説明

光硬化性樹脂組成物及びそれを用いた積層体の製造方法

【課題】 簡便な手法で調製可能でありポットライフが長く、温和な条件でかつ短時間で硬化可能であり、更に高屈折率層上に積層可能な低屈折率膜を得ることのできる光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 光硬化性樹脂組成物は、(A)(I)炭素数1〜15のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル構造単位および一部に−CFHユニットを有する炭素数1〜15のフルオロアルキル基とを有する(メタ)アクリル酸エステル構造単位、及び(II)炭素数1〜20であって、少なくとも1つの加水分解可能なアルコキシシリル基を有する置換基を有する(メタ)アクリル酸エステル構造単位を含む(メタ)アクリル系共重合体、および(B)光酸発生剤を含み、成分(A)における(I)の構造単位の割合と(II)の構造単位の割合を特定の関係に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物及びそれを用いた積層体に関するものであり、より詳しくはポットライフが長く、温和な条件でかつ短時間で硬化可能な低屈折率膜を得ることのできる光硬化性樹脂組成物、それを用いた積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示板における要求性能の1つとして反射防止機能が挙げられている。一般的な反射防止機能の原理は、高屈折率層の表面に低屈折率層を設け、高屈折率層で反射する光と低屈折率層で反射する光とをそれらの光路差を利用して互いに干渉させることにより反射光を低減させるものである。
【0003】
画像表示板における要求性能の1つとして反射防止機能が挙げられている。一般的な反射防止機能の原理は、高屈折率層の表面に低屈折率層を設け、高屈折率層で反射する光と低屈折率層で反射する光とをそれらの光路差を利用して互いに干渉させることにより反射光を低減させるものである。
【0004】
従来、このような反射防止膜は、蒸着法やスパッタリング法等の乾式コート法を用いて作製している。乾式コート法によれば、均一な膜を作製可能であるが、生産速度が遅いため製造コストが高くなるという問題があった。このため、近年、反射防止膜をより低コストで作製する方法として、剥離基材上に、乾式コート法に比べて温和な条件でかつ短時間で成膜が可能な湿式コート法で積層した機能層(転写層)を被転写体表面に熱転写あるいは感圧転写する方法(即ち、転写法)に注目し、その転写層を反射防止膜とすることが試みられている。
【0005】
ところで、反射防止膜に利用する低屈折率材料としては、屈折率を低くするためにフッ素系化合物やシラン系化合物を配合した組成物が一般に用いられている。
【0006】
フッ素系化合物を配合した組成物としては、反応基を有する低分子のフッ素系化合物を含むもの(特許文献1、特許文献2)や、不活性なフッ素含有重合体と反応基を有する化合物とを含有するものが提案されている(特許文献3)。なお、低屈折率材料として意図されたものではないが、一般的な低屈折率材料と同じレベルの表面張力を有するアクリルエラストマーとして、フルオロアルキル基と反応性基とを有する(メタ)アクリル共重合体も提案されている(特許文献4)。また、低屈折率材料でありながら、保存安定性を向上させるために、主鎖にフッ素原子を有する反応性含フッ素ポリマーを用いたものが提案されている(特許文献10)
【0007】
しかし、特許文献1や特許文献2の樹脂組成物の場合、含有されているフッ素化合物の分子間力が弱いため、樹脂組成物の塗工時に有毒なフッ素化合物が揮発する可能性があり、また、特許文献3の樹脂組成物の場合には、その塗工後に不活性なフッ素含有重合体が揮発する可能性が少なくなっているものの、より低屈折率の膜を得ようとすると、反応基を有する化合物の添加量が相対的に少なくなり、膜自体の強度が弱くなるという問題がある。また、特許文献4のアクリルエラストマーを低屈折率膜として用いた場合には、塗工時に加熱しなければならないため、基材がプラスチックの場合熱変形する危険性がある。また温和な条件で成膜すると時間がかかるため、生産性が低下する可能性がある。
【0008】
一方、シラン系化合物を配合した樹脂組成物としては、シリル基を有する低分子シラン化合物に光酸発生剤を加えたもの(特許文献5)、フッ素含有シリケート化合物とアクリル酸エステルとを組み合わせたもの(特許文献6)、オルガノシランの加水分解物と含フッ素重合体を組み合わせたもの(特許文献7〜9)が提案されている。
【0009】
しかし、特許文献5の組成物の場合、アルコキシシラン濃度が高く、硬化に時間がかかり生産性が低下するという問題があった。また、低屈折率薄膜を形成するために特許文献5の組成物にフッ素含有シラン化合物を添加した場合には、フッ素化合物の分子間相互作用が低いため、組成物を薄膜塗工した場合には揮発する危険性が増大するという問題があった。特許文献6〜9の組成物の場合、シラン化合物の加水分解時の水や酸などの触媒が組成物中に残存するため、保存時に沈殿物が発生する危険性がある。更に、特許文献7〜9の組成物では、その保存安定性を向上させるために添加したオルトギ酸エチルなどの脱水剤を蒸発除去させる必要があるため、高温での処理が必要となり、また、含フッ素重合体を作製する工程とその後のオルガノシランの加水分解物を作製する工程とが必須であり、製造コストが増大するという問題があった。加えて、シラン化合物あるいはその加水分解物は、含フッ素共重合体に比べ屈折率が高いため、それらを含有する組成物の低屈折率化は困難であった。
【0010】
また、転写法では転写層を被転写材上に一括して転写するために、以上説明した特許文献1〜10の組成物から転写材の転写性反射防止層を作製する場合には、転写材基材上に低屈折率層を設け、その低屈折率層上に更に高屈折率層を設ける必要がある。しかし、特許文献1〜10にあるようなフッ素原子を含む化合物を含有する組成物は、一般に強い撥水と溌油性とを示し(特許文献8)、従って、このような組成物からなる硬化膜上に更にに別の層(例えば、高屈折率層)を積層することが困難な場合が多い。
【0011】
このように、簡便な手法で調製可能でありポットライフが長く、温和な条件でかつ短時間で硬化可能であり、更に低屈折率層上に積層可能な低屈折率膜を得ることのできる樹脂組成物が望まれていた。
【0012】
【特許文献1】特開平4−272988号公報
【特許文献2】特開2000−17099号公報
【特許文献3】特開平6−136062号公報
【特許文献4】特開平2−182712号公報
【特許文献5】特開平8−302284号公報
【特許文献6】特開2001−207120号公報
【特許文献7】特開2000−109694号公報
【特許文献8】特開2000−167993号公報
【特許文献9】特開2002−22905号公報
【特許文献10】特開2003−26732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、簡便な手法で調製可能でありポットライフが長く、温和な条件でかつ短時間で硬化可能であり、更に低屈折率層上に積層可能な低屈折率膜を得ることのできる樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、加水分解性シリル基を有する含フッ素アクリル系重合体と光酸発生剤とからなる光硬化性樹脂組成物が、簡便な手法で調製可能でありポットライフが長く、温和な条件でかつ短時間で硬化可能であり、更にそれから形成された低屈折率層上に他の高屈折率層が積層可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、以下の成分(A)および(B):
(A)下記化学式(I)及び(II)で示される構造単位を含む(メタ)アクリル系共重合体;
【0016】
【化1】

