説明

入退室管理システム

【課題】登録者になりすまして管理区域の入退室を試みる未登録者の行為を抑制することで、管理区域のセキュリティの向上を図った入退室管理システムを提供する。
【解決手段】ホスト装置10は、管理区域2の入退室を希望している認証対象者のテレビ電話機能を有する携帯電話9に架電し、認証対象者の顔画像を取得する。そして、取得した顔画像を用いて、認証対象者が登録者であるかどうかを判定する顔認証処理を行う。ホスト装置10は、この顔認証処理で、認証対象者が登録者であると判定すると、管理区域2の扉6に取り付けられている電子錠7を一時的に解錠する。また、認証対象者が登録者でないと判定すると、この認証対象者をエリア1内や管理区域2内に閉じ込める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エリア内に設けた管理区域における入退室者を管理する入退室管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
入退室管理システムは、管理区域における入退室者を管理することにより、当該管理区域のセキュリティを確保するシステムである。入退室管理システムは、管理区域毎に、入退室が許可されていない人(以下、未登録者と言う。)の出入りを拒否し、入退室が許可されている人(以下、登録者と言う。)の出入りを許容する。管理区域とは、入退室できる人を制限した区域であり、例えば、建物全体や、建物内の部屋単位で設定される。
【0003】
一般的な入退室管理システムでは、登録者に対して、識別情報(以下、IDと言う。)を記憶したカード等の媒体を発行している。管理区域の出入口に設けられた扉には電子錠が取り付けられている。また、この扉を挟んだ両側、すなわち管理区域内側および管理区域外側、には、媒体からIDを読み取る読取装置が配置されている。扉の電子錠は、通常施錠されており、管理区域に入退室する登録者がいるときに一時的に解錠される。具体的には、読取装置が、管理区域の入退室を希望する認証対象者が所持する媒体からIDを読み取り、ホスト装置に送信する。ホスト装置は、読取装置が媒体から読み取ったIDに対して、電子錠の解錠可否、すなわち登録者であるかどうか、を判定する。ホスト装置が登録者であると判定すると、電子錠が一時的に解錠される。
【0004】
また、認証対象者が登録者であるかどうかの認証に、認証対象者の生体情報を用いる入退室管理システムも提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1では、携帯電話等の携帯端末を利用し、認証対象者が自分の顔、指紋、声、目等の生体情報を携帯端末に読み取らせる。そして、携帯端末が、読み取った認証対象者の生体情報とともに電子錠の施錠や解錠要求をインタネット等を介してセンタのホスト装置に送信する。ホスト装置は、携帯端末から送信されてきた生体情報を用いて認証対象者が登録者であるかどうかの認証(生体認証)を行い、登録者であると認証した場合に、要求された管理区域の電子錠の解錠を指示する。
【特許文献1】特開2005− 36523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の入退室管理システムは、登録者が紛失や盗難にあった媒体や、登録者に発行されている媒体を偽造した偽造媒体を使って、登録者になりすまして管理区域の入退室を試みる未登録者の行為を抑制するものではなかった。そして、登録者になりすまして管理区域の入退室を試みる未登録者の存在は、管理区域のセキュリティを低下させる要因であった。したがって、従来の入退室管理システムでは、管理区域のセキュリティの低下が十分に抑えられていないという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、登録者になりすまして管理区域の入退室を試みる未登録者の行為を抑制することで、管理区域のセキュリティの向上を図った入退室管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の入退室管理システムは、上記課題を解決するために以下ように構成している。
【0008】
この入退室管理システムは、エリア内に設けた管理区域における入退室者を管理するシステムであり、電子錠制御装置、識別情報読取装置、およびホスト装置を備えている。電子錠制御装置の施錠・解錠手段が、前記エリアの出入口、および前記管理区域の出入口に設けられている扉等の開閉体毎に、その開閉体に取り付けられている電子錠の施錠、解錠を制御する。また、識別情報読取装置は、前記管理区域の出入口に設けており、管理区域の入退室を希望する認証対象者が所持する媒体が記憶している識別情報を読み取る。また、識別情報出力手段が前記識別情報読取手段が読み取った識別情報を出力する。
【0009】
