光走査装置及び画像形成装置
【課題】 コストを抑えつつ、共振型光偏向装置の揺動中心に係るオフセットによる軌道制御誤差を抑制可能な共振型の光走査装置及び該光走査装置を有する画像形成装置を提供する。
【解決手段】 基本固有振動数及びその2倍の固有振動数を有したねじり振動系に支持され光ビームを偏向する揺動ミラーと、揺動トルクを前記ねじり振動系に与える駆動手段とを備える共振型光走査装置で、2箇所の非画像領域における光ビームの通過を検出して揺動ミラーの軌道情報を出力し、軌道情報と予め定められた目標軌道との差に基づいて前記揺動ミラーの軌道が前記目標軌道に近づくよう揺動トルクを調整するフィードバック制御を行う場合、2倍の固有振動数の位相が互いに反転する順走査と逆走査の目標軌道を順次に切換えてフィードバック制御を行ない、順走査と逆走査の軌道と予め定められた目標軌道との差に基づきオフセット補償量を算出して、前記フィードバック制御に反映させる。
【解決手段】 基本固有振動数及びその2倍の固有振動数を有したねじり振動系に支持され光ビームを偏向する揺動ミラーと、揺動トルクを前記ねじり振動系に与える駆動手段とを備える共振型光走査装置で、2箇所の非画像領域における光ビームの通過を検出して揺動ミラーの軌道情報を出力し、軌道情報と予め定められた目標軌道との差に基づいて前記揺動ミラーの軌道が前記目標軌道に近づくよう揺動トルクを調整するフィードバック制御を行う場合、2倍の固有振動数の位相が互いに反転する順走査と逆走査の目標軌道を順次に切換えてフィードバック制御を行ない、順走査と逆走査の軌道と予め定められた目標軌道との差に基づきオフセット補償量を算出して、前記フィードバック制御に反映させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び画像形成装置における遥動振動体の高精度駆動の技術に関連する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ミラーが共振駆動される光偏向装置が色々と提案されている。例えば特許文献1では、単一共振周波数による共振型光偏向装置が開示されている。単一共振周波数による共振型光偏向装置では、原理的にミラーの走査角度が正弦波的に変化するため、角速度が一定でない問題点がある。この問題を解決するため、特許文献2で開示されているような略等速共振型光偏向装置が提案されている。この特許文献2に開示されるような2倍波のねじれ振動モードを同軸に有する共振型光偏向装置においては、ノコギリ波形状の揺動波形を生成することが可能である。
【0003】
図10は、2倍波の固有振動数を持った略等速共振型光偏向装置の軌道制御を行なうための、制御システムの構成例について説明するブロック構成図である。略等速共振型光偏向装置のスキャナブロック101の駆動は、次のように行われる。まず、CPU102のシーケンス制御に従い、NCO(数値制御発振器)201で共振型光偏向装置の駆動波形の生成を行なう。NCO201から出力された駆動波形をPWM変調器(図中、PWM)104でPWM変調して、H-ブリッジ(図中、HーBridge)105をスイッチしてリニア変調する。かかるH-ブリッジ105からの出力が共振型光偏向装置のスキャナブロック101を駆動する。2倍波固有振動数を持った略等速共振型光偏向装置のスキャナブロック101においては、2つの振動モードを持つ。そのため、基本波のベクトル(振幅A1、位相Φ1)と2倍波のベクトル(振幅A2、位相Φ2)とを組み合わせた4つの独立変数を係数にもつ以下の(数1)のような軌道方程式を立てて、略等角速度軌道を定義している。
【0004】
【数1】
【0005】
上記軌道方程式により定義した軌道を制御によって達成する線形制御システムは、線形システムが数学上正則である要請から4次元の直交成分データからなる4つ制御ループをそれぞれ独立に収束させて成立させている。図10におけるフィードバックループは、光ビーム検出センサ405及び406→検出ビーム位相1106/目標ビーム位相1107→比較器110→変換マトリックス111→PIDシステム114→フィードバックゲイン115→NCO201である。ここで、検出ビーム位相1106はCounter P1,P2,P3,P4で表され、目標ビーム位相1107はP10;P20;P30;P40で表されている。また、変換マトリックス111はM-1、PIDシステム114はPIDで表されている。そして、このフィードバックループは、どこの切口で、どのような物理量ないし直交座標の取り方で表現される成分であっても4つの独立変数を成分にもつベクトルにより構成される。揺動中心に対して略対称で且つ左右両側の非画像域の位置に光ビーム検出センサ405及び406を設置する。光ビーム検出センサ405及び406は、揺動ミラー301により偏向された光ビームで、そして、往復通過により4つの検出ビーム位相P1,P2,P3,P4で成分表示される走査軌道情報を検出している。
【0006】
制御目標値との比較器110は、予め軌道方程式を光ビーム検出位置で解いて得られた4点の目標ビーム位相1107を前記検出ビーム位相1106から減算することにより、目標軌道に対する差分情報として得られ、ビーム位相差分ベクトルを出力する。ビーム位相差分ベクトルは変換マトリクス111により、振幅成分と位相成分とからなる差分制御パラメータに座標変換し、古典制御理論PI制御部(PIDシステム114)に入力される。そして、フィードバックゲイン115を乗じたフィードバック量ΔA1;ΔA2;Δφ1;Δφ2を軌道方程式の制御パラメータに反映することによりフィードバック制御部を形成している。ここで、変換マトリクスM-1は、目標の軌道方程式を4つの直交ベクトル成分を持つ入力ベクトルXと出力ベクトルYのそれぞれ8つ各成分について偏微分する。そして、入力に対する出力の各成分の微分係数比について解き、行列を作成することによって得られる。前記行列は、線形変換行列でベクトルXの空間をベクトルYの空間に一次変換操作により座標変換を行なう係数行列であり、厳密解を解くためには方程式は線形関数である必要がある。しかしながら、軌道方程式のサイン関数は無限の次数を持つ非線形関数であり、かつそれらの合成関数であるため逆関数をいきなり解くことができない。そこで、変換マトリクスM-1の算出は、目標軌道方程式を光ビーム検出点についてテーラー展開を行い1次近似式に変換する。同時に、入力ベクトルXを制御パラメータ、出力ベクトルYをビーム位相としてXからYへの変換係数比行列をひとまず解く。そして、その逆行列を求めるという2段階ステップにより算出を行なう。かかる2段階ステップの概念を以下の(数2)に示す。
【0007】
【数2】
【0008】
以上の操作により求めた変換マトリクスM-1は、一次近似であるため展開点より離れる程に誤差が発生する。しかしながら、光ビーム検出位置設計値により定まる目標ビーム位相を収束点とする場合、その近傍において実用上十分な精度を発揮するため使用が可能である。以上説明した制御システムの構成により、光ビーム検出センサ405及び406で検出した4つの位相成分P1;P2;P3;P4からなる走査軌道情報を位相成分P10;P20;P30;P40で表現された目標軌道と比較する。誤差情報を変換マトリクスM-1によりフィードバック制御部に入力可能な振幅成分と位相成分とからなる4つの制御パラメータΔA1;ΔA2;Δφ1;Δφ2に変換して、ベクトル量におけるフィードバック制御を実現する。このように、4つのパラメータを持つ目標軌道に収束制御する2倍波固有振動数を持った略等速共振型光偏向手段の軌道制御方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−292627号公報
【特許文献2】特開2005−326462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、2倍波固有振動数を持った略等速共振型光偏向装置の軌道制御においては、光ビーム検知センサの検知位置の基準位置と光偏向装置の揺動中心との走査角度上のズレ量であるオフセットが発生し得る。即ち、オフセット量がゼロであることを前提とし、軌道制御を行なうと、2倍波の位相の制御誤差となって現れる問題点があった。オフセット量を含む軌道方程式は、次の(数3)のように表される。尚、オフセット量については、図4を参照して後述の実施例で説明する。
【0011】
【数3】
【0012】
即ち、軌道方程式はサイン関数をベースとしているため、振幅方向変動に対する位相方向変動のゲインは原理的に1以上であり、ピークに近いほど敏感になる。光ビーム検知センサの検知位置は画像描画領域を回避するため、走査軌道のピークに近い側に置かれゲインが高くなる。また、2倍波の振幅は基本波より小さいため、さらに位相ズレに対するゲインが高くなる。
【0013】
図11に示すのはオフセットによる軌道速度誤差であり、1分のオフセットで生じた位相ズレにより生じた走査速度の誤差を、走査角を横軸としてグラフ化したものである。図11の縦軸は走査速度である。1301は位相ズレにより生じた走査速度の誤差であり、1302と1303の間が許容範囲である。このように、オフセット誤差による軌道制御の位相の制御誤差は感度が高く、略等速軌道を歪ませるため、歪みによる走査誤差を生じる。以上の理由により、図11に示すように僅かなオフセット量であっても、非常に鋭敏に走査誤差となって作用し、画像を歪ませる問題点があった。また、目標軌道に対する収束点から離れるため安定性上の制御誤差を生じ、十分なフィードバックゲインをかけられず、ジッタを増大させる問題点があった。ところが、目標軌道方程式にオフセット項を追加して、5変数制御としてオフセット補償をした線形制御システムを設計する場合、光ビーム検出センサで検出する4つの位相成分を5つの位相成分に増やす必要がある。そのため、検知位置を1箇所増やす必要がありコスト的に好ましくない。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑み、コストを抑えつつ、共振型光偏向装置の揺動中心に係るオフセットによる軌道制御誤差を抑制可能な共振型の光走査装置及び該光走査装置を有する画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題に鑑み、本発明の光走査装置は、基本固有振動数及び前記基本固有振動数の2倍の固有振動数を有したねじり振動系に支持され光ビームを偏向する揺動ミラーと、前記基本固有振動数及び前記2倍の固有振動数の揺動トルクを前記ねじり振動系に与える駆動手段とを備える共振型光走査手段と、2箇所の非画像領域における前記揺動ミラーにより偏向された光ビームの通過を検出し、前記揺動ミラーの軌道を示す軌道情報を出力する光ビーム検出手段と、前記光ビーム検出手段が検出した軌道情報が示す軌道と予め定められた目標軌道との差に基づき、前記揺動ミラーの軌道が前記目標軌道に近づくよう前記駆動手段の揺動トルクを調整し、フィードバック制御を行う軌道制御手段とを備える光走査装置において、前記2倍の固有振動数の位相が互いに反転している順走査と逆走査の目標軌道を順次に切換え、且つ前記順走査と前記逆走査に対応させて前記軌道制御手段により前記フィードバック制御を行ない、前記順走査と前記逆走査の各々における前記光ビーム検出手段が検出した軌道と予め定められた目標軌道との差に基づきオフセット補償量を算出する算出手段と、前記算出手段が算出したオフセット補償量を、前記軌道制御手段が行うフィードバック制御に反映させるオフセット補正手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明は、共振型光偏向装置の揺動中心に係るオフセットによる軌道制御誤差を抑制可能な高精度軌道制御技術を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例の光走査装置の制御システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のNCO103の構成例を示すブロック図である。
