説明

光配線基板および光配線装置

【課題】光配線基板のスルーホール部と実装基板の光伝送路との光学的結合の精度を向上させること。
【解決手段】光配線基板1は、絶縁基体11と、絶縁基体11内において上下方向に設けられた複数の光スルーホール12a〜12lとを含んでいる。絶縁基体11の側面は、平面視において複数の光スルーホール12a〜12lの配列方向に設けられた固定用凹部11dを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスーパーコンピュータまたはサーバー・ルータ等に用いられる光配線基板および光配線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報分野おける技術発展に伴うIPトラフィックまたは情報処理量の増加によって、大容量かつ高速のデータ伝送が行なわれるようになってきた。それに伴って、電子機器間または電子機器内のモジュールにおける配線の集積化が要求されている。これに伴ってノイズ対策等の課題も顕在化してきた。また、近年、省エネルギー化の流れから、例えばデータセンタに設けられるサーバ等の電子機器における消費電力の低減が求められている。そこで、電子機器内に設けられた複数の素子間の配線として従前の電気配線に代えて光配線を有する配線基板が用いられるようになってきた。
【0003】
光配線基板としては、光電変換素子の実装領域を含む上面を有している絶縁基体と、光電変換素子の実装領域の直下位置に配置されており絶縁基体内において上下方向に設けられた光スルーホールとを有しているものがある。光配線基板の光スルーホールは、光配線基板を支持する実装基板の光伝送路に光学的に結合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−189137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記背景技術において記載された構造において、光配線基板の光スルーホールと実装基板の光伝送路との光学的結合の精度が低いと、光信号の損失または劣化が生じる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様による光配線基板は、絶縁基体と、絶縁基体内において上下方向に設けられた複数の光スルーホールとを含んでいる。絶縁基体の側面は、平面視において複数の光スルーホールの配列方向に設けられた固定用凹部を有している。
【0007】
本発明の他の態様による光配線モジュールは、上記構成の光配線基板と、光配線基板を支持する実装基板とを含んでいる。実装基板は、複数の光スルーホールに光学的に結合された光伝送路と、固定用凹部において光配線基板を固定する凸部とを有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様による光配線基板において、絶縁基体の側面が平面視において複数の光スルーホールの配列方向に設けられた固定用凹部を有していることによって、光スルーホールと実装基板の光伝送路との光学的結合の精度が向上されて、光信号の損失または劣化が低減されている。
【0009】
本発明の他の態様による光配線装置は、上記構成の光配線基板と、光配線基板を支持する実装基板とを含んでおり、実装基板が、複数の光スルーホールに光学的に結合された光伝送路と、固定用凹部において光配線基板を固定する凸部とを有していることによって、光信号の損失または劣化が低減されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態における光配線装置を示す透視斜視図である。
【図2】図1に示された光配線基板の平面透視図である。
【図3】図1に示された光スルーホール部の透視斜視図である。
【図4】図1に示された光配線モジュールが電気信号を光信号に変換するものである場合の回路ブロック図の例を示している。
【図5】図1に示された光配線モジュールが光信号を電気信号に変換するものである場合の回路ブロック図の例を示している。
【図6】図2に示された固定用凹部と複数の光スルーホールとの位置関係を示している。
【図7】図2に示された光配線基板の他の例を示す平面透視図である。
【図8】図7に示された光配線基板の他の例を示す平面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示されているように、本発明の実施形態における光配線装置は、光配線モジュールと、光配線モジュールを支持する実装基板100とを含んでいる。
【0013】
光配線モジュールは、光配線基板1と、光配線基板1に実装された光電変換素子2および電子素子3とを含んでいる。図1において、光配線モジュールは、仮想のxyz空間に設けられている。図1において、上方向とは、仮想のz軸の正方向のことをいう。図1に示された例において、光配線モジュールは、実装基板100に実装されている。なお、図1
において、配線等の一部の構成が省略されている。
【0014】
図1および図2に示されているように、光配線基板1は、絶縁基体11と、絶縁基体11に設けられた光スルーホール部12と、絶縁基体11の下面11bに設けられた複数の実装用パッド13とを含んでいる。
【0015】
