説明

光電センサ

【課題】 信号に含まれるノイズ成分を抑圧して、検出精度に優れる光電センサを提供することを目的とする。
【解決手段】 光電センサ10は投光部11、受光部20、差動増幅回路30、信号処理部40等を備える。信号処理部40は、差動増幅回路30から出力された差動信号Saを増幅し、同信号に含まれるノイズ成分を除去するものであるが、これをバンドパスフィルタ回路41、整流回路43、ローパスフィルタ回路45から構成している。バンドパスフィルタ回路では、主として外乱光に起因するノイズ成分が除去される。その後、バンドパスフィルタ回路41から出力された差動信号Sbは整流回路43で整流される。整流信号Seは、ローパスフィルタ回路45に入力される。このように、整流回路43で信号成分を直流成分に変えた後に、ローパスフィルタ回路45に入力させているから、信号成分それ自体を抑圧させることなく、ノイズ成分だけを抑圧出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被検出体までの距離を光学的手段により測定する光電センサが広く知られている。センサの構成について簡単に説明すると、係る光電センサは、被検出体に光を投光するための投光素子と、被検出体で反射された光を受光する受光面を有する一次元位置検出素子と、減算手段とを備える。検出素子からは、第一信号並びに第二信号(検出信号)がそれぞれ出力されるが、各信号のレベルは受光面上の受光点に応じて変化する。そのため、減算手段によって両信号の差分を算出し、そのレベルから受光点の位置、ひいては被検出体までの距離を算出することが出来る(例えば、特許文献1)。
【0003】
この種の光電センサにおいては、測定精度の向上が要望されるが、それには、信号中に含まれるノイズ成分を除去する必要がある。信号中に含まれるノイズ成分には、外乱光に起因(例えば、高周波点灯されるインバータ方式の蛍光灯など)するものがあるが、外乱光に起因するノイズ成分を除去するには、例えば、投光素子を外乱光の周波数帯域より更に、高周波のバースト信号によって駆動させることが考えられる。すなわち、投光素子を高周波のバースト信号によって駆動すれば、検出素子から出力された信号、ひいては減算後の信号も、高周波の信号となるから、検出素子から出力された信号をフィルタにかけて外乱光の周波数帯域より更に、高い周波数成分だけを取り出すことで外乱光の成分を抑圧することが出来る(この種の技術は、例えば、特許文献2において、すでに開示されている)。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−178609号公報
【特許文献2】特開昭59−139518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、フィルタをかけることで、外乱光に起因するノイズ成分を抑圧できるが、信号に含まれるノイズ成分には外乱光に起因するものの他に、電源側或いは回路の自己ノイズによるものがある。これらのノイズ成分は一般にあらゆる周波数帯域に均等に現れるから、フィルタを通過した後の信号中にも、依然として電源側、或いは回路の自己ノイズが残った状態にある。
そこで、電源側或いは、回路の自己ノイズを除去するべく、前述のフィルタを通過した信号を、更に、阻止域にバースト波の周波数帯域を含む別のフィルタにかけることが考えられる。
【0006】
しかし、フィルタにかけられる信号は交流波形の信号(検出素子から出力される検出信号は、理想的にはパルス波形の信号であるが、回路中に含まれるコンデンサ等の影響により交流波形の信号となる)であるから、係る交流信号を、阻止域にバースト波の周波数帯域を含むフィルタにかけると、回路の自己ノイズ等とともに、交流信号(検出信号)の信号レベルそれ自体が小さくなってしまうという、問題があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、信号に含まれるノイズ成分を抑圧して、検出精度に優れる光電センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、投光手段と、投光信号を生成して前記投光手段を