【図3】本実施例の光走査装置のスキャナブロックの共振型偏向装置の構成例を示す図である。
【図4】本実施例の光走査装置のスキャナブロックのビーム検知とオフセットを説明する光ビーム検出系を説明する図である。
【図5】本実施例のスキャナブロックを画像形成装置に適用する場合の立体構成例を示す図である。
【図6】本実施例のオフセット補償動作において、(a)は順走査方向の目標ビーム位相及び軌道とビーム検知位置との関係を説明し、(b)は逆走査方向の目標ビーム位相及び軌道とビーム検知位置との関係を説明する図である。
【図7】(a)は図1の変換マトリクス111の特性、(b)は図1の変換マトリクス112の特性を説明する図である。
【図8】図1のCPU102における制御手順例を示すフローチャートである。
【図9】図1の光走査装置の制御システムにおけるオフセット補償動作を説明するタイミングチャートである。
【図10】従来例の光走査装置の軌道制御システムの構成例を示すブロック図である。
【図11】従来例のオフセット軌道速度誤差の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、軌道制御に誤差を及ぼすオフセット値を、光ビーム検知系に特別に高価な工夫をすることなしに高精度に読み取るオフセット検出を実現する仕組みについて説明する。抽出されたオフセット値を簡単な構成で高精度に補償するものである。具体的には、光ビーム検知情報からマトリックスでオフセット情報を抽出するための軌道情報の不足を、駆動パラメータを変更することにより補って抽出可能ならしめたものである。即ち、軌道方程式の関数の性質からオフセットに対してクロストークを持つ位相成分について、目標軌道位相成分をパラメータ化する。そして、2つの軌道の制御結果の位相の差分成分から、オフセット値を算出するものである。この方法により、軌道の変更により影響を受けるスキャナの幾何的性質から生じるオフセットによる位相成分を、時間的要因から生じる位相成分と分離して検出することを可能ならしめたものである。
【0019】
<本実施例の光走査装置の制御システムの構成例> 図1の本実施例の制御システムは、以下の構成要素を備える。101はスキャナブロックであり、以下の図3で説明される共振型偏向装置と図4で説明される光ビーム検出系とを備える。図3の共振型偏向装置は軌道制御により図6(a)で説明される略等速波形走査を行い、共振型偏向装置により変更された光ビームは図5で説明される光学系により感光ドラムに対し照射される。102はCPUであり、図8のフローチャートで説明されるシーケンス制御を司る。103はNCO(数値制御発振器)であり、以下の図2で説明される構成により共振型光走査装置の駆動波形生成と駆動周期生成とを行なう。104はPWM変調器(PWM)であり、NCO103から出力された駆動波形をH-ブリッジ(H-Bridge)105をスイッチしてリニア変調するためのPWM変調を行なう。106はラッチ(Latch)であり、NCO103の位相カウント値ωt(204)を光ビームの通過検出信号で位相情報としてラッチして取得し、図6の608〜611で説明される4つの光ビーム位相を出力する。尚、図5に図示はしていないが、感光ドラム上に形成された潜像に、現像器からのトナーが付着し、トナー像の可視化が行われる。そして、可視化されたトナー像は、一次転写部で中間転写ベルト等の像担持体に一次転写され、更に二次転写部で記録紙に二次転写された後、定着装置により定着され、周知の画像形成が行われるものとする。
【0020】
107には順走査目標ビーム位相107(順走査目標軌道)が、108には逆走査目標ビーム位相108(逆走査目標軌道)が記憶されている。ここで、順走査目標ビーム位相107はP10;P20;P30;P40で表され、逆走査目標ビーム位相108はPr10;Pr20;Pr30;Pr40で表されている。比較器110は、ラッチ106によりラッチされた光ビーム位相P1,P2,P3,P4から、セレクタ109により選択されている順方向あるいは逆方向のいずれかの目標ビーム位相を減算する。比較器110からは、該減算に従う目標ビーム位相に対する誤差情報が出力される。111は順走査変換マトリクスM-1_Fwd、112は逆走査変換マトリクスM-1_Revである。この変換マトリクスの詳細については、背景技術にてΔX=[M]-1ΔYの式で説明した通りであり、ここでは重複した説明を省略する。そして、これら変換マトリクスは、実際に検出されたビーム位相の目標ビーム位相に対する誤差情報(ΔY)から、駆動振幅位相の差分パラメータ(ΔX)であるΔA1;ΔA2;ΔΦ1;ΔΦ2を積和演算により計算する。セレクタ113は、設定された軌道が順走査であれば順走査変換マトリクスM-1_Fwdを選択し、逆走査であれば逆走査変換マトリクスM-1_Revを選択する。セレクタ113により選択された変換マトリクスの計算結果(出力)である駆動振幅及び位相の差分パラメータはPIDシステム114に入力される。PIDシステム114では公知の古典制御理論によってチューニングされ、フィードバックゲイン115が与えられて、NCO103へのΔA1;ΔA2;ΔΦ1;ΔΦ2の4変数ベクトル入力となる。また、PIDシステム114のゲイン−周波数(位相)特性により、突発的なノイズを除去できる。このように、順方向と逆方向の軌道切換えスイッチであるセレクタ109,113を有した軌道のフィードバック制御ループが形成される。
【0021】
116から123までは、オフセット補償制御ループの帰還部である。セレクタ116は、設定されている軌道が順走査か逆走査かで、ΔΦ2(位相変動量(理想値からのずれ))を、順走査位相レジスタ117(Δφ2_Fwd)及び逆走査位相レジスタ118(Δφ2_Rev)の何れかに、CPUの指定したタイミングで振り分ける。そして、順走査位相レジスタ117(Δφ2_Fwd)及び逆走査位相レジスタ118(Δφ2_Rev)は入力されたΔΦ2の値を保持しておく。119は比較器であり、順走査位相レジスタ117と逆走査位相レジスタ118にストアされたΔΦ2の値を比較して差分値を計算する。そして、比較結果出力をゲイン調整器130に出力する。ゲイン調整器130は、入力されたオフセット量をあらわす信号(2倍のΔφd2(2Δφd2))に対して所定の係数(例えば1/10)を乗算し、乗算後の信号をビーム位相変換マトリクス(図中、M)120へ送る。この乗算後の信号が、オフセット補償量にあたる。尚、ゲイン調整器130の詳細な動作については、後述の図8のフローチャートのS812にて詳しく説明する。120はビーム位相変換マトリクス(M)であり、入力されたオフセット補償量をビーム位相補償量に変換する。ここでビーム位相補償量とはオフセット補償量を走査周期位相に換算した補償量である。ビーム位相変換マトリクス(M)については(数2)で説明した通りである。ビーム位相変換マトリクスは、(数2)で説明したΔX;ΔXT=(0 0 0 2Δφ2)を入力ベクトルとし、それにマトリクスを掛け合わせ、ΔY;ΔYT=(ΔP1 ΔP2 ΔP3 ΔP4)を出力する。そして、この演算された(ΔP1 ΔP2 ΔP3 ΔP4)が逆符号化されて図1中の軌道のフィードバック制御ループに反映される。これにより、目標ビーム位相107の(P10;P20;P30;P40)がオフセット補償目標ビーム位相(P10';P20';P30';P40')になるのである。オフセット補償目標ビーム位相とは、設計ビーム検出位置を走査周期位相に換算した目標ビーム位相をビーム位相補償量で補償した新たな目標位相である。尚、ビーム位相変換マトリクス(M)120からの、軌道フィードバック制御ループへのオフセット補償の更新は、例えば印字開始前毎に行われ、印字実行中などには行われない。勿論、印字枚数が多いときなどは、印字中であっても、印字を中断して更新しても良い。122はセレクタであり、オフセット検出時にはゼロ位相ベクトル(0;0;0;0)121を選択する。また、セレクタ122は、オフセット補償制御時にはビーム位相変換マトリクス(M)120による変換結果であるビーム位相補償量を選択する。そして、セレクタ122により選択された信号は、ビーム位相補償器123により、実際に検出されたビーム位相から減算される。ここでの減算とは、先に説明したように、オフセット量に相関性のあるΔφ2をビーム位相に換算し更にその換算結果を逆符号にしたものを、軌道のフィードバック制御ループに反映させ、間接的にΔφ2をキャンセルさせるということを意味する。
【0022】
(NCO103の構成例) 図2のNCO103は、ロジック回路により構成される。202は積算カウンタ(ACC)であり、最大カウントを1周期として、角周波数設定値である周波数設定値入力(ω)203により設定された定数を毎クロックごとに積算する。これにより、ノコギリ波上の位相カウンタを形成し、駆動周期として基本波基準位相ωtを位相出力(ωt)204に出力する。
【0023】
205はφ1初期値レジスタ(φ1)であり、システム伝達関数より決まる位相初期値が設定されている。207はφ1のフィードバック入力としてのΔφ1である。加算器206及び208によりφ1、Δφ1が基本波の位相に加算される。209は逓倍器(×2)であり、基本波の位相を2倍逓倍して2倍波の位相を生成する。210はφ2初期値レジスタ(φ2)である。213はφ2のフィードバック入力としてのΔφ2入力である。加算器211及び213によりφ2、Δφ2が2倍基本波の位相に加算される。214はサインテーブル(SIN)であり、通常1/4周期サイン関数ROMより位相入力に対して展開読み出しをしてサイン関数振幅を出力する。215はA1のフィードバック入力としてのΔA1である。レジスタ216は振幅の初期値であるA1を保持する。加算器217はA1とΔA1を乗算器218に入力する。同様に、219はA2のフィードバック入力としてのΔA2である。レジスタ220は振幅の初期値であるA2を保持する。加算器221はA2とΔA2を乗算器222に入力する。乗算器218、乗算器222は、各基本波と2倍波のサイン波出力と乗算する。そして、加算器223により合成波形(A1−ΔA1)×SIN(ωt+Φ1−ΔΦ1)+(A2−ΔA2)×SIN(2ωt+Φ2−ΔΦ2)を計算し、軌道誤差が最小となるように調整された駆動波形出力224としてPWM変調器104に出力する。
