説明

入力装置

【課題】誤入力の防止技術を施した入力装置を提供する。
【解決手段】入力装置1にであって、制御対象を選択する際にタッチ操作されるタッチ検出機能を備えるタッチセンサ10(10A〜10D)と、タッチセンサ10からの検出結果に基づき、選択された制御対象を判定する判定部と、選択された制御対象を表示させるヘッド・アップ・ディスプレイと、判定部により判定された制御対象を実行させる際に操作される単一のプッシュスイッチ20とからなる構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、誤入力の防止ができる技術を施した入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、車両のステアリングホイールに設けられて、これを握った状態を維持しつつ、対応する車載器機の各種操作を行うステアリングスイッチを備えてなる入力装置が知られている。ステアリングホイールには、例えばエアコンディショナ及びカーオーディオ等、車両の運転中に操作頻度の高い電子機器に対応するスイッチが主に設けられる。各ステアリングスイッチには、各種の車載機器が一対一で固定的に割り当てられる。そしてこれらスイッチの操作を通じて出力される電気信号に基づき、操作されたスイッチに対応する車載機器の制御が実行される。こうしたステアリングスイッチによれば、運転者は、運転の安全性を確保しつつ各種の電子機器の操作を行なうことができる。
【0003】
近年では、車両の電子化に伴い、搭載される電子機器の数は増大の一途を辿っている。こうした実状から、ステアリングホイールには、より多くのスイッチを設けることが要求されてきている。しかし、ステアリングホイールにおいて、ステアリングスイッチを配設するスペースには限りがあることから、ステアリングホイールに設置することのできるスイッチの数にも限界がある。そこで、単一のスイッチに単一の電子機器を割り当てるだけではなく、これらスイッチの組み合わせ操作に対しても他の電子機器を割り当てることが考えられる。この組み合わせ操作により、ステアリングスイッチとして割り当てられる電子機器の数を増大させることが可能となる。
【0004】
ところが、このような組合せ入力方式を採用した入力装置においては、各スイッチの組合せ操作とこれら組合せ操作に対応する車載機器との関連を運転者が記憶しておく必要があることから、記憶違い等により本来操作するべきスイッチと異なる組合せのスイッチを誤って操作するおそれがある。
【0005】
そこでこうした問題を解決するために、特許文献2に示されるような入力装置が従来提案されている。すなわち図7に示されるように、この入力装置では、ステアリングホイール175の内部に固定された各スイッチ(プッシュスイッチ)120A、120Bに対応してタッチセンサ110A、110Bが設けられている。タッチセンサ110A、110Bは、ステアリングホイール175に対して図7中の上下方向へ変位可能に設けられている。通常、各タッチセンサ110A,110Bは、これらの表面がステアリングホイール175の表面に露出した状態に保持される。
【0006】
各タッチセンサ110A,110Bがタッチされた際には、図6に示されるように、各タッチセンサ110A,110Bはタッチされた旨示す検出信号を判定部130へ出力する。判定部130は、各タッチセンサ110A,110Bから入力される検出信号に基づき各タッチセンサ110A,110Bあるいはこれらの組み合わせに対応する車載機器を判定し、その判定結果を表示制御部135へ出力する。表示制御部135は、判定部130から入力される判定結果に基づきタッチされたタッチセンサ110A,110Bに対応する車載機器を示す情報を、例えば運転席の近傍に設けられる表示部140に表示させる。
【0007】
運転者は、この表示部140の表示に基づき意図した制御対象か否かを確認した上でその制御を実際に実行させる。すなわち、各タッチセンサ110A,110Bに対するタッチ状態を維持した状態でこれらタッチセンサ110A,110Bを押圧する。すると、各タッチセンサ110A,110Bの背面側に配設されたスイッチ120A、120Bがオン動作して、所定の制御対象の動作が実行される。こうした構成によれば、事前にスイッチの組合せを記憶していない、もしくは誤って記憶していてもタッチセンサ110A,110Bにタッチすることで選択された制御対象を表示部140で確認しながら実行させることが可能となる。
【特許文献1】特開2004−149086号公報
