説明

光重合反応とレドックス重合反応とを併用して得られる暗色化されたアクリル系粘弾性体層の製造方法、及び粘着テープ又はシート

【課題】粘弾性特性を維持しながら、生産性を損なわず、十分な薄暗さを有するアクリル系粘弾性体層の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のアクリル系粘弾性体層の製造方法は、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を用いる光重合反応と、酸化剤及び還元剤の作用によるレドックス重合反応とを併用して、着色物質を含有させたアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物を重合に付すことを特徴とする。活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を用いる光重合反応と、酸化剤及び還元剤の作用によるレドックス重合反応との併用は、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤、酸化剤、還元剤及び着色物質を含むアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物に活性エネルギー線を照射して、光重合反応とレドックス重合反応とをともに進行させることであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を用いる光重合反応と、酸化剤及び還元剤の作用によるレドックス重合反応とを併用することにより、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物を重合に付して暗色度L*が40以下のアクリル系粘弾性体層を製造する方法、該アクリル系粘弾性体層を製造する方法により得られるアクリル系粘弾性体層、該アクリル系粘弾性体層を製造する方法により得られるアクリル系粘弾性体層を構成するアクリル系粘弾性体、該アクリル系粘弾性体層を製造する方法により得られるアクリル系粘弾性体層を粘着層として有する粘着テープ又はシートに関する。
【背景技術】
【0002】
光重合性粘弾性体は光重合による速い重合性から広く応用されている。この粘弾性体に関して、天窓の封止、または自動車車体への車体側成型物の取付け又はガラス窓への模造マリオンバーの取り付けのような用途においては、その存在を隠蔽することが望ましい物もあり、暗色に着色されていた方がより望ましいものが少なくない。
【0003】
しかしながら、外観を所望の薄暗さにするために、カーボンブラック等の着色物質を十分な量添加すると、活性エネルギー線を妨害し硬化不良が起こる原因となる。また硬化不良を解決するために、活性エネルギー線をさらに長時間照射することは、生産性を上げるための装置の増設に伴うコストの問題があった。
【0004】
このような問題を解決するため、ガラスマイクロバルブに無機質の薄膜をコーティングする方法などが提案されているが(特許文献1、特許文献2参照)、その着色の程度は十分ではなく、またガラスマイクロバルブの加工によるコストの悪化も問題であった。
【0005】
以上のように、従来から光重合性アクリル系粘弾性体に対して、暗色化の検討がなされている。しかしその存在を隠蔽するに十分な薄暗さを有する光重合性アクリル系粘弾性体を、低コストで生産するには、いまだに課題が多い。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−272251
【特許文献2】特開平1−224243
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、生産性、コストの悪化を招かずに、その存在を隠蔽するのに十分な薄暗さを有するアクリル系粘弾性体層を製造する方法を提供し、さらに該アクリル系粘弾性体層を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物を重合させる重合反応として、光重合開始剤を用いる光重合反応と酸化剤及び還元剤の作用によるレドックス重合反応とを併用すれば、生産性を損なわず、しかも低コストで、その存在を隠蔽するのに十分な薄暗さを有するアクリル系粘弾性体層が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を用いる光重合反応と、酸化剤及び還元剤の作用によるレドックス重合反応とを併用して、着色物質を含むアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物を重合に付して、暗色度L*が40以下のアクリル系粘弾性体層を得ることを特徴とするアクリル系粘弾性体層の製造方法を提供する。
【0010】
上記発明においては、暗色度L*が40以下で、且つ透過率と反射率とを合わせた値が30%以下であるアクリル系粘弾性体層を得ることができる。
【0011】
本発明の一つの態様では、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤、酸化剤、還元剤及び着色物質を含むアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層に、活性エネルギー線を照射して、光重合反応とレドックス重合反応とをともに進行させる工程を含む。
【0012】
本発明の他の態様では、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を含む還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物と、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を含む酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物とに対して、少なくとも一方に着色物質を含有させ、それぞれ個別に活性エネルギー線を照射して、光重合反応を進行させ、部分硬化した還元剤含有アクリル系ポリマー層と、部分硬化した酸化剤含有アクリル系ポリマー層とを形成する工程と、該2つの層を貼り合わせてレドックス重合反応を進行させる工程とを含む。
【0013】
本発明のさらに他の態様では、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を含む還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物と、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を含む酸化含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物とに対して、少なくとも一方に着色物質を含有させ、各組成物からなる層を貼り合わせて積層体とし、レドックス重合反応を進行させる工程と、前記積層体に活性エネルギー線を照射して、光重合反応を進行させる工程とを含む。
【0014】
本発明における前記還元剤は、金属塩であることが好ましい。
【0015】
本発明における前記酸化剤は、有機過酸化物であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、前記アクリル系粘弾性体層の製造方法により得られる暗色度L*が40以下であるアクリル系粘弾性体層を提供する。
【0017】
前記アクリル系粘弾性体層は粘着層として用いてもよい。
【0018】
さらに、本発明は、前記アクリル系粘弾性体層を構成するアクリル系粘弾性体を提供する。
【0019】
さらにまた、本発明は、粘着層として、前記アクリル系粘弾性体層を有する粘着テープ又はシートを提供する。このような粘着テープ又はシートは、基材の少なくとも一方の面に粘着層が設けられている構成を有することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のアクリル系粘弾性体層は、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を用いる光重合反応と、酸化剤及び還元剤の作用によるレドックス重合反応とを併用することにより形成されるので、該アクリル系粘弾性体がほぼ完全に硬化する。そのため、着色の有無による影響を低減することができ、生産性やコストの悪化を招くことなく、従来にない暗色化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(アクリル系粘弾性体層の製造)
本発明におけるアクリル系粘弾性体層の製造方法では、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を用いる光重合反応と、酸化剤及び還元剤の作用によるレドックス重合反応とを併用して、着色物質を含むアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物を重合に付して、暗色度L*が40以下のアクリル系粘弾性体層を得る。
【0022】