【0024】
なお、本実施例1の図1及び図2では、駆動波形出力を印加電圧波形としてPWM変調を実施している。しかしながら、他の実施例として、線形変調であれば矩形波変調であっても良い。もちろん、アナログドライバであっても良いし、印加電流波形として捕らえても良い。要はマクロ線形のドライバであれば良い。
【0025】
<本実施例のスキャナブロックの構成例> 図3の本実施例のスキャナブロックの共振型偏向装置において、301は揺動ミラーであり、ねじれバネ302により駆動子304上に支持される。303はマグネットであり、長手方向に着磁され駆動子304に固着されている。305はねじれバネであり、駆動子304を支持部306に支持している。301,302,304,305は単結晶シリコンを一体に形成されている。そして304及び305とで基本波(1倍波)の周波数の基本固有振動数を持っている。また301及び302とで基本波に対して2倍の固有振動数を持っている。そして、共振型偏向装置全体として2自由度ねじれ振動系を構成している。307は励磁コイルユニットであり、励磁コイルに固有振動数に対応する駆動周期と位相の電流を流すことにより揺動トルクを与え、揺動中心308を中心に走査範囲309を走査ビームで走査する。もちろん、他の実施例として、必ずしも励磁コイルでなく、ピエゾ素子を支持部に配置するなどの構成を用いても良い。
【0026】
(本実施例のオフセットの定義) 図4は、本実施例のスキャナブロックのビーム検知とオフセットを説明する光ビーム検出系の説明図であり、オフセットの定義を以下に説明する。301は揺動ミラーであり、レーザビーム光源402からの光ビームを走査する。308は揺動中心であり、揺動ミラー301の設計上(理想上)の揺動中心である。また、308は光ビーム検知基準位置でもあり、揺動ミラー301が揺動中心308に向いているときの光ビーム位置であり、本実施例では揺動中心308に一致させている。404は光ビーム検知センサの実際の設置位置から決定される仮想光ビーム検知基準位置であり、実際に検出された光ビームの起動に従い定義される位置である。光ビーム検知センサ405の位置の設定角407と光ビーム検知センサ406の位置の設定角408の設計値比率内分点により定まる。本実施例では、1対1の比率にしているため光ビーム検知センサ405(BD1)の位置と光ビーム検知センサ406(BD2)の位置との実装上の中点となる。409は本実施例のオフセットであり、設計上の光ビーム検知の基準位置308に対する仮想光ビーム検知の基準位置404の実装上のズレ量である。このように、光ビーム検知位置の中点を揺動中心とを合わせるようオフセット制御することにより、3点間の残留位置誤差を精度的に余裕のある画像倍率にしわ寄せさせ、歪みを生じるオフセットを理論上ゼロとしたものである。もちろん他の実施例として、仮想光ビーム検知の基準位置404は必ずしも対称の中心位置でなく設計値比率内分点であれば良い。
【0027】
<本実施例の画像形成装置のスキャナブロックの立体構成例> 図5の本実施例のスキャナブロックを画像形成装置に適用した立体構成で、揺動ミラー301を有する2自由度の共振型光偏向装置である。揺動中心上に傾斜入射させたレーザビーム光源402を略等速走査し、fθ補正と残留歪みとをfθレンズ503により補正し、本実施例の画像形成装置の感光ドラム504上を走査して潜像の画像露光を行なう。505、506はBD1ミラー、BD2ミラーであり、ドラム走査域外の両端である非画像領域の2箇所に置かれる。そして、その反射光をフォトダイオードよりなるBD受光素子507に入射させ、光ビーム検知位置を略対称に配置するとともに応答特性の左右差を無くしている。もちろん他の実施例としてBD受光素子405,406を2個用いても良い。
【0028】
<本実施例のオフセット補償の動作例>
(目標ビーム位相及び軌道とビーム検知位置との関係) 図6の(a)及び(b)は、本実施例のオフセット補償動作を目標ビーム位相及び軌道とビーム検知位置との関係から説明する軌道制御説明図である。以下、軌道補償の仕組みを説明する。まず図6の(a)の縦軸はビーム走査角であり、単位は目標軌道の1倍波成分の振幅を1とし正規化している。また横軸は走査周期位相である。図6(a)には、1周期分の略等速波形(波形601)が示されている。また図6の(b)も同様である。図6の(a)で、601は軌道方程式の目標軌道であり、軌道方程式θ=A1×SIN(ωt+Φ1)+A2×SIN(2ωt+Φ2)により定義された走査軌道である。また601は図3の揺動ミラー301の物理的な目標起動を示している。602は基本波であり、軌道方程式の基本波成分A1×SIN(ωt)成分波形である。603は偶数倍の2倍波であり、軌道方程式の基本波成分A2×SIN(2ωt)成分波形である。604は設計上の揺動中心である。605はt0時刻の軌道方程式の基準位相のタイミングである。606、607は光ビーム検出センサ405の位置、光ビーム検出センサ406の位置であり、軌道制御上のビーム検出の設計位置である。608〜611は軌道方程式とビーム検出の設計位置とから計算された目標ビーム位相107(P10;P20;P30;P40)である。尚、光ビーム検出センサ406が設けられた位置に光ビームが通過した際に、その光ビームが検出センサ407に入力されるように、反射ミラーを設けるようにしても良い。こうすることで、光ビーム検出センサの数を減らすことが出来る。615はオフセット後の制御軌道であり、目標ビーム位相をオフセット補償なしで制御した場合の軌道である。616はオフセット後の2倍波であり、目標ビーム位相をオフセット補償なしで制御した場合の2倍波成分波形であり、オフセットにより位相がズレた様子を表す。617〜620はオフセット補償目標ビーム位相(P10';P20';P30';P40')である。612は仮想光ビーム検知の基準位置であり、オフセット後のBD405の位置613とオフセット後のBD406の位置614の間の設計値比内分点で定義したオフセット量を表す。本実施例では中点である。
【0029】
図6の(b)で、621はオフセット検出のための逆走査目標軌道である。622は逆走査2倍波であり、順走査に対して2倍波成分(軌道方程式θ=A1×SIN(ωt+Φ1)−A2×SIN(2ωt+Φ2))を逆位相としている。尚、逆軌道方程式は、レジスタ220に“−A2”をセットするようにしても良いし或いは、順走査の軌道方程式のφ2を180°進めて算出するようにしても良い。623は逆走査でオフセット後の制御軌道であり、オフセットがある場合の逆走査における制御誤差波形である。624は逆走査のオフセット後の2倍波であり、逆走査における制御誤差波形の2倍波成分である。オフセットによる2倍波の位相ズレの方向が逆走査では順走査に対して逆になっている。後述にて詳しく説明するが、この順走査と逆走査の2倍波の位相ズレの差分値を測定することによりオフセット量を求めることができる。
【0030】
図1の制御システムによりこのオフセット検出の結果から目標ビーム位相のオフセット補償量を求める。目標ビーム位相107(P10;P20;P30;P40)をシフト修正したものがオフセット補償目標ビーム位相(P10';P20';P30';P40')である。この目標ビーム位相のオフセット補償P10';P20';P30';P40'により、オフセット後のセンサ405の位置613とセンサ406の位置614でのビーム検出において、軌道方程式の目標軌道601に対する誤差が零に近づくよう制御せしめる。このようにして、結果的に目標軌道補正が行われる。なお、本実施例では逆位相の2つの2倍波をそえぞれ成分に持つ2つの軌道をオフセットの測定に用いたが、組み合せはこの2つに限ったものでない。例えば、2倍波をスキャンした2倍波位相の変動値を求め、時間は掛かるものの取りこぼし無く求めるものでも良い。
【0031】
(変換マトリクス111と112の特性例) 図7の(a)及び(b)は、本実施例の図1の順方向の変換マトリクスM-1_Fwd111と逆方向の変換マトリクスM-1_Rwd112の特性を説明する説明図である。X軸には0を中心にオフセット量を、Y軸には0を中心に制御パラメータのクロストーク量を比率でプロットしたものである。但し、Y軸については90°を“1”として正規化している((クロストーク量)/90°)。以下、設定軌道によるオフセットの制御パラメータに対するクロストーク量の様子を説明する。図7の(a)の701は順走査マトリクスのクロストーク特性、図7の(b)の702は逆走査マトリクスのクロストーク特性である。尚、ここでのクロストーク特性とはオフセット量の変化に応じて変化する特性のことを指す。また、(数1)で示される走査軌道の入力により図3に示される共振型偏向装置を安定状態で駆動させた場合の、理想的な走査軌道からのオフセット起因のずれを指す。これは、フルランクではない4入力の変換マトリクス(120と同じビーム位相変換マトリクス(M))で4入力を制御パラメータに変換することによる、オフセット項の出力へのクロストーク量を、設定軌道をパラメータに計算したものである。尚、フルランクとは、連立方程式をマトリックスで表したとき、そのランクが次数(未知数の数)と等しい数学表現になることをいう。要は、未知数と方程式の数が等しく解が一意に定まるということである。一方、マトリクスがフルランクではないとは、変換マトリクスにより、本来一意に定まるべき出力が、オフセットが0でなく新たな未知数となることで出力に新たな自由度が生じてしまうことを指す。新たに生じた自由度は、何れかの出力に変化を与えるが、どの出力にどのように漏れ込むかは、関数(本件では軌道式(数3))の性質により決まる。軌道式は非線形の方程式なので解析解を求められない。よって、制御動作点における数値解を求めた結果を701、702に示して、オフセット値の100%がΔφ2に漏れ込む事実をクロストーク量の計算結果として説明している。
【0032】
