説明

光電変換素子の製造方法

【課題】 電極を形成する工程が増えることを抑制することが可能な光電変換素子の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の光電変換素子の製造方法は、受光面を有し、該受光面から入射した光を光電変換する光電変換層を有する基板を準備する工程と、該基板の前記受光面の上にアルミニウムを主成分とする被覆層を形成する工程と、該被覆層の一部の上に、アルミニウムと異なる材料を主成分とするマスクを形成する工程と、前記被覆層および前記マスクを酸性溶液に浸すとともに、該酸性溶液内に配置した陰極と前記基板との間に電界を印加して前記マスクから露出している前記被覆層を陽極酸化して、前記基板の前記受光面に到る多数の貫通孔を有する、陽極酸化された該被覆層を形成する工程と、前記被覆層の前記貫通孔を通して前記基板の前記受光面のうち対応する部分をエッチングする工程と、前記マスクを除去して、前記被覆層の前記一部を電極とする工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、光を電気に変換する光電変換素子の研究開発において、光電変換効率を向上させることが重要となっている。そこで、光電変換効率を向上させる技術として、光電変換層を有する基板の受光面側に複数のナノメートルサイズの凹部を設けることによって、近接場光を利用する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−34499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された光電変換素子によれば、ナノメートルサイズの凹部を受光面側に形成した後、基板上に電極を設ける必要があった。そのため、光電変換素子の製造工程において、工程数を抑制することが困難だった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、工数を短縮することが可能な光電変換素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光電変換素子の製造方法は、受光面を有し、該受光面から入射した光を光電変換する光電変換層を有する基板を準備する工程と、該基板の前記受光面の上にアルミニウムを主成分とする被覆層を形成する工程と、該被覆層の一部の上に、アルミニウムと異なる材料を主成分とするマスクを形成する工程と、前記被覆層および前記マスクを酸性溶液に浸すとともに、該酸性溶液内に配置した陰極と前記基板との間に電界を印加して前記マスクから露出している前記被覆層を陽極酸化して、前記基板の前記受光面に到る多数の貫通孔を有する、陽極酸化された該被覆層を形成する工程と、前記被覆層の前記貫通孔を通して前記基板の前記受光面のうち対応する部分をエッチングする工程と、前記マスクを除去して、前記被覆層の前記一部を電極とする工程とを有する。
【0007】
また本発明の光電変換素子の製造方法は、受光面を有し、該受光面から入射した光を光電変換する光電変換層を有する基板を準備する工程と、該基板の前記受光面の上にアルミニウムを主成分とする被覆層を形成する工程と、該被覆層の一部の上に、導電性を有するマスクを形成する工程と、前記被覆層および前記マスクを酸性溶液に浸すとともに、該酸性溶液内に配置した陰極と前記基板との間に電界を印加して前記マスクから露出している前記被覆層を陽極酸化して、陽極酸化された該被覆層に前記基板の前記受光面に到る多数の貫通孔を形成する工程と、前記被覆層の前記貫通孔を通して前記基板の前記受光面のうち対応する部分をエッチングする工程とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光電変換素子の製造方法によれば、被覆層を陽極酸化する前に、被覆層上にマスクを設けることによって、電極を形成する工程が増えることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る光電変換素子の製造方法を用いて作製した光電変換素子の断面図である。
【図2】図1に示す光電変換素子の平面図であり、A−A’線で切断したときの断面が図1に示す断面に相当する。
