説明

光照射装置、光照射方法、多層ホログラム記録媒体

【課題】記録層を複数有する多層ホログラム記録媒体について、第1記録層への光照射時における第2記録層への露光が防止されるようにして、多層ホログラム記録を行う場合に特有のクロストーク問題やキュア問題の解決を図る。
【解決手段】少なくとも第1記録層に対して設けられる第1反射膜を、偏光選択反射膜で構成する。そして上記第1記録層を対象とした光照射を行う場合は、上記第1反射膜にて選択反射される偏光状態による光を照射し、上記第2記録層を対象とした光照射を行う場合は上記第1反射膜にて選択透過される偏光状態による光を照射する。これにより、第1記録層を対象とした光照射時に第2記録層に対する露光が行われてしまうことの防止が図られ、結果、クロストーク問題やキュア問題(一方の記録層のキュア時に他方の記録層もキュアされてしまう問題)の解決が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラムの記録が行われる記録層を複数有する多層ホログラム記録媒体について記録再生を行う場合に特に好適な光照射装置とその方法とに関する。また、上記多層ホログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2007−200385号公報
【特許文献2】特開平11−126335号公報
【0003】
例えば上記特許文献1にあるように、信号光と参照光との干渉縞によりホログラムを形成してデータ記録を行うホログラム記録再生方式が知られている。このホログラム記録再生方式において、記録時には、記録データに応じた空間光変調(例えば光強度変調)を与えた信号光と、この信号光とは別の参照光とをホログラム記録媒体に対して照射し、それらの干渉縞(ホログラム)を記録媒体に形成することでデータ記録を行う。
また再生時には、記録媒体に対して参照光を照射する。このように参照光が照射されることで、上記のようにして形成された干渉縞に応じた回折光が得られる。すなわち、これによって記録データに応じた再生像(再生信号光)が得られる。このようにして得られた再生像を例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどのイメージセンサで検出することで、記録データの再生を行うようにされる。
【0004】
図22、図23は、ホログラム記録再生方式について説明するための図として、図22は記録手法、図23は再生手法について模式的に示している。
これら図22、図23は、信号光と参照光とを同一光軸上に配置して記録を行ういわゆるコアキシャル方式が採用される場合の記録/再生手法を示している。
また、これらの図では、反射膜を備える反射型のホログラム記録媒体100が用いられる場合を例示している。
【0005】
先ず、これら図22、図23に示されるようにして、ホログラム記録再生方式においては、記録時において信号光と参照光、再生時において参照光を生成するために、SLM(空間光変調器)101が設けられる。このSLM101としては、入射光に対し画素単位で空間光強度変調(光強度変調、或いは単に強度変調とも称する)を行う強度変調器を備える。この強度変調器としては、例えば液晶パネルなどで構成することができる。
【0006】
先ず、図22に示す記録時には、SLM101の強度変調により、記録データに応じた強度パターンを与えた信号光と、予め定められた所定の強度パターンを与えた参照光とを生成する。コアキシャル方式では、図のように信号光と参照光とが同一光軸上に配置されるようにして入射光に対する空間光変調が行われる。このとき、図のように信号光は内側、参照光はその外側に配置するのが一般的とされている。
【0007】
SLM101にて生成された信号光・参照光は、対物レンズ102を介してホログラム記録媒体100に照射される。これによりホログラム記録媒体100には、上記信号光と上記参照光との干渉縞により、記録データを反映したホログラムが形成される。つまり、このホログラムの形成によりデータの記録が行われる。
【0008】
一方、再生時においては、図23(a)に示されるようにして、SLM101にて参照光を生成する(このとき参照光の強度パターンは記録時と同じである)。そして、この参照光を対物レンズ102を介してホログラム記録媒体100に照射する。
【0009】
このように参照光がホログラム記録媒体100に照射されることに応じては、図23(b)に示すようにして、ホログラム記録媒体100に形成されたホログラムに応じた回折光が得られ、これによって記録されたデータについての再生像が得られる。この場合、再生像はホログラム記録媒体100からの反射光として、図示するように対物レンズ100を介してイメージセンサ103に対して導かれる。
【0010】
イメージセンサ103は、上記のようにして導かれた再生像を画素単位で受光し、画素ごとに受光光量に応じた電気信号を得ることで、上記再生像についての検出画像を得る。このようにイメージセンサ103にて検出された画像信号が、記録されたデータの読み出し信号となる。
【0011】
なお、図22、図23の説明からも理解されるように、ホログラム記録再生方式では、記録データを信号光の単位で記録/再生するようにされている。つまり、ホログラム記録再生方式では、信号光と参照光との1度の干渉により形成される1枚のホログラム(ホログラムページと呼ばれる)が、記録/再生の最小単位とされるものである。
【0012】
ここで、ホログラム記録再生方式は、現状でも既に高い記録密度を達成しているが、将来的にはさらなる密度向上が求められることになると予測される。
記録密度向上のための一つの手法は、ホログラムの厚みを大きくすることである。一般的に3次元記録であるホログラム記録では、ホログラムが記録される干渉領域がメディア厚さ方向に大きくなるほど記録密度を高められる。しかし、体積ホログラムは厚くなるほどブラッグ選択性(ブラッグ回折の条件)がシャープになるために、記録再生光の角度・波長のブレやメディアの温度変化に対するトレランスが低くなってしまうという問題がある。
【0013】
高記録密度化を達成するためのもう一つのアプローチは対物レンズのNA(開口数)を上げることである。しかし、NAを上げると位置選択性が向上する反面、位置合わせ精度が厳しくなるという問題がある。また、特にコアキシャル方式では、対物レンズのNAを上げるにつれて実際にメディア上で記録光が干渉する領域が小さくなる傾向となる。そのため、単にメディアを厚くしても実際にメディアが消費される実効厚みは小さく、むしろデータが記録されていない無駄な露光部分がノイズの原因となる。
【0014】
この問題を解決するための手法として、体積ホログラムをいくつかの層に分割して記録する、いわゆる多層記録を挙げることができる(例えば上記特許文献2を参照)。多層記録を行えば、1つの記録層に形成されるホログラムの厚さは小さくすることができるため、ブラッグ選択性が広がり、さらに実効的な干渉領域も増加させることができることとなって、記録密度を高めることができる。
【0015】
メディアを多層構成にすること自体は簡単である。しかしながら、ホログラムの多層記録の実現のためには、以下の問題を解決しなければならない。
【0016】
<クロストーク問題>
例えば、2層構造のホログラム記録媒体を考えてみる。この場合、1層目を記録している間に、記録光の透過光が2層目にも露光されるため、層間の距離が近接していると、1層目と同じホログラム(データ)が2層目に記録されてしまう。従って、1層目の記録が終了してから2層目に異なるホログラムを記録した場合、既に1層目の記録時に書かれてしまったホログラムも再生されることになり、これがクロストークの原因となる。
【0017】
このようなクロストークの防止を図るためには、例えば信号光と参照光の空間的な重なりが無くなるように、各記録層間に十分な距離をとることが考えられる。しかしながら、このように記録層間に距離をとる手法は大きなギャップ層を必要とするため、メディアの厚みが増加し、大きな光学収差の発生を助長することになる。また、このように層間に距離をとった場合にも1層目を記録している最中に他の記録層が露光されることには変わりなく、メディアの屈折率変化が無駄に消費され、高密度記録の妨げとなる。
【0018】
<キュア問題>
ホログラムの記録層には、例えばフォトポリマーなど、光照射に応じてモノマーがポリマー化して屈折率変化が生じ、照射光の強度分布に応じたホログラムが形成される材料が選定されるが、そのような記録材料にホログラムを記録後、直ちに再生のための光照射を行うと、残存するモノマーの反応による不要な屈折率変化分布(ノイズホログラム)が形成され、ホログラムの再生品質が低下してしまう。このようなノイズホログラムの防止を図るために、ホログラム記録再生方式では、ホログラムの記録後、記録材料が感度を持つ波長帯域の光を一様露光する、いわゆるポストキュアと呼ばれる最終露光処理(記録したホログラムの定着処理)を行う。つまりこのポストキュア処理により、記録材料の反応を終了させ、その後の再生露光によって生じるノイズホログラムの形成を防ぐものである。
このようなキュア処理のための光源には、例えばLED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)などが用いられる。
【0019】
多層メディアにおいても、1層目を記録後にポストキュアをかけずに2層目の記録を始めると、必然的に1層目にノイズが加わり、再生データページのエラーレートが上昇するため、記録密度を高めることができなくなる。
このため、1層目の記録後、2層目の記録に移る際に、1層目のポストキュア処理を行うことが考えられるが、このように1層目にポストキュア処理を行うとすると、その透過光により2層目の記録層も長時間感光し、当該2層目の記録材料の屈折率変化量の大部分が消費されてしまい、結果として2層目で実現できる記録密度の低下を招くことになる。
【0020】
また、記録材料の種類によっては、記録の前段階で記録材料を記録可能な状態に励起するための前露光処理(いわゆるプリキュア処理)が必要となるものもある。このようなプリキュアを行う場合としても、1層目のプリキュア時に2層目の記録層が感光してしまい、上述のポストキュアの場合と同様の問題が生じることとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
以上のようにして、従来のホログラム記録再生方式では、記録層を多層化した場合に記録再生を適正に行うことが非常に困難とされている。つまり、従来のホログラム記録再生方式では、記録層の多層化により記録密度の向上を図る手法を採るということが、現実的に不可能となっているものであり、本発明はその解決を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題の解決のために、本発明では光照射装置を以下のように構成することとした。
つまり、ホログラムの記録が行われる記録層として第1の記録層と上記第1の記録層の下層側に形成された第2の記録層とを有し、且つ上記第1の記録層下に形成された第1の反射膜と、上記第2の記録層下に形成された第2の反射膜とを有すると共に、少なくとも上記第1の反射膜が、入射光の偏光状態に応じて選択的に光を反射/透過する偏光選択反射膜で構成されている多層ホログラム記録媒体に対して、光照射を行うための光源を備える。
また、上記光源より発せられた光が入射する位置に設けられ、駆動信号に応じて入射光の偏光状態を変化させることが可能に構成された偏光状態制御部を備える。
そして、上記多層ホログラム記録媒体における上記第1の記録層を対象とした光照射を行う場合には、上記偏光状態制御部を介した光の偏光状態が上記第1の反射膜にて選択反射される偏光状態となるように上記偏光状態制御部を駆動制御し、上記第2の記録層を対象とした光照射を行う場合には、上記偏光状態制御部を介した光の偏光状態が上記第1の反射膜にて選択透過される偏光状態となるように上記偏光状態制御部を駆動制御する駆動制御部を備えるようにした。
【0023】
また、本発明では多層ホログラム記録媒体を以下のように構成することとした。
すなわち、本発明の多層ホログラム記録媒体は、ホログラムの記録が行われる記録層として第1の記録層と上記第1の記録層の下層側に形成された第2の記録層とを有し、且つ上記第1の記録層下に形成された第1の反射膜と、上記第2の記録層下に形成された第2の反射膜とを有すると共に、
少なくとも上記第1の反射膜が、入射光の偏光状態に応じて選択的に光を反射/透過する偏光選択反射膜で構成されているものである。
【0024】
上記のようにして本発明の多層ホログラム記録媒体は、少なくとも第1の記録層下に形成された第1の反射膜が、偏光選択反射膜で構成されている。そして、本発明の光照射装置(光照射方法)は、多層ホログラム記録媒体における第1の記録層を対象とした光照射を行う場合は上記第1の反射膜にて選択反射される偏光状態による光を照射し、上記第2の記録層を対象とした光照射を行う場合には、上記第1の反射膜にて選択透過される偏光状態による光を照射するものとしている。
このようにして第1の記録層下に形成された第1の反射膜が偏光選択反射膜で構成されるようにした上で、第1の記録層を対象とした光照射時に、上記第1の反射膜にて反射される偏光状態による光を照射するものとすれば、当該第1の記録層を対象とした光照射時には、照射光を上記第1の反射膜にて反射させる(つまり第2の記録層には到達させない)ようにできる。また第2の記録層を対象とした光照射時に上記第1の反射膜を透過する偏光状態の光を照射するものとすれば、当該第2の記録層を対象とした光照射時には、照射光が適正に第2の記録層に到達されるようにできる。
このようにして本発明によれば、第2の記録層を対象とした光照射時には照射光が適正に第2の記録層に到達するように図られた上で、第1の記録層を対象とした記録時においては、照射光が第2の記録層に到達してしまうこと、すなわち第2の記録層に対する露光が行われてしまうことの防止が図られる。つまり、第1の記録層の記録時における第2の記録層へのホログラム(データ)の記録防止が図られる。この結果、先に述べたクロストーク問題の解決が図られる。
また、キュア処理時においても、第1の記録層を対象としたキュア処理時における第2の記録層への露光防止が図られるので、先に述べたキュア問題の解決も図られる。
【発明の効果】
【0025】
このようにして本発明によれば、ホログラム記録再生方式において記録層を多層化して記録再生を行う場合に生じていたクロストーク問題とキュア問題の解決を図ることができる。つまりこの結果、ホログラム記録再生方式において記録層を多層化して記録密度の向上を図る手法を実現化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行う。

<1.第1の実施の形態>
[1−1.多層ホログラム記録媒体の構造]
[1−2.光照射装置の構成]
[1−3.記録/再生時の光照射]
[1−4.キュア処理時の光照射]
[1−5.第1の実施の形態のまとめ]
[1−6.第1の実施の形態の変形例]
<2.第2の実施の形態>
[2−1.多層ホログラム記録媒体の構造]
[2−2.光照射装置の構成]
[2−3.記録/再生時の光照射]
[2−4.キュア処理時の光照射]
[2−5.第2の実施の形態のまとめ]
<3.変形例>
【0027】
<1.第1の実施の形態>
[1−1.多層ホログラム記録媒体の構造]

