説明

光輝性塗料組成物及び積層塗膜の形成方法

【課題】 蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料を、安定した状態で面状に配向させることができる光輝性塗料組成物及び積層塗膜の形成方法を得る。
【解決手段】 ガラス転移温度0〜45℃、水酸基価20〜80mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)200,000〜1,000,000であるアクリル樹脂(a)と、硬化剤(b)と、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料(c)と、溶剤(d)とを含有し、光輝性顔料(c)の含有比率〔(c)/(a+b+c)〕が0.15〜0.5であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ調金属光沢の塗膜外観を付与することができる光輝性塗料組成物及びそれを用いた積層塗膜の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗料を塗布することにより、メッキ調の金属光沢を付与することができる方法として、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料を含有する塗料を塗布する方法が知られている。このような方法では、自動車用ホイールなどの被塗物の上に、下地層を形成した後、下地層の上にこの光輝性塗料を塗装し、その上にクリヤ塗料を塗装する方法が一般に採用されている(特許文献1及び特許文献2など)。
【0003】
このような塗装方法においては、光輝性塗膜中の光輝性顔料を面状に配向させることにより、メッキ調金属光沢を発揮させている。光輝性顔料を面状に配向させるため、下地層を塗装した後下地層を焼き付けて硬化させ、その上に光輝性塗料を塗装し、塗装後光輝性塗膜を焼き付けて硬化した後、その上にクリヤ塗料を塗装している。このため、3つの各塗膜において焼き付け工程がそれぞれ必要であり、製造工程が煩雑になるという問題があった。
【0004】
特許文献3などにおいては、アルミホイールの上に、プライマー、アルミフレーク顔料などの光輝性顔料を含むカラーベース、及びトップクリヤを順次塗装し、これらを同時に焼き付ける3コート1ベークで仕上げる塗装方法が開示されている。このような3コート1ベーク方式で積層塗膜を形成することができれば、焼き付け工程が1工程のみでよく、生産効率を高めることができる。特許文献4においては、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料を含有する光輝性塗料を用い、プライマー塗膜層、光輝性塗膜層、及びクリヤ塗膜層をそれぞれウェットオンウェットで塗装し、3コート1ベークで積層塗膜を焼き付けて形成する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献4に開示された方法では、光輝性顔料を面状に配向させることが困難であり、いわゆる粒子感のあるキラキラした塗膜外観となり、メッキ調の金属光沢を得ることができなかった。
【特許文献1】特開平11−80620号公報
【特許文献2】特開2002−263567号公報
【特許文献3】特開2003−192980号公報
【特許文献4】特開2004−141710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料を安定した状態で面状に配向させた塗膜を得ることができる光輝性塗料組成物及びそれを用いた積層塗膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光輝性塗料組成物は、ガラス転移温度0〜45℃、水酸基価20〜80mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)200,000〜1,000,000であるアクリル樹脂(a)と、硬化剤(b)と、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料(c)と、溶剤(d)とを含有し、光輝性顔料(c)の含有比率〔(c)/(a+b+c)〕が、0.15〜0.5であることを特徴としている。
【0008】
本発明の光輝性塗料組成物は、硬化前の塗膜の状態であっても、光輝性顔料の配向状態を安定して保つことができる。このため、ウェットオンウェットでその上にクリヤ塗料などの別の塗料を塗装しても、該塗膜中における光輝性顔料の配向状態を良好に保つことができる。従って、光輝性顔料を面状に配向させた後、この面状の配向状態を安定して保つことができ、メッキ調の金属光沢の外観を被塗物に付与することができる。
【0009】
以下、本発明の光輝性塗料組成物の各成分について説明する。
【0010】
<アクリル樹脂(a)>
本発明において用いるアクリル樹脂(a)は、ガラス転移点が0〜45℃、水酸基価が20〜80mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)が200,000〜1,000,000の範囲内である。
【0011】
ガラス転移温度(Tg)は、上述のように、0〜45℃の範囲内であり、好ましくは5〜35℃の範囲内である。ガラス転移温度が低すぎると、ウェットオンウェットで他の塗膜と積層した場合に塗膜界面での混層が起こり、光輝性顔料の配向が低下し、色相が好ましくなくなる。逆にガラス転移温度が高すぎると、耐チッピング性等の塗膜性能が低下する。