また、ホスト装置は、前記媒体の識別情報と、その識別情報に対応するテレビ電話通信機能を有する携帯端末の電話番号と、さらに、その識別情報に対応する登録者の顔の特徴量と、を関連づけて認証情報記憶手段に記憶している。ホスト装置は、識別情報取得手段が前記識別情報読取装置の識別情報出力手段が出力した識別情報を取得すると、顔画像取得手段が、ここで取得した識別情報に関連づけて前記認証情報記憶手段が記憶している電話番号の携帯端末に架電し、当該携帯端末とのテレビ電話通信で認証対象者の顔画像を取得する。そして、顔認証手段が、取得した認証対象者の顔画像と、認証情報記憶手段に記憶している該当する登録者の顔の特徴量と、に基づいて、認証対象者が登録者であるかどうかを判定する。さらに、ホスト装置の指示手段が、顔認証手段により認証対象者が登録者でないと判定すると、前記エリアの出入口の開閉体に取り付けられている電子錠の施錠を前記電子錠制御装置に指示する。
【0010】
したがって、登録者になりすまして管理区域の入退室を試みる未登録者の存在を検知したときには、この未登録者を前記エリアに封じ込めることができる。これにより、登録者になりすまして管理区域の入退室を試みる未登録者の行為を抑制することができ、管理区域のセキュリティの向上が図れる。
【0011】
また、前記顔画像取得手段により、認証対象者の顔画像を複数フレーム取得し、前記顔認証手段において、前記顔画像取得手段が取得した複数フレームの認証対象者の顔画像を用いて、この認証対象者の顔画像が生体を撮像したものであるか、写真等の非生体を撮像したものであるかを判定する機能を設けてもよい。この判定は、取得した複数フレームの顔画像において、目や口等の顔部品に変化があれば生体であると判定し、変化がなければ写真等の非生体を撮像したものであると判定すればよい。また、前記顔認証手段が、生体でないと判定した場合には、前記顔認証処理を行うことなく、認証対象者を適正な登録者でないと判定することで、ホスト装置の負荷を抑えることができる。
【0012】
また、前記ホスト装置の前記顔画像取得手段を、架電した携帯端末から前記管理区域への入退室を希望しているかどうかにかかる応答を受信する構成としてもよいし、また、無効媒体の識別情報をネガ情報記憶手段に記憶しておき、前記識別情報取得手段が取得した識別情報が、前記ネガ情報記憶手段が記憶する無効媒体の識別情報であるかどうかを判定する構成を設けてもよい。架電した携帯端末から前記管理区域への入退室を希望していない旨の応答を受信した場合や、無効媒体であると判定した場合には、前記顔画像取得手段による携帯端末への架電を行うことなく、認証対象者を適正な登録者でないと判定すればよい。
【0013】
さらに、カメラで撮像した前記管理区域の出入口周辺の撮像画像を録画する録画手段、
を備えた監視装置を設け、認証対象者を適性な登録者でないと判定したときに、前記カメラによる前記管理区域の出入口周辺の撮像画像の録画を開始する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、登録者になりすまして管理区域に入室、または管理区域から退出しようとした未登録者を、エリア内に閉じ込めることができる。したがって、登録者になりすまして管理区域の入退室を試みる未登録者の行為を抑制することができ、管理区域のセキュリティの向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態である入退室管理システムについて説明する。
【0016】
まず、この実施形態の入退室管理システムの概要について説明する。図1は、この実施形態の入退室管理システムの概要を説明する図である。この実施形態の入退室管理システムは、エリア1内に設けた管理区域2における入退室者を管理するシステムであり、管理区域2に対して不正に入退室しようとしている未登録者の存在を検知する機能、および検知した未登録者をエリア1内に閉じ込める機能を有している。図1では、エリア1内に3つの管理区域2を設けた例を示しているが、エリア1内に設けられる管理区域2の個数は3つに限定されることはなく、1つ以上であればよい。この実施形態の入退室管理システムは、図1に示すエリア1を、1つ以上管理することができる。
【0017】
