説明

光電式煙センサおよび照明機器

【課題】簡単な構成で小型化と低コスト化を図ることができる光電式煙センサを提供する。
【解決手段】発光素子2の光軸と受光素子4の受光軸が交差する領域とその領域近傍の煙を検出する光電式煙センサにおいて、ラビリンス壁1bにより内部空間Sが形成され、内部空間Sに連なる開口部6が設置面側に設けられたケース部材1と、上記ケース部材1の開口部6が設けられた設置面側に配置され、ケース部材1の開口部6に対向する穴を有するプリント基板とを備える。上記発光素子2と受光素子4は、ケース部材1の開口部6内において発光素子2の光軸と受光素子4の受光軸が開口部6の開口面と略平行な同一平面上で交差するようにプリント基板に実装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光電式煙センサおよび照明機器に関し、光電式煙センサの小型化と煙検知能力の高精度化を達成するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から煙やほこりなどの検出を目的にした光電式センサには、赤外LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)とシリコンフォトダイオードを用いた反射型センサや透過型センサなどが使用されている。これら受発光素子の配置や筐体内部構造に外乱光除去や迷光除去の効果を持たせるための様々な工夫を施している。
【0003】
従来の反射型センサを用いた光電式煙センサとして、受光素子へ入射する外乱光を低減させるために発光素子と受光素子の光軸前面にプリズムレンズを用いて光路を変化させ、発光素子から受光素子へ直接光が進入しないように所定の角度を有するように受発光素子とプリズムレンズを配置したものがある(例えば、特許文献1(特開平9−231485号公報)参照)。
【0004】
この光電式煙センサの筐体には、光トラップを目的とした外乱光遮光用支柱を設けてラビリンス構造を形成している。この筐体のラビリンス構造の内部に、粗面加工を施すことによって、外乱光や迷光の影響を低減させ、温度変化などの環境変化に対する特性変動を小さくしている。しかしながら、上記のプリズムレンズを用いた光路変更は、筐体内部の反射光の影響を避けるために、筐体底部や蓋部から光軸を離す必要がある。このため、筐体の薄型化を阻害するという問題があり、用途や使用場所に制限がある。また、大型の筐体やプリズムレンズ使用といったコスト低減を阻害する影響を持っている。
【0005】
従来の拡散反射光を用いた光電式センサのような光軸を斜めに打ち上げる配置の光学系では、発光素子前方に筐体が存在すると、筐体内部の反射が大きくなるために筐体内部を広くする必要がありセンサ本体が大型になってしまうという問題がある。しかし、内部の反射を低減させなければ、煙からの拡散反射光以外の外乱光や内部反射光が受光素子に入射してしまい、煙検知の精度を低下させるだけでなく、温度変化や外乱光などの周囲環境変化に弱いセンサとなってしまう。また、プリズムレンズなどの光学部品の使用や筐体の大型化はコスト増加につながる。
【特許文献1】特開平9−231485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明の課題は、簡単な構成で小型化と低コスト化を図ることができる光電式煙センサおよびそれを用いた照明機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の光電式煙センサは、
発光素子の光軸と受光素子の受光軸が交差する領域とその領域近傍の煙を検出する光電式煙センサであって、
ラビリンス壁により内部空間が形成され、上記内部空間に連なる開口部が設置面側に設けられたケース部材と、
上記ケース部材の上記開口部が設けられた設置面側に配置され、上記ケース部材の上記開口部に対向する穴を有するプリント基板と
を備え、
上記発光素子と上記受光素子は、上記ケース部材の上記内部空間内の上記開口部近傍または上記開口部内において上記発光素子の光軸と上記受光素子の受光軸が上記開口部の開口面と略平行な同一平面上で交差するように、上記プリント基板に実装されていることを特徴とする。
【0008】
なお、上記発光素子と受光素子は、それぞれ1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0009】