703は順走査のφ2クロストーク特性(Δφd2)、705は逆走査のφ2クロストーク特性(Δφd2)である。704は順走査のA1,A2,φ1クロストーク特性(ΔAd1,ΔAd2,Δφd1)、706は逆走査のA1,A2,φ1クロストーク特性(ΔAd1,ΔAd2,Δφd1)である。尚、ここでのΔφd2とは、理想的なオフセットに係るφ2に対して、更にどれだけの位相が実際にずれているかを意味している。ΔAd1,ΔAd2,Δφd1クロストーク特性は、設定軌道に関わらず原点で0、またその周辺でもどれもほぼ0に重なっている。これに対して、Δφd2クロストーク特性は設定軌道によってクロストーク量の変化が逆の傾きを持っていることがわかる。このことは、先に述べた関数の性質からオフセットは制御波形の位相ズレ成分となっていることを計算上裏付けたものである。
【0033】
<本実施例のオフセット補正制御の手順例> 図8は、CPU102の指示に従うオフセット補正の制御手順例を示すフローチャートである。また、図9は本実施例の図8に従う制御システムにおけるオフセット補償動作を説明するタイミングチャートである。本タイミングチャートは、制御パラメータΔA1、ΔA2、ΔΦ1、ΔΦ2との時系列応答をモデル計算したものである。CPU102は、プリント開始に伴うスキャナ立上げ信号を受け取ると、駆動周波数とA1,A2,Φ1,Φ2の初期値を所定レジスタより読み出し、図2で説明したNCO103の各対応するレジスタにセットする(図8のS802;図9の901)。
【0034】
次に、セレクタ122により目標ビーム補償量を0ベクトルに設定し、逆走査軌道を目標値に設定して(S803)、初期値によるオープン駆動を開始する(S804;901)。振幅が成長してBD入射の安定時間に達したら(S805)、FBゲインを設定し、振幅と位相の制御ループを順次閉じて(セレクタ109,113,116を順に逆走査側に設定;振幅902、位相903)、フィードバック駆動を開始する(S806)。フィードバックの安定時間に達したら(S807)、逆走査におけるΔΦ2値を逆走査位相レジスタ118に読み込み、逆走査の位相変動幅取得を行う(S808;904)。位相の制御ループをオープンにして順走査軌道に設定し(セレクタ116をオープン、セレクタ109,113を順走査に設定;904)、位相の制御ループを閉じて順走査軌道フィードバック駆動を開始する(セレクタ116を順走査に設定;S809;905)。S809では、制御軌道の設定順番を逆走査の次に順走査にするシーケンス制御手順とし、基本波の位相を保存(略固定)しながら2倍波の位相(高調波の位相)を180°切換える軌道切換えを行った。これにより、振動を止めることなくオフセット測定とオフセット補償の処理への移行を行い、短時間で立ち上げたものである。尚、基本波の位相と2倍波の位相とが相対的に変化すればよく、2倍波の位相を保存(略固定)しながら基本波の位相を180°切替える軌道切換えを行っても良い。フィードバック安定時間に達したら(S810)、順走査におけるΔΦ2値を順走査位相レジスタ117に読み込み、順走査の位相変動幅取得を行う(S811)。セレクタ122を切換えて、目標ビーム補償量を0ベクトルから、順走査位相レジスタ117と逆走査位相レジスタ118との差分値に基づくオフセット値とする。このオフセット値をフィードバックするフィードバックループとして、オフセット補償制御を行う。また、セレクタ116を次の図8のフローチャートを実行するまでオープンにしておく。また、セレクタ116をオープンにせずに、ゲイン調整器130による、順走査位相レジスタ117(Δφ2_Fwd)及び逆走査位相レジスタ117(Δφ2_Rev)の読み込みを、次の図8のフローチャートが実行されるまで行わないようにしても良い。
【0035】
そして、オフセット補償処理の軌道制御のフィードバックゲインは、オフセット検出のフィードバックゲインより高めるようゲイン制御を行う(フィードバックゲイン115及び/又はPID114による)(S812;906)。これにより、オフセット誤差により不安定なオフセット検出時の軌道制御の安定性を確保する。同時に、オフセット補償により安定性の増したオフセット補償処理における収束精度を高め、空気の乱流により生じるジッタを高いゲインで抑圧することにより、高画質を得る効果が得られる。また、オフセット補償処理の目標軌道は、前記オフセット検出の最終目標軌道にオフセット補償量を重畳してなる目標軌道を設定して補正する連続シーケンス制御を行う。これにより、振動を停止させることなくオフセット補償処理に移行することができ、立ち上げ時間の短縮がはかれる効果がある。
【0036】
(S812の詳細説明) ここで、図1の順走査位相レジスタ117、逆走査位相レジスタ118に入力されるΔφ2とΔφd2との関係を説明する。これは図1のゲイン調整器130にかかわる詳細な説明に相当する。軌道のフィードバック制御ループにおいて、共振型変更装置を安定状態で駆動させた場合のΔφ2には、先に説明したΔφd2と、他の要因によるΔφo2も含まれる。例えば、その他の駆動系等のシステムの遅延特性や気圧変動による負荷変動などの他のシステム的要因による位相変動などである。Δφo2の添え字“o”はotherの頭文字である。ここで図1の順走査位相レジスタ117、逆走査位相レジスタ118に夫々に保持されるΔφ2は、以下の数式4、5で表すことができる。Δφ2は順走査の場合のΔφ2を、Δφr2は逆走査の場合のΔφ2を示す。尚、Δφo2については、順走査においても逆走査においても共振型偏向装置がねじれに対称で振幅が等しいのと、短期間におけるシステムの遅延特性や気圧変動による負荷変動などは変わらないので同じである。
【0037】
Δφf2=Δφo2+Δφd2 ・・・(数式4)
Δφr2=Δφo2−Δφd2 ・・・(数式5)
従って、図1の比較器119でΔφf2からΔφr2を減算すれば、2倍のΔφd2(2Δφd2)を抽出することができる。そして、ゲイン調整器130は、抽出された2倍のΔφd2(2Δφd2)に対してシステムゲイン等(PID114等)を加味して、111、112の出力に対してゲインが“1”になるように、所定の係数を乗算する。尚、ゲイン調整器130に変えて平均乗算器を設けるようにしても良い。但し、この場合には、オフセット補償制御ループの帰還部分に入力するΔφ2にシステムゲイン(114等)をかけないようにする必要がある。つまり、セレクタ113の出力を、直接116に入力するようにすれば良い。このような制御の結果、オフセット補償後のΔΦ2オフセット値907が略零に収束できていることがわかる。尚、図9のΔφ2は、上に記載したΔφo2を除いたものであり、図8のフローチャートにより、少なくとも、Δφd2に起因するオフセットを略零にできていることを示している。よって、オフセットがある状態で軌道制御を行なうと軌道が歪む現象を抑制することができる。
【0038】
<効果> このように、上述の説明においては、制御精度を高める上で重要となるメカニカルな精度要件をビーム検出系が投げ込み精度であっても自動検出手段と電子的補正部により達成し、高精度な軌道制御を低価格な構成で実現できる効果がある。現実的にビーム検出位置を1分程度に管理することは画像形成装置などの民生品としては事実上不可能であり、上に記載した仕組みは共振型ローコストスキャナを実現する上で非常に有用である。
【0039】
[その他の実施例] 上の図8のフローチャートの説明では、画像形成装置による印字実行中に、セレクタ116をオープンにして、ビーム位相変換マトリクス120の出力を固定するようにした。しかし、他のシステム構築でも良い。例えば、図8のS812の処理に応じて算出したオフセット補償量を別途記憶しておき、印字時に、記憶しておいたオフセット補償量を反転させ信号と、比較器110に入力するようにしても良い。或いは、順走査目標ビーム位相107からオフセット補償量を減じた目標位相を別途記憶しておき、印字時にそれを用いるようにしても良い。また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給する。そして、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。従って、本発明の機能・処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるコンピュータプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、上記機能・処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明の一つである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び画像形成装置における遥動振動体の高精度駆動の技術に関連する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ミラーが共振駆動される光偏向装置が色々と提案されている。例えば特許文献1では、単一共振周波数による共振型光偏向装置が開示されている。単一共振周波数による共振型光偏向装置では、原理的にミラーの走査角度が正弦波的に変化するため、角速度が一定でない問題点がある。この問題を解決するため、特許文献2で開示されているような略等速共振型光偏向装置が提案されている。この特許文献2に開示されるような2倍波のねじれ振動モードを同軸に有する共振型光偏向装置においては、ノコギリ波形状の揺動波形を生成することが可能である。
【0003】
図10は、2倍波の固有振動数を持った略等速共振型光偏向装置の軌道制御を行なうための、制御システムの構成例について説明するブロック構成図である。略等速共振型光偏向装置のスキャナブロック101の駆動は、次のように行われる。まず、CPU102のシーケンス制御に従い、NCO(数値制御発振器)201で共振型光偏向装置の駆動波形の生成を行なう。NCO201から出力された駆動波形をPWM変調器(図中、PWM)104でPWM変調して、H-ブリッジ(図中、HーBridge)105をスイッチしてリニア変調する。かかるH-ブリッジ105からの出力が共振型光偏向装置のスキャナブロック101を駆動する。2倍波固有振動数を持った略等速共振型光偏向装置のスキャナブロック101においては、2つの振動モードを持つ。そのため、基本波のベクトル(振幅A1、位相Φ1)と2倍波のベクトル(振幅A2、位相Φ2)とを組み合わせた4つの独立変数を係数にもつ以下の(数1)のような軌道方程式を立てて、略等角速度軌道を定義している。
【0004】
【数1】
【0005】
