説明

光走査装置

【課題】小型化が可能な光走査装置を提供する。
【解決手段】感光体ドラム32に光を走査する光走査装置10。液体レンズ14は、レーザダイオード12が出射した光を集光すると共に、焦点距離を変化させることができる。ポリゴンミラー20は、液体レンズ14を通過した光を偏向する。受光素子28は、ポリゴンミラー20が偏向した光を受光する。制御部30は、感光体ドラム32に光を走査している走査期間と、受光素子28が光を受光してSOS信号の立ち下がりを出力する時期とにおいて、液体レンズ14の焦点距離を異ならせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置に関し、より特定的には、感光体を備えた画像形成装置に搭載される光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光走査装置では、感光体ドラムへの静電潜像の書き込み開始位置を揃えるために、SOS(Start Of Scan)信号が生成されている。このSOS信号を生成するために、従来の光走査装置では、ポリゴンミラーで偏向された光のうち、走査レンズに入射する直前の光をミラーで反射した後、レンズにて受光素子に集光していた(例えば、特許文献1参照)。これにより、光を受光した受光素子がパルス波を出力するようになり、該光走査装置内における同期が取られる。その結果、書き出し位置が揃った静電潜像が感光体ドラム上に形成されるようになる。
【0003】
しかしながら、前記光走査装置では、受光素子へ光を導くためのミラーや、受光素子へ光を集光するためのレンズが必要となり、これらの設置スペースが必要であった。その結果、光走査装置の大型化を招来していた。
【特許文献1】特開2003−156701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、小型化が可能な光走査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、感光体に光を走査する光走査装置において、光源と、前記光源が出射した光を集光すると共に、焦点距離を変化させることができる光学素子と、前記光学素子を通過した光を偏向する偏向手段と、前記偏向手段が偏向した光を受光して、同期信号を生成する受光素子と、前記感光体に光を走査している所定の期間と、受光した光に基づいて前記受光素子が前記同期信号を生成する所定の時期とにおいて、前記光学素子の焦点距離を異ならせる制御手段と、を備えること、を特徴とする。
【0006】
第1の発明によれば、制御手段は、感光体に光を走査している所定の期間と受光素子が同期信号を生成する所定の時期とのそれぞれにおいて、光学素子の焦点距離を異ならせている。従って、第1の発明によれば、所定の期間において、受光素子に光が集光されるように制御できると共に、所定の時期において、感光体に光が集光されるように制御できるようになる。その結果、光走査装置では、レンズやミラー等の新たな部品を追加することなく、受光素子及び感光体のそれぞれに光を集光できる。これにより、レンズやミラー等の設置スペースが不要となり、光走査装置をコンパクト化できる。更に、レンズやミラー等の新たな部品を追加する必要がないので、光走査装置の製造コストを抑制できる。
【0007】
第1の発明において、前記制御手段は、前記所定の期間内には、前記偏向手段で偏向された光が前記感光体に集光するように前記光学素子の焦点距離を制御し、前記所定の時期には、該偏向手段で偏向された光が前記受光素子に集光するように該光学素子の焦点距離を制御してもよい。
【0008】
第1の発明において、前記光学素子は、液体を含み、前記液体との界面の形状が、エレクトロウエッティング現象により変形することによって、前記光学素子の焦点距離が変化してもよい。
【0009】
第1の発明において、前記制御手段は、前記光学素子に電圧を印加して、該光学素子の焦点距離を制御してもよい。
【0010】
第1の発明において、前記制御手段は、前記所定の期間内と前記所定の時期とにおいて、異なる電圧を前記光学素子に印加してもよい。
【0011】
第2の発明は、感光体に光を走査する光走査装置において、光源と、液体を含むと共に、前記光源が出射した光を集光する光学素子と、前記光学素子を通過した光を偏向する偏向手段と、前記偏向手段が偏向した光を受光して、同期信号を生成する受光素子と、前記光学素子に電圧を印加することによって、前記液体との界面の形状をエレクトロウエッティング現象により変形させて、該光学素子の焦点距離を制御する制御手段であって、前記感光体に光を走査している期間と、受光した光に基づいて前記受光素子が前記同期信号を生成する時期とにおいて、該光学素子に異なる電圧を印加する制御手段と、を備えること、を特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(光走査装置の構成について)