【0012】
水酸基価は、上述のように、20〜80mgKOH/gの範囲内であり、好ましくは25〜75mgKOH/gの範囲内である。水酸基価が低すぎると、塗膜としての付着性が低下し、逆に水酸基価が高すぎると、耐水性が低下し、また得られた樹脂の溶解性が劣り、塗膜外観が低下する。
【0013】
アクリル樹脂(a)の酸価は、10〜50mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは15〜35mgKOH/gの範囲内である。酸価が低すぎると、塗膜としての付着性が低下し、逆に酸価が高すぎると、耐水性が低下する。
【0014】
アクリル樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)は、上述のように、200,000〜1,000,000の範囲内であり、さらに好ましくは250,000〜800,000の範囲内である。重量平均分子量が低すぎると、硬化前の塗膜状態において、光輝性顔料の配向を安定して維持するという本発明の効果が十分に得られない場合がある。重量平均分子量が高すぎると、塗料組成物の溶剤への溶解性が悪くなったり、塗料組成物の粘度が高くなりすぎるなどハンドリング性が悪くなる場合がある。なお、重量平均分子量はスチレンポリマーを標準とするGPC法により求めることができる。
【0015】
アクリル樹脂(a)は、アクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルを主成分とするラジカル重合性モノマーをラジカル重合させて得られる単独重合体または共重合体が挙げられる。重合体の分子中には、水酸基、カルボキシル基などの架橋性官能基を有していることが好ましい。
【0016】
アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸またはメタクリル酸と炭素数1〜20の1価のアルコ−ルとのモノエステルが挙げられ、具体的にはアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリルなどが挙げられる。
【0017】
また、上記した架橋性官能基を含有するモノマーとしては、ヒドロキシエチルアクリレ−ト、ヒドロキシエチルメタクリレ−ト、ヒドロキシプロピルアクリレ−ト、ヒドロキシプロピルメタクリレ−ト、カプロラクトンヒドロキシエチルアクリレ−ト、カプロラクトンヒドロキシエチルメタクリレ−ト、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。また、上記した以外にも、上記したモノマーとラジカル共重合が可能なその他のモノマー、例えば、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、ビニルメチルエ−テル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレンなどの1分子中に1個以上の重合性二重結合を有する不飽和化合物が使用できる。
【0018】
本発明におけるアクリル樹脂(a)は、上述のように高い平均分子量を有するものである。従って、溶液重合によって合成することが困難な場合があり、エマルション重合(乳化重合)、懸濁重合、NAD(非水系分散)重合、バルク重合などの重合方法で製造することができる。エマルション重合により製造した場合には、エマルション樹脂として入手することができる。アクリル樹脂(a)がエマルション樹脂である場合、後述するように、溶剤(d)としてグリコール系溶剤を添加することにより重合時の水分を吸収することができ、塗料組成物を好適に溶解して調製することができる。
【0019】
<硬化剤(b)>
本発明における硬化剤(b)は、アクリル樹脂(a)を架橋して硬化するための樹脂または化合物である。
【0020】
硬化剤(b)としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネ−ト化合物、ブロック化ポリイソシアネ−ト化合物およびポリカルボン酸化合物から選ばれた1種以上が好ましく使用される。アミノ樹脂は加熱によりアクリル樹脂(a)と反応して三次元の硬化した塗膜を形成する。アミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂があげられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等がある。また、このメチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものも使用でき、エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましく、なかでもメチロール基の少なくとも一部をアルキルエーテル化したメチロール化メラミン樹脂が好適である。
【0021】
