説明

光電複合コネクタ及びそのレセプタクル

【課題】電気接続部の電気接続時の摺動によって発生する金属磨耗粉がアライメント構造を含む光接続部に付着することを確実に防止する。
【解決手段】挿入嵌合部47を有するプラグ40と、挿入嵌合部47が挿入される収容空間78を有するレセプタクル70とよりなる光電複合コネクタにおいて、レセプタクル70は収容空間78の奥側にアライメント構造を有する光接続部(光学部材73)を備え、その光接続部より前方に電気接続部(端子72)を備える。レセプタクル70の光接続部の直前に、プラグ40との光接続時に開くシャッタ76が設けられ、レセプタクル70の光接続部はシャッタ76の開動作と連動して前進し、シャッタ76の閉動作と連動して後退する構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光接続と電気接続を併せ持つ光電複合コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図9はプラグとレセプタクルとよりなるこの種の光電複合コネクタの従来例として、特許文献1に記載されている構成を示したものであり、図9Aはプラグを示し、図9Bはプラグを一部分解した状態を示す。また、図9Cはレセプタクルを示す。
【0003】
プラグ10は絶縁本体11と、絶縁本体11に装着されたプラグ端子と、絶縁本体11を覆う金属シェル12を有している。絶縁本体11は嵌合面13aを有する基部13と、基部13から前向きに延在された舌片14とを有している。基部13には光ファイバが収容される貫通孔が形成されており、レンズ15は貫通孔に収容されて嵌合面13aから突出するように配置されている。
【0004】
金属シェル12は絶縁本体11を包囲するように配置され、舌片14と金属シェル12の天板及び底板との間にはそれぞれ上部収容空間16及び下部収容空間17が形成されている。
【0005】
プラグ端子は複数の第一端子と複数の第二端子とよりなり、第一端子18は舌片14の上面に装着されて上部収容空間16に露出されている。第二端子は図9Bでは隠れて見えないが、舌片14の下面に装着されて下部収容空間17に露出されている。
【0006】
レセプタクル(ソケット)20は絶縁本体21と、絶縁本体21に装着されたソケット端子と、絶縁本体21を覆う金属シェル22を有している。絶縁本体21はプラグ10を収容するための収容空間23と、基部24と、基部24から前向きに延在された第一舌片25とを有している。
【0007】
ソケット端子は複数の第一端子と複数の第二端子とよりなり、第一端子26は第一舌片25の下面に配置されている。絶縁本体21は基部24から前向きに延在されて第一舌片25と平行に配置された第二舌片27を備え、第二端子28は第二舌片27の上面に配置されている。
【0008】
第一舌片25及び基部24を貫通して貫通孔が形成されており、レンズ29は貫通孔に保持されて第一舌片25の先端側に位置されている。光ファイバはレンズ29の後端に対応して貫通孔に収容されている。
【0009】
なお、レセプタクル20はこの例では上述した収容空間23、第一舌片25、第二舌片27、第一端子26及び第二端子28を上下2段に備えている。
【0010】
上記のようなプラグ10とレセプタクル20とよりなる光電複合コネクタでは、プラグ10をレセプタクル20に挿入すると、プラグ10の第一端子18がレセプタクル20の第一端子26に接続し、プラグ10の第二端子がレセプタクル20の第二端子28に接続すると共に、プラグ10のレンズ15がレセプタクル20のレンズ29が位置する貫通孔に挿入されてレンズ29と対向し、光接続(光信号の伝送)が実現されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−50092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、光接続と電気接続の両者を行える光電複合コネクタでは、光接続部と電気接続部とが同一空間に位置している。従って、電気接続時に金属よりなる端子同士が摺動することによって発生する金属磨耗粉が光接続部に付着しやすいといった問題があり、例えばレンズ等への金属磨耗粉の付着により光結合効率が大幅に悪化するといった状況が生じうるものとなっていた。
【0013】
また、図9Cに示したようにレセプタクル側においては光接続部が前方に露出しているため、容易に清掃を行えるものの、プラグ側では図9Bに示したように光接続部がシェルで囲まれた空間の奥まった位置に位置しているため、清掃が困難であり、よって金属磨耗粉等が付着したとしてもそれを容易に除去することができないといった問題がある。
【0014】