【特許文献2】特開2007−290562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図7に示される特許文献2の入力装置によれば、運転者は、各タッチセンサに手指を接触させ、前記表示部で選択された制御対象の確認を行いつつ、その選択状態で前記スイッチを押下することができることから、確かに各スイッチの組合せとこれらに対応する制御対象とを覚えておく必要はない。
【0009】
しかし、このようにした場合であれ、次のような問題が懸念されていた。すなわち、複数のスイッチの組み合わせ操作に対応する車載機器の制御を実行させる場合には、これらスイッチを同時に操作する必要があるところ、実際にはこれらスイッチの操作タイミングに若干の時間差が生じることも多く想定される。この場合には、各スイッチのうち最初に操作されたスイッチに対応する車載機器、すなわち運転者が意図しない車載機器の制御が実行されることになる。このように、複数のスイッチを組み合わせて操作する入力装置においては、誤入力の問題が依然として懸念される。なお、こうした問題は、前述したステアリングホイールに設けられるスイッチ類だけでなく、例えば車室内のインストルメントパネル等に設けられるスイッチ類についても同様に生じる。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は誤入力を防止することができる入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、特定の取付対象に取り付けられて、定められた複数種類の制御対象の動作を選択的に実行させるべく所定の入力操作が行われる入力装置において、前記取付対象の表面に設けられて、動作を実行させる制御対象を選択する際にタッチ操作されるとともにその単数又は複数のタッチ位置を検出してその検出信号を出力するタッチ検出部と、前記タッチ検出部から入力される検出信号に基づき、選択された制御対象を判定する判定部と、前記判定部により選択されている旨判定された制御対象を外部の表示部に表示させる表示制御部と、前記判定部により選択されている旨判定されることにより前記表示部に表示された制御対象の動作を実行させる際に操作されてその旨示す操作信号を出力する単一のスイッチと、を備え、前記判定部は、前記スイッチからの操作信号が入力されたときには、このとき動作を実行させるべく選択された旨判定される制御対象に対し動作の実行を要求する指令信号を出力することをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、タッチ検出部に対する単数又は複数のタッチ位置に基づき、動作を実行させるべく選択されている制御対象が判定され、これが外部の表示部に表示される。このため、ユーザは、その時々に選択される制御対象を表示部で確認しながらその動作を実行させることができる。したがって、タッチ検出部に対するタッチ位置あるいはその組み合わせを記憶していない、もしくは誤って記憶している場合であれ、所望の制御対象を正確に選択し且つその動作を確実に実行させることができる。
【0013】
また、タッチ検出部に対するタッチ操作を通じて選択された制御対象の動作を実行させる際には、単一のスイッチを操作するだけでよい。制御対象の動作の実行を決定するスイッチは一つなので、スイッチを押下するタイミングにずれが生じることはない。このため、複数個のスイッチの組み合わせ操作を通じて制御対象の選択及びその選択した制御対象の動作を実行させるようにしたものに見られるような、各スイッチの操作タイミングのずれ、ひいてはこのずれに起因する意図しない制御対象の動作が実行されるといった問題は発生しない。したがって、表示部に選択された制御対象である旨表示された制御対象の動作を確実に実行させることができる。すなわち、誤入力を防止することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の入力装置において、前記タッチ検出部は、タッチ操作された際にその検出信号を出力する複数個のタッチセンサを備えるとともに、これらタッチセンサが押圧された際にその押圧方向へ一体的に変位するセンサユニットとして構成する一方で、当該センサユニットが押圧された際に変位する側には前記スイッチを配設し、当該スイッチは前記センサユニットの変位を利用して操作されることをその要旨としている。
【0015】
同構成によれば、ユーザは単数又は複数のタッチセンサに対するタッチ操作を通じて選択した所望の制御対象の動作を実行させる際には、タッチ状態を維持したままで当該タッチセンサを押圧すればよい。この押圧に伴いセンサユニットが一体的にその押圧方向へ変位し、これによりスイッチが操作される。このように、所望の制御対象を選択する操作と、その選択した制御対象の動作を実行させる操作とを、一連の流れの中で行うことができる。したがって、入力装置の入力操作性が確保される。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の入力装置において、前記センサユニットの前記押圧方向における変位を案内するガイドが設けられてなることをその要旨としている。
