説明

免疫的に強化されたスペースをイン・ビボに創出するための装置、システム、および方法

【解決手段】本発明は、体内の限定された空間における哺乳動物免疫系の可溶性インヒビターの影響を除去することにより、免疫的に防護/強化されたイン・ビボのスペースを哺乳動物体内に創出する。限定された防護スペース内に、樹状細胞誘導因子および加療される哺乳動物由来の単球含有血液サンプルと併せて抗原の供給源を配置することによって、樹状細胞−抗原提示プロセスが進行・完了することが可能となる。一つまたは複数の可溶性インヒビターを吸着および/または結合するリガンドを防護スペースの周囲に配置することによって、防護/強化スペースが創出される。がん治療のために、該インプラントには患者のがん細胞を充填し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)項に基づいて、2009年2月28日出願の米国仮出願第61/156498号および2009年10月20日出願の米国仮出願第61/253077号の優先権を主張し、それら全ての開示内容を本明細書の一部として援用する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、哺乳動物の免疫系が抗原の識別および処理において適切に機能することを可能にするために、哺乳動物体内において免疫的に強化または防護されたスペースをイン・ビボに創出するための、医療装置、システム、および方法に関する。免疫的に防護/強化された該スペースは特に、イン・ビボにおける感染に対する抵抗、抗腫瘍ワクチンの誘導、または自己免疫の軽減の目的で、
免疫系の可溶性インヒビターの影響を除去することにより、誘導された樹状細胞による抗原提示プロセスが進行・完了することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6156305号
【発明の概要】
【0004】
全世界で毎年1200万人ががんに罹患し、そのうち約750万人が死亡するとされている。現在の趨勢では2010年までに、がんは単一の死因としては世界的に主要なものの一つになると予想される。
がんのステージ3より後では、化学療法薬および放射線を用いる現行のがん治療法の効果は絶望的である。がんのステージ3より後、これらの戦略によって得られる患者の余命延長期間は、多くの場合は若干に過ぎない。しかし大多数の患者において、それは極度の苦痛およびクオリティー・オブ・ライフの低下という大きな代償と引き換えに購われている。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
将来的に最も有望ながん治療のアプローチは免疫系の制御によるものであると、多くのがん専門家が非公式に示唆している。自然寛解の症例が臨床的に確認されており、免疫系が適切に応答できいことががんの中心的な問題であるということが示唆される。肉体はがんに対する機能的なワクチンを産生できず、そのためにがんは制御不能なほどに成長することが可能となる。
【0006】
様々なサイトカイン、サイトカイン受容体、およびガングリオシド(スフィンゴ糖脂質)は高濃度において免疫抑制性であることが知られており、これらはまとめて、免疫系および免疫系機能の可溶性インヒビター(本明細書では以後「可溶性インヒビター」と呼ぶ)として知られている。次の例示リストは、免疫系の可溶性インヒビターのクラスの、既知のメンバーである:ガングリオシド;全ての既知の増殖因子、特にTNF−アルファー、TGF−ベータおよび変異型、PDGF、EGF、IGFおよび変異型、FGFおよび変異型、ならびにVEGF;既知の全ての炎症性サイトカイン受容体、特にTNF−アルファーファミリー−TNF−R1、TNF−R2、CD40L、NGFR、TRAILおよび変異型、FASL、IL−1R1、IL1R2、IL−2R、IL−3R、IL−5R、IL−6R、IL−7R、GM−CSFR、IL−9R、IL−12R、ならびにエリスロポエチン受容体。多くの患者および大多数のがん患者においては一つまたは複数のインヒビターのレベルが上昇しており、そのために患者の免疫系は減弱し、肉体が細菌、ウィルス、およびがんを含む病原体を抑制することが妨げられる。
【0007】
本明細書の一部として援用する米国特許第6156305号明細書は、シングル・チャンバーのインプラント装置を用いてがん細胞を哺乳動物体内にインプラントすることによって、がんを予防し治療する方法を開示している。該腫瘍細胞は、患者自身の腫瘍細胞、または患者の腫瘍細胞中に存在する抗原を含有する加工腫瘍細胞であり得る。該インプラントの境界は該腫瘍細胞と患者の免疫系との細胞間接触は妨げるが、細胞内物質がチャンバーを透過することは許容する。米国特許第6156305号特許の主張によれば、腫瘍を持つ実験動物における寛解率は60%である。
【課題を解決するための手段】
【0008】

簡潔に述べれば、本発明によって、抗原に対する免疫応答を誘発するためのインプラント装置で哺乳動物が治療される。該抗原は、イン・ビボの防護されたスペースにおいて哺乳動物の免疫系に対して提示される。樹状細胞のような免疫細胞に対する抗原提示のための防護スペースを含有するインプラント装置が、哺乳動物に対して提供される。該防護スペースの周囲には、可溶性インヒビター吸着剤が配置される。該インプラント装置の防護スペースの最内部には、一つもしくは複数の抗原、または一つもしくは複数の抗原を含有する細胞が収容される。また単球から活性化樹状細胞が形成するのを誘導するために、一つまたは複数の樹状細胞誘導因子と該哺乳動物から得た単球含有血液サンプルとが、インプラント装置の防護スペースに収容される。充填済みの該インプラント装置は哺乳動物体内にインプラントされ、実質的に可溶性インヒビター・フリーである防護スペース内で免疫応答が進行することが可能となる。活性化樹状細胞は形成した後にインプラントから放出されることが可能となり、哺乳動物の脈管系を循環することが可能となる。可溶性インヒビター吸着剤は可溶性インヒビターと結合し、誘導された樹状細胞に対する抗原提示が進行・完了することが可能になる。抗原は、細菌抗原、ウィルス抗原、およびがん細胞関連抗原のようないかなる抗原でもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の様々の医療用インプラント装置および関連する方法は、免疫系の可溶性インヒビターの影響を除去することによって、免疫的に防護/強化されたイン・ビボのスペースを創出する。イン・ビボにおける感染に対する抵抗、抗腫瘍ワクチンの誘導、または自己免疫状態の軽減の目的で、誘導された樹状細胞による抗原提示プロセスが、免疫的に防護/強化された該スペース内で進行・完了する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】外科的小切開によって哺乳動物体内にインプラントされる、医療用インプラント装置を示す。
【図2】注射器によって哺乳動物体内にインプラントされる、医療用インプラント装置ペレット剤を示す。
【図3】3個の同心性中空糸膜に形成した、本発明の医療用インプラント装置の断面図を示す。
【図4】2個の同心性中空糸膜に形成した、本発明の医療用インプラント装置の断面図を示す。
【図5】可溶性インヒビターのリガンドおよび樹状細胞増殖因子が中空糸膜に共有結合した、横断的な2個の中空糸膜に形成した、本発明の医療用インプラント装置の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は概ね、体内の限定された空間における哺乳動物免疫系の可溶性インヒビターの影響を除去することによって、免疫的に防護/強化されたイン・ビボのスペースを哺乳動物体内に創出する。限定された該防護スペース内に、樹状細胞誘導因子および加療される哺乳動物由来の単球含有血液サンプルとともに抗原の供給源を収容することによって、樹状細胞−抗原提示プロセスが進行・完了することが可能になる。一つまたは複数の可溶性インヒビターを吸着および/または結合するリガンドを防護スペースの周囲に配置することによって、防護/強化スペースが創出される。
【0012】
実施形態の一つとしては、本発明の医療用インプラント装置には、(a)生体適合性の外容器と;(b)(i)一つまたは複数の抗原、(ii)一つまたは複数の樹状細胞誘導因子、(iii)該インプラント装置のレシピエント対象となる哺乳動物由来の、バフィー・コートサンプルのような血液サンプルを含有する単球、および(iv)哺乳類免疫系に対する可溶性免疫インヒビターと結合する吸着剤を含有する、免疫的に防護/強化された内部スペースと;そして、(c)プラグとが、含まれる。該プラグは、免疫的に防護された該内部スペースにおいて活性化樹状細胞が形成されるのに充分な程度に樹状細胞−抗原提示プロセスが進行した後で、免疫的に防護/強化された該内部スペースで形成された活性化樹状細胞が哺乳動物の脈管系に放出されることを可能にする。