【図3】図1の光電変換素子の一部を拡大した断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子の製造方法の一工程を示す断面図であり、図2のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子の製造方法の一工程を示す図であり、(a)は図2のA−A’線で切断したときの断面に相当し、(b)は平面視したときに相当する。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子の製造方法の一工程を示す図であり、(a)は図2のA−A’線で切断したときの断面に相当し、(b)は平面視したときに相当する。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子の製造方法の変形例によって製造した光電変換素子を示す断面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子の製造方法の変形例によって製造された光電変換素子を示す図であり、(a)は図2のA−A’線で切断したときの断面に相当し、(b)は(a)の一部を拡大した断面に相当する。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子の製造方法の変形例における一工程を示す断面図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子の製造方法の変形例における一工程を示す断面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る光電変換素子の製造方法の変形例によって製造された光電変換素子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の一例について図を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態の一例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことができる。
【0011】
<光電変換素子>
図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換素子の製造方法を用いて製造された光電変換素子1を示す図である。図1に示すように、光電変換素子1は、具体的に、光電変換層を有する基板2および被覆層3を主に備えている。
【0012】
基板2は、例えば半導体基板などを用いることができる。基板2は、板状のものを用いることができる。基板2は、光が入射する受光面(図1における上面であり、以下では第1面という)2Aと、この第1面2Aに対して裏側に位置する裏面(図1における下面であり、以下では第2面という)2Bとを有する。
【0013】
基板2は、第1面2Aと第2面2Bとの間に、光を電気に変換する光電変換層を有している。光電変換層は、例えば一導電型半導体と逆導電型半導体との界面に形成することができる。そのため、基板2は、例えば、一導電型を持つ半導体基板を用いることができ、この基板2の第1面2A側に逆導電型層2’を形成することによって、一導電型と逆導電型との間に光電変換層を形成することができる。
【0014】
基板2としては、一導電型(例えば、p型)を有する板状の半導体を用いることができる。基板2を構成する半導体としては、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等のシリコン結晶を用いることができる。基板2の厚みは、例えば、250μm以下に設定することができる。基板2の形状は、特に限定されるものではないが、製法上の観点から平面視で四角形状としてもよい。
【0015】
本実施形態においては、基板2としてp型の導電型を持つシリコン基板を用いた例について説明する。シリコン基板からなる基板2がp型を持つようにする場合、ドーパント元素としては、例えば、ボロンあるいはガリウムなどを用いることができる。
【0016】
逆導電型層2’は、基板2とpn接合を形成する半導体層である。逆導電型層2’は、基板2と逆の導電型を持つ層であり、基板2における第1面2A側に設けられている。基板2がp型の導電型を持つ場合であれば、逆導電型層2’はn型の導電型を持つように形成される。一方、基板2がn型の導電型を持つ場合であれば、逆導電型層2’はp型の導電型を持つように形成される。
【0017】
逆導電型層2’は、基板2の第1面2A上に形成または接合されていてもよいし、基板2内にイオンを注入および拡散させることによって基板2内に形成してもよい。具体的に、基板2がp型の導電型を持つシリコン基板において、逆導電型層2’がシリコン基板内に形成されている場合には、例えば逆導電型層2’はシリコン基板における第1面2A側にリン等の不純物を拡散させることによって形成できる。
【0018】
被覆層3は、基板2の第1面2A上に形成されている。被覆層3は、アルミニウムを含む材料によって構成されている。被覆層3に含まれる他の元素としては、例えばシリコンなどがある。被覆層3の厚みは、例えば0.5μm以上20μm以下となるように設定することができる。本実施形態では、被覆層3が、例えば、酸化アルミニウムなどによって構成されている。
