説明

光輝性塗料組成物、光輝性塗膜形成方法および塗装物

【課題】 2色性を呈する光輝性塗膜を与える光輝性塗料組成物、該光輝性塗料組成物を塗布して光輝性塗膜を形成する方法および塗装物を提供すること。
【解決手段】 第一層が化学気相蒸着法により形成された金属酸化物層により被覆され第二層が着色顔料およびポリマーにより被覆されてなる複層着色アルミニウムフレーク顔料、およびビヒクルを含有する光輝性塗料組成物。これを用いた光輝性塗膜形成方法および塗装物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2色性を呈する塗膜を形成しうる光輝性塗料組成物、光輝性塗膜形成方法およびこの方法により塗装された塗装物に関する。
【背景技術】
【0002】
光輝性塗料を塗布して形成される光輝性塗膜は、その意匠性の高さから、自動車ボディー等の塗装に多用されている。しかしながら、高級感や美粧性の要求水準が近年高まり、従来の光輝性塗料ではかかる高度な要求を満たすことが困難となってきた。このため、新しい光輝性顔料および光輝性塗料組成物の実用化が課題となっている。
【0003】
アルミニウムフレークに金属酸化物等の着色層を形成してなる着色アルミニウムフレーク顔料は、金属酸化物等によるコーティング膜厚の制御により様々なカラーバリエーションや干渉色を得ることができるため、種々製造方法が提案されている。また干渉マイカ顔料の併用により光輝性塗膜の光輝感を増す技術も提案されている。
【0004】
例えば特許文献1は、りん片状着色アルミニウム顔料とマイカ粉末を含有するメタリック塗料に係る技術を開示している。しかしながら、ここで形成される塗膜は特殊な光輝感を示すが、2色性を呈するものではない。
【0005】
また、特許文献2は、アルミニウムフレークの表面から脂肪酸等の有機不純物を十分に除去した後、化学気相蒸着法(CVD法)によってアルミニウムフレーク表面に酸化鉄等の金属酸化物層を形成し、さらに分級することにより、粒度分布が均一で分散性に優れた着色アルミニウムフレーク顔料を配合してなる光輝性塗料組成物を開示している。
しかしながら、該光輝性塗料組成物は、優れた光輝感および外観を有する光輝性塗膜を与えるが、2色性を与えるものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開平5−70719号公報
【特許文献2】特開平11−116861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、2色性を呈する光輝性塗膜を与える光輝性塗料組成物、該光輝性塗料組成物を塗布して光輝性塗膜を形成する方法および塗装物を提供することである。
なお、本発明において「2色性」とは、塗膜をある角度から観たとき前記複層着色アルミニウム顔料第一層の金属酸化物層に由来する色相が強調して観察され、また異なる角度から観たときには前記複層着色アルミニウム顔料第二層の着色顔料に由来する色相が強調して観察される光学的な効果をいう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、第一層がCVD法により形成された金属酸化物により被覆され第二層が着色顔料およびポリマーにより被覆されてなる複層着色アルミニウムフレーク顔料、およびビヒクルを配合してなる光輝性塗料組成物が、2色性を有する光輝性塗膜を形成することができることを知見し、本発明に想到した。
【0009】
すなわち本発明の光輝性塗料組成物は、第一層がCVD法により形成された金属酸化物層により被覆され第二層が着色顔料およびポリマーにより被覆されてなる複層着色アルミニウムフレーク顔料、およびビヒクルを含有することを特徴とする。
【0010】
前記光輝性塗料組成物は、前記光輝性塗料組成物の固形分中、前記複層着色アルミニウムフレーク顔料を0.1〜50質量%含有することが好ましく、前記複層着色アルミニウムフレーク顔料と、該複層着色アルミニウムフレーク顔料以外の光輝性顔料および/または着色顔料とを、1/20〜20/1の質量比で含有することが好ましい。
