説明

免震装置

【課題】免震装置が具備する摩擦ダンパーを小型軽量化する。
【解決手段】摩擦ダンパーは、上部構造体及び下部構造体のうちの一方の構造体側に設けられた第1圧接面と、他方の構造体側に設けられて、第1圧接面に対して水平方向に摺動する第2圧接部材と、第2圧接部材と前記他方の構造体との間に介装されて、第2圧接部材を第1圧接面に所定の圧接力で圧接するばね部材と、ばね部材が具備する上下方向の孔部を挿通して設けられ、水平方向の相対変位を第2圧接部材に伝達する軸体を備える。軸体には、ばね部材の前記孔部の内周面と当接しばね部材の水平方向の位置ずれを抑制し、ばね部材が上下方向に伸縮変形するように案内部分が形成されている。軸体は、ばね部材の圧縮量を調節するためのねじ部材を有し、前記ねじ部材は、軸体に生じる軸力を反力として第2圧接部材とで前記ばね部材を挟み込むことにより、前記ばね部材の圧縮量を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物、床、大型装置等を免震支持する免震装置が知られている。この免震装置は、(1)上部構造体と下部構造体との間の上下方向隙間に介装され、上部構造体を免震支持する積層ゴム等のアイソレータと、(2)前記上下方向隙間に前記アイソレータと並列に介装され、上部構造体と下部構造体との間の水平振動を減衰する摩擦ダンパーと、を有する。
【0003】
特許文献1には、摩擦ダンパー110の一例として、下部構造体1側に設けられた滑り面121と、上部構造体3側に設けられて、前記滑り面121に対して水平方向に摺動する摩擦面123aを有した摩擦部材123と、摩擦部材123と上部構造体3との間に介装されて、摩擦部材123の摩擦面123aを滑り面121に圧接する一群の皿ばね(以下、皿ばね群130とも言う)と、を備えた構成が開示されている(図9の側断面図を参照)。
【0004】
ここで、この摩擦ダンパー110にあっては、上部構造体3の下部構造体1に対する水平方向の相対変位(相対移動)を摩擦部材123に伝達すべく、上下一対の円筒状ケーシング部材141,142が皿ばね群130の周囲側方を覆って配置されている。また、摩擦ダンパー110を前記上下方向隙間δに介装する際には、皿ばね群130を圧縮して摩擦ダンパー110の高さ寸法を縮める必要があり、そのため、皿ばね群130の圧縮量を調節するナット151及びナット151が螺合する軸部材152が、円筒状ケーシング部材141,142の外方に別途設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−238164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これら円筒状ケーシング部材141,142や、その更に外方のナット151及び軸部材152の存在により、摩擦ダンパー110が大型化してしまう。すると、その外形寸法が大きいことからハンドリングし難くなる。また、大径の円筒状ケーシング部材141,142により摩擦ダンパー110の重量も重くなり、施工時の作業負荷が増加する。
更には、皿ばね群130が一つであるので、振動減衰用の大きな摩擦力を確保するには大型の皿ばねを用いねばならず、その結果、皿ばねの製作コストや製作工期の増大を招く。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、小型軽量化されて安価な摩擦ダンパーを具備した免震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
上部構造体と下部構造体との間の上下方向隙間に介装され、前記上部構造体を免震支持するアイソレータと、
前記上下方向隙間に前記アイソレータと並列に介装され、前記上部構造体と前記下部構造体との間の水平振動を減衰する摩擦ダンパーと、を有する免震装置であって、
前記摩擦ダンパーは、
前記上部構造体及び前記下部構造体のうちの一方の構造体側に設けられた第1圧接面と、
他方の構造体側に設けられて、前記第1圧接面に対して水平方向に摺動する第2圧接面を有した第2圧接部材と、
前記第2圧接部材と前記他方の構造体との間に介装されて、前記第2圧接部材の前記第2圧接面を前記第1圧接面に所定の圧接力で圧接するばね部材と、
前記ばね部材が具備する上下方向の孔部を挿通して設けられ、前記他方の構造体の前記一方の構造体に対する水平方向の相対変位を前記第2圧接部材に伝達する軸体と、を備え、
前記軸体には、前記ばね部材の前記孔部の内周面と当接することにより前記ばね部材の水平方向の位置ずれを抑制しつつ前記ばね部材が上下方向に伸縮変形するように案内する案内部分が形成されており、
前記軸体は、前記ばね部材の圧縮量を調節するためのねじ部材が螺合する螺合部分を有し、前記ねじ部材は、前記軸体に生じる軸力を反力として前記第2圧接部材とで前記ばね部材を挟み込むことにより、前記ばね部材の圧縮量を調節することを特徴とする。
【0009】
上記請求項1に示す発明によれば、前記軸体は、一部材でありながら、前記水平方向の相対変位を第2圧接部材に伝達する機能と、ばね部材を案内する機能と、ばね部材の圧縮量を調整して摩擦ダンパーの高さ寸法を変更する機能との三つの機能を果たす。よって、摩擦ダンパーの部品点数を削減できて、そのコストダウンを図れる。