【0019】
被覆層3および基板2には、複数の凹部4が設けられている。複数の凹部4は、貫通孔3aおよび基板凹部2aから構成されている。複数の凹部4は、平面視形状が、例えば円形状または多角形状となるように設定されている。また凹部4は、その径を、入射する光の波長よりも小さくすればよく、例えば10nm以上200nm以下となるように設定されている。
【0020】
基板2上には、電極5が形成されている。具体的には、電極5は、アルミニウムを主成分とする材料によって構成されている。基板2および電極5は、オーミック接触となるように設定することができる。基板2および電極5がオーミック接触されている場合には、両者の間での接触抵抗を小さくすることができ、光電変換された電力を効率よく取り出すことができる。
【0021】
このような光電変換素子1は、ナノスケールの凹部4を有していることから、光が入射した際に、当該凹部4によって近接場光が発生し、この近接場光によって長波長側の光が光電変換されやすくなる。その結果、光電変換素子1の光電変換効率を向上させることができる。
【0022】
<光電変換素子の製造方法の第1の実施形態>
本実施形態に係る光電変換素子1の基本的な製造方法は、基板2を準備する工程、被覆層3’を形成する工程、マスク6を形成する工程、陽極酸化を行なう工程、エッチングを行なう工程およびマスク6を除去する工程とを有している。各工程について、詳細に以下説明する。
【0023】
(基板を準備する工程)
まず、光電変換層を有する基板2を準備する工程について説明する。本実施形態において基板2は、p型シリコン基板を用いて、n型の逆導電型層2’が形成されることによって、光電変換層であるpn接合が形成されている。基板2が単結晶シリコン基板の場合は、例えば引き上げ法などによって形成される。また基板2が、多結晶シリコン基板の場合は、例えば鋳造法などによって形成される。なお、以下の説明において、基板2がp型の多結晶シリコン基板を用いた例について説明する。
【0024】
最初に、例えば、鋳造法により多結晶シリコンのインゴットを作製する。次いで、そのインゴットを、例えば、250μm以下の厚みにスライスする。このとき、初めから砥粒をワイヤーに固着させた砥粒固着ワイヤーでスライスする固着砥粒タイプのワイヤーソー装置を用いて、インゴットをスライスする。その後、スライス工程で汚染された基板2は洗浄液を用いて清浄化される。このとき、基板2の切断面には機械的ダメージ層が存在する。走査型電子顕微鏡で基板2の切断面を観察すると、遊離砥粒タイプを用いた場合に比べて、マイクロクラックの数は少なく、その深さも約1μm以下と小さくすることができる。
【0025】
また、顕微ラマン分光法を用いて基板2の表面の残留応力を評価すると、固着砥粒タイプの場合には、200MPa以上500MPa以下の圧縮応力が存在するのに対して、遊離砥粒タイプの場合には、200MPa以下の圧縮応力となる。すなわち、固着砥粒タイプを用いることにより、機械的ダメージ層が少なく且つマイクロクラック等の発生による残留応力の開放が少ない基板2が得られると推察することができる。
【0026】
逆導電型層2’は、基板2の第1面2A側から形成される。逆導電型層2’は、ペースト状態にしたPを半導体基板1の表面に塗布して熱拡散させる塗布熱拡散法、ガス状態にしたPOCl(オキシ塩化リン)を拡散源とした気相熱拡散法などによって形成される。逆導電型層2’は、例えば0.2μm以上2μm以下の深さ、例えば40Ω/□以上200以下Ω/□以下のシート抵抗を有するように形成される。
【0027】
気相熱拡散法では、POCl等からなる拡散ガスを有する雰囲気中で、例えば600℃以上800℃以下の温度において、基板2を5分以上30分以下熱処理して燐ガラスを基板2の表面に形成する。その後、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気中で、例えば800℃以上900℃以下の高い温度において基板2を例えば10分以上40分以下の間、熱処理することにより燐ガラスから基板2にリンが拡散して逆導電型層2’が形成される。
【0028】
このようにして、基板2に逆導電型層2’が形成されることによって、基板2と逆導電型層2’との界面付近がpn接合となり、この界面付近が光電変換層となる。このようにして、図4に示すような、光電変換層を有する基板2を準備することができる。
【0029】
(被覆層を形成する工程)
そして、図5に示すように、基板2の第1面2A上に、被覆層3’が形成される。被覆層3’は、基板2の第1面2A全体を覆うように設けられている。また被覆層3’は、その厚みが、例えば0.5μm以上20μm以下となるように設定されている。なお、被覆層3’は、凹部4が形成されていない状態を指している。