上記軌道方程式により定義した軌道を制御によって達成する線形制御システムは、線形システムが数学上正則である要請から4次元の直交成分データからなる4つ制御ループをそれぞれ独立に収束させて成立させている。図10におけるフィードバックループは、光ビーム検出センサ405及び406→検出ビーム位相1106/目標ビーム位相1107→比較器110→変換マトリックス111→PIDシステム114→フィードバックゲイン115→NCO201である。ここで、検出ビーム位相1106はCounter P1,P2,P3,P4で表され、目標ビーム位相1107はP10;P20;P30;P40で表されている。また、変換マトリックス111はM-1、PIDシステム114はPIDで表されている。そして、このフィードバックループは、どこの切口で、どのような物理量ないし直交座標の取り方で表現される成分であっても4つの独立変数を成分にもつベクトルにより構成される。揺動中心に対して略対称で且つ左右両側の非画像域の位置に光ビーム検出センサ405及び406を設置する。光ビーム検出センサ405及び406は、揺動ミラー301により偏向された光ビームで、そして、往復通過により4つの検出ビーム位相P1,P2,P3,P4で成分表示される走査軌道情報を検出している。
【0006】
制御目標値との比較器110は、予め軌道方程式を光ビーム検出位置で解いて得られた4点の目標ビーム位相1107を前記検出ビーム位相1106から減算することにより、目標軌道に対する差分情報として得られ、ビーム位相差分ベクトルを出力する。ビーム位相差分ベクトルは変換マトリクス111により、振幅成分と位相成分とからなる差分制御パラメータに座標変換し、古典制御理論PI制御部(PIDシステム114)に入力される。そして、フィードバックゲイン115を乗じたフィードバック量ΔA1;ΔA2;Δφ1;Δφ2を軌道方程式の制御パラメータに反映することによりフィードバック制御部を形成している。ここで、変換マトリクスM-1は、目標の軌道方程式を4つの直交ベクトル成分を持つ入力ベクトルXと出力ベクトルYのそれぞれ8つ各成分について偏微分する。そして、入力に対する出力の各成分の微分係数比について解き、行列を作成することによって得られる。前記行列は、線形変換行列でベクトルXの空間をベクトルYの空間に一次変換操作により座標変換を行なう係数行列であり、厳密解を解くためには方程式は線形関数である必要がある。しかしながら、軌道方程式のサイン関数は無限の次数を持つ非線形関数であり、かつそれらの合成関数であるため逆関数をいきなり解くことができない。そこで、変換マトリクスM-1の算出は、目標軌道方程式を光ビーム検出点についてテーラー展開を行い1次近似式に変換する。同時に、入力ベクトルXを制御パラメータ、出力ベクトルYをビーム位相としてXからYへの変換係数比行列をひとまず解く。そして、その逆行列を求めるという2段階ステップにより算出を行なう。かかる2段階ステップの概念を以下の(数2)に示す。
【0007】
【数2】
【0008】
以上の操作により求めた変換マトリクスM-1は、一次近似であるため展開点より離れる程に誤差が発生する。しかしながら、光ビーム検出位置設計値により定まる目標ビーム位相を収束点とする場合、その近傍において実用上十分な精度を発揮するため使用が可能である。以上説明した制御システムの構成により、光ビーム検出センサ405及び406で検出した4つの位相成分P1;P2;P3;P4からなる走査軌道情報を位相成分P10;P20;P30;P40で表現された目標軌道と比較する。誤差情報を変換マトリクスM-1によりフィードバック制御部に入力可能な振幅成分と位相成分とからなる4つの制御パラメータΔA1;ΔA2;Δφ1;Δφ2に変換して、ベクトル量におけるフィードバック制御を実現する。このように、4つのパラメータを持つ目標軌道に収束制御する2倍波固有振動数を持った略等速共振型光偏向手段の軌道制御方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−292627号公報
【特許文献2】特開2005−326462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、2倍波固有振動数を持った略等速共振型光偏向装置の軌道制御においては、光ビーム検知センサの検知位置の基準位置と光偏向装置の揺動中心との走査角度上のズレ量であるオフセットが発生し得る。即ち、オフセット量がゼロであることを前提とし、軌道制御を行なうと、2倍波の位相の制御誤差となって現れる問題点があった。オフセット量を含む軌道方程式は、次の(数3)のように表される。尚、オフセット量については、図4を参照して後述の実施例で説明する。
【0011】
【数3】
【0012】
即ち、軌道方程式はサイン関数をベースとしているため、振幅方向変動に対する位相方向変動のゲインは原理的に1以上であり、ピークに近いほど敏感になる。光ビーム検知センサの検知位置は画像描画領域を回避するため、走査軌道のピークに近い側に置かれゲインが高くなる。また、2倍波の振幅は基本波より小さいため、さらに位相ズレに対するゲインが高くなる。
【0013】
図11に示すのはオフセットによる軌道速度誤差であり、1分のオフセットで生じた位相ズレにより生じた走査速度の誤差を、走査角を横軸としてグラフ化したものである。図11の縦軸は走査速度である。1301は位相ズレにより生じた走査速度の誤差であり、1302と1303の間が許容範囲である。このように、オフセット誤差による軌道制御の位相の制御誤差は感度が高く、略等速軌道を歪ませるため、歪みによる走査誤差を生じる。以上の理由により、図11に示すように僅かなオフセット量であっても、非常に鋭敏に走査誤差となって作用し、画像を歪ませる問題点があった。また、目標軌道に対する収束点から離れるため安定性上の制御誤差を生じ、十分なフィードバックゲインをかけられず、ジッタを増大させる問題点があった。ところが、目標軌道方程式にオフセット項を追加して、5変数制御としてオフセット補償をした線形制御システムを設計する場合、光ビーム検出センサで検出する4つの位相成分を5つの位相成分に増やす必要がある。そのため、検知位置を1箇所増やす必要がありコスト的に好ましくない。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑み、コストを抑えつつ、共振型光偏向装置の揺動中心に係るオフセットによる軌道制御誤差を抑制可能な共振型の光走査装置及び該光走査装置を有する画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題に鑑み、本発明の光走査装置は、基本固有振動数及び前記基本固有振動数の2倍の固有振動数を有したねじり振動系に支持され光ビームを偏向する揺動ミラーと、前記基本固有振動数及び前記2倍の固有振動数の揺動トルクを前記ねじり振動系に与える駆動手段とを備える共振型光走査手段と、2箇所の非画像領域における前記揺動ミラーにより偏向された光ビームの通過を検出し、前記揺動ミラーの軌道を示す軌道情報を出力する光ビーム検出手段と、前記光ビーム検出手段が検出した軌道情報が示す軌道と予め定められた目標軌道との差に基づき、前記揺動ミラーの軌道が前記目標軌道に近づくよう前記駆動手段の揺動トルクを調整し、フィードバック制御を行う軌道制御手段とを備える光走査装置において、前記2倍の固有振動数の位相が互いに反転している順走査と逆走査の目標軌道を順次に切換え、且つ前記順走査と前記逆走査に対応させて前記軌道制御手段により前記フィードバック制御を行ない、前記順走査と前記逆走査の各々における前記光ビーム検出手段が検出した軌道と予め定められた目標軌道との差に基づきオフセット補償量を算出する算出手段と、前記算出手段が算出したオフセット補償量を、前記軌道制御手段が行うフィードバック制御に反映させるオフセット補正手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明は、共振型光偏向装置の揺動中心に係るオフセットによる軌道制御誤差を抑制可能な高精度軌道制御技術を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例の光走査装置の制御システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のNCO103の構成例を示すブロック図である。
【図3】本実施例の光走査装置のスキャナブロックの共振型偏向装置の構成例を示す図である。
【図4】本実施例の光走査装置のスキャナブロックのビーム検知とオフセットを説明する光ビーム検出系を説明する図である。
【図5】本実施例のスキャナブロックを画像形成装置に適用する場合の立体構成例を示す図である。
【図6】本実施例のオフセット補償動作において、(a)は順走査方向の目標ビーム位相及び軌道とビーム検知位置との関係を説明し、(b)は逆走査方向の目標ビーム位相及び軌道とビーム検知位置との関係を説明する図である。
【図7】(a)は図1の変換マトリクス111の特性、(b)は図1の変換マトリクス112の特性を説明する図である。
【図8】図1のCPU102における制御手順例を示すフローチャートである。
【図9】図1の光走査装置の制御システムにおけるオフセット補償動作を説明するタイミングチャートである。
【図10】従来例の光走査装置の軌道制御システムの構成例を示すブロック図である。
【図11】従来例のオフセット軌道速度誤差の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、軌道制御に誤差を及ぼすオフセット値を、光ビーム検知系に特別に高価な工夫をすることなしに高精度に読み取るオフセット検出を実現する仕組みについて説明する。抽出されたオフセット値を簡単な構成で高精度に補償するものである。具体的には、光ビーム検知情報からマトリックスでオフセット情報を抽出するための軌道情報の不足を、駆動パラメータを変更することにより補って抽出可能ならしめたものである。即ち、軌道方程式の関数の性質からオフセットに対してクロストークを持つ位相成分について、目標軌道位相成分をパラメータ化する。そして、2つの軌道の制御結果の位相の差分成分から、オフセット値を算出するものである。この方法により、軌道の変更により影響を受けるスキャナの幾何的性質から生じるオフセットによる位相成分を、時間的要因から生じる位相成分と分離して検出することを可能ならしめたものである。
【0019】
<本実施例の光走査装置の制御システムの構成例> 図1の本実施例の制御システムは、以下の構成要素を備える。101はスキャナブロックであり、以下の図3で説明される共振型偏向装置と図4で説明される光ビーム検出系とを備える。図3の共振型偏向装置は軌道制御により図6(a)で説明される略等速波形走査を行い、共振型偏向装置により変更された光ビームは図5で説明される光学系により感光ドラムに対し照射される。102はCPUであり、図8のフローチャートで説明されるシーケンス制御を司る。103はNCO(数値制御発振器)であり、以下の図2で説明される構成により共振型光走査装置の駆動波形生成と駆動周期生成とを行なう。104はPWM変調器(PWM)であり、NCO103から出力された駆動波形をH-ブリッジ(H-Bridge)105をスイッチしてリニア変調するためのPWM変調を行なう。106はラッチ(Latch)であり、NCO103の位相カウント値ωt(204)を光ビームの通過検出信号で位相情報としてラッチして取得し、図6の608〜611で説明される4つの光ビーム位相を出力する。尚、図5に図示はしていないが、感光ドラム上に形成された潜像に、現像器からのトナーが付着し、トナー像の可視化が行われる。そして、可視化されたトナー像は、一次転写部で中間転写ベルト等の像担持体に一次転写され、更に二次転写部で記録紙に二次転写された後、定着装置により定着され、周知の画像形成が行われるものとする。
