説明

入退室管理システム

【課題】読取装置と管理装置との間で効率的なデータ伝送を図り、システムとしての応答性能を向上させる。
【解決手段】管理装置と、各部屋の出入り口に位置するドアの内側または外側に設置された複数の読取端末とを備える入退室管理システムであって、各読取端末の読み取り頻度を推算し、前記推算された読み取り頻度が高い読取端末ほど、当該読取端末に関して前記信号の送信周期を短く設定する。例えば、読み取り頻度が高い読取端末(番号11)では1周期あたりの枠数を3個とし、読み取り頻度が低い読取端末(番号31)では1周期あたりの枠数を1個とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入退室管理システムに関し、特に利用者を識別して扉の解錠を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
入退室管理システムは、物理的なセキュリティを確保するためのシステムであって、例えば、部屋の扉の傍らに設置され、扉の解錠/施錠を制御するカードIDの読取端末と、この読取装置と接続された管理装置とから構成される(例えば、特許文献1参照)。
利用者の入退室の際には、(1)読取装置は、利用者がかざしたカードからカードIDを読み取って、カードIDを管理装置に送信する。(2)管理装置では、このカードIDを照合し、管理用データベースに登録済のものであれば通行を許可する旨の信号を読取装置に送信する。(3)許可の信号を受けた読取装置は、自端末の傍らにある扉を解錠する。
【0003】
利用者の通行を円滑にするために、上述の(1)〜(3)のようなカードIDの読み取りから解錠までの応答時間は極めて短時間(例えば、1秒以内)であることが求められる。
従来の管理装置と読取装置との間のデータ伝送手順は、例えば、ポーリング/セレクティング方式であり、管理装置(制御局)から読取装置(従属局)へと順番にポーリング信号を送信し、読取装置はポーリングに応じて読み取りカードIDを応答する。係るポーリング信号は、各読取端末間に同一頻度で送信することが一般的である。
【特許文献1】特開2007-026396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて上記した応答時間を短くするためには、単純にポーリング信号の送信周期を短くすることも考えられる。もっとも、システムを構成する読取端末などのハードウェアはCPU、メモリなどのリソースに乏しいため一定限度の制約がある。
また、実際のところカードIDの読み取り頻度は読取装置間で一様ではないと考えられる。頻繁に利用者が通る扉に設置された読取端末では多い一方で、あまり利用者が通らない扉に設置された読取端末では少ないと考えられる。
【0005】
本発明はこのような観点に鑑みてなされたものであって、読取装置と管理装置との間で効率的なデータ伝送を図り、システムとしての応答性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る入退室管理システムは、管理装置と、各部屋の出入り口に位置するドアの傍らに設置された複数の読取端末とを備える入退室管理システムであって、前記複数の読取端末それぞれは、利用者IDを読み取る読み取り手段と、前記管理装置からデータの問い合わせに応じて前記読み取った利用者IDを送信するID送信手段と、前記管理装置からの通行を許可する旨の指示を受信した場合に、前記ドアの錠を解錠させる解錠手段とを備え、前記管理装置は、前記複数の読取端末へと、一台ずつデータの問い合わせを示す信号を送信する信号送信手段と、利用者ID毎に、通行可能なドアを記述した権限テーブルを記憶する記憶手段と、前記問い合わせに対する応答としての利用者IDを受信した場合に、受信した利用者IDと当該利用者IDの送信元の読取端末に対応するドアとを、前記権限テーブルに照合して、ドアの通行を許可するかどうかを判定する判定手段と、通行許可と判定されたときに、通行を許可する旨の指示を当該利用者IDの送信元の読取端末に送信する指示送信手段と、各読取端末の読み取り頻度を推算する推算手段と、前記推算された読み取り頻度が高い読取端末ほど、当該読取端末に関して前記データの問い合わせを示す信号の送信周期を短く設定する設定手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