点灯制御する投光駆動回路と、前記投光手段から投光され被検出物で反射された光を受光し、その受光位置に応じたレベルの第一受光信号、第二受光信号をそれぞれ出力する一次元位置検出素子と、前記第一、第二受光信号がそれぞれ入力されて、両信号のレベル差に応じた差動信号を出力する差動回路と、前記差動回路から出力される交流波形の差動信号のノイズ成分を除去するべく信号処理するアナログ信号処理回路とを備え、前記アナログ信号処理回路から出力される出力信号に基づいて、前記被検出体物まで距離を検出する光電センサであって、前記投光駆動回路は、複数のパルスからなるパルス群が間欠的に連続する信号により投光信号を生成し、前記アナログ信号処理回路は第一のフィルタ回路と、分別回路と、第二のフィルタ回路から構成され、前記第一のフィルタ回路は、前記差動回路の出力から、前記パルスの周波数帯域より低い周波数帯域のノイズ成分を少なくとも除去する回路あり、前記分別回路は、前記投光信号を構成するパルスと同じ周期のクロック信号が入力される信号入力部を有し、前記第一のフィルタ回路から出力される交流波形の差動信号を前記クロック信号に基づいて信号処理して、前記投光信号のパルスON期間と対応する部分の極性(差動信号の極性)と同極性の信号のみの信号として出力する回路であり、前記第二のフィルタ回路は、前記分別回路の出力から前記パルスの周波数帯域を含む高周波帯域のノイズ成分を除去する回路であるところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記分別回路は、前記差動信号のうちの、前記投光信号のパルスOFF期間と対応する部分については、信号の極性を正負反転させて出力させる回路であるところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記分別回路は、前記第一のフィルタ回路から出力される交流信号と前記クロック信号とを極性も含めて掛け算処理するアナログ掛け算回路であるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
請求項1の発明によれば、差動回路からは交流波形の差動信号が出力されるが、第一のフィルタ回路により差動信号に含まれるノイズ成分のうち、パルスの周波数帯域より低い周波数帯域のノイズ成分(外乱光成分)を抑圧出来る。第一のフィルタにかけられた後の差動信号は、パルスと同じ高周波の交流信号に、それと同じ高周波成分のノイズが乗った状態にあるが、差動信号は分別回路で信号処理されて、投光信号のパルスON期間と対応する部分の極性と同極性の信号のみの信号、すなわち、直流に近い低周波の信号にかえられて出力される。そのため、分別回路から出力された信号は次の第二のフィルタ回路で再びフィルタ処理されるが、このときには、信号の主成分(直流に近い低周波成分)を抑圧することなく、高周波帯域のノイズ成分(回路の自己ノイズ)だけを抑圧出来る。このように、差動信号の信号成分を抑圧することなく、ノイズ成分(外乱光、自己ノイズ)を除去できるから、検出精度が高まる。
【0011】
<請求項2の発明>
差動信号から、投光信号のパルスON期間と対応する部分の極性と同極性の信号のみを取り出すには、例えば、パルスOFF期間については、出力させないことが考えられるが、この場合には、信号の主成分(直流に近い低周波成分)のレベルが低くなってしまう。この点に関して、請求項2の発明によれば、差動信号のうちの、前記投光信号のパルスOFF期間と対応する部分については、信号の極性を正負反転させて出力させるので、信号の主成分(直流に近い低周波成分)のレベルが低くなることがなく、これにより、S/N比も高くなる。
【0012】
<請求項3の発明>
アナログ掛け算回路は汎用のものであるので、これを用いて分別回路を構成すれば、回路を比較的低コストに構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図6によって説明する。