【0017】
同構成によれば、センサの押圧方向への変位がガイドにより案内されているので、センサユニットを押下する際にはセンサユニットがぶれることなく、スムーズな操作が可能となる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の入力装置において、前記センサユニットが押圧された際に変位する側には、その変位に伴い押圧されることにより前記押圧方向と反対方向への復元弾性力を蓄勢する弾性部材を設け、同センサユニットへの押圧が解除された際には当該センサユニットは前記弾性部材の弾性復元力により原位置へ復帰されることをその要旨としている。
【0019】
同構成によれば、センサユニットが押下された際には弾性部材には押圧逆方向への弾性力が蓄えられる。そしてセンサユニットに対する押圧力が解除されると弾性部材の弾性力により原位置に戻る。これによりユーザはセンサユニット押下後自らセンサユニットを戻す手間がなく便利である。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜請求項4のうちいずれか一項に記載の入力装置において、前記スイッチは、前記センサユニットの変位を通じて押圧されることにより当該押圧方向へ変位する可動部を備え、当該可動部に対して前記センサユニットによる押圧力が付与されている間だけオン状態が維持されるとともに、当該押圧力の付与が解除されたときには前記可動部が原位置に自動復帰してオフ状態となる自動復帰型の押しボタンスイッチであって、前記センサユニットへの押圧が解除された際には、前記可動部の原位置への復帰力を利用して前記センサユニットをその原位置に復帰させることをその要旨としている。
【0021】
同構成によれば、センサユニットに対する押圧力が解除されると当該センサユニットはスイッチの可動部とともにその原位置に自動復帰するので、ユーザはセンサユニット押下後自らセンサユニットを原位置に戻す必要がなく、利便性の向上に寄与する。ここで、本発明を請求項4の発明に適用した場合には、押されたセンサユニットは弾性部材の弾性力及びスイッチを構成する可動部の復帰力の双方を通じて、その原位置に復帰される。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜請求項5の何れか1項に記載の入力装置において、前記各センサは、前記取付対象の表面において直線状あるいは円弧状に配置されていることをその要旨としている。
【0023】
同構成によれば、センサは取付対象に直線状あるいは円弧状に配置しているので、手指を前記センサに接触させた状態で手指をスライドさせ易くスムーズに選択制御対象の切り替えが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、選択された制御対象の動作を決定するスイッチを単一とすることで、入力装置の誤入力を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
図2に示すように、車両の運転席に設けられるステアリングホイール71は、これに連結される図示しないステアリングシャフトを含む操舵機構を介して車両の車輪を転舵させるために操作される。この例では、ステアリングホイール71は、前記ステアリングシャフトに連結されるホーンパッド72、及びホーンパッド72の左右の側部に突設された2組のスポーク部73を介して当該ホーンパッド72を囲むように連結された円環状のホイール部74を備えてなる。このホイール部74は運転者により把持され回転操作される。
【0026】
ステアリングホイール71のホーンパッド72において、右側のスポーク部73の付近にはステアリングスイッチ1が設けられている。このステアリングスイッチ1は、図2中の左右方向にのびる直線状に配設された4つのタッチセンサ10を備えてなる。これらタッチセンサ10は、運転者がステアリングホイール71を把持した状態で例えば右手の手指を伸張させることで全てのものにタッチ(正確には近接)することができるように配置されている。
【0027】