以下に、本発明の一実施形態に係る光走査装置の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、該光走査装置10の上視図である。なお、図1において、y軸は、主走査方向を示し、z軸は副走査方向を示す。また、z軸は、鉛直方向とも一致する。
【0013】
光走査装置10は、図1に示すように、レーザダイオード12、液体レンズ14、シリンドリカルレンズ18、ポリゴンミラー20、走査レンズ22,24、受光素子28、筐体29及び制御部30を備える。
【0014】
レーザダイオード12は、光を出射する光源としての役割を果たす。レーザダイオード12から出射された光は、拡散光である。そこで、液体レンズ14は、レーザダイオード12から出射された光を集光するコリメータレンズとしての役割を果たし、光の焦点距離を変化させる機能を有する。なお、液体レンズ14の詳細については後述する。
【0015】
シリンドリカルレンズ18は、液体レンズ14を通過した光を、ポリゴンミラー20のミラー面近傍においてz軸方向に集光する。ポリゴンミラー20は、図示しないモーターにより矢印の方向に回転され、シリンドリカルレンズ18を通過してきた光をy軸方向に等角速度に偏向する偏向手段としての役割を果たす。走査レンズ22,24は、ポリゴンミラー20により偏向された光をy軸方向に等速走査して、該光を感光体ドラム32上に結像させる。感光体ドラム32は、所定速度で回転駆動される。これにより、光による主走査と感光体ドラム32の回転による副走査によって2次元の静電潜像が形成される。
【0016】
また、受光素子28は、例えば、フォトダイオードにより構成され、ポリゴンミラー20により偏向された光の内、走査レンズ22,24を通過していない光(走査レンズ22,24を通過する直前の光)を受光する。更に、受光素子28は、受光した光量に応じて変動する電圧からなるSOS(Start Of Scan)信号を生成する。SOS信号は、感光体ドラム32への光の走査開始位置を決定するために光走査装置10内で生成される信号である。
【0017】
筐体29は、図1に示すように、レーザダイオード12、液体レンズ14、シリンドリカルレンズ18、ポリゴンミラー20、走査レンズ22,24及び受光素子28を収納する。
【0018】
制御部30は、例えば、CPUにより構成され、レーザダイオード12に駆動信号を印加して、該レーザダイオード12が出射する光の強度を制御する制御手段として機能する。更に、制御部30は、液体レンズ14に対して制御電圧を印加して、該液体レンズ14の焦点距離を制御する制御手段として機能する。具体的には、制御部30は、感光体ドラム32に光を走査している走査期間と、受光素子28がSOS信号の立ち下がりを出力する所定の時期とにおいて、液体レンズ14の焦点距離を異ならせる。より詳細には、制御部30は、走査期間内には、ポリゴンミラー20で偏向された光が感光体ドラム32の周面に集光するように液体レンズ14の焦点距離を制御し、前記所定の時期には、ポリゴンミラー20で偏向された光が受光素子28の受光面に集光するように液体レンズ14の焦点距離を制御する。感光体ドラム32及び受光素子28の両方に集光された光が照射されるようになる。
【0019】
次に、図2及び図3を参照しながら、液体レンズ14の構成について説明する。図2は、液体レンズ14の光軸を含む面における断面構造図である。なお、図2(a)は、制御電圧を印加した状態における液体レンズ14の断面構造図であり、図2(b)は、制御電圧を印加していない状態における液体レンズ14の断面構造図である。図3は、図2の液体レンズ14のCの部分の拡大図である。
【0020】
図2に示すように、液体レンズ14は、導電性液体40、絶縁性液体42、透明板44,46、第1の電極48、絶縁膜50及び第2の電極52を含む。該液体レンズ14は、導電性液体40と絶縁性液体42との界面Sの形状を、エレクトロウエッティング現象により変形させることによって、焦点距離を変化させることができるものである。具体的には、制御電圧が印加されると、界面Sは、図2(b)に示す状態から、図2(a)に示す状態へと変化する。
【0021】
透明板44,46は、透明な樹脂又はガラスにより構成され、互いに平行に所定の隙間を残して配置される。この隙間には、導電性液体40と絶縁性液体42とが封入される。
【0022】