【0017】
(式(I)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜15のフルオロアルキル基を表す。但し、Rの一部は−CFHユニットを有する炭素数1〜15のフルオロアルキル基を表す。)
【0018】
【化2】

【0019】
(式(II)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜20であって、少なくとも1つの加水分解可能なアルコキシシリル基を有する置換基を表す。); および
(B)光酸発生剤
を含み、成分(A)における化学式(I)で示される構造単位の割合を(X mol%)とし、化学式(II)で示される構造単位の割合を(Y mol%)としたときに下記式(1)および(2)の関係を満足する光硬化性樹脂組成物を提供する。
【0020】
【数1】

【0021】
また、本発明は、基材上に硬化樹脂層が積層された積層体の製造方法であって、以下の工程(a)および(b):
(a)基材上に上述の光硬化性樹脂組成物の膜を形成する工程; および
(b)得られた光硬化性樹脂組成物の膜に活性エネルギー線を照射することにより硬化させ、硬化樹脂層を形成する工程
を含む製造方法、並びにその具体的態様として、離型ベースフィルムと、その上に設けられた硬化樹脂層を含む転写層とを有する転写材の製造方法において、以下の工程(a′)および(b′):
(a′)離型ベースフィルム面上に前述の光硬化性樹脂組成物の膜を形成する工程; および
(b′)得られた光硬化性樹脂組成物の膜に活性エネルギー線を照射することにより硬化させ、硬化樹脂層を形成する工程
を含む転写材の製造方法を提供する。
【0022】
また、本発明は、基材上に硬化樹脂層が積層された積層体であって、そのうちの少なくとも1層が前述の光硬化性樹脂組成物から形成されてなる積層体、およびその具体的態様として、離型ベースフィルムと、その上に設けられた転写層とを有する転写材において、転写層が前述の光硬化性樹脂組成物からなる硬化樹脂層を含むことを特徴とする転写材を提供する。
【0023】
また、本発明は、被転写体の表面に、前述の転写材の転写層が転写されてなることを特徴とする転写物を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、−CFHユニットを有する含フッ素(メタ)アクリル系単量体単位と、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系単量体単位とを含む(メタ)アクリル系共重合体および光酸発生剤を含有しているので、簡便な手法で調製可能でありポットライフが長く、温和な条件でかつ短時間で硬化可能であり、更にそれから形成された低屈折率層上に他の高屈折率層が積層可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書においてアクリロイル基またはメタクリロイル基を(メタ)アクリレート基、アクリル酸またはメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と略記することがある。
【0026】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、以下の成分(A)および(B):
(A)下記化学式(I)及び(II)で示される構造単位を含む(メタ)アクリル系共重合体;
【0027】
【化3】