図1は、本発明の第1の実施の形態としての多層ホログラム記録媒体HM1の断面構造を示している。
この図1に示されるように、第1の実施の形態の多層ホログラム記録媒体HM1には、上層側から下層側にかけて順に反射防止膜AR、カバー層CV、第1記録層L1、第1反射膜SR1、第2記録層L2、第2反射膜SR2、基板PLが同順で形成されている。
なお確認のために述べておくと、ここで言う「上層」「下層」は、記録/再生のための光が入射される面を上面、この上面とは逆側の面を下面として、上記上面側を上層、上記下面側を下層とするものである。
【0028】
上記反射防止膜ARは、AR(Anti Refrection)コーティングが施されることで形成され、不要な光の反射を防止する機能を有する。また、上記カバー層CVは、例えばプラスチック基板やガラス板などで構成され、第1記録層L1の保護のために設けられている。
【0029】
第1記録層L1、及びその下層側において形成された第2記録層L2は、その材料として例えばフォトポリマーなど、光照射に応じてモノマーがポリマー化し屈折率変化が生じて、照射光の強度分布に応じたホログラムが形成される記録材料が選定される。
【0030】
上記第1記録層L1の下層に形成された第1反射膜SR1、及び上記第2記録層L2の下層に成された第2反射膜SR2は、それぞれ符号の添え字(1又は2)が一致する記録層Lに記録されたホログラムの再生光を反射光として戻すために設けられる。この機能が果たされるべく、第1反射膜SR1は、少なくとも第1記録層L1より下層で且つ第2記録層L2より上層となる位置に設けられればよく、また第2反射膜SR2は、少なくとも上記第2記録層L2より下層で且つ最下層の基板PLより上層となる位置に設けられればよい。
本実施の形態の場合、これら第1反射膜SR1及び第2反射膜SR2は、入射光の偏光状態に応じて上記入射光を選択的に反射/透過する偏光選択反射膜が用いられる。具体的に、第1の実施の形態のホログラム記録媒体HM1の場合、これら第1反射膜SR1及び第2反射膜SR2としては、直線偏光の偏光方向に応じて選択的な反射/透過を行う直線偏光選択反射膜が用いられる。
【0031】
さらに、本実施の形態では、これら第1反射膜SR1、第2反射膜SR2としての直線偏光選択反射膜として、偏光状態に応じた選択的な反射/透過特性がそれぞれ逆特性となるものを用いる。
図示されるように本実施の形態の場合、上記第1反射膜SR1には、P偏光を選択反射(つまりS偏光を選択透過)する特性による直線偏光選択反射膜を用い、上記第2反射膜SR2には、S偏光を選択反射(つまりP偏光を選択透過)する特性による直線偏光選択反射膜を用いるものとしている。
【0032】
ここで、上記のように所定の偏光方向による直線偏光を選択的に反射/透過する直線偏光選択反射膜としては、例えばフォトニック結晶により実現することができる。或いは、複数の金属線を所定ピッチで配列させたワイヤーグリッドと呼ばれる構造体で実現することもできる。
このような直線偏光選択反射膜は、その光学基準軸の方向(ワイヤーグリッドの場合は上記金属線の形成方向:金属線の伸びる方向)と一致する偏光方向の直線偏光を選択反射し、上記光学基準軸の方向と直交する偏光方向の直線偏光を選択透過する性質を有する。
上述のようにして第1反射膜SR1でP偏光を選択反射させ、第2反射膜SR2でS偏光を選択反射させるために、多層ホログラム記録媒体HM1においては、第1反射膜SR1として用いる直線偏光選択反射膜の光学基準軸と第2反射膜SR2として用いる直線偏光選択反射膜の光学基準軸とがそれぞれ直交する状態となるように、第1反射膜SR1と第2反射膜SR2とが形成されている。
【0033】
また、図1において、上記基板PLは、例えばポリカーボネート又はガラスなどで構成された透明基板である。
【0034】
なお、この図1に示した多層ホログラム記録媒体HM1の構造はあくまで一例に過ぎず、これに限定されるべきものではない。例えば、特に直線偏光選択反射膜として上記フォトニック結晶を用いる場合には、第1記録層L1と第1反射膜SR1との間、及び第2記録層L2と第2反射膜SR2との間の各層間で不要な反応(化学反応)が起こらないように、それぞれの層間に対し数μm〜数10μm程度の無機材料によるギャップ層を設けるようにすることもできる。
【0035】
上記のようにして本実施の形態の多層ホログラム記録媒体HM1は、第1記録層L1に対して設けられる第1反射膜SR1として偏光選択反射膜を用いるものとしている。具体的には、直線偏光の偏光方向に応じて入射光を選択的に反射/透過する直線偏光選択反射膜を用いている。
このような多層ホログラム記録媒体HM1によれば、第1記録層L1を対象とした光照射時に第1反射膜SR1にて反射される直線偏光(この場合はP偏光)を照射することで、照射光が上記第1反射膜SR1を反射し、第2記録層L2には到達しないようにできる。また第2記録層L2を対象とした光照射時には上記第1反射膜SR1を透過する直線偏光(この場合はS偏光)を照射することで、照射光を適正に第2記録層L2に到達させることができる。
このようにして本実施の形態の多層ホログラム記録媒体HM1によれば、第2記録層L2を対象とした光照射時には照射光が適正に第2記録層L2に到達するように図られた上で、第1記録層L1を対象とした記録時においては、照射光が第2記録層L2に到達してしまうことの防止が図られる。すなわち第2記録層L2に対する露光が行われてしまうことの防止が図られる。
このことからも理解されるように、本実施の形態の多層ホログラム記録媒体HM1によれば、第1記録層L1を対象とした光照射時に、第2記録層L2に対する露光が行われてしまうことの防止を図ることができ、結果、先に述べたクロストーク問題やキュア問題の解決を図ることのできる多層ホログラム記録媒体を提供することができる。つまり、記録層を多層化して記録密度の向上を図る手法を実現化することのできる多層ホログラム記録媒体を提供することができる。
【0036】
また本実施の形態では、第2記録層L2に対して設けられる第2反射膜SR2として、上記第1反射膜SR1とは偏光に応じた選択反射/透過特性が逆特性となる偏光選択反射膜を用いるものとしている。ここで、このように第2反射膜SR2が第1反射膜SR1と逆特性とされていることで、上記のように第2記録層L2を対象とした光照射時に第1反射膜SR1を透過する直線偏光(この場合はS偏光)が照射されたときには、照射光が第1反射膜SR1→第2記録層L2を介した後、第2反射膜SR2にて反射されるようにすることができる。そして当該第2反射膜SR2の反射光(S偏光のままである)が、第1反射膜SR1を透過して装置側に戻されるようにすることができる。
このようにして第1反射膜SR1と第2反射膜SR2の反射/透過特性が逆特性とされていることで、第2記録層L2を対象とした光照射時には、照射光を第2反射膜SR2にて反射させて装置側に戻すようにすることができる。つまりこれにより、第2記録層L2を対象としたホログラム(データ)の再生時には、第2記録層L2に記録されたデータの再生光が適正に装置側に戻されるようにすることができる。
【0037】
[1−2.光照射装置の構成]

図2は、上記により説明した第1の実施の形態としての多層ホログラム記録媒体HM1に対応して、上述のクロストーク問題、キュア問題の解決を図るための光照射手法を実現する第1の実施の形態としての光照射装置の内部構成を示すブロック図である。
ここで、以下で説明する実施の形態としての光照射装置は、ホログラム(データ)の記録/再生機能を有する。この意味で、実施の形態の光照射装置については、記録再生装置と称する。
【0038】
図2において、第1の実施の形態の記録再生装置は、コアキシャル方式によるホログラム記録再生を行うように構成される。コアキシャル方式は、信号光と参照光とを同一光軸上に配置し、それらを共に所定位置にセットされたホログラム記録媒体に照射してホログラムの形成によるデータ記録を行い、また再生時には参照光をホログラム記録媒体に対して照射することで上記ホログラムとして記録されたデータの再生を行うものである。
【0039】
この図2に示す記録再生装置において、多層ホログラム記録媒体HM1は、当該記録再生装置における所定位置において着脱可能にセットされる。図示は省略したが、このように所定位置にセットされた多層ホログラム記録媒体HM1は、記録再生装置に設けられたスライド機構によって記録面に平行な面上に移動可能とされている。このように記録面に平行な面上に移動可能とされることで、ホログラムの記録/再生位置、或いはキュア光の照射位置の制御が可能とされている。
なお、このような記録/再生位置、キュア光の照射位置の制御を行うための構成については多様に考えられるものであり、上記による構成に限定されるものではない。このような位置制御のための構成は、本発明の光照射手法と直接的に関わる部分ではなく、その具体的な構成は、実際の実施形態に応じて適宜適切とされるものに変更可能である。
【0040】
図2に示す記録再生装置には、ホログラムの記録/再生を行うための光源として、レーザダイオード(LD)1が設けられる。このレーザダイオード1は、例えば外部共振器付きレーザダイオードが採用され、レーザ光の波長は例えば410nm程度である。
レーザダイオード1からの出射光はコリメータレンズ2を介して平行光となるようにされた後、偏光ビームスプリッタ3に入射する。
【0041】
偏光ビームスプリッタ3は、入射面(レーザ光軸に垂直な面)をx軸・y軸の平面で表現したとき、偏光方向がx軸方向と一致するx偏光(P偏光)を透過し、偏光方向がy軸方向と一致するy偏光(S偏光)を反射するように構成されている。
これにより、上記のようにレーザダイオード1から出射され偏光ビームスプリッタ3に入射したレーザ光(直線偏光)は、x偏光(P偏光)が当該偏光ビームスプリッタ3を透過し、y偏光(S偏光)のみが当該偏光ビームスプリッタ3にて反射される。
【0042】
偏光ビームスプリッタ3で反射された光(S偏光)は、SLM(空間光変調器)4に入射する。
SLM4は、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal:強誘電性液晶)としての反射型液晶素子を備えて構成され、入射光に対し、画素単位で偏光方向を制御するように構成されている。
このSLM4は、図中の変調制御部13からの駆動信号に応じて、各画素ごとに入射光の偏光方向を90°変化させる、或いは入射光の偏光方向を不変とするようにして空間光変調を行う。具体的には、駆動信号がONの画素は偏光方向の角度変化=90°、駆動信号がOFFの画素は偏光方向の角度変化=0°となるように、駆動信号に応じ画素単位で偏光方向制御を行うように構成されている。
【0043】
図示するようにして、上記SLM4からの出射光(SLM4にて反射された光)は、偏光ビームスプリッタ3に再度入射する。
【0044】
ここで、図2に示す記録再生装置では、SLM4による画素単位の偏光方向制御と、入射光の偏光方向に応じた偏光ビームスプリッタ3の選択的な透過/反射の性質とを利用して、画素単位の空間光強度変調(光強度変調、或いは単に強度変調とも称する)を行うようにされている。
【0045】
図3は、このようなSLM4と偏光ビームスプリッタ3との組み合わせにより実現される強度変調動作のイメージを示している。図3(a)はON画素の光について、図3(b)はOFF画素の光についてそれぞれその光線状態を模式的に示している。
上述もしたように、偏光ビームスプリッタ3はx偏光(P偏光)を透過、y偏光(S偏光)を反射するので、上記SLM4には、y偏光が入射することになる。
この前提を踏まえると、SLM4にて偏光方向が90°変化された画素の光(駆動信号ONの画素の光)は、偏光ビームスプリッタ3に対しx偏光で入射することになる。このことで、SLM4におけるON画素の光は、偏光ビームスプリッタ3を透過することになり、多層ホログラム記録媒体HM1側に対して導かれることになる(図3(a))。
一方、駆動信号がOFFとされ偏光方向が変化されなかった画素の光は、偏光ビームスプリッタ3にy偏光で入射する。つまり、SLM4におけるOFF画素の光は偏光ビームスプリッタ3にて反射されて、多層ホログラム記録媒体HM1側に対しては導かれないようになっている(図3(b))。
【0046】
このようにして、画素単位で偏光方向制御を行うSLM4と、偏光ビームスプリッタ3との組み合わせにより、画素単位による光強度変調を行う強度変調部が形成されている。
【0047】
ここで、本実施の形態ではホログラム記録再生方式としてコアキシャル方式が採用される。コアキシャル方式が採用される場合、SLM4においては、信号光と参照光とを同一光軸上に配置するために、図4に示すような各エリアが設定される。
図4に示されるようにして、SLM4においては、その中心(レーザ光の光軸と一致)を含む円形の所定範囲のエリアが、信号光エリアA2として設定される。そして、この信号光エリアA2の外側には、ギャップエリアA3を隔てて、輪状の参照光エリアA1が設定されている。
これら信号光エリアA2、参照光エリアA1の設定により、信号光と参照光とを同一光軸上に配置するようにして照射することができる。
上記ギャップエリアA3は、上記参照光エリアA1にて生成される参照光が信号光エリアA2に漏れ込んで信号光に対するノイズになることを避けるための領域として定められているものである。
なお確認のために述べておくと、SLM4の画素形状は矩形状であるため、信号光エリアA2は厳密には円形とはならい。同様に参照光エリアA1、ギャップエリアA3としても厳密には輪状にはならい。その意味で信号光エリアA2は略円形のエリアとなり、参照光エリアA1、ギャップエリアA3もそれぞれ略輪状のエリアとなる。
【0048】
図2に戻り、変調制御部13は、上記SLM4に対する駆動制御を行うことで、記録時には信号光と参照光を、また再生時には参照光を生成させる。
具体的に、記録時において上記変調制御部13は、上記SLM4における信号光エリアA2内の画素は供給される記録データに応じたオン/オフパターンとし、参照光エリアA1の画素は予め定められた所定のオン/オフパターンとし、且つそれ以外の画素はすべてオフとするための駆動信号を生成し、これをSLM4に供給する。この駆動信号に基づきSLM4による空間光変調(偏光方向制御)が行われることで、偏光ビームスプリッタ3からの出射光(偏光ビームスプリッタ3を透過した光)として、それぞれがレーザ光の光軸を中心に持つようにして配置された信号光と参照光とが得られる。
また、再生時において上記変調制御部13は、上記参照光エリアA1内の画素を上記所定のオン/オフパターンとし、それ以外の画素は全てオフとする駆動信号によりSLM4を駆動制御し、これによって上記偏光ビームスプリッタ3からの出射光として参照光のみが得られるようにする。
【0049】
なお、記録時において変調制御部13は、入力される記録データ列の所定単位ごとに上記信号光エリア内のオン/オフパターンを生成し、これによって上記記録データ列の所定単位ごとのデータを格納した信号光が順次生成されるように動作する。これにより、多層ホログラム記録媒体HM1に対しホログラムページ単位(信号光と参照光の1度の干渉により記録することのできるデータ単位)によるデータの記録が順次行われるようになっている。
【0050】
上記偏光ビームスプリッタ3を透過したレーザ光は、偏光ビームスプリッタ5に導かれる。この偏光ビームスプリッタ5としてもx偏光(P偏光)を透過、y偏光(S偏光)を反射するように構成され、従って上記偏光ビームスプリッタ3を透過したレーザ光(x偏光)は偏光ビームスプリッタ5を透過する。
【0051】
偏光ビームスプリッタ5を透過したレーザ光は、図のようにリレーレンズ6、アパーチャー7、リレーレンズ8が同順で配置されたリレーレンズ系に導かれる。図示するようにリレーレンズ6によっては、偏光ビームスプリッタ5を透過したレーザ光が所定の焦点位置に集光するようにされ、リレーレンズ8によっては集光後の拡散光としての上記レーザ光が平行光となるように変換される。アパーチャー7は、上記リレーレンズ6による焦点位置(フーリエ面:周波数平面)に設けられ、光軸を中心とする所定範囲内の光のみを透過、それ以外の光を遮断するように構成される。このアパーチャー7により多層ホログラム記録媒体HM1に記録されるホログラムページのサイズが制限され、ホログラムの記録密度(つまりデータ記録密度)の向上が図られる。
【0052】
上記リレーレンズ系を介したレーザ光は、ミラー9で反射された後、後述する選択的偏光方向制御素子16を介して、対物レンズ10に入射する。
対物レンズ10は、図中のフォーカス機構11により、多層ホログラム記録媒体HM1に接離する方向(フォーカス方向)に移動可能に保持されている。フォーカス機構11は、対物レンズ10のフォーカス方向における位置を、後述するフォーカス駆動部20からの駆動信号に応じて変化させる。つまりこのようなフォーカス機構11による対物レンズ10の位置制御により、レーザ光のフォーカス位置を第1記録層L1(第1反射膜SR1)、第2記録層L2(第2反射膜SR2)の何れかに選択するためのフォーカス制御が行われる。
【0053】
上記のようにして対物レンズ10に入射したレーザ光は、上記フォーカス機構11によるフォーカス制御によって選択された記録層Lに対して集光するようにして多層ホログラム記録媒体HM1に照射される。
【0054】
ここで、記録時においては、上述した変調制御部13の制御に基づき、記録データに応じた光強度変調を受けた信号光と、所定の強度パターンの与えられた参照光とが生成される。このようにして生成された信号光と参照光とが、上記により説明した光路により多層ホログラム記録媒体HM1に照射される。これにより、多層ホログラム記録媒体HM1の第1記録層L1又は第2記録層L2には、上記信号光と参照光との干渉縞により、記録データを反映したホログラムが形成される。すなわち、データの記録が行われる。
【0055】
一方、再生時においては、上述のように参照光のみが生成され、当該参照光が上記により説明した光路により多層ホログラム記録媒体HM1に照射される。この参照光の照射に応じては、多層ホログラム記録媒体HM1(第1記録層L1又は第2記録層L2)に形成されたホログラムに応じた回折光が得られる。すなわち、多層ホログラム記録媒体HM1に記録されたデータに応じた再生像(再生光)が得られる。
【0056】
このように参照光の照射に応じて得られた再生光は、多層ホログラム記録媒体HM1からの反射光として、対物レンズ10を介した後、選択的偏光方向制御素子16、ミラー9、及び上述したリレーレンズ系を介して偏光ビームスプリッタ5に導かれる。
ここで、後述もするように、上記再生光は、選択的偏光方向制御素子16による偏光方向制御により、偏光ビームスプリッタ5にy偏光(S偏光)で入射するようにされ、当該偏光ビームスプリッタ5で反射されることになる。このように偏光ビームスプリッタ5で反射された再生光は、図示するようにしてイメージセンサ12に対して導かれる。
【0057】
イメージセンサ12は、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの撮像素子を備え、上記のようにして導かれた再生光を受光し、これを電気信号に変換して画像信号を得る。このようにして得られた画像信号は、記録時の信号光における光のオン/オフパターン(つまり「0」「1」のデータパターン)を反映したものとなっている。すなわち、このようにしてイメージセンサ12で検出される画像信号が、多層ホログラム記録媒体HM1に対して記録されたホログラムページ単位のデータについての読み出し信号に相当する。
【0058】
データ再生部14は、上記イメージセンサ12によって検出された画像信号中に含まれるSLM4の画素単位の値ごとに、「0」「1」のデータ識別、及び必要に応じて記録変調符号の復調処理等を行って、記録データを再生する。
【0059】
また、図2に示す記録再生装置には、上記により説明したホログラムの記録/再生のための光学系と共に、記録層Lに対して記録されたホログラムの定着処理又は記録層Lの記録前励起処理を行うキュア光を照射するための光学系が設けられる。具体的には、図中のキュア光源15、偏光子17、偏光方向制御素子18である。
【0060】
上記キュア光源15は、上記キュア光を照射するための光源である。この場合、キュア光源15としてはLED(Light Emitting Diode)が用いられる。
ここでキュア光としては、ホログラムの記録/再生光と同波長帯の光を照射すべきものとされている。このため上記キュア光源15は、レーザダイオード1が出射するレーザ光と同波長帯による光を出力するように構成されている。
【0061】
キュア光源15より出射されたキュア光は、偏光子17により偏光方向がx方向と一致する直線偏光(x偏光:P偏光)成分のみが抽出される。そして、このようにP偏光とされたキュア光は、偏光方向制御素子18を介して多層ホログラム記録媒体HM1に対して照射される。
なお、上記偏光方向制御素子18によるキュア光についての偏光方向制御動作については後述する。
【0062】
ここで確認のために述べておくと、上記キュア光の多層ホログラム記録媒体HM1に対する照射位置は、先に述べたスライド機構などによって多層ホログラム記録媒体HM1を記録面に平行な方向に移動させることで制御することができるようになっている。
【0063】
また、図2に示す記録再生装置には、当該記録再生装置の全体制御を行うための制御部22が設けられる。この制御部22は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Randam Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータで構成され、例えば上記ROMに格納されたプログラムに基づき各種の演算処理や各部の制御処理を実行することで、記録再生装置の全体制御を行う。
【0064】
例えば制御部22は、フォーカス駆動部20を制御して、記録/再生光のフォーカス位置を第1記録層L1(第1反射膜SR1)又は第2記録層L2(第2反射膜SR2)の何れかに選択させる。
この場合の制御部22には、記録/再生光を第1記録層L1に合焦させるために必要なフォーカス駆動量(第1フォーカス駆動量とする)の情報、及び第2記録層L2に合焦させるために必要なフォーカス駆動量(第2フォーカス駆動量)の情報が予め設定されている。制御部22は、第1記録層L1を対象とした記録/再生を行う場合には、上記第1フォーカス駆動量に応じた駆動量だけ対物レンズ10が駆動されるようにフォーカス駆動部20を制御し、フォーカス機構11による対物レンズ10の駆動動作を実行させ、第2記録層L2を対象とした記録/再生を行う場合には、上記第2フォーカス駆動量に応じた駆動量だけ対物レンズ10が駆動されるようにフォーカス駆動部20を制御し、フォーカス機構11による対物レンズ10の駆動動作を実行させる。
これにより、記録/再生光を記録/再生の対象とする記録層Lに選択的に合焦させることができる。
【0065】
また、制御部22は、選択的偏光方向制御素子16を駆動する第1ドライバ19、及び偏光方向制御素子18を駆動する第2ドライバ21に対し、クロストーク問題、キュア問題の解決を図るための光照射を実現するための制御も行うが、これについては後に改めて説明する。
【0066】
[1−3.記録/再生時の光照射]