導電性液体40は、無機塩の水溶液や、有機液体など、それ自身が導電性を有するもの、或いはイオン性成分を付加することによって導電性とされた液体である。絶縁性液体42は、導電性液体40とは異なる屈折率を有し、シリコーンオイルやパラフィンオイルなどのような導電性液体40と混合しない液体である。そのため、導電性液体40と絶縁性液体42とは、互いに分離した状態となっており、界面Sを形成している。これにより、導電性液体40と絶縁性液体42とはレンズを構成している。なお、導電性液体40の屈折率の方が、絶縁性液体42の屈折率よりも小さいことが好ましい。
【0023】
第1の電極48は、導電性液体40と接触するように、透明板44上に設けられる。第2の電極52は、透明板46と第1の電極48との間に設けられる。絶縁膜50は、第2の電極52を覆うように形成される。具体的には、絶縁膜50は、第1の電極48と第2の電極52との間に形成されて該第1の電極48と第2の電極52とを絶縁すると共に、第2の電極52の内周面に形成されて第2の電極52と導電性液体40及び絶縁性液体42とが接触しないようにしている。第1の電極48と第2の電極52との間には、液体レンズ14の駆動時において、制御電圧が印加される。
【0024】
以上のように構成された液体レンズ14について、以下に、その動作原理について図3を参照しながら説明する。図3は、図2の液体レンズ14のCの部分の拡大図である。図3(a)は、制御電圧が印加されていない状態での液体レンズ14(図2(b)に対応)のCの部分の拡大図であり、図3(b)は、制御電圧が印加された状態での液体レンズ14(図2(a)に対応)のCの部分の拡大図である。
【0025】
まず、導電性液体40と絶縁性液体42との間の界面張力を界面張力γ12とし、絶縁膜50と導電性液体40との間の界面張力を界面張力γ31とし、絶縁性液体42と絶縁膜50との間の界面張力を界面張力γ23と定義する。図3(a)に示すように、第1の電極48と第2の電極52との間に制御電圧が印加されていない場合には、界面張力γ12と界面張力γ23と界面張力γ31とは、互いに釣り合っており、界面Sと絶縁膜50とが角θ1の角度をなしている。このとき、角θ1と界面張力γ12と界面張力γ23と界面張力γ31との間には、ヤングの方程式により、式(1)の関係が成立する。
【0026】
【数1】

【0027】
ここで、第1の電極48と第2の電極52とに制御電圧を印加すると、例えば、図3(b)に示すように、絶縁膜50と導電性液体40との境界には、プラスの電荷が現れる。一方、絶縁膜50と第2の電極52との境界には、マイナスの電荷が現れる。これにより、電荷による圧力Πが、絶縁性液体42と絶縁膜50との間に、界面張力γ23と同じ方向に発生する。この圧力Πは、式(2)のように示される。
【0028】
【数2】

【0029】
なお、εは絶縁膜50の誘電率であり、ε0は真空の誘電率であり、eは絶縁膜50の厚さであり、Vは第1の電極48と第2の電極52との間の制御電圧である。
【0030】
圧力Πが発生することにより、界面Sと絶縁膜50とは、角θ1よりも大きな角θ2の角度をなすようになる。このとき、液体レンズ14の界面Sは、図2(a)に示すように、湾曲する。この角θ2は、式(3)のように示される。
【0031】
【数3】

【0032】
以上のように、第1の電極48と第2の電極52との間に印加する制御電圧を変化させることにより、界面Sと絶縁膜50とのなす角度が変化することがわかる。そして、界面Sと絶縁膜50とのなす角度が変化することにより、制御電圧が印加された状態では、図2(a)に示すように、界面Sが湾曲して、焦点距離が相対的に短くなる。また、制御電圧が印加されていない状態では、図2(b)に示すように、界面Sが平坦状になり、焦点距離が相対的に長くなる。図1に示す制御部30は、この制御電圧の大きさを制御して、液体レンズ14の焦点距離を制御する。
【0033】
(光走査装置の動作について)
以下に、光走査装置10の動作について図面を参照しながら説明する。図4(a)は、レーザダイオード12の駆動信号の波形図である。図4(b)は、SOS信号の波形図である。図4(c)は、液体レンズ14に印加される制御電圧の波形図である。
【0034】
図4(a)に示す駆動信号は、相対的に高電圧であるON電圧と相対的に低電圧であるOFF電圧との2種類の状態を有する。ただし、レーザダイオード12が出射する光の強度を多段階で変化させる場合には、駆動信号は、0Vを含む該多段階の数に対応する数の電圧値をとりうる。図4(b)に示すSOS信号は、相対的に高電圧である電圧VHと相対的に低電圧である電圧VLとの2種類の状態を有する。図4(c)に示す制御電圧は、互いに異なる電圧V0,V1,V2の3種類の状態を有する。以下に、感光体ドラム32に光が走査されて静電潜像が形成される際に、光走査装置10が行う動作について説明する。
【0035】