この発明の目的はこのような問題に鑑み、電気接続を担う端子同士が摺動することによって発生する金属磨耗粉が光接続部に付着しないようにし、よって光結合効率の悪化を防止することができるようにした光電複合コネクタ及びそのレセプタクルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明によれば、挿入嵌合部を有するプラグと、そのプラグの挿入嵌合部が挿入される収容空間を有するレセプタクルとよりなる光電複合コネクタのレセプタクルは、収容空間の奥側に光接続部を備え、その光接続部より前方に電気接続部を備え、光接続部にはアライメント構造が形成されており、アライメント構造を含む光接続部の直前に、プラグとの光接続時に開くシャッタが設けられ、光接続部はシャッタの開動作と連動して前進し、シャッタの閉動作と連動して後退する構成とされる。
【0016】
請求項2の発明では請求項1の発明において、基体とその基体から突出延長された舌片とよりなる絶縁本体と、絶縁本体を囲んで舌片が位置する部分に収容空間を構成するシェルと、舌片の一方の板面に配置されて電気接続部を構成する端子と、光ファイバの先端に取り付けられ、前記一方の板面側において基体に形成された収容溝に位置されてアライメント構造を含む光接続部を構成する光学部材と、収容溝を挟んで基体の幅方向両端に形成された溝に、挿入嵌合部の挿入方向にスライド可能に配された一対のスライダと、一対のスライダをそれぞれ前記挿入方向と反対方向に付勢する一対のバネと、リンク機構とを備え、シャッタは板状とされて、その両端に互いに外向きに突設された軸部が一対のスライダにそれぞれ形成された軸受穴に係合され、収容空間への挿入嵌合部の挿入により、端子がプラグの電気接続部と電気接続した後、スライダは挿入嵌合部の前端に押されて後退し、その後退に伴い、シャッタは前記軸部回りに回動しながら後退して開く構造とされ、光学部材はリンク機構によってスライダのスライド方向と反対方向にスライドするものとされる。
【0017】
請求項3の発明では請求項2の発明において、リンク機構は、両端に長穴が形成され、中間部に支点穴がそれぞれ形成された一対のリンクと、前記基体に突設され、一対のリンクの各支点穴にそれぞれ挿入係合された一対の支点軸と、光学部材に取り付け固定されたインナーシェルに突設され、一対のリンクの各一端の長穴に挿入係合された連結軸と、一対のスライダにそれぞれ突設され、一対のリンクの各他端の長穴にそれぞれ挿入係合された軸とによって構成され、スライダのスライドに伴い、支点軸を中心にリンクが回動することで、スライダのスライド方向と反対方向に光学部材がスライドするものとされる。
【0018】
請求項4の発明では請求項2又は3の発明において、シャッタは前記基体の舌片が突出されている前面に配され、その前面に開口する収容溝を蓋する大きさとされる。
【0019】
請求項5の発明では請求項4の発明において、シャッタの前記両端部分の板面と対向する前記基体の前記前面部分に、シャッタが退避する方向に倣う傾斜面が形成され、シャッタは前記傾斜面に沿う形状とされる。
【0020】
請求項6の発明では、請求項4又は5の発明において、シャッタを閉じる方向に付勢するバネ片がシャッタに一体形成されているものとされる。
【0021】
請求項7の発明によれば、光電複合コネクタは請求項1乃至6記載のいずれかのレセプタクルとプラグとよりなり、プラグは挿入嵌合部の前端に光接続部を備え、その光接続部より後方に電気接続部を備える。
【0022】
請求項8の発明では請求項7の発明において、プラグは、基部とその基部から突出延長された舌片とよりなる絶縁本体と、絶縁本体を囲んで挿入嵌合部を構成するシェルと、舌片の一方の板面に配置され、一方の板面とシェルとの間の空間に露出されて電気接続部を構成する端子と、光ファイバの先端に取り付けられ、舌片の他方の板面に形成された凹部に位置されてアライメント構造を含む光接続部を構成する光学部材とを備える。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、レセプタクルの光接続部の直前にシャッタが設けられ、シャッタはプラグとの光接続時に開く構造とされているため、プラグとレセプタクルの電気接続部の電気接続時の摺動により金属磨耗粉が発生したとしても、レセプタクルの光接続部への金属磨耗粉の付着を防止することができる。
【0024】
従って、この発明によれば、レセプタクルの光接続部に金属磨耗粉が付着することによって光結合効率が悪化するといった問題を解消することができる。また、レセプタクルの光接続部に形成されているアライメント構造もシャッタによって保護されるため、金属磨耗粉がアライメント構造に付着することによって、例えば光軸ズレが生じたり、あるいはコネクタの嵌合自体が不可能になるといった問題も発生しない。
