説明

光量制御装置及び光量制御方法

【課題】有機EL素子の発光量の低下を、センサ等を用いて直接モニタリングすることなく、発光量を一定に維持する光量制御装置及び光量制御方法を提供すること。
【解決手段】有機EL素子12と、有機EL素子12の累積発光時間に応じた有機EL素子12を発光させるための設定値を記憶したメモリ13と、有機EL素子12の累積発光時間を基に、メモリ13を参照して有機EL素子12に与える設定値を決定し、当該決定した設定値を有機EL素子12に与えるCPU11と、を有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、デジタル複写機、ファクシミリ等に用いられ、有機EL素子を用いて露光を行う露光装置において、有機EL素子への露光量を制御する光量制御装置及び光量制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子をプリントヘッドの露光装置として用いる場合(例えば特許文献1)、有機EL素子は発光量が累積発光時間に応じて著しく低下していき、有機EL素子の光量劣化が大きな課題であった。
【0003】
このため、有機EL素子の発光量低下に応じて、有機EL素子へ与える電流、もしくは電圧、もしくは電流のデューティ比、もしくは電圧のデューティ比の値を変えて発光量を一定に保つ必要がある。
【0004】
このとき、発光量そのものをモニタリングできれば、その出力値により発光量の低下を検知でき、発光量を一定に保つことができる。しかし、高効率、低コストを前提とした印刷装置ではモニタリングを実現することは困難であった。
【特許文献1】特開2003−94729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機EL素子の劣化による発光量の低下は、センサ等を用いて発光量を直接モニタリングする以外で検知する手段がなく、低コスト化を前提とした印刷装置では発光量を維持することが困難であった。ひいては有機EL素子を露光装置として用いるプリントヘッドにおいて、印字画像品質を均一に維持することが困難であった。
【0006】
本発明は、有機EL素子の発光量の低下を、センサ等を用いて直接モニタリングすることなく、発光量を一定に維持する光量制御装置及び光量制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、有機EL素子と、有機EL素子の累積発光時間に応じた有機EL素子を発光させるための設定値を記憶した記憶手段と、有機EL素子の累積発光時間を基に、記憶手段を参照して有機EL素子に与える設定値を決定し、当該決定した設定値を有機EL素子に与える制御手段と、を有する構成とした。
【0008】
これにより、有機EL素子の累積発光時間に応じて、有機EL素子を発光させるための設定値を変更することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、有機EL素子の発光量を、センサ等で直接モニタリングすることなく、簡易に光量制御することが可能となり、経時的に均一な有機EL素子の発光量が得られることになる。特に、本発明の光量制御装置を画像形成装置の露光装置として用いることにより、低コストで安定した画像形成装置の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本願の請求項1に係る発明は、有機EL素子と、有機EL素子の累積発光時間に応じた有機EL素子を発光させるための設定値を記憶した記憶手段と、有機EL素子の累積発光時間を基に、記憶手段を参照して有機EL素子に与える設定値を決定し、当該決定した設定値を有機EL素子に与える制御手段と、を有する構成とした。
【0011】
これにより、有機EL素子の累積発光時間に応じて、有機EL素子を発光させるための設定値を変更することができる。
【0012】
本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、設定値は、電流値、電圧値、電流のデューティ比、電圧のデューティ比のうち、少なくとも一つを含むものである構成とした。
【0013】
これにより、有機EL素子の累積発光時間に応じて、有機EL素子を発光させるための設定値を変更することができる。
【0014】
本願の請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、有機EL発光素子は、画像形成装置において、像担持体に静電潜像を形成する露光装置を構成するものである構成とした。
【0015】
これにより、有機EL素子の累積発光時間に応じて、有機EL素子を発光させるための設定値を変更することができると共に、露光装置を用いる画像形成装置において安定した品質の印刷を行うことができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0017】
(実施の形態1)
有機EL素子は、その累積発光時間に応じて発光輝度が低下していき、ある時を境に急激に発光輝度が低下しその寿命を迎える。寿命を迎えるまでの累積発光時間に対する発光輝度の奇跡は、どの素子においても大きな違いはなく、非常に類似した軌跡をたどる。
【0018】
本実施の形態では、上記の点に着目し、累積発光時間とその時の有機EL素子の最高輝度値とをセットとし、異なる累積発光時間の場合において、幾つかメモリに情報を蓄積しておくことで、有機EL素子の劣化情報を検知することができ、また、累積発光時間に応じて、有機EL素子へ与える電流、もしくは電圧、もしくは電流のデューティ比、もしくは電圧のデューティ比の値を変えることにより、発光量を一定に保ち、印字画像品質を一定に保つようにする。
【0019】
以下に詳しく説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態1における光量制御装置の構成を示すブロック図である。
【0021】
図1において、CPU11は、有機EL素子12へ駆動信号Sig1を与える。有機EL素子12の輝度値は駆動信号Sig1に応じて変動するように構成されている。
【0022】
また、図1では、1つの有機EL素子12と、有機EL素子12に与える1つの駆動信号Sig1が記載されているが、有機EL素子12と駆動信号Sig1が同数セットで存在すればよく、それぞれ1つに限定されるものではない。
【0023】
13は、CPU11がプログラムを実行する際、必要な情報を格納しておくメモリである。図1ではCPU11の内部メモリの形態を示しているが、この形態に限定されるものではなく、CPU11の外部にあっても構わない。
【0024】
なお、図1に示す光量制御装置は、実用的には画像形成装置において、像担持体に静電潜像を形成する露光装置等に用いられると効果的である。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態1における光量補正の流れを説明するフローチャートである。