車両の運転者は、ステアリングスイッチ1の各タッチセンサ10A〜10Dを個別に、あるいは複数のものを同時にタッチすることにより、各タッチセンサ10A〜10Dあるいはこれらの組み合わせに対して予め関連付けられた制御対象を選択する。各タッチセンサ10A〜10Dに関連付けられる制御対象としては、例えば、カーナビゲーション、エアコンディショナ、テレビジョン(TV)、オーディオ、車内電話、周辺監視カメラなどの車載機器がある。なお、各タッチセンサ10A〜10Dに対するタッチ操作の組み合わせの数は、タッチセンサ10の数により決まる。例えば4個のタッチセンサ10A〜10Dを設けた場合には、26通りの組合せを有する。
【0028】
各タッチセンサ10に関連付けられた制御対象は、後述するヘッド・アップ・ディスプレイ41(HUD)を通じて車両のフロントウインドシールド63に虚像表示される画面41a中のアイコン42(絵文字)として運転者に呈示される。本例では、矩形の画面41aの四隅にカーオーディオ、エアコンディショナ、車内電話及びカーナビゲーションを示すアイコン42が表示されている。そして前述した各タッチセンサ10のタッチ操作を通じて選択された制御対象を示すアイコン42は、これが例えば点灯もしくは点滅する等強調されて選択状態にある旨運転者に示される。運転者は各タッチセンサ10に対するタッチ状態を維持した状態、すなわち所望の制御対象の選択状態を維持した状態でステアリングスイッチ1を押圧することにより選択した制御対象の動作を実行させる。なお、このステアリングスイッチ1の構成については後に詳述する。
【0029】
ここではまず、HUD41について説明する。HUD41は、ガラス製のフロントウインドシールド63に各種の車両情報を投影するものである。図3に示すように、HUD41は、車両のインストルメントパネル60の内側に配設されて、その開口部65を通じてフロントウインドシールド63の情報の表示させる部分に向けて表示光を出射する。この表示光は、フロントウインドシールド63の内面に設けられた透明の反射膜64によって矢印Yで示される方向、すなわち運転者側へ反射する。これにより、運転者の前方には表示させる情報に対応する虚像、ここでは画面41aが表示される。運転者は、この画面41aを視認しながらステアリングスイッチ1の操作を行う。
【0030】
次に、ステアリングスイッチ1の構成について詳細に説明する。
図4に示すようにステアリングスイッチ1は、ステアリングホイール71の内部空間に配設された基板23に設けられるプッシュスイッチ20、及び当該プッシュスイッチ20の上部にスペーサ22を介して支持されるセンサユニット24を有してなる。
【0031】
プッシュスイッチ20は、基板23に固定される中空且つ円錐台状の脚部29及び脚部29の上部に設けられる円柱状の可動部28が、ごむ等の弾性部材により一体形成されてなる。可動部28の内面には可動側の接点26が基板23上に設けられた固定側の接点25に対向して配設されている。通常、可動側の接点26及び固定側の接点25は、図4に示されるように互いに離間した非接触状態に保たれる。そしてこのプッシュスイッチ20に対してその上方から所定の外力が付与されたときには、図5に示されるようにその脚部29と可動部28との境界部分が弾性変形することにより可動部28が下方へ変位し、これにより可動部28側の接点26が基板23上の接点25に接触する。そして、プッシュスイッチ20からは押圧操作された旨示す操作信号が出力される。プッシュスイッチ20に対する外力の付与が解除されると、可動部28は原位置へ弾性復帰する。すなわち、このプッシュスイッチ20は、可動部28に所定の外力が付与されている間だけオン状態が維持されるとともに、当該外力の付与が解除されたときには前記可動部28が原位置に自動復帰してオフ状態となる自動復帰型のスイッチとして構成されている。
【0032】
一方、タッチ検出部としてのセンサユニット24は、ユーザが直接操作する部材として樹脂等により直方体状に形成された操作部材19を備えている。この操作部材19は、ステアリングホイール71に形成された開口部76に対して上下方向へ変位可能に設けられている。操作部材19は、通常時には、その開口部76から露出する上面がステアリングホイール71の表面に対して段差のない状態、すなわち面一となるように、その厚みあるいはスペーサ22の厚み等が設定されている。
【0033】
操作部材19の両端部には、下方へ延出する被案内部材27が形成されている。これら被案内部材27は基板23の上面に突設された支持部材50の案内穴51に上方から挿入されている。そして被案内部材27が案内穴51に摺動案内されることにより、操作部材19は上下方向へ安定して変位する。また、操作部材19の上面のいずれの部位が押圧された場合であれ、傾くことなく円滑に下方へ変位する。
【0034】