さらに本発明は、被塗基材に、前記光輝性塗料組成物を塗布し光輝性塗膜を形成した後、クリヤー塗料を塗布しトップクリヤー塗膜を形成する光輝性塗膜形成方法を提供し、該光輝性塗膜形成方法により得られた塗装物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2色性を呈する光輝性塗膜を与える複層着色アルミニウムフレーク顔料を含有する光輝性塗料組成物を得ることができる。
従って、本発明の光輝性塗料組成物、光輝性塗膜形成方法および塗装物は、高級感や美粧性が要求される自動車ボディーとその部品、家電製品、および各種の什器等に使用するのに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[1]光輝性塗料組成物
本発明の光輝性塗料組成物は、光輝性顔料として上記の2色性を呈する光輝性塗膜を与える複層着色アルミニウムフレーク顔料およびビヒクルを必須成分として含有することを特徴とし、その他顔料として該複層着色アルミニウムフレーク顔料以外の光輝性顔料および/または着色顔料を配合してもよい。また本発明の光輝性塗料組成物には、通常この種の塗料に使用される成分、具体的には有機溶剤および/または水、ならびに各種の添加剤を配合することができる。
【0013】
[A]顔料
本発明に使用する顔料は、上記複層着色アルミニウムフレーク顔料を必須成分とし、必要に応じて該複層着色アルミニウムフレーク顔料以外の光輝性顔料および/または着色顔料を含有することができる。
【0014】
(1)複層着色アルミニウムフレーク顔料
本発明の光輝性塗料組成物に用いる複層着色アルミニウムフレーク顔料は、第一層がCVD法により形成された金属酸化物層により被覆されてなり第二層が着色顔料およびポリマーにより被覆されてなる。
【0015】
複層着色アルミニウムフレーク顔料の原料となるアルミニウムフレークは、厚さが0.05〜2μmの範囲で、平均粒径が1〜35μmの範囲であるのが好ましい。厚さが0.05μm未満であると機械的強度が不足してサーキュレーションによりアルミニウムフレークが変形しやすくなり、また2μmを超えると塗膜の外観が低下するおそれが生じる。アルミニウムフレークの平均粒径が1μm未満であると光輝感が不十分となり、また35μmを超えると塗膜の外観が低下するおそれが生じる。より好ましい平均粒径は5〜20μmである。
【0016】
上記複層着色アルミニウムフレーク顔料は、アルミニウムフレークの表面に、第一層としてCVD法により金属酸化物層を形成し、その上に着色顔料を付着させ、着色顔料をポリマー被覆することにより固定して第二層を形成することにより製造する。その具体的な製造方法は、特に限定されるものでなく、従来公知の方法によればよいが、例えば、以下のような方法で行うことができる。
【0017】
(イ) 脂肪酸系滑剤の除去
アルミニウムフレークは通常ステアリン酸のような脂肪酸系滑剤の存在下でボールミル粉砕することにより製造されるが、金属酸化物との付着性を良好にするためには、アルミニウムフレークから、脂肪酸系滑剤等の有機不純物を除去する必要がある。そのためには、例えば、アルミニウムフレークを流動床式反応器に投入後、窒素ガス又は窒素ガス+空気のブローによりアルミニウムフレークを流動化させながら170〜250℃に加熱する。加熱時間は12時間以上が好ましい。加熱時間が12時間未満であると脂肪酸の残存量が多く、金属酸化物層の付着力が弱くなるのに加えて、アルミニウムフレークの解凝集が不十分で粒度分布が不均一となるため好ましくない。
【0018】
(ロ)金属酸化物層の形成
アルミニウムフレークから完全に脂肪酸を除去し、かつ解凝集したところで、流動化させたまま、気化させた金属酸化物前駆物質で飽和した窒素ガス、適量の酸素あるいは空気及び/又は水蒸気を送り込み、金属酸化物皮膜を形成する(CVD法)。金属酸化物前駆物質としては、Fe(CO)5 、Mo(CO)6 、W(CO)6 等のカルボニル化合物;TiCl4 、SnCl4 、SiCl4 、AlCl3 等の塩素化合物;Ti(OR)4 、Zr(OR)4 等の金属アルコキシド等が挙げられるが、なかでもFe(CO)5 が好ましい。カルボニル化合物は酸素により、塩素化合物及び金属アルコキシドは水蒸気により加水分解されて金属酸化物層が形成される。金属酸化物層が所望の厚さに達したところで反応を停止し、反応器の温度を下げる。
金属酸化物としては、Fe(CO)5を用いて形成されるFe23、FeO、Fe34等の酸化鉄が特に好ましい。