エリア1は、例えば、ビル等の建屋のフロアに形成された空間であり、各出入口には扉5が設けられている。扉5の外側は、例えばエレベータホールや、非常階段につながる通路が形成されている。管理区域2の出入口にも扉6が設けられている。エリア1、および管理区域2には、1つ以上の出入口が設けられていればよい。各扉5、6には、電子錠7が取り付けられている。後述する電子錠制御装置が、電子錠7の施錠・解錠を制御する。エリア1は、例えば会社のオフィスであり、管理区域2は、オフィス内に設けられた役員室、金庫室、サーバ室等である。エリア1は、この実施形態の入退室管理システムが入退室者を管理する空間であってもよいし、特に入退室者を管理しない空間であってもよい。ここでは、エリア1については、入退室者を管理しない空間として説明する。一方、管理区域2は、この実施形態の入退室管理システムが入退室者を管理する空間である。通常、扉5の電子錠7は解錠されており、扉6の電子錠7は施錠されている。また、いずれかの管理区域2について入退出が許可されている人には、後述するRFタグ等の無線通信媒体が発行されている。エリア1については、不特定の人が入退出できるが、各管理区域2については、その管理区域2の入退室が許可されている登録者のみが入退室できる。
【0018】
図2は、この発明の実施形態である入退室管理システムの構成を示す図である。この実施形態の入退室管理システムは、システム全体を統括的に制御するホスト装置10と、エリア1、および管理区域2の扉5、6毎に取り付けられている電子錠7の施錠・解錠を個別に制御する電子錠制御装置20と、無線通信媒体8から識別情報(以下、IDと言う。)を読み取る読取装置30と、管理区域2の扉6周辺の撮像画像を録画したり、管理区域2周辺で警告報知を行う監視装置40と、を備えている。ホスト装置10は、電子錠制御装置20、読取装置30、および監視装置40と有線、または無線で接続されており、これらの装置とデータ通信可能に構成されている。また、ホスト装置10は、テレビ電話通信機能を有する任意の携帯電話9と携帯電話網を介してテレビ電話通信が行える構成である。電子錠制御装置20は、ホスト装置10からの指示にしたがって、各電子錠7の施錠・解錠を制御する。
【0019】
図3は、管理区域の出入口に設けられた扉6周辺を示す図である。図3に示すように、読取装置30は、管理区域2の扉6に対して2つ設けており、一方が該当する扉6から管理区域2への入室を希望する入室者用であり、他方が該当する扉6から管理区域2外への退室を希望する退室者用である。入室者用の読取装置20の無線通信エリアは、管理区域2の外側で、且つこの管理区域2の扉6周辺であり、退室用の読取装置20の無線通信エリアは、管理区域2の内側で、且つこの管理区域2の扉6周辺である。読取装置30は、無線通信エリア内に位置する無線通信媒体8との無線通信により、この無線通信媒体8が記憶するIDを読み取る。
【0020】
また、監視装置40には、監視カメラ51や、スピーカ52が接続されている。監視カメラ51も、読取装置30と同様に、管理区域2の扉6に対して2つ設けており、一方が該当する扉6から管理区域2へ入室する入室者用であり、他方が該当する扉6から管理区域2外へ退室する退室者用である。入室者用のカメラ51の撮像エリアは、入室者用の読取装置20の無線通信エリアと略等しいエリアであり、退室者用のカメラ51の撮像エリアは、退室者用の読取装置20の無線通信エリアと略等しいエリアである。また、スピーカ52は、管理区域2の扉6周辺や、エリア1内の適当な場所に取り付けられている。監視装置40は、ホスト装置10からの指示にしたがって、監視カメラ51で撮像されている監視画像の録画や、スピーカ52からの警告報知等を行う。
【0021】
図4は、この実施形態の入退室管理システムにおけるホスト装置の主要部の構成を示す図である。ホスト装置10は、本体の動作を制御する制御部11と、各管理区域2の入退室者の管理に用いるデータベース(DB)を記憶する記憶部12と、電子錠制御装置20、読取装置30、監視装置40等の機器とデータ通信を行う送受信部13と、携帯電話網等を介して任意の携帯電話9との間でテレビ電話通信を行う通信部14と、を備えている。記憶部12は、扉管理DB15、判定用DB16、登録者DB17、強制施錠DB18、および、ネガDB19を記憶している。扉管理DB15は、読取装置12毎に、その読取装置12のID(以下、装置IDと言う。)と、この読取装置20が取り付けられている扉6のID(以下、扉IDと言う。)と、入退室用の区別と、を対応づけたデータを登録したデータデースである。判定用DB16は、扉IDと、この扉6が設けられた管理区域2の入退室を許可する登録者の氏名と、この登録者に発行した無線通信媒体8のID(以下、媒体IDと言う)を対応づけたデータを登録したデータデースである。登録者DB17は、登録者毎に、その登録者に発行した無線通信媒体8の媒体IDと、この登録者が所有するテレビ電話通信機能を有する携帯電話9の電話番号と、この登録者の顔の特徴量と、を対応づけたデータを登録したデータベースである。強制施錠DB18は、扉IDと、この扉6から管理区域2に不正に入退室しようとしている未登録者を検知したときに、電子錠7を強制施錠する扉5、6を示す扉IDと、を対応づけたデータを登録したデータベースである。ネガDB19は、紛失、盗難等で無効にした無線通信媒体8(無効媒体)の媒体IDを登録しデータベースである。
【0022】