ポリイソシアネート化合物としてはフリーのイソシアネート化合物であってもよいし、ブロックされたイソシアネート化合物でもよい。フリーのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、もしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、キシレンジイソシアネート、もしくはイソホロンジイソシアネート等の環状脂肪族ジイソシアネート類、トリレンジイソシアネートもしくは4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類等の有機ジイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ジイソシアネートの過剰量と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記各有機ジイソシアネート同志の重合体、更にはイソシアネート・ビゥレット体等が挙げられる。それらの代表的な市販品の例としては「バーノックD−750、−800、DN−950、−970もしくは15−455」(以上、大日本インキ化学工業(株)製品)、「ディスモジュールL、N、HL、もしくはN3390」(西ドイツ国バイエル社製品)、「タケネートD−102、−202、−110もしくは−123N」(武田薬品工業(株)製品)、「コロネートEH、L、HLもしくは203」(日本ポリウレタン工業(株)製品)又は「デゥラネート24A−90CX」(旭化成工業(株)製品)等が挙げられる。
【0022】
ブロックポリイソシアネート化合物としては、上記のフリーのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を、オキシム、フェノール、アルコール、ラクタム、マロン酸エステル、メルカプタン等の公知のブロック剤でブロックしたものが挙げられる。
【0023】
<光輝性顔料(c)>
本発明において用いる光輝性顔料(c)は、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料である。このような光輝性顔料としては、特許文献1、2及び4などにおいて用いられている光輝性顔料を用いることができる。このような光輝性顔料は、例えば、OPP(配向ポリプロピレン)、CPP(結晶性ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のプラスチックフィルムをベースフィルムとして用い、その上に剥離剤を塗布し、剥離剤の上に金属蒸着を行い、蒸着金属膜を形成した後、この蒸着金属膜をベースフィルムから剥離し、これを粉砕することにより製造することができる。これらの市販品としては、METASHEEN1800(WOLSTENHOLME社製)、METALURE L−55700(ECKART WERKE社製)などが挙げられる。
【0024】
<溶剤(d)>
溶剤(d)としては、アクリル樹脂(a)及び硬化剤(b)を溶解もしくは分散し、これらと実質的に反応を起こさないものであれば特に制限なく用いることができる。
【0025】
有機溶剤としては、例えば、ヘプタン、トルエン、キシレン、オクタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、メチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系の溶媒等を使用できる。
【0026】
アクリル樹脂(a)として、エマルション樹脂を用いる場合には、上述のように、溶剤(d)として重合時に含まれる水を吸収できるグリコール系溶剤を用いることが好ましい。このようなグリコール系溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、3−メチル−3−メトキシブタノールなどが挙げられる。
【0027】
<塗料組成物>
本発明の光輝性塗料組成物において、光輝性顔料(c)の含有比率〔(c)/(a+b+c)〕は、0.15〜0.5の範囲内であり、さらに好ましくは0.18〜0.4の範囲内である。この含有比率は、いわゆるPWC(顔料重量濃度)に相当する。光輝性顔料の含有比率が低くなると、メッキ感が低下するので、色相が好ましくなく、逆に光輝性顔料(c)の含有比率が高くなりすぎると、付着性、チッピング性などの塗膜性能が低下する。
【0028】
本発明の塗料組成物において、アクリル樹脂(a)と硬化剤(b)の比率〔(a)/(b)〕は、95/5〜70/30の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは90/10〜80/20の範囲内である。このような範囲内とすることにより、塗膜性能の良好なものを得ることができる。
【0029】
本発明の塗料組成物において、スプレー塗装時のアクリル樹脂(a)と硬化剤(b)の溶剤(d)中での濃度〔(a+b)/(a+b+d)〕は、0.5/100〜5.0/100の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは1.0/100〜4.0/100の範囲内である。これらの濃度が低すぎると、溶剤排出量が増えるので環境上好ましく、逆にこれらの濃度が高すぎると、光輝性顔料の配向が低下する傾向にあり、色相が好ましくない場合がある。
【0030】