【0030】
被覆層3’は、アルミニウムを主成分とする材料によって構成されている。被覆層3’は、例えばスパッタリング法、真空蒸着法またはCVD法などによって、形成される。また被覆層3’およびマスク6をスパッタリング法で形成する場合には、原料を変更するだけでよいので、工数を減らすことができ、生産性を向上させることができる。
【0031】
(マスクを形成する工程)
マスク6は、図6に示すように、被覆層3’の一部の上に形成される。マスク6は、例えばCVD法などを用いて被覆層3’上にマスク層6’を形成した後、フォトリソグラフィ法などを用いて所望の形状にパターニングすることができる。具体的な方法について、以下説明する。
【0032】
マスク6となる材料を、CVD法を用いて、被覆層3’の上面全体に積層する。マスク6の材料としては、アルミニウムと異なる材料が主成分となるように設定されている。これは、マスク6にアルミニウムが含まれることを排除するものではない。なお、マスク6に含まれるアルミニウムの比率は、マスク6全体に対する比率を用いればよい。マスク6に含まれるアルミニウムは、例えば二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)などを用いて調べることができる。
【0033】
被覆層3’の上面全体に積層されたマスク層を、フォトリソグラフィ法を用いて、所望の形状にパターニングする。パターニングされるマスク6は、例えば被覆層3’の外周付近に設けることができ、その面積は、例えば被覆層3’の上面3Aの面積に対して1%以上30%以下となるように設定することができる。マスク6は、図6(a)に示すように、被覆層3’の上面3Aからの厚みThが、例えば500nm以上5μm以下となるように設定することができる。なお、マスク6の厚みThは、基板2をエッチングする際において、基板2との選択比によって設定すればよい。
【0034】
マスク6は、平面視形状が、例えば四角形状などの多角形状または円形状などに設定することができる。なお、マスク6の平面視形状は、多角形状または円形状を複数組み合わせた複雑な形状であってもよい。本実施形態において、マスク6の平面視形状は、図6(b)に示すように長方形となるように設定されている。マスク6として、例えば酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いることができる。
【0035】
(陽極酸化を行なう工程)
その後、図7に示すように、被覆層3’およびマスク6を酸性溶液7内に浸す。具体的には、被覆層3’およびマスク6が形成された基板2の積層体8が、酸性溶液7内に浸される。酸性溶液7は、例えばビーカーなどの容器9内に配置されている。容器9内には、陰極10が配置されており、当該陰極10と積層体8とが電源11を介して電気的に接続されている。電源11は、例えば直流電源を用いることができ、積層体8が陽極、陰極10が陰極とそれぞれなるように配置されている。
【0036】
陰極10としては、板状のものを用いることができる。陰極10は、導電性材料であればよく、例えば金属材料を用いることができる。酸性溶液7は、例えば硫酸、シュウ酸またはリン酸などの2価以上の酸性溶液を用いることができる。陰極10は、例えば、主面が積層体8の被覆層3’全体と向かい合うように配置される。
【0037】
積層体8および陰極10に電源11から電界が印加される。電源11の電圧は、被覆層3’に形成される貫通穴3aの径によって設定することができ、酸性溶液7の種類または濃度によって調節すればよい。酸性溶液7として硫酸を用いて、貫通穴3aの径を30nmとする場合には、例えば10V以上100V以下となるように設定することができる。このように積層体6を酸性溶液7内に浸して電界を印加することによって、被覆層3’が陽極酸化されることとなる。
【0038】
被覆層3’が陽極酸化されると、被覆層3’内に含まれていたアルミニウムが酸化アルミニウムとなり、複数の貫通孔3aを持つ多孔質の被覆層3となる。複数の貫通孔3aは、基板2の受光面2Aに達していることから、当該受光面2Aを露出するようになっている。複数の貫通孔3aは、その径が、例えば10nm以上200nm以下に設定される。なお、被覆層3’は陽極酸化される前の状態を示し、被覆層3は陽極酸化されて多孔質となった状態を示している。
【0039】
(エッチングを行なう工程)
その後、図8(a)および図8(b)に示すように、陽極酸化された被覆層3を通して、基板2の第1面2Aのエッチングを行なう。具体的に、陽極酸化されて多孔質となった被覆層3は、複数の貫通孔3aを有していることによって、図8(b)に示すように、貫通孔3aによって被覆層3から基板2の第1面2Aの一部が露出されている。
