説明

光通信装置

【課題】上り光信号に生じ得るOBIのノイズ比を簡便な方法で改善可能な光放送システムの局側の光通信装置を提供する。
【解決手段】複数のサービスを同時に加入者に提供する光放送システム1のCATV局舎2の複数のCMTS6は複数のサービスにそれぞれ対応して設けられ加入者のONU28を制御し、CATV局舎2の複数の可変減衰器18は、複数のCMTS6それぞれに対応しCMTS6の入力信号レベルを制御し、CATV局舎2の上りRX14は、ONU28が出力する上り光信号を上り電気信号に変換して複数の可変減衰器18に提供し、CATV局舎2のOBIモニタ回路20は、上り電気信号のノイズ量が所定の値を上回った時には、複数のサービスのうち現在提供されているサービスに係るCMTS6に対応する可変減衰器18の減衰量を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光放送システムの放送局側の光通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、光信号を送信する光分配システムと、この光分配システムに結合する複数の光送信器を備えるパッシブ光ネットワークシステム(Passive Optical Network System:PONシステム)に係る技術について記載されている。特許文献1には、線幅が広く干渉性に劣るLEDを光源として用い、光波通信システムの実行にマイナス効果をもたらす光ビート干渉問題(OBI:Optical Beat Interference)を克服するための技術が開示されている。特許文献1に記載のPONシステムでは、SCMA(Sub-Carrier Multiple Access)伝送システムにおいて、LEDを光源として用いる一方、光パワーの不足を補うために増幅発光ダイオード(半導体増幅器)を用いる。具体的には、このPONシステムでは、光送信器のうちの少なくとも1個は増幅発光ダイオードを有し、少なくとも1個の光レシーバが光分配システムに光結合している。
【0003】
特許文献2には、SCMA伝送システムにおいて、センター側の光受信機の後段にSCMAによって伝送される信号の周波数成分よりも低い周波数成分、及び、高い周波数成分のノイズ成分を検知し、この検知結果に基づいて、通信障害を引き起こす光ビート干渉をモニタする技術が、開示されている。特許文献3には、局舎内に波長制御装置を配置し、各加入者端末からの上りの光信号の波長がそれぞれ異なる様に制御を行って光ビート干渉を解決する方法が開示されている。さらに、特許文献4には、各加入者端末において電気信号の周波数を監視し、この周波数に応じて上りの光信号の波長を異ならせ光ビート干渉を避ける技術が開示されている。
【0004】
近時、波長多重技術を応用することによって、既存のCATV(Cable TV)で採用されているDOCSIS(Data Over Cable Service Interface Specifications)システムとPONシステムとの共存サービスを、実現するためのRFoG(Radio Frequency over Glass)システムが、SCTE(Society of Cable Telecommunications Engineers)等によって、議論されている。すなわち、既に加入者宅まで敷設された光CATVシステム(光放送システム)から、将来の大容量FTTH(Fiber To The Home)によるPONシステムへの移行をどのように行っていくかの議論が、SCTE等によって行われている。
【0005】
非特許文献1には、光源としての半導体レーザ(LD:Laser Diode)の総変調度と、OBI発生時のキャリア成分とビートノイズ(干渉ノイズ)の比(CIR:Carrier-to-Interference noise Ratio)と、の関係について検証した結果が記載されている。この検証結果によれば、LDの総変調度を上げスペクトル幅を広げて干渉性を劣化させることによってCIRが改善される、と記載されている。
【0006】
非特許文献2には、LDの総変調度とOBI発生時のCIRとの関係について検証した結果が記載されている。この検証結果によれば、スペクトル幅を広げて干渉性を劣化させることを目的としてLDの総変調度を上げるため、“Clipping Tone”を導入することによって、CIRが改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−321807号公報