課題を解決するための手段に記載した構成によれば、前記管理装置における推算手段は各読取端末の読み取り頻度、すなわち利用者がその部屋に入退室するためにその読取端末のところに来てカードを読み取らせる頻度を推算し、設定手段は読み取り頻度が高い読取端末ほど、当該読取端末に関して信号の送信周期を短く設定するため、例えば、利用者の通行量が多い扉の読取端末に関しては、短い送信周期に設定して多くの利用者に素早い応答性能を提供することが可能となる。
【0008】
また、前記管理装置は、前記判定手段の通行許可の判定に基づいて、各部屋の在室人数を計数する計数手段を備え、前記推算手段は、各部屋の在室人数の多少に基づいて、部屋内に設置された読取端末の読み取り頻度の高低を推算することを特徴とする。
この構成によれば、前記推算手段は、在室人数を用いて、部屋の出口側に設置された読取端末の読み取り頻度の高低を推算するため、実態に即した結果を得ることができる。また、例えば、在室人数が変更される毎や10分おきといった短時間毎に、推算手段による推算と前記設定手段による設定とを行うことで動的な在室状況の変化に対応することができる。
【0009】
また、前記推算手段は、前記権限テーブルに基づいて各読取端末に通行権限を有する利用者IDの数を算出し、算出された数の多少に基づいて読み取り頻度の高低を推算することを特徴とする。
この構成によれば、前記推算手段は、通行権限を有する利用者IDの数を推算に用いるため、システム運用の実情に即した結果を得ることができ、システムとしての応答性能向上に寄与することができる。
【0010】
また、前記権限テーブルは、利用者ID毎に、通行可能なドア及び当該ドアの通行可能な時間帯が記述されており、前記推算手段による通行権限を有する利用者IDの算出は、前記通行可能な時間帯に基づいて行われることを特徴とする。
この構成によれば、前記推算手段は、通行可能な時間帯を加味して通行権限を有する利用者IDの数を推算に用いるため、より実情に合った結果を得ることができる。
【0011】
また、前記管理装置は、前記判定手段の判定に応じて、読取端末毎に、判定日時を含む履歴を記憶する履歴記憶手段を備え、前記推算手段は、所定時間帯または所定曜日に対応する読取端末それぞれの判定回数を前記履歴から取得し、取得した読取端末それぞれの判定回数の多少に基づいて、各読取端末の各日についての所定時間帯または所定曜日における読み取り頻度の高低を推算することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、管理装置における推算手段は、履歴を利用して推算を行うため、例えば、ある曜日(又は時間帯)には利用者の通行が多く、また別の曜日(又は時間帯)には少ないなどといった読み取り頻度の傾向を前記信号の送信周期の設定に反映させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
<構成>
図1は、実施の形態1に係る入退室管理システム1の構成図である。
入退室管理システム1は、管理装置2と、部屋の出入り口に位置する扉(ドア)6a〜6cの傍らに設置された6台の読取端末11,12,21,22,31,32とを含んで構成されている。
【0014】
管理装置2と読取端末11,12,21,22,31,32とは、1本のケーブル4により芋づる式に接続されており(マルチドロップ接続形態)、RS485(米国電子工業会(EIA)によって標準化されたシリアル通信の規格である。)の通信方式で通信を行う。
また、伝送制御方式はポーリング/セレクティング方式であって、同方式上では管理装置2が制御局、読取端末11,12,21,22,31,32は従属局にあたる。管理装置2は読取端末11,12,21,22,31,32の内の1台ずつ順に指定し(セレクティング)、伝送すべきデータ(データは主として読取端末11,12,21,22,31,32が利用者がかざしたカードから読み取ったカードIDである。)が有るか否かを問い合わせる(ポーリング)。問い合わせを受けた読取端末11,12,21,22,31,32はポーリングに応答して蓄積していたデータを返す。
【0015】
扉6a〜6cは、それぞれエリア(部屋)AB間、BC間、BD間を行き来する扉であり、普段はその電気錠が施錠された状態となっている。
エリアAは建物の外など特に入退室を制限しないエリア、エリアBは利用者間で共用のエリア、エリアCは一部の利用者が出入りする部門別のエリア、エリアDはサーバールームなど重要度が高く、ごく一部の利用者だけが出入りする特定のエリアである。