本発明のアクリル系粘弾性体層の製造方法において、原料として用いるアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物としては、着色物質を含み、活性エネルギー線の照射による光重合反応及び酸化剤と還元剤との作用によるレドックス重合反応の併用により重合硬化するモノマー組成物又はその部分重合組成物である限り特に制限されない。
【0023】
アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸C2-18アルキルエステルをモノマー主成分とする。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、[好ましくは(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C2-10アルキルエステル]などが挙げられる。このような(メタ)アクリル酸C2-18アルキルエステルは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
なお、アクリル系粘弾性体層のベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性、架橋性などの改質を目的として、必要に応じて、前記(メタ)アクリル酸C2-18アルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分(共重合性モノマー)を含んでいてもよい。従って、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物は、モノマー主成分としての前記(メタ)アクリル酸C2-18アルキルエステルの他に、共重合性モノマーを含んでいてもよい。このような共重合性モノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有するアクリル系モノマー;フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有するアクリル系モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸などの酸無水物基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクルロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−(メタ)アクリロイル−2−ピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−ビニルモルホリンなどの窒素含有複素環系モノマー;N−ビニルカルボン酸アミド類;N−ビニルカプロラクタムなどのラクタム系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどの複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子などを有するアクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸メチルなどの前記(メタ)アクリル酸C2-18アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。なお、これらの共重合性モノマーは1種又は2種以上使用できる。
【0025】
アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物が、モノマー主成分しての前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの他に前記共重合性モノマーを含む場合、その割合としては、特に制限されないが、通常、(メタ)アクリル酸C2-18アルキルエステルを70〜99.9重量%、共重合性モノマーを0.1〜30重量%とするのが好ましい、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C2-18アルキルエステルを80〜99.9重量%、共重合性モノマーを0.1〜20重量%であり、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C2-18アルキルエステルを90〜99重量%、共重合性モノマーを1〜10重量%である。
【0026】
共重合性モノマーとしては、極性基含有モノマーなかでもカルボキシル基含有モノマーが好ましく、特にアクリル酸が好ましい。また、アクリル酸の使用割合は、特に制限されないが、例えば粘着層としてのアクリル系粘弾性体層を得る場合では、モノマー成分全体の1〜30重量%とするのが好ましい。1重量%以上とすることで、耐反発性がより向上し浮きが生じ難くなる。また30重量%以下とすることで、常温(25℃)でのタック感を満足できる。
【0027】
アクリル系粘弾性体層は、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物を、活性エネルギー線照射による光重合(光硬化)と酸化剤と還元剤によるレドックス重合反応とを併用して重合に付すことにより得られ、活性エネルギー線照射による光重合(光硬化)に付されるアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物は、通常、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を含む。
【0028】
光重合開始剤の活性化に際しては、活性エネルギー線を酸化剤還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物、還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物、及び酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物に照射することが重要である。このような活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好適である。また、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは特に制限されず、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
【0029】
前記光重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。
【0030】
具体的には、ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。
【0031】
また、ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
光重合開始剤の使用量としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物の全モノマー成分100重量部に対して0.01〜5重量部の割合であるのが好ましい。より好ましくは0.1〜3重量部である。
【0033】
還元剤は、酸化還元反応において他の物質を還元し、自身は酸化される物質のことであり、アクリル系粘弾性体層を構成するアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物において安定して存在できるかぎり特に制限されないが、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、エチレンジエタノールアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、メチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、アセチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、メチルエチルケトンオキシム、アセトフェノンオキシム、P,P’−ジベンゾイルキノンジオキシム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸鉄、バナジルアセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナート、バナジルステアレート、硫化コバルト、硫化銅、硫化マンガン、硫化ニッケル、硫化鉄、アスコルビン酸、没食子酸等の還元性有機化合物;メルカプタン類;サッカリン及びその塩類;チウラム化合物などが挙げられる。これらの還元剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
これらの還元剤のうち、バナジウム化合物、銅化合物、尿素化合物が好適に用いられる。特に好ましい還元剤は、バナジルアセチルアセトナート、バナジルステアレートである。
【0035】
これらの還元剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物の全モノマー成分100重量部に対して1.0×10-4〜1.0重量部であることが好ましく、より好ましくは1.0×10-3〜1.0×10-1重量部である。
【0036】