【特許文献2】US7489868B2公報
【特許文献3】特開2011−035550号公報
【特許文献4】特開2011−029792号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Operation of a passive Optical Network with subcarrier Multiplexing in the Presence of optical Beat Interference (Journal of Lightwave Technology 11(10) (1993)
【非特許文献2】Reduction of Optical-Beat Interference in Subcarrier Networks (IEEE Photonics Technology Letters vol.8 No.5 May1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の光CATVシステムにおいて、CATV局舎が単一のCMTS(Cable Modem Termination System)を有する場合、各加入者宅に設置された複数のONU(Optical Network Unit)は、この単一のCMTSからの指示に従って、上り方向の光信号のON/OFFを行う。この場合、この光CATVシステムには単一の上り光信号のみが存在する。しかし、例えばIP電話、高速インターネットサービス、低速データ通信サービスなどの複数のサービスが提供される場合、それぞれのサービスに対応する複数のCMTSがCATV局舎に設けられる。この場合、複数のCMTSが、個別に、複数のONUに対して指示を発する。このため、複数のONUが、同じタイミングで、別々のサービスに対応した上り光信号を発信する場面が生じる。複数のONUのそれぞれから送られる上り光信号の波長が、ほぼ同じであれば、OBIによるノイズが発生し正常な通信が阻害される。この現象は、各ONUに搭載されているLDの固体差に基づく発振波長のばらつき、あるいは動作温度のばらつきに左右され、発生確率は低いものの発生した場合にはサービスの低下を招いてしまう。
【0010】
OBIの影響を軽減するために特許文献1に記載されているようなシステムを採用すると、LEDの分散したスペクトラムに固有のスペックルノイズ、モード競合ノイズ、等の各種のノイズによって、RFoGシステムにおいて一般的に用いられている64QAM変調等の変調度の大きい信号を長距離伝送させることが困難になる。また、上り信号を意図的にクリッピングさせ歪みを含んだ応対で恒常的に駆動することは、たとえば、64QAM変調などを用いたクリッピングに対するノイズ耐性が強くないサービスの運用を不可とする。さらに、ONUに“Clipping Tone”発生器を設置する場合、加入者への負担増を招き、システム全体のコスト増を招く場合がある。一方、IP電話等のサービスにおいては、再送信が許容されないため、OBI発生時には大きなサービス運用上の問題が生じてしまう。また、ONUからの上り信号の波長を局舎から制御する方法も提案されているが、波長可変光源は非常に高価であり一般的ではない。本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、RFoGシステムにおいて提供される多様なサービスを実現するために、上り光信号に生じ得るOBIのノイズ比を簡便な方法で改善可能な光放送システムの局側の光通信装置を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る光通信装置は、加入者に対して複数のサービスを同時に提供する光放送システムの局側光通信装置であって、前記複数のサービスにそれぞれ対応して設けられ、前記加入者の終端装置を制御する複数の局側終端装置と、前記複数の局側終端装置のそれぞれに対応し、該局側終端装置の入力信号レベルを制御する複数の可変減衰器と、前記加入者の終端装置が出力する上り光信号を上り電気信号に変換し、当該上り電気信号を前記複数の可変減衰器に提供する信号変換装置と、前記上り電気信号のノイズ量に基づいて、前記可変減衰器の減衰量を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記ノイズ量が予め設定された値を上回った時には、前記複数のサービスのうち現在提供されているサービスに係る局側終端装置に対応する可変減衰器の減衰量を増大させる。