【0025】
一方、プラグの光接続部は挿入嵌合部の前端に位置し、電気接続部よりも挿入方向前方に位置しているため、電気接続時に発生する金属磨耗粉が付着するといった状況は発生しずらいものとなっている。
【0026】
加えて、この発明によれば、レセプタクルの光接続部がシャッタの開放と連動して前進する構成となっているため、シャッタの開放後、即座に光接続が行われ、つまりシャッタ開放後、プラグの光接続部との接続完了までの時間を短縮することができるため、その分、金属磨耗粉等の付着の危険性は小さくなり、より確実な防塵性能を得ることができる。
【0027】
さらに、このようにレセプタクルの光接続部が光接続時に前進する(嵌合方向に動く)ため、嵌合ストロークを短くすることができ、その分、コネクタの全長を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】Aはこの発明による光電複合コネクタにおけるプラグの一実施例を示す斜視図、Bはその一部を破断した斜視図。
【図2】Aは図1に示したプラグの平面図、Bはその一部断面とした側面図、Cはその正面図、DはBにおけるE部拡大図。
【図3】図1に示したプラグの分解斜視図。
【図4】Aはこの発明による光電複合コネクタにおけるレセプタクルの一実施例を示す斜視図、Bはその一部を破断した斜視図。
【図5】Aは図4に示したレセプタクルの平面図、Bはその断面図、Cはその正面図、DはBの拡大図。
【図6】図4に示したレセプタクルの分解斜視図。
【図7−1】レセプタクルにプラグが挿入嵌合される様子を示す断面図。
【図7−2】レセプタクルにプラグが挿入嵌合される様子を示す断面図。
【図8−1】レセプタクルにプラグが挿入嵌合される様子を示す一部破断した平面図。
【図8−2】レセプタクルにプラグが挿入嵌合される様子を示す一部破断した平面図。
【図9】光電複合コネクタの従来構成例を示す図、Aはプラグの斜視図、Bはその一部分解した斜視図、Cはレセプタクルの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0030】
図1及び図2はこの発明による光電複合コネクタにおけるプラグの一実施例の構成を示したものであり、図3はプラグを各部に分解して示したものである。
【0031】
プラグ40はこの例では絶縁本体30と端子41と光学部材42とフード43と金属製のシェルとを備え、シェルは上シェル44と下シェル45とによって構成されている。
【0032】
絶縁本体30は略直方体状をなす基部31と、その基部31の前面から突出延長された舌片32とを備えており、樹脂製とされる。舌片32の一方の板面(上面)には浅い凹部32aが形成されており、この凹部32aに電気接続部を構成する端子41がこの例では4本配列されて配置されている。絶縁本体30はこの例では端子41がインサートされて成形されている。なお、舌片32の先端における幅方向両端部には切り欠き32bがそれぞれ形成されている。
【0033】
上シェル44の前半部44aは平たい角筒状とされており、これに続く後半部44bはその角筒の底面部分のない断面コ字状をなすものとされている。なお、後半部44bの後端にはケーブルを挟み込んで固定するための断面U字状をなす固定部44cが突出形成されている。
【0034】
下シェル45は上シェル44の後半部44bに嵌合固定されるもので断面コ字状をなす。下シェル45の両側壁には係止爪45aが2つずつ切り起こされて形成されており、上シェル44の後半部44bの両側壁にはこれら係止爪45aが係合して係止される係止窓44dが形成されている。
【0035】
光学部材42はこの例では2本の光ファイバ51の先端に取り付けられている。光学部材42は透明材よりなる。光学部材42は光ファイバ51が挿入される挿入孔42aを2つ備えており、挿入孔42aに挿入固定された光ファイバ51の端面と対向するように光学部材42にはレンズ42bが一体形成されている。2つのレンズ42bは光学部材42の前面に形成された一対の凹部42cにそれぞれ位置されている。これら一対の凹部42cを挟む光学部材42の両側面はそれぞれ半円柱状側面42dをなすものとされており、これら半円柱状側面42dによって後述するレセプタクルの光学部材のアライメント構造と係合するアライメント構造が構成されている。なお、光学部材42の後端側の両側面には突出部42eが互いに外向きに突出するように形成されている。
【0036】