静電潜像の形成が開始されると、制御部30は、SOS信号に同期して、ON電圧の駆動信号をレーザダイオード12に対して出力すると共に、電圧V2の制御電圧を液体レンズ14に印加する(時刻t1)。更に、制御部30は、図示しないモーターを駆動することにより、ポリゴンミラー20を回転させる。これにより、図1の点線の位置から時計回りに光の走査が開始されると共に、液体レンズ14の焦点距離が、光が受光素子28の受光面に集光される距離に制御される。
【0036】
受光素子28は、走査されてきた光の受光に基づいて、電圧VHであるSOS信号を電圧VLに立ち下げて制御部30に出力する(時刻t2)。制御部30は、このSOS信号の立ち下がりを同期信号として、内部クロックのカウントを開始して、感光体ドラム32への光の走査開始位置を決定する。そのため、SOS信号の立ち下がりを生成する時期(時刻t2)においては、受光素子28は、良好な状態で光を受光する必要がある。そこで、制御部30は、少なくとも、SOS信号の立ち下がりを生成するための時期において、電圧V2の制御電圧を液体レンズ14に出力する。これにより、ポリゴンミラー20により偏向された光は、受光素子28に集光されるようになる。
【0037】
SOS信号の立ち下がりを検出した制御部30は、電圧V2である制御電圧を電圧V0に立ち下げる(時刻t3)。これにより、液体レンズ14の焦点距離は、変化する。
【0038】
光の走査が進行し、受光素子28に光が入射しなくなると、該受光素子28は、ON電圧である駆動信号をOFF電圧に立ち下げると共に、電圧VLであるSOS信号を電圧VHに立ち上げて制御部30に出力する(時刻t4)。
【0039】
SOS信号の立ち下がりを検出して(時刻t2)から所定数の内部クロックのカウントを終了したら、制御部30は、レーザダイオード12に光を出射させた場合に、感光体ドラム32における光の走査開始位置に光が照射されていると判断し、画像データに応じてON電圧とOFF電圧とを切り替えて駆動信号をレーザダイオード12に出力すると共に、電圧V0の制御電圧を電圧V1に立ち上げる(時刻t5)。これにより、レーザダイオード12は、光の出射を開始し、液体レンズ14の焦点距離が、光が感光体ドラム32の周面に集光される距離に制御される。
【0040】
この後、感光体ドラム32の周面上を図1のy軸方向に光が走査される。制御部30は、光が走査されている走査期間中(時刻t5〜時刻t6)には、電圧V1の制御電圧を液体レンズ14に出力し続ける。
【0041】
最後に、制御部30は、内部クロックをカウントすることにより時刻t6に到達したと判断した場合には、感光体ドラム32に対する光の走査が終了したと判断し、ON電圧の駆動信号をOFF電圧に立ち下げてレーザダイオード12に出力すると共に、電圧V1の制御電圧を電圧V0に立ち下げる(時刻t6)。これにより、レーザダイオード12は光の出射を停止し、液体レンズ14の焦点距離も変化する。以上で、感光体ドラム32において、1ライン分の光の走査が終了する。この後、時刻t1〜時刻t6における動作が繰り返されて、感光体ドラム32に静電潜像が形成される。
【0042】
(効果について)
光走査装置10によれば、制御部30は、受光素子28が光を受光してSOS信号を立ち下げる時期(図4の時刻t2)には、光が受光素子28の受光面に集光するように液体レンズ14に制御電圧を印加し、感光体ドラム32に対して光を走査する走査期間には、光が感光体ドラム32の周面に集光するように液体レンズ14に制御電圧を印加している。そのため、ミラーやレンズを設けることなく、SOS信号を生成する受光素子28の受光面に光を集光することができる。以下に、詳しく説明する。
【0043】
レーザダイオードから出射された光は、コリメータレンズ、シリンドリカルレンズ及び結像レンズによって、感光体ドラムの周面に集光される。更に、SOS信号を生成するための受光素子にも感光体ドラムと同様に、光を集光させる必要がある。受光素子に光を集光するための方法としては、以下の2通りの方法が存在する。第1の方法は、ポリゴンミラーと受光素子との間にミラーを配置して、光路の途中を折り曲げる方法である。第2の方法は、ポリゴンミラーと受光素子との間にレンズを配置して、光を受光素子に集光させる方法である。第1の方法では、光路の途中を折り曲げて、レーザダイオードから受光素子までの光路長を、レーザダイオードから感光体ドラムまでの光路長に等しくしている。また、第2の方法では、レーザダイオードから受光素子までの光路長とレーザダイオードから感光体ドラムまでの光路長とが異なる場合に、光の集光位置をレンズにより補正している。これら2通りの方法は、SOS光学系において、ポリゴンミラーと受光素子との間に光学素子がない場合にのみ適用されるものではなく、結像レンズや折り返しミラーが間に介在していても適用される。SOS光学系とは、ポリゴンミラーと受光素子との間及びポリゴンミラーと感光体ドラムとの間を光学的に共役関係にするために、ポリゴンミラーと受光素子との間に設けられる光学系である。
