説明

光記録媒体並びに光記録方法及び光記録装置

【課題】記録感度が高く、記録速度を高めることができ、高多重記録が可能な光記録媒体、並びに、情報光と参照光との干渉により干渉像を短時間で記録し、高多重記録が可能であり、システム性能の向上及び低価格化を図ることができる、該光記録媒体を用いた光記録方法及び光記録装置の提供。
【解決手段】第一の基板と、ホログラフィを利用して情報を記録する第一の記録層及び第二の記録層と、フィルタ層と、第二の基板とを少なくとも有してなり、前記第一の記録層に記録可能な最小照射エネルギーをEとし、前記第二の記録層に記録可能な最小照射エネルギーをEとしたとき、次式、E×100<Eを満たす光記録媒体等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高感度の記録層と高多重記録可能な記録層とが積層された光記録媒体並びに、該光記録媒体を用いた光記録方法及び光記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高密度画像データ等の大容量の情報を書き込み可能な記録媒体の一つとして光記録媒体が挙げられる。この光記録媒体としては、例えば、光磁気ディスク、相変化型光ディスク等の書換型光記録媒体やCD−R等の追記型光記録媒体については既に実用化されているが、光記録媒体の更なる大容量化に対する要求は高まる一方である。しかし、従来より提案されている光記録媒体は全て二次元記録であり、記録容量の増大化には限界があった。そこで、近時、三次元的に情報を記録可能なホログラム型の光記録媒体が注目されている。
【0003】
前記ホログラム型の光記録媒体への情報の記録は、一般に、二次元的な強度分布が与えられた情報光と、該情報光と強度がほぼ一定な参照光とを感光性の記録層内部で重ね合わせ、それらが形成する干渉像を利用して記録層内部に光学特性の分布を生じさせることにより行われる。一方、書き込んだ情報の読み出し(再生)は、記録時と同様の配置で参照光のみを記録層に照射し、記録層内部に形成された光学特性分布に対応した強度分布を有する再生光を前記記録層から出射させることにより行われる。
このようなホログラム型光記録方法においては、記録層内に光学特性分布が三次元的に形成されるので、一の情報光により情報が書き込まれた領域と、他の情報光により情報が書き込まれた領域とを部分的に重ね合わせること、即ち、多重記録が可能である。デジタルボリュームホログラフィを利用した場合には、1スポットの信号対雑音比(SN比)は極めて高くなるので、重ね書きによりSN比が多少低くなっても元の情報を忠実に再現できる。その結果、多重記録回数が数百回までに及び、光記録媒体の記録容量を著しく増大させることができる(特許文献1参照)。
【0004】
前記ホログラム型の光記録媒体としては、例えば、図1に示すように、情報光及び参照光として円偏光を用い、記録層と反射膜との間に、フィルタ層としてのコレステリック液晶層又はダイクロイックミラーを設け、記録層とサーボ層を厚み方向に重ねている。この手法により記録密度は倍増する。また、前記フィルタ層として情報光の円偏光と同じ旋回方向を螺旋構造に持つ単層のコレステリック液晶層を用いると、生産性に優れ、光記録媒体を安価に大量生産することができ、垂直入射0°におけるフィルタ効果は良好となる(特許文献2参照)。しかし、このような光記録媒体に情報を記録する場合、記録層としては一般的なフォトポリマーからなる感光材料が用いられているため、記録感度が比較的低く、レーザ光源として高出力レーザ発振器が必要となり、高価格になってしまうという問題がある。また、露光に時間がかかるため記録速度の高速化を図ることができず、多重記録に向かないという問題もある。一方、前記フォトポリマーよりも記録感度が極めて高い、銀塩などからなる感光材料を記録層として用いると、該記録速度を高めることは可能となるが、該銀塩などからなる感光材料を用いた記録層は厚膜化することができず、多重記録が困難であるいう問題がある。
【0005】
したがって、記録感度が高く、記録速度を高めることができ、高多重記録が可能な記録材料を得ることができ、情報光及び参照光による干渉像を短時間で記録し、高多重記録化を図ることができるホログラム型の光記録媒体、並びに該光記録媒体を用いた光記録方法及び光記録装置は未だ実現されておらず、その速やかな提供が望まれているのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開2002−123949号公報
【特許文献2】特開2004−265472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、記録感度が高く、記録速度を高めることができ、高多重記録が可能な光記録媒体、並びに、情報光と参照光との干渉により干渉像を短時間で記録し、高多重記録が可能であり、システム性能の向上及び低価格化を図ることができる、該光記録媒体を用いた光記録方法及び光記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 第一の基板と、ホログラフィを利用して情報を記録する第一の記録層及び第二の記録層と、フィルタ層と、第二の基板とを少なくとも有してなり、
前記第一の記録層に記録可能な最小照射エネルギーをEとし、前記第二の記録層に記録可能な最小照射エネルギーをEとしたとき、次式、E×100<Eを満たす光記録媒体である。
該<1>に記載の光記録媒体は、前記第一の記録層に記録可能な最小照射エネルギーをEとし、前記第二の記録層に記録可能な最小照射エネルギーをEとしたとき、次式、E×100<Eを満たすため、記録感度及び記録速度が高くなり、高多重記録が可能となる。
<2> 第一の記録層が、銀塩を含む感光材料を含有する前記<1>に記載の光記録媒体である。
該<2>に記載の光記録媒体においては、前記第一の記録層が、銀塩を含む感光材料を含有するため、該第一の記録層が高感度となり、比較的低出力のレーザ光により干渉像を記録することができる。
<3> 第二の記録層が、フォトポリマーを含む感光材料を含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の光記録媒体である。
該<3>に記載の光記録媒体においては、前記第二の記録層が、フォトポリマーを含む感光材料を含有するため、干渉像を該第二の記録層に多重に記録することができる。
<4> 第一の記録層と、第二の記録層とが隣接して積層された前記<1>から<3>のいずれかに記載の光記録媒体である。
該<4>に記載の光記録媒体においては、前記第一の記録層と、前記第二の記録層とが隣接して積層されているため、干渉像が直接前記第二の記録層に転写される。
<5> 第一の記録層の厚みが、4〜100μmである前記<1>から<4>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<6> 第二の記録層の厚みが、0.2〜2.0mmである前記<1>から<5>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<7> フィルタ層が、第一の波長の光を透過し、第二の波長の光を反射する前記<1>から<6>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<8> フィルタ層が、コレステリック液晶層を2層以上積層した積層体である前記<1>から<7>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<9> 各コレステリック液晶層が、円偏光分離特性を有する前記<8>に記載の光記録媒体である。
<10> 各コレステリック液晶層における螺旋の回転方向が互いに同じである前記<8>から<9>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<11> 各コレステリック液晶層における選択反射中心波長が互いに異なる前記<8>から<10>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<12> 各コレステリック液晶層における選択反射波長帯域が連続的である前記<8>から<11>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<13> 第一の光の波長が600〜900nmであり、かつ第二の光の波長が350〜600nmである前記<7>から<12>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<14> λ〜λ/cos20°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上である前記<1>から<13>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<15> λ〜λ/cos40°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上である前記<1>から<14>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<16> コレステリック液晶層の厚みが、1.5〜10μmである前記<8>から<15>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<17> 第二の基板が、サーボピットパターンを有する前記<1>から<16>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<18> サーボピットパターン表面に反射膜を有する前記<17>に記載の光記録媒体である。
<19> 反射膜が、金属反射膜である前記<18>に記載の光記録媒体である。
<20> フィルタ層と反射膜との間に、第二の基板表面を平滑化するための第一ギャップ層を有する前記<18>から<19>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<21> 第二の記録層とフィルタ層との間に、第二ギャップ層を有する前記<20>から<21>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<22> 遮光性のあるケースに収納された前記<1>から<21>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<23> 前記<1>から<22>のいずれかに記載の光記録媒体に情報を記録する光記録方法であって、
可干渉性を有する情報光及び参照光を第一の記録層に照射し、該情報光と該参照光との干渉による第一の干渉像を該第一の記録層に形成し記録する第一の干渉像記録ステップと、
前記参照光を前記第一の干渉像が記録された前記第一の記録層に照射することにより、該第一の記録層を透過した参照光と、該第一の干渉像から生ずる回折光との干渉による第二の干渉像を前記第二の記録層に形成し記録する第二の干渉像記録ステップと
を含むことを特徴とする光記録方法。
該<23>に記載の光記録方法は、前記第一の干渉像記録ステップと、第二の干渉像記録ステップとを含む。該光記録方法では、まず、該第一の干渉像記録ステップにおいて、可干渉性を有する比較的低出力の情報光及び参照光が前記第一の記録層に照射される。その結果、前記第一の記録層のみに、前記第一の干渉像が形成され記録される。次に、該第二の干渉像記録ステップにおいて、該参照光が該第一の干渉像が記録された該第一の記録層に照射される。該参照光は、該第一の記録層を透過する光と、該第一の干渉像に照射され回折光に変換される光とに分かれ、該第一の記録層を透過した光は、前記第二の記録層内で回折光と干渉し、前記第二の干渉像が形成され記録される。その結果、該第一の記録層に記録されている該第一の干渉像が該第二の記録層に転写される。以上により、干渉像を短時間で記録し、高多重記録が可能であり、システム性能の向上及び低価格化を図ることができる。
<24> 第二の干渉像記録ステップの後に、第二の記録層を、他の第二の記録層に交換し、更に第二の干渉像記録ステップを行い、前記他の第二の記録層に第二の干渉像を記録する前記<23>に記載の光記録方法である。
該<24>に記載の光記録方法においては、第二の干渉像記録ステップの後に、第二の記録層が、他の第二の記録層に交換され、更に第二の干渉像記録ステップが行われるため、該他の第二の記録層に第二の干渉像が記録される。その結果、前記第一の記録層に記録された前記第一の干渉像が、該他の第二の記録層に転写され、順次第二の記録層を交換することにより、該第二の記録層を大量生産することができる。
<25> 第二の干渉像記録ステップの後に、第一の記録層を、他の第一の記録層に交換し、更に第一の干渉像記録ステップと、第二の干渉像記録ステップとを行い、第二の記録層に第二の干渉像を重ねて記録する前記<23>に記載の光記録方法である。
該<25>に記載の光記録方法においては、第二の干渉像記録ステップの後に、第一の記録層が、他の第一の記録層に交換され、更に第一の干渉像記録ステップと、第二の干渉像記録ステップとが行われるため、第二の記録層に第二の干渉像が重ねて記録される。その結果、多重記録を実現することができる。
<26> 第一の干渉像記録ステップが、情報光の光軸と参照光の光軸とが同軸となるように、該情報光及び該参照光を第一の記録層に照射し、該情報光と該参照光との干渉による第一の干渉像を該第一の記録層に形成し記録する前記<23>から<25>のいずれかに記載の光記録方法である。
該<26>に記載の光記録方法においては、第一の干渉像記録ステップにおいて、情報光の光軸と参照光の光軸とが同軸となるように、該情報光及び該参照光が第一の記録層に照射する。その結果、情報光と参照光とを別々に第一の記録層に照射するよりも、光学系を大幅に簡素化することができる。
<27> 第一の記録層が、銀塩からなる感光材料を含む前記<23>から<26>に記載の光記録方法である。
<28> 第二の記録層が、フォトポリマーからなる感光材料を含む前記<23>から<27>に記載の光記録方法である。
<29> 第一の記録層と、第二の記録層とが隣接して積層された前記<23>から<28>のいずれかに記載の光記録方法である。
<30> 第一の記録層の厚みが、4〜100μmである前記<23>から<29>のいずれかに記載の光記録方法である。
<31> 第二の記録層の厚みが、0.2〜2.0mmである前記<23>から<30>のいずれかに記載の光記録方法である。
<32> 前記<1>から<22>のいずれかに記載の光記録媒体に情報を記録する光記録装置であって、
可干渉性を有する情報光及び参照光を第一の記録層に照射し、該情報光と該参照光との干渉による第一の干渉像を該第一の記録層に形成し記録する第一の干渉像記録手段と、
前記参照光を前記第一の干渉像が記録された前記第一の記録層に照射することにより、該第一の記録層を透過した参照光と、前記第一の干渉像から生ずる回折光との干渉による第二の干渉像を該第二の記録層に形成し記録する第二の干渉像記録手段と
を有することを特徴とする光記録装置である。
該<32>に記載の光記録装置は、前記第一の干渉像記録手段と、第二の干渉像記録手段とを有する。該光記録装置では、まず、該第一の干渉像記録手段が、可干渉性を有する比較的低出力の情報光及び参照光を前記第一の記録層に照射する。その結果、前記第一の記録層のみに、前記第一の干渉像を形成し記録することができる。次に、該第二の干渉像記録手段が、該参照光を該第一の干渉像が記録された該第一の記録層に照射する。該参照光は、該第一の記録層を透過する光と、該第一の干渉像に照射され回折光に変換される光とに分かれ、該第一の記録層を透過した光は、前記第二の記録層内で回折光と干渉し、前記第二の干渉像が形成され記録される。その結果、該第一の記録層に記録されている該第一の干渉像を該第二の記録層に転写することができる。