【0013】
該可溶性インヒビター吸着剤の配置によって、免疫的に防護された内部スペースが特定される。インプラントの寸法は本発明の実施には重要でなく、該インプラントは、外科的小切開を用いてインプラントできる長さ数センチメートルのものから、例えば12または16ゲージ注射針の注射器を用いて注入可能な小型ペレット剤までであり得る。
あるいはまた、哺乳動物用の該医療用インプラント装置には、哺乳動物体内にインプラントした際に該インプラント装置内への血液/血漿の流入を許容する生体適合性の外容器と、(i)一つまたは複数の抗原、(ii)白血球誘因因子、および(iii)哺乳類免疫系に対する可溶性免疫インヒビターの吸着剤を含有する免疫的に防御された内部スペースとが、含まれる。それによって、活性化した成熟樹状細胞を形成するのに充分な程度に、樹状細胞抗原提示プロセスが進行することが可能となる。
【0014】
本発明はまた別の態様においては、哺乳動物のがん治療に使用される医療用インプラント装置に関する。該インプラントには、(a)生体適合性の多孔性外容器と、(b)哺乳動物免疫系の可溶性インヒビターと結合するリガンドを含有する該生体適合性容器内の辺縁領域と、(c)がん細胞抗原、一つまたは複数の樹状細胞誘導因子、およびがん治療を受ける哺乳動物由来の白血球(バフィー・コートサンプル)サンプルを含有する内部領域とが、含まれる。辺縁領域内の可溶性インヒビター・リガンドの配置によって内部領域が特定され、内部領域でバフィー・コートサンプルに含有される単球から形成された樹状細胞に対する抗原提示を可能にする、イン・ビボの防護スペースが提供される。生分解性プラグによって、該内部領域の活性化樹状細胞が哺乳動物の脈管系に放出されることが可能となる。生分解性プラグは、約3から約20日、好ましくは約5から7日のように、いかなる期間に亘って分解するようにデザインされてもよい。辺縁領域と内部領域とは、抗原性タンパク質、不活化ウィルス、サイトカイン類、およびサイトカイン受容体などの細胞内成分に対して透過性の膜で分離される。
【0015】
本発明のさらなる態様においては、天然がんワクチンの誘導を促進するために、皮下インプラントが提供される。これは以前には試みられたことのないアプローチによって成される。該装置は理想化された免疫空間を創出し、その中ではワクチンを作る天然のプロセスが、がんにより損傷/影響を受けた患者の免疫系から防護される。患者自身の血球またはその画分が回収され、本発明のインプラント内に充填される。装置内の別のチャンバーには、がん細胞、好ましくは患者のがん/腫瘍から得たがん細胞、およびがんを免疫系に提示するその他の物質が充填される。該インプラントは簡単な外科手技によって皮下に埋入され、患者自身の体がインキュベータとして使用される。または、該インプラントはペレット剤形に小型化され、注射器を用いて注入され得る。該インプラント内では、ワクチンの工程が進行する。予定時間になるとインプラントは全身に向けた貴重な積み荷である免疫細胞を産出し、がんに対するワクチンがインプラントから放出される。放出された免疫細胞は最も近傍のリンパ節まで移動し、そこでワクチンが増幅され、抗原提示細胞からT細胞およびB細胞として全身に伝播する。
【0016】
本発明の実施において特に重要なのは、がん治療のための本発明の医療用インプラント装置を用いて、人間の患者が治療されるということである。樹状細胞のような患者の免疫細胞に対する抗原提示のための防護スペースを含有するインプラント装置が患者に提供される。該防護スペースの周囲には可溶性インヒビター吸着剤が配置される。患者の免疫系の可溶性インヒビターを結合または吸着するリガンドを供給し、好ましくはインプラント装置の辺縁領域の周辺に配置することによって、該防護スペースが形成される。インプラント装置の防護スペースの最内部の、細胞内成分に対しては透過性だが細胞に対しては非透過性のチャンバー内に、患者のがん細胞サンプルが充填される。また活性化樹状細胞の形成を誘導するために、一つまたは複数の樹状細胞誘導因子および患者から得られたバフィー・コートサンプルまたは白血球画分のような患者血液の単球含有画分が、防護スペース内、がん細胞収容チャンバーよりも外に充填される。
【0017】
さらに、白血球誘因物質も該防護スペース内に含有され得る。充填済みの該インプラント装置は患者体内にインプラントされ、防護スペース内で免疫応答が進行することが可能となる。該防護スペースには、リガンドが結合する可溶性インヒビターが実質的に存在しない。該免疫応答には、活性化樹状細胞へのがん抗原の提示が含まれる。活性化樹状細胞が形成されてがん抗原との反応が可能になった後、単球含有画分(例えばバフィー・コート)を収容する医療用インプラント装置の該当部をシールする生分解性プラグの分解によって、該細胞がインプラントから放出され、哺乳動物の脈管系を循環することが可能となる。該可溶性インヒビター吸着剤によって、誘導された樹状細胞に対する(サンプルがん細胞由来の)抗原提示が進行・完了することが可能となる。該インプラント装置は約9日以上後に取り外され、新しい同インプラント装置と交換され得る。これは複数回行うことができる。
【0018】
本発明は概ね、体内のある特定の空間における哺乳動物免疫系の可溶性インヒビターの影響を除去することによって、免疫的に防護/強化されたイン・ビボのスペースを哺乳動物体内に創出する。この特定の防護スペース内に、一つまたは複数の樹状細胞誘導因子および加療される哺乳動物由来の白血球サンプル(例えばバフィー・コート)とともに抗原の供給源を置くことによって、可溶性インヒビターの実質的不在下で樹状細胞−抗原提示プロセスが進行・完了することが可能となる。一つまたは複数の可溶性インヒビターを吸着および/または結合するリガンドを防護スペースの周囲に配置することによって、防護/強化スペースが創出される。
【0019】
本発明の実施形態の一つにおいては、インプラント装置は生体適合性の3個の同心性中空糸膜から形成され、長さ約5センチメートル、外径約5から20ミリメートルであり、小切開によってインプラントされ得る。別の実施形態においては、インプラント装置は直径約0.5ミリメートルから約2ミリメートル、長さ約3から10ミリメートル以上の注射ペレット剤を含み、注射器を用いてインプラントされ得る。該注射ペレット剤も、3個の同心性中空糸膜の構成物によって形成され得る。
【0020】
インプラント装置の精密な寸法および形状は、本発明の実施にとって重要ではない。該装置の最外部は、免疫系に干渉する特定の化学的メッセンジャー、すなわち可溶性インヒビターを吸着するビーズを充填され得、該装置内の防護スペースを形成する。中央部すなわち防護スペースには、(a)患者自身の免疫細胞、例えばバフィー・コート、(b)樹状細胞増殖因子、および(c)がん細胞又はがんマーカー(抗原)が収容され得、該がん細胞又は抗原は、細胞に対しては非透過性だが細胞内成分に対しては透過性の独立した区画内に収容される。時限型の生分解性プラグは数日に渡って分解して最終的には完全に分解し、防護スペース内の活性化免疫細胞を患者の脈管系に放出して、患者の血流中にワクチンを供給する。
【0021】
本発明の実施においては、抗原に対して免疫応答を誘起するためのインプラント装置を用いて哺乳動物が治療される。該抗原は、イン・ビボの防護スペースにおいて、哺乳動物の免疫系に対して提示される。該哺乳動物はいかなる哺乳動物でもよいが、ヒト、ヒト以外の霊長類、犬、猫、馬、動物園動物、受賞したような価値の高い繁殖牛、およびその他の何らかの商業的に高価な家畜が好ましい。本明細書のヒトに関するいかなる記載も、他の哺乳動物に対して等しく適用可能である。
【0022】
次の定義は、本発明の実施に当って適用される。
「白血球画分」または「白血球含有画分」なる用語は、単球を含む白血球を含有する哺乳動物血液の何らかの画分を指す。バフィー・コートは白血球画分である。
【0023】
用語「バフィー・コート」は、密度勾配遠心後の抗凝固剤処理済み血液サンプルの、白血球および血小板のほとんどを含む画分を指す。
【0024】