ここで、先の図1で説明した多層ホログラム記録媒体HM1の構造によれば、第1記録層L1を対象とした記録/再生時に第2記録層L2への露光が行われないようにするためには、多層ホログラム記録媒体HM1に対してP偏光による直線偏光が照射されればよい。一方、第2記録層L2を対象とした記録/再生時には、記録/再生光が第1反射膜SR1にて透過されるようにすべく、S偏光による直線偏光が照射されればよい。
つまり、クロストークの防止を図りつつ各記録層Lの記録/再生を選択的に行うようにするためには、第1記録層L1を対象とする場合と第2記録層L2を対象とする場合とで、多層ホログラム記録媒体HM1への照射光の偏光状態を異ならせるように制御すればよい。
【0067】
図2に示す記録再生装置には、このような記録/再生光についての偏光方向制御を行う素子として、先に述べた選択的偏光方向制御素子16が設けられている。
図5は、上記選択的偏光方向制御素子16の構造を模式的に示した図である。
なお、この図5では、SLM4の参照光エリアA1を介した光の光線領域としての、参照光の光線領域の光が入射する領域を破線により示し、またSLM4の信号光エリアA2を介した光の光線領域としての、信号光の光線領域の光が入射する領域を一点鎖線により示している。
なお以下では、選択的偏光方向制御素子16における、上記参照光の光線領域の光が入射する領域は「選択的偏光方向制御素子16の参照光エリア」と称し、同様に上記信号光の光線領域の光が入射する領域は「選択的偏光方向制御素子16の信号光エリア」と称する。
【0068】
図5に示されるように、選択的偏光方向制御素子16には、上記選択的偏光方向制御素子16の信号光エリアを含み、且つ上記選択的偏光方向制御素子16の参照光エリアには重ならない範囲で、信号光制御領域Am-sが設定されている。また、選択的偏光方向制御素子16の参照光エリアを含み、且つ上記信号光制御領域Am-sには重ならない範囲が、参照光制御領域Am-rとして設定されている。
【0069】
ここで、この選択的偏光方向制御素子16は、図2に示す光学系において、リレーレンズ6,8を含んで構成されるリレーレンズ系によって形成されるSLM4の実像面となる位置に対して挿入される。或いは、上記実像面の近傍となる位置に対して挿入される。このことに対応し、上記選択的偏光方向制御素子16の参照光エリア、信号光エリアのサイズは、それぞれSLM4の参照光エリアA1、信号光エリアA2とほぼ同サイズに設定されている。
また、選択的偏光方向制御素子16の、入射面に平行な面内における取付位置は、上記選択的偏光方向制御素子16の参照光エリアによって参照光光線領域の光全体がカバーされ、且つ上記選択的偏光方向制御素子16の信号光エリアによって信号光光線領域の光全体がカバーされるように調整されている。具体的に、この場合は信号光エリアA2が参照光エリアA1の内側に配置され、その中心がレーザ光の光軸と一致するものとなっているので、上記選択的偏光方向制御素子16の面内取付位置は、上記信号光制御領域Am-sの中心とレーザ光の光軸とが一致する状態となるようにして調整される。
【0070】
選択的偏光方向制御素子16は、少なくとも上記信号光制御領域Am-sと上記参照光制御領域Am-rとが、駆動信号のオン/オフに応じて位相変調量π又はゼロの位相変調を行う(駆動信号オン時の位相変調量とオフ時の位相変調量とにπの位相差が与えられる)液晶素子で構成されている。
具体的に、このような液晶素子としては、上記駆動信号のオフ時(液晶分子の水平配向時)とオン時(液晶分子の垂直配向時)とで、π(λ/2)による位相差が発生するようにその厚みを調整することで実現できる。
【0071】
ここで、このように駆動信号のオン/オフに応じてπ又は0の位相変調を行うように構成された液晶素子は、1/2波長板と同様の性質を有することになる。
周知のように1/2波長板は、その光学基準軸と入射光の偏光方向軸とのなす角度をθとしたとき、入射光の偏光方向を2θ変化させる性質を有する。従って上記構成による選択的偏光方向制御素子16は、上記信号光制御領域Am-s、上記参照光制御領域Am-rのそれぞれで独立して、供給される駆動信号のオン/オフに応じて、入射光の偏光方向を90°変化させる又は0°変化させる(つまり不変とする)ことが可能とされている。
【0072】
なお確認のために述べておくと、上記のような90°/0°の偏光方向制御が可能となるように、選択的偏光方向制御素子16としては、その光学基準軸と入射光の偏光方向軸(この場合はx方向)とのなす角度が45°となるようにしてその面内取付角度が調整されて用いられることになる。
【0073】
このような選択的偏光方向制御素子16に対し、図2に示した第1ドライバ19が制御部22からの指示(制御)に基づく駆動制御を行うことで、以下で説明するようにして、クロストーク問題の解決を図るための第1の実施の形態としての光照射が行われる。
【0074】
図6〜図9は、第1の実施の形態としての光照射手法について説明するための図である。
図6、図7は、第1記録層L1を対象とした記録/再生光の照射手法を説明するための図であり、図6は第1記録層L1への記録時の光照射手法、図7は第1記録層L1の再生時の光照射手法を示している。
また、図8、図9は、第2記録層L2を対象とした記録/再生光の照射手法を説明するための図であり、図8は第2記録層L2への記録時の光照射手法、図9は第2記録層L2の再生時の光照射手法を示すものである。
これら図6〜図9では、図2に示した偏光ビームスプリッタ5、選択的偏光方向制御素子16、対物レンズ10、及び多層ホログラム記録媒体HM1のみを抽出して示している。なお多層ホログラム記録媒体HM1については、第1記録層L1、第1反射膜SR1、第2記録層L2、第2反射膜SR2のみを抽出して示している。
またこれら図6〜図9のうち記録時について説明する図6、図8に関して、各(a)図では、往路における信号光と参照光の各光線とそれらの偏光状態も併せて示し、各(b)図では復路における信号光(反射信号光)と参照光(反射参照光)の各光線とそれらの偏光状態も併せて示している。
また、再生時について説明する図7、図9について、各(a)図では往路における参照光の光線とその偏光状態も併せて示し、各(b)図では再生光と復路の参照光(反射参照光)の各光線とそれらの偏光状態も併せて示している。
なお、これら図6〜図9に示す偏光状態について、図中の縦方向両矢印は紙面に平行な向きの直線偏光(P偏光)、二重丸は紙面に対して垂直な向きの直線偏光(S偏光)を表す。
【0075】
先ずは、図6を参照して、第1記録層L1への記録時における光照射手法について説明する。
第1記録層L1への記録時には、制御部22が、選択的偏光方向制御素子16の信号光制御領域Am-s、参照光制御領域Am-rの駆動状態が共にオフとなるように第1ドライバ19を制御する。これに応じ第1ドライバ19が上記信号光制御領域Am-s、及び上記参照光制御領域Am-rを共にオフとするように駆動制御を行うことで、これら信号光制御領域Am-s、参照光制御領域Am-rを介する光の偏光方向は不変とされる。
【0076】
図6(a)に示されるように、選択的偏光方向制御素子16には、P偏光による信号光、及び参照光が入射する。従って上記のような駆動状態とされた選択的偏光方向制御素子16を介したこれら信号光、参照光は、対物レンズ10を介し、多層ホログラム記録媒体HM1に対してP偏光のまま照射されることになる。
【0077】
図1で説明したように、第1反射膜SR1は、P偏光を選択反射するように構成される。従って多層ホログラム記録媒体HM1に照射された信号光、参照光は、図6(b)に示されるようにして第1反射膜SR1にて反射され、結果、第2記録層L2には到達しないものとなる。つまりこれにより、第1記録層L1を対象とした記録時における、第2記録層L2への露光の防止が図られる。
【0078】
続いて、図7において、第1記録層L1の再生時には、制御部22が、選択的偏光方向制御素子16の信号光制御領域Am-sのみをオンとし、参照光制御領域Am-rはオフとなるように第1ドライバ19を制御する。参照光制御領域Am-rはオフとされるので、図7(a)に示すように、再生時に生成される参照光はP偏光のまま対物レンズ10を介して多層ホログラム記録媒体HM1に対して照射される。
【0079】
このようにP偏光で照射された参照光は、第1反射膜SR1にて反射される。また、このようなP偏光による参照光の照射に応じては、第1記録層L1に記録されたホログラムに応じた再生光としても、P偏光となる。つまり、この再生光としても、第1反射膜SR1にて反射されることになる。
この結果、この場合の再生時には、図7(b)に示されるようにして参照光と再生光とが第1反射膜SR1からの反射光として記録再生装置側に戻されることになる。
このとき、参照光の戻り光(反射参照光とする)は、照射した参照光の光線領域と同じ光線領域に得られる。また再生光は、記録時に照射した信号光の光線領域と同じ光線領域に得られることになる。
【0080】
上記のようにして多層ホログラム記録媒体HM1からの戻り光として得られた反射参照光、及び再生光は、共にP偏光で、対物レンズ10を介し選択的偏光方向制御素子16に入射する。上記のように反射参照光は参照光光線領域に得られるので、選択的偏光方向制御素子16における参照光制御領域Am-rに入射する。また、再生光は信号光光線領域に得られるので、信号光制御領域Am-sに対して入射する。
【0081】
上述もしたように、この場合の選択的偏光方向制御素子16では、参照光制御領域Am-rがオフ、信号光制御領域Am-sがオンとなるようにされている。従って上記反射参照光はP偏光のまま不変とされ、図示するように偏光ビームスプリッタ5を透過するものとなる。すなわち、イメージセンサ12側には導かれないものとなる。一方、上記再生光は、その偏光方向が90°変化されてS偏光に変換されるので、図のように偏光ビームスプリッタ5にて反射され、イメージセンサ12に対して導かれる。
【0082】
ここで確認のために述べておくと、再生光は、ホログラムの回折効率(例えば0.1〜1%程度)に依存した比較的光強度の弱い光となる。これに対し、上記反射参照光は、回折効率とは無関係に単に反射膜SRにて反射された光となることから、その光強度は上記再生光と比較すると相当に強いものとなる。従って反射参照光が再生光と共にイメージセンサ12に対して導かれてしまうと、当該反射参照光が再生光に対する無視できないノイズ成分となってしまい、再生特性が大幅に低下してしまう虞がある。
このことから、上記のように反射参照光がイメージセンサ12側に導かれないようにすることのできる本実施の形態の光照射手法によれば、ノイズ抑圧による再生特性の向上が図られることになる。
【0083】
続いて、図8を参照して、第2記録層L2への記録時における光照射手法について説明する。
第2記録層L2への記録時には、制御部22が選択的偏光方向制御素子16の信号光制御領域Am-s、参照光制御領域Am-rの駆動状態が共にオンとなるように第1ドライバ19を制御する。これにより、この場合の信号光、参照光は、図8(a)に示されるようにして共にS偏光で多層ホログラム記録媒体HM1に対して照射されることになる。
これにより、この場合の信号光、参照光は、図示するように共に第1反射膜SR1を透過して第2記録層L2に到達する。つまりこれにより、第2記録層L2を対象とした記録時に、適正に第2記録層L2に対する記録を行うことができる。
【0084】
この場合、第2記録層L2の下層に形成された第2反射膜SR2は、S偏光を選択反射するように構成されているので、上記のように第2記録層L2に到達した信号光、参照光は、図8(b)に示されるように当該第2反射膜SR2にて反射されることになる。
【0085】
また、図9において、第2記録層L2の再生時には、制御部22が、選択的偏光方向制御素子16の信号光制御領域Am-sのみがオフとなり、参照光制御領域Am-rはオンとなるように第1ドライバ19を制御する。これにより、この場合の再生時には、図9(a)に示されるように参照光がS偏光により多層ホログラム記録媒体HM1に対して照射される。
【0086】
このようにS偏光で照射された参照光は、第1反射膜SR1を透過して第2記録層L2に到達する。この結果、第2記録層L2に記録されたホログラムに応じた再生光が得られる。この場合参照光はS偏光であるので、再生光はS偏光である。
このようにして得られた第2記録層L2の再生光、及び照射した参照光は、共にS偏光であることより、第2反射膜SR2にて反射される。
そして、このように第2反射膜SR2を反射した参照光(反射参照光)及び再生光は、図9(b)に示すように、共にS偏光であることより、第1反射膜SR1を透過し、記録再生装置側に戻されることになる。
【0087】
多層ホログラム記録媒体HM1からの戻り光として得られた上記反射参照光、及び上記再生光は、共にS偏光で選択的偏光方向制御素子16に入射する。この場合も反射参照光は参照光制御領域Am-rに入射し、再生光は信号光制御領域Am-sに対して入射する。
【0088】
上記のようにしてこの場合の選択的偏光方向制御素子16では参照光制御領域Am-rがオン、信号光制御領域Am-sがオフとなるようにされているので、上記反射参照光はS偏光→P偏光に変換され、上記再生光はS偏光のまま不変とされる。
この結果、この場合の再生時にも反射参照光は偏光ビームスプリッタ5を透過してイメージセンサ12側には導かれないようになり、再生光のみが偏光ビームスプリッタ5にて反射されてイメージセンサ12側に適正に導かれる。つまりこの場合も再生特性の悪化防止が図られる。
【0089】
[1−4.キュア処理時の光照射]