<33> 第一の干渉像記録ステップが、情報光の光軸と参照光の光軸とが同軸となるように、該情報光及び該参照光を第一の記録層に照射し、該情報光と該参照光とにより第一の干渉像を形成し、該第一の干渉像を前記第一の記録層に記録する前記<32>に記載の光記録装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、記録感度が高く、記録速度を高めることができ、高多重記録が可能な光記録媒体、並びに、情報光と参照光との干渉により干渉像を短時間で記録し、高多重記録が可能であり、システム性能の向上及び低価格化を図ることができる、該光記録媒体を用いた光記録方法及び光記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(光記録媒体)
本発明の光記録媒体は第一の基板と、ホログラフィを利用して情報を記録する第一の記録層及び第二の記録層と、フィルタ層と、第二の基板とを少なくとも有してなり、必要に応じて適宜選択したその他の層(例えば、第一ギャップ層、第二ギャップ層、など)を有してなる。前記第一の記録層と前記第二の記録層は、隣接して積層されることが好ましい。
また、本発明の光記録層は、前記第一の記録層に記録可能な最小照射エネルギーをEとし、前記第二の記録層に記録可能な最小照射エネルギーをEとしたとき、次式、E×100<Eを満たすことを特徴とする。前記光記録媒体は、遮光性のあるケースに収納されるのが好ましい。
【0011】
<遮光性のあるケース>
前記遮光性のあるケースは、特に高感度の第一の記録層を光から遮断し、記録前に感光材料が光反応をしないよう保護する作用を有する。
前記ケースの構造としては、前記光記録媒体を収納及び保持し、光記録及び光再生の際に取り出すことができるが、前記第一の記録層、前記第二の記録層及び前記フィルタ層に情報光及び参照光の照射がスムースに行えるような構造であれば、単体でも、複数の部材からなる構造でもよい。
前記ケースは、その形状、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、ディスク形状、カード形状などが挙げられ、前記収納が可能であり、外部からの光を遮断し、光記録媒体の機械的強度を確保できる材料のものであればよい。
前記ケースの材料としては、例えば、不透明ガラス、セラミックス、樹脂、などが用いられるが、成形性及びコストに優れる点で、樹脂が特に好適である。
前記樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、成形性、光学特性、及びコストに優れる点で、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂がより好ましい。
【0012】
<第一の記録層>
前記第一の記録層は、前記第二の記録層よりも記録に必要な最小照射エネルギーが小さく、高感度な記録層であり、該第一の記録層に記録可能な最小照射エネルギーをEとし、該第二の記録層に記録可能な最小照射エネルギーをEとしたとき、次式、E×100<Eを満たすように形成される。このように、該第一の記録層の最小照射エネルギーを該第二の記録層の最小照射エネルギーよりも極めて小さく設定するのは、前記情報光及び前記参照光により形成される干渉像を該第一の記録層にのみ短時間のうちに、低エネルギーで記録するためである。
前記最小照射エネルギーEとしては、0.01〜0.3mJ/cmが好ましく、0.01〜0.1mJ/cmがより好ましい。前記Eが、0.01mJ/cm未満であると、露光が不十分となり、記録層に有効な記録がなされないことがあり、0.3mJ/cmを超えると過度の露光により、記録像の劣化、再生ノイズが増加することがある。
【0013】
前記第一の記録層を形成する感光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光に当たると黒化する性質を持つ塩化銀、臭化銀などのハロゲン化銀、高感度フォトポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、銀塩を含む感光材料が、感度に優れる点で、好ましい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
前記第一の記録層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、4〜100μmが好ましく、4〜12μmがより好ましい。前記厚みが、4μm未満であると、情報光及び参照光による生成される干渉像の記録を十分に行うことができないことがあり、100μmを超えると、記録層の光吸収増加により、記録厚み方向の均一性が損なわれることがある。
【0015】
<第二の記録層>
前記第二の記録層は、前記第一の記録層よりも最小照射エネルギーが大きく、前記E×100<Eを満たすように形成される。前記第二の記録層は、前記第一の記録層に比べ光感度は低いが、層を厚く積層することができるフォトポリマーなどの感光材料を用いることにより、前記情報光及び前記参照光により形成される干渉像の高多重記録化を図ることができる。
【0016】
前記第二の記録層を形成する感光材料としては、ホログラフィを利用して情報が記録され得るものであり、所定の波長の電磁波を照射すると、その強度に応じて吸光係数や屈折率などの光学特性が変化する材料が用いられる。
【0017】
前記第二の記録層を形成する感光材料の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)光照射で重合反応が起こり高分子化するフォトポリマー、(2)フォトリフラクティブ効果(光照射で空間電荷分布が生じて屈折率が変調する)を示すフォトリフラクティブ材料、(3)光照射で分子の異性化が起こり屈折率が変調するフォトクロミック材料、(4)ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム等の無機材料、(5)カルコゲン材料、などが挙げられる。
【0018】
前記(1)のフォトポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノマー、及び光開始剤を含有してなり、更に必要に応じて増感剤、オリゴマー等のその他の成分を含有してなるものなどが挙げられる。
【0019】
前記フォトポリマーの具体例としては、例えば、「フォトポリマーハンドブック」(工業調査会、1989年)、「フォトポリマーテクノロジー」(日刊工業新聞社、1989年)、SPIE予稿集 Vol.3010 p354−372(1997)、及びSPIE予稿集 Vol.3291 p89−103(1998)、米国特許第5,759,721号明細書、同第4,942,112号明細書、同第4,959,284号明細書、同第6,221,536号明細書、国際公開第97/44714号パンフレット、同第97/13183号パンフレット、同第99/26112号パンフレット、同第97/13183号パンフレット、特許第二880342号公報、同第二873126号公報、同第二849021号公報、同第3057082号公報、同第3161230号公報、特開2001−316416号公報、特開2000−275859号公報、などに記載されているフォトポリマーなどが挙げられる。
【0020】
前記フォトポリマーに記録光を照射して光学特性を変化させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低分子成分の拡散を利用した方法などが挙げられる。また、重合時の体積変化を緩和するため、該フォトポリマーに、重合成分とは逆方向へ拡散する成分を添加してもよく、或いは、酸開裂構造を有する化合物を重合体の他に別途添加してもよい。なお、前記低分子成分を含むフォトポリマーを用いて該第二の記録層を形成する場合には、該第二の記録層中に液体を保持可能な構造を必要とすることがある。また、該酸開裂構造を有する化合物を添加する場合には、その開裂によって生じる膨張と、モノマーの重合によって生じる収縮とを補償させることにより体積変化を抑制してもよい。
【0021】
前記モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル基やメタクリル基のような不飽和結合を有するラジカル重合型のモノマー、エポキシ環やオキセタン環のようなエーテル構造を有するカチオン重合型系モノマー、などが挙げられる。これらのモノマーは、単官能であっても多官能であってもよい。また、光架橋反応を利用したものであってもよい。
【0022】
前記ラジカル重合型のモノマーとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールA型ジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、2−ナフト−1−オキシエチルアクリレート、2−カルバゾイル−9−イルエチルアクリレート、(トリメチルシリルオキシ)ジメチルシリルプロピルアクリレート、ビニル−1−ナフトエート、N−ビニルカルバゾール、などが挙げられる。
前記カチオン重合型系モノマーとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、グリセロールトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサングリシジルエーテル、ビニルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、下記構造式(A)〜(E)で表される化合物、などが挙げられる。
これらモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【化1】

【0023】
前記光開始剤としては、記録光に感度を有するものであれば特に制限はなく、光照射によりラジカル重合、カチオン重合、架橋反応等を引き起こす材料などが挙げられる。
前記光開始剤の具体例としては、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾール、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ジ−t−ブチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−ジエチルアミノフェニルベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾイン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−2−オン、ベンゾフェノン、チオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルアシルホスフィンオキシド、トリフェニルブチルボレートテトラエチルアンモニウム、下記構造式で表されるチタノセン化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、照射する光の波長に合わせて増感色素を併用してもよい。
【化2】

【0024】
前記フォトポリマーは、前記モノマー、前記光開始剤、更に必要に応じて前記その他の成分を攪拌混合し、反応させることによって得ることができる。
前記フォトポリマーを用いて前記第二の記録層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、得られた前記フォトポリマーが十分低い粘度である場合は、キャスティングすることによって該第二の記録層を形成することができる。一方、得られた前記フォトポリマーがキャスティングできない程に高い粘度である場合は、ディスペンサーを用いて前記第二の基板上にフォトポリマーを盛りつけ、このフォトポリマー上に前記第一の基板で蓋をするように押し付けて、全面に広げて該第二の記録層を形成することができる。
【0025】
前記(2)のフォトリフラクティブ材料としては、フォトリフラクティブ効果を示すものであるならば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電荷発生材、及び電荷輸送材を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなるものなどが挙げられる。
【0026】
前記電荷発生材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、又はそれらの誘導体等のフタロシアニン色素/顔料;ナフタロシアニン色素/顔料;モノアゾ、ジスアゾ、トリスアゾ等のアゾ系色素/顔料;ペリレン系染料/顔料;インジゴ系染料/顔料;キナクリドン系染料/顔料;アントラキノン、アントアントロン等の多環キノン系染料/顔料;シアニン系染料/顔料;TTF−TCNQで代表されるような電子受容性物質と電子供与性物質とからなる電荷移動錯体;アズレニウム塩;C60及びC70で代表されるフラーレン並びにその誘導体であるメタノフラーレン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記電荷輸送材は、ホール又はエレクトロンを輸送する材料であり、低分子化合物であってもよく、又は高分子化合物であってもよい。
前記電荷輸送材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インドール、カルバゾール、オキサゾール、インオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサアジアゾール、ピラゾリン、チアチアゾール、トリアゾール等の含窒素環式化合物、又はその誘導体;ヒドラゾン化合物;トリフェニルアミン類;トリフェニルメタン類;ブタジエン類;スチルベン類;アントラキノンジフェノキノン等のキノン化合物、又はその誘導体;C60及びC70等のフラーレン並びにその誘導体;ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等のπ共役系高分子又はオリゴマー;ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系高分子又はオリゴマー;アントラセン、ピレン、フェナントレン、コロネン等の多環芳香族化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記フォトリフラクティブ材料を用いて前記第二の記録層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、該フォトリフラクティブ材料を溶媒中に溶解乃至は分散させてなる塗布液を用いて塗膜を形成し、この塗膜から溶媒を除去することにより該第二の記録層を形成する方法、加熱して流動化させた該フォトリフラクティブ材料を用いて塗膜を形成し、この塗膜を急冷することにより該第二の記録層を形成する方法、などが挙げられる。
【0029】