本明細書の用語「がん」および「腫瘍」は、固形腫瘍、転移性腫瘍細胞、ならびに血液、骨髄、およびリンパ系の非固形がんを含む、悪性腫瘍を指す。「がん」および「腫瘍」には次が含まれる:癌腫(上皮細胞由来のがん)、肉腫(間葉組織由来)、リンパ腫(リンパ組織の固形腫瘍)、および白血病(骨髄または血液由来の、リンパ球またはその他の造血細胞の腫瘍)。具体的ながんには、膀胱がん、乳がん、黒色腫、肺がん、腎臓がん、子宮内膜がん、結腸および直腸がん、脳がん、甲状腺がん、膵臓がん、前立腺がん、非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚がん(基底細胞および扁平上皮がんを含む)、ならびに白血病が含まれる。
【0025】
樹状細胞のような免疫細胞に対する抗原提示のための防護スペースを含有するインプラント装置が、哺乳動物に対して提供される。防護スペースの周囲には、可溶性インヒビター吸着剤が配置される。一つまたは複数の抗原、又は一つ又は複数の抗原を含有する細胞が、該インプラント装置の防護スペースの最内部またはチャンバーに充填される。この最内部チャンバーは、防護スペースの最内部に抗原または抗原細胞を収容し、防護スペース内における他の細胞との細胞間接触と哺乳動物宿主中への細胞の放出とを防止する。しかし防護スペース内に含有される細胞内成分に対しては、チャンバー壁は透過性である。成熟樹状細胞の形成を誘導するために、一つまたは複数の樹状細胞誘導因子と、加療される哺乳動物から得たバフィー・コートサンプルのような単球含有血液サンプルとが、同じくインプラント装置の防護スペース内に収容される。防護スペース内の抗原は、成熟過程の樹状細胞に対して提示される。充填済みの該インプラント装置は哺乳動物体内にインプラントされ、実質的に可溶性インヒビター・フリーの防護スペース内で、免疫応答が進行することが可能となる。
【0026】
該可溶性インヒビターは、防護スペースの周囲に存在する可溶性インヒビター吸着剤が含有する特異的なリガンドによって吸着される。防護スペース内で活性化樹状細胞が形成された後、活性化樹状細胞はインプラントから放出され、哺乳動物の脈管系を循環することが可能となる。該可溶性インヒビター吸着剤によって誘導され、成熟中の樹状細胞に対する抗原提示が進行・完了することが可能となる。抗原は、細菌抗原、ウィルス抗原、およびがん細胞または自己免疫疾患に関連する抗原のような、いかなる抗原でもあり得る。抗原はいかなる由来の抗原でもあり得、一例としてリコンビナントの抗原決定基、不活化ウィルス、不活化ウィルス粒子、細菌細胞、およびがん細胞が含まれるが、限定はされない。本発明の実施にとって抗原の正確な量は重要ではなく、通常は最少約0.05マイクログラムの抗原が使用され、好ましくは0.1マイクログラム以上のがん細胞がインプラント装置の最内部に加えられる。
【0027】
本発明のインプラント装置は、生体適合性ポリマー、バイオポリマー、または複合材料の多孔性膜を用いて、当業者に公知の生産技術によって作製され得る。孔径が約0.6から約60マイクロメートル以上のポリマー膜が都合良い。好ましくは、内部膜(下記)は孔径約1マイクロメートル未満であり、外部膜(下記)は孔径約5マイクロメートル未満である。最外部膜はインプラント外周辺の血管新生を促進するべきであり、血管新生を促進する目的のためには、孔径が約60マイクロメートルの膜が好ましい。全ての膜は、細胞内成分が自由に該膜を通り抜けることが可能でなくてはならない。適切なポリマー膜には、公称孔径が1.2から8.0マイクロメートルのセルロース混合エステル;公称孔径が0.8から8.0マイクロメートルの酢酸セルロース;および公称孔径が1.0から15マイクロメートルのPTFE/ポリエステルが含まれる。本明細書に援用する米国特許第5964804号明細書を参照されたい。
【0028】
活性化樹状細胞を患者の循環系に放出するために使用する本発明の生分解性プラグは、生分解性で生体適合性のいかなるポリマーからも作製され得る。生体適合性の生分解性ポリマーは、当業者には公知である。好ましいポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカーボネイト・コポリマー、ポリ(ε−カプロラクトン)ホモポリマーおよびコポリマー、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリラクチドおよびポリグリコール酸のコポリマー、ラクチドおよびラクトンのコポリマー、多糖、ポリ酸無水物、ポリスチレン、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、メタクリル酸およびアクリル酸のコポリマー、ヒドロキシメチルメタクリレートおよびメチルメタクリレートのコポリマー、ポリアミノ酸、ならびにポリペプチドからなるグループから選択される。生分解性プラグの用途に好ましい生体適合性の生分解性ポリマーには、あらゆる大手サプライヤーのポリマー、例えばピュラック・バイオマテリアルズ社の「PURASORB」(登録商標)、ベーリンガー・インゲルハイム社の「RESOMER」(登録商標)、ならびにレイクショア社およびラクテル/デュレクト社の製品が含まれる。
【0029】
該ポリマーの分解時間を加速する因子には、例えば、より親水性が高い骨格鎖、より親水性が高い末端基、より多くの加水分解性基を含む骨格鎖、より低い結晶度、より高い多孔性、およびプラグ厚のようなポリマープラグの機械的または物理的特性の改変が含まれる。当業者はこれらの配慮事項に留意し、過度の実験によらずに該ポリマープラグの分解時間を最適化し得る。
【0030】
本発明の好ましい実施形態の一つにおいては、活性化免疫細胞が形成される装置部位に隣接する医療用インプラント装置の末端部が、生分解性のプラグによって形成される。該プラグの分解によって活性化免疫細胞が患者の循環系に放出され、最終的にはリンパ節に到達することが可能となる。例えば該生分解性プラグは、図3の内部チャンバー32、図4の外部チャンバー/区画42、および図5の外部チャンバー/区画52の末端部を形成する。該生分解性プラグは、標準的な生産技術を用いて、該医療用インプラント装置の末端に取り付けられる。患者の単球血液画分、例えばバフィー・コートを収容するチャンバーは、生分解性プラグを通してバフィー・コートをチャンバー内に注入することによって充填される。
【0031】
抗原(例えばがん細胞)を収容する該医療用インプラント装置の最内部チャンバーには、好ましくは隔膜が含まれ、隔膜を通して抗原収容チャンバー内に抗原が注入される。抗原の供給源として細胞が使用される場合、該細胞はこのチャンバー内に注入され、保持される。該隔膜は、患者の循環系への細胞の漏出を防止する。例えば隔膜は、図3の最内部チャンバー31、図4の内部抗原チャンバー/区画41、および図5の内部抗原チャンバー/区画51の末端部を形成する。該隔膜は、標準的な生産技術を用いて医療用インプラント装置の末端を形成する。抗原、例えばがん細胞を収容するチャンバーは、隔膜を通して該抗原/細胞をチャンバー内に注入することで充填される。
【0032】
本発明の医療用インプラント装置の好ましい構成には、(a)最内部の中空糸スペース内に収容された抗原と、(b)中間部の中空糸スペース内の一つまたは複数の樹状細胞増殖因子および患者の単球と、(c)最外部の中空糸スペース内の可溶性インヒビター吸着剤とを備える、3個の同心性中空糸膜が含まれる。該可溶性インヒビター吸着剤は、患者の免疫系の可溶性インヒビターと結合するリガンドを含有するビーズからなるマトリクスであり得、患者のがん細胞の抗原と患者の免疫系、例えば活性化樹状細胞とが充分に反応することを可能にする防護スペースを、医療用インプラント装置内に提供する。単球は通常、加療される哺乳動物から得られる白血球画分またはバフィー・コートサンプルを供給される。
【0033】
本発明のインプラント内の抗原は、それに対して患者による適切な免疫応答が所望されるところの、いかなる抗原でもあり得る。抗原には、細菌抗原、ウィルス抗原、腫瘍抗原、およびがん細胞中に存在するいかなる抗原も含まれる。抗原は、リコンビナント抗原ドメイン、精製した抗原タンパク質、または抗原を含有/発現する細胞であり得る。本発明のインプラント装置をがん治療に使用する場合、抗原は自己がん細胞であるか、または該患者のがんと共通の抗原を持つ同種がん細胞である。該同種がん細胞は別の患者から外科的に摘出され得、またはイン・ビトロのがん細胞系統から得られる。本発明の医療用インプラント装置に使用される抗原は、好ましくは、加療される患者自身の腫瘍から公知の外科手技を用いて回収した自己がん細胞である。
【0034】
