説明

入力装置

【課題】1つの操作部で操作感覚の提示とその調整ができる操作性に優れた入力装置を提供する。
【解決手段】軸11の方向に移動可能な移動部と軸11を中心として回転可能な回転部を一体的に備えた操作部10と、移動部を構成する操作ノブ12のストロークを検出するストローク検出器としてのリニアエンコーダ21と回転部を構成する操作ノブ12の回転を検出する回転検出器としてのロータリエンコーダ22を備えた検出部20と、操作部10の操作ノブ12に力を付与する駆動部としてのリニアモータ30と、リニアエンコーダ21の出力に基づいてリニアモータ30を制御し、ロータリエンコーダ22の出力に基づいてリニアモータ30に付与する力を調整する制御部40と、を有して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置に関し、特に、操作部における操作感覚の提示と調整が可能な入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力装置において、操作者によって操作される操作部に操作感を付与するものとして、力覚付与型入力装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この入力装置は、操作者によって操作される操作部と、操作状態を検出するストローク検出部と、操作部に力覚を付与する力覚発生部と、外部装置と、ストローク検出部より出力されるストローク情報及び外部装置より送信される部品データに基づいて力覚発生部の駆動を制御し、操作部にその操作状態に応じた所定の力覚を付与する制御部とを有して構成されている。
【0004】
この入力装置によれば、力覚パターンの管理テーブルを外部装置より送信される管理テーブル更新コマンドに従って切り替え、また、部品データの有効及び無効を切り替えるので、外部装置の負担を軽減することができると共に、力覚パターンの切替を容易かつ迅速に行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−319173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示す入力装置では、操作者がこの入力装置の操作部を操作しながら操作部に付与される力覚パターン、すなわち、操作時の操作部の硬さである操作感覚を調整することができず、操作部の状態確認と調整がシームレスにできず、操作性に問題があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、1つの操作部で操作感覚の提示とその調整ができる操作性に優れた入力装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明は上記目的を達成するため、軸方向に移動可能な移動部と前記軸を中心として回転可能な回転部を一体的に備えた操作部と、前記移動部のストロークを検出するストローク検出器と、前記回転部の回転を検出する回転検出器を備えた検出部と、前記操作部の前記移動部に力を付与する駆動部と、前記ストローク検出器の出力に基づいて前記駆動部を制御し、前記回転検出器の出力に基づいて前記移動部に付与する力を調整する制御部と、を有することを特徴とする入力装置を提供する。
【0009】
[2]前記制御部は、前記駆動部を制御する際に参照する、前記ストローク検出器の出力と前記駆動部に付与される力との関係が2つの極大値を有する曲線で定義される2段節度カーブのデータを有していることを特徴とする上記[1]に記載の入力装置であってもよい。
【0010】
[3]また、前記制御部は、前記2段節度カーブの小さい方の極大値を前記操作部の回転部を操作することにより変化させ、前記操作部の操作時において前記駆動部により前記移動部に付与される力を変化させる調整部を有することを特徴とする上記[2]に記載の入力装置であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1つの操作部で操作感覚の提示とその調整ができる操作性に優れた入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る入力装置の構成ブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る入力装置の機構部分の断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る入力装置におけるストローク検出器の出力と駆動部に付与される力との関係を示す2段節度カーブの特性図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る入力装置におけるストローク検出器の出力と駆動部に付与される力との関係を示す、調整後の2段節度カーブの特性図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係る入力装置の車両機器、すなわち、サスペンション調整装置への適用例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の実施の形態)
本発明の実施の形態に係る入力装置1は、図1、図2に示すように、軸11の方向に移動可能な移動部と軸11を中心として回転可能な回転部を一体的に備えた操作部10と、移動部を構成する操作ノブ12のストロークを検出するストローク検出器としてのリニアエンコーダ21と回転部を構成する操作ノブ12の回転を検出する回転検出器としてのロータリエンコーダ22を備えた検出部20と、操作部10の操作ノブ12に力を付与する駆動部としてのリニアモータ30と、リニアエンコーダ21の出力に基づいてリニアモータ30を制御し、ロータリエンコーダ22の出力に基づいてリニアモータ30に付与する力を調整する制御部40と、を有して構成されている。
【0014】