前記(3)のフォトクロミック材料としては、フォトクロミック反応を起こす材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アゾベンゼン化合物、スチルベン化合物、インジゴ化合物、チオインジゴ化合物、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、フルキド化合物、アントラセン化合物、ヒドラゾン化合物、桂皮酸化合物、などが挙げられる。これらの中でも、光照射によりシス−トランス異性化により構造変化を起こすアゾベンゼン誘導体、スチルベン誘導体、光照射により開環−閉環の構造変化を起こすスピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体などがより好ましい。
【0030】
前記(5)のカルコゲン材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルコゲン元素を含むカルコゲナイドガラスと、このカルコゲナイドガラス中に分散されており、光の照射により該カルコゲナイドガラス中に拡散可能な金属からなる金属粒子とを含む材料などが挙げられる。
前記カルコゲナイドガラスは、S、Te又はSeのカルコゲン元素を含む非酸化物系の非晶質材料から構成されるものであり、金属粒子の光ドープが可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記カルコゲン元素を含む非晶質材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Ge−S系ガラス、As−S系ガラス、As−Se系ガラス、As−Se−Ce系ガラス、などが挙げられる。これらの中でも、Ge−S系ガラスが好ましい。前記カルコゲナイドガラスとして該Ge−S系ガラスを用いる場合には、ガラスを構成するGe及びSの組成比は照射する光の波長に応じて任意に変化させることができるが、主としてGeSで表される化学組成を有するカルコゲナイドガラスが好ましい。
前記金属粒子としては、光の照射によりカルコゲナイドガラス中に光ドープされる特性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Al、Au、Cu、Cr、Ni、Pt、Sn、In、Pd、Ti、Fe、Ta、W、Zn、Ag、などが挙げられる。これらの中でも、光ドープをより生じやすい特性を有している点で、Ag、Au又はCuが好ましく、光ドープを顕著に生じる点で、Agがより好ましい。
前記カルコゲナイドガラスに分散されている金属粒子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することできるが、前記第二の記録層の全体積基準で0.1〜2体積%が好ましく、0.1〜1.0体積%がより好ましい。該金属粒子の含有量が、0.1体積%未満であると、光ドープによる透過率変化が不充分となって記録の精度が低下することがあり、2体積%を超えると、記録材料の光透過率が低下して光ドープを充分に生じさせることが困難となることがある。
【0031】
前記第二の記録層を形成する方法としては、特に制限はなく、材料に応じて公知の方法を選択することができるが、例えば、蒸着法、湿式成膜法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、分子積層法、LB法、印刷法、転写法、などが挙げられる。これらの中でも、蒸着法、湿式成膜法などがより好ましい。
【0032】
前記蒸着法としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、真空蒸着法、抵抗加熱蒸着、化学蒸着法、物理蒸着法、などが挙げられる。該化学蒸着法としては、例えば、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、などが挙げられる。
【0033】
前記湿式成膜法による前記第二の記録層の形成は、例えば、前記第二の記録層の材料を溶剤に溶解乃至分散させた溶液(塗布液)を塗布し乾燥することにより、好適に行うことができる。該湿式成膜法としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、スピンコート法、ニーダーコート法、バーコート法、ブレードコート法、キャスト法、ディップ法、カーテンコート法、などが挙げられる。
【0034】
前記第二の記録層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.2〜2.0mmが好ましく、0.5〜1.0mmがより好ましい。
前記第二の記録層の厚みが、前記好ましい数値範囲であると、10〜300多重のシフト多重を行っても十分なS/N比を得ることができ、前記より好ましい数値範囲であるとそれが顕著である点で有利である。
【0035】
<フィルタ層>
前記フィルタ層は、入射角が変化しても選択反射波長にずれが生じることなく、情報光及び参照光による光記録媒体の反射膜からの乱反射を防止し、ノイズの発生を防止する作用を有する。前記光記録媒体に前記フィルタ層を積層することにより、高解像度、回折効率の優れた光記録を得ることができる。
前記フィルタ層としては、第一の光を透過し、前記第一の光と異なる第二の光を反射する波長選択反射の作用を有することが好ましく前記第一の波長の光が600〜900nmであり、かつ第二の波長の光が350〜600nmであることが好ましい。したがって、該フィルタ層を有する前記光記録媒体の構造としては、光学系側から見て、第一記録層、フィルタ層、及びサーボピットパターンの順に積層されている構造であることが好ましい。
【0036】
前記フィルタ層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、色材含有層及び誘電体蒸着層からなる無機材料のフィルタ層、コレステリック液晶層からなる有機材料のフィルタ層などが挙げられる。これらの中でも、コレステリック液晶層からなる有機材料のフィルタ層がより好ましい。
【0037】
《無機材料のフィルタ層》
前記無機材料のフィルタ層は、色材含有層及び誘電体蒸着層からなる。
−色材含有層−
前記色材含有層は、色材を含有してなり、バインダー樹脂、溶剤、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0038】
前記色材としては、顔料及び染料の少なくともいずれかが好適に挙げられ、これらの中でも、532nmの光を吸収し、655nmのサーボ光を透過させる点で、赤色染料、赤色顔料などがより好ましく、赤色顔料が特に好ましい。
【0039】
前記赤色染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.アシッドレッド1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289等の酸性染料;C.I.ベーシックレッド2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112等の塩基性染料;C.I.リアクティブレッド1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97等の反応性染料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記赤色顔料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド217、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド223、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド227、C.I.ピグメントレッド228、C.I.ピグメントレッド240、C.I.ピグメントレッド48:1、パーマネント・カーミンFBB(C.I.ピグメントレッド146)、パーマネント・ルビーFBH(C.I.ピグメントレッド11)、ファステル・ピンクBスプラ(C.I.ピグメントレッド81)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
これらの中でも、前記色材としては、波長532nmの光に対する透過率が10%以下であり、かつ波長655nmの光に対する透過率が90%以上である透過スペクトルを示す赤色顔料がより好ましい。
【0042】
前記色材の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記色材含有層の全固形質量に対して、0.05〜90質量%が好ましく、0.1〜70質量%がより好ましい。前記含有量が、0.05質量%未満であると、色材含有層の厚みが500μm以上必要となってしまうことがあり、90質量%を超えると、色材含有層の自己支持性がなくなり、色材含有層の作製工程中に膜が崩れてしまうことがある。
【0043】
−バインダー樹脂−
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体;塩化ビニル、酢酸ビニルとビニルアルコール、マレイン酸及びアクリル酸の少なくともいずれかとの共重合体;塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体;塩化ビニル/アクリロニロリル共重合体;エチレン/酢酸ビニル共重合体;ニトロセルロース樹脂等のセルロース誘導体;ポリアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、分散性及び耐久性を更に高めるため、以上に挙げたバインダー樹脂分子中に、極性基を導入したものが好ましい。該極性基としては、例えば、エポキシ基、COH、OH、NH、SOM、OSOM、PO、OPO(ただし、Mは水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウムであり、一つの基の中に複数のMがあるときは互いに異なっていてもよい)、などが挙げられる。該極性基の含有量とてしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、バインダー樹脂1グラム当り10−6〜10−4当量が好ましい。
以上列挙したバインダー樹脂は、イソシアネート系の公知の架橋剤を添加して硬化処理されることが好ましい。
【0044】
前記バインダー樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記色材含有層の全固形質量に対して、10〜99.95質量%が好ましく、30〜99.9質量%がより好ましい。
【0045】
前記溶剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、3−メトキシプロピオン酸メチルエステル、3−メトキシプロピオン酸エチルエステル、3−メトキシプロピオン酸プロピルエステル、3−エトキシプロピオン酸メチルエステル、3−エトキシプロピオン酸エチルエステル、3−エトキシプロピオン酸プロピルエステル等のアルコキシプロピオン酸エステル類;2−メトキシプロピルアセテート、2−エトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のアルコキシアルコールのエステル類;乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、テトラヒドロフラン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記色剤含有層の形成方法としては、上述した各成分を、前記溶剤に溶解乃至は分散させた溶液(塗布液)を調製し、該塗布液を所望の塗布方法により後述する基材上に塗布し、乾燥することにより、色材含有層を形成することができる。
前記塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、スピンコート法、ニーダーコート法、バーコート法、ブレードコート法、キャスト法、ディップ法、カーテンコート法、などが挙げられる。
【0047】
前記色材含有層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5〜200μmが好ましく、1.0〜100μmがより好ましい。前記厚みが0.5μm未満であると、色材を包んで膜とするためのバインダー樹脂を十分な量添加することができなくなることがあり、200μmを超えると、前記フィルタ層の厚みが大きくなりすぎて、照射光及びサーボ光の光学系として過大なものが必要になることがある。
【0048】
−誘電体蒸着層−
前記誘電体蒸着層は、前記色材含有層上に形成され、互いに屈折率の異なる誘電体薄膜を複数層積層してなる。前記フィルタ層を波長選択反射膜とするためには、高屈折率の誘電体薄膜と低屈折率の誘電体薄膜とを交互に複数層積層することが好ましいが、該誘電体薄膜は、2種以上に限定されず、それ以上の種類であっても構わない。
前記誘電体薄膜の積層数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2〜20層が好ましく、2〜12層がより好ましく、4〜10層が特に好ましく、6〜8層が最も好ましい。前記積層数が、20層を超えると、多層蒸着により生産効率性が低下し、本発明の目的及び効果を達成できなくなることがある。
【0049】
前記誘電体薄膜の積層順としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、隣接する膜の屈折率が高い場合にはそれより低い屈折率の膜を最初に積層し、隣接する層の屈折率が低い場合にはそれより高い屈折率の膜を最初に積層する。前記屈折率が高いか低いかの境目は1.8である。なお、屈折率が高いか低いかは絶対的なものではなく、高屈折率の材料の中でも、相対的に屈折率の大きいものと小さいものとが存在してもよく、これらを交互に使用しても構わない。
【0050】
前記高屈折率の誘電体薄膜の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Sb、Sb、Bi、CeO、CeF、HfO、La、Nd、Pr11、Sc、SiO、Ta、TiO、TlCl、Y、ZnSe、ZnS、ZrO、などが挙げられる。これらの中でも、Bi、CeO、CeF、HfO、SiO、Ta、TiO、Y、ZnSe、ZnS、ZrOが好ましく、SiO、Ta、TiO、Y、ZnSe、ZnS、ZrOがより好ましい。
【0051】
前記低屈折率の誘電体薄膜の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Al、BiF、CaF、LaF、PbCl、PbF、LiF、MgF、MgO、NdF、SiO、Si、NaF、ThO、ThF、などが挙げられる。これらの中でも、Al、BiF、CaF、MgF、MgO、SiO、Siがより好ましく、Al、CaF、MgF、MgO、SiO、Siが特に好ましい。
なお、前記誘電体薄膜の材料においては、原子比についても特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、成膜時に雰囲気ガス濃度を変えることにより、原子比を調整することができる。
【0052】
前記誘電体薄膜の成膜方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオンプレーティング、イオンビーム等の真空蒸着法、スパッタリング等の物理的気相成長法(PVD法)、化学的気相成長法(CVD法)、などが挙げられる。これらの中でも、真空蒸着法、スパッタリングなどが好ましく、スパッタリングがより好ましい。