該抗原は、インプラント装置の内部区画(抗原区画)に収容される。区画壁は、細胞内成分に対して透過性だが細胞に対しては非透過性である。細菌およびがん細胞は内部区画に収容され、加療される哺乳動物の血流中に放出されないことが重要である。細菌細胞またはがん細胞は回収されて内部抗原区画に収容され、哺乳動物血流中への細胞の流出を防止するために該区画はシールされる。あるいはまた、抗原、好ましくはがん細胞が内部の抗原収容区画に直接注入されることを許容する隔膜を持つ、本発明のインプラント装置が作製される。ある好ましい実施形態においては、外科手技または針生検によってがん患者からがん細胞を回収し、内部抗原区画に収容した後にシールするか、または隔膜を通して内部抗原区画に直接注入する。
【0035】
内部抗原区画が細胞を含有する場合、該内部抗原区画内には任意に研磨剤を加え得る。哺乳動物体内にインプラントした場合に、該研磨剤は内部抗原区画における細胞の過増殖を抑制する。研磨剤は細胞膜を機械的に破壊し、該インプラントが哺乳動物体内にインプラントされている間、内部抗原区画に含有される細菌またはがん細胞の過増殖を抑制すると考えられる。該研磨剤は研磨ビーズまたは研磨ファイバーであり得る。研磨ビーズは、研磨性の無機化合物でコートされ得る。適切な研磨ファイバーには、シリコンファイバー・ウィスカーおよびセラミック・ウィスカーが含まれる。
【0036】
好ましい実施形態においては、本発明の医療用装置の防護スペース内には樹状細胞誘導因子が存在する。それらの因子は、患者の単球と反応して樹状細胞を形成させる、いかなる形態でも存在し得る。樹状細胞誘導因子はポリマー・ビーズに結合されるか、または多孔性ポリマー・ビーズに浸潤させられ得、そこから防護スペース内に拡散し得る。該ビーズは、ピアース・ウルトラリンク・ビーズのような市販のいかなるクロマトグラフィーカラム用ビーズでもよい。ビーズの寸法は本発明の実施に重要ではなく、通常は直径50から100マイクロメートルである。適切なビーズには、高度にクロスリンクされたビスアクリルアミド/アゾラクトンコポリマー・ビーズが含まれる。樹状細胞誘導因子は好ましくは、当業者に公知の標準的な生産技術を用いて、該医療用装置内のポリマー膜に共有結合される。ビーズに結合/浸潤するかまたは膜に結合した樹状細胞誘導因子には、IL−4、GM−CSF、IL−10、IL−13、IL−17サイトカインファミリー、およびIL−18サイトカインファミリーが含まれる。樹状細胞誘導因子は、単球を含有するバフィー・コートもしくは白血球画分とともに本発明のインプラント装置の防護スペース内に収容されるか、または該装置内の単球と接する適切な膜に結合される。
【0037】
免疫系の可溶性インヒビターは公知であり、ガングリオシド;全ての既知の増殖因子、特にTNF−α、TGF−βおよび変異型、PDGF、EGF、IGFおよび変異型、FGFおよび変異型、ならびにVEGF;既知の全ての炎症性サイトカイン受容体、特にTNF−αファミリー−TNF−R1、TNF−R2、CD40L、NGFR、TRAILおよび変異型、FASL、IL−1R1、IL1R2、IL−2R、IL−3R、IL−5R、IL−6R、IL−7R、GM−CSFR、IL−9R、IL−12R、ならびにエリスロポエチン受容体を含む。一つまたは複数の該可溶性インヒビターに対するリガンドは固相担体に結合され、本発明のインプラント内に防護スペースを作るように、該インプラント内に配置される。可溶性インヒビターのリガンドは、本明細書に記載の樹状細胞誘導因子の送達に用いられるようなポリマー・ビーズに結合される。好ましくは、当業者に公知の標準的な生産技術を用いて、該リガンドは医療用装置内のポリマー膜に共有結合される。その内側に該リガンドを結合する膜は、抗原を含有する最内部膜よりも外側の膜であるべきである。好ましいリガンドには、TGF−β、TNF−R1、およびTNF−R2と結合するものが含まれる。
【0038】
該インプラントは、体内のいかなる皮下組織にも埋入され得る。適切な位置には、腕部内側、側胸部の腋下正中線部位、側腹部、および大腿部内側が含まれる。該インプラントは、原発腫瘍およびいかなる転移巣の位置からもできるだけ離して配置するのが好ましい。インプラントの埋入は、外来診察施設における軽微な外科手技で簡便に行われ得る。生分解性プラグが分解した後、該インプラントは取り外される。健康管理医が必要と見なした場合、追加のインプラントが別の部位に投与され得る。インプラントの取り外しと同時に、新しいインプラントが投与され得る。あるいはまた、追加のインプラントには1または2週間の間隔を置き得る。別の実施形態においては、2つ以上のインプラントが同時にインプラントされ得る。患者のがんは、がんマーカーのレベル測定のための血液検査、X線検査のような、標準的な診断/モニタリング技術を用いてモニターされる。
【0039】
本発明の医療用インプラント装置は患者に対して何時でも投与され得る。しかし、化学療法または放射線治療の加療中および直後のような患者の免疫系が損傷状態にない時に該インプラントを投与するのが好ましい。患者の白血球数が正常範囲にあれば、そこで本発明のインプラントを投与するのが好ましい。患者の免疫系を強化するその他の生活様式の選択肢が有効である。これらの生活様式の選択肢には、十分な睡眠、適度の運動、低インシュリン食、EPAおよびDHA、また冷水海水魚(サケ、マグロ、イワシ、サバなど)中に存在するようなその他のオメガ−3脂肪酸の消費、オメガ−6脂肪酸の低減、食餌からのトランス脂肪酸の排除、およびα−リノレン酸の制限的摂取などが含まれる。またビタミンC、コエンザイムQ−10およびビタミンDのような免疫増強剤が、摂取され得る。
【0040】
本発明の好ましい実施形態の一つにおいては、望ましい部位の小切開中に充填済みのインプラントを埋入するか、または注射器でインプラント・ペレット剤を注入することで、充填済みのインプラントが患者体内に埋入される。好ましくは、少なくとも生分解性プラグが分解して活性化免疫細胞を患者の脈管系に供給するまで、該インプラントは患者体内に置かれる。その後に新しい同インプラントが埋入され、患者の治療反応性に応じて望ましい回数反復され得る。
【0041】
図1は、本発明の医療用インプラント装置の実施形態の一つ12の模式図である。実線17は、医療用インプラント装置の中心軸を示す。長さ約50ミリメートルの3個の同心性中空糸が、次の通り充填される:最内部の中空糸13は、血漿(または他の賦形剤)中の腫瘍細胞または腫瘍抗原で充填され、腫瘍細胞が最内部中空糸から漏出しないように末端部14がシールされる。中間部(最内部に対して二番目の区画)中空糸15には、一般に「バフィー・コート」と呼ばれ、マクロファージ、T細胞、B細胞、およびその他の白血球を含んでなる、患者血液由来の細胞混合物が充填される。また中間部中空糸には、樹状細胞誘導因子を浸潤させた20−100ミクロン・ビーズが含まれる。該樹状細胞誘導因子には、次に掲げるものの一つまたは複数が含まれる:IL−4、GM−CSF、IL−10、IL−13、およびTNF−α、場合により併せてIL−17またはIL−18ファミリー・サイトカインのメンバー。該中間部中空糸には生分解性ポリマープラグ(図には示さない)も装備され、5から7日以上を経てプラグが分解すると、活性化樹状細胞が中間部中空糸から患者の脈管系に放出されることが可能となる。免疫系の可溶性インヒビターを吸着し、その濃縮除去槽として働く目的で、外部(最外部)中空糸16には、結合リガンドで飽和した20−100ミクロン・ビーズが充填される。患者の脈管系へのビーズの流出を防止するために、該外部中空糸はシールされる。
【0042】
記載の該医療用インプラント装置は外径が約5ミリメートルであり、小切開によって患者体内にインプラントされ、抗原提示プロセスを免疫系の可溶性インヒビターから強力に防護し、インヒビターによるアネルギーを免疫応答が克服するのを促進する。該免疫応答は、中心部中空糸から拡散する抗原に白血球画分を暴露する際に、きわめて局所的に集中した樹状細胞誘導性サイトカインおよびT細胞活性化因子が存在することによっても誘起される。
【0043】
