説明

免疫調節特性を有するクロレラ抽出物から得られる組成物

開示される主題は、態様の1つにおいて、化合物及び組成物(たとえば、多糖及び多糖複合体)、及びそのような化合物及び組成物を提供し、使用する方法に関する。開示されるのは、クロレラから得られる多糖又は多糖複合体を含む組成物であり、該多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する。また開示されるのは、多糖又は多糖複合体を提供する方法であって、該方法は、クロレラ抽出物を提供する工程と、該抽出物を溶媒に接触させて沈殿物を提供する工程と、該沈殿物を追加の物質(たとえば、界面活性剤)と接触させる工程と、不溶分画を単離する工程と、不溶分画をサイズ分画する工程を含み、それによって多糖又は多糖複合体を提供する。また開示されるのは、開示された多糖及び多糖組成物を使用する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示されるのは、緑藻類クロレラから得られる多糖抽出物である。開示されるクロレラ多糖抽出物を含む医薬組成物及び栄養組成物も開示される。さらに、開示されるクロレラ多糖抽出物を抽出し、精製する方法が開示される。その上さらに哺乳類において免疫応答を調節する方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
免疫療法は、免疫応答を調節するように設計された投薬計画の使用を介してヒトの疾患や症状を治療するためのますます重要なアプローチになってきている。免疫療法は、免疫系が危うくなっている(たとえば、癌の間に)病態で特に重要であり得る。疾患モデル及び臨床試験で実施された検討は、対象の防御機構を増強することが、微生物感染、免疫不全、癌及び自己免疫疾患に対する治療及び予防に有用であり得ることを明らかにしている(Hadden, J. W. Immunol. Today 1993, 14, 275−280)。
【0003】
免疫療法はまた、創傷治癒を促進するための有用性を有し得る。創傷治癒の間、免疫療法マクロファージは、細胞増殖と、新しい組織の形成と、組織の再生を調節することによって主要な役割を担うことができる。マクロファージはまた、創傷修復の血管新生の段階に影響を及ぼす貪食細胞、創面切除剤及び成長因子刺激剤としても機能する(Wilson, K. Nurs. Crit. Care 1997, 2, 291−296)。
【0004】
細菌産物(溶解物及び粗分画)が最初に開発された免疫賦活剤だった。これらの産物には、bacille Calmette−Guerin(BCG)、Corynebacterium parvum、及びリポ多糖のような作用因子が含まれた(Hadden, J. W. Immunol. Today 1993, 14, 275−280, Masihi, K. N. Int. J. Antimicrob. Agents 2000, 14, 181−191)。毒性と副作用のためにこれらの作用因子は限定された成功しか収めなかったが、多くは、獣医学分野での免疫調節について米国農務省(USDA)によって認可されている(Van Kampen, K. R. Semin. Vet. Med. Surg. (Small Anim.) 1997, 12, 186−192)。
【0005】
天然起源、化学合成、及び組換え技術によってそのほかの免疫療法剤が開発されている。天然起源の多数の免疫賦活剤は、高分子量の多糖類、糖タンパク質又は複合体ペプチドである(Hadden, J. W. Immunol. Today 1993, 14, 275−280 and International Immunology Pharmacology (2006), 6, 317−333)。たとえば、Schizophyllum commune (シゾフィラン)、Lentinus edodes (レンチナン)及びCoriolus versicolor(クレスチン)に由来する3つの真菌多糖類は現在、生物反応修飾物質として日本で臨床使用されている(Franz, G. Planta Med. 1989, 55, 493−497)。別の多糖である、アセマンナン(アロエベラから単離された)は、イヌ及びネコの線維肉腫の治療のためにUSDAによって認可されている(King, G. K.; Yates, K. M.; Greenlee, P. G.; Pierce, K. R.; Ford, C. R.; McAnalley, B. H.; Tizard, I. R. J. Am. Animal Hosp. Assoc. 1995, 31:439−47)。グリコスフィンゴ脂質KRN−7000のような天然産物に由来する低分子量の免疫賦活剤が2、3ある。固形腫瘍の治療のための免疫賦活剤としてのKRN−7000を用いた臨床試験が現在進行中である(Natori, T.; Motoki, K.; Higa, T.; Koezuka Y., In ”Drugs from the Sea;” Fusetani, N., Ed.; Karger: New York, 2000; pp 86− 97)。イソプリノシンやムラミルペプチドのような化合物を含む合成起源の免疫賦活剤も幾つか開発されている(Masihi, K. N. Int. J. Antimicrob. Agents 2000, 14, 181−191)。最近、内因性起源の多数のそのほかの免疫調節剤が組換え技術を用いて開発され、これらの多くはFDAの認可を得ている。これらの作用因子には、コロニー刺激因子、インターフェロン及び組換えタンパク質が挙げられる(Frank, M. O.; Mandell, G. L. Immunomodulators In Principles and Practice of Infectious Diseases, Ch. 33, 4th ed.; Mandell, G. L., Bennett, J. E., Dolin, R., Eds.; Churchill Livingstone: New York, 1995; pp 450−458)。しかしながら、これらの化合物は短い半減期を有することが多く、最適な投与量及び適当な併用を決定するのが困難であり得る。
【0006】
最近、微小藻類に由来する免疫療法剤がますます関心を集めている。微小藻類は古代より栄養の濃い食物源として使用されており、歴史の記録は、Spirulina platensisのような微小藻類がアフリカのチャド湖周辺の部族及びメキシコのテスココ湖の近くに住むアステカ族によって消費されていたことを示している。ヒトの消費について及び家畜の飼料として食物等級の微小藻類の市販製品にますます関心が高まっている。商業的潜在力について探索された種々の微小藻類の中で、スピルリナ種、クロレラ種及びアファニゾメノン・フロス・アクア(AFA)が上手く生産されている3つの主な種類である。
【0007】
クロレラは、食用で、多数の望ましい免疫療法特性を有すると考えられる単細胞の緑色微小藻類であり、太陽が動力源の超栄養物と呼ばれている。クロレラは、創傷治癒、解毒、便秘解消及び成長刺激に有用であり得ることが知られている。多数の研究は、クロレラが試験管内及び生体内の双方で望ましい免疫賦活特性を有し得ることも示している。
【0008】
クロレラは淡水及び海水の双方で見つけることができる。クロレラ属の種は生理学的特性及び生化学的特性の顕著な多様性を示す(Kessler, E. ”Phycotalk” 1989, 1 : 141 − 153 ; V. Rastogi Publ., New Delhi, India)。クロレラは、セルロースやそのほかの消化できない細胞壁物質をほとんど産生しないので、食物の新しい供給源の可能性として、特に供給原料として広範に検討されている(Lee, Robert E. ”Phycology” 2nd edition; 1989, page 281; Cambridge University Press)。
【0009】
クロレラは既知の植物のクロロフィルの最高含量を有すると考えられる。クロレラはまた、ビタミン、ミネラル、食物繊維、核酸、アミノ酸、酵素及びそのほかの生物学的物質も含有する。約9%を超える脂肪を含有し、この9%のうち、不飽和ポリ脂肪酸が約82%を占める。ビタミン内容物は、プロビタミンA、ビタミンB、B、B、ナイアシン、B12、ビオチン、ビタミンC、ビタミンK、パントテン酸、葉酸、コリン、リポ酸、イノシトール及びPABAを含む。クロレラに存在するミネラルには、P、K、Mg、S、Fe、Ca、Mn、Cu、Zn及びCoが挙げられる。
【0010】
クロレラの水性抽出物が、栄養的利益及びそのほかの健康上の利益のために使用されてきた。クロレラをさらに容易に消化可能にする方法が開発された1977年にそのような抽出物は健康食品として導入された。台湾クロレラ社は、世界最大のクロレラ供給者であり、以下の商品名、ALGEA(商標)、BIO−REURELLA(商標)、GREEN GEM(商標)、GREEN BOOST(商標)、GREEN NATURE(商標)、GREEN POWER(商標)、JOYAU VERT(商標)、及びNATURAL BOOST(商標)のもとで製品をアジア、ヨーロッパ及び北アメリカに販売している。
【0011】
スイスハーバル(商標)及びネイチャーズウェイ(商標)による製品を含む多数のクロレラ抽出物も市販されている。タンパク質61%、炭水化物21.1%、脂肪11.0%、クロロフィル2.87%、RNA2.94%及びDNA0.28%を含有する純粋なクロレラ破砕細胞としてスイスハーバル製品を特定する。
【0012】
Chlorella pyrenoidosaの経口投与は、Listeria monocytogenesを感染させたマウスにおいて、高いナチュラルキラー細胞活性及び顆粒球/マクロファージ前駆細胞の増加と相関している。しかしながら、これらの効果すべてについて、有効成分は結論的には立証されていない。生物活性を持つ多数の多糖類がクロレラの種から特定されている。特許文献1では、抗腫瘍と抗ウイルスの活性を示す酸性の多糖がChlorella pyrenoidosaから単離された。この多糖についてのグリコシル組成は、少量のガラクトース、アラビノース、グルコース及びグルクロン酸を伴った大部分ラムノースであった。米国特許第4,831,020号に報告され、海洋性のChlorella minutissimaから単離された別の多糖は、腫瘍増殖阻害効果を有すると思われる。
【0013】
特許文献2では、海洋性クロレラ種の脂質分画(糖脂質部分)が抗腫瘍特性を示した。幾つかの糖タンパク質もクロレラの種から単離されている。たとえば、特許文献3は、抗癌効果を有する45,000ダルトンの糖タンパク質を報告した。免疫増強特性及び抗腫瘍特性を有し得るそのほかの種々の糖タンパク質及びグリセロ糖脂質も科学文献で報告されている。
【0014】
特許文献4は、熱湯抽出を用いてスピルリナ種から250,000〜300,000ダルトンの間の分子量を持つ抗ウイルス性の多糖が単離されたことを開示している。この多糖は、ラムノース、グルコース、フルクトース、リボース、ガラクトース、キシロース、マンノース、グルクロン酸及びガラクツロン酸から構成される。12,600〜60,000ダルトンの間の範囲にある多数のそのほかの低分子量の多糖が最近、スピルリナ種から単離されている。
【0015】
現在のクロレラに基づいた免疫賦活剤は期待を示すが、強力な作用因子を特定し、開発し、免疫療法に利用できる薬剤の備蓄を増やすニーズが依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第4,533,548号明細書
【特許文献2】米国特許第4,786,496号明細書
【特許文献3】米国特許第4,822,612号明細書
【特許文献4】米国特許第5,585,365号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本明細書で具現化され、大まかに記載されるような、開示される物質、組成物、物品、装置及び方法の目的によれば、開示される主題は、態様の1つでは、化合物及び組成物(たとえば、多糖及び多糖複合体)並びにそのような化合物及び組成物を提供し、使用する方法に関する。本明細書で開示されるのは、クロレラから得られる多糖又は多糖複合体を含む組成物であり、その際、該多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する。
【0018】
また本明細書で開示されるのは、多糖又は多糖複合体を提供する方法であって、クロレラ抽出物を提供することと、抽出物を溶媒と接触させて沈殿物を提供することと、沈殿物を追加の物質(たとえば、界面活性剤)と接触させることと、不溶性分画を単離することと、不溶性分画のサイズ分画を行うこととを含み、それによって多糖又は多糖複合体を提供する方法である。開示される多糖及び多糖組成物を使用する方法も開示される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
ここで、微小藻類から得られた多糖は、細菌、酵母及び植物から得られたものとして詳細に特定されていないことが見い出された。本明細書で開示されるのは、グリコシルリン酸構造を含有する微小藻類起源から得られたホスホグリカン類である。α−Manp−(1−POH→単位の側鎖は、一部の酵母のホスホグリカン構造に類似する構造的特徴である。さらに開示されるのは、メチル化リン糖単位、3−O−メチルα−Manp−(1−POH→単位である。
【0020】
追加の利点は、次に続く記載において部分的に示され、記載から部分的に明らかになり、又は以下に記載される態様の実践によって教示され得る。以下に記載される利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘される要素及び組み合わせによって実現され、達成されるであろう。前述の一般的記載及び以下の詳細な記載の双方は例及び説明となるのみであって、限定ではないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本明細書に組み入れられ、本明細書の一部を構成する添付の図面は以下に記載される幾つかの態様を説明する。
【図1】分画A−P−8を得るのに使用することができる手順の例を提供するフローチャートの例を示す図である。
【図2】セファデックスG−100における分画A−Pの分画のサイズ排除クロマトグラフィのグラフを示す図である。
【図3】Qセファロースファストフローにおける分画A−P−1の分画のアニオン交換クロマトグラフィのグラフを示す図である。
【図4】27℃にてDOおける分画A−P−8−deOの202.5MHzの31P−NMRのスペクトルを示す図である。
【図5】27℃にてDOおける分画A−P−8−deOの125MHzの13C−DEPTQ135NMRのスペクトルを示す図である。
【図6】BioGelP−2における分画A−P−8−deO−dePの分画のサイズ排除クロマトグラフィのグラフを示す図であり、見い出された分画は、A−P−8−deO−deP−1、A−P−8−deO−deP−2及びA−P−8−deO−deP−3である。
【図7】27℃にてDOおける分画A−P−8−deO−deP−3の125MHzの13C−DEPTQ135NMRのスペクトルを示す図である。
【図8】27℃にてDOにおける分画A−P−8−deO−deP−2の125MHzの13C−DEPTQ135NMRのスペクトルを示す図である。
【図9】27℃にてDOにおける分画A−P−8−deO−deP−1の125MHzの13C−DEPTQ135NMRのスペクトルを示す図である。
【図10】50℃にてDOにおける分画A−P−8−deO−deP−1の500.1MHzのH−NMRのスペクトルを示す図である。
【図11】60℃にてDOにおける分画A−P−8−deO−deP−1の800MHzのTOCSYのスペクトルを示す図である。
【図12】60℃にてDOにおける分画A−P−8−deO−deP−1の800MHzのOCSYのスペクトルを示す図である。
【図13】60℃にてDOにおける分画A−P−8−deO−deP−1の800MHzでの13C−HSQCのスペクトルを示す図である。
【図14】60ミリ秒の混合時間を用いた27℃にてDOにおける分画A−P−8−deO−deP−1の500MHzでの13C−HMBCのスペクトルを示す図である。
【図15】200ミリ秒の混合時間を用いた60℃にてDOにおける分画A−P−8−deO−deP−1の800MHzのNOESYのスペクトルを示す図である。
【図16】4.23/4.73ppmと4.26/4.73ppmでのH−4s/H−1sNOEの相関に一致するガラクトース上のグルコースの規則的な置換パターンの2つの配列を示す図であり、(a)規則的な変化;(b)2つの隣接したガラクトースの遮断である。
【図17】27℃にてDOにおける分画A−P−8−deOの500.1MHzのH−NMRのスペクトルを示す図である。
【図18】60℃にてDOにおける分画A−P−8−deOの800MHzの13C−HSQCのスペクトルを示す図である。
【図19】60℃にてDOにおける分画A−P−8−deOの800MHzでのCOSYのスペクトルを示す図である。
【図20】60ミリ秒の混合時間を用いた50℃にてDOにおける分画A−P−8−deOの800MHzでの13C−HMBCのスペクトルを示す図である。
【図21】150ミリ秒の混合時間を用いた60℃にてDOにおける分画A−P−8−deOの800MHzのNOESYのスペクトルを示す図である。
【図22】8Hzに調整した展開遅延を伴う27℃にてDOにおける分画A−P−8−deOの31P−HSQCのスペクトルを示す図である。
【図23】脱O−アセチル化分画A−P−8−deO(上)及び脱O−アセチル化の効果を示す未処理の分画A−P−8(下)の125MHzの13C−DEPTQ135NMRのスペクトルの一部を示す図であり、強調したシグナルの形状と強度にさらに顕著な変化がある。
【図24】ガラクトースのC−1とC−3のピーク形状と強度に関してO−2における脱O−アセチル化分画A−P−8−deO(上)及び脱O−アセチル化の効果を示す未処理の分画A−P−8(下)の125MHzの13C−DEPTQ135NMRのスペクトルの一部を示す図である。
【図25】Chlorella pyrenoidosaの分画に由来する分画によるマウス起源の腹腔マクロファージの刺激を示す棒グラフである。
【図26】本開示に係るクロレラから得られた多糖又は多糖複合体の例を示す図である。
【図27】本開示に係るクロレラから得られた多糖又は多糖複合体の例を示す図である。
【図28】本開示に係るクロレラから得られた多糖又は多糖複合体の例を示す図である。
【図29】本開示に係るクロレラから得られた多糖又は多糖複合体の例を示す図である。
【図30】本開示に係るクロレラから得られた多糖又は多糖複合体の例を示す図である。
【図31】本開示に係るクロレラから得られた多糖又は多糖複合体の例を示す図である。
【図32】本開示に係るクロレラから得られた多糖又は多糖複合体の例を示す図である。
【図33】本開示に係るクロレラから得られた多糖又は多糖複合体の例を示す図である。
【図34】本開示に係るクロレラから得られた多糖又は多糖複合体の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
開示される主題の具体的な態様の以下の詳細な説明、及び本明細書に含まれる実施例及び図面を参照して本明細書に記載される物質、化合物、組成物、物品及び方法をさらに容易に理解することができる。
【0023】
本物質、化合物、組成物、物品及び方法が開示され、記載される前に、以下で記載される態様は特定の合成方法又は特定の試薬に限定されることはなく、当然異なることができることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は特定の態様を記載するのみの目的であって、限定することは意図されないことも理解されるべきである。
【0024】
また、この明細書の全体を通して種々の出版物が参照される。開示されることが関係する当該技術の状態をさらに完全に記載するために、これら出版物の開示は、その全体が参照によって本出願に組み入れられる。開示された参考文献も、参考文献が基にする文章で議論されるものに含有される物質について参照によって個々に及び具体的に本明細書に組み入れられる。
【0025】
定義
本明細書及び後に続く特許請求の範囲では、以下の意味を有するように定義されるべきである多数の用語について参照が行われる。
【0026】
本明細書の説明及び特許請求の範囲の全体を通して、語「含む」、その語のほかの形態、たとえば、「含むこと」及び「含む」は、含むがそれに限定されないことを意味し、たとえば、そのほかの添加物、成分、整数又は工程を排除することは意図されない。
【0027】
説明及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形態「a」、「an」、及び「the」は、背景が明瞭に指示しない限り複数対象を含む。従って、たとえば、「化合物」への言及は、2以上のそのような化合物の混合物を含み、「作用因子」への言及は、2以上のそのような作用因子の混合物を含み、「部分」への言及は、2以上のそのような部分の混合物を含む、などである。
【0028】
「任意の」又は「任意に」は、次に記載される事象又は状況が発生し得る又はし得ないこと、及び説明が、事象又は状況が発生する例及び発生しない例を含むことを意味する。
【0029】
範囲は本明細書では、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表現することができる。そのような範囲が表現される場合、別の態様は、該1つの特定の値から及び/又はほかの特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行の「約」の使用によって特定の値が別の態様を形成することが理解されるであろう。範囲のそれぞれの端点は、ほかの端点との関連で及びほかの端点とは無関係での双方で有意であることがさらに理解されるであろう。本明細書で開示される多数の値があり、各値は、値自体に特定の値を加える「約」として本明細書では開示されることも理解される。たとえば、値「10」が開示されるのであれば、そのとき、「約10」も開示される。値が開示される場合、「値以下」「値以上」及び値の間の可能な範囲も、熟練者に適宜理解されるように開示されることも理解される。たとえば、値「10」が開示されるのであれば、そのとき、「10以上」と同様に「10以下」も開示される。本出願全体を通して、データは多数の様々な形式で提供され、このデータは終点及び出発点及びデータ点の任意の組み合わせの範囲を表すことも理解される。たとえば、特定のデータ点「10」と特定のデータ点「15」が開示されれば、10と15より大きい、10と15以上、10と15より小さい、10と15以下、10と15に等しいは、10と15の間と同様に開示されたとみなされることが理解される。特定の2つの単位の間の各単位が開示されることも理解される。たとえば、10と15が開示されれば、そのとき11、12、13及び14も開示される。
【0030】
本明細書及び結びの特許請求の範囲では、組成物における特定の要素又は成分の重量部に対する言及は、重量部が表現される組成物又は物品における該要素又は成分とほかの要素又は成分の間の重量関係を示す。従って、2重量部の成分Xと5重量部の成分Yを含有する化合物では、X及びYは、2:5の重量比で存在し、追加の成分が化合物に含有されるか、されないかにかかわらず、そのような比率で存在する。
【0031】
成分の重量%は、それとは反対に具体的に述べられなければ、成分が含まれる製剤又は組成物の総重量に基づく。
「四級アンモニウム界面活性剤」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも窒素原子1つが4つの原子に結合し(たとえば、カチオン性窒素)、以下の一般構造、
【0032】
【化1】