【0010】
また、これら三つの機能を奏する上記軸体は、ばね部材の孔部を挿通して設けられ、つまりばね部材の内側に設けられる。よって、軸体の設置に伴って摩擦ダンパーの外形寸法が増大することはなく、摩擦ダンパーの小型化を図れる。
【0011】
更には、軸体の重量は、ばね部材の外周に大径の円筒状ケーシング部材を配置する場合と比べて軽くなる。よって、摩擦ダンパーの軽量化を図れる。
【0012】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の免震装置であって、
前記摩擦ダンパーは、前記他方の構造体と前記ばね部材との間に介装される構台を有し、
前記構台は、上下一対のフランジ、及びこれらフランジ同士を繋ぐウエブを具備し、
前記構台の一方のフランジは、前記他方の構造体に固定され、
前記構台の他方のフランジの貫通孔に前記軸体が挿通されて前記軸体の一端部が前記貫通孔の内周面に当接係合されるとともに、前記軸体の他端部が前記第2圧接部材に固定されることにより、前記他方の構造体の前記一方の構造体に対する水平方向の相対変位が前記第2圧接部材に伝達され、
前記一方のフランジと前記他方のフランジとの間の空間に、前記他方のフランジの貫通孔に当接係合する前記軸体の一端部が臨んでいるとともに、前記一端部に前記ねじ部材が螺合すべき前記螺合部分が設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記請求項2に示す発明によれば、構台の一方のフランジと他方のフランジとの間の空間に、前記ねじ部材を位置させることができる。よって、前記上下方向隙間への摩擦ダンパーの据え付け工事の際に、上記ねじ部材を締め込んだり緩めたりする作業を、上記空間を作業空間として円滑に行うことができて、結果、その作業性が格段に向上する。
【0014】
請求項3に示す発明は、請求項2に記載の免震装置であって、
前記摩擦ダンパーは、
前記ばね部材として、複数の皿ばねが重ね合わされてなる第一皿ばね群と、複数の皿ばねが重ね合わされてなる第二皿ばね群と、を少なくとも有し、
前記軸体として、少なくとも第一軸体及び第二軸体を有し、
前記構台の他方のフランジの貫通孔として、少なくとも第一貫通孔及び第二貫通孔を有し、
前記第一軸体は、前記第一皿ばね群の孔部に挿通されつつ、前記第一軸体の一端部は前記構台の前記他方のフランジの前記第一貫通孔の内周面に当接され、前記第一軸体の他端部は、前記第2圧接部材に固定され、
前記第二軸体は、前記第二皿ばねの孔部に挿通されつつ、前記第二軸体の一端部は前記構台の前記他方のフランジの前記第二貫通孔の内周面に当接され、前記第二軸体の他端部は、前記第2圧接部材に固定されていることを特徴とする。
【0015】
上記請求項3に示す発明によれば、少なくとも第一皿ばね群と第二皿ばね群との二つの皿ばね群を有し、これら皿ばね群の弾発力は、それぞれ、第2圧接部材へ伝達されて、第2圧接部材の第1圧接面への圧接力として供される。つまり、皿ばね群の数の増加により圧接力を大きくすることができる。
【0016】
よって、大型の皿ばねを用いなくても、皿ばね群の数を増やすことにより、第2圧接面と第1圧接面との間の摩擦力を目標値まで拡大可能である。つまり、一般に安価で製作工期の短い小型の皿ばねを用いて摩擦ダンパーを構成可能であり、その結果、摩擦ダンパーのコストダウン及び製作工期の短縮化を図ることができる。
【0017】
請求項4に示す発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の免震装置であって、
前記上下方向隙間に前記摩擦ダンパーを配置前に前記ねじ部材を締め込むことにより、前記軸体に軸力が生じて前記ばね部材は圧縮変形され、
前記上下方向隙間に前記摩擦ダンパーを配置後には、前記ねじ部材が緩められることにより、前記軸体の軸力が弱められて、前記ばね部材は前記第2圧接面を前記第1圧接面に前記所定の圧接力で圧接することを特徴とする。
【0018】
上記請求項4に示す発明によれば、上部構造体及び下部構造体の両者との干渉を回避しつつ、それらの間の上下方向隙間に摩擦ダンパーを円滑に配置可能になるとともに、配置後には、前記所定の圧接力で第2圧接面を前記第1圧接面に圧接可能となり、つまり、即座に摩擦ダンパーとして機能させることができる。
【0019】
請求項5に示す発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の免震装置であって、
前記上下方向隙間に前記摩擦ダンパーを配置後、前記ねじ部材は、前記摩擦ダンパーから取り外されることを特徴とする。
【0020】
上記請求項5に示す発明によれば、ねじ部材の有無を目視確認することにより、摩擦ダンパーの配置が完了しているか否かを容易に判断できる。また、ねじ部材が取り外されているので、第三者による締め込み操作等のいたずらを有効に防ぐことができる。
【0021】
請求項6に示す発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の免震装置であって、