上記構成の光電式煙センサによれば、例えば、LED(発光ダイオード)を用いた発光素子と、フォトダイオードやフォトトランジスタなどを用いた受光素子をプリント基板に実装して、ケース部材の内部空間内の開口部近傍(または開口部内)において発光素子の光軸と受光素子の受光軸が開口部の開口面と略平行な同一平面上で交差するようにした光学系において、発光素子の前面と受光素子の前面のそれぞれの光軸が交差する領域とその領域近傍に対向するプリント基板の穴およびケース部材の開口部により、ケース部材の内部空間が設置面側の外部の空間に連なる。この外部の空間は、設置する壁内部の空間や天井裏の空間となるので、外乱光がケース部材内に入ってくることもなく、さらにケース部材内から開口部を介して外部に出た散乱光は、その広い空間に拡散して迷光が処理される。こうして、ケース部材やプリント基板による反射光をなくし、受光素子への煙による反射光以外の入射光を軽減する。これにより、従来技術では、筐体の高さを高くして反射光の強度を低減していた構造を用いることなくケース部材の薄型化を可能とする。したがって、簡単な構成で小型化と低コスト化を図ることができる。
【0010】
また、一実施形態の光電式煙センサでは、上記発光素子の光軸方向の前方かつ上記ケース部材の上記開口部の内壁に、上記発光素子の光軸と上記受光素子の受光軸を含む平面に対して上記開口部側が鈍角をなす傾斜面を設けた。
【0011】
上記実施形態によれば、上記発光素子からの発光ビームの光軸方向の前方かつケース部材の開口部の内壁に、発光素子の光軸と受光素子の受光軸を含む平面に対して開口部側が鈍角をなす傾斜面を設けることによって、ケース部材の開口部の内壁に照射された光が上記傾斜面で反射し、ケース部材の開口部およびプリント基板の穴をとおり、ケース部材から設置面側の外部に出て行く。これにより、煙に当たらない光が、ケース部材の開口部の内壁で反射して受光素子に入射することを防ぐことができる。
【0012】
また、一実施形態の光電式煙センサでは、上記発光素子の光軸方向の前方かつ上記ケース部材の上記開口部の内壁に、上記ケース部材の上記開口部の内側に向かって先端が突出する三角刃状の凹凸を設けた。
【0013】
上記実施形態によれば、上記ケース部材の開口部の内壁に、ケース部材の開口部の内側に向かって先端が突出する三角刃状の凹凸を設けることによって、発光素子の前方に発せられた光がケース部材の開口部の内壁で反射するのを低減でき、ケース部材内部の反射光が受光素子に入射するのを防ぐことができる。
【0014】
また、一実施形態の光電式煙センサでは、上記ケース部材の内側の上記内部空間に面する部分に、複数の突起部を設けた。
【0015】
上記実施形態によれば、上記ケース部材の内側の内部空間に面する部分に、複数の突起部を設けることによって、発光素子から照射された光がケース部材の開口部の内壁に直接当たるのではなく、突起部に当たり拡散することにより光の強度を弱くすることができる。このとき、拡散する角度は、照射光進行方向に対して上方に拡散すると共に左右に分散するので、効率よく照射光の強度を低下することができる。
【0016】
また、一実施形態の光電式煙センサでは、上記複数の突起部は、角錐形状または円錐形状である。
【0017】
上記実施形態によれば、上記複数の突起部を角錐形状または円錐形状とすることによって、この突起部による反射方向を上方と左右に分散させることができる。なお、上記複数の突起部は、先端が丸みを帯びた角錐形状または円錐形状とするのがより望ましい。
【0018】
また、一実施形態の光電式煙センサでは、
上記ケース部材に設けられた発光素子収納用凹部内に、上記発光素子の少なくとも一部が配置され、
上記ケース部材の上記発光素子収納用凹部近傍の上記発光素子の前面側、かつ、上記発光素子の光軸の両側に、側方に向かって徐々に狭くなった三角形状の窪みを設けた。
【0019】
上記実施形態によれば、上記ケース部材の上記発光素子収納用凹部の発光素子の前面側、かつ、発光素子からの発光ビームの光軸の両側に、側方に向かって徐々に狭くなった三角形状の窪みを設けることによって、発光素子からの発光ビームの光軸よりも外側に広がる光の一部は、三角形状の窪みで反射を繰り返して減衰する。このような光トラップ効果持った三角形状の窪みを用いることによって、光トラップ効果と光学系の小型化の両立を可能とする。
【0020】
また、一実施形態の光電式煙センサでは、
上記受光素子により検出された受光量に基づいて煙を検知する煙検知部と、