【0016】
図2は、管理装置2の機能ブロック図である。
管理装置2は、ユーザインターフェイス部110、制御部120、及び記憶部140を備える。
ユーザインターフェイス部110は、表示部112と操作部114とを備える。
表示部112は、例えば液晶ディスプレイから構成されており、制御部120からの表示制御信号に応じてシステム管理者のユーザに対して各種表示を行う。
【0017】
操作部114は、例えば、キーボードとマウスから構成されており、ユーザから各種入力を受け付け、入力内容を示す制御信号を制御部120に送る。
制御部120は、制御アプリ部122、認証部124、ID読出部126、推算部128、送受信部130、周期設定部132を備える。
制御アプリ部122はROMに格納された制御アプリケーション(プログラム)から構成されており、他の機能ブロックと連動して各種処理を行う。
【0018】
送受信部130は、データの送受信を制御する機能ブロックであり、周期設定部132が設定したポーリング順序に従って、読取端末11,12,21,22,31,32の内の1台に対して順番にポーリング信号を送信し、ポーリング信号に対する応答を受信する。
本実施の形態では、ポーリング順序は1周期あたりに、送信すべき読取端末を特定する時間枠を12個を含んでいる。
【0019】
ポーリング信号の送信及び応答に要する時間は、読取端末1台あたりで約30ms程度要するため、1周期あたりでは約360ms秒程度となる。
ID読出部126は、送受信部130が受信したデータに含まれる利用者IDを読み出す。
認証部124は、ID読出部126が読み出した利用者IDと当該利用者IDの送信元読取端末11,12,21,22,31,32とを、利用者IDごとにそれぞれの扉6a〜6cに対する入退室の権限(読取端末11,12,21,22,31,32に関する通行権限)が記述された権限テーブル142に照合して、一致すれば、送信元の読取端末11,12,21,22,31,32に通行を許可する旨の指示を送信する。
【0020】
推算部128は、権限テーブル142に基づいて読取端末11,12,21,22,31,32それぞれの読み取り頻度を推算し、各読取端末の1周期あたりの枠数を算出する。
周期設定部132は、推算部128により算出された各読取端末の枠数に基づいて、ポーリング順序を設定する。枠が複数の読取端末に関しては、順番が分散されるように並び替えを行う。順番が連続するより分散する方が読取端末の応答性能が良くなるからである。
【0021】
記憶部140は、例えばHDD(Hard Disk Drive)から構成されており、権限テーブル142を記憶している。
図3は、読取端末11の機能ブロック図である。読取端末11,12,21,22,31,32は同様な構成であるため、読取端末11を代表させて説明する。
読取端末11は、カード読取部40、音出力部42、通信部44、メモリ46、電気錠制御部48を備える。
【0022】
カード読取部40は、利用者によってかざされた入退室用カードからカードIDを読み取り、読み取ったカードIDをメモリ46に蓄積する。
音出力部44は、カード読取部40の読取成功時や読取エラー時にビープ音を出力する。
通信部44は、RS485方式の通信回路を含んで構成されており、RS485方式の通信を行う。また、管理装置2からポーリング信号を受信すると、メモリ46に蓄積されたカードIDを含むデータを管理装置2に送信する。
【0023】
電気錠制御部48は、通信部44を介して管理装置2から通行を許可する旨の指示を受けると、扉6aの電気錠を一定時間だけ解錠する。
<データ>
図4は、権限テーブル142のデータ構造を示す図である。なお、以下では、扉6a〜6c及び読取端末11,12,21,22,31,32に付した符号番号は識別番号と一致するものとして説明する。
【0024】
権限テーブル142は、利用者ID毎に各扉6a〜6cに対する入退室の権限が記述されており、テーブル項目として「利用者ID」142aと、扉6a〜扉6cに関する入室及び退室の権限を示す項目「権限」142bとを含んでいる。
「利用者ID」142aの項目の利用者ID数は64人である。
「権限」142bの「扉6a」において、「扉6a」の下行に併記した「11」「12」は、入口または出口に設置された読取端末の識別番号である。「扉6b」142c、「扉6c」142dについても同様である。