前記スパッタリングとしては、例えば、成膜レートの高いDCスパッタリング法が好ましい。なお、DCスパッタリング法においては、導電性が高い材料を用いるのが好ましい。
また、前記スパッタリングにより多層成膜する方法としては、例えば、(1)1つのチャンバで複数のターゲットから交互又は順番に成膜する1チャンバ法、(2)複数のチャンバで連続的に成膜するマルチチャンバ法、などが挙げられる。これらの中でも、生産性に優れる点及び材料コンタミネーションを防ぐ点で、マルチチャンバ法が好ましい。
前記誘電体薄膜の膜厚としては、光学波長オーダーで、λ/16〜λの膜厚が好ましく、λ/8〜3λ/4がより好ましく、λ/6〜3λ/8が特に好ましい。
【0053】
前記誘電体蒸着層においては、該誘電体蒸着層中を伝播する光が、各誘電体薄膜毎に光の一部が多重反射し、それらの反射光が干渉して誘電体薄膜の厚さと光に対する膜の屈折率との積で決まる波長の光のみが選択的に透過される。また、該誘電体蒸着層の中心透過波長は、入射光に対して角度依存性を有しており、入射光を変化させると透過波長を変えることができる。
ただし、前記誘電体蒸着層の積層数を20層以下としたことにより、数%〜数十%の選択反射波長光がフィルタを漏れて透過するが、該漏れ光は、前記誘電体蒸着層の直下に仕込んだ色材含有層で吸収される。なお、該色材含有層は、赤色顔料や赤色染料を含んでいるので、波長350〜600nmの光は吸収するが、サーボ光として使用する波長600〜900nmの光は透過する。
前記色材含有層及び前記誘電体蒸着層からなるフィルタ層は、第一の波長の光を透過し、該第一の波長の光と異なる第二の波長の光を反射することが好ましく、前記第一の光の波長が600〜900nmであり、かつ第二の光の波長が350〜600nmであることが好ましい。したがって、該色材含有層及び該誘電体蒸着層からなるフィルタ層を有する前記光記録媒体の構造としては、光学系側から見て、第一記録層、誘電体蒸着層、色材含有層、及びサーボピットパターンの順に積層されている構造であることが好ましい。
【0054】
前記無機材料のフィルタ層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5〜200μmが好ましく、1〜100μmがより好ましい。
【0055】
《有機材料のフィルタ層》
前記有機材料のフィルタ層は、コレステリック液晶層からなる。
−コレステリック液晶層−
前記コレステリック液晶層は、少なくともネマチック液晶化合物、及びカイラル化合物を含有してなり、更に必要に応じて、重合性モノマー、その他の成分などを含有してなる。
【0056】
前記コレステリック液晶層の積層数としては、特に制限はなく、単層でも、2層以上であってもよいが、これらの中でも、2層以上であるのが好ましく、2〜10層がより好ましい。該積層数が10層を超えると、却って塗布による生産効率性が低下し、本発明の目的及び効果を達成できなくなることがある。
【0057】
前記コレステリック液晶層としては、円偏光分離機能を有するものが好ましい。前記円偏光分離機能を有するコレステリック液晶層は、前述のように、液晶の螺旋の回転方向(右回り又は左回り)と円偏光方向とが一致し、波長が液晶の螺旋ピッチであるような円偏光成分の光だけを反射する選択反射特性を有する。このコレステリック液晶層の選択反射特性を利用して、一定の波長帯域の自然光から特定波長の円偏光のみを透過分離し、その残りを反射する。
したがって、前記各コレステリック液晶層は、第一の波長の光を透過し、該第一の波長の光と異なる第二の波長の円偏光を反射することが好ましく、前記第一の光の波長が600〜900nmであり、かつ前記第二の光の波長が350〜600nmであることが好ましい。
【0058】
前記フィルタ層は、垂直入射を0°とし±20°の範囲であるλ〜λ/cos20°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上であることが好ましく、垂直入射を0°とし±40°の範囲であるλ〜λ/cos40°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上であることがより好ましい。
前記λ〜λ/cos20°、特にλ〜λ/cos40°(ただし、λは照射光波長を表す)の範囲における光反射率が40%以上であれば、照射光反射の角度依存性を解消することができ、通常の光記録媒体に用いられているレンズ光学系を採用することができる。このためにはコレステリック液晶層の選択反射波長幅が拡いことが好ましい。
【0059】
前記コレステリック液晶層が単層である場合には、該コレステリック液晶層の選択反射波長領域幅Δλは、下記数式1で表されることから、該コレステリック液晶層の選択反射波長領域幅Δλを拡げるためには、(ne−no)の大きなネマチック液晶を用いることが好ましい。
<数式1>
Δλ=2λ(ne−no)/(ne+no)
ただし、前記数式1中、noは、コレステリック液晶層に含有されるネマチック液晶分子の正常光に対する屈折率を表す。neは、該ネマチック液晶分子の異常光に対する屈折率を表す。λは、選択反射の中心波長を表す。
前記数式1で示すように、(ne−no)を大きくすれば、前記選択反射波長帯域幅Δλを拡げられるが、(ne−no)は通常0.3以下であり、0.3より大きくなると、液晶としてのその他の機能、例えば、配向特性、液晶温度等が不十分となり、実用化が困難となる。したがって、現実にはコレステリック液晶層の選択反射波長帯域幅Δλは、最大でも150nm程度であり、通常30〜100nm程度が好ましい。
【0060】
また、前記コレステリック液晶層が複数層である場合には、前記数式1において、λで表されるコレステリック液晶層の選択反射の中心波長が、下記数式2で表されることから、該コレステリック液晶層の選択反射波長領域幅Δλを拡げるためには、選択反射の中心波長が互いに異なり、各コレステリック液晶層の螺旋の回転方向(右回り又は左回り)が互いに同じであるコレステリック液晶層を積層することが好ましい。
<数式2>
λ=(ne+no)P/2
ただし、前記数式2中、ne及びnoは上記数式1と同じ意味を表す。Pは、コレステリック液晶層の一回転ねじれに要する螺旋ピッチ長を表す。
前記数式2で示すように、前記選択反射の中心波長λは、前記コレステリック液晶層の平均螺旋ピッチが一定であれば、前記コレステリック液晶層の複屈折率差Δnと平均螺旋ピッチ長Pに依存する。そのため、該コレステリック液晶層が複数層である場合には、該コレステリック液晶層の選択反射波長領域幅Δλを拡げるためには、選択反射中心波長が互いに異なり、各コレステリック液晶層の螺旋の回転方向(右回り又は左回り)が互いに同じであるコレステリック液晶層を積層することが好ましい。
また、前記コレステリック液晶層が複数層である場合における、各コレステリック液晶層の選択反射波長帯域としては、該選択波長帯域内において均一な反射率が得られる点で、連続的であることが好ましい。ここで、前記「連続的」とは、2つの選択反射波長帯域間にギャップがなく、実質的にこの範囲の反射率が40%以上であることを意味する。
したがって、各コレステリック液晶層の選択反射の中心波長λ間の距離は、各選択反射波長帯域が少なくとも1つの他の選択反射波長帯域と連続となる範囲内であることが好ましい。
【0061】
前記コレステリック液晶層が複数層である場合の前記フィルタ層の反射特性としては、具体的には、選択反射の中心波長が互いに異なり、前記各コレステリック液晶層の螺旋の回転方向が互いに同じであるコレステリック液晶層を3層積層した場合、前記フィルタ層は、図5に示すような反射特性示す。この図5は正面(0°)からの垂直入射光に対する反射特性が40%以上であることを示している。これに対し、斜め方向からの入射光になると次第に短波長側にシフトしていき、液晶層内で40°傾斜した時は図6に示すような反射特性を示す。
同様に、選択反射中心波長が互いに異なり、前記各コレステリック液晶層の螺旋の回転方向が互いに同じであるコレステリック液晶層を2層積層した場合、前記フィルタ層は、図7に示すような反射特性を示す。この図7は正面(0°)からの垂直入射光に対する反射特性が40%以上であることを示している。これに対し、斜め方向からの入射光になると次第に短波長側にシフトしていき、液晶層内で20°傾斜した時は図8に示すような反射特性を示す。
【0062】
なお、図5に示したλ〜1.3λの反射域は、λ=532nmのとき1.3λ=692nmとなり、サーボ用光が655nmの場合はサーボ用光を反射してしまう。ここに示すλ〜1.3λの範囲はフィルタ層における±40°入射光への適性であるが、実際にそうした大きな斜め光まで使用する場合は、入射角±20°以内のサーボ用光をマスキングして使用すれば支障なくサーボ制御できる。また、各コレステリック液晶層の平均屈折率を十分大きくすれば、フィルタ層内での入射角を±20°以内で全て設計することも容易であり、その場合は図7に示すようにλ〜1.1λのコレステリック液晶層を2層積層することでよいので、サーボ用光透過には全く支障がなくなる。
【0063】
前記コレステリック液晶層の材料としては、上記特性を満たせば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記コレステリック液晶層は、前述のように、ネマチック液晶化合物、及びカイラル化合物を含有してなり、更に必要に応じて、重合性モノマー、その他の成分を含有してなる。
【0064】
−−ネマチック液晶化合物−−
前記ネマチック液晶化合物は、液晶転移温度以下ではその液晶相が固定化することを特徴とし、その屈折率異方性Δnが、0.10〜0.40の液晶化合物、高分子液晶化合物、及び重合性液晶化合物の中から目的に応じて適宜選択することができる。溶融時の液晶状態にある間に、例えば、ラビング処理等の配向処理を施した配向基板を用いる等により配向させ、そのまま冷却等して固定化させることにより固相として使用することができる。
【0065】
前記ネマチック液晶化合物の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記の例示化合物などを挙げることができる。
【化3】

【化4】

【化5】

前記構造式中において、nは、1〜100の整数を表す。なお、上記の各例示化合物においては、その側鎖連結基を、以下の構造に変えたものも同様に好適なものとして挙げることができる。
【化6】

【0066】
上記の各例示化合物の中でも、前記ネマチック液晶化合物としては、十分な硬化性を確保する点で、分子内に重合性基を有するネマチック液晶化合物が好ましく、紫外線(UV)重合性液晶がより好ましい。該UV重合性液晶としては、市販品も用いることができ、例えば、BASF社製の商品名PALIOCOLOR LC242;Merck社製の商品名E7;Wacker−Chem社製の商品名LC−Sllicon−CC3767;高砂香料株式会社製の商品名L35、L42、L55、L59、L63、L79、L83、などが挙げられる。
【0067】
前記ネマチック液晶化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記各コレステリック液晶層の全固形分質量に対して、30〜99質量%が好ましく、50〜99質量%がより好ましい。該含有量が30質量%未満であると、ネマチック液晶化合物の配向が不十分となることがある。
【0068】
−−カイラル化合物−−
前記カイラル化合物としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、液晶化合物の色相、色純度改良の点で、イソマニード化合物、カテキン化合物、イソソルビド化合物、フェンコン化合物、カルボン化合物、等の他、以下に示す化合物などを好適に挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【化7】

【化8】

【0069】
また、前記カイラル化合物としては、市販品も用いることができ、該市販品としては、例えば、Merck社製の商品名S101、R811、CB15;BASF社製の商品名PALIOCOLOR LC756、などが挙げられる。
【0070】
前記カイラル化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記各コレステリック液晶層の全固形分質量に対して、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。該含有量が30質量%を超えると、コレステリック液晶層の配向が不十分となることがある。
【0071】
−−重合性モノマー−−
前記重合性モノマーは、膜強度等の硬化の程度を向上させる作用を有する。該重合性モノマーを前記コレステリック液晶中に含有すると、光照射による液晶の捻れ力を変化(パターンニング)させた後(例えば、選択反射波長の分布を形成した後)、その螺旋構造(選択反射性)を固定化し、固定化後のコレステリック液晶層の強度をより向上させることができる。ただし、前記液晶化合物が同一分子内に重合性基を有する場合には、該重合性モノマーは必ずしも添加する必要はない。
前記重合性モノマーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレン性不飽和結合を持つモノマー等が挙げられる。該エチレン性不飽和結合を持つモノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能モノマーがなど挙げられる。
前記エチレン性不飽和結合を持つモノマーの具体例としては、例えば、以下に示す化合物を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【化9】

【0072】
前記重合性モノマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記各コレステリック液晶層の全固形分質量に対して、50質量%以下が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。該含有量が50質量%を超えると、コレステリック液晶層の配向を阻害することがある。
【0073】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光重合開始剤、増感剤、バインダー樹脂、重合禁止剤、溶媒、界面活性剤、増粘剤、色素、顔料、紫外線吸収剤、ゲル化剤、などが挙げられる。
【0074】
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン/アミン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記光重合開始剤としては、市販品も用いることができ、該市販品としては、例えば、チバスペシャルティケミカルズ社製の商品名イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア784、イルガキュア814;BASF社製の商品名ルシリンTPO、などが挙げられる。
【0075】
前記光重合開始剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記各コレステリック液晶層の全固形分質量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。該含有量が、0.1質量%未満であると、光照射時の硬化効率が低いため長時間を要することがあり、20質量%を超えると、紫外線領域から可視光領域での光透過率が劣ることがある。