(式中、R、R,R及びRの少なくとも1つは、1〜26の炭素原子を含む置換基であり、Xは好適なアニオン(Br、Cl、F、I、CO2−、HCO、OH、ClO、ClO、ClO、ClO、CrO2−、Cr2−、IO、NO、NO、PO3−、HPO2−、HPO、MnO、PO3−、SO2−、S2−、HSO、SO2−、HSO、ほかの無機アニオン、ほかの有機アニオンなど)であることができる)に相当する窒素化合物を意味する。
【0033】
好適な四級アンモニウム化合物には、(C12〜C14アルキル)(C〜Cジアルキル)ベンジルアンモニウム塩、N−(C12〜C18アルキル)へテロアリールアンモニウム塩、及びN−(C12〜C14アルキル)(C〜Cジアルキル)へテロアリールアルキレンアンモニウム塩が挙げられる。(C12〜C14アルキル)(C〜Cジアルキル)ベンジルアンモニウム塩の非限定例には、(C12〜C14アルキル)ジメチルベンジル塩化アンモニウム、(C12〜C14アルキル)ジメチルベンジル臭化アンモニウム及び(C12〜C14アルキル)ジメチルベンジル硫酸水素アンモニウムが挙げられる。N−(C12〜C18アルキル)へテロアリールアンモニウム塩の非限定例には、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルピリジニウム及び硫化水素セチルピリジニウムが挙げられる。N−(C12〜C18アルキル)へテロアリールアンモニウム塩については、そのほかのアニオンを使用することができる。
【0034】
使用に好適な四級アンモニウム化合物のさらなる例には、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化イソステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ココイルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化イソステアリルラウリルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化γ−グルコンアミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、塩化ジ[ポリオキシエチレン(2)]オレイルメチルアンモニウム、塩化ドデシルジメチルエチルアンモニウム、塩化オクチルジヒドロキシエチルメチルアンモニウム、塩化トリ[ポリオキシエチレン(5)]−ステアリルアンモニウム、塩化ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチル(エチルベンジル)アンモニウム、塩化ベヘンアミドプロピル−N,N−ジメチル−N−(2、3−ジヒドロキシプロピル)アンモニウム、二塩化タロウジメチルアンモニオプロピルトリメチルアンモニウム、及び塩化ベンザルコニウムが挙げられる。
【0035】
「対象」は、本明細書で使用されるとき、個体を意味する。態様の1つでは、対象は霊長類のような哺乳類であり、別の態様では、対象はヒトである。用語「対象」はまた、愛玩動物(たとえば、ネコ、イヌなど)、家畜(たとえば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)及び実験動物(たとえば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ショウジョウバエなど)も包含する。
【0036】
本明細書で提供されるとき、化合物又は組成物の、用語「有用量」は、非毒性で、しかし、所望の有用性を提供する、たとえば、免疫応答を軽減する、阻害する、防ぐ、又はさもなければ調節するのに十分な化合物の量を意味する。以下で指摘されるように、必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、及び一般症状、治療される症状又は疾患の重症度、使用される特定の化合物、その投与の方式、治療の持続時間、採用される特定の組成物との併用で又は同時に使用される薬剤、及び医療技術で周知の同様の因子によって対象ごとに変化する。従って、正確な「有効量」を特定するのは可能ではないが、適当な有効量は、日常的な実験のみを用いて当業者によって決定することができる。たとえば、所望の治療効果を達成するのに必要とされるものより低いレベルで組成物の投与を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増やすことは十分に当該技術の技量の範囲内である。疾患の治療に注意を必要とする対象の状態を評価するのに有用であることが分かっている既往歴、兆候、症状及び目的の臨床検査の特定の態様も評価することができる。これらの兆候、症状及び目的の臨床検査は、そのような患者を治療する臨床医又はこの分野で実験を行う研究者に知られるように、治療される又は予防される特定の疾患又は症状によって変化する。たとえば、適当な対照群との比較及び/又は一般集団又は特定の個体における疾患の正常な進行の知識に基づけば、1)対象の身体的症状が改善されると示される、2)疾患又は症状の進行が安定化する、遅くなる又は反転すると示される、又は3)疾患又は症状を治療するためのほかの薬物の必要性を減らす又は未然に防ぎ、次いで特定の治療計画が有効であるとみなされる。所望であれば、有効な1日用量を投与目的で複数の用量に分割することができる。その結果、単回用量組成物はそのような量又はその約数を含有して1日の用量を構成することができる。禁忌の場合、投与量は個々の内科医又は対象によって調整することができる。投与量は異なることができ、1日に1回以上の投与で1〜数日間投与することができる。医薬製品の所与の部類についての適当な投与量に関する文献で指針を見い出すことができる。
【0037】
免疫調節剤の用語「有効量」は、対象の防御機構を向上させるのに十分な免疫調節剤の量を指す。この量は投与の方式によってある程度変化し得る。1以上の免疫調節剤も使用することができる(たとえば、エキナセアと併用したクロレラ抽出物)。必要とされる正確な有効量は、対象の種、年齢及び一般的状態、治療される症状の重症度、投与の方式などによって対象ごとに変化し得る。適当な有効量は、日常的な実験のみ又は免疫調節剤技術の以前の知識を用いて当業者によって決定することができる。
【0038】
用語「薬学上許容可能な」は、生物学的に又はそうでなくても望ましくないものではない物質を意味し、すなわち、たとえば、望ましくない生物学的効果を引き起こさずに、又は含有される医薬組成物のほかの成分と有害な方法で相互作用することなく、精選されたクロレラの多糖と共に物質を個体に投与することができる。
【0039】
用語「薬学上許容可能な誘導体」は、対象の免疫応答を調節する、本明細書で開示される化合物に相当するホモログ、類似体又は断片を指す。
【0040】
本明細書にて限定せずに使用されるとき、用語「誘導体」は、本明細書で開示される化合物の構造に由来する構造を有し、その構造が本明細書で開示されるものに十分に類似し、その類似性に基づいて、請求される化合物と同一又は類似する活性及び有用性を呈することが当業者によって期待される化合物を指すのに使用される。
【0041】
用語「アルキル」及び「脂肪族」は、本明細書で使用されるとき、1〜24の炭素原子の分枝鎖又は非分枝鎖の飽和炭化水素基であり、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどである。アルキル基は置換することもでき、又は非置換であることもできる。以下に記載するような、アルコール、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、ハロゲン化合物、ヒドロキサメート、ヒドロキシ、ケトン、ニトロ、シリル、スルホ−オキソ、スルホニル、スルホン、スルホキシド又はチオールを含むが、これらに限定されない1以上の基によってアルキル基を置換することができる。用語「ハロゲン化アルキル」は具体的には、1以上のハロゲン化合物、たとえば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素によって置換されるアルキル基を指す。用語「高級脂肪族」は、約6〜24の炭素原子の脂肪族化合物を指すことができる。
【0042】
本明細書で開示されるのは、核酸に基づく物質である。本明細書に記載される核酸の例には、cDNAのようなDNA及びmRNAのようなRNAが挙げられるが、これらに限定されない。開示される核酸は、たとえば、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体又はヌクレオチド置換体によって構成される。これらの及びほかの分子の非限定例が本明細書で議論される。たとえば、ベクターを細胞内で発現させる場合、発現されるmRNAは通常、A、C、G及びUで構成されることが理解される。
【0043】
「ヌクレオチド」は、本明細書で使用されるとき、塩基部分と、糖部分と、リン酸部分を含有する分子である。ヌクレオシド間連結を創製するそのリン酸部分と糖部分を介してヌクレオチドを連結することができる。用語「オリゴヌクレオチド」は2以上の一緒に連結されたヌクレオチドを含有する分子を指すのに使用されることがある。ヌクレオチドの塩基部分は、アデニン−9−イル(A)、シトシン−1−イル(C)、グアニン−9−イル(G)、ウラシル−1−イル(U)及びチミン−1−イル(T)であり得る。ヌクレオチドの糖部分はリボース又はデオキシリボースであり得る。ヌクレオチドのリン酸部分は、5価のリン酸である。ヌクレオチドの非限定例は、3’−AMP(3’−アデノシン一リン酸)又は5’−GMP(5’−グアノシン一リン酸)である。
【0044】
ヌクレオチド類似体は、塩基部分、糖部分及び/又はリン酸部分に対してある種の修飾を含有するヌクレオチドである。ヌクレオチドへの修飾は当該技術で周知であり、たとえば、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、及び2−アミノアデニン、並びに糖部分又はリン酸部分での修飾が挙げられる。
【0045】
ヌクレオチド置換体は、ヌクレオチドに類似する機能的特性を有するが、たとえば、ペプチド核酸(PNA)のようにリン酸部分を含有しない分子である。ヌクレオチド置換体は、ワトソン・クリックの方法又はフーグスティーンの方法で核酸を認識するが、リン酸部分以外の部分を介して連結される分子である。ヌクレオチド置換体は、適当な標的核酸と相互作用する場合、二重螺旋型の構造に適合することができる。
【0046】
本明細書で使用されるとき、用語「置換された」は、有機化合物の差し支えないすべての置換基を含むことが企図される。大まかな態様では、差し支えない置換基には、有機化合物の非環式の及び環状の、分枝鎖の及び非分枝鎖の、炭素環式の及び複素環の、並びに芳香族の及び非芳香族の置換基が挙げられる。例となる置換基には、たとえば、以下に記載するものが挙げられる。差し支えない置換基は、適当な有機化合物について1以上(たとえば、「二置換された」「三置換された」などとも呼ぶ)であることができ、同一又は異なっていてもよい。本開示の目的で、たとえば、窒素及び酸素のようなヘテロ原子は、水素置換基、及び/又はヘテロ原子の価数を満たす、本明細書で開示される有機化合物の差し支えない置換基を有することができる。本開示は、有機化合物の差し支えない置換基による方法で限定されることを意図するものではない。また、用語「置換」又は「によって置換された」は、そのような置換が置換される原子及び置換基の可能な価数に従い、置換が結果的に安定な化合物を生じる、たとえば、再構成、環化、除去などによって自然に変換を受けない化合物を生じるという絶対的な条件を含む。また、本明細書で使用されるとき、「置換」又は「によって置換された」は、1つの置換基が別の置換基に融合される構成を包含することになっている。たとえば、アリール基によって置換されるアリール基(逆も同様)は、1つのアリール基が単一のシグマ結合を介して第2のアリール基に結合することを意味することができ、また、2つのアリール基が融合する、たとえば、一方のアルキル基の2つの炭素を他方のアリール基の2つの炭素と共有することを意味することができる。
【0047】
本明細書で使用されるとき、用語「免疫調節剤」は免疫応答を調節することができる作用因子を指す。用語「調節する」は、免疫系を調節する作用因子(たとえば、免疫調節剤)の能力を指す。調節するは、本明細書で使用されるとき、作用因子が免疫応答を高める又は低下させる過程を指すことができる。調節するは、免疫応答を直接又は間接的に調節する(たとえば、免疫調節剤が免疫応答の間に発生するメカニズムを調節することができ、それによって全体的な免疫応答を調節する)作用因子の能力を指す。調節するは、免疫応答がさもなければ高まる場合、作用因子が実質的に、高まった免疫応答を阻害する、安定化する、又は防ぐ過程を指すことができる。調節するはまた、免疫応答がさもなければ低下する場合、作用因子が実質的に、免疫応答を安定化する、高める、又は維持する過程を指すことができる。そのような調節は、たとえば、疾患の中でも種々の自己免疫疾患の治療に有用であり得る。調節するはまた、作用因子が免疫応答を誘導する又は免疫応答を実質的に妨げる過程を指すこともできる。
【0048】
用語「治療」は、本明細書で使用されるとき、哺乳類(たとえば、ヒト)のいかなる治療も網羅し、(i)疾患の素因を持ち得るが、未だそれに罹っていると診断されていない対象で疾患が発症するのを防ぐこと;(ii)疾患を阻害すること、すなわち、発症を停止させること;又は(iii)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の退行を起こすことを含む。
【0049】
反対に述べられなければ、V字や点線ではなく実線でのみ示される化学結合を持つ式は、それぞれ可能な異性体、たとえば、エナンチオマー及びジアステレオマー、及び異性体の混合物、たとえば、ラセミ混合物又はスケールミック混合物を企図する。
【0050】
ここで、その例が添付の実施例及び図面で説明される開示される物質、化合物、組成物、物品及び方法の具体的な態様に対して言及が詳細に行われる。
【0051】
物質及び組成物
本明細書で開示されるのは、開示される方法、装置及び組成物に使用することができる、それと併用して使用することができる、それを調製するのに使用することができる、又はその生成物である物質、化合物、組成物及び成分である。これらの及びそのほかの物質が本明細書で開示され、これらの物質の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが開示される場合、これらの化合物の各種々の個々の及び全体的な組み合わせ及び順列の具体的な言及が明白に開示されなくてもよいが、それぞれが、本明細書で具体的に企図され、記載されることが理解される。たとえば、組成物が開示され、組成物の多数の成分又は残基に対して行うことができる多数の修飾が議論されるならば、可能であるそれぞれの及びあらゆる組み合わせ及び順列が、具体的にそれと反対に示されなければ、具体的に企図される。従って、成分又は残基AとBとCの部類が、成分又は残基DとEとFの部類と同様に開示され、組み合わせ化合物A〜Dの例が開示されるならば、そのとき、それぞれが個々に記述されなくてもそれぞれは個々に及びまとめて企図される。従って、この例では、組み合わせ、A−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−E及びC−Fのそれぞれが具体的に企図されるが、AとBとC;DとEとF;及び例の組み合わせA−Dの開示から開示されたとみなされるべきである。同様に、これらのサブセット又は組み合わせも具体的に企図され、開示される。従って、たとえば、A−E、B−F及びC−Eのサブセットが具体的に企図され、AとBとC;DとEとF;及び例の組み合わせA−Dの開示から開示されたとみなされるべきである。この概念は、開示される組成物を作製する方法及びそれを使用する方法の工程を含むが、これらに限定されない本開示のあらゆる態様に適用される。従って、行うことができる種々の追加の工程があるとすれば、これら追加の工程のそれぞれは、開示される方法の具体的な態様又は態様の組み合わせと共に実施することができ、そのような組み合わせのそれぞれが具体的に企図されるが、開示されたとみなされるべきであることが理解される。
【0052】
本発明で開示される特定の物質、化合物、組成物及び成分は、商業的に入手することができ、又は当業者に一般的に知られる技法を用いて容易に合成することができる。たとえば、開示される化合物及び組成物を調製するのに使用される出発物質及び試薬は、商業的供給業者、たとえば、アルドリッチケミカル社(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)、アクロスオーガニクス(ニュージャージー州、モリスプレインズ)、フィッシャーサイエンティフィック(ペンシルベニア州、ピッツバーグ)、又はシグマ(ミズーリ州、セントルイス)から入手可能であり、たとえば、Fieser and Fieser’s Reagent for Organic Synthesis、Volumes 1−17(John Wiley and Sons, 1991);Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds、Volumes 1−5及びSupplementals(Elsevier Science Publishers, 1989);Organic Reactions、Volumes 1−40(John Wiley and Sons, 1991);March’s Advanced Organic Chemistry(John Wiley and Sons, 4th Edition);及びLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc., 1989)のような参考文献に示された手順に従って当業者に既知の方法によって調製される。
【0053】
国際純正応用化学連合(IUPAC)によって推奨される命名法を用いて、具体的にその反対に述べられなければ、本明細書で開示される種々の多糖、多糖複合体、オリゴ糖類、及び単糖類に言及する。IUPACによって行われた推奨は、以下の出版物、”Polysaccharide nomenclature. Recommendations 1980”、Arch. Biochem. Biophys., 1983, 220, 330−332; Eur. J. Biochem., 1982, 126, 439−441; J. Biol. Chem., 1982, 257, 3352−3354; PureAppl. Chem., 1982, 54, 1523−1526に概説されており、それらは参照によって本明細書に組み入れられる。
【0054】
クロレラから得られる免疫調節組成物は、それぞれその全体が参照によって本開示に組み入れられる米国特許第6,551,596号、同第6,974,576号及び同第6,977,076号、並びに米国特許公開第2007/0264271号に開示されている。現在開示される本主題は、クロレラ及びクロレラ抽出物に関連する方法及び新規の組成物に関する。本明細書で開示される組成物は、とりわけ、免疫調節剤としての使用について企図される。クロレラ抽出物を提供する工程、抽出物から沈殿物を提供する工程、不溶分画を単離するように沈殿物を物質に接触させる工程、分子量分画を用いることによって不溶分画をサイズ分画する工程を含み、それによって多糖又は多糖複合体を提供する、本明細書で開示される組成物を提供する方法を本明細書で開示する。
【0055】
本明細書で開示される方法から得られる組成物も開示される。具体的に開示されるのは、クロレラから得られる多糖又は多糖複合体を含む組成物であって、該多糖又は多糖複合体は約1×10〜1×10ダルトンの分子量を有する。開示された組成物(たとえば、免疫調節剤、医薬剤、栄養補助剤など)を使用する方法も開示される。
【0056】
本明細書で開示される組成物は、C.minutissima、C.marina、C.salina、C.vulgaris、C.anitrata、C.antarctica、C.autotrophica、C.regularis、C.ellipsoidea、又はこれらの混合物からも得ることができる。
【0057】
クロレラ
本明細書で開示されるのはクロレラ由来の抽出物である。それから抽出物を得ることができるクロレラ属の種には、限定しないで、minutissima、marina、salina、pyrenoidosa、vulgaris、anitrata、antarctica、autotrophica、regularis、及びとりわけそれらの組み合わせが含まれる。これらの種及びそのほかの種の多数が、”World Catalog of Algae” 2nd Ed.、58〜74ページ;宮地他編;1989年;日本;学会出版センターに記載される。
【0058】
天然に生じる又はたとえば、照射(たとえば、紫外線、X線)、化学的突然変異誘発若しくは部位特異的突然変異誘発によって人工的に生じるクロレラの変異株も開示される本主題と共に使用するために企図される。一例では、Chlorella pyrenoidosaとその変異体を使用することができる。別の例では、Chlorella ellipsoideaとその変異体を使用することができる。
【0059】
好適な培地と培養条件を用いて当該技術で既知の方法によってクロレラの培養を行うことができる(たとえば、White and Barber, Biochimica Biophysica Acta, 1972, 264, 117−128を参照のこと)。クロレラの培養物の生理学的操作及び代謝的操作によって多糖の産生が影響を受け得ることが十分に理解されるべきである。さらに、増殖培地の組成が増殖速度に影響を与え、クロレラの細胞壁の厚さに変化をもたらし得る。クロレラに存在する増殖に関与する遺伝子を上方調節又は下方調節できることが十分に理解されるべきである。藻類変異体を選択する方法(たとえば、米国特許第5,871,952号を参照のこと)と同様に真核藻類(たとえば、クロレラ)を形質転換する方法は、既知であり(たとえば、米国特許第6,027,900号を参照のこと)、そのような方法は開示される本主題と共に使用するために企図される。従って、種々の条件下での選択によって、クロレラから種々の生体ポリマー免疫調節剤を製造することができる。
【0060】
培養された細胞又はスプレー乾燥させた細胞の熱湯抽出(米国特許第4,831,020号及び同第5,780,096号)及び溶媒抽出法(White and Barber, Biophys. Biochim. Acta, 1972, 264:117−128;米国特許第3,462,412号)を始めとする当該技術で既知の方法によってクロレラの粗抽出物を調製することができる。粗抽出物は台湾クロレラ社からも入手することができる。ほかの抽出方法は、以前参照によって本明細書に組み入れた米国特許第6,551,596号、同第6,974,576号及び同第6,977,076号にさらに詳細に記載されている。
【0061】
一例では、穏やかな撹拌のもとで水性媒体、好ましくは水又は有機酸、たとえば、酢酸、アスコルビン酸、安息香酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、プロピオン酸、ソルビン酸、コハク酸、など若しくはその組み合わせの弱い酸性溶液によって細胞を処理することによりスプレー乾燥させたクロレラ細胞からクロレラの粗抽出物を調製することができる。約0〜約100℃、又は約50〜約90℃の範囲にある種々の温度にて抽出工程を実行することができる。具体例では、クロレラ細胞(たとえば、Chlorella pyrenoidosa)を蒸留水に浮遊させ、少なくとも約80℃にて抽出することができる。抽出時間は好適な時間にわたって行うことができる。たとえば、約0〜約5時間の範囲にある抽出時間を用いることができる。具体例には約1時間続く抽出時間が挙げられる。
【0062】
約150〜約10,000gの相対遠心力(RCF)による遠心分離によって残りの細胞及び細胞残渣を分離することができる。この工程を完了するのに必要とする時間は遠心力に関係する可能性があり、たとえば、10,000gでは約20分が十分であり得る。次いで上清を微細濾過する。或いは、濾過を用いて細胞及び残渣全体を除くことができ、その場合、粗い濾過から出発して中程度を通り、最後に微細濾過を行う一連のフィルターの使用が有用である。クロスフロー濾過又は振動膜技術を用いて汚れを減らすことができる。濾過は特に温度及び抽出時間に感受性があることが十分に理解されるべきである。
【0063】
遠心分離又は濾過の後、上清(又は濾液)を濃縮して及び/又は乾燥させて乾燥形態の生成物を得ることができる。乾燥は、凍結乾燥、真空下での上清の蒸発、冷却空気の循環又はスプレー乾燥によって達成することができる。抽出物の体積を先ず減らすことができ(たとえば、10〜50%に)、次いで好適な沈殿剤、たとえば、エタノール又は硫酸アンモニウムによって溶液から有効物質を沈殿させることができる。
【0064】
種々のそのほかのクロレラ生成物(その一部は利用可能な予備処理されたもの)も開示される本主題と共に使用することができる。たとえば、市販のクロレラ製品を使用することができる。開示される本主題と共に使用することが企図される市販の製剤及び製品の例は、とりわけ、RESPONDIN(商標)(カナダ、ノバスコシア州、ダートマスのオーシャン・ニュートリション・カナダ社)。SUN CHLORELLA(商標)(米国、カリフォルニア州、トーランスのサンクロレラ)、及びクロレナジー(商標)(日本、筑後市、クロレラ工業株式会社)、及びこれらの組み合わせを含む。
【0065】
クロレラ抽出物は、抽出物のクロレラ由来の総含量の分画として種々の異なった比率の多糖及び多糖複合体を含むことができる。比率は、少なくとも24%(w/w)、少なくとも26%(w/w)、少なくとも28%(w/w)、少なくとも30%(w/w)、少なくとも35%(w/w)、少なくとも40%(w/w)、少なくとも45%(w/w)、少なくとも50%(w/w)、又は少なくとも60%(w/w)であり得る。
【0066】
本明細書で開示されるクロレラ及びクロレラ組成物は、本明細書で開示される種々の組成物、本明細書で開示される方法、本明細書で開示される生成物、及び開示される本主題の適用と組み合わせて使用することができることが理解される。
【0067】