【0028】
(式(I)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜15のフルオロアルキル基を表す。但し、Rの一部は−CFHユニットを有する炭素数1〜15のフルオロアルキル基を表す。)










【0029】
【化4】

【0030】
(式(II)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜20であって、少なくとも1つの加水分解可能なアルコキシシリル基を有する置換基を表す。); および
(B)光酸発生剤
を含み、成分(A)における化学式(I)で示される構造単位の割合を(X mol%)とし、化学式(II)で示される構造単位の割合を(Y mol%)としたときに下記式(1)および(2)の関係を満足する光硬化性樹脂組成物を提供する。
【0031】
【数2】

【0032】
上述の式において、「(X mol%) / {(X mol%) + (Y mol%)}」の数値が0.5未満であると、光硬化性樹脂組成物から得られる硬化樹脂膜の屈折率が上昇して良好な反射防止機能が得られず、0.9を超えると相対的に成分(B)の含有量が低下するため膜強度が低下する。また、「(Y mol%) / {(X mol%) + (Y mol%)}」の数値が0.5を超えると、相対的に成分(A)の含有量が低下し硬化樹脂膜の屈折率が上昇し良好な反射防止機能が得られず、0.1未満であると膜強度が低下する。
【0033】
また、硬化樹脂層の屈折率及び表面硬度の観点から、光硬化性樹脂組成物は、更に以下の式(1a)および(2a)の関係を満足することが好ましい。
【0034】
【数2】