また、図2に示した記録再生装置では、先に述べたキュア問題の解決を図るための光照射も行うものとされている。そのための構成として、図2に示した偏光子17、偏光方向制御素子18、及び第2ドライバ21が設けられている。
【0090】
図10は、上記偏光方向制御素子18の構造を模式的に示した図である。
この偏光方向制御素子18には、制御領域Amが設定されており、少なくとも当該制御領域Amが、先の信号光制御領域Am-sや参照光制御領域Am-rと同様に駆動信号のオン/オフに応じて位相変調量π又はゼロの位相変調を行う液晶素子で構成されている。
この図10では、キュア光源15→偏光子17を介したキュア光の入射領域を破線により示しているが、上記制御領域Amとしては、キュア光の入射領域全体がカバーされるようにして設定されていればよい。本実施の形態の場合、図示するように制御領域Amは偏光方向制御素子18の全体に亘って形成されている。
【0091】
なお当然のことながら、偏光方向制御素子18は、上記のように偏光子17を介したキュア光の全体が上記制御領域Amに入射するようにしてその取付位置が調整されるものとなる。
またこの偏光方向制御素子18としても、上記偏光子17を介して入射するキュア光(P偏光)についてその偏光方向を90°変化させる、又は不変とする偏光方向制御が可能となるように、その光学基準軸と入射光の偏光方向軸(この場合もx方向)とのなす角度が45°となるようにしてその面内取付角度が調整されて用いられる。
【0092】
図11は、第1の実施の形態としてのキュア光の照射手法について説明するための図である。
図11(a)は第1記録層L1を対象としたキュア光の照射(キュア処理)を行う場合の光照射手法について示し、図11(b)は第2記録層L2を対象としたキュア光の照射を行う場合の光照射手法について示している。
これら図11(a)(b)では、図2に示すキュア光源15、偏光子17、偏光方向制御素子18、及び多層ホログラム記録媒体HM1のみを抽出して示している(この場合も多層ホログラム記録媒体HM1については記録層Lと反射膜SRのみを抽出して示している)と共に、キュア光の光線とその偏光状態とを併せて示している。この場合もP偏光は縦方向両矢印で表し、S偏光は二重丸で表している。
【0093】
先ず、先の図2においても説明したように、キュア光源15から出射されたキュア光は、偏光子17を介することでP偏光となるようにされる。
この点を踏まえた上で、先ず、図11(a)に示す第1記録層L1を対象としたキュア処理時には、制御部22が、偏光方向制御素子18の制御領域Amの駆動状態がオフとなるように第2ドライバ21を制御する。これに応じ第2ドライバ21が上記制御領域Amの駆動信号をオフとすることで、上記偏光子17を介してP偏光で偏光方向制御素子18に入射したキュア光は、その偏光方向が不変とされ、P偏光のまま多層ホログラム記録媒体HM1に照射される。
この結果、この場合のキュア光は第1反射膜SR1にて反射され、その下層の第2記録層L2には到達しないものとなる。すなわちこれにより、第1記録層L1を対象としたキュア処理時に第2記録層L2が感光してしまい記録材料が消費されてしまうことの防止が図られる。換言すれば、先に述べたキュア問題の解決が図られる。
【0094】
一方、図11(b)に示す、第2記録層L2を対象としたキュア処理時には、制御部22が、偏光方向制御素子18の制御領域Amの駆動状態がオンとなるように第2ドライバ21を制御する。このことで、偏光子17を介してP偏光で偏光方向制御素子18に入射したキュア光は、その偏光方向が90°変化され、S偏光で多層ホログラム記録媒体HM1に照射される。
このようにS偏光で照射されたキュア光は、第1反射膜SR1を透過し、第2記録層L2に到達することになる。そして第2記録層L2に到達した後のキュア光は、S偏光を選択反射する第2反射膜SR2にて反射されることになる。なお、このように第2反射膜SR2を反射したキュア光(の戻り光)は、S偏光であることより第1反射膜SR1を再度透過することになる。
このようにして第2記録層L2を対象としたキュア処理時には、キュア光を第1反射膜SR1にて透過させて第2記録層L2に対するキュア処理を適正に行うことができる。
【0095】
[1−5.第1の実施の形態のまとめ]

上記のようにして第1の実施の形態の記録再生装置によれば、第1記録層L1を対象とした記録時において第2記録層L2が露光されてしまうことの防止を図ることができ、第1記録層L1に記録したものと同じホログラムとしてのノイズ成分が第2記録層L2に記録されてしまうことの防止が図られるので、先に述べたクロストーク問題の解決を図ることができる。
また、本実施の形態の記録再生装置によれば、キュア処理時においても、第1記録層L1を対象としたキュア処理時に第2記録層L2への露光が行われてしまうことの防止が図られるので、先に述べたキュア問題の解決を図ることができる。
このようにして本実施の形態の記録再生装置によれば、ホログラム記録再生方式において記録層を多層化して記録再生を行うとした場合に生じていたクロストーク問題とキュア問題の解決を図ることができる。つまりこの結果、ホログラム記録再生方式において記録層を多層化して記録密度の向上を図る手法を実現化することができる。
【0096】
また、本実施の形態によれば、記録時において、多層ホログラム記録媒体HM1に照射する往路の記録光(信号光と参照光)と、第1反射膜SR1、第2反射膜SR2からの反射光として得られる復路の記録光とについて、それぞれの偏光方向を同方向とすることができる。このように往路の記録光と復路の記録光とで偏光状態を同じに揃えることができることで、いわゆる反射型ホログラムの記録を防止できる。
ここで確認のために述べておくと、コアキシャル方式が採用され且つ反射型ホログラム記録媒体(反射膜を備えるホログラム記録媒体)に対して記録を行う場合、信号光と参照光との1度の照射によって記録されるホログラムとしては、

パターンA:信号光(往路)×参照光(往路)=透過型ホログラム
パターンB:信号光(往路)×参照光(復路)=反射型ホログラム
パターンC:信号光(復路)×参照光(往路)=反射型ホログラム
パターンD:信号光(復路)×参照光(復路)=透過型ホログラム

の4つが記録される得る。
これら4つのホログラムは、その伝播方向、角度の違いから、形成される干渉縞の特性が異なり、記録時における記録材料の反応や温度変化などの理由により記録媒体の体積や平均屈折率が変化すると、各ホログラムに位相シフトが生じ、条件によっては再生時の各ホログラムからの回折光が弱め合い、再生信号強度が大幅に低下してしまう虞がある。
再生信号強度の低下に伴っては、SNR(S/N比)の低下を招き、再生動作の安定性の低下、或いはホログラムの記録密度の低下などを招くものとなる。
本実施の形態のように、往路の記録光と復路の記録光の偏光状態が同じとなるようにされれば、往路の信号光と復路の参照光との干渉、及び復路の信号光と往路の参照光との干渉を防止できる。すなわち、これにより上記パターンBとパターンCによる反射型ホログラムの記録を防止することができる。
反射型ホログラムの記録が防止されれば、記録されるホログラムの複雑化が抑制される(記録されるホログラムの種類が減少される)ので、上記のような位相シフトが生じた場合の再生信号強度の低下を抑制でき、結果、SNR(S/N比)の改善、再生動作の安定性の向上、ホログラムの記録密度の向上を図ることができる。
【0097】
ここで、本実施の形態において、上述のようなクロストーク問題、キュア問題の解決が適正に図られるようにするためには、厳密には、記録動作及びキュア処理に関して、次の制約が満たされる必要がある。すなわち、少なくとも第1記録層L1上の未記録及び未キュア領域と重なる第2記録層L2上の領域に対して、データ記録及びキュア処理が先に行われないようにするというものである。
すなわち、この制約が満たされなければ、第1記録層L1の未記録領域に対し、第2記録層L2に記録したものと同じホログラムが記録されてしまい、クロストークの問題が生じてしまう。また、第1記録層L1の未記録及び未キュア領域に対してキュア露光が行われてしまうことで、先述のキュア問題と同様の問題が生じてしまうものである。
【0098】
このことに応じ、実際の記録再生装置としては、上記の制約が満たされるようにして記録動作及びキュア処理を実行する。
具体的に、図2に示した制御部22は、第1記録層L1から順にデータ記録が開始され、第1記録層L1が記録及びポストキュアし尽くされた後に、第2記録層L2を対象とした記録(及びプリキュアを行う場合にはプリキュア)が行われるように制御を行う。
或いは、第1記録層L1が記録及びポストキュアし尽くされる前に第2記録層L2を対象とした記録(及びプリキュア)を許容するとしたときには、制御部22は、第2記録層L2を対象とした記録(及びプリキュア)を行う場合において、第1記録層L1上で記録及びポストキュア済みとなった部分と重なる領域のみが記録(及びプリキュア)に使用されるように制御を行う。
なお、この点については、後述する第2の実施の形態の記録再生装置についても同様となる。
【0099】
[1−6.第1の実施の形態の変形例]