ここで、上記の操作ノブ12に付与される駆動部からの力は、操作者が操作ノブ12を操作する際に受ける力であり、この操作者が受ける力の感覚を力覚あるいは力感覚ともいい、これらを同義で使う場合がある。
【0015】
操作部10は、操作ノブ12が回転および移動の基準となる軸11に取り付けられ、ハウジング5により移動(押し引きのストローク方向)および回転可能に支持されて構成されている。従って、操作ノブ12および軸11は、軸11の方向に移動可能な移動部を構成すると共に、軸11を中心として回転可能な回転部を構成する。
【0016】
リニアエンコーダ21は、軸11に取り付けられて軸長方向に所定の規則で反射部が形成された反射板25と、ハウジング5側に設けられて反射板25に光を照射してその反射光を検出する光センサ26で構成されている。リニアエンコーダ21の出力は、操作ノブ12の軸11の方向の移動により単位長さ当たり所定のパルスを出力し、このパルスをカウントすことにより操作ノブ12すなわち操作部10のストロークが検出できる。尚、軸11の方向の基準ストロークで、例えばパルス幅の広いパルスを出力するように反射板25に特定の反射部が設けられた構成とすることにより、操作部10の絶対ストロークを検出できるようにすることができる。
【0017】
ロータリエンコーダ22は、軸11に取り付けられて回転方向に所定の規則で反射部が形成された反射盤27と、ハウジング5側に設けられて反射盤27に光を照射してその反射光を検出する光センサ28で構成されている。ロータリエンコーダ22の出力は、操作ノブ12の回転により単位回転角当たり所定のパルスを出力し、このパルスをカウントすことにより操作ノブ12すなわち操作部10の回転角度が検出できる。尚、回転方向の基準ストロークで、例えばパルス幅の広いパルスを出力するように反射盤27に特定の反射部が設けられた構成とすることにより、操作部10の絶対回転ストロークを検出できるようにすることができる。
【0018】
リニアモータ30は、リニア同期モータ、リニア直流モータ、リニア誘導モータ、リニアステッピングモータ等が使用できる。また、圧電素子によるピエゾ効果を応用したリニアモータ、超音波リニアモータ等も使用できる。また、リニアモータによらず、ソレノイドや回転モータをギアやカムにより直線運動に変換して駆動する機構でもよい。本実施の形態では、軸11に可動電磁石31が装着され、ハウジング5側に固定電磁石32が装着され、各磁極の極性を順次切替えながら所定の方向に直線駆動するリニア同期モータを使用した。尚、リニアモータ30は、後述するF−Sカーブに基づいて操作ノブ12の移動ストロークに応じた位置制御が行なわれ、操作ノブ12に対して力を付与することにより、操作者に対して力、力感覚を付与する。
【0019】
制御部40は、リニアエンコーダ21、ロータリエンコーダ22の出力に基づいてリニアモータ30を制御する制御回路から構成される。リニアモータ30に力を付与して制御するための2段節度カーブのデータを有している。2段節度カーブは、リニアエンコーダ21の出力とリニアモータ30に付与される力との関係が2つの極大値を有する曲線で定義され、ストロークS(操作ノブ12の押し込み方向)と力Fのデータがテーブルとして記憶部41に記憶されている。尚、制御部40が2段節度カーブのデータを有しているとは、上記の2段節度カーブのデータにアクセスして適宜参照できる状態である場合と、記憶部41を制御部40内部に内蔵している場合のいずれの場合も含む。
【0020】
図3は、リニアエンコーダ21の出力、ストロークSとリニアモータ30に付与される力Fとの関係を示すF−Sカーブ図である。ストロークS(操作ノブ12の押し込み)方向に、S1およびS2の位置で力がF1とF2の2つの極大値を有する2段節度カーブとされている。ストロークS1における第1の極大値F1は、ストロークS2における第2の極大値F2よりも小さく設定されている。これにより、操作者が操作ノブ12を押し込み方向に移動させると、まずS1のストロークで操作時に受ける力の感覚、すなわち、力覚が極大に達した感覚を覚え、S1を通過することにより力覚が減少し、S2の位置で再び力覚が極大に達した感覚を覚える。従って、操作者は、図3で示すA領域およびB領域で2段階の節度を感ずる。また、S1の位置よりもS2の位置においてより大きな節度を感ずる。1段目の節度は調整された力覚、操作感の提示または確認、2段目の節度はスイッチ動作のための節度に利用される。
【0021】
図3において、S3のストロークまで操作ノブ12が押し込まれると、制御部40は、入力装置1によりスイッチがオン/オフされたと判断することができ、図1に示したような車載機器50を、CAN/LIN等の車内LANを介して制御することができる。尚、S3の位置は任意に設定できるが、第2の極大値を超えた位置に設定されることが操作性の観点から好ましい。
【0022】
図4は、リニアエンコーダ21の出力、ストロークSとリニアモータ30に付与される力Fとの関係を示すF−Sカーブ図であり、調整後の2段節度カーブの特性図である。操作者が操作ノブ12を回転させることによりロータリエンコーダ22から回転角に応じた出力信号が出力され、これに基づいて図4に示すように、A領域の第1の極大値F1の大きさが減少(F11)または増加(F12)される。この減少または増加は、例えば、ロータリエンコーダ22からの出力パルス数に応じて複数段階に調整することができる。また、記憶部41に記憶されるF−Sカーブのデータを複数用意し、ロータリエンコーダ22からの出力パルス数に応じて参照するF−Sカーブのデータを変更することによりF−Sカーブを変化させることもできる。
【0023】
(入力装置1の動作)