【0035】
本発明の光硬化性樹脂組成物を構成する成分(A)の化学式(I)及び(II)で示される構造単位からなる(メタ)アクリル系共重合体は、積層可能な低屈折率の硬化樹脂膜を得、且つ膜強度を上げるための成分であり、しかも、一般的な塗料で用いられる非ハロゲン系溶媒に溶解性を示す。
【0036】
成分(A)の(メタ)アクリル系共重合体を構成する化学式(I)の構造単位は、特に硬化樹脂膜の屈折率を下げることに寄与している。ここで、化学式(I)におけるXは水素原子またはメチル基であるが、膜強度を高く保つためにはメチル基であることが好ましい。また、Rは炭素数1〜15、好ましくは2〜10、より好ましくは3〜6のフルオロアルキル基である。但し、硬化樹脂膜の表面の濡れ性を向上させ、積層可能な硬化膜を得るために、そのフルオロアルキル基の一部は、−CFHユニットを有する炭素数1〜15のフルオロアルキル基とする必要がある。この場合、Rの全「炭素数1〜15のフルオロアルキル基」中の「−CFHユニットを有する炭素数1〜15のフルオロアルキル基」の割合は、低すぎると濡れ性向上効果が十分でなく、高すぎると屈折率が下がりにくくなるので、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%である。
【0037】
化学式(I)で示される構造単位を構成するために必要な−CFHユニットを含む単量体の好ましい具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、得られる硬化樹脂膜の膜強度の点から1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート(2,2,3,3,4,4,5,5,−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート)が特に好ましい。
【0038】
化学式(I)で示される構造単位を構成するために必要に応じて用いることのできる、−CFHユニットを含まない単量体の具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の末端にトリフルオロメチル基を有するフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロシクロアルキル(メタ)アクリレート;トリフルオロメチルシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
一方、化学式(II)の構造単位は、硬化樹脂膜の架橋密度を向上させ膜強度を向上させることに寄与している。ここで、化学式(II)におけるXは水素原子またはメチル基であるが、膜強度を高く保つためにはメチル基であることが好ましい。また、Rは炭素数1〜20、好ましくは3〜15、より好ましくは3〜10であって、少なくとも1つ、好ましくは1〜2個の加水分解可能なアルコキシシリル基を有する置換基を表す。加水分解可能なアルコキシシリル基は、加水分解によってシラノール結合を生成することが可能な公知の置換基であれば特に制限はない。
【0040】
化学式(II)で示される構造単位を構成するための単量体の具体例としては、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類が挙げられる。
【0041】
化学式(I)及び(II)で示される構造単位を含む(メタ)アクリル系共重合体は、上記単量体を重合させることによって得ることができる。また、化学式(II)で示される構造単位は公知の方法を用いて重合体側鎖に加水分解性シリル基を導入することによって得ることもできる。例えば、1)重合体側鎖の不飽和二重結合に対し遷移金属触媒の存在下、トリアルコキシシランを付加させるヒドロシリル化反応、2)重合体側鎖のエポキシ基に対し、メルカプト基もしくはアミノ基を有するアルコキシシラン類を付加反応させる方法、3)重合体側鎖のヒドロキシ基に対しイソシアネート基を有するアルコキシシランを反応させウレタン結合によりシリル化する方法などを用いることができる。
【0042】
本発明の光重合性樹脂組成物は、成分(B)として光酸発生剤を含有する。光酸発生剤は、活性エネルギー線の照射を受けて分解し、成分(A)の(メタ)アクリル系共重合体中の加水分解性シリル基に作用して硬化反応を生じさせることが可能な酸性活性物質を放出することができる化合物である。ここで、活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、レーザー、電子線、エックス線などの広範囲のものを使用することができるが、これらの中でも紫外線を用いることが実用面から好ましい。具体的な紫外線発生源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0043】
成分(B)の光酸発生剤の例としては、オニウム塩やスルホン酸誘導体を挙げることができる。ここで、オニウム塩のカチオンはオニウムイオンであり、具体例としてはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O,I、Br、Clまたは−N≡Nからなるオニウムイオンが挙げられる。アニオンの具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4-)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6-)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6-)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6-)、ヘキサクロルアンチモネート(SbCl6-)、テトラフェニルボレート、テトラキス(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロメチルフェニル)ボレート、過塩素酸イオン(ClO4-)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3-)、フルオロスルホン酸イオン(FSO3-)、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸アニオン、トリニトロトルエンスルホン酸アニオン等が挙げられる。オニウム塩としては上記カチオン、アニオンの各種組み合わせを利用することができるが、より毒性が少なく且つ硬化速度の速いスルホニウムカチオンとホスホニウムアニオンの組み合わせが好ましい。
【0044】
スルホン酸誘導体の例としては、ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、イミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類、1−オキシ−2−ヒドロキシ−3−プロピルアルコールのスルホネート類、ピロガロールトリスルホネート類、ベンジルスルホネート類を挙げることができる。具体例としては、ジフェニルジスルホン、ジトシルジスルホン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(クロルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシリルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(t−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド メチルスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド トシルスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド トリフルオロメチルスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド カンファースルホネート、コハク酸イミド フェニルスルホネート、コハク酸イミド トシルスルホネート、コハク酸イミド トリフルオロメチルスルホネート、コハク酸イミド カンファースルフォネート、フタル酸イミド トリフルオロスルホネート、シス−5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸イミド トリフルオロメチルスルホネート、ベンゾイントシラート、1,2−ジフェニル−2−ヒドロキシプロピル トシラート、1,2−ジ(4−メチルメルカプトフェニル)−2−ヒドロキシプロピル トシラート、ピロガロール メチルスルホネート、ピロガロール エチルスルホネート、2,6−ジニトロフェニルメチル トシラート、オルト−ニトロフェニルメチル トシラート、パラ−ニトロフェニル トシラート等を挙げることができる。
【0045】
成分(B)の光酸発生剤の光硬化合性樹脂組成物中の配合量は、後述する希釈剤を除いた光硬化性樹脂組成物の固形分(硬化前に既に固形の成分および硬化後に固形となる成分のトータル)100質量部に対し、好ましくは0.1〜15質量部、より好ましくは1〜10質量部である。
【0046】
また、光硬化性樹脂組成物には、その塗工性を改善するために、希釈剤を添加することができる。希釈剤の添加量は、形成すべき硬化層の膜厚等に応じて、適宜決定することができる。例えば、硬化層の厚みを0.1μm程度とする場合には、固形分5.25質量%に対し希釈剤94.75質量%とし、ウェット膜厚で1.9μmで塗工することが好ましい。
【0047】
希釈剤としては、一般の樹脂塗工液に用いられている希釈剤を使用することができ、具体的には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチルなどのエステル系化合物;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、ジオキサン等のエーテル系化合物;トルエン、キシレンなどの芳香族化合物;ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族化合物;塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルムなどのハロゲン系炭化水素;メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノールなどのアルコール化合物などを挙げることができる。
【0048】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、更に、無機フィラー、重合禁止剤、着色顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、分散剤、光拡散剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、非反応性ポリマー、近赤外線吸収剤などを本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0049】
また、本発明の光硬化性樹脂組成物は、以上説明した成分(A)および(B)と、必要に応じて配合される他の添加成分とを、常法に従って均一に混合することにより調製することができる。