各サービスは独立して提供されるので、複数の局側終端装置がアクティブになる場合があり、加入者側のモデムから同時に上り光信号が輻輳され、かつ、その時の光信号の波長が近接していると、OBI干渉が生じ正常な交信ができなくなる場合がある。制御装置は、この干渉状態を検知し、その時アクティブになっているサービスに対応する可変減衰器の減衰量を増加させる。これによって、局側終端装置の入力RFレベルは減少することになり、アクティブな局側終端装置は、下り信号に重畳してサービスを受けている加入者側からの出力光強度を高めるように加入者側の終端装置を制御する。この結果、上り光信号の干渉度が弱められ、正常な交信が回復する。よって、CIRが改善され、OBIによるサービス品質の劣化を低減できる。
【0012】
本発明に係る光通信装置において、前記制御装置は、前記光放送システムの上り信号帯域よりも広い応答帯域を有するのが好ましい。これにより、ノイズ量の検出が行える。
【0013】
本発明に係る光通信装置は、加入者に対して複数のサービスを同時に提供する光放送システムの局側光通信装置であって、前記複数のサービスにそれぞれ対応して設けられ、前記加入者の終端装置を制御する複数の局側終端装置と、前記複数の局側終端装置のそれぞれに対応し、該局側終端装置の入力信号レベルを制御する複数の可変減衰器と、前記加入者の終端装置が出力する上り光信号を上り電気信号に変換し、当該上り電気信号を前記複数の可変減衰器に提供する信号変換装置と、前記上り光信号をモニタしモニタ信号に変換するモニタ回路と、前記モニタ信号のノイズ量に基づいて、前記可変減衰器の減衰量を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記ノイズ量が予め設定された値を上回った時には、前記複数のサービスのうち現在提供されているサービスに係る局側終端装置に対応する可変減衰器の減衰量を増大させる。各サービスは独立して提供されるので、複数の局側終端装置がアクティブになる場合があり、加入者側のモデムから同時に上り光信号が輻輳され、かつ、その時の光信号の波長が近接していると、OBI干渉が生じ正常な交信ができなくなる場合がある。制御装置は、この干渉状態を検知し、その時アクティブになっているサービスに対応する可変減衰器の減衰量を増加させる。これによって、局側終端装置の入力RFレベルは減少することになり、アクティブな局側終端装置は、下り信号に重畳してサービスを受けている加入者側からの出力光強度を高めるように加入者側の終端装置を制御する。この結果、上り光信号の干渉度が弱められ、正常な交信が回復する。よって、CIRが改善され、OBIによるサービス品質の劣化を低減できる。また、モニタ回路が前記光放送システムの上り信号帯域よりも広い応答帯域を有する場合、制御装置の応答帯域によらずに、ノイズ量の検出が行える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上り光信号に生じ得るOBIのノイズ比を簡便な方法で改善可能な光放送システムの局側の光通信装置できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る光放送システムの構成を示す図である。
【図2】実施形態に係る他の光放送システムの構成を示す図である。
【図3】実施形態に係るOBIモニタ回路の構成を示す図である。
【図4】実施形態に係るOBIモニタ回路の動作を説明するための図である。
【図5】実施形態に係る光放送システムの効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、可能な場合には、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る光放送システム1の概要について説明する。光放送システム1は、大容量FTTHによるPONシステムをCATVシステムに適用したRFoGシステムの一種である。光放送システム1は、CATV局舎2(局側光通信装置)、光ファイバ22、光スプリッタ24、及び、加入者宅26を備える光CATVシステムである。
【0018】