光学部材42は絶縁本体30の舌片32の端子41が配置されている板面と反対側の他方の板面(下面)の前端側に形成されている凹部32cに収容されて位置される。この際、凹部32cの後方の側壁面との間にはコイルバネ46が介在され、このコイルバネ46によって光学部材42は前方に付勢される。光学部材42の後端面にはコイルバネ46が挿入されて位置決めされる軸42fが突出形成されている。なお、光学部材42は一対の突出部42eが凹部32cの両側壁に形成されている段部32dに当接されて抜け止めされている。
【0037】
凹部32cに光学部材42を収容した絶縁本体30の舌片32は上シェル44の前半部44aに挿入され、この絶縁本体30の基部31の一部を挟んで下シェル45が上シェル44の後半部44bに嵌合固定される。そして、上シェル44の後半部44bから前半部44aの一部に渡ってその回りにフード43が取り付けられてプラグ40が構成される。ケーブル50は上シェル44の固定部44cに挟み込まれて固定され、フード43の後端側から導出される。なお、互いに嵌合固定された上シェル44及び下シェル45はフード43の収容孔43aに収容されて固定される。上シェル44の上面部分にはフード43からの抜け止め用の係止爪44eが一対形成されている。
【0038】
上記のような構成とされたプラグ40は絶縁本体30の舌片32部分を囲み、フード43から突出している上シェル44によって挿入嵌合部47が構成される。光接続部を構成する光学部材42は挿入嵌合部47の前端に位置される。一方、電気接続部を構成する端子41は光接続部より後方に位置し、舌片32の上面と上シェル44との間の空間に露出されている。
【0039】
次に、上述したプラグ40が接続されるレセプタクルの構成について説明する。
【0040】
図4及び図5はレセプタクルの一実施例の構成を示したものであり、図6はレセプタクルを各部に分解して示したものである。
【0041】
レセプタクル70はこの例では絶縁本体60と金属製のシェル71と端子72と光学部材73と一対のスライダ74,75とシャッタ76と一対のコイルバネ77と一対のリンク81,82とインナーシェル83とによって構成されている。なお、図4〜6中、90は基板を示し、図4,5ではレセプタクル70が基板90に実装された状態を示している。
【0042】
絶縁本体60はブロック状をなす基体61と、その基体61の前面61aから突出延長された舌片62とを備えており、樹脂製とされる。舌片62の一方の板面(上面)には舌片62の突出方向に平行に溝62aが形成されている。溝62aはこの例では4本形成されており、これら溝62aに端子72が配置されている。
【0043】
端子72は可動接片部72aと、それに続く圧入部72bと、圧入部72bから直角に折り曲げ延伸され、基板90の穴91に挿通されて半田付け固定される基板実装部72cとよりなり、圧入部72bの幅方向両側には係止突起72dが突設されている。端子72は基体61に形成された取り付け穴61bに圧入部72bが圧入固定されて取り付けられ、可動接片部72aは溝62aに位置され、基板実装部72cは基体61の底面側に突出される。
【0044】
光学部材73はプラグ40の光学部材42と同様、2本の光ファイバ52の先端に取り付けられている。光学部材73は透明材よりなる。光学部材73は光ファイバ52が挿入される挿入孔73aを2つ備えており、挿入孔73aに挿入固定された光ファイバ52の端面と対向するように光学部材73にはレンズ73bが一体形成されている。2つのレンズ73bは光学部材73の前面73cに位置されている。
【0045】
光学部材73の前面73cの、2つのレンズ73bを挟む両側には柱状部73dがそれぞれ突出形成されており、これら柱状部73dの互いの内側面にはV溝73eがそれぞれ形成されている。この例ではこれらV溝73eによって光学部材42の半円柱状側面42dよりなるアライメント構造と互いに係合するアライメント構造が構成されている。
【0046】
上記のような構成を有する光学部材73は全体として平板状とされており、この光学部材73にインナーシェル83が取り付けられる。
【0047】
インナーシェル83は金属板が折り曲げられて形成されており、上面部83aと、両側面部83bと、それら両側面部83bの下端が互いに内向きに折り曲げられ、わずかに延長されてなる一対の底面部83cとを有する。上面部83aの後端側中央には連結軸83dが上方に突出形成されており、上面部83aの前端中央には突き当て片83eが下方に折り曲げられて延長形成されている。また、両側面部83bには係止片83fがそれぞれ内側に切り起こされて形成されている。
【0048】