分画方法
本明細書で開示された前述の方法及び同様の方法に由来するクロレラの粗抽出物をさらに処理し、分画して抽出物の所望の成分を回収することができるが、それは本明細書では、「分画(単数)」又は「分画(複数)」と呼ばれる。たとえば、クロレラの粗抽出物を極性媒体に懸濁し、沈殿物を用いて粗抽出物をさらに分離することができる。沈殿を誘導する好適な水溶性有機溶媒が開示される本主題との使用について企図される。例には、とりわけ、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、硫酸アンモニウム、及びこれらの組み合わせが含まれる。具体例には、沈殿溶媒としての使用のための約95%エタノールの選択が含まれる。沈殿溶媒のいかなる好適な体積も使用することができるが、一般に、体積は、さらに処理する所望の粗抽出物のサイズに左右され得る。
【0068】
沈殿又は別の粗分画技法に続いて、追加の処理を用いて粗抽出物を処理することができる。たとえば、粗抽出物の懸濁した沈殿物を遠心分離し、透析し、及び/又は凍結乾燥して実質的に乾燥した沈殿物を得ることができる。さらに、当該技術で周知の方法を用いて沈殿物を脱色することができる。たとえば、脱色剤(たとえば、2−クロロエタノール)の混合物と共に沈殿物の懸濁液又は溶液を撹拌することによって沈殿物を脱色することができる。具体例には、沈殿物を脱色するためのCHCl:CHOHの混合物(たとえば、2:1の混合物)の使用が含まれる。脱色した混合物を次いでさらに処理して沈殿物を所望の質に加工することができる。たとえば、脱色した混合物を透析し、及び/又は凍結乾燥して実質的に乾燥した沈殿物を製造することができる。
【0069】
非多糖成分の除去によって多糖及び多糖複合体をさらに精製し、単離することができる。そのような非多糖成分には、核酸(たとえば、DNA、RNA)及びタンパク質が含まれる。除去の方法の1つは、米国特許第6,551,596号に記載されたように、消化酵素を用いて非多糖成分を切断し、次いでサイズ分画を行って切断生成物を除くことである。当該技術で周知であり、種々の教科書に記載されているように、消化酵素には、プロナーゼ、リボヌクレアーゼ、DNA分解酵素、及びプロテアーゼが挙げられ、そのうちの一例は、Maniatis et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual (1982)Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y.である。関係のないタンパク質の消化に有用なプロテアーゼには、エンドペプチダーゼ、エクソペプチダーゼ、プロナーゼ、トリプシン、キモトリプシン及びスブチリシンのようなセリンプロテアーゼ、パパインのようなチオールプロテアーゼ、及びサーモリシンのようなカルシウムが必要なプロテアーゼが挙げられる。
【0070】
或いは、親和性クロマトグラフィ、たとえば、DNA−又はRNA−結合のマトリクスの使用によって非多糖成分を除くことができる(Maniatis et al., 1982)。別の選択肢は、レクチンのような多糖結合マトリクスの使用によって混入成分から多糖及び多糖複合体を精製することである。別の例では、(i)3以上のα−1,4−結合のD−グルコース単位;(ii)α−1,4−結合のグルコシド;(iii)α−1,4−結合のガラクトシド;又は(iv)α−1,4−結合のD−グルコースの切断を達成するのに十分な条件下と時間にて解糖酵素によって、本明細書で開示された抽出物を処理することができる。そのような処理の後、組成物はその免疫調節活性を保持することができる。
【0071】
沈殿によって又はクロレラ粗抽出物で用いたそのほかの方法によって得られた分画をさらに分画し、精製することができる。たとえば、分画を界面活性剤で処理してさらなる分画を達成することができる。開示される本主題と共に使用するために企図される界面活性剤には、前に本明細書で開示されたような四級アンモニウム界面活性剤(たとえば、ラウリル硫酸アンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、そのほかのアルキルトリメチルアンモニウム塩)が含まれる。開示される本主題と共に使用するために企図される界面活性剤にはまた、とりわけ、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、そのほかのアルキル硫酸塩、ラウレス硫酸ナトリウム(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム)、アルキルベンゼンスルホン酸、塩化セチルピリジニウム(CPC)、ポリエトキシ化タロウアミン(POEA)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミンオキシド、コカミドプロピルベタイン、ココアンフォグリシネート及びこれらの組み合わせが含まれる。前述の界面活性剤の水溶液も用いてさらなる分画を達成することができる。界面活性剤と水の任意の割当重量対体積(w/v)の比又は重量対重量(w/w)の比を使用することができる。例には、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、及び約90w/v(界面活性剤/水)の比が挙げられる。適当な分画を界面活性剤で処理した後、混合物をさらに処理し、沈殿させ、濾過し、透析し、及び/又は凍結乾燥して適当な亜分画を得ることができる。
【0072】
本明細書で開示される方法及び組成物に従ってサイズ分画を用いることができる。たとえば、サイズ分画を用いて、クロレラ抽出物、クロレラ抽出物の成分、クロレラ抽出物の分画及び亜分画、クロレラ抽出物の沈殿物などをさらに分離することができる。サイズ排除クロマトグラフィ、沈降分析(たとえば、勾配遠心、及び限外濾過)を始めとする、当該技術で既知の方法によってサイズ分画を達成することができる。
【0073】
クロレラ抽出物の好適な分画及び亜分画を得るためのサイズ分画は、分子篩の原理に基づくことができる。サイズ排除クロマトグラフィのそのような基礎的な原理は、当業者に周知であり、”Gel filtration:Principle and Methods”8th ed., Amersham Pharmacia Biotech AB, Rahhms I Lund, Uppsala, Swedenで説明されている。特定の範囲を分画するための適当なカラムは、容易に選択することができ、効果的に使用して所望の分画を分離することができ、たとえば、セファクリル(商標)S100HR、セファクリル(商標)S200HR、セファクリル(商標)S300HR、セファクリル(商標)S400HR及びセファクリル(商標)S500HR又はそれらの同等物である。類似の方法では、セファロース(商標)媒体又はそれらの同等物、たとえば、セファロース(商標)6B、4B、2B、セファデックス(商標)G−100を使用することができる。そのようなカラム及びカラム組成物は商業的供給業者(たとえば、スウェーデン、ウプサラのファルマシア)から入手可能である。
【0074】
本明細書で開示される方法及び組成物に従ってアニオン交換クロマトグラフィも使用することができる。たとえば、アニオン交換クロマトグラフィを用いて、クロレラ抽出物、クロレラ抽出物の成分、クロレラ抽出物の分画及び亜分画、クロレラ抽出物の沈殿物などをさらに分離することができる。アニオン交換クロマトグラフィは、たとえば、James S.Fritz and Douglas T. Gjerdeによる”Ion exchange chromatography”(Weinheim; New York: Wiley− VCH, 2000)に記載されたもののような当該技術で既知の方法によって達成することができる。アニオン交換クロマトグラフィを用いて、クロレラ抽出物に存在する大きな分子量の種(たとえば、高分子量の炭水化物)をバルク組成物から容易に分離できることが十分に理解されるべきである。
【0075】
クロレラ抽出物から回収した成分(たとえば、多糖及びタンパク質との多糖の複合体を含む多糖複合体)の精製及び/又は分離は、親和性クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィなどを含むそのほかのクロマトグラフィ技法を用いて達成することもできる。クロレラ抽出物成分の限外濾過は、適当な分子量切捨ての分子膜を用いて行うこともできる。分画を達成するのに使用される具体的な膜及び手順は当業者にとって利用可能である。
【0076】
試料の限外濾過は、適当な分子量切捨ての分子膜を用いて行うことができる。分画を達成するのに使用される具体的な膜及び手順は当業者にとって広く利用可能である。
【0077】
一例では、クロレラ抽出物物質を性状分析し、定量するのに使用される方法は、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)/多角レーザー光散乱(MALS)/屈折率検出(RI)の組み合わせに基づくことができる。ハイブリッド技法(SEC/MALS/RI)では、Tosohaas GMPWXL SECカラムを用いた均一溶媒のHPLC実験を用いて分子サイズに従って混合物を分離することができる。オンラインMALSは、溶出する成分の平均分子量分布を決定することができるので、分析の特異性を提供する。RI検出は、定量と、MALSデータを処理するのに必要とされる溶出特性を提供することの双方に使用することができる。
【0078】
本明細書で開示される分画方法は、本明細書で開示される種々の組成物、本明細書で開示される方法、本明細書で開示される生成物、及び本明細書で開示される本主題の適用と組み合わせて使用することができることが理解される。本明細書で開示される方法から得られる組成物は、本明細書で開示される方法及び適用について企図されることも理解される。
【0079】
分画の性状分析
当該技術で既知の好適な方法によって、クロレラ抽出物の炭水化物組成、核酸(たとえば、DNA含量)及びアミノ酸の組成を決定することができる。
【0080】
開示される抽出物の免疫活性は、グリコシド結合によって連結される単糖類から成る高分子として定義されるクロレラの多糖に関係し得る。多糖は、遊離の多糖又は複合体形成した多糖(すなわち、それ自体有意な免疫活性を有さない非多糖生体高分子と非共有結合で会合する多糖)の形態で抽出物に存在することができる。態様の1つでは、抽出物のタンパク質含量は、約20%〜50%又は20%〜30%であることができる。このタンパク質の比率のうち、約40%〜60%が多糖と会合することができる。
【0081】
非多糖生体高分子には、抽出物の累積分子量に寄与することができるが、有意な免疫活性を有さない核酸高分子(たとえば、DNA)、タンパク質及びRNAが挙げられる。会合していないRNA、DNA及びタンパク質、すなわち、多糖と複合体形成をしていないものは抽出物の免疫活性に必ずしも有意に寄与しない。本出願の目的で、会合していないRNA、DNA及びタンパク質は、リボヌクレアーゼ(RNA分解酵素)、デオキシリボヌクレアーゼ(DNA分解酵素)及びセリンとチオールの部類に共通するプロテアーゼによる切断に感受性があるRNA、DNA及びタンパク質として機能的に定義される。従って、本明細書で開示される抽出物は、会合していないRNA、DNA及びタンパク質を本質的に含まない又は実質的に含まない。「本質的に含まない」によって、5%未満の会合していないDNA又はRNA及び15%未満の会合していないタンパク質を意味する。「実質的に含まない」によって2%未満の会合していないDNA又はRNA及び10%未満の会合していないタンパク質を意味する。
【0082】
非多糖生体高分子自体は免疫活性を欠く一方で、多糖とのその会合は多糖の免疫活性に寄与することができるが、これは、多糖が免疫調節剤として有効に機能することを可能にする特定の立体的な又は極性の必要条件を複合体の非多糖生体高分子が満たすことができるからである。
【0083】
前述の方法又は開示される本主題に係るそのほかの方法から得られる分画(単数)又は分画(複数)の性状分析を行って、分画の適当な物理的及び化学的な特性を明らかにすることができる。本明細書で開示される方法の実践を介して得られる修飾された又は修飾されていない分画で物理的及び化学的な性状分析の方法を用いることができる。
【0084】
当該技術で既知の方法によって物理的及び化学的な特性(構造の情報を含む)を得ることができる。例には、溶液及び固相の核磁気共鳴(NMR)分光法、赤外線分光法(IR)、質量分光法(MS)及び紫外線分光法の使用が挙げられる。具体的には、H、13C及び31PのNMRを用いて本明細書で開示される方法から得られる分画の化学的な及び構造的な特性を確認することができる。とりわけ、分極転移による無歪み増強(四級核のためのDEPT及びDEPTQ)、異核単一量子結合(HSQC)、異核多重結合相関(HMBC)、相関分光法(COSY)、総合相関分光法(TOCSY)及び核オーバーハウザー効果(NOE)差異分光法を含む種々の1−D及び2−DのNMRを用いることができる(任意の適当な核で)。これらの方法及びそのほかの方法は、Robert M.、Silverstein及びFrancis X.、Webster及びDavid J. Kiemleによる”Spectrometric Identification of Organic Compounds”7th ed.(Wiley & Sons: New York, 2005)にさらに詳細に記載されている。
【0085】
本明細書で開示される分画の化学修飾を行って官能基の存在及び/又は非存在を判定することができ、それによって構造情報をさらに解明する。脱リン酸化を用いてリン酸化された官能基を分画から取り除くことができる。脱リン酸化は、たとえば、酵素的に又は化学的に(たとえば、HFによって)行うことができる。脱アセチル化(たとえば、脱O−アセチル化)は、適当な塩基(たとえば、NHOH)を用いて行うことができる。
【0086】
分画組成物
本明細書で開示される方法から得られる分画組成物は、多糖及び/又は多糖複合体を含むことができる。「多糖複合体」によって1以上の多糖が非多糖生体高分子と非共有結合で会合することが意味される。本明細書で開示される多糖が会合することができる非多糖生体高分子の例には、とりわけ、前に本明細書で開示された核酸(たとえば、DNA、RNA)及びタンパク質が含まれる。そのような非共有結合で会合する非多糖生体高分子は、多糖の累積する分子量に寄与することができるが、そのような生体高分子は、多糖の免疫調節特性にほとんど又は全く影響を有さないと一般に考えられることが十分に理解されるべきである。
【0087】
別の態様では、多糖及び多糖複合体は、リボース、核酸、リボ核酸及び会合していないタンパク質を実質的に含まない。多糖及び多糖複合体はまた、任意でN−アセチルグルコサミン及びN−アセチルガラクトサミンも含有することができる。
【0088】
さらに別の態様では、開示された抽出物は、会合していない核酸(たとえば、DNA、RNA)及びタンパク質を取り除く処理の際、免疫調節活性を保持する。そのような処理には、プロナーゼ、DNA分解酵素、RNA分解酵素及びプロテアーゼによる消化が挙げられる。
【0089】
別の態様では、開示された抽出物は、特定のグリコシド結合の切断を達成する処理の際、免疫調節活性を保持し、結合は、アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、セルラーゼ又はノノイタミダーゼによる切断への感受性によって定義される。そのような感受性のある結合には通常、(i)3以上のα−1,4−結合のD−グルコース単位;(ii)α−1,4−結合のグルコシド;(iii)α−1,4−結合のガラクトシド;又は(iv)α−1,4−結合のD−グルコースが含まれる。
【0090】
クロレラから得られる多糖又は多糖複合体は、約1×10〜約1×10Da又は約1×10〜約1×10Daの分子量を有することができる。実施態様の1つでは、開示された多糖又は多糖複合体は、約1×10〜約3×10Daの分子量を有することができる。別の実施態様では、開示された多糖又は多糖複合体は、約2×10〜約4×10Daの分子量を有することができる。さらなる実施態様では、開示された多糖又は多糖複合体は、約3×10〜約5×10Daの分子量を有することができる。その上さらなる実施態様では、開示された多糖又は多糖複合体は、約4×10〜約6×10Daの分子量を有することができる。さらにその上さらなる実施態様では、開示された多糖又は多糖複合体は、約5×10〜約7×10Daの分子量を有することができる。さらにその上さらなる実施態様では、開示された多糖又は多糖複合体は、約6×10〜約8×10Daの分子量を有することができる。さらに別の実施態様では、開示された多糖又は多糖複合体は、約7×10〜約9×10Daの分子量を有することができる。その上別の実施態様では、開示された多糖又は多糖複合体は、約8×10〜約1×10Daの分子量を有することができる。別のさらなる実施態様では、開示された多糖又は多糖複合体は、約9×10〜約2×10Daの分子量を有することができる。さらに別のさらなる実施態様では、開示された多糖又は多糖複合体は、約1×10〜約3×10Daの分子量を有することができる。その上さらに別のさらなる実施態様では、開示された多糖又は多糖複合体は、約2×10〜約4×10Daの分子量を有することができる。さらなる実施態様の1つでは、開示された多糖又は多糖複合体は、約3×10〜約5×10Daの分子量を有することができる。さらにさらなる実施態様の1つでは、開示された多糖又は多糖複合体は、約4×10〜約6×10Daの分子量を有することができる。別の実施態様では、開示された多糖又は多糖複合体は、約5×10〜約7×10Daの分子量を有することができる。さらなる実施態様の1つでは、開示された多糖又は多糖複合体は、約6×10〜約8×10Daの分子量を有することができる。さらにその上さらなる実施態様では、開示された多糖又は多糖複合体は、約7×10〜約9×10Daの分子量を有することができる。さらに別の実施態様では、開示された多糖又は多糖複合体は、約8×10〜約1×10Daの分子量を有することができる。多糖又は多糖複合体の非限定例は、約1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、又は約1×10の分子量を有することができる。しかしながら、開示された多糖又は多糖複合体は、約1×10〜約1×10Daの分子量を有することができることが理解される。
【0091】
開示される多糖及び多糖複合体に存在することができる単糖類残基には、限定しないで、マンノース、ラムノース、グルコース、ガラクトース、アラビノース、及びこれらの組み合わせが含まれる。企図される多糖は、D型、ピラノース型及び/又はフラノース型で存在する単糖類残基を含む。さらに、単糖類は、α及び/又はβアノマー型で存在することができる。たとえば、α−D−マンノース及び/又はβ−D−ガラクトースは多糖に存在することができる。単糖類は適当な結合部位を介して一緒に連結され得る。例には、1→6、1→4及び1→3の結合を介して連結された単糖類が含まれる。単糖類残基は、O−メチル化、O−アセチル化、O−リン酸化及びその組み合わせを受けることができる。一例では、多糖は、ホスホジエステル結合を介して多糖の主鎖に連結された少なくとも2つの末端単糖類を含む。「末端の」よって、分枝鎖多糖の主鎖における分枝の端を意味する。ホスホジエステル結合は、多糖の1→6結合、たとえば、1−HPO→6結合を介して少なくとも2つの単糖類を一緒に連結することができる。
【0092】
ほかの例には、第2のガラクトースごとに連結される(すなわち、結合される)グルコース側鎖を含む多糖及び多糖複合体が含まれる。多糖及び多糖複合体はまた、隣接するガラクトースに連結される2つの単一グルコースも含むことができる。
【0093】
本多糖及び多糖複合体では、個々の糖残基間の比が存在することができる。例には、ガラクトースとグルコースの比が約2:1である多糖が含まれる。別の例には、ガラクトースとグルコースの比が約3:1である多糖が含まれる。ガラクトースとグルコースのそのほかの企図される比には、限定しないで、約1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.1:1、2.2:1、2.3:1、2.4:1、2.5:1、2.6:1、2.7:1、2.8:1、2.9:1、3:1が含まれる。さらなる例には、限定しないで、1:1.2、1.3:1、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.1、1:2.2、1:2.3、1:2.4、1:2.5、1:2.6、1:2.7、1:2.8、1:2.9、1:3を含むガラクトースとグルコースの比が含まれる。具体例には、NMR分光法で決定されたガラクトースとグルコースの比が約2:1である多糖が含まれる。別の例には、酢酸アルジトールによる分析に従ってガラクトースとグルコースの比が約3:1である多糖が含まれる。
【0094】
リン糖構造(ホスホグリカンと呼ばれる)を有する多糖類が、細菌の被膜、細菌及び酵母の細胞壁、同様にリーシュマニア原虫寄生虫の細胞外及び細胞表面のグリコポリマー、および一部の動物糖タンパク質のグリカン鎖において天然に存在することが見い出されている。
【0095】
被膜の多糖類(多数の細菌では血清型特異的な一次抗原)及びグラム陰性細菌の細胞壁LPSからのO−特異的多糖鎖(体細胞抗原)は普通、ほかで概説されている高度に多様化した単糖類の発現を伴う規則的なポリ(グリコシルリン酸)構造を含有する。記載されるグリコシルリン酸単位の中で、α−D−GlcpNAc−1−リン酸、α−D−Glcp−1−リン酸、α−D−GalpNAc−1−リン酸、α−D−Galp−リン酸、及びα−D−Rhap−1−リン酸は最も広く分布する。グラム陽性細菌の細胞壁は、テイコ酸と呼ばれるアルデトール−リン酸の繰り返し単位を含有することが知られるアニオン性のグリコポリマーも含有する。後者の群には、ポリ(リン酸グリセロール)、ポリ(リン酸エリスリトール)、ポリ(リン酸リビトール)、ポリ(リン酸アラビニトール)及びポリ(リン酸マンニトール)が挙げられ、ホスホジエステル結合は主として1級ヒドロキシル基間で生じる一方で、2級ヒドロキシルは置換されないか又はグリコシル化される。テイコ酸様のポリマーはどれもグリコシルリン酸単位を含有しない。
【0096】
グリコシルリン酸塩残基を含有する細菌のホスホグリカンとは異なって、稀にしか見られない場合、酵母のホスホグリカンではα−D−Manp−1−リン酸塩が一般的に見い出される。細菌のα−Manp−1−リン酸塩を含有するグリコシルリン酸塩構造の唯一知られている報告は、グラム陰性細菌、P.gingivalis由来の細胞表面のホスホマンナンである。多糖は、α−D−Manp、α−D−Manp−(1→2)−α−D−Manp及びα−D−Manp−(1→2)−α−D−Manp−(1−POH→のO−2側鎖を持つ→6)α−D−Manp残基の三糖反復単位から成る。
【0097】
酵母におけるホスホマンナンは、酵母細胞に粘着性を提供する細胞内粘液を形成することができ、又は細胞壁の一部であり、それらは、細胞の抗原特異性を決定することが多い。細菌のホスホグリカンとは対照的に、酵母のホスホマンナンは稀に規則的であり、α−(1→2)、α−(1→3)及び時にβ−(1→2)グリコシド結合による種々の長さの側鎖を持つα−(1→6)結合のマンノピラノシル単位からほとんど成る。酵母ホスホマンナンの大半は、側鎖にα−D−Manp−(1−POH→6)−α−D−Manp−(1→グリコシルリン二糖単位を持つ。
【0098】
親水性及び疎水性のホスホグリカンはそれぞれ、リーシュマニアの前鞭毛体の培養上清及び細胞表面を構成することが示されているが、リーシュマニアは、ヒトにおいて種々の、衰弱させ致死性になることが多い疾患を引き起こす、サシチョウバエが媒介する原虫寄生虫の属である。親水性のホスホグリカンは、直鎖又は分枝鎖(種による)のガラクトマンノシルリン酸反復単位から成るポリ(グリコシルリン酸)構造を含有するが、疎水性のホスホグリカンでは、相当するポリ(グリコシルリン酸)は、イノシトールリン脂質アンカーに連結してリポホスホグリカン結合を作るグリカンの中心に鎖の還元末端で連結される。配列、α−D−Manp−(1−POH→6)−β−D−Galp−(1→は、リーシュマニア寄生虫のホスホグリカンで最も頻繁に見られるグリコシルリン糖単位である。
【0099】
グリコシルリン糖構造は、動物起源の糖タンパク質を構成することも見い出されている。配列、α−D−Glcp−(1−POH→6)−α−D−Manp−(1→は、一部の原形質膜の高マンノース型オリゴ糖鎖及び細胞質認識糖タンパク質の末端断片であることが見い出されているが、配列、α−D−GlcpNAc−(1−POH→6)−α−D−Manp−(1→は、多数のリソソーム酵素の成分であることが見い出されている。
【0100】
多様な起源の天然のホスホグリカンに見い出されるグリコシルリン酸単位の大半は、α−D−又はα−L−ヘキソピラノース配置を有することが見い出されており、リン酸基はC−1位にて軸の位置を占有し、それは、アノマー効果によって好まれることが知られる。
【0101】
微小藻類由来の多糖類は、細菌、酵母及び植物由来のものほど詳細には検討されていない。本明細書で開示されるのは、グリコシルリン酸構造を含有する微小藻類に由来するホスホグリカンである。α−D−Manp−(1−POH→単位の側鎖は、一部の酵母のホスホグリカン構造に似る構造的特徴である。しかしながら、この場合メチル化リン糖単位、3−O−メチルα−Manp−(1−POH→の存在に関する報告はこれまでになく、それによって本明細書で報告される構造が独特のものになっている。
【0102】
グラム陰性細菌、Spirillaplanes (Micromonospora) yamanashiensisの細胞壁は、一部の6−リン酸化Nアセチルグルコサミン残基の3位(50%)にて3−O−メチル−α−マンノピラノシル残基と共に6)−α−D−GlcpNAc−(1→6)−α−D−GlcpNAc−(1−POH→反復単位から成るアニオン性ポリマーを含有することが見い出された。しかしながら、3−O−メチル−α−Manpのこの側鎖はリン酸化されるとは思われなかった。
【0103】
以下は、IUPAC指名に従って提示される開示された多糖の非限定例である。これらの式は図26〜34でも言及される。
【0104】
【化2−1】