【0040】
そのため、被覆層3を通してエッチングを行なうと、被覆層3の貫通孔3aを通って、基板2の第1面2Aの一部がエッチングされることとなる。その結果、基板2の一部が除去されることによって、貫通孔3aおよび基板凹部2aからなる凹部4が形成される。
【0041】
(マスクを除去する工程)
次に、図9に示すように、被覆層3の一部に形成されていたマスク6を除去する。マスク6は、例えばマスク6のみを溶解する溶液に浸されることによって、除去することができる。このような溶液は、マスク6として酸化シリコンを用いた場合には、例えばフッ酸等を用いることができる。マスク6を除去する他の方法としては、例えばマスク6を研磨して除去する方法などを用いることができる。マスク6を研磨によって除去する方法を用いた場合には、続けて被覆層3の上面3Aまたは電極5の上面を研磨することによって被覆層3の上面3Aを平坦化することができる。
【0042】
また、マスク6としてフォトレジストを用いてもよい。マスク6としてフォトレジストを用いた場合には、当該フォトレジストを除去する溶液として、例えばアセトンを用いることができる。
【0043】
本実施形態の光電変換素子1の製造方法は、被覆層3’の上の一部にマスク6を形成した後、被覆層3’の一部(マスク6と重ならない領域)を陽極酸化させて光電変換素子を製造することから、複数の凹部4を形成するとともに電極5を形成することができる。そのため、改めて電極5を形成する工程を必要としないため、光電変換素子の製造方法において、工数を少なくすることができ、生産性を向上させることができる。
【0044】
また、このように被覆層3’が酸化された被覆層3となることによって、光電変換素子1のパッシベーションとしても機能させることができる。そのため、基板2に複数の凹部4を形成した後、パッシベーションを形成する場合と比較して、工程を少なくすることができる。
【0045】
さらに、このように光電変換素子を、陽極酸化を用いて製造することから、基板2と電極5との界面でオーミック接触されやすくなっている。そのため、光電変換素子1を製造した後に、基板2と電極5との間でオーミック接触させなくてもよいため、工程が増えることを抑制することができる。
【0046】
従来の光電変換素子の製造方法では、基板の第1面側全体に複数の凹部を形成した後、複数の凹部上に電極を形成していたことから、凹部と電極の間で電流がリークされやすかった。その結果、光電変換された電流の取り出し効率を向上させることが困難だった。
【0047】
(光電変換素子の製造方法の変形例1)
マスク6を形成する工程と陽極酸化された被覆層3に貫通孔3aを形成する工程との間に、マスク6が形成された被覆層3’を加熱する工程をさらに有していてもよい。この加熱工程は、便宜上、積層体8を加熱することによって行なわれる。加熱温度は、例えば150℃以上500℃以下となるように設定することができる。このようにマスク6が形成された被覆層3’を加熱することによって、マスク6と被覆層3’とを強固に密着させることができる。その結果、陽極酸化を行なう工程において、マスク6が被覆層3’の上面3’Aから剥離することを抑制することができる。
【0048】
また、被覆層3’が加熱されることによって、被覆層3’と基板2との接触界面において、オーミック接触されやすくすることができる。その結果、マスク6を除去する工程の後、加熱する工程を省略することができるため、工数の増加を抑制することができ、また製造された光電変換素子の電気特性を向上させることができる。
【0049】
(光電変換素子の製造方法の変形例2)
マスク6を除去する工程の後、陽極酸化された被覆層3を除去する工程をさらに有していてもよい。すなわち、電極5となった被覆層3’(マスク6と重なる領域の被覆層3’)を残しつつ、陽極酸化された被覆層3を除去する工程をさらに有していてもよい。
【0050】
具体的に、電極5を残しつつ陽極酸化された被覆層3を除去する方法としては、例えば非酸化物よりも酸化物のエッチング速度が早いエッチング液を用いて除去することができる。被覆層3’がアルミニウムを主成分としていた場合、電極5はアルミニウムで構成されるとともに陽極酸化された被覆層3は酸化アルミニウムで構成されることとなる。そのため、エッチング液としては、例えばアルミニウムより酸化アルミニウムがエッチングされやすい、クロム酸およびリン酸を含む混合溶液などを用いることができる。
【0051】