【0076】
前記増感剤は、前記コレステリック液晶層の硬化度を上げる作用を有する。
前記増感剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、などが挙げられる。
前記増感剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記各コレステリック液晶層の全固形分質量に対して、0.001〜1.0質量%が好ましい。
【0077】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール;ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン化合物;メチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース等のセルロース樹脂;側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体;ポリビニルフォルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂;メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体;アクリル酸アルキルエステルのホモポリマー又はメタアクリル酸アルキルエステルのホモポリマー;その他の水酸基を有するポリマー、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記アクリル酸アルキルエステルのホモポリマー又はメタアクリル酸アルキルエステルのホモポリマーにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、などが挙げられる。
前記その他の水酸基を有するポリマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタアクリル酸のホモポリマー)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーの多元共重合体、などが挙げられる。
【0078】
前記バインダー樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記各コレステリック液晶層の全固形質量に対して、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。該含有量が80質量%を超えると、コレステリック液晶層の配向が不十分となることがある。
【0079】
前記重合禁止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ベンゾキノン、又はこれらの誘導体、などが挙げられる。
前記重合禁止剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記重合性モノマーの固形分に対して、10質量%以下が好ましく、100ppm〜1質量%がより好ましい。
【0080】
前記溶媒としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3−メトキシプロピオン酸メチルエステル、3−メトキシプロピオン酸エチルエステル、3−メトキシプロピオン酸プロピルエステル、3−エトキシプロピオン酸メチルエステル、3−エトキシプロピオン酸エチルエステル、3−エトキシプロピオン酸プロピルエステル等のアルコキシプロピオン酸エステル類;2−メトキシプロピルアセテート、2−エトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のアルコキシアルコールのエステル類;乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、テトラヒドロフラン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
前記コレステリック液晶層からなる有機材料のフィルタ層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、該コレステリック液晶層を基材上に積層して光記録媒体用フィルタを作製し、該光記録媒体用フィルタを、前記第二の基板上に積層することにより、コレステリック液晶層を形成する方法、該コレステリック液晶層を直接該第二の基板上に積層する方法、などが挙げられる。
【0082】
−コレステリック液晶層を有する光記録媒体用フィルタの製造方法−
前記光記録媒体用フィルタの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記光記録媒体用フィルタは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、基材ごとディスク形状に加工(例えば、打ち抜き加工)されて、光記録媒体の第二の基板上に配置されるのが好ましい。
【0083】
−−基材−−
前記基材としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状、シート状などが挙げられる。前記構造としては、単層構造であってもいし、積層構造であってもよい。前記大きさとしては、前記光記録媒体用フィルタの大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0084】
前記基材の材料としては、特に制限はなく、無機材料及び有機材料のいずれをも好適に用いることができる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコーン、などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0085】
前記基材は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜500μmが好ましく、50〜300μmがより好ましい。前記基材の厚みが、10μm未満であると、基板の撓みにより密着性が低下することがあり、500μmを超えると、情報光と参照光の焦点位置を大きくずらさなければならなくなり、光学系サイズが大きくなってしまうことがある。
【0086】
前記基材上に前記コレステリック液晶層を形成する方法としては、例えば、前記溶媒を用いて調製したコレステリック液晶層用塗布液(複数層の場合には各コレステリック液晶層用塗布液)を該基材上に塗布し、乾燥させて、例えば紫外線照射することにより、コレステリック液晶層を形成することができる。
前記コレステリック液晶層を形成する最も量産適性のよい方法としては、前記基材をロール状に巻いた形で準備しておき、該基材上にコレステリック液晶層用塗布液をバーコート、ダイコート、ブレードコート、カーテンコートのような長尺連続コーターにて塗布する方法が好ましい。
【0087】
前記塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、キャスト法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法、などが挙げられる。
【0088】
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、照射紫外線の波長としては、160〜380nmが好ましく、250〜380nmがより好ましい。照射時間としては、例えば、0.1〜600秒が好ましく、0.3〜300秒がより好ましい。紫外線照射の条件を調整することによって前記反応性カイラル剤を用いた光コレステリック液晶層における螺旋ピッチを液晶層の厚み方向に沿って連続的に変化させることができる。
【0089】
前記コレステリック液晶層としては、前記紫外線照射の条件を調整するために、紫外線吸収剤を含有することもできる。該紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤、などが好適に挙げられる。これらの紫外線吸収剤の具体例としては、特開昭47−10537号公報、同58−111942号公報、同58−212844号公報、同59−19945号公報、同59−46646号公報、同59−109055号公報、同63−53544号公報、特公昭36−10466号公報、同42−26187号公報、同48−30492号公報、同48−31255号公報、同48−41572号公報、同48−54965号公報、同50−10726号公報、米国特許第2,719,086号明細書、同第3,707,375号明細書、同第3,754,919号明細書、同第4,220,711号明細書などに記載のものが挙げられる。
【0090】
前記コレステリック液晶層が複数層の場合の各コレステリック液晶層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1〜10μmが好ましく、2〜7μmがより好ましい。前記厚みが、1μm未満であると、選択反射率が十分でなくなることがあり、10μmを超えると、液晶層の均一配向が乱れてしまうことがある。
また、各コレステリック液晶層の合計厚み(単層の場合にはコレステリック液晶層の厚み)としては、例えば、1〜30μmが好ましく、1.5〜10μmがより好ましい。
【0091】
<第一の基板>
前記第一の基板は、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、ディスク形状、カード形状などが挙げられる。また、記録及び再生に用いる光が基板を通して入射する場合は、用いる光の波長領域で十分に透明であることが必要である。
前記第一の基板の材料としては、光記録媒体の機械的強度を確保できる材料のものを選定する必要がある。このような材料としては、通常、ガラス、セラミックス、樹脂、などが用いられるが、成形性及びコストに優れる点で、樹脂がより好ましい。
前記樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、成形性、光学特性、及びコストに優れる点で、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂がより好ましい。
前記第一の基板は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
【0092】
前記第一の基板の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1〜5mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましい。該基板の厚みが、0.1mm未満であると、ディスク保存時の形状の歪みを抑えられなくなることがあり、5mmを超えると、ディスク全体の重量が大きくなってドライブモーターに過剰な負荷をかけることがある。
【0093】
<第二の基板>
前記第二の基板は、前記第一の基板と、その形状、構造、大きさ、材料及び厚みは同じてもよく異なっていてもよい。これらの中でも、形状及び大きさは第一の基板と同じであることがより好ましい。
前記第二の基板としては、サーボピットパターンを有することが好ましい。半径方向に線状に延びる複数の位置決め領域としてのアドレス−サーボエリアが所定の角度間隔で設けられ、隣り合うアドレス−サーボエリア間の扇形の区間をデータエリアとしてもよい。該アドレス−サーボエリアには、サンプルドサーボ方式によってフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行うための情報とアドレス情報とが、予めエンボスピット(サーボピット)等によって記録されている(プリフォーマット)。なお、該フォーカスサーボは、反射膜の反射面を用いて行うことができる。また、該トラッキングサーボを行うための情報としては、例えば、ウォブルピットを用いることができる。
前記光記録媒体がカード形状の場合には、前記サーボピットパターンは無くてもよい。
【0094】
前記第二の基板における前記サーボピットパターンの表面には、前記反射膜を形成していてもよい。
前記反射膜の材料としては、記録光や参照光に対して高い反射率を有する材料が好ましく、使用する光の波長が400〜780nmである場合には、例えば、Al、Al合金、Ag、Ag合金、などが好ましい。使用する光の波長が650nm以上である場合には、Al、Al合金、Ag、Ag合金、Au、Cu合金、TiN、などが好ましい。
なお、前記反射膜として、光を反射すると共に、追記及び消去のいずれかが可能な光記録媒体、例えば、DVD(ディジタル ビデオ ディスク)などを用い、ホログラムをどのエリアまで記録したか、いつ書き換えたか、どの部分にエラーが存在し交替処理をどのように行ったか、などのディレクトリ情報などをホログラムに影響を与えずに追記及び書き換えすることも可能となる。
【0095】
前記反射膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、各種気相成長法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などが挙げられる。これらの中でも、量産性、膜質等に優れる点で、スパッタリング法がより好ましい。
前記反射膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、十分な反射率を実現し得る点で、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。
【0096】
<第一ギャップ層>
前記第一ギャップ層は、第二の基板表面を平滑化する作用を有し、必要に応じて前記フィルタ層と前記反射膜との間に設けられる。また、該ギャップ層は、記録層内に生成されるホログラムの大きさを調整するのにも有効である。即ち、前記記録層は、記録用参照光及び情報光の干渉領域をある程度の大きさに形成する必要があるので、前記記録層とサーボピットパターンとの間にギャップを設けることが有効となる。
前記第一ギャップ層の形成方法としては、例えば、サーボピットパターンの上から紫外線硬化樹脂等の材料をスピンコート等で塗布し、硬化させることにより形成することができる。また、フィルタ層として透明基材の上に塗布形成したものを使用する場合には、該透明基材が第一ギャップ層としても働くことになる。
前記第一ギャップ層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜200μmが好ましい。
【0097】
<第二ギャップ層>
前記第二ギャップ層は、必要に応じて記録層とフィルタ層との間に設けられる。
前記第二ギャップ層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル=ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のような透明樹脂フィルム、又は、JSR社製商品名ARTONフィルムや日本ゼオン社製商品名ゼオノアのような、ノルボルネン系樹脂フィルム、などが挙げられる。これらの中でも、等方性の高いものがより好ましく、TAC、PC、商品名ARTON、及び商品名ゼオノアが特に好ましい。
前記第二ギャップ層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜200μmが好ましい。
【0098】
(光記録媒体の製造方法)