【0044】
ここで、第1の方法及び第2の方法のいずれにおいても、ミラー又はレンズを配置するためのスペースが必要となるので、光走査装置が大型化してしまう。更に、ミラー又はレンズが必要となるため、光走査装置の部品点数が増加し、光走査装置の製造コストが高騰してしまう。
【0045】
そこで、光走査装置10では、コリメータレンズに液体レンズ14を用いている。液体レンズ14は、その焦点距離を変化させることができるので、受光素子28及び感光体ドラム32のそれぞれに光を集光させることが可能となる。その結果、光走査装置10に、ミラーやレンズ等の部品を新たに追加する必要がなくなり、光走査装置10が大型化することを抑制できると共に、光走査装置10の製造コストを抑制することができる。
【0046】
(変形例について)
以下に、光走査装置10の第1の変形例について図面を参照しながら説明する。図5は、第1の変形例に係る光走査装置10aの上視図である。
【0047】
光走査装置10では、ポリゴンミラー20により偏向された光は、走査レンズ22,24のいずれも通過することなく受光素子に入射していた。しかしながら、図5に示す光走査装置10aのように、ポリゴンミラー20により偏向された光は、走査レンズ22を通過した後に、受光素子28に入射してもよい。この場合、制御部30は、走査レンズ22の存在を考慮に入れた上で、受光素子28に光が集光するように液体レンズ14の焦点距離を制御する必要がある。
【0048】
なお、図5では、ポリゴンミラー20により偏向された光は、走査レンズ22を通過して受光素子28に入射するとしたが、走査レンズ22,24の両方を通過した後に受光素子28に入射してもよい。
【0049】
次に、光走査装置10の第2の変形例について図面を参照しながら説明する。図6は、第2の変形例に係る光走査装置10bの上視図である。
【0050】
光走査装置10では、液体レンズ14をコリメータレンズとして用いていた。しかしながら、図6に示す光走査装置10bのように、液体レンズ18’をシリンドリカルレンズとして用いてもよい。この場合、コリメータレンズ14’として樹脂製又はガラス製のレンズが用いられる。
【0051】
次に、光走査装置10の第3の変形例について図面を参照しながら説明する。図7は、第3の変形例に係る光走査装置10cの上視図である。
【0052】
光走査装置10では、焦点距離を変化させることができるレンズとして、液体レンズ14が用いられている。しかしながら、焦点距離を変化させることができるレンズは、これに限らない。図7に示す光走査装置10cでは、樹脂製又はガラス製のコリメータレンズ14’とシリンドリカルレンズ18の間に、移動可能な補正レンズ19が設けられている。制御部30は、この補正レンズ19を図示しないモーター等により移動させて、コリメータレンズ14’の焦点距離を調整して、光が集光する位置を調整する。これによっても、受光素子28の受光面に光を集光させると共に、感光体ドラム32の周面に光を集光させることが可能となる。
【0053】
なお、液体レンズ14,18’では、2種類の液体が封入されているが、例えば、1種類の液体が封入されたものであってもよい。また、液体レンズ14,18’には、3種類以上の液体が封入されていてもよい。
【0054】
なお、図4では、液体レンズ14に電圧V2の制御電圧を印加するタイミングと、レーザダイオード12にON電圧の駆動信号を印加するタイミングとを一致させているが、これらのタイミングは必ずしも一致している必要はない。例えば、液体レンズ14の駆動の遅延を考慮して、液体レンズ14に電圧V2の制御電圧を印加するタイミングを、時刻t5,t6よりも少し早くしてもよい。これにより、液体レンズ14の駆動に遅延が存在しても、レーザダイオード12が点灯するときには、液体レンズ14の焦点距離は、所定の距離に制御される。
【0055】
なお、制御部30は、SOS信号の立ち上がり部分を検出するようにしてもよい。この場合、制御部30は、SOS信号の立ち上がりを同期信号として、内部クロックのカウントを開始して、感光体ドラム32への光の走査開始位置を決定する。そのため、SOS信号の立ち上がりを生成する時期(図4では、時刻t4)においては、受光素子28は、良好な状態で光を受光する必要がある。そこで、制御部30は、少なくとも、SOS信号の立ち上がりを生成するための時期において、電圧V2の制御電圧を液体レンズ14に出力すればよい。
【0056】
なお、光走査装置10では、レーザダイオード12に印加する駆動信号の電圧を変動させて、レーザダイオード12を駆動しているが、例えば、レーザダイオード12に印加する駆動信号の電流を変動させて、レーザダイオード12を駆動してもよい。