本発明の塗料組成物を塗装することにより形成される光輝性塗膜においては、塗装後、溶剤(d)が蒸発し除去されることにより、塗膜が厚み方向に収縮する。この際、塗膜中に含有されている光輝性顔料(c)は、塗膜の厚み方向の収縮に伴い面状に配向する。すなわち、塗膜中において立ち上がった状態や傾いている状態の光輝性顔料(c)は、塗膜が厚み方向に収縮するに伴い、徐々にその傾きが水平方向に近づき、面状に配向するようになる。このように光輝性顔料(c)が面状に配向することにより、メッキ調の金属光沢を塗膜に付与することができる。本発明の光輝性塗料組成物においては、上記のように高い平均分子量のアクリル樹脂(a)を用いているので、溶剤(d)が蒸発するに従い、アクリル樹脂(a)が本来有する高い粘度が発揮され、塗膜中における光輝性顔料(c)の移動を制御することができるようになる。このため、本発明によれば、面状の配向状態を安定して維持することができる。
【0031】
従って、その上に別の塗料を塗装しても、その影響を受けることが少ないため、光輝性顔料の面状の配向を安定して維持することができる。
【0032】
本発明の塗料組成物には、塗料組成物に、必要に応じて、バインダーとなる樹脂やその他の添加剤を含有させてもよい。バインダー樹脂としては、例えば、塩ビ酢ビ共重合樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸酪酸繊維素樹脂が挙げられ、添加剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのワックス類や、可塑剤、分散剤等が含まれていてもよい。
【0033】
<積層塗膜の形成方法>
本発明の積層塗膜の形成方法は、被塗物の上に着色したベース塗料を塗装し、ベース塗膜を形成する工程と、ベース塗膜の上に、上記本発明の光輝性塗料組成物を乾燥膜厚が2μm以下となるようにウェットオンウェットで塗装し、光輝性塗膜を形成する工程と、光輝性塗膜の上に、クリヤ塗料をウェットオンウェットで塗装し、クリヤ塗膜を形成する工程と、ベース塗膜、光輝性塗膜、及びクリヤ塗膜を加熱し、これらの塗膜を同時に焼き付ける工程とを備えることを特徴としている。
【0034】
本発明の形成方法によれば、ベース塗膜、光輝性塗膜、及びクリヤ塗膜からなる積層塗膜であって、良好なメッキ調金属光沢を示す積層塗膜を3コート1ベーク方式で形成することができる。これは、上述のように、本発明の光輝性塗料を用いて形成した硬化前の光輝性塗膜中において、光輝性顔料が良好な状態で面状に配向しており、その上にクリヤ塗料をウェットオンウェットで塗装した際にも、この良好な光輝性顔料の配向状態を安定して維持することができるからである。
【0035】
本発明の光輝性塗料においては、上述のように高い分子量のアクリル樹脂(a)を用いており、ベース塗料及びクリヤ塗料の溶剤として、このアクリル樹脂(a)を溶解しにくい溶剤を用いることにより、さらに本発明の効果を高めることができる。
【0036】
<ベース塗料>
本発明におけるベース塗料は、着色したベース塗料であり、積層塗膜に良好なメッキ調金属光沢を付与するためには、濃色系に着色したベース塗料であることが好ましい。具体的には、黒系やグレー系や紺系の色であることが好ましい。
【0037】
ベース塗料としては、塗膜形成性樹脂、硬化剤、有機系や無機系の各種着色顔料、必要により体質顔料等を含有することができる。
【0038】
上記塗膜形成性樹脂としては、数平均分子量が2000〜30000であることが好ましく、さらに好ましく3000〜25000である。2000より小さいと作業性及び硬化性が十分でなく、30000を越えると塗装時の不揮発分が低くなりすぎ、かえって作業性が悪くなる。なお、本明細書では、分子量はスチレンポリマーを標準とするGPC法により決定される。
【0039】
さらに、上記塗膜形成性樹脂は、20〜180の水酸基価を有することが好ましく、さらに好ましくは30〜160である。上限を越えると塗膜の耐水性が低下し、下限を下回ると塗膜の硬化性が低下する。また、10〜80mgKOH/gの酸価を有することが好ましく、さらに好ましくは12〜60mgKOH/gである。上限を越えると塗膜の耐水性が低下し、下限を下回ると塗膜の硬化性が低下する。
【0040】
上記塗膜形成性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂等の塗膜形成性樹脂を好ましいものとして挙げることができ、1種または2種以上を併用して用いることができる。さらに、アクリル樹脂及び/またはポリエステル樹脂を用いることが耐候性、耐水性等の塗膜性能面から好ましい。
【0041】
上記硬化剤としては、アミノ樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物等が好ましいものとして挙げられる。得られた塗膜の諸性能、コストの点からブチル化及び/またはブチル化メラミン樹脂、及び/またはブロックイソシアネート樹脂が一般的に用いられる。
【0042】
上記硬化剤の含有量は塗膜形成性樹脂との総固形分に対して20〜50重量%である。含有量が20重量%を下回ると硬化性が不十分となり、50重量%を上回ると硬化膜が堅くなりすぎ脆くなる。
【0043】
上記着色顔料としては、例えば有機系のアゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられ、無機系では黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタン等が挙げられる。また、体質顔料としては、硫酸バリウム、クレー、タルク等が用いられる。さらに、アルミニウム粉、マイカ粉等の扁平顔料を添加してもよい。
【0044】