【0050】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、基材上に塗布し、光硬化させることにより基材層と本発明の光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化樹脂からなる層(以下、硬化樹脂層ということがある。)とからなる積層体とすることができる。このような積層体は、使用する基材の種類、厚み、物性、また、光硬化性樹脂組成物からなる硬化樹脂層の物性や厚み、必要に応じて積層される接着層などの付加的な熱可塑性層、熱硬化性層あるいは光硬化性層の種類や性質等に応じて、広範囲な利用が可能であり、例えば、転写材、反射防止材等の低屈折率層として使用可能である。
【0051】
このような積層体の基材としては、板状またはフィルム状であれば特に制限はなく、鉄、アルミニウムなどの金属基材、ガラス基材、セラミックス基材、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート等の樹脂基材などを挙げることができる。
【0052】
このような積層体は、以下の工程(a)および(b)を含む製造方法により製造することができる。以下、工程毎に説明する。
【0053】
工程(a)
まず、基材上に本発明の光硬化性樹脂組成物の膜を形成する。膜の形成手法としては、含浸法、凸版印刷法、平板印刷法、凹版印刷などで用いられるロールを用いた塗工法、基材に噴霧するようなスプレー法、カーテンフローコートなどの公知の手法を利用することができる。光硬化性樹脂組成物に希釈剤が含有されている場合には、その塗工膜を加熱炉や遠赤外炉、超遠赤外炉などの中で加熱し乾燥することが好ましい。
【0054】
基材としては、板状またはフィルム状の、金属(鉄、アルミニウムなど)基板、ガラス基板を含むセラミック基板、アクリル樹脂、PET、ポリカーボネートなどのプラスチック基板、熱硬化性樹脂基板等を使用することができる。
【0055】
工程(b)
工程(a)で得られた光硬化性膜に、紫外線、可視光、レーザー、電子線、エックス線等の活性エネルギー線を照射して硬化させ、硬化樹脂層を形成する。これにより、基材上に本発明の光硬化性樹脂組成物からなる硬化樹脂層が積層された積層体が得られる。なお、紫外線を使用する場合の光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。
【0056】
このようにして得られる積層体は、基材と硬化樹脂層との2層構造に限られず、熱可塑性、熱硬化性、光硬化性の材料の層を予め設けていてもよく、あるいは硬化層形成後に改めて設けてもよい。
【0057】
以上、本発明の光硬化性樹脂組成物、それからなる硬化樹脂層を有する積層体およびその製造方法について説明したが、これらの積層体および製造方法の好ましい具体的な態様の一例として転写材およびその製造方法を以下に示す。なお、それらの中の用語の意味は既に説明した通りである。
【0058】
本発明の転写材の転写層は、上述した光硬化性樹脂組成物からなる硬化樹脂層を少なくとも一層有するものであり、従って、硬化樹脂層単独であってもよいが、他の低屈折率層、高屈折率層、ポリマー層などを含む2層以上の多層構造でもよい。
【0059】
例えば、転写層は、転写材の使用目的に応じて、高屈折率層や他の低屈折率層等と組み合わせて反射防止層として使用できる。また、アクリル系またはシリコン系などのハードコート層、抗菌層等の機能層、印刷層、着色層等の装飾層、金属または金属化合物からなる蒸着層(導電層)、プライマー層なども含むことができる。
【0060】
かかる転写層の層構成の具体例としては、硬化樹脂層/ハードコート層、硬化樹脂層/高屈折率層/ハードコート層、硬化樹脂層/高屈折率層/蒸着層/プライマー層/ハードコート層、硬化樹脂層/高屈折率層/プライマー層/蒸着層/プライマー層/ハードコート層、硬化樹脂層/高屈折率層/プライマー層/ハードコート層、印刷層/硬化樹脂層/高屈折率層、装飾層/硬化樹脂層/高屈折率層等が挙げられる。
【0061】
上記硬化樹脂層の膜厚は、特に制限はないが、通常0.5〜20μm程度の範囲から適宜選択される。また、他の層の膜厚においても、特に制限はないが、通常0.1〜10μm程度の範囲から適宜選択される。
【0062】
光硬化性樹脂組成物から硬化樹脂層を形成するためには、成膜した光硬化性樹脂組成物の膜に、公知の光重合性樹脂の光硬化技術に準じて、紫外線、可視光線、α線、β線、γ線、電子線、レーザーなどの広範囲の活性エネルギー線を使用することができる。これらの中でも、紫外線を用いることが好ましい。光源は点光源、線光源、面光源等の任意のものを使用することができるが、実用性の点からは線光源が一般的である。たとえば、紫外線発生源としては実用性、経済性の面から紫外線ランプが一般に用いられ、具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。なお、点光源または線光源を使用する場合には、光硬化性樹脂組成物からなる層に所定量の光を照射できるように適宜走査すればよい。
【0063】
転写材は、離型ベースフィルムとその上に上述の転写層とを有するものであるから、かかる転写材の層構成の具体例としては、離型ベースフィルム/硬化樹脂層/ハードコート層、離型ベースフィルム/硬化樹脂層/高屈折率層/ハードコート層、離型ベースフィルム/硬化樹脂層/高屈折率層/蒸着層/プライマー層/ハードコート層、離型ベースフィルム/硬化樹脂層/高屈折率層/プライマー層/蒸着層/プライマー層/ハードコート層、離型ベースフィルム/硬化樹脂層/高屈折率層/プライマー層/ハードコート層、離型ベースフィルム/印刷層/硬化樹脂層/高屈折率層、離型ベースフィルム/装着層/硬化樹脂層/高屈折率層等が挙げられる。
【0064】
本発明の転写材に用いる離型性ベースフィルムとしては、特に制限はなく、例えば、20℃での40dyn/cm以下の表面張力を示すような離型性を有し、充分な自己保持性を有する通常の転写材に用いられるフィルムであれば用いることができる。本発明かかる離型ベースフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリフッ化ビニルフィルム、ポリヘキサフルオロプロピレンフィルム、ポリ(ヘプタフルオロイソプロピル(メタ)アクリレートフィルム等のフッ素系樹脂フィルム、ポリオキシジメチルシリレン、ポリオキシメチルシリレン、ポリオキシジメチルシリレン−α,ω−ジブタン酸、ポリオキシビニルシリレン等のケイ素含有重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、セルロースアセテートフィルムなどの樹脂フィルム、セロハン紙、グラシン紙などの洋紙、和紙、これらの複合フィルム状物、それらに離型処理を施したもの等が挙げられる。
【0065】
離型性ベースフィルムの厚さは、特に限定されないが、しわや亀裂の発生を抑制するために、通常4〜150μmの範囲であることが好ましく、12〜100μmの範囲であることがより好ましく、30〜100μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0066】
上記離型性ベースフィルムの離型性が不十分な場合は、離型性ベースフィルムの少なくとも片面にさらに離型処理を行うことができる。かかる離型処理は、離型性ポリマーやワックスなどを適宜選択して公知の方法で行うことができる。かかる離型処理に用いる処理剤としては、例えば、パラフィンワックス等の離型性ワックス;シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、尿素−メラミン系樹脂、セルロース系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂などの離型性樹脂;各種界面活性剤などを、単独で又は溶剤などと混合して、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法に従って離型性ベースフィルム上に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて硬化(加熱、紫外線照射、電子線照射、放射線照射)させて形成することができる。
【0067】
本発明の転写材には、前述のように、多層構造の転写層中の層間にプライマー層を設けることができる。かかるプライマー層は、本発明の転写材における層と層の両者に接着性のよいポリマー成分を主とする組成物の塗布層であり、厚さは0.5〜5μm程度の範囲が好ましい。プライマー層の具体例としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂等の層が挙げられる。これらの層は、例えば上記樹脂を溶剤に溶解後、上記印刷法などにより塗布し、乾燥して形成することができる。
【0068】
本発明の転写材は、以下に説明するように工程(a′)と工程(b′)とを含む製造方法に従って製造することができる。
【0069】
工程(a′)
離型べースフィルム上に、前述の本発明の光硬化性樹脂組成物を塗布して光硬化性樹脂組成物の膜を形成する。離型べースフィルム、光硬化性樹脂組成物については、既に説明したとおりである。
【0070】
工程(b′)
工程(a′)で得られた光硬化性樹脂組成物の膜に、既に説明したような活性エネルギー線を照射する。これにより、光硬化性樹脂組成物の膜は硬化して硬化樹脂層となる。これにより、本発明の光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化樹脂層を有する転写材が得られる。
【0071】
このようにして得られる転写材は、離型ベースフィルムと硬化樹脂層との2層構造に限られず、熱可塑性、熱硬化性、光硬化性の材料の層を予め設けていてもよく、あるいは硬化層形成後に改めて設けてもよい。
【0072】
本発明による転写材は、最表面層を被転写材に密着させつつ加熱することによって被転写材に転写層を熱転写することが可能である。被転写材としては、形状等は特に限定されないが、好ましい例として、例えば、市販樹脂シート、フィルム、ガラス板などを挙げることができる。また、表示画面保護板などに使用する場合には、被転写材として樹脂シートであることが好ましい。かかる樹脂の具体例としては、可視光波長において透明であれば特に制限されないが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体(MS樹脂)等が好ましく用いられる。
【0073】
本発明の転写材は、画像表示装置、ヘルメットシールド等の被転写体の表面に、転写層を手軽に低コストで良好な転写効率で転写させることができる。従って、得られる転写物は、良好な外観の転写物となる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0075】
参考例1(含フッ素アクリル系重合体の製造)
100mLの3ッ口フラスコに、メチルイソブチルケトン(40g)、表1に示す重合単量体(20g)を加えた後、フラスコ内を窒素置換し、アゾビスイソブチロニトリル(40mg)を加え80℃で6時間攪拌して重合させた。反応終了後、反応液をヘキサン中に滴下してポリマーを析出させ、析出したポリマーを濾取し、真空乾燥機にて室温で12時間乾燥させることにより含フッ素アクリル系重合体を得た。
【0076】
【表1】