また操作部材19には、前述した複数のタッチセンサ10(10A〜10D)が埋設されている。タッチセンサ10としては、抵抗膜方式、振動検出方式等、赤外線方式等種々のものが採用可能であるところ、本例では静電容量方式のものが使用されている。この静電容量方式のものは、操作部材19の表面に接触あるいは近接される運転者の手指とタッチセンサ10(正確には、図示しないタッチ電極)との間の静電容量の変化に基づきタッチの有無を検出する。
【0035】
なお、図2に示されるように、操作部材19の上面において各タッチセンサ10に対応する部位には、タッチ検出が可能な領域を示す例えば四角枠状の境界線が印刷等されるとともにその境界線の内側には各タッチセンサ10を示すA、B、C、D等の表示も合わせてなされている。こうした表示を通じて、運転者は各タッチセンサ10の検出範囲を知ることができる。
【0036】
そして、操作部材19の表面とステアリングホイール71の表面とが面一の状態にある図4に示される通常の状態において、センサユニット24、正確には操作部材19に対してその上方から所定の外力が付与されたときには、当該操作部材19は下方へ変位する。そして図5に示されるように、この操作部材19の下方への変位を通じて、プッシュスイッチ20がスペーサ22を介して下方へ押圧されてオン動作する。操作部材19に対する外力の付与が解除されると、プッシュスイッチ20の可動部28がその原位置へ弾性復帰し、これに伴い操作部材19もその原位置へ戻る。すなわち、センサユニット24への押圧が解除された際には、プッシュスイッチ20の可動部28の原位置への復帰力を利用して当該センサユニット24はその原位置、すなわち図4に示される通常の位置に復帰する。
【0037】
なお、センサユニット24が図4に示される通常の位置にある場合であれ、当該センサユニット24はプッシュスイッチ20の弾性力により上方へ若干付勢されているところ、このセンサユニット24の上方への変位は、次のようにして規制される。すなわち、操作部材19の2つの被案内部材27と反対側の側面に形成された段差部21がステアリングホイール71の内壁面における開口部76の周縁部に内側から係合することにより、センサユニット24の上方への変位が規制される。このように、通常の位置にあるセンサユニット24は、その一部分がステアリングホイール71の内壁面に押し付けられた状態に保持されることから、がたつき等が発生することはなく、安定した取付状態が維持される。
【0038】
次に、ステアリングスイッチ1の電気的な構成を説明する。
図1に示されるように、ステアリングスイッチ1を含んで構成される入力装置31は、その各部を統括的に制御する制御装置32を備えている。この制御装置32は、例えばCPU、ROM及びRAM等が単一のICチップとして集積化されたマイクロコンピュータからなる。ROMには、各種の制御プログラムの他、各タッチセンサ10及びこれらの組み合わせと制御対象となる複数種類の車載機器との関連付けを示す情報が予め記憶されている。
【0039】
そしてこの制御装置32には、前述した制御対象選択用の複数のタッチセンサ10A〜10Dからのタッチ検出結果、及び当該タッチセンサ10A〜10Dに対するタッチ操作を通じて選択された制御対象を動作させる際に操作されるプッシュスイッチ20からの操作検出結果が入力される。
【0040】
ここで各タッチセンサ10は、センサユニット24に対するタッチもしくは接近(以後、代表してタッチという。)を検出している状態をON、タッチを検出していない状態をOFFとして、その検出結果、すなわちオン信号又はオフ信号等の検出信号を制御装置32へ出力する。同様にプッシュスイッチ20も、押圧されている状態をON、押圧されていない状態をOFFとして、その検出結果、すなわちオン信号又はオフ信号等の操作信号を制御装置32へ出力する。
【0041】
制御装置32の判定部30は、各タッチセンサ10から入力される検出結果に基づき選択された制御対象を判定する。判定部30は、例えばタッチセンサ10A〜10Dの状態がそれぞれON、OFF、OFF、OFFであるときにはカーナビゲーションが、同じくON、ON、OFF、OFFであるときにはエアコンディショナが選択されていると判定する。そして制御装置32の判定部30は、どの制御対象が選択されているのかを示す判定結果を表示制御部35へ出力する。表示制御部35は、判定部30からの判定結果に基づき、その選択されている旨判定された制御対象を示す画面41a上のアイコンの強調表示の実行を指令する表示制御信号をHUD41へ出力する。HUD41は、表示制御部35からの表示制御信号に基づき選択されている旨判定された制御対象のアイコンの強調表示を実行する。
【0042】