図2は、本発明の医療用装置の実施形態の一つである、注射用インプラント・ペレット剤22の模式図である。実線27は、該医療用インプラント装置の中心軸を示す。長さ約5ミリメートルの3個の同心性中空糸が、次の通り充填される:最内部中空糸23は、血漿(または他の賦形剤)中の腫瘍細胞または腫瘍抗原で充填され、腫瘍細胞が最内部中空糸から漏出しないように末端部24がシールされる。中間部中空糸25には、一般に「バフィー・コート」と呼ばれ、単球、マクロファージ、T細胞、B細胞、および他の白血球を含んでなる、患者血液由来の細胞混合物を充填する。また中間部中空糸には、樹状細胞誘導因子を浸潤させた20−100ミクロン・ビーズ(図には示さない)が含まれる。該樹状細胞誘導因子には、次に掲げるうちの一つまたは複数が含まれる:IL−4、GM−CSF、IL−10、IL−13、およびTNF−α、場合により併せてIL−17またはIL−18ファミリー・サイトカインのメンバー。該中間部中空糸には生分解性ポリマープラグ(図には示さない)も装備され、5から9日以上を経てプラグが分解すると、活性化免疫細胞が中間部中空糸から患者の脈管系に放出されることが可能となる。免疫系の可溶性インヒビターを吸着し、その濃縮除去槽として働く目的で、外部中空糸26には、結合リガンドで飽和した20−100ミクロン・ビーズが充填される。患者の脈管系へのビーズの流出を防止するために、該外部中空糸はシールされる。外径約1から2ミリメートルの記載の該医療用インプラント装置は、注射器(12−16ゲージ注射針)を用いて患者体内にインプラントされ、抗原提示プロセスを免疫系の可溶性インヒビターから強力に防護し、インヒビターによるアネルギーを免疫応答が克服するのを促進する。該免疫応答は、中心部中空糸から拡散する抗原に白血球画分を暴露する際に、きわめて局所的に集中した樹状細胞誘導性サイトカインおよびT細胞活性化因子が存在することによっても誘起される。
【0044】
図3は、がん治療に使用される本発明のインプラント30の断面図であり、3個の同心性中空糸膜34、35、および36から形成される。最内部中空糸膜36によって、加療される患者由来のがん細胞(図には示さない)を収容する最内部チャンバー31が形成される。中空糸膜36は細胞に対しては非透過性であるが、抗原、サイトカイン、およびサイトカイン受容体などの細胞内成分に対しては透過性である。がん細胞(図に示さない)が患者の脈管系に放出されないように、中空糸膜36の両端はシールされる。中間部中空糸膜35によって中間部チャンバー32が形成され、該チャンバーは、加療される患者由来のバフィー・コートサンプル(図には示さない)を、一つまたは複数の樹状細胞誘導因子(図には示さない)とともに収容する。中空糸膜35は細胞に対しては非透過性だが、抗原、サイトカイン、およびサイトカイン受容体などのような細胞内成分に対しては透過性である。中空糸膜35の一端はシールされ、他端は生分解性のポリマープラグ(図には示さない)でシールされる。該プラグは経時的に分解し、内容物である患者の免疫細胞とその他の細胞内成分とが患者の脈管系に放出されるのを可能にする。免疫系の可溶性インヒビターと結合するリガンドを持つマトリクス(図には示さない)を含有する最外部チャンバー33は、最外部中空糸膜34によって形成される。通常そのようなリガンドは、不活性のポリマー・ビーズに結合される。中空糸膜34は細胞に対しては非透過性だが、抗原、サイトカイン、およびサイトカイン受容体などのような細胞内成分に対しては透過性であって、また血管新生を促進し、患者の免疫系による封入を阻害する。可溶性インヒビター・マトリクスが患者の脈管系に流出しないように、中空糸膜34の両端はシールされる(図には示さない)。がん患者の脈管系を循環する可溶性インヒビターは、該医療用インプラント装置に侵入できるが、インプラント装置30の最外部33が含有するリガンドによって吸着される。該リガンドによって、医療用インプラント装置30の中間部32および最内部31内に防護スペースが提供される。
【0045】
図4は、がん治療に使用される本発明のインプラント40の断面図であり、2個の同心性中空糸膜43および44から形成される。最内部中空糸膜43によって、加療される患者由来のがん細胞(図には示さない)を収容する内部抗原チャンバーまたは区画41が形成される。中空糸膜43は細胞に対しては非透過性であるが、抗原、サイトカイン、およびサイトカイン受容体などの細胞内成分に対しては透過性である。がん細胞(図に示さない)が患者の脈管系に放出されないように、中空糸膜43の両端はシールされる。外部中空糸膜44は、外部チャンバーまたは区画42を形成する。外部チャンバーまたは区画42は、(a)一つまたは複数の樹状細胞誘導因子(図には示さない)と(b)一つまたは複数の可溶性インヒビター・リガンド(図には示さない)とともに、加療される患者由来のバフィー・コートサンプル(図には示さない)を収容する。外部中空糸膜44は細胞に対しては非透過性であるが、抗原、サイトカイン、およびサイトカイン受容体などの細胞内成分に対しては透過性である。中空糸膜44の一端はシールされ、他端は生分解性ポリマー・プラグ(図には示さない)でシールされる。該生分解性ポリマープラグは経時的に分解し、内容物である患者の免疫細胞およびその他の細胞内成分が患者の脈管系に放出されることを可能にする。また中空糸44は血管新生を促進し、患者の免疫系による封入を阻害する。がん患者の脈管系を循環する可溶性インヒビターは医療用インプラント装置内に侵入できるが、インプラント装置40の外部チャンバーまたは区画42が含有するリガンドに吸着される。これにより、医療用インプラント装置40の内部チャンバーまたは区画41および外部チャンバー42両方の内部に、防護スペースが提供される。可溶性インヒビターのリガンドおよび樹状細胞誘導因子は、本明細書に記載のポリマー・ビーズに結合されるか、または図5に示すように中空糸膜43および44に共有結合され得る。
【0046】
図5は、がん治療に使用される本発明のインプラント50の断面図であり、2個の同心性の中空糸膜53および54から作られる。最内部中空糸膜53によって、加療される患者由来のがん細胞(図には示さない)を収容する内部抗原チャンバーまたは区画51が形成される。外部中空糸膜54によって、加療される患者由来のバフィー・コートサンプルのような白血球含有血液サンプル(図には示さない)を内包する外部チャンバーまたは区画52が形成される。外部中空糸膜54は細胞に対しては非透過性だが、抗原、サイトカイン、およびサイトカイン受容体などのような細胞内成分に対しては透過性である。中空糸膜54の一端はシールされ、他端は生分解性ポリマー・プラグ(図には示さない)でシールされる。該ポリマー・プラグは経時的に分解し、区画52に収容される患者の免疫細胞およびその他の細胞内成分が患者の脈管系に放出されることが可能となる。また中空糸膜54は血管新生を促進し、患者の免疫系による封入を阻害する。中空糸膜53は細胞に対しては非透過性であるが、抗原、サイトカイン、およびサイトカイン受容体などのような細胞内成分に対しては透過性である。当業者に公知の標準的な生産技術を用いて、免疫系の可溶性インヒビターのリガンド56(「Y」で示す)が中空糸膜54に共有結合され、樹状細胞増殖因子55(「T」で示す)が中空糸膜53に共有結合される。別の実施形態においては、可溶性インヒビターのリガンドは内部中空糸膜53に連結されてよく、樹状細胞増殖因子は最外部中空糸膜54に連結されてよい。さらなる実施形態においては、可溶性インヒビター・リガンドと樹状細胞増殖因子とはともに、中空糸膜53および54の両者に連結され得る。がん細胞(図に示さない)が患者の脈管系に放出されないように、中空糸膜43の両端はシールされる。
【0047】
本明細書における「実施形態の一つ」、「ある実施形態」、または類似の用語の使用は、実施形態に関連して記載される個々の要件、構成、または特徴が、本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれるということを意味する。すなわち本明細書における「実施形態の一つにおいて」、「ある実施形態において」、または類似の表現は、必ずしも全てが同一の実施形態を指すものではない。
【0048】
本発明は、その趣旨または本質的特徴から逸脱することなしに、他の特定の形態で実施され得る。記載した実施形態はあくまでも単なる例示であり、限定的に解釈されるべきではない。従って本発明の範囲は、上記の説明ではなく附属の特許請求の範囲によって示される。それらの範囲内には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0049】
12 医療用インプラント装置
13 最内部の中空糸
15 中間部(最内部に対して二番目の区画)中空糸
16 外部(最外部)中空糸
22 ペレット
30 医療用インプラント装置
40 インプラント装置
55 樹状細胞増殖因子(「T」で示す)
56 免疫系の可溶性インヒビターのリガンド(「Y」で示す)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)該哺乳動物体内の特定のスペースにおいて哺乳動物免疫系の可溶性インヒビターの影響を除去し、且つ、