絶縁基体11は、光電変換素子2の実装領域11aと電子素子3の実装領域11aとを含む上面11aを有している。絶縁基体11は、例えばセラミックスから成る。図1および図2において、光電変換素子2の実装領域11aおよび電子素子3の実装領域11aが仮想的に二点鎖線によって示されている。
【0016】
絶縁基体11は、平面視において複数の光スルーホール12a〜12lの配列方向に延びる仮想線12rに重なる位置に設けられた複数の固定用凹部11dを有している。すなわち、複数の固定用凹部11dは、平面視において複数の光スルーホール12a〜12lの配列方向に配置されている。図2において、複数の光スルーホール12a〜12lの配列方向に延びる仮想線12rが二点鎖線によって示されている。複数の固定用凹部11dは、複数の光スルーホール12a〜12lを挟むように一対の側面に設けられている。図2に示された例において、複数の固定用凹部11dは、平面視において半円状の形状を有している。複数の固定用凹部11の他の例としては、平面視において四角形状を有するものがある。複数の固定用凹部11dは、実装基板100に対する光配線基板1の位置決めのためにも用いられ得る。
【0017】
光スルーホール部12は、光電変換素子2の実装領域11aの直下位置に配置されており、絶縁基体11内において上下方向に設けられている。光スルーホール部12は、絶縁基体11の上面11aから下面11bにかけて設けられている。図3に示されているように、光スルーホール部12は、列状に配置された複数の光スルーホール12a〜12lを有している。
【0018】
光スルーホール部12は、例えば樹脂またはガラスから成り、互いに異なる光屈折率を有するコア部およびクラッド部を含んでいる。コア部は、クラッド部によって囲まれており、クラッド部よりも大きな光屈折率を有している。なお、光スルーホール部12は、例えば、所望の波長の光が透過する樹脂が高反射率部材によってコーティングされた構造であってもよい。光スルーホール部12は、実装基板100の光伝送路101に光学的に結合されている。
【0019】
複数の実装用パッド13は、絶縁基体11の下面11dに設けられており、例えば半田ボール等によって実装基板100のモジュール実装用パッド102に電気的かつ機械的に接続されている。
【0020】
光電変換素子2は、送信機能を有する場合は例えば外部共振器型垂直面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)であり、受信機能を有する場合は例えばフォトダイオード(PD)である。
【0021】
電子素子3は、送信機能を有する場合は例えばドライバ回路素子であり、受信機能を有する場合は例えばレシーバ回路素子(TIA:Trans Impedance Amplifier)である。
【0022】
実装基板100は、光伝送路101および複数のモジュール実装用パッド102を有しており、
光伝送路101は、ミラー101aとミラーに101aに光学的に結合された光導波路101bとを含んでいる。ミラー101aおよび光導波路101bは、実装基板100の絶縁基体内に設けられて
いる。実装基板100は、光配線基板103の複数の固定用凹部11dにおいて光配線基板1を固定する複数の凸部103をさらに含んでいる。複数の凸部103は、光配線基板103の複数の固
定用凹部11dに対応して配置されている。複数の凸部103は、例えば光伝送路101のミラー101aまたは光導波路101bと同じ材料で形成されると、実装基板100の生産性が向上され
る。
【0023】
図1に示された光配線モジュールが電気信号を光信号に変換する場合の信号処理について図4を参照して説明する。
【0024】
図4において、光電変換素子2は例えばVCSEL素子であり、電子素子3は例えばドライバ回路素子である。ここでは、光電変換素子2および電子素子3をVCSEL素子2およびドライバ回路素子3として説明する。図1等に示された光配線基板1の実装用パッド13を介して光配線モジュールに入力された電気信号13sは、ドライバ回路素子3によってVCSEL素子2の駆動用の電気信号3sに変換される。VCSEL素子2は、入力された電気信号3sに応じて光信号2sを出力する。すなわち、VCSEL素子2は、入力された電気信号3sを光信号2sに変換する機能を有している。VCSEL素子2から出力された光信号2sは、光スルーホール部12を介して実装基板100の光伝送路101に伝えられる。さらに詳細には、光信号2sは、ミラー101aによって進行方向を変えられて光導
波路101bに伝えられる。
【0025】
次に、図1に示された光配線モジュールが光信号を電気信号に変換する場合の信号処理について図5を参照して説明する。
【0026】
図5において、光電変換素子2は例えばPD素子であり、電子素子3は例えばレシーバ回路素子である。ここでは、光電変換素子2および電子素子3をPD素子2およびレシーバ回路素子3として説明する。実装基板100の光伝送路101によって伝送された光信号101
sは、光配線モジュールの光スルーホール部12に入射される。さらに詳細には、光導波路101bによって伝送された光信号101sは、ミラー101aによって進行方向が変えられて光
スルーホール部12に入射される。光信号101sは、光スルーホール部12によって伝送され