ここで、第1の実施の形態では、偏光選択反射膜として直線偏光選択反射膜を用いるものとしている。先の説明からも理解されるように、直線偏光選択反射膜は、その光学基準軸と一致又は直交する偏光方向の直線偏光が照射されなれば、適正に選択反射/透過の作用を得ることができない。つまり、先に説明した第1反射膜SR1の選択反射/透過、第2反射膜SR2の選択反射/透過の作用が適正に得られるようにするためには、第1記録層L1を対象とした光照射時と第2記録層L2を対象とした光照射時のそれぞれで、光学基準軸と偏光方向とが一致又は直交する関係が維持され続ける必要がある。
【0100】
このため、仮に、ホログラム記録媒体をCD(Compact Disc)やBD(Blu-ray Disc:登録商標)のようなディスク状媒体とし、これを回転駆動しながら記録/再生を行うとしたときには、図1に示した多層ホログラム記録媒体HM1と図2に示した記録再生装置との組み合わせでは、上述のクロストーク問題、キュア問題の解決を図ることができないものとなってしまう。つまり、多層ホログラム記録媒体HM1が回転駆動される場合には、直線偏光選択反射膜の光学基準軸と照射光の偏光方向軸との関係が常時変化してしまうためである。
【0101】
記録媒体を回転駆動して記録/再生を行うとした場合にもクロストーク問題、キュア問題の解決が図られるようにするためには、記録媒体側の構造を以下で説明するようにして変更すればよい。具体的には、第1反射膜SR1、第2反射膜SR2として、それぞれ以下で説明するような直線偏光選択反射膜を用いるようにするものである。
【0102】
図12は、記録媒体が回転駆動される場合に対応した第1の実施の形態の変形例としての多層ホログラム記録媒体HM1hに用いられるべき第1反射膜SR1h、及び第2反射膜SR2hの具体的な構造例について示した図である。
図12(a)、図12(b)は、それぞれP偏光を選択反射する第1反射膜SR1hの構造例について示しおり、図12(a)ではホログラムの記録をスパイラル状に行う場合の第1反射膜SR1hの構造例を、図12(b)はホログラムの記録を同心円状の複数の円弧に沿って行う場合の第1反射膜SR1hの構造例を示している。
また図12(c)は、S偏光を選択反射する第2反射膜SR2hの構造例について示している。
【0103】
この図12に示すように、記録媒体を回転駆動して記録/再生を行う場合には、光学基準軸の方向(ワイヤーグリッドの場合は金属線の形成方向)が、多層ホログラム記録媒体HM1hの回転方向に沿って変化するようにして形成された直線偏光選択反射膜を用いる。
具体的に、スパイラル状に記録を行う場合における第1反射膜SR1hとしては、図12(a)に示すように、光学基準軸がスパイラル状に連続的に変化するように形成された直線偏光選択反射膜を用いる。
また、同心円状に記録を行う場合における第1反射膜SR1hとしては、図12(b)に示すように、同心円状の各円弧に沿った複数の光学基準軸が形成された直線偏光選択反射膜を用いる。
【0104】
また、第2反射膜SR2hとしては、上記第1反射膜SR1にて選択反射される直線偏光とは直交する偏光方向による直線偏光が選択反射されるべく、多層ホログラム記録媒体HM1hの半径方向に平行な光学基準軸が、所要の回転角間隔で複数形成された直線偏光選択反射膜を用いる。換言すれば、光学基準軸が放射状に形成された直線偏光選択反射膜を用いるものである。
但し、完全な放射状とした場合、外周部となるほど各光学基準軸の間隔が広くなってしまい、外周部と内周部とで光学特性が大きく異なってしまう。このような光学特性の変化が生じないようにするために、図12(c)中の破線により示すようにドーナツ状にゾーニング(ゾーンを分割)を行った上で、各ゾーンごとに、半径方向に平行な光学基準軸が一定間隔で形成されるようにする。なお図12(c)においては光学基準軸を実線による直線で示している。
この図12(c)に示すような構造とすることにより、内外周における光学特性の変化が生じないようにすることができる。具体的には、外周部を対象とした記録/再生(及びキュア処理)時において、入射した直線偏光(この場合はS偏光)が選択反射されなくなってしまうといったことの防止を図ることができる。
【0105】
なお確認のために述べておくと、この第1の実施の形態の変形例としての多層ホログラム記録媒体HM1hの構造は、図1に示した多層ホログラム記録媒体HM1と比較して、第1反射膜SR1、第2反射膜SR2に代えて、上記により説明した第1反射膜SR1h、第2反射膜SR2hがそれぞれ形成される点のみが異なるものであり、他の構成は多層ホログラム記録媒体HM1と同様となる。
【0106】
上記のような変形例としての多層ホログラム記録媒体HM1hによれば、当該多層ホログラム記録媒体HM1hが回転駆動される場合にも、記録再生装置側からP偏光が照射されれば、当該照射光の偏光方向と第1反射膜SR1hの光学基準軸とが一致する状態が維持され続けるようにできるので、結果、上記照射光が第1反射膜SR1hにて反射されるようにすることができる。また、記録再生装置側からS偏光が照射されれば、当該照射光の偏光方向が、第1反射膜SR1hの光学基準軸と直交し且つ第2反射膜SR2hの光学基準軸と一致する状態が維持され続けるようにでき、その結果、上記照射光が第1反射膜SR1hを透過し、第2反射膜SR2hにて反射されるようにすることができる。
このことからも理解されるように、上記多層ホログラム記録媒体HM1hを用いることで、記録媒体を回転駆動して記録/再生を行う場合にも、クロストーク問題、及びキュア問題の解決を図ることができる。
【0107】
なお確認のために述べておくと、この場合の記録再生装置の構成としては、所定位置にセットされた上記多層ホログラム記録媒体HM1hを所定の回転駆動方式(例えばCLV方式やCAV方式)により回転駆動するための構成が少なくとも追加されればよく、他の構成については図2に示した記録再生装置と同様でよい。
すなわち、記録媒体に対して照射する光(記録/再生光、及びキュア光)についての偏光方向制御に関しては、先の図2に示した記録再生装置の場合と同様の制御が行われればよいものである。
【0108】
或いは、記録媒体としてはあくまで図1に示した多層ホログラム記録媒体HM1を用いるものとして、装置側の構成を変更することで記録媒体を回転駆動する場合に対応することもできる。具体的には、選択的偏光方向制御素子16、偏光方向制御素子18を、多層ホログラム記録媒体HM1の回転に同期させて回転駆動するというものである。
この場合の記録再生装置には、所定位置にセットされた上記多層ホログラム記録媒体HM1を所定の回転駆動方式により回転駆動する媒体回転駆動部と、選択的偏光方向制御素子16を回転駆動する第1回転駆動部と、偏光方向制御素子18を回転駆動する第2回転駆動部とを追加する。その上で、この場合の制御部22は、ホログラムの記録/再生動作を行う場合において、上記媒体回転駆動部により回転駆動される多層ホログラム記録媒体HM1の回転速度と同期した回転速度で上記選択的偏光方向制御素子16が回転されるように上記第1回転駆動部を制御する。またこの場合の制御部22は、キュア処理を行う場合において、上記媒体回転駆動部により回転駆動される多層ホログラム記録媒体HM1の回転速度と同期した回転速度で上記偏光方向制御素子18が回転されるように上記第2回転駆動部を制御する。
これにより照射光の偏光方向と直線偏光選択反射膜の光学基準軸との関係について、先の多層ホログラム記録媒体HM1hを用いる場合と同様の作用を得ることができる。
【0109】
なお、キュア光に関しては、上記のように偏光方向制御素子18を回転駆動する構成とするのではなく、偏光子17を回転駆動する構成としても同様の効果を得ることができる。
【0110】
<2.第2の実施の形態>
[2−1.多層ホログラム記録媒体の構造]

続いて、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、多層ホログラム記録媒体の偏光選択反射膜として、入射する円偏光の回転方向に応じて選択的に光を反射/透過する円偏光選択反射膜を用いるものである。換言すれば、旋光性又は円二色性を有し、円偏光に対する選択反射特性を有するように構成された反射膜を用いるものである。
【0111】
図13は、第2の実施の形態としての多層ホログラム記録媒体HM2の断面構造を示している。
先の図1と比較して分かるように、第2の実施の形態の多層ホログラム記録媒体HM2は、第1の実施の形態の多層ホログラム記録媒体HM1と比較して、第1反射膜SR1に代えて第1反射膜SR11が、また第2反射膜SR2に代えて第2反射膜SR12が設けられた点のみが異なる。
【0112】
第2の実施の形態においても、これら第1反射膜SR11、第2反射膜SR12としては、それぞれ偏光状態に応じた選択反射/透過特性が逆特性となるものを用いる。具体的にこの場合、上記第1反射膜SR11には、右回り円偏光を選択反射(左回り円偏光を選択透過)する性質を有する円偏光選択反射膜を用いる。また上記第2反射膜SR12には、左回り円偏光を選択反射(右回り円偏光を選択透過)する性質を有する円偏光選択反射膜を用いる。
このような円偏光選択反射膜には、例えばコレステリック液晶を用いる。具体的に、上記第1反射膜SR11には、その螺旋構造の巻方向が右方向とされたコレステリック液晶を用いる。また上記第2反射膜SR12には、その螺旋構造の巻方向が左方向とされたコレステリック液晶を用いる。周知のようにコレステリック液晶は、その螺旋構造の巻方向と同方向の回転方向による円偏光を選択反射し、逆回転方向による円偏光を選択透過する性質を有する。
【0113】
なお、この多層ホログラム記録媒体HM2の構造としても、上記により例示したものに限定されず、例えば先に述べたようなギャップ層を追加する等の変更を適宜行うことができる。
また、特に円偏光選択反射膜に関しては、上述したコレステリック液晶に限定されるべきものではなく、所定回転方向による円偏光を選択反射(上記所定回転方向とは逆回転方向の円偏光は選択透過)する性質を有するように構成されたものであれば、他の材料を用いることもできる。
【0114】
上記のようにして第2の実施の形態の多層ホログラム記録媒体HM2では、第1記録層L1に対して設けられる第1反射膜SR11として、円偏光の偏光方向に応じて入射光を反射/透過する円偏光選択反射膜を用いている。
このような多層ホログラム記録媒体HM2によれば、第1記録層L1を対象とした光照射時に第1反射膜SR11にて反射される円偏光(この場合は右回り円偏光)を照射することで、照射光が上記第1反射膜SR11を反射し、第2記録層L2には到達しないようにできる。また第2記録層L2を対象とした光照射時には上記第1反射膜SR11を透過する円偏光(この場合は左回り円偏光)を照射することで、照射光を適正に第2記録層L2に到達させることができる。
このようにして第2の実施の形態の多層ホログラム記録媒体HM2によっても、第2記録層L2を対象とした光照射時には照射光が適正に第2記録層L2に到達するように図られた上で、第1記録層L1を対象とした記録時においては、照射光が第2記録層L2に到達してしまうことの防止が図られる。すなわち第2記録層L2に対する露光が行われてしまうことの防止が図られる。
従ってこのような第2の実施の形態の多層ホログラム記録媒体HM2によっても、先に述べたクロストーク問題やキュア問題の解決を図り、記録層を多層化して記録密度の向上を図る手法を実現化することのできる多層ホログラム記録媒体を提供することができる。
【0115】
また第2の実施の形態の多層ホログラム記録媒体HM2としても、第2記録層L2に対して設けられる反射膜(第2反射膜SR12)としては、第1記録層L1に対して設けられる反射膜(第1反射膜SR11)とは偏光に応じた選択反射/透過特性が逆特性となる偏光選択反射膜を用いるものとしている。このことで、第2の実施の形態の多層ホログラム記録媒体HM2によっても、第2記録層L2を対象とした光照射時には照射光を第2反射膜SR12にて反射させて装置側に戻すようにでき、第2記録層L2を対象とした再生時に、第2記録層L2に記録されたデータの再生光が適正に装置側に戻されるようにできる。
【0116】
[2−2.光照射装置の構成]

図14は、上記により説明した多層ホログラム記録媒体HM2に対応して先述のクロストーク問題、キュア光問題の解決を図るための光照射を行う第2の実施の形態としての記録再生装置(光照射装置)の内部構成を示した図である。
なお図14において、既にこれまでで説明済みとなった部分と同様となる部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0117】
この図14と先の図2とを比較して分かるように、第2の実施の形態の記録再生装置は、第1の実施の形態の記録再生装置の構成に対し、1/4波長板30,31を追加したものとなる。
具体的に、1/4波長板30は、選択的偏光方向制御素子16と対物レンズ10との間に挿入される。また1/4波長板31は、偏光方向制御素子18を介したキュア光が入射する位置に対して設けられる。
これら1/4波長板30,31は、直線偏光/円偏光変換素子として用いるものである。従って上記1/4波長板30は、その光学基準軸の方向が先に述べたx方向(P偏光の偏光方向)と一致する状態となるようにしてその取付角度が調整されて設けられる。同様に、上記1/4波長板31としても、その光学基準軸の方向が上記x方向と一致する状態となるようにしてその取付角度が調整されて設けられる。
【0118】
[2−3.記録/再生時の光照射]

図15〜図18は、図14に示した記録再生装置によって実現される第2の実施の形態としての光照射手法について説明するための図である。
図15、図16は、第1記録層L1を対象とした記録/再生光の照射手法を説明するための図であり、図15は第1記録層L1への記録時の光照射手法、図16は第1記録層L1の再生時の光照射手法を示している。
また、図17、図18は、第2記録層L2を対象とした記録/再生光の照射手法を説明するための図であり、図17は第2記録層L2への記録時の光照射手法、図18は第2記録層L2の再生時の光照射手法を示すものである。
これら図15〜図18では、図14に示される偏光ビームスプリッタ5、選択的偏光方向制御素子16、1/4波長板30、対物レンズ10、及び多層ホログラム記録媒体HM2のみを抽出して示している。なお多層ホログラム記録媒体HM2については、この場合も第1記録層L1、第1反射膜SR11、第2記録層L2、第2反射膜SR12のみを抽出して示している。
また記録時について説明する図15、図17では、往路における信号光と参照光の各光線とそれらの偏光状態も併せて示している。
また、再生時について説明する図16、図18について、各(a)図では往路における参照光の光線とその偏光状態も併せて示し、各(b)図では再生光と復路の参照光(反射参照光)の各光線とそれらの偏光状態も併せて示している。
なお、これら図15〜図18における偏光状態の表記について、直線偏光については先の図6〜図9の場合と同様であり、円偏光については、実線の右回り矢印が右回りの円偏光を表し、破線の左回り矢印が左回り円偏光を表す。確認のために述べておくと、偏光の回転方向は、光波の進行方向に対する回転方向で定義されるものである。
【0119】
先ずは図15を参照して、第1記録層L1への記録時における光照射手法について説明する。
第2の実施の形態においても、第1記録層L1への記録時には、制御部22が、選択的偏光方向制御素子16の信号光制御領域Am-s、参照光制御領域Am-rの駆動状態が共にオフとなるように第1ドライバ19を制御する。
第2の実施の形態の記録再生装置においてこのような選択的偏光方向制御素子16の駆動制御が行われると、図示するように、選択的偏光方向制御素子16を介して得られるP偏光による信号光及び参照光は、1/4波長板30を介することで右回り円偏光に変換される。そしてこの右回り円偏光による信号光及び参照光が、対物レンズ10を介して多層ホログラム記録媒体HM2に照射される。
【0120】
先の図13にて説明したように、多層ホログラム記録媒体HM2の第1反射膜SR11は右回り円偏光を選択反射する。従って上記のように多層ホログラム記録媒体HM2に照射された信号光、参照光は、第1反射膜SR11にて反射される。つまり、第2記録層L2には到達しないものとなる。この結果、第1記録層L1を対象とした記録時における、第2記録層L2への露光の防止が図られる。
【0121】
続いて、図16において、この場合も第1記録層L1の再生時には、先の第1の実施の形態の場合と同様、制御部22が、選択的偏光方向制御素子16の信号光制御領域Am-sのみをオンとし、参照光制御領域Am-rはオフとなるように第1ドライバ19を制御する。
参照光制御領域Am-rはオフとされるので、図16(a)に示すように、再生時に生成された参照光はP偏光のまま選択的偏光方向制御素子16から出力され、1/4波長板30に入射する。つまりこのことで、第1記録層L1の再生時には、多層ホログラム記録媒体HM2に対し右回り円偏光による参照光が照射される。
【0122】
図16(b)に示されるように、右回り円偏光で照射された上記参照光は、第1反射膜SR11にて選択反射される。また、このような右回り円偏光による参照光の照射に応じては、第1記録層L1に記録されたホログラムに応じた再生光としても、右回り円偏光となり、従ってこの再生光も図のように第1反射膜SR11にて反射される。
【0123】
ここで、先に述べたように第1反射膜SR11にはコレステリック液晶が用いられている。コレステリック液晶は、入射する円偏光と同回転方向の円偏光を反射光として出力する性質を有する。すなわち、例えば金属膜などによる通常の反射膜のように、入射光と反射光の円偏光回転方向が互いに逆方向となるものではない。
従って、上記のように第1反射膜SR11にて反射された参照光(反射参照光)、再生光は、共に右回り円偏光で記録再生装置側に戻されることになる。
【0124】
このようにして多層ホログラム記録媒体HM2からの戻り光として得られた右回り円偏光による反射参照光、及び再生光は、共に対物レンズ10を介して1/4波長板30に入射する。このことで、これら反射参照光、再生光は、共にP偏光に変換されて選択的偏光方向制御素子16に入射する。この場合も上記反射参照光は参照光制御領域Am-rに、また上記再生光は信号光制御領域Am-sに入射する。
【0125】
上述もしたようにこの場合の選択的偏光方向制御素子16においては、参照光制御領域Am-rがオフ、信号光制御領域Am-sがオンとされている。従って上記反射参照光はP偏光のまま不変とされ、図示するように偏光ビームスプリッタ5を透過し、イメージセンサ12側には導かれないものとなる。一方、上記再生光は、その偏光方向が90°変化されてS偏光に変換され、偏光ビームスプリッタ5にて反射されてイメージセンサ12に導かれる。
従ってこの場合も、反射参照光としてのノイズ光がイメージセンサ12側に導かれてしまうことが防止され、再生特性の悪化防止が図られる。
【0126】
また、図17により、第2記録層L2への記録時における光照射手法について説明する。
この場合も制御部22は、第2記録層L2への記録時には、選択的偏光方向制御素子16の信号光制御領域Am-s、参照光制御領域Am-rの駆動状態が共にオンとなるように第1ドライバ19を制御する。これにより、選択的偏光方向制御素子16にP偏光で入射した信号光、参照光は共にS偏光に変換され、その後、1/4波長板30を介することで図示するように左回り円偏光で多層ホログラム記録媒体HM2に照射されることになる。
このように左回り円偏光で照射された信号光、参照光は、図示するように共に第1反射膜SR11を透過して第2記録層L2に到達する。つまりこれにより、第2記録層L2を対象とした記録時に、適正に第2記録層L2に対する記録を行うことができる。
【0127】
第2記録層L2の下層に形成された第2反射膜SR12は、左回り円偏光を選択反射するように構成されている。従って、上記のように第2記録層L2に到達した信号光、参照光は、当該第2反射膜SR12にて反射されることになる。
【0128】
続いて、図18の第2記録層L2の再生時について説明する。第2記録層L2の再生時には、制御部22が、第1の実施の形態の場合と同様に選択的偏光方向制御素子16の信号光制御領域Am-sのみがオフとなり、参照光制御領域Am-rはオンとなるように第1ドライバ19を制御する。これにより、この場合の再生時には、図18(a)に示されるように参照光が左回り円偏光により多層ホログラム記録媒体HM2に対して照射される。
【0129】
このように左回り円偏光で照射された参照光は、第1反射膜SR11を透過して第2記録層L2に到達する。この結果、第2記録層L2に記録されたホログラムに応じた再生光が得られる。この場合参照光は左回り円偏光であるので、再生光も左回り円偏光で得られる。
このようにして得られた第2記録層L2の再生光、及び照射した参照光は共に左回り円偏光であることより、第2反射膜SR12にて反射される。このとき、第2反射膜SR12としてもコレステリック液晶を用いているので、このように第2反射膜SR12を反射した参照光(反射参照光)及び再生光は、共に左回り円偏光のままとなる。従ってこれら第2反射膜SR12からの反射光としての反射参照光及び再生光は、図18(b)に示すようにして共に第1反射膜SR11を透過し、記録再生装置側に戻されることになる。
【0130】
多層ホログラム記録媒体HM2からの戻り光として得られた上記反射参照光、及び上記再生光は、共に左回り円偏光で1/4波長板30に入射することにより、選択的偏光方向制御素子16の参照光制御領域Am-rには、S偏光による反射参照光が入射し、信号光制御領域Am-sにはS偏光による再生光が入射する。
【0131】
この場合の選択的偏光方向制御素子16では、参照光制御領域Am-rがオン、信号光制御領域Am-sがオフとなるようにされている。従って、上記反射参照光はS偏光→P偏光に変換され、上記再生光はS偏光のまま不変とされる。この結果、この場合の再生時にも反射参照光は偏光ビームスプリッタ5を透過してイメージセンサ12側には導かれないようになり、再生光のみが偏光ビームスプリッタ5にて反射されてイメージセンサ12側に適正に導かれるようになる。つまりこの場合も再生特性の悪化防止が図られる。
【0132】
[2−4.キュア処理時の光照射]