CATV局舎2は、電気信号送受信装置3、下りTX10、WDM光合分波装置12、及び、上りRX14(信号変換装置)を有するCATV放送の放送局側の光通信装置である。CATV局舎2は、加入者に対して複数のサービスを同時に提供する。電気信号送受信装置3は、放送設備4、ヘッドエンド装置5、周波数合波装置8、分岐器16、及び、OBIモニタ回路20(制御装置)を有する。電気信号送受信装置3は、複数のヘッドエンド装置5を有する。ヘッドエンド装置5は、CMTS6(局側終端装置)及び可変減衰器18を含む。
【0019】
CATV局舎2は、CATVに係る信号を加入者宅26に向けて出力する。光ファイバ22は、CATV局舎2から加入者宅26の側に敷設されており、CATV局舎2と光スプリッタ24とを接続する光ファイバである。光スプリッタ24は、光ファイバ22を加入者宅26に分岐するPONシステムに係る32分岐の光スプリッタである。
【0020】
電気信号送受信装置3は、RFoGシステムに係る電気信号を送受する。放送設備4は、CATVの放送設備であり、CATVに係る電気的な映像信号を出力する。可変減衰器18は、上りRX14から出力される上り電気信号S3の信号レベルを制御信号S4に応じて減衰し、減衰後の電気信号S5を、この可変減衰器18に接続されたCMTS6に入力する。
【0021】
CMTS6は、局側終端装置の一例であり、加入者宅26のONU28(加入者側終端装置)と通信を行いつつ各サービス信号を加入者に提供する。複数のCMTS6は、複数のサービスにそれぞれ対応して設けられ、加入者のONU28を制御する。複数の可変減衰器18、複数のCMTS6それぞれに対応し、CMTS6の入力信号レベルを制御する。各CMTS6の入力にはそれぞれ可変減衰器18の出力が接続され、可変減衰器18の入力には分岐器16が接続されている。CMTS6は、可変減衰器18による減衰後の電気信号S5が入力される。また、各CMTS6は、サービス信号を加入者の提供している時、すなわち、CMTS6に固有なサービスがアクティブになっていることを示すフラグをOBIモニタ装置20に向けて出力する。なお、図1に記載した各CMTS6は広域ネットワークに接続されており、この広域ネットワークとの間で各サービス信号の送受を行う。広域ネットワークは図1では省略している。
【0022】
周波数合波装置8は、放送設備4から送られる映像信号と、各CMTS6から送られるIP電話、高速インターネットサービス、及び、低速データ通信サービスに係る信号を周波数多重したRF信号とを周波数多重した下り電気信号を出力する。下りTX10は、この下り電気信号を、波長多重された下り光信号S2に変換して下り光信号S2を出力する。下り光信号S2は、1550nm波長帯の光信号でありWDM光合分波装置12に送られる。
【0023】
WDM光合分波装置12は、光ファイバ22に接続されており、下りTX10から送られる下り光信号S2と、光ファイバ22から送られる上り光信号S1とを分波する。WDM光合分波装置12によって分波された下り光信号S2は、光ファイバ22上を加入者宅26に向けて送られる。一方、WDM光合分波装置12によって分波された上り光信号S1は、上りRX14に送られる。
【0024】
上りRX14は、加入者のONU28が出力する上り光信号S1を、周波数多重された上り電気信号S3(RF信号)に変換し、これを分岐器16に出力する。上りRX14は、分岐器16を介して、上り電気信号S3を複数の可変減衰器18に提供する。S1は、1310nm波長帯、又は、1600nm波長帯、の光信号である。なお、上りRX14は、光伝送システム1における上り信号の帯域(5〜42MHz)を含み、これより広い信号帯域に対して応答することができる。
【0025】
分岐器16は、上りRX14から出力される電気信号S3を、それぞれの可変減衰器18と、OBIモニタ回路20とにその周波数に基づき分岐する。可変減衰器18は、入力されたRF信号のレベルを減衰し、減衰後の信号S5(RF信号)を、それぞれのCMTS6に入力する。すなわち、可変減衰器18は、CMTS6の入力レベルを調整する。複数のCMTS6のそれぞれは、例えばIP電話、高速インターネットサービス、及び、低速データ通信サービスなどの複数のサービスのそれぞれに対応しており、また、それぞれ固有の信号周波数帯域に対応している。
【0026】