【0019】
(ハ) 着色顔料付着およびポリマー被覆
次に、CVD法により金属酸化物層を被覆したアルミニウムフレークに着色顔料を付着させる。
着色顔料の種類は、特に限定されず、任意の有機または無機の着色顔料を好適に使用可能である。なお、該着色顔料は単独であってもよいが、複数の着色顔料を組み合わせてもよい。
なお、本発明においては、前記顔料の種類、量などを変えることにより、比較的容易に複層着色アルミニウムフレーク顔料を含有する塗膜の2色性の色相、色強度等を制御することができる。
【0020】
着色顔料の付着は、例えば、次のようにして行うことができる。
ボールミル、ビーズミルなどを用い、必要であれば分散剤を加えて、着色顔料を炭化水素系溶剤など非極性溶剤中に分散した、着色顔料の分散体をつくる。
この着色顔料の非極性溶剤中分散体に上記金属酸化物層被覆アルミニウムフレークを加え、ボールミル、ビーズミル、ディスパーなどを用いて分散し、着色顔料を金属酸化物層被覆アルミニウムフレークの表面に付着させる。
【0021】
続いて、着色顔料が表面に付着した金属酸化物層被覆アルミニウムフレークをポリマーで被覆する。これにより、当該付着着色顔料は金属酸化物層被覆アルミニウムフレークの表面上に固定される。このポリマー被覆方法としては、上記の着色顔料が表面に付着した金属酸化物層被覆アルミニウムフレークを炭化水素系溶剤など非極性溶剤中に分散した分散体に重合性モノマーと重合開始剤を添加し、撹拌しながら加熱して重合性モノマーを重合させ、着色顔料が表面に付着した金属酸化物層被覆アルミニウムフレークの表面にポリマーを析出させる方法が挙げられる。
そして、上記の重合反応終了後、濾過装置などを用いて上記の分散体から大部分の溶剤を除去してペースト状の複層着色アルミニウムフレーク顔料とする。該ペースト状の複層着色アルミニウムフレーク顔料は、本発明の光輝性塗料組成物にはそのまま使用することができる。
【0022】
(2)複層着色アルミニウムフレーク顔料以外の光輝性顔料
複層着色アルミニウムフレーク顔料以外の光輝性顔料としては、例えばアルミニウムフレーク顔料、着色アルミニウムフレーク顔料、マイカ顔料、金属チタンフレーク顔料、アルミナフレーク顔料、シリカフレーク顔料、二酸化チタン被覆ガラスフレーク顔料、グラファイト顔料、ステンレスフレーク顔料、ホログラム顔料、または板状酸化鉄顔料等が挙げられる。
【0023】
(3)着色顔料
上記光輝性塗料組成物に複層着色アルミニウムフレーク顔料以外に含まれる着色顔料として、従来から塗料用として常用されている有機着色顔料や無機着色顔料を挙げることができる。例えば、有機着色顔料としては、アゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられ、また、無機着色顔料としては、黄色酸化鉄、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。
また、タルク、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、シリカ等の各種体質顔料等を併用することができる。
【0024】
(4)顔料の配合量
本発明において複層着色アルミニウムフレーク顔料は、光輝性塗料組成物の固形分中0.1〜50質量%配合されることが好ましい。0.1質量%未満であると2色性を発現しなくなり、また50質量%を超えると塗膜の外観が低下するおそれが生じる。
光輝性顔料として複層着色アルミニウムフレーク顔料のみを配合する場合、その配合量(固形分基準)は光輝性塗料組成物の固形分0.1質量%以上が好ましく、配合量の上限は実用上の観点から約20質量%である。
また複層着色アルミニウムフレーク顔料以外の光輝性顔料および/または着色顔料も同時に配合する場合、複層着色アルミニウムフレーク顔料による2色性の発現を妨げない程度の量を配合する。そのような配合比として、複層着色アルミニウムフレーク顔料と、複層着色アルミニウムフレーク顔料以外の光輝性顔料および/または着色顔料との質量比(固形分基準)は1/20〜20/1の割合が好ましく、1/10〜10/1の割合がより好ましい。
【0025】
[B]ビヒクル
本発明の光輝性塗料組成物に含まれるビヒクルは、上記顔料を分散するものであって、塗膜形成用樹脂と必要に応じて架橋剤とから構成される。