【0020】
107には順走査目標ビーム位相107(順走査目標軌道)が、108には逆走査目標ビーム位相108(逆走査目標軌道)が記憶されている。ここで、順走査目標ビーム位相107はP10;P20;P30;P40で表され、逆走査目標ビーム位相108はPr10;Pr20;Pr30;Pr40で表されている。比較器110は、ラッチ106によりラッチされた光ビーム位相P1,P2,P3,P4から、セレクタ109により選択されている順方向あるいは逆方向のいずれかの目標ビーム位相を減算する。比較器110からは、該減算に従う目標ビーム位相に対する誤差情報が出力される。111は順走査変換マトリクスM-1_Fwd、112は逆走査変換マトリクスM-1_Revである。この変換マトリクスの詳細については、背景技術にてΔX=[M]-1ΔYの式で説明した通りであり、ここでは重複した説明を省略する。そして、これら変換マトリクスは、実際に検出されたビーム位相の目標ビーム位相に対する誤差情報(ΔY)から、駆動振幅位相の差分パラメータ(ΔX)であるΔA1;ΔA2;ΔΦ1;ΔΦ2を積和演算により計算する。セレクタ113は、設定された軌道が順走査であれば順走査変換マトリクスM-1_Fwdを選択し、逆走査であれば逆走査変換マトリクスM-1_Revを選択する。セレクタ113により選択された変換マトリクスの計算結果(出力)である駆動振幅及び位相の差分パラメータはPIDシステム114に入力される。PIDシステム114では公知の古典制御理論によってチューニングされ、フィードバックゲイン115が与えられて、NCO103へのΔA1;ΔA2;ΔΦ1;ΔΦ2の4変数ベクトル入力となる。また、PIDシステム114のゲイン−周波数(位相)特性により、突発的なノイズを除去できる。このように、順方向と逆方向の軌道切換えスイッチであるセレクタ109,113を有した軌道のフィードバック制御ループが形成される。
【0021】
116から123までは、オフセット補償制御ループの帰還部である。セレクタ116は、設定されている軌道が順走査か逆走査かで、ΔΦ2(位相変動量(理想値からのずれ))を、順走査位相レジスタ117(Δφ2_Fwd)及び逆走査位相レジスタ118(Δφ2_Rev)の何れかに、CPUの指定したタイミングで振り分ける。そして、順走査位相レジスタ117(Δφ2_Fwd)及び逆走査位相レジスタ118(Δφ2_Rev)は入力されたΔΦ2の値を保持しておく。119は比較器であり、順走査位相レジスタ117と逆走査位相レジスタ118にストアされたΔΦ2の値を比較して差分値を計算する。そして、比較結果出力をゲイン調整器130に出力する。ゲイン調整器130は、入力されたオフセット量をあらわす信号(2倍のΔφd2(2Δφd2))に対して所定の係数(例えば1/10)を乗算し、乗算後の信号をビーム位相変換マトリクス(図中、M)120へ送る。この乗算後の信号が、オフセット補償量にあたる。尚、ゲイン調整器130の詳細な動作については、後述の図8のフローチャートのS812にて詳しく説明する。120はビーム位相変換マトリクス(M)であり、入力されたオフセット補償量をビーム位相補償量に変換する。ここでビーム位相補償量とはオフセット補償量を走査周期位相に換算した補償量である。ビーム位相変換マトリクス(M)については(数2)で説明した通りである。ビーム位相変換マトリクスは、(数2)で説明したΔX;ΔXT=(0 0 0 2Δφ2)を入力ベクトルとし、それにマトリクスを掛け合わせ、ΔY;ΔYT=(ΔP1 ΔP2 ΔP3 ΔP4)を出力する。そして、この演算された(ΔP1 ΔP2 ΔP3 ΔP4)が逆符号化されて図1中の軌道のフィードバック制御ループに反映される。これにより、目標ビーム位相107の(P10;P20;P30;P40)がオフセット補償目標ビーム位相(P10';P20';P30';P40')になるのである。オフセット補償目標ビーム位相とは、設計ビーム検出位置を走査周期位相に換算した目標ビーム位相をビーム位相補償量で補償した新たな目標位相である。尚、ビーム位相変換マトリクス(M)120からの、軌道フィードバック制御ループへのオフセット補償の更新は、例えば印字開始前毎に行われ、印字実行中などには行われない。勿論、印字枚数が多いときなどは、印字中であっても、印字を中断して更新しても良い。122はセレクタであり、オフセット検出時にはゼロ位相ベクトル(0;0;0;0)121を選択する。また、セレクタ122は、オフセット補償制御時にはビーム位相変換マトリクス(M)120による変換結果であるビーム位相補償量を選択する。そして、セレクタ122により選択された信号は、ビーム位相補償器123により、実際に検出されたビーム位相から減算される。ここでの減算とは、先に説明したように、オフセット量に相関性のあるΔφ2をビーム位相に換算し更にその換算結果を逆符号にしたものを、軌道のフィードバック制御ループに反映させ、間接的にΔφ2をキャンセルさせるということを意味する。
【0022】
(NCO103の構成例) 図2のNCO103は、ロジック回路により構成される。202は積算カウンタ(ACC)であり、最大カウントを1周期として、角周波数設定値である周波数設定値入力(ω)203により設定された定数を毎クロックごとに積算する。これにより、ノコギリ波上の位相カウンタを形成し、駆動周期として基本波基準位相ωtを位相出力(ωt)204に出力する。
【0023】
205はφ1初期値レジスタ(φ1)であり、システム伝達関数より決まる位相初期値が設定されている。207はφ1のフィードバック入力としてのΔφ1である。加算器206及び208によりφ1、Δφ1が基本波の位相に加算される。209は逓倍器(×2)であり、基本波の位相を2倍逓倍して2倍波の位相を生成する。210はφ2初期値レジスタ(φ2)である。213はφ2のフィードバック入力としてのΔφ2入力である。加算器211及び213によりφ2、Δφ2が2倍基本波の位相に加算される。214はサインテーブル(SIN)であり、通常1/4周期サイン関数ROMより位相入力に対して展開読み出しをしてサイン関数振幅を出力する。215はA1のフィードバック入力としてのΔA1である。レジスタ216は振幅の初期値であるA1を保持する。加算器217はA1とΔA1を乗算器218に入力する。同様に、219はA2のフィードバック入力としてのΔA2である。レジスタ220は振幅の初期値であるA2を保持する。加算器221はA2とΔA2を乗算器222に入力する。乗算器218、乗算器222は、各基本波と2倍波のサイン波出力と乗算する。そして、加算器223により合成波形(A1−ΔA1)×SIN(ωt+Φ1−ΔΦ1)+(A2−ΔA2)×SIN(2ωt+Φ2−ΔΦ2)を計算し、軌道誤差が最小となるように調整された駆動波形出力224としてPWM変調器104に出力する。
【0024】
なお、本実施例1の図1及び図2では、駆動波形出力を印加電圧波形としてPWM変調を実施している。しかしながら、他の実施例として、線形変調であれば矩形波変調であっても良い。もちろん、アナログドライバであっても良いし、印加電流波形として捕らえても良い。要はマクロ線形のドライバであれば良い。
【0025】
<本実施例のスキャナブロックの構成例> 図3の本実施例のスキャナブロックの共振型偏向装置において、301は揺動ミラーであり、ねじれバネ302により駆動子304上に支持される。303はマグネットであり、長手方向に着磁され駆動子304に固着されている。305はねじれバネであり、駆動子304を支持部306に支持している。301,302,304,305は単結晶シリコンを一体に形成されている。そして304及び305とで基本波(1倍波)の周波数の基本固有振動数を持っている。また301及び302とで基本波に対して2倍の固有振動数を持っている。そして、共振型偏向装置全体として2自由度ねじれ振動系を構成している。307は励磁コイルユニットであり、励磁コイルに固有振動数に対応する駆動周期と位相の電流を流すことにより揺動トルクを与え、揺動中心308を中心に走査範囲309を走査ビームで走査する。もちろん、他の実施例として、必ずしも励磁コイルでなく、ピエゾ素子を支持部に配置するなどの構成を用いても良い。
【0026】
(本実施例のオフセットの定義) 図4は、本実施例のスキャナブロックのビーム検知とオフセットを説明する光ビーム検出系の説明図であり、オフセットの定義を以下に説明する。301は揺動ミラーであり、レーザビーム光源402からの光ビームを走査する。308は揺動中心であり、揺動ミラー301の設計上(理想上)の揺動中心である。また、308は光ビーム検知基準位置でもあり、揺動ミラー301が揺動中心308に向いているときの光ビーム位置であり、本実施例では揺動中心308に一致させている。404は光ビーム検知センサの実際の設置位置から決定される仮想光ビーム検知基準位置であり、実際に検出された光ビームの起動に従い定義される位置である。光ビーム検知センサ405の位置の設定角407と光ビーム検知センサ406の位置の設定角408の設計値比率内分点により定まる。本実施例では、1対1の比率にしているため光ビーム検知センサ405(BD1)の位置と光ビーム検知センサ406(BD2)の位置との実装上の中点となる。409は本実施例のオフセットであり、設計上の光ビーム検知の基準位置308に対する仮想光ビーム検知の基準位置404の実装上のズレ量である。このように、光ビーム検知位置の中点を揺動中心とを合わせるようオフセット制御することにより、3点間の残留位置誤差を精度的に余裕のある画像倍率にしわ寄せさせ、歪みを生じるオフセットを理論上ゼロとしたものである。もちろん他の実施例として、仮想光ビーム検知の基準位置404は必ずしも対称の中心位置でなく設計値比率内分点であれば良い。
【0027】
<本実施例の画像形成装置のスキャナブロックの立体構成例> 図5の本実施例のスキャナブロックを画像形成装置に適用した立体構成で、揺動ミラー301を有する2自由度の共振型光偏向装置である。揺動中心上に傾斜入射させたレーザビーム光源402を略等速走査し、fθ補正と残留歪みとをfθレンズ503により補正し、本実施例の画像形成装置の感光ドラム504上を走査して潜像の画像露光を行なう。505、506はBD1ミラー、BD2ミラーであり、ドラム走査域外の両端である非画像領域の2箇所に置かれる。そして、その反射光をフォトダイオードよりなるBD受光素子507に入射させ、光ビーム検知位置を略対称に配置するとともに応答特性の左右差を無くしている。もちろん他の実施例としてBD受光素子405,406を2個用いても良い。