【0105】
【化2−2】

式中、添え字a+b+c+d=n。添え字nは本明細書上記で定義されたような開示された多糖又は多糖複合体の平均分子量を反映する。従って、添え字nは約5〜約500である。実施態様の1つでは、nは約7〜約400である。添え字a、b、c及びdは約1〜約450のいずれかの値を有することができる。実施態様の1つでは添え字aは、約10〜約50である。さらなる実施態様では、添え字aは、約20〜約70である。別の実施態様では、添え字aは、約30〜約50である。さらにさらなる実施態様では、添え字aは、約5〜約15である。実施態様の1つでは添え字bは、約10〜約50である。さらなる実施態様では、添え字bは、約20〜約70である。別の実施態様では、添え字bは、約30〜約50である。さらにさらなる実施態様では、添え字bは、約5〜約15である。実施態様の1つでは添え字cは、約10〜約50である。さらなる実施態様では、添え字cは、約20〜約70である。別の実施態様では、添え字cは、約30〜約50である。さらにさらなる実施態様では、添え字cは、約5〜約15である。実施態様の1つでは添え字dは、約10〜約50である。さらなる実施態様では、添え字dは、約20〜約70である。別の実施態様では、添え字dは、約30〜約50である。さらにさらなる実施態様では、添え字dは、約5〜約15である。しかしながら、添え字a、b、c及びdは5〜500のいずれかの値を有することができる。
【0106】
開示される組成物の免疫調節特性
理論に束縛されることを望まないが、本明細書で開示される組成物及び化合物は、生物学的反応調節剤(免疫賦活剤又は免疫調節剤)であることができる。生物学的反応調節剤は、免疫系の刺激によって対象の生物学的反応を変え、その結果種々の治療効果を生じる作用因子として定義される。この部類に属する物質のカテゴリーの1つは免疫調節剤である。従って、開示される組成物を用いて免疫応答を調節することができる。開示される本主題の文脈において、そのような調節は、対象の免疫防御機構の向上であり得る。
【0107】
クロレラ抽出物はB細胞及びマクロファージの刺激剤である。B細胞免疫調節剤の利益の1つは、抗原に対する損傷された抗体応答を有する対象においてそれらが免疫機能を刺激できることである。また、B細胞刺激剤は、新しい感染に罹った際、抗体免疫応答の有効性を高めることができる。クロレラ抽出物は、予防的健康治療に関する安全で、有効な且つ費用効果のある選択肢を提供する。
【0108】
本明細書で開示されるのは、クロレラ抽出物がBALB/cマウスの脾臓細胞の増殖及びマクロファージのIL−6とNOの産生を刺激することを明らかにする試験管内の検討である。さらに本明細書で開示されるのは、クロレラ抽出物が、真菌Candida albicansと同様にListeria monocytogenesによる感染を有意に低減することを示す生体内の検討である。
【0109】
腹腔マクロファージによるNO産生に基づいた、本明細書で開示される組成物の免疫賦活活性の結果を図25に示す。以後、「A−P−1」及び「A−P−2」と呼ばれる、サイズ排除クロマトグラフィを介して得られた2つの分画は免疫賦活剤として活性があった。分画A−P−1のアニオン交換クロマトグラフィに由来する分画の免疫賦活活性が分子サイズと共に上昇し、それは免疫賦活剤として活性があるこのリン酸化多糖について、最小数の反復単位が好まれ得ることを示すことは注目に値することであることが十分に理解されるべきである。グラフはまた、多糖は、アセチル基とリン酸基の双方を失った(分画A−P−8−deO−deP)後、その免疫賦活効果を完全に失うことも示す。
【0110】
クロレラ抽出物について一連の3種の毒性学試験が完了した。ラットにおける28日間の経口毒性試験の間、クロレラ抽出物の投与の影響は明らかではなかった。ラットにおける急性の経口毒性については、単回経口投与に従った最高の非致死性用量又は最低の致死性の用量を決定するために、試験によってクロレラ粗抽出物の最低致死用量は、2000mg/kg体重を超えることが見い出された。細菌の突然変異アッセイは、クロレラ抽出物は試験条件下で変異活性を呈さないことを示した。
【0111】
無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行い、クロレラ抽出物がプラセボの対象に比べてインフルエンザのワクチンを受けた健常成人で有意な免疫賦活効果を明示することを示した(米国特許第6,551,596号を参照のこと)。ヒトの血液細胞による試験管内の実験は、マウスのモデルで見られたのと同様に、インターロイキンの産生の刺激を示す。
【0112】
組成物
本明細書で開示されるのは、
a)(i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位又は
(ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む1以上の多糖又は多糖複合体と、
b)1以上の添加剤成分を含む組成物であり、その際、多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する。
【0113】
従って、実施態様の1つでは、組成物は、
a)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位を含む1以上の多糖又は多糖複合体と
b)1以上の添加剤成分を含むことができ、その際、多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する。
【0114】
さらなる実施態様では、組成物は、
a)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む1以上の多糖又は多糖複合体と、
b)1以上の添加剤成分を含むことができ、その際、多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する。
【0115】
別の実施態様では、組成物は、
a)(i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位;及び
(ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む1以上の多糖又は多糖複合体と、
b)1以上の添加剤成分を含むことができ、その際、多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する。
【0116】
本明細書で使用されるとき、「添加剤成分」は、薬理学上活性があり得る又は不活性であり得る別の成分を意味する。たとえば、不活性成分は液体キャリア、固体賦形剤、安定剤、界面活性剤などであることができる。薬理学上活性がある添加剤は、鎮痛薬、オピオイド、免疫抑制剤、抗菌剤などであることができる。
【0117】
医薬組成物
本明細書で開示されるのは、
a)i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位又は
ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む1以上の多糖又は多糖複合体と、
b)1以上の薬学上許容可能な成分を含む医薬組成物であり、その際、多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する。
【0118】
従って、実施態様の1つでは、組成物は、
a)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位を含む1以上の多糖又は多糖複合体と
b)1以上の薬学上許容可能な成分を含むことができ、その際、多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する。
【0119】
さらなる実施態様では、組成物は、
a)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む1以上の多糖又は多糖複合体と、
b)1以上の薬学上許容可能な成分を含むことができ、その際、多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する。
【0120】
別の実施態様では、組成物は、
a)(i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位;及び
(ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む1以上の多糖又は多糖複合体と、
b)1以上の薬学上許容可能な成分を含むことができ、その際、多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する。
【0121】
本開示の目的で、用語「賦形剤」及び「キャリア」は、本開示の記載全体を通して相互変換可能に使用され、前記用語は、「安全で有効な医薬組成物を製剤化する実践で使用される成分」として本明細書で定義される。
【0122】
賦形剤は安全で、安定で、且つ機能的な医薬を送達するために主に用いられ、送達のための媒体の一部としてだけではなく、有効成分の受入者による有効な吸収を達成するための手段として役立つことを製剤作製者は理解するであろう。賦形剤は、不活性充填剤と同じくらい単純で直接的な役割を満たし、本明細書で使用されるとき、賦形剤は、pH安定剤の一部であってもよいし、胃への成分の送達を安全に保証するコーティングであってもよい。製剤作製者はまた、本開示の化合物が、経口バイオアベイラビリティを改善していると共に細胞性の潜在力、薬物動態特性を改善しているという事実を上手く利用することもできる。
【0123】
本明細書で開示されるクロレラの抽出物及び分画は、免疫応答の調節が所望される症状又は疾患の状態で使用するのに好適であり得る。一例では、開示された組成物は、有効量で粘膜ワクチン製剤の種々の形態、たとえば、経口投与におけるアジュバントとして使用することができる。
【0124】
本明細書で使用されるとき、用語「アジュバント」は、それ自体を与えた場合、直接的な効果があるとしても少ない一方で、ほかの作用因子(たとえば、薬剤、ワクチン、免疫抑制剤、又は生物学的に活性のある作用因子)の効果を加減する薬学上許容可能な成分、たとえば、薬理学的な又は免疫学的な作用因子を意味する。
【0125】
アジュバントは、局所の堆積物に隔離することによって迅速な分散から抗原を保護することができ、又は対象を刺激してマクロファージ及び免疫系のほかの成分にとって走化性である因子を分泌する物質を含有することができる。粘膜投与用の既知のアジュバントには、細菌毒素、たとえば、コレラ毒素(CT)、大腸菌熱不安定毒素(LT)、Clostridium difficileの毒素A及び百日咳毒素(PT)が挙げられる。高分子量の食用生成物であり、それ自体免疫刺激剤であるクロレラの抽出物及び分画は、経口ワクチンにおけるアジュバントとしての使用のための候補である。
【0126】
本開示はまた、本明細書で開示された組成物の有効量を対象(たとえば、ヒトを含む哺乳類)に投与することによって対象の免疫応答を調節する方法も提供する。そのような調節には、脾細胞の増殖の増加、サイトカイン、たとえば、IL−6、IL−10,INFγ及びTNF−αの産生の上昇が挙げられ、有利に利用して細菌感染又は真菌感染を治療する又は予防することができる。
【0127】
抽出物を補完物としてワクチン接種計画にさらに投与し、免疫応答をさらに刺激することができる。たとえば、抽出物と共にインフルエンザワクチンを有利に使用することができる。抽出物はワクチンに対するアジュバントとして、特に経口ワクチンのアジュバントとして存在することができる。
【0128】
好適な医薬組成物は、薬学上許容可能な成分、たとえば、薬学上許容可能なキャリアと共に開示された多糖又は多糖複合体のいずれか及びそのほかの生物活性剤を含むことができる。一部の例では、本明細書で開示された組成物はそれ自体薬学上許容可能なキャリアであることができる。本明細書で開示される医薬製剤を治療的に又は予防的に用いることができる。
【0129】
「薬学上許容可能なキャリア」によって、生物学的に又はそうでなくても望ましくないものではない物質を意味し、すなわち、たとえば、望ましくない生物学的効果を引き起こさずに、又は含有される医薬製剤のほかの成分と有害な方法で相互作用することなく、物質を対象に投与することができる。当業者に周知のように、キャリアを必然的に選択して有効成分の分解をできるだけ抑え、対象における有害な副作用をできるだけ抑える。
【0130】
医薬キャリアは当業者に既知である。これらはほとんど通常、ヒトに薬剤を投与するための、たとえば、無菌水、生理食塩水、生理的pHに緩衝化された溶液のような溶液を含む標準的なキャリアである。好適なキャリア及びその製剤は、RemingtonのThe Science and Practice of Pharmacy、21st Ed. Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA, 2005に記載されているが、キャリア及び医薬製剤のその教示のためにそれを参照によって本明細書に組み入れる。通常、適当量の薬学上許容可能な塩を製剤に用いて製剤を等張にする。薬学上許容可能なキャリアの例には、生理食塩水、リンガーの溶液及びデキストロース溶液が挙げられるが、これらに限定されない。溶液のpHは約5〜約8(たとえば、約7〜約7.5)であることができる。さらなるキャリアには、徐放性調製物、たとえば、開示された化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスが挙げられるが、マトリクスは、成形物品の形態、たとえば、フィルム、リポソーム、微粒子又はマイクロカプセルの形態である。たとえば、投与経路及び投与される組成物の濃度によって特定のキャリアがさらに好ましいことは当業者に明らかであろう。当業者によって使用される標準的な手順に従ってほかの化合物を投与することができる。
【0131】
医薬製剤は、本明細書で開示された化合物に加えて、増粘剤、希釈剤、緩衝液、保存剤、表面活性剤などと同様に追加のキャリアを含むことができる。医薬製剤はまた、1以上の追加の有効成分、たとえば、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬などを含むことができる。
【0132】
局所治療又は全身性治療のいずれが望ましいかによって、及び治療される領域によって、多数の経路で医薬製剤を投与することができる。投与は、局所(眼科的に、膣に、直腸に、鼻内にを含む)に、経口で、吸入によって、又は非経口で、たとえば、静脈内点滴によって、皮下の、腹腔内の若しくは筋肉内の注射によって行うことができる。開示された化合物は、静脈内に、腹腔内に、筋肉内に、皮下に、腔内に、又は経皮的に投与することができる。
【0133】
非経口投与用調整物には、無菌の水溶液又は非水性溶液、懸濁液及びエマルションが挙げられる。非水性溶液の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、魚油、及びオレイン酸エチルのような注射用有機エステルが挙げられる。水性キャリアには、生理食塩水及び緩衝化溶剤を始めとする水、アルコール性/水性溶液、及びエマルジョン又は懸濁液が挙げられる。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンガーのデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸化リンガー溶液及び固定油が挙げられる。静脈内媒体には、流体及び栄養補液、電解質補液(たとえば、リンガーのデキストロースに基づくもの)などが挙げられる。保存剤及びそのほかの添加剤、たとえば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなども存在してもよい。また本明細書で提供されるのは、炭水化物、脂肪又は窒素であることができる少なくとも1つのエネルギー源と共にクロレラ抽出物を含有する栄養組成物である。
【0134】
栄養組成物
本明細書で開示されるのは、
a)(i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位又は
(ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む1以上の多糖又は多糖複合体と、
b)1以上の食べられる成分又は栄養成分を含む組成物であり、その際、多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する。
【0135】
従って、実施態様の1つでは、組成物は、
a)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位を含む1以上の多糖又は多糖複合体と
b)1以上の食べられる成分又は栄養成分を含むことができ、その際、多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する。
【0136】
さらなる実施態様では、組成物は、
a)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む1以上の多糖又は多糖複合体と、
b)1以上の添加剤成分を含むことができ、その際、多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する。
【0137】
別の実施態様では、組成物は、
a)(i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位;及び
(ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む1以上の多糖又は多糖複合体と、
b)1以上の食べられる成分又は栄養成分を含むことができ、その際、多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する。
【0138】
用語「食べられる」が意味するものは、食べることができるどんなものでもであり、すなわち、食物である。開示された多糖又は多糖複合体は、相溶性である食べられる産物と組み合わせることができる。たとえば、開示された多糖又は多糖複合体を、飲料、すなわち、果実ジュース、野菜ジュース、コーラなどに添加することができる。多糖又は多糖複合体を、たとえば、果実、ヨーグルトと混合した固形食品と、又は栄養補助剤と組み合わせることができる。
【0139】
本明細書で開示されたクロレラの抽出物及び分画を含む栄養組成物及び医薬組成物は、経腸投与に好適な形態で、たとえば、経口投与又は経管栄養に好適な形態で製剤化され、投与され得る。栄養製剤及び医薬製剤は、たとえば、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンB、葉酸又はこれらの組み合わせを含むことができる。栄養製剤及び医薬製剤はまた、たとえば、魚油、真菌油、藻類油、魚類油、Spirulina及びEchinacea、又はこれらの組み合わせも含むことができる。水性液体の形態で製剤を好都合に投与することができる。腸溶応用に好適な製剤は、水性形態、又は錠剤形態を含む粉末若しくは顆粒の形態であることができる。粉末又は顆粒は使用前に好都合に水に添加することができる。液体の形態では、組成物は通常、約0.1〜約50重量%の固形分を有し得る。飲み物として、既知の方法によって、たとえば、クロレラの抽出物又は分画をたとえば、炭水化物、脂肪及び/又は窒素源のようなエネルギー源と混合することによって組成物を得ることができる。