【0026】
ビヒクルを構成する塗膜形成用樹脂としては、(a)アクリル樹脂、(b)ポリエステル樹脂、(c)アルキッド樹脂、(d)フッ素系樹脂、(e)エポキシ樹脂、(f)ポリウレタン樹脂、(g)ポリエーテル樹脂等が挙げられ、これらは、単独または2種以上を組み合わせて使用することができ、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびフッ素系樹脂の少なくとも一種であることが好ましい。
【0027】
上記(a)アクリル樹脂としては、アクリル系モノマーと他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体が挙げられる。該共重合に使用し得るアクリル系モノマーとしては、アクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、フェニル、ベンジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル等のエステル化物類、アクリル酸またはメタクリル酸2−ヒドロキシエチルのカプロラクトンの開環付加物類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびN−メチロールアクリルアミド、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、イタコン酸、マレイン酸、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0028】
上記(b)ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂が挙げられ、例えば、多塩基酸と多価アルコールを加熱縮合して得られた縮合物が挙げられる。多塩基酸としては、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸等の飽和多塩基酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の不飽和多塩基酸が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の三価アルコールが挙げられる。
【0029】
上記(c)アルキッド樹脂としては、前記多塩基酸と多価アルコールに、さらに油脂・油脂脂肪酸(大豆油、アマニ油、ヤシ油、ステアリン酸等)、天然樹脂(ロジン、コハク等)等の変性剤を反応させて得られたアルキド樹脂を用いることができる。
【0030】
上記(d)フッ素系樹脂としては、フッ化ビニリデン樹脂、四フッ化エチレン樹脂のいずれか一方またはこれらの混合体、フルオロオレフィンとヒドロキシ基を含有する重合性化合物、およびその他の共重合可能なビニル系化合物からなるモノマー混合物を、共重合させて得られる各種フッ素系共重合体からなる樹脂が挙げられる。
【0031】
上記(e)エポキシ樹脂としては、ビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応によって得られる樹脂等が挙げられる。ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールA、Fが挙げられる。前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート828、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009(いずれも商品名、シェルケミカル社製)が挙げられ、また適当な鎖延長剤を用いてこれらを鎖延長したものを用いることもできる。
【0032】