酸化剤は、酸化還元反応において他の物質を酸化し、自身は還元される物質のことであり、アクリル系粘弾性体層を構成するアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物において安定して存在できるかぎり特に制限されないが、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシデカノエート、1,5−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、アセト酢酸エチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物;過酸化水素などが挙げられる。これらの酸化剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
これらの酸化剤のうち、有機過酸化物が好ましい。また、酸化剤としての有機過酸化物の中でも、ハイドロパーオキサイド類が好適に用いられ、特に好ましい酸化剤はクメンハイドロパーオキサイドである。
【0038】
これらの酸化剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物の全モノマー成分100重量部に対して1.0×10-4〜5.0重量部であることが好ましく、より好ましくは1.0×10-2〜1.0重量部である。
【0039】
着色物質は、レドックス重合反応を著しく阻害しないかぎり、特に限定されず、顔料、染料、着色された微粒子、カーボンブラックなどを制限なく使用できる。
【0040】
着色物質の使用量は、その種類によっても異なるが、例えば、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物の全モノマー成分100重量部に対して1.0×10-2〜1.0重量部、特に1.0×10-1〜1.0重量部であることが望ましい。1.0×10-2重量部以下となると、その存在を隠蔽するに十分な薄暗さとはならず、また1.0重量部以上としても更なる暗色化の効果は少ない。
【0041】
アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物には、形成するアクリル系粘弾性体層の凝集力を向上させるために架橋剤が添加されていてもよい。このような架橋剤は、特に限定されないが、多官能(メタ)アクリレート等の多官能モノマーが好適に用いられる。
【0042】
このような多官能モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。多官能(メタ)アクリレート等の多官能モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
多官能(メタ)アクリレートの使用量は、その分子量や官能基数などにより異なるが、通常、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物を構成する全モノマー成分100重量部に対して、0.001〜30重量部の割合であるのが好ましい。より好ましくは0.05〜20重量部である。
【0044】
さらに、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物には、中空微小球状体が含まれていてもよい。中空微小球状体を用いることにより、例えばアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物により形成されるアクリル系粘弾性体層においてせん断接着力を高めることができ、また加工性を向上させることができる。中空微小球状体は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
中空微小球状体としては、中空の無機系微小球状体であってもよく、中空の有機系微小球状体であってもよい。具体的には、中空微小球状体において中空の無機系微小球状体としては、例えば、中空ガラスバルーン等のガラス製の中空バルーン;中空アルミナバルーン等の金属化合物製の中空バルーン;中空セラミックバルーン等の磁器製中空バルーンなどが挙げられる。また、中空の有機系微小球状体としては、例えば中空アクリルバルーン、中空の塩化ビニリデンバルーン等の樹脂製の中空バルーンなどが挙げられる。
【0046】
中空微小球状体の粒径(平均粒子径)としては特に制限されないが、例えば1〜500μm(好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは10〜100μm)の範囲から選択することができる。
【0047】
中空微小球状体の比重としては、特に限定されないが、例えば、0.1〜0.8g/cm3(好ましくは0.12〜0.5g/cm3)の範囲から選択することができる。中空微小球状体の比重が0.1g/cm3よりも小さいと、中空微小球状体をアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物に配合して混合する際に、浮き上がりが大きくなり、均一に分散させること難しくなり、一方、0.8g/cm3よりも大きいと、高価になり、コストが高くなる。
【0048】
中空微小球状体の使用量としては、特に限定されず、アクリル系粘弾性体層の全体積に対して10〜50容積%(体積%)、好ましくは15〜40容積%となるような範囲から選択することができる。例えば、粘着層としてのアクリル系粘弾性体層を得る場合では、中空微小球状体の使用量がアクリル系粘弾性体層の全体積に対して10容積%未満となるような使用量であると、中空微小球状体を添加した効果が低く、一方、50容積%を超えるような使用量であると、例えば、接着力が低下する場合がある。
【0049】
また、本発明のアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物には、前記以外に任意成分として、極性基含有モノマーの極性官能基と反応しうるイソシアネート基、エポキシ基、アジリジニル基、オキザゾリン基、カルボジイミド基等の官能基を有する架橋性化合物や、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、香料、界面活性剤など従来公知の各種添加剤を、そのレドックス重合性を阻害しない範囲内で適宜配合することができる。
【0050】
さらに本発明のアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物には、金属繊維やカーボンファイバー等の導電性材料を、そのレドックス重合性を阻害しない範囲で適宜配合することができる。このような導電性材料を配合した、該アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物には導電性、シールド性を付与することができる。
【0051】
また、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物は、増粘用ポリマーを適宜に配合することにより、粘度調整されていてもよい。このような増粘用ポリマーとしては、例えば、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにアクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル、アクリロイルモルホリン等を共重合したアクリル系ポリマー;スチレンブタジエンゴム(SBR);イソプレンゴム;スチレンブタジエンブロック共重合体(SBS);エチレン−酢酸ビニル共重合体;アクリルゴム;ポリウレタン;ポリエステル等を用いることができる。なお、増粘用ポリマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
増粘用ポリマーの配合量は、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物に対して40重量部以下(例えば5〜40重量部)の範囲とするのが好ましい。
【0053】
アクリル系粘弾性体層は、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層を形成してから、該層を光重合と酸化還元反応による重合とを併用して、硬化させることにより作製される。アクリル系モノマー組成物は、層を形成する際、その取り扱い上、塗工に適した粘度(通常、B型粘度計における粘度測定において、測定温度:25℃の条件で測定された粘度として、0.3〜40Pa・s)に調整するのが好ましい。このため、アクリル系モノマー組成物は、モノマー成分を予備重合して、その部分重合組成物(部分重合物、部分硬化物)としておくことができる。
【0054】
アクリル系モノマー組成物の部分重合は、通常、酸素との接触を避けて活性エネルギー線(特に紫外線)を照射することにより行われる。
【0055】
アクリル系モノマー組成物の部分重合組成物(「アクリル系モノマー部分重合組成物」と称する場合がある)において、その重合率は、その部分重合が生じている部分のポリマー分子量にもよるが、2〜40重量%程度とするのが好ましく、さらに好ましくは5〜20重量%程度である。
【0056】
アクリル系モノマー部分重合組成物の重合率は、アクリル系モノマー部分重合組成物約0.5gを精秤し、これを130℃で2時間乾燥した後の重量を精秤して重量減少量[揮発分(未反応モノマー重量)]を求め、得られた数値を以下の式に代入して算出した。