【0077】
(表1注)
*1: 2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(商品名ビスコート3FM 大阪有機化学(株)製)
*2: 1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート(商品名ビスコート8FM 大阪有機化学(株)製)
*3: 1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート(商品名ビスコート17FM 大阪有機化学(株)製)
*4: γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM−503 信越化学工業(株)製)
*5: [化学式(I)で表される構造単位]/([化学式(I)で表される構造単位]+[化学式(II)で表される構造単位])×100(mol%)を表す

【0078】
参考例2(高屈折率樹脂組成物の製造)
チタン微粒子(商品名 HIT、日産化学社製)1.8質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:DPCA−60 日本化薬株式会社製)1.2質量%、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184 チバスペシャリティーケミカルズ株式会社)0.15質量%、およびイソプロパノール96.85質量%を混合して高屈折率樹脂組成物を得た。
【0079】
参考例3(積層板用ハードコート樹脂組成物の製造)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:DPCA−60 日本化薬株式会社製)12質量%、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート(商品名ビスコート#540、大阪有機化学工業(株)製)18質量%、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184 チバスペシャリティーケミカルズ株式会社)1.5質量%およびメチルイソブチルケトン68.5質量%を混合し、積層板用のハードコート樹脂組成物を得た。
【0080】
参考例4(転写箔用ハードコート樹脂組成物の製造)
エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート5質量%(商品名ビスコート#540 大阪有機化学工業(株)製)、トリアジントリアクリレート2質量%(商品名M315、東亜合成(株)製)、エポキシ変性フェノキシアクリレート4質量%(商品名M600A、共栄社化学(株)製)、γアクリロイルキシプロピルトリメトキシシラン4質量%(商品名KBM5103 信越化学工業(株)製)、ポリメチルメタアクリレート5質量%(商品名 パラペット 株クラレ社製)、光重合開始剤1質量%(商品名 イルガキュア184 日本チバガイギー(株)製)、およびメチルエチルケトン79質量%を混合し、転写箔用のハードコート樹脂組成物を得た。
【0081】
実施例1〜6、比較例1〜2
板厚2mmのアクリル樹脂板上に、乾燥膜厚で10μmになるように参考例3に示すハードコート樹脂組成物を塗布し、130℃で30秒乾燥した後、80W高圧水銀灯(ウシオ電機(株)製)を備えたベルトコンベア(コンベア速度1m/min、光源と被照射物の距離10cm)を用いて紫外線を1回照射し、ハードコート樹脂組成物を硬化させてハードコート層を形成した。更に、このハードコート層上に参考例2に示す高屈折率樹脂組成物を乾燥膜厚で0.1μmとなるよう塗布し、ハードコート層作成条件と同様の方法で高屈折率層を形成した。更に、この高屈折率層上に、表2に示す低屈折率樹脂組成物を、乾燥膜厚で0.1μmとなるよう塗布し、ハードコート層作成条件と同様の方法で低屈折率層を形成し、アクリル樹脂板/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層からなる積層体を得た。
【0082】
(評価)
各実施例および比較例で使用した低屈折率樹脂組成物の「保存安定性」、各実施例および比較例の積層体の低屈折率面の「反射率」および「耐擦過性」について、以下に説明するように試験、評価し、得られた結果を表2に示す。
【0083】
保存安定性
低屈折率樹脂組成物を、湿度50%、温度25℃の環境下に6ヶ月間保管した後、外観変化や硬化性変化を、以下の基準にて評価した。
◎: 6ヶ月間保管後でも外観、硬化性に変化が見られない場合
○: 3ヶ月保管時点では外観、硬化性に変化が見られなかったが、3ヶ月〜6ヶ月保管中に外観、硬化性に変化が見られた場合
×:1ヶ月保管時点で既に外観、硬化性に変化が見られた場合
【0084】
反射率
積層板の転写層の5°正反射率を測定し、400nm〜700nmにおける最小反射率を測定し、以下の基準で評価した。
◎: 最小反射率が0.5%未満である
○: 最小反射率が0.5%以上1.0%未満である
×: 最小反射率が1.0%以上である
【0085】
耐擦過性
チーズクロス12枚を重ねたものを直径0.6mmの金属棒の先端に取り付け、それを積層板の転写層に1.6Kg重の加重をかけて接触させ、その状態で転写層の表面を150回往復させたときに、積層体から転写層の剥離が生じているか否かを目視で確認し、以下の基準で評価した。
○: 表層が剥離していない場合
×: 表層が剥離している場合
【0086】
【表2】