b)樹状細胞−抗原提示プロセスが進行・完了せしめるように該特定のスペース内に抗原の供給源を配置することを特徴とする、哺乳動物体内に、免疫的に防護/強化されたスペースをイン・ビボに創出する方法。
を具備する方法。
【請求項2】
該抗原の供給源が、一つまたは複数の細菌性の抗原、一つまたは複数のウィルス性の抗原、或は一つまたは複数のがん細胞性の抗原である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該哺乳動物ががんに罹患しており、且つ、一つまたは複数の該がん抗原が哺乳動物のがんから得た自己がん細胞である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該特定のスペースが、哺乳動物免疫系の可溶性インヒビターに結合する一つまたは複数のリガンドを供給することによって創出されたものである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該リガンドが、ガングリオシド、増殖因子、TNF−α、TGF−βおよびその変異型、PDGF、EGF、IGFおよびその変異型、FGFおよびその変異型、VEGF、TNF−αファミリーからなるグループから選択される炎症性サイトカイン受容体:TNF−R1、TNF−R2、CD40L、NGFR、TRAILおよび変異型、FASL、IL−1R1、IL1R2、IL−2R、IL−3R、IL−5R、IL−6R、IL−7R、GM−CSFR、IL−9R、IL−12R、ならびにエリスロポエチン受容体からなるグループから選択される一つまたは複数の免疫系の可溶性インヒビターに結合したものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該哺乳動物がヒトである、請求項3の方法。
【請求項7】
a)内部領域と、哺乳動物免疫系の可溶性インヒビターと結合するリガンドを含有して内部領域を形成する辺縁領域とを具備する、哺乳動物体内の封入スペースを提供し;
b)(i)一つまたは複数のがん細胞抗原または哺乳動物がん細胞のサンプルと、
(ii)単球を含有する哺乳動物血液画分と、
(iii)一つまたは複数の樹状細胞誘導因子とを、該封入スペースの内部領域中に配置し;
c)前記単球から樹状細胞が誘導されることを可能にし、それによって哺乳動物免疫系の可溶性インヒビターの実質的不在下で、誘導された前記樹状細胞への抗原提示が進行・完了して活性化樹状細胞を形成せしめ;且つ
d)該活性化樹状細胞が哺乳動物の脈管系を循環せしめることを特徴とする、がんに罹患した哺乳動物体内に、免疫的に防護/強化されたイン・ビボのスペースを創出する免疫的に防護/強化されたスペースをイン・ビボに創出する方法。
【請求項8】
該がん細胞が患者のがんから得た自己由来の細胞である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
内部領域にチャンバー壁を持つチャンバー内に該がん細胞が収容され、前記チャンバー壁が細胞に対しては非透過性であるが細胞内成分に対しては透過性である請求項7に記載の方法。
【請求項10】
免疫系の一つまたは複数の可溶性インヒビターと結合するリガンドが、ガングリオシド、増殖因子、TGF−α、TGF−βおよびその変異型、PDGF、EGF、IGFおよびその変異型、FGFおよびその変異型、VEGF、TNF−αファミリーからなるグループから選択される炎症性サイトカイン受容体:TNF−R1、TNF−R2、CD40L、NGFR、TRAILおよび変異型、FASL、IL−1R1、IL1R2、IL−2R、IL−3R、IL−5R、IL−6R、IL−7R、GM−CSFR、IL−9R、IL−12R、ならびにエリスロポエチン受容体からなるグループから選択される一つまたは複数のリガンドである請求項7に記載の方法。
【請求項11】
該樹状細胞誘導因子がIL−4、GM−CSF、IL−10、IL−13、IL−17サイトカイン、IL−18サイトカイン、またはその混合物であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
a)可溶性インヒビター吸着剤を周囲に配置した樹状細胞に対する抗原提示のための防護スペースを含有する、インプラント装置を供給し;
b)一つもしくは複数の抗原または一つもしくは複数の抗原を含有する細胞を該インプラント装置の防護スペースに充填し;
c)樹状細胞の形成を誘導するために、一つまたは複数の樹状細胞誘導因子および哺乳動物から得た血液の白血球画分を該インプラント装置の防護スペース内に充填して、充填済みのインプラント装置を形成せしめ;
d)充填済みの該インプラント装置を哺乳動物体内に埋入させ;更に
e)誘導された該樹状細胞がインプラントから放出されて哺乳動物の脈管系を循環せしめ、それによって、該可溶性インヒビター吸着剤をして、誘導された樹状細胞への抗原提示を進行・完了せしめることを特徴とする、がんに罹患した哺乳動物をインプラント装置を用いて治療する方法。
【請求項13】
一つまたは複数の該抗原が、一つもしくは複数の細菌抗原、一つもしくは複数のウィルス抗原、または一つもしくは複数のがん細胞抗原である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
一つまたは複数の該がん抗原が、哺乳動物のがんから得られた自己がん細胞である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該可溶性インヒビター吸着剤が、ガングリオシド、増殖因子、TGF−α、TGF−βおよびその変異型、PDGF、EGF、IGFおよびその変異型、FGFおよびその変異型、VEGF、TNF−αファミリーからなるグループから選択される炎症性サイトカイン受容体:TNF−R1、TNF−R2、CD40L、NGFR、TRAILおよび変異型、FASL、IL−1R1、IL1R2、IL−3R、IL−5R、IL−6R、IL−7R、GM−CSFR、IL−9R、IL−12R、ならびにエリスロポエチン受容体からなるグループから選択される一つまたは複数の免疫系の可溶性インヒビターと結合する一つまたは複数のリガンドであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該樹状細胞誘導因子がIL−4、GM−CSF、IL−10、IL−13、IL−17サイトカイン、IL−18サイトカイン、またはその混合物であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
充填済みの該インプラントが皮膚の小切開によって皮下組織に埋入されたものである請求項12に記載の方法。
【請求項18】
充填済みのインプラントが注射器を用いて皮下組織中に埋入されたものである請求項12に記載の方法。
【請求項19】
a)内部領域と、哺乳動物免疫系の可溶性インヒビターと結合するリガンドを含有する辺縁領域とを具備する、哺乳動物体内の封入スペースを提供し;
b)(i)一つもしくは複数の抗原または一つもしくは複数の抗原を含有する細胞と、
(ii)樹状細胞前駆細胞を含有する哺乳動物血液画分と、
(iii)一つまたは複数の樹状細胞誘導因子とを、該封入スペースの内部領域に充填し;
c)樹状細胞が誘導されることを可能とし、誘導された前記樹状細胞への抗原提示が哺乳動物免疫系の可溶性インヒビターの実質的不在下で進行・完了して、活性化樹状細胞を形成せしめ;および
d)活性化該樹状細胞が哺乳動物の脈管系を循環せしめることを特徴とする、哺乳動物体内に、免疫的に防護/強化されたイン・ビボのスペースを創出する方法。
【請求項20】
一つまたは複数の該抗原が、一つもしくは複数の細菌抗原、一つもしくは複数のウィルス抗原、または一つもしくは複数のがん細胞抗原である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
の方法であって、該哺乳動物ががんに罹患しており、一つまたは複数の該がん抗原が、哺乳動物のがんから得た自己がん細胞である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
該リガンドが、ガングリオシド、増殖因子、TGF−α、TGF−βおよびその変異型、PDGF、EGF、IGFおよびその変異型、FGFおよびその変異型、VEGF、TNF−αファミリー炎症性サイトカイン受容体:TNF−R1、TNF−R2、CD40L、NGFR、TRAILおよび変異型、FASL、IL−1R1、IL1R2、IL−3R、IL−5R、IL−6R、IL−7R、GM−CSFR、IL−9R、IL−12R、ならびにエリスロポエチン受容体からなるグループから選択される一つまたは複数の免疫系の可溶性インヒビターに結合したものである 請求項21の方法。