上記(f)ポリウレタン樹脂としては、アクリル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等の各種ポリオール成分とポリイソシアネート化合物との反応によって得られるウレタン結合を有する樹脂が挙げられる。前記ポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、およびその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(4,4’−MDI)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート(2,4’−MDI)、およびその混合物(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジシクロへキシルメタン・ジイソシアネート(水素化HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水素化キシリレンジイソシアネート(HXDI)等が挙げられる。
【0033】
上記(g)ポリエーテル樹脂としては、エーテル結合を有する重合体または共重合体であり、ポリオキシエチレン系ポリエーテル、ポリオキシプロピレン系ポリエーテル、もしくはポリオキシブチレン系ポリエーテル、またはビスフェノールAもしくはビスフェノールFなどの芳香族ポリヒドロキシ化合物から誘導されるポリエーテル等の、1分子当たりに少なくとも2個の水酸基を有するポリエーテル樹脂が挙げられる。また、これらポリエーテル樹脂と、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の多価カルボン酸類、またはこれらの酸無水物等の反応性誘導体とを反応させて得られるカルボキシル基含有ポリエーテル樹脂が挙げられる。
【0034】
塗膜形成用樹脂には、硬化性を有するタイプと、ラッカータイプがあるが、通常、硬化性を有するタイプのものが使用される。硬化性を有するタイプの場合には、アミノ樹脂、(ブロック)ポリイソシアナート化合物、アミン系、ポリアミド系、イミダゾール類、イミダゾリン類、多価カルボン酸等の架橋剤と混合して使用され、加熱または常温で硬化反応を進行させることができる。また、硬化性を有しないラッカータイプの塗膜形成用樹脂と、硬化性を有するタイプとを併用することも可能である。架橋剤は、アミノ樹脂、および、(ブロック)ポリイソシアネート化合物の少なくとも一種であることが好ましい。
【0035】
上記ビヒクルが架橋剤を含む場合、塗膜形成用樹脂と架橋剤との割合としては、固形分換算で、塗膜形成用樹脂が90〜50質量%、架橋剤が10〜50質量%であり、好ましくは塗膜形成用樹脂が85〜60質量%であり、架橋剤が15〜40質量%である。架橋剤が10質量%未満では(塗膜形成用樹脂が90質量%を超えると)、塗膜中の架橋が充分ではない。一方、架橋剤が50質量%を超えると(塗膜形成用樹脂が50質量%未満では)、塗料の貯蔵安定性が低下するとともに硬化速度が大きくなるため、塗膜外観が悪くなる。
【0036】
上記光輝性塗料組成物中の固形分に対する上記ビヒクル中の固形分の質量比率は、40/100〜99/100であることが好ましい。上記ビヒクル中の固形分/上記光輝性塗料組成物中の固形分との固形分質量比率が、40/100未満であると耐候性が充分に得られず、光輝性塗膜との塗り重ね塗膜であるクリヤー塗膜との付着性が低下するおそれがあり、99/100を越えると塗膜外観が低下するおそれがある。上記光輝性塗料組成物中の固形分に対する上記ビヒクル中の固形分の質量比率は、50/100〜95/100であることがより好ましい。
【0037】
[C]その他成分
本発明の光輝性塗料組成物は、上記成分の他に、脂肪族アミドの潤滑分散体であるポリアミドワックスや酸化ポリエチレンを主体としたコロイド状分散体であるポリエチレンワックス、沈降防止剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、シリコーンや有機高分子等の表面調整剤、タレ止め剤、増粘剤、消泡剤、滑剤、粘性調整剤として架橋性重合体粒子(ミクロゲル)等を、適宜添加して含有させることができる。
これらの添加剤は、通常、上記ビヒクル100質量部(固形分基準)に対して、例えば、それぞれ15質量%以下の割合で配合することにより、塗料や塗膜の性能を改善することができる。
【0038】
上記光輝性塗料組成物は、上記構成成分を、通常、溶剤に溶解または分散した態様で提供される。溶剤としては、ビヒクルを溶解または分散するものであればよく、有機溶剤および/または水を使用し得る。