図19は、図14に示した記録再生装置により実現される第2の実施の形態としてのキュア光の照射手法について説明するための図である。
図19(a)は第1記録層L1を対象としたキュア光の照射を行う場合の光照射手法を示し、図19(b)は第2記録層L2を対象としたキュア光の照射を行う場合の光照射手法を示している。
これら図19(a)(b)では、図14に示すキュア光源15、偏光子17、偏光方向制御素子18、1/4波長板31、及び多層ホログラム記録媒体HM2のみを抽出して示す(この場合も多層ホログラム記録媒体HM1については各記録層Lと各反射膜SRのみを抽出して示している)と共に、キュア光の光線とその偏光状態とを併せて示している。偏光状態の表記は先の図15〜図18の場合と同様である。
【0133】
この場合も、図19(a)に示す第1記録層L1を対象としたキュア処理時には、制御部22が、偏光方向制御素子18の制御領域Amの駆動状態がオフとなるように第2ドライバ21を制御する。このような駆動制御が行われることに伴い、偏光子17を介してP偏光で偏光方向制御素子18に入射したキュア光は、P偏光のまま1/4波長板31に入射することになり、これによりキュア光は、右回り円偏光で多層ホログラム記録媒体HM2に照射される。
この結果、この場合のキュア光は第1反射膜SR11にて選択反射され、その下層の第2記録層L2には到達しないものとなる。すなわちこれにより、第1記録層L1を対象としたキュア処理時に第2記録層L2が感光してしまい記録材料が消費されてしまうことの防止を図ることができ、先に述べたキュア問題の解決を図ることができる。
【0134】
また、図19(b)に示す第2記録層L2を対象としたキュア処理時には、この場合も制御部22が、第1の実施の形態の場合と同様に、偏光方向制御素子18の制御領域Amの駆動状態がオンとなるように第2ドライバ21を制御する。このことで、偏光子17を介してP偏光で偏光方向制御素子18に入射したキュア光は、その偏光方向が90°変化され、S偏光で1/4波長板31に入射し、結果キュア光は、多層ホログラム記録媒体HM2に左回り円偏光で照射される。
【0135】
このように左回り円偏光で照射されたキュア光は、第1反射膜SR11を透過し、第2記録層L2に到達する。そして第2記録層L2に到達した後のキュア光は、第2反射膜SR12にて反射されることになる。なお、このように第2反射膜SR12を反射したキュア光(の戻り光)としても、その円偏光回転方向は左回りのままとされることより、第1反射膜SR11を再度透過することになる。
このようにして第2記録層L2を対象としたキュア処理時には、キュア光を第1反射膜SR11にて透過させて第2記録層L2に対するキュア処理を適正に行うことができる。
【0136】
[2−5.第2の実施の形態のまとめ]

上記のようにして第2の実施の形態の記録再生装置によっても、第1記録層L1を対象とした記録時において第2記録層L2が露光されてしまうことの防止を図ることができ、第1記録層L1に記録したものと同じホログラムとしてのノイズ成分が第2記録層L2に記録されてしまうことの防止が図られるので、先述のクロストーク問題の解決を図ることができる。
また、キュア処理時においても、第1記録層L1を対象としたキュア処理時に第2記録層L2への露光が行われてしまうことの防止が図られるので、先述のキュア問題の解決を図ることができる。
このようにして第2の実施の形態の記録再生装置によっても、ホログラム記録再生方式において記録層を多層化して記録再生を行うとした場合に生じていたクロストーク問題とキュア問題の解決を図ることができ、この結果、ホログラム記録再生方式において記録層を多層化して記録密度の向上を図る手法を実現化することができる。
【0137】
また、先の説明からも理解されるように、第2の実施の形態によっても、記録時において、往路の記録光と復路の記録光の偏光状態を同じとすることができる。つまりこのことから、第2の実施の形態によっても反射型ホログラムの記録防止が図られる。
【0138】
また、第2の実施の形態では、多層ホログラム記録媒体の各記録層ごとに備える偏光選択反射膜として、円偏光選択反射膜を用い、多層ホログラム記録媒体に照射する円偏光の回転方向を制御する手法を採るものとしている。
このような手法を採ることで、記録媒体を回転駆動して記録/再生を行う場合にも、適正にクロストーク問題、及びキュア問題の解決が図られるようにすることができる。
なお、この場合も記録媒体を回転駆動して記録/再生を行うにあたっては、記録再生装置に対し、所定位置にセットされた多層ホログラム記録媒体HM2を所定の回転駆動方式により回転駆動するための構成を少なくとも追加すればよく、他の構成については図14に示したものと同様とすればよい。
また、記録媒体を回転駆動して記録/再生を行う場合、多層ホログラム記録媒体HM2はディスク状に形成すればよい。
【0139】
<3.変形例>