なお、ここで示した、記憶部12が記憶するDBは、その1例であり、後述する処理を行うのに必要なデータを登録したDBであれば、他の形式であってもよい。例えば、ネガDB19に代えて、発行済みの無線通信媒体8であって、現時点で有効である無線通信媒体8の媒体IDを登録した有効DBとしてもよいし、判定用DB16および登録者DBの2つのDBを、扉IDに、この扉6が設けられた管理区域2の入退室を許可する登録者の氏名、この登録者に発行した無線通信媒体8の媒体ID、この登録者が所有する携帯電話9の電話番号、および、この登録者の顔の特徴量と、を対応づけたデータを登録したデータベースとしてもよい。
【0023】
ホスト装置10の送受信部13は、電子錠制御装置20、読取装置30、および監視装置40との間におけるデータ通信を制御するインタフェース機能を有している。また、通信部14は、携帯電話網等を介して任意の携帯電話9に架電し、回線が接続された携帯電話9との間でテレビ電話通信を行う。後述するように、ホスト装置10は、携帯電話9との間におけるテレビ電話通信で、当該携帯電話9の所有者の顔画像を取得できればよく、携帯電話9に対して画像を送信する機能を有していなくてもよい。
【0024】
図5は、この実施形態の入退室管理システムにおける電子錠制御装置の主要部の構成を示す図である。電子錠制御装置20は、本体の動作を制御する制御部21と、電子錠7の施錠、解錠を行う施錠・解錠部22と、ホスト装置10と通信する送受信部23と、を備えている。施錠・解錠部22は、エリア1の扉5、および管理区域2の扉6に取り付けられている電子錠7毎に、施錠、解錠を制御する。具体的には、ホスト装置10から解錠することが指示されている扉5、6については電子錠7を解錠し、ホスト装置10から施錠することが指示されている扉5、6については電子錠7を施錠する。送受信部23は、各扉5、6に取り付けられている電子錠7の施錠、解錠にかかるホスト装置10からの指示を受信する。
【0025】
また、管理区域2の扉6には、開閉状態を検知する開閉検知センサ(不図示)が取り付けられており、この開閉検知センサの出力が電子錠制御装置20に入力されている。すなわち、電子錠制御装置20は、管理区域2の扉6毎に、開閉状態を得ている。
【0026】
図6は、この実施形態の入退室管理システムにおける読取装置の主要部の構成を示す図である。読取装置30は、本体の動作を制御する制御部31と、無線通信媒体8と無線通信を行う無線通信部32と、無線通信部32で無線通信媒体8から読み取った媒体IDをホスト装置10へ送信する送信部33と、を備えている。無線通信部32は、無線通信エリア内に位置する無線通信媒体8と無線通信が行える。この無線通信エリアは、上述したように、管理区域2の扉6周辺に形成されている。また図7は、監視装置40の主要部の構成を示す図である。監視装置40は、本体の動作を制御する制御部41と、監視カメラ51で撮像されている撮像画像を録画する録画部42と、スピーカ52から警告報知を行う報知部43と、ホスト装置10とのデータ通信を行う送受信部44と、を備えている。録画部42は、通常監視カメラ51で撮像されている撮像画像を録画しておらず、ホスト装置10から録画指示があったときに、該当する監視カメラ51で撮像されている撮像画像の録画を行う。監視カメラ51は、常時撮像を行っている構成であってもよいし、ホスト装置10から録画指示があったときに、撮像を行う構成であってもよい。報知部43は、ホスト装置10からの指示にしたがって、警告音や、警告音声による警告報知を行う。送受信部44は、ホスト装置10から送信されてきた、上記の録画指示や、警告報知にかかる指示を受信する。また、送受信部44は、録画部42において録画している画像(監視カメラ51で撮像している監視画像)を、ホスト装置10へ送信することもできる。
【0027】
以下、この実施形態の入退室管理システムの動作について説明する。図8は、この実施形態の読取装置の動作を示すフローチャートである。読取装置20は、無線通信部32において、無線通信エリア内に位置する無線通信媒体8から送信されてきた媒体IDを受信すると(s1)、今回受信した媒体IDと、自機を識別する装置IDと、を含む入退室要求を、送信部33からホスト装置10へ送信する。各読取装置30は、装置IDを制御部31に設けられているメモリに記憶している。上述したように、入室者用の読取装置30の無線通信エリアは、管理区域2の外側で、且つ扉6の周辺であるので、管理区域2への入室を希望する者は、必ず入室者用の読取装置30の無線通信エリア内に入る。したがって、この者が無線通信媒体8を所持していれば、この無線通信媒体8の媒体IDが読取装置30に読み取られる。同様に、退室者用の読取装置30の無線通信エリアは、管理区域2の内側で、且つ扉6の周辺であるので、管理区域2からの退出を希望する者は、必ず退室者用の読取装置30の無線通信エリア内に入る。したがって、退室希望者が無線通信媒体8を所持していれば、この無線通信媒体8の媒体IDが読取装置30に読み取られる。