可視光線と近赤外線と遠赤外線を透過する警報表示用の窓部を有し、上記煙検知部が煙を検知したときに警報を表示する警報表示部と
を備えた。
【0021】
上記実施形態によれば、上記受光素子の受光量に基づいて煙検知部が煙を検知したとき、警報表示部により警報を表示することによって、煙に対する警報を視覚により人に知らせることができる。
【0022】
例えば、煙検知部により煙やほこりを検知したときに、警報表示部のLEDが点灯することにより、警報表示として働く。この警報表示部の警報表示用の窓部が、警報表示に用いる可視光線だけでなく、近赤外線と遠赤外線を透過することによって、近赤外線を利用したリモートコントローラ用受光素子や遠赤外線を検知することで人の有無を検知できる焦電センサを内部に備えても、それぞれに窓部を用意することなく小さなスペースで多機能化を果たすことができる。これらの機能は、それぞれ利用する光の波長領域が異なるために一つの窓部の内部でそれぞれ近接しても干渉することなく、機能を効率的に発揮することができる。
【0023】
また、一実施形態の光電式煙センサでは、上記警報表示部は、上記窓部内に配置され、発光強度を少なくとも2段階に切り替え可能な警報表示用発光素子を有する。
【0024】
上記実施形態によれば、上記警報表示部により発光素子の発光強度を少なくとも2段階に切り替え可能とすることによって、煙を検出したときの警報表示部の明るさに対して動作確認時やバッテリーレベル検出時の警報表示部の明るさを少なくすることが可能となり、光電式煙センサの消費電流を抑制することができる。
【0025】
例えば、マイクロコンピュータからの警報表示部の点灯の信号によってLED電流を少なくとも2段階に変化させることができるようなプログラムとし、煙を検知したときの警報表示時と動作確認時ではLED電流を変化し、発光部の明るさを変える機能を持たせる。
【0026】
また、一実施形態の光電式煙センサでは、上記警報表示部の上記窓部内にリモートコントローラ用受光素子を備えた。
【0027】
上記実施形態によれば、警報表示用の窓部の内部にリモートコントローラ用受光素子を備えることによって、窓部を通して赤外線リモートコントローラ用受光素子に信号を入力し、光電式煙センサの動作確認・警報停止の操作を、赤外線信号を発するリモートコントローラを用いて行うことが可能となる。
【0028】
また、一実施形態の光電式煙センサでは、
上記受光素子の受光量に基づいて煙を検知する煙検知部と、
上記煙検知部により煙を検知すると警報音を発する警報音発生部と、
上記警報表示部の上記窓部内に配置されて人体検知を行う焦電センサと
備え、
上記警報音発生部は、上記焦電センサにより検知された上記人の有無に基づいて上記警報音量を変更可能である。
【0029】
上記実施形態によれば、上記警報表示部の窓部内に配置された焦電センサにより、室内の人体の有無を検出し、人体の有無により警報音発生部の警報音量を変化させることによって、外部に人の有無を知らせることができる。
【0030】
なお、人体の有無により警報表示部の発光色、タイミング、強度を変化させることによって、外部に人の有無を知らせてもよい。また、警報表示用のLED発光波長は可視光領域波長のものを使用し、リモートコントローラ用受光素子は近赤外波長領域を利用し、焦電センサは遠赤外線を利用することによって、それぞれ利用波長領域が異なために内部でそれぞれの光が干渉することなく、近接して配置できる。そのため、窓部を一つの使用で役割を果たし、小型、安価を達成することができる。
【0031】
また、この発明の照明機器では、上記の光電式煙センサを備えたことを特徴とする。
【0032】
上記構成によれば、この照明機器と同じ電源で光電式煙センサを駆動することにより、電池交換が不要となって長期間メンテナンス不要となる。また、天井や壁に突起物を取り付けることになる光電式煙センサがこの照明機器と一体化することにより、室内の景観悪化を回避することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上より明らかなように、この発明の光電式煙センサによれば、簡単な構成で小型化と低コスト化を図ることができる光電式煙センサを実現することができる。
【0034】