【0057】
なお、光走査装置10では、液体レンズ14の制御電圧は、図4に示すように、時刻t1〜t3では、電圧V2に制御され、時刻t5〜t6では、電圧V1に制御されているが、これらの電圧値はこれに限らない。例えば、制御電圧は、時刻t1〜t3では、電圧V0に制御され、時刻t5〜t6では、電圧V0と異なる任意の電圧値に制御されていてもよいし、時刻t1〜t3では、任意の電圧値に制御され、時刻t5〜t6では、電圧V0に制御されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】光走査装置の上視図である。
【図2】図2(a)は、制御電圧を印加した状態における液体レンズの断面構造図であり、図2(b)は、制御電圧を印加していない状態における液体レンズの断面構造図である。
【図3】図2の液体レンズのCの部分の拡大図である。
【図4】図4(a)は、レーザダイオードの駆動信号の波形図である。図4(b)は、SOS信号の波形図である。図4(c)は、液体レンズに印加される制御電圧の波形図である。
【図5】第1の変形例に係る光走査装置の上視図である。
【図6】第2の変形例に係る光走査装置の上視図である。
【図7】第3の変形例に係る光走査装置の上視図である。
【符号の説明】
【0059】
10,10a,10b,10c 光走査装置
12 レーザダイオード
14,18’ 液体レンズ
14’ コリメータレンズ
18 シリンドリカルレンズ
19 補正レンズ
20 ポリゴンミラー
22,24 走査レンズ
28 受光素子
30 制御部
32 感光体ドラム
40 導電性液体
42 絶縁性液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体に光を走査する光走査装置において、
光源と、
前記光源が出射した光を集光すると共に、焦点距離を変化させることができる光学素子と、
前記光学素子を通過した光を偏向する偏向手段と、
前記偏向手段が偏向した光を受光して、同期信号を生成する受光素子と、
前記感光体に光を走査している所定の期間と、受光した光に基づいて前記受光素子が前記同期信号を生成する所定の時期とにおいて、前記光学素子の焦点距離を異ならせる制御手段と、
を備えること、
を特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記所定の期間内には、前記偏向手段で偏向された光が前記感光体に集光するように前記光学素子の焦点距離を制御し、前記所定の時期には、該偏向手段で偏向された光が前記受光素子に集光するように該光学素子の焦点距離を制御すること、
を特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記光学素子は、液体を含み、
前記液体との界面の形状が、エレクトロウエッティング現象により変形することによって、前記光学素子の焦点距離が変化すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の光走査装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記光学素子に電圧を印加して、該光学素子の焦点距離を制御すること、
を特徴とする請求項3に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記所定の期間内と前記所定の時期とにおいて、異なる電圧を前記光学素子に印加すること、
を特徴とする請求項4に記載の光走査装置。
【請求項6】
感光体に光を走査する光走査装置において、
光源と、
液体を含むと共に、前記光源が出射した光を集光する光学素子と、
前記光学素子を通過した光を偏向する偏向手段と、
前記偏向手段が偏向した光を受光して、同期信号を生成する受光素子と、
前記光学素子に電圧を印加することによって、前記液体との界面の形状をエレクトロウエッティング現象により変形させて、該光学素子の焦点距離を制御する制御手段であって、前記感光体に光を走査している期間と、受光した光に基づいて前記受光素子が前記同期信号を生成する時期とにおいて、該光学素子に異なる電圧を印加する制御手段と、
を備えること、
を特徴とする光走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−103753(P2009−103753A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272960(P2007−272960)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】