本実施形態の光電センサ10は、被検出体Wの距離の変位を三角法に基づいて測定するものであり、図1には、その検出原理が示されている。同図に示すように、光電センサ10は、被検出体Wに向けて光を出射する投光部11と、その反射光を受光する受光部20を備える。そして、被検出体Wが図1における水平方向に変位すると、受光部20に対する光の入光位置が変化するので、その変化量を捉えることで、被検出体Wの距離の変位を測定することが出来る。
【0014】
図2は、光電センサの電気的構成を示すブロック図である。同図に示すように、光電センサ10は、大まかには、投光部11、受光部20、差動増幅回路(本発明の差動回路に相当)30、信号処理部(本発明のアナログ信号理回路に相当)40、判定部60を備える。
【0015】
投光部11は、投光素子(例えば、発光ダイオードであって、本発明の投光手段に相当)13と、これを駆動させるための投光駆動回路15からなる。投光駆動回路15は、内部に基準クロック発生回路17と、バースト波生成回路16とを備える。
【0016】
基準クロック発生回路17は、図3の(a)に示す基準クロック信号(本発明のクロック信号に相当)CKを発生させるものである。バースト波生成回路は、図3の(b)に示すように、基準クロック信号CKと同期したタイミングで間欠的にON、OFFするパルスを生成するとともに、このパルスが連続してなるバースト信号(本発明のパルス群に相当)Bにより投光信号を生成し、これを出力する。これにより、投光素子13が高周波点灯される。
【0017】
尚、一般に、インバータ等により高周波点灯される蛍光灯(変調光)の周波数は約数十kHz〜100KHzであるため、本実施形態では、これより、更に、高い周波数域で投光素子13を点灯させるべく、基準クロック信号CKの周波数を、約500KHzに設定している。
【0018】
受光部20は、受光面20Aに2つのホトダイオードPD1、PD2を並べて配した一次元位置検出素子からなる。これら各ホトダイオードPD1、PD2からは、検出信号として受光量レベルに応じた大きさの電流が出力される。すなわち、図1の(a)に示すように、被検出体Wで反射された反射光が、PD1側の位置に入光した場合には、PD1の受光量がPD2の受光量より多くなるので、PD1から出力される電流量が、PD2から出力される電流量よりも多くなる。
【0019】
一方、これとは、反対に、図1の(b)に示すように、被検出体Wで反射された反射光が、PD2側の位置に入光した場合には、PD2の受光量がPD1の受光量より多くなるので、PD2から出力される電流量が、PD1から出力される電流量よりも多くなる。そして、これら2つのホトダイオードPD1、PD2からそれぞれ出力された出力電流は、I/V変換回路(電流−電圧変換回路)25、26によって、電圧信号V1、V2に変換される。
【0020】
図3の(c)、(d)には、被検出体Wで反射された光がホトダイオードPD1のX1のポイントに入光した場合の、電圧信号V1並びに電圧信号V2が例示してある。尚、電圧信号V1が本発明の第一受光信号に相当し、電圧信号V2が、本発明の第二受光信号に相当するものである。
【0021】
差動増幅回路30は、各電圧信号V1、V2がそれぞれ入力される2つの入力端子を備え、両電圧信号V1、V2の信号レベルの差分を増幅して出力するものである。また、出力される信号の極性は、電圧信号V1のレベルが電圧信号V2のレベルより高いときにはプラス(以下、正極性ともいう)の信号が出力され、これとは、反対に、電圧信号V2のレベルが電圧信号V1のレベルより高いときには、マイナス(以下、負極性ともいう)の信号が出力される。
【0022】
そして、図3の(c)、(d)に示す電圧信号V1並びに電圧信号V2がそれぞれ入力されると、差動増幅回路30からは、図3の(e)に示すように、交流波形の信号(周波数が約500KHzの信号)が出力される。差動増幅回路30に入力される電圧信号V1、V2は、基準クロック信号CKがHレベルのときだけ出力がある方形波であるため、差動増幅回路30からの出力も本来的には、電圧信号V1、V2に同期した方形波となる筈であるが、回路中に含まれるコンデンサ等の影響(例えば、パルスOFF期間中に放電する)により、差動増幅回路30からは交流波形の信号が出力される。
【0023】
そして、同信号Sa中には、先に述べた外乱光(変調光)に起因するノイズの他、電源或いは、回路の自己ノイズがのった状態にある。