光学部材73へのインナーシェル83の取り付けは、インナーシェル83の後端側から光学部材73をインナーシェル83内に挿入することによって行われる。光学部材73の前面73cはインナーシェル83の突き当て片83eに突き当たり、光学部材73の後端側における幅方向両端に形成されている切り欠き部73fにインナーシェル83の係止片83fがそれぞれ位置される。係止片83fの遊端は切り欠き部73fの前端の段部73gに突き当たり、これら係止片83fと突き当て片83eとによって挟み込まれてインナーシェル83内に光学部材73が固定される。
【0049】
インナーシェル83が取り付けられた光学部材73は、絶縁本体60の基体61に、舌片62の突出方向と平行に前後方向に貫通して形成された収容溝61cに位置され、収容溝61cの延伸方向にスライド可能とされる。光学部材73の柱状部73dの先端は基体61の前面61aよりやや奥まった位置に位置される。
【0050】
基体61には収容溝61cを挟んで幅方向両端に溝61dがそれぞれ角部が切り欠かれて形成されており、溝61dの前端にはストッパ部61eがそれぞれ突出して設けられている。また、ストッパ部61eの前方の舌片62上にはストッパ部61eに続いて凸部62bがそれぞれ設けられている。一方、溝61dの後端には溝61dに続いて凹部61fがそれぞれ切り欠かれて形成されており、これら凹部61fの底面は溝61dの底面より一段高くされている。基体61に形成された2つの溝61dにはスライダ74,75がそれぞれ配される。
【0051】
スライダ74,75はそれぞれブロック状をなし、基部74a,75aの前面には延長部74b,75bがそれぞれ前方に突出形成されている。また、基部74a,75aの背面には軸74c,75cがそれぞれ後方に突出形成されている。これら一対のスライダ74,75の基部74a,75aの互いの内側面には軸受穴74d,75dがそれぞれ形成されている。
【0052】
シャッタ76は矩形状をなす板部76aと、板部76aの長手方向両端における上端側に、板部76aから直角に曲げられて突設された一対の支持部76bと、一対のバネ片76cとを有する。板部76aはこの例では傾斜面部76dと、その傾斜面部76dの下端に続く垂直面部76eとよりなる。一対の支持部76bには互いに外向きに軸部76fが突設されている。一対のバネ片76cは板部76aの上端の長手方向両端部から突出されて形成されており、板部76aの傾斜面部76dとV字形状をなすように延長されている。なお、バネ片76cの先端は曲げ返されている。
【0053】
上記のような構成を有するシャッタ76は一対の軸部76fがスライダ74,75の軸受穴74d,75dに係合されて取り付けられ、軸部76f回りに回動可能とされてスライダ74,75に支持される。
【0054】
シャッタ76を支持するスライダ74,75は基体61の幅方向両端に形成されている一対の溝61dにそれぞれスライド可能に配置される。この際、コイルバネ77がスライダ74,75に形成されている軸74c,75cにそれぞれ位置決めされて、スライダ74,75と基体61の凹部61fの後壁面との間に介在される。スライダ74,75はコイルバネ77により前方に付勢され、基体61に形成されているストッパ部61eに突き当たった状態となる。なお、この状態でスライダ74,75に形成されている延長部74b,75bの前端面は舌片62上に設けられている凸部62bの前面と同一位置に位置される。
【0055】
スライダ74,75に支持されたシャッタ76は基体61の前面61aに位置される。シャッタ76の板部76aは基体61の前面61aに開口する収容溝61cを蓋する大きさとされており、板部76aの長手方向両端部分と対向する基体61の前面61a部分、即ち収容溝61cの両側壁の前端面部分の上部側には傾斜面61gが形成されている。シャッタ76の板部76aの傾斜面部76dはこの傾斜面61gに沿うように位置される。
【0056】
インナーシェル83に保持された光学部材73はこの例ではリンク機構によりスライダ74,75のスライド方向と反対方向にスライドするように構成される。リンク機構は一対のリンク81,82を用いて構成されている。
【0057】
リンク81には両端に長穴81a,81bが形成され、中間部に支点穴81cが形成されている。同様に、リンク82には両端に長穴82a,82bが形成され、中間部に支点穴82cが形成されている。
【0058】
基体61には収容溝61cの幅方向両端から収容溝61cの上方に、ひさし状に突出して位置するように一対の支持部61hがそれぞれ突出形成されており、これら支持部61hの上面にそれぞれ支点軸61iが突設されている。また、一対の支持部61hの後方側には支持部61hに続いて上面が支持部61hより1段高くされた一対の突出部61jが、支持部61hと同様、ひさし状に突出されて形成されている。なお、これら突出部61jの互いに対向する前方側角部は斜めに切り欠かれて傾斜面をなすものとされている。
【0059】