【0025】
また、「利用者ID」142aの項目の最下行には「権限有の人数」と記載されている。これは、扉6a〜6cそれぞれの入退の権限を有する者の合計人数を示している。共用エリアであるエリアBの入口の扉6aは64人が進入できるのに対して、厳重な管理が要求されるエリアDには5人しか進入できないこととなる。
<動作>
次に実施の形態における動作について説明する。本実施の形態では、権限テーブル142から各扉6a〜6cの入退室権限(各読取端末11,12,21,22,31,32の認証権限)を有する利用者の人数に基づいてポーリング順序の1周期あたりの各読取端末の枠数を決定し、上記ポーリング順序に含まれる枠に、各読取端末をその枠数だけ配列し、各読取端末のポーリング信号の送信周期(以下では、単に「ポーリング周期」という場合がある。)を設定する。
【0026】
上述したように、権限を有する利用者の人数が多い読取端末ほど、多くの利用者が読取端末にカードを読み取らせて部屋を出入りするだろうから、その読取端末は頻繁に読み取りを行うと考えられる。
このため本実施の形態では、人数が多い読取端末ほどポーリング順序1周期あたりの枠数をより多く割り当てる、すなわち当該読取端末に対するポーリング周期をより短く設定して迅速な応答性能を確保し、多数の利用者の便宜を図るものである。
【0027】
これに対して、利用者の人数が少ない読取端末ほどポーリング順序1周期あたりの枠数を少なく割り当てる、すなわち当該読取端末に対するポーリング周期をより長く設定する。周期を長く設定することで、応答性能は若干低下するが、元々利用者の人数が少ないためシステム全体として見れば使い勝手への影響は軽微であると考えられる。
図5は、管理装置2における推算処理を示すフローチャートである。
【0028】
まず、推算部128では、ポーリング順序1周期あたりの総枠数を12個をセットする(S11)。
次に、推算部128は、各読取端末についてP=(全読取端末の権限を有する人数に対する当該読取端末の権限を有する人数の割合)×(総枠数)を求める(S12)。
権限テーブル142(図4参照)にあるように、「読取端末11」〜「読取端末32」の権限を有する人数の合計は、64+64+40+38+5+5=216人である。
【0029】
「読取端末11」のPの値P11は、P11=64/216×12=3.56となる。また、P21=40/216×12=2.2, P22=38/216×12=2.1、P31=5/216×12=0.28、P32=5/216×12=0.28となる。
そして、推算部128は、P<1の読取端末について、枠を1個割り当てる(S13)。上記例では、P31<1,P32<1であるため、「読取端末31」と「読取端末32」とにそれぞれ1個の枠が割り当てられ、残り枠数は12-2=10個となる。
【0030】
次に、推算部128は、未割り当ての各読取端末について、Q=(全未割り当て読取端末の権限を有する人数に対する当該読取端末の権限を有する人数の割合)×(残り枠数)を求める(S14)。
全未割り当て読取端末の権限を有する人数は、216-10=206人であるから、
11=64/206×10=3.1≒3, Q12=64/206×10=3.1≒3,Q21=40/206×10=1.94≒2,Q22=38/206×10=1.84≒2となる。
【0031】
そして、推算部128は、Qを四捨五入した値を、各読取端末の枠数とする(S15)。「読取端末11」「読取端末12」の枠数はそれぞれ3個、「読取端末21」「読取端末22」の枠数はそれぞれ2個となる。
図6のテーブル150に、図5のフローに従って推算した各読取端末の権限を有する人数、及び枠数を示す。
【0032】
続いて、推算部128によって推算された枠数に基づいて周期設定部132が行うポーリング順序の設定処理について図7のフローチャートを用いて説明する。
まず、周期設定部132は、1周期あたりの総枠数を12個にセットし、各読取端末の枠数をセットする(S21)。
具体的には、総枠は|○|○|○|○|○|○|○|○|○|○|○|○|とセットする。並び替えすべき読取端末「11,11,11,12,12,12,21,21,22,22,31,32」をセットする。ここで白丸「○」は、空き枠を示す。
【0033】
そして、周期設定部132は、R=各読取端末の枠数/総枠数を求める(S22)。