本発明の光記録媒体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第一の記録層形成工程と、フィルタ層形成工程と、第二の記録層形成工程と、積層体形成工程とを含み、更に必要に応じて、第一ギャップ層形成工程、第二ギャップ層形成工程などのその他の工程を含む。
【0099】
<第二の記録層形成工程>
前記第二の記録層形成工程は、前記フィルタ層上(第二の基板側とは反対側の面上)、又は該フィルタ層上に第二ギャップ層が積層されている場合は、該第二ギャップ層上に、ホログラフィにより情報を記録する第二の記録層を形成する工程である。該第二の記録層形成工程としては、具体的には、該フィルタ層上又は該第二ギャップ層上に、第二の記録層形成用塗布液を塗工などにより、好ましくは、厚みが0.2〜2mmになるように第二の記録層を形成することにより行うことができる。
前記第二の記録層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿式成膜法による形成方法などが挙げられる。該湿式成膜法によると、前記第二の記録層材料を溶剤に溶解乃至分散させた第二の記録層形成用塗布液を用いる(塗布し乾燥する)ことにより該第二の記録を形成することができる。該湿式成膜法としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、スピンコート法、ニーダーコート法、バーコート法、ブレードコート法、キャスト法、ディップ法及びカーテンコート法、などが挙げられる。
【0100】
<第一の記録層形成工程>
前記第一の記録層形成工程は、前記第二の記録層上(第二の基板側とは反対側の面上)に、ホログラフィにより情報を記録する第一の記録層を形成する工程である。該第一の記録層形成工程としては、具体的には、該第二の記録層上に、第一の記録層形成用塗布液を塗工などにより、好ましくは、厚みが4〜100mmになるように第二の記録層を形成することにより行うことができる。
前記第二の記録層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、スピンコート法、ニーダーコート法、バーコート法、ブレードコート法、キャスト法、ディップ法及びカーテンコート法、などが挙げられる。
【0101】
<フィルタ層形成工程>
前記フィルタ層形成工程は、前記第二の基板上、又は該第二の基板上に第一ギャップ層が積層されている場合は、該第一ギャップ層上に、前記フィルタ層を形成する工程である。
前記フィルタ層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記光記録媒体用フィルタを光記録媒体の形状に加工し、該加工した光記録媒体用フィルタを前記第二の基板に貼り合わせてフィルタ層を形成する方法が挙げられる。ここで、前記光記録媒体用フィルタの製造方法については、前述の通りである。また、第二の基板上に直接フィルタ層を形成することもでき、例えば、前記第二の基板上に色材含有層用塗布液を塗布して色材含有層を形成し、該色材含有層上にスパッタリング法により誘電体蒸着膜を形成する方法などが挙げられる。
前記光記録媒体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディスク形状、カード形状、などが挙げられる。
前記加工としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プレスカッターによる切り出し加工、打ち抜きカッターによる打ち抜き加工、などが挙げられる。
前記貼り合わせ方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、接着剤、粘着剤、などを用いて気泡が入らないようにフィルタを基板に貼り付ける方法などが挙げられる。
前記接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、UV硬化型、エマルジョン型、一液硬化型、二液硬化型等の各種接着剤が挙げられ、それぞれ公知の接着剤を任意に組み合わせて使用することができる。
前記粘着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤、などが挙げられる。
前記接着剤又は前記粘着剤の塗布厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光学特性や薄型化に優れる点で、接着剤の場合、0.1〜10μmが好ましく、0.1〜5μmがより好ましい。また、粘着剤の場合、1〜50μmが好ましく、2〜30μmがより好ましい。
【0102】
<第一ギャップ層形成工程>
前記第一ギャップ層形成工程は、前記第二の基板と前記フィルタ層との間に、第一ギャップ層を形成する工程である。
前記第一ギャップ層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記第二の基板上に対して、スピン塗布、非熱軟化性シートの貼付、蒸着、スパッタリングなどにより第一ギャップ層を形成する方法が挙げられる。
【0103】
<第二ギャップ層形成工程>
前記第二ギャップ層形成工程は、前記フィルタ層と前記第二の記録層との間に、第二ギャップ層を形成する工程である。
前記第一ギャップ層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前述のように、前記フィルタ層上に対して、スピン塗布、樹脂シートの貼付、スパッタリング、バーコータ、スリットコータなどにより第二ギャップ層を形成する方法が挙げられる。
【0104】
<積層体形成工程>
前記積層体形成工程は、前記第一記録層、前記第二記録層、及び前記フィルタ層が少なくとも積層された第二の基板と、前記第一の基板とを貼り合わせて積層体を形成し、必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む工程である。
前記貼り合わせ方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記第一の基板と前記第二の基板と必要に応じて適宜選択したその他の層とを、接着剤で接着する方法、接着剤を用いず圧着する方法、真空中で貼り合わせる方法などが挙げられる。
前記接着剤で接着する方法は、前記第一の基板と、前記第二の基板と、必要に応じて適宜選択したその他の層とを、外周を合致させ、各層間に接着剤を塗布し、外側から0.01〜0.5MPaの圧力をかけて、23〜100℃で接着する方法である。該接着の際に、気泡が無く密着させるには、真空中で貼り合わせることが好ましい。
前記接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤などが挙げられる。
これらの中でも、透明性が優れていることから、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤がより好ましい。
【0105】
前記接着剤を用いず圧着する方法は、各層の有する接着性を利用して密着させて積層体を形成することも可能である。前記第一の基板と、前記第二の基板と、必要に応じて適宜選択したその他の層とを、各外周を合致させ、外側から0.01〜0.5MPaの圧力をかけて、23〜100℃で接着する。該密着の際に、気泡が無く密着させるためには、真空中で貼りあわせることが好ましい。
【0106】
(光記録方法)
本発明の光記録方法は、第一の干渉像記録ステップと、第二の干渉像記録ステップとを少なくとも含み、必要に応じて適宜選択したその他のステップを含む。
本発明の光記録方法は、本発明の光記録装置により実施することができ、該光記録装置の説明を通じてその詳細をも明らかにすることとする。
本発明の光記録装置は、第一の干渉像記録手段と、第二の干渉像記録手段とを有してなり、必要に応じて適宜選択したその他の手段を有してなる。
本発明の光記録方法における前記第一の干渉像記録ステップは、本発明の光記録装置における前記第一の干渉像記録手段により好適に行うことができる。
本発明の光記録方法における前記第二の干渉像記録ステップは、本発明の光記録装置における前記第二の干渉像記録手段により好適に行うことができる。
本発明の光記録方法における前記その他のステップは、本発明の光記録装置における前記その他の手段により好適に行うことができる。
【0107】
<第一の干渉像記録手段>
前記第一の干渉像記録手段は、前記光記録媒体における前記第一の記録層に対して、可干渉性を有する情報光及び参照光を照射し、前記情報光と前記参照光とにより第一の干渉像を形成し、該第一の干渉像を前記第一の記録層に記録する手段である。
前記情報光及び前記参照光の照射方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記情報光の照射方向に対して一定の角度で、前記参照光を照射してもよく、前記情報光の光軸と前記参照光の光軸とが同軸となるように、該情報光及び該参照光を前記第一の記録層に照射してもよいが、これらの中でも、光学系を大幅に簡素化することができる点で、前記情報光の光軸と前記参照光の光軸とが同軸となるように、該情報光及び該参照光を該第一の記録層に照射するのが好ましい。
【0108】
前記情報光及び前記参照光は、可干渉性を有するレーザ光を発振する光源を用いる。前記光源としては、例えば、固体レーザ光発振器、半導体レーザ光発振器、液体レーザ光発振器、気体レーザ光発振器などが挙げられる。これらの中でも、気体レーザ光発振器又は半導体レーザ光発振器がより好ましい。
【0109】
前記レーザ光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、波長が、360〜850nmから選択される1種以上の波長からなるレーザ光が用いられる。該波長は、380〜800nmが好ましく、400〜750nmがより好ましく、可視領域の中心が最も見え易い500〜600nmが最も好ましい。
前記波長が、360nm未満であると、鮮明な干渉像が得られないことがあり、850nmを超えると、前記干渉縞が微細となり、それに対応する感光材料が得られないことがある。
【0110】
前記第一の干渉像は、前記光記録媒体における前記第一の記録層に、干渉縞の模様の形で記録される。
前記第一の干渉像の記録時の光学的動作を、図面を参照して具体的に説明する。図2は、本発明の光記録媒体における第一の記録層への第一の干渉像の記録の説明図である。なお、図2においては、説明の便宜のため、光記録媒体における、第一の記録層、第二の記録層、及びフィルタ層のみを図示している。
図2に示すように、まず、光源から照射された情報光24及び参照光25が、第一の基板(不図示)を透過し、第一の記録層4aに入射する。該情報光24が、該参照光25と該第一の記録層4a内で干渉することにより、該第一の干渉像27が形成される。形成された該第一の干渉像27はそのままの形で該第一の記録層4aに記録される。
以上の第一の干渉像の形成及び記録は、他の光の影響を受けない、暗室などの遮光された領域で行われることが好ましい。
記録された前記第一の記録層は、現像及び定着処理が施される。
前記現像及び定着としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、現像液を用いて、現像、定着、水洗及び乾燥などにより処理してもよく、前記現像液によらずに、加熱処理によって定着してもよい。これらの中でも、液体を用いず簡単な工程で定着できる加熱処理による現像がより好ましい。
【0111】
<第二の干渉像記録手段>
前記第二の干渉像記録手段は、前記第一の干渉像記録ステップで用いた前記参照光と同一の参照光を、該第一の干渉像が記録された該第一の記録層に照射することにより、該第一の記録層を透過した参照光と、該第一の干渉像から生ずる回折光とにより第二の干渉像を形成し、該第二の干渉像を該第二の記録層に記録する手段である。
【0112】
前記第二の干渉像は、前記光記録媒体における前記第二の記録層に、干渉縞の模様の形で記録される。
前記第二の干渉像の記録時の光学的動作を、図面を参照して具体的に説明する。図3は、本発明の光記録媒体における第一の記録層から第二の記録層への干渉像の転写の説明図である。なお、図3においては、説明の便宜のため、光記録媒体における、第一の記録層、第二の記録層、及びフィルタ層のみを図示している。
図3に示すように、まず、光源から照射された前記参照光25は、第一の基板(不図示)を透過し、前記第一の干渉像が記録されている前記第一の記録層4aに入射する。入射した該参照光25は、該第一の記録層4aを透過する成分と、該参照光25が照射されて前記第一の干渉像から生成された回折光26とに分かれる。この第一の記録層4aを透過した参照光と回折光26とが前記第二の記録層4内で干渉することにより、第二の干渉像28が形成される。形成された前記第二の干渉像28はそのままの形で第二の記録層4に記録される。
前記第二の干渉像は、前記第一の干渉像と同一の情報が含まれた同一の干渉像として記録される、即ち、前記第一の干渉像が前記第二の記録層に転写されることになる。
【0113】
ここで、本発明の光記録媒体に第一の干渉像及び第二の干渉像を記録するための記録システムについて、図4を参照して説明する。
図4は、一般的なホログラム記録システムの説明図である。このようなホログラム記録システムにおいては、空間変調器(SLM)41、フーリエ変換レンズ(入射側)42、光記録媒体40、フーリエ変換レンズ(出射側)43、及び撮像素子(CMOS、CCD等)44が、フーリエ変換レンズの焦点距離fの間隔で配置されている。該光記録媒体の一方の面を反射膜とし、それを焦点位置に配置することで、入射側と出射側の光学系を共通とすることも可能である。
前記空間変調器(SLM)による2次元画像の表示は、個々の画素を形成するピクセルのOn・Offの切り替えで可能である。このとき各ピクセルは微小開口とみなすことができ、また各光学要素がフーリエ変換レンズの焦点距離fで配置されているため、図4に示すようにSLM41の異なる2点から伝播する光束は並行光となって光記録媒体40に入射する。すなわち個々のピクセルによって光記録媒体40に記録される干渉像(干渉縞)は単純な2光束干渉として扱え、記録される干渉縞はその集合となる。SLM41によって情報光及び参照光を生成する同軸ホログラム記録方式においても、第一の干渉像及び第二の干渉像を記録することに何ら問題はない。
【0114】
前記光記録方法においては、前記第二の干渉像記録手段により前記第二の干渉像が形成された後、前記第二の記録層を、他の第二の記録層に交換し、更に第二の干渉像記録手段により、前記他の第二の記録層に第二の干渉像を記録する、即ち、前記第一の記録層をマスター記録層として、該第一の記録層に記録された前記第一の干渉像を、前記他の第二の記録層に転写するのが好ましい。
前記第二の記録層の交換を自動的に行い、順次連続的に第一の干渉像を転写すると、前記マスター記録層に基づいて、第二の記録層を量産することができる。例えば、マスター記録層に、映画、ドラマなどの画像情報を干渉像として記録しておき、このマスター記録層に基づいて、第二の記録層が積層された積層基板に転写し、順次該積層基板を連続的に交換し、転写すると高精細な前記画像と同一の高精細な画像が記録された積層基板を大量に得ることができる。
【0115】