一対のリンク81,82の各支点穴81c,82cには、それぞれ基体61に形成された支点軸61iが挿入係合される。また、各リンク81,82の一端側の長穴81b,82bには、インナーシェル83に突設されている連結軸83dが挿入係合され、この部分においてリンク81,82の各一端側は重なった状態となる。一方、各リンク81,82の他端側の長穴81a,82aには、それぞれスライダ74,75の基部74a,75aの上面に突設されている軸74e,75eが挿入係合される。
【0060】
一対のリンク81,82はそれぞれ基体61の支点軸61iに支持されて支点軸61iを中心に回動可能とされ、これらリンク81,82を介してスライダ74,75とインナーシェル83に保持された光学部材73とが連結されて連動するように構成される。
【0061】
上記のようにして光学部材73やスライダ74,75、シャッタ76、さらにはリンク機構が取り付けられた絶縁本体60にはシェル71が取り付けられる。シェル71は角筒状をなし、絶縁本体60を囲むように取り付けられる。シェル71の取り付けは絶縁本体60をシェル71の後方側から挿入することによって行われ、絶縁本体60の基体61の両側面に突設された係止突起61kがシェル71の両側面に形成された係止窓71aに係止されることによって絶縁本体60にシェル71が取り付け固定される。
【0062】
舌片62が位置する部分にはプラグ40の挿入嵌合部47が挿入される収容空間78がシェル71によって囲まれて構成される。この収容空間78を構成しているシェル71の上面及び底面には挿入されてくるプラグ40の挿入嵌合部47の外面(プラグ40の上シェル44の外面)に弾接する一対のバネ片71bがそれぞれ内側に切り起こされて形成されており、同様にシェル71の両側面にもバネ片71cがそれぞれ形成されている。また、シェル71の底面には遊端がバネ片71b,71cと逆に収容空間78の奥側に向いたバネ片71dがさらに形成されている。なお、シェル71の後端側には両側面からそれぞれ下方に突出延長され、基板90の穴92に挿入固定される端子部71eが形成されている。
【0063】
上記のような構成とされたレセプタクル70は収容空間78の奥側に光接続部を構成する光学部材73が位置され、光接続部より前方に電気接続部を構成する端子72の可動接片部72aが位置されており、可動接片部72aの遊端側は舌片62の上面上に若干突出されている。なお、一対のV溝73eよりなるアライメント構造を有する光学部材73は可動接片部72aが位置する舌片62の上面側において基体61に配置されており、その直前にシャッタ76が位置されている。
【0064】
次に、上述したプラグ40とレセプタクル70の接続について説明する。
【0065】
図7−1,7−2はプラグ40の挿入嵌合部47がレセプタクル70の収容空間78に挿入嵌合されて接続される様子を断面図で示したものであり、図8−1,8−2はその様子を一部破断した平面図で示したものである。なお、図8−1,8−2における(1)〜(4)の過程は、図7−1,7−2における(1)〜(4)の過程と対応している。以下、この過程順に説明する。
【0066】
(1)プラグ40の挿入嵌合部47がレセプタクル70の収容空間78の前方に位置される。
(2)挿入嵌合部47が収容空間78に挿入される。これにより、プラグ40の端子41とレセプタクル70の端子72の可動接片部72aとがまず図7−1(2)に示したように接触して電気接続される。なお、図7−1(2)及び図8−1(2)は挿入嵌合部47の前端(上シェル44の前端)がちょうどスライダ74,75の延長部74b,75bの前端面に当接した状態を示している。
(3)さらに、挿入嵌合部47を挿入すると、スライダ74,75は挿入嵌合部47に押されて後退する。このスライダ74,75の後退に伴い、シャッタ76はその軸部76f回りに回動しながらスライダ74,75と共に後退する。また、同時に、スライダ44,45の後退に伴い、リンク81,82が支点軸61i回りにそれぞれ回動し、これによりインナーシェル83に保持された光学部材73がスライダ74,75のスライド方向と反対方向にスライドし、つまり挿入嵌合部47に近づくように前進する。図7−2(3)、図8−2(3)はシャッタ76が開き、前進した光学部材73の、V溝73eが形成されている柱状部73dの先端がシャッタ76よりわずかに前方に位置した状態を示している。
(4)さらに、挿入嵌合部47を挿入すると、シャッタ76はさらに回動して後退し、図7−2(4)に示したように光学部材73及びインナーシェル83の前方から完全に退避して開いた状態となる。同時に、光学部材73はさらに前進する。これにより、プラグ40の光学部材42の半円柱状側面42dと光学部材73のV溝73eとが係合され、光学部材42と73とがアライメントされて光接続される。