前記螺合部分の軸芯は、前記軸体の軸芯と同芯であることを特徴とする。
【0022】
上記請求項6に示す発明によれば、前記螺合部分の軸芯は、前記軸体の軸芯と同芯である。また、軸体は、ばね部材に形成された孔部に挿通される。よって、ねじ部材と螺合部分との螺合によって生じる軸体の軸力を、ばね部材の前記孔部の周方向に略均等な荷重分布でばね部材に伝達させることができる。その結果、ばね部材を前記周方向の全周に亘り均等に圧縮する目的で、前記周方向に沿って複数本の圧縮用軸部材を設けずに済み、結果、摩擦ダンパーの部品点数の削減を図れる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、小型軽量化されて安価な摩擦ダンパーを具備した免震装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1Aは本実施形態に係る免震装置の縦断面図であり、図1Bは図1A中のB−B矢視図であり、図1Cは図1A中のC−C矢視図である。
【図2】締め込みボルト42の締め込みにより摩擦ダンパー10の高さ寸法を縮小した状態の説明図である。
【図3】図3Aは第1変形例の縦断面図であり、図3Bは図3A中のB−B矢視図である。
【図4】図4Aは第2変形例の縦断面図であり、図4Bは図4A中のB−B矢視図である。
【図5】図5Aは第3変形例の縦断面図であり、図5Bは図5A中のB−B矢視図であり、図5Cは図5A中のC−C矢視図である。
【図6】図6Aは第4変形例の縦断面図であり、図6Bは図6A中のB−B矢視図である。なお、図6Aは図6B中のA−A矢視図でもある。
【図7】図7Aは第5変形例の縦断面図であり、図7Bは図7A中のB−B矢視図である。なお、図7Aは図7B中のA−A矢視図でもある。
【図8】図8A及び図8Bは第6変形例の縦断面図であり、図8Aには、摩擦ダンパー10の使用可能状態を示し、図8Bには、使用可能ではない状態(摩擦ダンパー10を上下方向隙間δに介装直後の状態)を示している。
【図9】従来の免震装置に係る摩擦ダンパー110の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
===本実施形態===
<<<免震装置>>>
図1A乃至図1Cは本実施形態の免震装置の説明図である。図1Aは免震装置の縦断面図であり、図1Bは図1A中のB−B矢視図であり、図1Cは図1A中のC−C矢視図である。なお、図1Aは、図1B中のA−A矢視図でもある。また、以下の説明で用いる各図においては、図の錯綜を防ぐべく、本来断面線で示すべき断面部位の断面線を省略したり、側面視で示したりしている。
【0026】
免震装置は、建物3(上部構造体に相当)と、地面に設けられた基礎コンクリート1(下部構造体に相当)との間の上下方向隙間δに介装されている。そして、これにより、建物3は、地震等の振動から水平免震されて保護される。
【0027】
免震装置は、建物3を免震支持する積層ゴム等のアイソレータ(不図示)と、上下方向隙間δにアイソレータと並列に介装され、建物3と基礎コンクリート1との間の水平振動を減衰する摩擦ダンパー10と、を備えている。
【0028】
ここで、アイソレータとしては、上述の積層ゴム以外に、転がり支承や滑り支承等を例示できる。つまり、建物3と基礎コンクリート1との水平方向の相対変位(相対移動)を許容しながら建物3の自重を支持可能な構造であれば、その構造を適用可能である。
【0029】
一方、摩擦ダンパー10は、(1)基礎コンクリート1の上面に敷設固定されて上面に滑り面20a(第1圧接面に相当)を有した滑り板20と、(2)建物3側に設けられ、上記滑り面20aに対して水平方向に摺動可能な摩擦面25a(第2圧接面に相当)を有した摩擦部材25(第2圧接部材)と、(3)この摩擦部材25と建物3との間に介装されて、摩擦部材25の摩擦面25aを前記滑り面20aに所定の圧接力で圧接する皿ばね群30(ばね部材に相当)と、(4)皿ばね群30が具備する上下方向の孔部30hを挿通して設けられ、基礎コンクリート1に対する建物3の水平方向の相対変位(相対移動)を摩擦部材25に伝達する中実な円柱状の軸体40と、(5)建物3と皿ばね群30との間に介装されたH形鋼の構台60と、を備えている。そして、当該摩擦ダンパー10は、上記の圧接力に基づいて滑り面20aと摩擦面25aとの間に生じる水平方向の摩擦力により建物3の水平振動を減衰する。以下、摩擦ダンパー10の各構成要素20,25,30,40,60について説明する。
【0030】
滑り板20としては、上記滑り面20aたる上面20aが水平で平坦なステンレス鋼板や、同ステンレス鋼板が上面側に接合一体化されたクラッド鋼板等を例示できる。
【0031】
摩擦部材25は、水平なプレート部材26と、プレート部材26の下面にボルト止め等された水平な摩擦板27と、を有する。プレート部材26は、皿ばね群30からの圧接用の弾発力の作用下でもほぼ変形しない程度の剛性を有する部材であり、例えば金属の厚板等である。摩擦板27の素材には、上記滑り板20との摩擦係数μがほぼ一定となる素材が用いられ、ここでは、滑り板20がステンレス鋼板であることから、ステンレス鋼板との間で安定した摩擦係数μが得られる素材として、四フッ化エチレンや超高分子量ポリエチレン(例えば、ソマライト(商品名))等が用いられている。