OBIモニタ回路20は、上り電気信号S3のノイズ量に基づいて、可変減衰器18の減衰量、すなわち、各CMTS6に入力される電気信号の入力レベルを制御する。具体的には、OBIモニタ回路20は、信号S3のノイズレベル(ノイズ量)を検出し、このノイズレベルが図4に示す閾値THを越えたか否かを判断し、超えていると判断した場合には、CMTS6の入力レベルを制御する制御信号S4(可変減衰器18の減衰量を増大させる信号)を、現在アクティブなサービスを提供しているCMTS6(複数のサービスのうち現在提供されているサービスに係るCMTS6)に対応する可変減衰器18に出力する。そのため、OBIモニタ回路20は、光放送システム1の上り方向の信号帯域(例えば、5〜42MHzの上り信号帯域))を含み、それよりも広い帯域に応答することができる。このように、OBIモニタ回路20は、光放送システム1の上り信号帯域よりも広い応答帯域を有する。よって、ノイズレベルの検出を行うことができる。可変減衰器18の減衰量が大きくなるのでCMTS6の入力レベルが低下し、対応するCMTS6はそのレベルを一定にするために下り光信号S2を介して各ONUの上りTX42にその出力強度を高める様に指示する。その結果、上り光信号S1のスペクトル幅が広がりOBIが減少することになる。
【0027】
OBIモニタ回路20の具体的な構成の一例は、図3に示されている。OBIモニタ回路20は、バンドエリミネーションフィルタ20a、RFレベル検知回路20b、閾値レベル出力回路20c、比較器20d、アラーム出力回路20e、及び、制御回路20fを有する。なお、OBIモニタ回路20の動作については、後述する。
【0028】
図1に戻って説明する。加入者宅26は、ONU28、セットトップボックス及びTV30、モデム32、及び、分波器34を有する。光放送システム1には、複数の加入者宅26が存在し、各加入者宅26には一または複数のモデム32および、一又は複数のONU28を有する。
【0029】
ONU28は、WDM光合分波装置36、下りRX38、周波数合分波装置40、上りTX42、及び、RF検波回路44を含む。ONU28は、RFoGシステムにおける加入者側終端装置の一例であり、局側終端装置であるCMTS6と通信を行う。WDM光合分波装置36は、光スプリッタ24と、下りRX38及び上りTX42との間に置かれる。WDM光合分波装置36は、光スプリッタ24から送られる下り光信号S2と、上りTX42から送られる上り光信号S1とを分波する。下り光信号S2は、下りRX38に送られて電気信号に変換される。
【0030】
一方、WDM光合分波装置36によって合波された上り光信号S1は、光スプリッタ24及び光ファイバ22を介して、CATV局舎2に送られる。周波数合分波装置40は、下り電気信号を、分波器34を介して、セットトップボックス及びTV30(セットトップボックス:STB)と、複数のモデム32と、に送る。また、周波数合分波装置40は、複数のモデム32から分波器34を介して送られる周波数多重された上り電気信号(RF信号)を、上りTX42に送る。上りTX42は、この上り電気信号を、光信号S1に変換し、この光信号S1をWDM光合分波装置36に送る。上り光信号S1は、1310nm波長帯、又は、1600nm波長帯を有する。
【0031】
次に、図1、図3及び図4を参照して、光放送システム1の作用・効果を説明する。光放送システムにおいて、CATV局舎が単一のCMTSを有する場合、CATV局舎に接続している加入者宅の全てのONUは、この単一のCMTSからの指示に従って、上り光信号の送信/停止を行う。この場合、光放送システムには上り光信号が存在する場合であっても単一の上り光信号のみしか存在しない。
【0032】
これに対し、実施形態に係る光放送システム1のように、例えばIP電話、高速インターネットサービス、低速データ通信サービスなどの複数のサービスが提供される場合、サービス毎に複数のCMTS6がCATV局舎2に設けられる。個々のCMTS6のが、個別に、複数のONU28に対して指示を発する場合がある。複数のONU28が、同じタイミングで、別々のサービスに応じた上り光信号を発信する場面が生じることになる。この場合、それぞれのONU28から送られる上り光信号の波長が、ほぼ同じであれば、OBIによるノイズが発生し、上り方向のネットワークの通信状況に影響が及んでしまう。この現象は光システム上は本来は許されない状況であるが、ONU28のレーザダイオードの発振波長のばらつき、及び、温度ばらつき、等で度々現出し、かつ、大概は上り光信号の波長が1310nm帯、あるいは1600nm帯であってもOBI干渉を起こすほどに近接していないため、複数の上り光信号が同時に存在する場面が許されてしまう。しかし、これら複数の上り信号の波長がOBI干渉を生ずるほどに近接する場合も、その発生確率は低いものの起こり得ることであり、発生した場合には、サービスの質の低下を招く。