【0067】
一方、プラグ40をレセプタクル70から引き抜き、挿入嵌合部47を収容空間78から離脱させると、スライダ74,75はコイルバネ77の弾性復元力により図7−1(1)、図8−1(1)に示した元の位置に復帰し、これに伴い、シャッタ76も元の閉じた位置に復帰し、同時に光学部材73も後退して元の位置に復帰する。この際、挿入嵌合時とは逆に光接続が開放された後、シャッタが閉じ、次いで電気接続が開放される。
【0068】
なお、シャッタ76が閉じた状態ではシャッタ76に設けられている一対のバネ片76cの先端の曲げ返し部76gは図7−1(1)及び図5Dに示したように基体61の傾斜面61gの上端に続いて傾斜面61gの後方に設けられている水平面61m上に位置されており、このバネ片76cによってシャッタ76の板部76aには基体61の傾斜面61gに当接する方向に、つまり閉じる方向に回動付勢力が与えられているため、閉じた状態でシャッタ76がガタつくことはない。また、基体61の水平面61mの後方にはシャッタ76が回動・退避する際に、シャッタ76のバネ片76cの移動を阻害することのないように逃げ61nが設けられている。傾斜面61gはシャッタ76が退避する方向に倣うように形成されており、これによりシャッタ76は良好に回動できるものとなっている。
【0069】
以上説明したように、この例によればプラグ40の挿入嵌合部47をレセプタクル70の収容空間78に挿入した際、まず電気接続が行われ、電気接続がほぼ完了した時点でレセプタクル70のシャッタ76が開いて光接続が行われるものとなっている。従って、プラグ40の端子41とレセプタクル70の端子72との摺動によって金属磨耗粉が発生したとしてもレセプタクル70の光学部材73への金属磨耗粉の付着はシャッタ76によって防止され、光学部材73に金属磨耗粉が付着するといった状況は発生しない。
【0070】
一方、プラグ40の光学部材42は挿入嵌合部47の前端に位置し、端子41よりも前方に配置されているため、端子41,72の摺動により金属磨耗粉が発生したとしても、この光学部材42には金属磨耗粉は付着しづらい。
【0071】
よって、この例によれば、光学部材73,42に金属磨耗粉が付着することによって光結合効率が悪化するといった問題を解消することができ、また光学部材73,42に設けられているアライメント構造に金属磨耗粉が付着することによって光軸ズレが生じたり、コネクタの嵌合自体が不可能になるといった問題も発生しない。
【0072】
なお、プラグ40側においては光接続部をなす光学部材42は挿入嵌合部47の前端に位置しているため、たとえ汚染されたとしても容易に清掃を行うことができる。これに対し、レセプタクル70側においては光接続部をなす光学部材73は清掃が困難な収容空間78の奥側に位置しているものの、上述したように光接続時以外はシャッタ76が閉じているため、汚染されることはなく、清掃は不要となる。また、シャッタ76は光接続時以外は閉じているため、金属磨耗粉の付着に限らず、例えば大気中の塵埃等の付着も抑制され、さらに光電複合コネクタを扱う作業者の網膜への光エネルギの暴露も防止される。
【0073】
さらに、この例ではレセプタクル70の光学部材73はシャッタ76を開閉させるスライダ74,75とリンク機構を介して連結されており、光学部材73はシャッタ76の開動作と連動して前進し、シャッタ76の閉動作と連動して後退するものとなっている。これにより、シャッタ76の開放時には光学部材73が前進して即座にプラグ40の光学部材42との光接続が行われるため、より確実・良好な防塵性能が得られるものとなっている。
【0074】
なお、このようにレセプタクル70の光学部材73が光接続時に嵌合方向に動く構造を有することにより、その分、嵌合ストロークを短くすることができ、それによりコネクタの全長を短くすることができる。
【符号の説明】
【0075】
30 絶縁本体 31 基部
32 舌片 40 プラグ
41 端子 42 光学部材
42b レンズ 42c 凹部
42d 半円柱状側面 43 フード
44 上シェル 45 下シェル
47 挿入嵌合部 50 ケーブル
51,52 光ファイバ 60 絶縁本体
61 基体 61c 収容溝
61d 溝 61g 傾斜面
61i 支点軸 61m 水平面
61n 逃げ 62 舌片
71 シェル 72 端子
73 光学部材 73b レンズ
73d 柱状部 73e V溝
74,75 スライダ 74d,75d 軸受穴
74e,75e 軸 76 シャッタ
76c バネ片 76f 軸部
77 コイルバネ 78 収容空間
81,82 リンク 81a,81b,82a,82b 長穴
81c,82c 支点穴 83 インナーシェル