【0032】
構台60は、例えばH形鋼であり、その水平な上フランジ61の上面が建物3の下面に不図示のボルト等で固定される一方、同じく水平な下フランジ63の下面は、摩擦部材25の上方に対向して配置されている。そして、この下フランジ63の下面と摩擦部材25の上面との間に、上述の皿ばね群30が介装されている。なお、図示例では、建物3の下面と構台60の上フランジ61との間には薄板状のスペーサー90が介装されているが、これについては後述する。
【0033】
皿ばね群30は、複数枚の皿ばね33,33…を所定パターンで規則的に積層した皿ばね積層体である。そして、この例では、図1Bに示すように四つの同仕様の皿ばね群30,30,30,30が互いに並列に平面配置されており、もって、皿ばね群30が一つの場合の4倍の弾発力を、圧接力として摩擦部材25に付与可能となっている。
【0034】
詳しくは、構台60の平面中心C60に関して互いに対称となる4カ所の位置に、それぞれ、皿ばね群30,30,30,30が配置されている。より詳しくは、構台60のウエブ62の両脇には、それぞれ皿ばね群30が配置されているともに、当該ウエブ62を境界とする同じ側には、二つの皿ばね群30,30がウエブ62に沿って並んで配置されており、これにより、4つの皿ばね群30,30,30,30は、構台60の平面中心C60を中心とする正方形の各頂点に配置されている。
【0035】
皿ばね群30を構成する各皿ばね33,33…の平面中心には互いに同形の貫通孔33hが正円状に形成されており、これら貫通孔33h,33h…の円心は互いに揃っている。よって、これら貫通孔33h,33h…は互いに上下に繋がって、上述した皿ばね群30の平面中心の前記孔部30hをなし、当該孔部30hに上述の軸体40が上下方向に沿って串刺し状に挿通される。そして、軸体40の下端部の外周面に形成された雄ねじ40aは、上述の摩擦部材25のプレート部材26の雌ねじ26aに螺着固定されているとともに、同軸体40の上端部は、構台60の下フランジ63の貫通孔63hに通されている。よって、当該上端部と貫通孔63hの内周面との当接係合及び下端部とプレート部材26との螺着固定を介して、軸体40は、基礎コンクリート1に対する建物3の水平方向の相対変位を摩擦部材25に伝達する。すなわち、軸体40は、基礎コンクリート1に対する建物3の水平方向の相対変位を摩擦部材25に伝達する機能を奏する。なお、当該機能を確実に奏させるには、下フランジ63の貫通孔63hと軸体40とのクリアランスを極力小さくすると良い。
【0036】
ところで、軸体40は、上述の水平相対変位の伝達機能とは別に、更に二つの機能を有している。一つめの機能は、皿ばね群30の水平方向の位置ずれを抑制しつつ皿ばね群30が上下方向に円滑に伸縮変形するように案内するガイド部材としての機能である。この機能は、例えば、皿ばね群30の孔部30hの内周面と、この内周面と当接する軸体40の外周面部分(案内部分に相当)との間のクリアランス調整で達成される。なお、クリアランス量は、例えば、クリアランス量をパラメータとして振って、円滑に伸縮変形する値を実験等で求める等して決められる。
【0037】
もう一つの機能は、皿ばね群30の圧縮量を調整して摩擦ダンパー10の高さ寸法を変更する機能であり、この機能は、摩擦ダンパー10を基礎コンクリート1上に据え付ける際に使用される。
【0038】
そして、この機能は、(1)軸体40の上端部に同芯且つ一体に形成された雌ねじ40b(螺合部分に相当)と、(2)雌ねじ40bに螺合する締め込みボルト42(ねじ部材に相当)と、(3)締め込みボルト42の頭部42aと下フランジ63の上面との間に介装された座金部材44と、(4)上述の摩擦部材25との四者と、軸体40が協働することにより達成される。
【0039】
すなわち、図2に示すように締め込みボルト42を締め込み方向に螺合回転すると、軸体40に軸力が生じ、当該軸力を反力として締め込みボルト42と摩擦部材25とで皿ばね群30を挟み込むことにより、皿ばね群30は圧縮変形される。更に換言すると、軸体40に生じる軸力が、締め込みボルト42の頭部42a→座金部材44→下フランジ63→皿ばね群30の順番で伝達され、これにより、皿ばね群30は下方に押し込まれて圧縮変形される。そして、これにより、摩擦ダンパー10の高さ寸法(正確には、滑り板20を除いた摩擦ダンパー10の高さ寸法H)は縮小するので、建物3と基礎コンクリート1との間の上下方向隙間δに摩擦ダンパー10を介装して据え付ける際に、建物3や基礎コンクリート1との干渉を有効に回避しつつ当該据え付け作業を円滑に行えるようになる。
【0040】
ちなみに、詳細には後述するが、摩擦ダンパー10の据え付け後には、図1Aに示すように締め込みボルト42を緩めることにより軸体40の軸力は弱められて解放され、これにより、皿ばね群30は締め込みボルト42、軸体40、及びプレート部材26による圧縮拘束から解放される。そして、皿ばね群30は、その弾発力に基づき、摩擦部材25の摩擦面25aを滑り板20の滑り面20aに所期の圧接力で押し付けるようになる。
【0041】