【0140】
栄養組成物は、単独の栄養源として使用される場合、1日のカロリー、窒素、脂肪酸、ビタミン、ミネラル及び微量元素の要求が本質的にすべて満たされ得るように完全な調整食の形態(液体又は粉末の形態)であることができる。企図される栄養組成物は、とりわけ、本明細書で開示される多糖及び多糖複合体と1以上の炭水化物、脂肪、及び/又は窒素源(たとえば、タンパク質)を含むことができる。
【0141】
本明細書で開示された医薬組成物もまた、単回用量の形式又は複数回用量の形式に製剤化することができ、その際、それらはクロレラ抽出物と薬学上許容可能なキャリアを含む。そのような医薬組成物は、腸溶性の投与、たとえば、経口、鼻内及び直腸の投与に好適であり得る。経口投与用の医薬組成物には、粉末又は顆粒、水又は非水性媒体における懸濁液又は溶液、カプセル、ゲルキャップ、サシェ又は錠剤が挙げられるが、これらに限定されない。増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤又は結合剤が望ましい可能性がある。
【0142】
好適な組成物は液体の形態又は固体の形態であることができる。液体組成物の投与量は通常、約0.1〜約50重量%又は約1〜約10重量%のクロレラ抽出物又はクロレラ分画の範囲であり得る。固体組成物の投与量は通常、約0.2mg/kg〜約200mg/kgの範囲であり得る。組成物はまた、錠剤、硬質カプセル及び軟質カプセル、及びサシェの形態でもあり得る。好適なキャリアは当該技術で既知である。それらには、たとえば、糖又はセルロースのような充填材、デンプンのような結合剤、及び必要であれば又は所望であれば、崩壊剤が含まれる。
【0143】
局所投与用の医薬製剤には、軟膏、ローション、クリーム、ジェル、ドロップ、座薬、スプレー、液体及び粉末を挙げることができる。従来の医薬キャリア、水溶液、粉末又は油性基剤、増粘剤などが望ましい可能性がある。
【0144】
別の実施態様では、たとえば、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸及びリン酸のような無機酸、並びにたとえば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、パモン酸及びフマル酸のような有機酸との反応によって、又はたとえば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムのような無機塩基並びにたとえば、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン及びアリールアミン及び置換エタノールアミンのような有機塩基との反応によって形成される薬学上許容可能な酸付加塩又は塩基付加塩として、開示される製剤を投与することができる。
【0145】
好適な手段を用いて、たとえば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、粉末化、乳化、カプセル化、取り込み又は凍結乾燥の工程によって医薬組成物を製造してもよい。
【0146】
従って、本開示に従って使用するための医薬組成物は、薬学上使用することができる調整物に活性化合物を加工することを円滑にする賦形剤及び補助剤を含む、1以上の生理学的に又は薬学上許容可能なキャリア(媒体又は希釈剤)を用いた従来の方法において製剤化されてもよい。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。
【0147】
注射、経粘膜、経口、吸入、眼内、直腸内、持続型埋め込み、リポソーム、エマルション又は徐放性の手段を含む本開示の治療の方法において患者に医薬組成物を投与する好適な方法を使用してもよい。
【0148】
注射については、本開示の作用因子を、水溶液、好ましくは生理学的に適合する緩衝液、たとえば、ハンクスの溶液、リンガーの溶液、又は生理学的な生理食塩水緩衝液において製剤化してもよい。経粘膜投与については、浸透すべきバリアに適した浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は当該技術で一般に知られる。眼内投与については、当該技術で周知のように、適当な生理食塩水溶液における懸濁液が使用される。
【0149】
経口投与については、当該技術で周知の薬学上許容可能なキャリアと活性化合物を組み合わせることによって化合物を容易に製剤化することができる。そのようなキャリアによって本開示の化合物は、治療される患者による経口摂取用の錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化されるのが可能になる。経口使用のための医薬製剤は、得られた混合物を任意で粉砕し、顆粒の混合物を加工し、所望であれば、錠剤又は糖衣錠の芯を得るために好適な助剤を添加した後、固体の賦形剤として得ることができる。好適な賦形剤には、ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む糖のような充填剤;たとえば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、ゴムトラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)のようなセルロース調製物が挙げられる。所望であれば、たとえば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムのようなその塩のような崩壊剤を加えてもよい。
【0150】
糖衣錠の芯には好適なコーティングが提供される。この目的で、任意でアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を含有してもよい濃縮された糖溶液を使用してもよい。識別のために、又は活性化合物の用量の様々な組み合わせを特徴付けるために、染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠のコーティングに加えてもよい。
【0151】
経口で使用することができる医薬製剤には、ゼラチン製の押し込み型カプセル、同様にゼラチンとグリセロール又はソルビトールのような可塑剤とで出来た密閉軟質カプセルが挙げられる。押し込み型カプセルは、ラクトースのような充填剤、デンプンのような結合剤、及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、任意で安定剤の混合物において有効成分を含有することができる。軟質カプセルでは、好適な液体、たとえば、脂肪油、流動パラフィン、又は液状ポリエチレングリコールに活性化合物を溶解してもよく、又は懸濁してもよい。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与用の製剤はすべて、そのような投与に好適な投与量とすべきである。
【0152】
頬内投与については、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤又はトローチ剤の形態を取ってもよい。
【0153】
吸入による投与については、本開示に従って使用するための化合物は、好適な高圧ガス、たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又はそのほかの好適なガスと共に、加圧パック又は噴霧器からのエアゾールスプレーの提示の形態で好都合に送達される。加圧エアゾールの場合、投与量単位は、計測量を送達するための弁を提供することによって決定されてもよい。吸入器又は吸い込み器で使用するための、たとえば、ゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物の粉末混合物とラクトース又はデンプンのような好適な粉末基剤とを含有して製剤化されてもよい。
【0154】
注射、たとえば、ボーラス注射又は連続点滴による非経口投与のために化合物が製剤化されてもよい。単位投与量形態、たとえば、添加した保存剤を伴った、アンプル又は複数回用量の容器にて注射用製剤が提示されてもよい。組成物は、懸濁液、溶液又は油性若しくは水性の媒体におけるエマルジョンのような形態を取ってもよく、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤のような製剤化剤を含有してもよい。
【0155】
非経口投与用の医薬製剤には、水溶性形態における活性化合物の水溶液が挙げられる。さらに適当な油性注射用懸濁液として活性化合物の懸濁液を調製してもよい。好適な親油性の溶媒又は媒体には、たとえば、ゴマ油のような脂肪油、又は、たとえば、オレイン酸エチル若しくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘度を高める物質、たとえば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール又はデキストランを含有してもよい。任意で、懸濁液は、好適な安定剤又は化合物の溶解性を高めて高度に濃縮された溶液の調整を可能にする作用因子も含有してもよい。
【0156】
或いは、有効成分は、使用前に好適な媒体、たとえば、無菌で発熱物質を含まない水と共に構築するための粉末の形態であってもよい。
【0157】
たとえば、ココアバター又はそのほかのグリセリドのような従来の座薬基剤を含有する座薬又は停留浣腸のような直腸内組成物において化合物を製剤化してもよい。
【0158】
前に記載された製剤化に加えて、デポー調整物として化合物を製剤化してもよい。埋め込み(たとえば、皮下に又は筋肉内に)又は筋肉内注射によってそのような持続型製剤を投与してもよい。従って、たとえば、好適なポリマー又は疎水性物質(たとえば、許容可能な油におけるエマルションとして)若しくはイオン交換樹脂と共に、又はやや溶けにくい誘導体として、たとえば、やや溶けにくい塩として化合物を製剤化してもよい。
【0159】
本開示の疎水性化合物のための医薬キャリアの1種は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー及び水性相を含む共溶媒系である。
【0160】
共溶媒系はVPD共溶媒系である。VPDは、3%w/vのベンジルアルコールと、8%w/vの非極性界面活性剤、ポリソルベート80と、65%w/vのポリエチレングリコール300の溶液であって、無水エタノールで体積を合わせた溶液である。VPD共溶媒系(VPD:5W)は、5%デキストロース水溶液で1:1に希釈したVPDから成る。この共溶媒系は疎水性の化合物を上手く溶解し、それ自体全身性投与の際、低毒性である。当然、共溶媒系の比率は、その溶解性及び毒性の特徴を壊すことなく、かなり変化してもよい。さらに、共溶媒成分の個性は変化してもよく:たとえば、ポリソルベート80の代わりにほかの低毒性の非極性界面活性剤を使用してもよく;ポリエチレングリコールの分画サイズを変えてもよく;ほかの生体適合性のポリマー、たとえば、ポリビニルピロリドンがポリエチレングリコールに取って代わってもよく;デキストロースについてほかの糖又は多糖が置換されてもよい。
【0161】
或いは、疎水性の医薬化合物のためのほかの送達系を採用してもよい。リポソーム及びエマルションは、疎水性薬剤のための送達媒体又は送達キャリアの周知の例である。特定の有機溶媒、たとえば、ジメチルスルホキシドも採用されてもよい。
【0162】
さらに、好適な徐放性方式、たとえば、治療剤を含有する固体疎水性ポリマーの半浸透性マトリクスを用いて化合物を送達してもよい。種々の徐放性物質が確立されており、当該技術で周知である。徐放性カプセルは、その化学的性質によって長い時間、化合物を放出する。治療試薬の化学的性質と生物学的安定性によって、化合物の安定化のために追加の戦略が採用されてもよい。
【0163】
医薬組成物はまた、好適な固体の又はゲル相のキャリア又は賦形剤も含んでもよい。各キャリア又は賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリエチレングリコールのようなポリマーが挙げられる。
【0164】
本開示の作用因子の多くが、薬学上許容可能な対イオンとの塩として提供されてもよい。塩は、相当する遊離塩基の形態よりも水性溶媒又はそのほかのプロトン性溶媒に溶解しやすい傾向がある。
【実施例】
【0165】
以下の実施例は、本明細書で記載され、請求される化合物、組成物、物品、装置及び/又は方法がどのように作製され、評価され、純粋に例示を意図され、範囲を限定することを意図されないことの完全な開示及び説明を当業者に提供できるように提示される。数(たとえば、量、温度など)に関して精度を確保するように尽力が為されているが、一部の誤差や偏差が説明されるべきである。特に示されない限り、部は重量部であり、温度は℃におけるものであり、常温であり、圧力は大気圧又はほぼ大気圧である。条件、たとえば、成分の濃度、所望の溶媒、溶媒の混合物、温度、圧力及び本明細書に記載される方法を最適化するのに使用することができるそのほかの反応範囲及び条件の多数の変異や組み合わせがある。そのような工程条件を最適化するのに理に適った且つ日常的な実験のみが必要とされる。
【0166】
1.分画されたクロレラ粗抽出物の調製
約5Lの蒸留水にChlorella pyrenoidosaの凍結乾燥した細胞(1000g)を懸濁し、約80℃にて約1時間抽出した。遠心分離(約4300rpm、30分、4℃)した後、沈殿物を蒸留水(2.5L)に再懸濁し、同一条件下で抽出した。遠心分離の後、上清を合わせ、真空下で500mLに蒸発させ、粗抽出物(CE)を作製した。
【0167】
95%のエタノールで順次CEを沈殿させ、遠心分離、透析及び凍結乾燥の後、以後それぞれA、B及びCと呼ばれる3種の沈殿物を作製した。約2:1(v/v)のCHCl−CHOH混合物(3×500mL)と共に30分間撹拌することによって「沈殿物A」を脱色した。得られた「脱色物A」を水に溶解し、透析し、凍結乾燥して分画「A−d」を作製した(図1)。
【0168】
界面活性剤、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)による処理によって分画A−dを分画した。CTABの水溶液[100mL、10%(w/v)]とA−d[1L;1%(w/v)]を混合し、混合物を約4℃で一晩静置した。遠心分離の後、不溶性部分を約2LのNaCl水溶液に溶解し、透析し、凍結乾燥して「A−P」と本明細書で呼ばれる分画を得た(図1)。
【0169】
2.A−Pの分画
セファデックスG−100カラム(カラムXK50/100、アマシャムバイオサイエンシズ、PQ、カナダ;総容積1800mL)にてサイズ排除クロマトグラフィによって分画A−Pを分離した。約0.2MのNaCl約25mLに試料を溶解し、0.45μmのフィルターで濾過し、13.2mLの分画を回収しながら、約1.1mL/分の線形流速で同一移動相にてクロマト分画を行った。分離によって2つの分画を得て(図2)、本明細書では、「A−P−1」(1.8g)(さらなる分析に含める)と「A−P−2」(250mg)(さらなる分析から除外する)と呼ぶ。
【0170】
高い炭水化物含量を含有する分画A−P−1を、Q−セファロースファストフローカラム(カラムXK26/40、総容積185mL)にてアニオン交換カラムクロマトグラフィによってさらに分離した。試料を約10mLの蒸留水に溶解し、前述のように濾過し、約1.0mL/分の流速でカラムに投入した。総容積の8倍の蒸留水でカラムを洗浄することによって未結合の部分を取り除き、約1.0mL/分に調整した流速にて、段階的に移動相のイオン強度を高める(0〜0.4MのNaCl、〜イオン強度0.4)ことによって結合した部分を溶出した。この分離で9つの分画(A−P−3〜A−P−11)を得た;後の6分画(A−P−6〜A−P−11)を図3に示す。0.3MのNaCl水溶液の総容積の3倍をカラムに通した後、溶出された最高の収量(A−P−8;160mg)で得られた分画を性状分析のために選択した。
【0171】
3.A−P−8の性状分析
分画A−P−8の13C−DEPTQ135NMRのスペクトルは、糖に特徴的な化学シフト値を有する主要シグナルを示し、多糖がこの分画の主要成分であると思われることを示している。スペクトルはまた、173.8ppmにてカルボキシル基及び21.0ppmにてメチル基のシグナルを示し、それによって多糖は部分的にO−アセチル化されたことを示す。多糖の試料を脱O−アセチル化した。100mgのA−P−8の試料を50mLの12.5%(v/v)NHOH水溶液で約37℃にて約16時間処理した。透析と凍結乾燥の後、脱−O−アセチル化分画(A−P−8−deO;86mg)を回収した。
【0172】
分画A−P−8−deOのプロトンを切り離した31P−NMRのスペクトル(図4)はおよそ−2.1ppmにて単一の共鳴を示す。これは、単離された多糖がリン酸化されていることを示すホスホジエステル基の特徴である。硫酸エステルの濁度に基づく分析はO−硫酸化の非存在を示す一方で、13C−DEPTQ135NMRスペクトルにおけるカルボキシルシグナルの欠如は(図5)、ウロン酸の非存在を示す。
【0173】
標準の酢酸アルジトール法を用いてこの単糖単離物の組成を決定した。この方法によって、分画A−P−8−deOがガラクトース、グルコース、マンノース及び3−O−メチルヘキソースをそれぞれ1に対して4.5、1.5、1.5のモル比で含むことが示された。脱リン酸化工程に続いてこの方法を実施した場合、グルコース、マンノース及び3−O−メチルヘキソースの量に対するガラクトースの量は、1に対して10、1.5、1.5に増加した。
【0174】
約4℃にて約48時間保持する間に約48%(v/v)のHF水溶液約3mLで処理することによって分画A−P−8−deO(40mg)の多糖を脱リン酸化した。窒素流のもとで蒸発によるHFの除去の後、乾燥した混合物を水に溶解し、凍結乾燥して脱リン酸化分画(A−P−8−deO−deP;30mg)を得た。
【0175】
次いでバイオゲルP−2(米国カリフォルニア州、バイオ・ラッド)カラム(XK16/40、総容積70mL)にてサイズ排除クロマトグラフィによって脱リン酸化混合物(A−P−8−deO−deP)を分離した。この試料を約1mLの脱イオン水に溶解し、濾過し、約0.5mL/分の流速にて同一移動相でクロマト分画し、0.5mLの分画を回収した。
【0176】
クロマト分画の分離によって3つの分画が得られたが(図6)、高分子量分画A−P−8−deO−deP−1(20mg)を別にして、さらなる分析に用い、2つの分画A−P−8−deO−deP−2(1.3mg)とA−P−8−deO−deP−3(1.4mg)を含めた。これら2つの後者の分画は一部重なって、およそ1:1のモル比で溶出された。1Dと2DのNMRデータ(図7及び図8に示す13C−DEPTQ135スペクトル)の分析は、分画A−P−8−deO−deP−3及びA−P−8−deO−deP−2がそれぞれ、D−マンノースと3−O−メチル−マンノースの単糖形態で構成される(それぞれ表1及び表2に化学シフトを列記する)ことを示唆した。
【0177】
データは、脱リン酸化の際、放出される2種類の構造を提示している。第1の型では、2つの糖が、一方の残基のアノマー位から他方の単位の任意の位置(O−1以外)へホスホジエステル基を介して一緒に連結され、鎖はホスホジエステル結合を介して主鎖に連結される。第2の型では、ホスホジエステル結合を介して双方の断片が、多糖主鎖に連結される末端単糖単位(分枝鎖単位)として存在する。個々の単糖の重量からD−マンノースと3−O−メチルマンノースの比は1対1であると推察される。
【0178】
【表1】