11=3/12, R12=3/12, R21=2/12, R22=2/12, R31=1/12, R32=1/12となる。
次に、周期設定部132は、Rが最大の読取端末を並べる(S23)。
Rが3/12と最大の読取端末11、端末12の2つを並べると、総枠は|11|12|○|○|○|○|○|○|○|○|○|○||11|12|...となる。
【0034】
次に、周期設定部132は、並べた読取端末のRを、並べた枠数/総枠数だけ減らす(S24)。
11=3/12-1/12=2/12, R12=3/12-1/12=2/12, R21=2/12, R22=2/12, R31=1/12, R32=1/12となる。
次に、Rが2/12と最大の読取端末11、読取端末12、読取端末21、読取端末22の4つを並べる。2回目に登場する端末11,端末12は1回目と間隔を開けた枠に並べる。
【0035】
総枠は|11|12|21|22|11|12|○|○|○|○|○|○||11|12|21|22|11|12|...となる。
並べた読取端末のRを減らして、R11=R21=R21=R22=R31=R32=1/12とする。
そして、Rが1/12と最大の読取端末11、読取端末12、読取端末21、読取端末22、読取端末31、読取端末32を並べる。同じ読取端末どうしの間隔を開けるために、登場回数が多い読取端末11,読取端末12から先に並べる。
【0036】
2周期分の総枠は|11|12|21|22|11|12|○|○|11|12|○|○||11|12|21|22|11|12|○|○|11|12|○|○||...となる。
次に、読取端末21、読取端末22を並べる。
2周期分の総枠は|11|12|21|22|11|12|21|22|11|12|○|○||11|12|21|22|11|12|21|22|11|12|○|○||...となる。
【0037】
次に、読取端末31、読取端末32を並べる。
総枠は|11|12|21|22|11|12|21|22|11|12|31|32|...となる。
周期設定部132が設定した総枠の例を図8にポーリング順序152として示す。
図8に示すようにポーリング順序152においては、1周期あたりで1回だけ登場する読取端末31では、ポーリング周期が約360ms秒であるのでカード読取からポーリングに対する応答までの時間はその半分の約180ms秒要することとなる。これに対して、1周期あたりで3回登場する読取端末11では、カード読取からポーリングに対する応答までの時間は1/3の約60ms秒程度と短縮されることとなる。
【0038】
読取端末11のように、権限を有する者が多く、人の出入りが頻繁と考えられる読取端末のポーリング周期を相対的に短くすることで迅速な応答性能を確保することができる。
(変形例1)
実施の形態1に係る変形例1について説明する。本変形例1では、権限テーブルに利用者毎に許可時間帯を設定することでより実情に合うポーリング順序の設定を実現する。本変形例は権限テーブルのデータ構造が異なる以外は実施の形態1と同様であるため異なる部分のみ説明する。
【0039】
図9(a)は本変形例に係る権限テーブル143を示し、図9(b)のテーブル144は権限テーブル143から算出した各時間帯における権限有りの人数を示すものである。
図9(a)に示すように、権限テーブル143は、「利用者ID」143a、「権限」143bに加えて、「許可時間帯」143cの項目が追加されている。「許可時間帯」とは入退室が許可された時間の範囲を示し、利用者毎の就業時間など入退室管理システムの運用形態に基づいて設定される。
【0040】
例えば、システム管理者であれば、24時間許可し、一般の従業員であれば朝から深夜までを許可時間帯とし、パートの従業員であれば日中のみを許可時間帯とする。
図9(b)に示すテーブルは、「時間帯」144aと、「権限有の人数」144bの項目を含む。各時間帯の「権限有りの人数」144bの項目は、左から順番に扉6a〜扉6cの入退室権限を有する者の人数である。
【0041】
このように、時間帯ごとに異なる権限有りの人数に基づいて、ポーリング順序を設定することでより実情に見合う結果を得ることができる。
また、設定したポーリング順序を各時間帯が到来するごとに自動的に切り替えるとさらに好適である。
(実施の形態2)
本実施の形態2では、各エリアに在室する利用者の数に応じて読取端末のポーリング周期を変更するものである。在室する利用者の変化に合わせて、上記送信周期を変更することで動的な制御を実現する。