また、判定部30は、プッシュスイッチ20からの操作信号に基づき当該プッシュスイッチ20がONである旨判定した場合には、このとき選択されていると判定される制御対象にその動作の実行を要求する指令信号を当該制御対象へ出力する。この判定部30からの指令信号に基づき、選択されている旨判定された制御対象はその動作を開始する。
【0043】
次に、前述のように構成された入力装置の操作態様を説明する。
例えば車両の運転中に所望の車載機器を作動させる際には、運転者はステアリングホイール71を把持した状態で手指をのばしてステアリングスイッチ1、正確にはセンサユニット24の各タッチセンサ10に対応する部位をタッチすることにより所望の車載機器を選択する。このとき、HUD41によりフロントウインドシールド63に表示される画面41aにおいて、選択されている車載機器に対応するアイコン42が点灯もしくは点滅等することにより強調される。運転者はこの画面41aを目視することにより所望の車載機器が選択されているか否かを確認する。
【0044】
所望していない車載機器が表示されたときには、手指をスライドさせる等してセンサユニット24に対するタッチ位置を変える。これにより選択される車載機器が変更され、当該車載機器に対応するアイコン42が強調表示される。運転者は画面41aの表示に基づき所望の車載機器が選択されているか否かを再度確認し、所望の車載機器が選択されていれば、その車載機器を実際に動作させるべく、このときのタッチ状態を維持したままセンサユニット24を押圧する。すると、センサユニット24はその押圧方向(下方)へ変位し、これによりプッシュスイッチ20が押下されてオン動作する。そしてプッシュスイッチ20がオン動作した際に選択されている所望の車載機器の動作が実行される。
【0045】
運転者がセンサユニット24から指を離すことで押圧力が解除されると、プッシュスイッチ20の可動部28の原位置への復帰力を利用してセンサユニット24はその原位置に復帰する。
【0046】
以上説明したように、実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)前述したように、センサユニット24の各タッチセンサ10及びこれらの組み合わせには、多数の車載機器が関連付けられているところ、運転者は、その時々に選択される車載機器を画面41aで確認しながらその動作を実行させることができる。このため、事前にスイッチの組合せを記憶していない、もしくは誤って記憶している場合であれ、意図しない車載機器を誤って動作させることはない。
【0047】
(2)また、制御対象を選択する複数個のタッチセンサ10を運転者により直接的に操作される操作部材19に埋設して単一のセンサユニット24として構成した。そしてこのセンサユニット24の押圧操作を通じて単一のプッシュスイッチ20が押圧されることにより、各タッチセンサ10のタッチ操作を通じて選択された車載機器の動作が実行されるようにした。すなわち、複数個のタッチセンサ10の組合せに対応する車載機器を動作させる場合であれ、その動作は単一のプッシュスイッチ20が押下されたときのみ実行される。このため、例えば各タッチセンサ10に対応してプッシュスイッチ20を設け、これらプッシュスイッチ20を各センサ10を介して組合せて操作するようにした場合にみられる、運転者のプッシュスイッチ20を押下するタイミングのずれに起因する意図しない車載機器の動作といった問題が回避される。また、同構成ではプッシュスイッチ20の数は一つなのでステアリングスイッチ1の構成を簡単にすることができる。これはステアリングスイッチ1をステアリングホイール71という限られたスペースに配設するという観点から見て好ましい。
【0048】
(3)センサユニット24を押圧方向へ案内する手段として支持部材50が設けられているので、当該センサユニット24の円滑な押圧操作が実現される。また、センサユニット24はその押圧方向へのみ変位可能であることから、安定した押圧操作が可能となる。
【0049】
(4)センサユニット24への押圧が解除された際には、センサユニット24と基板23との間に配設された自動復帰型のプッシュスイッチ20の弾性力、正確には可動部28の原位置への復帰力を利用して当該センサユニット24をその原位置へ復帰させるようにした。このため、運転者はセンサユニット24を押下した後に自らセンサユニット24を元の位置に戻す手間がなく便利である。また、プッシュスイッチ20の脚部29と可動部28との境界部分が弾性変形することにより可動部28が下方へ変位する一定以上の押圧力を加えなければオン動作しない。このため、例えば思わずステアリングスイッチ1に触れてしまった場合であれ、前述した一定以上の外力が付与されないかぎりプッシュスイッチ20がオン動作することはない。したがって、誤入力も防ぐことができる。さらに、プッシュスイッチ20は、押圧操作されたセンサユニット24を原位置へ復帰させる復帰手段を兼用するので、例えば、ばね部材などの原位置復帰機構を別途設ける必要はなく部品数を削減することができ、ステアリングスイッチ1の構成をコンパクトにすることが可能となる。