このような工程を経ることによって、図10に示すように、陽極酸化された被覆層3のみを除去することができる。その結果、電極5を形成するとともに、基板2の第1面2Aに入射する光が陽極酸化された被覆層3で吸収されにくくすることができ、基板2に入射する光をより多くすることができる。その結果、光電変換される電力を大きくすることができる。
【0052】
(光電変換素子の製造方法の変形例3)
基板2を準備する工程と被覆層3’を形成する工程との間に基板2上に基板2よりも電気抵抗の小さい透光性材料からなる導電層12を形成する工程をさらに有するとともに、エッチングする工程において、被覆層3’の貫通孔4aを通して導電層12とともに基板2の第1面2Aのうち対応する部分をエッチングしてもよい。
【0053】
導電層12は、電気抵抗が基板2よりも小さい透光性材料によって構成されている。本実施形態では、基板2としてシリコン基板を用いていることから、シリコンよりも電気抵抗の小さい材料を選択すればよい。導電層12の材料としては、例えばインジウムおよびスズを含む酸化物などを用いることができる。導電層12は、図11(a)に示すように、基板2の第1面2A全体を覆うように設けられている。このような導電層12は、基板2を準備する工程の後に形成すればよい。
【0054】
導電層12は、基板2よりも電気抵抗の小さい材料から選択される。なお、導電層12は、逆導電型層2’上に設けられているため、逆導電型層2’の電気抵抗よりも小さい材料で形成すればよい。基板2の電気抵抗または逆導電型層2’の電気抵抗としては、それぞれ例えば基板2のシート抵抗または逆導電型層2’のシート抵抗を用いることができる。
【0055】
その後、導電層12上に被覆層3’を形成する工程、被覆層3’を陽極酸化を行なう工程を順次経て、陽極酸化された被覆層3の貫通孔3aを通して導電層12および基板2の第1面2Aのうち対応する部分のエッチングを行なう。これにより、図11(b)に示すように、被覆層3の貫通孔3aと連続した、導電層12を貫通する貫通孔12aおよび基板2が凹んだ基板凹部2aを形成することができる。
【0056】
このように基板2と被覆層3との間に、導電層12が介在していることによって、基板2の第1面2Aのシート抵抗を小さくすることができる。その結果、基板2で発生したキャリアが再結合されてしまうことを抑制することができ、光電変換された電力の取り出し効率を向上させることができる。
【0057】
(光電変換素子の製造方法の変形例4)
導電層12は、基板2の第1面2A全体を覆っていなくてもよい。導電層12が、基板2上には、基板2の外周から間を空けた内側に位置する領域に形成されていてもよい。なお、以下の説明において、基板2の外周から間を空けて、導電層12から露出した第1面2Aの領域を、露出領域2A’と称する。
【0058】
基板2に露出領域2A’を露出させて、第1面2Aに導電層12を形成する方法としては、例えばリフトオフ法または選択エッチング法などを用いることができる。リフトオフ法を用いて導電層12を形成する場合には、エッチングによって基板2が損傷することを抑制することができる。
【0059】
導電層12を次のようなリフトオフ法によって形成する場合について、図12を参照しつつ説明する。図12(a)に示すように、基板2の第1面2Aに、マスクパターン13を形成する。マスクパターン13は、後に露出領域2A’となる位置に設けられる。マスクパターン13は、厚みが、例えば1μm以上10μm以下となるように設定される。マスクパターン13の厚みを導電層12の厚みよりも厚くなるように設定してもよい。これによって、この工程の後に基板2上に積層される導電膜12’を段切れさせることができ、意図した領域に導電層12を容易に形成することができる。マスクパターン13の材料としては、例えばシリコンの酸化物若しくは窒化物などの絶縁材料またはフォトレジストを用いることができる。
【0060】
その後、図12(b)に示すように、基板2の第1面2Aのマスクパターン13から露出した領域およびマスクパターン13上に、導電膜12’が形成される。導電膜12’は、厚みが、例えば0.05μm以上5μm以下となるように設定される。導電膜12’の材料は、基板2よりも電気抵抗が小さい透光性の材料を用いることができ、例えばインジウムおよびスズを含む酸化物または金属薄膜などを用いることができる。導電膜12’は、例えばスパッタリング法、真空蒸着法またはCVD法などを用いることができる。
【0061】
そして、図12(c)に示すように、マスクパターン13を除去することによって、マスクパターン13を除去するとともにマスクパターン13上の導電膜12’の一部を除去することができる。このようにして、基板2の第1面2Aの外周から間を空けた内側に位置する領域に導電層12を形成することができる。なお、マスクパターン13を除去することによって、基板2の第1面2Aの外周から間を空けたるとともに導電層12から露出した露出領域2A’が形成される。また、露出領域2A’の外周からの間隔Tcは、マスクパターン13を形成するときに任意に設定することができる。