【0042】
図10は、実施の形態2に係る管理装置2の機能ブロック図である。基本的には図2で説明したものと同じであるため、異なる部分だけを説明する。
制御部120は在室状況監視部134を備える。在室状況監視部134は、認証部124が通行を許可する旨の指示を送信する度に、通行を許可した利用者IDが在室状況テーブル146上で在室するエリアを更新する。例えば、読取端末11に対して認証部124が利用者ID「2909E96AC」の通行を許可する指示を送信した場合には、当該利用者ID「2909E96AC」の在室状況をエリアAからエリアBへと更新して、在室状況テーブル146のエリアAの人数を1減らし、エリアBの人数を1増やす。
【0043】
記憶部140は、権限テーブル142に加えて、在室状況テーブル146、エリアテーブル148を備えている。
在室状況テーブル146は、各エリアに在室する利用者の人数を示すものである。図11にデータ構造の例を示す。図11の在室状況テーブル146では、エリアA〜Dの4つのエリアに関して、それぞれ在室人数が記録されている。
【0044】
エリアテーブル148は、各エリア内に存在する読取端末11,12,21,22,31,32を示す対応表である。図12に具体的に示すように、各エリアA〜D毎に当該エリア内にある読取端末番号が記載されている。
図11と図12からわかるように、読取端末11は、エリアA内にあるため、50人の利用者のカードを読み取る可能性がある。これに対してエリアD内にある読取端末32は、たった1人の利用者のカードを読み取る可能性しかない。このため、頻繁な読み取りが予想される読取端末11のポーリング周期を短くし、読み取り頻度の少ないと予想される読取端末31のポーリング周期を長くすることでシステム全体としての応答性能を向上させることができる。
【0045】
在室人数からポーリング順序の設定のアルゴリズムは、図5、図7と同様に行うことができる。例えば、在室人数に応じて、読取端末11,12,21,22,31,32のぞれぞれに50,10,10,3,10,1の重み付け値Pを設定し、ステップS13(図5参照)以降は同様な処理を行うことでポーリング順序を設定することができる。
なお、実施の形態1のように、権限有の人数を参酌してもよい。すなわち、エリアB内に在室する10人のうちで例えば読取端末12に対して権限を有するものは10人、読取端末21に対しては6人、読取端末31に対しては3人とした場合に、この10,6,3をそれぞれ読取端末12,21,31の重み付け値Pと設定することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態3では、各読取端末における読取の履歴を記録しておき、履歴における読取の頻度に応じて、各読取端末のポーリング周期を変更するものである。
【0046】
図13は、実施の形態3に係る管理装置2の機能ブロック図である。基本的には図2で説明したものと同じであるため、異なる部分だけを説明する。
制御部120は履歴記録部136を備える。履歴記録部136は、認証部124が各読取端末11,12,21,22,31,32に対して通行を許可する旨の指示を送信するのに度に、各読取端末の通行記録ログとして記憶部140に記憶された履歴テーブル149に記録する。
【0047】
図14は、履歴テーブル149のデータ構造を示す図である。
履歴テーブル149は、カード読取の日時を示す「日時」149a、読み取ったカードIDを示す「利用者ID」149b、「読取端末番号」149cのテーブル項目を含んでいる。
図15は、履歴テーブル149から推算部128が作成したテーブル160を示す図である。
【0048】
現在の日時は2007/08/24 8:00とする。テーブル160中、2行目は1週間前の同一時間帯(2007/08/17 8:00-9:00)における各読取端末11,12,21,22,31,32で読み取ったID数を示す。1週間前の同一時間帯の傾向は継続すると考えられるため、読取端末11,12,21,22,31,32のぞれぞれに64,0,2,2,0,0の重み付け値Pを設定し、ステップS13(図5参照)以降は同様な処理を行うことでポーリング順序を設定することができる。
【0049】