【0028】
<本実施例のオフセット補償の動作例>
(目標ビーム位相及び軌道とビーム検知位置との関係) 図6の(a)及び(b)は、本実施例のオフセット補償動作を目標ビーム位相及び軌道とビーム検知位置との関係から説明する軌道制御説明図である。以下、軌道補償の仕組みを説明する。まず図6の(a)の縦軸はビーム走査角であり、単位は目標軌道の1倍波成分の振幅を1とし正規化している。また横軸は走査周期位相である。図6(a)には、1周期分の略等速波形(波形601)が示されている。また図6の(b)も同様である。図6の(a)で、601は軌道方程式の目標軌道であり、軌道方程式θ=A1×SIN(ωt+Φ1)+A2×SIN(2ωt+Φ2)により定義された走査軌道である。また601は図3の揺動ミラー301の物理的な目標起動を示している。602は基本波であり、軌道方程式の基本波成分A1×SIN(ωt)成分波形である。603は偶数倍の2倍波であり、軌道方程式の基本波成分A2×SIN(2ωt)成分波形である。604は設計上の揺動中心である。605はt0時刻の軌道方程式の基準位相のタイミングである。606、607は光ビーム検出センサ405の位置、光ビーム検出センサ406の位置であり、軌道制御上のビーム検出の設計位置である。608〜611は軌道方程式とビーム検出の設計位置とから計算された目標ビーム位相107(P10;P20;P30;P40)である。尚、光ビーム検出センサ406が設けられた位置に光ビームが通過した際に、その光ビームが検出センサ407に入力されるように、反射ミラーを設けるようにしても良い。こうすることで、光ビーム検出センサの数を減らすことが出来る。615はオフセット後の制御軌道であり、目標ビーム位相をオフセット補償なしで制御した場合の軌道である。616はオフセット後の2倍波であり、目標ビーム位相をオフセット補償なしで制御した場合の2倍波成分波形であり、オフセットにより位相がズレた様子を表す。617〜620はオフセット補償目標ビーム位相(P10';P20';P30';P40')である。612は仮想光ビーム検知の基準位置であり、オフセット後のBD405の位置613とオフセット後のBD406の位置614の間の設計値比内分点で定義したオフセット量を表す。本実施例では中点である。
【0029】
図6の(b)で、621はオフセット検出のための逆走査目標軌道である。622は逆走査2倍波であり、順走査に対して2倍波成分(軌道方程式θ=A1×SIN(ωt+Φ1)−A2×SIN(2ωt+Φ2))を逆位相としている。尚、逆軌道方程式は、レジスタ220に“−A2”をセットするようにしても良いし或いは、順走査の軌道方程式のφ2を180°進めて算出するようにしても良い。623は逆走査でオフセット後の制御軌道であり、オフセットがある場合の逆走査における制御誤差波形である。624は逆走査のオフセット後の2倍波であり、逆走査における制御誤差波形の2倍波成分である。オフセットによる2倍波の位相ズレの方向が逆走査では順走査に対して逆になっている。後述にて詳しく説明するが、この順走査と逆走査の2倍波の位相ズレの差分値を測定することによりオフセット量を求めることができる。
【0030】
図1の制御システムによりこのオフセット検出の結果から目標ビーム位相のオフセット補償量を求める。目標ビーム位相107(P10;P20;P30;P40)をシフト修正したものがオフセット補償目標ビーム位相(P10';P20';P30';P40')である。この目標ビーム位相のオフセット補償P10';P20';P30';P40'により、オフセット後のセンサ405の位置613とセンサ406の位置614でのビーム検出において、軌道方程式の目標軌道601に対する誤差が零に近づくよう制御せしめる。このようにして、結果的に目標軌道補正が行われる。なお、本実施例では逆位相の2つの2倍波をそえぞれ成分に持つ2つの軌道をオフセットの測定に用いたが、組み合せはこの2つに限ったものでない。例えば、2倍波をスキャンした2倍波位相の変動値を求め、時間は掛かるものの取りこぼし無く求めるものでも良い。
【0031】
(変換マトリクス111と112の特性例) 図7の(a)及び(b)は、本実施例の図1の順方向の変換マトリクスM-1_Fwd111と逆方向の変換マトリクスM-1_Rwd112の特性を説明する説明図である。X軸には0を中心にオフセット量を、Y軸には0を中心に制御パラメータのクロストーク量を比率でプロットしたものである。但し、Y軸については90°を“1”として正規化している((クロストーク量)/90°)。以下、設定軌道によるオフセットの制御パラメータに対するクロストーク量の様子を説明する。図7の(a)の701は順走査マトリクスのクロストーク特性、図7の(b)の702は逆走査マトリクスのクロストーク特性である。尚、ここでのクロストーク特性とはオフセット量の変化に応じて変化する特性のことを指す。また、(数1)で示される走査軌道の入力により図3に示される共振型偏向装置を安定状態で駆動させた場合の、理想的な走査軌道からのオフセット起因のずれを指す。これは、フルランクではない4入力の変換マトリクス(120と同じビーム位相変換マトリクス(M))で4入力を制御パラメータに変換することによる、オフセット項の出力へのクロストーク量を、設定軌道をパラメータに計算したものである。尚、フルランクとは、連立方程式をマトリックスで表したとき、そのランクが次数(未知数の数)と等しい数学表現になることをいう。要は、未知数と方程式の数が等しく解が一意に定まるということである。一方、マトリクスがフルランクではないとは、変換マトリクスにより、本来一意に定まるべき出力が、オフセットが0でなく新たな未知数となることで出力に新たな自由度が生じてしまうことを指す。新たに生じた自由度は、何れかの出力に変化を与えるが、どの出力にどのように漏れ込むかは、関数(本件では軌道式(数3))の性質により決まる。軌道式は非線形の方程式なので解析解を求められない。よって、制御動作点における数値解を求めた結果を701、702に示して、オフセット値の100%がΔφ2に漏れ込む事実をクロストーク量の計算結果として説明している。
【0032】
703は順走査のφ2クロストーク特性(Δφd2)、705は逆走査のφ2クロストーク特性(Δφd2)である。704は順走査のA1,A2,φ1クロストーク特性(ΔAd1,ΔAd2,Δφd1)、706は逆走査のA1,A2,φ1クロストーク特性(ΔAd1,ΔAd2,Δφd1)である。尚、ここでのΔφd2とは、理想的なオフセットに係るφ2に対して、更にどれだけの位相が実際にずれているかを意味している。ΔAd1,ΔAd2,Δφd1クロストーク特性は、設定軌道に関わらず原点で0、またその周辺でもどれもほぼ0に重なっている。これに対して、Δφd2クロストーク特性は設定軌道によってクロストーク量の変化が逆の傾きを持っていることがわかる。このことは、先に述べた関数の性質からオフセットは制御波形の位相ズレ成分となっていることを計算上裏付けたものである。
【0033】
<本実施例のオフセット補正制御の手順例> 図8は、CPU102の指示に従うオフセット補正の制御手順例を示すフローチャートである。また、図9は本実施例の図8に従う制御システムにおけるオフセット補償動作を説明するタイミングチャートである。本タイミングチャートは、制御パラメータΔA1、ΔA2、ΔΦ1、ΔΦ2との時系列応答をモデル計算したものである。CPU102は、プリント開始に伴うスキャナ立上げ信号を受け取ると、駆動周波数とA1,A2,Φ1,Φ2の初期値を所定レジスタより読み出し、図2で説明したNCO103の各対応するレジスタにセットする(図8のS802;図9の901)。
【0034】
次に、セレクタ122により目標ビーム補償量を0ベクトルに設定し、逆走査軌道を目標値に設定して(S803)、初期値によるオープン駆動を開始する(S804;901)。振幅が成長してBD入射の安定時間に達したら(S805)、FBゲインを設定し、振幅と位相の制御ループを順次閉じて(セレクタ109,113,116を順に逆走査側に設定;振幅902、位相903)、フィードバック駆動を開始する(S806)。フィードバックの安定時間に達したら(S807)、逆走査におけるΔΦ2値を逆走査位相レジスタ118に読み込み、逆走査の位相変動幅取得を行う(S808;904)。位相の制御ループをオープンにして順走査軌道に設定し(セレクタ116をオープン、セレクタ109,113を順走査に設定;904)、位相の制御ループを閉じて順走査軌道フィードバック駆動を開始する(セレクタ116を順走査に設定;S809;905)。S809では、制御軌道の設定順番を逆走査の次に順走査にするシーケンス制御手順とし、基本波の位相を保存(略固定)しながら2倍波の位相(高調波の位相)を180°切換える軌道切換えを行った。これにより、振動を止めることなくオフセット測定とオフセット補償の処理への移行を行い、短時間で立ち上げたものである。尚、基本波の位相と2倍波の位相とが相対的に変化すればよく、2倍波の位相を保存(略固定)しながら基本波の位相を180°切替える軌道切換えを行っても良い。フィードバック安定時間に達したら(S810)、順走査におけるΔΦ2値を順走査位相レジスタ117に読み込み、順走査の位相変動幅取得を行う(S811)。セレクタ122を切換えて、目標ビーム補償量を0ベクトルから、順走査位相レジスタ117と逆走査位相レジスタ118との差分値に基づくオフセット値とする。このオフセット値をフィードバックするフィードバックループとして、オフセット補償制御を行う。また、セレクタ116を次の図8のフローチャートを実行するまでオープンにしておく。また、セレクタ116をオープンにせずに、ゲイン調整器130による、順走査位相レジスタ117(Δφ2_Fwd)及び逆走査位相レジスタ117(Δφ2_Rev)の読み込みを、次の図8のフローチャートが実行されるまで行わないようにしても良い。
【0035】
そして、オフセット補償処理の軌道制御のフィードバックゲインは、オフセット検出のフィードバックゲインより高めるようゲイン制御を行う(フィードバックゲイン115及び/又はPID114による)(S812;906)。これにより、オフセット誤差により不安定なオフセット検出時の軌道制御の安定性を確保する。同時に、オフセット補償により安定性の増したオフセット補償処理における収束精度を高め、空気の乱流により生じるジッタを高いゲインで抑圧することにより、高画質を得る効果が得られる。また、オフセット補償処理の目標軌道は、前記オフセット検出の最終目標軌道にオフセット補償量を重畳してなる目標軌道を設定して補正する連続シーケンス制御を行う。これにより、振動を停止させることなくオフセット補償処理に移行することができ、立ち上げ時間の短縮がはかれる効果がある。
【0036】