このように、上記軸体40は三つの機能を有する。つまり、これら三つの機能を概ね一部材で果たし得る。よって、上記軸体40を具備した摩擦ダンパー10によれば、その部品点数を削減できて、コストダウンを図れる。
【0042】
また、軸体40は、上述したように、皿ばね群30の孔部30hを上下に挿通して設けられ、つまり皿ばね群30の径方向内方に設けられる。よって、軸体40を設けることに伴って摩擦ダンパー10の外形寸法が増大することはなく、摩擦ダンパー10の小型化を図れる。また、軸体40なのでその体積も小さいことから軸体40自身を軽くできて、その結果、摩擦ダンパー10の軽量化も図れる。
【0043】
更には、軸体40の上端部の雌ねじ40bは軸体40の軸芯と同芯に形成されることから、必然、締め込みボルト42の軸芯は軸体40の軸芯と同芯となり、また、軸体40は、皿ばね群30の孔部30hと同芯に挿通されている。よって、軸体40の軸力を、孔部30hの周方向(つまり、皿ばね群30の周方向)の全周に亘り均等な荷重分布で皿ばね群30に伝えることができる。その結果、皿ばね群30を前記周方向の全周に亘って均等に圧縮する目的で前記周方向に沿って複数本の圧縮用軸部材を配置せずに済み、結果、摩擦ダンパー10の部品点数の削減を図れる。
【0044】
ところで、この例では、座金部材44として、第1座金44a及び第2座金44bの二部材が上下に重ね合わされてなる構成を示している。詳しくは、第1座金44aは、第2座金44bよりも締め込みボルト42の頭部42a側に位置し、その内径は、締め込みボルト42の頭部42aと当接可能なサイズに形成されている。これは、上述の締め込みボルト42の軸力を締め込みボルト42の頭部42aと第1座金44aとの当接を介して、下方の皿ばね群30へと伝達するためである。他方、第2座金44bは、第1座金44aよりも大径の座金であり、つまり、その外径及び内径のどちらも第1座金44aよりも大径である。そして、第1座金44aが第2座金44bの上に重なって載置可能なように、第2座金44bの内径は、第1座金44aの外径よりも小さく設定されている。
【0045】
但し、この第2座金44bの内径は、上述の軸体40の外径よりも大きく設定されている。これは、皿ばね群30を縮ませた際に、軸体40の上端部が下フランジ63の貫通孔63hから上方に突出する虞があり、当該突出時に、軸体40の上端部を収容する空間を確保するためである。つまり、この空間の存在により、皿ばね群30の短縮可能量、つまり摩擦ダンパー10の高さ寸法Hの短縮可能量が拡大されている。
【0046】
<<<摩擦ダンパー10の据え付け手順>>>
ここで、基礎コンクリート1上への摩擦ダンパー10の据え付け手順について説明する。なお、以下の説明では、摩擦ダンパー10から滑り板20のみを除いた構成、つまり、構台60、皿ばね群30、軸体40、座金部材44、締め込みボルト42、及び摩擦部材25を一体に組み立ててなる組み立て体のことも、摩擦ダンパー10と言う。
【0047】
先ず、図1Aに示すように、基礎コンクリート1の上面に滑り板20を載置して固定する(第1ステップ)。
【0048】
次に、図2に示すように、締め込みボルト42を締め込んで摩擦ダンパー10を適量だけ縮めた状態で、摩擦ダンパー10を建物3と基礎コンクリート1との間の上下方向隙間δに介装し、基礎コンクリート1の滑り板20の上面に載置する。
【0049】
すなわち、ここで摩擦ダンパー10は皿ばね群30を有しているので、締め込みボルト42を締めたり緩めたりすると、皿ばね群30の伸縮変形分、摩擦ダンパー10の高さ寸法Hが変化する。よって、上下方向隙間δに介装する際には、予め、締め込みボルト42を締め込んで摩擦ダンパー10を上下方向に縮めた状態にしておき、この縮めた状態で滑り板20上に載置する(第2ステップ)。
【0050】
ちなみに、締め込みボルト42の頭部42aは、構台60の上フランジ61と下フランジ63との間の空間に位置しているので、当該空間を上述の締め込み作業に係る作業用空間としてモンキーレンチ等の工具の操作に用いることができて、その作業性に優れる。このことは、後述の第3ステップ及び第5ステップに係る締め込みボルト42の緩め作業についても同様である。
【0051】
そうしたら、滑り板20上に載置された摩擦ダンパー10に対して、皿ばね群30の撓み量が所定の設計撓み量となるように、締め込みボルト42を緩める。この設計撓み量は、摩擦ダンパー10が生じるべき摩擦力の設計値に基づいて一義的に決まる。すなわち、滑り板20の滑り面20aと摩擦部材25の摩擦面25aとの間の摩擦力の設計値に基づいて、これら滑り面20aと摩擦面25aとの間の圧接力の設計値が決まり、この圧接力の設計値に基づいて各皿ばね群30の弾発力の設計値が決まり、この弾発力の設計値に基づいて皿ばね群30の設計撓み量が決まる。
【0052】
そして、当該締め込みボルト42の緩め作業においては、皿ばね群30の撓み量が、必要な摩擦力の大きさに対応した設計撓み量になるまで、締め込みボルト42を緩めて撓み量を減少させる(第3ステップ)。
【0053】