【0033】
そこで、光放送システム1は、OBIモニタ回路20及び可変減衰器18を具備する。各CMTS6は、サービス提供時にはその入力信号レベルが一定になるように(変動しないように)、下り信号に乗せて各モデム32に対し制御信号を送信しこのCMTS6が提供しているサービスを受けている複数のモデム32が同一のタイミングで上り方向の信号を発生しないようにしている。しかしながら、各サービスは独立して提供されるため、複数のCMTS6がアクティブになる場合があり、複数のモデム32から同時に上り光信号が輻輳され、かつ、その時の光信号の波長が近接していると、OBI干渉が生じ正常な交信ができなくなる。OBIモニタ回路20はこの干渉状態を検知し、その時アクティブになっているサービスに対応する可変減衰器18の減衰量を増加させる。これは、CMTS6の入力RFレベルが減少することになり、アクティブなCMTS6は下り信号に重畳してサービスを受けているモデム32に対応する上りTX42の出力光強度を高めるように加入者側のONU28を制御する。この結果、上り光信号の干渉度が弱められ、正常な交信が回復する。以上の制御はアクティブなサービスの種類、及びその数、当該サービスが使用している上りRF信号の周波数には無関係に制御される。単純に現在アクティブの上りTXの光出力強度を高めるだけの制御である。
【0034】
ここで、図3を参照して、OBIモニタ回路20の動作を説明する。図3に示すように、OBIモニタ回路20において、バンドエリミネーションフィルタ20aは、入力されるRF信号(上り電気信号S3)に対し、光放送システム1の上り方向の周波数帯域(5〜42MHz)を遮断しそれ以外の帯域のRF信号を通過させる。なお、バンドエリミネーションフィルタ20aは、ハイパスフィルタとすることができる。OBIの発生により新たに現れるRF信号は、上記周波数帯域の信号の高調波成分を多く含むためである。そして、RFレベル検知回路20bは、バンドエリミネーションフィルタ20aを通過したRF信号の信号レベルを検出し、これはすなわち上り信号のノイズ成分のみを検出していることになる。この検出結果を示す信号を比較器20dに出力する。
【0035】
比較器20dは、RFレベル検知回路20bからの信号と、閾値レベル出力回路20cからの閾値THに対応する信号とを比較し、RFレベル検知回路20bの出力レベルが、閾値THを超えたか否かを判定する。バンドエリミネーションフィルタ20aを通過したRF信号は、光放送システム1の上り周波数帯域以外その信号スペクトルを有するので、RFレベル検知回路20bによって検出される信号レベルはノイズレベル(ノイズフロアN1)に相当する。このノイズレベルが閾値を超えたか否かを判定することによって、OBIの発生が検出可能となる。比較器20dは、RF信号のノイズレベルが閾値THを超えたと判定した場合に、この判定結果を示す信号を、アラーム出力回路20eに出力する。
【0036】
アラーム出力回路20eは、比較器20dの出力を受け制御回路20fにアラーム信号を出力し、制御回路20fは、このアラーム信号と各CMTS6から送信されるそのサービスアクティブ状況を示すフラグに基づいて、CMTS6に入力するRF信号の信号レベルを減衰するための制御信号S4を、対応する可変減衰器18に送る。可変減衰器18は、制御回路20fからの制御信号S4に応じて信号レベルを予め設定された減衰量だけ減衰させる。IP電話、高速インターネットサービス、低速データ通信サービス等の変調方式・サービスに要求される品質に応じて、OBIの発生時の影響度は異なるので、この減衰量は、例えば、IP電話サービスを行うCMTS6に接続されている可変減衰器18のみ大きな減衰量を発生させる、等のように、可変減衰器18において予め設定されている。
【0037】
図4を参照して、OBIモニタ回路20によるOBIのノイズの検出方法について説明する。グラフG1〜G4は、上り光信号のスペクトルを示す。図4に示す二つの光信号の波長差は、グラフG1の場合、0.3nmであり、グラフG2の場合、0.2nmであり、グラフG3の場合、0.1nmであり、グラフG4の場合に0nmである。グラフG1a〜G4aは、G1〜G4に示す光スペクトルを有する二つの光信号が上りRX14で電気信号に変換された後の信号スペクトルを示す。二つの上り光信号は互いに異なる信号周波数を有するが、その光波長はそれぞれ上記値の差を有している。グラフG1a〜G4aに示す結果は、OBIモニタ回路20が有するRFレベル検知回路20bによって検出される。