【請求項23】
該樹状細胞誘導因子がIL−4、GM−CSF、IL−10、IL−13、IL−17サイトカイン、IL−18サイトカイン、またはその混合物であることを特徴とする請求項22の方法。
【請求項24】
であって、該封入スペースが皮下組織中に置かれたものである請求項19の方法。
【請求項25】
封入スペースが皮下組織中に置かれたものである請求項21の方法。
【請求項26】
a)樹状細胞に対するがん抗原提示のための、可溶性インヒビター吸着剤を周囲に配置した防護スペースを含有する、インプラント装置を供給し;
b)一つまたは複数のがん抗原またはがん細胞を該インプラント装置の防護スペースに充填し;
c)樹状細胞の形成を誘導するために、一つまたは複数の樹状細胞誘導因子および患者から得た血液サンプルの白血球画分を該インプラント装置の防護スペースに充填し、充填済みのインプラント装置を形成し;
d)充填済みの該インプラント装置を患者体内に埋入すること;および
e)形成された該樹状細胞をインプラントから放出されて患者の脈管系を循環せしめて、該可溶性インヒビター吸着剤をして該誘導された樹状細胞への抗原提示を進行・完了させることを特徴とする、がんに罹患した患者をインプラント装置を用いて治療する方法。
【請求項27】
該がん細胞が患者のがんから得た自己細胞である請求項26の方法。
【請求項28】
チャンバー壁を持つ防護スペース中のチャンバー内に該がん細胞が収容され、前記チャンバー壁が細胞に対しては非透過性であるが細胞内成分に対しては透過性である、請求項26の方法。
【請求項29】
該インプラント装置が、細胞に対しては非透過性であるが細胞内成分に対しては透過性のポリマー部材であることを特徴とする請求項26の方法。
【請求項30】
充填済みの該インプラント装置が皮膚の小切開によって皮下組織中に埋入されたものである、請求項26の方法。
【請求項31】
請求項26の方法であって、充填済みのインプラント装置が注射器を用いて皮下組織中に埋入されるところの、方法。
【請求項32】
該可溶性インヒビター吸着剤が、ガングリオシド、増殖因子、TGF−α、TGF−βおよびその変異型、PDGF、EGF、IGFおよびその変異型、FGFおよびその変異型、VEGF、TNF−αファミリーからなるグループから選択される炎症性サイトカイン受容体:TNF−R1、TNF−R2、CD40L、NGFR、TRAILおよび変異型、FASL、IL−1R1、IL1R2、IL−2R、IL−3R、IL−5R、IL−6R、IL−7R、GM−CSFR、IL−9R、IL−12R、ならびにエリスロポエチン受容体からなるグループから選択される一つまたは複数の免疫系の可溶性インヒビターと結合した一つまたは複数のリガンドであることを特徴とする、請求項26の方法。
【請求項33】
該樹状細胞誘導因子がIL−4、GM−CSF、IL−10、IL−13、IL−17サイトカイン、IL−18サイトカイン、またはその混合物であることを特徴とする請求項26の方法。
【請求項34】
a)生体適合性の多孔性外容器と;
b)(i)一つまたは複数の抗原と、
(ii)一つまたは複数の樹状細胞誘導因子と、
(iii)該医療用インプラント装置のレシピエント対象となる哺乳動物由来の血液サンプルの白血球画分と、
(iv)哺乳動物免疫系に対する可溶性インヒビターの吸着剤とを含有する、免疫的に防護/強化された内部スペース;および
c)生分解性プラグ、
からなることを特徴とする、哺乳動物用の医療用インプラント装置。
【請求項35】
請求項34の医療用インプラント装置であって、一つまたは複数の該抗原が細菌抗原、ウィルス抗原、またはがん細胞抗原であるところの、医療用インプラント装置。
【請求項36】
請求項35の医療用インプラント装置であって、該哺乳動物ががんに罹患しており、一つまたは複数の該抗原が哺乳動物のがんから得た自己がん細胞であるところの、医療用インプラント装置。
【請求項37】
請求項35の医療用インプラント装置であって、免疫的に防護された該内部スペース内のチャンバーに該がん細胞が収容され、前記チャンバーが細胞に対しては非透過性だが細胞内成分に対しては透過性であるところの、医療用インプラント装置。
【請求項38】
請求項34の医療用インプラント装置であって、細胞に対しては非透過性だが細胞内成分に対しては透過性のポリマー部材を生体適合性の該多孔性外容器が含んでなるところの、医療用インプラント装置。
【請求項39】
請求項34の医療用インプラント装置であって、皮膚の小切開による皮下組織への埋入によって該インプラント装置が投与されるところの、医療用インプラント装置。
【請求項40】
請求項34の医療用インプラント装置であって、注射器を用いた埋入によって該インプラント装置が皮下組織に投与されるところの、医療用インプラント装置。
【請求項41】
該可溶性インヒビターの吸着剤が、ガングリオシド、増殖因子、TGF−α、TGF−βおよびその変異型、PDGF、EGF、IGFおよびその変異型、FGFおよびその変異型、VEGF、TNF−αファミリーからなるグループから選択された炎症性サイトカイン受容体:TNF−R1、TNF−R2、CD40L、NGFR、TRAILおよび変異型、FASL、IL−1R1、IL1R2、IL−2R、IL−3R、IL−5R、IL−6R、IL−7R、GM−CSFR、IL−9R、IL−12R、ならびにエリスロポエチン受容体からなるグループから選択される一つまたは複数の免疫系の可溶性インヒビターに結合する一つまたは複数のリガンドであることを特徴とする、請求項34に記載の医療用インプラント装置。
【請求項42】
請求項34の医療用インプラント装置であって、IL−4、GM−CSF、IL−10、IL−13、IL−17サイトカイン、およびIL−18サイトカインからなるグループから、一つまたは複数の該樹状細胞誘導因子が選択されるところの、医療用インプラント装置。
【請求項43】
a)生体適合性の多孔性外容器;
b)該生体適合性容器内の、哺乳動物免疫系に対する可溶性インヒビターと結合するリガンドを含有する辺縁領域;
c)一つまたは複数の抗原と、加療される哺乳動物由来の血液サンプルの白血球画分と、一つまたは複数の樹状細胞誘導因子とを含有する内部領域;および
d)生分解性プラグ、
からなり、該辺縁領域と該内部領域とがサイトカインおよびサイトカイン受容体に対して透過性であるが細胞に対しては非透過性の膜によって分離されているものであることを特徴とする、哺乳動物体内で抗原に対する免疫応答を生ぜしめるための医療用インプラント装置。
【請求項44】
請求項43の医療用インプラント装置であって、一つまたは複数の該抗原が細菌抗原、ウィルス抗原、またはがん細胞抗原であるところの、医療用インプラント装置。
【請求項45】
請求項44の医療用インプラント装置であって、該がん細胞抗原が、前記医療用インプラント装置を用いて治療される哺乳動物から得られた自己がん細胞であるところの、医療用インプラント装置。
【請求項46】
請求項45の医療用インプラント装置であって、該内部領域中のチャンバーに該がん細胞が収容され、前記チャンバーが細胞に対しては非透過性だが細胞内成分に対しては透過性であるところの、医療用インプラント装置。
【請求項47】
請求項43の医療用インプラント装置であって、該インプラント装置が小切開による皮下組織への埋入によって投与されるところの、医療用インプラント装置。
【請求項48】
請求項43の医療用インプラント装置であって、該インプラント装置が注射器による皮下組織への埋入によって投与されるところの、医療用インプラント装置。
【請求項49】
請求項43の医療用インプラント装置であって、ガングリオシド、増殖因子、TGF−α、TGF−βおよびその変異型、PDGF、EGF、IGFおよびその変異型、FGFおよびその変異型、VEGF、TNF−αファミリーからなるグループから選択される炎症性サイトカイン受容体:TNF−R1、TNF−R2、CD40L、NGFR、TRAILおよび変異型、FASL、IL−1R1、IL1R2、IL−2R、IL−3R、IL−5R、IL−6R、IL−7R、GM−CSFR、IL−9R、IL−12R、ならびにエリスロポエチン受容体からなるグループから選択される一つまたは複数の免疫系の可溶性インヒビターに、該リガンドが結合したものである医療用インプラント装置。
【請求項50】