アクリル系モノマー部分重合組成物の重合率(%)=[1−(重量減少量)/(乾燥前のアクリル系モノマー部分重合組成物の重量)]×100
【0057】
本発明の製造方法では、暗色度L*が40以下のアクリル系粘弾性体層を得る。該アクリル系粘弾性体層の透過率と反射率とを合わせた値(最大値)は30%以下、特に10%以下であるのが好ましい。また、本発明において透過率及び反射率の測定範囲は、250nm〜500nmの波長領域であるものとする。
【0058】
暗色度とは暗さを表す度合いであり、黒色の測定試料であれば暗色度L*が0を示し、白色の測定試料であれば暗色度L*が100を示す。アクリル系粘弾性体層の暗色度L*が40以下、好ましくは30以下、さらに好ましくは27以下であれば、その存在を隠蔽するのに十分な薄暗さを有しているものといえる。暗色度L*は分光色差計により測定できる。
【0059】
なお、暗色度L*は、添加する着色物質の種類や添加量によって調整できる
【0060】
透過率とは、物質層を通して光が透過するとき、可視光または特定波長の入射光に対する透過光の強度の比(%)であり、反射率とは界面で反射された波(光)の強度の入射波(光)強度に対する比(%)のことである。透過率及び反射率は暗色度L*が低下するほど小さくなる。透過率及び反射率は分光光度計により測定できる。
【0061】
本発明の一つの態様では、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤、酸化剤、還元剤及び着色物質を含むアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物である酸化剤及び還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物に、活性エネルギー線を照射して、光重合反応とレドックス重合反応とをともに進行させることで、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物を重合に付すことにより作製する工程を含む。該作製方法によれば、単層構造のアクリル系粘弾性体層を容易に得ることができる。
【0062】
本発明の他の態様では、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を含む還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物と、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を含む酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物とに対して、少なくとも一方に着色物質を含有させ、それぞれ個別に活性エネルギー線を照射して、光重合反応を進行させ、部分硬化した還元剤含有アクリル系ポリマー層と、部分硬化した酸化剤含有アクリル系ポリマー層とを形成する工程と、該2つの層を貼り合わせてレドックス重合反応を進行させる工程とを含む。該作製方法によれば、積層構造のアクリル系粘弾性体層を容易に得ることができる。
【0063】
本発明のさらに他の態様では、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を含む還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物と、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を含む酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物とに対して、少なくとも一方に着色物質を含有させ、各組成物からなる層を貼り合わせて積層体とし、レドックス重合反応を進行させる工程と、前記積層体に活性エネルギー線を照射して、光重合反応を進行させる工程とを含む。該作製方法によれば、積層構造のアクリル系粘弾性体を容易に得ることができる。
【0064】
上記態様の中でも、生産性及び保存安定性の点から、還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層と酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物とからなる層の少なくとも一方に着色物質を含有させ、該2つの層を貼り合わせて得られる積層体に、活性エネルギー線を照射する方法が好ましい。
【0065】
単層構造のアクリル系粘弾性体層を形成するアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物としては、例えば、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤、還元剤、酸化剤及び着色物質を含む酸化剤及び還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物が挙げられる。
【0066】
積層構造のアクリル系粘弾性体層を形成するアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物としては、例えば前記酸化剤及び還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤及び還元剤を含む還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤及び酸化剤を含む酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物等が挙げられる。また、このようなアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物は、少なくとも還元剤を含むものと酸化剤を含むものとを組み合わせて用いられ、少なくとも一方に着色物質を含有させるものとする。還元剤を含むものと酸化剤を含むものとの界面で、還元剤及び酸化剤の作用により酸化還元反応が生じて、重合反応が促進されるためである。
【0067】
該アクリル系粘弾性体が積層構造を有する場合において、それぞれの層を形成するアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物は、そのモノマー成分が同一であってもよいし、異なっていてもよい。なお、生産性の観点からは、同一であることが望ましい。
【0068】
本発明における貼り合わせは、生産性を損なわないのであれば、該アクリル系粘弾性体中の還元剤を含む層と酸化剤を含む層の層数は、特に制限されない。また、塗工方式も特に制限されない。
【0069】
アクリル系粘弾性体層の作製の際に、前記作製方法を用いれば、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物を、光重合反応とレドックス重合反応とを併用して重合に付するため、最終的にはほぼ完全に重合させることができ、アクリル系粘弾性体層に残存する未反応単量体を、2500ppm以下、好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは1500ppm以下にすることができる。
【0070】
また、アクリル系粘弾性体層の最終重合率は97重量%以上とすることが好ましい。アクリル系粘弾性体層の重合率が97重量%未満であると未反応単量体が多くなり、粘着特性の低下や臭気の原因となる場合もある。なお、アクリル系粘弾性体層の重合率は、前記アクリル系モノマー部分重合組成物の重合率の算出方法と同様の方法により算出できる。
【0071】
さらに、アクリル系粘弾性体層の作製の際に前記作製方法を用いれば、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物を、光重合反応とレドックス重合反応とを併用して重合に付すため、光重合反応の際に用いる活性化エネルギー線の照射量を少なくしても、アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物を硬化させることができる。このため、活性エネルギーの照射時間を短縮することができるため、生産性の点でも有利である。例えば、アクリル系粘弾性体層の作製の際に活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、その照射量を、例えば500mJ/cm2以下、好ましくは300mJ/cm2以下、さらに好ましくは200mJ/cm2以下にすることができる。
【0072】
前記作製方法により得るアクリル系粘弾性体層が、積層構造を有する場合、その層数は特に制限されないが、通常、生産性や設備の簡便性等の観点から、2層や3層が好ましい。
【0073】
2層構造のアクリル系粘弾性体層は、前記作製方法を用いて、例えば、以下のようにして作製することができる。還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層と酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層との2層の積層構造を形成してから、該2層の界面において、レドックス重合反応と光重合反応との併用により、該2層を硬化させてアクリル系粘弾性体層を形成することにより2層構造のアクリル系粘弾性体層を得ることができる。