そうしたら、図1Aに示すように、構台60の上フランジ61とその上方の建物3の下面との間の隙間にスペーサー90を側方から差し込み挿入して前記隙間を埋める。そして、この隙間を埋めた状態のまま、スペーサー90を介して構台60の上フランジ61を建物3の下面に不図示のボルト等で固定する(第4ステップ)。
【0054】
以上の作業により、摩擦ダンパー10の据え付け工事自体は概ね終了するが、この状態の摩擦ダンパー10は、未だその減衰機能を発揮できる状態にはなっていない。そこで、最後に、減衰機能を発揮可能な状態にすべく、締め込みボルト42の緩め作業を行う。つまり、図1Aに示すように、締め込みボルト42及び軸体40の軸力が完全に解放されるまで、締め込みボルト42を緩める。これにより、皿ばね群30の弾発力の作用対象が、締め込みボルト42及び軸体40から摩擦面25a及び滑り面20aへと移り、以上をもって、水平振動の減衰に必要な大きさの摩擦力が摩擦面25aと滑り面20aとの間に生じることとなる(第5ステップ)。
【0055】
なお、上記の第5ステップにおいて、締め込みボルト42及び座金部材44を軸体40から完全に取り外せる場合には、取り外しても良く、その場合には、締め込みボルト42の有無を目視確認することにより、摩擦ダンパー10が使用可能状態になっているか否かを(つまり、減衰機能を発揮可能な状態になっているか否かを)容易に判断できる。
【0056】
また、上記の第3ステップに係る皿ばね群30の設計撓み量は、皿ばね33の荷重−撓み関係における非線形領域内、つまり、皿ばね33の撓み量の変動に対する弾発力の変動の小さい領域内に設定されるのが好ましい。設計撓み量がこの非線形領域内に収まっていれば、アイソレータのクリープ現象や気温変動による膨張収縮等の経時変化に起因して上述の上下方向隙間δが変化する場合であっても、皿ばね群30の弾発力変動を小さく抑えることができ、その結果、摩擦面25aと滑り面20aとの間の摩擦力をほぼ一定に維持できる。これにより摩擦ダンパー10は、安定した振動減衰作用を発揮することができる。
【0057】
ところで、上記の据え付け手順の説明では、既に存在する建物3の下面と基礎コンクリート1との間の上下方向隙間δに摩擦ダンパー10を挿入する場合を例に説明したが、摩擦ダンパー10の据え付け手順は何等これに限るものではない。例えば、先ず、基礎コンクリート1を構築し、その後、前記第1ステップ及び前記第2ステップを行い、次に、建物3の下面を構築し、その後、前記第3ステップから前記第5ステップを行うようにしても良い。
【0058】
<<<摩擦ダンパー10の変形例>>>
図3Aは第1変形例の縦断面図であり、図3Bは図3A中のB−B矢視図である。なお、図3Aは、図3B中のA−A矢視図でもある。
【0059】
この第1変形例は、上述の実施形態(図1A)との対比において、皿ばね群30の数及びそれらの平面配置の点で相違し、それ以外の構成については同じである。すなわち、図3Bに示すように、この摩擦ダンパー10は、構台60のウエブ62の両脇に並ぶ皿ばね群30の数が、それぞれ四つずつになっており、合計八つの皿ばね群30を有している。そして、これに伴い、構台60の長手方向の長さや、同方向の滑り板20の長さも、ほぼ上述の実施形態の約2倍になっている。但し、摩擦部材25は、上述の実施形態と同寸であり、つまり、上述の実施形態と同様、四つの皿ばね群30につき、一つの摩擦部材25が設けられている。その結果、構台60の長手方向に沿って、摩擦部材25,25が、複数の一例として二つ並んで配置されている。ここで、八つの皿ばね群30に対応した長さの一つの摩擦部材25にしていない理由は、基礎コンクリート1や建物3の下面の平坦度や水平度のレベルに応じて片当たり等して適正に圧接力を付与できなくなる皿ばね群30が生じるのを防ぐためである。
【0060】
図4Aは第2変形例の縦断面図であり、図4Bは図4A中のB−B矢視図である。なお、図4Aは、図4B中のA−A矢視図でもある。
【0061】
この第2変形例は、上述の第1変形例(図3B)との対比において、皿ばね群30の平面配置の点で相違する。すなわち、図4Bに示すように、この摩擦ダンパー10は、水平方向の振動減衰作用に関する指向性を極力排除すべく、上下のフランジ61,63が平面視正方形形状となった構台60を有するとともに、構台60の平面中心C60を囲ませながら、その四辺に沿って8つの皿ばね群30,30…が等ピッチで配されている。また、この構台60の平面形状が正方形であるのに対応させて、摩擦部材25のプレート部材26も相似の正方形に形成されている。
【0062】
ちなみに、この第2変形例や上述の第1変形例のように皿ばね群30の数が多い場合には、構台60の下フランジ63の貫通孔63hに軸体40を通す組み付け作業を行い難くなるが、その場合には、これら皿ばね群30,30…のうちの幾つかの皿ばね群30に係る軸体40と下フランジ63の貫通孔63hとのクリアランスを、それら以外の皿ばね群30に係る軸体40と下フランジ63の貫通孔63hとのクリアランスよりも大きくすると良い。例えば、クリアランスの大きい皿ばね群30とクリアランスの小さい皿ばね群30とが、交互に並ぶように配置しても良い。そして、このようにすれば、上述のような八つの皿ばね群30,30…を有する摩擦ダンパー10の場合でも、構台60の下フランジ63の八つの貫通孔63h,63h…のそれぞれに対して、対応する軸体40を速やかに通すことができる。