【0179】
【表2】

分画A−P−8−deO−deP−1の13C−DEPTQ135NMRスペクトル(図9)は、103.6ppmにてアノマー炭素(C−1)についての主要シグナル1つと104.6ppm(主)及び104.4(従)にて近接する2つのほかのアノマーシグナルを示す。500MHzでのH−NMRのスペクトル(図10)は、2セットのアノマープロトン(H−1)シグナルを示し、一方は4.52ppmに中心があり(d,H−1,H−2,〜7.9Hz、標識B)、もう一方は、4.73ppmに中心がある広い二重のシグナル(標識A)として現れ、約5.5Hzのピーク分離を持つ。アノマーシグナルに加えて、3.33ppmにおけるシグナルが上手く分離された。4.73ppmにおけるシグナル対4.52又は3.33ppmにおけるシグナルの積分は、500及び800MHzのH−NMRのスペクトルの双方において約2対1の比が得られた。前者のシグナルがガラクトースに起因する一方で、後者の2つのシグナルがグルコースに起因するということは、ガラクトースとグルコースのモル比が2対1であることを示す。H−NMRのスペクトルはまた、不純物に起因する多数の低強度のシグナルも含有する(図10)。
【0180】
4.52ppmにおけるH−1シグナルから開始して3.77ppm及び3.97ppmにおけるH−6シグナルまでの、800MHzでのTOCSYのスペクトルにおけるトレース接続性によって残基Bのプロトンスピン系を完全に特定した(図11)が、個々のHと13Cの共鳴の配置はCOSY(図12)、13C−HSQC(図13)及びHMBCのデータ(図14)の解析によって行った。環状プロトンすべてについて8〜10Hz(表3)の範囲における大きさの大きいビシナルカップリング定数は、残基Bについてβ−グルコピラノシル配置を示す。βとしてのアノマー配位の配置は、13CカップリングHSQC実験での103.6ppmにおけるC1シグナルから測定された163Hzの大きさの小さいC−1,H−1カップリングによって確認されたが、それは通常、軸配向のアノマー(H−1)プロトンである。置換されていないメチルβ−グルコピラノシドについて報告された値を持つ単糖(表3)の13C−NMRの化学シフトすべてについての値間での一致に基づいて置換されていない分枝鎖残基としてこのβ−グルコピラノシル残基を割り当てた。
【0181】
13CカップリングHSQC実験における104.6ppmと104.4ppmにおけるC−1シグナルから測定された163HzのC−1,H−1カップリングからのβとして、4.73ppmに中心があるH−1シグナルを有するガラクトースのアノマー配位を割り当てた。800MHzでのCOSYのスペクトル(図12)では、H−1シグナルのこのセットは、H−2(HSQCスペクトルからの70.9ppmでのC−2)に割り当てられた3.83ppm(t,J〜9.1)でのシグナルとの交差ピークを示した。後者のシグナルは、H−3(HSQCスペクトルからの82.5ppmと82.6ppmでのC−3)に割り当てられた3.89ppm(t,J〜9.4)でのシグナルとの交差ピークを示した。COSYのスペクトルにおける3.89ppmでのH−3シグナルからの交差相関分析(図12)は、一方が4.23ppmにあり、もう一方が4.26ppmにある、冷却プローブ(図10)での500MHzのH−NMRスペクトルにおける二重項(H−3,H−4 〜2.5Hz)として双方に出現する2つのH−4シグナル(HSQCスペクトルからの69.1ppmでのC−4)の存在を示した。
【0182】
参照のメチルヘキソピラノシドのそれとのH/13Cの化学シフトの比較と、9〜9.5Hzの範囲におけるH−2及びH−3についての大きさの大きいビシナルカップリング定数と、それぞれ2.5Hzの大きさの小さいH−3,H−4カップリングと、メチルβガラクトピラノシドのそれに関する82.5と82.6ppm(+8.7ppm)でのC−3シグナルの反遮蔽に基づいて、4.73ppmに中心があるH−1シグナルを持つ残基を1,3結合のβ−ガラクトピラノシル残基に割り当てた。これらの結果は、多糖の主鎖が、未だに議論されたことがない位置で置換されていないβ−グルコピラノシル分枝を持つ1,3結合のβ−ガラクトピラノシル反復単位から成ることを示している。
【0183】
800MHzでのCOSYのスペクトル(図12)では、H−5(HSQCスペクトルからの75.4ppmにおけるC−5)に割り当てられた3.76ppmでのシグナルとの交差ピークを有するように4.23ppmでのH−4シグナルが現れる。COSYのスペクトルにおける交差相関分析及びHSQCのスペクトル(図13)の検討から、3.81/61.6ppmでのH/13Cの対をH−6/C−6に割り当てた。この残基はAと名付けられ、6−非置換の1,3−結合ガラクトース単位である。
【0184】
他方、4.26ppmにおけるH−4シグナルは3.96ppmでのシグナル(H−5に割り当てられた)との交差ピークを示した。単位AについてのH−5の値に関してこのH−5(+0.2ppm)の反遮蔽は、このガラクトース残基が6位で置換されると思われることを示唆する。HSQCのスペクトルでは、3.96ppmにおけるH−5シグナルからの2つの13Cシグナルへの相関が見い出され、74.2ppmでの一方をC−5に割り当て、70.0ppmでのもう一方をC−6に割り当てた(13C−DEPTQ135NMRのスペクトルでは陰性)。同様にCOSYのスペクトルでは3.96ppmのシグナルに相関する4.07ppmでのプロトンシグナルには、HSQCのスペクトル(図13)では70.0ppmでのC−6シグナルが相関する。この後者の交差ピークは、2つのH−6間でのジェミナルカップリング又はH−6のH−5へのビシナルカップリングのいずれかから生じ得る。メチルβ−ガラクトピラノシドのそれに関するC−6シグナル(+8.0ppm)の反遮蔽に基づいてこの残基を1,3,6−結合のガラクトース単位に割り当て、AIIと名付けた。
【0185】
800MHzで60ミリ秒の混合時間にて記録されるHMBCのスペクトル(図14)の解析によってガラクトースAとAII及びグルコース残基(B)のHと13Cの化学シフトの配置を確認した。82.5ppmと82.6ppmにおけるガラクトースのC−3シグナルから、H−2s(3.83ppm)とH−4s(4.23と4.26ppm)への2つの結合の残基内相関が見い出されたと共に、残基内経路も可能であるためにグリコシド結合に関与する残基間経路に明らかに割り当てることができないH−1s(4.73ppm)への3つの結合の相関も見い出された。104.6ppmにおけるC−1シグナルから、3.83ppmにおけるH−2sへの2つの結合の残基内相関が観察されたと共に、3.76ppmにおける残基AのH−5と3.96ppmにおける残基AIIのH−5に対する3つの結合の残基内経路からの相関も観察された。3.89ppmにおけるH−3に対する3つの結合の相関も観察されたが、残基内又は残基間の経路に割り当てることはできなかった。
【0186】
それぞれ4.52ppmと103.6ppmにおけるグルコース残基のH−1とC−1のシグナル間で及びそれぞれ70.0ppmと3.96ppmにおけるガラクトースAIIのC−6とH−6のシグナル間で、スペクトルは交差ピークも示した(図14)。これらの交差ピークをこれらの位置が関与する残基間経路に割り当て、非置換の分枝鎖β−グルコピラノシル残基(B)が、1,3,6−結合のβ−ガラクトピラノシル残基AIIに分枝するO−6を介して多糖の主鎖に連結することを立証する。
【0187】
800MHzにて200ミリ秒の混合時間のNOESYのスペクトルを記録することによって、非置換の分枝鎖β−グルコピラノシル、1,3結合の及び1,3,6結合のβ−ガラクトピラノシル残基としての個々の残基の配置、並びに結合パターンを確認した(図15)。残基内経路を介したアノマープロトン(H−1)からのH−3s及びH−5sへの空間を介した相関は、単糖残基すべてのβ−アノマー配位に一致する。ガラクトピラノシル残基については、β−(1→3)−グリコシド結合の結果としての残基間経路からH−1/H3の相関が生じてもよい。一方、4.52ppmにおける非置換の分枝鎖β−グルコピラノシル残基のH−1から3.96ppmにおける1,3,6結合のβ−ガラクトピラノシル残基のH−6シグナルへの空間を介した相関は、これらの位置が関与するグリコシド結合に明らかに割り当てられた(図15)。
【0188】
【表3】