尚、外乱光に起因するノイズは、先にも述べたように特定の帯域幅(変調光の周波数帯域に現れる)を持つのに対して、電源或いは、回路の自己ノイズは一般にあらゆる周波数帯域に均等に現れる。
【0024】
信号処理部40は、バンドパスフィルタ回路(本発明の第一のフィルタ回路に相当)41と、整流回路(本発明の分別回路に相当)43と、ローパスフィルタ回路(本発明の第二のフィルタ回路に相当)45とを備える。
バンドパスフィルタ回路41は、オペアンプ等の増幅素子を備えたアクティブフィルタであり、図4に示すように、通過域の中心周波数が約500KHzに設定されている。そして、この中心周波数foのゲインに対して−45dBの抑圧比を持たせて阻止域が設定されている。すなわち、中心周波数foのゲインは約60dBに設定されてので、ゲインの大きさがそれより45dB下がった15dB以下の範囲(100KHZ以下の範囲と、3MHz以上の範囲)が阻止域とされる。
【0025】
一方、先にも述べたように、外乱光に起因するノイズ成分の周波数は、約数十kHz〜100KHzであり、バンドパスフィルタ回路41の阻止域に含まれているので、差動増幅回路30から出力された差動信号Saは、バンドパスフィルタ回路41により、外乱光に起因するノイズ成分が除去されて、次段の整流回路43に入力される。
【0026】
整流回路43は、基準クロック信号CKが入力される信号入力部43Aを備え、バンドパスフィルタ回路41から入力された差動信号Sbに対し、基準クロック信号CKを掛け算する掛け算処理(本発明の信号処理に相当)を行なう。
【0027】
整流回路43による掛け算処理は、次の(1)式に基づいて行なわれる。
出力(整流信号)=差動信号×基準クロック信号・・・・(1)式
(1)式における差動信号とは、極性を含めた差動信号Sbの信号レベルであり、例えば、図5におけるt1時であれば「+C1」であり、t2時であれば「−C2」である。
(1)式における基準クロック信号とは、基準クロック信号CKの信号レベルであり、基準クロック信号CKのレベルがHレベルとなっている期間(例えば、図5中のA1期間、A2期間)は、基準クロック信号CKの信号レベルを「+1」とし、これとは反対に、信号のレベルがLレベルとなっている期間(例えば、図5中のB1期間、B2期間)は、基準クロック信号CKの信号レベルを「−1」として扱う。
【0028】
係る掛け算処理を各時点について、それぞれ行なうことで、図5の(b)に示す差動信号Sbは、正方向(信号の極性がプラスとなる側)に整流される。これは、図5の例では、基準クロック信号CKのレベルがLレベルとなっている期間は、差動信号Sbの信号レベルがいずれも「マイナス」になっているため、これに、基準クロック信号CKの信号レベルとして「−1」が乗ぜられることで、元は負極性であった信号が、正極性に反転されて出力されるためである。
尚、基準クロック信号CKのレベルがHレベルとなっている期間が、本発明の「前記投光信号のパルスON期間」に対応する期間であり、基準クロック信号CKのレベルがLレベルとなっている期間が、本発明の「前記投光信号のパルスOFF期間」に対応する期間である。
【0029】
かくして、整流回路43からは、図5の(c)に示すように差動信号Sbの振幅(+方向の振幅)の高さにほぼ比例したレベルの直流成分(ハッチングで示す部分)を有する整流信号Seが出力される。尚、このような、異なる二つの信号同士を信号の極性を含めて掛け算処理する回路動作を実現するには、例えば、整流回路をマルチプライヤ回路(四象限掛け算回路)により構成してやればよい。
また、本発明における「前記投光信号のパルスON期間と対応する部分の極性(差動信号の極性)」とは、図5の例であれば、A1、A2期間における差動信号Sbの極性、すなわち正極性(図5の(b))のことであり、「差動信号を、前記投光信号のパルスON期間と対応する部分の極性と同極性の信号のみの信号として出力する」とは、同じく図5の例であれば、同図の(c)に示すように差動信号Sbを正極性のみの信号として出力することである。
【0030】
ローパスフィルタ回路45は、例えば積分回路よりなるパッシブフィルタであり、本実施形態のものは、50KHZ以下を通過域とし、それ以上の周波数帯域を阻止域としている。