【0038】
G1aは、G1に示す二つの光信号に対する電気信号スペクトルを示し、G2aは、G2に示す二つの光信号に対する電気信号スペクトルを示し、G3aは、G3に示す二つの光信号に対する電気信号スペクトルを示し、G4aは、G4に示す二つの光信号に対する電気信号スペクトルを示す。
【0039】
G1及びG2に示すように、二つの光信号の波長差が比較的大きく、0.2nm以上の場合、G1a及びG2aに示すように、ノイズフロアN1が閾値THを下回っており、よって、OBIの発生度合いは小さい。これに対し、G3及びG4に示すように、二つの光信号の波長差が比較的小さい場合、G3a及びG4aに示すように、ノイズフロアN1が閾値THを上回っており、よって、OBIの発生度合いが大きいと言える。このように、波長差が比較的小さい上り方向の複数の光信号が同じタイミングで送られる場合、OBIの発生の可能性がある。OBIモニタ回路20は、以上のようにして、OBIのノイズを検出する。
【0040】
以上説明したように、ONU28から送られる上り方向の信号のCMTS6への入力レベルが、可変減衰器18を用いてOBIモニタ回路20によって制御される。従って、上り方向の信号にOBIが生じ、このOBIによってノイズフロアが上昇している場合、OBIモニタ回路20によって、OBIが検出され、現在アクティブなサービスの内容に従って制御装置(OBIモニタ回路20)によりそのサービスに対応するCMTS6への入力レベルが減衰する。よってサービスを提供する上りTX42の変調度を上げ上り光信号の波長線幅を広げるため、CIRが改善され、OBIによるサービス品質の劣化を低減できる。
【0041】
ここで、図5を参照して、本実施形態における減衰器量とCIRとの相関を示す。図5の横軸は、可変減衰器18による減衰量を示し、縦軸は、OBI発生時のCIRを示す。図5に示す結果は、シミュレーションによって得られた結果である。このシミュレーションにおいて、上り方向の電気信号(30MHz/40MHz)の周波数帯域の幅は、Docsisで規定されている4MHzに設定され、上り方向の二つの光信号は、全く同一の波長1610nmに設定され、ONU28の上りTX42が備える上り側の光信号を出力するレーザダイオードの変調度は、通常運用時に準拠して10%に設定されている。図5に示すように、可変減衰器18の減衰量を増やす(ONU28の上りLDの変調度を上げる)ことによって、CIRは、効果的に改善される。
【0042】
(変形例)図2に、本実施形態の変形例を示す。図2に示す光放送システム1aは、CATV局舎2aを備え、CATV局舎2aの構成のみ光放送システム1の構成と異なる。CATV局舎2aは、広帯域光モニタ回路46を有し、OBIモニタ回路20に入力する電気信号を出力する。広帯域光モニタ回路46は、光放送システム1の上り方向の信号帯域(上り信号帯域)よりも広い帯域の信号に応答することができる。このように、広帯域光モニタ回路46は、光放送システム1の上り信号帯域よりも広い応答帯域を有する。よって、ノイズレベル(ノイズ量)の検出を行うことができる。広帯域光モニタ回路46は、ONU28から送られる上り光信号S1をモニタし、OBIモニタ回路20が利用するモニタ用の電気信号(モニタ信号)に変換する。
【0043】
OBIモニタ回路20は、広帯域光モニタ回路46から出力されるモニタ用の電気信号(特に、モニタ信号のノイズ量)に基づいて、CMTS6に入力される電気信号の入力レベルを制御する。OBIモニタ回路20は、広帯域光モニタ回路46から出力されるモニタ用の電気信号に基づいて、CMTS6に入力される電気信号の入力レベルを制御する制御信号(可変減衰器18の減衰量を増大させる信号)を、可変減衰器18に出力する。より具体的には、OBIモニタ回路20は、入力される電気信号に含まれるノイズレベル(ノイズ量)を検出し、ノイズレベルが閾値を超えたか否かを判定し、ノイズレベルが前記閾値を超えたと判定した場合には、現在アクティブなサービスを提供しているCMTS6(複数のサービスのうち現在提供されているサービスに係るCMTS6)に入力される電気信号の信号レベルを可変減衰器18が減衰するための制御信号を、対応する可変減衰器18に送る。