また、この発明の照明機器によれば、上記光電式煙センサを備え、照明機器用電源で光電式煙センサを駆動することにより、電池交換が不要となってメンテナンスが長期間不要となると共に、天井や壁に突起物を取り付けることになる光電式煙センサがこの照明機器と一体化することにより、室内の景観悪化を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、この発明の光電式煙センサおよび照明機器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0036】
〔第1実施形態〕
図1はこの発明の第1実施形態の光電式煙センサの分解側面図を示している。この光電式煙センサは、図1に示すように、円形の開口部6(図2Aに示す)が設けられた略正方形状の基部1aとその基部1aの一方の端面に立設するラビリンス壁1bとを有するケース部材1と、上記ケース部材1の他方の端面に取り付けられ、発光素子2と受光素子4が実装された略正方形状のプリント基板8と、上記ラビリンス壁1bの先端側を覆う遮光カバー30とを備えている。また、ケース部材1の開口部6の縁部からプリント基板8側に突出した環状凸部1cを設けている。このケース部材1の環状凸部1cは、プリント基板8に設けられた円穴8a内に挿入される。また、プリント基板8に実装された発光素子2と受光素子4は、ケース部材1に設けられた図示しない凹部に夫々収納される。
【0037】
上記発光素子2にLED(発光ダイオード)を用い、受光素子4にフォトダイオードまたはフォトトランジスタを用いている。図1において、この光電式煙センサのプリント基板8側が、壁や天井などに取り付けられる設置面側となる。
【0038】
また、図2Aは図1のIIA−IIA線から見たケース部材1の平面図を示している。上記ラビリンス壁1bは、断面くの字形状の複数の柱が開口部6の周りを囲むように周方向に配列され、互いに隣接する柱の間にラビリンスを形成している。
【0039】
また、図2Bは図1のIIB−IIB線から見たプリント基板8の平面図を示している。図2Bに示すように、ケース部材1の開口部6に対向する円穴8aをプリント基板8の略中央に設けている。上記プリント基板8の円穴8aの近傍に、ケース部材1の開口部6内において発光素子2の光軸と受光素子4の受光軸が、プリント基板8平面と同一平面上(ケース部材1の開口部6の開口面と略平行な同一平面上)になるように、発光素子2と受光素子4を実装している。また、上記プリント基板8にチップ部品、マイクロコンピュータ、IC(Integrated Circuit:集積回路)などを搭載している。
【0040】
図3には発光素子2からの照射光3が煙に当たり、拡散反射する状態を示している。図3に示すように、発光素子2からの照射光3は、ケース部材1のスリット(図示せず)を通過して開口部6内に照射され、前方の煙に当たった拡散反射光7がケース部材1のスリット(図示せず)を通過して受光素子4に入射することによって煙を検出する。上記ケース部材1のラビリンス壁1bの内側かつ発光素子2と受光素子4との間に、開口部6に一部が覗いている遮光壁1dが立設されており、この遮光壁1dにより発光素子2と受光素子4との間の直線経路を遮っている。
【0041】
また、図4は図3に示す矢印Rの方向かつ斜め上方から見た斜視図であり、上記光電式煙センサのラビリンス壁1bを備えたケース部材1の内部構造と検出原理を説明する図である。また、図5は図4のV−V線から見たケース部材1の中央付近の断面図である。
【0042】
図4に示すように、ケース部材1の内部に配置された発光素子2からの照射光3が発光素子2の前方の内部空間Sへと照射され、この照射光3と受光素子4の受光視野領域が交差する検知領域5がケース部材1の開口部6に存在している。この検知領域5に煙やホコリが存在した場合には、照射光3が煙やホコリにあたり拡散反射した拡散反射光7が受光素子4に入射することでホコリや煙を検出する。
【0043】
従来は、発光素子から斜めに打ち上げるように光軸方向を設定していたが、この発明では、発光素子2の光軸と受光素子4の受光軸を同一平面上とすることで、センサ本体の厚みを薄くすることができる。この薄型化を実現するために、発光素子2と受光素子4の前面にある検知領域5のケース部材1に開口部6を設け、発光素子2,受光素子4や電気部品を搭載したプリント基板8に円穴8aを設けることにより、同一平面上に光軸を設定しても検知領域5近傍のプリント基板8やケース部材1の内壁からの反射による迷光13を低減することができる。
【0044】
上記第1実施形態の光電式煙センサによれば、簡単な構成で小型化(薄型化)と低コスト化を図ることができる。