また、テーブル160中、3行目は、1日前(2007/08/23 8:00-19:00)における各読取端末11,12,21,22,31,32で読み取ったID数を示す。1日前の読み取り傾向を利用して、例えば、2007/8/24 8:00-19:00におけるポーリング順序を設定することができる。
具体的な例としては、図1に示すエリアB〜Dを含むオフィス(従業員数64人)の始業時間が9:00であるとし、始業時間前の8:00-9:00の時間帯の履歴においては、オフィスの入口扉6aのそばにある読取端末11の読み取ったID数が著しく多いとする。
【0050】
この場合、ID数の多かった読取端末11に枠数7個と重点的に割り当て、残りの読取端末12,21,22,31,32には枠数1個ずつ割り当てると、読取端末11での応答速度を抜群に速くすることができる。従って、扉6aを通行して慌ただしく出勤する従業員に心地よい使い勝手を提供することができる。
要は、推算部128において、履歴テーブル149からポーリング順序を設定したい時間帯の履歴を抽出し、読み取りの頻度推定の材料として用いることで最適なポーリング順序を設定することができる。
<補足>
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されない。例えば、次のように実施することもできる。
1.実施の形態1では、図7を用いてポーリング順序の設定処理について説明したが、これは一例であって、その他公知のソートアルゴリズムを用いることができる。
【0051】
なお、同じ読取端末どうしが分散されるように最も最適化した場合の総枠は、
|11|21|12|22|11|31|12|21|11|22|12|32|、となる。
また洗練された手法ではないものの、いわゆる総当たり法により最適な枠の並べ方を探索するようにしても構わない。
2.各実施の形態では、総枠数が12個の例について説明したが、12個に限られず、読取端末の台数などのシステムの環境に応じて変更可能である。
【0052】
また各実施の形態では特に詳細に述べなかったが、ポーリング信号の送信時には、ポーリング信号の送信対象の読取装置だけではなく送信対象ではない芋づる式に接続された他の読取端末においても、ポーリングを監視する処理負荷が発生する。このため、枠と枠の間に待機時間(無通信時間)を設けて読取端末の処理負荷を軽減し、読取処理などを円滑に行わせるようにしても構わない。
3.実施の形態1では詳細に述べなかったが、図5のステップS13においては、Pの値が1より小さくても枠を最低限1個は割り当てるようにしている。これは、枠を最低限1個は割り当てないと読取端末の状況監視が途絶えてしまい管理装置2の管理が行き届かないおそれがあるからである。
【0053】
また、実施の形態2のように、在室状況を監視する場合においては、共連れ(正規入退室者の後に続いてカード読取無しに入退室すること。)の発生が考えられ、在室人数がゼロとカウントしたとしても現実には部屋内にまだ利用者がいることも想定されるため、いずれの読取端末も枠を割り当てることが好ましい。
4.実施の形態1,3では、図1に示すように、部屋の扉の入口側と出口側との双方に読取端末が設置された例について説明したが、例えば、扉の入口側にだけ読取端末を設置しても構わない。
5.各実施の形態では、読取端末は、カードIDを読み取るとして説明したが、これに限らず、指紋情報など生体認証に関する情報を読み取る認証端末を用いてよい。
6.各実施の形態では、部屋の出入り口にある扉の施解錠により利用者の通行を規制する例について説明したが、これに限らず部屋の出入り口にゲート(開閉バーの上下により通行を規制する。)を設けて構わない。
7.各実施の形態では、入退室管理システムの管理対象を部屋として説明したが、管理対象は壁などで仕切られた部屋に限られるものではなく、建物内の特定の区域(エリア)であれば足りる。例えば、建物の通路部分や、建物のエレベータホールへの入退場を管理する構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態1に係る入退室管理システム1の構成図である。
【図2】管理装置2の機能ブロック図である。
【図3】読取端末11の機能ブロック図である。
【図4】権限テーブル142のデータ構造を示す図である。
【図5】管理装置2における推算処理を示すフローチャートである。
【図6】図5のフローに従って推算した結果の例をまとめた図である。
【図7】管理装置2における周期設定処理を示すフローチャートである。
【図8】周期設定部132が設定した枠の例を示す図である。