以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでに説明した各具体例に限定されるべきものではない。
例えば先の第1の実施の形態では、第1反射膜SR1がP偏光を選択反射し、第2反射膜SR2がS偏光を選択反射するように構成する場合を例示したが、これらを入れ替えて、第1反射膜SR1がS偏光を選択反射し、第2反射膜SR2がP偏光を選択反射するように構成することもできる。
その場合、記録再生装置側では、第1記録層L1を対象とした光照射を行う場合において先に説明した第2記録層L2を対象とした光照射を行う場合の偏光方向制御を行い、また第2記録層L2を対象とした光照射を行う場合には先に説明した第1記録層L1を対象とした光照射を行う場合の偏光方向制御を行うようにすればよい。
同様に、第2の実施の形態では、第1反射膜SR11が右回り円偏光を選択反射し、第2反射膜SR12が左回り円偏光を選択反射するように構成する場合を例示したが、これらを入れ替えて、第1反射膜SR11が左回り円偏光を選択反射し、第2反射膜SR12が右回り円偏光を選択反射するように構成することもできる。
この場合も記録再生装置としては、第1記録層L1を対象とした光照射を行う場合において先に説明した第2記録層L2を対象とした光照射を行う場合の偏光方向制御を行い、また第2記録層L2を対象とした光照射を行う場合に先に説明した第1記録層L1を対象とした光照射を行う場合の偏光方向制御を行うようにすればよい。
【0140】
また、第1の実施の形態では、選択的偏光方向制御素子16、偏光方向制御素子18に対して入射される光(往路光)をP偏光とする場合を例示したが、逆にS偏光とすることもできる。その場合も、第1記録層L1を対象とする場合の偏光方向制御と第2記録層L2を対象とする場合の偏光方向制御とを先に説明したものと入れ替えて行えばよい点については言うまでもない。
【0141】
何れにしても、本発明の多層ホログラム記録媒体としては、少なくとも第1記録層下に形成される第1反射膜として偏光選択反射膜を備えるようにすればよく、またこれに対応して、本発明の光照射装置(光照射方法)としては、第1記録層を対象とした光照射を行う場合には上記第1反射膜にて選択反射される偏光状態による光が多層ホログラム記録媒体に照射されるようにし、第2記録層を対象とした光照射を行う場合には上記第1反射膜にて選択透過される偏光状態による光が多層ホログラム記録媒体に照射されるようにすればよい。
このことで、第1記録層を対象とした光照射時に第2記録層が露光されてしまうことの防止を図ることができ、記録層を多層化して記録密度の向上を図る場合に生じるクロストーク問題やキュア問題の解決を図ることができる。
またこのとき、第2記録層に対して設けられた第2反射膜として、上記第1反射膜とは偏光状態に応じた選択反射/透過特性が逆特性となる偏光選択反射膜を用いるものとすれば、第2記録層を対象とした再生時において、第2記録層の記録データに応じた再生光が適正に装置側に戻されるようにすることができる。
【0142】
また、これまでの説明では、本発明の光照射装置が、クロストーク問題とキュア問題との双方の解決を図るべく、ホログラムの記録/再生光とキュア光の双方について偏光状態の制御を行う場合を例示したが、記録/再生光、キュア光の何れか一方のみについて偏光状態の制御を行うようにすることもできる。
この際、例えばキュア光側のみについて偏光状態の制御を行うとしたときには、第2反射膜については、偏光選択反射膜で構成する必要性はない。例えば第2反射膜については、偏光に応じた選択反射/透過特性を有さない通常のミラーで構成することもできる。その場合も、
・1層目キュア時:第1反射膜にて反射される偏光状態の光を照射
・2層目キュア時:第1反射膜にて透過される偏光状態の光を照射
とする点については変更はない。
【0143】
また、これまでの説明では、キュア光源15が、LEDとしてのインコヒーレント光源とされる場合を例示したが、キュア光源としてはLD(Laser Diode)を用いることもできる。
LDとした場合、光源より発せられるキュア光は直線偏光となるので、偏光子17は必ずしも必要ではない。つまり、例えばLDからのキュア光が偏光方向制御素子18に対し所定の偏光方向(実施の形態の場合ではx方向)で入射するようにしておけば、偏光子17は省略できる。
【0144】
また、これまでの説明では、駆動信号の供給に応じた可変的な偏光方向制御を行う偏光方向制御素子(選択的偏光方向制御素子16、偏光方向制御素子18)として、透過型の素子を用いる場合を例示したが、反射型の素子を用いることも勿論可能である。
【0145】
また、これまでの説明では、選択的偏光方向制御素子16、偏光方向制御素子18として例示したように、本発明の偏光状態制御部が、駆動信号に応じて位相変調量π/位相変調量ゼロの可変的な位相変調を行う液晶位相差素子を有して構成される場合を例示したが、このような液晶位相差素子を用いずに偏光方向制御を行うようにすることもできる。
例えば、少なくとも信号光全体を入射できるサイズを有する1/2波長板(第1の1/2波長板とする)と、少なくとも参照光全体を入射できるサイズを有し且つ上記第1の1/2波長板よりも大きなサイズによる内孔部(くり抜き部)を有する1/2波長板(第2の1/2波長板とする)とを用いるものとし、これらを独立して光路中に出し入れする手法を挙げることができる。
つまりこの場合、上記第1の1/2波長板、上記第2の1/2波長板を光路に対して出し入れ可能に保持する出入駆動部(例えば跳ね上げ/下げ駆動など)を備えるようにする。この出入駆動部は、第1ドライバ19が供給する駆動信号に応じて、上記第1の1/2波長板、上記第2の1/2波長板の出し入れを実行するように構成しておく。その上で、制御部22が、信号光(又は再生光)の偏光方向を90°変化させるべき場合には、上記第1の1/2波長板が光路に対して挿入された状態が得られるように上記第1ドライバ19を制御する。また、信号光(再生光)の偏光方向を不変とすべき場合には、上記第1の1/2波長板が光路から外された状態が得られるように第1ドライバ19を制御する。
また、参照光(又は反射参照光)の偏光方向を90°変化させるべき場合、制御部22は、上記第2の1/2波長板が光路に対して挿入された状態が得られるように上記第1ドライバ19を制御する。また参照光(反射参照光)の偏光方向を不変とすべき場合には、上記第2の1/2波長板が光路から外された状態が得られるように第1ドライバ19を制御する。
このような制御部22からの制御に基づき上記第1ドライバ19が駆動信号の供給により上記出入駆動部による第1、第2の1/2波長板の駆動動作を制御することで、液晶位相差素子による選択的偏光方向制御素子16を用いる場合と同様の作用を得ることができる。
【0146】
或いは、上記のような出し入れ駆動による手法ではなく、光路に対して挿入された状態の上記第1の1/2波長板、上記第2の1/2波長板について、それぞれを独立してその面内回転角を変化させるように回転駆動することで、信号光(再生光)と参照光(反射参照光)とについてそれぞれ独立して0°/90°の偏光方向制御が可能となるようにすることもできる。
この場合は、上記のように光路中に挿入された状態の第1の1/2波長板、第2の1/2波長板をそれぞれ回転駆動可能に保持する回転駆動部を備えるようにする。この回転駆動部としては、第1ドライバ19からの駆動信号に応じて上記第1の1/2波長板、第2の1/2波長板の回転駆動を実行するように構成しておく。
その上で、制御部22は、信号光(再生光)の偏光方向を90°変化させるべき場合には、上記第1の1/2波長板の光学基準軸とx方向(つまり入射光の偏光方向)軸との為す角度が45°となる状態が得られるように第1ドライバ19を制御する。また、信号光(再生光)の偏光方向を不変とすべき場合には、上記第1の1/2波長板の光学基準軸がx方向と一致する状態(つまり為す角度が0°となる状態)が得られるように第1ドライバ19を制御する。
また、参照光(反射参照光)の偏光方向を90°変化させるべき場合、制御部22は、上記第2の1/2波長板の光学基準軸とx方向軸との為す角度が45°となる状態が得られるように第1ドライバ19を制御する。また参照光(反射参照光)の偏光方向を不変とすべき場合には、上記第2の1/2波長板の光学基準軸がx方向と一致する状態が得られるように第1ドライバ19を制御する。
【0147】
なお、上記では、記録/再生光について偏光方向制御を行う場合の構成について言及したが、キュア光についての偏光方向制御を行う場合には、用いるべき1/2波長板は1枚のみでよい。すなわち、キュア光全体を入射できるサイズによる1/2波長板について、上記のような出し入れ駆動や回転駆動が実現されるように構成すればよい。
【0148】
また、特に第2の実施の形態について、先の説明では、本発明の偏光状態制御部が、直線偏光の偏光方向についての制御を行う偏光方向制御素子と、例えば1/4波長板9で構成される直線偏光/円偏光変換部とを組み合わせて実現される場合を例示したが、本発明の偏光状態制御部は、他の構成で実現することもできる。
例えば、液晶位相差素子などにより、駆動信号に応じて入射光にπ/2(1/4波長分)、3π/2(3/4波長分)の2通りの位相変調量による位相変調を施すことが可能な素子を用いることで実現できる。このような素子によれば、供給される駆動信号に応じて、入射した直線偏光を所定回転方向による円偏光/逆回転方向による円偏光に可変的に制御することができる。
【0149】
また、先の説明では、記録媒体を回転駆動して記録/再生を行うことについて言及したが、特にその場合には、フォーカスサーボ制御を行うことが考えられる。
以下、このようにフォーカスサーボ制御を行うとした場合における変形例としての記録再生装置(光照射装置)の構成と、多層ホログラム記録媒体の構造について例示しておく。
【0150】
図20はフォーカスサーボ制御を行う場合に対応した変形例としての記録再生装置の内部構成について示し、図21はこの変形例にて用いられるべき多層ホログラム記録媒体HM3の断面構造を示している。
なお、図20においては変形例としての記録再生装置の構成について、主にフォーカス制御系の構成のみを抽出して示し、例えば選択的偏光方向制御素子16やキュア光の光学系などの他の部分の構成については先の図2や図14に示したものと同様とされればよく、図示は省略している。
また、図21は第1の実施の形態の場合のように第1反射膜SR1、第2反射膜SR2を備える場合の多層ホログラム記録媒体HM3の構造例を例示している。なおもちろん、第2の実施の形態のように第1反射膜SR11、第2反射膜SR12を備えるように構成することもできる。
なおこれら図20、図21において、既にこれまでで説明済みとなった部分と同様となる部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0151】
先ず、この変形例の場合、フォーカスサーボ制御を行うためのサーボ用光を別途照射するために、図20に示されるようにサーボ用レーザダイオード40が追加される。
またこれに対応して、図21に示す多層ホログラム記録媒体HM3としては、先の図1に示した多層ホログラム記録媒体HM1における第2反射膜SR2と基板PLとの間に対し、上層から下層にかけて中間層SP、サーボ用反射膜SR−Sを同順で挿入するものとしている。
この変形例は、上記サーボ用レーザダイオード40から発せられたサーボ用レーザ光の、上記サーボ用反射膜SR−Sからの反射光を利用して、フォーカスサーボ制御を行うものである。このとき、上記サーボ用レーザ光の照射により第1記録層L1、第2記録層L2が感光してしまうことの防止が図られるように、上記サーボ用レーザダイオード40としては、レーザダイオード1が出力する記録/再生光の波長(例えば410nm程度)とは異なる波長によるレーザ光を出力するものを用いる。具体的に、この場合のサーボ用レーザ光の波長は、例えば650nm程度とされる。
【0152】
ここで、上記サーボ用レーザダイオード40から発せられたサーボ用レーザ光を上記サーボ用反射膜SR−Sに到達させるためには、上記サーボ用レーザ光が第1反射膜SR1及び第2反射膜SR2を透過するようにされる必要がある。
実施の形態の場合、第1記録層L1下に設けられる第1反射膜、第2記録層L2下に設けられる第2反射膜としては、フォトニック結晶やワイヤーグリッド、或いはコレステリック液晶などといった偏光選択反射膜を設けるものとしているが、このような偏光選択反射膜は、もともと波長依存性を有するものである。すなわち、これら偏光選択反射膜は、もともと記録/再生光(及びキュア光)の波長帯の光についてのみ偏光状態に応じた選択反射/透過の特性を有するように構成されているものであり、従って上記のようにサーボ用レーザ光として記録/再生光とは波長の大きく異なるレーザ光を照射するようにされていれば、自ずと、当該サーボ用レーザ光は第1反射膜、第2反射膜を透過するものとなって、サーボ用反射膜SR−Sに到達することになる。
【0153】
なお確認のために述べておくと、フォトニック結晶やワイヤーグリッドなどによる直線偏光選択反射膜は、その光学基準軸(ワイヤーグリッドの場合は金属線)の形成ピッチが波長選択性を左右するファクタとなる。また、コレステリック液晶など円偏光選択反射膜は、その螺旋の巻きピッチが波長選択性を左右するファクタとなる。
従って記録/再生光(及びキュア光)の波長帯の光についてのみ偏光状態に応じた選択反射/透過の特性が得られるようにするにあたっては、直線偏光選択反射膜は、その光学基準軸(ワイヤーグリッドの場合は金属線)の形成ピッチが上記記録/再生光の波長に応じたピッチとなるように構成すればよい。また円偏光選択反射膜としては、その螺旋構造の巻きピッチが記録/再生光の波長に応じたピッチとなるように構成すればよい。
【0154】
図20に戻り、上記サーボ用レーザダイオード40から出射されたサーボ用レーザ光は、コリメータレンズ41を介して平行光となるようにされた後、ビームスプリッタ42を介してダイクロイックミラー43に入射する。
ダイクロイックミラー43は、入射光の波長に応じた選択反射/透過特性を有し、記録/再生光(この場合410nm)は透過し、サーボ用レーザ光(この場合650nm)は反射するように構成されている。従って上記偏光ビームスプリッタ42を透過した上記サーボ用レーザ光はダイクロイックミラー43にて反射される。
図のようにダイクロイックミラー43は、リレーレンズ8とミラー9との間において、上記リレーレンズ8を介して入射し自らを透過する記録/再生光と、上記のように自らを反射したサーボ用レーザ光とが共にミラー9に導かれるようにして挿入されている。
このようにダイクロイックミラー43によって同一光軸上に合成された記録/再生光、及びサーボ用レーザ光は、ミラー9にて反射された後、対物レンズ10を介して多層ホログラム記録媒体HM3に対して照射される。
【0155】
また、多層ホログラム記録媒体HM3に形成されたサーボ用反射膜SR−Sにて反射された戻り光としてのサーボ用レーザ光は、対物レンズ10、ミラー9を介してダイクロイックミラー43に入射し、ここで反射される。ダイクロイックミラー43にて反射されたサーボ用レーザ光はビームスプリッタ42にて反射され、図のように集光レンズ44を介してフォトディテクタ(PD)45に照射される。
【0156】
サーボ制御部46は、上記フォトディテクタ45により得られる上記サーボ用レーザ光の反射光(戻り光)の検出信号に基づき、フォーカスエラー信号の生成、及び当該フォーカスエラー信号に基づくフォーカスサーボ信号の生成を行い、当該フォーカスサーボ信号に基づきフォーカス機構11を駆動制御することで、上記サーボ用レーザ光の焦点位置がサーボ用反射膜SR−S上で一定となるようにフォーカスサーボ制御を行う。
このようなサーボ用レーザ光についてのフォーカスサーボ制御が実行されることで、同じ対物レンズ10を介して照射される記録/再生光の焦点位置としても、サーボがかけられた状態となる。
【0157】
ここで、図21に示すように、第1反射膜SR1、第2反射膜SR2は、それぞれ、サーボ用反射膜SR−Sから所定距離だけ離間して設けられたものとなる。具体的に、第1反射膜SR1は、サーボ用反射膜SR−Sから距離DS−1だけ離間されて形成され、第2反射膜SR2はサーボ用反射膜SR−Sから距離DS−2だけ離間して形成されている。
従って第1記録層L1を対象とした記録/再生時には、記録/再生光の焦点位置が、サーボ用レーザ光の焦点位置から距離DS−1だけ離間されるようにして制御されればよい。同様に、第2記録層L2を対象とした記録/再生時には、記録/再生光の焦点位置が、サーボ用レーザ光の焦点位置から距離DS−2だけ離間されるようにして制御されればよい。
つまりこの場合、記録/再生光については、記録媒体の反りや厚み誤差などに追従するためのフォーカス制御がサーボ用レーザ光に基づく対物レンズ10の制御によって自ずと行われることになるので、あとは、記録/再生光の焦点位置をサーボ用レーザ光の焦点位置から上記距離DS−1又は距離DS−2だけオフセットさせるようにすれば、第1記録層L1/第2記録層L2を対象としたフォーカスサーボ制御を実現することができる。
【0158】
このために、この場合の記録再生装置には、図20に示されるように、対物レンズ10に入射する記録/再生光のコリメーション(平行度)を変化させるためのフォーカス機構47が別途設けられる。この場合、フォーカス機構47は、リレーレンズ8を記録/再生光の光軸方向に駆動するように設けている。
【0159】
この場合、フォーカス駆動部20が、上記フォーカス機構47を駆動制御するように構成しておく。具体的にこの場合のフォーカス駆動部20は、制御部22からの制御に基づき上記フォーカス機構47によるリレーレンズ8の駆動動作を制御するように構成する。
【0160】
この場合の制御部22には、記録/再生光の焦点位置を、上記サーボ用レーザ光の焦点位置から上記距離DS−1だけ離間させるために設定されるべき上記リレーレンズ8の駆動量(第1駆動量)の情報と、上記距離DS−2だけ離間させるために設定されるべき上記リレーレンズ8の駆動量(第2駆動量)の情報とが予め設定されている。
この場合の制御部22は、第1記録層L1を対象とした記録/再生時には、上記第1駆動量に応じた駆動量だけリレーレンズ8が駆動されるようにフォーカス制御部20を制御し、また、第2記録層L2を対象とした記録/再生時には、上記第2駆動量に応じた駆動量だけリレーレンズ8が駆動されるようにフォーカス制御部20を制御する。フォーカス駆動部20は、このような制御部22からの制御に基づく駆動量だけ上記リレーレンズ8が駆動されるようにフォーカス機構47を駆動制御する。
これにより、第1記録層L1を対象とした記録/再生時と第2記録層L2を対象とした記録/再生時とで、記録/再生光について、第1記録層L1を対象としたフォーカスサーボと第2記録層L2を対象としたフォーカスサーボとを選択的に行うことができる。
【0161】
なお、記録/再生光についてフォーカスサーボを行う手法としては、上記変形例による手法に限定されず、多様に考えられる。
例えば記録/再生光のみを用いてフォーカスサーボを実現するといったこともできる。
その場合、例えば多層ホログラム記録媒体HM1(HM2)から得られる反射参照光、或いは反射信号光(再生時には再生光)を、フォーカスサーボを行うための反射光として検出し、その反射光検出信号に基づきフォーカス機構11の駆動制御を行うことで、記録/再生光についてのフォーカスサーボ制御を行うようにすることもできる。
この場合の記録再生装置としては、多層ホログラム記録媒体HM1(HM2)から得られる記録/再生光の反射光を分離抽出するための例えばハーフミラーなど分離抽出手段を光学系の所要位置に挿入し、該分離抽出手段により抽出された上記反射光をフォトディテクタで検出する。このフォトディテクタによる検出信号に基づきフォーカスエラー信号
生成、及び当該フォーカスエラー信号に基づくフォーカスサーボ信号の生成を行い、当該フォーカスサーボ信号に基づきフォーカス機構11が駆動制御されるように構成する。
【0162】
また、これまでの説明では、往路光の光線領域から再生光を抽出してこれをイメージセンサ側に選択的に導くための素子として、偏光ビームスプリッタ5を用いるものとしたが、これに代えて、無偏光ビームスプリッタ(ハーフミラー)を用いることもできる。