【0045】
この検知領域5周辺の空間を設けることで、図5に示すように、発光素子2から光を照射することになる。このケース部材1やプリント基板8の断面から反射する光が受光素子4に入射するのを低減するため、発光素子2からの発光ビームの光軸方向の前方かつケース部材1の開口部6の内壁に、発光素子2の光軸と受光素子4の受光軸を含む平面に対して開口部6側が鈍角θをなす傾斜面10を設けることによって、反射光がその平面上から外れるような構造とする。
【0046】
また、上記の発光素子2から発せられた照射光3が直接当たるケース部材1の内壁に、図6に示すように、ケース部材1の開口部6の内側に向かって先端が突出する三角刃状の凸凹12を設けることによって、三角刃状の凸凹12の内壁に当たった光の反射が繰り返されて減衰し、断面からの反射による迷光13を低減することができる。
【0047】
さらに、迷光対策として、ケース部材1の底面15による反射とケース部材1の底面付近の光による迷光を低減し、煙からの反射光以外が受光素子4に入ることがないようにするため、図4,図6に示すように、ケース部材1の底面に突起部14を設ける。これにより、ケース部材1の底面15に向かう光16が突起部14に当たることにより拡散され、図6の拡散光17のように拡散して減衰することができる。
【0048】
また、この突起部14については、様々な方向へ拡散することを目的とするために柱状では効果が低いため、先端が丸みを帯びた角錐形状か円錐形状とすることが効果的な迷光低減に役立つ。
【0049】
また、発光素子2からの照射光3の拡がりおよび迷光を抑えるために、発光素子2の出射側のすぐ前方に三角形状の窪み18を設ける。これにより、発光素子2から照射された光は、検知領域5に達する前に光軸方向とは異なる方向へと進もうとする光や迷光20を減衰させることで、三角形状の窪み18を通過した光は、平行光成分以外を低減することができる。このため、不要にケース部材1の内部で反射する光を低減し、煙のないときの受光素子4への入射光を低減できる。
【0050】
したがって、このような迷光対策により、煙のないときの受光素子4への入射光を抑えることによって、周囲温度や外乱光などの環境によっても特性が変化しない安定した煙検知を行うことができる光電式煙センサを実現できる。
【0051】
また、図8は上記第1実施形態の光電式煙センサのブロック図を示しており、この光電式煙センサは、発光素子2に駆動信号を出力する制御部40と、煙を検知したことを表示する警報表示部41を備えている。この警報表示部41は、LED41aと、そのLED41aから発する可視光線を透過する警報表示用の窓部50を有している(図8では、警報表示部41と窓部50を便宜上別々に示す)。
【0052】
上記制御部40は、マイクロコンピュータと入出力回路などからなり、受光素子4からの受光量を表す信号を受けて、その受光量に基づいて煙を検知する煙検知部40aを有している。上記制御部40は、煙検知部40aにより煙を検知すると外部に警報信号を出力する。
【0053】
また、上記受光素子の受光量に基づいて煙検知部40aが煙を検知すると、警報表示部41により警報を表示することによって、煙に対する警報を視覚により人に知らせることができる。
【0054】
〔第2実施形態〕
図9はこの発明の第2実施形態のリモートコントローラ用受光素子を備えた光電式煙センサのブロック図を示している。この第2実施形態の光電式煙センサは、リモートコントローラ用受光素子42を除いて第1実施形態の図8に示す光電式煙センサと同一の構成をしており、同一構成部は同一参照番号を付して説明を省略する。
【0055】
第1実施形態において説明した迷光対策を施して小型化,高精度化を図った光電式煙センサの警報表示部41の窓部50に、警報表示用の可視光線だけでなく、近赤外線や遠赤外線も透過する材料を用いる。これにより、警報表示部41の警報表示用発光素子の一例としてのLED41aが窓部50内で発光し、窓部50を透過して警報表示となるだけでなく、同じ窓部50内に近赤外線を用いたリモートコントローラ用受光素子42を備え、外部のリモートコントローラ(図示せず)からの指令信号をリモートコントローラ用受光素子42により受けて、その指令信号に基づいて、動作確認や警報停止などの制御を制御部40により行うことができる。
【0056】
上記第2実施形態の光電式煙センサは、第1実施形態の光電式煙センサと同様の効果を有する。
【0057】