【0074】
さらに、2層構造のアクリル系粘弾性体層は、還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物に活性エネルギー線を照射して部分硬化させることによって得られる還元剤含有光重合性アクリル系モノマー部分重合組成物からなる層と、酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物に活性エネルギー線を照射して部分硬化させることによって得られる酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー部分重合組成物からなる層とを積層して、該2層の界面でのレドックス重合反応により、該2層をさらに硬化させてアクリル系粘弾性体層を形成することでも得ることができる。
【0075】
3層構造のアクリル系粘弾性体層は、前記作製方法を用いて、例えば、以下のようにして作製することができる。酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層の両面に還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層が設けられている構成、又は還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層の両面に酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層が設けられている構成の3層の積層体を形成してから、該3層での界面でのレドックス重合反応と光重合反応との併用により、該3層を硬化させてアクリル系粘弾性体層を形成することにより3層構造のアクリル系粘弾性体層を得ることができる。
【0076】
さらに、3層構造のアクリル系粘弾性体層は、還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物に活性エネルギー線を照射して部分硬化させることによって得られる還元剤含有光重合性アクリル系モノマー部分重合組成物からなる層の両面に、酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物に活性エネルギー線を照射して部分硬化させることによって得られる酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー部分重合組成物からなる層を積層して、又は酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物に活性エネルギー線を照射して部分硬化させることによって得られる酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー部分重合組成物からなる層の両面に、還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物に活性エネルギー線を照射して部分硬化させることによって得られる還元剤含有光重合性アクリル系モノマー部分重合組成物からなる層を積層して、該3層との界面でのレドックス重合反応により、該3層をさらに硬化させてアクリル系粘弾性体層を形成することでも得ることができる。
【0077】
さらにまた、3層構造のアクリル系粘弾性体層は、前記2層構造のアクリル系粘弾性体層を得てから、前記2層構造のアクリル系粘弾性体層の酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物から得られる層と接する形態で還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層を設けて、又は前記2層構造のアクリル系粘弾性体層の還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物から得られる層と接する形態で酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層を設けて、新たに設けた、還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層又は酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層を、層界面でのレドックス重合反応により、又は層界面でのレドックス重合反応と光重合反応との併用により、硬化させてアクリル系粘弾性体層を形成することでも得ることができる。
【0078】
アクリル系粘弾性体層の厚さ(アクリル系粘弾性体層が積層構造を有する場合、アクリル系粘弾性体層全体の厚さ)は、特に制限されないが、良好な接着強度を確保するため、10μm〜3mm(好ましくは20μm〜2mm、より好ましくは30μm〜1mm)の範囲から選択される。
【0079】
なお、アクリル系粘弾性体層が積層構造を有する場合、それぞれの層の厚さは特に制限されないが、上記全体の厚さを超えない範囲内で、例えば3μm〜2mm程度(好ましくは5μm〜1mm程度)である。また、アクリル系粘弾性体層が積層構造を有する場合におけるそれぞれの層の厚さは、全て同じであってもよいし、一部が同じであってもよいし、全て異なっていてもよい。
【0080】
還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層と、酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層との界面でのレドックス重合反応及び光重合反応の併用としては、具体的には、例えば、還元剤を含む層(還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物からなる層、還元剤含有光重合性アクリル系モノマー部分重合組成物からなる層)と酸化剤を含む層(酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物からなる層、酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー部分重合組成物からなる層)とを積層させることによって還元剤を含む層と酸化剤を含む層との界面でレドックス反応を生じさせつつ、あるいはレドックス重合反応終了後に、波長300〜400nmにおける照度が1〜200mW/cm2である紫外線を、光量50〜4000mJ/cm2程度照射して光重合反応を生じさせて、さらに必要に応じて室温(25℃付近)で1日放置することや、活性エネルギー線を照射して部分硬化した還元剤含有光重合性アクリル系モノマー部分重合組成物からなる層と活性エネルギー線を照射して部分硬化した酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー部分重合組成物からなる層とを積層させることによって、還元剤含有光重合性アクリル系モノマー部分重合組成物からなる層と酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー部分重合組成物からなる層との界面でレドックス重合反応を生じさせて、さらに必要に応じて室温(25℃付近)で1日放置することなどが挙げられる。
【0081】
所定の面上における還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層や酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層の形成は、所定の面上に還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物や酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物を所望の厚さになるように塗工することにより、あるいは剥離ライナーの剥離処理面などの剥離性を有する面に還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物や酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物を所望の厚さになるように塗工して得た還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層や酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層を転写することにより行う。
【0082】
還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物や酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物などのアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物の塗工方式は、特に制限されず、例えばロールコーター、バーコーター、ダイコーターなど公知の適宜な方法を用いることができる。
【0083】