(S812の詳細説明) ここで、図1の順走査位相レジスタ117、逆走査位相レジスタ118に入力されるΔφ2とΔφd2との関係を説明する。これは図1のゲイン調整器130にかかわる詳細な説明に相当する。軌道のフィードバック制御ループにおいて、共振型変更装置を安定状態で駆動させた場合のΔφ2には、先に説明したΔφd2と、他の要因によるΔφo2も含まれる。例えば、その他の駆動系等のシステムの遅延特性や気圧変動による負荷変動などの他のシステム的要因による位相変動などである。Δφo2の添え字“o”はotherの頭文字である。ここで図1の順走査位相レジスタ117、逆走査位相レジスタ118に夫々に保持されるΔφ2は、以下の数式4、5で表すことができる。Δφ2は順走査の場合のΔφ2を、Δφr2は逆走査の場合のΔφ2を示す。尚、Δφo2については、順走査においても逆走査においても共振型偏向装置がねじれに対称で振幅が等しいのと、短期間におけるシステムの遅延特性や気圧変動による負荷変動などは変わらないので同じである。
【0037】
Δφf2=Δφo2+Δφd2 ・・・(数式4)
Δφr2=Δφo2−Δφd2 ・・・(数式5)
従って、図1の比較器119でΔφf2からΔφr2を減算すれば、2倍のΔφd2(2Δφd2)を抽出することができる。そして、ゲイン調整器130は、抽出された2倍のΔφd2(2Δφd2)に対してシステムゲイン等(PID114等)を加味して、111、112の出力に対してゲインが“1”になるように、所定の係数を乗算する。尚、ゲイン調整器130に変えて平均乗算器を設けるようにしても良い。但し、この場合には、オフセット補償制御ループの帰還部分に入力するΔφ2にシステムゲイン(114等)をかけないようにする必要がある。つまり、セレクタ113の出力を、直接116に入力するようにすれば良い。このような制御の結果、オフセット補償後のΔΦ2オフセット値907が略零に収束できていることがわかる。尚、図9のΔφ2は、上に記載したΔφo2を除いたものであり、図8のフローチャートにより、少なくとも、Δφd2に起因するオフセットを略零にできていることを示している。よって、オフセットがある状態で軌道制御を行なうと軌道が歪む現象を抑制することができる。
【0038】
<効果> このように、上述の説明においては、制御精度を高める上で重要となるメカニカルな精度要件をビーム検出系が投げ込み精度であっても自動検出手段と電子的補正部により達成し、高精度な軌道制御を低価格な構成で実現できる効果がある。現実的にビーム検出位置を1分程度に管理することは画像形成装置などの民生品としては事実上不可能であり、上に記載した仕組みは共振型ローコストスキャナを実現する上で非常に有用である。
【0039】
[その他の実施例] 上の図8のフローチャートの説明では、画像形成装置による印字実行中に、セレクタ116をオープンにして、ビーム位相変換マトリクス120の出力を固定するようにした。しかし、他のシステム構築でも良い。例えば、図8のS812の処理に応じて算出したオフセット補償量を別途記憶しておき、印字時に、記憶しておいたオフセット補償量を反転させ信号と、比較器110に入力するようにしても良い。或いは、順走査目標ビーム位相107からオフセット補償量を減じた目標位相を別途記憶しておき、印字時にそれを用いるようにしても良い。また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給する。そして、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。従って、本発明の機能・処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるコンピュータプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、上記機能・処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明の一つである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本固有振動数及び前記基本固有振動数の2倍の固有振動数を有したねじり振動系に支持され光ビームを偏向する揺動ミラーと、前記基本固有振動数及び前記2倍の固有振動数の揺動トルクを前記ねじり振動系に与える駆動手段とを備える共振型光走査手段と、
2箇所の非画像領域における前記揺動ミラーにより偏向された光ビームの通過を検出し、前記揺動ミラーの軌道を示す軌道情報を出力する光ビーム検出手段と、
前記光ビーム検出手段が検出した軌道情報が示す軌道と予め定められた目標軌道との差に基づき、前記揺動ミラーの軌道が前記目標軌道に近づくよう前記駆動手段の揺動トルクを調整し、フィードバック制御を行う軌道制御手段とを備える光走査装置において、
前記2倍の固有振動数の位相が互いに反転している順走査と逆走査の目標軌道を順次に切換え、且つ前記順走査と前記逆走査に対応させて前記軌道制御手段により前記フィードバック制御を行ない、前記順走査と前記逆走査の各々における前記光ビーム検出手段が検出した軌道と予め定められた目標軌道との差に基づきオフセット補償量を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出したオフセット補償量を、前記軌道制御手段が行うフィードバック制御に反映させるオフセット補正手段とを有することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記オフセット補償量は、前記目標軌道を変更するためのものであることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記順走査と前記逆走査の各々における前記光ビーム検出手段が検出した軌道と予め定められた目標軌道との差は、前記2倍の固有振動数の軌道の位相の情報であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記軌道制御手段は、前記逆走査の目標軌道に基づく軌道制御を行って前記予め定められた目標軌道との差を求めた後に、前記基本固有振動数の駆動周期に対する位相に対して、前記2倍の固有振動数の駆動周期における位相を逆位相にすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記光ビーム検出手段が検出した前記軌道情報には、前記軌道の位相の情報が含まれており、
前記算出手段は、前記目標軌道の位相の情報をシフトし、
前記光走査装置は、前記位相の情報をシフトした目標軌道を記憶する記憶手段を有し、
前記軌道制御手段は、軌道制御を前記記憶手段に記憶された目標軌道に従って行うこと特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記軌道制御手段による軌道制御のフィードバックゲインは、前記算出手段によるオフセット補償量の算出のフィードバックゲインより高くすることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光走査装置を画像露光手段として有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
基本固有振動数及び前記基本固有振動数の2倍の固有振動数を有したねじり振動系に支持され光ビームを偏向する揺動ミラーと、前記基本固有振動数及び前記2倍の固有振動数の揺動トルクを前記ねじり振動系に与える駆動手段とを備える共振型光走査手段と、
2箇所の非画像領域における前記揺動ミラーにより偏向された光ビームの通過を検出し、前記揺動ミラーの軌道を示す軌道情報を出力する光ビーム検出手段と、
前記光ビーム検出手段が検出した軌道情報が示す軌道と予め定められた目標軌道との差に基づき、前記揺動ミラーの軌道が前記目標軌道に近づくよう前記駆動手段の揺動トルクを調整し、フィードバック制御を行う軌道制御手段とを備える光走査装置において、
前記2倍の固有振動数の位相が互いに反転している順走査と逆走査の目標軌道を順次に切換え、且つ前記順走査と前記逆走査に対応させて前記軌道制御手段により前記フィードバック制御を行ない、前記順走査と前記逆走査の各々における前記光ビーム検出手段が検出した軌道と予め定められた目標軌道との差に基づきオフセット補償量を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出したオフセット補償量を、前記軌道制御手段が行うフィードバック制御に反映させるオフセット補正手段とを有することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記オフセット補償量は、前記目標軌道を変更するためのものであることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記順走査と前記逆走査の各々における前記光ビーム検出手段が検出した軌道と予め定められた目標軌道との差は、前記2倍の固有振動数の軌道の位相の情報であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記軌道制御手段は、前記逆走査の目標軌道に基づく軌道制御を行って前記予め定められた目標軌道との差を求めた後に、前記基本固有振動数の駆動周期に対する位相に対して、前記2倍の固有振動数の駆動周期における位相を逆位相にすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記光ビーム検出手段が検出した前記軌道情報には、前記軌道の位相の情報が含まれており、
前記算出手段は、前記目標軌道の位相の情報をシフトし、
前記光走査装置は、前記位相の情報をシフトした目標軌道を記憶する記憶手段を有し、
前記軌道制御手段は、軌道制御を前記記憶手段に記憶された目標軌道に従って行うこと特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記軌道制御手段による軌道制御のフィードバックゲインは、前記算出手段によるオフセット補償量の算出のフィードバックゲインより高くすることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光走査装置を画像露光手段として有することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−8327(P2012−8327A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143918(P2010−143918)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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