また、上記光電式煙センサは、屋内の壁面上方や天井部に取り付けることになっており、動作確認時や警報動作を停止するときには、光電式煙センサ本体にあるスイッチを押す必要がある。このために高所に取り付けられている場合は、光電式煙センサのスイッチと連動するような紐を取り付け、この紐を引くことによって動作確認や警報停止を行うが、警報表示部41のLED41aを内部に備えた窓部50の役割を果たす透明の発光部にリモートコントローラ用受光素子42を同一パッケージ化とすることによって、遠方からのリモートコントローラ動作を可能とする。このリモートコントローラ用受光素子は、近赤外線による動作を行うために可視光線を発する警報表示用のLED41aからの光の影響を受けない。
【0058】
〔第3実施形態〕
図10はこの発明の第3実施形態のリモートコントローラ用受光素子と焦電センサを備えた光電式煙センサのブロック図を示している。この第3実施形態の光電式煙センサは、焦電センサ43を除いて第2実施形態の図9に示す光電式煙センサと同一の構成をしており、同一構成部は同一参照番号を付して説明を省略する。
【0059】
この第3実施形態の光電式煙センサは、図10に示すように、窓部50内に遠赤外線を検知することで人体を検知する焦電センサ43を備えている。この光電式煙センサでは、窓部50を遠赤外線も透過することで、窓部50内に遠赤外線を検知することにより人体を検知する焦電センサ43を窓部50内に内蔵することが可能となる。
【0060】
上記第3実施形態の光電式煙センサは、第2実施形態の光電式煙センサと同様の効果を有する。
【0061】
また、この発明の光電式煙センサが設置される室内や通路などに人体が存在する場合には、これを検知することができ、他の部屋や外部へ人の存在を知らせることができる。ここで、警報表示部41のLED41aの発光波長は可視光線を利用し、リモートコントローラ用受光素子42の感度波長は近赤外線を利用し、焦電センサ43は遠赤外線を利用しており、それぞれ使用波長領域が異なるために干渉することはなく、一つの窓部50を利用して内部に全ての光学素子を備えることができる。このため、小型化,低コスト化ができる。
【0062】
〔第4実施形態〕
図11はこの発明の第4実施形態のリモートコントローラ用受光素子と焦電センサおよび警報音発生部を備えた光電式煙センサのブロック図を示している。この第4実施形態の光電式煙センサは、警報音発生部44を除いて第3実施形態の図10に示す光電式煙センサと同一の構成をしており、同一構成部は同一参照番号を付して説明を省略する。
【0063】
この第4実施形態の光電式煙センサは、図11に示すように、煙検知部40aにより煙を検知すると警報音を発する警報音発生部44を備えている。
【0064】
上記第4実施形態の光電式煙センサは、第3実施形態の光電式煙センサと同様の効果を有する。
【0065】
また、上記警報表示部41の窓部50内に配置された焦電センサ43により、室内の人体の有無を検出し、その人体の有無に基づいて、制御部40により警報音発生部44の警報音量を変化させることによって、外部に人の有無を知らせることができる。
【0066】
〔第5実施形態〕
図12はこの発明の第5実施形態の光電式煙センサを用いた照明機器のブロック図を示している。この第5実施形態の照明機器に用いられる光電式煙センサは、照明部60を除いて第2実施形態の図8に示す光電式煙センサと同一の構成をしており、同一構成部は同一参照番号を付して説明を省略する。
【0067】
この第5実施形態の光電式煙センサを用いた照明機器は、図12に示すように、制御部40により制御されさる照明部60を備えている。この照明部60は、蛍光灯、白熱電球などの全ての照明器具を用いることができる。
【0068】
この第5実施形態の照明機器に用いられる光電式煙センサは、煙センサ単品としての利用も可能であるが、図12に示すように、照明機器に内蔵することによって、室内の景観を損ねたり、天井に穴を開けて取り付けたりすることが不要となる。さらに、リモートコントローラも照明機器制御用のもの等で兼用すれば光電式煙センサ専用のリモートコントローラを用意する必要はない。
【0069】
このように上記第1〜第4実施形態の光電式煙センサによれば、ケース部材の内部空間内の開口部近傍(または開口部内)において発光素子の光軸と受光素子の受光軸が開口部の開口面と略平行な同一平面上で交差するように、発光素子と受光素子を配置することによって、光学系を小型化することが可能となる。この小型化によって大きくなる迷光の影響をケース部材内部の突起物や光トラップ効果を有した窪みを備えることで低減できる。これらのことより高精度に煙を検出できる小型の光電式煙センサを提供することができる。