このような剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙などを使用できる。具体的には、剥離ライナーとしては、例えば、剥離処理剤による剥離処理層を少なくとも一方の表面に有する基材の他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂など)からなる低接着性基材などを用いることができる。なお、剥離ライナーは、基材の片面又は両面に、粘着層としての前記アクリル系粘弾性体層を有する粘着テープ又はシートの基材として用いることも可能である。
【0084】
剥離ライナーとしては、例えば、剥離ライナー用基材の少なくとも一方の面に剥離処理層が形成されている剥離ライナーを好適に用いることができる。このような剥離ライナー用基材としては、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、オレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルムなどのプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)や、紙類(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙など)の他、これらを、ラミネートや共押し出しなどにより、複層化したもの(2〜3層の複合体)等が挙げられる。
【0085】
一方、剥離処理層を構成する剥離処理剤としては、特に制限されず、例えば、シリコーン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤などを用いることができる。剥離処理剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0086】
なお、上記剥離ライナーの厚さや、形成方法などは特に制限されない。
【0087】
前記作製方法により得られるアクリル系粘弾性体層は、作製の際に、活性エネルギー線の照射による光重合反応、及び酸化剤と還元剤との作用による酸化還元反応による重合反応を併用するので、粘弾性特性や、アクリル系粘弾性体層を粘着層として用いる場合における粘着特性に、影響を与えることなく、粘弾性体層中に残存する未反応単量体量を減少させることができる。さらに、活性エネルギー線の照射量を減少させても、還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物や酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物を硬化させてアクリル系粘弾性体層を得ることができるので、活性エネルギー線の照射時間を減らすことができ、生産性の点でも有利である。なお、レドックス重合反応は、通常、室温(25℃)の条件下では一日程度で完了するため、アクリル系粘弾性体層の保存条件に何ら影響を与えることはなく、また実質上生産性の悪化を招くことはない。
【0088】
該アクリル系粘弾性体層は、粘着用途(粘着層)やシーリング用途(シーリング層)に用いることができ、また基材としても用いることができる。
【0089】
(粘着テープ又はシート)
前記アクリル系粘弾性体層は、粘着テープ又はシート(「テープ又はシート」を単に「テープ」あるいは「シート」と称する場合がある)の粘着層として用いることができる。粘着層として前記アクリル系粘弾性体層を有する粘着シートは、粘着層としてのアクリル系粘弾性体層のみから形成された構成の基材レス粘着シートであってもよく、基材の少なくとも一方の面に粘着層としてのアクリル系粘弾性体層が形成された構成の基材付き粘着シートであってもよい。また、粘着層としてのアクリル系粘弾性体層を有する粘着シートでは接着面(粘着面)を保護するために、剥離ライナーが用いられていてもよい。なお、剥離ライナーは、該剥離ライナーにより保護されている接着面を利用する際に剥がされる。
【0090】
粘着層としてのアクリル系粘弾性体層を有する粘着シートが、基材を持たない粘着シート(「基材レス粘着シート」と称される場合がある)である場合、該粘着シートは、粘着層としてのアクリル系粘弾性体層のみから構成されるため、両面粘着シートとして用いることができる。粘着層としてのアクリル系粘弾性体層を有する基材レス粘着シートは、例えば剥離ライナーの剥離処理面上に粘着層としての前記アクリル系粘弾性体層を形成することにより得ることができる。
【0091】
粘着層としてのアクリル系粘弾性体層を有する粘着シートが、基材付き粘着シートである場合、該粘着シートは、片面粘着シートあるいは両面粘着シートとして用いることができる。粘着層としてのアクリル系粘弾性体層を有する粘着シートが基材付き片面粘着シートである場合、該粘着シートは、基材の片面に粘着層としてのアクリル系粘弾性体層を形成することにより得ることができる。また、粘着層としてのアクリル系粘弾性体層を有する粘着シートが基材付き両面粘着シートである場合、該粘着シートは、基材の両面に粘着層としてのアクリル系粘弾性体層を形成することや、基材の一方の面に粘着層としてのアクリル系粘弾性体層を形成して、基材の他方の面にその他の粘着層を形成することにより得ることができる。なお、その他の粘着層の厚みは、特に制限されず、目的や使用方法などに応じて適宜選択することができる。
【0092】
なお、その他の粘着層を形成する粘着剤としては、公知の粘着剤(感圧性接着剤)(例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤など)から適宜選択することができる。このような粘着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
粘着層としてのアクリル系粘弾性体層を有する粘着シートは、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シートが積層された形態で形成されていてもよい。すなわち、粘着層としてのアクリル系粘弾性体層を有する粘着シートは、シート状、テープ状などの形態を有することができる。なお、ロール状に巻回された状態又は形態の粘着シートとしては、粘着面を剥離ライナーにより保護した状態でロール状に巻回された状態又は形態を有していてもよく、粘着面を基材(支持体)の他方の面に形成された剥離処理層(背面処理層)により保護した状態でロール状に巻回された状態又は形態を有していてもよい。なお、基材(支持体)の面に剥離処理層(背面処理層)を形成させる際に用いられる剥離処理剤(剥離剤)としては、例えば、シリコーン系剥離剤や長鎖アルキル系剥離剤などが挙げられる。
【0094】
なお、粘着シートは、基材の両面に離型処理が施された一枚の剥離ライナーのみにより、粘着面が保護された構成を有するシングルセパレータタイプであってもよく、剥離ライナー用基材の少なくとも一方の面に離型処理が施された二枚の剥離ライナーにより、粘着面が保護された構成を有するダブルセパレータタイプであってもよい。
【0095】
基材としては、粘着テープ又はシート用の基材として公知の基材から適宜選択して用いることができる。具体的には、基材としては、特に制限されず、例えばプラスチック系基材(例えばプラスチックフィルムやシートなどのプラスチック系基材)、金属系基材(例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔などの金属箔や金属板など)、多孔質基材(例えば、布、不織布、ネット、アラミド繊維による繊維系基材;和紙、薄葉紙、洋紙、上質紙、グラシン紙、クラフト紙、クルパック紙、クレープ紙、クレーコート紙、トップコート紙、合成紙、混抄紙、複合紙などの紙系基材等の薄葉体)、発泡シートなどの発泡体を用いることができる。中でも、作業性等の点から、プラスチック系基材が好ましい。
【0096】
プラスチック系基材の素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。これらの素材は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0097】
プラスチック系基材は、延伸処理等により伸び率などの変形性を制御していてもよい。
【0098】
基材の表面は、アクリル系粘弾性体層等との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン曝露、火炎曝露、高圧電撃曝露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよい。また、下塗り剤や剥離剤等によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0099】
基材の厚みは、特に制限されないが、強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択でき、例えば、10〜100μm(好ましくは20〜50μm)程度である。なお、基材は単層、積層の何れの形態を有していてもよい。
【0100】
(被着体)
粘着層としてのアクリル系粘弾性体層や粘着層としてのアクリル系粘弾性体層を有する粘着シートは、適用される被着体について特に制限されないが、例えばポリエステル、ポリスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の各種樹脂、また鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、及びこれらの合金等の各種金属などを素材とする被着体に対して好ましく適用される。