【0063】
図5Aは第3変形例の縦断面図であり、図5Bは図5A中のB−B矢視図であり、図5Cは図5A中のC−C矢視図である。なお、図5Aは、図5B中のA−A矢視図でもある。
【0064】
上述の実施形態(図1A)では、摩擦ダンパー10の高さ寸法を変更するために、ねじ部材として締め込みボルト42を用いるとともに、軸体40の上端部には締め込みボルト42が螺合する螺合部分として雌ねじ40bを形成していたが、この第3変形例では、ねじ部材としてナット46を用いているとともに、軸体40の上端部の外周面には、ナット46が螺合する螺合部分として雄ねじ40cが一体形成されている点で相違する。また、ナット46と、構台60の下フランジ63との間には、座金47が配置されている。よって、ナット46を締め込み方向に螺合回転すると、ナット46と座金47との当接を通じて、構台60の下フランジ63が下方に押し込まれ、これにより、皿ばね群30は圧縮変形される。そして、これにより、摩擦ダンパー10の高さ寸法は縮むので、上下方向隙間δに摩擦ダンパー10を介装して据え付ける際に、建物3や基礎コンクリート1との干渉を有効に回避しつつ当該据え付け作業を円滑に行えるようになる。
【0065】
図6Aは第4変形例の縦断面図であり、図6Bは図6A中のB−B矢視図である。また、図7Aは第5変形例の縦断面図であり、図7Bは図7A中のB−B矢視図である。
【0066】
図6A及び図6Bの第4変形例は、上述の第3変形例(図5A及び図5B)との対比において、皿ばね群30の数及びそれらの平面配置の点で相違する。また、図7A及び図7Bの第5変形例は、第4変形例との対比において、皿ばね群30の平面配置の点で相違する。そして、これらの相違点は、それぞれ、上述の図1Aの実施形態と図3Aの第1変形例との相違点、並びに、図3Aの第1変形例と図4Aの第2変形例との相違点と同じである。よって、その説明は省略する。
【0067】
図8A及び図8Bは、第6変形例の縦断面図である。なお、図8Aには、摩擦ダンパー10の使用可能状態を示し、図8Bには、使用可能ではない状態(摩擦ダンパー10を上下方向隙間δに介装直後の状態)を示している。
【0068】
上述の第3変形例(図5A)では、軸体40の上端部の外周面に一体に雄ねじ40cが形成されていたが、この第6変形例では、軸体40が二部材構成になっている。つまり、軸体40の上端部には、軸体40よりも小径の軸体48(以下、小径軸体48と言う)が互いの軸芯を揃えながら螺着固定されている。そして、この小径軸体48の上端部の外周面には小径の雄ねじ48cが形成されており、この雄ねじ48cには、ねじ部材として小径のナット49が螺合されている。そして、このナット49を締め込み方向に螺合回転すると、図8Bのようにナット49と座金部材44との当接を通じて、下フランジ63が下方に押し込まれ、これにより、皿ばね群30は圧縮変形される。そして、これにより、摩擦ダンパー10の高さ寸法は縮むので、上下方向隙間δに摩擦ダンパー10を介装して据え付ける際に、建物3や基礎コンクリート1との干渉を有効に回避しつつ当該据え付け作業を円滑に行えるようになる。なお、座金部材44としては、上述の実施形態(図1A)と同じ座金部材44が使用されている。
【0069】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
【0070】
上述の実施形態では、免震装置を建物3と基礎コンクリート1との間の上下方向隙間δに介装したが、何等これに限るものではない。例えば、建物3が多層階からなる場合には、上部構造体としての上層階の床スラブと、下部構造体としての下層階の天井スラブとの間の上下方向隙間に免震装置を介装しても良い。また、上部構造体として、嫌振装置である半導体製造設備等を設置する床、あるいは、大型装置等に適用してもよい。
【0071】
上述の実施形態では、ばね部材として皿ばね群30を例示したが、軸体40を上下に挿通可能な孔部30hを有するばね部材であれば、何等これに限るものではなく、コイルスプリングを用いても良い。
【0072】
上述の実施形態では、第1圧接面としての滑り面20a及び第2圧接部材としての摩擦部材25よりも、ばね部材としての皿ばね群30を上部構造体側(建物3側)に位置させて設けたが、この上下関係は何等これに限るものではなく、逆にしても良い。すなわち、滑り面20a及び摩擦部材25よりも下部構造体側(基礎コンクリート1側)に皿ばね群30を位置させても良い。
【0073】
上述の実施形態では、構台60としてH形鋼を例示したが、上フランジ61と下フランジ63とをウエブ62で繋いだ構造であれば何等これに限るものではなく、例えば溝型鋼でも良い。
【符号の説明】
【0074】
1 基礎コンクリート(下部構造体)、3 建物(上部構造体)、
10 摩擦ダンパー、
20 滑り板、20a 滑り面(第1圧接面)、
25 摩擦部材(第2圧接部材)、25a 摩擦面(第2圧接面)、
26 プレート部材、26a 雌ねじ、27 摩擦板、
30 皿ばね群(ばね部材)、30h 孔部、
33 皿ばね、33h 貫通孔、