有機溶剤としては、塗料分野において通常用いられるものを挙げることができ、例えば、トルエン、キシレン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類(芳香族系混合溶剤である「ソルベッソ100」、「ソルベッソ150」も好ましい);アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル類等を例示できる。
環境面の観点から有機溶剤の使用が規制されている場合には、水を用いることが好ましい。この場合、適量の親水性有機溶剤を含有させてもよい。
【0039】
[2]光輝性塗膜形成方法
本発明の光輝性塗膜形成方法においては、必要に応じて電着塗膜または中塗り塗膜が形成された被塗基材に、ウェットオンウェット(W/W)、またはウェットオンドライ(W/D)により、上記光輝性塗膜を形成することができる。なお上記W/Wとは下地塗膜を形成した後、風乾もしくは100℃未満の乾燥炉中で半乾燥させ、未硬化状態または半硬化状態となった下地塗膜上に塗膜形成する方法であり、これに対して、上記W/Dとは下地塗膜を焼き付け乾燥させた後、上記下地塗膜上に塗膜形成する方法である。本発明の光輝性塗膜形成方法により得られた塗装物が、自動車ボディーおよび部品の場合は、予め被塗基材に脱脂処理や化成処理、電着塗装等による下塗り塗装、または中塗り塗装等を施しておくのが好ましい。上記中塗り塗装は、下地の隠蔽、耐チッピング性の付与および上塗りとの密着性確保のために行われるものである。このようにして形成された光輝性塗膜上には、トップコートとして、クリヤートップ塗膜をW/Wにより少なくとも一層形成することが好ましい。
【0040】
(1)被塗基材
上記被塗基材としては、限定されるものでなく、鉄、アルミニウム、銅またはこれらの合金等の金属類;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類や各種のFRP等のプラスチック材料;木材、紙や布等の繊維材料等の天然または合成材料等が挙げられる。
【0041】
(2)電着塗膜形成
本発明において、被塗基材が鋼板の場合、まず、防食性付与のための電着塗膜を形成するのが好ましい。電着塗料としては、通常のカチオン型電着塗料、アニオン型電着塗料のいずれも使用することができるが、防食性の点でカチオン型電着塗料が好ましく、カチオン型電着塗料としては、エポキシ系の樹脂塗料が好ましい。
【0042】
上記被塗基材に用いる鋼板は、自動車ボディー外板に適用可能なものであればよく、通常、電着塗膜形成前に上記鋼板に対し脱脂、水洗、化成皮膜形成、水洗、純水洗、乾燥までの前処理を従来公知の方法で行う。電着塗膜形成方法は、従来公知の方法の中から適当な方法を任意に選択すればよく、電着塗膜形成条件、焼き付け乾燥条件、電着塗膜の厚さ等に関しても、被塗基材や電着塗料の種類等に応じて適宜決定される。
【0043】
(3)中塗り塗膜形成
次に、上記電着塗膜上に中塗り塗料を塗布して焼き付け乾燥し、中塗り塗膜を形成する。中塗り塗膜には、最終複合塗膜を平滑にし、外観の良好な塗膜とするための下地として機能し、電着塗膜と上塗り塗膜とのバインダーとなり、かつ、塗膜表面を通じて到達する紫外線や水による塗膜の劣化に対する耐候性が要求される。中塗り塗料としては、特に制限されるものでなく、溶剤型塗料のほか、水性塗料、粉体塗料またはハイソリッド型塗料等も適用でき、具体的には、エポキシエステル/メラミン系樹脂、アミノアルキッド/メラミン系樹脂またはオイルフリーポリエステル/メラミン系樹脂塗料等、従来公知の中塗り塗料の中から適宜選択して用いることができる。
【0044】
中塗り塗膜形成方法に関しては、従来公知の方法の中から適当な方法を任意に選択すればよく、中塗り塗膜の上に透明性のある光輝性上塗り塗膜を形成する場合には、グレー色系の中塗り塗料またはカラー中塗り塗料等が用いられる。これは、中塗り塗膜と上塗り塗膜との複合色を発現させ、意匠性を高めるために行われるものである。中塗り塗膜の乾燥膜厚は、20〜100μmが好ましく、より好ましくは30〜50μmである。
【0045】
(4)光輝性塗膜およびトップクリヤー塗膜の形成工程