また、前記光記録方法においては、前記第二の干渉像記録手段により前記第二の干渉像が形成された後、前記第一の記録層を、他の新たな第一の記録層に交換し、この新たな第一の記録層に対して、前記第一の干渉像記録手段により、第一の干渉像を前記第一の記録層に記録し、次いで該第二の干渉像記録手段により、該第一の干渉像を第二の記録層に転写するのも好ましい。このような工程を経ると、第二の記録層に干渉像を重ねて記録することができ、重ねて記録をすることができる。また、前記第一の記録層の交換及び転写を順次繰り返すことにより、前記第二の記録層に高多重記録が可能となる。
【0116】
<その他の手段>
前記その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、積層手段、図12に示すように、光記録媒体22をスピンドルサーボ回路などにより、回転させ、ピックアップ31を介してフォーカス、トラッキングなどを検出し、連続して記録する手段などが挙げられる。
【0117】
−積層手段−
前記積層手段は、ホログラフィを利用して情報を記録する第一の記録層に記録可能な最小照射エネルギーをEとし、第二の記録層に記録可能な最小照射エネルギーをEとしたとき、次式、E×100<Eを満たすように前記第一の記録層と、前記第二の記録層とを積層する手段である。前記第一の記録層は、前記第二の記録層と隣接して積層されてもよく、中間に他の部材を介して積層されていてもよい。
【0118】
(光再生方法)
本発明の光記録方法によって第二の記録層に記録された情報の再生方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の光記録方法により光情報が記録された光記録媒体に対して、記録時の参照光の照射と同一の方向から同じ光(再生用参照光)を照射することにより情報を再生する方法などが挙げられる。前記再生用参照光を前記光記録媒体の第二の記録層に形成された第二の干渉像に照射すると、該第二の干渉像に対応した記録情報としての回折光が生成され、該回折光を受光することにより再生することができる。
【0119】
以下、本発明の光記録方法及び光再生方法に使用される光記録再生装置について図12を参照して説明する。該光記録再生装置とは、前記光記録装置と光再生装置とを含む装置である。
図12は、本発明の一実施形態に係る光記録再生装置の全体構成図である。なお、光記録再生装置は、光記録装置と光再生装置を含んでなる。
この光記録再生装置100は、光記録媒体22が取り付けられるスピンドル81と、このスピンドル81を回転させるスピンドルモータ82と、光記録媒体22の回転数を所定の値に保つようにスピンドルモータ82を制御するスピンドルサーボ回路83とを備えている。
また、前記光記録再生装置100は、前記光記録媒体22に対して情報光と記録用参照光とを照射して情報を記録すると共に、該光記録媒体22に対して再生用参照光を照射し、回折光を検出して、該光記録媒体22に記録されている情報を再生するためのピックアップ31と、このピックアップ31を該光記録媒体22の半径方向に移動可能とする駆動装置84とを備えている。
【0120】
前記光記録再生装置100は、前記ピックアップ31の出力信号よりフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE、及び再生信号RFを検出するための検出回路85と、この検出回路85によって検出される該フォーカスエラー信号FEに基づいて、該ピックアップ31内のアクチュエータを駆動して対物レンズ(不図示)を前記光記録媒体22の厚み方向に移動させてフォーカスサーボを行うフォーカスサーボ回路86と、該検出回路85によって検出される該トラッキングエラー信号TEに基づいて該ピックアップ31内のアクチュエータを駆動して該対物レンズを該光記録媒体22の半径方向に移動させてトラッキングサーボを行うトラッキングサーボ回路87と、該トラッキングエラー信号TE及び後述するコントローラからの指令に基づいて駆動装置84を制御して該ピックアップ31を該光記録媒体22の半径方向に移動させるスライドサーボを行うスライドサーボ回路88とを備えている。
【0121】
前記光記録再生装置100は、更に、前記ピックアップ31内の後述するCMOS又はCCDアレイの出力データをデコードして、前記光記録媒体22のデータエリアに記録された情報を再生したり、前記検出回路85からの前記再生信号RFより基本クロックを再生したりアドレスを判別したりする信号処理回路89と、該光記録再生装置100の全体を制御するコントローラ90と、このコントローラ90に対して種々の指示を与える操作部91とを備えている。
前記コントローラ90は、前記信号処理回路89より出力される前記基本クロックや前記アドレス情報を入力すると共に、前記ピックアップ31、前記スピンドルサーボ回路83、及び前記スライドサーボ回路88等を制御するようになっている。該スピンドルサーボ回路83は、該信号処理回路89より出力される該基本クロックを入力するようになっている。該コントローラ90は、CPU(中央処理装置)、ROM(リード オンリ メモリ)、及びRAM(ランダム アクセス メモリ)を有し、該CPUが、該RAMを作業領域として、該ROMに格納されたプログラムを実行することによって、該コントローラ90の機能を実現するようになっている。
【0122】
本発明の光記録方法及び光再生方法に使用される光記録再生装置は、本発明の前記光記録媒体を用いているので、入射角が変化しても選択反射波長にずれが生じることなく、情報光及び参照光による光記録媒体の反射膜からの乱反射を防止し、ノイズの発生を防止することができ、今までにない高密度記録を実現することができる。
【0123】
ここで、本発明の光記録媒体の実施形態について、並びにこれらの光記録媒体での光記録方法及び光再生方法について、図面を参照して更に詳しく説明する。
【0124】
<第一の実施形態>
図9は、本発明の第一の実施形態における光記録媒体の構成を示す概略断面図である。この第一の実施形態に係る光記録媒体21では、ポリカーボネート樹脂製又はガラス製の第二の基板1にサーボピットパターン3が形成され、該サーボピットパターン3上にアルミニウム、金、白金等でコーティングして反射膜2が設けられている。なお、図9では第二の基板1全面にサーボピットパターン3が形成されているが、周期的に形成されていてもよい。また、このサーボピットの高さは最大1750Å(175nm)であり、基板を始め他の層の厚さに比べて充分に小さいものである。
【0125】
第一ギャップ層8は、紫外線硬化樹脂等の材料を前記第二の基板1の前記反射膜2上にスピンコート等により塗布して形成される。該第一ギャップ層8は、該反射膜2を保護すると共に、第二の記録層4内に生成されるホログラムの大きさを調整するためにも有効である。つまり、第一の記録層4a及び第二の記録層4において記録用の参照光及び情報光の干渉領域をある程度の大きさに形成する必要があるため、該第二の記録層4と該サーボピットパターン3との間に第一ギャップ層8を設けると有効である。
前記第一ギャップ層8上にはフィルタ層6が設けられ、該フィルタ層6上には、第二の記録層4が積層され、更に該第二の記録層4上に第一の記録層4aが積層され、第二の基板5(ポリカーボネート樹脂製又はガラス基板製)と前記第一の基板1とによって、該第一ギャップ層8、該フィルタ層6、該第二の記録層4及び第一の記録層4aを挟むことによって光記録媒体21が構成される。
【0126】
図9において、前記フィルタ層6は、赤色光のみを透過し、それ以外の色の光を通さないものである。従って、情報光、記録及び再生用参照光は緑色又は青色の光であるので、該フィルタ層6を透過せず、前記反射膜2まで達することなく、戻り光となり、入出射面Aから出射することになる。
このフィルタ層6は、コレステリック液晶層6a、6b、6c及び6dが4層積層された積層体である。このコレステリック液晶層の積層体であるフィルタ層6は、前記第一ギャップ層8上に塗布によって直接形成してもよいし、基材上に4層積層した該コレステリック液晶層6a、6b、6c及び6dを形成した光記録媒体用フィルタを光記録媒体形状に打ち抜いて配置してもよい。
【0127】
本実施形態における光記録媒体21は、ディスク形状でもいいし、カード形状であってもよい。カード形状の場合にはサーボピットパターンは無くてもよい。また、この光記録媒体21では、前記第二の基板1は0.6mm、前記第一ギャップ層8は100μm、前記フィルタ層6は2〜3μm、前記第一の記録層4aは、500μm、前記第二の記録層4は0.012mm、前記第一の基板5は0.6mmの厚さであって、合計厚みは約1.8mmとなっている。
【0128】
次に、図面を参照して、光記録媒体21周辺での光学的動作の一例を説明する。この第一の実施形態に係る光記録媒体21では、第二ギャップ層7以外は第二の実施形態に係る光記録媒体22と同様に構成されるので、光学的動作は光記録媒体22を用いた場合と同様の動作となることから、光記録媒体22を用いた図11を用いて説明する。
まず、サーボ用レーザー発振器から出射したサーボ用光(赤色光)は、ダイクロイックミラー13でほぼ100%反射して、対物レンズ12を通過する。対物レンズ12によって前記サーボ用光は反射膜2上で焦点を結ぶように光記録媒体21に対して照射される。つまり、ダイクロイックミラー13は緑色や青色の波長の光を透過し、赤色の波長の光をほぼ100%反射させるようになっている。光記録媒体21の光の入出射面Aから入射したサーボ用光は、第一の基板5、第一の記録層4a、第二の記録層4、フィルタ層6、及び第一ギャップ層8を通過し、反射膜2で反射され、再度、第一ギャップ層8、フィルタ層6、第二の記録層4、第一の記録層4a及び第一の基板5を透過して入出射面Aから出射する。出射した戻り光は、対物レンズ12を通過し、ダイクロイックミラー13でほぼ100%反射して、サーボ情報検出器(不図示)でサーボ情報が検出される。検出されたサーボ情報は、フォーカスサーボ、トラッキングサーボ、スライドサーボ等に用いられる。第一の記録層4a及び第二の記録層4を構成するホログラム材料は、赤色の光では感光しないようになっているので、サーボ用光が第一の記録層4a及び第二の記録層4を通過したり、サーボ用光が反射膜2で乱反射したとしても、第一の記録層4a及び第二の記録層4には影響を与えない。また、サーボ用光の反射膜2による戻り光は、ダイクロイックミラー13によってほぼ100%反射するようになっているので、サーボ用光が再生像検出のためのCMOSセンサ又はCCD14で検出されることはなく、再生光に対してノイズとなることもない。
【0129】
また、記録用/再生用レーザーから生成された情報光及び記録用参照光は、偏光素子16を通過して線偏光となりハーフミラー17を通過して1/4波長板15を通った時点で円偏光になる。次いで、ダイクロイックミラー13を透過し、対物レンズ12によって情報光と記録用参照光が第一の記録層4a内で干渉像を生成するように光記録媒体21に照射される。情報光及び記録用参照光は入出射面Aから入射し、第一の記録層4aで干渉し合って第一の干渉像をそこに生成する。その後、情報光及び記録用参照光は第一の記録層4a及び第二の記録層4を通過し、フィルタ層6に入射するが、該フィルタ層6の底面までの間に反射されて戻り光となる。つまり、情報光と記録用参照光は反射膜2までは到達しない。フィルタ層6はコレステリック液晶層が4層積層され、赤色光のみを透過する性質を有するからである。あるいは、フィルタ層を漏れて通過する光を入射光強度の20%以下に抑えていれば、たとえその漏れ光が底面に到達して戻り光となっても、再度フィルタ層で反射されるので再生光へ混じる光強度は20%×20%=4%以下となり、実質的に問題とはならない。
前記第一の記録層4aに記録がなされた後、前記光記録媒体の現像、定着後に、この第一の記録層4aに対して、記録用レーザーに用いた前記参照光が照射されると、前記第一の記録層4aに記録された第一の干渉像が前記第二の記録層4に転写される。該転写は、まず、偏光素子16を通過して線偏光となり、ハーフミラー17及び1/4波長板15を通って円偏光に変換され、更にダイクロイックミラー13を透過した前記参照光が、対物レンズ12によって光記録媒体21に照射される。参照光は、前記第一の干渉像が記録された前記第一の記録層に到達すると、前記第一の記録層を透過する光と、前記第一の干渉像に照射され、回折光に変換される光とに分かれる。該第一の記録層を透過した光は、第二の記録層4を通過し、フィルタ層6に入射するが、該フィルタ層6の底面までの間に反射されて戻り光となる。一方、前記第一の干渉像に照射された光は、該第一の干渉像から回折光を生成する。次いで、該戻り光と、該回折光とが第二の記録層内で干渉し合って第二の干渉像をそこに生成し、該第二の干渉像を該第二の記録層に記録する。
更に、必要に応じて、前記第一の記録層4aを他の第一の記録層4aに交換し、交換した新たな第一の記録層4aに、新たな情報光及び参照光を照射することによって、新たな第一の干渉像を形成し、該第一の干渉像を新たな第一の記録層4aに記録する。次いで、前記新たな第一の記録層4aに記録された新たな第一の干渉像から、第二の記録層4に新たな第二の干渉像を形成し記録する。以上のようにして、第一の記録層4aを交換することにより、第二の記録層4に干渉像を多重に記録することができる。
【0130】
<第二の実施形態>
図10は、本発明の第二の実施形態における光記録媒体の構成を示す概略断面図である。この第二の実施形態に係る光記録媒体22では、フィルタ層6と記録層4との間に第二ギャップ層7が設けられていること以外は第一の実施形態と同様である。
【0131】
前記第二ギャップ層7は、情報光及び再生光がフォーカシングするポイントが存在する。このエリアをフォトポリマーで埋めていると過剰露光によるモノマーの過剰消費が起こり多重記録能が下がってしまう。そこで、無反応で透明な第二ギャップ層を設けることが有効となる。
【0132】
また、光記録媒体22では、第二の基板1は1.0mm、第一ギャップ層8は100μm、フィルタ層6は3〜5μm、第二ギャップ層7は70μm、第一の記録層4aは、12μm、第二の記録層4は0.5mm、第一の基板5は0.4mmの厚さであって、合計厚みは約2.0mmとなっている。
【0133】
前記第二の実施形態における光記録媒体22の形状は、ディスク形状でもいいし、カード形状であってもよく、第一の実施形態と同様に形成される。
前記第二の実施形態における光記録媒体22周辺での光学的動作は、前述した第一の実施形態の前記光記録媒体21周辺での光学的動作と同様である。
【実施例】
【0134】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0135】
(実施例1)
実施例1の光記録媒体における、フィルタ層を形成するために、以下のようにして、フィルム状の光記録媒体用フィルタを作製した。
【0136】
<光記録媒体用フィルタの作製>
まず、ポリカーボネートフィルム(「ユーピロン」;三菱瓦斯化学株式会社製)厚さ100μm上に、ポリビニルアルコール(「MP203」;株式会社クラレ製)を厚さ1μmとなるように塗布したベースフィルムを用意した。このベースフィルムをラビング装置に通して、ポリビニルアルコール膜面をラビングし、液晶配向能を付与した。
【0137】
次に、下記表1に示す組成のコレステリック液晶層用塗布液A、B及びCを常法により調製した。
【0138】
【表1】

*UV重合性液晶:「PALIOCOLOR LC242」;BASF社製
*カイラル剤:「PALIOCOLOR LC756」;BASF社製
*光重合開始剤:「イルガキュア369」;チバスペシャルティケミカルズ社製
*増感剤:ジエチルチオキサントン