【0087】
(表2注)
*6: 参考例1参照
*7: 商品名UN−3320HC、根上工業(株)社製
*8: 2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(商品名ビスコート3FM 大阪有機化学(株)製)
*9: 1,2−ジフェニル−2−ヒドロキシプロピルトシレート(商品名 CD−1012 サートマー(株)社製)
*10: 商品名 イルガキュア184 チバ・スペシャリティーケミカルズ(株)社製
【0088】
表2の結果から、実施例1〜6で調製した低屈折率樹脂組成物は、良好な保存安定性を示し、しかもその硬化膜を利用した反射防止膜は、低い反射率と良好な耐擦過性を示したことがわかる。一方、比較例1および2で調製した低屈折率樹脂組成物は、保存安定性は良好であったが、反射率と耐擦過性のいずれかに問題があった。
【0089】
実施例7〜12、比較例3〜4(転写板の製造)
50μm厚のポリエステルフィルム上に、実施例1〜6並びに比較例1〜2で得られた低屈折率樹脂組成物をそれぞれ乾燥膜厚で1μmとなるように塗工後、130℃で30秒乾燥し、更に紫外線照射(80W高圧水銀灯、速度1m/分、1パス)を行い、低屈折率層を形成した。低屈折率層上に参考例2に示す高屈折率樹脂組成物を、乾燥膜厚1μmとなるように塗工後、130℃で30秒乾燥し、更に紫外線照射(80W高圧水銀灯、速度1m/分、1パス)を行い、高屈折率層を形成した。更に、高屈折率層上に、参考例4に示す転写箔用ハードコート樹脂組成物を、乾燥膜厚10μmとなるように塗工後、130℃で30秒乾燥し、更に紫外線照射(80W高圧水銀灯、速度1m/分、1パス)を行うことにより、ポリエステルフィルム/硬化樹脂層(低屈折率層)/高屈折率層/ハードコート層からなる転写材を得た。
【0090】
得られた転写フィルムを、2mm厚のポリメチルメタクリレート板に熱転写(ロール速度1m/分、ロール温度160℃)し、ポリエステルフィルムを剥離して積層板を得た。得られた積層板について、実施例1と同様に、転写層の耐擦傷性、反射率の評価を行った。結果を表3に示す。
【0091】
【表3】