83d 連結軸 90 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入嵌合部を有するプラグと、そのプラグの挿入嵌合部が挿入される収容空間を有するレセプタクルとよりなる光電複合コネクタの前記レセプタクルであって、
前記収容空間の奥側に光接続部を備え、その光接続部より前方に電気接続部を備え、
前記光接続部にはアライメント構造が形成されており、
前記アライメント構造を含む光接続部の直前に、前記プラグとの光接続時に開くシャッタが設けられ、
前記光接続部は前記シャッタの開動作と連動して前進し、前記シャッタの閉動作と連動して後退する構成とされていることを特徴とするレセプタクル。
【請求項2】
請求項1記載のレセプタクルにおいて、
基体と、その基体から突出延長された舌片とよりなる絶縁本体と、
前記絶縁本体を囲んで前記舌片が位置する部分に前記収容空間を構成するシェルと、
前記舌片の一方の板面に配置されて前記電気接続部を構成する端子と、
光ファイバの先端に取り付けられ、前記一方の板面側において前記基体に形成された収容溝に位置されて、前記アライメント構造を含む光接続部を構成する光学部材と、
前記収容溝を挟んで前記基体の幅方向両端に形成された溝に、前記挿入嵌合部の挿入方向にスライド可能に配された一対のスライダと、
前記一対のスライダをそれぞれ前記挿入方向と反対方向に付勢する一対のバネと、
リンク機構とを備え、
前記シャッタは板状とされて、その両端に互いに外向きに突設された軸部が前記一対のスライダにそれぞれ形成された軸受穴に係合され、
前記収容空間への前記挿入嵌合部の挿入により、前記端子が前記プラグの電気接続部と電気接続した後、前記スライダは前記挿入嵌合部の前端に押されて後退し、その後退に伴い、前記シャッタは前記軸部回りに回動しながら後退して開く構造とされ、
前記光学部材は前記リンク機構によって前記スライダのスライド方向と反対方向にスライドすることを特徴とするレセプタクル。
【請求項3】
請求項2記載のレセプタクルにおいて、
前記リンク機構は、
両端に長穴が形成され、中間部に支点穴がそれぞれ形成された一対のリンクと、
前記基体に突設され、前記一対のリンクの各支点穴にそれぞれ挿入係合された一対の支点軸と、
前記光学部材に取り付け固定されたインナーシェルに突設され、前記一対のリンクの各一端の長穴に挿入係合された連結軸と、
前記一対のスライダにそれぞれ突設され、前記一対のリンクの各他端の長穴にそれぞれ挿入係合された軸とによって構成され、
前記スライダのスライドに伴い、前記支点軸を中心に前記リンクが回動することで、前記スライダのスライド方向と反対方向に前記光学部材がスライドすることを特徴とするレセプタクル。
【請求項4】
請求項2又は3記載のレセプタクルにおいて、
前記シャッタは前記基体の前記舌片が突出されている前面に配され、その前面に開口する前記収容溝を蓋する大きさとされていることを特徴とするレセプタクル。
【請求項5】
請求項4記載のレセプタクルにおいて、
前記シャッタの前記両端部分の板面と対向する前記基体の前記前面部分に、前記シャッタが退避する方向に倣う傾斜面が形成され、
前記シャッタは前記傾斜面に沿う形状とされていることを特徴とするレセプタクル。
【請求項6】
請求項4又は5記載のレセプタクルにおいて、
前記シャッタを閉じる方向に付勢するバネ片が前記シャッタに一体形成されていることを特徴とするレセプタクル。
【請求項7】
請求項1乃至6記載のいずれかのレセプタクルと、前記プラグとよりなる光電複合コネクタであって、
前記プラグは前記挿入嵌合部の前端に光接続部を備え、その光接続部より後方に電気接続部を備えていることを特徴とする光電複合コネクタ。
【請求項8】
請求項7記載の光電複合コネクタにおいて、
前記プラグは、
基部と、その基部から突出延長された舌片とよりなる絶縁本体と、
前記絶縁本体を囲んで前記挿入嵌合部を構成するシェルと、
前記舌片の一方の板面に配置され、前記一方の板面と前記シェルとの間の空間に露出されて前記電気接続部を構成する端子と、
光ファイバの先端に取り付けられ、前記舌片の他方の板面に形成された凹部に位置されて、アライメント構造を含む光接続部を構成する光学部材とを備えていることを特徴とする光電複合コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−54057(P2012−54057A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194625(P2010−194625)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】