*溶剤:メチルエチルケトン(MEK)
【0139】
次に、前記ベースフィルム上に、前記コレステリック液晶層用塗布液Aをバーコーターで塗布し、乾燥させた後、110℃にて20秒間配向熟成した。その後、110℃下で超高圧水銀灯により照射エネルギー500mJ/cmで露光して、厚さ2μmのコレステリック液晶層硬化膜Aを形成した。
次に、コレステリック液晶層A上に、前記コレステリック液晶層用塗布液Bをバーコーターで塗布し、乾燥させた後、110℃にて20秒間配向熟成した。その後、110℃下で超高圧水銀灯により照射エネルギー500mJ/cmで露光して、厚さ2μmのコレステリック液晶層硬化膜Bを形成した。
次に、コレステリック液晶層B上に、前記コレステリック液晶層用塗布液Bをバーコーターで塗布し、乾燥させた後、110℃にて20秒間配向熟成した。その後、110℃下で超高圧水銀灯により照射エネルギー500mJ/cmで露光して、厚さ2μmのコレステリック液晶層硬化膜Cを形成した。
以上のようにして、円偏光分離特性を有し、各コレステリック液晶層における選択反射中心波長が互いに異なり、かつ各コレステリック液晶層における螺旋の回転方向が互いに右回り方向で同じである3層構造の光記録媒体用フィルタを作製した。
【0140】
<光記録媒体の作製>
実施例1の光記録媒体は、以下のように、第二の基板と、第一ギャップ層と、フィルタ層と、第二の記録層と、第一記録層と、第一の基板とをこの順に積層することにより作製した。
前記第二の基板としては、直径120mm、板厚0.6mmのDVD+RW用に用いられている一般的なポリカーボネート樹脂製基板を使用した。この基板表面には、全面にわたってサーボピットパターンが形成されており、そのトラックピッチは0.74μmであり、溝深さは175nm、溝幅は300nmである。
まず、第二の基板のサーボピットパターン表面に反射膜を成膜した。反射膜材料にはアルミニウム(Al)を用いた。成膜はDCマグネトロンスパッタリング法により膜厚200nmのAl反射膜を成膜した。前記反射膜の上に第一ギャップ層として、厚さ100μmのポリカーボネートフィルムを用い、紫外線硬化樹脂にて接着した。
【0141】
次に、作製した前記光記録媒体用フィルタを前記基板に設置できるように所定のディスクサイズに打ち抜き、ベースフィルム面をサーボピットパターン側にして貼り付けた。貼り合わせには紫外線硬化性樹脂や粘着剤を用いて気泡が入らないようにして行った。以上によりフィルタ層を形成した。
【0142】
次に、第二の記録層の材料としては、下記組成のフォトポリマー塗布液(A)を調製し、得られたフォトポリマー塗布液を、前記フィルタ層上に塗布し、第二の記録層を形成し、次いで、市販の銀塩感光材料の塗布液を、前記第二の記録層上に塗布し、第一の記録層を形成した。
−フォトポリマー塗布液(A)の組成−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ・ジ(ウレタンアクリレート)オリゴマー
(「ALU−351」;Echo Resins社製)・・・・・・・・59質量部
・イソボルニルアクリレート・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30質量部
・ビニルベンゾエート・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10質量部
・重合開始剤
(「イルガキュア784」;チバスペシャルティケミカルズ社製)・・・・1質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0143】
得られた前記第一の記録層上に、直径12cm、厚さ0.6mmのポリカーボネート樹脂製第一の基板を押し付けながらディスク端部と該第一の基板を接着剤で貼り合せた。
以上により、光記録媒体を作製した。なお、図9は、本実施例に類似の形態を示す概略断面図である。
【0144】
<第一の記録層への記録>
得られた実施例1の光記録媒体を図11に示すようなコリニアホログラム記録再生装置(「SHOT2000」;パルステック工業株式会社製)に搭載して、光源には、SHGレーザー(波長532nm)を用い、情報光及び参照光として、照射強度約1.8mW/cmを11msec〜300msec間照射し、第一の干渉像を生成し、該第一の干渉像を第一の記録層のみに記録した。なお、該照射強度は光パワーメーターにて測定し、該照射時間はシャッターにて制御した。
また、前記実施例1の光記録媒体における第一の記録層の最小照射エネルギーEを図13に示す二光束干渉露光装置を用いて測定した。この二光束干渉露光装置は、露光用レーザ装置(可干渉性を有する光源)、NDフィルター51、空間フィルター52、ビームエキスパンダー53、1/2波長板54、シャッター55、偏光ビームスプリッタ56、及びミラー57で構成される。光源としてはSHGレーザ(波長532nm)を用い、偏光ビームスプリッタ56でレーザ光を分割した後、ミラー57a及び57bで交差角度30°にて2つの平面波ビームを光記録媒体50における第一の記録層へ照射した。このとき照射スポットの直径Φは6mm、照射強度は0.6mWであり、露光時間をシャッター55にて変化させ露光量の異なる二光束干渉ホログラムを作製し、その回折効率を評価した。該回折効率は、入射光の露光量I及びI、並びに、回折光の露光量Iに対し、次式、I/(I+I)により与えられる。結果を図14に示す。第一の記録層の回折効率を得るために必要な最小エネルギー(第一の記録層に記録可能な最小エネルギー)Eは0.02mJ/cmであった。
【0145】
−記録の現像−
得られた第一の記録層の記録を、通常のウェット方式により現像及び定着を行った。
【0146】
<第二の記録層への記録>
次に、第一の干渉像が記録され、現像及び定着された前記第一の記録層に対して、前記参照光に用いたレーザ光と同じレーザ光を、照射強度約2mW/cmで20sec間照射し、前記第一の記録層を透過したレーザ光と、前記第一の干渉像に照射され、該第一の干渉像から発生した回折光とにより第二の干渉像を生成し、該第二の干渉像を第二の記録層に記録した。
また、前記実施例1の光記録媒体における第二の記録層の最小照射エネルギーEを第一の記録層と同様に測定した。結果を図14に示す。第二の記録層の回折効率を得るために必要な最小エネルギー(第二の記録層に記録可能な最小エネルギー)Eは、3.0mJ/cmであった。したがって、E×100<Eを満たしていることが判った。
【0147】
<性能評価>
−再生像の歪み−
情報が記録された実施例1の光記録媒を一旦取り外した後、再び、記録時に用いたものと同様のコリニアホログラム記録再生装置を用いて、情報の再生を行い、再生像の歪みの有無を目視で観察し、下記の基準で評価した。結果を表3に示す。
○・・・・・再生像に歪みが全く認められない。
△・・・・・再生像の一部分に歪みが僅かに認められる。
×・・・・・再生像の一部分に歪みが認められる。
【0148】
(比較例1)
実施例1において、第一の記録層を積層しなかった以外は、実施例1と同様にして光記録媒体を作製した。
得られた比較例1の光記録媒体に、表2に示す照射エネルギーで、第二の記録層への情報の記録を行い、第二の記録層から得られる再生像の歪みの評価を行った。結果を表2に示す。
【0149】
【表2】

表2の結果から、高感度の第一の記録層を有する実施例1の光記録媒体は、極めて少ないエネルギーで第一の記録層に情報を記録し、更に、その情報を第一の記録層から第二の記録層に転写できたことが判った。これに対して、比較例1の光記録媒体は、実施例1における第一の記録層への情報の記録時と同じ照射エネルギーでは全く記録ができないことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の光記録媒体は、記録感度が高く、記録速度を高めることができ、高多重記録が可能であるので、高密度記録が可能な各種光記録媒体として幅広く用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】図1は、従来の光記録媒体の構造を示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の光記録媒体における第一の記録層への第一の干渉像の記録の説明図である。
【図3】図3は、本発明の光記録媒体における第一の記録層から第二の記録層への転写の説明図である。
【図4】図4は、一般的なホログラム記録システムの説明図である。
【図5】図5は、コレステリック液晶層を3層積層したフィルタ層の正面(0°)からの入射光に対する反射特性を示すグラフである。
【図6】図6は、コレステリック液晶層を3層積層したフィルタ層の40°傾斜方向からの入射光に対する反射特性を示すグラフである。
【図7】図7は、コレステリック液晶層を2層積層したフィルタ層の正面(0°)からの入射光に対する反射特性を示すグラフである。
【図8】図8は、コレステリック液晶層を2層積層したフィルタ層の20°傾斜方向からの入射光に対する反射特性を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明による第一の実施形態に係る光記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図10】図10は、本発明による第二の実施形態に係る光記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図11】図11は、本発明による光記録媒体周辺の光学系の一例を示す説明図である。
【図12】図12は、本発明の光記録再生装置の全体構成の一例を表すブロック図である。
【図13】図13は、実施例1において、光記録媒体の各記録層に記録可能な最小エネルギーを測定するために用いた二光束干渉露光装置の構成を示す説明図である。
【図14】図14は、実施例1の光記録媒体における各記録層へ照射した入射光の露光量と回折効率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0152】
1 第二の基板
2 反射膜
3 サーボピットパターン
4 第二の記録層
4a 第一の記録層
5 第一の基板
6 フィルタ層
6a、6b、6c、6d コレステリック液晶層
7 第二ギャップ層
8 第一ギャップ層
12 対物レンズ
13 ダイクロイックミラー
14 検出器
15 1/4波長板
16 偏光素子
17 ハーフミラー
20 光記録媒体
21 光記録媒体
22 光記録媒体
24 情報光
25 参照光
26 回折光
27 第一の干渉像
28 第二の干渉像
31 ピックアップ
40 光記録媒体
42 空気変調器
42、43 フーリエ変換レンズ
44 撮像素子
50 光記録媒体
51 NDフィルター
52 空間フィルター
53 ビームエキスパンダー
54 1/2波長板
55 シャッター
56 偏光ビームスプリッター
57 ミラー
81 スピンドル
82 スピンドルモータ
83 スピンドルサーボ回路
84 駆動装置
85 検出回路
86 フォーカスサーボ回路
87 トラッキングサーボ回路
88 スライドサーボ回路
89 信号処理回路
90 コントローラ
91 走査部
100 光記録再生装置
A 入出射面
FE フォーカスエラー信号
TE トラッキングエラー信号
RF 再生信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基板と、ホログラフィを利用して情報を記録する第一の記録層及び第二の記録層と、フィルタ層と、第二の基板とを少なくとも有してなり、
前記第一の記録層に記録可能な最小照射エネルギーをEとし、前記第二の記録層に記録可能な最小照射エネルギーをEとしたとき、次式、E×100<Eを満たす光記録媒体。
【請求項2】
第一の記録層が、銀塩を含む感光材料を含有する請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
第二の記録層が、フォトポリマーを含む感光材料を含有する請求項1から2のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項4】
第一の記録層と、第二の記録層とが隣接して積層された請求項1から3のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項5】
第一の記録層の厚みが、4〜100μmである請求項1から4のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項6】
第二の記録層の厚みが、0.2〜2.0mmである請求項1から5のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項7】
フィルタ層が、第一の波長の光を透過し、第二の波長の光を反射する請求項1から6のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項8】
遮光性のあるケースに収納された請求項1から7のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の光記録媒体に情報を記録する光記録方法であって、
可干渉性を有する情報光及び参照光を前記第一の記録層に照射し、該情報光と該参照光との干渉による第一の干渉像を該第一の記録層に形成し記録する第一の干渉像記録ステップと、
前記参照光を前記第一の干渉像が記録された前記第一の記録層に照射することにより、該第一の記録層を透過した参照光と、該第一の干渉像から生ずる回折光との干渉による第二の干渉像を前記第二の記録層に形成し記録する第二の干渉像記録ステップと
を含むことを特徴とする光記録方法。
【請求項10】
第二の干渉像記録ステップの後に、第二の記録層を、他の第二の記録層に交換し、更に第二の干渉像記録ステップを行い、前記他の第二の記録層に第二の干渉像を記録する請求項9に記載の光記録方法。
【請求項11】
第二の干渉像記録ステップの後に、第一の記録層を、他の第一の記録層に交換し、更に第一の干渉像記録ステップと、第二の干渉像記録ステップとを行い、第二の記録層に第二の干渉像を重ねて記録する請求項9に記載の光記録方法。
【請求項12】
第一の干渉像記録ステップが、情報光の光軸と参照光の光軸とが同軸となるように、該情報光及び該参照光を第一の記録層に照射し、該情報光と該参照光との干渉による第一の干渉像を該第一の記録層に形成し記録する請求項9から11のいずれかに記載の光記録方法。
【請求項13】
請求項1から8のいずれかに記載の光記録媒体に情報を記録する光記録装置であって、
可干渉性を有する情報光及び参照光を第一の記録層に照射し、該情報光と該参照光との干渉による第一の干渉像を該第一の記録層に形成し記録する第一の干渉像記録手段と、
前記参照光を前記第一の干渉像が記録された前記第一の記録層に照射することにより、該第一の記録層を透過した参照光と、前記第一の干渉像から生ずる回折光との干渉による第二の干渉像を該第二の記録層に形成し記録する第二の干渉像記録手段と
を有することを特徴とする光記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−46397(P2008−46397A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222362(P2006−222362)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】