【0044】
CATV局舎2aは、上記の点においてのみ、CATV局舎2の構成と異なる。すなわち、CATV局舎2aの場合、OBIモニタ回路20には、広帯域光モニタ回路46から出力されるモニタ用の光信号S6が入力し、広帯域光モニタ回路46は、WDM光合分波装置12からの波長多重された上り光信号S1を、周波数多重されたモニタ用の光信号S6に変換し、このモニタ用の光信号S6をOBIモニタ回路20に入力する。
【0045】
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【符号の説明】
【0046】
1,1a…光放送システム、10…下りTX、12,36…WDM光合分波装置、14…上りRX、16…分岐器、18…可変減衰器、2,2a…CATV局舎、20…OBIモニタ回路、20a…バンドエリミネーションフィルタ、20b…RFレベル検知回路、20c…閾値レベル出力回路、20d…比較器、20e…アラーム出力回路、20f…制御回路、22…光ファイバ、24…光スプリッタ、26…加入者宅、28…ONU、3…電気信号送受信装置、30…セットトップボックス及びTV、32…モデム、34…分波器、38…下りRX、4…放送設備、40…周波数合分波装置、42…上りTX、44…RF検波回路、46…広帯域光モニタ回路、5…ヘッドエンド装置、6…CMTS、8…周波数合波装置、S1…上り光信号、S2…下り光信号、S3…上り電気信号、S4…制御信号、S5…減衰後の電気信号、S6…モニタ用の光信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加入者に対して複数のサービスを同時に提供する光放送システムの局側光通信装置であって、
前記複数のサービスにそれぞれ対応して設けられ、前記加入者の終端装置を制御する複数の局側終端装置と、
前記複数の局側終端装置のそれぞれに対応し、該局側終端装置の入力信号レベルを制御する複数の可変減衰器と、
前記加入者の終端装置が出力する上り光信号を上り電気信号に変換し、当該上り電気信号を前記複数の可変減衰器に提供する信号変換装置と、
前記上り電気信号のノイズ量に基づいて、前記可変減衰器の減衰量を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記ノイズ量が予め設定された値を上回った時には、前記複数のサービスのうち現在提供されているサービスに係る局側終端装置に対応する可変減衰器の減衰量を増大させる、光通信装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記光放送システムの上り信号帯域よりも広い応答帯域を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の光通信装置。
【請求項3】
加入者に対して複数のサービスを同時に提供する光放送システムの局側光通信装置であって、
前記複数のサービスにそれぞれ対応して設けられ、前記加入者の終端装置を制御する複数の局側終端装置と、
前記複数の局側終端装置のそれぞれに対応し、該局側終端装置の入力信号レベルを制御する複数の可変減衰器と、
前記加入者の終端装置が出力する上り光信号を上り電気信号に変換し、当該上り電気信号を前記複数の可変減衰器に提供する信号変換装置と、
前記上り光信号をモニタしモニタ信号に変換するモニタ回路と、
前記モニタ信号のノイズ量に基づいて、前記可変減衰器の減衰量を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記ノイズ量が予め設定された値を上回った時には、前記複数のサービスのうち現在提供されているサービスに係る局側終端装置に対応する可変減衰器の減衰量を増大させる、光通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−257159(P2012−257159A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130183(P2011−130183)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(500241273)株式会社ブロードネットマックス (10)
【Fターム(参考)】