【実施例】
【0101】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0102】
(光重合性シロップ組成物の調製例)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):90重量部、及び極性基を有するビニルモノマーとしてのアクリル酸(AA):10重量部からなるモノマー混合液に、光重合開始剤としての2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製):0.05重量部、及び重合開始剤としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.05重量部を加えた。次いで、該光重合開始剤を加えたモノマー混合液を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下、紫外線に曝露して部分的に光重合させることにより(重合率7.0%)、分子量(重量平均分子量)が500万のプレポリマーを含む光重合性シロップ組成物(「光重合性シロップ組成物(A)と称する場合がある」)を得た。
【0103】
(還元剤含有光重合性シロップ組成物の調製例)
光重合性シロップ組成物(A):100重量部に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)(新中村化学工業社製):0.08重量部、還元剤含有溶液[バナジルアセチルアセトナート(VAA)(新興化学工業社製):0.02重量部をアクリル酸0.98重量部に溶解した溶液]を1.0重量部、ガラスバルーン(Z27)(商品名「CELSTAR Z27」、東海工業社製、平均粒子径:45μm、比重:0.27):9.5重量部、及び所定量の着色物質(DN101)(商品名「AT−DN101」大日精化工業社製の顔料)を加えて均一に混合し、脱泡処理することで還元剤含有光重合性シロップ組成物(「還元剤含有光重合性シロップ組成物(A)と称する場合がある」)を得た。
【0104】
(酸化剤含有光重合性シロップ組成物の調製例)
光重合性シロップ組成物(A):100重量部に、クメンハイドロパーオキサイド(PCH)(商品名「パークミルH」日本油脂社製):0.2重量部、ガラスバルーン(Z27)(東海工業社製):9.5重量部、及び所定量の着色物質(DN101)(大日精化工業社製)を加えて均一に混合し、脱泡処理することで酸化剤含有光重合性シロップ組成物(「酸化剤含有光重合性シロップ組成物(A)と称する場合がある」)を得た。
【0105】
(剥離ライナーの使用例)
剥離ライナーとして、一方の面に剥離処理面を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm、商品名「MRF−38」三菱化学ポリエステル社製)を使用した。
【0106】
(紫外線照射量の調整)
紫外線照射量は、紫外線強度計(商品名「UVRT−1」トプコンテクノハウス社製、ピーク感度最大波350nm)を用いて調整した。
【0107】
(実施例1〜3)
還元剤含有光重合性シロップ組成物(A)に、還元剤含有光重合性シロップ組成物(A)中の光重合性シロップ組成物(A):100重量部に対して着色物質(DN101)(大日精化工業社製):0.2重量部を含有させ、前記剥離ライナーの剥離処理された面上に、硬化後の厚さが400μmとなるように着色物質を含有させた還元剤含有光重合性シロップ組成物(A)を塗布して、還元剤含有光重合性シロップ組成物層を有するシートを作製した。
また、酸化剤含有光重合性シロップ組成物(A)に、酸化剤含有光重合性シロップ組成物(A)中の光重合性シロップ組成物(A):100重量部に対して着色物質(DN101)(大日精化工業社製):0.2重量部を含有させ、前記剥離ライナーの剥離処理された面上に、硬化後の厚さが400μmとなるように着色物質を含有させた酸化剤含有光重合性シロップ組成物(A)を塗布して、酸化剤含有光重合性シロップ組成物層を有するシートを作製した。
次いで、還元剤含有光重合性シロップ組成物層を有するシートと酸化剤含有光重合性シロップ組成物層を有するシートとを、還元剤含有光重合性シロップ組成物層と酸化剤含有光重合性シロップ組成物層とが接する形態で貼り合わせた後、すぐに、ブラックライトを用いて照度:5mW/cm2の紫外線を下記表1の割合で所定量照射し、さらにメタルハイドランプを用いて照度:5mW/cm2の紫外線を下記表1の割合で所定量照射して、実施例1〜3のアクリル系粘弾性体からなる粘着層を有するシートを得た。
【0108】
(実施例4〜6)
還元剤含有光重合性シロップ組成物(A)に、還元剤含有光重合性シロップ組成物(A)中の光重合性シロップ組成物(A):100重量部に対して着色物質(DN101)(大日精化工業社製):0.5重量部含有させ、前記剥離ライナーの剥離処理された面上に、硬化後の厚さが400μmとなるように着色物質を含有させた還元剤含有光重合性シロップ組成物(A)を塗布して、還元剤含有光重合性シロップ組成物層を有するシートを作製した。
また、酸化剤含有光重合性シロップ組成物(A)に、酸化剤含有光重合性シロップ組成物(A)中の光重合性シロップ組成物(A):100重量部に対して着色物質(DN101)(大日精化工業社製):0.5重量部を含有させ、前記剥離ライナーの剥離処理された面上に、硬化後の厚さが400μmとなるように着色物質を含有させた酸化剤含有光重合性シロップ組成物(A)を塗布して、酸化剤含有光重合性シロップ組成物層を有するシートを作製した。
次いで、還元剤含有光重合性シロップ組成物層を有するシートと酸化剤含有光重合性シロップ組成物層を有するシートとを、還元剤含有光重合性シロップ組成物層と酸化剤含有光重合性シロップ組成物層とが接する形態で貼り合わせた後、すぐに、ブラックライトを用いて照度:5mW/cm2の紫外線を下記表1の割合で所定量照射し、さらにメタルハイドランプを用いて照度:5mW/cm2の紫外線を下記表1の割合で所定量照射して、実施例4〜6のアクリル系粘弾性体からなる粘着層を有するシートを得た。
【0109】
(比較例1〜3)
還元剤含有光重合性シロップ組成物(A)に、還元剤含有光重合性シロップ組成物(A)中の光重合性シロップ組成物(A):100重量部に対して着色物質(DN101)(大日精化工業社製):0.05重量部を含有させ、前記剥離ライナーの剥離処理された面上に、硬化後の厚さが400μmとなるように着色物質を含有させた還元剤含有光重合性シロップ組成物(A)を塗布して、還元剤含有光重合性シロップ組成物層を有するシートを作製した。
また、酸化剤含有光重合性シロップ組成物(A)に、酸化剤含有光重合性シロップ組成物(A)中の光重合性シロップ組成物(A):100重量部に対して着色物質(DN101)(大日精化工業社製):0.05重量部を含有させ、前記剥離ライナーの剥離処理された面上に、硬化後の厚さが400μmとなるように着色物質を含有させた酸化剤含有光重合性シロップ組成物(A)を塗布して、酸化剤含有光重合性シロップ組成物層を有するシートを作製した。
次いで、還元剤含有光重合性シロップ組成物層を有するシートと酸化剤含有光重合性シロップ組成物層を有するシートとを、還元剤含有光重合性シロップ組成物層と酸化剤含有光重合性シロップ組成物層とが接する形態で貼り合わせた後、すぐに、ブラックライトを用いて照度:5mW/cm2の紫外線を下記表1の割合で所定量照射し、さらにメタルハイドランプを用いて照度:5mW/cm2の紫外線を下記表1の割合で所定量照射して、比較例1〜3のアクリル系粘弾性体からなる粘着層を有するシートを得た。
【0110】
(比較例4〜6)
光重合性シロップ組成物(A):100重量部に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)(新中村化学工業社製):0.08重量部、及びガラスバルーン(Z27)(東海工業社製):9.5重量部を加えて均一に混合し、脱泡処理することで光重合性粘着剤組成物(「光重合性粘着剤組成物(A)と称する場合がある」)を得た。
次いで、光重合性粘着剤組成物(A)に、光重合性粘着剤組成物(A)中の光重合性シロップ組成物(A):100重量部に対して着色物質(DN101)(大日精化工業社製):0.05重量部を含有させ、前記剥離ライナーの剥離処理された面上に、硬化後の厚さが800μmとなるように着色物質を含有させた光重合性粘着剤組成物(A)を塗布して、さらにその上に剥離ライナーとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを被せ、光重合性粘着剤組成物を有するシートを作製した。
次いで、光重合製粘着剤組成物を有するシートを、すぐに、ブラックライトを用いて照度:5mW/cm2の紫外線を下記表2の割合で所定量照射し、さらにメタルハイドランプを用いて照度:5mW/cm2の紫外線を下記表2の割合で所定量照射して、比較例4〜6のアクリル系粘弾性体からなる粘着層を有するシートを得た。
【0111】
(比較例7〜9)