【0070】
また、この発明の光電式煙センサによれば、警報表示部の窓部を可視光線だけではなく、近赤外線、遠赤外線を透過する材質とする。これにより、従来では、可視光線発光素子用の窓部、近赤外線を利用したリモートコントローラ用受光素子のための窓部、遠赤外線による人体検知を行う焦電センサのための窓部としてそれぞれ必要であったが、全ての波長を透過する材料とすることで窓部を一つで運用できるようになる。このそれぞれの機能は、使用波長領域が異なるために一つに集約してもそれぞれに干渉することなく機能を果たすことができる。
【0071】
また、この発明の光電式煙センサによれば、警報表示部のLEDを用いた発光部が煙を検出したときにマイクロコンピュータによる信号を変化することで、警報表示部のLEDの電流Ifを大きくし発光量を大きくすることを可能にすることによって、バッテリーレベル検知時や自己診断機能作動時、動作確認時とで警報表示部のLEDの明るさが変化する。これにより、通常使用時の警報表示部のLEDによる消費電流を抑制し、バッテリー寿命を長期化することができる。また、煙が充満している室内においても、警報表示部のLEDの明るさを最大にすることにより光電式煙センサの位置を示し、周囲を照らすことで非常灯の役割を果たすことができる。
【0072】
また、光電式煙センサは、天井や壁の高い位置に設置されることが多く、動作確認機能を作動したり、煙の誤検知をスイッチにより止めたりすることが困難であるが、この発明の光電式煙センサによれば、リモートコントローラで赤外線リモートコントローラを用いて操作することで安全で簡単に操作可能となる。このために、警報表示部が点灯する部分を赤外線も透過する材質とし、内部にリモートコントローラ用受光素子を備えることで一つの窓部により警報表示とリモートコントローラ用赤外線を受光するといった機能を有し、小型化、安価を達成することができる。
【0073】
また、この発明の光電式煙センサによれば、警報表示が点灯する窓部の内部に焦電センサを備えることで、光電式煙センサを設置された室内や通路の人体有無を検出し、人体の有無により警報音を変化し、外部に知らせることができる。警報表示部のLED、リモートコントローラ用受光素子、焦電センサは、それぞれ使用波長領域が異なるためにそれぞれが干渉することがなく効果的に使用できる。
【0074】
また、この発明の光電式煙センサを室内の照明機器に搭載することによって、天井や壁へ光電式煙センサを設置による見た目の悪化を回避できる。また、ほとんどの照明機器に付属しているリモートコントローラを用いて、光電式煙センサを操作することによってリモートコントローラの増加も回避できる。
【0075】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態の光電式煙センサの分解側面図である。
【図2A】図2Aは図1のIIA−IIA線から見たケース部材の平面図である。
【図2B】図2Bは図1のIIB−IIB線から見たプリント基板の平面図である。
【図3】図3は図2Aの拡大図である。
【図4】図4は上記ケース部材の要部の斜視図である。
【図5】図5は図4のV−V線から見た断面図である。
【図6】図6は迷光対策構造を示す拡大図である。
【図7】図7は迷光対策構造を示す要部の拡大図である。
【図8】図8は上記光電式煙センサのブロック図である。
【図9】図9はこの発明の第2実施形態のリモートコントローラ用受光素子を備えた光電式煙センサのブロック図である。
【図10】図10はこの発明の第3実施形態のリモートコントローラ用受光素子と焦電センサを備えた光電式煙センサのブロック図である。
【図11】図11はこの発明の第4実施形態のリモートコントローラ用受光素子と焦電センサおよび警報音発生部を備えた光電式煙センサのブロック図である。
【図12】図12はこの発明の第5実施形態の光電式煙センサを用いた照明機器のブロック図である。
【符号の説明】
【0077】
1…ケース部材
1a…基部
1b…ラビリンス壁
2…発光素子
3…照射光
4…受光素子
5…検知領域
6…開口部
7…拡散反射光
8…プリント基板
8a…円穴
9…開口部
10…傾斜面
11…基板内壁
12…三角刃状の凹凸
13…迷光
14…突起部
15…底面