一方、整流回路43から出力された整流信号Seには、先のバンドパスフィルタ回路41で通過域とされた帯域の高周波ノイズ成分(主として電源、或いは回路の自己ノイズ)が今だ、乗った状態(含まれた状態)にあるが、これらのノイズ成分はローパスフィルタ回路45の阻止域に含まれる。
【0031】
そのため、整流信号Seをローパスフィルタ回路45に入力させると、整流信号Seに含まれる高周波ノイズ成分(バンドパスフィルタ回路41では通過域とされた帯域のノイズ成分)が除去され、直流成分のみを取り出すことが出来る。そして、ローパスフィルタ回路45は積分回路であるから、ローパスフィルタ通過後の整流信号Sfは、図5の(d)に示すように、右肩上がりにゆるやかに上昇するような信号波形となる。
【0032】
判定部60は例えば、CPU61とメモリ65とから構成され、ローパスフィルタ回路45から出力された整流信号Sfは、図示しないA/D変換回路でディジタル信号に変換された後、CPU61に取り込まれる。
【0033】
メモリ65には、整流信号Sfの信号レベルと被検出体Wの変位量(図1における基準位置からの変位量)Dとを関連付けた参照データ(例えば、測定に先立って、被検出体Wを変位させる試験を行い、そのときの整流信号Sfを変位量ごとにそれぞれ取得したもの)が、予め記憶されている。
【0034】
そのため、CPU61は、ディジタル信号が入力されると、メモリ65から、入力されたディジタル信号に対応する参照データの読み出しを行うことで、被検出体Wの距離の変位量Dを特定することが出来る。すなわち、整流信号Sfの信号レベルがY1であった場合には、図1に示す基準位置からの変位量がDaであると特定することができる。
【0035】
また、被検出体Wは、基準位置から投光素子13に近くなる方向(図1における右方向)に変位する場合と、投光素子13から離れる方向(図1における左方向)に変位する場合とがあるが、変位方向については、整流信号Sfの極性に基づいて特定される。すなわち、投光素子13に近くなる方向に被検出体Wが変位した場合には、上述したように、差動信号Sbが正極性側に整流される(図5の(d)参照)のに対して、投光素子13から遠くなる方向に被検出体Wが変位した場合には、差動信号Sbが負極性側に整流される(図6の(g)参照)。
【0036】
より具体的に説明すると、被検出体Wで反射された反射光がPD2側の位置に入光した場合(図1の(b)の場合)には、図6に示すように、電圧信号V1より電圧信号V2が大きくなるので、差動増幅回路30からは、基本的にはマイナスの信号が出力されることとなる。すなわち、基準クロック信号CKのレベルがHレベルとなっている期間(例えば、図6中のA1期間、A2期間中)は、差動信号Sbの極性がマイナスとなり、基準クロック信号CKのレベルがLレベルとなっている期間(例えば、図6中のB1期間、B2期間中)は、差動信号Sbの極性がプラスとなる。
【0037】
そのため、整流回路43にて先の掛け算処理を行なうと、基準クロック信号CKがHレベルとなっている期間については、差動信号Sbに、基準クロック信号CKの信号レベルとして「+1」が乗ぜられる。従って、信号の極性が正負反転されることなく、当該部分については信号が、負極性のまま出力される。
【0038】
一方、基準クロック信号CKがLレベルとなっている期間については、差動信号Sbに対して基準クロック信号CKの信号レベルとして「−1」が乗ぜられる。従って、当該部分については、元の信号に対して信号の極性が正負反転、すなわち、元は正極性(プラス)であった信号が、負極性に反転されて出力される。
【0039】
このように、整流回路43は、差動信号Sbを単に整流するものではなく、反射光がPD1側に入光した場合には、差動信号Sbを正極性に整流し、反射光がPD2側に入光した場合には、差動信号Sbを負極性に整流する整流方向の選択機能を有する。換言すれば、差動信号Sbのうち、パルスON期間に対応する信号成分については信号の極性を反転させることなく、差動信号Sbを整流させている。そのため、整流信号Se、Sfの極性に基づいて、被検出体Wの変位方向を特定することが出来る。