【0092】
(表3注)
*11:熱転写後ポリエステルフィルムが剥離できなかったため評価せず
*12:低屈折率層上に高屈折率層が積層できなかったため評価せず
【0093】
表3の結果から、被転写体に転写された、実施例7〜12の反射防止膜は、低い反射率と良好な耐擦過性を示したことがわかる。一方、比較例3および4の場合には、そもそも転写ができず、評価不能であった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、簡便な手法で調製可能であり、ポットライフが長く、温和な条件でかつ短時間で硬化可能な低屈折率膜を得ることができるので、反射防止膜としてラミネート箔や転写箔、画像表示画面保護板、ヘルメットシールド等の物品に有利に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)および(B):
(A)下記化学式(I)及び(II)で示される構造単位を含む(メタ)アクリル系共重合体;
【化1】

(式(I)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜15のフルオロアルキル基を表す。但し、Rの一部は−CFHユニットを有する炭素数1〜15のフルオロアルキル基を表す。)
【化2】

(式(II)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。Rは炭素数1〜20であって、少なくとも1つの加水分解可能なアルコキシシリル基を有する置換基を表す。); および
(B)光酸発生剤
を含み、成分(A)における化学式(I)で示される構造単位の割合を(X mol%)とし、化学式(II)で示される構造単位の割合を(Y mol%)としたときに下記式(1)および(2)

【数1】


の関係を満足する光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
化学式(I)で表される構造単位が、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート由来の構造単位である請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
成分(A)において化学式(II)で表される構造単位が、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン由来の構造単位である請求項1または2記載の光硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
基材上に硬化樹脂層が積層された積層体であって、該硬化樹脂層が請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物から形成された層を含む積層体。
【請求項5】
基材上に硬化樹脂層が積層された積層体の製造方法であって、以下の工程(a)および(b):
(a)基材上に請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物の膜を形成する工程;および
(b)得られた光硬化性樹脂組成物の膜に活性エネルギー線を照射することにより硬化させ、硬化樹脂層を形成する工程
を含む製造方法。
【請求項6】
離型ベースフィルムと、その上に設けられた転写層とを有する転写材において、転写層が請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物からなる硬化樹脂層を含むことを特徴とする転写材。
【請求項7】
離型ベースフィルムと、その上に設けられた硬化樹脂層を含む転写層とを有する転写材の製造方法において、以下の工程(a′)および(b′):
(a′)離型ベースフィルム面上に請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物の膜を形成する工程; および
(b′)得られた光硬化性樹脂組成物の膜に活性エネルギー線を照射することにより硬化させ、硬化樹脂層を形成する工程
を含む転写材の製造方法。
【請求項8】
被転写体の表面に、請求項6記載の転写材の転写層が転写されてなることを特徴とする転写物。

【公開番号】特開2006−169375(P2006−169375A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363630(P2004−363630)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】