このように無偏光ビームスプリッタを用いた場合、再生時における選択的な偏光状態制御(信号光制御領域と参照光制御領域とに分けた個別の偏光状態制御)は不要とできる。つまりこの場合の再生時には、再生光を得るための参照光が、再生対象とする記録層の反射膜で選択反射される偏光状態となるように制御が行われさえすればよく、信号光制御領域と参照光制御領域とに分けて偏光状態制御を行う必要性はない。
【0163】
また、これまでの説明では、信号光、参照光の生成のための強度変調を行う強度変調部が、偏光方向制御型の空間光変調器(SLM4)と偏光ビームスプリッタとの組み合わせで実現される場合を例示したが、これに代えて、例えば反射型の液晶パネルやDMD(Digital Micro mirror Device:登録商標)など、偏光ビームスプリッタを組み合わせる必要なく単体で強度変調が可能な強度変調器としての空間光変調器を用いることもできる。
また、空間光変調器としては、反射型ではなく透過型のもの(例えば透過型の液晶パネルなど)を用いることもできる。
【0164】
また、これまでの説明では、略円形とされた信号光エリアA2の外側に略輪状の参照光エリアA1が設けられる場合を例示したが、信号光エリア、参照光エリアの形状は、これら略円形や略輪状に限定されるものではない。また、参照光エリアを内側、信号光エリアを外側に配置することもできる。
本発明の偏光状態制御部における信号光制御領域、参照光制御領域の形状やその設定位置は、これら信号光エリア、参照光エリアの形状・配置関係に合わせて適宜設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】第1の実施の形態としての多層ホログラム記録媒体の断面構造を示した図である。
【図2】第1の実施の形態としての光照射装置の内部構成を示したブロック図である。
【図3】偏光方向制御型の空間光変調器と偏光ビームスプリッタとの組み合わせによる強度変調手法について説明するための図である。
【図4】空間光変調器において設定される参照光エリア、信号光エリア、ギャップエリアの各エリアについて説明するための図である。
【図5】記録/再生光についての偏光方向制御を行う、選択的偏光方向制御素子の構造について説明するための図である。
【図6】第1の実施の形態における、第1の記録層への記録時の光照射手法について説明するための図である。
【図7】第1の実施の形態における、第1の記録層の再生時の光照射手法について説明するための図である。
【図8】第1の実施の形態における、第2の記録層への記録時の光照射手法について説明するための図である。
【図9】第1の実施の形態における、第2の記録層の再生時の光照射手法について説明するための図である。
【図10】キュア光についての偏光方向制御を行う偏光方向制御素子の構造について説明するための図である。
【図11】第1の実施の形態における、キュア光についての光照射手法について説明するための図である。
【図12】第1の実施の形態の変形例としての多層ホログラム記録媒体が備える反射膜の構造について説明するための図である。
【図13】第2の実施の形態の多層ホログラム記録媒体の断面構造を示した図である。
【図14】第2の実施の形態の光照射装置の内部構成を示したブロック図である。
【図15】第2の実施の形態における、第1の記録層への記録時の光照射手法について説明するための図である。
【図16】第2の実施の形態における、第1の記録層の再生時の光照射手法について説明するための図である。
【図17】第2の実施の形態における、第2の記録層への記録時の光照射手法について説明するための図である。
【図18】第2の実施の形態における、第2の記録層の再生時の光照射手法について説明するための図である。
【図19】第2の実施の形態における、キュア光についての光照射手法について説明するための図である。
【図20】フォーカスサーボ制御を行う変形例としての光照射装置の構成例について説明するための図である。
【図21】変形例としての多層ホログラム記録媒体の構造例について説明するための図である。
【図22】コアキシャル方式によるホログラム記録再生方式(記録時)について説明するための図である。
【図23】コアキシャル方式によるホログラム記録再生方式(再生時)について説明するための図である。
【符号の説明】
【0166】
1 レーザダイオード、2,41 コリメータレンズ、3,5 偏光ビームスプリッタ、4 SLM(空間光変調器)、6,8 リレーレンズ、7 アパーチャー、9 ミラー、10 対物レンズ、11,47 フォーカス機構、12 イメージセンサ、13 変調制御部、14 データ再生部、15 キュア光源、16 選択的偏光方向制御素子、17 偏光子、18 偏光方向制御素子、19 第1ドライバ、20 フォーカス駆動部、21 第2ドライバ、22 制御部、30,31 1/4波長板、40 サーボ用レーザダイオード、42 ビームスプリッタ、43 ダイクロイックミラー、44 集光レンズ、45 フォトディテクタ、46 サーボ制御部、HM1,HM1h,HM2,HM3 多層ホログラム記録媒体、AR 反射防止膜、CV カバー層、L1 第1記録層、SR1,SR1h,SR11 第1反射膜、L2 第2記録層、SR2,SR2h,SR12 第2反射膜、PL 基板、SP 中間層、SR−S サーボ用反射膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラムの記録が行われる記録層として第1の記録層と上記第1の記録層の下層側に形成された第2の記録層とを有し、且つ上記第1の記録層下に形成された第1の反射膜と、上記第2の記録層下に形成された第2の反射膜とを有すると共に、少なくとも上記第1の反射膜が、入射光の偏光状態に応じて選択的に光を反射/透過する偏光選択反射膜で構成されている多層ホログラム記録媒体に対して、光照射を行うための光源と、
上記光源より発せられた光が入射する位置に設けられ、駆動信号に応じて入射光の偏光状態を変化させることが可能に構成された偏光状態制御部と、
上記多層ホログラム記録媒体における上記第1の記録層を対象とした光照射を行う場合には、上記偏光状態制御部を介した光の偏光状態が上記第1の反射膜にて選択反射される偏光状態となるように上記偏光状態制御部を駆動制御し、上記第2の記録層を対象とした光照射を行う場合には、上記偏光状態制御部を介した光の偏光状態が上記第1の反射膜にて選択透過される偏光状態となるように上記偏光状態制御部を駆動制御する駆動制御部と
を備える光照射装置。
【請求項2】
上記偏光選択反射膜は、円偏光の回転方向に応じて選択的に光を反射/透過する円偏光選択反射膜とされ、
上記偏光状態制御部は、
上記駆動信号に応じて上記入射光の偏光状態を所定回転方向による円偏光又は上記所定回転方向とは逆回転方向による円偏光に可変的に制御するように構成されている
請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
上記第1の反射膜と共に上記第2の反射膜が上記円偏光選択反射膜で構成され、上記第1の反射膜は上記所定回転方向による円偏光を選択的に反射し、上記2の反射膜は上記逆回転方向による円偏光を選択的に反射するように構成されており、
上記光源はレーザー光源とされ、且つ、
上記光源より発せられた光について画素単で空間光強度変調を施す空間光変調部をさらに備えると共に、
上記偏光状態制御部には、上記光源より発せられた光が上記空間光変調部を介して入射される
請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
上記偏光状態制御部は、
上記空間光変調部にて生成された信号光が入射する領域である信号光入射領域と、上記空間光変調部にて生成される参照光が入射する領域である参照光入射領域とで、それぞれ上記駆動信号に応じて独立して偏光状態を制御することが可能に構成されており、
上記駆動制御部は、
上記第1の記録層を対象とした記録時には、上記信号光入射領域を介した信号光と上記参照光入射領域を介した参照光の双方が上記所定回転方向による円偏光となるように上記偏光状態制御部を駆動制御し、
上記第1の記録層を対象とした再生時には、上記参照光入射領域を介した参照光が上記所定回転方向による円偏光となり、且つ、上記参照光の照射に応じて上記多層ホログラム記録媒体側から上記信号光入射領域に入射した再生光が、上記光源側から当該偏光状態制御部に入射した直線偏光とは偏光方向が直交する直線偏光となるように上記偏光状態制御部を駆動制御し、
上記第2の記録層を対象とした記録時には、上記信号光入射領域を介した信号光と上記参照光入射領域を介した参照光の双方が上記逆回転方向による円偏光となるように上記偏光状態制御部を駆動制御し、
上記第2の記録層を対象とした再生時には、上記参照光入射領域を介した参照光が上記逆回転方向による円偏光となり、且つ、上記参照光の照射に応じて上記多層ホログラム記録媒体側から上記信号光入射領域に入射した再生光が、上記光源側から当該偏光状態制御部に入射した直線偏光とは偏光方向が直交する直線偏光となるように上記偏光状態制御部を駆動制御する
請求項3に記載の光照射装置。
【請求項5】
上記偏光状態制御部は、
上記信号光入射領域及び上記参照光入射領域がそれぞれ駆動信号のオン/オフに応じて位相変調量π/ゼロによる位相変調を施す液晶位相差素子で構成され、当該液晶位相差素子を介した光が入射する1/4波長板を備えることで、上記入射光の偏光状態を上記所定回転方向による円偏光又は上記逆回転方向による円偏光に可変的に制御するようにされており、
上記駆動制御部は、
上記第1の記録層を対象とした記録時には、上記信号光入射領域に形成された上記液晶位相差素子と上記参照光入射領域に形成された上記液晶位相差素子の双方の駆動状態が共にオン又はオフの同じ駆動状態となるように駆動制御を行い、
上記第1の記録層を対象とした再生時には、上記参照光入射領域に形成された上記液晶位相差素子の駆動状態が上記第1の記録層を対象とした記録時の駆動状態と同じとなり、且つ、上記信号光入射領域に形成された上記液晶位相差素子の駆動状態が上記第1の記録層を対象とした記録時の駆動状態とは異なる駆動状態となるように各液晶位相差素子を駆動制御し、
上記第2の記録層を対象とした記録時には、上記信号光入射領域に形成された上記液晶位相差素子と上記参照光入射領域に形成された上記液晶位相差素子の双方の駆動状態が共に上記第1の記録層を対象とした記録時とは異なる駆動状態となるように駆動制御を行い、
上記第2の記録層を対象とした再生時には、上記参照光入射領域に形成された上記液晶位相差素子の駆動状態が上記第2の記録層を対象とした記録時の駆動状態と同じとなり、且つ、上記信号光入射領域に形成された上記液晶位相差素子の駆動状態が上記第2の記録層を対象とした記録時の駆動状態とは異なる駆動状態となるように各液晶位相差素子を駆動制御する
請求項4に記載の光照射装置。
【請求項6】
上記光源は、ホログラムの記録再生を行うための光源とは別途に設けられたものであり、上記記録層に対して記録されたホログラムの定着処理又は上記記録層の記録前励起処理を行うキュア光を照射するためのキュア光源とされる
請求項2に記載の光照射装置。
【請求項7】
上記光源とは別途に設けられ、上記記録層に対して記録されたホログラムの定着処理又は上記記録層の記録前励起処理を行うキュア光を照射するためのキュア光源と、
上記キュア光源より発せられた上記キュア光が入射する位置に設けられ、駆動信号に応じて入射光を上記所定回転方向又は上記逆回転方向による円偏光に可変的に制御するように構成されたキュア光用偏光状態制御部とをさらに備え、
上記駆動制御部は、
上記第1の記録層を対象とした上記キュア光の照射を行う場合には、上記キュア光用偏光状態制御部を介した光が上記所定回転方向による円偏光となるように上記キュア光用偏光状態制御部に対する駆動制御を行い、上記第2の記録層を対象としたキュア光の照射を行う場合には、上記キュア光用偏光状態制御部を介した光が上記逆回転方向による円偏光となるように上記キュア光用偏光状態制御部に対する駆動制御を行う
請求項4に記載の光照射装置。
【請求項8】
上記偏光選択反射膜は、直線偏光の偏光方向に応じて選択的に光を反射/透過する直線偏光選択反射膜とされ、
上記偏光状態制御部は、
上記駆動信号に応じて上記入射光の偏光方向を第1の偏光方向による直線偏光又は上記第1の偏光方向とは直交する第2の偏光方向による直線偏光に可変的に制御するように構成されている
請求項1に記載の光照射装置。
【請求項9】
上記第1の反射膜と共に上記第2の反射膜が上記直線偏光選択反射膜で構成され、上記第1の反射膜は上記第1の偏光方向による直線偏光を選択的に反射し、上記2の反射膜は上記第2の偏光方向による直線偏光を選択的に反射するように構成されており、
上記光源はレーザー光源とされ、且つ、
上記光源より発せられた光について画素単で空間光強度変調を施す空間光変調部をさらに備えると共に、
上記偏光状態制御部には、上記光源より発せられた光が上記空間光変調部を介して入射される
請求項8に記載の光照射装置。
【請求項10】
上記偏光状態制御部は、
上記空間光変調部にて生成された信号光が入射する領域である信号光入射領域と、上記空間光変調部にて生成される参照光が入射する領域である参照光入射領域とで、それぞれ上記駆動信号に応じて独立して偏光状態を制御することが可能に構成されており、
上記駆動制御部は、
上記第1の記録層を対象とした記録時には、上記信号光入射領域を介した信号光と上記参照光入射領域を介した参照光の双方が上記第1の偏光方向による直線偏光となるように上記偏光状態制御部を駆動制御し、
上記第1の記録層を対象とした再生時には、上記参照光入射領域を介した参照光が上記第1の偏光方向による直線偏光となり、且つ、上記参照光の照射に応じて上記多層ホログラム記録媒体側から上記信号光入射領域に入射した再生光が、上記第2の偏光方向による直線偏光となるように上記偏光状態制御部を駆動制御し、
上記第2の記録層を対象とした記録時には、上記信号光入射領域を介した信号光と上記参照光入射領域を介した参照光の双方が上記第2の偏光方向による直線偏光となるように上記偏光状態制御部を駆動制御し、
上記第2の記録層を対象とした再生時には、上記参照光入射領域を介した参照光が上記第2の偏光方向による直線偏光となり、且つ、上記参照光の照射に応じて上記多層ホログラム記録媒体側から上記信号光入射領域に入射した再生光が、上記第2の偏光方向による直線偏光となるように上記偏光状態制御部を駆動制御する
請求項9に記載の光照射装置。
【請求項11】
上記偏光状態制御部は、
上記信号光入射領域及び上記参照光入射領域がそれぞれ駆動信号のオン/オフに応じて位相変調量π/ゼロによる位相変調を施す液晶位相差素子で構成されており、
上記駆動制御部は、
上記第1の記録層を対象とした記録時には、上記信号光入射領域に形成された上記液晶位相差素子と上記参照光入射領域に形成された上記液晶位相差素子の双方の駆動状態が共にオン又はオフの同じ駆動状態となるように駆動制御を行い、
上記第1の記録層を対象とした再生時には、上記参照光入射領域に形成された上記液晶位相差素子の駆動状態が上記第1の記録層を対象とした記録時の駆動状態と同じとなり、且つ、上記信号光入射領域に形成された上記液晶位相差素子の駆動状態が上記第1の記録層を対象とした記録時の駆動状態とは異なる駆動状態となるように各液晶位相差素子を駆動制御し、
上記第2の記録層を対象とした記録時には、上記信号光入射領域に形成された上記液晶位相差素子と上記参照光入射領域に形成された上記液晶位相差素子の双方の駆動状態が共に上記第1の記録層を対象とした記録時とは異なる駆動状態となるように駆動制御を行い、
上記第2の記録層を対象とした再生時には、上記参照光入射領域に形成された上記液晶位相差素子の駆動状態が上記第2の記録層を対象とした記録時の駆動状態と同じとなり、且つ、上記信号光入射領域に形成された上記液晶位相差素子の駆動状態が上記第2の記録層を対象とした記録時の駆動状態とは異なる駆動状態となるように各液晶位相差素子を駆動制御する
請求項10に記載の光照射装置。
【請求項12】
上記光源は、ホログラムの記録再生を行うための光源とは別途に設けられたものであり、上記記録層に対して記録されたホログラムの定着処理又は上記記録層の記録前励起処理を行うキュア光を照射するためのキュア光源とされる
請求項8に記載の光照射装置。
【請求項13】
上記光源とは別途に設けられ、上記記録層に対して記録されたホログラムの定着処理又は上記記録層の記録前励起処理を行うキュア光を照射するためのキュア光源と、
上記キュア光源より発せられた上記キュア光が入射する位置に設けられ、駆動信号に応じて入射光の偏光方向を上記第1の偏光方向又は上記第2の偏光方向に可変的に制御するように構成されたキュア光用偏光状態制御部とをさらに備え、
上記駆動制御部は、
上記第1の記録層を対象とした上記キュア光の照射を行う場合には、上記キュア光用偏光状態制御部を介した光の偏光方向が上記第1の偏光方向となるように上記キュア光用偏光状態制御部に対する駆動制御を行い、上記第2の記録層を対象としたキュア光の照射を行う場合には、上記キュア光用偏光状態制御部を介した光の偏光方向が上記第2の偏光方向となるように上記キュア光用偏光状態制御部に対する駆動制御を行う
請求項10に記載の光照射装置。
【請求項14】
ホログラムの記録が行われる記録層として第1の記録層と上記第1の記録層の下層側に形成された第2の記録層とを有し、且つ上記第1の記録層下に形成された第1の反射膜と、上記第2の記録層下に形成された第2の反射膜とを有すると共に、少なくとも上記第1の反射膜が、入射光の偏光状態に応じて選択的に光を反射/透過する偏光選択反射膜で構成されている多層ホログラム記録媒体について光照射を行う光照射方法であって、
上記第1の記録層を対象とした光照射を行う場合には、上記第1の反射膜にて選択反射される偏光状態による光を上記多層ホログラム記録媒体に照射し、上記第2の記録層を対象とした光照射を行う場合には、上記第1の反射膜にて選択透過される偏光状態による光を上記多層ホログラム記録媒体に照射する
光照射方法。
【請求項15】
ホログラムの記録が行われる記録層として第1の記録層と上記第1の記録層の下層側に形成された第2の記録層とを有し、且つ上記第1の記録層下に形成された第1の反射膜と、上記第2の記録層下に形成された第2の反射膜とを有すると共に、
少なくとも上記第1の反射膜が、入射光の偏光状態に応じて選択的に光を反射/透過する偏光選択反射膜で構成されている
多層ホログラム記録媒体。
【請求項16】
上記偏光選択反射膜は、円偏光の回転方向に応じて選択的に光を反射/透過する円偏光選択反射膜で構成されている
請求項15に記載の多層ホログラム記録媒体。
【請求項17】
上記偏光選択反射膜は、直線偏光の偏光方向に応じて選択的に光を反射/透過する直線偏光選択反射膜で構成されている
請求項15に記載の多層ホログラム記録媒体。
【請求項18】
上記多層ホログラム記録媒体はディスク状記録媒体とされ、
上記直線偏光選択反射膜は、その光学基準軸の方向が上記多層ホログラム記録媒体の回転方向に沿って変化するようにして形成されている
請求項17に記載の多層ホログラム記録媒体。
【請求項19】
上記第1の反射膜と共に上記第2の反射膜が上記円偏光選択反射膜で構成されており、上記第1の反射膜は所定回転方向による円偏光を選択的に反射し、上記2の反射膜は上記所定回転方向とは逆回転方向による円偏光を選択的に反射するように構成されている
請求項16に記載の多層ホログラム記録媒体。
【請求項20】
上記第1の反射膜と共に上記第2の反射膜が上記直線偏光選択反射膜で構成されており、上記第1の反射膜は第1の偏光方向による直線偏光を選択的に反射し、上記2の反射膜は上記第1の偏光方向とは直交する第2の偏光方向による直線偏光を選択的に反射するように構成されている
請求項17に記載の多層ホログラム記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2010−108554(P2010−108554A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280222(P2008−280222)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】