てPD素子2に入射される。PD素子2は、入力された光信号101sに応じて電気信号2
sを出力する。すなわち、PD素子2は、入力された光信号101sを電気信号2sに変換
する機能を有している。電気信号2sは、レシーバ回路素子3によって増幅されて電気信号3sとして出力される。電気信号3sは、実装用パッド13を介して光配線モジュールから出力される。
【0027】
本実施形態の光配線基板1において、絶縁基体11が平面視において複数の光スルーホール12a〜12lの配列方向に延びる仮想線12rに重なるように設けられていることによって、複数の光スルーホール12a〜12lと実装基板100の光伝送路101との光学的結合の精度が向上されて、光信号の損失または劣化が低減されている。
【0028】
本実施形態の光配線基板1は、複数の光スルーホールの配列方向とは異なる箇所において固定される構造に比べて、例えば絶縁基板に熱膨張が生じた場合においても、複数の光スルーホール12a〜12lと実装基板100の光伝送路101との光学的結合の精度が向上されている。
【0029】
例えば、複数の光スルーホールの配列方向とは異なった箇所であり複数の光スルーホールからは離れたドライバ回路素子等の実装領域の近傍において固定される構造であれば、ドライバ回路素子等によって発生された熱によって絶縁基板に熱膨張が生じた場合に、固定位置と複数の光スルーホールとが離れていることによって、複数の光スルーホールと実装基板の光伝送路との光学的結合の精度が低下する可能性がある。
【0030】
本実施形態の光配線基板1において、複数の固定用凹部11dが複数の光スルーホール12a〜12lを挟むように複数の光スルーホール12a〜12lの配列方向に設けられていることによって、例えばドライバ回路素子等の発熱によって絶縁基体11が仮想のy軸方向に膨張した場合であっても、複数の光スルーホール12a〜12lと実装基板100の光伝送路101との光学的な結合の状態が維持されやすい。
【0031】
本実施形態の光配線装置は、光配線基板1と、光配線基板1を支持する実装基板100と
を含んでおり、実装基板100は、複数の光スルーホール12a〜12lに光学的に結合された
光伝送路と、光配線基板1の固定用凹部11dにおいて光配線基板1を固定する凸部103と
を有していることによって、光配線基板1の複数の光スルーホール12a〜12lと実装基板100の光伝送路101との光学的結合の精度が向上されて、光信号の損失または劣化が低減されている。
【0032】
なお、本実施形態において、固定用凹部11dが複数の光スルーホール12a〜12lの配列方向に延びる仮想線12rに重なる位置に設けられているとは、図6(a)に示されているように、複数の光スルーホール12a〜12lの配列方向に延びる仮想線12rが固定用凹部11dの幅方向(すなわち仮想のx軸方向)において固定用凹部11dの中央に位置する場合に加えて、図6(b)に示されているように、仮想線12rが固定用凹部11dの幅の中央からずれていたとしても固定用凹部11dの幅の範囲内に収まっている場合を含むものである。
【0033】
また、図7に示されているように、複数の固定用凹部11dは、絶縁基体11の下面に設けられているものであってもよい。図7に示された例においても、複数の固定用凹部11dは、複数の光スルーホール12a〜12lの配列方向に延びる仮想線12rに重なる位置に設けられている。
【0034】
また、図7においては、複数の固定用凹部11dが絶縁基体11の下面に開口している非貫通の例を示したが、図8に示されているように、複数の固定用凹部11dが絶縁基体11の上下面を貫通している構造であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 光配線基板
11 絶縁基板
12 光スルーホール部
13 実装用パッド
2 光電変換素子
3 電子素子
100 実装基板
101 光伝送路
101a ミラー
101b 光導波路
102 モジュール実装用パッド
103 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基体と、
該絶縁基体内において上下方向に設けられた複数の光スルーホールとを備えており、
前記絶縁基体は、平面視において前記複数の光スルーホールの配列方向に延びる仮想線に重なる位置に設けられた固定用凹部を有していることを特徴とする光配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載された光配線基板と、
該光配線基板を支持する実装基板とを備えており、
該実装基板は、前記複数の光スルーホールに光学的に結合された光伝送路と、前記固定用凹部において前記光配線基板を固定する凸部とを有していることを特徴とする光配線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−97004(P2013−97004A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236458(P2011−236458)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】