IL−4、GM−CSF、IL−10、IL−13、IL−17サイトカイン、およびIL−18サイトカインからなるグループから、一つまたは複数の該樹状細胞誘導因子が選択されたものである、請求項43の医療用インプラント装置。
【請求項51】
a)哺乳動物にインプラントした際に該インプラント装置への血液の流入を許容する生体適合性の外容器、および
b)(i)一つまたは複数の抗原と、
(ii)白血球誘因物質と、
(iii)哺乳動物免疫系に対する可溶性インヒビターの吸着剤とを含有する、免疫的に防護された内部スペース、
からなり、それによって、活性化樹状細胞が形成されるのに充分な程度に樹状細胞−抗原提示プロセスが進行可能であることを特徴とする、哺乳動物のための医療用インプラント装置。
【請求項52】
請求項51の医療用インプラント装置であって、一つまたは複数の該抗原が細菌抗原、ウィルス抗原、またはがん細胞抗原であるところの、医療用インプラント装置。
【請求項53】
請求項52の医療用インプラント装置であって、該がん細胞抗原が、前記医療用インプラント装置を用いて治療される哺乳動物から得た自己がん細胞であるところの、医療用インプラント装置。
【請求項54】
請求項53の医療用インプラント装置であって、免疫的に防護された該内部スペース内のチャンバーに該がん細胞が収容され、前記チャンバーが細胞に対しては非透過性だが細胞内成分に対しては透過性であるところの、医療用インプラント装置。
【請求項55】
請求項51の医療用インプラント装置であって、小切開による皮下組織への埋入によって該インプラント装置が投与されるところの、医療用インプラント装置。
【請求項56】
請求項51の医療用インプラント装置であって、注射器を用いた埋入によって該インプラント装置が皮下組織に投与されるところの、医療用インプラント装置。
【請求項57】
該可溶性インヒビターの吸着剤がであって、ガングリオシド、増殖因子、TGF−α、TGF−βおよびその変異型、PDGF、EGF、IGFおよびその変異型、FGFおよびその変異型、VEGF、TNF−αファミリーからなるグループから選択された炎症性サイトカイン受容体:TNF−R1、TNF−R2、CD40L、NGFR、TRAILおよび変異型、FASL、IL−1R1、IL1R2、IL−2R、IL−3R、IL−5R、IL−6R、IL−7R、GM−CSFR、IL−9R、IL−12R、ならびにエリスロポエチン受容体からなるグループから選択される一つまたは複数の免疫系の可溶性インヒビターに結合する一つまたは複数のリガンドであることを特徴とする、請求項51の医療用インプラント装置。
【請求項58】
a)生体適合性の多孔性外容器と;
b)哺乳動物免疫系に対する可溶性インヒビターと結合するリガンドを含有する、該生体適合性容器内の辺縁領域と;
c)がん抗原と、がん治療を受ける哺乳動物由来の血液サンプルの白血球画分とを含有する内部領域と;および
d)生分解性プラグ、
からなり、サイトカインおよびサイトカイン受容体に対しては透過性であるが細胞に対しては非透過性の膜で、該辺縁領域と該内部領域とが分離されているものであることを特徴とする、医療用インプラント装置。
【請求項59】
請求項58の医療用インプラント装置であって、該がん抗原が哺乳動物のがんから得た自己がん細胞であるところの、哺乳動物のがん治療のための医療用インプラント装置。
【請求項60】
請求項59の医療用インプラント装置であって、該がん細胞が該内部領域内のチャンバーに収容され、前記チャンバー壁が細胞に対して非透過性だが細胞内成分に対しては透過性であるところの、医療用インプラント装置。
【請求項61】
該多孔性外容器が、細胞に対しては非透過性であるが細胞内成分に対しては透過性のポリマー部材を生体適合性であることを特徴とする、請求項58の医療用インプラント装置。
【請求項62】
請求項58の医療用インプラント装置であって、小切開による皮下組織への埋入によって該インプラント装置が投与されるところの、医療用インプラント装置。
【請求項63】
請求項58の医療用インプラント装置であって、注射器を用いた皮下組織への埋入により該インプラント装置が投与されるところの、医療用インプラント装置。
【請求項64】
該リガンドが、ガングリオシド、増殖因子、TGF−α、TGF−βおよびその変異型、PDGF、EGF、IGFおよびその変異型、FGFおよびその変異型、VEGF、TNF−αファミリーからなるグループから選択される炎症性サイトカイン受容体:TNF−R1、TNF−R2、CD40L、NGFR、TRAILおよび変異型、FASL、IL−1R1、IL1R2、IL−2R、IL−3R、IL−5R、IL−6R、IL−7R、GM−CSFR、IL−9R、IL−12R、ならびにエリスロポエチン受容体からなるグループから選択される一つまたは複数の免疫系の可溶性インヒビターに、結合したものである、請求項58の医療用インプラント装置。
【請求項65】
請求項58の医療用インプラント装置であって、IL−4、GM−CSF、IL−10、IL−13、IL−17サイトカイン、およびIL−18サイトカインからなるグループから選択される一つまたは複数の樹状細胞誘導因子をさらに具備する、医療用インプラント装置。
【請求項66】
a)生体適合性の多孔性外容器と;
b)該生体適合性容器内の、哺乳動物免疫系に対する可溶性インヒビターと結合するリガンドを含む辺縁領域と;
c)がん抗原、がん治療を受ける哺乳動物由来の血液サンプルの白血球画分、および一つまたは複数の樹状細胞誘導因子を含む内部領域と;および
d)生分解性プラグ、
からなり、サイトカインおよびサイトカイン受容体に対して透過性であるが細胞に対しては非透過性の膜によって該辺縁領域および該内部領域が分離されているものであることを特徴とする、注射器で投与され得る、哺乳動物のがん治療のための医療用インプラント・ペレット剤。
【請求項67】
請求項66の医療用インプラント・ペレット剤であって、円筒形で外径が0.5から2ミリメートルの間である、医療用インプラント・ペレット剤。
【請求項68】
請求項66の医療用インプラント・ペレット剤であって、該がん抗原が加療される哺乳動物から得た自己がん細胞であるところの、医療用インプラント・ペレット剤。
【請求項69】
請求項66の医療用インプラント・ペレット剤であって、該がん細胞が内部領域のチャンバーに充填され、前記チャンバーが細胞に対しては非透過性だが細胞内成分に対しては透過性であるところの、医療用インプラント・ペレット剤。
【請求項70】
該多孔性外容器が、細胞に対しては非透過性であるが細胞内成分に対しては透過性のポリマー部材を生体適合性であることを特徴とする、請求項66の医療用インプラント・ペレット剤。
【請求項71】
請求項66の医療用インプラント・ペレット剤であって、注射器を用いた皮下組織への埋入により該医療用インプラント・ペレット剤が投与されるところの、医療用インプラント・ペレット剤。
【請求項72】
該リガンドが、ガングリオシド、増殖因子、TGF−α、TGF−βおよびその変異型、PDGF、EGF、IGFおよびその変異型、FGFおよびその変異型、VEGF、TNF−αファミリーからなるグループから選択された炎症性サイトカイン受容体:TNF−R1、TNF−R2、CD40L、NGFR、TRAILおよび変異型、FASL、IL−1R1、IL1R2、IL−2R、IL−3R、IL−5R、IL−6R、IL−7R、GM−CSFR、IL−9R、IL−12R、ならびにエリスロポエチン受容体からなるグループから選択される一つまたは複数の免疫系の可溶性インヒビターに、結合したものである、請求項66の医療用インプラント・ペレット剤。
【請求項73】
該一つまたは複数の樹状細胞誘導因子が、IL−4、GM−CSF、IL−10、IL−13、IL−17サイトカイン、およびIL−18サイトカインからなるグループから選択されたものである、請求項66の医療用インプラント・ペレット剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−519183(P2012−519183A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552213(P2011−552213)
【出願日】平成22年2月28日(2010.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/025706
【国際公開番号】WO2010/099515
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(511210017)
【氏名又は名称原語表記】Charles Knezevich
【Fターム(参考)】