【0028】
なお、電子錠制御装置20が、通常、管理区域2の扉6に取り付けられている電子錠7を施錠しているので、無線通信媒体8を所持していない人の管理区域2の入退室については防止できている。
【0029】
図9、および図10は、この実施形態のホスト装置の動作を示すフローチャートである。ホスト装置1は、読取装置30から送信されてきた入退室要求を受信すると(s11)、この入退室要求に含まれている媒体IDがネガデータベース19に登録されている無効媒体の媒体IDであるかどうかを判定する(s12)。ホスト装置10は、s12で無効媒体でないと判定すると、今回受信した入退室要求に含まれている装置ID、および媒体IDをキーにして、記憶部12に記憶しているDBを検索し、
(1)認証対象者に対して、入退室を許可している管理区域2
(2)認証対象者が、入退室を希望している管理区域2
(3)認証対象者が所有する携帯電話9の電話番号
(4)認証対象者の顔の特徴量
(5)認証対象者の氏名
の情報を取得する(s13)。
【0030】
具体的に、今回受信した入退室要求に含まれている媒体IDをキーにして判定用DB16を検索し、登録者の氏名、およびこの登録者に対して入退室が許可されている管理区域2の扉IDを取得する。また、今回受信した入退室要求に含まれている媒体IDをキーにして、登録者DB17を検索し、該当する登録者の携帯電話9の電話番号、および登録者の顔の特徴量を取得する。さらに、今回受信した入退室要求に含まれている装置IDをキーにして扉管理DB15を検索し、該当する扉IDおよび入退室用の区別を取得する。
【0031】
ホスト装置10は、認証対象者が許可されている管理区域2の入退室を希望しているのかどうかを判定する(s14)。ホスト装置10は、s14で許可されている管理区域であると判定すると、通信部14において、登録者の携帯電話9に架電する(s15)。そして、ホスト装置10は、架電した携帯電話9との回線が接続されると(s16)、管理区域への入退室を希望しているかどうかを問い合わせる音声メッセージを出力する(s17)。s17では、例えば「○○さん(登録者の名前)、××部屋(管理区域2の部屋の名前)の入退室を希望している場合は「**」を、心当たりのない場合は「##」を入力してください。」という音声メッセージを出力する。
【0032】
携帯電話9の所有者である登録者は、この音声メッセージに応答し、管理区域2の入退室を希望している場合にはダイヤルキーを操作して「**」を入力し、今回の音声メッセージに対して心当たりがない場合にはダイヤルキーを操作して「##」を入力する。ここで、携帯電話9の所有者が今回の音声メッセージに対して心当たりがない場合とは、この登録者に対して発行されている無線通信媒体9、または偽造媒体を所持した者が、管理区域2の入退室を希望している場合である。すなわち、この音声メッセージにより、登録者に対して、無線通信媒体9の紛失、盗難や、偽造媒体の存在を速やかに認識させ、その旨をホスト装置10に通知させる(##を入力させる)ことができる。すなわち、登録者になりすましている未登録者の存在を、積極的に検知することができる。
【0033】
ホスト装置10は、s17で音声メッセージを出力すると、携帯電話9からのトーン信号を受信するか(s18)、この携帯電話9との回線が切断されるの待つ(s19)。ホスト装置10は、通信部14において携帯電話9から送信されてきたトーン信号を受信すると、このトーン信号が「**」であるか、「##」であるかを判定する(s20)。ホスト装置10はs20で「**」であると判定すると、携帯電話9に対してテレビ電話機能による顔画像の送信を要求する音声メッセージを出力する(s21)。s21では、例えば「○○さん、顔を撮像して送信してください。」という音声メッセージを出力する。
【0034】
携帯電話9の所有者は、携帯電話9のテレビ電話機能により自分の顔を撮像した顔画像をホスト装置10に送信する。ホスト装置10は、携帯電話9から送信されてきた顔画像を複数フレーム取得し(s22)、ここで取得した複数フレームの顔画像が生体を撮像したものであるか、写真等の非生体を撮像したものであるかを判定する(s23)。s23では、s22で抽出した複数フレームの顔画像において、目や口等の顔部品に動きがあるかどうか検出し、顔部品に動きがあれば生体を撮像したものであると判定する。また、ホスト装置10が、携帯電話9の所有者に対して、テレビ電話機能による顔画像の送信の際に、瞬きや、口を動かすように指示する構成としてもよい。
【0035】