上記の顔料を含めた塗料中の全顔料濃度(PWC)としては、0.1〜50%であり、好ましくは、0.5%〜40%であり、より好ましくは、1.0は〜30%である。上限を越えると塗膜外観が低下する。
【0045】
また、上記ベース塗料には、光輝性塗料組成物とのなじみ防止、塗装作業性を確保するために、粘性制御剤を添加することができる。粘性制御剤としては、一般にチクソトロピー性を示すものを使用でき、例えば、脂肪酸アマイドの膨潤分散体、アマイド系脂肪酸、長鎖ポリアミノアマイドの燐酸塩等のポリアマイド系のもの、酸化ポリエチレンのコロイド状膨潤分散体等のポリエチレン系等のもの、有機酸スメクタイト粘土、モンモリロナイト等の有機ベントナイト系のもの、ケイ酸アルミ、硫酸バリウム等の無機顔料、顔料の形状により粘性が発現する偏平顔料、架橋あるいは非架橋の樹脂粒子等を粘性制御剤として挙げることができる。
【0046】
本発明に用いられるベース塗料中には、上記成分の他に塗料に通常添加される添加剤、例えば、表面調整剤、酸化防止剤、消泡剤、酢酸酪酸繊維素などのバインダー樹脂等を配合してもよい。これらの配合量は当業者の公知の範囲である。
【0047】
本発明に用いられる塗料組成物の製造方法は、前述及び後述するものを含めて、特に限定されず、顔料等の配合物をサンドグインドミル、ボールミルまたはロールミル等を用いて混練、分散する等の当業者に周知の全ての方法を用い得る。
【0048】
<クリヤ塗料>
本発明に用いるクリヤ塗料としては、特に限定されるものではなく一般的なクリヤ塗料を用いることができる。
【0049】
クリヤ塗料は、溶剤型塗料であってもよいし、水系塗料や水分散型塗料であってもよいし、粉体塗料であってもよい。クリヤ塗料は着色されたクリヤ塗料であってもよい。
【0050】
上記クリヤ塗料の含有成分は、特に限定されず、塗膜形成性熱硬化性樹脂及び硬化剤等を含有するものを利用できる。
【0051】
上記溶剤型クリヤ塗料の好ましい例としては、透明性あるいは耐酸エッチング性等の点から、アクリル樹脂及び/またはポリエステル樹脂とアミノ樹脂との組み合わせ、あるいはカルボン酸・エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂及び/またはポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0052】
また、上記水性型クリヤ塗料の例としては、上記溶剤型クリヤ塗料の例として挙げたものに含有される塗膜形成性樹脂を、塩基で中和して水性化した樹脂を含有するものを挙げることができる。この中和は重合の前または後に、ジメチルアミノエタノール及びトリエチルアミンのような3級アミンを添加することにより行うことができる。
【0053】
一方、粉体型クリヤ塗料としては、熱可塑性及び熱硬化性粉体塗料のような通常の粉体塗料を用い得ることができる。良好な物性の塗膜が得られるため、熱硬化性粉体塗料が好ましい。熱硬化性粉体塗料の具体的なものとしては、エポキシ系、アクリル系及びポリエステル系の粉体クリヤ塗料等が挙げられるが、耐候性が良好なアクリル系粉体クリヤ塗料が特に好ましい。
【0054】
本発明に用いる粉体型クリヤ塗料として、硬化時の揮散物がなく、良好な外観が得られ、そして黄変が少ないことから、エポキシ含有アクリル樹脂/多価カルボン酸の系の粉体塗料が特に好ましい。
【0055】
さらに、上記クリヤ塗料には、上述のベース塗料同様に、塗装作業性を確保するために、粘性制御剤を添加されていることが好ましい。粘性制御剤は、一般にチクソトロピー性を示すものを使用できる。このようなものとして、例えば、上述のベース塗料についての記載で挙げたものを使用することができる。また必要により、硬化触媒、表面調整剤等を含むことができる。
【0056】
<ベース塗料、光輝性塗料及びクリヤ塗料の塗装>
ベース塗料、光輝性塗料、及びクリヤ塗料の塗装方法は、特に限定されるものではなく、一般的な塗装方法を採用することができる。例えば、被塗物にベース塗料、光輝性塗料及びクリヤ塗料を、エアースプレー塗装または静電塗装機を用いてウェットオンウェットで形成することができる。
【0057】
ベース塗料を塗装する場合は、作業性及び外観を高めるために静電塗装機を用いることが好ましい。この静電塗装機の例としては、例えば「リアクトガン」等と言われるアエー静電スプレー塗装、あるいは回転霧化式の静電塗装機が挙げられる。これらによる多ステージ塗装、好ましくは2〜3ステージ塗装が挙げられ、エアー静電スプレー塗装と、回転霧化式の静電塗装機等とを組み合わせた塗装方法等により塗膜を形成することもできる。
【0058】
本発明における、ベース塗料による乾燥塗膜の膜厚は所望の用途により変化するが、その塗膜の乾燥膜厚は5〜35μmに設定することができ、好ましくは7〜25μmである。ベース塗膜の膜厚が35μmを超えると、鮮映性が低下したり、塗膜にムラまたは流れが生じることがあり、5μm未満であると、下地隠蔽性が不十分となり、膜切れ(塗膜が不連続な状態)が生じることがあるため、いずれも好ましくない。
【0059】
さらに、未硬化のベース塗膜の上に、光輝性塗料及びクリヤ塗料をウェットオンウェットで塗布し、光輝性塗膜及びクリヤ塗膜を形成する。
【0060】