【0026】
図2において、累積発光時間対有機EL素子12の輝度値の関係を計測し(ステップ21)、有機EL素子12へ与える電流値を決定する(ステップ22)。
【0027】
次に、ステップ22で決定した電流値をCPU11のメモリ13に格納する(ステップ23)。CPU11は、有機EL素子12を発光させる際、それまでの累積発光時間を基にメモリ13を参照し、有機EL素子12へ与える電流値を決定し、駆動信号Sig1にセットする。
【0028】
図3は、本発明の実施の形態1における有機EL素子の累積発光時間と輝度値との関係を示す図であり、図2のステップ21の結果を可視化したものである。
【0029】
図3に示すように、有機EL素子12の最高輝度値は、累積発光時間の増加と共に、始めは大きく落ち込むが、その後は安定した最高輝度値を維持し、寿命が近づいてくると最高輝度値が大きく落ち込む。
【0030】
図4は、本発明の実施の形態1における有機EL素子の累積発光時間と電流値との関係を示す図であり、図2のステップ22の結果を可視化したものである。
【0031】
図4に示すように、図3に示した有機EL素子12の累積発光時間と輝度値との関係を示すデータを基にして、有機EL素子12の累積発光時間に応じて、輝度を一定に保つために必要な電流値との関係を予め決定しておく。
【0032】
図5は、本発明の実施の形態1における光量制御装置の動作フローチャートであり、有機EL素子12を駆動する際のCPU11の動作について示したものである。
【0033】
図5において、CPU11はCPU11内のメモリ13を参照しながら、またすべての有機EL素子12のその時点での累積発光時間を把握しておき、駆動信号Sig1を以下のように決定する。
【0034】
駆動信号Sig1を有機EL素子12に与える際に、その時点での累積発光時間が10時間以内であるかどうかを判別する(ステップ41)。判別結果が、累積発光時間が10時間未満である場合、駆動信号Sig1に50[μA]をセットする(ステップ42)。
【0035】
ステップ41の判別結果が、累積発光時間が10時間以上である場合は、続いて累積発光時間が60時間未満であるかどうかの判別を行う(ステップ43)。判別結果が、累積発光時間が60時間未満である場合、駆動信号Sig1に55[μA]をセットする(ステップ44)。
【0036】
ステップ43の判別結果が、累積発光時間が60時間以上である場合は、続いて累積発光時間が110時間未満であるかどうかの判別を行う(ステップ45)。判別結果が、累積発光時間が110時間未満である場合、駆動信号Sig1に65[μA]をセットする(ステップ46)。
【0037】
ステップ45の判別結果が、累積発光時間が110時間以上である場合は、続いて累積発光時間が160時間未満であるかどうかの判別を行う(ステップ47)。判別結果が、累積発光時間が160時間未満である場合、駆動信号Sig1に85[μA]をセットする(ステップ48)。
【0038】
ステップ47の判別結果が、累積発光時間が160時間以上である場合は、駆動信号Sig1に100[μA]をセットする(ステップ49)。続いて、累積発光時間が190時間未満であるかどうかを判別し(ステップ50)、190時間以上であれば有機EL素子12の寿命が近いことを通知する(ステップ51)。
【0039】
以上のように、あらかじめ有機EL素子12の累積発光時間対有機EL素子12へ与える電流値の関係を作成しておくことで、有機EL素子12が劣化することによる光量の低下を防ぎ、素子寿命に近づくまで光量を一定に保つことができる。その結果、プリントヘッドの印字品質を保つことができる。
【0040】
なお、本実施の形態において、有機EL素子12を駆動するために電流値をSig1に設定したが、電流値に限定されるものではなく、電圧値、また電圧のデューティ比を変えたPWM信号、また電流のデューティ比を変えたPWM信号等を設定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る光量制御装置は、有機EL素子の累積発光時間に応じて、有機EL素子を発光させるための設定値を変更することができるので、露光装置として用いることにより安定した印字品質を得る画像形成装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態1における光量制御装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における光量補正の流れを説明するフローチャート
【図3】本発明の実施の形態1における有機EL素子の累積発光時間と輝度値との関係を示す図
【図4】本発明の実施の形態1における有機EL素子の累積発光時間と電流値との関係を示す図
【図5】本発明の実施の形態1における光量制御装置の動作フローチャート
【符号の説明】
【0043】
11 CPU
12 有機EL素子
13 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL発光素子と、
前記有機EL素子の累積発光時間に応じた前記有機EL素子を発光させるための設定値を記憶した記憶手段と、
有機EL素子の累積発光時間を基に、前記記憶手段を参照して前記有機EL素子に与える設定値を決定し、当該決定した設定値を前記有機EL素子に与える制御手段と、を有することを特徴とする光量制御装置。
【請求項2】
前記設定値は、電流値、電圧値、電流のデューティ比、電圧のデューティ比のうち、少なくとも一つを含むものであることを特徴とする請求項1記載の光量制御装置。
【請求項3】
前記有機EL発光素子は、画像形成装置において、像担持体に静電潜像を形成する露光装置を構成するものであることを特徴とする請求項1記載の光量制御装置。
【請求項4】
有機EL素子の累積発光時間と輝度値との関係を計測し、前記有機EL素子の累積発光時間に応じた前記有機EL素子を発光させるための設定値を記憶させるステップと、
前記有機EL素子の累積発光時間を基に、前記記憶手段を参照して前記有機EL素子に与える設定値を決定するステップと、
決定した設定値を前記有機EL素子に与えるステップと、を有することを特徴とする光量制御方法。
【請求項5】
前記設定値は、電流値、電圧値、電流のデューティ比、電圧のデューティ比のうち、少なくとも一つを含むものであることを特徴とする請求項4記載の光量制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−50595(P2007−50595A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237173(P2005−237173)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】