ホスト装置10は、s23で生体であると判定すると、s22で抽出したいずれかのフレームを用いて、認証対象者が登録者であるかどうかを判定する顔認証処理を行う(s24)。s24では、今回携帯電話9とのテレビ電話通信で得た認証対象者の顔画像から得られる顔の特徴量と、s13で登録者DB17から得た登録者の顔の特徴量と、の類似度を算出し、ここで算出した類似度が予め定めた閾値を超えていれば、認証対象者を登録者であると判定する。言い換えれば、今回携帯電話9とのテレビ電話通信で得た認証対象者の顔画像から得られる顔の特徴量と、s13で登録者DB17から得た登録者の顔の特徴量と、の類似度が予め定めた閾値を超えていなければ、認証対象者を登録者でないと判定する。
【0036】
ホスト装置10は、認証対象者を登録者であると判定すると、電子錠制御装置20に対して該当する扉6(この認証対象者がいる扉6)に取り付けられている電子錠7の解錠を指示し(s25)、さらに携帯電話9との回線を切断し(s26)、本処理を終了する。
【0037】
図11は、この実施形態の電子錠制御装置の動作を示すフローチャートである。電子錠制御装置20は、ホスト装置10からの解錠指示、または強制施錠指示を受信するのを待っている(s41、s42)。電子錠制御装置20は、送受信部23において、ホスト装置10からの解錠指示を受信すると、この解錠指示において指示されている扉6の電子錠7を解錠する(s43)。その後、この扉6が開状態になるか、一定時間(例えば、4〜5s)経過するのを待つ(s44、s45)。電子錠制御装置20は、扉6に取り付けられている開閉検知センサの出力により、扉6の開閉状態を得ている。電子錠制御装置20は、扉6が開状態になったことを検出すると、再びこの扉6が閉状態になるのを待つ(s46)。すなわち、認証対象者が扉6を開けて、管理区域2に入室、または管理区域から退出し、扉6が再び閉状態になるのを待つ。そして、扉6が再び閉状態になると、この扉6に取り付けられている電子錠7を施錠し(s47)、本処理を終了する。
【0038】
また、電子錠制御装置20は、s45で扉6が開されることなく、一定時間経過したと判定すると、s47で、この扉6に取り付けられている電子錠7を施錠し、本処理を終了する。このような状況は、認証対象者が、何らかの理由で、管理区域2の入退室を取りやめたと考えられる。そこで、一旦解錠した電子錠7を、s47で再び施錠することにより、この管理区域2に対して、未登録者が入退室するのを防止している。
【0039】
また、ホスト装置10は、上述したs19で携帯電話9との回線が接続されたと判断すると、本処理を終了する。このような状況は、認証対象者が、何らかの理由で、管理区域2の入退室を取りやめたと考えられるので、ホスト装置10における処理を中止しても、何ら問題は生じない。
【0040】
また、ホスト装置10は、s14で許可されていない管理区域2の入退室を希望していると判定すると、認証対象者が管理区域2への入室を希望しているのか、管理区域2からの退出を希望しているのかを判定する(s27)。ホスト装置10は、s27で入室を希望していると判定すると、本処理を終了する。このような状況は、この認証対象者がエリア1内を移動しているときに、たまたま読取装置30の無線通信エリア内に入ったと考えられるので、ホスト装置10における処理を中止しても、何ら問題は生じない。一方、ホスト装置1は、s27で退出を希望していると判定すると、警備室等への通知を行い(s28)、本処理を終了する。このとき、ホスト装置10は、電子錠制御装置20に対して電子錠7の解錠指示を与えない。したがって、管理区域2内にいる未登録者は、管理区域2から外に出ることはできない。これにより、許可されていない管理区域2に共連れ等で入室した未登録者については、管理区域2内に閉じ込めることができる。また、s28で警備室等へ通知しているので、警備員等が、この未登録者を簡単に捕まえることができる。
【0041】
さらに、ホスト装置10は、s12で無効媒体であると判定した場合、s20で「##」が入力されたと判定した場合、s23で非生体であると判定した場合、およびs24で認証対象者が登録者でないと判定した場合、認証対象者が管理区域2の入退室を不正に行おうとしている未登録者であると判断し、この未登録者を閉じ込めるために、強制施錠すべき扉5、6を検出する(s29)。この検出は、この未登録者がいる扉6の扉IDをキーにして、強制施錠DB18を検索することにより行われる。例えば、当該管理区域2が設けられている、エリア1の全ての出入口の扉5を強制施錠すべき扉として検出する。ホスト装置10は、s29で検出した強制施錠すべき扉5、6についての強制施錠を、電子錠制御装置20に通知する(s30)。
【0042】