本発明における、光輝性塗料により形成する塗膜の乾燥膜厚は所望の用途により変化するが、その塗膜の乾燥膜厚は2μm以下に設定することができ、好ましくは0.1〜1.0μmの範囲内である。ベース塗膜の膜厚が2μmを超えると、メッキ感が低下したり、塗膜にムラまたは流れが生じることがあり好ましくない。
【0061】
本発明の塗装方法において、上記光輝性塗膜を形成した後に塗装されるクリヤ塗膜は、上記光輝性塗膜に起因する凹凸、光輝性顔料が含まれる場合に起こるチカチカ等を平滑にし、メッキ感を創出するために形成する。塗装方法として具体的には、ベル、μμベル等の回転霧化式の静電塗装機により塗膜形成することが好ましい。
【0062】
上記クリヤ塗料により形成されるクリヤ塗膜の乾燥膜厚は、一般に10〜80μm程度が好ましく、より好ましくは20〜60μm程度である。上限を越えると、塗装時にワキあるいはタレ等の不具合が起こることもあり、下限を下回ると、下地の凹凸が隠蔽できない。
【0063】
ベース塗料、光輝性塗料及びクリヤ塗料を塗装した後は、所定時間放置し、セッティングすることが好ましい。このようなセッティングにより、塗膜中に含まれている溶剤(d)の少なくとも一部を蒸発させることが好ましい。セッティング時間としては、2〜20分間程度とすることが好ましい。
【0064】
上記の溶剤(d)の蒸発を促進するため、必要に応じてプレヒートすることが好ましい。特に、本発明の光輝性塗料組成物を塗装した後、必要に応じてプレヒートすることが好ましい。プレヒートすることにより、塗料中に含まれている溶剤(d)の蒸発を促進することができ、塗膜中における光輝性顔料の配向状態の維持をより高めることができる。プレヒートの温度としては、30〜80℃程度が好ましく、プレヒートの時間としては1〜5分間程度であることが好ましい。
【0065】
<被塗物>
本発明における被塗物は、特に限定されるものではなく、金属基材や、プラスチック基材などを被塗物とすることができる。金属基材としては、例えば、アルミホイールなどの自動車用ホイールを挙げることができる。
【0066】
アルミホイールは、アルミ鋳物であるので、その表面に大きな凹凸が存在している。このような大きな凹凸が存在すると、メッキ調の金属光沢を形成しにくい場合があるので、基材にこのような大きな凹凸が存在する場合には、被塗物の上にプライマーを塗装し、その表面を平滑化しておくことが好ましい。プライマーとしては膜厚の厚い塗膜を形成することができる粉体塗料を用いることが好ましい。従って、このような場合には、被塗物の上に粉体塗料を塗装し、これを焼き付けた後、上記ベース塗料を塗装することが好ましい。
【0067】
<積層塗膜の焼き付け>
本発明の方法によれば、ベース塗膜、光輝性塗膜、及びクリヤ塗膜をウェットオンウェットで塗装してこれらの積層塗膜を形成した後、該積層塗膜を加熱し、同時に焼き付ける。焼き付け温度としては、各塗料における塗膜形成樹脂の種類等により適宜選択されるが、一般には80〜160℃の範囲内の温度に加熱することが好ましい。被塗物がプラスチック基材である場合には、高温に加熱できない場合があるので、80〜100℃の範囲内の温度に加熱し焼き付けることが好ましい。この場合、ベース塗料、光輝性塗料、及びクリヤ塗料中の塗膜形成樹脂は、2液混合タイプのイソシアネート硬化型樹脂であることが好ましい。このような樹脂を用いることにより、上記のような低い温度での焼き付けが可能となる。
【0068】
<本発明の物品>
本発明の物品は、上記本発明の積層塗膜の形成方法で、被塗物上に積層塗膜を形成したことを特徴としている。
【0069】
すなわち、本発明の物品は、被塗物の上に形成される着色したベース塗膜と、上記本発明の光輝性塗料組成物から形成され、ベース塗膜上に乾燥膜厚が2μm以下となるように設けられる光輝性塗膜と、該光輝性塗膜の上に形成されるクリヤ塗膜とからなる積層塗膜を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0070】
本発明の光輝性塗料組成物を用いることにより、光輝性を面状に配向させた光輝性塗膜を容易に形成することができ、メッキ調金属光沢を被塗物に付与することができる。
【0071】
本発明の積層塗膜の形成方法によれば、例えば、3コート1ベーク方式で積層塗膜を形成しても、良好なメッキ調金属光沢を被塗物に付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
〔アクリル樹脂(a)の樹脂溶液の調製〕
表1及び表2に示すモノマー組成、開始剤、溶剤、及び水を用い、表1及び表2に示す所定の温度及び時間でモノマーを重合することにより、アクリル樹脂(a)の上記樹脂溶液を調製した。樹脂溶液A〜樹脂溶液Kについてはエマルション重合で調製した。樹脂溶液Lについては、溶液重合で調製した。
【0074】