中塗り塗料等により下地塗膜が形成された上記被塗基材を使用する場合には、下地塗膜上に本発明の光輝性塗料組成物を塗布して光輝性塗膜を形成後、トップクリヤー塗料を塗布してトップクリヤー塗膜を形成する。塗装方法は特に限定されないが、スプレー法、ロールコーター法等が好ましい。上記光輝性塗膜の乾燥膜厚は5〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。上記トップクリヤー塗膜の乾燥膜厚は、10〜100μmが好ましく、この範囲を外れると塗膜外観が低下するおそれが生じる。より好ましくは20〜50μmである。該乾燥膜厚を、複数工程で形成してもよい。
【0046】
上記クリヤー塗料は、必要に応じて、その透明性を損なわない範囲で、着色顔料、体質顔料、改質剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤等の添加剤を配合することが可能である。また特公平8−19315号公報に記載されたカルボキシル基含有ポリマーとエポキシ基含有ポリマーとを含有するクリヤー塗料が、酸性雨対策およびW/Wで上記光輝性塗膜を形成した際に、上記複層着色アルミニウムフレーク顔料、ならびに必要に応じて配合される上記複層着色アルミニウムフレーク顔料以外の光輝性顔料および/または着色顔料の配向を乱さないという観点から好ましく用いられる。また、上記トップクリヤー塗料は、溶剤型、水性、または粉体型等の種々の形態をとることができる。溶剤型塗料または水性塗料としては、一液型塗料を用いてもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等のような二液型塗料を用いてもよい。
【0047】
(5)光輝性塗膜およびトップクリヤー塗膜の焼き付け乾燥工程
上記未焼き付け乾燥状態の光輝性塗膜およびトップクリヤー塗膜を、80〜160℃の焼き付け乾燥条件下で所定時間焼き付け乾燥する。
【0048】
[3]塗装物
本発明の塗装物は、上記光輝性塗膜形成方法により得られるものであり、被塗基材と、複層着色アルミニウムフレーク顔料を含む光輝性塗膜と、トップクリヤー塗膜と、を含むものであり、該被塗基材上に本発明の光輝性塗料組成物を塗布して光輝性塗膜を形成後、トップクリヤー塗膜を形成することによって得ることができる。
【実施例】
【0049】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
実施例1〜12および比較例1〜7
[被塗基材の調製]
ダル鋼板(長さ300mm、幅100mmおよび厚さ0.8mm)を燐酸亜鉛処理剤(商品名:「サーフダインSD2000」、日本ペイント社製)を使用して化成処理した後、カチオン電着塗料(商品名:「パワートップV−8」、日本ペイント社製)を平均乾燥膜厚が25μmとなるように電着塗装した。次いで、160℃×30分間の条件で焼き付け乾燥した後、電着塗膜上に中塗り塗料としてポリエステル/メラミン系中塗り塗料(商品名:「オルガF−60」、日本ペイント社製)を酢酸エチル/ソルベッソ100/ブチルジグリコールアセテート=1/1/1(重量比)を用いて、フォードカップNo.4による粘度が30秒となるように調整し、回転式静電塗装機を用いて中塗り塗装を行い、140℃×30分間の条件で焼き付け乾燥し、平均乾燥膜厚30μmの中塗り塗膜を形成した。これを被塗基材として用いた。
【0051】
[光輝性塗料組成物の調製]
アクリル樹脂(スチレン/メチルメタクリレート/エチルメタクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸の共重合体、数平均分子量約20000、水酸基価45、酸価15、固形分50重量%)と、メラミン樹脂(商品名:「ユーバン20SE」、三井化学社製、固形分60重量%)とを80:20の固形分重量比で配合して得たビヒクルに対し、複層着色アルミニウムフレーク顔料として光輝性顔料1A〜1Dを表1に示す種類および割合で配合した。次いで、有機溶剤(トルエン/キシレン/酢酸エチル/酢酸ブチルの重量比=70/15/10/5)とともに攪拌機により塗装適正粘度になるように攪拌混合し、光輝性塗料組成物を調製した。なお、比較例用の光輝性顔料は1E〜1Gを用いた。
【0052】
光輝性顔料1A・・・複層着色アルミニウムフレーク顔料(第一層:CVD法により形成された酸化鉄、第二層:シャニンブルー顔料*1、平均粒径:17μm)
光輝性顔料1B・・・複層着色アルミニウムフレーク顔料(第一層:CVD法により形成された酸化鉄、第二層:シャニングリーン顔料*2、平均粒径:17μm)