また、この未登録者が管理区域2に入室を希望している場合、この管理区域2が設けられているエリア1の出入口の扉5、およびこのエリア1内に設けられている全ての管理区域2の扉6を、強制施錠すべき扉5、6として検出する。一方、この未登録者が管理区域2からの退室を希望している場合、この管理区域2の各出入口に設けられている扉6のみを、強制施錠すべき扉6として検出するようにしてもよい。この場合、強制施錠DB18を、装置IDと、強制施錠する扉IDと、を対応づけたデータベースとすればよい。
【0043】
電子錠制御装置20は、s42で、ホスト装置10から電子錠7の強制施錠にかかる通知を受けると、この通知において施錠することが指示されている扉5、6の電子錠7を施錠する、強制施錠処理を行う(s48)。s48では、ホスト装置10からの通知において施錠することが指示されている扉5、6の電子錠7であって、この時点で解錠されている電子錠7を施錠する処理である。言い換えれば、この時点で施錠されている電子錠7を一時的に解錠することはない。
【0044】
また、ホスト装置10は、s30で電子錠制御装置20に対して強制施錠を通知すると、未登録者がいる無線通信エリアを撮像している監視カメラ51の撮像画像の録画を監視装置40に指示する(s31)。また、このときスピーカ52からの警告報知も合わせて監視装置40に指示する。この指示を送受信部44で受信した監視装置40は、録画部42において、該当する監視カメラ51の撮像画像の録画を開始する。このとき、監視カメラ51が撮像を停止していれば、監視カメラ51に撮像を開始させて、録画を開始する。また、報知部43は、未登録者の存在を検知したことを、周辺にいる人に通知する警告報知を行う。
【0045】
このように、この実施形態の入退室管理システムは、管理区域2の入退室を希望している登録者の携帯電話9に架電し、テレビ電話通信により取得した顔画像を用いた顔認証処理により、認証対象者が登録者であると判定した場合に、管理区域2の扉6に取り付けられている電子錠7を、一時的に解錠して管理区域2の入退室を許可する。したがって、盗難や紛失にかかる無線通信媒体8や、偽造媒体8を用いた、管理区域2の不正な入退室に対するセキュリティを十分に向上させることができる。また、管理区域2の入退室を不正に行おうとした未登録者を検知したときには、その未登録者を管理区域2内、またはエリア1内に閉じ込めるとともに、監視カメラ51で撮像し、その撮像画像を録画するので、この未登録者を容易に捕まえることができる。したがって、登録者になりすまして管理区域の不正な入退室を試みる未登録者の行為を抑制することができ、管理区域のセキュリティの向上が図れる。
【0046】
また、s12で無効媒体であると判定した場合、s20で「##」が入力されたと判定した場合、およびs23で非生体であると判定した場合には、認証対象者についての顔認証処理を行わないので、ホスト装置10の負荷も抑えられる。
【0047】
なお、上記実施形態では、登録者に無線通信媒体9を発行するとしたが、登録者に発行する媒体はIDを記憶させることができる媒体であればよく、例えば磁気カード、ICカード、非接触ICカード等、他の種類の媒体を用いてもよい。この場合、読取装置30は、使用する媒体からIDを読み取ることができる構成にすればよい。
【0048】
また、エリア1における入退室者についても管理する場合には、エリア1の出入口においても、上述した管理区域2の出入口と同様に、読取装置30を配置し、同様の処理を行えばよい。
【0049】
さらに、アンチパスバックの発生有無を検出する機能を付加的に設け、セキュリティを一層向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の実施形態である入退室管理システムの概要を説明する図である。
【図2】この発明の実施形態にかかる入退室管理システムを示す図である。
【図3】この実施形態の入退室管理システムにおける管理区域の扉周辺を説明する図である。
【図4】この実施形態の入退室管理システムにおけるホスト装置の主要部の構成を示す図である。
【図5】この実施形態の入退室管理システムにおける電子錠制御装置の主要部の構成を示す図である。
【図6】この実施形態の入退室管理システムにおける読取装置の主要部の構成を示す図である。
【図7】この実施形態の入退室管理システムにおける監視装置の主要部の構成を示す図である。
【図8】この実施形態の入退室管理システムにおける読取装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】この実施形態の入退室管理システムにおけるホスト装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】この実施形態の入退室管理システムにおけるホスト装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】この実施形態の入退室管理システムにおける電子錠制御装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1−エリア