エマルション重合での樹脂製造は、反応容器にイオン交換水126.95部を加え、窒素気流中で混合撹拌しながら所定の温度に昇温した。次いで、スチレンモノマー5部、メタクリル酸メチル28.46部、アクリル酸エチル39.12部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル7.42部、アクアロンHS−20 0.5部、アデカリアソープNE−20 0.5部及びイオン交換水80部からなるモノマー乳化物と、過硫酸アンモニウム0.24部、及びイオン交換水10部からなる開始剤溶液とを2時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、1時間同温度で熟成した。さらに、同温度でアクリル酸エチル15.07部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.86部、メタクリル酸3.07部、アクアロンHS−20 0.2部及びイオン交換水10部からなるモノマー乳化物と、過硫酸アンモニウム0.06部、及びイオン交換水10部からなる開始剤溶液とを0.5時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間同温度で熟成した。次いで、40℃まで冷却し、400メッシュフィルターで濾過した後、ジメチルアミノエタノール0.16部を加え、樹脂溶液Aを得た。樹脂溶液B〜樹脂溶液Kについても同様の方法で製造した。
【0075】
なお、表1及び表2に示すアデカリアソープNE−20及びアクアロンHS−10は、以下の内容のものである。
【0076】
・アデカリアソープNE−20:旭電化社製、オキシエチレン系乳化剤、80重量%水溶液
・アクアロンHS−10:第一工業製薬社製、フェニルエーテル系乳化剤
樹脂溶液中の樹脂成分について、ガラス転移温度、水酸基価(OH価)、酸価、及び重量平均分子量を測定し、表1及び表2に示した。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
表1に示す樹脂溶液A〜Fは、以下に示す各実施例において用いた。また、表2に示す樹脂溶液G〜Lは、以下に示す各比較例において用いた。樹脂溶液G及びHの樹脂は、ガラス転移温度が本発明の範囲から外れている。また、樹脂溶液I及びJの樹脂は、OH価が本発明の範囲から外れている。また、樹脂溶液K及びLの樹脂は、重量平均分子量が本発明の範囲から外れている。
【0080】
〔光輝性塗料組成物の調製〕
上記のようにして調製した樹脂溶液A〜Lを用いて、表3及び表4に示す配合で、実施例1〜7及び比較例1〜6の光輝性塗料組成物を調製した。
【0081】
表3及び表4に示す記号は以下の通りである。
【0082】
・METASHEEN1800:アルミニウム蒸着膜を粉砕したアルミニウム顔料のペースト、WOLSTENHOLME社製、アルミニウム含有量10重量%
・ユーバン20N60:メラミン樹脂ワニス、三井化学社製、固形分20重量%
・モダフロー:モンサント社製、アクリル樹脂表面調整剤
なお、表3及び表4には、各塗料組成物中におけるアクリル樹脂/メラミン樹脂の比率及び顔料重量濃度(PWC)を示す。
【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
〔積層塗膜の形成〕
クロム酸処理を施した、厚み10mm、縦7cm、横15cmのサイズのアルミ鋼板(AC4C)に、アクリル粉体塗料(日本ペイント社製、商品名「パウダックスA400クリヤ」)を、乾燥膜厚が100μmとなるように静電塗装した後、160℃で30分間焼き付けた。
【0086】
次に、粉体塗料で形成した塗膜の上に、アクリル樹脂系ブラックベース塗料(日本ペイント社製、商品名「スーパーラックM100ブラック」)を乾燥膜厚が15μmとなるように塗装した。5分間放置してセッティングした後、実施例1〜7及び比較例1〜6の光輝性塗料組成物を、スプレーガン(イワタ社製、商品名「ワイダー61」)で、エアー圧2kg/cm2で、乾燥膜厚が0.5μmとなるように塗装した。10分間放置してセッティングした後、アクリルクリヤ塗料(日本ペイント社製、商品名「スーパーラック5000 AW−10クリヤ」)を上記と同様のスプレーガンで乾燥膜厚が35μmとなるように塗装し、8分間放置してセッティングした後、140℃で30分間焼き付けた。
【0087】
以上のようにして積層塗膜を形成し、各塗膜について、塗膜外観、金属光沢、及び耐チッピング性を以下のようにして評価した。
【0088】
<塗膜外観>
塗膜外観を、以下の基準で肉眼により評価した。
【0089】
5:平滑で、かなり光沢感がある。
【0090】
4:光沢感がある。
【0091】
3:普通の感覚。
【0092】
2:ぼけた感じがする。
【0093】
1:全く光沢感がない。
【0094】
<金属光沢>
各塗膜の金属光沢を、以下の基準で肉眼により評価した。
【0095】
5:かなりメッキ調の金属光沢がある。
【0096】
4:メッキ調の金属光沢がある。
【0097】
3:普通の感覚。
【0098】
2:ぼけた感じがする。
【0099】
1:全く金属光沢がない。
【0100】
<耐チッピング性>
ASTM D3170に準じた飛び石試験機を試験装置として用い、以下のようにして耐チッピング性を測定した。
【0101】
作製した塗板を飛び石が当たる面に固定する。4.8〜8mmの直径の玄武岩500gを飛び石として用い、これを約10分間かけてホッパーに徐々に入れ、0.4MPaの射出圧力で、ノズルより石を飛ばし、塗板の塗膜面に当てる。塗板の温度は室温(23℃)とし、ノズルと塗膜面との間の距離は35cmとした。
【0102】
石を当てた後、塗膜面の表面をきれいに拭き取り、ニチバン製工業用ガムテープを、塗膜面の上に気泡を含まないようにして圧着する。圧着後、この工業用ガムテープの一方の端を持ち、塗膜面からテープを剥がす。これにより、密着していない塗膜部分が、塗板から剥がれる。この塗膜の剥離部分の直径と個数を測定し、結果を表5及び表6に「耐チッピング性」として示した。
【0103】
【表5】

【0104】
【表6】