【0050】
(5)各タッチセンサ10はステアリングホイール71上に直線状に配置しているので、手指を各タッチセンサ10に接触させた状態でスライドさせ易く、また手指をセンサユニット24から離さずに、スムーズに制御対象選択の切り替えが可能である。これにより運転者は使用可能な手指が限られている運転時でも、少ない指で確実な制御対象の選択が可能となる。
【0051】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、スペーサ22を通じてセンサユニット24の押圧力をプッシュスイッチ20に、またプッシュスイッチ20の復帰力をセンサユニット24に伝達するようにしたが、このスペーサ22を省略することも可能である。この場合には、センサユニット24を図4に示される通常位置に保持するため、又は当該通常位置に復帰させるためのばね部材を、例えばセンサユニット24と基板23との間に設ける。
【0052】
・例えばセンサユニット24と基板23との間、あるいは支持部材50の案内穴51の内部に単数又は複数のばね部材を付加するようにしてもよい。センサユニット24のサイズ又は重量によっては、プッシュスイッチ20の復帰力だけでは、センサユニット24を図4に示される通常の位置に保持すること、又は当該通常位置へ復帰させることが困難となる場合も想定される。こうした問題は、付加するばね部材の個数を適宜調節すること等により解消される。
【0053】
・上記実施形態では、各種の情報を表示させる表示手段としてHUD41を用いたが、これに限らず、液晶ディスプレイ等、他の方式のものを用いてもよい。また、表示手段の設置場所についても、適宜変更である。例えばインストルメントパネル内に表示手段を設けてもよい。特に、表示スペースの確保が困難である部位に表示手段を設ける場合には、例えばその時々で選択される車載機器を示す情報のみを表示させる。
【0054】
・電気接点式のプッシュスイッチ20は、磁気センサ等を利用した近接スイッチ等に置換してもよい。すなわち、センサユニット24の変位を検出できるものであればよい。
・ステアリングホイール71において、複数個のステアリングスイッチ1を設けるようにしてもよい。各ステアリングスイッチ1の配置は適宜調整される。
【0055】
・上記実施形態では、ステアリングスイッチ1をステアリングホイール71の運転者側の表面に設けたが、裏面側にもうけてもよい。
・単一のセンサユニット24を構成するタッチセンサ10の個数は、適宜変更可能である。
【0056】
・複数個のタッチセンサ10を、直線状に配設したが、例えば円弧等の曲線状に配設してもよい。
・上記実施形態では、センサユニット24内に複数個の静電容量方式のタッチセンサ10を設けたが、それに限らず次のようにしてもよい。すなわちタッチセンサを一つとして、その単数のセンサのタッチ検出範囲を仮想的に一定の領域を持つように複数に分割する。タッチセンサその分割された領域のうち、どの領域がどのような組合せでタッチされているかの検出信号を出力し、判定部30はその信号により制御対象を判定する。なお、タッチセンサ10はここでは静電容量方式が採用されたが、一つのタッチセンサでタッチされた領域及び組合せを検出できるものであれば、その他の方式例えば抵抗膜方式、振動検出方式等、赤外線方式等でもよい。
【0057】
・上記実施形態では、一本の手指を一個のタッチセンサ10で検出するようにしたが、これに限らず、一本の手指を複数のタッチセンサ10が検出するようにしてもよい。この場合各タッチセンサ10の大きさ、配置、検出可能範囲等は製品仕様等に応じて変更する。
【0058】
・上記実施形態では、センサユニット24の変位に伴いプッシュスイッチ20が押圧される構成としたが、当該構成に限らずセンサユニット24とプッシュスイッチ20とを別の位置に設ける構成も採用可能である。例えばセンサユニット24はステアリングホイール71の右側に、プッシュスイッチ20は同じく左側に設ける。運転者は右手でタッチセンサ10をタッチして制御対象を選択し、左手でプッシュスイッチ20を押下する。この構成を採用する場合には、センサユニット24を押下する必要がないので、当該センサユニット24の被案内部材27及びこれを案内する支持部材50は省略可能となる。
【0059】