上記示したように、操作者が操作ノブ12を回転させることによりF−SカーブのA領域の第1の極大値F1の大きさ等の特性プロファイルを調整することにより、操作時の操作部の硬さである操作感覚を調整することができる。例えば、操作ノブ12を時計方向に回転させることにより、F−Sカーブの第1の極大値F1をF11に減少させ、操作ノブ12をストロークS1まで押し込んだ場合には、A領域の節度感、すなわち、操作時の力覚を小さくできる。この力覚設定で決定したい場合には、さらに操作ノブ12をストロークS2を超えてS3まで押し込むことにより、制御部40でスイッチ動作がオンされたと判断する。これにより、入力装置1で制御される車載機器50の操作時には軽い操作感の提示がなされ、この車載機器50に関する情報提示となると共に、さらに操作ノブ12を押し込むことにより上記の情報提示(軽い操作感)に基づいたスイッチ動作がなされる。
【0024】
一方、操作者が操作ノブ12を反時計方向に回転させることにより、F−Sカーブの第1の極大値F1をF12に増加させ、操作ノブ12をストロークS1まで押し込んだ場合には、A領域の節度感、すなわち、操作時の力覚を大きくできる。この力覚設定で決定したい場合には、さらに操作ノブ12をストロークS2を超えてS3まで押し込むことにより、制御部40でスイッチ動作がオンされたと判断する。これにより、入力装置1で制御される車載機器50の操作時には硬い操作感の提示がなされ、この車載機器50に関する情報提示となると共に、さらに操作ノブ12を押し込むことにより上記の情報提示(硬い操作感)に基づいたスイッチ動作がなされる。
【0025】
(適用例)
本発明の実施の形態に係る入力装置1を、車両の車載機器に適用した例を示す。図5は、車両100のサスペンション調整装置への適用例を示す概略構成図である。車両100はサスペンション51を介してタイヤ60を支持しており、このサスペンション51の硬さをサスペンション調整装置52により調整する場合に、本発明の実施の形態に係る入力装置1を適用する。
【0026】
サスペンション調整装置52は、図1、図5に示すように、入力装置1の制御部40からサスペンションECU53に接続され、運転者が入力装置1の操作部10を操作することによりサスペンション51の硬さを調整し決定する。
【0027】
運転者が、例えば、操作ノブ12を時計方向に回転させることにより、F−Sカーブの第1の極大値F1をF11に減少させる。ここで、操作ノブ12をストロークS1まで押し込み、A領域付近で操作ノブ12を押し引きしてサスペンション51の硬さを節度感により確認する。この提示された硬さでよい場合は、さらに操作ノブ12をストロークS2まで押し込むことにより、サスペンション51の硬さを決定する。
【0028】
一方、サスペンション51の硬さをさらに硬くしたい場合は、操作ノブ12を反時計方向に回転させることにより、F−Sカーブの第1の極大値F1をF12に増加させる。ここで、操作ノブ12をストロークS1まで押し込み、A領域付近で操作ノブ12を押し引きしてサスペンション51の硬さを節度感により確認する。この提示された硬さでよい場合は、さらに操作ノブ12をストロークS2を超えてS3まで押し込むことにより、サスペンション51の硬さを決定する。
【0029】
以上のような操作により、サスペンション51の硬さを入力装置1による情報提示(硬さ、節度感)により確認した後に、決定することができる。
【0030】
(本発明の実施の形態の効果)
上記示した実施の形態によれば、以下のような効果を有する。
(1)入力装置1の操作ノブ12が移動部と回転部を備えた操作部10を有するので、1つの操作部10で操作感覚の提示とその調整および決定ができ、操作性に優れた入力装置を提供することができる。
(2)力情報以外でも、位置情報にも応用可能である。また、ロータリ系での力覚提示装置としても適用可能である。
(3)実施の形態では、2段節度カーブによる2つの節度を有する入力装置1としたが、3以上の節度を有するより多様な力情報提示、位置情報提示が可能な力覚提示装置、入力装置をすることが可能である。
【0031】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1…入力装置、
5…ハウジング
10…操作部
11…軸
12…操作ノブ
20…検出部
21…リニアエンコーダ
22…ロータリエンコーダ
25…反射板
26…光センサ
27…反射盤
28…光センサ
30…リニアモータ
31…可動電磁石
32…固定電磁石
40…制御部
41…記憶部
50…車載機器
51…サスペンション
52…サスペンション調整装置
53…サスペンションECU
60…タイヤ
100…車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に移動可能な移動部と前記軸を中心として回転可能な回転部を一体的に備えた操作部と、
前記移動部のストロークを検出するストローク検出器と、前記回転部の回転を検出する回転検出器を備えた検出部と、
前記操作部の前記移動部に力を付与する駆動部と、
前記ストローク検出器の出力に基づいて前記駆動部を制御し、前記回転検出器の出力に基づいて前記移動部に付与する力を調整する制御部と、
を有することを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記駆動部を制御する際に参照する、前記ストローク検出器の出力と前記駆動部に付与される力との関係が2つの極大値を有する曲線で定義される2段節度カーブのデータを有していることを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記2段節度カーブの小さい方の極大値を前記操作部の回転部を操作することにより変化させ、前記操作部の操作時において前記駆動部により前記移動部に付与される力を変化させる調整部を有することを特徴とする請求項2に記載の入力装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−34199(P2011−34199A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177881(P2009−177881)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】