16…入射光
17…拡散光
18…三角形状の窪み
19…照射光
20…迷光
21…発光素子用凹部
30…遮光カバー
40…制御部
40a…煙検知部
41…警報表示部
42…リモートコントローラ用受光素子
43…焦電センサ
44…警報音発生部
50…窓部
60…照明部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子の光軸と受光素子の受光軸が交差する領域とその領域近傍の煙を検出する光電式煙センサであって、
ラビリンス壁により内部空間が形成され、上記内部空間に連なる開口部が設置面側に設けられたケース部材と、
上記ケース部材の上記開口部が設けられた設置面側に配置され、上記ケース部材の上記開口部に対向する穴を有するプリント基板と
を備え、
上記発光素子と上記受光素子は、上記ケース部材の上記内部空間内の上記開口部近傍または上記開口部内において上記発光素子の光軸と上記受光素子の受光軸が上記開口部の開口面と略平行な同一平面上で交差するように、上記プリント基板に実装されていることを特徴とする光電式煙センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の光電式煙センサにおいて、
上記発光素子の光軸方向の前方かつ上記ケース部材の上記開口部の内壁に、上記発光素子の光軸と上記受光素子の受光軸を含む平面に対して上記開口部側が鈍角をなす傾斜面を設けたことを特徴とする光電式煙センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の光電式煙センサにおいて、
上記発光素子の光軸方向の前方かつ上記ケース部材の上記開口部の内壁に、上記ケース部材の上記開口部の内側に向かって先端が突出する三角刃状の凹凸を設けたことを特徴とする光電式煙センサ。
【請求項4】
請求項1に記載の光電式煙センサにおいて、
上記ケース部材の内側の上記内部空間に面する部分に、複数の突起部を設けたことを特徴とする光電式煙センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の光電式煙センサにおいて、
上記複数の突起部は、角錐形状または円錐形状であることを特徴とする光電式煙センサ。
【請求項6】
請求項1に記載の光電式煙センサにおいて、
上記ケース部材に設けられた発光素子収納用凹部内に、上記発光素子の少なくとも一部が配置され、
上記ケース部材の上記発光素子収納用凹部近傍の上記発光素子の前面側、かつ、上記発光素子の光軸の両側に、側方に向かって徐々に狭くなった三角形状の窪みを設けたことを特徴とする光電式煙センサ。
【請求項7】
請求項1に記載の光電式煙センサにおいて、
上記受光素子により検出された受光量に基づいて煙を検知する煙検知部と、
可視光線と近赤外線と遠赤外線を透過する警報表示用の窓部を有し、上記煙検知部が煙を検知したときに警報を表示する警報表示部と
を備えたことを特徴とする光電式煙センサ。
【請求項8】
請求項7に記載の光電式煙センサにおいて、
上記警報表示部は、上記窓部内に配置され、発光強度を少なくとも2段階に切り替え可能な警報表示用発光素子を有することを特徴とする光電式煙センサ。
【請求項9】
請求項7に記載の光電式煙センサにおいて、
上記警報表示部の上記窓部内にリモートコントローラ用受光素子を備えたことを特徴とする光電式煙センサ。
【請求項10】
請求項1に記載の光電式煙センサにおいて、
上記受光素子の受光量に基づいて煙を検知する煙検知部と、
上記煙検知部により煙を検知すると警報音を発する警報音発生部と、
上記警報表示部の上記窓部内に配置されて人体検知を行う焦電センサと
備え、
上記警報音発生部は、上記焦電センサにより検知された上記人の有無に基づいて上記警報音量を変更可能であることを特徴とする光電式煙センサ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1つに記載の光電式煙センサを備えたことを特徴とする照明機器。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−216193(P2008−216193A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57395(P2007−57395)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】