光輝性顔料1C・・・複層着色アルミニウムフレーク顔料(第一層:CVD法により形成された酸化鉄、第二層:シャニンブルー顔料*1、平均粒径:20μm)
光輝性顔料1D・・複層着色アルミニウムフレーク顔料(第一層:CVD法により形成された酸化鉄、第二層:シャニングリーン顔料*2、平均粒径:20μm)
光輝性顔料1E・・着色アルミニウムフレーク顔料(第一層:シャニンブルー顔料*1、第二層:なし、平均粒径:18μm)
光輝性顔料1F・・着色アルミニウムフレーク顔料(第一層:シャニングリーン顔料*2、第二層:なし、平均粒径:18μm)
光輝性顔料1G・・アルミニウムフレーク顔料*3(平均粒径:18μm)/シャニンブルー顔料*1=10/1(質量比)混合物
光輝性顔料1H・・アルミニウムフレーク顔料*3(平均粒径:18μm)
*1 商品名:「シャニンブルーMR−3」、東洋インキ製造社製
*2 商品名:「シャニングリーンS」、大日本インキ化学工業社製
*3 商品名:「TCR2060」、東洋アルミニウム社製
【0053】
[複層塗膜の形成]
中塗り塗膜が形成された被塗基材の被塗面に、先に得た光輝性塗料組成物を平均乾燥膜厚が15μmになるようにスプレー塗装し、光輝性塗膜を形成した。塗装は静電塗装機(「Auto REA」、ABBインダストリー社製)を用い、霧化圧2.8kg/cm2で行った。塗装中のブースの雰囲気は温度25℃、湿度75%に保持した。塗装後3分間セッティングし、クリヤートップ塗料を乾燥膜厚が40μmになるように塗装し、室温で10分間セッティングし、140℃×30分間の焼き付け条件で、クリヤートップ塗膜を形成した。得られた複層塗膜の2色性を下記評価方法で評価した。クリヤートップ塗膜の形成に使用したクリヤー塗料は、カルボキシル基含有ポリマーとエポキシ基含有ポリマーとを含有するトップクリヤー塗料(商品名:「マックフローO−520クリヤー」、日本ペイント社製)である。評価結果を表1に示す。
【0054】
[評価方法]
上記複層塗膜の2色性の有無を目視により下記の基準で評価した。
2色性評価(目視):
3・・・良好な2色性が認められる。
2・・・2色性が認められる。
1・・・2色性が認められず。
【0055】
【表1】

【0056】
表1の結果から明らかのように、本実施例は、本発明の光輝性塗膜形成方法で得た塗装物であり、該塗装物は2色性を発現した。一方、比較例では、該塗装物は2色性が認められない結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明により得られる塗膜は上記2色性を呈するため、高級感や美粧性が要求される自動車ボディーとその部品、家電製品、および各種の什器等の光輝性が要求される分野において好ましく使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一層が化学気相蒸着法により形成された金属酸化物層により被覆され第二層が着色顔料およびポリマーにより被覆されてなる複層着色アルミニウムフレーク顔料、およびビヒクルを含有することを特徴とする光輝性塗料組成物。
【請求項2】
前記光輝性塗料組成物の固形分中、前記複層着色アルミニウムフレーク顔料を0.1〜50質量%含有する、請求項1に記載の光輝性塗料組成物。
【請求項3】
前記複層着色アルミニウムフレーク顔料と、該複層着色アルミニウムフレーク顔料以外の光輝性顔料および/または着色顔料とを、1/20〜20/1の質量比で含有する、請求項1〜2のいずれか1項に記載の光輝性塗料組成物。
【請求項4】
被塗基材に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光輝性塗料組成物を塗布して光輝性塗膜を形成した後、クリヤー塗料を塗布してトップクリヤー塗膜を形成する光輝性塗膜の形成方法。
【請求項5】
請求項4記載の光輝性塗膜形成方法により得られた塗装物。




【公開番号】特開2006−232973(P2006−232973A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48791(P2005−48791)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】