主鎖ガラクトシル単位と分枝鎖グルコシル単位の2対1のモル比と、NMRデータの予備的解析からわずか2つのガラクトシル単位が存在するという事実に基づいて、以下に示すように、6位における非置換のβ−グルコピラノシル単位によるβ−(1→3)ガラクタン主鎖の規則的な交互の置換を有する脱リン酸化分画A−P−10−deO−dePの単純な構造。
【0189】
【化3】

規則的な交互の置換の非存在下では、ガラクトース上でのグルコースの無作為な置換パターンを考慮に入れる極端なモデルは、各3つのガラクトース単位の8つの組み合わせをもたらす。理論的には、非還元末端及び還元末端からの6−置換ガラクトースへの接続は、異なった量によってガラクトース単位(中央のもの)の化学シフトに影響を及ぼすと予想されるので、8種類のガラクトース単位(中央のガラクトース、以下を参照)は同等の確率で観察される。これら8種の可能性を以下に示す。
組み合わせ1〜IV(中央の6−非置換ガラクトース残基)
【0190】
【化4】

還元末端及び非還元末端から6−非置換Galに接続される中央のGal残基
【0191】
【化5】

非還元末端から6−置換Galに及び還元末端から6−非置換Galに接続される中央のGal残基
【0192】
【化6】

非還元末端から6−非置換Galに及び還元末端から6−置換Galに接続される中央のGal残基
【0193】
【化7】

還元末端及び非還元末端から6−置換Galに接続される中央のGal残基
組み合わせV〜VIII(中央の6−置換ガラクトース残基)
【0194】
【化8】

還元末端及び非還元末端から6−非置換Galに接続される中央のGal残基
【0195】
【化9】

非還元末端から6−置換Galに及び還元末端から6−非置換Galに接続される中央のGal残基
【0196】
【化10】

非還元末端から6−非置換Galに及び還元末端から6−置換Galに接続される中央のGal残基
【0197】
【化11】

還元末端及び非還元末端から6−置換Galに接続される中央のGal残基
NOESYのスペクトル(図15)の実験は、4.26ppmにおけるシグナル(AIIのH−4)と、これらの位置が関与する残基間経路に割り当てられた3.76ppmにおけるシグナル(AのH−5)との間での交差ピークの存在を明らかにしている。このことは、1,3,6−結合のガラクトース単位AIIが非還元末端から6−非置換の1,3−結合ガラクトース単位Aに接続することを立証している。それぞれ、単位AとAIIの4.23ppmと4.26ppmにおけるH−4シグナルが関与する残基間経路の相関は、置換パターンの優勢な型を立証するのに役立ったが、AとAIIの双方が4.73ppmにてH−1を有することを考えると、4.26/4.73ppmと4.23/4.73ppmの相関(図15)を明らかに割り当てることはできなかった(図16)。この理由で、単位AとAIIの正確な配列を明らかにすることができず、解析のこの段階では、組織化された構造と無作為の構造の双方が可能である。
【0198】
ガラクタン主鎖における分画A−P−8−deO(多糖全体)と、マンノース残基の2種類の結合パターンと、リン酸化の位置の構造的配置を以下のように決定した。先ず、96.8/5.46ppm及び96.8/5.44ppmにおけるC−1/H−1の対から開始する2D−NMRスペクトルデータの解析(図18〜21)によって分画A−P−8−deOにおける2種類のマンノース残基(表4に列記)に関係する13C−NMR及びH−NMRのシグナルすべてを直接的にはっきりと割り当てた。5.46(d,J〜8Hz)及び5.44ppm(d,J〜8Hz)におけるアノマー(H−1)化学シフトの大きさ(図17)は、2種類のマンノース残基についてのαアノマー配位(メチルα−及びβ−マンノピラノシドについて5.05ppm及び4.77ppm)と一致し、13CカップリングHSQC実験で観察された173HzのC−1,H−1によって確認した。α−マンノピラノースにおけるH−1,H−2カップリングがおよそ1.8Hzであることを考慮すると、H,Hのために、H−NMRスペクトル(図17)における5.46と5.44(各場合、8Hz)でのH−1シグナルで観察されたピーク分離は大きすぎるが、参照単糖誘導体、α−D−マンノピラノース一リン酸のH−NMRスペクトルで観察された8.5HzのH,Pカップリングと一致する大きさである。参照単糖についてのC−1,H−1の値は171Hzだった。これらの観察は、2種類のマンノース残基がそのアノマー(O−1)位でリン酸化されることを示唆している。
【0199】
この観察に一致して、96.8ppm(2C)におけるC−1の化学シフト(図5)は101.9ppmでのメチルα−D−マンノピラノシドの値に比べて5.1ppmによって遮蔽され、95.0ppmにおけるα−D−マンノピラノースにおける値に関して1.8ppmによって反遮蔽されるという事実がある。このことは、2種類のマンノース残基において、アノマー中心に対してβ位に位置する外置換基が、典型的なグリコシド結合のような炭素原子ではなく、代わりに、前の結論に一致してリン酸基に由来するリン原子であることを示している。
【0200】
2種類のマンノース残基の結合パターンは、8Hzに調整した展開遅延を持つ31P−HSQC−NMRのスペクトルを記録する(図22)ことによって解明した。スペクトルは、それぞれ、残基内の3つ及び4つの結合カップリングの結果、α−D−マンノース(それぞれ、5.44ppmと4.00ppm)及び3−O−メチル−α−マンノース(それぞれ、5.46ppmと4.24ppm)双方のH−1s及びH−2sと−2.1ppmにおける31Pのシグナルとの間で強い相関を示した。これらの配置は、α−D−マンノピラノース一リン酸の31P−HSQCのスペクトルにおけるH−1,PH−2,Pカップリングの観察に一致した。同調して、α−D−マンノピラノース一リン酸の13C−DEPTQ135NMRのスペクトルでも示されるパターンであるC−2,P残基内カップリングの結果、13C−DEPTQ135NMRのスペクトルにおける二重項(J,〜7.4Hz)(図5)としてα−D−マンノースと3−O−メチル−α−マンノースのC−2共鳴が現れる。各種類のマンノース残基のO−2におけるリン酸化が考慮されたが、両種類のマンノース残基のC−3シグナルの二重項への分流を生じることに基づいてこの可能性は却下され、このパターンは、13C−DEPTQ135NMRのスペクトルでは認められなかった(図5)。この証拠は、α−D−マンノースと3−O−メチル−α−マンノースが双方共、ホスホジエステル基を介してそれらのアノマー位から多糖の主鎖に連結される非置換の分枝鎖単糖の形態で存在することを示す。
【0201】
分画A−P−8−deOの31P−HSQCのスペクトルの解析によってガラクタン主鎖におけるリン酸化の位置も割り当てた(図22)。スペクトルは、−2.1ppmにおける31Pのシグナルと、残基間カップリングに割り当てられた4.06ppmにおけるプロトンのシグナルとの間に相関を示し、これが多糖においてリン酸化される位置であることを示唆している。後者のプロトンのシグナルが、13C−HSQCのスペクトル(図18)において65.4ppmでのヒドロキシメチル13Cのシグナル(13C−DEPTQ135NMRスペクトルでは陰性)に相関するということは、リン酸化が6位で生じることを示している。2種類のマンノース残基が6位にて置換されていないことに基づいて、65.4におけるリン酸化13Cのシグナルをガラクトン主鎖のガラクトシル残基又は側鎖のグルコシル残基のいずれかのC−6に割り当てた。この配置がどのように作られたのかを以下で記載する。
【0202】
脱リン酸化の際得られた高分子量の分画、A−P−10−deO−deP−1の13C−DEPTQ135NMRのスペクトル(図9)における65.4ppmでのC−6シグナルの非存在によって6位におけるリン酸化を確認する。脱リン酸化の前に多糖においてリン酸基を持つ炭素(65.4ppm)は、β−グルコピラノシル残基及びβ−ガラクトピラノシル残基の双方の非置換C−6の特徴であるさらに遮蔽された値(64.1〜61.6ppm、図9)にて分画A−P−10−deO−deP−1の13C−DEPTQ135NMRのスペクトルに現れる。
【0203】
分画A−P−8−deOの2D−NMRのデータ(図18〜21)の検討によって、化学シフト(表4を参照)がすべて分画A−P−8−deO−deP−1(表3に列記)における非置換の分枝鎖β−D−グルコピラノシル単位(B)に似ているので、グルコシル側鎖は6位で置換されていないと推察されるということは、65.4ppmにおけるリン酸基を持つC−6シグナルは、多糖主鎖における内部1,3−結合ガラクトース残基から生じることを示している。65.4/4.06ppmにおける化学シフト値は、3種の細菌のリポ多糖における6−リン酸化されたβ−D−ガラクトピラノシル単位のC−6/H−6の対について報告された値と一致する。
【0204】
たとえば、Senchenkova(Senchenkova, S.N., et al., Carbohydrate Research (2004), 339, 1342 1347−5)は、Proteus mirabilisのLPS、O−6にてリン酸エタノールアミン置換基を持つ1,3−結合β−D−ガラクトピラノシル単位において。C−6とH−6の化学シフトはそれぞれ、65.7ppmと4.05ppmであることを見い出した。グラム陰性細菌Proteus vulgaris O−34に由来するLPSの構造的検討に関するKubler−Kielb, J., et al.による報告(Carbohydroate Research (2006),, Carbohydrate Research 2006 361, 2980−85を参照のこと)では、還元末端からβ−D−ガラクトサミン単位のO−3に連結するβ−D−ガラクトピラノシル単位は、O−6にてリン酸化され、C−6とH−6についての化学シフトはそれぞれ65.5ppmと4.05ppmだった。別の研究では、Perepelov(Perepelov, A. V.., et al., Carbohydrate Research (2004), 339, 2145−49)と共同研究者は、Kubler−Kielbに記載されたものと同型であるが、β−D−グルコピラノシル単位によってO−2で分枝するβ−D−ガラクトピラノシル単位が、65.3/4.00ppmにてC−6/H−6を有することを報告した。
【0205】
グルコース残基(1,3,6−結合のガラクトースと同数)と2種類のマンノース残基の合計(1,3−結合6Pガラクトースと同数)の比がおよそ1:1であることに基づいて、ここで、O−6にてA−P−8−deO−deP−1の6−非置換1,3−結合のガラクトースAのほとんどがα−マンノピラノシル一リン酸によって置換され、1,3,6−結合のガラクトースと1,3−結合のガラクトースの比はおよそ1:1である。この比は、それぞれ4.08ppmと4.06ppmでのH−6シグナルの積分から決定することができたが、500MHzと800MHzのH−NMRスペクトル(図17)ではこれらのシグナルが重なり合うので、これをこのように行うことはできなかった。
【0206】
4.68〜4.75ppの範囲でのβ−ガラクトシル残基のH−1sからの交差相関解析によって開始する800MHzにおけるCOSYスペクトルの解析(図19)は、それぞれ、3.82、3.82、3.81及び3.80ppmにおけるH−2シグナルと共に4.69(G)、4.71(GII)、4.72(GIII)及び4.74ppm(GIV)における少なくとも4つのH−1シグナルの存在を示した。3.80/3.90ppmにおける2種類のマンノース残基のH−6s間におけるジェミナルカップリングに由来する交差ピークもこの領域に出現するという事実のために3.90ppmの領域における個々のガラクトースのH−3シグナルの配置は困難であった(図19)。ガラクトースのH−3sとH−4sの間の交差ピークの領域の検討によって、4つのH−3シグナルが、3.84(HSQCの82.4ppmにおけるC−3)ppm、3.87(HSQCの83.0ppmにおけるC−3)ppm、3.88(HSQCの82.5ppmにおけるC−3)ppm及び3.91(HSQCの81.8ppmにおけるC−3)ppmにて検出されたが、上記の理由のためにそれらをガラクトースG、GII、GIII又はGIVに対して明らかに割り当てることはできなかった。
【0207】
13C−HSQCのスペクトル(図18)から、C−6/H−6s(70.2/4.08、3.95ppm)とC−5/H−5(74.2/3.94ppm)の対の化学シフトを、脱リン酸化分画A−P−10−deO−deP−1における残基AIIで見い出された値(表3を参照)に一致して、1,3,6−結合のβ−ガラクトシル残基のそれらの位置に割り当てた。3.90ppmにおけるH−5シグナルとリン酸基を持つ炭素に相当することが以前見い出された65.4ppmにおけるC−6シグナルの間のHMBCのスペクトル(図20)での2つの結合の残基内相関の観察に基づいて、同じスペクトルにおいて、74.0/3.90ppmにおける13C/Hの対を1,3−結合6P−β−ガラクトシル残基のC−5/H−5に割り当てた。
【0208】
多糖の脱リン酸化された部分について、構造は交互のガラクトースにおけるグルコースの規則的な置換を有するか、又は特定のガラクトースに隣接するガラクトース上の置換の化学シフト効果は観察されるには小さすぎることが結論付けられた。リン酸化された部分の構造は、ここでは、交互のグルコース単位とα−マンノピラノシル1−リン酸単位のガラクトースへの規則的な置換パターンも有することができた。これに基づいて、以下に示されるように、グルコース単位とα−マンノピラノシル1−リン酸単位の交互のO−6−置換を持つ単純な構造を描けばよい。
【0209】
【化12】

3−O−メチル−α−マンノピラノシル1−リン酸のメチル基が1,3−結合の6Pガラクトースの化学シフトに影響を有さない場合、この種の構造は、等量で1,3,6−結合6Pガラクトース及び1,3−結合6Pガラクトースの一方の種類を生じる。上記に記載された単純な図は観察されず;ガラクトースH−1sの4種及びガラクトースH−3sの少なくとも4種が観察された。
【0210】
A−P−10−deOについてのガラクトースのさらなる種類の観察は、6−O−グルコピラノシル単位及び/又は6−O−リン酸ジエステルによる置換がこのさらに収縮したポリマーにおける近隣のガラクトースの化学シフトに影響を及ぼさない、すなわち、脱リン酸化分画A−P−10−deO−deP−1の構造について第2の場合が正しいことを示している。極端な無作為モデルは、ここで6−非置換1,3−結合ガラクトースが1,3−結合6Pガラクトースになることを除いて上記で考慮した3つのガラクトース単位の8つの組み合わせとまったく同じ種類をもたらす。
【0211】
75.5/3.74ppmにて見い出された交差ピークを、分画A−P−10−deO−deP−1における単位Aで見い出された値に一致して、6−非置換1,3−結合ガラクトースのC5/H−5対に割り当てた。COSYのスペクトルでは(図19)、それぞれ4.69ppmと3.78ppmにてH−1とH−2を持つガラクトース残基が認められたが、残りのプロトンのシグナルを追跡できなかったので、それを6−非置換1,3−結合ガラクトース残基に割り当てることができなかった。それにもかかわらず、この知見は、分画A−P−10−deO−deP−1における6−非置換1,3−結合ガラクトースが分画A−P−8−deOのO−6にてすべてリン酸化されるわけではないという指摘である。この残基の存在は、8つの可能な型のO−6分枝パターンの不規則性として解釈される。
【0212】
NMRの証拠から、構造は規則的に交代性であるわけではなく、無作為であってもよく、この段階では決定することができない一部の組織化(たとえば、ブロック)を有してもよく、また、6位にて置換されていない一部のガラクトース単位も含むことが結論付けられる。
【0213】
【表4】