2−管理区域
5、6−扉
7−電子錠
8−無線通信媒体
9−携帯電話
10−ホスト装置
20−電子錠制御装置
30−読取装置
40−監視装置
51−監視カメラ
52−スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリア内に設けた管理区域における入退室者を管理する入退室管理システムであって、
前記エリアの出入口、および前記管理区域の出入口に設けられている開閉体毎に、その開閉体に取り付けられている電子錠の施錠、解錠を制御する施錠・解錠手段、
を備えた電子錠制御装置と、
前記管理区域の出入口に設けられ、
媒体が記憶している識別情報を読み取る識別情報読取手段、および、
前記識別情報読取手段が読み取った識別情報を出力する識別情報出力手段
を備えた識別情報読取装置と、
前記媒体の識別情報と、その識別情報に対応するテレビ電話通信機能を有する携帯端末の電話番号と、さらに、その識別情報に対応する登録者の顔の特徴量と、を関連づけて記憶する認証情報記憶手段、
前記識別情報読取装置の識別情報出力手段が出力した識別情報を取得する識別情報取得手段、
前記識別情報取得手段が取得した識別情報に関連づけて、前記認証情報記憶手段が記憶している電話番号の携帯端末に架電し、当該携帯端末とのテレビ電話通信で、認証対象者の顔画像を取得する顔画像取得手段、
前記顔画像取得手段が取得した認証対象者の顔画像と、前記認証情報記憶手段が該当する識別情報に関連づけて記憶している登録者の顔の特徴量と、に基づいて、認証対象者が適正な登録者であるかどうかを判定する顔認証処理を行う顔認証手段、および、
前記顔認証手段が認証対象者を適性な登録者であると判定した場合に、当該識別情報を媒体から読み取った前記識別情報読取装置が設けられている前記管理区域の出入口の開閉体に取り付けられている電子錠の解錠を前記電子錠制御装置に指示し、反対に前記顔認証手段が認証対象者を適性な登録者でないと判定した場合に、前記エリアの出入口の開閉体に取り付けられている電子錠の施錠を前記電子錠制御装置に指示する指示手段、
を備えたホスト装置と、
を有する入退室管理システム。
【請求項2】
前記ホスト装置は、
前記顔画像取得手段が、認証対象者の顔画像を複数フレーム取得する手段であり、
前記顔認証手段が、前記顔画像取得手段が取得した複数フレームの認証対象者の顔画像を用いて、この認証対象者の顔画像が生体を撮像したものであるかどうかを判定し、生体でないと判定した場合に、前記顔認証処理を行うことなく、認証対象者を適正な登録者でないと判定する手段である、
請求項1に記載の入退室管理システム。
【請求項3】
前記ホスト装置は、
前記顔画像取得手段が、架電した携帯端末から前記管理区域への入退室を希望しているかどうかにかかる応答を受信する機能を有し、
前記顔認証手段が、前記顔画像取得手段が前記管理区域への入退室を希望していない旨の応答を受信した場合に、前記顔認証処理を行うことなく、認証対象者を適正な登録者でないと判定する手段である、
請求項1、または2に記載の入退室管理システム。
【請求項4】
前記ホスト装置は、
無効媒体の識別情報を記憶するネガ情報記憶手段と、
前記識別情報取得手段が取得した識別情報が、前記ネガ情報記憶手段が記憶する無効媒体の識別情報であるかどうかを判定し、無効媒体であると判定した場合に、前記顔画像取得手段による携帯端末への架電を行うことなく、認証対象者を適正な登録者でないと判定するネガチャック手段と、を備え、
前記指示手段が、前記ネガチャック手段により認証対象者を適性な登録者でないと判定した場合にも、前記エリアの出入口の開閉体に取り付けられている電子錠の施錠を前記電子錠制御装置に指示する手段である、
請求項1〜3のいずれかに記載の入退室管理システム。
【請求項5】
さらに、カメラで撮像した前記管理区域の出入口周辺の撮像画像を録画する録画手段、
を備えた監視装置を有し、
前記ホスト装置は、
前記指示手段は、認証対象者が適性な登録者でないと判定され、これにともなって前記エリアの出入口の開閉体に取り付けられている電子錠の施錠を前記電子錠制御装置に指示したときに、当該識別情報を媒体から読み取った前記識別情報読取装置が設けられている前記管理区域の出入口周辺の撮像画像の録画開始を、前記監視装置に指示する録画指示機能を有する手段ある、
請求項1〜4のいずれかに記載の入退室管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−266988(P2008−266988A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111178(P2007−111178)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】