光重合性粘着剤組成物(A)に、光重合性粘着剤組成物(A)中の光重合性シロップ組成物(A):100重量部に対して着色物質(DN101)(大日精化工業社製):0.2重量部を含有させ、前記剥離ライナーの剥離処理された面上に、硬化後の厚さが800μmとなるように着色物質を含有させた光重合性粘着剤組成物(A)を塗布して、さらにその上に剥離ライナーとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを被せ、光重合性粘着剤組成物を有するシートを作製した。
次いで、光重合製粘着剤組成物を有するシートを、すぐに、ブラックライトを用いて照度:5mW/cm2の紫外線を下記表2の割合で所定量照射し、さらにメタルハイドランプを用いて照度:5mW/cm2の紫外線を下記表2の割合で所定量照射して、比較例7〜9のアクリル系粘弾性体からなる粘着層を有するシートを得た。
【0112】
(比較例10〜12)
光重合性粘着剤組成物(A)に光重合性シロップ組成物(A):100重量部に対して着色物質(DN101)(大日精化工業社製):0.5重量部を含有させ、前記剥離ライナーの剥離処理された面上に、硬化後の厚さが800μmとなるように着色物質を含有させた光重合性粘着剤組成物(A)を塗布して、さらにその上に剥離ライナーとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを被せ、光重合性粘着剤組成物を有するシートを作製した。
前記剥離ライナーの剥離処理された面上に、硬化後の厚さが800μmとなるようにアクリル系弾性体層の粘着剤組成物(A)を塗布して、さらにその上に剥離ライナーとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを被せ、光重合製粘着剤組成物を有するシートを作製した。
次いで、光重合製粘着剤組成物を有するシートを、すぐに、ブラックライトを用いて照度:5mW/cm2の紫外線を下記表2の割合で所定量照射し、さらにメタルハイドランプを用いて照度:5mW/cm2の紫外線を下記表2の割合で所定量照射して、比較例10〜12のアクリル系粘弾性体からなる粘着層を有するシートを得た。
【0113】
(評価)
実施例及び比較例について、下記(暗色度測定方法)、(重合率の測定方法)を用いて、暗色度、重合率を求めた。その結果を、表1、表2に示した。
また、実施例及び比較例について、下記(透過率及び反射率の測定方法)を用いて、透過率及び反射率を求めた。その結果を、図1に示した。
【0114】
(アクリル系粘弾性体の暗色度測定方法)
簡易方分光色差計(商品名「NF333」日本電色工業社製)により測定試料の暗色度を測定した。
【0115】
(重合率の測定方法)
所定量(0.1g程度)のアクリル系粘弾性体をサンプリングし、該サンプルを精秤し、その重さを(A)とした。該サンプルを130℃で2時間乾燥後、乾燥後のサンプルを精秤し、その重さを(B)とした。そして下記式から重合率を算出した。
重合率(%)=[(B)/(A)]×100
【0116】
(透過率及び反射率の測定方法)
紫外可視分光光度計(商品名「UV−2550」島津製作所製)により測定試料の透過率及び反射率を測定した。測定は積分球付属装置(商品名「ISR−2200」島津製作所製)を用い、測定範囲は250nm〜500nmの波長領域で行った。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】

【0119】
比較例1〜6で示したアクリル系粘弾性体の暗色度L*≒45であり、隠蔽性を満足するほどの暗色化はなされていない。また、比較例7〜12で示したアクリル系粘弾性体は、その暗色度L*が低くなるほど重合率は低下し、かつ照射される紫外線エネルギー量が少ないほど重合率が低下している。光重合反応の単独反応では、暗色度L*≒15の黒色粘弾性体を作製するためには、多大なエネルギーを要することとなり、生産性の悪化を招くことになる。
【0120】
実施例1〜6で示したアクリル系粘弾性体は、本発明の効果である活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を用いる光重合反応と酸化剤及び還元剤の作用によるレドックス重合反応との併用効果により、その暗色度L*及び 照射されるエネルギー量に関わらず、高い重合率を達成することができる。
【0121】
透過率及び反射率は、暗色度L*が低下するほど小さくなり、着色物質による吸収が起こっていることがわかる。従来技術では、この着色物質による紫外線の吸収により光重合開始剤の活性が阻害され、重合率の低下が引き起こされるが、本発明による効果により、透過率と反射率との合計値が30%以下であっても、低エネルギーで十分な重合率を達成することができる。
【0122】
以上から、活性エネルギー線による重合とレドックス反応による重合を併用することにより、従来技術では成し得ない十分な薄暗さを有するアクリル系粘弾性体層を提供することができる。また、活性エネルギー線としての紫外線の照射量を少なくしても、アクリル系粘弾性体層を得ることができたことから、低エネルギーで十分な重合率を達成することができ、このことは生産性の向上につながる。なお、実施例において、レドックス重合反応での硬化に要する時間は、還元剤含有光重合性シロップ組成物層を有するシートと酸化剤含有光重合性シロップ組成物層を有するシートを貼り合わせた直後から1日程度であるが、これは温度や湿度等の保存条件に何ら影響を受けないため、生産性の悪化を招くことはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を用いる光重合反応と、酸化剤及び還元剤の作用によるレドックス重合反応とを併用して、着色物質を含むアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物を重合に付して、暗色度L*が40以下のアクリル系粘弾性体層を得ることを特徴とするアクリル系粘弾性体層の製造方法。
【請求項2】
暗色度L*が40以下で且つ透過率と反射率とを合わせた値が30%以下であるアクリル系粘弾性体層を得る請求項1記載のアクリル系粘弾性体層の製造方法。
【請求項3】
活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤、酸化剤、還元剤及び着色物質を含むアクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物からなる層に、活性エネルギー線を照射して、光重合反応とレドックス重合反応とをともに進行させる工程を含む請求項1又は2記載のアクリル系粘弾性体層の製造方法。
【請求項4】
活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を含む還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物と、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を含む酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物とに対して、少なくとも一方に着色物質を含有させ、それぞれ個別に活性エネルギー線を照射して、光重合反応を進行させ、部分硬化した還元剤含有アクリル系ポリマー層と、部分硬化した酸化剤含有アクリル系ポリマー層とを形成する工程と、該2つの層を貼り合わせてレドックス重合反応を進行させる工程とを含む請求項1又は2記載のアクリル系粘弾性体層の製造方法。
【請求項5】
活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を含む還元剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物と、活性エネルギー線によって開裂する光重合開始剤を含む酸化剤含有光重合性アクリル系モノマー組成物又はその部分重合組成物とに対して、少なくとも一方に着色物質を含有させ、各組成物からなる層を貼り合わせて積層体とし、レドックス重合反応を進行させる工程と、前記積層体に活性エネルギー線を照射して、光重合反応を進行させる工程とを含む請求項1又は2記載のアクリル系粘弾性体層の製造方法。
【請求項6】
還元剤が、金属塩である請求項1〜5何れかの項に記載のアクリル系粘弾性体層の製造方法。
【請求項7】
酸化剤が、有機過酸化物である請求項1〜5何れかの項に記載のアクリル系粘弾性体層の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかの項に記載のアクリル系粘弾性体層の製造方法により得られる暗色度L*が40以下であるアクリル系粘弾性体層。
【請求項9】
粘着層として用いられる請求項8記載のアクリル系粘弾性体層。
【請求項10】
請求項8又は9記載のアクリル系粘弾性体層を構成するアクリル系粘弾性体。
【請求項11】
粘着層として、請求項9記載のアクリル系粘弾性体層を有する粘着テープ又はシート。
【請求項12】
基材の少なくとも一方の面に粘着層が設けられている構成を有する請求項11記載の粘着テープ又はシート。

【公開番号】特開2009−108274(P2009−108274A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284654(P2007−284654)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】