【0062】
導電層12は、入射した光を透過する透光性材料から選択される。透光性材料としては、入射した光を、例えば60%以上透過することができる材料から選択すればよい。このような導電層12としては、例えば、インジウムおよびスズを含む酸化物などまたは金属薄膜などを用いることができる。導電層12の厚みは、例えば0.05μm以上5μm以下となるように設定されている。
【0063】
その後、図13(a)に示すように、被覆層3’が、導電層12を覆うように、基板2の露出領域2A’および導電層12の上面に設けられるとともに、露出領域2A’と重なる領域の被覆層3’上にマスク6が形成して積層体8が設けられる。このように形成された積層体8を、上述した陽極酸化する工程およびマスク6を除去する工程を経て、図13(b)に示すように、光電変換素子1を形成する。
【0064】
本実施形態においては、このように導電層12を基板2の外周から間を空けた内側に位置する領域に形成した後、基板2の導電層12から露出した露出領域2A’および導電層12に被覆層3を形成し、陽極酸化を行なっている。そのため、基板2の露出領域2A’および被覆層3が、導電層12および被覆層3よりも密着性が高くなっている。その結果、陽極酸化する際に露出領域2A’において基板2と被覆層3とを剥がれにくくすることができる。
【0065】
本実施形態の光電変換素子の製造方法では、導電層12を設けても良好に光電変換素子を製造することができる。また、製造された光電変換素子は、基板2にナノメートルサイズの凹部4を複数有していることから、通常の光電変換素子よりも長波長側の光でも光電変換することができ、光電変換効率を向上させることができる。
【0066】
<光電変換素子の製造方法の第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態に係る光電変換素子1’について説明する。なお、上述の第1の実施形態に係る光電変換素子1と重複する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
第2の実施形態に係る光電変換素子1’の製造方法は、導電性を有するマスク6を形成する工程を有するとともに、マスク6を除去する工程を有していない点で第1の実施形態に係る光電変換素子1の製造方法とは異なっている。
【0068】
本実施形態において、マスク6を形成する工程は、マスク6を導電性を有する材料で形成する。マスク6の材料としては、例えば酸性溶液7で溶解しにくく、基板2よりもエッチングされにくい材料を用いることができる。具体的には、マスク6の材料としては、例えば白金、金または銀などを用いることができる。
【0069】
その後、被覆層3’を陽極酸化する工程を経て、陽極酸化された被覆層3の貫通孔3aを通して基板2の第1面2Aのうち対応する部分をエッチングすることにより、図14に示すように、光電変換素子1’を形成することができる。ここで、基板2の第1面2Aのうち対応する部分とは、陽極酸化された被覆層3の貫通孔3aから露出している基板2の第1面2Aの一部を指す。エッチングガスとしては、マスク6よりも基板2がエッチングされ易い材料を用いることができる。
【0070】
本実施形態では、このように導電性を有する材料によってマスク6を形成することから、マスク6を除去する必要がない。そのため、マスク6を除去する工程を少なくすることができ、生産性を向上させることができる。また、アルミニウムよりも酸化されにくい材料を用いた場合には、例えば酸化防止膜として機能させることができ、光電変換素子1’を他の回路基板に実装する際またはワイヤーボンディングで接続する際に、導電性を維持しつつ電極5が酸化されるのを抑制することができる。
【0071】
(光電変換素子の製造方法の第2の実施形態の変形例1)
光電変換素子1の製造方法の第1の実施形態の変形例1と同様に、マスク6を形成する工程と、陽極酸化された被覆層3に貫通孔3aを形成する工程との間に、マスク6が形成された被覆層3’を加熱する工程をさらに有していてもよい。マスク6が形成された被覆層3’を加熱することによって、マスク6と被覆層3’とを強固に密着させることができる。その結果、陽極酸化を行なう工程において、マスク6が被覆層3’の上面3’Aから剥離することを抑制することができる。
【0072】
(光電変換素子の製造方法の第2の実施形態の変形例2)