前者が、取り除かれて構造解析を円滑にし、A−P−8−deOを提供するO−アセチル基を含有するという点で、分画A−P−8の元々の多糖の構造は分画A−P−8−deO−deP−1のそれとは異なる。
【0214】
分画A−P−8(脱O−アセチル化の前)とA−P−8−deO(脱O−アセチル化の後)の13C−DEPTQ135のスペクトルを比較することによってO−アセチル化の部位を割り当てた。脱O−アセチル化分画のスペクトルでは、最も顕著な変化は、1/3のピーク高さをもつ広がったピークの出現ではなく、70.5ppmにおける隣接するマンノースのC−2シグナルに匹敵する強度を持つ単一ピークとして出現する70.9ppmにおけるガラクトースのC−2シグナルに相当する(図23)。これは、一部のガラクトースがO−2にてO−アセチル化されるという指摘である。非O−アセチル化C−2シグナルは割り当てられなかった。ガラクトースのC−1上のC−2におけるアセチル化の効果が明瞭に認められ;脱O−アセチル化の前では、C−1は広くて強度の低いシグナルとして出現するが、脱O−アセチル化の後では、2倍のピーク高さをもつ狭いシグナルが認められ;同様に、C−3に割り当てられたシグナルの群のピーク高さは脱O−アセチル化で倍加する(図24)。
【0215】
脱O−アセチル化された分画A−P−8−deOにおける1,3,6−結合ガラクトース単位のC−5に割り当てられたが、未処理の分画A−P−8の13C−DEPTQ135NMRのスペクトルには現れない74.2ppmにおけるシグナル(図23)は、これらの残基のO−4のO−アセチル化の結果である可能性が最も高い。ガラクトースの4位におけるO−アセチル化の存在は、ガラクトースのC−4の69.0ppmの領域の検討によっては明らかに立証できなかった。それにもかかわらず、この領域における広いシグナルは、ピーク高さでおよそ倍加し、脱O−アセチル化で約0.8ppmから約0.6ppmに狭くなり、O−アセチル化の結果である可能性が最も高い(図23)。
【0216】
70.2ppm及び特に65.4ppmにおける1,3,6−結合及び1,3−結合の6pガラクトースのC−6のシグナルのピークの強度と形状はアセチル基の取り外しによって影響を受け;脱O−アセチル化の後、それらはさらに狭くなり、さらに強度が大きくなり、それは両者の残基のO−4sでのある程度のO−アセチル化の結果である可能性が最も高い。未処理の分画のスペクトルにおける65.6ppm、64.7ppm及び64.3ppmにおける強度の小さいC−6のシグナルは脱O−アセチル化した多糖において65.4ppmの1つのシグナルに縮合する(図23)。
【0217】
800MHzのH−NMRスペクトルにおける2.10ppm領域(3の因数で割られる)でのアセチル基のメチルプロトンの積分と、4.72ppm領域でのガラクトースのアノマーシグナルの合計の比から、ガラクトース単位のおよそ35パーセントがO−アセチル化されることが判定された。
【0218】
分画A−P(A−P−3〜A−P−7、A−P−9〜A−P−11)のアニオン交換クロマトグラフィ後の残りの分画(示さず)の13C−DEPTQ135NMRのスペクトルも記録した。スペクトルすべてが類似したパターンのシグナルの位置及び強度を示したということは、多糖すべてが類似した反復単位から成るが、分子サイズが異なることを示している。
【0219】
A−Pに由来するリン酸化された分画の投与の際の、マクロファージ細胞株による一酸化窒素の産生から測定された免疫学的試験の結果を図25に示す。粗抽出物(分画LW−3−38−1)に一致して、少ない用量の1.67μg/mLで投与されたA−P−2を除いて、分画A−P−1とA−P−2の投与の際、産生された一酸化窒素のレベルは試験したすべての用量にて15μMを超えたという事実によって判断されるように、分画A−PのセファデックスG−100上でのサイズ排除クロマトグラフィの結果得られた分画A−P−1(ホスホグリカンの混合物)とA−P−2(ホスホグリカン−タンパク質の複合体の混合物であると思われる)は、双方とも良好な免疫賦活剤である。
【0220】
分画A−P−1のアニオン交換クロマトグラフィの結果生じた種々のホスホグリカンを含有する分画の免疫賦活活性も図25に示す。NaClの低濃度でアニオン交換カラムから溶出されたホスホグリカン(A−P−3とA−P−5)は、貧弱な免疫賦活剤である。それに続く3つの分画、A−P−6、A−P−7及びA−P−8は用量の大きな15.0μg/mLで検出可能な一酸化窒素の産生を示すのみであった。3つの分画のうち、A−P−8は、さらに高い濃度(0.3M)のNaClを用いてアニオン交換カラムから溶出されたが、ほかの2つの分画に比べて大きな用量でさらに大きな一酸化窒素の値を示したので最も活性があった。分画A−P−9のホスホグリカンは、0.3MのNaClを用いて分画A−P−8に続いてアニオン交換カラムから溶出された。後者の分画とは異なって、分画A−P−9のホスホグリカンが、投与された中程度の用量(5.0μg/mL)で一酸化窒素の産生を誘導したということは、これがさらに良好な免疫賦活剤であることを示している(図25)。他方、ホスホグリカンを含有し、それぞれ0.35Mと0.4MのNaClを用いてアニオン交換カラムから溶出された分画A−P−10とA−P−11は、試験した分画すべてのうちで最大の免疫賦活活性を示し、結果は粗抽出物(分画LW−3−38−1)で認められたものに匹敵した(図25)。これらの結果から、アニオン交換マトリクスからホスホグリカンを分離するのに用いた移動相のイオン強度と、マクロファージにおいて一酸化窒素の産生を誘導する能力との間の相関が明瞭に認められる。
【0221】
リン酸マンノシルとグルコシル及びガラクトシルの単位との比は、分画すべてについてほぼ同一であり(H−NMRスペクトルにおける相当するピークの積分)、それは、ホスホグリカンの分画がサイズで(したがって、アニオン性リン酸マンノシル鎖の数で)異なることを示し、それは、アニオン交換マトリクスへのそれらの親和性の差異及び免疫賦活活性における差異を説明している。
【0222】
試験した最高用量でのみ一酸化窒素産生を示した分画A−P−8のホスホグリカンの脱リン酸化体(分画A−P−8−deO−deP)の免疫学的試験が、脱リン酸化で得られた中性の高分子断片は免疫賦活活性を欠く(図25)ことを反映したということは、α−マンノピラノシル1−リン酸の側鎖がこれらホスホグリカンの免疫賦活活性に決定的であることを示している。
【0223】
本明細書で開示されるのは、クロレラ抽出物を提供する工程と、該抽出物をエタノール(たとえば、95%エタノール)に接触させて沈殿物を提供する工程と、該沈殿物を水性界面活性剤(たとえば、四級アンモニウム界面活性剤)に接触させる工程と、不溶分画を単離する工程と、約1×10〜約1×10Daの分子量分画範囲を用いて不溶分画をサイズ分画する(たとえば、クロマトグラフィ、限外濾過及び/又はイオン交換クロマトグラフィによって)工程を含み、それによって多糖又は多糖複合体を提供する、本明細書で開示された組成物を提供する方法である。そのような方法から得られた沈殿物を脱色することができる(たとえば、沈殿物を2−クロロエタノールと接触させることによって)。方法はさらに、少なくとも約80℃の温度でクロレラ細胞を水性媒体に懸濁する工程と、次いで媒体を遠心分離して沈殿物と上清を生じる工程と、その後、上清を濃縮してクロレラ抽出物を提供する工程を含むことができる。
【0224】
本明細書で開示された方法から得られる組成物も開示される。具体的に開示されるのは、クロレラから得られた多糖又は多糖複合体を含む組成物であり、該多糖又は多糖複合体は、約1×10〜約1×10ダルトンの分子量を有する。開示された組成物は、リン酸化された3−O−メチルマンノース残基及び/又はリン酸化されたD−マンノース残基を含む多糖又は多糖複合体を含むことができる。一部の態様では、多糖又は多糖複合体は硫酸化及び/又はウロン酸残基を実質的に含まなくてもよい。
【0225】
一部の態様では、多糖又は多糖複合体は、O−3で結合されるβ−ガラクトピラノシルの反復単位を含む。さらなる態様では、多糖又は多糖複合体は、O−6位でリン酸化された2つの3−結合β−D−ガラクトピラノシル単位とO−6位でグリコシル化(分枝化)された2つの3−結合β−D−ガラクトピラノシル単位を含む。多糖又は多糖複合体は、本明細書で開示されるように、図26〜34に示す式を含むことができる。
【0226】
本明細書で開示されるのは、多糖又は多糖複合体と会合するタンパク質又は核酸を含む多糖又は多糖複合体でもある。
【0227】
本明細書で開示された組成物は、多糖又は多糖複合体及びそのほかの物質(たとえば、1以上の炭水化物、脂肪、窒素源、又はこれらの混合物)を含む栄養補完物としても使用することができる。企図される栄養補完物は、1以上の補完物、たとえば、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンB、葉酸、又はこれらの混合物も含むことができる。栄養補完物は、本明細書で企図されるように、さらに1以上の成分、たとえば、魚油、藻類油、真菌油、魚類油、Spirulina、Echinacea、又はこれらの混合物を含むことができる。
【0228】
医薬製剤は、クロレラから得られる多糖又は多糖複合体と薬学上許容可能なキャリアを含むことができる。開示されるのは、対象において免疫応答を調節する方法であって、本明細書で開示された組成物、本明細書で開示された栄養補完物、又は本明細書で開示された医薬組成物又は製剤の有効量を対象に投与する工程を含む方法である。また開示されるのは、対象において細菌感染又は真菌感染を治療する方法であって、本明細書で開示された組成物、本明細書で開示された栄養補完物、又は本明細書で開示された医薬組成物又は製剤の有効量を対象に投与する工程を含む方法である。また開示されるのは、対象にワクチン接種する方法であって、ワクチンと、本明細書で開示された組成物、本明細書で開示された栄養補完物、又は本明細書で開示された医薬組成物又は製剤の有効量を対象に投与する工程を含む方法である。
【0229】
さらに本明細書で開示されるのは、対象において免疫応答を調節するための薬物を作製するのに使用するための本明細書で開示されたような多糖又は多糖複合体の使用である。
【0230】
その上さらに本明細書で開示されるのは、対象において細菌感染又は真菌感染を治療するための薬物を作製するのに使用するための本明細書で開示されたような多糖又は多糖複合体の使用である。
【0231】
一層さらに本明細書で開示されるのは、対象にワクチン接種するための薬物を作製するのに使用するための本明細書で開示されたような多糖又は多糖複合体の使用である。
【0232】
本開示の範囲又は精神から逸脱することなく、本開示において種々の改変及び変異を行うことができることが当業者に明らかにであろう。本明細書で開示された主題の明細及び実践の考慮から開示のほかの実施態様が当業者に明らかであろう。本明細書及び実施例は、以下の特許請求の範囲によって示される本開示の真の範囲と精神と共に、例示のみとしてみなされることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロレラから得られる多糖又は多糖複合体であって、
i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位又は
ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含み、多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する多糖又は多糖複合体。
【請求項2】
多糖又は多糖複合体が、実質的に硫酸化を含まない請求項1に記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項3】
多糖又は多糖複合体が、実質的にウロン酸残基を含まない請求項1又は2に記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項4】
多糖又は多糖複合体が、O−3で結合するβ−D−ガラクトピラノシル残基の反復単位を含む請求項1〜3のいずれかに記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項5】
多糖又は多糖複合体が、6−リン酸化β−D−ガラクトピラノシル単位を含む請求項1〜4のいずれかに記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項6】
多糖又は多糖複合体が、β−D−グルコピラノシル−(1→6)−β−D−ガラクトピラノシル−(1→を含む請求項1〜5のいずれかに記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項7】
図26に係る多糖を含む請求項1〜6のいずれかに記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項8】
図27に係る多糖を含む請求項1〜6のいずれかに記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項9】
図28に係る多糖を含む請求項1〜6のいずれかに記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項10】
図29に係る多糖を含む請求項1〜6のいずれかに記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項11】
図30に係る多糖を含む請求項1〜6のいずれかに記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項12】
図31に係る多糖を含む請求項1〜6のいずれかに記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項13】
図32に係る多糖を含む請求項1〜6のいずれかに記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項14】
図33に係る多糖を含む請求項1〜6のいずれかに記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項15】
図34に係る多糖を含む請求項1〜6のいずれかに記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項16】
クロレラにおける多糖又は多糖複合体に会合する1以上のタンパク質又は核酸をさらに含む請求項1〜15のいずれかに記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項17】
多糖又は多糖複合体が、C.minutissima、C.marina、C.salina、C.vulgaris、C.anitrata、C.antarctica、C.autotrophica、C.regularis、C.ellipsoidea又はこれらの混合物から得られる請求項1〜16のいずれかに記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項18】
多糖又は多糖複合体が、C.pyrenoidosaから得られる請求項1〜16のいずれかに記載の多糖又は多糖複合体。
【請求項19】
組成物であって、
a)(i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位又は
(ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む1以上の多糖又は多糖複合体と、
b)1以上の添加剤成分を含み、多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する組成物。
【請求項20】
医薬組成物であって、
a)(i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位又は
(ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む1以上の多糖又は多糖複合体と、
b)1以上の薬学上許容可能な成分を含み、多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する医薬組成物。
【請求項21】
補完的栄養組成物であって、
a)(i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位又は
(ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む1以上の多糖又は多糖複合体と、
b)1以上の食べられる又は栄養のある成分を含み、多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する補完的栄養組成物。
【請求項22】
多糖又は多糖複合体が、硫酸化を実質的に含まない請求項19〜21のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
多糖又は多糖複合体が、実質的にウロン酸残基を含まない請求項19〜21のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
多糖又は多糖複合体が、O−3で結合するβ−D−ガラクトピラノシル残基の反復単位を含む請求項19〜21のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
多糖又は多糖複合体が、6−リン酸化β−D−ガラクトピラノシル単位を含む請求項19〜21のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
多糖又は多糖複合体が、β−D−グルコピラノシル−(1→6)−β−D−ガラクトピラノシル−(1→を含む請求項19〜21のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
図26に係る多糖を含む請求項19〜26のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
図27に係る多糖を含む請求項19〜26のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
図28に係る多糖を含む請求項19〜26のいずれかに記載の組成物。
【請求項30】
図29に係る多糖を含む請求項19〜26のいずれかに記載の組成物。
【請求項31】
図30に係る多糖を含む請求項19〜26のいずれかに記載の組成物。
【請求項32】
図31に係る多糖を含む請求項19〜26のいずれかに記載の組成物。
【請求項33】
図32に係る多糖を含む請求項19〜26のいずれかに記載の組成物。
【請求項34】
図33に係る多糖を含む請求項19〜26のいずれかに記載の組成物。
【請求項35】
図34に係る多糖を含む請求項19〜26のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】
クロレラにおける多糖又は多糖複合体に会合する1以上のタンパク質又は核酸をさらに含む請求項19〜26のいずれかに記載の組成物。
【請求項37】
多糖又は多糖複合体が、C.minutissima、C.marina、C.salina、C.vulgaris、C.anitrata、C.antarctica、C.autotrophica、C.regularis、C.ellipsoidea又はこれらの混合物から得られる請求項19〜26のいずれかに記載の組成物。
【請求項38】
多糖又は多糖複合体が、C.pyrenoidosaから得られる請求項19〜26のいずれかに記載の組成物。
【請求項39】
炭水化物、脂肪、又は窒素の1以上の供給源をさらに含む請求項21に記載の組成物。
【請求項40】
ビタミンE、ビタミンC、ビタミンB及び葉酸から選択される1以上の補完物をさらに含む請求項21に記載の組成物。
【請求項41】
魚油、藻類油、真菌油、魚類油、Spirulina、及びEchinaceaから選択される1以上の油をさらに含む請求項21に記載の組成物。
【請求項42】
多糖又は多糖複合体を調製する方法であって、
a)クロレラ抽出物を95%のエタノールと接触させて沈殿物を形成することと;
b)沈殿物を界面活性剤の水溶液と接触させて不溶分画を形成し、不溶分画を単離することと;
c)約1×10〜約1×10Daの分子量分画範囲を用いて不溶分画をサイズ分画することと;
d)(i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位又は
(ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む1以上の多糖又は多糖複合体を単離することを含み、
単離された多糖又は多糖複合体が約1×10〜約1×10Daの分子量を有する方法。
【請求項43】
工程(b)の後、沈殿物が脱色される請求項42に記載の方法。
【請求項44】
脱色することが、沈殿物をクロロホルム/メタノールの混合物に接触させることから成る請求項43に記載の方法。
【請求項45】
界面活性剤が、四級アンモニウム化合物である請求項42に記載の方法。
【請求項46】
サイズ分画する工程が、クロマトグラフィ又は限外濾過を含む請求項42に記載の方法。
【請求項47】
イオン交換クロマトグラフィによって多糖又は多糖複合体を分離することをさらに含む請求項42に記載の方法。
【請求項48】
請求項42の方法によってクロレラから得られる多糖又は多糖複合体を含む組成物。
【請求項49】
対象において免疫応答を調節する方法であって、
(i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位又は
(ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む、クロレラから得られる多糖又は多糖複合体の有効量を対象に投与することを含み、
多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する方法。
【請求項50】
対象における細菌感染又は真菌感染を治療する方法であって、
(i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位又は
(ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む、クロレラから得られる多糖又は多糖複合体の有効量を対象に投与することを含み、
多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する方法。
【請求項51】
対象にワクチン接種する方法であって、
ワクチンと、
(i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位又は
(ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む、クロレラから得られる多糖又は多糖複合体の有効量とを対象に投与することを含み、
多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する方法。
【請求項52】
クロレラから得られる多糖又は多糖複合体の使用であって、
対象において免疫応答を調節するために薬物を作製するための、
(i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位又は
(ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む多糖又は多糖複合体の使用であり、
多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する使用。
【請求項53】
クロレラから得られる多糖又は多糖複合体の使用であって、
対象において細菌感染又は真菌感染を治療するための薬物を作製するための、
(i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位又は
(ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む多糖又は多糖複合体の使用であり、
多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する使用。
【請求項54】
クロレラから得られる多糖又は多糖複合体の使用であって、
対象にワクチン接種するために薬物を作製するための、
(i)式3−O−メチルα−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのメチル化されたリン糖単位又は
(ii)式α−D−Manp−(1−POH→を有する少なくとも1つのリン糖単位を含む多糖又は多糖複合体の使用であり、
多糖又は多糖複合体は約1×10〜約1×10Daの分子量を有する使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16a)】
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【図16b)】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図25】
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【公表番号】特表2011−522911(P2011−522911A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508011(P2011−508011)
【出願日】平成21年5月6日(2009.5.6)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006031
【国際公開番号】WO2009/136296
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(505113791)オーシャン ニュートリッション カナダ リミテッド (5)
【Fターム(参考)】