・上記実施形態では、センサユニット24及びプッシュスイッチ20等をステアリングホイール71に設けることによりこれらをステアリングスイッチ1として構成したが、これに限らず車内において運転者による操作が可能となる場所であれば、どこに設けてもよい。例えばダッシュボード、アームレストなどに設けてもよい。さらに車両内に限らず、入力装置が必要となるあらゆるもの、例えば電化製品などに装備させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態のステアリングスイッチの電気的な構成を示すブロック図。
【図2】ステアリングの平面図。
【図3】ヘッド・アップ・ディスプレイの構成図。
【図4】非押圧状態のステアリングスイッチを示す図2のA−A線断面図。
【図5】押圧状態のステアリングスイッチを示す図2のA−A線断面図。
【図6】従来のステアリングスイッチの電気的な構成を示すブロック図。
【図7】従来のステアリングスイッチの概略構成を示す要部断面図。
【符号の説明】
【0061】
1…ステアリングスイッチ、10…タッチセンサ、20…プッシュスイッチ、30…判定部、40…表示部、41…HUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)、制御対象…45a〜45d。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の取付対象に取り付けられて、定められた複数種類の制御対象の動作を選択的に実行させるべく所定の入力操作が行われる入力装置において、
前記取付対象の表面に設けられて、動作を実行させる制御対象を選択する際にタッチ操作されるとともにその単数又は複数のタッチ位置を検出してその検出信号を出力するタッチ検出部と、
前記タッチ検出部から入力される検出信号に基づき、選択された制御対象を判定する判定部と、
前記判定部により選択されている旨判定された制御対象を外部の表示部に表示させる表示制御部と、
前記判定部により選択されている旨判定されることにより前記表示部に表示された制御対象の動作を実行させる際に操作されてその旨示す操作信号を出力する単一のスイッチと、を備え、
前記判定部は、前記スイッチからの操作信号が入力されたときには、このとき動作を実行させるべく選択された旨判定される制御対象に対し動作の実行を要求する指令信号を出力することを特徴とする入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の入力装置において、
前記タッチ検出部は、タッチ操作された際にその検出信号を出力する複数個のタッチセンサを備えるとともに、これらタッチセンサが押圧された際にその押圧方向へ一体的に変位するセンサユニットとして構成する一方で、当該センサユニットが押圧された際に変位する側には前記スイッチを配設し、当該スイッチは前記センサユニットの変位を利用して操作される入力装置。
【請求項3】
請求項2に記載の入力装置において、
前記センサユニットの前記押圧方向における変位を案内するガイドが設けられてなる入力装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の入力装置において、
前記センサユニットが押圧された際に変位する側には、その変位に伴い押圧されることにより前記押圧方向と反対方向への復元弾性力を蓄勢する弾性部材を設け、同センサユニットへの押圧が解除された際には当該センサユニットは前記弾性部材の弾性復元力により原位置へ復帰される入力装置。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のうちいずれか一項に記載の入力装置において、
前記スイッチは、前記センサユニットの変位を通じて押圧されることにより当該押圧方向へ変位する可動部を備え、当該可動部に対して前記センサユニットによる押圧力が付与されている間だけオン状態が維持されるとともに、当該押圧力の付与が解除されたときには前記可動部が原位置に自動復帰してオフ状態となる自動復帰型の押しボタンスイッチであって、
前記センサユニットへの押圧が解除された際には、前記可動部の原位置への復帰力を利用して前記センサユニットをその原位置に復帰させる入力装置。
【請求項6】
請求項2〜請求項5の何れか1項に記載の入力装置において、
前記各センサは、前記取付対象の表面において直線状あるいは円弧状に配置される入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−298380(P2009−298380A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158185(P2008−158185)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】