【0105】
表5及び表6に示す結果から明らかなように、本発明に従う実施例1〜7は、塗膜外観及び金属光沢において、比較例1〜6よりも優れていることがわかる。
【0106】
比較例2においては、ガラス転移温度が本発明の範囲よりも高い樹脂を用いているが、このような樹脂を用いた場合、耐チッピング性が低下することがわかる。また、比較例1のようにガラス転移温度が本発明の範囲よりも低い樹脂を用いた場合や、比較例3及び4のように、水酸基価が本発明の範囲外の樹脂を用いた場合及び比較例6のように重量平均分子量が本発明の範囲よりも低い樹脂を用いた場合には、塗膜外観が悪くなり、良好な金属光沢が得られないことがわかる。また、比較例5のように、重量平均分子量が本発明の範囲よりも高い樹脂を用いた場合には、樹脂を溶剤に溶解することができず、塗料化できないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度0〜45℃、水酸基価20〜80mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)200,000〜1,000,000であるアクリル樹脂(a)と、硬化剤(b)と、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料(c)と、溶剤(d)とを含有し、光輝性顔料(c)の含有比率〔(c)/(a+b+c)〕が0.15〜0.5であることを特徴とする光輝性塗料組成物。
【請求項2】
アクリル樹脂(a)と硬化剤(b)の比率〔(a)/(b)〕が95/5〜70/30であることを特徴とする請求項1に記載の光輝性塗料組成物。
【請求項3】
硬化剤(b)がメラミン樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の光輝性塗料組成物。
【請求項4】
スプレー塗装時のアクリル樹脂(a)と硬化剤(b)の溶剤(d)中の濃度〔(a+b)/(a+b+d)〕が0.5/100〜5.0/100であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光輝性塗料組成物。
【請求項5】
アクリル樹脂(a)がエマルション樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光輝性塗料組成物。
【請求項6】
被塗物の上に着色したベース塗料を塗装し、ベース塗膜を形成する工程と、
前記ベース塗膜の上に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光輝性塗料組成物を乾燥膜厚が2μm以下となるようにウェットオンウェットで塗装し、光輝性塗膜を形成する工程と、
前記光輝性塗膜の上に、クリヤ塗料をウェットオンウェットで塗装し、クリヤ塗膜を形成する工程と、
前記ベース塗膜、前記光輝性塗膜、及び前記クリヤ塗膜を加熱し、これらの塗膜を同時に焼き付ける工程とを備えることを特徴とする積層塗膜の形成方法。
【請求項7】
前記被塗物が自動車用ホイールであることを特徴とする請求項6に記載の積層塗膜の形成方法。
【請求項8】
前記自動車用ホイールがアルミホイールであることを特徴とする請求項7に記載の積層塗膜の形成方法。
【請求項9】
前記被塗物の上に粉体塗料を塗装し、これを焼き付けた後、前記ベース塗料を塗装することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の積層塗膜の形成方法。
【請求項10】
前記ベース塗膜、前記光輝性塗膜、及び前記クリヤ塗膜を、80〜160℃の範囲内の温度に加熱し、これらの塗膜を同時に焼き付けることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の積層塗膜の形成方法。
【請求項11】
前記ベース塗膜、前記光輝性塗膜、及び前記クリヤ塗膜中の塗膜形成樹脂が、それぞれイソシアネート硬化型樹脂であることを特徴とする請求項10に記載の積層塗膜の形成方法。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれか1項に記載の方法で、被塗物上に積層塗膜を形成したことを特徴とする物品。
【請求項13】
被塗物の上に形成される着色したベース塗膜と、
ガラス転移温度0〜45℃、水酸基価20〜80mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)200,000〜1,000,000であるアクリル樹脂(a)と、硬化剤(b)と、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料(c)と、溶剤(d)とを含有し、光輝性顔料(c)の含有比率〔(c)/(a+b+c)〕が0.15〜0.5である光輝性塗料組成物から形成され、前記ベース塗膜の上に、乾燥膜厚が2μm以下となるように設けられる光輝性塗膜と、
前記光輝性塗膜の上に形成されたクリヤ塗膜とからなる積層塗膜を備えることを特徴とする物品。

【公開番号】特開2006−169416(P2006−169416A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365377(P2004−365377)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】