさまざまな遺伝子の発現が誘導されることが分かった。これらには転写因子だけでなく種々の代謝系のタンパク質および防御遺伝子が含まれており、他の有用植物に応用した際にはその植物特異的な機能性成分が上昇することが期待できる。分析された成分として、ケンフェロールは、強い抗酸化活性を有し、生活習慣病に対し予防効果がある。また、抗アレルギーや血圧上昇抑制作用も報告されており、商品化への意義が高い。
【0070】
本明細書および特許請求の範囲に記載される本発明の本質および範囲から逸脱することなしに、特定の実施形態に示されるように、多くの改変および/または修飾が本発明になされ得ることが、当業者に理解される。従って、本発明の実施形態は、全ての点において単なる例示であって限定ではないとみなされるべきである。
【0071】
本明細書中に示される全ての刊行物は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明にしたがって特定の波長領域内の波長成分を含む光を照射することによるフラボノイド類の合成を向上させる方法によって、フラボノイド類およびそれらの代謝物の生産能を向上させることが可能である。本明細書において、フラボノイド類としては、例えばケンフェロールが挙げられる。したがって、本発明は、フラボノイド類またはそれらの代謝物の効率的な製造、これらを利用した医薬品または飲食品の製造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、逆相HPLC/ESA社クーロアレイ検出器 (マルチチャンネル電気化学検出)を用いた青色 LED によるシロイヌナズナフラボノイド類の網羅的解析 (メダボローム解析)を示す。
【図2】図2は、逆相HPLC/フォト・ダイオード・アレイ検出 (360 nm)によって測定した、青色 LED 照射によるフラボノイド類の変動 (ブロッコリー)を示す。ケンフェロールが30分のピークに対応する。
【図3】図3は、青色 LED によるフラボノイド生合成経路遺伝子の発現促進を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0074】
(配列番号:1)シロイヌナズナにおける4-クマロイル-CoA-シンターゼ3遺伝子(遺伝子番号At1g65060)
(配列番号:2)配列番号:1のアミノ酸配列
(配列番号:3)シロイヌナズナにおけるカルコン合成酵素遺伝子(遺伝子番号At5g13930)
(配列番号:4)配列番号:1のアミノ酸配列
(配列番号:5)シロイヌナズナにおけるフラバノン3-ヒドロキシラーゼ遺伝子(遺伝子番号A3g51240)
(配列番号:6)配列番号:3のアミノ酸配列
(配列番号:7)シロイヌナズナにおけるジヒドロフラバノール4-レダクターゼ遺伝子(遺伝子番号At5g42800)
(配列番号:8)配列番号:5のアミノ酸配列
(配列番号:9)シロイヌナズナにおけるUDP-グルコシルトランスフェラーゼファミリーの遺伝子(遺伝子番号At1g30530)
(配列番号:10)配列番号:7のアミノ酸配列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
435nm〜780nmの波長領域内の波長成分を含む光を照射することを含む、植物によるフラボノイド類の合成を向上させる方法。
【請求項2】
435nm〜780nmの波長領域内の波長成分の光量子束密度が、50μmol m-2s-1〜300μmol m-2s-1の範囲内である、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
光が、450nm〜490nmまたは610nm〜780nmの波長領域内の波長成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
450nm〜490nmまたは610nm〜780nmの波長領域内の波長成分の光量子束密度が、100μmol m-2s-1〜250μmol m-2s-1の範囲内である、請求項4に記載の方法。
【請求項5】
光を2日〜2週間照射する、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
光を2日間照射する、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記植物が双子葉植物または単子葉植物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記植物がシロイヌナズナ、ナタネ、キャベツ、ハクサイ、ダイコン、カリフラワー、ブロッコリー、レッドキャベツ、マスタード、ルッコラまたはクレソである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記植物がシロイヌナズナである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フラボノイド類がケンフェロール、ケルセリンまたはフラボノールグリコシドである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記フラボノイド類がケンフェロールである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(1) カルコン合成酵素遺伝子、(2) フラバノン3-ヒドロキシラーゼ遺伝子、(3) ジヒドロフラバノール4-レダクターゼ遺伝子または(4) UDP-グルコシルトランスフェラーゼファミリーの遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の発現を促進する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
(5) 4-クマロイル-CoA-シンターゼ3遺伝子の発現促進をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(1) カルコン合成酵素遺伝子、(2) フラバノン3-ヒドロキシラーゼ遺伝子、(3) ジヒドロフラバノール4-レダクターゼ遺伝子、(4) UDP-グルコシルトランスフェラーゼファミリーの遺伝子、および/または(5) 4-クマロイル-CoA-シンターゼ3遺伝子の発現が、対照と比較して2倍以上の発現量を示す、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
(1) カルコン合成酵素遺伝子が、以下(1a)〜(1f)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含有する、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法:
(1a)配列番号:3の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(1b)配列番号:4のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(1c)配列番号:4のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつカルコン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(1d)配列番号:4のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつカルコン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(1e)配列番号:3の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつカルコン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
(1f)配列番号:4のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつカルコン合成酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項16】
(2) フラバノン3-ヒドロキシラーゼ遺伝子が、以下(2a)〜(2f)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含有する、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法:
(2a)配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(2b)配列番号:6のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(2c)配列番号:6のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつフラバノン3-ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(2d)配列番号:6のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつフラバノン3-ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(2e)配列番号:5の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフラバノン3-ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
(2f)配列番号:6のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフラバノン3-ヒドロキシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項17】
(3) ジヒドロフラバノール4-レダクターゼ遺伝子が、以下(3a)〜(3f)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含有する、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法:
(3a)配列番号:7の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(3b)配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(3c)配列番号:8のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつジヒドロフラバノール4-レダクターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(3d)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつジヒドロフラバノール4-レダクターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(3e)配列番号:7の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつジヒドロフラバノール4-レダクターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
(3f)配列番号:8のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつジヒドロフラバノール4-レダクターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項18】
(4) UDP-グルコシルトランスフェラーゼファミリーの遺伝子が、以下(4a)〜(4f)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含有する、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法:
(4a)配列番号:9の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(4b)配列番号:10のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(4c)配列番号:10のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつUDP-グルコシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(4d)配列番号:10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつUDP-グルコシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(4e)配列番号:9の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP-グルコシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
(4f)配列番号:10のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP-グルコシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項19】
(5) 4-クマロイル-CoA-シンターゼ3遺伝子が、以下(5a)〜(5f)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含有する、請求項13または14に記載の方法:
(5a)配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(5b)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(5c)配列番号:2のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつ4-クマロイル-CoA-シンターゼ3活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(5d)配列番号:2のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ4-クマロイル-CoA-シンターゼ3活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(5e)配列番号:1の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ4-クマロイル-CoA-シンターゼ3活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
(5f)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ4-クマロイル-CoA-シンターゼ3を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法によりフラボノイド類を製造する方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法により生産される、フラボノイド類。
【請求項22】
前記フラボノイド類がケンフェロールである、請求項21に記載のフラボノイド類。
【請求項23】
請求項21に記載のフラボノイド類を含む、医薬組成物。
【請求項24】
請求項21に記載のフラボノイド類を含む、飲食物または栄養補助食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−240193(P2009−240193A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89111(P2008−89111)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(502050707)
【Fターム(参考)】