【図9】(a)は本変形例に係る権限テーブル143を示し、(b)は、(a)の権限テーブル143から算出した各時間帯における権限有りの人数を示すテーブル144を示す。
【図10】実施の形態2に係る管理装置2の機能ブロック図である。
【図11】在室状況テーブル146のデータ構造を示す図である。
【図12】エリアテーブル148のデータ構造を示す図である。
【図13】実施の形態3に係る管理装置2の機能ブロック図である。
【図14】履歴テーブル149のデータ構造を示す図である。
【図15】履歴テーブル149から推算部128が作成したテーブル160を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 入退室管理システム
2 管理装置
6a,6b,6c 扉(ドア)
11,12,21,22,31,32 読取端末
40 カード読取部
44 通信部
46 メモリ
48 電気錠制御部
120 制御部
122 制御アプリ部
126 ID読出部
128 推算部
130 送受信部
132 周期設定部
134 在室状況監視部
136 履歴記録部
142 権限テーブル
146 在室状況テーブル
148 エリアテーブル
149 履歴テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理装置と、各部屋の出入り口に位置するドアの傍らに設置された複数の読取端末とを備える入退室管理システムであって、
前記複数の読取端末それぞれは、
利用者IDを読み取る読み取り手段と、
前記管理装置からデータの問い合わせに応じて前記読み取った利用者IDを送信するID送信手段と、
前記管理装置からの通行を許可する旨の指示を受信した場合に、前記ドアの錠を解錠させる解錠手段とを備え、
前記管理装置は、
前記複数の読取端末へと、一台ずつデータの問い合わせを示す信号を送信する信号送信手段と、
利用者ID毎に、通行可能なドアを記述した権限テーブルを記憶する記憶手段と、
前記問い合わせに対する応答としての利用者IDを受信した場合に、受信した利用者IDと当該利用者IDの送信元の読取端末に対応するドアとを、前記権限テーブルに照合して、ドアの通行を許可するかどうかを判定する判定手段と、
通行許可と判定されたときに、通行を許可する旨の指示を当該利用者IDの送信元の読取端末に送信する指示送信手段と、
各読取端末の読み取り頻度を推算する推算手段と、
前記推算された読み取り頻度が高い読取端末ほど、当該読取端末に関して前記データの問い合わせを示す信号の送信周期を短く設定する設定手段と
を備えることを特徴とする入退室管理システム。
【請求項2】
前記管理装置は、
前記判定手段の通行許可の判定に基づいて、各部屋の在室人数を計数する計数手段を備え、
前記推算手段は、各部屋の在室人数の多少に基づいて、部屋内に設置された読取端末の読み取り頻度の高低を推算する
ことを特徴とする請求項1に記載の入退室管理システム。
【請求項3】
前記推算手段は、前記権限テーブルに基づいて各読取端末に通行権限を有する利用者IDの数を算出し、算出された数の多少に基づいて読み取り頻度の高低を推算する
ことを特徴とする請求項1に記載の入退室管理システム。
【請求項4】
前記権限テーブルは、利用者ID毎に、通行可能なドア及び当該ドアの通行可能な時間帯が記述されており、
前記推算手段による通行権限を有する利用者IDの算出は、前記通行可能な時間帯に基づいて行われる
ことを特徴とする請求項3に記載の入退室管理システム。
【請求項5】
前記管理装置は、
前記判定手段の判定に応じて、読取端末毎に、判定日時を含む履歴を記憶する履歴記憶手段を備え、
前記推算手段は、所定時間帯または所定曜日に対応する読取端末それぞれの判定回数を前記履歴から取得し、取得した読取端末それぞれの判定回数の多少に基づいて、各読取端末の各日についての所定時間帯または所定曜日における読み取り頻度の高低を推算する
ことを特徴とする請求項1に記載の入退室管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−228373(P2009−228373A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77982(P2008−77982)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】