光電変換素子1の製造方法の第1の実施形態の変形例3と同様に、基板2を準備する工程と被覆層3’を形成する工程との間に基板2上に基板2よりも電気抵抗の小さい透光性材料からなる導電層12を形成する工程をさらに有するとともに、エッチングする工程において、被覆層3の貫通孔3aを通して導電層12とともに基板2の第1面2Aのうち対応する部分をエッチングしてもよい。
【0073】
このように基板2と被覆層3との間に、導電層12を介在させることによって、基板2の第1面2Aのシート抵抗を小さくすることができる。その結果、基板2で発生したキャリアが表面再結合されてしまうことを抑制することができ、電力取り出し効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 光電変換素子
2 基板
2A 第1面
2B 第2面
2a 基板凹部
3 被覆層
3A 上面
3a 貫通孔
4 凹部
5 電極
6 マスク
7 酸性溶液
8 積層体
9 容器
10 陰極
11 電源
12 導電層
12a 貫通孔
13 マスクパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面を有し、該受光面から入射した光を光電変換する光電変換層を有する基板を準備する工程と、
該基板の前記受光面の上にアルミニウムを主成分とする被覆層を形成する工程と、
該被覆層の一部の上に、アルミニウムと異なる材料を主成分とするマスクを形成する工程と、
前記被覆層および前記マスクを酸性溶液に浸すとともに、該酸性溶液内に配置した陰極と前記基板との間に電界を印加して前記マスクから露出している前記被覆層を陽極酸化して、前記基板の前記受光面に到る多数の貫通孔を有する、陽極酸化された該被覆層を形成する工程と、
前記被覆層の前記貫通孔を通して前記基板の前記受光面のうち対応する部分をエッチングする工程と、
前記マスクを除去して、前記被覆層の前記一部を電極とする工程と
を有する光電変換素子の製造方法。
【請求項2】
前記マスクを形成する工程と陽極酸化された前記被覆層に前記貫通孔を形成する工程との間に、前記マスクが形成された前記被覆層を加熱する工程をさらに有する請求項1に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記マスクを除去する工程の後、陽極酸化された前記被覆層を除去する工程をさらに有する請求項1または2に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項4】
前記基板を準備する工程と前記被覆層を形成する工程との間に前記基板上に該基板よりも電気抵抗の小さい透光性材料からなる導電層を形成する工程をさらに有するとともに、エッチングする工程において、前記被覆層の前記貫通孔を通して前記導電層とともに前記基板の前記受光面のうち対応する部分をエッチングする請求項1〜3のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項5】
受光面を有し、該受光面から入射した光を光電変換する光電変換層を有する基板を準備する工程と、
該基板の前記受光面の上にアルミニウムを主成分とする被覆層を形成する工程と、
該被覆層の一部の上に、導電性を有するマスクを形成する工程と、
前記被覆層および前記マスクを酸性溶液に浸すとともに、該酸性溶液内に配置した陰極と前記基板との間に電界を印加して前記マスクから露出している前記被覆層を陽極酸化して、陽極酸化された該被覆層に前記基板の前記受光面に到る多数の貫通孔を形成する工程と、
前記被覆層の前記貫通孔を通して前記基板の前記受光面のうち対応する部分をエッチングする工程と
を有する光電変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記マスクを形成する工程と陽極酸化された前記被覆層に前記貫通孔を形成する工程との間に、前記マスクが形成された前記被覆層を加熱する工程をさらに有する請求項5に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項7】
前記基板を準備する工程と前記被覆層を形成する工程との間に前記基板上に該基板よりも電気抵抗の小さい透光性材料からなる導電層を形成する工程をさらに有するとともに、エッチングする工程において、前記被覆層の前記貫通孔を通して前記導電層とともに前記基板の前記受光面のうち対応する部分をエッチングする請求項5または6に記載の光電変換素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−93531(P2013−93531A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236321(P2011−236321)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】