40 軸体、40a 雄ねじ、40b 雌ねじ、40c 雄ねじ、
42 締め込みボルト(ねじ部材)、42a 頭部
44 座金部材、44a 第1座金、44b 第2座金、
46 ナット(ねじ部材)、47 座金、
48 小径軸体、48c 雄ねじ、49 ナット(ねじ部材)、
60 構台、61 上フランジ(フランジ)、62 ウエブ、
63 下フランジ(フランジ)、63h 貫通孔、
90 スペーサー、
C60 平面中心、δ 上下方向隙間、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造体と下部構造体との間の上下方向隙間に介装され、前記上部構造体を免震支持するアイソレータと、
前記上下方向隙間に前記アイソレータと並列に介装され、前記上部構造体と前記下部構造体との間の水平振動を減衰する摩擦ダンパーと、を有する免震装置であって、
前記摩擦ダンパーは、
前記上部構造体及び前記下部構造体のうちの一方の構造体側に設けられた第1圧接面と、
他方の構造体側に設けられて、前記第1圧接面に対して水平方向に摺動する第2圧接面を有した第2圧接部材と、
前記第2圧接部材と前記他方の構造体との間に介装されて、前記第2圧接部材の前記第2圧接面を前記第1圧接面に所定の圧接力で圧接するばね部材と、
前記ばね部材が具備する上下方向の孔部を挿通して設けられ、前記他方の構造体の前記一方の構造体に対する水平方向の相対変位を前記第2圧接部材に伝達する軸体と、を備え、
前記軸体には、前記ばね部材の前記孔部の内周面と当接することにより前記ばね部材の水平方向の位置ずれを抑制しつつ前記ばね部材が上下方向に伸縮変形するように案内する案内部分が形成されており、
前記軸体は、前記ばね部材の圧縮量を調節するためのねじ部材が螺合する螺合部分を有し、前記ねじ部材は、前記軸体に生じる軸力を反力として前記第2圧接部材とで前記ばね部材を挟み込むことにより、前記ばね部材の圧縮量を調節することを特徴とする免震装置。
【請求項2】
請求項1に記載の免震装置であって、
前記摩擦ダンパーは、前記他方の構造体と前記ばね部材との間に介装される構台を有し、
前記構台は、上下一対のフランジ、及びこれらフランジ同士を繋ぐウエブを具備し、
前記構台の一方のフランジは、前記他方の構造体に固定され、
前記構台の他方のフランジの貫通孔に前記軸体が挿通されて前記軸体の一端部が前記貫通孔の内周面に当接係合されるとともに、前記軸体の他端部が前記第2圧接部材に固定されることにより、前記他方の構造体の前記一方の構造体に対する水平方向の相対変位が前記第2圧接部材に伝達され、
前記一方のフランジと前記他方のフランジとの間の空間に、前記他方のフランジの貫通孔に当接係合する前記軸体の一端部が臨んでいるとともに、前記一端部に前記ねじ部材が螺合すべき前記螺合部分が設けられていることを特徴とする免震装置。
【請求項3】
請求項2に記載の免震装置であって、
前記摩擦ダンパーは、
前記ばね部材として、複数の皿ばねが重ね合わされてなる第一皿ばね群と、複数の皿ばねが重ね合わされてなる第二皿ばね群と、を少なくとも有し、
前記軸体として、少なくとも第一軸体及び第二軸体を有し、
前記構台の他方のフランジの貫通孔として、少なくとも第一貫通孔及び第二貫通孔を有し、
前記第一軸体は、前記第一皿ばね群の孔部に挿通されつつ、前記第一軸体の一端部は前記構台の前記他方のフランジの前記第一貫通孔の内周面に当接され、前記第一軸体の他端部は、前記第2圧接部材に固定され、
前記第二軸体は、前記第二皿ばねの孔部に挿通されつつ、前記第二軸体の一端部は前記構台の前記他方のフランジの前記第二貫通孔の内周面に当接され、前記第二軸体の他端部は、前記第2圧接部材に固定されていることを特徴とする免震装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の免震装置であって、
前記上下方向隙間に前記摩擦ダンパーを配置前に前記ねじ部材を締め込むことにより、前記軸体に軸力が生じて前記ばね部材は圧縮変形され、
前記上下方向隙間に前記摩擦ダンパーを配置後には、前記ねじ部材が緩められることにより、前記軸体の軸力が弱められて、前記ばね部材は前記第2圧接面を前記第1圧接面に前記所定の圧接力で圧接することを特徴とする免震装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の免震装置であって、
前記上下方向隙間に前記摩擦ダンパーを配置後、前記ねじ部材は、前記摩擦ダンパーから取り外されることを特徴とする免震装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の免震装置であって、
前記螺合部分の軸芯は、前記軸体の軸芯と同芯であることを特徴とする免震装置。

【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−255783(P2010−255783A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108191(P2009−108191)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】