【0040】
尚、係る掛け算処理により、本発明の「投光信号のパルスOFF期間と対応する部分については、信号の極性を正負反転させて出力させる」が実現されている。
【0041】
本実施形態によれば、信号処理部40は、バンドパスフィルタ回路41、ローパスフィルタ回路45を備え、バンドパスフィルタ回路41においては、外乱光(変調光)に起因するノイズ成分を除去し、ローパスフィルタ回路45では、バンドパスフィルタ回路41で通過域とされた帯域のノイズ成分、すなわちバースト波Bの周波数帯域に近い帯域の高周波成分のノイズ(電源、或いは回路の自己ノイズ)を除去できる。
【0042】
加えて、差動信号Sbは交流波形の信号であるから、バンドパスフィルタ回路41から出力された信号を、そのままローパスフィルタ回路45に入力させてしまうと、ローパスフィルタ回路45で信号そのものも抑圧されてしまう。
【0043】
この点に関し、本実施形態では、バンドパスフィルタ回路41から出力された差動信号Sbを整流回路43で整流して、ノイズ成分を除く信号の主成分を直流成分に置き換える処理を行なっている。そのため、ローパスフィルタ回路45では信号の主成分を抑圧することなく、ノイズ成分だけ除去することが出来る。これにより、受光素子13を構成する両ホトオードPD1、PD2の出力差を正確に捉えることが出来るから、光電センサ10の検出精度を高めることが可能となる。
【0044】
また、整流回路43は、マルチプライヤ回路等の汎用の回路により構成されてので、回路を比較的低コストに構成できるし、差動信号Sbを全波整流しているので、出力される整流信号Sfは、半波整流のものに比べて信号レベルが高く、これによりS/Nが高くなり、一層、検出精度が高まる。
【0045】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図7、図8によって説明する。
実施形態2のものは、実施形態1の構成に対して整流回路の構成のみ異なる。
【0046】
整流回路70は実施形態1と同様に、ローパスフィルタ回路45の入力段にあって、基準クッロク信号CKが入力される入力部70Aを有する。
そして、バンドパスフィルタ回路41から差動信号Sbが入力されると、整流回路70は図8の(c)に示すように、基準クロック信号CKがHレベルである期間は、入力された信号の極性を反転させることなく、そのまま出力させ、基準クロック信号CKがLレベルである期間については、信号の出力を停止させる。
【0047】
このような整流動作(半波整流)であっても、バンドパスフィルタ回路41から出力された差動信号Sbの主成分を直流成分に置き換えることが出来るから、S/N比は、幾らか低下するものの実施形態1と同様の効果が得られる。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0049】
(1)上記実施形態1及び、実施形態2においては、判定部60を主としてCPU61により構成したが、判定部60の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、コンパレータ等の比較器により構成し、ローパスフィルタ回路45から出力された整流信号のレベルと、閾値とを比較することで変位量、並びに変位方向を特定する構成であってもよい。
【0050】
(2)上記実施形態1及び、実施形態2のものは、受光部20を固定した状態で測定を行なうことを前提とするものであった。しかし、変位量の検出は、以下の構成でも可能である。すなわち、受光部20を図1における上下方向に移動可能な構成としておき、被検出体Wが基準位置にあるときには、反射光が両ホトダイオードPD1、PD2の中間点に入光するように受光部20をセットしておく。そして、被検出体Wが基準位置から変位したときには、変位後の反射光が、両ホトダイオードPD1、PD2の中間点に入光するよう受光部20を位置調整し、受光部20の調整量に基づいて被検出体Wの変位量Dを算出するのである。
そして、この場合に、受光部20の調整量並びに調整方向を、先の整流信号に基づいて決定するのである。
【0051】
(3)実施形態1、実施形態2では、整流回路43、70の前段のフィルタ回路をバンドパスフィルタ回路41により構成したが、阻止域に外乱光(変調光)の周波数帯域を含み、かつ、通過域にバースト波の周波数帯域を含むようなハイパスフィルタ回路であってもよい。
【0052】
(4)実施形態1、実施形態2では、ローパスフィルタ回路45をパッシブフィルタ回路により構成したが、増幅機能を有するアクティブフィルタ回路により構成してもよい。
【0053】
(5)実施形態1、実施形態2では、受光部としての一次元位置検出素子を、2分割ホトダイオードにより構成したが、PSD(フォトダイオードの表面抵抗を利用した位置センサ)等により構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施形態1における光電センサの検出原理を示す図
【図2】光電センサの電気的構成を示すブロック図
【図3】各信号の波形を示す図(反射光がPD1側に入光した場合)
【図4】ローパスフィルタ回路、並びにバンドパスフィルタ回路の特性を示す図
【図5】各信号の波形を示す図(反射光のPD1側に入光した場合)
【図6】各信号の波形を示す図(反射光がPD2側に入光した場合)
【図7】実施形態2における光電センサの電気的構成を示すブロック図
【図8】各信号の波形を示す図
【符号の説明】
【0055】
10…光電センサ
13…投光素子(投光手段)
15…投光駆動回路
20…受光部(一次元位置検出素子)
30…差動増幅回路(差動回路)
40…信号処理部(アナログ信号処理回路)
41…バンドパスフィルタ回路(第一のフィルタ回路)
43…整流回路(分別回路)
45…ローパスフィルタ回路(第二のフィルタ回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光手段と、
投光信号を生成して前記投光手段を点灯制御する投光駆動回路と、
前記投光手段から投光され被検出物で反射された光を受光し、その受光位置に応じたレベルの第一受光信号、第二受光信号をそれぞれ出力する一次元位置検出素子と、
前記第一、第二受光信号がそれぞれ入力されて、両信号のレベル差に応じた差動信号を出力する差動回路と、
前記差動回路から出力される交流波形の差動信号のノイズ成分を除去するべく信号処理するアナログ信号処理回路とを備え、前記アナログ信号処理回路から出力される出力信号に基づいて、前記被検出体物まで距離を検出する光電センサであって、
前記投光駆動回路は、複数のパルスからなるパルス群が間欠的に連続する信号により投光信号を生成し、
前記アナログ信号処理回路は第一のフィルタ回路と、分別回路と、第二のフィルタ回路から構成され、
前記第一のフィルタ回路は、前記差動回路の出力から、前記パルスの周波数帯域より低い周波数帯域のノイズ成分を少なくとも除去する回路あり、
前記分別回路は、前記投光信号を構成するパルスと同じ周期のクロック信号が入力される信号入力部を有し、前記第一のフィルタ回路から出力される交流波形の差動信号を前記クロック信号に基づいて信号処理して、前記投光信号のパルスON期間と対応する部分の極性と同極性の信号のみの信号として出力する回路であり、
前記第二のフィルタ回路は、前記分別回路の出力から前記パルスの周波数帯域を含む高周波帯域のノイズ成分を除去する回路であることを特徴とする光電センサ。
【請求項2】
前記分別回路は、前記差動信号のうちの、前記投光信号のパルスOFF期間と対応する部分については、信号の極性を正負反転させて出力させる回路であることを特徴とする請求項1に記載の光電センサ。
【請求項3】
前記分別回路は、前記第一のフィルタ回路から出力される交流信号と前記クロック信号とを極性も含めて掛け算処理するアナログ掛け算回路であることを特徴とする請求項2に記載の光電センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−40720(P2007−40720A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222233(P2005−222233)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【Fターム(参考)】